説明

リード線等の微小半田付けによる電子機器製造方法とそのための半田鏝

【課題】狭く微小なランド部位における端子やリード線の半田付けにおいて、位置を定めて的確に行なうことができ、しかも、使用する半田の量も、貫通孔に投入する糸半田の長さで加減することができる。その結果、小型で微小な半田付けを必要とする電子機器において、品質の良い製造を可能とする。
【解決手段】フラックスの飛散を防止するために、円筒形の貫通孔を持つ鏝先を使用し、鏝先の開口部に凸状の突出部を形成させた。この凸状突出部をリード線やランドの半田付け部位に接着させて加熱することにより、適切な部位に半田付けを行うことができるようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、糸半田を溶融させて、微細な部分に設置されたリード線等を的確に半田付けする電子機器製造方法とそのために使用する半田鏝に関するものである。
【背景技術】
【0002】
配線基板のランドと金属ピンやワイヤなどの端子同士を半田付けするための半田鏝として、鏝先が椀状又はキャップ状をなすものが知られている(特許文献1)。この方法は、ランドから突き出たピンを鏝先の開口部で囲った状態で鏝のキャップ内に糸半田を供給し、鏝を加熱することにより、半田を溶融し、ピンに半田付けを実施する方法である。更にこれを改良したものとして、貫通孔を持った筒状の半田鏝を用いた半田付け方法が知られている(特許文献2)。この方法は、半田鏝先端部の貫通孔の中で、半田を溶融させ、金属ピンへ半田付けする方法である。これにより、不要個所への半田付けとフラックスの飛散を防止することが特徴となっている。
【0003】
一方、携帯電話に内蔵されている振動モーターのような、微小精密機器の微細な半田付けにおいては、これまでの半田付け方法では、的確な位置に適量の半田付けを行なうことが非常に困難であった。即ち、例えばリード線を微小なランドに半田付けするためには、半田付け位置の的確な予備加熱と半田の熔融が大きな影響を与えるが、これまでの方法では半田付けの位置と半田量が的確なものではなかった。そのため、微細な箇所へのリード線の半田付けに関しては、半田付けの位置や半田量のコントロールが難しく、精度のよい半田付けを行なうことは困難であった。
以上のように、微細な半田付けを必要とする精密電子機器のために、新たな半田付けの手法による、電子機器の製造方法が求められていた。

【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平11−245029号公報
【特許文献2】WO2008/023461
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の課題は、フラックスの飛散を防止するとともに、微小部位におけるリード線の半田付けを精度よく実施できる半田鏝を提供することである。これまで多くの試みがなされてきたが、微小精密機器の微細な被半田付け部分への的確な半田付けは困難であった。例えば、特許文献2に記載の貫通孔を持った筒状の半田鏝をリード線の半田付けに使用すると、貫通孔内で熔融した半田が、鏝先が接触して加熱されたランド部位に流れ、目的とする部分ではなく、加熱されたランド部位に滞留して固化する傾向にあった。そのため、鏝先の開口部の孔径が大き過ぎると、鏝先の開口部内で半田付けが行なわれず、鏝先が接触して加熱された部分に熔融半田が流れて行き、目的とする半田付け箇所に溶融半田が定着固化しない傾向がある。そこで、微小部位への的確な半田付け、特にリード線への微小半田付けが求められていた。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、特許文献2に記載の貫通孔を持つ筒状の半田鏝の改良を種々検討した。その結果、該半田鏝の先端部に凸状の突出部を形成させ、この凸状突出部を端子やリード線やランドの半田付け予定部位に接触させて予備加熱することにより、良好な半田付けを行なえることが分かった。即ち、鏝先の凸状突出部によって被半田付け部分の端子やリード線やランド部位を予備加熱すると、鏝先の貫通孔内で熔融した半田が予備加熱された部位に流れて行き、そこで滞留凝固するため。所望の部位で端子やリード線を半田付けできることを見出した。更に、本発明者らは、図1に示されるように凸状突出部の各種の態様(被半田付け部分への突出部の接触面積、鏝先と突出部の先端との間の距離等)と鏝先の貫通孔開口部の径を検討した結果、以下のことを見出した。
【0007】
a)鏝先の平面と凸状突出部の先端との間の距離A(突出部の高さ):
距離Aは、半田片を鏝先の貫通孔内に保持し、加熱できる距離である。半田の使用量が少ない場合には、半田片の径を小さくして、半田片の長さが約1mm以上であることが好ましい。それ故、距離Aは0.1〜1.5mmの範囲であれば良好な結果を得ることが出来る。
b)凸状突出部の形状は、予備加熱部位(被半田付け部位)の形状(ランド部位とリード線等の形状)に応じて適宜選択することができる。しかし、被半田付け部分を適切な温度まで予備加熱するために、熱伝導に必要な凸状突出部の面積は、約0.1〜9平方mmであることが好ましい。
c)半田鏝先端部の貫通孔開口部の孔径は、半田片が通過する距離であれば特に限定されない。しかし、半田鏝先端部の開口部の孔径が3.5mm以上になると凸状突出部で加熱されるランド部位と、熔融半田の距離が大きく離れることになり、加熱されたランド部位に熔融半田が流れ込まないことが起きる。従って、0.5〜3.5mmの範囲が好ましい。
【0008】
更に、本発明者らは、半田鏝先端部の形状(半田鏝先端部の径と貫通孔の径の大きさ/筒状の肉厚サイズ)が貫通孔内の温度に及ぼす影響を検討した。まず、図8に示される形状の半田鏝を用いて、貫通孔内の温度を熱電対で測定した。タイプBの方が半田鏝先が細いため、外部温度の影響を受け易く、タイプAより温度が低くなると考えられたが、図9に示されるように貫通孔内の温度に大きな相違がなかった。
本発明者らは、これらの知見を総合して、本発明を完成した。
【0009】
即ち、本発明の要旨は以下の通りである。
(1)次の形状の半田鏝を用いて、
a)貫通孔を有する筒状半田鏝であって、
b)半田鏝の先端部と貫通孔の内面がセラミック、タングステン、ステンレス又はチタンの材質で形成され、
c)半田鏝の先端部に凸状の突出部が設置されており、
d)上記凸状突出部と半田鏝先端部の間の距離が0.1〜1.5mmであり、
e)被半田付け部材と電子機器基板(ランド)の被半田付け部位に接触する、上記凸状突出部の接触面の面積が0.1〜9平方mmである、
上記凸突出部の接触面を、被半田付け部材と上記半田付け予定部位に接触させて予備加熱し、
糸半田片を貫通孔に投入して、鏝先の貫通孔内で熔融させ、
熔融半田を上記凸突出部で予熱加熱された部位に流入させ、
上記流入部位で凝固させて、被半田付け部材を基板(ランド)に半田付けする
ことを特徴とする、電子機器の製造方法。
(2)筒状半田鏝先端部の貫通孔の内径が0.5〜3.5mmであることを特徴とする、上記(1)の電子機器の製造方法。
(3)上記糸半田片が1〜5mgであることを特徴とする、上記(1)又は(2)に記載の電子機器の製造方法。
(4)上記半田鏝先端部の貫通孔の内径が0.6〜1.5mmであり、
上記凸状突出部の接触面の面積が0.3〜5平方mmであり、
上記凸状突出部と半田鏝先端部の間の距離が0.3〜1.0mmである
ことを特徴とする、上記(3)の電子機器の製造方法。
【0010】
(5)鏝先に凸状の突出部と貫通孔を有する半田鏝であって、
半田鏝の先端部と貫通孔の内面がセラミック、タングステン、ステンレス又はチタンの材質で形成され、
上記半田鏝先端部の貫通孔の内径が0.6〜1.5mmであり、
上記凸状突出部の接触面の面積が0.3〜5平方mmであり、
上記凸状突出部と半田鏝先端部の間の距離が0.3〜1.0mmである
ことを特徴とする、糸半田片用の半田鏝。
(6)鏝先の先端部と凸状の突出部の間の距離が、0.3〜0.5mmである、上記(5)記載の半田鏝。
(7)上記半田鏝先端部の貫通孔の内径が1〜1.5mmである、上記(5)又は(6)記載の半田鏝。
(8)上記凸状の突出部の接触表面に、リード線逃がし溝、ピン逃がし穴を設けていることを特徴とする、上記(5)〜(7)のいずれかに記載の半田鏝。

【発明の効果】
【0011】
本発明の製造方法を用いることにより、狭く微小なランド部位における端子やリード線の半田付けに関して、位置を定めて的確に行なうことができるようになった。しかも、使用する半田の量も、貫通孔に投入する糸半田の長さで加減することができることから、例えば図10のような携帯電話機の振動モーター等の極めて小型の電子機器の半田付けに関しても、精度よく実施できるようになった。しかもフラックスの飛散も防止できている。以上のように、本発明により、小型で微小な半田付けを必要とする電子機器において、品質の良い製造が可能となった。

【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の鏝先の形状の特徴と半田付けの状況を説明する概略図(断面図)である。
【図2】本発明の鏝先に設置された凸状突出部の形状の一例を表した斜視図である。
【図3】本発明の鏝先に設置された凸状突出部の形状の一例を表した斜視図である。
【図4】本発明の鏝先に設置された凸状突出部の形状の一例を表した斜視図である。
【図5】本発明の鏝先を使用した半田付けの実施状況を表した概要図(断面図)である。
【図6】本発明において凸状突出部が大きくなり、加熱ブロックと一体になった形状を表した概略図(断面図)である。
【図7】本発明において凸状突出部が大きくなり、加熱ブロックと一体になった形状を表した概略図(断面図)である。
【図8】本発明の半田鏝において、形状の相違(貫通孔の周りの肉厚の相違)を表した概略図(断面図、単位mm)である。
【図9】図8の2種の半田鏝における貫通孔内の温度の相違を比較した図である。
【図10】本発明により製造される携帯電話用振動モーターの半田付け箇所の斜視図(単位mm)である。
【図11】図10の振動モーターに微小半田付けするための半田鏝の先端部の形状を表わす斜視図(単位mm)である。
【図12】図12の半田鏝を用いて、被半田付け部分を予備加熱し、半田片を投入して溶解することにより、給電端子と通電端子を半田付けすることを表わした断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を、添付図面に示された好ましい態様を参照して更に詳細に説明する。
本発明の鏝先は、図2〜図4の形状を持つものであり、これを用いて図5に示されるように電子機器の製造が実施される。即ち、図5に示される工程としては、次の4つの工程に分かれる。
(1)半田鏝で被半田部位を予備加熱する。
図5の左図(a)に示されるように、半田鏝の凸部先端面を被半田付け部位(リード線とランド)に接触させ、被半田付け部位を予備加熱する。本工程は、被半田付け部位の熱容量が小さい場合等は省略することもできる。
(2)予備加熱後、半田片を供給する。
図5の中央図(b)に示されるように、半田鏝の貫通孔の上方の開口部から半田片(糸半田片)を供給する。
(3)半田片を貫通孔内で熔解する。
図1で示されるように、半田鏝先端部の貫通孔内で半田片が加熱されると、半田片からフラックスが溶け出し、被半田付け部位を浄化する。被半田付け部位は半田鏝の凸状先端面で加熱されているのでフラックスは凸状先端面と被半田付け部位の間に浸透する。
(4)熔融半田が予備加熱部位へ移動する。
溶解した半田は、予備加熱された部分(温度の高い部分)に移動し、そこで滞留する性質を持っている。そのため、図5の右図(c)に示されるように、熔融半田がフラックスで浄化された被半田付け部位と凸状先端面の間に浸透する。次に半田鏝を上昇させると、浸透した熔融半田が凝固し、ランドとリード線等の半田付けを完了することが出来る。
【0014】
本発明の半田鏝は、600℃程度の温度に耐えることが出来て少なくとも鏝先先端部と貫通孔内面が半田に対して濡れ難い性質を有するものであれば良く、単一材料からなっていても複数部材の組合わせであってもよい。単一部材からなる場合には、セラミック、またはタングステン、ステンレス、チタンなどの非半田濡れ性金属が望ましい。また、セラミックの場合は窒化アルミニウム、炭化ケイ素などの高熱伝導性セラミックが特に望ましい。複数部材の組合わせとしては、銅等の高熱伝導性金属に、セラミック、またはタングステン、ステンレス、チタンなどの非半田濡れ性金属で被覆するか、あるいは貫通孔や鏝先の先端部に非半田濡れ性金属部材のチップや筒を嵌合することができる。
【0015】
本発明の貫通孔の内径は半田片が通過する距離であれば特に限定されない。特に半田が熔解する半田鏝先端部の開口部の孔径が重要であり、開口部の内径は、使用する半田片の径以上であれば良く、使用する半田片の長さ以下であることが好ましい。なお、半田鏝先端部の開口部の孔径が3.5mm以上になると凸状突出部で加熱される基板(ランド)部位と、熔融半田の距離が大きく離れることになり、加熱されたランド部位に熔融半田が流れ込まない場合が起きる。従って、開口部の孔径は、0.5〜3.5mmの範囲が可能である。また、糸半田の長さを大きく超えるような孔径は好ましくないことから、好ましい孔径としては0.6〜2.5mmの径を挙げることができる。より好ましくは、0.6〜1.5mmの径を挙げることができる。
【0016】
本発明は、微細部位の半田付けが可能な方法であり、使用する糸半田の量も、微小半田付けが可能な、約1〜40mgの量が使用できる。より微小な半田付けのために、約1〜10mgの半田量を使用できる。更に、約1〜5mgの範囲の半田付けも可能である。
糸半田の径は、0.3〜1.2mmの範囲のものが汎用されている。従って、使用する糸半田の量によって、糸半田の径と長さを選択することが出来る。例えば、使用半田量が約3mgの場合には、糸半田として径が0.8mm、長さが約1.1mmのものを使用できる。また、糸半田として径が0.6mm、長さが約2.0mmのものも使用可能である。
従って、目的とする微小半田付けのための半田使用量に対応して、適宜、糸半田の径と長さを調整することが出来る。糸半田の径に対応して、半田鏝の貫通孔の内径(特に鏝先の開口部の内径)が適切なものを選択する。糸半田として、径が0.8mmのものを使用する場合には、貫通孔の内径(特に鏝先の開口部の内径)は、径が1.2mmのものを使用することができる。
【0017】
本発明における半田鏝の先端部と凸状突出部先端面の間の距離A(突出部の高さ)は、図1に示されるように、半田片を鏝先の貫通孔に保持し、加熱できる距離が好ましい。Aが大きい場合には、投入した半田片を貫通孔内(凸部近傍)に留めることができない。従って、糸半田片を使用する場合、距離Aは、0.1mm以上であり、1.5mm以下が好適である。また、使用する半田片の長さにもよるが、半田片の長さの2分の1以下であることが好ましい。
本発明は、前述のように微小部分の半田付けが可能な方法であるため、例えば、使用半田量が約3mgの場合には、糸半田として径が0.6〜0.8mm、長さが約1.1〜2.0mmのものが使用可能である。従って、微小半田付けの場合には、距離Aは0.1〜1.0mmが好ましく、より好ましくは0.2〜0.6mmを挙げることができる。
【0018】
本発明における凸状突出部の形状は、予熱部位(半田付け予定部位)の形状(ランド部位とリード線等の形状)に応じて適宜選択することができる。しかし、予熱部位を半田付けに適切な温度まで加熱するため、伝熱のための接触面積が必要である。従って、予熱部位に接触する凸状突出部の接触面積は、約0.1〜9平方mmであることが好ましい。より好ましくは、約0.3〜5平方mmを挙げることができる。
なお、予熱を効果的に行なうため、ランド部位とリード線等との接触性を向上させることが必要である。そのために、例えば図2〜4、図11に示されるような平面形状を取り、接触性を高めることが好ましい。更に上記凸状突出部の接触面にはリード線逃がし溝、図2右図(a)のようなピン逃がし穴を設けてもよい。
【0019】
次に、本発明の半田鏝先端部の形状が貫通孔内の温度に及ぼす影響を検討した。即ち、貫通孔内の温度に影響する半田鏝先端部の太さ(貫通孔の周辺の肉厚の程度)の効果を評価した。図8に示される形状の2種(タイプAとタイプB)の半田鏝を用いて、貫通孔内の温度を熱電対で測定し、半田鏝先端部の形状の相違による貫通孔内温度への影響を評価した。半田鏝の本体部分(加熱ブロック)を約520℃に設定すると、貫通孔内の温度は、図9に示されるように半田鏝先端部からの距離に比例して温度が上昇した。鏝先の開口部では、タイプB(b)の半田鏝先が細いため、タイプA(a)よりも約35℃低い温度であった。しかし、予想した程には、半田鏝先端部の形状の影響を受けることはなかった。
以上のことから、本発明の半田鏝の凸状突出部表面温度は、図9のデータを外挿することにより、凸状突出部の高さ(距離A)により影響を受け、鏝先の開口部より、約20〜50℃低いことが推定された。従って、被半田付け部分への必要な予備加熱時間は、凸状突出部の接触面積と貫通孔開口部の温度に基いて適宜長くも短くもすることが出来る。
【0020】
本発明の被半田付け部分とは、電子機器の配線基板に挿入された金属ピンまたはリード線、および電子機器の配線基板(ランド)のことを言う。電子機器の配線基板の材質によっては、高温の予備加熱では変質するものもあるので、材質の耐熱性を勘案して、半田鏝の接触時間と半田鏝本体の温度を適宜設定することが出来る。また、金属ピンやリード線が配線基板表面に突出して、本発明の凸状突出部が充分ランドに接触し難い場合には、凸状突出部の接触面にリード線の逃がし溝、ピン逃がし穴を設けて、ランドへの接触性を向上させることができる。
【0021】
本発明の半田付け製造方法のもう一つの態様としては、図6や図7に示される半田付け製造方法がある。使用する半田鏝としては、図6のようにセラミック、またはタングステン、ステンレス、チタンなどの非半田濡れ性金属で作製された真直ぐな管状部材部分が、高熱伝導性セラミックや高熱伝導性金属のブロックの側壁に付着した形で作製されている。このブロックは、管状部材に熱を伝達する役割のものである。また、図7のように加熱ブロックと一体になっていてもよい。管状部材の先端とブロックの先端の間の距離が、前述の距離Aと同じものである。
まず、ブロックの先端部を被半田付け部分に接触させ、予備加熱する。その後、管状部材の上部から半田片を投入し、管状部材の下部で半田片を熔解させる。熔解した半田は、ブロックで予備加熱された部分に流れて行き、その場所で凝固、固化して、半田付けが完了することになる。従って、被半田付け部分を予備加熱するために、接触させるブロックの先端部は、前述の半田鏝の凸状突起部分と同じ形状を持つものである。また、ブロックの材質も、例えば窒化アルミニウム、炭化ケイ素などの高熱伝導性セラミックや、例えばセラミック、またはタングステン、ステンレス、チタンなどの非半田濡れ性金属で先端部が被覆された銅などの高熱伝導性金属を使用することができる。
【0022】
更に、図7では、非半田濡れ性金属で作製された真直ぐな管状部材部分が、加熱ブロックの側壁に付着せず、離れている。そのため、管状部材は加熱されることがなく、管状部材の中で半田片が熔解することもない。管状部材は半田片を誘導して加熱ブロックに接触させる役割を果たしている。即ち、加熱ブロックの先端部で被半田付け部分を図7のように加熱し、半田片を管状部材の上部から投入する。半田片は、管状部材の内部を下って、加熱ブロックに接触し、そこで熔解されて、加熱ブロックで予備加熱された部分に浸透して行く。次いで、加熱ブロックを引き上げると、流れ込んだ熔融半田が固化して、半田付けが完了する。
使用される管状部材は、前述と同じセラミック、またはタングステン、ステンレス、チタンなどの非半田濡れ性金属で作製されており、加熱ブロックには、例えば窒化アルミニウム、炭化ケイ素などの高熱伝導性セラミックや、例えばセラミック、またはタングステン、ステンレス、チタンなどの非半田濡れ性金属で先端部が被覆された銅などの高熱伝導性金属が使用されている。
【0023】
加熱ブロックとは、図7に示されるように発熱体を埋め込んだブロックのことを言う。発熱体は、公知の汎用技術を適用することが出来、例えばセラミックヒーター等を使用することができる。発熱体による加熱温度としては、約550℃が好ましく、被半田付け部分の熱容量と、該当する回路基板の熱安定性を考慮して、更に温度を下げることが出来る。
しかしながら、貫通孔の存在する半田鏝先端部の温度が半田片の熔解温度以上でなければならない。従って、好ましくは発熱ブロックの温度は、約500〜550℃を挙げることができる。

【実施例】
【0024】
以下、実施例を示して本発明をより具体的に説明する。但し、本発明は以下の実施例に何等限定されるものではない。
【0025】
(実施例1)携帯電話の振動モーターの微小半田付け
図11の形状の窒化アルミニウム焼結体で形成され、内径1.3mmの半田鏝を使用する。凸状突出部接触面の面積は約0.4平方mm(0.6×0.6mm)である。そして、図10の振動モーターの給電端子と通電端子を半田付けするため、図12に示すように通電端子と半田鏝の凸状突出部を接触させ、給電端子が貫通孔の中に納まるように調節する。次いで、直径0.8mm、長さ1.1mmの共晶半田の糸半田片を貫通孔内に供給する。半田鏝先端開口部の温度を約370℃に保持して半田付けを行なうと、熔融半田が大きく広がることなく、予備加熱された部分と給電端子と含むようにして半田付けすることが出来る。
比較のために、図11の形状で凸状突出部がない半田鏝で、同様に半田付けをおこなったところ、熔融半田が広がってしまい、半田付け箇所に必要な半田量を確保することができなかった。即ち、半田付けの強度が不足する傾向にあった。

【産業上の利用可能性】
【0026】
本発明の製造方法を使用することにより、携帯電話機等の精密微細機器の半田付けが精度よく良好に実施できる。従って、本発明により、半田付けの多用される軽量で、小型の電子機器を品質よく製造することが出来る。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
次の形状の半田鏝を用いて、
a)貫通孔を有する筒状半田鏝であって、
b)半田鏝の先端部と貫通孔の内面がセラミック、タングステン、ステンレス又はチタンの材質で形成され、
c)半田鏝の先端部に凸状の突出部が設置されており、
d)上記凸状突出部と半田鏝先端部の間の距離が0.1〜1.5mmであり、
e)被半田付け部材と電子機器基板(ランド)の被半田付け部位に接触する、上記凸状突出部の接触面の面積が0.1〜9平方mmである、
上記凸突出部の接触面を、被半田付け部材と上記半田付け予定部位に接触させて予備加熱し、
糸半田片を貫通孔に投入して、鏝先の貫通孔内で熔融させ、
熔融半田を上記凸突出部で予熱加熱された部位に流入させ、
上記流入部位で凝固させて、被半田付け部材を基板(ランド)に半田付けする
ことを特徴とする、電子機器の製造方法。
【請求項2】
筒状半田鏝先端部の貫通孔の内径が0.5〜3.5mmであることを特徴とする、請求項1の電子機器の製造方法。
【請求項3】
上記糸半田片が1〜5mgであることを特徴とする、請求項1又は2に記載の電子機器の製造方法。
【請求項4】
上記半田鏝先端部の貫通孔の内径が0.6〜1.5mmであり、
上記凸状突出部の接触面の面積が0.3〜5平方mmであり、
上記凸状突出部と半田鏝先端部の間の距離が0.3〜1.0mmである
ことを特徴とする、請求項3の電子機器の製造方法。
【請求項5】
鏝先に凸状の突出部と貫通孔を有する半田鏝であって、
半田鏝の先端部と貫通孔の内面がセラミック、タングステン、ステンレス又はチタンの材質で形成され、
上記半田鏝先端部の貫通孔の内径が0.6〜1.5mmであり、
上記凸状突出部の接触面の面積が0.3〜5平方mmであり、
上記凸状突出部と半田鏝先端部の間の距離が0.3〜1.0mmである
ことを特徴とする、糸半田片用の半田鏝。
【請求項6】
鏝先の先端部と凸状の突出部の間の距離が、0.3〜1.0mmである、請求項5記載の半田鏝。
【請求項7】
上記半田鏝先端部の貫通孔の内径が1〜1.5mmである、請求項5又は6記載の半田鏝。
【請求項8】
上記凸状の突出部の接触表面に、リード線逃がし溝、ピン逃がし穴を設けていることを特徴とする、請求項5〜7のいずれかに記載の半田鏝。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2010−272605(P2010−272605A)
【公開日】平成22年12月2日(2010.12.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−121505(P2009−121505)
【出願日】平成21年5月20日(2009.5.20)
【出願人】(502366262)
【Fターム(参考)】