説明

リン酸モノエステルとリン酸モノエステル塩の複合体

【課題】中性から弱酸性のpH領域において洗浄剤組成物およびそれを構成する界面活性剤組成物に良好な起泡性を与えることができ、かつ洗浄時に良好な感触と泡切れの良さを与えることができる添加剤を提供する。
【解決手段】下記一般式(1)で示される複合体およびその製造法、更にこの複合体を含む界面活性剤組成物ならびに洗浄剤組成物を提供するものである。
[R1OPO3 (CH2CH2O)q1 H2]m [R2OPO3 (CH2CH2O)q2 H(1/r)M]n (1)
(式中、R1およびR2はそれぞれ独立に炭素数6〜22の直鎖あるいは分岐鎖のアルキル基または炭素数6〜22の直鎖あるいは分岐鎖のアルケニル基を示し、q1およびq2はそれぞれ0〜10の範囲内の数を示し、Mはアルカリ金属またはアルカリ土類金属を示し、rはMの原子価を示し、mおよびnはそれぞれ、m/nの値が0.11〜9.0の範囲を満足する互いに独立な自然数を示す。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リン酸モノエステルとリン酸モノエステル塩とが特定の割合で含有してなる複合体およびその製造方法、ならびに該複合体を含有する界面活性剤組成物及び洗浄剤組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
シャンプー、固形石鹸、ボディシャンプー、洗顔料、台所用洗剤等の洗浄剤には高い洗浄力はもとより豊かな泡立ちが要求されるが、さらに、これらの洗浄剤の使用時に手に感じる感触の良さや、水や湯で濯いだ際の泡切れの良さも要求される。更に近年、これらの洗浄剤は日々直接皮膚に接することから、皮膚へのマイルド性も重要視されるようになってきた。
従来、このような洗浄剤は中性から塩基性に調整されていたが、このマイルド性への要求から、特に香粧品用洗浄剤では弱酸性のpH域での製品設計を行う方向に移行してきており、例えばN−アシルアミノ酸塩等を用いた弱酸性洗浄剤の技術が知られている(例えば、特許文献1、特許文献2)が、その一方で、弱酸性域では当初より求められてきた起泡性能が著しく低下するという問題が発生していた。
従来、皮膚に直接接触する洗浄剤の主基剤として多くの製品に使用されている界面活性剤は、石鹸、アルキル硫酸塩、ポリオキシエチレンアルキル硫酸塩といったアニオン性界面活性剤であり、特に香粧品用途では石鹸、ポリオキシエチレンアルキル硫酸塩が広く使用されてきた。しかしながら、石鹸は、その泡立ち、泡質、泡量、すすぎ時のさっぱり感等に優れているが、塩基性以外のpH域では水に不溶であるばかりか、全く洗浄剤として機能しない。ポリオキシエチレンアルキル硫酸塩は、弱酸性系でも使用可能ではあるものの、皮膚への残留感が強く、すすぎ後もぬるぬるした感触が残り、泡切れも悪いという問題がある。
【0003】
このため、中性域から弱酸性域にいたる範囲において起泡力の増強や感触や使用感の改善を行うために種々検討が行われており、例えば、弱酸性pH領域で使用できる主基剤の開発(例えば、特許文献3)やアシル化アミノ酸塩(例えば、特許文献1、2)やアシル化タウリン(例えば、特許文献4)等に代表されるマイルド性を謳った界面活性剤を主基剤として積極的に用いた洗浄組成物の開発が行われてきた。一方、ポリオキシエチレンアルキル硫酸塩等の主基剤に添加する補助界面活性剤をはじめとする添加剤による増泡性能の向上や感触改善等も検討されている(例えば、特許文献5)。
しかしながら、これらの界面活性剤や添加剤によっても起泡性、感触、泡切れ性を十分に満足させるものは得られていないのが実情であった。特に、中性・弱酸性領域では、洗浄後すすいだ際に感じる、皮膚への残留感のないさっぱりとした感触や泡切れを実現できないことから、低pH領域でも起泡性と感触や泡切れを両立できる技術が望まれてきた。
【0004】
【特許文献1】特開2000−204035号公報
【特許文献2】特開2001−19632号公報
【特許文献3】特開平11−193396号公報
【特許文献4】特開2003−129097号公報
【特許文献5】特開2002−154947号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の課題は、中性から弱酸性のpH領域において洗浄剤組成物およびそれを構成する界面活性剤組成物に良好な起泡性を与えることができ、かつ洗浄時に良好な感触と泡切れの良さを与えることができる特定の複合体およびその製造方法、ならびに該複合体を含有する界面活性剤組成物および洗浄剤組成物を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、特定のリン酸モノエステルとリン酸モノエステル塩とが特定の組成比で含有した複合体を用いることにより、界面活性剤系の起泡性能および洗浄時の感触及び泡切れが極めて良好に改善されることを見出した。即ち、本発明は、下記一般式(1)で示される、リン酸モノエステルおよびリン酸モノエステル塩からなる複合体およびその製造法、更にこの複合体を含む界面活性剤組成物ならびに洗浄剤組成物を提供するものである。
[R1OPO3 (CH2CH2O)q1 H2]m [R2OPO3 (CH2CH2O)q2 H(1/r)M]n (1)
(式中、R1およびR2はそれぞれ独立に炭素数6〜22の直鎖あるいは分岐鎖のアルキル基または炭素数6〜22の直鎖あるいは分岐鎖のアルケニル基を示し、q1およびq2はそれぞれ0〜10の範囲内の数を示し、Mはアルカリ金属またはアルカリ土類金属を示し、rはMの原子価を示し、mおよびnはそれぞれ、m/nの値が0.11〜9.0の範囲を満足する互いに独立な自然数を示す。)
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、中性から弱酸性のpH領域において洗浄剤組成物およびそれを構成する界面活性剤組成物に良好な起泡性を与えることができ、かつ洗浄時に良好な感触と泡切れの良さを与えることができる特定の複合体およびその製造方法、ならびにその複合体を含有する界面活性剤組成物および洗浄剤組成物を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明のリン酸モノエステルおよびリン酸モノエステル塩からなる複合体を表わす一般式(1)において、R1およびR2はそれぞれ、炭素数6〜22の直鎖あるいは分岐鎖のアルキル基または炭素6〜22の直鎖あるいは分岐鎖のアルケニル基を示すが、起泡性能が良好である点から、それぞれ炭素数8〜18の直鎖あるいは分岐鎖のアルキル基またはアルケニル基が好ましい。R1およびR2は各々単一の炭素数を有するものであっても、複数種の炭素数の異なるものの混合物であってもよい。また、直鎖あるいは分岐鎖のいずれであってもよく、分岐鎖と分岐鎖が混合したものも包含する。R1およびR2の各々で表わされる炭素数6〜22の直鎖あるいは分岐鎖のアルキル基または炭素6〜22の直鎖あるいは分岐鎖のアルケニル基としては、具体的にはペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基、ノナデシル基、オレイル基、エライジル基およびこれらのメチル分岐、エチル分岐、プロピル分岐等が挙げられる。
【0009】
一般式(1)において、q1及びq2はそれぞれ、リン酸エステルを製造する際の原料となるアルコールへのオキシエチレン基の導入数を示し、0〜10の範囲内の数を示す。この値は単一の整数であっても、エチレンオキシドの平均付加モル数であってもよい。一般式(1)で示される本発明の複合体の製造の際の収率や、洗浄時の泡切れの良さを考慮すると、この値は好ましくは0〜3であり、より好ましくは0〜1である。
【0010】
一般式(1)において、Mはリン酸モノエステル塩において陽イオンを形成する金属あるいは基であり、アルカリ金属、アルカリ土類金属等を示し、具体的にはLi、Na、K、Mg、Ca等が挙げられる。rはMの原子価を示し、Mが一価の時は1、二価の時は2を示す。また、m、nはそれぞれ、m/nの値が0.11〜9.0の範囲を満足する互いに独立な自然数を示す。本発明の複合体の製造の際の収率や、弱酸性系での増泡効果の点から、上記m、nはそれぞれ、m/nの値が好ましくは0.4〜2.5、より好ましくは0.5〜1.5の範囲を満足する互いに独立な自然数である。
【0011】
本発明の複合体は、上記一般式(1)に包含されるものであれば、本発明の効果を奏するものであるが、特に、上記一般式(1)で表わされるもののうち、R1およびR2がそれぞれオクチル基、デシル基、ドデシル基、テトラデシル基、ヘキサデシル基、オクタデシル基から選ばれ、q1およびq2がそれぞれ0〜3、Mがアルカリ金属であり、かつm、nがそれぞれ、m/nの値が0.5〜1.5の範囲を満足する互いに独立な自然数である複合体が起泡性能および泡切れの点で好ましい。
本発明の複合体は、一般式(1)で示されるようにリン酸モノエステルとリン酸モノエステルの1当量中和塩からなるものであるが、ここで「複合体」とは、該リン酸モノエステルとリン酸モノエステル中和塩とがmとnで示される比率の存在割合により、結合して形成された集合体をいい、集合体として一つの化学的特性を有するものをいう。上記複合体は、溶液中に溶解した状態のものであっても、固体であってもよいが、本発明においては、泡切れ、さっぱり感が優れるなど点から固体、特に結晶性の固体であることが好ましい。
【0012】
本発明の複合体は、リン酸モノエステルの水溶液に、塩基性化合物を添加することで生じた沈殿物として得ることができる。該塩基性化合物としては、Li、Na、K等のアルカリ金属あるいはMg、Ca等のアルカリ土類金属の水酸化物あるいはアルコキシド等が挙げられ、特に水酸化アルカリ金属、水酸化アルカリ土類金属が好ましく用いられる。また、必要に応じ更に水を留去または添加して水溶液の濃度を変えることで目的物を得ることができる。
上記塩基性化合物は、リン酸モノエステルに対して0.05〜1.4当量添加することが好ましい。目的物の収率の点から、上記添加量は、更に好ましくは0.1〜1.2当量であり、特に好ましくは0.3〜1.0当量である。
【0013】
本発明の界面活性剤組成物及び洗浄剤組成物は、本発明の複合体を含有するが、該複合体としては、別途製造したものを添加することも可能であるが、界面活性剤組成物あるいは洗浄剤組成物中にあらかじめリン酸モノエステルが含まれている場合は、該組成物中で上記複合体を生成させることもできる。また、上記複合体を別途製造する場合は、生成した複合体を分離して用いてもよいが、分離せずに反応場として用いたリン酸モノエステル水溶液と共に使用することもできる。
【0014】
本発明の複合体を含有する界面活性剤組成物は、中性から弱酸性のpH域においても優れた起泡性を有し、かつさっぱり感を伴うことから、洗浄剤や起泡剤の原料として有用である。界面活性剤組成物において主基剤として存在する界面活性剤に関しては、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤、両性界面活性剤いずれも使用でき、また、これらの複数種の組合せであってもよい。
【0015】
このような界面活性剤としては、具体的には、アルキル硫酸塩、ポリオキシエチレンアルキル硫酸塩、モノアルキルリン酸塩、ジアルキルリン酸塩、ポリオキシアルキレンモノアルキルリン酸塩、ポリオキシアルキレンジアルキルリン酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルスルホン酸塩、石鹸、アシル化イセチオン酸塩、スルホこはく酸塩、アシル化グルタミン酸塩、アシル化タウリン塩等のアニオン界面活性剤、アルキルトリメチルアンモニウム塩、ジアルキルジメチルアンモニウム塩、長鎖アミン塩酸塩、アルキルジメチルアミンオキシド、アルキルアミドプロピルジメチルアミンオキシド、アルキルジメチルベンザルコニウム塩等のカチオン性界面活性剤、またポリオキシアルキレンアルキルエーテル、アルキルモノ或いはポリグルコシド、アルカノールアミド、ポリオキシアルキレンアルカノールアミド、脂肪酸グリセリルエステル、アルキルグリセリルエーテル等のノニオン性界面活性剤、アルキルジメチルベタイン、アルキルジメチルヒドロキシスルホベタイン、アルキルアミドプロピルジメチルベタイン等の両性界面活性剤が用いられる。
【0016】
これらの界面活性剤のうち、本発明の界面活性剤組成物においては、日々、皮膚に直接接触することの多い、アルキル硫酸塩、ポリオキシアルキレンアルキル硫酸塩、モノまたはジアルキルリン酸塩、ポリオキシアルキレンモノまたはジアルキルリン酸塩、石鹸、アルキルジメチルアミンオキシド、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、アルカノールアミド、アルキルグリセリルエーテル、アルキルジメチルヒドロキシスルホベタイン、アルキルアミドプロピルジメチルベタイン等が好ましく用いられるが、弱酸性のpH領域における特に優れた起泡性を考慮すると、これらのうちポリオキシアルキレンアルキル硫酸塩、モノまたはジアルキルリン酸塩、ポリオキシアルキレンモノまたはジアルキルリン酸塩、アルカノールアミド、アルキルグリセリルエーテル、アルキルアミドプロピルジメチルベタイン等が特に好ましい。
【0017】
本発明の界面活性剤組成物は、本発明の複合体を含有することにより、これを含有しない場合に比べて優れた起泡性能を有するが、その起泡性能を更に高いレベルで維持するため、上記複合体を、主基剤となるその他の界面活性剤の全量に対して0.05〜200重量%、更には0.1〜150重量%含有することが好ましい。その範囲内の含有量であれば、系の分散性が維持でき、起泡性能も十分である。
なお、本発明の界面活性剤組成物は、その全界面活性剤濃度が0.1〜40重量%の水溶液であることが好ましい。また、溶解性、溶液安定性等を考慮して、該組成物は、グリセリン、エチレングリコール、エタノール等を適宜含有することもできる。
【0018】
本発明の洗浄剤組成物は、その形態は特に限定されず、シャンプー、ボディーシャンプー、洗顔料等の液体洗浄剤であっても、化粧石鹸等の固形洗浄剤であってもよく、これらは常法に従って製造することができる。液体洗浄剤の場合は、液体媒体として水を用いるのが好ましく、その含有量は全組成物中に50〜90重量%であることが好ましい。
また、本発明の洗浄剤組成物中には、前記本発明の効果の点から、本発明の複合体を0.05〜15重量%含有することが好ましい。
なお、本発明の洗浄剤組成物は、必要に応じて通常の洗浄剤に用いられる成分、例えばプロピレングリコール、グリセリン、ソルビトール等の保湿剤、メチルセルロース、ポリオキシエチレングリコールジステアレート等の粘度調整剤、トリクロサン、トリクロロカルバン等の殺菌剤、グリチルリチン酸カリウム、酢酸トコフェロール等の抗炎症剤、ジンクピリチオン、オクトピロックスな等の抗フケ剤、メチルパラベン、ブチルパラベン等の防腐剤、その他パール化剤、香料、色素、紫外線吸収剤、酸化防止剤等を適宜含有することができる。
【0019】
さらに、本発明の洗浄剤組成物の基礎成分である界面活性剤成分としては、本発明の界面活性剤組成物に使用される上記した界面活性剤成分と同じものを用いることができる。
本発明の洗浄剤組成物のpH値は7.5以下の酸性ないし中性領域にあることが好ましく、皮膚へのマイルド性を考慮するとpH3〜7の弱酸性ないし中性領域が特に好ましい。pHの調整方法については特に限定されるものではないが、クエン酸、りんご酸、酢酸等の有機酸や、塩酸、硫酸、ホウ酸等の無機酸を使用して行うことができる。
【実施例】
【0020】
実施例1
モノドデシルリン酸13.32gおよび水酸化カリウム 1.40g(モノドデシルリン酸に対して0.5モル当量)を、ビーカー内でイオン交換水1リットルに添加し、温度70℃の下で加熱撹拌を行い均一分散溶液を調製した後放冷し、室温下で48時間静置した。容器内に生成した沈殿を減圧ろ過により分取し、乾燥を行った結果、目的物である白色結晶12.81gが得られた。得られた白色結晶について、リンおよびカリウムに関する元素分析を行った。リンは湿式分解/ICP発光分析法、カリウムは原子吸光分析法を用いて測定を行ったところ、リンは11%、カリウムは7.0%含まれており、モノドデシルリン酸およびモノドデシルリン酸モノカリウムの1:1の混合組成であることを確認した。また31P NMRによる測定を行った結果、−4.9ppmおよび−5.3ppmに2本のピークが観測された。
【0021】
実施例2
モノドデシルリン酸13.32gおよび水酸化カリウム 0.84g(モノドデシルリン酸に対して0.3モル当量)を、ビーカー内でイオン交換水1リットルに添加し、温度60℃下で加熱撹拌を行い均一分散溶液を調製した後放冷し、室温下で48時間静置した。容器内に生成した沈殿を減圧ろ過により分取し、乾燥を行った結果、目的物である白色結晶11.09gが得られた。得られた白色結晶について、リンおよびカリウムに関する元素分析を行った。リンは湿式分解/ICP発光分析法、カリウムは原子吸光分析法を用いて測定を行ったところ、リンは11重量%、カリウムは5.2重量%含まれており、モノドデシルリン酸およびモノドデシルリン酸モノカリウムの6:4の混合組成であることを確認した。
【0022】
以下の実施例3〜5及び比較例1〜3について、次の起泡性能評価を行った。
<起泡性能評価>
200mlの活栓つきの目盛り付きガラス円筒管にサンプル水溶液10mlを加えて栓をし、手で10回振とうし、振とう直後の泡量を読み取った。なお、振とうの際には、できるだけガラス管と同等の長さ程度の振幅を取り、一定の力で行うように心がけた。
実施例3
モノドデシルリン酸1.33gおよび水酸化カリウム0.34gをイオン交換水100mLに添加し均一水溶液を調製した。この溶液に実施例1で合成した白色結晶0.57gを添加し、溶液pHおよび起泡力の測定を行った。結果を表1に示す。
【0023】
実施例4
モノドデシルリン酸1.33gをイオン交換水100mLに添加し、均一水溶液を調製した。この溶液に実施例2で合成した白色結晶1.41gを添加し、溶液pHおよび起泡力の測定を行った。結果を表1に示す。
実施例5
ポリオキシエチレン(2)ラウリル硫酸Na 1.88gをイオン交換水100mLに均一溶解し、クエン酸を添加してpHを4.0に調整した。この溶液に実施例1で合成した白色結晶0.88gを添加し、分散させた溶液を用いて起泡力の測定を行った。結果を表1に示す。
【0024】
比較例1
モノドデシルリン酸1.33gおよび水酸化カリウム0.42gをイオン交換水100mLに添加し、均一水溶液を調製した。溶液pHおよび起泡力の測定を行った。結果を表1に示す。
比較例2
モノドデシルリン酸1.33gをイオン交換水100mLに添加し、均一水溶液を調整した。溶液pHおよび起泡力の測定を行った。結果を表1に示す。
比較例3
ポリオキシエチレン(2)ラウリル硫酸Na 1.88gをイオン交換水100mLに均一溶解し、クエン酸を添加してpHを4.0に調製し、起泡力の測定を行った。結果を表1に示す。
【0025】
【表1】

【0026】
以下の実施例6〜8及び比較例4、5について、次の感触・泡切れ評価を行った。
<感触・泡切れ評価>
あらかじめ手を良く洗浄した後、サンプル溶液2mlを手に取り、手で十分に泡立てた。続いて水道水ですすぎ、その際の手のすすぎ感、及びすすぎ終了後の感触について官能評価を行った。評価基準は以下の通りである。
・すすぎ感
◎ すすぎが速い
○ すすぎがやや速い
△すすぎがやや遅い
× すすぎが遅い
・すすぎ後の感触
◎ さっぱりした感じである。
○ ややさっぱりしている。
△ ややさっぱりしない。
× さっぱりしない。
【0027】
実施例6
実施例3で調製した白色結晶を含む液を用いて上記感触・泡切れ評価を行った。結果を表2に示す。
実施例7
モノドデシルリン酸1.33gおよび水酸化カリウム0.22gをイオン交換水100mLに添加し撹拌すると、少量の目的とする結晶が析出した。サンプル溶液を良く撹拌して、上記感触・泡切れ評価を行った。結果を表2に示す。
実施例8
実施例5で調製した白色結晶を含む液を用いて上記感触・泡切れ評価を行った。結果を表3に示す。
【0028】
比較例4
モノドデシルリン酸1.33gおよび水酸化カリウム0.56gをイオン交換水100mLに添加し、均一水溶液を調製した。この溶液を用いて上記感触・泡切れ評価を行った。結果を表2に示す。
比較例5
比較例3で調整した溶液を用いて上記感触・泡切れ評価を行った。結果を表3に示す。
【0029】
【表2】

【0030】
【表3】

【産業上の利用可能性】
【0031】
本発明の複合体は、中性から弱酸性のpH領域において良好な起泡性を与えることができ、かつ洗浄時に良好な感触と泡切れの良さを与えることができることから、界面活性剤組成物及びシャンプー、固形石鹸、ボディシャンプー、洗顔料、台所用洗剤等の洗浄剤組成物に利用することができる。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で示される、リン酸モノエステルおよびリン酸モノエステル塩からなる複合体。
[R1OPO3 (CH2CH2O)q1 H2]m [R2OPO3 (CH2CH2O)q2 H(1/r)M]n (1)
(式中、R1およびR2はそれぞれ独立に炭素数6〜22の直鎖あるいは分岐鎖のアルキル基または炭素数6〜22の直鎖あるいは分岐鎖のアルケニル基を示し、q1およびq2はそれぞれ0〜10の範囲内の数を示し、Mはアルカリ金属またはアルカリ土類金属を示し、rはMの原子価を示し、mおよびnはそれぞれ、m/nの値が0.11〜9.0の範囲を満足する互いに独立な自然数を示す。)
【請求項2】
一般式(1)において、mおよびnがそれぞれ、m/nの値が0.4〜2.5の範囲を満足する互いに独立な自然数である請求項1記載の複合体。
【請求項3】
固体である請求項1または2に記載の複合体。
【請求項4】
一般式(1) において、R1およびR2がそれぞれ炭素数6〜22の直鎖あるいは分岐鎖のアルキル基またはアルケニル基であり、q1およびq2がそれぞれ0〜6、Mがアルカリ金属あるいはアルカリ土類金属であり、かつm、nがそれぞれ、m/nの値が0.5〜1.5の範囲を満足する互いに独立な自然数である請求項1〜3のいずれかに記載の複合体。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載の複合体を含有する界面活性剤組成物。
【請求項6】
請求項1〜4のいずれかに記載の複合体を、界面活性剤全量に対して0.05〜200重量%含有する界面活性剤組成物。
【請求項7】
請求項1〜4のいずれかに記載の複合体を含有する洗浄剤組成物。
【請求項8】
請求項1〜4のいずれかに記載の複合体を0.5〜15重量%含有する洗浄剤組成物。
【請求項9】
pH値が3〜7の範囲にある請求項7または8に記載の洗浄剤組成物。
【請求項10】
リン酸モノエステル水溶液に、リン酸モノエステルに対して0.05〜1.4当量の水酸化アルカリ金属または水酸化アルカリ土類金属を添加して下記一般式(1)で示されるリン酸モノエステルおよびリン酸モノエステル塩からなる複合体を得る上記複合体の製造方法。
[R1OPO3 (CH2CH2O)q1 H2]m [R2OPO3 (CH2CH2O)q2 H(1/r)M]n (1)
(式中、R1およびR2はそれぞれ独立に炭素数6〜22の直鎖あるいは分岐鎖のアルキル基または炭素数6〜22の直鎖あるいは分岐鎖のアルケニル基、q1およびq2はそれぞれ0〜10の範囲内の値を示し、Mはアルカリ金属またはアルカリ土類金属であり、rはMの原子価であり、mおよびnはそれぞれ、m/nの値が0.11〜9.0の範囲を満足する互いに独立な自然数を示す。)

【公開番号】特開2006−28133(P2006−28133A)
【公開日】平成18年2月2日(2006.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−212556(P2004−212556)
【出願日】平成16年7月21日(2004.7.21)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【Fターム(参考)】