説明

レイアウト検証装置及びレイアウト検証方法

【課題】汎用性が高く、効率的に検証処理を行うことができるレイアウト検証技術を提供する。
【解決手段】レイアウトデータがデザインルールに反するか否かの検証を行うに際し、所定の設計値に基づき、レイアウトデータ(1)を、擬似エラー領域内のものとそれ以外のものとに区分し、通常のデザインルール(4)からの許容範囲内のものとして擬似エラー領域用のデザインルール(13)を作成し、擬似エラー領域外のレイアウトデータについては通常のデザインルールで検証を行い、擬似エラー領域内のレイアウトデータについては擬似エラー領域用のデザインルールで検証を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体集積回路の製造に用いるマスクパターンについてのレイアウト検証を行うレイアウト検証装置及びレイアウト検証方法に関する。
【背景技術】
【0002】
レイアウト検証とは、製作されたマスクパターンが、半導体製造プロセス上の不具合又は製品仕様上の不具合を生じさせるおそれがあるかどうかについてレイアウト上の検証を行うことである。レイアウトとは、具体的には、マスクパターンに描かれたパターンの形状、幅、隙間などをいう。
【0003】
半導体製造技術では、所定のルールファイルに基づき、規定されたルールに違反するかどうかを判定することよってレイアウト検証がなされる。しかしながら、このようなレイアウト検証に際し、エラーでないとみなしても何ら問題のない擬似エラーが発生するという問題がある。そこで、擬似エラーについてはエラーとせずにパスさせ、真のエラーのみを抽出する手段が種々講じられている(たとえば、特許文献1)。
【0004】
また、擬似エラー発生領域を特定する規則を設けて全体のレイアウトの中から擬似エラー発生領域を抽出し、この領域のみについて、他の領域とは異なる緩やかなルールでレイアウト検証を行うようにした技術も提案されている(たとえば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平8−101859号公報
【特許文献2】特開2000−99558号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述のように、擬似エラーについてはパスさせ、真のエラーのみを抽出する手段を講ずるにしても、レイアウトパターンには様々な種類のものが存在する。したがって、個々のパターンに対応した解決策は講じられているが、汎用的な解決手段の構築は困難である。
【0007】
また、上述の擬似エラー発生領域について緩やかなルールでレイアウト検証を行う技術によれば、そのようなルールによる検証と通常のルールによる検証とを併せて2回の検証を行う必要があるため、レイアウト検証の処理が冗長となる。
【0008】
また、一度、通常のルールでレイアウト検証を行い、疑似エラーを含有しているエラーデータを作成し、設計システム上で疑似エラー領域用のパラメータを指定するやり方も考えられるが、このような方法によれば、ミスの発生を誘起したり、操作が煩雑になったりするなど、問題が多い。
【0009】
本発明の目的は、かかる従来技術の問題点に鑑み、汎用性が高く、効率的に検証処理を行うことができるレイアウト検証技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この目的を達成するため、本発明のレイアウト検証装置は、レイアウトデータがデザインルールに反するか否かの検証を行うレイアウト検証装置であって、通常の第1デザインルールとは異なる第2デザインルールが適用される擬似エラー領域を特定するために用意された設計値に基づき、レイアウトデータを、該擬似エラー領域内のレイアウトデータと該擬似エラー領域外のレイアウトデータとに区分するデータ区分手段と、前記第2デザインルールを特定するために定められた前記第1デザインルールからの許容範囲に基づき、該第2デザインルールを該許容範囲内のものとして作成するルール作成手段と、前記擬似エラー領域外のレイアウトデータが前記第1デザインルールに反するか否かを検証し、前記擬似エラー領域内のレイアウトデータが前記第2デザインルールに反するか否かを検証する検証手段とを具備することを特徴とする。
【0011】
これによれば、擬似エラー領域を設計値に基づいて自動的に特定し、レイアウトデータを擬似エラー領域内のものとそれ以外の領域内のものとに区分し、各領域内のレイアウトデータについてそれぞれ異なるデザインルールを適用してルール違反の有無を検証するようにしたため、従来のように、擬似エラー領域についての緩やかなデザインルールによる検証と、通常のデザインルールによる検証とを重複して行う必要がないので、効率的に検証を行うことができる。
【0012】
また、擬似エラー領域とそれ以外の領域とで異なるデザインルールを適用するようにしたため、擬似エラー領域内のレイアウトデータに通常の第1デザインルールを適用することによって発生する擬似エラーを排除することができる。また、設計値に応じて、異なる第2デザインルールを作成し、異なる擬似エラー領域を抽出することができるので、種々のレイアウトデータについての検証に対応することができる。
【0013】
本発明においては、前記擬似エラー領域を特定するために用意された設計値は、円弧形状のレイアウトパターンに係るレイアウトデータを含む領域を擬似エラー領域として特定するためのものであってもよい。これによれば、絶縁ゲート型バイポーラトランジスタ等の高耐圧デバイスにおけるガードリング部のレイアウトデータについて、四隅の円弧部を擬似エラー領域として特定し、検証を行うことができる。
【0014】
本発明においてはさらに、前記設計値は、第1の半径の円弧形状及び第2の半径の円弧形状の各レイアウトパターンに係るレイアウトデータを含む各領域をそれぞれ第1及び第2の擬似エラー領域として特定するための第1及び第2の設計値であり、前記データ区分手段は、前記第1及び第2設計値に基づき、レイアウトデータを、前記第1擬似エラー領域内のレイアウトデータと、前記第2擬似エラー領域内のレイアウトデータと、該第1及び第2擬似エラー領域以外のレイアウトデータとに区分するものであり、前記第1デザインルールについての許容範囲は、前記第1及び第2設計値にそれぞれ対応する第1及び第2の許容範囲であり、前記ルール作成手段は、前記第1及び第2許容範囲に基づき、前記第2デザインルールとして、それぞれ前記第1擬似エラー領域用のデザインルール及び第2擬似エラー領域用のデザインルールを作成するものであり、前記検証手段は、前記擬似エラー領域内のレイアウトデータについての検証として、前記第1擬似エラー領域内のレイアウトデータについて前記第1擬似エラー領域用のデザインルールを適用した検証を行い、前記第2擬似エラー領域内のレイアウトデータについて前記第2擬似エラー領域用のデザインルールを適用した検証を行うものであってもよい。
【0015】
これによれば、異なるレイアウトパターンに係るレイアウトデータのそれぞれについての擬似エラー領域を抽出し、それぞれの擬似エラー領域について異なるデザインルールでルールチェックを行うようにしたため、各レイアウトパターンの擬似エラー領域ごとに異なるデザインルールが適用される場合であっても、検証の対象となる領域を重複させることなく効率的に検証を行うことができる。また、一度、通常のルールでレイアウト検証を行った結果を見なくても、擬似エラー領域を区分することができるので、より効率的に検証を行うことができる。
【0016】
本発明のレイアウト検証方法は、レイアウトデータがデザインルールに反するか否かの検証を行うレイアウト検証方法であって、通常の第1デザインルールとは異なる第2デザインルールが適用される擬似エラー領域を特定するために用意された設計値に基づき、レイアウトデータを、該擬似エラー領域内のレイアウトデータと該擬似エラー領域外のレイアウトデータとに区分するデータ区分工程と、前記第2デザインルールを特定するために定められた前記第1デザインルールからの許容範囲に基づき、該第2デザインルールを該許容範囲内のものとして作成するルール作成工程と、前記擬似エラー領域外のレイアウトデータが前記第1デザインルールに反するか否かを検証し、前記擬似エラー領域内のレイアウトデータが前記第2デザインルールに反するか否かを検証する検証工程とを具備することを特徴とする。
【0017】
これによれば、本発明のレイアウト検証装置の場合と同様に、効率的に検証を行うことができ、擬似エラーを排除し、また、種々のレイアウトデータについての検証に対応することができる。
【0018】
本発明のレイアウト検証方法においては、前記擬似エラー領域を特定するために用意された設計値は、円弧形状のレイアウトパターンに係るレイアウトデータを含む領域を擬似エラー領域として特定するためのものであってもよい。これによれば、本発明のレイアウト検証装置の場合と同様に、高耐圧デバイスにおけるガードリング部のレイアウトデータについて、四隅の円弧部を擬似エラー領域として特定し、検証を行うことができる。
【0019】
本発明のレイアウト検証方法においては、さらに、前記設計値は、第1の半径の円弧形状及び第2の半径の円弧形状の各レイアウトパターンに係るレイアウトデータを含む各領域をそれぞれ第1及び第2の擬似エラー領域として特定するための第1及び第2の設計情報であり、前記データ区分工程では、前記第1及び第2設計情報に基づき、レイアウトデータを、前記第1擬似エラー領域内のレイアウトデータと、前記第2擬似エラー領域内のレイアウトデータと、該第1及び第2擬似エラー領域以外のレイアウトデータとに区分し、前記第1デザインルールについての許容範囲は、前記第1及び第2設計値にそれぞれ対応する第1及び第2の許容範囲であり、前記ルール作成工程では、前記第1及び第2許容範囲に基づき、前記第2デザインルールとして、それぞれ前記第1擬似エラー領域用のデザインルール及び第2擬似エラー領域用のデザインルールを作成し、前記検証工程では、前記擬似エラー領域内のレイアウトデータについての検証として、前記第1擬似エラー領域内のレイアウトデータについて前記第1擬似エラー領域用のデザインルールを適用した検証を行い、前記第2擬似エラー領域内のレイアウトデータについて前記第2擬似エラー領域用のデザインルールを適用した検証を行うものであってもよい。
【0020】
これによれば、本発明のレイアウト検証装置の場合と同様に、各レイアウトパターンの擬似エラー領域ごとに異なるデザインルールが適用される場合であっても、検証の対象となる領域を重複させることなく効率的に検証を行うことができる。また、検証の対象となる領域毎に自動的に領域分けが行われ、それぞれの領域に対応したデザインルールが適用されるため、より効率的に検証を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の一実施形態に係るレイアウト検証装置の構成を示すブロック図である。
【図2】図1の装置において、レイアウトデータが区分される様子を示す図である。
【図3】図1の装置を用いたレイアウト検証処理を示すフローチャートである。
【図4】図1の装置によるルールチェックの対象となる高耐圧デバイスのガードリング部についてのレイアウトデータに係るレイアウトパターンの一部を示す図である。
【図5】図1の装置において、レイアウトデータが区分される様子の別の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、図面を用いて本発明の実施形態について説明する。図1は本発明の一実施形態に係るレイアウト検証装置の構成を示すブロック図である。このレイアウト検証装置はCADシステムにおいてデザインルールチェックツール(以下、「DRCツール」という。)10として組み込まれている。
【0023】
DRCツール10は、CADによりデザインされたレイアウトデータ1が、デザインルールに違反するか否かを検証してその結果を示す検証結果データ2を出力する。そして、ユーザは検証結果データ2に基づき、必要に応じてレイアウトデータ1を修正して、再度DRCツール10を起動させることにより、最終的には違反のないことが検証されたレイアウトデータ3を得ることができる。
【0024】
本実施形態においては、レイアウトデータ1として、IGBT(絶縁ゲート型バイポーラトランジスタ)等の高耐圧デバイスにおけるガードリング部のレイアウトデータが用いられ、検証の対象とされる。デザインルールは、集積回路の設計における素子や配線の寸法を規定するものであり、ガードリング部のレイアウトデータの場合、ガードリングの幅や間隔を規定する。
【0025】
レイアウトデータ1の中には、ガードリングにおける曲率が付与された角部のように、使用するCADシステムにおいて所定のグリッド間隔以下の座標が入力できないために、ガードリングの幅が正確に表現できない部分のデータも存在する。そのようなレイアウトデータの中には、通常のデザインルールを適用した場合にはルールに違反し、検証の結果としてはエラーと判定されるが、エラーとはせずに許容し得るようなレイアウトデータ、つまり擬似的にエラーとなるレイアウトデータも存在する。
【0026】
そこで、DRCツール10においては、このような擬似的エラーが発生し得るレイアウトデータが存在する領域を擬似エラー領域とし、擬似エラー領域内のレイアウトデータについては、通常のデザインルールよりも緩やかなデザインルールを適用することにより、検証結果データ2には擬似的エラーを示すデータが含まれないようにしている。
【0027】
DRCツール10は、図1に示すように、デザインルールファイル4と、擬似エラー領域及び領域限定ルールの定義ファイル5とに基づいて、擬似エラーに対応したデザインルールファイル11を作成する擬似エラー領域ルール抽出部12を備える。デザインルールファイル4には、レイアウトデータ1のレイアウト検証に適用される通常のデザインルールが格納されている。擬似エラー領域ルール抽出部12により、本発明におけるルール作成手段が構成される。
【0028】
定義ファイル5には擬似エラー領域を定義する情報として、レイアウトデータ1に係る回路チップのチップサイズやガードリングの曲線部の半径などの設計値が記録される。また、レイアウトデータ1に係る擬似エラー領域に限定して適用される限定的デザインルールを定義する情報として、通常のデザインルールからの許容範囲が記録される。この許容範囲の範囲内で通常のデザインルールを変更することにより、限定的デザインルールを得ることができる。
【0029】
これらの定義ファイル5に記録される設計値及び許容範囲の選択は、レイアウト検証の対象となるレイアウトデータ1に対応させて、ユーザにより行われる。定義ファイル5への設計値の記録は、設計仕様が格納された設計仕様ファイル6の内容に基づいて行うことができる。許容範囲の記録は、プロセス仕様が記録されたプロセス仕様ファイル7の内容に基づいて行うことができる。
【0030】
擬似エラー領域ルール抽出部12はデザインルールファイル4に対し、擬似エラー領域用ルール13及び擬似エラー領域抽出ルール14を追加することにより擬似エラー対応デザインルールファイル11を作成する。擬似エラー領域用ルール13は、デザインルールの適用領域についてのルールを、デザインルールファイル4に基づくレイアウト検証から擬似エラー領域を除外するように改変したものと、擬似エラー領域について適用する限定的デザインルールとを含む。
【0031】
擬似エラー領域抽出ルール14は、定義ファイル5に記録されている設計値に基づいて擬似エラー領域を特定するためのルールである。つまり、定義ファイル5に設計値として記録されているチップサイズ及びガードリングの曲線部の半径に対してこのルールを適用することにより、そのガードリングのレイアウトデータにおける擬似エラー領域として、そのレイアウトパターンにおける四隅の曲線部を含む領域が特定される。
【0032】
DRCツール10はまた、擬似エラー領域抽出ルール14と、レイアウトデータ1とに基づいて擬似エラー領域付加レイアウトデータ15を生成する擬似エラー領域抽出部16を備える。擬似エラー領域付加レイアウトデータ15は、レイアウトデータ1を、擬似エラー領域内のレイアウトデータである擬似エラー領域データ17と、擬似エラー領域以外のレイアウトデータとに区分したものである。擬似エラー領域ルール抽出部12と擬似エラー領域抽出部16とにより、本発明におけるデータ区分手段が構成される。
【0033】
擬似エラー領域抽出部16は、定義ファイル5の設計値を擬似エラー領域抽出ルール14に適用することにより、擬似エラー領域を特定する。そして、レイアウトデータ1を、擬似エラー領域データ17と、擬似エラー領域以外のレイアウトデータとに区分して擬似エラー領域付加レイアウトデータ15を生成する。これにより、擬似エラー領域以外のレイアウトデータと、擬似エラー領域内のレイアウトデータとを区別して処理することができるようになる。
【0034】
さらに、DRCツール10は、擬似エラー領域付加レイアウトデータ15内のレイアウトデータが、擬似エラー対応デザインルールファイル11内のデザインルールに違反するかどうかの検証(以下、「ルールチェック」という。)を行うデザインルールチェック部18を備える。デザインルールチェック部18により、本発明における検証手段が構成される。
【0035】
デザインルールチェック部18は、擬似エラー領域付加レイアウトデータ15中の擬似エラー領域データ17については、擬似エラー領域用ルール13を用いてルールチェックを行い、擬似エラー領域データ17以外のレイアウトデータについては、擬似エラー対応デザインルールファイル11における擬似エラー領域用ルール13以外の通常のデザインルールに基づいてルールチェックを行う。
【0036】
ユーザは検証結果を、検証結果データ2により確認することができる。また、検証後のレイアウトデータ3を得ることができる。
【0037】
図2はレイアウトデータ1が擬似エラー領域抽出部16により区分される様子を示す。レイアウトデータ1に基づくレイアウトが、同図(a)のガードリングのレイアウトパターン21を有するものであるとする。
【0038】
この場合、擬似エラー領域抽出部16は、定義ファイル5において設計値として記録されているチップサイズ及びガードリングの曲線部の半径を擬似エラー領域抽出ルール14に適用することにより、擬似エラー領域22を特定する。これにより、擬似エラー領域22以外の非擬似エラー領域23も特定されることになる。
【0039】
ガードリングは、四隅を角状に形成すると、耐圧性が劣化するので、四隅は半径Rの部分円形状となるように設計される。つまりガードリングの四隅には半径Rから計算できる部分円形状の部分が存在する領域が必ず存在し、設計仕様から半径Rを特定すれば、その領域を擬似エラー領域として抽出することができる。擬似エラー領域抽出ルール14に対してガードリングの半径Rを適用することにより、この擬似エラー領域の抽出が行われる。
【0040】
そして、特定された擬似エラー領域22に基づき、擬似エラー領域抽出部16はレイアウトデータ1を、同図(c)に示す擬似エラー領域22内のパターン部分24に対応する擬似エラー領域データ17と、同図(d)に示す非擬似エラー領域23内のパターン部分25のレイアウトデータとに区分し、擬似エラー領域付加レイアウトデータ15を生成する。
【0041】
デザインルールチェック部18は、パターン部分24に対応する擬似エラー領域データ17について、擬似エラー領域用ルール13を用いてルールチェックを行い、パターン部分25のレイアウトデータについて、擬似エラー対応デザインルールファイル11内の通常のデザインルールに基づいてルールチェックを行うことができる。
【0042】
図3は、DRCツール10を用いたレイアウト検証処理を示すフローチャートである。同図に示すように、処理を開始すると、まずユーザが、ステップ31において、設計仕様ファイル6及びプロセス仕様ファイル7に基づき、擬似エラー領域及び領域限定ルール定義ファイル5を作成する。また、ステップ32において、すべての階層のレイアウトデータを有する最上位階層のレイアウトデータ1を作成する。そして、DRCツール10を起動させる。
【0043】
これに応じて、まず擬似エラー領域ルール抽出部12が、ステップ33において、定義ファイル5の設計値に基づき、対応する擬似エラー領域を特定するための領域特定用ルールを抽出する。さらに、定義ファイル5の許容範囲に基づき、該擬似エラー領域について適用されるデザインルールを抽出する。
【0044】
そして、ステップ34において、デザインルールファイル4に対し、抽出した領域特定用ルールを擬似エラー領域抽出ルール14として追加し、抽出したデザインルールを擬似エラー領域用ルール13として追加し、また、デザインルールの適用領域についてのルールを、デザインルールファイル4に基づくレイアウト検証から擬似エラー領域を除外するように改変することにより、擬似エラー対応デザインルールファイル11を作成する。
【0045】
次に、ステップ35において、擬似エラー領域抽出部16が、定義ファイル5の設計値を擬似エラー領域抽出ルール14に適用することにより、擬似エラー領域を抽出する。次に、ステップ36において、擬似エラー領域抽出部16が、抽出した擬似エラー領域に基づき、レイアウトデータ1を、擬似エラー領域データ17と、擬似エラー領域以外のレイアウトデータとに区分して、擬似エラー領域付加レイアウトデータ15を作成する。
【0046】
次に、ステップ37において、デザインルールチェック部18が、作成された擬似エラー領域付加レイアウトデータ15について、ルールチェックを行う。すなわち、擬似エラー領域データ17については擬似エラー領域用ルール13を適用し、擬似エラー領域データ17以外のレイアウトデータについては、擬似エラー対応デザインルールファイル11内の通常のデザインルールを適用し、ルールチェックを行う。また、チェックの結果を、検証結果データ2として出力する。
【0047】
次に、ステップ38において、検証後のレイアウトデータ3が作成される。なお、擬似エラー領域データ17については擬似エラー領域用ルール13を適用してルールチェックが行われているので、検証結果データ2においては、擬似エラーに該当するエラーは記録されない。すなわち、検証結果データ2において計上されたエラーはすべて真のエラーとされる。
【0048】
次に、ステップ39において、検証結果データ2に基づき、真のエラーがあったことを認識した場合には、ユーザは、ステップ32に戻り、最上位階層レイアウトデータを修正し、再度DRCツール10を起動させ、ルールチェックを行うことができる。検証結果データ2において真のエラーがなかった場合には、ユーザは、エラーの無いことが検証されたレイアウトデータ3を取得することができる。
【0049】
図4は、ルールチェックの対象となる高耐圧デバイスのガードリング部についてのレイアウトデータに係るレイアウトパターンの一部を示す。このレイアウトデータに係るガードリングの設計値は、設計仕様ファイル6に記録されており、幅が10μm、間隔が20μm、最外周のガードリングの四隅に位置する部分円形状を有する曲線部の半径Rが270μm、最内周のガードリングの四隅に位置する曲線部の半径Rが150μm、ガードリングの本数が5本である。
【0050】
図4においては、曲線部の半径Rが150μmである最内周のガードリングのパターン41についての1つの曲線部が実線で示されている。R1は曲線部の内側の半径であり、R2は外側の半径である。半径Rは曲線部の内側線についての値であると定義すると、R1は150μm、R2は160μmとなる。図4において、設計値に従った曲線部の外形を破線42で示す。
【0051】
CADにおいては入力可能な最小グリッドの間の点は表現できないため、レイアウトデータは最小グリッド上の点に丸められた値により構成される。したがって、同図のように、グリッドの縦横のラインに沿ったパターン41の直線部の幅は設計値10μmに正確に従ったものとなるが、曲線部の幅は設計値10μmに従ったものとはならず、たとえば図中に示されるように、10μm−16nmとなる。
【0052】
この場合、デザインルールにおいて、ガードリングの幅はすべて10μmでチェックする旨が規定されているとすれば、これを適用して曲線部におけるレイアウトデータのルールチェックを行うと、チェック結果はエラーとなる。このエラーの中には、許容し得る擬似エラーも含まれる。
【0053】
そこで、このような曲線部のレイアウトデータを含む領域を擬似エラー領域43とし、擬似エラー領域43内のレイアウトデータについては、通常のデザインルールによる10μmではなく、それよりも緩やかな擬似エラー領域用のルール、たとえば(10−0.02)μmを適用し、これよりも幅が狭くなければエラーとはしないようにしている。
【0054】
上述の図4のガードリングの設計値に従い、たとえば最内周のガードリングについてルールチェックを行う場合には、設計仕様ファイル6に基づき、チップサイズの値10mm、及び最内周のガードリングにおける曲線部の半径Rの値150μmが定義ファイル5に記録される。また、プロセス仕様ファイル7に基づき、ガードリングの幅又はスペースについてのルールチェックを行う際の許容範囲として±0.02μmが記録される。
【0055】
デザインルールファイル4には、ガードリングのルールチェックに用いるデザインルール「ガードリングの幅はすべて10μmでチェックする」が記録されているものとする。また、レイアウトデータ1には、最内周のガードリングについて作成されたレイアウトデータが記録されているものとする。
【0056】
この状態で、DRCツール10が起動されると、定義ファイル5においてチップサイズ及びガードリングの曲線部の半径Rが記録されていることに基づき、擬似エラー領域ルール抽出部12により、該チップサイズ及び半径Rから曲線部が存在する擬似エラー領域を特定するための擬似エラー領域抽出ルール14がデザインルールファイル4に追加される。
【0057】
また、デザインルールの適用領域についてのルールが、デザインルールファイル4に基づくルールチェックから擬似エラー領域を除外するルールに変更され、定義ファイル5の許容範囲±0.02μに従い、「ガードリングの幅は(10−0.02)μmでチェックする」という擬似エラー領域用ルール13が追加される。これにより擬似エラー対応デザインルールファイル11が生成される。
【0058】
追加された擬似エラー領域抽出ルール14に対しては、擬似エラー領域抽出部16によって定義ファイル5のチップサイズ10mm、及び曲線部の半径150μmが適用され、図4の擬似エラー領域43がチップの四隅について抽出される。そして、再内周のガードリングのレイアウトデータ1が、擬似エラー領域内のデータ17と、擬似エラー領域以外のデータとに区分され、擬似エラー領域付加レイアウトデータ15が作成される。
【0059】
作成された擬似エラー領域付加レイアウトデータ15内の擬似エラー領域内データ17については、デザインルールチェック部18により、「ガードリングの幅は(10−0.02)μmでチェックする」という擬似エラー領域用ルール13が適用され、ルールチェックが行われる。また、擬似エラー領域内データ17以外のデータについては、「ガードリングの幅は10μmでチェックする」という通常のルールが適用され、ルールチェックが行われる。
【0060】
図5は、レイアウトデータ1が擬似エラー領域抽出部16により区分される様子の別の例を示す。この場合、定義ファイル5における設計値として、チップサイズに加え、隣接する2つのガードリングにおける曲線部の半径Rの値が記録されており、かつ該2つのガードリングのレイアウトデータのそれぞれについて、幅又はスペースに関するルールチェックを行う際の許容範囲が記録されている。
【0061】
この例では、擬似エラー領域抽出部16は、定義ファイル5において設計値として記録されているチップサイズ及び2種類の曲線部の半径Rを擬似エラー領域抽出ルール14に適用することにより、図5(a)に示すように、各ガードリングのパターン51及び52に対応する擬似エラー領域53及び54を特定する。これにより、擬似エラー領域53及び54以外の非擬似エラー領域55も特定されることになる。
【0062】
そして、特定された擬似エラー領域53及び54に基づき、擬似エラー領域抽出部16はレイアウトデータ1を、図5(b)に示す擬似エラー領域53内のパターン部分56に対応する擬似エラー領域データと、図5(c)に示す擬似エラー領域54内のパターン部分57に対応する擬似エラー領域データと、図5(d)に示す非擬似エラー領域55内のパターン部分58のレイアウトデータとに区分し、擬似エラー領域付加レイアウトデータ15を生成する。この場合、擬似エラー領域データ17には、擬似エラー領域53の擬似エラー領域データ及び擬似エラー領域54の擬似エラー領域データが含まれる。
【0063】
この場合、擬似エラー領域ルール抽出部12は、擬似エラー領域用ルール13として、各ガードリングについての許容範囲に基づき、擬似エラー領域53及び54のそれぞれについての擬似エラー領域用ルールをデザインルールファイルに対して追加する。また、擬似エラー領域抽出ルール14としては、チップサイズ及び2種類の曲線部の半径Rに基づき、擬似エラー領域53及び54を特定するためのルールを追加する。
【0064】
このとき、外側の曲線部の半径は、設計仕様に基づいて定義するようにしてもよい。すなわち、内側の曲線部の半径がRi、曲線部の幅がW、両曲線部の間の間隔がSであるとすれば、外側の曲線部の半径Roを、Ro=Ri+W+Sにより求めるようにしてもよい。また、本実施例では2種類の曲線部を対象とした場合の例を示しているが、これに限定されず、対象とする曲線部は3種類以上であってもよい。
【0065】
また、デザインルールチェック部18は、擬似エラー領域データ17内の擬似エラー領域53のデータについて、擬似エラー領域用ルール13における擬似エラー領域53用の擬似エラー領域用ルールを適用してルールチェックを行う。擬似エラー領域54のデータについては、擬似エラー領域54用の擬似エラー領域用ルールを適用してルールチェックを行う。擬似エラー領域付加レイアウトデータ15における擬似エラー領域データ17以外のデータについては、擬似エラー対応デザインルールファイル11における通常のデザインルールを適用して検証を行う。
【0066】
本実施形態によれば、レイアウトデータを擬似エラー領域内のものと非擬似エラー領域内のものとに区分し、各領域内のレイアウトデータについてそれぞれ異なるデザインルールでルールチェックを行うようにしたため、従来のように、擬似エラー領域についての緩やかなルールでのルールチェックと、通常のルールによるルールチェックとを重複して行う必要がないので、効率的にルールチェックを行うことができる。
【0067】
また、異なるレイアウトパターンに係るレイアウトデータのそれぞれについての擬似エラー領域を抽出し、それぞれの擬似エラー領域について異なるデザインルールでルールチェックを行うようにしたため、各レイアウトパターンの擬似エラー領域ごとに異なるデザインルールが適用される場合であっても、ルールチェックの対象とする領域を重複させることなく効率的にルールチェックを行うことができる。
【0068】
また、擬似エラー領域及びそれ以外の領域ごとに異なるデザインルールを適用するようにしたため、擬似エラー領域に通常のデザインルールを適用することによって発生する擬似エラーを排除することができる。
【0069】
また、検証の対象となる領域毎に自動的に領域を区分し、それぞれの領域に対応したデザインルールを適用するようにしたため、効率的に検証を行うことができる。
【0070】
さらに、設計仕様等に応じて異なる擬似エラー領域用ルール13を作成し、異なる擬似エラー領域抽出ルール14を使用して擬似エラー領域を抽出することができるので、種々のレイアウトデータについて、通常のデザインルールから適用するデザインルールへ緩やかにする幅を最小限にしながら、対応することができる。
【符号の説明】
【0071】
4…デザインルールファイル、5…擬似エラー領域及び領域限定ルール定義ファイル、11…擬似エラー対応デザインルールファイル、12…擬似エラー領域ルール抽出部、13…擬似エラー領域用ルール、14…擬似エラー領域抽出ルール、16…擬似エラー領域抽出部、15…擬似エラー領域付加レイアウトデータ、17…擬似エラー領域データ、18…デザインルールチェック部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
レイアウトデータがデザインルールに反するか否かの検証を行うレイアウト検証装置であって、
通常の第1デザインルールとは異なる第2デザインルールが適用される擬似エラー領域を特定するために用意された設計値に基づき、レイアウトデータを、該擬似エラー領域内のレイアウトデータと該擬似エラー領域外のレイアウトデータとに区分するデータ区分手段と、
前記第2デザインルールを特定するために定められた前記第1デザインルールからの許容範囲に基づき、該第2デザインルールを該許容範囲内のものとして作成するルール作成手段と、
前記擬似エラー領域外のレイアウトデータが前記第1デザインルールに反するか否かを検証し、前記擬似エラー領域内のレイアウトデータが前記第2デザインルールに反するか否かを検証する検証手段とを具備することを特徴とするレイアウト検証装置。
【請求項2】
前記擬似エラー領域を特定するために用意された設計値は、円弧形状のレイアウトパターンに係るレイアウトデータを含む領域を擬似エラー領域として特定するためのものであることを特徴とする請求項1に記載のレイアウト検証装置。
【請求項3】
前記設計値は、第1の半径の円弧形状及び第2の半径の円弧形状の各レイアウトパターンに係るレイアウトデータを含む各領域をそれぞれ第1及び第2の擬似エラー領域として特定するための第1及び第2の設計値であり、
前記データ区分手段は、前記第1及び第2設計値に基づき、レイアウトデータを、前記第1擬似エラー領域内のレイアウトデータと、前記第2擬似エラー領域内のレイアウトデータと、該第1及び第2擬似エラー領域以外のレイアウトデータとに区分するものであり、
前記第1デザインルールについての許容範囲は、前記第1及び第2設計値にそれぞれ対応する第1及び第2の許容範囲であり、
前記ルール作成手段は、前記第1及び第2許容範囲に基づき、前記第2デザインルールとして、それぞれ前記第1擬似エラー領域用のデザインルール及び第2擬似エラー領域用のデザインルールを作成するものであり、
前記検証手段は、前記擬似エラー領域内のレイアウトデータについての検証として、前記第1擬似エラー領域内のレイアウトデータについて前記第1擬似エラー領域用のデザインルールを適用した検証を行い、前記第2擬似エラー領域内のレイアウトデータについて前記第2擬似エラー領域用のデザインルールを適用した検証を行うものであることを特徴とする請求項2に記載のレイアウト検証装置。
【請求項4】
レイアウトデータがデザインルールに反するか否かの検証を行うレイアウト検証方法であって、
通常の第1デザインルールとは異なる第2デザインルールが適用される擬似エラー領域を特定するために用意された設計値に基づき、レイアウトデータを、該擬似エラー領域内のレイアウトデータと該擬似エラー領域外のレイアウトデータとに区分するデータ区分工程と、
前記第2デザインルールを特定するために定められた前記第1デザインルールからの許容範囲に基づき、該第2デザインルールを該許容範囲内のものとして作成するルール作成工程と、
前記擬似エラー領域外のレイアウトデータが前記第1デザインルールに反するか否かを検証し、前記擬似エラー領域内のレイアウトデータが前記第2デザインルールに反するか否かを検証する検証工程とを具備することを特徴とするレイアウト検証方法。
【請求項5】
前記擬似エラー領域を特定するために用意された設計値は、円弧形状のレイアウトパターンに係るレイアウトデータを含む領域を擬似エラー領域として特定するためのものであることを特徴とする請求項4に記載のレイアウト検証方法。
【請求項6】
前記設計値は、第1の半径の円弧形状及び第2の半径の円弧形状の各レイアウトパターンに係るレイアウトデータを含む各領域をそれぞれ第1及び第2の擬似エラー領域として特定するための第1及び第2の設計情報であり、
前記データ区分工程では、前記第1及び第2設計情報に基づき、レイアウトデータを、前記第1擬似エラー領域内のレイアウトデータと、前記第2擬似エラー領域内のレイアウトデータと、該第1及び第2擬似エラー領域以外のレイアウトデータとに区分し、
前記第1デザインルールについての許容範囲は、前記第1及び第2設計値にそれぞれ対応する第1及び第2の許容範囲であり、
前記ルール作成工程では、前記第1及び第2許容範囲に基づき、前記第2デザインルールとして、それぞれ前記第1擬似エラー領域用のデザインルール及び第2擬似エラー領域用のデザインルールを作成し、
前記検証工程では、前記擬似エラー領域内のレイアウトデータについての検証として、前記第1擬似エラー領域内のレイアウトデータについて前記第1擬似エラー領域用のデザインルールを適用した検証を行い、前記第2擬似エラー領域内のレイアウトデータについて前記第2擬似エラー領域用のデザインルールを適用した検証を行うことを特徴とする請求項5に記載のレイアウト検証方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−221398(P2012−221398A)
【公開日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−89025(P2011−89025)
【出願日】平成23年4月13日(2011.4.13)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】