説明

レンズ駆動装置、オートフォーカスカメラ及びカメラ付き携帯電話

【課題】簡易な構成で、レンズ支持体をフォーカス移動及び手振れ補正移動ができると共に小型化を図ることができるレンズ駆動装置、オートフォーカスカメラ及びカメラ付き携帯電話を提供する。
【解決手段】レンズ支持体5の外周面に第1環状コイル19a〜19dが設けてあり、第2環状コイル16a〜16dはレンズ支持体5の周方向に90度の間隔をあけて配置してあり、第1マグネット部17は第1環状コイル19に対面して配置し、第2マグネット部18は各第2環状コイル16a〜16dの環の内側に配置し、第3マグネット部27は第2環状コイル16a〜16dの環の外側に配置してあり、レンズ支持体5を光軸方向へ移動するときには第1環状コイル19a〜19dに電流を流し、レンズ支持体5をX―Y方向に移動するときには所定の第2環状コイル16a〜16dに電流を流す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レンズ駆動装置、オートフォーカスカメラ及びカメラ付き携帯電話に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、光ピックアップ用アクチュエータにおいて、レンズ支持体の外周面に周方向に90度の間隔をあけて第1環状コイル及び第2環状コイルを設け、レンズ支持体の径方向外側に各環状コイルに対面するマグネットを配置して、環状コイルに通電することにより、レンズ支持体を光軸方向(フォーカス方向)、光軸に傾斜する方向(チルト補正方向)、及びトラック方向(X方向)に移動させることが開示されている。
【0003】
一方、携帯電話機等に搭載される小型カメラにおいては、レンズ支持体をフォーカス方向に移動させるのみであって、チルト補正方向に移動したり、手振れ補正のためにX―Y方向に移動させたりする場合には、フォーカス方向にレンズ支持体を移動するレンズ駆動装置全体を、チルト補正するモータ、X方向に駆動するモータ、Y方向に駆動するモータで移動させていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−373435号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、小型カメラ用のレンズ駆動装置において、レンズ支持体を光軸方向への移動(フォーカス移動)及びX―Y方向(手振れ補正)への移動をレンズ支持体自身がおこなうものは従来なかった。
【0006】
また、レンズ支持体のフォーカス方向の移動は特許文献1の技術を用いることができたとしても、特許文献1の技術ではX方向のみの移動が可能なだけで、手振れ補正(X―Y方向への移動)ができない。
【0007】
そこで、本発明は、簡易な構成で、レンズ支持体をフォーカス移動及び手振れ補正移動ができると共に小型化を図ることができるレンズ駆動装置、オートフォーカスカメラ及びカメラ付き携帯電話の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に記載の発明は、内周にレンズを支持するレンズ支持体と、レンズ支持体の外周面に配置した第1環状コイルと、レンズ支持体の外周面に周方向に90度の間隔をあけて配置した複数の第2環状コイルと、レンズ支持体を移動自在に支持するベースと、ベースに固定した第1マグネット部と第2マグネット部と第3マグネット部と、各コイルへの通電を制御する制御部とを備え、第1マグネット部は第1環状コイルに対面して配置し、第2マグネット部は各第2環状コイルの環の内側に配置し、第3マグネット部は第2環状コイルの環の外側に配置してあり、制御部はレンズ支持体を光軸方向へ移動するときには第1環状コイルに電流を流し、レンズ支持体を光軸と直交するX―Y方向に移動するときには所定の第2環状コイルに電流を流すことを特徴とするレンズ駆動装置である。
【0009】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、第1環状コイルは複数であり且つレンズ支持体の外周面に周方向に等間隔をあけて配置し、第2環状コイルは第1環状コイルと重ならない位置に配置してあり、制御部はレンズ支持体を光軸方向へ移動するとき及び光軸に対してレンズ支持体を傾斜させるときには所定の第1環状コイルに流す電流を異ならせることを特徴とする。
【0010】
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の発明において、レンズ支持体を囲む環状のヨークを備え、第1〜第3マグネット部は各々ヨークの内周面に配置してあること特徴とする。
【0011】
請求項4に記載の発明は、請求項1〜3のいずれか一項に記載のレンズ駆動装置と、レンズ支持体のレンズの結像側に設けた画像センサとを備えることを特徴とするオートフォーカスカメラである。
【0012】
請求項5に記載の発明は、請求項4に記載のオートフォーカスカメラを搭載したことを特徴とするカメラ付き携帯電話である。
【発明の効果】
【0013】
請求項1に記載の発明によれば、フォーカス移動は、第1環状コイルに通電することでレンズ支持体を光軸方向に移動し、手振れ補正は周方向に90度の間隔をあけて設けた2つの第2環状コイルに通電することで、レンズ支持体をX―Y方向に移動して行う。これにより、レンズ支持体をフォーカス移動及び手振れ補正ができる。
【0014】
レンズ支持体の外周面に第1及び第2環状コイルを配置し、ベースには第1環状コイルに対面する第1マグネット部と、第2環状コイルの環の内外に配置する第2マグネット部及び第3マグネット部を設けるだけであるから、簡易な構成で小型化を図ることができる。
【0015】
第2環状コイルには、環の内外に第2及び第3マグネット部を設け、第2及び第3マグネット部で第2環状コイルのコイル部分を挟んでいるから、第2環状コイルに作用する磁界を第2及び第3マグネット部により閉じた磁界にして磁束密度を高めることができる。したがって、第2環状コイルを小さくし又は駆動に必要な電流を小さくして、レンズ支持体の手振れ補(X―Y補正)ができる。
【0016】
請求項2に記載の発明によれば、請求項1に記載の作用効果を奏すると共に、所定の第1環状コイルに流す電流を異ならせることで、レンズ支持体の光軸を傾けることによりチルト補正ができる。
【0017】
請求項3に記載の発明によれば、請求項2に記載の作用効果を奏すると共に、る。また、ヨークは環状にして内周面に各マグネット部を配置しているから、各マグネット部における磁界強度を高めることができと共に、各マグネット部に対するヨークを共通に用いることができ、部品点数を少なくできる。
【0018】
請求項4に記載の発明によれば、請求項1〜3のいずれか一項に記載の作用効果を奏するオートフォーカスカメラを提供できる。
【0019】
請求項5に記載の発明によれば、請求項4に記載の作用効果を奏するカメラ付き携帯電話を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本実施の形態に係るレンズ駆動装置を水平に切断した断面図である。
【図2】本実施の形態に係るレンズ支持体に第1及び第2環状コイルを装着した状態を示す斜視図である。
【図3】本実施の形態に係るレンズ駆動装置においてヨークの内側部分を示す斜視図である。
【図4】図3に示すヨークの内側部分の側面図である。
【図5】本実施の形態に係るレンズ駆動装置の分解斜視図である。
【図6】本実施の形態に係るレンズ駆動装置における、レンズ支持体と駆動部との関係を示すブロック図である。
【図7】本実施の形態に係る画像センサと制御部との関係を示すブロック図である。
【図8】本実施の形態に係るレンズ駆動装置の作用を説明する図である。
【図9】本実施の形態に係るレンズ駆動装置の外観を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下に、添付図面の図1〜図9を参照して本発明の実施の形態を詳細に説明する。本実施の形態に係るレンズ駆動装置1は、携帯電話に組み込まれるオートフォーカスカメラのレンズ駆動装置である。
【0022】
このレンズ駆動装置1は、図5に示すように、環状のヨーク3と、レンズ支持体5と、ヨーク3の光軸方向前側に配置されるフレーム7及び前側スプリング9と、ヨーク3の後側に配置されるベース8及び後側スプリング11とを備えており、前側スプリング9とヨーク3との間には前側スペーサ14、前側フレキシブル絶縁シート13が配置されており、後側スプリング11とヨーク3との間には後側スペーサ15、後側フレキシブル絶縁シート12が配置されている。
【0023】
図1及び図5に示すように、ヨーク3は略四角筒形状を成しており、ヨーク3の4つの各角度にはその内周側に第1マグネット部17が固定されており、第1マグネット部17は、図5に示すように、前側マグネット17a及び後側マグネット17bとの2つのマグネットから構成されている。尚、ヨーク3はベース8とフレーム7との間に固定されている。
【0024】
前側マグネット17a及び後側マグネット17bは各々前側から見た平面が略三角形状を成し、内周側がレンズ支持体5の外周に沿った円弧状を成している。前側マグネット17aと後側マグネット17bとは内周側の磁極を互いに異にしており、例えば前側マグネットはレンズ支持体側の面をN極とし、後側マグネットはS極としてある。
【0025】
四角筒形状のヨーク3の4つの側面の内周には、各々第2マグネット部18及び第3マグネット27が固定されている。第2マグネット部18はヨークの各側面に形成された矩形の穴20に外周側から挿入されてヨーク3に固定されている。
【0026】
第2マグネット部18は、ヨーク3の内周側に向けて突出しており、図3に示すように、第2環状コイル16a〜16dの各環の内側に磁極部分が配置されている。第2マグネット部18は前後で磁極を異ならせており、例えば前側をN極、後側をS極としている。
【0027】
第3マグネット部27は、ヨーク3の各側面おいて前側に突出した突出部3a(図5及び図9参照)の内周面に固定されており、第2マグネット部18の前側で内周に向けて突設している。第3マグネット部27は、図3に示すように、第2マグネット部18に対向する側の磁極を第2マグネット部18と異なる磁極にしている。たとえば、本実施の形態では、第2マグネット部18と対向する側(後側)をS極として、反対側(前側)をN極としている。
【0028】
図2及び図5に示すように、レンズ支持体5は、略円筒形状であり、その内周側にレンズ(図示せず)が固定されている。レンズ支持体5の外周面には周方向に等間隔をあけて設けた4つの第1環状コイル19a、19b、19c、19dが設けてある。4つの第1環状コイル19a、19b、19c、19dは、レンズ支持体5の外周面に周囲方向に等間隔で取付けてあり、各々側面視矩形の環を成しており、各環状コイル19a〜19dは、その環の中空にレンズ支持体5の突状部22に挿入して、位置決めされている。
【0029】
各第1環状コイル19a〜19dの前側部分21は第1マグネット部17の前側マグネット17aに対面し、後側部分23は後側マグネット17bに対面している。
【0030】
隣り合う第1環状コイル19a〜19d間には、第2環状コイル16a、16b、16c、16dが配置されている。隣合う第2環状コイルは互いに約90度の角度で配置されている。各第2環状コイル16a〜16dは、各々側面視矩形を成しており、図1、図3及び図4に示すように、矩形の環の内側には第2マグネット部18が挿入されている。
【0031】
図3及び図4に示すように、各第2環状コイル16a〜16dにおいて、各々前側部分24が第2マグネット部18と第3マグネット部27との間に挟まれており、前側部分24は第2マグネット部18と第3マグネット部27との間に生じる磁界内に配置されている。第2マグネット部18と第3マグネット部27との間には、閉じた磁界が形成されており、更にヨーク3により磁束密度が高められている。
【0032】
図6に示すように、各第1環状コイル19a〜19dは、Z−θ駆動部32に接続されており、各第2各環状コイル16〜16dはX―Y駆動部33に接続されており、各々駆動部32、33から所定値の電流が通電されるようになっている。各駆動部32、33は後述する制御部25から制御信号を受けて、各コイルに所定値の電流を流す。尚、図8に示すように、Zは光軸方向であり、θは光軸に対する傾きであり、X方向及びY方向は光軸に直行する平面(二次元)を意味する。
【0033】
尚、本実施の形態では、第1環状コイル19a〜19dには、各々個別に電流を流すが、第2環状コイル16a及び16cと、16b及び16dとが直列に接続されており、X方向及びY方向で共に2つの環状コイル16a及び16c、16b及び16dで同方向に駆動するようになっている。
【0034】
例えば、制御部25からの駆動信号を受けて、Z−θ駆動部32では、レンズ支持体5をフォーカス位置へ移動する場合には、フォーカス部35から各第1環状コイル19a〜19dに通電する電流Aを流し、チルト補正部37によりチルト補正をする場合には、対応する第1環状コイル19a、19b、19c、19dに電流Bを流す。尚、図6では符合A、Bは流した電流に基づいて生じる推力の方向と大きさを示している。
【0035】
同様に、手振れ補正をする場合には、X―Y駆動部33では、第2環状コイル16a及び16cに電流Eを流してX方向にレンズ支持体を移動させ、第2環状コイル16b及び16dに電流Fを流してY方向にレンズ支持体を移動させる。これにより、レンズ支持体をX―Y方向に移動して手振れ補正を行う。
【0036】
次に、図7及び図8を参照して、制御部25の構成を説明する。画像センサ31の略中心部eと、画像センサ31の外周で画像センサ31のY方向で対向して設けた一組のX方向センサ38a、38bと、X方向で対向した一組のY方向センサ39a、39bとが制御部25に接続されている。制御部25には、焦点・チルト制御部41と手振れ制御部43とが設けてあり、各々コントラスト記憶部45、コントラスト比較部46及び演算部47が設けてある。
【0037】
そして、コントラスト比較部46では、現在のコントラストのピーク(高域成分)と時間的ずれをもって記憶されたコントラストのピークを比較して、演算部47では現在のコントラストのピーク位置と記憶部で記憶されたコントラストのピーク位置とのずれ量を演算して、対応する各駆動部32、33へ駆動信号を発する。
【0038】
具体的には、焦点・チルト演算部41では、焦点位置へレンズ支持体5を移動する場合には、中心部e(図7参照)における最大ピーク位置となるように光軸方向(Z方向)にレンズ支持体5を移動し、図8に示すように、焦点(コントラストピーク)が中心e1からずれてe2にある場合には、レンズ支持体5を所定量傾けるように、所定の第1環状コイル19a〜19dに所定の電流を流すように、Z―θ駆動部32に制御信号を発する。
【0039】
尚、図8では模式的に一つのレンズを示しているが、本実施の形態では、レンズ支持体5には複数のレンズからなるレンズ群が保持されており、レンズ群の主点は通常、レンズ群の前側よりに設定されている。これにより、レンズ支持体5の傾きにより画像センサ31における焦点位置がずれることになる。
【0040】
一方、手振れ制御部(手ぶれ補正部)43では、2つの各X方向センサ38a、38bにおいて、各々記憶部45に記憶されているコントラストのピーク位置と現在のコントラストのピーク位置を比較部46で比較して演算部47でそのずれ量を演算し、更に2つのX方向センサ38a、38bの平均を算出して、X方向におけるずれ量を補正するように、第2環状コイル16a及び16cに所定の電流E(図6参照)を流す駆動制御信号をX―Y駆動部33に発する。
【0041】
同様に、2つのY方向センサ39a、39bについてもコントラストの比較から同様な演算をおこなって、第2環状コイル16b、16dに所定の電流F(図6参照)を流すように、X―Y駆動部33に制御信号を発する。
【0042】
図5に示すように、前側スプリング9は、組み付け前の自然状態が平板状であり、平面視矩形の環状を成す外周側部9aと、外周側部9aの内周に配置され平面視円弧形状の内周側部9bと、外周側部9aと内周側部9bとを連結する各腕部9cとで構成されている。
【0043】
同様に、後側スプリング11は、組み付け前の自然状態が平板状であり、平面視矩形の環状を成す外周側部11aと、外周側部11aの内周に配置され平面視円弧形状の内周側部11bと、外周側部11aと内周側部11bとを連結する各腕部11cとで構成されている。
【0044】
前側スプリング9の外周側部9aはフレーム7と前側スペーサ14との間に挟持されており、内周側部9bはフレキシブル絶縁シート13を介してレンズ支持体5の前端に固定されている。後側スプリング11の外周側部11aはベース8と後側スペーサ15との間に挟持されており、内周側部11bはフレキシブル絶縁シート12を介してレンズ支持体5の後端に固定されている。これにより、レンズ支持体5は前側スプリング9と後側スプリング11とにより、前後方向(Z方向)及びX―Y方向に移動自在に支持されている。
【0045】
そして、レンズ支持体5が前方に移動すると、レンズ支持体5は、前側スプリング9及び後側スプリング11の付勢力の合力と、環状コイル16及びマグネット17との間で生じる電磁力とが吊り合う位置で停止する。
【0046】
次に、本発明の実施の形態に係るレンズ駆動装置1の組立て、作用及び効果について説明する。
【0047】
レンズ駆動装置1の組立ては、図5に示すように、ベース8に、後側スプリング11、後側スペーサ15、第1環状コイル19a〜19dと第2環状コイル16a〜16dを外周面に固定したレンズ支持体5(図2参照)、4つの第1マグネット17部を内側角部に、4つの側面の突出部3aの内周側面に第3マグネット部27を固定したヨーク3、前側スペーサ14、前側スプリング9及びフレーム7をこの順序で組み付けた後、ヨーク3の各側面に形成された穴20に第2マグネット部18を挿入して固定する。
【0048】
第1環状コイル19a〜19dは各々入力端と出力端とをZ−θ駆動部32に接続し、第2環状コイル16a〜16dは、対向するコイル16aと16c、16bと16dを直列に接続した後、X―Y駆動33に入力端と出力端とを接続する。
【0049】
本実施の形態に係るレンズ駆動装置1の駆動は、図7及び図8に示すように、制御部25において、焦点・チルト制御部41が画像センサ31から受ける高域成分(コントラスト)のピークを比較しつつ、合焦点位置e1(図6参照)へレンズ支持体5をZ方向へ直線移動する。
【0050】
レンズ支持体5のZ方向への直線移動の際には、焦点・チルト制御部41から各第1環状コイル19a〜19dに電流値Aを流すことにより生じるマグネット17との間で生じる電磁力と、前側スプリング9と後側スプリング11との付勢力の合力とが吊り合う位置で停止する。
【0051】
一方、図8に示すように、光軸に傾き(ずれ)が生じている場合(e2)には、光軸を補正するために、レンズ支持体5を傾ける必要がある。この場合、焦点・チルト制御部41は、比較部46で各コントラストピークの比較し、演算部47でe1とe2との位置ずれ量を演算して、Z−θ駆動部32に駆動信号を発する。Z−θ駆動部32は、図6に示すように、第1環状コイル19a、19b、19c、19dのうちの所定の環状コイル(一つ又は、2つ、3つ)に電流Bを流すことにより、レンズ支持体5の姿勢(傾き)を制御して、光軸の傾きθを補正する。
【0052】
次に、制御部25は手振れ補正43により、レンズ支持体5のX―Y制御を行う。手振れ補正部43は、X方向センサ38a、38bにより各々X方向におけるコントラストのピークをについて、比較部46で現在と時間的ずれをもって記憶部45で記憶したコントラストのピーク位置とを比較して、演算部47でそのずれ量を検出し、2つのX方向センサ38a、38bにおけるピーク位置のずれ量の平均値を演算し、X―Y駆動部33に駆動信号を発する。X―Y駆動部33は、手振れ補正部43から駆動信号に基づいて、X方向の第2環状コイル16a、16cに通電してレンズ支持体5をX方向に移動する。
【0053】
同様にY方向においても、手振れ補正部43は、Y方向センサ39a、39bにより各々Y方向におけるコントラストのピークをについて、現在と時間的ずれをもって記憶したコントラストのピーク位置とを比較してそのずれ量を検出し、2つのY方向センサ38a、38bにおけるピーク位置のずれ量の平均値を演算し、X―Y駆動部33に駆動信号を発する。X―Y駆動部33は、手振れ補正部43から駆動信号に基づいて、Y方向の第2環状コイル16b、16dに通電してレンズ支持体5をY方向に移動する。
【0054】
レンズ支持体5を光軸方向(Z方向)に移動する場合には、第1環状コイル19a〜19dでは前側部分21(図5及び図6参照)と後側部分23(図5及び図6参照)とで異なる方向の電流が流れるが、前側部分21に対向する前側マグネット17aと後側部分23に対向する後側マグネット17bとの磁極を異ならせているので、同方向の推力を生じさせて、大きな推力を得ることができる。
【0055】
尚、レンズ支持体5の光軸の傾き補正は、レンズ支持体5を所定位置に移動後にしても良いし、レンズ支持体5を移動するときに傾きを制御したまま移動する(対応する第1環状コイル19a〜19dに電流A又は電流A+Bを同時に流す)ものであってもよい。
【0056】
本実施の形態によれば、レンズ支持体5をフォーカス移動(Z方向への移動)、チルト補正移動(θ補正)、及び手振れ補正(X―Y方向への移動)ができる。
【0057】
レンズ支持体5の外周面に第1環状コイル19a〜19d及び第2環状コイル16a〜16dを配置し、ヨーク3には第1環状コイル19a〜19dに対面する第1マグネット部17と、第2環状コイル16a〜16dの環の内外に配置する第2マグネット部18及び第3マグネット部27を設けるだけであるから、簡易な構成で小型化を図ることができる。
【0058】
第2環状コイル16a〜16dには、環の内外に第2マグネット部18及び第3マグネット部27を設けてあり、第2及び第3マグネット部18、27で第2環状コイル16a〜16dの前側部分24を挟んでいるから、第2環状コイル16a〜16dに作用する磁界を第2マグネット部18及び第3マグネット部27により閉じた磁界にして磁束密度を高めることができる。したがって、所定の駆動力を得る場合に第2環状コイル16a〜16dを小さくし又は駆動に必要な電流を小さくできる。
【0059】
レンズ支持体5をチルト補正したり、手振れ補正するように移動できるから、レンズ支持体やレンズ支持体を移動自在に保持する部品等の精度や組立て精度を低くできると共に部品不良やレンズ駆動装置1の不良を低減できる。
【0060】
本発明は、上述した実施の形態に限らず、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々変形可能である。例えば、上述した実施の形態において、光軸の傾きe2(図8参照)の検知は、加速度センサにより検出するものであっても良いし、ジャイロセンサで検出するものであっても良い。また、手振れ検知は、ジャイロセンサにより検知するものであっても良い。
【0061】
第3マグネット部27は、第2環状コイル16a〜16dの前側部分24を第2マグネット18との間に挟むように配置したが、これに限らず、第2環状コイル16a〜16dの後側部分29(図3参照)を第2マグネット18との間に挟むように第2環状コイル16a〜16dの後側に配置するものであっても良い。
【0062】
上述した実施の形態において、第2環状コイル16a〜16d及び第2マグネット18は、X方向とY方向とに2個ずつ設けたが、X方向に1つ、Y方向に1つのみ設けるものであっても良い。
【0063】
X方向センサ38a、38b及びY方向センサ39a、39bは対向して2個ずつ設けて平均値をとったが、X方向センサ38a及びY方向センサ39aとしてX方向とY方向とに各々一つずつ設けるものであっても良い。
【0064】
レンズ駆動装置1は、ズームレンズを備えて、ズーム機能を合わせ持つものであっても良い。
【符号の説明】
【0065】
1 レンズ駆動装置
3 ヨーク(筺体)
5 レンズ支持体
16a〜16d 第2環状コイル
19、19a〜19d 第1環状コイル
17 第1マグネット部
18 第2マグネット部
24 前側部分
25 制御部
27 第3マグネット部
32 Z−θ駆動部
33 X−Y駆動部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内周にレンズを支持するレンズ支持体と、レンズ支持体の外周面に配置した第1環状コイルと、レンズ支持体の外周面に周方向に90度の間隔をあけて配置した複数の第2環状コイルと、レンズ支持体を移動自在に支持するベースと、ベースに固定した第1マグネット部と第2マグネット部と第3マグネット部と、各コイルへの通電を制御する制御部とを備え、第1マグネット部は第1環状コイルに対面して配置し、第2マグネット部は各第2環状コイルの環の内側に配置し、第3マグネット部は第2環状コイルの環の外側に配置してあり、制御部はレンズ支持体を光軸方向へ移動するときには第1環状コイルに電流を流し、レンズ支持体を光軸と直交するX―Y方向に移動するときには所定の第2環状コイルに電流を流すことを特徴とするレンズ駆動装置。
【請求項2】
第1環状コイルは複数であり且つレンズ支持体の外周面に周方向に等間隔をあけて配置し、第2環状コイルは第1環状コイルと重ならない位置に配置してあり、制御部はレンズ支持体を光軸方向へ移動するとき及び光軸に対してレンズ支持体を傾斜させるときには所定の第1環状コイルに流す電流を異ならせることを特徴とする請求項1に記載のレンズ駆動装置。
【請求項3】
レンズ支持体を囲む環状のヨークを備え、第1〜第3マグネット部は各々ヨークの内周面に配置してあること特徴とする請求項2に記載のレンズ駆動装置。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか一項に記載のレンズ駆動装置と、レンズ支持体のレンズの結像側に設けた画像センサとを備えることを特徴とするオートフォーカスカメラ。
【請求項5】
請求項4に記載のオートフォーカスカメラを搭載したことを特徴とするカメラ付き携帯電話。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−112709(P2011−112709A)
【公開日】平成23年6月9日(2011.6.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−266474(P2009−266474)
【出願日】平成21年11月24日(2009.11.24)
【出願人】(000131348)シコー株式会社 (168)
【Fターム(参考)】