説明

レバー操作装置

【課題】操作レバーのガタつきを極力低減させることができる節度機構を備えたレバー操作装置を提供する。
【解決手段】ケース12内に、節度谷22a〜22d及び節度山23a〜23dを有する節度部材14を左右方向にスライド可能に設け、節度部材14をスプリング15により操作レバー13側へ付勢し、操作レバー13の揺動先端18を節度部材14の節度谷22a〜22dに係合させる。ケース12に節度部材14のスライド方向へ延びるスライド溝16を設け、節度部材14にスライド溝16の延び方向に沿って延びスライド溝16に対して相対的に摺動可能な凸条部21aを設けた。この構成により、スライド溝16と凸条部21aとの係合する部分であるラップ代を長く設けることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回動操作される操作レバーの回動操作時に節度感を付与する節度機構を備えたレバー操作装置に関する。
【背景技術】
【0002】
節度機構を備えたレバー操作装置としては、例えば特許文献1に開示されている。この特許文献1に開示の節度機構は、節度谷及び節度山を有する節度部と、操作レバー内に移動可能に設けられた節度ピースと、この節度ピースを前記節度部側へ付勢するスプリングとを備えた構成となっている。図6は、この種の節度機構を備えたレバー操作装置を簡略化して示している。図6において、ケース1内に操作レバー2の一端部が揺動可能に収納されている。操作レバー2の一端部に設けられた節度ピース収納部3内に、節度ピース4がスライド可能に収納され、節度ピース4を節度ピース収納部3から突出させる方向へ付勢するスプリング5が収納されている。ケース1内には、節度ピース4が係合保持される節度谷7及び該節度谷7に連なった節度山8を有する節度部材6を備えている。
【0003】
上記構成のものの場合、操作レバー2を操作していない状態では、スプリング5により付勢された節度ピース4が、節度谷7に圧接されている。操作レバー2が回動操作されると、節度ピース4は揺動される。このとき、節度ピース4は、節度山8を登るとともに、スプリング5の付勢力に抗して節度ピース収納部3内へ後退する。節度ピース4は、節度山8を乗り越え節度山8を降りるとともに、スプリング5の付勢力により突出する。
【0004】
従って、節度ピース4は、操作レバー2が回動操作される際、スプリング5の付勢力に抗して節度ピース収納部3内で往復のスライド移動を繰り返す。そして、スプリング5により付勢された節度ピース4が節度谷7に係合保持されることによって、操作レバー2は所定の回動位置に保持される。
【0005】
この場合、節度ピース4の外周面と節度ピース収納部3の内周面との間にはクリアランスC1が形成されている。クリアランスC1は、図7に示すように、節度ピース4の前記スライド方向に対する傾き(傾き量:θ)の原因となっている。
【0006】
特許文献1に開示のレバー操作装置は、その構造上、節度ピース収納部3と節度ピース4との重なり部分であるラップ代(図6に示すL1)をクリアランスC1に比して大きく設けることができないため、節度ピース4の前記スライド方向に対する傾き量θが大きくなり、延いては操作レバー2のガタつき量が大きくなるという課題が有った。
そこで、回動操作される操作レバーに節度ピースなどの可動部材を設けないで節度感を生じさせる節度機構を備えたレバー操作装置が考案されている(例えば、特許文献2参照)。
【0007】
特許文献2に開示のレバー操作装置は、特許文献2の図面の図1に示されているように、揺動操作レバーの揺動先端を係合保持する節度谷と、該節度谷に連なる節度山とを備える合成樹脂よりなる節度構成体を有する。このレバー操作装置は、揺動先端が節度山を乗り越えるときに、節度構成体の一部をなす可撓性の頚部と収縮する湾曲部とが撓む等の変形をすることで節度感を生む節度機構を備えている。
【0008】
特許文献2に開示のレバー操作装置は、操作レバーにガタつきを生じさせる部材が備えられていない点で、特許文献1に開示のレバー操作装置が有する上述した課題を解消しているようにも見えるが、しかし、操作レバーのガタつきの低減については考えられていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特許第4181024号公報
【特許文献2】特許第3763365号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上述のように、特許文献2に開示のレバー操作装置は、その節度構成体自体が揺動し、延いては節度谷がガタつき、揺動操作レバーがガタつきやすいという課題を有している。
本発明は上記事情に鑑みてなされたもので、その目的は、操作レバーのガタつきを極力低減させることができる節度機構を備えたレバー操作装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するため、本発明のレバー操作装置は、ケースと、軸方向の中間部が支軸を介して回動可能に設けられ、一端部が前記ケース内に揺動可能に収容されるとともに、他端部が前記ケースから外方へ突出した操作レバーと、前記ケース内に前記操作レバーにおける前記一端部の揺動方向に対して交差する方向へスライド可能に設けられ、前記操作レバーの前記一端部を係合保持する節度谷及び該節度谷に連なった節度山を有する節度部材と、前記節度部材を前記操作レバー側へ付勢するスプリングと、を備え、前記ケース及び前記節度部材のうち、一方に前記節度部材のスライド方向へ延びるスライド溝を設け、他方に前記スライド溝の延び方向に沿って延び前記スライド溝に沿って相対的に摺動可能な凸条部を設けたことを特徴とする。
【0012】
節度谷及び節度山は、スプリングの付勢力により操作レバーの一端部に圧接される。操作レバーが回動操作されると、その一端部はケース内を揺動する。操作レバーの一端部が節度山を登るとともに、節度部材はスプリングを収縮させる方向にスライド移動し、操作レバーの一端部が前記節度山を降りるとともに、節度部材はスプリングが伸張する方向へスライド移動する。従って、操作レバーが回動操作されると、節度部材は、凸条部とスライド溝とを相対的に摺動させながらケース内で往復のスライド移動を繰り返す。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、凸条部が、スライド溝の延び方向に沿って延びるように設けられているため、スライド溝と凸条部とが係合する部分であるラップ代を長く設けることができる。このため、スライド溝と凸条部との間のクリアランスに比してスライド溝と凸条部とのラップ代を充分長くすることができるため、節度部材は、該節度部材のスライド方向に対するガタつき量を極力小さくでき、操作レバーのガタつきを極力低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の一実施例に係るワイパースイッチ装置の縦断側面図
【図2】図1におけるA−A線に沿って切断して示す断面図
【図3】図2におけるB−B線に沿って切断して示す断面図
【図4】節度機構の動作を説明する縦断側面図
【図5】本発明の他の実施例を示す図2相当図
【図6】従来例に係るレバー操作装置を簡略化して示す縦断側面図
【図7】節度ピース部分を示す断面図
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明に係るレバー操作装置を車両、特に自動車のワイパースイッチ装置11に適用した一実施例について図1から図4を参照しながら説明する。
図1には、自動車のワイパースイッチ装置11の全体構成を概略的に示している。このワイパースイッチ装置11は、図示しないステアリングホイールの近傍に装着されている。
【0016】
ワイパースイッチ装置11は、略矩形箱状のケース12、棒状の操作レバー13、ケース12内に収容された節度部材14、及びコイル状のスプリング15を備えて構成されている。
【0017】
ケース12の右側壁12a(図1中右側)には開口部12bが形成されている。ケース12の後側壁12c(図2中左側)の上下方向の略中央部には左側壁12d(図1参照)から開口部12bの近傍にまで達する断面凹状のスライド溝16が左右方向に直線状に延設形成されている。ケース12には、上下方向の略中央部であってスライド溝16の右端と開口部12bとの左右方向の中間部に支軸17が設けられ、支軸17の両端はそれぞれケース12の前後両側壁12e、12c(図2参照)に固定されている。
【0018】
操作レバー13は、その軸方向の中間部が支軸17を介してケース12に回動可能に取り付けられている。操作レバー13は、一端部がケース12内に揺動可能に収納され、他端部はケース12の開口部12bより外方へ突出している。操作レバー13の前記一端部の先端には半球面状の揺動先端18が形成されている。ケース12の外方へ突出している操作レバー13の前記他端部には、ユーザが手指で操作する操作部19が設けられている。
【0019】
節度部材14は、ケース12内に図1中、左右方向に移動可能に収容されている。この節度部材14は、節度部20と、この節度部20から図1において右方向へ延びるガイド凸部21(図3参照)とを一体に備える。節度部20は、略直方体の形状をなし、その右側面20a(操作レバー13側の面)は、複数の節度谷22a〜22d、及び斜面22eと節度山23a〜23dとが交互に連なり全体として、支軸17を中心とした略円弧状に形成されている。
【0020】
ガイド凸部21は、操作レバー13とケース12の後側壁12cとの間に位置し、スライド溝16の延び方向に沿って延設形成されている。図2に示すように、ガイド凸部21には、後側壁12c側へ突出する凸条部21aが形成されていて、この凸条部21aがスライド溝16に摺動可能に挿入されている。凸条部21aは、ガイド凸部21と同様にスライド溝16の延び方向に沿って延びている。凸条部21aの左右方向の長さは、ガイド凸部21と同じ長さになっている(図3のL2参照)。図3に示すように、スライド溝16の内側の側面と凸条部21aとの間には、それぞれクリアランスC2が設けられている。したがって、凸条部21aはスライド溝16に対して相対的に摺動可能となり、節度部20は、ケース12内をスライド溝16に沿って左右方向にスライド可能となる。即ち、節度部材14は、操作レバー13の一端部の揺動方向に対して交差する方向へスライド可能に設けられている。
【0021】
スプリング15は、スライド溝16内にあって、ケース12の左側壁12dと節度部材14のガイド凸部21との間に配設されている。ガイド凸部21、延いては節度部材14は、スプリング15のばね力により右方向に付勢され、節度部20の右側面20aは、操作レバー13の揺動先端18に圧接されている。
【0022】
ワイパースイッチ装置11には、操作レバー13によって操作される図示しないワイパースイッチが設けられており、このワイパースイッチが図示しないワイパー制御装置に電気的に接続されている。このワイパー制御装置は、図4に示すように操作レバー13の回動位置により図示しないフロントワイパー(ワイパーモータ)の動作を制御する。
【0023】
次に、上記構成のものの作用について、主に図3、図4を参照して述べる。
ワイパースイッチ装置11は、前記フロントワイパーの動作を「MIST」「OFF」「INT」「LO」「HI」の5段階に切り替えられるようになっている。操作レバー13が「OFF」の回動位置にあるときは、前記フロントワイパーは所定位置に停止した状態になる。操作レバー13を「INT」、「LO」、「HI」の位置へ回動させると、前記フロントワイパーは、間欠的に動作(INT)したり、低速で連続動作(LO)したり、高速で連続動作(HI)したりする。操作レバー13を「MIST」位置に回動させると、前記フロントワイパーは一往復だけ動作し、操作レバー13に対する操作力を解除すると、操作レバー13は「OFF」位置に自動的に復帰する。
【0024】
操作レバー13を「OFF」から「INT」に回動させると、操作レバー13の揺動先端18は、節度谷22d(OFF)に係合保持された状態から節度山23cを越えて節度谷22c(INT)に移動する。このとき、揺動先端18が節度山23cを越えようとするとき、節度部20は揺動先端18に押圧され左方向へスライド移動し、凸条部21aはスライド溝16内を左方向へ摺動移動する。揺動先端18が節度山23cを越えた状態から節度谷22cに移動するとき、節度部20はスプリング15に付勢され右方向へスライド移動し、凸条部21aはスライド溝16内を右方向へ摺動移動する。
【0025】
操作レバー13を「INT」から「LO」、「HI」の位置へ回動させると、上述と同様に操作レバー13の揺動先端18は、節度谷22c(INT)に係合保持された状態から、節度山23b、23aを越えて節度谷22b(LO)、22a(HI)に移動する。このとき、揺動先端18が節度山23b、23aを越えようとするとき、節度部20は揺動先端18に押圧され左方向へスライド移動し、凸条部21aはスライド溝16内を左方向へ摺動移動する。揺動先端18が節度山23b、23aを越えた状態から節度谷22b(LO)、22a(HI)に移動するとき、節度部20はスプリング15に付勢され右方向へスライド移動し、凸条部21aはスライド溝16内を右方向へ摺動移動する。
【0026】
なお、操作レバー13を「OFF」位置から「MIST」位置へ回動させた場合、操作レバー13の揺動先端18は、節度山23dを越えた後、斜面22eに圧接し、操作レバー13に対する操作力を解除すると、揺動先端18は斜面22eを滑るようにして節度谷22dに係合するようになり、操作レバー13は「OFF」位置へ自動的に復帰する。
【0027】
上述のように、ワイパースイッチ装置11の操作レバー13を回動させ、「MIST」「OFF」「INT」「LO」「HI」のいずれかに切替る度に、節度部20がケース12内を左右にスライド移動し、延いては凸条部21aはスライド溝16内を左右に摺動移動する。
【0028】
このように本構成のものでは、節度部材14の凸条部21aが、ケース12に設けられたスライド溝16の延び方向に沿って延設形成され、スライド溝16に凸条部21aが位置し、スライド溝16と凸条部21aとは係合する。
【0029】
図3に示すように、スライド溝16と凸条部21aとのクリアランスC2に比べて、凸条部21aの長さをL2と充分に長くし、スライド溝16と凸条部21aとの係合する部分であるラップ代を長く設けることができ、操作レバー13が回動操作される度にスライド溝16と凸条部21aとが相対的に摺動するため、凸条部21aのスライド方向に対する傾き量を極力小さくすることができる。即ち、凸条部21a、延いては節度部材14のガタつきを極力小さくすることができ、操作レバー13のガタつきを極力低減できる。
【0030】
なお、本発明は上記し且つ図面に示した実施例にのみ限定されるものではなく、要旨を逸脱しない範囲内で適宜変更して実施し得る。
例えば、上述した実施例では、ケース12にスライド溝16を設け、節度部材14のガイド凸部21に凸条部21aを設けたが、図5に示す他の実施例のように、それらを逆に設けてもよい。即ち、節度部材14のガイド凸部21に該節度部材14のスライド方向に延びるスライド溝31を設け、ケース12に、スライド溝31の延び方向に沿って延びスライド溝31に摺動可能に係合する凸条部32を設ける構成としてもよい。この場合も、スライド溝31と凸条部32との係合部分でラップ代が形成され、操作レバー13が回動操作される度にスライド溝31と凸条部32とが相対的に摺動する構成となる。
【0031】
また、本発明に係るレバー操作装置をワイパースイッチ装置11に適用した実施例を示したが、これに限ることはなく、例えば、本発明に係るレバー操作装置を車両用方向指示装置に適用してもよい。
【符号の説明】
【0032】
図面中、11はワイパースイッチ装置(レバー操作装置)、12はケース、13は操作レバー、14は節度部材、15はスプリング、16はスライド溝、17は支軸、21はガイド凸部、21aは凸条部、22a〜22dは節度谷、23a〜23dは節度山、31はスライド溝、32は凸条部である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケースと、
軸方向の中間部が支軸を介して回動可能に設けられ、一端部が前記ケース内に揺動可能に収容されるとともに、他端部が前記ケースから外方へ突出した操作レバーと、
前記ケース内に前記操作レバーにおける前記一端部の揺動方向に対して交差する方向へスライド可能に設けられ、前記操作レバーの前記一端部を係合保持する節度谷及び該節度谷に連なった節度山を有する節度部材と、
前記節度部材を前記操作レバー側へ付勢するスプリングと、を備え、
前記ケース及び前記節度部材のうち、一方に前記節度部材のスライド方向へ延びるスライド溝を設け、他方に前記スライド溝の延び方向に沿って延び前記スライド溝に沿って相対的に摺動可能な凸条部を設けたことを特徴とするレバー操作装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−154447(P2011−154447A)
【公開日】平成23年8月11日(2011.8.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−14186(P2010−14186)
【出願日】平成22年1月26日(2010.1.26)
【出願人】(000003551)株式会社東海理化電機製作所 (3,198)
【Fターム(参考)】