説明

レプトスピラ属感染の治療による多発性硬化症の治療及び予防方法

本発明は、多発性硬化症のための新規の治療法及び新規の予防方法を提供する。同様に提供されているのは、新規の診断方法である。本発明は、通常ドブネズミに感染するスピロヘータ、レプトスピラ・インテロガンスと免疫学的に交差反応する微生物による慢性的感染によって、多発性硬化症がひき起こされる確率が最も高いという知見にある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多発性硬化症(MS)の治療、予防、診断及び監視の分野に関する。特に、本発明はドブネズミ(Rattus norvegicus)に関連する病原因子をターゲティングすることによるMSの治療及び予防を提案する。これに関して、本発明は、風土病としてラットが感染するスピロヘータ、レプトスピラ属(Leptospira)、特にL.インテロガンス(L.interrogans)をターゲティングすることによるヒトの治療を提供する。
【背景技術】
【0002】
多発性硬化症についての現在の知識
MSに関する以下の背景説明は、大部分が多発性硬化症国際連合ホームページ(www.msif.org.)から直接引用したものである。その他の情報源を含む場合には、出典を記載している。
【0003】
MSは、以下のような数多くの理由で例外的に研究の困難な疾患である:
・一般に遺伝的、免疫学的及び環境的要因の組合せであると考えられているものの、原因が不明である。しかしながら、その診断を下すのにしばしば長い年月がかかるため、そしてあまりにも数多くの変異が存在するため、これまでのところMSの特定の原因又は誘因を判定することは不可能であった。
・影響は、体の最もアクセスし難い部分のうちの2つ、つまり脳及び脊髄内に見られる。1980年初頭の磁気共鳴映像法(MRI)の出現以降初めて、科学者達は脳及び脊髄内の病巣を検分することが実際にできるようになった。
・疾患には単一のパターンが全く無く、実際、4つのタイプのMS、すなわち再発寛解型、進行再発型、一次進行型及び二次進行型MSが存在する。
【0004】
該疾患の経過は予測不可能である。患者の中枢神経系上の病巣の数及び位置は必ずしもその再発の出現又は身体障害レベルと相関していない。該疾患についての決定的な試験は全く存在しない。
【0005】
病因論
多発性硬化症は、中枢神経系(脳及び脊髄)の最も一般的な疾患の1つである。MSは炎症性脱髄性身体条件である。ミエリンは、電線の被覆に極く似た形で作用し神経がそのインパルスを急速に伝達できるようにする、神経を絶縁している脂肪質物質である。
【0006】
多発性硬化症においては、ミエリンの喪失(脱髄)には、脳への及び脳からの電気インパルスを導く神経の能力の破壊がともない、これがMSのさまざまな症状を生み出す。ミエリンが喪失した部位(斑又は病巣)は硬化した(瘢痕)領域として現われる:多発性硬化症では、これらの瘢痕は、異なる時点かつ脳及び脊髄の異なる領域に現われる。多発性硬化症という用語は、文字通り数多くの瘢痕を意味する。
【0007】
MSにおけるミエリンに対する損傷は、通常は侵入する生体(細菌及びウイルス)から身体を守る、体の免疫系の異常な応答に起因するものとみなされてきた。MSの特徴の多くは、自分自身の細胞及び組織(MSの場合はミエリン)を体が攻撃する「自己免疫」疾患を示唆している。ミエリンを攻撃するよう免疫系にきっかけを与えているのが何であるかは研究者らには不明であるが、それは複数の要因の組合せであると考えられている。
【0008】
提案されてきた1つの理論は、体内に休眠状態で存在している可能性のあるウイルスが該疾患の発生において主要な役割を果たす可能性があり、免疫系を混乱させるか又は自己免疫プロセスを間接的に扇動する可能性があるというものである。研究の大部分は、MSをひき起こすウイルスを同定しようとして実施されてきた。この研究の結果、今日、単一のMSウイルスは存在せず、麻疹又はヘルペスのような一般的なウイルスがMSの誘因として作用し得る確率が高いと考えられている。この誘因が血流中の白血球(リンパ球)を活性化させ、該白血球は脳の防御機序(すなわち血液/脳障壁)を脆弱化することにより脳内に入る。ひとたび脳内に入るとこれらの細胞は、ミエリンを攻撃し破壊するような形で免疫系のその他の要素を活性化させる。
【0009】
MSの経過は予想不可能である。この疾患による最小限の影響を受けるだけの人もいれば、完全な身体障害に至るまで急速に進行する人もおり、大部分の人はこれら2つの極端なケースの間に入る。全ての個体がMS症状の異なる組合せを経験することになるが、該疾患の経過に関してはいくつかの特徴的なパターンが存在する。
【0010】
MSの型
再発寛解型MS:この形態のMSでは、新しい症状が現われるか又は既存の症状がより重症となる予想不能な再発(悪化、発作)が存在する。これは、可変的な期間(数日又は数カ月)持続する可能性があり、部分的又は全面的な寛解(回復)が存在する。この疾患は何ヵ月又は何年も不活性である場合がある。
【0011】
良性MS:1回又は2回の発作と完全な回復の後、この形態のMSは経時的に悪化せず、後遺障害は全く無い。良性MSは、発症から10〜15年後に最小限の身体障害が存在する場合にのみ同定することができ、当初再発寛解型MSに分類されてしまうことになる。良性MSは、発症時さほど重症でない症状が付随する傾向にある(感覚性症状など)。
【0012】
二次進行型MS:はじめに再発寛解型MSを有している一部の個体においては、該疾患の経過の晩期に、しばしば多重の再発を伴って、進行性の身体障害が展開される。
【0013】
一次進行型MS:この形態のMSは、はっきりとした発作は無いものの、発症が緩慢であり、確実に症状が悪化するという特徴をもつ。欠損と身体障害は蓄積し、これは或る時点で横ばい状態になるか、または数ヶ月あるいは数年にわたって継続する可能性がある。
【0014】
診断試験
現行の診断試験には次のものが含まれる:
a) 病歴:対象の過去の徴候及び症状の記録ならびに現在の状態を含む詳細な病歴。
b) 神経学的検査:脳からの体の他の部分へのメッセージを取得する神経経路における異常についての試験。これには眼球運動、四肢協調、脱力(weakness)、平衡、感覚、言語行動及び反射の変化が含まれる。
c) 視覚、聴覚及び体感覚性誘発電位の試験:脳からのメッセージが神経に沿って通過する速度の測定。
d) 磁気共鳴映像法(MRI):MRIは、病巣のサイズ、数量及び分布を明確に示し、病歴及び神経学的検査からの裏づけ証拠と併わせて、MSの診断の確認に向けてのきわめて有意な指標である。それは、確定的に臨床診断された95%超のケースにおいて異常である。MRIは、疾患の活性の変化を実証するその能力のため、新しい療法の価値を評価する上での臨床試験においてきわめて有用な手段である。
e) 腰椎穿刺:MSと確定された大部分の人(90%)の髄液中のタンパク質は、その中に電流を通したとき特定のパターンを形成するので、この手法によりMS診断を確認できる可能性がある。
【0015】
MSのための認知された治療
MSのための治療法は今のところ存在しないが、該疾患の一部には認知済みの治療が存在し非常に有効であり得る。
【0016】
増悪:重篤な急性増悪期に対する標準的な治療はステロイドの使用であり、これは強力な抗炎症性効果を及ぼす。ステロイドは、新しい脱髄部位での炎症を低減させ、正常な機能への回復がより迅速に起こるようにし、増悪期間を短縮させる。現行の好適なステロイド投薬計画は、3〜5日間高用量で静脈内投与されるメチル−プレドニゾロンと恐らくはその後の1〜2週間のより低い漸減経口用量のプレドニゾンである。ステロイドの使用は、該疾患の長期的経過に対して何ら影響を持たないと考えられている。
【0017】
疾患の経過の改変
近年、MSに使用するための多くの新しい薬物が承認されてきており、これらは増悪の頻度や重症度及びMRI上で見られる病巣の数に幾分かの効果をもつが、身体障害の進行に対する効果は不明瞭なままである。
【0018】
・一般的再発予防追行抑制療法
・酢酸グラチラマー(Copaxone(登録商標))
・インタフェロンβ−1a(Avonex(登録商標))
・インタフェロンβ−1a(Rebif(登録商標))
・インタフェロンβ−1b(Betaseron(登録商標)又はBetaferon(登録商標))
・ミトキサントロン(Novantrone(登録商標))
・急性増悪
・デキサメタゾン(Decadron(登録商標))
・メチルプレドニゾロン(Depo−Medrol(登録商標))
・プレドニゾン(Deltasone(登録商標))
【0019】
症状特異的治療
MSにおいて発生する症状の多くについて、有効な治療が利用可能である。
【0020】
・ 痙縮
・ バクロフェン(Lioresal(登録商標))
・ クロナゼパム(Klonopin(登録商標)又はRivotril(登録商標))
・ ダントロレン(Dantrium(登録商標))
・ ジアゼパム(Valium(登録商標))
・ ガバペンチン(Neurontin(登録商標))
・ チザニジン(Zanaflex(登録商標))
・ 振戦
・ クロナゼパム (Klonopin(登録商標)又はRivotril (登録商標))
・ イソニアジド(Laniazid(登録商標))
・ 疲労
・ アマンタジン
・ フルオキセチン(Prozac(登録商標))
・ モダフィニル(Provigil(登録商標))
・ ペモリン(Cylert(登録商標))
・ 膀胱機能不全
・ シプロフロキサシン(Cipro(登録商標))
・ デスモプレシン(DDAVP Nasal Spray(登録商標))
・ イミプラミン(Tofranil(登録商標))
・ メテナミン(Hiprex、Mandelamine(登録商標))
・ ニトロフラントイン(Macrodantin(登録商標))
・ オキシブチニン(Ditropan(登録商標))
・ オキシブチニン:持続放出処方(Ditropan XL(登録商標))
・ フェナゾピリジン(Pyridium(登録商標))
・ 臭化プロパンテリン(Pro−Banthine(登録商標))
・ スルファメトキサゾール(Bactrim(登録商標)又はSeptra(登録商標))
・ トルテロジン(Detrol(登録商標))
・ 大腸機能障害
・ ビサコジル(Dulcolax(登録商標))
・ ドキュセート(Colace(登録商標))
・ ドキュセート ミニ エネマ(Therevac Plus(登録商標))
・ グリセリン(Sani−Supp supository (登録商標))
・ 水酸化マグネシウム(Phillips’ Milk of Magnesia(登録商標))
・ 鉱油
・ サイリウム親水性ムチロイド1(Metamucil(登録商標))
・ リン酸ナトリウム(Fleet Enema(登録商標))
・ 性的機能不全
・ アルプロスタジル(Prostin VR(登録商標))
・ アルプロスタジル(MUSE(登録商標))
・ パパベリン
・ シルデナフィル(Viagra(登録商標))
・ 疼痛
・ アミトリプチリン(Elavil(登録商標))
・ カルバマゼピン(Tegretol(登録商標))
・ クロナゼパム(Klonopin(登録商標)又はRivotril(登録商標))
・ ガバペンチン(Neurontin(登録商標))
・ イミプラミン(Tofranil(登録商標))
・ ノルトリプチリン(Pamelor(登録商標)又はAventyl(登録商標))
・ フェニトイン(Dilantin(登録商標))
・ 認知、精神及び心理的機能障害
・ ブプロピオン(Wellbutrin(登録商標))
・ フルオキセチン(Prozac(登録商標))
・ パロキセチン(Paxil(登録商標))
・ セルトラリン(Zoloft(登録商標))
・ ベンラファキシン(Effexor(登録商標))
・ 回転性及び非回転性めまい(vertigo & dizziness)
・ メクリジン(Antivert(登録商標)又はBonamine(登録商標))
・ 温度感受性及び発作性そう痒
・ ヒドロキシジン(Atarax(登録商標))
・ 吐き気:嘔吐
・ メクリジン(Antivert(登録商標)又はBonamine(登録商標))
【0021】
リハビリテーション及び管理
失われた機能の全てを改善することは可能でないかもしれないが、MSを有する人々は全てその肉体的、精神的及び社会的条件を最適化しようと試みるべきである。増悪の後には、回復リハビリテーションの必要性があるかもしれない。寛解期間中、MSを有する人々は自らの最適な肉体的条件を達成し維持するためのメンテナンス療法プログラムに参加すべきである。これには、理学療法、ストレッチング、協調運動訓練、言語行動及び嚥下教育が関与し得る。これには又、薬物療法、良好な栄養摂取及びカウンセリングも含まれ得る。ライフスタイルを変更(社会的及び職業的の両方の変更)する必要性がでてくる可能性もある。
【0022】
代替療法
MSのための治療法は全く存在しないことから、該疾患の管理に対する代替的アプローチの例には事欠かない。代替療法とは一般に立証の無い、非伝統的なそして往々にして非医学的な治療を意味する。以下に記すのは、一般に推奨されている代替療法の一部の例である。
【0023】
サプリメント及びビタミン:全てのMS患者において適切なビタミン摂取が勧められているが、補足的用量のビタミン又はメガビタミン療法が単独で又は組合わせた形で疾患の経過に有利な影響を及ぼすという科学的証拠は全く無いように思われる。
【0024】
脂肪酸:複数の臨床試験から、ポリ不飽和脂肪酸(例えば月見草油)及び魚油の脂肪酸を用いた食事補給は、MS増悪の進行の減速やその重症度及び持続時間の低減に適度に効果があるが、それらの頻度には影響を及ぼさないということが示されている。
【0025】
食習慣:MSが貧しい食生活又は食事での摂取不足に起因するということの信頼のおける証拠は全く存在しない。低脂肪及び高繊維を取込んだバランスのとれた食習慣がほとんどの人に推奨され、MSを有する人々のための該疾患の一般的管理の一部分であるべきである。この枠組内で、特に部分的又は不完全な効果の可能性は拭えないが、スワンク(Swank)の低脂肪食及びクスミン(Kousmine)食餌療法のような食事療法が受容可能である。無アレルゲン食、無グルテン食;ローフード、エバース(Evers)食;マクダガル(McDougal)食;タンパク質及びフルクトース制限食;ケンブリッジその他の液体食;無スクロース及び無タバコ食のような他の食餌は、MSの経過に対し何らかの効果をもつものとしては実証されていないが、その主唱者は、非常に個人的で個別的な事例証拠を挙げている。これらの食餌療法(及び診察)の多くは高価である。これらは正常な栄養バランスを改変する可能性があり、医学的かつ専門家による監視無しでは安全でなく健康にとって危険であることが判明する可能性がある。
【0026】
歯科用水銀修復(充てん術)の交換:(銀と水銀からなる)アマルガム修復の歯からの除去は、MSが水銀中毒の結果としてひき起こされ、アマルガム修復からの漏洩が免疫系を損なうという、実証されていない主張に基づくものである。アマルガムの除去がMSにおいて何らかの価値をもつことを示唆する証拠は全く存在しない。
【0027】
鍼療法:鍼療法が該疾患のプロセス又は症状管理に対し効果を有することを示唆する証拠は全くない。しかしながら、鍼療法は、疼痛及び筋けいれんを軽減する目的に役立つ可能性がある。
【0028】
ヨガ及び瞑想:MSを患う人々にとって、運動及びリラクゼーションは貴重で楽しい療法であり得る。ヨガ及び瞑想は、MSを有する人々にとっての生活の質を改善でき、より良い社会的かつ肉体的機能を生み出す。特に身体障害をもつ人々向けのコースを運営する数多くの組織が存在する。適切な推奨及び推せんについては、最寄りのMS協会に照会されたい。
【0029】
高圧酸素(HBO):MSの経過を阻み症状を改善することを期待して特別に造られたチャンバ内での増圧下での酸素呼吸が、1980年代に評判となった。米国、英国、カナダ及びオランダにおいて実施された別々の試行は、あらゆる客観的な特別報告書上でHBOが全く効果をもたないという点で同意見であった。
【0030】
将来性ある効果を示す実験室研究
MSの治療についての進行中の研究においては、MSに対する効果の付加的な証拠書類が、複数の治療法について提出されてきた。これらは、この時点では多発性硬化症国際連合によるMSのための標準的な推奨又は代替治療戦略の中で採用されていない。
【0031】
3−ヒドロキシ−3−メチルグルタリル補酵素Aレダクターゼの阻害物質であるスタチンが免疫調節効果をもつことの証拠が明らかになった。近年の報告書は、MSの動物モデルである慢性及び再発性実験的自己免疫脳脊髄炎をスタチンが予防し逆転させるということを示した。さらに、ヒト免疫細胞でのインビトロ実験は、インタフェロンβのものに匹敵するスタチンの免疫調節プロファイルを示してきた(ノイハウス(Neuhaus)O、ステューフェ(Stuve)O、ザムヴィル(Zamvil)SS、ハルトゥン(Hartung)HP。「Are statins a treatment option for multiple sclerosis?」Lancet Neurol.2004年6月;第3(6)号:369−71頁)。
【0032】
CR−EAE動物の脊髄中のニューロフィラメント標識済み軸索の形態計測検査は、両方のフレカイニド治療法の結果として、対照(正常の62%)に比べ著しく多数の軸索が該疾患を生き延びる(正常の83及び98%)ことを示した。これらの発見事実は、フレカイニド及び類似の作用物質が、MS及びその他の神経炎症障害における軸索保護を目的とした新規の療法を提供し得るということを示している(ベッヒトルト(Bechtold)DA、カプーア(Kapoor)R、スミス(Smith)KJ.、「Axonal protection using flecainide in experimental autoimmune encephalomyelitis。Ann Neurol。2004年5月;第55(5)号:607−16頁)。
【0033】
エストロゲン治療は、実験的自己免疫脳脊髄炎(EAE)及び場合によっては多発性硬化症(MS)において保護作用をもつことが発見された(パラスジンスキー(Palaszynski)KM、リュー(Liu)H、ルー(Loo)KK、ヴォスクール(Voskuhl)RR.、「Estriol treatment ameliorates disease in males with experimental autoimmune encephalomyelitis: implications for multiple sclerosis」J Neuroimmunol.2004年4月;第149(1−2)号:84−9頁)。
【0034】
酸化防止剤での治療は、理論的には、MSにおける組織損傷の伝播を防止する可能性がある(ギルガン−シェルキ(Gilgun−Sherki)Y、メラメッド(Melamed)E、オッフェン(Offen)D.、「The role of oxidative stress in the pathogenesis of multiple sclerosis:the need for effective antioxidant therapy」、J Neurol.2004年3月;第251(3)号:261−8頁)。
【0035】
IFN−β療法に対する不完全な応答と高い脳炎症性及び臨床的疾患活性を有する10人の多発性硬化症患者における、CD25(ダクリズマブ)に対するヒト化モノクローナル抗体の第II相非盲検基線対治療試験は、ダクリズマブは耐容性がきわめて良く新しいコントラスト増強病巣の78%の削減及び複数の臨床的結果判定法における有意な改善を導く、ということを実証した(ビーレコヴァ(Bielekova)B、リチャート(Richert)N、ハワード(Howard)T、ブレヴィンス(Blevins)G、マルコビッチ−プリース(Markovic−Plese)S、マッカーテイン(McCartin)J、ヴュルフェル(Wurfel)J、オハヨン(Ohayon)J、ヴァルドマン(Waldmann)TA、マクファーランド(McFarland)HF、マーチン(Martin)R.、「Humanized anti−CD25(daclizumab)inhibits disease activity in multiple sclerosis patients failing to respond to interferonβ」、Proc Natl Acad Sci USA.2004年5月25日)。
【0036】
患者の報告、動物データ及びインビトロ実験に基づいて、多発性硬化症における痙縮及び疼痛の対症療法としてのカンナビノイドの正の効果を示す証拠が明らかになった。最近公表されたCAMS研究は、MSに関連する症状に対するカンナビノイドの効能を検査するための初めての多施設共同の無作為化されたプラシーボ対照第III相試験であった。いわゆるアッシュワース(Ashworth)評点により評価されるような痙縮の低減の差である主要結果判定法に対するカンナビノイドの治療効果は全く存在しなかった。これとは対照的に、患者により報告された痙縮及び疼痛に対する有意な効果は立証された(ノイハウス O、キーゼイア(Kieseier)BC、クリムケ(Klimke)A、ガベル(Gaebel)W、ホールフェルト(Hohlfeld)R、ハルトゥン HP.、「Cannabinoids in multiple sclerosisOpportunity or threat?」、Nervenarzt.2004年5月20日)。
【0037】
結論としては、MSの治療及び診断において進歩がなされてきたものの、これまでのところ、該疾患の当該技術分野で認知された病因的作用因子ひいては特定的治療又は診断も全く存在していない。
【発明の開示】
【0038】
[発明の目的]
本発明の目的は、MSと闘うための手段及び方法ならびにMSの精確な早期診断のための手段及び方法を提供することにある。
【0039】
[発明の概要]
多発性硬化症をひき起こす機序についての探究は数多くの異なるタイプの仮説を生み出してきたが、そのいずれも未だ該疾患の原因となる機序を同定するのに成功していない。広義には、その機序が自己免疫プロセス(コンロン(Conlon)ら、1999年)又は病因的作用因子のいずれに依拠すると考えられているかに応じて複数のグループに考え方を分割することができる。後者のグループは、ヒトからヒトに伝達された作用因子を探究した研究を含んでおり(ホークス(Hawkes)、2002年)、一方その他の研究は、食料源(ラウア(Lauer)、1991年)又は野生病原保有動物(フリッチュ(Fritzsche)、2002年)を示唆していた。
【0040】
本発明者らは、今や、ドブネズミ、Rattus norvegicusを風土病的に感染させる生体による感染によってMSがひき起こされるという説得力ある証拠を発見した。実施例2及び3からわかるように、原因となる作用因子としての主たる候補は風土病的にR.norvegicusを感染させるスピロヘータL.インテロガンスであるが、当該開示から同じく明らかとなるように、それは又、L.インテロガンス及びその他のレプトスピラ属と免疫学的に交差反応するこれまで同定されたことのない細菌種でもあり得る。
【0041】
いずれにせよ、本発明は、この発見事実によるMSの分野における一連の新規の治療方法及び診断を提供する。
【0042】
従って、本発明は第1の側面において、多発性硬化症(MS)に罹患しているヒトの対象においてMSを治療又は改善するための方法であって、レプトスピラ属に由来する抗原決定基に対する治療上有効な免疫応答を誘導する免疫原性作用物質による対象の能動免疫化を含み、免疫原性作用物質が特異的免疫原を含む方法に関する。
【0043】
関連する側面において、本発明は、ヒトの対象における多発性硬化症(MS)を予防するための方法であって、レプトスピラ属に対する防御免疫応答を誘導する免疫原性作用物質による対象の能動免疫化を含み、免疫原性作用物質が特異的免疫原を含む方法に関する。
【0044】
第1の診断的側面においては、本発明は、人がMSに罹患しているか否か又はMSを発症するリスクが増大しているか否かを判定するための方法であって、人から得た試料を、その試料がL.インテロガンス由来の物質を含有するか否かを判定する試験に付すことを含み、陽性判定はその人のMSリスクが陽性判定の無い対象と比較して有意に増大していることを示す方法を提供する。
【0045】
第2の診断的側面においては、本発明は、人がMSに罹患しているリスク又はMSを発症するリスクを評価するための方法であって、人から得た試料を、その試料中にレプトスピラ属に一般的に反応する抗体及びL.インテロガンスと特異的に反応する抗体が存在することを判定する試験に付すことを含む方法を提供する。
【0046】
第3の診断的側面においては、本発明は、人がMSに罹患しているリスク又はMSを発症するリスクを評価するための方法であって、人から得た試料を、その人の代替的補体活性化経路がレプトスピラ属を溶解させる能力を有するか否かを立証する試験に付すことを含む方法を提供する。
【0047】
本発明はまた、患者におけるMSの進行を監視する方法であって、患者から得た試料を、試料中のL.インテロガンス物質を定量的に判定する試験に付すこと、及び後に同じ患者から得た試料について実施した判定と前期判定とを比較することを含む方法を提供する。
【0048】
また、患者におけるMSの進行を監視する方法であって、患者から得た試料中のL.インテロガンスと特異的に反応する抗体の定量的判定、及び後に同じ患者から得た試料について実施した判定と前期判定とを比較することを含む方法を提供する。
【0049】
本発明はまた、ヒトにおけるL.インテロガンスに対する防御免疫を誘導する能力を有する免疫原性作用物質を含む少なくとも1つの容器、及びMSに対するヒトの治療又は予防のためにその免疫原性作用物質を使用するための説明書を含む薬剤パッケージを提供する。
【0050】
さらに本発明は、L.インテロガンスに対し細菌毒性又は静菌効果を及ぼす能力を有する抗生物質を含む少なくとも1つの容器、及びMSに対するヒトの治療又は予防のために抗生物質を使用するための説明書を含む薬剤パッケージを提供する。
【0051】
最後に、本発明は、ヒトにおけるL.インテロガンスに対する防御免疫を誘導する能力を有する免疫原性作用物質を含む少なくとも1つの容器、及びL.インテロガンス物質と反応できるか又はL.インテロガンスとの反応性を有する抗体と反応できる診断手段を含む少なくとも1つの容器を含む薬剤キットにも関する。
【0052】
[発明の詳細な説明]
定義
以下では、本明細書及び特許請求の範囲の中で用いられた一定数の用語を、本発明の境界を明確にする目的で定義づけする。
【0053】
「能動免疫化」という用語は、動物における免疫原に対する特異的免疫応答の誘導を意味し、その動物自身の細胞が初回免疫されて免疫原を認識し免疫学的攻撃開始させることを意味する。最終的結果は例えば、動物が免疫原と特異的に反応する抗体を産生する体液性免疫の誘導又は、動物の体内のT−細胞が免疫原を担持する細胞を認識し攻撃する細胞免疫の誘導である。
【0054】
能動免疫の特殊な形態は、「防御」又は「治療」的な有効免疫応答を生み出すものである。これは、誘導された免疫応答が病原性作用因子と有効に闘う能力をもつように免疫原が構成されていることを意味する。免疫応答が防御的である場合に、その免疫応答は、臨床的に関連するものとなる前に病原体がひき起こした疾患の発生を阻む能力をもち、これは数多くのレベルで起こり得る(病原体の侵入が遮断されることもあれば、重要なレセプタが遮断されることもあり、病原体の増殖が遮断されることもあれば、病原体がナチュラルキラー細胞により死滅させられるか又は抗体結合時点でAPCにより取込まれること等々もある)。免疫応答が治療的である場合は、進行中の感染/疾患と免疫系が闘う(1つの例は、人が感染を受けた後に免疫応答が発生する、狂犬病に対するワクチン接種である)。しかしながら両方のアプローチ共、免疫応答の質に依存しており、これは、免疫応答発生対象である病原体の中のエピトープが適切でなくてはならないことを意味している。これは通常、弱毒化生ワクチン又は死滅ワクチンを用いる場合がそうであるように、病原体からの多数のエピトープを内含する免疫原を利用することによって確保される。
【0055】
「免疫原」又は「免疫原性作用物質」とは、1つの抗原に対する或る動物又は動物群の体内で特異的免疫応答を誘導する能力をもつ作用物質(つまりこの用語は前記動物又は動物群に対してのみ適切であることを意味する)である。例えば、1つの種の中で免疫原性である作用物質は、もう1つの種の中で免疫原性である必要はなく、1つの個々の動物において免疫原性である作用物質は、同じ種のもう1つの動物の体内で免疫原性である必要はない。該作用物質はそのままで抗原であり得るが、該作用物質はまた抗原をコードする遺伝物質又は抗原を発現する能力をもつウイルス又は細菌であり得る、ということがわかるだろう。
【0056】
「免疫原性組成物」とは、免疫原ならびに、免疫原の有効なインビボ使用に貢献するその他の物質を内含する組成物であり、かかる付加的物質は例えば免疫アジュバントであり得る。
【0057】
「抗原」とは、一部の動物において特異的免疫応答を誘導する能力をもつ、すなわち抗原を特異的に認識するT細胞又は抗体を誘導する能力をもつ物質である。
【0058】
「ハプテン」とは、抗体により認識され得るもののそれ自体抗体産生を誘導する能力をもたない物質である。
【0059】
「特異的免疫原」という用語は、本文脈においては、ヒトに投与するとレプトスピラ属に対する免疫応答を惹起することのできる物質又は作用物質である。従ってこの用語は、免疫系に対するレプトスピラ属抗原決定基の提示をもたらすという特長を共有する多数の作用物質を包含する。この意味で、この用語は、レプトスピラ属由来の抗原だけでなく、かかる抗原をコードする遺伝物質ならびにかかる遺伝物質を発現するウイルス及び非レプトスピラ属微生物をも包含する。
【0060】
「免疫学的に有効な量」という用語は、免疫学の技術分野における通常の意味、すなわち免疫原と免疫学的特長を共有する分子と有意に結合する免疫応答を誘導する能力をもつ、免疫原又は免疫原性組成物の量という意味を有する。
【0061】
「T−リンパ球」及び「T細胞」という用語は、さまざまな細胞媒介型免疫応答ならびに体液性免疫応答におけるヘルパー活性の原因となる胸腺由来のリンパ球について互換的に使用されることになる。同様にして、「B−リンパ球」及び「B−細胞」という用語は、抗体産生リンパ球について互換的に用いられることになる。
【0062】
「T細胞エピトープ」(又は「T−リンパ球エピトープ」)とは、本発明の文脈において、MHC分子に結合できかつヒトにおいてT細胞を刺激するペプチドである。本発明において使用される好ましい外来性T細胞エピトープは「無差別(promiscuous)」エピトープすなわち、ヒトにおいて特定のクラスのMHC分子の実質的画分に結合するエピトープである。かかる無差別T細胞エピトープはきわめてわずかしか知られておらず、これらについて以下で詳しく論述する。
【0063】
「Tヘルパーリンパ球エピトープ」(Tエピトープ)は、MHCクラスII分子を結合させるT細胞エピトープであり、MHCクラスII分子に結合された抗原提示細胞(APC)の表面上で提示され得る。無差別エピトープは、機能的に免疫原性担体タンパク質と等価である。
【0064】
「免疫原性担体」は、多数のTエピトープを含み、ハプテンとカップリングした場合ハプテンに対する抗体の産生を可能なものにするポリペプチド又はタンパク質である。そのサイズ及び異なるTエピトープの数のため、免疫原性担体は通常、ヒト集団の圧倒的多数において免疫原性である。担体の例としては、キーホールリンペットヘモシアニン(KLH)、破傷風トキソイド、ジフテリアトキソイド及びウシ血清アルブミン(BSA)がある。
【0065】
「アジュバント」という用語は、ワクチン技術の分野においてその通常の意味、すなわち、1)それ自体ワクチン又は免疫原性組成物の免疫原に対する特異的免疫応答を開始させる能力をもたないものの、2)それでも免疫原性に対する免疫応答を増強させる能力をもつ物質又は組成物という意味を有する。或いは換言すると、アジュバント単独でのワクチン接種は免疫原に対する免疫応答を提供せず、免疫原でのワクチン接種は免疫原に対する免疫応答を発生させる又発生させないかもしれないが、免疫原及びアジュバントでのワクチン接種の組合せは、免疫原単独により誘導されるものよりも強い、免疫原に対する免疫応答を誘導する。
【0066】
「免疫系の刺激」とは、物質又は組成物が一般的な非特異的免疫賦活効果を示すことを意味する。数多くのアジュバント及び推定上のアジュバント(例えば一部のサイトカイン)が、免疫系を刺激する能力を共有している。免疫賦活剤を使用した結果として、免疫系の「覚醒(alertness)」は増大し、このことはすなわち、免疫原での同時又は後続免疫化が、免疫原の隔離使用に比べはるかに有効な免疫応答を誘導するということを意味している。
【0067】
「ポリペプチド」という用語は、本文脈においては、2〜10個のアミノ酸残基の短いペプチド、11〜100個のアミノ酸残基のオリゴペプチド及び100個超のアミノ酸残基のポリペプチドの両方を意味するように意図されている。さらに、この用語はまたタンパク質すなわち少なくとも1つのポリペプチドを含む機能的生体分子を含むようにも意図されている;少なくとも2つのポリペプチドを含む場合、これらは複合体を形成するか、共有結合により連結されるか又は非共有結合的に連結される可能性がある。1つのタンパク質内のポリペプチドは、グリコシル化され得かつ/又は脂質化され得かつ/又は補欠分子団を含むことができる。同様に、「ポリアミノ酸」という用語は、「ポリペプチド」という用語の等価物である。
【0068】
「サブ配列」という用語は、天然に発生するレプトスピラ属由来の配列に直接由来する少なくとも3つのアミノ酸又は適切な場合には少なくとも3つのヌクレオチドからなるあらゆる連続したひと配列を意味する。
【0069】
「動物」という用語は本文脈においては一般に、単に1つの動物だけでなくホモサピエンス、カニス・ドメスティカス(canis domesticus)のような種(好ましくは哺乳動物)を表わすものとして意図されている。しかしながら、この用語はまた、このような動物種の個体群をも表わしている;このことは免疫の誘導について論議する場合に特に適切である意味がある、というのは、一部の免疫原は1つの動物種の全ての個体の中で有効に機能する能力をもつことにはならないが、それにもかかわらずその免疫原はなおも、それが実際に有効である個体群の中でその所望の効果を示すことになるためである。
【0070】
(生体)分子の「機能的部分」とは、本文脈においては、その分子により及ぼされる少なくとも1の生化学又は生理学的効果に関与する分子の部分を意味するように意図されている。数多くの酵素及びその他のエフェクタ分子が、問題の分子によって及ぼされる効果に関与する活性部位を有する、ということは当該技術分野において周知である。該分子のその他の部分は、安定化又は溶解度増強目的で用いられる可能性があり、従って本発明の一部の実施形態に関してこれらの目的が適切でない場合には除外され得る。例えば、免疫原にカップリングされているアジュバントとして或る種のサイトカインを使用することが可能であり、このような場合には、カップリングが必要な安定性を提供することから安定性の問題は無関係である可能性がある。
【0071】
分子の「ターゲティング」とは、本文脈においては、動物の体内への導入時点で分子が或る種の組織内に優先的に出現することになる又は或る種の細胞又は細胞型に優先的に結びつけられることになるような状況を表わすものとして意図されている。この効果は、ターゲティングを容易にする組成物の形に分子を製剤化するなどの多くの方法、又はターゲティングを容易にする基を分子内に導入することにより達成可能である。
【0072】
「生産的結合」という語は、MHC分子(クラスI又はII)に結合させられたペプチドを提示する細胞を拘束するT細胞を刺激することができるように、MHC分子にペプチドを結合させることを意味する。例えば、APCの表面上のMHCクラスII分子に結合したペプチドは、このAPCが提示されたペプチド−MHCクラスII複合体に結合するT細胞を刺激することになる場合、生産的に結合されたと言われる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0073】
MSのための予防方法及び治療方法
MSの病原因子を知ることで得られる直接的な結果は、該疾患のための特定的な予防及び治療を考案することが可能になるということである。本明細書で紹介されている証拠はL.インテロガンス又は類似のレプトスピラ種/株の原因的役割を示していることから、抗菌薬物療法がそうであるように、免疫学的予防及び治療のためのさまざまな措置が可能になる。興味深いことに能動免疫療法及び能動免疫予防法は、疾患の発症との関係における処置のタイミングのみが異なる同じ手段及び措置を利用する。
【0074】
レプトスピラ・インテロガンスのゲノムの配列が決定されており、かくして予防法又は特異的能動免疫療法にとって有用な免疫原性作用物質として役立ち得る多数のタンパク質抗原を同定することが可能である。
【0075】
好ましい特異的免疫原のリストには、以下のものが含まれる:
a) ヒトにおいて非病原性であり、好ましくはL.インテロガンスと免疫学的に交差反応する生きたレプトスピラ属の調製物。本発明のこの態様は、ウシ型結核菌(Mycobacterium bovis)の弱毒化菌株が病原性マイコバクテリアとのその交差反応性を理由として使用される、結核菌に対し使用されているカドメット・ゲラン(Cadmette−Guerin)ワクチンと比較することができる。この場合、ワクチン用途のための最も明白なレプトスピラ株はレプトスピラ血清型(serovar)パトク(patoc)であると思われる。この血清型は、レプトスピラ科(family Leptospira)の事実上全ての抗原を担持する。
b) 死滅させた又は不活性化させたL.インテロガンスの調製物又はL.インテロガンスとの交差反応性をもつ死滅させた又は不活性化させたレプトスピラ種又は株由来の細菌の調製物。本発明のこの態様は、免疫化のために既知の病原体又はその近縁種の不活性化された調製物が用いられる、ジフテリアワクチンの最も一般的に用いられている形態と比較することができる。このタイプのワクチンは往々にして、ウイルス抗原に対するワクチン接種のために使用されるが、コレラワクチンも又死菌を利用する。かかる免疫原を用いたワクチンのための適切な選択肢は、本発明に従うと、水酸化アルミニウムゲル中で吸着された三価のレプトスピラ症ワクチンでありキューバのフィンレーインスティチュート(Finlay Institute)から市販されている「vax−SPIRAL」であると思われる。
c) L.インテロガンス又は交差反応性レプトスピラ種又は株から単離された抗原画分。本発明のこの態様は、b)で記した選択肢にきわめて密に関係しているが、抽出、透析、超遠心分離法などにより汚染物質が除去される単数又は複数の精製ステップを含むことができ、その主たる目的は、レプトスピラ属の表面からの或る割合の抗原を内含させることにある。当該技術分野からの既知の例は、例えば髄膜炎菌(Meningcoccus)多糖類に対するワクチンである。
d) L.インテロガンス又は交差反応性レプトスピラ種又は株由来の免疫優性エピトープを含む少なくとも1つの抗原の調製物、−本発明のこの態様は、レプトスピラ属の表面からの免疫優性抗原の同定に依存している。最も将来性ある抗原は、ボレリア(Borrelia)といったその他のスピロヘータにおいて防御免疫をひき起こすものとして知られているOsp(外表面タンパク質)として知られるものである。レプトスピラセロバーパトクのゲノムがわかっていることからレプトスピラ属Ospのクローニング及び組換え型発見は比較的容易な仕事である。
e) L.インテロガンス又は交差反応性レプトスピラ種又は株由来の免疫優性エピトープに結合する抗体のイディオタイプとの反応性を有する少なくとも1つの抗イディオタイプ抗体を含む調製物、又はf) L.インテロガンス又は交差反応性レプトスピラ種又は株由来の免疫優性エピトープの少なくとも1つのミモトープを含む調製物。本発明のこれらの態様は単一の又は数個の免疫優性エピトープが同定されることを必要とする;多数のレプトスピラ属抗原が存在する(例えば態様a〜cのような)本発明の態様とは対照的に、ワクチンに単一の又は数個の抗原決定基を用いた場合に開始される免疫応答は、エピトープにより及ぼされる免疫優性によって大きく左右される。又換言すると、態様a〜cは、多数の推定上の免疫原性に関連するエピトープの中から免疫系が選択できるようにするという固有の利点を有している。
g) L.インテロガンス又は交差反応性レプトスピラ種又は株由来の少なくとも1つの免疫優性タンパク質抗原をコードし、対象の細胞からその抗原をインビボ発現させる能力を有する核酸の調製物。通常DNAワクチン接種として知られているこの態様は、以下で論述されているが、大方の場合態様dの等価物である。
h) gで論述した通りの核酸を含む生ワクチン又はウイルスワクチン。同じくこの態様もc及びgの態様の等価物であるが、態様a−cのいずれかを提供することが可能となるかぎりにおいて、本発明のこの特定の態様はさほど好ましいものとはならない。
【0076】
標準的には、免疫化は、一次免疫化とそれに続く少なくとも1回の追加免疫化を含む。一次免疫化及び少なくとも1回の追加免疫化で使用される免疫原性作用物質は同一であってもなくてもよく、同一でない製剤は、初回免疫に使用されるワクチン製剤が追加免疫製剤と異なる多数の予防的ワクチンからすでに知られている(デンマークで使用されているポリワクチン接種スキームを参照のこと)。DNA又は生ワクチンで初回免疫し、ポリペプチドワクチン又は画分ワクチンで追加免疫するか又はその逆を行うことも又有利であり得る。
【0077】
治療用投薬計画には、ワクチン接種を受けた個体における高度の免疫学的覚醒を維持する目的で定期的免疫化が含まれ得るということが予想される。かかる投薬計画においては、年間免疫化数は1、2、3、4、5、6及び12回にのぼり得る。より詳細には、ワクチンの使用により誘導される記憶免疫が永久的なものでない場合があるということが先に観察されたことから、必要とする個体に対し一年1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11又は12回といった年間1〜12の回数が予想される。
【0078】
遺伝的変異のために、異なる個体は、同じワクチンに対し強さの変動する免疫応答で反応し得る。従って、本発明によるワクチンは、免疫応答を増大させるべく複数の異なるポリペプチドを含んでもよい(態様a−cが当然これにあてはまる)。従ってワクチンはレプトスピラ属由来の2つ以上の抗原を含み得る。
【0079】
免疫原の調製、製剤化及び投与
その投与によってヒト免疫系に対し免疫原性作用物質の提示を行う場合、免疫原の製剤化は当該技術分野において一般に承認された原則に従う。かくして、上述の推定上の免疫原のいずれかを製剤化するためには、選択された免疫原のタイプに最も適合するように当業者によって製剤化が選定されることになる。かくして、免疫原性作用物質は一般に薬学的に許容される担体、媒体又は希釈剤を含む。
【0080】
ワクチンは、溶液又は懸濁液のいずれかとして注射物質として調製される;注入の前に溶液又は懸濁液に適した固体形態を液体中に調製することも又可能である。調製物を乳化させることも可能である。活性免疫原性成分はしばしば、活性成分と適合性のある薬学的に許容される賦形剤と混合される。適切な賦形剤は例えば水、食塩水、デキストロース、グリセロール、エタノールなど、及びその組合せである。さらに、望ましい場合、ワクチンは、湿潤剤又は乳化剤、pH緩衝剤又はワクチンの有効性を増すアジュバントのようなわずかな量の補助物質を含有し得る;以下のアジュバントについての詳細な論述を参照のこと。
【0081】
本発明において使用されるワクチンは従来、非経口的に、注射により、例えば、皮下、皮内、真皮内、真皮下又は筋内のいずれかで投与される。その他の投与様式に適した付加的な製剤としては、座薬、そして一部のケースでは、経口、口腔内、舌下、腹腔内、膣内、肛門内、硬膜外、脊髄及び頭蓋内製剤が含まれる。座薬の場合には、従来の結合剤及び担体は、例えばポリアルカレングリコール又はトリグリセリドを含み得る;このような座薬は、0.5%〜10%、好ましくは1〜2%の範囲内で活性成分を含有する混合物から形成され得る。経口製剤には、例えば医薬品等級のマンニトール、ラクトース、デンプン、ステアリン酸マグネシウム、サッカリンナトリウム、セルロース、炭酸マグネシウムなどのような通常利用される賦形剤が含まれる。これらの組成物は、溶液、懸濁液、錠剤、丸薬、カプセル、持続放出製剤又は粉末の形をとり、10〜95%、好ましくは25〜70%の活性成分を含有する。経口製剤の場合には、コレラ毒素が有利な処方パートナである(又可能な接合(conjugation)パートナでもある)。
【0082】
例えば、活性成分としてペプチド配列を含有するワクチンの調製は、当該技術分野において一般に充分に理解されており、米国特許第4,608,251号;第4,601,903号;第4,599,231号;第4,599,230号;第4,596,792号;及び第4,578,770号明細書(全て本明細書に参照により援用される)に例示されている。
【0083】
本発明の1つの好ましい実施形態では、レプトスピラ属に由来するB−リンパ球エピトープの複数の提示が用いられている。例えば、構造(レプトスピラ属ポリペプチド抗原)(ここで、mは2以上の整数である)を含む融合ポリペプチドを単純に調製し、次いで該配列のうちの少なくとも1つに本明細書で論述された修飾を導入するなどの、さまざまな方法によってこの効果は達成可能である。導入された修飾に、B−リンパ球エピトープの少なくとも1つの重複及び/又はハプテンの導入が含まれることが好ましい。選択されたエピトープの複数の提示を含むこれらの実施形態は、レプトスピラ属ポリペプチドのわずかな部分のみがワクチン剤における構成要素として有用であるような状況において特に好ましい。
【0084】
レプトスピラ属からの組換え型ポリペプチドは、当該技術分野において周知の方法に従って調製する。ポリペプチドをコードする核酸配列の適切なベクター内への導入、該ベクターを用いた適切な宿主細胞の形質転換、核酸配列の発現、宿主細胞又はその培養上清からの発現産物の回収、及び後続する精製及び任意のさらなる修飾(例えばリフォールディング又は誘導体化)を含む組換え型遺伝子技術を用いて、さらに長いポリペプチドが通常調製される。
【0085】
より短いペプチドは、好ましくは固相又は液相ペプチド合成の周知の技術を用いて調製される。しかしながら、この技術における近年の進歩は、これらの手段による完全長ポリペプチド及びタンパク質の産生を可能にしており、従って合成手段によって長い構成体を調製することも又本発明の範囲内に入る。
【0086】
組換え体産生のためには、関係するレプトスピラ属タンパク質をコードする核酸が必要なツールである。
【0087】
レプトスピラ属タンパク質をコードする核酸フラグメントは通常適切なベクター内に挿入されてクローニング又は発現ベクターを形成する。本発明のこれらのベクターの構築に関する詳細は、以下で形質転換された細胞及び微生物に関連して論述される。ベクターは、適用する目的及びタイプに応じてプラスミド、ファージ、コスミド、ミニ染色体又はウイルスの形をとり得るが、特定の細胞内で過渡的に発現されるだけである裸のDNAも又重要なベクターである。好ましいクローニング及び発現ベクターは、自己複製能力をもち、これにより後のクローニングにおける高レベル発現又は高レベル複製のための高いコピー数が可能となる。
【0088】
本発明において使用するためのベクターの一般的外形には、5’→3’方向かつ作動可能連結において以下の特長が含まれる:レプトスピラ属タンパク質をコードする核酸フラグメントの発現を駆動するプロモータ、任意にレプトスピラ属タンパク質の(細胞外相へ又は該当する場合にはペリプラズマ内への)分泌又はその膜内への組込みを可能にするリーダーペプチドをコードする核酸配列、レプトスピラ属タンパク質をコードする核酸フラグメント、および任意にターミネータをコードする核酸配列。生産株又は細胞株において発現ベクターを用いて操作する場合、宿主細胞内に導入されたベクターが宿主細胞ゲノム内に組込まれるということは、形質転換細胞の遺伝的安定性の目的において好ましいものである。対照的に、ヒトにおいてインビボ発現をもたらすのに用いられるべきベクターによって作業する場合(すなわちDNAワクチン接種においてベクターを使用する場合)、ベクターが宿主細胞ゲノムに組込まれる能力をもたないことは、安全上の理由から好ましいことである;標準的に、裸のDNA又は非組込みウイルスベクターが使用され、それらの選択は当業者にとって周知である。
【0089】
本発明のベクターは、レプトスピラ属タンパク質を産生するように宿主細胞を形質転換するために使用される。このような形質転換細胞は、核酸フラグメント及びベクターの伝播に用いられるか又はレプトスピラ属タンパク質の組換え型産生に用いられる培養細胞又は細胞株であり得る。代替的には、形質転換細胞は、レプトスピラ属タンパク質の分泌又は細菌膜又は細胞壁内への組込みをもたらすべく核酸フラグメント(単一又は多数のコピー)が挿入されている適切な生きたワクチン株であり得る。
【0090】
本発明のレプトスピラ属タンパク質の産生のための好ましい形質転換細胞は、細菌(例えばエシェリキア(Escherichia)種[例えば大腸菌(E.coli)]、バシラス(Bacillus)(例えば枯草菌(Bacillus subtillis)、サルモネラ(Salmonella)又はマイコバクテリウム(Mycobacterium)[好ましくは非病原性、例えばウシ型結核菌(M.bovis)BCG])、酵母(例えばサッカロミセス・セレビジエ(Sacchoromyces cerevisiae))及び原生動物のような微生物である。代替的には、形質転換細胞は、真菌、昆虫細胞、植物細胞又は哺乳動物細胞のような多細胞生物に由来する。最も好ましいのは、ヒト由来の細胞である。以下の細胞株およびベクターについての論述を参照のこと。
【0091】
クローニング及び/又は最適化された発現を目的として、形質転換された細胞は本発明の核酸フラグメントを複製する能力をもつことが好ましい。該核フラグメントを発現する細胞は、本発明の好ましい有用な実施形態である;これらの細胞は、タンパク質の小規模又は大規模調製のために、又は、非病原性細菌の場合には、生ワクチンにおけるワクチン構成成分として使用可能である。
【0092】
形質転換細胞を用いてタンパク質を産生する場合には、本質的要素からは離れるものの、発現産物が培地内に移出されるか又は形質転換細胞の表面上に担持されるのが好都合である。
【0093】
有効な生産細胞が同定された場合、それに基づいて、関連するレプトスピラ属発現産物をコードする核酸フラグメントを発現する安定した細胞株を確立することが好ましい。好ましくはこの安定した細胞株は本発明のグレリン類似体を分泌するか又は担持し、これによりその精製が容易となる。
【0094】
一般に、宿主細胞と適合性をもつ種に由来するレプリコン及び制御配列を含有するプラスミドベクターが宿主と関連して用いられる。該ベクターは通常、複製部位ならびに、形質転換された細胞内で表現型選択を提供する能力をもつマーキング配列を担持している。例えば、大腸菌は標準的に、大腸菌種に由来するプラスミドであるpBR322を用いて形質転換される(例えばボリバー(Boliver)ら、1977年を参照のこと)。pBR322プラスミドは、アンピシリン及びテトラサイクリン耐性のための遺伝子を含有し、かくして、形質転換細胞を同定するための容易な手段を提供する。pBRプラスミド又はその他の微生物プラスミド又はファージもまた、発現のため原核微生物が使用できるプロモータを含有するか又はこれを含有するように修飾されなくてはならない。
【0095】
原核生物組換えDNA構造の中で最も一般的に使用されるプロモータとしては、B−ラクタマーゼ(ペニシリナーゼ)及びラクトースプロモータ系(チャン(Chang)ら、1978年;イタクラ(Itakura)ら、1977年;ゴーデル(Goeddel)ら、1979年)及びトリプトファン(trp)プロモータ系(ゴーデルら、1979年;欧州特許出願公開第A−0036776号)が含まれる。これらが最も一般的に使用されているが、その他の微生物プロモータも発見され利用されており、それらのヌクレオチド配列に関する詳細が公開され、熟練者がそれらをプラスミドベクターと機能的にライゲートできるようにしている(シーブフェンリスト(Siebwenlist)ら、1980年)。原核動物由来の或る種の遺伝子は、その独自のプロモータ配列から大腸菌内で効率良く発現可能であり、人工的手段によるもう1つのプロモータの付加の必要性を排除している。
【0096】
原核生物に加え、酵母培養のような真核微生物もまた使用可能であり、ここでは該プロモータは発現を駆動する能力を持つべきである。サッカロミセス・セレビジエ又は一般的なパン酵母が、真核微生物の中で最も一般的に用いられているが、その他の多数の株が一般に利用可能である。サッカロミセスにおける発現のために、例えばプラスミドYRp7が一般に用いられる(スティンチコム(Stinchcomb)ら、1979年;キングスマン(Kingsman)ら、1979年;チェンパー(Tschemper)ら、1980年)。このプラスミドは、例えばATCC第44076号又はPEP4−1といったトリプトファン中で成長する能力が欠如した酵母の突然変異株のための選択マーカーを提供するtrpl遺伝子をすでに含有している(ジョーンズ(Jones)、1977年)。酵母宿主細胞ゲノムに典型的なtrpl病変の存在により、トリプトファンの不在下での成長によって形質転換を検出するための有効な環境が提供される。
【0097】
酵母ベクター中の適切なプロモータ配列には、3−ホスホグリセリン酸キナーゼ(ヒッツマン(Hitzman)ら、1980年)又はその他の糖分解酵素(ヘス(Hess)ら、1968年;ホランド(Holland)ら、1978年)例えばエノラーゼ、グリセルアルデヒド−3−リン酸デヒドロゲナーゼ、へキソキナーゼ、ピルビン酸デカルボキシラーゼ、ホスホフルクトキナーゼ、グルコース−6−リン酸イソメラーゼ、3−ホスホグリセリン酸ムターゼ、ピルビン酸キナーゼ、トリオースリン酸イソメラーゼ、グルコースリン酸イソメラーゼ及びグルコキナーゼのためのプロモータが含まれる。適切な発現プラスミドの構築においては、これらの遺伝子に附随する終止配列も、mRNAのポリアデニル化及び終止を提供するために発現が望まれる発現ベクターの3’配列中にライゲートされる。
【0098】
成長条件により転写が制御されるという付加的な利点を持つその他のプロモータは、アルコールデヒドロゲナーゼ2、イソシトクロムC、酸性ホスファターゼ、窒素代謝に関連する分解性酵素、及び上述のグリセルアルデヒド−3−リン酸デヒドロゲナーゼ、ならびにマルトース及びガラクトース利用に関与する酵素のためのプロモータ領域である。酵母適合性プロモータ、複製起点及び終止配列を含むあらゆるプラスミドベクターが適切である。
【0099】
微生物に加え、多細胞生物に由来する細胞の培養も宿主として使用され得る。原則として、脊椎動物又は無脊椎動物培養のいずれの由来であれ、任意のこのような培養が利用可能である。しかしながら、脊椎動物細胞が最も有利であり、近年では培養(組織培養)中の脊椎動物の増殖が日常的手順となっている(Tissue Culture、1973年)。このような有用な宿主細胞株の例としては、VERO及びHeLa細胞、チャイニーズハムスタ卵巣(CHO)細胞株及びW138、BHK、COS−7 293、スポドプテラ・フルギペルダ(Spodoptera frugiperda)(SF)細胞(i.a.Protein Sciences、1000 Research Parkway、Meriden、CT 06450、U.S.A.及びInvitrogenより完全発現系として市販されている)、及びMDCK細胞株がある。
【0100】
このような細胞のための発現ベクターは、(必要であれば)複製起点、発現される遺伝子の前に位置するプロモータ、ならびに必要なあらゆるリボソーム結合部位、RNAスプライス部位、ポリアデニル化部位及び転写終了配列を含んでいる。
【0101】
哺乳動物細胞における使用においては、発現ベクターに対する制御機能はしばしばウイルス物質により提供される。例えば一般的に用いられるプロモータはポリオーマ、アデノウイルス2そして最も頻繁にはシミアン・ウイルス40(SV40)に由来する。SV40ウイルスの早期及び後期プロモータは、その両方が、SV40ウイルス複製起点をも含有するフラグメントとしてウイルスから容易に得られることから、特に有用である(フィアス(Fiers)ら、1978年)。ウイルス複製起点の中にあるBglI部位に向かってHindIII部位から延びる約250bpの配列が含まれていることを条件として、より小さい又はより大きいSV40フラグメントを使用することも可能である。さらに又、その制御配列が宿主細胞系と適合性をもつことを条件として、所望の遺伝子配列に通常附随しているプロモータ又は制御配列を利用することも可能であり、しばしば望ましい。
【0102】
複製起点は、例えばSV40又はその他のウイルス(例えばポリオーマ、アデノ、VSV、BPV)から誘導されうるような外因性起点を内含させるためのベクターの構築によって提供されてもよく、又は宿主細胞染色体複製機序により提供されてもよい。ベクターが宿主細胞染色体内に組込まれる場合、往々にして後者で充分である。
【0103】
生ワクチン又は弱毒化ワクチンの調製もまた、最先端技術に従うことになる。例えばイヌにおけるレプトスピラ症の治療のためのワクチンはすでに市販されており、L.インテロガンス及びそれから誘導されたサブユニットを利用するが、同じ一般的原理によって、類似のワクチンを生産することができる。
【0104】
ポリペプチド(例えばレプトスピラ属由来のOsp)を用いる場合、それらは中性又は塩形態としてワクチン内に製剤化され得る。薬学的に許容される塩としては、例えば塩酸又はリン酸といった無機酸又は酢酸、しゅう酸、酒石酸、マンデル酸のような有機酸を用いて形成される、(ペプチドの遊離アミノ基を伴って形成された)酸付加塩が含まれる。遊離カルボキシル基を伴って形成される塩は、同様に水酸化ナトリウム、カリウム、アンモニウム、カルシウム又は第2鉄のような無機塩基及びイソプロピルアミン、トリメチルアミン、2−エチルアミノエタノール、ヒスチジン、プロカインなどといった有機塩基からも誘導され得る。
【0105】
ワクチンは、投与製剤と適合性をもつ形で、治療上有効で免疫原性となるような量で投与される。投与されるべき量は、治療すべき対象(例えば免疫応答を開始させるその個体の免疫系の能力など)及び所望の防御度に依存する。適切な投薬量範囲は、1回のワクチン接種につきおよそ数百マイクログラム程度の活性成分であり、好ましい範囲は約0.1μg〜5000μg(たとえ1〜10mgの範囲内のより高い量を考えていても)であり、例えば約0.5μg〜2000μg又は0.5μg〜1000μg、好ましくは1μg〜500μg、特には約10μg〜100μgの範囲である。初期投与及び追加免疫注射のための適切な投薬計画も同様に可変的であるが、初期投与とそれに続く後続接種又はその他の投与により類型化される。
【0106】
適用様式は大幅に変動し得る。ワクチンの投与のための従来の方法のいずれかを適用することができる。これには、固体の生理学的に許容される塩基の、又は生理学的に許容される分散による経口適用、非経口投与、注入などが含まれる。ワクチンの投薬量は、投与経路により左右され、ワクチン接種を受ける人の年齢及び抗原の剤形に応じて変動することになる。
【0107】
DNAワクチン
ペプチドベースのワクチンの従来の投与に対する代替案として、核酸ワクチン接種(「核酸免疫化」、「遺伝的免疫化」及び「遺伝子免疫化」としても知られている)の技術は数多くの魅力的な特長を提供している。この特別な技術は、本発明の方法の態様gにおいて示されている。
【0108】
まず第1に、従来のワクチンアプローチとは対照的に、核酸ワクチン接種は、免疫原性タンパク質の資源消費の大きい大規模生産を必要としない。その上、タンパク質のための精製及び再生スキームを考案する必要も全くない。そして最後に、核酸ワクチン接種は、導入される核酸の発現産物を産生させるためにワクチン接種を受けた個体の生化学的器官に依存していることから、発現産物の最適な翻訳後プロセッシングが発生するものと予想される。このことは、B細胞エピトープが基本的にあらゆる(生体)分子(例えば炭水化物、脂質、タンパク質など)の部分により構成され得ることから、特に重要である。従って、免疫原の自然のグリコシル化及び脂質化パターンが全体的免疫原性にとってきわめて重要となる可能性が高く、これは、その免疫原を産生する宿主を得ることによって確保されると予想される。
【0109】
従って、本発明の好ましい実施形態には、少なくとも1つのレプトスピラ属抗原をコードする核酸を動物の細胞中に導入し、かくして導入された核酸の細胞によるインビボ発現を得ることにより免疫系に対するレプトスピラ属抗原の提示をもたらすことが含まれている。
【0110】
この実施形態においては、導入された核酸は好ましくは、裸のDNA、荷電又は非荷電脂質とともに製剤化されたDNA、リポソーム内に製剤化されたDNA、ウイルスベクター内に含まれたDNA、トランスフェクション促進タンパク質又はポリペプチドとともに製剤化されたDNA、ターゲティングタンパク質又はポリペプチドとともに製剤化されたDNA、カルシウム沈殿剤とともに製剤化されたDNA、不活性担体分子にカップリングしたDNA、重合体内、例えばPLGA内(例えば国際公開第98/31398号パンフレット)、又はキチン又はキトサン内に封入されたDNA、及びアジュバントとともに製剤化されたDNAの形をとり得るDNAである。これに関連して、従来のワクチン製剤中のアジュバントの使用に関する事実上全ての考慮事項が、DNAワクチンの製剤化にもあてはまるということに留意されたい。従って、その他のワクチンの場合のアジュバントの使用に関係する本書の開示は全て、必要な変更を加えて、核酸ワクチン接種技術におけるその使用にあてはまる。DNAは、Ospのような関係するレプトスピラ属抗原をコードするcDNA、又はかかる関係するタンパク質から誘導されたエピトープをコードする合成DNAであり得る。
【0111】
以上で詳述したワクチンの投与経路及び投与スキームに関しては、これらは、本発明の核酸ワクチンにも適用可能であり、ポリペプチドについての投与経路及び投与スキームに関する以上のすべての論述が、必要な変更を加えて核酸にもあてはまる。これには又、核酸ワクチンが静脈内及び動脈内でも適切に投与され得るということを付加すべきである。さらに、いわゆる遺伝子銃を用いて核酸ワクチンを投与できるということは当該技術分野において周知であり、従って、この投与様式及びその等価物も同様に本発明の一部とみなされる。最後に、核酸の投与におけるVLN(以下参照)の使用も又優れた結果を生み出すことが報告されており、従ってこの特別な投与様式が特に好ましい。
【0112】
その上、免疫化剤として用いられる核酸は、有用なアジュバントとして論述されたサイトカインなどの融合パートナ及びカップリング剤及び免疫原性担体として本書に記述されている免疫調節物質をコードする領域を含有し得る。この実施形態の好ましいバージョンは、免疫原性レプトスピラ属抗原のためのコーディング領域及び免疫調節物質のためのコーディング領域を異なる読取り枠内又は少なくとも異なるプロモータの制御下で有することを包含している。かくして、免疫調節物質に対する融合パートナとして類似体又はエピトープが産生されることが回避される。代替的には、2つの全く異なるヌクレオチドフラグメントを使用できるが、同じ分子内に含まれた両方のコーディング領域を有する場合には同時発現が確保されるという利点のため、これはさほど好まれない。
【0113】
通常の状況下では、抗原コーディング核酸は、ウイルスプロモータにより発現が制御されているベクターの形で導入される。同様に、核酸ワクチンの製剤化及び使用に関する詳細な開示も利用可能である。ドネリー(Donnelly)JJら、1997年、Annu.Rev.Immunol.第15号:617−648頁及びドネリーJJら、1997年、Life Sciences、第60号:163−172頁を参照のこと。これらの参考文献は共に本明細書に参照により援用される。
【0114】
生ワクチン
免疫系に対するレプトスピラ属抗原の提示をもたらすための第3の代替案は、生ワクチン技術の使用である。生ワクチン接種においては、免疫系に対する提示は、関係するレプトスピラ属タンパク質をコードする核酸フラグメント又はかかる核酸フラグメントを取込むベクターを用いて形質転換された非病原性微生物を投与することによってもたらされる。非病原性微生物は、(組換え型DNA技術による病原性発現産物の除去によってか又は継代によって弱毒化された)適切なあらゆる弱毒化細菌株、例えばウシ型結核菌(Mycobacterium bovis)BCG、非病原性連鎖球菌種(Streptococcus spp.)、大腸菌(E.coli)、サルモネラ菌種(Salmonella spp.)、コレラ菌(Vibrio cholerae)、赤痢菌(Shigella)、などであり得る。最先端の生ワクチンの調製を扱う論評は、例えば、共に本明細書に参照により援用されるサリウー(Saliou)P、1995年、Rev.Prat.第45号:14921496頁及びウォーカー(Walker)PD、1992年、Vaccine第10号:977990頁の中に見出すことができる。かかる生ワクチン中で用いられる核酸フラグメント及びベクターの詳細については、以下の論述を参照のこと。ただし、であることから、非病原性レプトスピラ株を利用するのが今のところ好ましいということに留意すべきである。
【0115】
細菌生ワクチンに対する代替案としては、以下で論述される本発明の核酸フラグメントを、ワクチニア株又はその他のあらゆる適切なポックスウイルスのような非−病原性ウイルスワクチンベクター中に取込むことができる。
【0116】
通常は、非病原性微生物又はウイルスは一回だけ動物に投与されるが、一部のケースでは、防御免疫を維持するために生存期間中に2回以上微生物を投与する必要があるかもしれない。ポリペプチドワクチン接種について以上で詳述されているような免疫化スキームは、生ワクチン又はウイルスワクチンを用いる場合に有用となるとさえ考えられている。
【0117】
代替的には、生ワクチン又はウイルスワクチン接種が、先行する又は後続するポリペプチド及び/又は核酸ワクチン接種と組合わされる。例えば、生ワクチン又はウイルスワクチンでの一次免疫化とそれに続くポリペプチド又は核酸アプローチを用いた後続追加免疫化を達成することが可能である。
【0118】
微生物又はウイルスは、例えば有用なアジュバントとして論述されているサイトカインのような上述の免疫調節物質の形で、第1、第2及び/又は第3の部分をコードする領域を含有する核酸により形質転換され得る。この実施形態の好ましいバージョンは、類似体のためのコーディング領域及び免疫調整剤のためのコーディング領域を異なる読取り枠内で又は少なくとも異なるプロモータの制御下で有することを包含している。かくして、免疫調整剤に対する融合パートナとして類似体又はエピトープが産生されることが回避される。代替的には、2つの全く異なるヌクレオチドフラグメントを、形質転換剤として使用することができる。当然のことながら、同じ読取り枠内に第1及び/又は第2及び/又は第3の部分を有することで、発現産物として本発明の類似体が提供され得、かかる実施形態は本発明に従って特に好まれる。
【0119】
本発明のその他の免疫原
レプトスピラ属由来の抗原又は核酸の使用に対する代替案として、抗イディオタイプ抗体、又さらにはレプトスピラ属由来の抗原を模倣するミモトープさえ用いることにより免疫化を行なうこともまた可能である。レプトスピラ属エピトープを模倣する抗イディオタイプ抗体を調製するための技術は、当該技術分野において既知であり、モノクローナル抗レプトスピラ属抗体の提供とそれに続く前記レプトスピラ属抗体のイディオタイプに結合する抗体の後続する産生を必要とする。ミモトープは、レプトスピラ属抗原を特異的に結合させる抗体に対するファージ提示法でスクリーニングされるランダムペプチドのライブラリから単離され得る。
【0120】
免疫応答の増強
抗原/免疫原の一部分はワクチンについて充分免疫原性であるが、多くの場合において、免疫応答を増強することが有利となる。
【0121】
免疫学の初期の時代以降、免疫を付与することが望まれる場合に抗原だけが重要なのではないということがわかってきた。(例えば診断目的で抗体を発生させるのに用いられるもののような)数多くのワクチン及びその他の免疫原性組成物は、多くのその他の特長を含むが、その中でも2つの最も重要な特長は、1)免疫原性担体及び2)アジュバントである。
【0122】
担体とTエピトープ
免疫原性担体は、通常、抗原に対し化学的にカップリングしてその免疫原性をより大きくするポリペプチド又はタンパク質である。過去30年間で、免疫原性担体タンパク質は多数のTエピトープを含むため、これらがまとまって免疫原(その担体部分を含む)が確実にTリンパ球を刺激できることを確実にし、これにより細胞毒性T細胞の活性化及び増殖、又はB細胞の増殖、及び後続する抗体産生が促進されるというように、免疫原性担体タンパク質はその効果を発揮するということが明らかになってきた。
【0123】
従来、かかる担体分子は、抗原に対する化学的連結を介してコンジュゲートし、かくして抗原/担体又はハプテン/担体接合体を提供する。この用途のための典型的な担体タンパク質は、普遍的に認知されている抗原、すなわち、従来の担体分子キーホールリンペットヘモシアニン(KLH)、破傷風トキソイド、ジフテリアトキソイド及びウシ血清アルブミン(BSA)といったタンパク質である。
【0124】
近年そして組換え型遺伝子技術の出現後、融合タンパク質を提供するべく担体タンパク質がタンパク質抗原に融合されるこの従来のアプローチの改良版が使用されてきた。このアプローチは、抗原が担体タンパク質内に挿入されるかその逆の形態又は担体タンパク質及び抗原が端部同士融合されている形態といった全ての形をとり得る。レプトスピラ属に由来する単一のタンパク質抗原での免疫化が考慮されている本発明の実施形態においては、免疫原の特性についての制御が大幅に増強されていることから、このアプローチが好まれる。
【0125】
このアプローチのさらに一層最近のバージョンでは、完全担体タンパク質に代って確定した短いTエピトープが利用される。1つの動物種又は動物個体群の中の個体の大部分において活性である数多くの天然に発生する「無差別」(ユニバーサルとしても知られる)T−細胞エピトープが存在する。
【0126】
無差別エピトープは、本発明に従うと、破傷風トキソイド(例えばP2及びP30エピトープ、例えば国際公開第00/20027号パンフレット参照)、ジフテリアトキソイド、インフルエンザウイルスヘマグルチニン(HA)及びP.ファルシパラム(Falciparum)CS抗原からのエピトープといった天然に発生するヒトT−細胞エピトープであり得る。
【0127】
長年にわたり、一定数のその他の無差別T細胞エピトープが同定されてきた。特に、異なるHLA−DR対立遺伝子によりコードされたHLA−DR分子の大部分を結合させる能力をもつペプチドが同定されてきており、これらは全て、本発明に従って用いられる類似体の中に導入されるべく可能性のあるT細胞エピトープである。全て本明細書に参照により援用される以下の参考文献中で論述されているエピトープも参照のこと:国際公開第98/23635号パンフレット(フレーザー(Frazer)IHら、クイーンズランド大学に譲渡済み);サウスウッド(Southwood)Sら、1998年、J.Immunol.第160号:3363−3373頁;シニガーリヤ(Sinigaglia)Fら、1988年、Nature第336号:778−780頁;シック(Chicz)RMら、1993年、J.Exp.Med.第178号:27−47頁;ハマー(Hammer)Jら、1993年、Cell、第74号:197−203頁;及びフォーク(Falk)Kら、1994年、Immunogenetics、第39号:230−242頁。後者の参考文献は同様に、HLA−DO及び−DPリガンドをも扱っている。これら5つの参考文献中で列挙されている全てのエピトープは、それらと共通のモチーフを共有するエピトープと同様、本発明において使用されるべき候補天然エピトープとして適切なものである。
【0128】
代替的には、エピトープは、MHCクラスII分子の大部分を結合させる能力をもつあらゆる人工的T細胞エピトープであり得る。これに関連して、国際公開第95/07707号パンフレット及び対応する論文アレクサンダー(Alexander)Jら、1994年、Immunity第1号:751−761頁(両方の開示共本明細書に参照により援用される)で記述されているパンDRエピトープペプチド(「PADRE」)は、本発明に従って使用されるべきエピトープとしての有利な候補である。これらの論文中で開示されている大部分の有効なPADREペプチドが、投与された時の安定性を改善するべくC及びN末端にD−アミノ酸を担持しているという点に留意すべきである。しかしながら、本発明は、主として、レプトスピラ属からのタンパク質抗原内に適切なエピトープを取込むことを目的としており、これは後にMHC−II分子による提示を可能にするためにAPCのリソソーム区画内部で酵素により分解されるべきであり、従って本発明で使用されるエピトープ内にD−アミノ酸を取込むことは得策ではない。
【0129】
特に好ましい1つのPADREペプチドは、アミノ酸配列 AKFVAAWTLKAAA又はその免疫学的に有効な部分列を有するものである。このペプチド及び同じMHC制限の欠如を有するその他のエピトープは、本発明に従って用いられる免疫原中に存在し得る好ましいT細胞エピトープである。
【0130】
その他のカップリング及び融合剤
例えば、APC又はB−リンパ球に対し免疫原をターゲティングすることが有利であり得る。これは、B−リンパ球特異的表面抗原又はAPC特異的表面抗原に対する特異的結合パートナへのカップリングによって(又は、このような特異的結合パートナをコードする核酸配列に対して核酸免疫原を融合することによって)達成可能である。数多くのこのような特異的表面抗原が当該技術分野において知られている。例えば、該結合パートナは、B−リンパ球及びAPC上にレセプタが存在する炭水化物であり得る(例えばマンナン又はマンノース)。同様に、APC又はリンパ球上の表面分子を特異的に認識する抗体フラグメントを使用することもできる(該表面分子は、例えばマクロファージ及び単球のFCγRIなどのFCγレセプタ、又は代替的にはCD40又はCTLA−4などのその他のあらゆる特異的表面マーカーであり得る)。これらのターゲティング分子例の全てがアジュバントの一部分としても使用可能であるということに留意すべきである。以下を参照のこと。
【0131】
免疫応答の増強を達成するための一定の細胞型に対する免疫原のターゲティングに対する代替案又は補足として、免疫系を刺激する分子に対するカップリングによって(そしてここでも又、かかる分子をコードする核酸に融合するタンパク質免疫原をコードする核酸を有することによって)免疫系の応答性レベルを増大させることが可能である。標準的な例はサイトカイン、及び熱ショックタンパク質又は分子シャペロンならびにその有効部分である。適切なサイトカインは、通常ワクチン組成物中でアジュバントとしても機能することになるもの、すなわち例えばインタフェロンγ(IFN−γ)、インタロイキン1(IL−1)、インタロイキン2(IL−2)、インタロイキン4(IL−4)、インタロイキン6(IL−6)、インタロイキン12(IL−12)、インタロイキン13(IL−13)、インタロイキン15(IL−15)、及び顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM−CSF)である;代替的には、サイトカイン分子の機能的部分で充分であり得る。アジュバント物質としてのかかるサイトカインの使用に関しては、以下の論述を参照のこと。熱ショックタンパク質又は分子シャペロンの制限的意味のない例は、HSP70(熱ショックタンパク質70)、HSP90(熱ショックタンパク質90)、HSC70(熱ショック類似体70)GRP94(gp96としても知られている、ウェアーシュ(Wearsch)PAら、1998年、Biochemistry第37号:5709−19頁参照)及びCRT(カルレチクリン)である。
【0132】
免疫賦活分子のその他の例としては、毒素、例えばリステリオリシン(LLO)、脂質A及び易熱性エンテロトキシンがある。同様に、MDP(ムラミルジペプチド)、CFA(完全フロインドアジュバント)及びトレハロース・ジエステルTDM及びTDEのような数多くのマイコバクテリア誘導体が、有利な可能性である。
【0133】
最後に、免疫原は、抗体と共に又は抗体にカップリングされた状態で、免疫系に対する免疫原の提示を増強する分子部分を内含し得る(ここでも又、本発明のこの態様は同様に、タンパク質抗原をコードする核酸を用いた場合に達成可能であり、ここで該分子部分は核酸によってコードされる)。当該技術分野では、この原理のいくつかの例が示されている。例えば、自己アジュバント作用性ポリペプチドを提供するべく、ボレリア・ブルグドルフェリー(Borrelia burgdorferi)タンパク質OspA内のパルミトイル脂質化を利用することができるということがわかっている(例えば国際公開第96/40718号パンフレットを参照のこと)。脂質化されたタンパク質は、抗原決定基の複数提示を結果としてもたらす、ポリペプチドの脂質化アンカー部分とそこから突出する分子の残りの部分からなるコアを持つミセル様の構造を形成すると思われる。従って、異なる脂質化アンカーを用いたこのアプローチ及び関連アプローチの使用(例えばミリスチル基、ミリスチル基、ファルネシル基、ゲラニル−ゲラニル基、GPI−アンカー、及びN−アシルジグリセリド基)は、特に組換えにより産生されたタンパク質内へのこのような脂質化アンカーの提供がかなり容易であり、例えば融合パートナとしての天然に存在するシグナル配列の使用しか必要としないことから、本発明の好ましい実施形態である。
【0134】
もう1つの可能性は、補体因子C3のC3dフラグメント又はC3自体の使用である(デンプシー(Dempsey)ら、1996年、Science第271号、348−350頁及びルー(Lou)及びコーラー(Kohler)、1998年、Nature Biotechnology第16号、458−462頁)。
【0135】
もう1つのアプローチには、多数の同一の抗原決定基の提示を可能にする不活性担体バックボーンに対する抗原のカップリングが含まれる。これは、或る種の分子に対して必要とあらば上述の分子免疫性エンハンサの外来性Tエピトープその他と共に免疫原を共有結合によりカップリングすることによって達成される。かかる不活性担体としては、例えばポリヒドロキシポリマー、特に炭水化物例えばデキストラン(例えばリーズ(Lees)Aら、1994年、Vaccine第12号:1160−1166頁;リーズ Aら、1990年、J Immunol.第145号:35943600頁参照)といった重合体を使用できるが、マンノース及びマンナンも同様に有用な代替物である。例えば大腸菌及びその他の細菌からの内在性膜タンパク質もまた有用な接合パートナである。
【0136】
アジュバント
上述の担体及びカップリング剤の使用を補足するもの又はその代替物として、免疫原性アジュバントの使用も同様に非常に重要である。
【0137】
ワクチンのためのアジュバント効果を達成するさまざまな方法が知られている。一般的な原則及び方法は、共に本明細書に参照により援用される「The Theory and Practical Application of Adjuvants」、1995年、ダンカン(Duncan)E.S.スチュワート−タル(Stewart−Tull)(編)、John Wiley & Sons Ltd、ISBN 0−471−95170−6、及び「Vaccines:New Generation Immunological Adjuvants」、1995年、グレゴリアディス(Gregoriadis)Gら(編)、Plenum Press、New York、ISBN 0−306−45283−9、の中で詳述されている。
【0138】
適切なアジュバントの限定的意味ではない例は、免疫ターゲティングアジュバント;毒素、サイトカイン及びマイコバクテリア誘導体のような免疫調節アジュバント;油状製剤;重合体;ミセル形成アジュバント;サポニン;免疫賦活複合体マトリクス(ISCOMマトリクス);粒子;DDA;アルミニウムアジュバント;DNAアジュバント;γ−イヌリン及び封入アジュバントからなる群から選択される。さらに、免疫系を刺激するため、免疫原をターゲティングするため又は免疫系に対する提示を増強するための以上で論述した全ての分子が原則として本発明によるアジュバントとしても有用である。
【0139】
アジュバントの適用には、緩衝生理食塩水中の0.05〜0.1パーセント溶液として一般に用いられる水酸化アルミニウム又はリン酸アルミニウム(ミョウバン)といった作用物質の使用、0.25パーセント溶液として使用される糖の合成重合体(例えばCarbopol(登録商標))との混和、それぞれ30秒〜2分間70°〜101℃の範囲の温度での熱処理によるワクチン中のタンパク質の凝集が含まれ、また、架橋剤を用いた凝集も可能である。アルブミンに対するペプシン処理済み抗体(Fab フラグメント)を用いた再活性化による凝集、グラム陽性菌のリポ多糖類構成要素又は内毒素又はC.パルバム(parvum)といった細菌細胞との混合、マンニドモノ・オレアート(アラセルA(Aracel A))といった生理学的に許容される油状媒体中のエマルジョン又はブロック代用品として用いられるペルフルオロカーボン(フルオゾル(Fluosol)−DA)の20パーセント溶液でのエマルジョンも同様に利用可能である。スクアレン及びIFAのような油との混和も好まれる。
【0140】
本発明に従うと、DDA(ジメチルジオクタデシルアンモニウムブロミド)が、DNA及びγ−イヌリンと同様、有利なアジュバント候補であるが、フロインド完全及び不完全アジュバントならびにクイラージャ(quillaja)サポニン例えばQuil A及びQS21もRIBIと同様に有利である。さらなる可能性は、モノホスホリル脂質A(MPL)、上述のC3及びC3d、及びムラミルジペプチド(MDP)である。リポソーム製剤も同様に、アジュバント効果を付与するものとして知られており、従ってリポソームアジュバントが本発明に従って好まれる。
【0141】
また、免疫賦活複合体マトリクス型(ISCOM(登録商標)マトリクス)のアジュバントは、特にAPCによるMHCクラスII発現をアップレギュレートする能力をもつことから、本発明に従った好ましい選択肢である。ISCOM(登録商標)マトリクスは、クイラージャサポナリア(Quillaja saponaria)由来の(任意に分留された)サポニン(トリテルペノイド)、コレステロール及びリン脂質からなる。免疫原性作用物質と混和された時点で、結果としての粒子状製剤は、サポニンが60〜70%w/w、コレステロール及びリン脂質が10〜15%w/w、タンパク質が10〜15%w/wを構成するISCOM粒子として知られているものである。免疫賦活複合体の組成及び用途に関する詳細は、例えば、アジュバントを扱っている上述のテキストの中に見られるが、モレーン(Morein)Bら、1995年、Clin.Immunother.第3号:461−475頁ならびにバール(Barr)IG及びミッチェル(Mitchell)GF、1996年、Immunol.and Cell Biol.第74号:8−25頁(両方共本明細書に参照により援用される)も完全な免疫賦活複合体の調製についての有用な指示を提供している。
【0142】
アジュバント効果を達成するもう1つのきわめて有用な(ひいては好ましい)可能性は、(本明細書に参照により援用される)ゴスラン(Gosselin)ら、1992年の中で記述されている技術を利用することである。簡単に言うと、本発明の抗原のような適切な抗原の提示は、単球/マクロファージ上のFcγレセプタに対する抗体(又は抗原結合性抗体フラグメント)に対して抗原をコンジュゲートさせることによって増強され得る。特に、抗原と抗FcγRIの間の接合体が、ワクチン接種の目的において免疫原性を増強させることが実証されてきた。
【0143】
その他の可能性には、上述のターゲティング及び免疫調節物質(すなわちサイトカイン)の使用が関与する。これに関しては、poly I:Cのようなサイトカインの合成誘導物質も可能性がある。
【0144】
適切なマイコバクテリア誘導体は、ムラミルジペプチド、完全フロインドアジュバント、RIBI及びトレハロース・ジエステル例えばTDM及びTDEからなる群から選択される。
【0145】
適切な免疫ターゲティングアジュバントは、CD40リガンド及びCD40抗体又はその特異的に結合するフラグメント(以上の論述を参照のこと)、マンノース、Fab フラグメント及びCTLA−4からなる群から選択される。
【0146】
適切な重合体アジュバントは、デキストラン、PEG、デンプン、マンナン、及びマンノースなどの炭水化物、及びラテックス例えばラテックスビーズからなる群から選択される。
【0147】
免疫応答を調節するさらにもう1つの有利な方法は、「仮想リンパ節」の中に(任意にアジュバント及び薬学的に許容される担体及び媒体と共に)免疫原を含み入れることにある。国際公開第99/44583号パンフレットを参照のこと。VLN(薄い管状のデバイス)がリンパ節の構造及び機能を模倣する。皮ふの下にVLNを挿入することでサイトカイン及びケモカインの急増を伴う無菌の炎症部位が作り上げられる。T及びB細胞ならびにAPCは危険信号に急速に応答し、炎症部位に帰還し、VLNの多孔質マトリクスの内部に蓄積する。抗原に対する免疫応答を開始させるのに必要とされる所要抗原用量はVLNを用いた場合に削減されること、そしてVLNを用いたワクチン接種により付与される免疫防御が、アジュバントとしてRibiを用いた従来の免疫化を超えたということが示されている。
【0148】
ワクチンの微粒子製剤は、数多くのケースで、タンパク質抗原の免疫原性を増大させることが示されてきており、従って本発明のもう1つの好ましい実施形態である。微粒子は、重合体、脂質、炭水化物又は粒子を作るのに適したその他の分子と抗原との共製剤として作られるか、そうでなければ免疫原自体のみで構成された均質な粒子であり得る。
【0149】
重合体ベースの微粒子の例としては、重合体及び抗原が固体粒子の中に凝縮されているPLGA及びPVPベースの粒子(ガプタ(Gupta)RKら、1998年)がある。脂質ベースの粒子は、ミセル内に抗原をエントラップする脂質(いわゆるリポソーム)のミセルとして作ることができる(ピエトロボン(Pietrobon)PJ、1995年)。炭水化物ベースの粒子は標準的に、でんぷん又はキトサンといった適切な分解性炭水化物で作られている。炭水化物と抗原は、重合体粒子において用いられるものと類似したプロセスの中で混合され、粒子の中に凝縮される(カース(Kas)HSら、1997年)。
【0150】
抗原のみで構成された粒子は、さまざまなスプレー及びフリーズドライ技術により作ることができる。本発明の目的に特に適しているのは、制御されたサイズの非常に均質な粒子を作るのに用いられる超臨界流体技術である(ヨーク(York)P、1999年及びシェクノフ(Shekunov)Bら、1999年)。
【0151】
抗菌治療
原因物質が細菌であることを知ると、MSを治療又は改善するための直接的な抗菌治療も開始できることになる。しかしながら、レプトスピラ属の予想ライフサイクルからみて抗菌治療を疾患の発達と同期化すべきであることが妥当である、という点に留意しておくことは、全く重要でないということはない。
【0152】
しかしながら、一般的に本発明はまた、多発性硬化症(MS)に罹患しているヒトの対象において、MSを治療又は改善するための方法であって、L.インテロガンスに対する細菌毒性又は静菌効果を示す治療上有効量の抗生物質を投与することを含む方法にも関する。
【0153】
当該技術分野において既知のあらゆる抗菌原理が本発明のこの側面において利用可能である。しかしながら、レプトスピラ属がヒト免疫系から脱出できるようにする機序の1つが、免疫系にアクセス不可能なシストを形成するスピロヘータの能力にあると考えられている。最近の研究は、細菌が(細菌間化学シグナリングの形での)原始的な形態の伝達の能力を有することを示しており、感染を受けた人の免疫学的反撃の下で細菌が苦しみ始めた時に、かかるシグナリングの結果としてレプトスピラ属によるシスト形成が起こると考えられている。従って細菌間のシグナリングに干渉する能力をもつ抗生物質を利用することが好ましい。
【0154】
しかしながら、そうでなければ、既知の事実上あらゆる抗菌原理を利用することが可能であり、従って抗生物質は好ましくは、抗体又はそのフラグメント、バシトラシン、セファロスポリン、シクロセリン、ペニシリン、リストセチン、バンコマイシン、アンフォテリシンB、コリスチン、イミダゾ−ル、ナイスタチン、ポリミキシン、クロラムフェニコール、エリスロマイシン、リンコマイシン、テトラサイクリン、アミノグリコシド、ナリジクス酸、ノボビオシン、ピリメンタミン、リファンピン、スルホンアミド、トリメトプリムからなる群から選択される。
【0155】
抗体の使用(受動免疫化)は、これがまさに上述の能動免疫化原理と多くの共通点を有することから、特に注目に値する。モノクローナル抗体での受動免疫化は、ポリクローナルの投与が能動免疫化と同じ副次的な免疫学的効果を提供することになるのに対し、二次免疫機序が活性化されないという欠点を有すると思われる。
【0156】
いずれにせよ、抗生物質(それが古典的抗生物質であろうと抗体であろうと)は好ましくは、レプトスピラ属が活性である場合にその効果をもたらすべく脈管系からCNS内に入る能力を有しているべきである。最も好ましい抗生物質はテトラサイクリンである。
【0157】
本発明によると、病原性を低減させる又は調節するさらなる治療法と抗生物質治療を組合わせることが有利であり、このさらなる治療法は、抗炎症性治療法、レプトスピラ属毒素結合化合物による治療、レプトスピラ属毒素の産生を阻害する化合物による治療及びレプトスピラ属毒素の分解を直接的又は間接的に促進する化合物による治療からなる群から選択される。これらの実施形態は、レプトスピラ属と闘うことの有害な効果を削減することを目的としている(レプトスピラ属毒素ならびに局所的炎症の両方共がMS発作の悪化に寄与し得る)。
【0158】
好ましい実施形態においては、抗生物質(又は抗体)は、MSの発作中又は発作後早期に投与される。この背後にある根本的理由は、レプトスピラ属が、感染を受けた個体の免疫系を脱出する直前にすなわちそれらが抗生物質の攻撃を最も受けやすいと予想されている状態で攻撃されるという点にある。
【0159】
上述の全ての抗菌治療は、従来通りに、すなわち、患者の年齢、身体条件及び体重ならびに感染が という事実を考慮に入れて、適用されることになる。
【0160】
MSの診断及び監視
本発明は同様に、MSの進行を診断し監視する手段をも提供している。MSに罹患している疑いのある患者からの試料中のL.インテロガンス由来の物質の発見は、前記患者が実際にMSに罹患していることのきわめて優れた表示である。
【0161】
試料中のL.インテロガンスの判定のための数多くの方法のうちのいずれも利用することができる。例えば、さまざまなイムノアッセイ(RIA、ELISA及び捕捉用作用物質としての抗L.インテロガンス抗体の使用に依存するその他のアッセイ)が有用である。例えば、定着した抗体を用いたL.インテロガンス物質の捕捉とそれに続く異なるL.インテロガンス由来エピトープを結合させる抗体の適用が1つの選択肢であるが、第1の抗体での捕捉とそれに続く抗体結合抗体での第1の抗体の捕捉も又1つの可能性である。当業者であれば、適切なアッセイの設定をいかに考案するかがわかるであろう。
【0162】
代替的には、RCRベースのアッセイのようなさまざまな分子増幅アッセイを用いて、試料中のL.インテロガンスの直接的な検出及び/又は定量化を達成することができる。L.インテロガンスに特異的な試料中の核酸が、PCR手順(又は核酸を増幅する能力をもつその他のあらゆる分子増幅プロセス)の中で用いられるL.インテロガンス特異的プライマを入念に選択することによって増幅され、その後、任意に標識されたL.インテロガンス特異的捕捉プローブを利用するアッセイにおいて、増幅された物質の存在が検出/定量化される。本発明者らは、現在、ウー(Woo)ら、1997年(参照文献リストを参照のこと)に記述されているプロトコルを使用している。
【0163】
本発明のもう1つの方法は、人がMSに罹患しているリスク又はMSを発症するリスクを評価するもので、この方法には、人から得た試料を、該試料中にレプトスピラ属に一般的に反応する抗体及びL.インテロガンスと特異的に反応する抗体が存在することを判定する試験にその付すことが含まれる。このような試験の背後にある根本的理由は、レプトスピラ属に一般的に反応する抗体の存在は通常はリスクの減少(交差反応する抗体からの防御による)を意味し、一方その試料がレプトスピラ属に一般的に反応する抗体とL.インテロガンスと特異的に反応する抗体の両方を含むことの実証はリスクの増大と相関する(これは、非特異的抗体により付与される免疫性がL.インテロガンスに対する防御免疫を付与するのに不充分である場合にのみ特異的反応性をもつ抗体がその試料中に存在することになるという仮定に基づいている)ということにある。
【0164】
その結果、一般的に反応する抗体も、L.インテロガンスに特異的な抗体も存在しないことの実証は、その人がMSに罹患しているリスク又はMSを発症するリスクが平均であることと相関する。
【0165】
ここでも又、これらのアッセイは、捕捉プローブとしてのL.インテロガンス及びレプトスピラ属物質及び当該技術分野において一般に承認されている方法による結合済み抗体の後続する視覚化を用いて、規格化された要領で実施可能である。
【0166】
1つの異なるアプローチは、一部の患者の体内のレプトスピラ属が補体媒介型溶解を回避する能力をもつという発見事実に基づいている。MSの発生を可能にすることになるのはこのようなレプトスピラ属と患者の間の相互作用であり、従って、適切なレプトスピラ種をその血清と共に(代替的補体経路を介して)溶解させるその人物の能力を単純に測定することも又可能である、ということが仮定されている。
【0167】
上述の診断方法における精度を増大させるために、これらの方法を並行して実施して(これらのアッセイのうちの少なくとも2つ)、各アッセイからの発見事実を統合することが可能となるようにすることもでき、このことは当然、MSのリスク増大の独立した複数の兆候により、その人がMSに罹患しているか又はMSを発症する確率が高いという仮定が強化されるということを意味している。
【0168】
驚くべきことに、本発明者は、レプトスピラ属抗体の判定のための1つの標準的アッセイ、すなわち間接赤血球凝集アッセイ(IHA)が、MS患者内のレプトスピラ属抗体を検出する能力をおおむねもたず、一方かかる抗体が「実施例」の部の免疫螢光アッセイ(IFA)などを用いることで検出可能である、ということを発見した。その理由は、MS患者由来の血清はIHA内での凝集反応を遮断する能力をもつ物質(おそらく抗体)を含み、一方このような遮断構成要素がレプトスピラ症に罹患している患者由来の血清中には存在しないためと思われる。
【0169】
こうして、MSのきわめて特異的な診断、すなわちレプトスピラ症検出用に設計されたIHAと組合わされたレプトスピラ属又はレプトスピラ属に対する抗体(上記参照)の検出及び/又は定量化を含む試験が可能となる。IHAが陰性であり、もう一方の試験が陽性である場合には、その試料がMSに罹患している患者又はMSを発症するリスクのある患者に由来するものである確率が高い。
【0170】
実際、この発見事実は、単にMSを診断する目的のためよりもさらに一般的に適用可能なものであると考えられている。従って本発明はまた、赤血球凝集アッセイにおける抗原抗体反応の阻害に基づく、特定の抗原についての慢性疾患リスクの評価を目的とした診断アッセイをも考慮しており、ここでその抗体は、慢性疾患リスクが増大していると確定した個体に由来する血清の非存在下において、与えられた抗原に特異的である。個体からの血清を希釈し、抗原に対する抗体と混合する。前記抗体がその後前記抗原と反応できなくなると、それは関連する病原体によりひき起こされる慢性疾患のリスクの増大として解釈される。さらに、抗体−抗原カップリングの阻害を可能にする希釈度が高くなればなるほど、慢性疾患のリスクは高くなる。該評価は、慢性のレプトスピラ・インテロガンス関連疾患すなわちMSのリスクをひき起こすレプトスピラ症について概略的に示されているのと全く同様に評価を行うことが可能である(実施例3に示されている通り)。例えば、ボレリア・ブルグドリフェリーs.l.によってひき起こされるライム病を診断するにあたっては、レプトスピラ属抗原はボレリア・ブルグドリフェリー菌又はボレリア・ブルグドリフェリー特異的抗原で置換えられる。レプトスピラ属抗体はボレリア・ブルグドリフェリー特異的抗体で置換えられる。抗原−抗体反応を阻害する個体からの血清が、慢性ボレリア・ブルグドリフェリー関連疾患のリスクの増大した患者から誘導されたものとみなされることになる。精確に言うと、同じ原理を、その他の病原体によってひき起こされる慢性疾患のリスクを評価するためにも使用することができる。
【0171】
上述のレプトスピラ属関連の方法は同様に患者の体内のMSの進行を監視するためにも使用可能である。この方法はこの場合、経時的に差異が見られるか否かを判定するため同じ試験を用いて複数の測定を必要とする。こうして、1)患者の疾患状態の単純な経時的評価のみならず2)本明細書に記述されている通りの抗MS治療の効能の評価を可能にする。さらに、本発明の診断方法の後に本発明の治療法が行なわれてもよいし、或いは又その逆であってもよい。
【0172】
本発明のキット及び薬剤パッケージ
本発明の治療及び診断的側面において用いられる手段がそれ自体既知のものであるにせよ、MSの治療、予防及び診断のためのその使用は、発明者らが新規であると考えているものである。
【0173】
従って、以上で記述されている治療又は予防用の作用物質のうちのいずれか1つ及びMSの療法又は予防においてそれらを使用するための(書面による)指示事項を含むパッケージが、MSの診断/監視及び治療/予防の組合せのためのパッケージ/キットと同様に新規でかつ発明性のあるものと考えられている。
【実施例】
【0174】
[実施例1]
原因不明の疾患を探究する地方病の安定の研究
(MSのような)出現しかつ再出現する疾患が、科学界で増々関心を集めてきている。これらの懸念は、疾患が人と疾患因子保有体の間の新たな相互作用に起因して出現するものであるという考え方に基づいている。数多くのケースでこれは事実であるが、本発明は、疾患の出現と思われるものが実は地方病の安定を映し出す動物原性感染症であり得るという考えに基づいている。かくして出現は、接触の増加ではなくむしろ自然に対する接触の欠如から発生している。
【0175】
かくして、この発見事実の基礎を成す調査は、既知の病因的作用因子を全くもたない人間の疾患(この場合MS)が実際には、保有宿主(この場合ドブネズミ)における地方病の安定を映し出す動物原性感染症疾患であるということが仮定されている、地方病の安定の研究に基づいている。本発明は、ヒトについての病因的作用因子として動物原性感染症からの病理的作用因子を同定する目的で、地方病の安定の研究を初めて利用したものであると考える。
【0176】
本発明を導いた基礎を成す推論は、以下に提示されており、4つの基本的議論に要約される:
【0177】
A) 1つの疾患が動物原性感染症である確率について:
以下の引用から明らかであるように、動物原性感染症疾患は、ヒトにおいて有意な役割を果たす:
「ヒトにおいて病原性をもつものとして知られている1415種の内部寄生性感染性生物が存在し、その多くは近年になってようやく認識されてきたものである。これらの病原体は巨大な包括的疾患負担の原因であり、年間1400万人のヒトの死をひき起こしている」(ウールハウス(Woolhouse)、2002年)。
及び
「大部分のヒト病原体(868種:全体の61%)は動物原性感染症である。これらの大部分は、有蹄動物、肉食動物及び/又はげっ歯類といった病因保有体に結びつけられており、一方で実質的な少数派が、霊長類、コウモリ、海洋哺乳動物、鳥類及びその他の脊椎動物に結びつけられている」(ウールハウス、2002年)。
「病害対策及び予防センター(CDC)の急性感染病予防及び対策戦略は、ワクチン予防可能な小児疾患、性感染症、肝炎並びに、従来の臨床ベースの又は実験室ベースの監視からワクチン接種又は抗菌化学療法のような介入活動の基礎が提供され得るその他の疾患で得た経験に基づいて大幅に開発された。動物原性感染症及び種を飛び越える因子によりひき起こされる疾患については、予防及び対策戦略はさまざまな基礎に由来してきた」(マーフィ(Murphy)、1988年)。
【0178】
1つの疾患が動物原性感染症あり得る率は5分5分を上回るということを述べる以外に、本発明者には、医学的調査において歴史的に多くの関心が動物原性感染症でない疾患に対し寄せられてきたということも明らかになった。これらは現行の調査においてさらに大きい確率を導くはずである。上述の著者らは共に、疾患のパターン変化を、新しい病因的作用因子からの又はヒトと自然の間の新しいさらに密な相互作用による帰結であると見ている。後者は、天然の伝染サイクルの「妨害」に結びつけられる。
【0179】
しかしながら、西欧文明を見ると、正に何か新しいものが存在することよりもむしろ何かが不在であることにいかに多くの問題が由来しているかが分かる。従って肥満を扱う場合、我々は数多くのケースで原因が運動不足にあるという結論を容易に下し得る。同様にアレルギーのケースでは、考えられる原因として自然感染の欠如が含み入れられてきた。しかしながら、感染力の低い疾患の増加をどのように説明できるのだろうか。
【0180】
B) 地方病の安定について
「地方病の安定は、高い感染レベルにもかかわらず臨床疾患がまれである1個体群の疫学的状態である。この概念は、牛におけるダニ媒介疾患のパターンを記述するために開発されたものである。しかしながら我々は、マラリア、風疹及び流行性耳下腺炎を含めた、公衆衛生において重要であるより広い範囲の疾患に適用可能な地方病の安定の一般モデルを提案している。我々は、地方病の安定が、(1)感染後の臨床疾患の確率又は重症度が年齢と共に増大すること及び(2)一回の感染の後、後続する感染が結果として疾患に至る確率は低減されること、のみを必要とするということを前提としている(コールマン(Coleman)及びウールハウス(Woolhouse)、2001年)。
【0181】
地方病の安定は通常、コールマン及びウールハウス(2001年)の場合もそうである1つの疾患の天然の宿主に関係づけられると理解されているが、感染性作用因子は反応して数多くの異なる種の中で類似の応答を誘導し得ることから、発明者らは、ヒト疫学がおそらく非ヒト種における地方病の安定を映し出すことができるという結論を下した。換言すると、該疾患はそのとき地方病の安定を映し出す動物原性感染症となり、該疾患の記述は図1aに示されている通りとなることが予想されるだろう。
【0182】
C) 空間的、時間的及び人口統計的次元について
複数の次元を用いることにより疫学を調査することが標準的な手順である。これらには、空間的、時間的及び人口統計的データが関与し得る。
【0183】
空間的次元は、往々にして異なる領域からのデータをプールしなくてはならない必要があることから、従来、好ましい次元ではない。標準的に、データの比較可能性に関して未解答の問題が存在することになり、このことは、研究者にとって魅力的でないように思われる。時間的次元はこのような問題の影響を受けず、或る空間の中で1つの時系列に従い、かくしてこのタイプの研究は、好ましい手段の1つである。人口統計学的次元は、男女比、リスク−グループなどといった全てのタイプの人口統計的クラスを含み、ハイリスク部域すなわち暴露部域に対する研究を方向づけするために用いられてきた。
【0184】
1つの疾患が異なる種における地方病の安定を映し出すことを仮定した場合、これらの次元のうちの2つは部分的に探索を補助できない可能性がある。時間的次元は、暴露が大きい場合には発症率(incidence)が高いということを通常仮定していることから役に立たない。特に高い暴露ピークは発症率の明確な降下を示し、統計学は、このような周期を重視することになるため、真の病因的作用因子と疾患の間の相関関係の仮説を拒絶することになる。
【0185】
人口統計的相関関係は、男女比が可変的になるため役立たない可能性がある。通常、男性は、少なくとも男性の方が農業及び狩猟により関与している西欧文化において動物原性感染症疾患において女性よりも一層暴露されている。低い暴露では、男性について発症率が高く女性は低い可能性があるが、両方の性別について暴露が増大するにつれ、発症率は男性について減少し女性について増大する。どちらの性別が最も強く暴露されているかを知るには、感染源がわかっている(食肉をとり扱うことによってか、庭仕事をすることによってか又は特定の環境内でその他の行為を行なうことによってか?)必要がある。この点の知識が欠如しているということは、男女比のような人口統計学の有用性が低いことを意味する。性別間での暴露差は、男性が低年齢で感染し、女性がより高年齢で感染するか又はその逆である状況を導き得る。
【0186】
しかしながら空間的次元は、病因的作用因子の探究において役立つ確率が高い。異なるスケールについての長時間にわたる平均有病率(prevalence)を用いることは、説得力ある証拠を作り上げるはずである。野生動物はより少ない種に削減されることになるため、病因保有体を撤底的に調べる上で、島の使用は特に役立つ。残念なことに、ヒトの個体群密度は低く、医療サービスは人口密度の高い地域の場合に比べ異なる特徴を有する可能性があり、このことは、分析が質の変動するデータを含むということを意味している。それでも、地方病の安定を映し出す動物原性感染症についての動物行動学的媒介物を探究する上で、病因保有体を同定するための空間的次元の検討が基軸となる。
【0187】
D) 指針と結論
いかに多くの異なるスケールが使用されようとも、空間的分析のみに基づいて何らかの健全な科学的結論を下すのは現実的ではない。空間的スケールは、同時に発生する保有宿主を同定するのに必要であるが、証拠負担を単独で担うことはできない。保有体を同定してしまっていることで、i)その他の次元を再構築し発症率及び男女比の意味を理解するか、又は(ii)分野を可能性ある動物行動学的媒介物にまで狭める機会が得られるはずである。後者の場合には、その他の次元を直接再構築するために、可能な動物行動学的作用物質を使用することが可能である。
【0188】
簡単に言うと、理想的な方法は以下の4つの部分を有し、ここで分析はaからdに段階的にか、又はaからc及びdまで直接的に移動することになる。
a) 空間パターンの一次的探査−保有体の探究、
b) 時間的及び/又は人口統計的次元の一次的再構築、
c) 二次的探査部分−病因的作用因子の探究、
d) 時間的及び/又は人工統計学的次元の二次的再構築
【0189】
さらに、疾患が、
・ 地理的格差、
・ そうでなければ信頼性の高いデータにおける男女比の矛盾する証拠、
・ 一部の時間スケールに対する環境容量及び密度の依存性を映し出す経時的安定性、
を示す場合そのアプローチが正当化されるということを付け加えることができる。
【0190】
地方病の安定の映し出しは、応用生態学において持続可能な収穫を考慮する上で用いられる周知の捕獲努力関係に似ている。通常、捕獲努力関係は、一定の与えられた船団サイズで捕獲されることになる魚の量を描写する。その他の数多くの生態学モデルと異なり、捕獲努力モデルは、その系にとっての平衡点を実証する統計モデルである。
【0191】
低い努力は低い収獲を生み出す。努力が増大するにつれて、その収獲の効果が資源の再生を低減させるまで、収獲は増大する。さらに努力を増大させると、資源の崩壊をひき起こす可能性がある。同様にして、地方病の安定を映し出す動物原性感染症疾患において、保有宿主がほとんど入手可能でなくなった時点で病気になる人はほとんどいなくなる。有病率は、暴露が増大するにつれて増大する。しかしながら暴露が増大するにつれて、多くの人がその青年時代に感染を受け、臨床疾患を発生させない。きわめて高い暴露で、疾患は崩壊する、すなわち全個体群がその青年時代に感染し、臨床症例は全く認められない。
【0192】
従って、捕獲努力モデルを疫学に平行移動させると、捕獲は疾患の年間発症率又は有病率を意味し、努力は保有体密度に似ている。かくして、単位努力あたりの捕獲(CPUE)或いはむしろ疾患の単位暴露あたりの有病率(PPUE)を描写し、これを保有体密度との関係においてプロットして最大持続可能有病率を求めることができる。モデルが正しい場合、対数変換によってか又は直接のいずれかで線形関係が観察されるはずである(図1b)。その結果、時間的変動にさほど敏感でない、理想的には多数年にわたる有病率により稀な疾患を描写することができる。同様に、捕獲努力関係の場合と同様に、伝染効率(捕獲能力)が経時的に変化する可能性があり、これが結果に影響を及ぼし得るということも予測できる(図1b)。さらなる詳細については、スパール(Sparre)及びシブレン(Sibren)、1998年を参照のこと。
【0193】
さらに、その他の生物学的免疫交差反応作用因子も異なる部域間の比較可能性を低減させうることから、かかる作用因子の考えられる相互作用に特に注意を払わなくてはならない。その他の生物学的免疫交差反応作用因子が全く存在しない場合、平均年間発症率又は有病率間の関係は図1に概略的に示されている通りである。防御を生成する付加的な作用因子が付加されるにつれて、非病原性作用因子と病原性作用因子の間の比率に正比例して疾患の確率は低下する(図7)。かくして、その他の経路によって誘導される防御免疫は、最大持続可能有病率のピークにおいてさえ、臨床疾患を無くする可能性がある。
【0194】
個々のレベルでは、既定の人が病原性株レベルが低くかつ非病原性交差耐性作用因子のレベルが高い地域で生活する可能性がある。この人が高い有病率の地域に移住させられた場合、疾患を発症するリスクは移住時のその人の年齢と逆相関することになる。かくして、低い有病率の理由を判定することは、それが、病原性作用因子の存在が低い、病原性作用因子の存在が高い又は交差耐性非病原性作用因子の存在が高い、という3つの異なる原因に由来する可能性があることから、きわめて困難である。
【0195】
既定の疾患についての移住者研究が、同じ交差防御性非病原性作用因子レベル内にどの地域が入るかを判定する上で一助となり得る。地域間の任意の移動方向について任意の年齢群について疾患発生リスクに対する影響が全く無い場合には、それらは地方病安定の同一ミラーに属している。先住民に比べて新しい地域に移動した時の高齢者のみについてリスクが減少した場合、もとの場所は、高レベルの交差耐性非病原性作用因子を提供している。同様にして、若い患者は、低リスク地域内での一定年数の後リスクが低くなるまで変化し得る。一定年数後により低いリスクが得られない場合、その地域の低いリスク状態は、発症性及び無発症性の両方の作用因子の不在によりひき起こされている。
【0196】
かくして、図7の全パターンの集合は、充分に特徴づけされたリスクをもつゾーン間の人々の移住を監視することによりリスクの変化を入念に評価することで行なわれ得る。
【0197】
この考え方を続行していくことにより、本発明者は、発症率の戻りが軽減することが期待できるということを発見した。当年度の発症率は、感受性の高い人々が「取込まれてされている」か、又は個体群から抜け出すにつれて次年度の発症率に影響を及ぼす確率が高い。今年度の高い発症率の後には翌年度の低い発症率が続く。このプロットは、人口増加のロジスティックモデルにおける比増殖速度対個体群サイズのプロットに類似している。地方病的に安定した疾患については、発症率あたりの発症率変化は下降し、個体群の長期発症率においてゼロになる(環境容量、図1c)。人間の人口統計データ、保有体宿主の挙動、感染度の変化などにより、直接的な線形関係が分断される可能性がある。かくして、パターンを識別し解釈することは困難であり得る。
【0198】
かくして、地方病安定のミラーという本発明者の作業定義は、例えば保有体密度として与えられた暴露と対数PPUEの間で直線である関係としてのみ提供すべきである可能性がある(図1b)、その理由は、それが最も安定し充分に試験された相関関係(漁業管理において)であるためである。
【0199】
結論
地方病の安定を仮定する疾患パターンの探査が新規のアプローチであると考えられているにせよ、必要条件が満たされていることをテストするための実質的な生態学的根拠が存在する。従って、病因的作用因子が未知である疾患の原因を発見する上でそれをテストし使用することが可能である。
【0200】
[実施例2]
MSをひき起こす確率の高い動物原性感染症の探究
疾患の疫学が不明瞭であることから、地方病の安定を映し出す動物原性感染症を探究する上での予備試験として多発性硬化症(MS)が選択された。例えばオーストラリア(ハモンド(Hammond)ら、2000年)での格差の報告は、該疾患の理解を進めることになる証拠を分析が提出できる確率を追加した。これはまた世界的スケールにまで展開し、そのパターンがこの独特の分布を有する特別な要因の展望を示している(図2a)。表面上は、ユーラシア人が他の民族集団に比べ高いリスクを有してきたと思われる。かくして、考えられる保有体に該疾患の経過を結び付けようとする場合、欧州文化に付随する全ての野生動物及び家畜が興味の対象となる。
【0201】
プロセス内で調査された考えられる全ての病原体保有者を扱うのではなく、むしろ本明細書では、空間的相関関係に基づき最も確率が高い候補であると思われるものを提示している。かくして本明細書は、MSの病因的作用因子としてのノルウェーラット(ドブネズミ)及びレプトスピラ属の分布を扱う。
【0202】
材料及び方法
地方病の安定を映し出す動物原性感染症の探査には今回はいかなる立証済み方法論もない。従って、このテストケースを実施する間に反復的に対処されて、方法論の問題が展開されてきた。ジェンセン(Jensen)(今号)で記述されているように、このプロセスはこのタイプの研究が理想的に次のものを含むという結論を導いた:
a) 空間パターンの一次的探査−保有体の探究、
b) 時間的及び/又は人口統計的次元の一次的再構築、
c) 二次的探査部分−病因的作用因子の探究、
d) 時間的及び/又は人工統計学的次元の二次的再構築。
【0203】
以下の節では、分析の中の4つのステップに関する情報が示されている。探査部分では、ラットに関する報告は、1つの接触尺度として処理されたという点に留意されたい。各接触は、病因的作用因子での感染の既定の確率に対応すると仮定される:すなわち
ラットの報告=ラットの活性×ヒトの活性=疾患の症例
【0204】
再構築の部分では、ラットの報告は、ヒトの活性について調整されラット活性の尺度を与えた:すなわち、
ラット活性/ヒト活性=疾患の症例数/ヒト活性=疾患の有病率
【0205】
分析を実施するのに必要とされる人口統計学、ラット出現数、多発性硬化症(MS)及びレプトスピラ症についての基本データは、表1に示されている。
【0206】
空間パターンの一次的探査−病原体保有者の探究
www.mst.dkで利用可能なデンマーク国内の19の州において報告されたラット出現数について、そしてデンマーク国内のMSの有病率についてデンマークMS記録簿からのデータに基づき、ローカルスケール分析が実施された。長期にわたる平均及び有病率データの使用により、感染とMS発症の間の期間延長といったような疫学的な側面が、起こりうる相関関係に影響を及ぼしたことが裏付けられるはずである。
【0207】
(クルツケ(Kurtzke)及びヘルトバーグ(Heltberg)、2001年)により提示された通りにフェロー諸島上での出現率を分析することによって中間スケール分析が実施され、ラットについての対応するデータが((ブロック(Bloch)、1999年)によりコンパイルされた。ドブネズミの島内の分布は数十年前には異なっていた可能性があるため、島内の3件及び4件の疾患からの発症率報告のみを使用した。
【0208】
世界的分布が、ノルウェーラット(グラーツ(Gratz)N.(日付不詳))及び(www.edlib.med.utah.edu/kw/ms/mml/ms_worldmap.html)からのMSの地図により示された。
【0209】
時間的及び/又は人口統計的次元の一次的再構築
MS及びラットについての捕獲努力関係を、ラット密度との線形関係について対数変換された単位暴露あたりの有病率(PPUE)により調査した。ラット密度は、各州内の住民数でラット観測数を除したものとして推定された。
【0210】
欧州におけるドブネズミの地理的分布の中心はスカンジナビア南部に割当てることができる。既定の種の密度がその分布の縁部よりも中心においてさらに大きいものであり得るという考え方に基づいて、欧州におけるMSの有病率の変動を分析した。従って、欧州でのMSについての近年のデータに基づいて、緯度10°及び経度58°でMSがさらに高頻度である確率が高いか否かが分析された(ロゼッティ(Roseti)、2001年)。
【0211】
2次的探査部分−病因的作用因子の探究
ドブネズミが考えられる保有体として同定されたことから、該分析のこの部分では、レプトスピラ症がMSと関連づけされる可能性が検討された。デンマークでの全てのレプトスピラ症診断は、凝集試験によりコペンハーゲンのSatens Serum Instituteによって実施されている。有病率データは1980〜2002年の最近の記録から取り上げた(レムケ(Lemcke)ら、近刊)。
【0212】
時間的及び/又は人口統計的次元の二次的再構築
MSがレプトスピラ属によりひき起こされるという仮定を行なうにあたり、レプトスピラ症が地方病の安定を映し出しているということも仮定される。従ってレプトスピラ症及びラットについての捕獲努力関係(PPUE)が、一次的再構築段階でMSとラットについて行なわれたように、調査された。
【0213】
最終的に、分析には、MSとレプトスピラ症の間の相互作用の分析が含み入れられた。レプトスピラ症の診断の後に感染を除去する抗生物質治療が続いていることから、平均に比べてレプトスピラ症に対して著しく高い関心を示す州の全体的MS発症率の低下が予想されると思われる。レプトスピラ症についての捕獲努力関係からの残余は、回復の尺度として取上げられた。(MSに変化するレプトスピラ症の確率を提示する)MSとレプトスピラ症の間の比率及びレプトスピラ症についての推定上の回復レベルが検討された。
【0214】
MSが実際に地方病の安定を映し出す動物原性感染症である場合、それは、その環境容量での個体群と類似した密度依存型変動を示すということが予想できる。病因的作用因子は「資源(resource)」としてヒトを用い、枯渇した時点で発症率は下降した。感受性の高いヒトの動員は経時的に変動する確率が高く、従って環境容量は経時的に動的である。
【0215】
デンマークにおけるMSの動態についての最初の描写は、雄、雌及び両方の性別について発症率対発症率変化をプロットすることにより実施された((MS発症率t−MS発症率t+1)/MS発症率))。これは、該疾患の動態に影響を及ぼす環境中の異なる設定を同定するために用いられた。
【0216】
地方病の安定の特徴づけは、年間MS発症率対ラット密度をプロットすることによって例示された。MS発症率はデンマーク多発性硬化症記録簿に由来した。ラット密度は、The Danish Pest infestation Laboratory (DPIL、Statens Skadedyrlaboratorium、1965−1994年)に対するドブネズミについての情報の要請に由来する。ラット密度は、DPILに対する合計要請数でドブネズミに関する特定的要請を除したものとして計算された。データは、DPILの場所に起因してジーランド島内のラット密度の表示としてのみ取上げることができる。従ってデータは、必ずしもデンマークの地域全体についての非常に優れた表示であるとはかぎらない。さらに、他のいかなるデータも1965年から1994年までの長い期間を網羅しているとは思われない。1981年からのデータは、それが報告中の誤りであるという仮定の下で、分析から排除された。この年からの報告は、その他の全ての記録が100〜200前後であるのに対し、472件である(平均:181 SD:76)。
【0217】
さらに、雌についてはラットの密度を存在数に等しく保ちながら雄については係数kをラット密度に乗じることにより、雄及び雌の年間発症率を別のx軸上でプロットした。この手順により、同じグラフ上で両方の性別についてのパターンを重複させることが可能になった。暴露差の尺度として、該係数を解釈した。最終的試験は、ラット密度の増大時点での雌雄比の変動の検討であった。
【0218】
統計学的分析
データの統計学的分析はかなり制限されている。結果の大部分は、標準スプレッドシート(マイクロソフトエクセル)内の直線回帰による分析である。評価の一次段階において、2つのその他のタイプの分析が実施された。
【0219】
フェロー諸島内でのMSとラットについてのデータは、2×3の度数分布表内で分析された。ドブネズミは、その有無で記載された。MSは1つ又は2つの疾患において有無で記された。
【0220】
欧州におけるMSの有病率の分析には29カ国が含まれていた。英国及びノルウェは数多くの利用可能なデータ及び地域的拡がりに起因して、各々北部及び南部に分割された。個々の国の中心に見られるものに基づいて各国に経度と緯度が割当てられた。これらの記録は次に、緯度10°、経度58°の推定上の最適値からの距離を計算するために使用された。さらに、有病率は、一年の公開年度に割当てられ、これは一部のケースでは有病率が複数の研究の平均であることを意味していた。有病率は、合計69回の観測で等式1に示されたモデル内の一般的線形モデルの中で分析された。
【0221】
等式1:MS prev = year dist to opt. longitude / dist to opt. latitude
なお式中、M S prev:100,000あたりのMSの有病率、Year;公表年度、Dist to opt, longitude:58°の経度からのずれ度、Dist to opt, latitude:10°の緯度からのずれ度。
【0222】
両方の分析共、SAS8.0統計ソフトウェア(SASinc.NC、米国)内で実施された。
【0223】
結果
空間パターンの一次的探査−病原体保有者の探究
デンマークの19の州全てにおいて、MS及びラットが見出される。ドブネズミの出現率と全体的MS平均発症率の間に正の相関関係が指摘される(図3a)。
【0224】
フェロー諸島内の17の島のうちの5島にMSが発見され、一方7島でラットが発見されている(表2)。ここでも又、相関関係は肯定的レベルのみならず否定的レベルでも適度にあてはまると思われる。相関関係は、統計的に有意なものであることが示された(P<0.006)。
【0225】
MSの全世界分布及びドブネズミの分布の地図は、一致している又は予想可能なほどに一致しているように思われる。MSについては、欧州、米国及び中東において高い発症率が見られる。ラットの出現率は同じパターンに従っており、肯定的レベルだけでなく否定的レベルでも相関関係をもつ。特に、ラットはアイスランド及びタスマニアにおけるMS、及びグリーンランド、北オーストラリア、アフリカ及びニューギニアにおけるMSの不在をも説明し得る。
【0226】
時間的及び/又は人口統計的次元の一次的再構築
MS及びラットについてのプロットされた捕獲努力関係は、かなり優れた線形関係を与え(図4a及び表3)、かくしてそれは地方病安定のミラーの作業定義にあてはまる。
【0227】
欧州におけるラットの地理的分布における中心は、スカンジナビア南部に割当てられた。MSは、この予測と類似した分布を有し、10°超及び10°未満(P<0.001、表4、図5a)の緯度及び58°超及び58°未満の経度でMSの有病率の有意な下降を示している(P<0.001、図5b)。さらに、何年もの間にMSの有病率が増大しているように思われる。緯度と経度の間の相互作用は、その範囲の中心にMSの下降が存在するということを示唆している。
【0228】
二次的探査部分−病因的作用因子の探究
言われている通り、レプトスピラ属感染は、MSについて考えられる病因的作用因子の1つであり得る。MSに関しては、レプトスピラ症の症例とラットに対する曝露の間には相関関係が存在すると思われる(図3b)。2つの州つまりリベ州とコペンハーゲン州が残りの州と異なっており、ここではラットの存在数レベルが低いのに多数のレプトスピラ症の症例が報告されている。
【0229】
時間的及び/又は人口統計的次元の二次的再構築
MSとラットについてのプロットされた捕獲努力関係は、受諾可能な線形関係を与えている(図4b)。従って、レプトスピラ症を地方病の安定を映し出すものとして描写することができる。レプトスピラ症についてPPUEをモデリングすることで、−0.34〜0.40の範囲内の残余が導かれる。これをレプトスピラ症についての相対的発見率の尺度として用いるとMS/レプトスピラ症比との優れた線形相関が得られる(図4c)。
【0230】
各々の発症率レベルでの発症率の変動のプロットは、低発症率での増加及び高発症率での発症率低下を示している。1960年〜1975年の期間に、発症率レベルは、4.5という発症率の前後を揺動したが、それは1976年から1989年の間に5.5という発症率の前後を揺動するまで移行した。1989年から1993年までは、この揺動は6.5という発症率の前後で発生した(図6a)。
【0231】
全てのケースについて発症率をプロットすることで、明確な鐘形の曲線は得られない(図6b)。むしろ、4.5と6の2つの揺動点に対応する2つの異なる発症率ピークが存在すると思われる。それでもなお、このパターン内に鐘形の曲線を識別することは可能である。
【0232】
雄と雌を分離し、それらを同じ曲線に付加することで、鐘形状のより明確な絵柄が得られるが、点が発症率のピークを膨らませていることから、線ははっきりと見えない(図6c)。重複を作り出すには、雄についてのラット密度が雌が経験するものの90%に設定されている別々のx軸上で各々の性別をプロットする必要がある。同様に、2つの独立して定義されたy軸’から見て、2つの性別がMSの発見レベルの差により説明され得る異なる発症率レベルを有することも明白である。最後に、雌雄比の変化は目立つものではないが(図6d)、幾分かの変動が指摘できると思われる(図6d)。
【0233】
論述
空間パターンの一次的探査−病原体保有者の探究
デンマーク市当局に対するラットの蔓延の複数の報告の間にある相関関係は、19州内のMSの有病率とかなり良く相関していると思われる。この現象が偶然発生する確率は査定し難い。その他の動物、例えばマウスも、単に一次産生に対する類似の依存性に起因して、デンマークにおけるラットと類似の分布を有し得る。
【0234】
フェロー島内では、MSはラット個体群を密に追従していると思われる。これは、ラットが蔓延した一部の島内のヒト個体群がかなり小さいものであることから、かなり驚くべきことである。同じことは、ラットが蔓延していない島についても言え、従って慎重に解釈しなければならない。ここでも又例えばパーキンソン病のようにその他の疾患もフェロー島のパターンと全く同一とは言わないまでも類似のパターンに入ることをも理由として、この証拠は弱いものである(ウエルマス(Wermuth)ら、1997年)。それでもなお、強い統計学的な意義が、MSがラットと結びつけられるという考えを裏づけしている。
【0235】
全世界スケールで見られる相関関係は、幾分か慎重に取り上げられなくてはならない。一般に、MSの診断及びドブネズミの識別のためのデータの無欠性が脅かされ同じ時期に更新されない可能性があることを理由として、ラージスケール評価の価値には限界があるのではないかという疑いをもたなくてはならない。それでも、全世界スケールでさえ相関関係が存在すると指摘するのは心丈夫である。しかしながら中間スケール及びローカルスケールの評価は、この場合により大きな証拠負担を担う。
【0236】
3つの異なるスケールは各々脆弱な証拠しか表わしていないが、互いに結びつけられた場合にさらなる演繹のための受諾可能な基礎を構築する。類似の存在数変動を示すデンマーク国内のその他の哺乳動物の懸念は、その他の相関関係により処理される。かくして、フェロー島には3種の哺乳動物しか存在しない(ブロック(Bloch)、1999年)。全世界スケールでその他の相関関係についても類似の論拠が有効である。従って結果は、ドブネズミとMSの間の密な連関を指摘している。
【0237】
時間的及び/又は人口統計的次元の一次的再構築
MS対ラットの捕獲努力関係はかなり明確であると思われる。ラットの密度と有病率をプロットすることで、鐘形曲線として認識できる何かが生成されるわけではないが、PPUE対ラット密度のプロットはきわめて明確である。その他のプロットが明確な相関関係を生み出していない理由は、ラットとヒトの個体群がかなり安定しており、完全パターンの非常に小さい部分しか描写しないということにある。同じ問題は、漁業管理においても遭遇しており、驚くべきことではない((スパッレ(Sparre)及びシブレン(Sibren)、1998年)。かくして、デンマーク全土についての1965年〜1994年の期間を通したMSの分析は、さらに明確な結果を提供した。
【0238】
種の地理的分布の中心で個体群はより高密度であるという考えは、生態学的事実というよりむしろ経験則とみなすことができる。それは、例えばスミス及びスミス(2002)といった全ての基礎生態学の本の中の大部の導入章内の生態的地位に関する単純な考え方に基づいている。この生態的地位は、生息環境の質がさらに低いことに起因して、個体群の密度に直接関係する可能性があるが、通常我々は、適切な生息環境が稀少であることが同等に確率の高い密度低下原因であると予想している。このようにMSの有病率がドブネズミ個体群において考えられる中心効果と相関関係を有する場合、それは、根底にある原因とは無関係に我々の予想に従っているということがわかる。かくして、デンマークにおけるラットとMSの間の単純な線形関係と類似の要領で欧州におけるMSの有病率の形でラットの生態を言い換えることが可能であると思われる。
【0239】
一次的結論
ドブネズミ(Brown rat)が病因的作用因子を媒介すると仮定して、数多くの候補を示唆することが可能である。かくしてレプトスピラ症は、ドブネズミ(R.norvegicus)により媒介されるより良く知られた感染性疾患の1つである(プランク(Planck)及びディーン(Dean)、2000年)。該疾患は、数多くの異なる血清型で発生するレプトスピラ・インテロガンスによりひき起こされる。レプトスピラ症の病変は、第1に腎不全を含むものとして知られているが、研究から、レプトスピラ症が確認された患者の85%において眼病巣が発見されるということも示されてきている(マーチンスら、1998年)。眼病巣はMSの予備段階で一般的であり、MSの発症と類似した季節周期性を共有することから(ヤピン(Ya−ping)、2000年)、これは、レプトスピラ属がMSの原因に関与している又は結びつけられるということを表わす可能性がある。スピロヘータ生物に対する関係の可能性が示唆されてきており(ブローソン(Brorson)ら、2001年)、レプトスピラ属によりMSがひき起こされるという示唆は慎重なものであると思われる。スピロヘータがMSと結びつけられるという可能性についての完全な論述がマーシャル(Marshall)(1988年)によって提供されている。
【0240】
より重要なことに、MSとレプトスピラ症は、小児における発症率が低いという臨床的特長を共有している。かくしてMS及びレプトスピラ症の両方において、15才という年齢は、臨床的徴候リスクの閾値であるものとみなされるように思われる。((ハノンド(Hannond)ら、2000年;プランク及びディーン、2000年)。
【0241】
二次的探査部−病因的作用因子の探究
MSと同様、レプトスピラ症はラット密度と相関関係をもつと思われる。該相関関係は、MSの場合よりも劣っているように思われるのは驚きであると考えることができるが複数の要因が役割を果たし得る。レプトスピラ症は、ラットからのレプトスピラ・インテロガンス血清型によってひき起こされる。しかしながら、黄疸出血症血清型によるレプトスピラ症はデンマークにおける全レプトスピラ症症例の26%しか構成せず、一方例えば血清型sejroeは22%を構成する(レムケら、近刊)。血清型sejroeはマウスに結びつけられ、従ってマウス個体群の変動は予想値からの偏差を生み出す可能性がある。同様にレムケ(近刊)は、差異が職業の変動から発生するものであると記しており、ここで陸上農業がハイリスクの職業を代表する。最も重要なことに、原因は、地方の病院においてレプトスピラ症に対する関心の差が著しいということに関連している可能性がある。
【0242】
レプトスピラ症がMSとして現われる想定上のリスクに対してレプトスピラ症の診断及び治療がもつと思われる効果(図4c)は、驚くべきものである。偶発的に思われるこの相関関係の確率はかなり低いものでなくてはならない。レプトスピラ症が数多くの異なるレプトスピラ属血清型によってひき起こされ得るということがわかれば、多くのタイプのレプトスピラ属が抗体間の交差反応性に起因してMSのリスクを減少させうる可能性が提示されるかもしれない。こうして地方病の安定のミラーのプロファイルの中でいかにして高い暴露が得られるかについての説明がかなり単純につくことになると思われる。
【0243】
時間的及び/又は人口統計的次元の二次的再構築
疾患の資源ベースとしてヒト個体群を解釈することは、慣習的ではないがかなり単純である。これを行なうにあたり、我々は新たに感受性の高い人によってMSの症例(個体群)が動員されるという仮定を行なう。疾患の伸び率をその個体群規模の関数として描写することは、通常の手順である。残念なことに、感受性の高い個体群は変動する。疾患が地方病の安定を映し出すということを仮定するにあたっては、若い人々には感受性が低いということも仮定される。ヒト個体群の人口統計が変化するにつれて、感受性ある人々の真の有病率は変化する。
【0244】
男女の比較は、男性及び女性がほぼ等しく暴露されていることそして同時に男性よりも女性の方が有病率が高いことを示唆している。それは、発見の差異により一部説明のつく逆説を表わしている。かくして、分析は、男性及び女性におけるMSの発見が6:4の比率を有するということを前提としている(図6c)。最初の前提条件をテストするために、デンマークにおける男性及び女性によるデンマークの眼科医に対する接触が抽出された。1992年から1996年まで、接触数は、男性については370,000件、女性については580,000件前後で適正に安定していた(Danmarks statistik、Danmarks Statistikbank))。従って男性及び女性について暴露がかなり均等であると思われ、このことは、暴露レベルの多大な変動において男女比が大きく変動することが全く無い理由を説明し得ると思われる。
【0245】
暴露の差異の副次的影響とは、男性における発症率が安定していたのに対し、女性においてはなおも増大しているということを意味している(ブローナム(Bronnum)ら、)。この筋書における解釈は、女性がMSIを超えてなおも暴露されており、衛生基準の変化に起因して暴露が削減される一方で発症率は増大している、というものである。暴露が比較的少ない男性は、比較的低い暴露を経験しておりMSIにおけるトップをクリアした。これらのかなり複雑な相互作用に対し、レプトスピラ症に対する関心は男性についてより高いものであり(レムケ、近刊)、このことも同様に、男女間に指摘される差に寄与するはずである。しかしながら、デンマークにおける該疾患に対する全体的関心に起因して、この寄与は小さいものである。
【0246】
二次的結論
デンマーク国内、フェロー島内、欧州内そして全世界という4つの異なるスケールでのラットとMSの間の密な相関関係は、MSの原因である病因的作用因子がラットと結びつけられない可能性はかなり低いという結論を導く。ドブネズミが発見される全ての場所にMSが発見されるため、それはどこにでも見られる微生物でなくてはならないということを加えることができる。MSは第2次大戦以前未知であったことから、フェロー島は特殊なケースを構成している。島内の野ウサギ(Lepus timidus)の個体群についてあてはまることがわかっているように、ラット個体群はほんの一握りのラットにより基礎が築かれていた可能性がある(ブロック、1999年)。恐らくは、病因的作用因子はこの少数の個体の中には存在しなかったであろう。島がイギリスに占領されている間に、ラットがより数多く移入され、かくして疾患を導入したと思われる。これらの考慮事項は、病因的作用因子がラット個体群において高い(ただし高過ぎない)有病率を有するはずであるということを示唆している。当該技術分野の有病率は、標準的に30%前後(10〜70%)であることがわかっており(サンブル(Sunbul)ら、2001年;ウェブスター(Webster)ら、1995年;リーレンバウム(Lilenbaum)ら、1993年;ペレイラ(Pereira)及びアンドラデ(Andrade)、1988年))、これにより、1つの地域に一握りのラットがレプトスピラ属を媒介せずに侵入することは、可能性のある(ただし稀な)現象となっている。
【0247】
ラットにおける高い有病率に加えて、ここで記述されている通りの地方病の安定のミラーは、「天然の」条件下でのヒトにおける有病率が高い場合にのみ現われ得る。中国で25〜70%(パン(Pan)及びヒー(He)、1995年)そしてブラジルのリオデジャネイロのスラム街で25〜35%(ペレイラ及びアンドラデ、1990年)という有病率の報告が発見されていることから、地方病の安定についてのこの最後の仮定は説明がつく。
【0248】
世界の中でクマネズミ(R.rattus)が優勢である地域(インド及びアフリカ)は、MSの有病率が非常に低いことから、クマネズミのような近縁種でも該相関関係は拡げられないという点を強調することも又重要である。該病因的作用因子はどこにでも見られ、ラットは医学界で多くの目的に使用されている充分に調査された動物であることから、病因的作用因子が未知である確率は低いと思われる。
【0249】
初めてスピロヘータとMSの間に密な関連性があることを立証したのはスタイナ(Steiner)であると思われる(ブラックマン(Blackman)及びパットナム(Putnam)、1936年)。スタイナはスピロヘータ及び細菌と結びつけられた顆粒状の構造の両方について記述した。彼は後に、スピロヘータのシスト形態としてこれらを記述した(スタイナ(Steiner)、1952年)。より重要なことに、ハッサン(Hassain)及びダイアモンド(Diamond)(1939年)は、考えられる8つの症例中8件においてしか実証されなかったものの、全てのMS患者においてこれらのスピロヘータを発見できると述べた。残りのスピロヘータと同様レプトスピラ属は、シフト形成とは通常結びつけられない。それでも、この主題についての既知の文献の編集により、この主題について公表された200件の論文(匿名、200?年)が得られる。これらのうちの1つは、レプトスピラ属内のシフト形成の記録である(イナダ(Inada)ら、1916年)。これに加えて、レプトスピラ属は成長するのに長鎖脂肪酸を必要とする唯一のスピロヘータであること(ブロックら、1994年)は、神経組織とのその結びつきの有望な説明である。
【0250】
しかしながら、スタイナ、ハッサン及びダイアモンドは、MSの病因的作用因子及びワイルズ病の病因的作用因子(レプトスピラ属)が2つの別々の生物であることを確信しているように思われた(ハッサン及びダイアモンド、1939年)。しかしながらレプトスピラ症の治療がデンマークでもたらした効果を考慮すると(図5d)それらが交差反応する抗体を有し従って同じ群に属すると思われる確率が高い。多分、この効果はStatens Serum Instituteにおけるレプトスピラ属血清型patocを用いた全ての血清のスクリーニングから発生する。この血清型はレプトスピラ科の抗原を担持している(レムケら、近刊)。
【0251】
後者の不確実性の如何に関わらず、MSは地方病の安定を映し出す動物原性感染症疾患の描写に適合すると思われる。考えられるその他のタイプの疫学との一致についてはテストされていないが、パズルの中の全てのピースは単一の明確な描写の形につながることから、より優れた描写を与えることのできるもう1つのタイプの疫学が存在すると仮定するのは困難であると思われる。
【0252】
勧告事項
上述の描写から自動的にラット制御の勧告が導かれるわけではない。これらの勧告は、地方病の安定の考慮に基づいて示されなくてはならず、実際、ラット個体群の増大は、個体群の減少よりも優れた長期結果をもたらすかもしれない。それは、現在の感染レベルが何であるかに左右される。
【0253】
各国は、局所的疫学を調査し充分に根拠のある調査に基づいて計画を立てなくてはならない。デンマークでは、ラット個体群のあらゆる変化が良い方向に向かっていると思われるが、最も重要なことに、MSの制御が自然感染に基礎を置かなくてはならない場合には暴露を増大させなくてはならない。
【0254】
代替案は、MSに対するワクチン接種である。MSは流行性の安定した疾患であることから、我々は、病因的作用因子が抗原的に安定していると或る程度確実に仮定することができる。該現象は、人生の早い時期における感染の後に多大な防御無くしては存在し得ない。レプトスピラ株間の交差反応性が、MSをひき起こすタイプ(推定上はL.インテロガンス)に対する完全な又は部分的な防御を与え得るという確率も同様に高い。
【0255】
カイザー(Kaiser)(1997年)により解釈されるような予防原則に基づいて以下のことを提唱することは賢明であると思われる:
・ レプトスピラ症の診断及びこれらの症例の治療に対するさらなる注意。細菌が髄液中に侵入したという仮定の下に感染を治療するために注意が払われるべきである。
・ MSに対するワクチンの開発。我々の知るかぎり、ヒトにおけるレプトスピラ属に対するワクチンは全く開発されていない。動物のためのワクチンが生産されていることから、短期間のうちにワクチンの開発に対処できるはずである。
・ 我々は現在、寛解中のMS患者の治療に「反する」助言を行なっている。これはMSの病因における毒素の影響の可能性についての調査及び毒物学的評価を待たなくてはならない。これらの調査は現在、デンマークのStantens Serum Instituteで開始されている。
【0256】
結論
要約すると、MSの有病率の増加は自然における変化に起因しているとは思えない。新しい事象が現われつつあるのではなく、むしろその自然の生息環境から撤退する人間の文明がこの出現をひき起こしているのである。人生の早い時期における感染そして恐らくはその他の感染からの部分的防御の重要性が、健康と生物学的多様性の関係についてより多くの情報を得ることの重要性を強調している。
【0257】
【表1】

【0258】
【表2】

【0259】
【表3】

【0260】
【表4】

【0261】
[実施例3]
MS患者からのヒト血清中の抗レプトスピラ属抗体の検出
材料と方法
Human Brain and Spinal Fluid Resource Centre、VA West Los Angeles Healthcare Centre、Los Angeles、CA 90073(これはNINDS/NIMHの後援を受けている)、National Multiple Sclerosis Society、及びDepartment of Veterans Affairsから20人のMS患者由来の血清を得た。進行型MS、再発を伴う進行型MS、再発状態の再発寛解型MS及び寛解状態の再発寛解型MSから各々5つの試料を受け取った。性別及び年齢に関する情報が提供された。L.インテロガンス、ソウルウイルス及びライム病ブルグドフェリ(B.burgdoferi sl)からの抗体を検出するために血清学的分析を実施した。
【0262】
IFAを用いてL.インテロガンス抗体を検出した。スクリーニングのため当初1:40に血清を希釈しその後1:80、1:160及び1:320に希釈した。L.インテロガンスの血清型Patoc及び黄疸出血症の希釈された抗原をスライド上に定着させ、10μlの希釈済み試料を塗布した。次に試料を40℃で30分間インキュベートした。精製水で2回洗い流した後、二次抗体(ポリクーロナルウサギ−抗ヒト、IgA、IgG及びIgM、DakoCytomation Denmark AS、ロット番号:00010719)を塗布し、40℃で30分間インキュベートした。最終的洗い流しプロセスの後、螢光発光を評価した。発光を陰性(n)、ボーダーライン(b)、陽性(1+〜4+)のレベルで等級付けした。1+の評点を受けた又はこれを超えた1:80希釈の試料を、抗体について陽性として受入れた。1:40希釈で陰性であった試料は、まちがいなく陰性であるものとみなされた。
【0263】
L.インテロガンス株及び正の対照は、K.クロッグフェルト(Krogfeldt)、Statens Serum Institut、Copenhagen、デンマークにより快く提供されたものである。
【0264】
B.ブルグドルフェリ(burgdorferi)に対する抗体を、レプトスピラ属抗体分析のために記述されたものに類似したIFA手順を用いて検出した。B.ブルグドルフェリ株ACA1を用いて抗原スライドを調製した。スクリーニング希釈は1:50であった。残りのプロセス及び二次抗体はL.インテロガンス手順について記述された通りであった。イヌ(ケイネス・ファミリアリス(Canis familiaris)由来の抗原及び正の対照はK.ベルグストローム(Bergstrom)、National Veterinary Institute(SVA)、スウェーデン)より快く提供されたものである。
【0265】
ソウルウイルスに対する抗体を、フォーカスダイアグノステイクス(Focus Diagnostics)(ハンタウイルスIgG DxSelect(商標) フォーカスダリアグノステックス、California、米国、ロット番号:050072)製のELISAを用いて検出した。血清を1:100に希釈し、製品使用説明書に従って実施した。
【0266】
間接赤血球凝集アッセイによるL.インテロガンスの結果の検討
L.インテロガンスに対する抗体についての付加的な血清学的分析を、間接赤血球凝集アッセイを用いて実施した(IHA、レプトスピラ症IHAテストキット、フォーカスダリアグノステックス、California、米国、ロット番号:050620)。血清を1:50に希釈し、製品使用説明書に従って分析を実施した。
【0267】
L.インテロガンス抗体での結果に一貫性がなかったことから、考えられる抗体−抗原結合の阻害についてのIFA試験を行なった。これには、80%、50%及び20%の対照試料を含有するテスト用試料を用いたメーカーが提供した対照の希釈が含まれ、ここで緩衝液、3人のMS患者からの血清そして3つの負のIFA L.インテロガンス抗体が付加された(血清番号6、8、11、16、18及び20)。血清試料を1:50に希釈し、対照抗体に10、25又は40μlを加えて50μlの所要テスト体積を生成した。マイクロタイタープレートを5℃に置き、24時間後に再評価した。
【0268】
結果
4つの試料がL.インテロガンス抗体について陽性であることがわかった。表5を参照のこと。
【表5】

【0269】
3つの試料はまちがいなく陰性であった。Patocと黄疸出血症の両方の血清型についての結果は、競合していたが、黄疸出血症の血清型はPatocよりも評点が低く、Patoc 血清型においては1:40の希釈で黄疸出血症の場合よりもさらにボーダーラインに近い陽性が観察された。1:160の希釈では、2つの試料が陽性であり、一方1:320の希釈ではいかなる陽性も見出されなかった。1:40の希釈での抗体の存在に従って試料のグループ分けすることで、この研究に含まれている4タイプの患者間で明確に弁別を行なうことができる。表6を参照のこと。
【表6】

【0270】
進行型MS患者は全て低い抗体レベルを有し、再発性タイプのMSすなわち再発を伴う進行型MS又は再発寛解型MSは高い抗体レベルを有することができ、一方、寛解状態にある再発寛解型MS患者は、低レベルの抗体さえ持たない患者群を構成する。L.インテロガンスに対する抗体の存在に対して年齢又は性別が影響を与えるということを表わすものは全くなかった。
【0271】
全てのMS血清は、IHAレプトスピラ試験で1+であったが、負の対照も同様に類似の結果を示した。従って、1:50希釈の全ての血清は、IHA試験において抗体について陰性であるとみなされた。メーカーの対照及びSSIから得た対照(1:50)は4+という評点を与えた。緩衝液でメーカーの対照抗体を希釈することで、50%の対照で4+から3+まで、そして20%の対照で2+まで評点が下がった。対照の評点の低下は、MS血清で希釈した場合にはるかに大きいものであった。MS血清での6つの希釈物全てについての評点は、80%、50%及び20%の対照においてそれぞれ2+、2+及び1+であった。5℃で24時間後、評点は、MS患者由来の血清で希釈された80%の対照についてよりも緩衝液で希釈された20%の対照についての方が高いものであった。
【0272】
B.ブルグフドルフェリについての単一の陽性試料が発見された(患者No.1)。ソウルウイルスに対する抗体は全く検出されなかった。
【0273】
これらの結果は、下表7に報告されている。
【表7】

【0274】
論述
4つのレプトスピラ症症例の同定は、単なる偶然で予想以上に高いように思われる。USAでは記録されたレプトスピラ症の症例は100件未満であり(メイテス(Meites)ら、2004年)20件のうち4件の試料が抗体を含有しているはずである確率はかなり小さいとみなさなくてはならない。15%の有病率がボルチモアから報告された(ヴィネッツ(Vinetz)ら、1996年)が、後述する通りこの情報は偏っている可能性がある。いずれの場合でも、15%という有病率でさえ、20の試料中に4つの症例を見越すにはさほど充分とはいえない。
【0275】
全ての分析において、血清の質は極めて高いものであった。かくしてB.ブルグドフェリslの分析は、1:50という希釈でさえ19の疑う余地無く明白に陰性である結果を生み出した。試料のうちの1つだけがカットオフ吸収度の1/10よりも高い吸収度を有していたソウルウイルスの分析においても類似のことが観察された。
【0276】
抗体の評点を評価するにあたっては、抗体生成の原因となりうる真の菌株が未知であることも考慮に入れなくてはならない。従って、交差反応性レベルは未知のままにとどまる。Patoc血清型がレプトスピラ属の全ての抗原を媒介しているということが提唱されており、この血清型がスクリーニング目的で使用される理由はここにある(レムケら、2004年)。しかしながら、本質的に、Patocは、全ての「既知の」抗原しか媒介し得ず、該原因作用因子は、以前に単離されていないL.インテロガンスのサブクラスに属する可能性がある。患者が受けてきた可能性のある何らかの医学的療法についていかなる情報も入手できず、従って正常な背景に比べこれらの血清中で免疫応答がさらに弱いということを排除することはできない。従って、1:40で観察された抗体が、特異的L.インテロガンス抗体であり非特異的反応性抗体ではないということを排除することはできない。
【0277】
レプトスピラ症IHA試験は、レプトスピラ属抗体についてのIHA及びIFA試験を組合せることにより従来のレプトスピラ症をMSと区別することができるということを示唆している。MS血清は、寛解状態にある再発寛解型MS患者を除いて、IHAでは陰性そしてIFAでは陽性となる。L.インテロガンスに対する抗体の存在とは無関係に、赤血球凝集プロセスと干渉するMS血清中の1構成要素が存在することが可能であると思われる。IFAにおけるより強い結合は、より感応性が低い可能性がある。それでもなお、かかる干渉は、IFA内の評点が低下し得ることそして抗体の真の濃度がIFAにより記録されるものよりも高いことを示唆している。L.インテロガンスの正確な菌株がIHAと干渉する構成要素と最高レベルの干渉を有し、従ってIFA内の最高の評点が感染性生物と結びつけられるという結論を下すことが不可能であるとの仮説を立てることができると思われる。
【0278】
1:40の希釈は、4つのタイプの患者についての観察事実を再検討する場合に有用であると思われる。データは、非再発性MS全てがL.インテロガンスに対する低い抗体応答を有する場合に、解釈可能なパターンを生成する。再発性MSはより高い抗体レベルを有する可能性があり、一方抗体をもたない唯一のMS群は、寛解状態の再発寛解型MS患者である。これは、進行型MSが慢性的感染であり、一方再発寛解型MSはそうではないこと、そして再発がL.インテロガンスに対する抗体の高いレベルと結びつけられることとして解釈され得る。
【0279】
結果はソウルウイルス及びB.ブルグドルフェリsl.抗体に関して非常に明確である。単一の陽性B.ブルグドルフェリ試料は、B.ブルグドルフェリslがMSに関与しているという主張を裏づけるものではない。アメリカンライムディジースファウンデーション社(American Lyme Disease Foundation Inc.(www.adlf.com))に従うと、ライム・ボレリオーシス(Lyme borreliosis)は、USA西海岸に多数見られるものとして知られており、MS患者が何百ものライム・ボレリオーシス症例の中から発生するはずであるという確率は高いと思われる。従って、L.インテロガンス(又はそれと強力に交差反応する細菌)が、この研究に内含される作用物質のうちで考えられる病因的作用因子として受容され得る唯一の細菌であるということは非常に明白である。
【0280】
血清学的研究の成果から見て、レプトスピラ症の生態学がMSの疫学的特長と一貫性をもつものであり得るか否かを判定するために、限定的な文献研究が実施された。
【0281】
レプトスピラ症及びMSが共有する生態学的特長
上述の通り、初めてスピロヘータとMSの間に密な関連性があることを立証したのはスタイナであると思われる(ブラックマン及びパットナム、1936年)。スタイナはスピロヘータ及び細菌と結びつけられた顆粒状の構造の両方について記述した。彼は後に、スピロヘータのシスト形態としてこれらを記述した(スタイナ、1952年)。より重要なことに、ハッサン及びダイアモンド(1939年)は、8つの症例においてしか実証されなかったものの、全てのMS患者においてこれらのスピロヘータを発見できると述べた。残りのスピロヘータと同様レプトスピラ属は、シフト形成とは通常結びつけられない。それでも、この主題についての既知の文献の編集により、この主題について公表された200件の論文が得られる。これらのうちの1つは、レプトスピラ属内のシフト形成の記録である(インディアら、1916年)。より最近では、ブローソンら、(2001年)が同様にスピロヘータ生体に対する関係の可能性を指摘した。(スピロヘータがMSと結びつけられる可能性についての詳細な論述はマーシャル(1988年)により与えられている)。従ってMSがスピロヘータによりひき起こされ慢性感染が起こり得るという考えに対する充分な裏づけが存在すると思われる。細菌シストは感染の持続を媒介し得る。
【0282】
ラットにおけるレプトスピラ属の有病率は標準的に30%前後(10〜70%)であることがわかっている(サンブルら、2001年;ウェブスターら、1995年;リーレンバウムら、1993年;ペレイラ及びアンドラデ、1988年)。ヒトにおけるレプトスピラ属に対する抗体の有病率報告は、中国において25〜72%(パン及びヒー、1995年)、ブラジルリオデジャネイロのスラム街では25〜35%(ペレイラ及びアンドラデ、1990)そして米国ボルチモアでは16%(ヴィネッツ(Vinetz)ら、1996年)であり、これは、レプトスピラ属感染が一般的なものであり、「衛生仮説」の下で機能するのに充分なほど一般的であることを示唆している(ストラッチャン(Strachan)、1989;シェイク(Sheikh)及びストラッチャン(Strachhan)、2004年))。理論では、環境由来の感染に対する暴露の頻度が低いか又は幼児暴露が少ないことによって病気が発生すると述べられている。後に、ゲール(Gale)(2002年)は「ゲートキーパ仮説」すなわち調節T細胞が免疫応答を制御できるようにするにはくり返しの早期感染が必要とされるという仮説が、考えられる機序として役立ち得るということを示唆した。ここでの結果は、反復的L.インテロガンス感染を通して維持された抗体がこの応答を修正しMSの徴候を削減又は予防することになるということを示唆できると思われる。
【0283】
レプトスピラ属の病状はまず第1に、腎不全(黄疸性)のみならず無黄疸性形態(レヴェット(Levett)、2001年)を含むものとして知られている。レプトスピラ症は過小診断されているものとして議論されている(WHO、2003年a;レムケら、2004年)。さらに(無黄疸性)レプトスピラ症は無症状であるか又は非常に軽症である(レヴェット、2001年)。同様に重要なことは、MSとレプトスピラ症が、小児における発症率が低いという臨床的特長を共有することである。レプトスピラ症においては、15才という年齢が臨床的徴候のリスクの閾値であるものとみなされていると思われるが(WHO、1999年、ハノンドら、2000年;プランク及びディーン(2000年))、幼児の間にも症例が発見されることがある(WHO、1999年)。かくして、約15才の閾値年齢に関係する共有の特長が存在すると思われる。
【0284】
現行の状況の中でMSについての季節性を解釈するのは、MSにおける感染から最初の臨床的徴候までの時間についての確実な情報が全く無いことから、かなり困難である。従って、かかる比較は、基本的に不可能である。それでも我々は、季節性がレプトスピラ症及びMSの両方の共通の特長であることを指摘することができる。デンマークでは、レプトスピラ症は秋に最も一般的である(K.グロッグフェルト、Statens Serum Institut、デンマーク、pers.comm.)。MSにおける最初の症状再燃の76%は冬季に発生し、一方発症時期の季節的変動は全く存在しない(ビスガード(Bisgard)、1990年)。眼の関与はレプトスピラ症とMSのもう1つの共有特性であると思われる。眼の病巣はMSの初期段階で一般的であり、MSの発症に類似した季節的周期性を共有する(ヤピン、2000年)。確認されたレプトスピラ症に罹患している患者の最高85%において、さまざまな形態の眼の病巣を見出すことができ(マーチンスら、1998年)、MSの発症を判定するための重要な症状とみなされている視神経炎がレプトスピラ症感染の65%に発生する(マンセル(Mancel)ら、1999年)。最後に、現在レプトスピラsppによる抗原模倣に起因する自己免疫疾患として定義されているウマ再発性ブドウ膜炎(ルチェッシ(Lucchesi)ら、2002年)は、再発又はぶり返しが共有の特長であることを明確に示している。
【0285】
MS疫学における長期周期性が、フェロー島から報告されてきた(クルツケ及びヘルトベルグ、2001年)。同様に、より安定した徴候において、5年という周期性が報告されてきた(メイヤーライネッカー(Meyer−Reinecker)及びブッデンハーゲン(Buddenhagen)、1988年;ジン(Jin)ら、2003年)が、これはスウェーデンにおいてより長い不規則なサイクルへと変わる傾向にある(ジンら、2003年)。スウェーデン及びデンマークにおけるドブネズミの個体数サイクルについての詳しい情報は全く存在しない。イギリスでは10年のサイクルが提案され(スウィフト(Swift)、2001年)、恐らくはデンマークでも類似のサイクルが存在する。これまでの数百年でそれがより短いものであったか否かを知るのは不可能であるが、スウェーデンにおけるマイクロタイン(microtine)サイクルが過去数十年間に次第に消失していると思われるということを指摘することができる(ヘールンフェルト(Hoernfeldt)、2004年)。より単純には、再発寛解型MSにおいて、症状再燃の最低頻度を免疫学的に制御することができ、ここで3〜4年間維持されうるレプトスピラ属に対する抗体(レヴェット、2001年)が、レプトスピラ属の攻撃から防御することにより最低の頻度を設定している。このとき、抗体の消失から次の感染までの時間は、レプトスピラ属に対する暴露によって決定され、ここでラット密度の周期的ピークが、サイクルに導く攻撃を同調させる傾向をもつことになる。かくして、長期周期性がレプトスピラ症とMSにおいて類似しているということを排除することはできない。
【0286】
レプトスピラ属は、例えばウシ(ハイネマン(Heinemann)ら、2000年)及びウサギ(キクテンコ(Kiktenko)ら、1976年)の体内の精液により伝達され得ることから、ヒトにおいてもそれがあてはまる可能性がある。考えられる性感染が、MSにおける男女比に影響を及ぼし、通常男性1に対して女性2である男女間の差が説明される可能性がある(ワーレン(Warren)及びワーレン、1993年)。それは又、米国ボルチモアにおけるレプトスピラ属に対する16%抗体の有病率を、それらが性感染病向け診療所から導き出されたものであることから、偏っている可能性があるということをも意味している(ヴィネッツら、1996年)。恐らくは、有病率は大都市中心部では低いものである。
【0287】
疾患症例の持ち込みは、レプトスピラ症についての通常の考慮範囲内にあり、感染性作用因子の持ち込みも同様である。レプトスピラ属については、レプトスピラ属が7〜36℃の温度範囲内で地表水中で最高180日間生き延びることから、新鮮な果実及び野菜がスピロヘータを宿し得ると予想することができる(マクドナフ(McDonough)、2001年)。ドブネズミはレプトスピラ黄疸出血症の唯一の選択的慢性キャリアであると想定されている(テイアマン(Theirman)、1981年)。L.インテロガンス黄疸出血症血清型の代替的宿主としては、レプトスピラ属感染源でありうるマウス、アライグマ、ハリネズミ、キツネ、ウッドチャック、スカンク、マスクラット及びイヌが含まれる。従って、MSがこの細菌によりひき起こされるならば、代替的宿主を通した(多数の)継代が病原性に影響を及ぼし、より良性の症例を導き得る。このような機序は、例えばAlberta、カナダ(ワーレン及びワーレン、1992年)にみられるMSの変動の原因であり得る。
【0288】
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【図面の簡単な説明】
【0289】
【図1】地方病の安定を映し出す動物原性感染症疾患が示す理論上の曲線を示す。a:中度暴露での臨床疾患におけるピーク(実線)及び定常的に下降する発症年齢(破線)を伴う、地方病の安定した疾患の概略図。b:収獲した個体群における正常な捕獲努力関係pにより予想される暴露に対しプロットした単位暴露あたりの有病率(PPUE)。カッコ内は漁業用語。c:以前に遭遇した高い発症率における考えられる枯渇と感受性の個体群の限界の結果としての、疾患の発症率における密度依存性。
【図2】MS及びドブネズミ(Rattus norvegicus)の地球規模の分布地図を示す。a:(www.medlib.med.utah.edu/kw/ms/mml/ms_worldmap.html)により提供されるMSの全世界的分布b:ドブネズミの全世界的分布(グランツ(Grantz)N、(日付不明))。
【図3】デンマークのデータに基づいた相関関係グラフa:ラット暴露とMSの間の相関関係b:ラット暴露とレプトスピラ症例の間の相関関係c:レプトスピラ症とMSの間の相関関係 全ての図は、デンマーク国内の19の州を含んでいる。強化点(forced point)が0.0にある、線形回帰の結果。
【図4】捕獲努力分析の結果を示す。a:MSとラット密度についての捕獲努力関係b:レプトスピラ症とラット密度についての捕獲努力関係c:仮定されたレプトスピラ症発見レベルに対するレプトスピラ症例あたりのMS。
【図5】欧州におけるMSの地理的変化を示す。a:緯度の変動の結果としての欧州におけるMSの有病率の変動。b:経度の変動の結果としての欧州におけるMSの有病率の変動。ロザッティ(Rosati)(2001年)に基づく。
【図6】MSの疫学的プロファイルの再構築を示す。a:発症率の関数としての発症率の相対的変動b:異なるレベルのドブネズミ密度におけるMSの年間発症率(図中には0.0に強化点がある線形回帰の結果が示されている)。c:0.9:1の雄:雌暴露比を仮定した場合の雄(丸)及び雌(十字形)についてのMSの年間発症率。d:異なるドブネズミ密度に対する雌雄比(年間合計発症率あたりの雄の年間発症率)。
【図7】交差反応性非病原性感染タイプに感応する地方病の安定を映し出す疾患の有病率又は平均年間発症率。 矢印は増大する感染レベル/接種率を表わす。非病原性交差反応性タイプがゼロである場合、疾患の有病率と病原性タイプの関係は、図1aに描かれている通りである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
多発性硬化症(MS)に罹患しているヒトの対象においてMSを治療又は改善するための方法であって、レプトスピラ属に由来する抗原決定基に対する治療上有効な免疫応答を誘導する免疫原性作用物質による該対象の能動免疫化を含み、免疫原性作用物質が特異的免疫原を含む方法。
【請求項2】
ヒトの対象において多発性硬化症(MS)を予防するための方法であって、レプトスピラ属に対する防御免疫応答を誘導する免疫原性作用物質による該対象の能動免疫化を含み、該免疫原性作用物質が特異的免疫原を含む方法。
【請求項3】
レプトスピラ属が、L.インテロガンスである、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
特異的免疫原が、以下からなる群から選択される、上述の請求項のいずれかに記載の方法:
a) ヒトにおいて非病原性であり、好ましくはL.インテロガンスと免疫学的に交差反応する生きたレプトスピラ種の調製物、
b) 死滅させた又は不活性化させたL.インテロガンス、又は死滅させた又は不活性化させた交差反応性レプトスピラ種又は株由来の細菌の調製物、
c) L.インテロガンス又は交差反応性レプトスピラ種又は株から単離された抗原画分、
d) L.インテロガンス又は交差反応性レプトスピラ種又は株由来の免疫優性エピトープを含む少なくとも1つの抗原の調製物、
e) L.インテロガンス又は交差反応性レプトスピラ種又は株由来の免疫優性エピトープに結合する抗体のイディオタイプとの反応性を有する少なくとも1つの抗イディオタイプ抗体を含む調製物、
f) L.インテロガンス又は交差反応性レプトスピラ種又は株由来の免疫優性エピトープの少なくとも1つのミモトープを含む調製物、
g) L.インテロガンス又は交差反応性レプトスピラ種又は株由来の少なくとも1つの免疫優性タンパク質抗原をコードし、対象の細胞から該抗原をインビボ発現させる能力を有する核酸の調製物。
【請求項5】
特異的免疫原が以下にカップリングされている、請求項4、態様d、e又はfに記載の方法:
− 抗原提示細胞(APC)又はBリンパ球に対する被修飾分子のターゲティングをもたらす少なくとも1つの第1の部分、及び/又は
− 免疫系を刺激する少なくとも1つの第2の部分、及び/又は
− 該免疫系に対する活性成分の提示を最適化する少なくとも1つの第3の部分。
【請求項6】
第1の部分が、Bリンパ球又はAPC上にそのレセプタが存在するハプテン又は炭水化物のような、Bリンパ球特異的表面抗原又はAPC特異的表面抗原に対する実質的に特異的な結合パートナである、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
第2の部分がサイトカイン、ホルモン及び熱ショックタンパク質から選択される、請求項5又は6に記載の方法。
【請求項8】
サイトカインが、インタフェロンγ(IFN−γ)、Flt3L、インタロイキン1(IL−1)、インタロイキン2(IL−2)、インタロイキン4(IL−4)、インタロイキン6(IL−6)、インタロイキン12(IL−12)、インタロイキン13(IL−13)、インタロイキン15(IL−15)、及び顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM−CSF)から選択されるか又はその有効な部分であり、熱ショックタンパク質が熱ショックタンパク質70(HSP70)、熱ショックタンパク質(HSP90)、熱ショック同族体70(HCS70)、グルコース関連タンパク質(GRP94)及びカルレティキュリン(CRT)から選択されるか又はその有効な部分である、請求項5〜7のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
第3の部分が、パルミトイル基、ミリスチル基、ファルネシル基、ゲラニル−ゲラニル基、GPI−アンカー、及びN−アシルジグリセリド基のような脂質性の部分である、請求項5〜8のいずれかに記載の方法。
【請求項10】
特異的免疫原が、Tヘルパーリンパ球を刺激する能力を有する少なくとも1つの異種MHC−クラスII結合ペプチド配列を含む、請求項5〜9のいずれかに記載の方法。
【請求項11】
MHC−クラスII結合ペプチド配列が、免疫原性担体タンパク質の中に含まれるか又はユニバーサルTヘルパーリンパ球エピトープ(Tエピトープ)の形で存在している、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
ユニバーサルT−ヘルパーエピトープが天然ユニバーサルTエピトープ及び人工MHC−II結合ペプチド配列から選択される、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
天然Tエピトープが破傷風トキソイドエピトープ、ジフテリアトキソイドエピトープ、インフルエンザウイルス赤血球凝集体エピトープ及び、P.ファルシパラムCSエピトープから選択される、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
特異的免疫原の少なくとも2つのコピーが、該特異的免疫原由来の抗原決定基の複数のコピーの提示をもたらす能力を有する担体分子に共有結合的に又は非共有結合的に連結している、請求項5〜13のいずれかに記載の方法。
【請求項15】
免疫原性作用物質がさらに免疫アジュバントを含む、請求項1〜14のいずれかに記載の方法。
【請求項16】
アジュバントが、免疫ターゲティングアジュバント;毒素、サイトカイン及びマイコバクテリア誘導体のような免疫調節アジュバント;油状製剤;重合体;ミセル形成アジュバント;サポニン;免疫賦活性複合体マトリクス(ISCOMマトリクス);粒子;DDA;アルミニウムアジュバント;リン酸カルシウムのようなカルシウムアジュバント;DNAアジュバント;y−イヌリン;及び封入アジュバントからなる群から選択される、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
有効量の免疫原性作用物質が、皮内、皮下及び筋内経路のような非経口経路;腹腔内経路;経口経路;口腔内経路;舌下経路;硬膜外経路;脊髄経路;肛門経路及び頭蓋内経路から選択される経路を介して対象に投与される、上述の請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項18】
有効量が、0.5μg〜5,000μgの特異的免疫原を含む、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
核酸が動物の細胞内に導入され、これにより、導入された核酸の細胞によるインビボ発現が得られる、請求項4、態様gに記載の方法。
【請求項20】
導入された核酸が、裸のDNA、荷電又は非荷電脂質とともに製剤化されたDNA、リポソーム内に製剤化されたDNA、ウイルスベクターに含まれたDNA、トランスフェクション促進タンパク質又はポリペプチドとともに製剤化されたDNA、ターゲティングタンパク質又はポリペプチドとともに製剤化されたDNA、カルシウム沈殿剤とともに製剤化されたDNA、不活性担体分子にカップリングしたDNA、キチン又はキトサン内に封入されたDNA、及び請求項16に記載のアジュバントのようなアジュバントとともに製剤化されたDNAから選択される、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
核酸が、動脈内、静脈内、又は請求項17に記載の経路により投与される、請求項19又は20に記載の方法。
【請求項22】
免疫原性作用物質が薬学的に許容される担体、媒体又は希釈剤を含む、上述の請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項23】
免疫化が一次免疫化とそれに続く少なくとも1回の追加免疫化を含む、上述の請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項24】
一次免疫化及び少なくとも1回の追加免疫化で使用される免疫原性作用物質が同一のものである、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
一次免疫化及び少なくとも1回の追加免疫化で使用される免疫原性作用物質が同一でない、請求項23に記載の方法。
【請求項26】
多発性硬化症(MS)に罹患しているヒトの対象において、MSを治療または改善するための方法であって、L.インテロガンスに対する細菌毒性又は静菌効果を示す治療上有効量の抗生物質を投与することを含む方法。
【請求項27】
抗生物質が細菌間のシグナリングを妨げる能力を有する、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
抗生物質が抗体又はそのフラグメント、バシトラシン、セファロスポリン、シクロセリン、ペニシリン、リストセチン、バンコマイシン、アンフォテリシンB、コリスチン、イミダゾール、ナイスタチン、ポリミキシン、クロラムフェニコール、エリスロマイシン、リンコマイシン、テトラサイクリン、アミノグリコシド、ナリジクス酸、ノボビオシン、ピリメタミン、リファンピン、スルホンアミド及びトリメトプリムからなる群から選択される、請求項26に記載の方法。
【請求項29】
抗生物質が、脈管系からCNSに入る能力を有する、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
抗生物質がテトラサイクリンである、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
抗生物質が、病原性を低減させるか又は調節するさらなる治療法と組合わされて投与され、該さらなる治療法が、抗炎症性治療法、レプトスピラ毒素結合化合物による治療、レプトスピラ毒素の産生を阻害する化合物による治療及びレプトスピラ毒素の分解を直接的又は間接的に促進する化合物による治療からなる群から選択される、請求項26〜30のいずれかに記載の方法。
【請求項32】
前記抗生物質がMS発作中又は発作後早期に投与される、請求項26〜31のいずれかに記載の方法。
【請求項33】
人がMSに罹患しているか否か又はMSを発症するリスクが増大しているか否かを判定するための方法であって、人から得た試料を、該試料がL.インテロガンス由来の物質を含有するか否かを判定する試験に付すことを含み、陽性判定は陽性判定の無い対象と比較して該人のMSリスクが有意に増大していることを示す方法。
【請求項34】
試験が、PCRのような分子増幅工程を利用するアッセイ及びイムノアッセイから選択される、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
人がMSに罹患しているリスク又はMSを発症するリスクを評価するための方法であって、人から得た試料を、該試料中にレプトスピラ属に一般的に反応する抗体及びL.インテロガンスと特異的に反応する抗体が存在することを判定する試験に付すことを含む方法。
【請求項36】
試験により、試料がレプトスピラ属に一般的に反応する抗体及びL.インテロガンスと特異的に反応する抗体を含むことが示された場合、リスクが増大していると評価される、請求項35に記載の方法。
【請求項37】
試験により、試料がレプトスピラ属に一般的に反応する抗体を含むが、L.インテロガンスと特異的に反応する抗体は含まないことが示された場合、前記リスクが減少していると評価される、請求項35に記載の方法。
【請求項38】
試料がレプトスピラ属に一般的に反応する抗体及びL.インテロガンスと特異的に反応する抗体を含む場合、前記リスクが平均であると評価される、請求項35に記載の方法。
【請求項39】
人がMSに罹患しているリスク又はMSを発症するリスクを評価するための方法であって、人から得た試料を、その人の代替的補体経路がレプトスピラ属を溶解させる能力を有するか否かを立証する試験に付すことを含む方法。
【請求項40】
人がMSに罹患しているか否か又はMSを発症するリスクが増大しているか否かを判定するための方法であって、請求項33〜39のいずれかに記載の試験のうちの少なくとも2つの結果を統合することを含む方法。
【請求項41】
レプトスピラ属の判定のための間接赤血球凝集アッセイ(IHA)がさらなる対照として使用される、請求項33〜40のいずれかに記載の方法。
【請求項42】
IHA以外のあらゆる試験におけるレプトスピラ陽性の結果及びIHAにおけるレプトスピラ陰性の結果が、患者がMSに罹患しているか又はMSを発症するリスクが増大していることを示す、請求項41に記載の方法。
【請求項43】
試料がMS患者に由来することが判明した場合、試験結果に基づいてMSの前記タイプが判定される、請求項33〜42のいずれかに記載の方法。
【請求項44】
患者におけるMSの進行を監視する方法であって、患者から得た試料を、試料中のL.インテロガンス物質を定量的に判定する試験に付すこと、及び後に同じ患者から得た試料について実施した判定と前記判定とを比較することを含む方法。
【請求項45】
患者におけるMSの進行を監視する方法であって、患者から得た試料中のL.インテロガンスと特異的に反応する抗体の定量的判定、及び後に同じ患者から得た試料について実施した判定と前記判定とを比較することを含む方法。
【請求項46】
MSの治療又は予防方法であって、請求項33〜40のいずれかに記載の判定、およびその後に続く請求項1〜32のいずれかに記載の方法による治療又は予防を含む方法。
【請求項47】
MS治療又は予防の有効性を監視するための方法であって、該治療又は予防が、請求項1〜32のいずれかに記載の方法に対象を付すこと、及びその後請求項44又は45に記載の方法により患者を監視することを含む方法。
【請求項48】
ヒトにおけるL.インテロガンスに対する防御免疫を誘導する能力を有する免疫原性作用物質を含む少なくとも1つの容器、及びMSに対するヒトの治療又は予防のために該免疫原性作用物質を使用するための説明書を含む薬剤パッケージ。
【請求項49】
L.インテロガンスに対し細菌毒性又は静菌効果を及ぼす能力を有する抗生物質を含む少なくとも1つの容器、及びMSに対するヒトの治療又は予防のために該抗生物質を使用するための説明書を含む薬剤パッケージ。
【請求項50】
ヒトにおけるL.インテロガンスに対する防御免疫を誘導する能力を有する免疫原性作用物質を含む少なくとも1つの容器、及びL.インテロガンス物質と反応できるか又はL.インテロガンスとの反応性を有する抗体と反応できる診断手段を含む少なくとも1つの容器を含む薬剤キット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2008−505130(P2008−505130A)
【公表日】平成20年2月21日(2008.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−519614(P2007−519614)
【出願日】平成17年6月29日(2005.6.29)
【国際出願番号】PCT/DK2005/000444
【国際公開番号】WO2006/002631
【国際公開日】平成18年1月12日(2006.1.12)
【出願人】(507005137)ケベンハウンス・ウニヴェルジテート (2)
【氏名又は名称原語表記】KOEBENHAVNS UNIVERSITET
【Fターム(参考)】