説明

レーザを自動斬増するための装置およびその方法

【課題】手術用のレーザを自動的に漸増するための装置およびその方法を提供する。
【解決手段】手術用レーザを自動漸増する方法は、ユーザ入力に基づいてレーザを設定することができるアルゴリズムを提供し、このアルゴリズムを実行させ且つ定められたパターンでレーザを発射することができる第1のユーザ入力を提供すること、観測された条件に応えて、レーザに発射を停止させ、アルゴリズムにレーザパラメータ値を定めさせ且つ当該値に基づいてレーザを設定させることができる第2のユーザ入力を提供すること、を備えており、レーザが発射を停止する時の最終レーザパワー値に基づいてレーザパラメータ値を定める。当該方法は、自動漸増アルゴリズムかまたは他のユーザ入力を介して、レーザを構え(手術用)の姿勢のモードにセットし、ユーザは、自動的に設定されたレーザを用いて、手術行為を実行できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概して、レーザシステムに関する。特に、本発明は、手術用のレーザシステムに関する。特にまた、本発明は、眼の手術に使用するためのレーザの自動斬増に対するシステムおよびその方法に関する。
この出願は、米国特許法第119条のもと、2006年6月30日に出願された米国仮特許出願番号60/818002の優先権を主張して、その全体の内容が参照されて本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
多数の眼科手術行為が、例えば網膜など、患者の目に対して行われている。これらの行為は、目の選択した部分に光のスポットを照射することを必要とし、通常、この光のスポットは、所望のスポットサイズを有するレーザにより提供される。レーザを利用する手術行為の例には、光線力学療法(photo-dynamic therapy)、レーシック(LASIK)、レーザ・スクラロストミ(laser sclerlostomy)、線維柱帯切開術(trabeculectomy)、ならびに、神経(neural)手術、関節鏡視下(arthroscopic)手術および脊髄(spinal chord)手術を含む、一般の内視鏡を使用した顕微鏡手術の利用が含まれる。
【0003】
通常、網膜凝固と称される一つの眼科手術行為において、レーザの光スポットが、患者の網膜の選択した部分に向けられ、エネルギーを堆積して、局所細胞の凝固を引き起こす。そのような光凝固手段が、例えば、漏れ易い血管をふさぐため、異常な血管を破壊するため、または、網膜の裂け目をふさぐために用いられ得る。そのようなレーザ手段およびその他のレーザ手段の準備において、外科医は、通常、調査のためのいくつかのレーザショットを網膜上に放って、目的とする手術的効果のためにレーザパワーを斬増しなくてはならない。外科医は、通常、低いパワー設定にレーザを設定して始める。彼または彼女は、レーザパワーが、目的とする行為が必要とするレベルにまたはレベルを超えたことを示す、所望の細胞効果(例えば、凝固)を観測するまで、レーザパワーを徐々に増加する。外科医は、その後、レーザパワーを最終設定して、目的とする領域の処置を行う。
【0004】
現在存在する手術用のレーザおよび手術用のレーザシステムは、手術用レーザを自動漸増する能力を備えていないので、レーザを漸増する手順は、外科医によって手作業で行われる。もし、レーザを漸増する手順の態様が、代わりに自動化されるならば、外科医は、手術行為に対して、外科用レーザのパワーの設定に必要な付加的な設定手順から開放されることができるので、手術行為の効率化および流れの改善がなされる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
したがって、手術用のレーザを自動的に漸増するための装置およびその方法に対する必要性が存在する。この装置および方法は、手術行為に対する準備において、手術用レーザを手作業で漸増する従来技術の手術用レーザの問題を低減または除去することができるものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明における手術用レーザを用いる、自動的に漸増するレーザ装置およびその方法の実施形態は、実質的に、これらの必要性等を満足する。レーザを自動斬増するための方法の一実施形態は、一つまたは複数のユーザ入力に基づいてレーザを設定することができるアルゴリズムを提供し、上記アルゴリズムを実行させ且つ定められたパターンで上記レーザを発射することができる第1のユーザ入力を提供し、観測された条件に応えて、上記レーザに発射を停止させ、及び上記アルゴリズムに一つまたは複数のレーザパラメータ値を定めさせ且つ上記一つまたは複数のレーザパラメータ値に基づいて上記レーザを設定させることができる第2のユーザ入力を提供し、上記レーザが発射を停止する時の最終レーザパワー値が上記アルゴリズムへの入力であり、上記アルゴリズムが上記最終レーザパワー値に基づいて上記一つまたは複数のレーザパラメータ値を定めるステップを有する。この方法は、さらに、自動漸増アルゴリズムにより自動的にかまたは他のユーザ入力を介して、レーザを「構えの姿勢」(手術用)モードに移行(セット)することを含む。ひとたび構えの姿勢モードになると、例えば外科医のようなユーザは、自動的に設定されたレーザを用いて手術行為を実行できる。外科医は、そのように、早く且つ効率的に、レーザが彼または彼女のあらかじめ設定したパワー設定に自動的に設定された状態で、目的とする手術の実行に移行できる。
【0007】
先行技術を超える本発明の一実施形態におけるある利点は、そのように、漸増の手順および設定の部分を自動化し、それによって手術行為の流れおよび効率を向上する能力である。例えば、外科医は、あらかじめ設定された漸増の傾斜を選択し、眼科手術用レーザの操作を制御するために眼科の外科医により通常用いられフットスイッチのような、制御スイッチを作動することによりあらかじめ設定されたレーザパルス列を起動することができる。外科医は、レーザのビームにより照射された細胞上の望ましい効果を観測して、フットスイッチ(または、他の制御装置)をリリースすることができる。制御装置リリースの時間指示(間隔)は、手術用のあらかじめ設定された基準に基づいて、意図した手術行為に対するレーザパワーおよびパルス幅のような、所定のレーザ操作パラメータを設定するために、手術用レーザシステムにより用いられ得る。本発明の一実施形態により設定される操作パラメータは、外科医のあらかじめ設定した基準に依存して、制御装置のリリース時の設定に対して、より高いか、より低いか、または対応しているかもしれない。
【0008】
本発明の実施形態は、手術用レーザを自動漸増するための装置を備え得る。この装置は、処理モジュールおよびこの処理モジュールに作動可能に結合されたメモリを有する。ここで、メモリは、処理モジュールに少なくともここで説明されるいくつかの機能を実行させる、コンピュータ実行可能なソフトウェア命令を有する。手術用レーザを自動漸増するための装置の実施形態は、さらに、処理モジュールからの信号に応答して、少なくともここで説明されるいくつかの機能を実行することができるハードウェアを備える。
【0009】
本発明の実施形態は、当業者に知られる任意の眼科手術用レーザシステムの中に実装され得る。特に、カルファルニア州、アーバインのアルコン・マニュファクチャリング社により製造されるアイライト(登録商標)レーザ手術用システムに実装され得る。本発明の実施形態は、眼科または他の手術での使用のためのそのような手術用機械またはシステムの中に組み込まれ得る。本発明の教示に従ったレーザを自動漸増するための装置および方法に対する他の使用は、当業者に知られて、本発明の範囲内に予期されるだろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明およびその利点のより完全な理解が、添付の図面を併せて考慮して、下記の説明を参照することにより得られるだろう。図面においては、同様の参照符号が、同様の特徴を示している。
【0011】
本発明の好ましい実施形態が、図面に説明されており、同様の符号が、同様または対応する各図面の部分を参照して用いられている。
【0012】
本発明の各実施形態は、自動漸増する手術用レーザ、並びに、例えば手術用レーザなどのレーザを自動漸増するための装置および方法を備えており、これらは、例えば外科医などのユーザに、手術行為で用いる特定のレーザパラメータを、具体的にはレーザパワーを、実際の効果および所定の設定(漸増)ルーチンに基づいて、自動的に設定する能力を提供する。本発明の実施形態は、自動漸増する手術用レーザ、レーザを自動漸増するための装置、および、レーザを設定するための方法を含み得る。
【0013】
本発明の実施形態は、外科医に、従来技術の手動で漸増するプロセスを自動化する能力を提供する。このプロセスにおいて、外科医は、テストショットを発射して、網膜の周囲に試し”焼け”を作り出す。ここで、焼けは、例えば網膜の影響を受けた部分が白くなることのような所望の効果が見られるまで、徐々に変化し増加するレーザパワー設定において、患者の視覚にほとんど影響を引き起こさない。ひとたび白くする効果が見られると、外科医は、レーザパワーが網膜手術に対して望まれるパワーよりも高いことを知る。彼または彼女は、レーザパワーを、目的とする手術結果に対して適当な、より低いセッティングに設定し得る。この手術結果とは、患者の網膜に意図しない影響(例えば損傷)を引き起こすことのないものである。例えば、外科医は、ある係数(例えば20%)だけパワーを低くすることを選ぶことができる。通常、テスト位置における網膜が白くなることは、レーザパワー設定が、手術行為に対して望ましいレーザパワーよりも高いことを表わす。
【0014】
従来技術の手術用レーザシステムは、外科医に、パワーを徐々に調節して、次に、細胞の影響が見られたら、パワーを手動で所望の操作値に設定するように、手術用レーザを手動で漸増することを要求する。本発明の実施形態は、その代わりに、外科医が手術用レーザのパラメータを自動的に設定できる漸増アルゴリズムを、外科医の手引きで、あらかじめ定めるように、漸増手順の態様を自動化する。例えば、本発明の一実施形態は、パルスレート、パルス幅、レーザパワー増加量、初期パワーおよび最大レーザーパワーのうちの一つまたはそのいくつかを、外科医があらかじめ設定することを許容する自動漸増機能を提供する。外科医は、また、レーザの手術用(操作上の)のパワー設定(すなわち、手術行為中に用いられるレーザパワー)を、例えば最終漸増パワー設定(望ましい細胞の影響が見られて、外科医がテストショットを止めるパワー設定)の機能として、あらかじめ設定することができる。例えば、手術用のパワー設定は、最終漸増パワー設定よりも20%低く設定されるかもしれない。当業者に既知のような、他のパラメータ設定も、本発明の自動漸増アルゴリズムの実施形態により、自動設定に対してあらかじめ定められることができる。
【0015】
ひとたび外科医が自動漸増機能をあらかじめ設定すると、本発明の実施形態は、その機能を実行し、外科医による入力に基づいて、手術のための手術用レーザパラメータを自動的に設定するように動作する。手術を準備する間、レーザまたはレーザ機能を作動する操作が可能なボタン、画面アイコン、フットスイッチまたは任意の他の制御機構のような制御インターフェースを作動させるという入力は外科医が行う。ある実施形態において、例えば、外科医は、フットスイッチを作動させてレーザを発射することができる。本発明の実施形態によれば、外科医は、漸増モード(このモードは、手術用のレーザ/制御装置上の制御インターフェースを介して起動され得る)の間に、フットスイッチを作動させてレーザを発射できる。このように、あらかじめ設定された漸増プログラム(例えば、パワー増加量、パルス幅等)を走らせて、一つまたは複数のテストショットを患者の網膜上に放つ。ひとたび外科医が所望のレーザパワー設定を表わす、目的とする細胞効果を観測すると、彼または彼女は、レーザの動作を停止し得る(例えば、フットスイッチをリリースする(離す))。このことは、自動漸増プログラムが、選択されたレーザパラメータを、具体的にはレーザパワーを、自動漸増プログラムのあらかじめ設定された基準に従って選択された手術用設定に、自動的に設定することをもたらす。外科医がレーザテスト発射(漸増)を止める時点である時間の指示(外科医がレーザテストショットを発射する継続時間)は、レーザ操作パラメータに基づいて、手術用レーザ設定を定めるための最初の入力である。ひとたび自動漸増プログラムがレーザパラメータをその手術用の値に設定すると、手術用レーザは、自動的に処置モードに移行されることができ、外科医は、手術行為を中断することなく行うことができる。
【0016】
図1は、本発明のレーザを自動斬増するための装置および方法の一実施形態が実装され得る手術用レーザ制御装置の一例を示す図である。レーザ10は、ユーザインターフェース12、各制御ノブおよび/またはボタン14、プローブポート16、照明ポート20、オン/オフキー22、および、緊急遮断ボタン24を備えている。これらの手段は、一例のみであり、手術用レーザ/レーザ制御装置は、これらの任意の組み合わせおよび眼科レーザシステムにおいて役立つかもしれない他の制御インターフェースおよびポートを有していてもよい。ユーザインターフェース12は、当業者に既知のような、表示してレーザシステム10の機能を選択し、且つパラメータを制御/調整することをユーザに許容するためのタッチセンサー式の画面を含む、グラフィカルユーザインターフェースであり得る。図1に示される他の様々な制御手段およびポートが、眼科用のレーザシステムの当業者に明らかな機能を提供し得る。
【0017】
レーザ10は、さらに、お互いに操作可能に結合しており、且つ、手術用レーザ10の制御装置の制御機能に操作可能に結合している、処理モジュール50および関連メモリ52を備え得る。処理モジュール50および関連メモリ52は、レーザ10を発射させ、レーザ10の設定および当業者によく知られたレーザ10に関連する他の機能を変更させる、操作命令を記憶し且つ実行することができる。処理モジュール50および関連メモリ52は、特に、本明細書に記載される本発明の方法/アルゴリズムの機能の少なくともいくつかをレーザに実行させることのできるコンピュータ(処理モジュール)実行可能なソフトウェア/操作命令を記憶し且つ実行することができる。そのような命令は、ハードコード、および/または、メモリ52に記憶された操作命令であることができ、本明細書に記載された少なくともいくつかのステップまたは機能に対応し得る。
【0018】
処理モジュール50は、一つの処理装置か、または、多数の処理装置であり得る。そのような処理装置は、マイクロプロセッサ、マイクロコントローラ、デジタル・シグナル・プロセッサ、マイクロコンピュータ、中央処理装置、フィールド・プログラマブル・ゲート・アレイ、プログラマブル・ロジック・デバイス、ステート・マシン、論理回路、アナログ回路、デジタル回路、および/または、回路のハードコーディングおよび/または操作命令に基づいて、信号(アナログおよび/またはデジタル)を操作する任意のデバイスであってもよい。メモリ52は、一つのメモリ装置、多数のメモリ装置、および/または、処理モジュールに組み込まれた回路であってもよい。メモリ52は、リードオンリー・メモリ、ランダム・アクセス・メモリ、揮発性メモリ、不揮発性メモリ、スタティック・メモリ、ダイナミック・メモリ、フラッシュ・メモリ、キャッシュ・メモリ、および/または、デジタル情報を記憶する任意の装置であってよい。処理モジュール50が、ステート・マシン、アナログ回路、デジタル回路および/または論理回路を介して、機能のうちの一つまたはそのいくつかを実装する時、メモリ52および/または対応する操作命令を記憶するメモリ要素は、ステート・マシン、アナログ回路、デジタル回路および/または論理回路を含む回路の中かまたは外部に組み込まれてもよい、という点に留意すべきである。さらに、図1から4に記載された少なくともいくつかのステップおよび/または機能に対応するハードコーディングされた命令および/または操作命令を、メモリ要素は記憶し、処理モジュールは実行する、という点に留意すべきである。
【0019】
当業者の一人は、ユーザインターフェース12が、一般に、手術用レーザを用いる眼科用手術システム内の任意のユーザインターフェースに対応することを認識するだろう。特に、ユーザインターフェース12は、本発明のあらかじめ定められた自動漸増手順の実施形態に、入力する/プログラムするために、例えば外科医のような、ユーザにより用いられ得る。例えば、ユーザは、グラフィカルユーザインターフェース12およびレーザ10の他の制御手段を介して、レーザ始動パワー、パルス幅、パルス間隔、パワーステップ増加量、最大許容レーザパワー、最終漸増パワー設定(例えば、フットスイッチのリリース時)からの手術用パワー設定オフセット、シングル/マルチショットパターンなどを入力できる。
【0020】
図2は、本発明のユーザインターフェース12の一実施形態の拡大図である。ユーザインターフェース12において、ユーザは、例えば、レーザパワー30、パルス幅32またはパルス間隔34を、それぞれの機能ラベルにおける画面にタッチすることにより調整できる。ユーザインターフェース12は、次に、例えば、当業者によく知られた方法で彼/彼女の指を画面を横切ってスライドさせることにより、ユーザがパラメータを調整するために用いることができるグラフィカルスライダ(図示せず)を提示することができる。外科医は、そのように、他の機能(例えば、最大レーザパワー、手術用パワーオフセット割合など)と同様に、図2に示される機能を用いて、漸増手順をあらかじめ定めることができる。現在または過去に記憶された漸増プログラムが、その後、外科医により、ユーザインターフェース12を介して選択されて、例えばレーザ発射フットスイッチまたは他の手段を作動することにより起動され得る。外科医により、レーザ10を漸増モードに設定することによって、漸増プログラムが選択されて、起動のための準備がなされ得る。レーザ10を漸増モードに設定することは、例えば、ユーザインターフェース12において、例えば漸増ボタン40を選択することにより、または、図1における専用の漸増モードスイッチ29を作動させることにより、そのようなモードを選択することによってなされる。漸増モードスイッチ29は、ソフトスイッチまたは手術用レーザ10上の任意の他のそのような制御スイッチである。
【0021】
図3は、本発明の一実施形態による、あるあらかじめ定められた漸増プログラム/アルゴリズムのパワー(電力)対時間プロファイルを示す図である。グラフ100の例において、例えば、200mWの始動レーザパワー、200msのパルス幅、200msのパルス間隔、30mWのパワーステップ増加量、500mWの最大許容パワー、および、ー20%である最終漸増パワーからの手術用レーザパワー設定オフセットを、外科医は選択する(すなわち、ひとたび外科医が、所望の細胞効果を観測し、例えばフットスイッチまたは他の作動装置をリリースして、レーザテストショットを停止すると、漸増手順は手術用レーザパワーを、フットスイッチのリリースにおけるレーザパワーよりも20%低く自動的に設定する)。外科医は、レーザ10において、ユーザインターフェース12を介して、これらの漸増設定をプログラムすることができ、望むならば、その漸増設定を後の呼び出しのために保存することができる。
【0022】
すでに述べたように、外科医は、例えばレーザ10の制御装置におけるフットスイッチ、ボタンまたは仮想ボタンを押すことにより、自動漸増モードを起動することができる。図3に示されるように、ポイントAにおいて、外科医がレーザ10を発射するために作動機構(例えば、フットスイッチ)を押して、自動漸増シーケンス/アルゴリズムが起動されて、自動漸増アルゴリズム/プログラムに従ってレーザ10の発射を制御する。ポイントAからポイントBまで、レーザパワーが200msごとに30mWの増加分で増加し、各パルスは200msの継続時間を有する。ポイントBにおいて、外科医は、作動装置をリリースして、レーザの発射が止まる。最終の手術用パワー設定は、本発明の漸増アルゴリズムにより、ポイントBよりも(ポイントCに示されるように)20%低く自動的に設定される。ひとたびパワーが手術用の値に調整されると、レーザ10は、外科医からのさらなる入力なしに”手術用モード”(すなわち、自動漸増モードが終了し、レーザは”構えの姿勢(ready)”となる)に自動的に移行して、レーザ10は手術の準備が整う。外科医は、そのように、早く且つ効率的に、レーザ10が彼または彼女のあらかじめ設定したパワー設定および任意の他のあらかじめ設定されたパラメータ設定に自動的に設定された状態で、目的とする手術の実行に移行できる。もし外科医が、自動設定手術用パワー設定が手術に対して不適当であると思った場合には、彼または彼女は、上述の手順を繰り返すかまたはパワーを手動で調節することができる。
【0023】
図4は、本発明の方法の一実施形態におけるステップを説明するフローチャートである。ステップ200において、ユーザは、上述したように自動漸増プログラムをプログラムするかまたは選択する。または、ユーザは、上述したように自動漸増プログラムをプログラムし且つ選択する。ステップ200は、また、ユーザが、上述したように、手術用レーザ10を漸増モードにセットすることを含み得る。ステップ210において、ユーザは、選択した自動漸増プログラムを、例えばフットスイッチのような作動機構を押すことにより実行して、レーザ10を発射する(レーザ10を漸増するための一つまたは複数のテストショット)。自動漸増シーケンスが起動されて、選択された漸増プログラムに従って、レーザ10の発射を制御する。ステップ220において、テストショット位置における所望の細胞反応を観測すると、ユーザは、レーザ10の発射を、例えば作動機構をリリースすることにより止める。ステップ230において、外科医の入力(レーザの停止)に応答して、自動漸増プログラムが、あらかじめ定められた自動漸増プログラムの基準に従って選択された自動漸増プログラムに対応する選択されたレーザパラメータを自動的に設定する。ステップ240において、レーザ10は、自動漸増プログラムにより自動的にかまたは他のユーザの入力を介して、”構えの姿勢”(手術用)モードに移行して、ステップ250において、外科医は、手術行為を実行できる。外科医は、そのように、早く且つ効率的に、レーザ10が彼または彼女のあらかじめ設定したパワー設定および任意の他のあらかじめ設定されたパラメータ設定に自動的に設定された状態で、目的とする手術の実行に移行できる。本発明の方法の実施形態は、上述したうちのいくつかまたは全てのステップを含むことができる。
【0024】
本発明のさらなる実施形態は、自動漸増手術用レーザのための装置を備え得る。図5に示されるように、装置400は、処理モジュール402とメモリ404とを備え得る。
処理モジュール402は、一つの処理装置か、または、多数の処理装置であり得る。そのような処理装置は、マイクロプロセッサ、マイクロコントローラ、デジタル・シグナル・プロセッサ、マイクロコンピュータ、中央処理装置、フィールド・プログラマブル・ゲート・アレイ、プログラマブル・ロジック・デバイス、ステート・マシン、論理回路、アナログ回路、デジタル回路、および/または、回路のハードコーディングおよび/または操作命令に基づいて、信号(アナログおよび/またはデジタル)を操作する任意のデバイスであってもよい。メモリ404は、一つのメモリ装置、多数のメモリ装置、および/または、処理モジュールに組み込まれた回路であってもよい。メモリ404は、リードオンリー・メモリ、ランダム・アクセス・メモリ、揮発性メモリ、不揮発性メモリ、スタティック・メモリ、ダイナミック・メモリ、フラッシュ・メモリ、キャッシュ・メモリ、および/または、デジタル情報を記憶する任意の装置であってよい。処理モジュール402が、ステート・マシン、アナログ回路、デジタル回路および/または論理回路を介して、機能のうちの一つまたはそのいくつかを実装する時、メモリ404および/または対応する操作命令を記憶するメモリ要素は、ステート・マシン、アナログ回路、デジタル回路および/または論理回路を含む回路の中かまたは外部に組み込まれてもよい、という点に留意すべきである。さらに、図1から4に記載された少なくともいくつかのステップおよび/または機能に対応するハードコーディングされた命令および/または操作命令を、メモリ404は記憶し、処理モジュール402は実行する、という点に留意すべきである。
【0025】
本発明は、ある好ましい実施形態を参照して説明されてきたが、本発明は、本発明の精神および基本的な特徴から離れることなく、他の特定の形またはその変形例で具体化されてもよいという点に留意されるべきである。上述した実施形態は、したがって、すべての観点における説明であると考えられ、添付の特許請求の範囲により示される本発明の範囲を制限するものとは考えられない。ここで用いられるように、”実質的に(substantially)”および”近似的に(approximately)”という言葉は、その対応する言葉および/または2つの項目(item)間の関連性に対して、工業的に受け入れられる許容差を備えている。そのような工業的に受け入れられる許容差は、1%未満から50%の範囲にあり、これらに制限されるわけではないが、成分値、集積回路プロセス変動、温度変動、増減回数、および/または、熱雑音が該当する。そのような項目間の関連性は、2から3パーセントの違いから大きな違いに及ぶ。また、ここで用いられるように、”に結合した(coupled to)”および/または”結合(coupling)”という言葉は、項目間の直接的結合、および/または、ある項目を介在した項目間の間接的結合を含む(例えば、ある項目は、これらに制限はされないが、部品、要素、回路、および/または、モジュールを含む)。ここで、間接的結合に対して、介在する項目は、信号の情報を変更しないが、信号の電流レベル、電圧レベル、および/または、電力レベルを変更してもよい。さらに、ここで用いられるように、推論結合(inferred coupling)(すなわち、一つの要素が推論(inference)により他の要素に結合している場合)は、”に結合した(coupled to)”と同様に、2つの項目間の直接的および間接的結合を含む。さらにまた、ここで用いられるように、”することができる(operable to)”という言葉は、ある項目が一つまたは複数の電力の結合、入力、出力などを備えており、一つまたは複数の対応する機能を実行することを表わしており、さらに、一つまたは複数の他の項目との推論結合を含んでいてもよい。さらにまた、ここで用いられるように、”と関係がある(associated with)”という言葉は、分離した項目の直接的および/または間接的結合を含んでおり、および/または、一つの項目が他の項目の中に埋め込まれていることを含んでいる。ここで用いられるように、”好ましく比較する(compares favorably)”という言葉は、2つまたはそれ以上の項目、信号などの間における比較が、望ましい関係を備えていることを表わす。例えば、信号1が信号2よりも大きいということが望ましい関係である場合、信号1の大きさが信号2の大きさよりも大きい場合かまたは信号2の大きさが信号1の大きさよりも小さい場合に、好ましい比較が達成される。
【0026】
本発明は、レーザ眼科手術の一般領域を参照して説明されたが、本明細書に含まれる教示は、レーザサブシステムを制御することが望まれる任意の手術用システムに同等に適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明のレーザを自動斬増するための装置およびその方法の一実施形態が実装され得る手術用レーザ制御装置の一例を示す図である。
【図2】本発明のユーザインターフェース12の一実施形態の拡大図である。
【図3】本発明の一実施形態による、あるあらかじめ定められた漸増手順のパワー(電力)対時間プロファイルを示す図である。
【図4】本発明の方法の一実施形態におけるステップを説明するフローチャートである。
【図5】本発明のレーザを自動斬増するための装置の一実施形態の機能ブロック図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザを自動漸増するための方法であって、
一つまたは複数のユーザ入力に基づいてレーザを設定することができるアルゴリズムを提供し、
前記アルゴリズムを実行させ且つ定められたパターンで前記レーザを発射することができる第1のユーザ入力を提供し、
前記レーザに発射を停止させ、及び前記アルゴリズムに一つまたは複数のレーザパラメータ値を定めさせ且つ前記一つまたは複数のレーザパラメータ値に基づいて前記レーザを設定させることができる第2のユーザ入力を提供し、前記レーザが発射を停止する時の最終レーザパワー値が、前記アルゴリズムへの入力であり、前記アルゴリズムが前記最終レーザパワー値に基づいて前記一つまたは複数のレーザパラメータ値を定める、ステップを有することを特徴とする方法。
【請求項2】
さらに、手術行為を実行するための操作状態に対応する構えの姿勢モードに、前記レーザをセットするステップを有する請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記アルゴリズムが、メモリに常駐し且つプロセッサにより実行されるコンピュータ実行可能なソフトウェア命令を備えている請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記レーザが、眼科手術用レーザである請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記第1および第2のユーザ入力が、ユーザが作動する作動機構により提供される請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記作動機構がフットスイッチである請求項5に記載の方法。
【請求項7】
レーザ発射の前記定められたパターンが、一連のレーザショットを含んでおり、連続するレーザショットそれぞれのパワーが所定量ずつ増加する請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記最終レーザパワー値は、前記レーザが発射を停止した時の最後のレーザショットのレーザパワー値である請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記最終レーザパワー値は、前記レーザが発射を停止した時の最後のレーザショットのレーザパワー値である請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記一つまたは複数のレーザパラメータが、一つまたは複数の手術のレーザパワー、レーザパルス幅およびレーザパルス間隔を含む請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記手術のレーザパワーが、前記最終レーザパワー値よりも設定値だけ小さい請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記設定値が、前記最終レーザパワー値の20パーセントである請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記第2のユーザ入力が、観測された条件の発生によって提供される請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記観測された条件が、レーザの焼けを表わす網膜が白くなることである請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記アルゴリズムが、レーザのユーザインターフェースにおいて、あらかじめ定められたアルゴリズムのリストからアルゴリズムを選択することにより提供される請求項1に記載の方法。
【請求項16】
前記アルゴリズムが、レーザのユーザインターフェースにおいて、パラメータおよびパラメータ値の一式を定めることにより提供される請求項1に記載の方法。
【請求項17】
前記アルゴリズムを提供することが、前記レーザを漸増モードにセットして、レーザのユーザインターフェースにおいてアルゴリズムを選択するステップを有する請求項1に記載の方法。
【請求項18】
レーザを自動漸増するための装置であって、
処理モジュールと、
前記処理モジュールに動作可能に結合しているメモリであって、前記処理モジュールに、
一つまたは複数のユーザ入力に基づいて前記レーザを設定することができるアルゴリズムを実行させ、
第1のユーザ入力を受け取って、前記レーザを定められたパターンで発射し、
第2のユーザ入力を受け取って、前記レーザの発射を停止し、及び一つまたは複数のレーザパラメータ値を定め、
前記一つまたは複数のレーザパラメータ値に基づいて前記レーザを設定する操作命令を含むメモリと、
を有することを特徴とする装置。
【請求項19】
前記一つまたは複数のレーザパラメータ値が、前記レーザが発射を停止した時の最終レーザパワー値に基づいて定められる請求項18に記載の装置。
【請求項20】
前記操作命令が、さらに、前記処理モジュールに前記レーザを構えの姿勢モードにセットさせ、該構えの姿勢モードは手術行為を実行するための操作状態に対応する請求項18に記載の装置。
【請求項21】
前記レーザが眼科手術用レーザである請求項18に記載の装置。
【請求項22】
前記第1および第2のユーザ入力が、ユーザが作動する作動機構により提供される請求項18に記載の装置。
【請求項23】
前記作動機構がフットスイッチである請求項22に記載の装置。
【請求項24】
レーザ発射の前記定められたパターンが、一連のレーザショットを含んでおり、連続するレーザショットそれぞれのパワーが所定量ずつ増加する請求項18に記載の装置。
【請求項25】
前記最終レーザパワー値は、前記レーザが発射を停止した時の最後のレーザショットのレーザパワー値である請求項24に記載の装置。
【請求項26】
前記最終レーザパワー値は、前記レーザが発射を停止した時の最後のレーザショットのレーザパワー値である請求項18に記載の装置。
【請求項27】
前記一つまたは複数のレーザパラメータが、一つまたは複数の手術のレーザパワー、レーザパルス幅およびレーザパルス間隔を含む請求項18に記載の装置。
【請求項28】
前記手術のレーザパワーが、前記最終レーザパワー値よりも設定値だけ小さい請求項27に記載の装置。
【請求項29】
前記設定値が、前記最終レーザパワー値の20パーセントである請求項28に記載の装置。
【請求項30】
前記レーザが、アイライト(登録商標)レーザ手術システムである請求項18に記載の装置。
【請求項31】
前記第2のユーザ入力が、観測された条件に応えて提供される請求項18に記載の装置。
【請求項32】
前記観測された条件が、レーザの焼けを表わす網膜が白くなることである請求項18に記載の装置。
【請求項33】
前記アルゴリズムが、レーザのユーザインターフェースにおいて、あらかじめ定められたアルゴリズムのリストから選択される請求項18に記載の装置。
【請求項34】
前記アルゴリズムが、レーザのユーザインターフェースにおいて、パラメータおよびパラメータ値の一式を定めることにより提供される請求項18に記載の装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−29833(P2008−29833A)
【公開日】平成20年2月14日(2008.2.14)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2007−173092(P2007−173092)
【出願日】平成19年6月29日(2007.6.29)
【出願人】(500319044)アルコン,インコーポレイティド (87)
【Fターム(参考)】