説明

レーザクリーニング方法、レーザクリーニング装置、電磁弁製造方法,電磁弁製造装置および電磁弁

【課題】実用性の高いレーザクリーニング方法,装置および、その方法,装置によってクリーニングされた部材を用いて電磁弁を製造する方法,装置を提供する。
【解決手段】電磁弁を構成する部材28の外周面をレーザ光によってクリーニングする装置において、(a)その部材を保持するとともに、その部材をそれの軸線回りに回転させる回転機構102と、(b)その回転機構によって保持されている部材の軸線の延びる方向のいずれかの側に配設された吹出ノズル110を有し、その吹出ノズルからその部材に向かって、外周面全体を覆うようにシールドガスを吹き付けるシールドガス吹付装置108と、(c)回転機構によって保持された部材の外周面にレーザ光を照射するレーザ光照射装置106とを備えるように構成する。このように構成することで、外周面全体の酸化等を防ぎつつ、外周面の全周にわたってレーザクリーニングすることが可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電磁弁を構成する部材の内周面若しくは外周面をレーザ光によってクリーニングするレーザクリーニング方法,装置、そのレーザクリーニング方法,装置によってクリーニングされた部材を用いて電磁弁を製造する電磁弁製造方法,装置および、プランジャとそのプランジャがそれの軸線方向に移動可能に収容されるハウジングとを備えた電磁弁に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、レーザ光を対象とする部材の表面に照射することで、その表面をクリーニングする方法,装置の開発が進められており、下記特許文献に記載されているように、様々な種類の部材の表面をレーザ光によってクリーニングすることが可能とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−232315号公報
【特許文献2】特開2010−38557号公報
【特許文献3】特開2008−287816号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
電磁弁の多くは、コア,プランジャ,そのプランジャが挿入される部材等の複数の円筒形状,円柱形状等の部材によって構成されており、例えば、それら複数の部材のうちのある1つの部材の内周面若しくは外周面が他の部材に接合されている。このため、電磁弁の製造時において、その1つの部材の他の部材に接合される内周面若しくは外周面(以下、「接合面」という場合がある)に付着しているものを適切に除去しておくことで、信頼性の高い電磁弁を製造することが可能となる。上記特許文献に記載のレーザクリーニング方法,装置では、様々な種類の部材の表面をレーザクリーニングすることが可能とされているが、レーザ光によってクリーニングされる被クリーニング面の多くは、平面とされている。このため、電磁弁を構成する部材の接合面といった周壁面を、レーザ光によってクリーニングする技術に関して、実用性を向上させるための改良の余地は多分に残されている。本発明は、そのような実情に鑑みてなされたものであり、実用性の高いレーザクリーニング方法,装置および、そのレーザクリーニング方法,装置によってクリーニングされた部材を用いて電磁弁を製造する電磁弁製造方法,装置を提供することを課題とする。
【0005】
また、電磁弁を構成する部材には、例えば、その部材の成形時にボンデ処理等の金属表面処理が施されているものがあり、このような部材の表面をレーザ光によってクリーニングすると、処理されていた金属が表面に析出する場合がある。このような析出物等の付着物が接合面に残存することは望ましくなく、当然、付着物を接合面から除去する必要がある。本発明は、そのような実情に鑑みてなされたものであり、電磁弁を構成する部材の接合面の付着物を好適に除去可能な電磁弁を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明のレーザクリーニング方法は、電磁弁を構成する複数の部材のうちの1つの部材の接合面をレーザ光によってクリーニングする方法であって、その接合面を有する部材をそれの軸線回りに回転させた状態で、その部材の軸線の延びる方向のいずれかの側に配設された吹出ノズルからその部材に向かって、接合面全体を覆うようにシールドガスを吹き付けつつ、接合面にレーザ光を照射して、接合面を全周にわたってクリーニングするように構成される。また、本発明のレーザクリーニング装置は、電磁弁を構成する複数の部材のうちの1つの部材の接合面をレーザ光によってクリーニングする装置であって、(a)接合面を有する部材を保持するとともに、その部材をそれの軸線回りに回転させる回転装置と、(b)その回転装置によって保持されている部材の軸線の延びる方向のいずれかの側に配設された吹出ノズルを有し、その吹出ノズルからその部材に向かって、接合面全体を覆うようにシールドガスを吹き付けるシールドガス吹付装置と、(c)レーザ光を発信するレーザ光発信器を有し、回転装置によって保持された部材の接合面にレーザ光を照射するレーザ光照射装置とを備えるように構成される。
【0007】
また、上記課題を解決するために、本発明の電磁弁製造方法は、(a)円柱形状のコアと、(b)プランジャが挿入される円筒形状の円筒部材と、(c)コアと円筒部材とが両端から嵌め入れられ、コアと円筒部材とを連結する円筒形状の連結部材とからなるハウジングを備えた電磁弁を製造する方法であって、(A)コアと円筒部材と連結部材とのうちの1つのものの接合面をレーザ光によってクリーニングするレーザクリーニング工程と、(B)コアと円筒部材との各々を連結部材に嵌め入れる嵌入工程と、(C)レーザ光発信器によって発信されるレーザ光の焦点を調整することで焦点の合わされたレーザ光によって、コアと円筒部材との各々と連結部材とを溶接するレーザ溶接工程とを含み、レーザクリーニング工程において、接合面を有するコアと円筒部材と連結部材とのうちの1つのものをそれの軸線回りに回転させた状態で、その1つのものの軸線の延びる方向に配設された吹出ノズルからその1つのものに向かって、接合面全体を覆うようにシールドガスを吹き付けつつ、接合面にレーザ光を照射して、接合面を全周にわたってクリーニングするように構成される。
【0008】
また、本発明の電磁弁製造装置は、(a)円柱形状のコアと、(b)プランジャが挿入される円筒形状の円筒部材と、(c)コアと円筒部材とが両端から嵌め入れられ、コアと円筒部材とを連結する円筒形状の連結部材とからなるハウジングを備えた電磁弁を製造する装置であって、(A)コアと円筒部材と連結部材とのうちの1つのものである被保持部材を保持するとともに、その被保持部材をそれの軸線回りに回転させる回転装置と、(B)その回転装置を第1の位置から第2の位置まで移動させる移動装置と、(C)レーザ光を発信するレーザ光発信器と、そのレーザ光発信器によって発信されたレーザ光の光路を、第1の位置において回転装置によって保持されている被保持部材に向かう光路と第2の位置において回転装置によって保持されている被保持部材に向かう光路とで切換える光路切換器と、第1の位置において回転装置によって保持されている被保持部材に向かうレーザ光が通過する第1レンズと、第2の位置において回転装置によって保持されている被保持部材に向かうレーザ光が通過する第2レンズとを有するレーザ光照射装置と、(D)その第1の位置において回転装置によって保持されている被保持部材のそれの軸線の延びる方向のいずれかの側に配設された吹出ノズルを有し、その吹出ノズルから被保持部材に向かって、接合面全体を覆うようにシールドガスを吹き付けるシールドガス吹付装置とを備えるように構成される。
【0009】
さらに、上記課題を解決するために、本発明の電磁弁は、(a)円柱形状のコアと、(b)プランジャが挿入される円筒形状の円筒部材と、(c)コアと円筒部材とが両端から嵌め入れられ、コアと円筒部材とを連結する円筒形状の連結部材とからなるハウジングを備え、コアと円筒部材との一方と連結部材とがレーザ溶接によって固着され、そのコアと円筒部材との一方が、外周面の連結部材に嵌め入れられる領域の全周にわたって形成され、外周面の連結部材の内周面にレーザ溶接される箇所の連結部材に嵌め入れられる側の端部とは反対側に位置する環状溝を有するように構成される。
【発明の効果】
【0010】
レーザクリーニングされる際には、通常、酸化等を防止するために、レーザ光が照射される被クリーニング面にシールドガスが吹き付けられる。電磁弁を構成する部材の接合面といった周壁面をレーザクリーニングする際に、単に周壁面に向かってシールドガスが吹き付けられると、周壁面のシールドガスが吹き付けられている部分はシールドガスによって覆われるが、周壁面のシールドガスが吹き付けられている部分以外の部分、特に、シールドガスが吹き付けられている部分とは径方向における反対側の部分は、シールドガスによって覆われず、酸化等が生じる虞がある。本発明のレーザクリーニング方法,装置および、電磁弁製造方法,装置では、レーザクリーニングされる部材をそれの軸線回りに回転させた状態で、その部材に向かって、その部材のそれの軸線の延びる方向のいずれかの側に配設された吹出ノズルからシールドガスが吹き付けられ、接合面全体がシールドガスによって覆われるようになっている。したがって、本発明のレーザクリーニング方法,装置および、電磁弁製造方法,装置によれば、接合面の酸化等を好適に防止することが可能となり、レーザクリーニング方法,装置および、電磁弁製造方法,装置の実用性を向上させることが可能となる。
【0011】
また、電磁弁のハウジングには、円柱形状のコアと、プランジャが挿入される円筒形状の円筒部材と、コアと円筒部材とに外嵌されてコアと円筒部材とを連結する円筒形状の連結部材とから構成され、コアと円筒部材との一方と連結部材とがレーザ溶接によって固着されるものがある。それらがレーザ溶接される前には、通常、コア等の接合面をクリーニングしておく必要があり、その接合面のクリーニング法として、レーザクリーニング法が採用される場合がある。ただし、コア等にはそれの成形時にボンデ処理等の金属表面処理が施されているものがあり、そのような処理が施されたものの表面をレーザクリーニングすると、処理されている金属が表面に析出してくる場合がある。本発明の電磁弁では、コアと円筒部材との一方の外周面に、連結部材に嵌め入れられる部分の全周にわたって環状溝が形成されており、その環状溝は、連結部材の内周面にレーザ溶接される箇所の連結部材に嵌め入れられる側の端部とは反対側に位置している。このため、レーザクリーニングによってコア等の外周面に析出した金属は、そのコア等が連結部材に嵌め入れられる際に連結部材の端によって削り取られ、その削り取られた金属は、環状溝の内部に封じ込められる。したがって、本発明の電磁弁によれば、コア等の外周面に析出した金属を散乱させることなく除去することが可能となり、接合面の付着物を好適に除去することが可能となる。
【発明の態様】
【0012】
以下に、本願において特許請求が可能と認識されている発明(以下、「請求可能発明」という場合がある)の態様をいくつか例示し、それらについて説明する。各態様は請求項と同様に、項に区分し、各項に番号を付し、必要に応じて他の項の番号を引用する形式で記載する。これは、あくまでも請求可能発明の理解を容易にするためであり、それらの発明を構成する構成要素の組み合わせを、以下の各項に記載されたものに限定する趣旨ではない。つまり、請求可能発明は、各項に付随する記載,実施例の記載等を参酌して解釈されるべきであり、その解釈に従う限りにおいて、各項の態様にさらに他の構成要素を付加した態様も、また、各項の態様から構成要素を削除した態様も、請求可能発明の一態様となり得るのである。
【0013】
なお、以下の各項において、(1)項が請求項1に相当し、請求項1に(4)項に記載の技術的特徴を付加したものが請求項2に、請求項1または請求項2に(6)項に記載の技術的特徴を付加したものが請求項3に、それぞれ相当する。また、(11)項が請求項4に相当する。また、下記(21)項は、請求可能発明の前提となる構成を示した態様に関する項であり、その項の態様に、(22)項〜(30)項に掲げる項のいずれかに記載の技術的特徴を付加した態様が、請求可能発明の態様となる。ちなみに、(21)項に(26)項に記載の技術的特徴を付加したものが請求項5に相当し、請求項5に(29)項に記載の技術的特徴を付加したものが請求項6に、請求項5または請求項6に(22)項に記載の技術的特徴を付加したものが請求項7に、請求項7に(23)項に記載の技術的特徴を付加したものが請求項8に、それぞれ相当する。また、(41)項に記載の技術的特徴と(44)項に記載の技術的特徴とを合わせたものが請求項9に、請求項9に(42)項に記載の技術的特徴を付加したものが請求項10に、それぞれ相当し、(51)項が請求項11に相当する。
【0014】
(1)電磁弁を構成する複数の部材のうちの1つの部材の外周面若しくは内周面であって他の部材に接合される接合面をレーザ光によってクリーニングする方法であって、
前記接合面を有する部材をそれの軸線回りに回転させた状態で、その部材の前記軸線の延びる方向のいずれかの側に配設された吹出ノズルからその部材に向かって、前記接合面全体を覆うようにシールドガスを吹き付けつつ、前記接合面にレーザ光を照射して、前記接合面を全周にわたってクリーニングするレーザクリーニング方法。
【0015】
レーザクリーニング方法は、レーザ光を対象とする部材の表面に照射することで、そのレーザ光が照射された被クリーニング面をクリーニングする方法であり、被クリーニング面に付着しているものを好適に除去することが可能とされている。ただし、レーザ光の照射によって被クリーニング面は非常に高温となるため、高温となった被クリーニング面が大気に曝されると、その被クリーニング面に煤が付着したり、被クリーニング面が酸化する虞がある。このため、レーザクリーニングされる際には、通常、被クリーニング面にシールドガスが吹き付けられ、酸化等の防止が図られている。ところが、電磁弁を構成する部材の多くは、コア,プランジャ,そのプランジャが挿入される部材等の複数の円筒形状,円柱形状等の部材によって構成されており、例えば、それら複数の部材のうちのある1つの部材の他の部材に接合される内周面若しくは外周面(以下、「接合面」という場合がある)をレーザクリーニングする際に、接合面に向かってシールドガスが吹き付けても、接合面の部分によっては、シールガスによって覆われず、大気に曝される虞がある。具体的には、接合面のシールドガスが吹き付けられている部分以外の部分、特に、シールドガスが吹き付けられている部分とは径方向における反対側の部分は、シールガスによって覆われず、大気に曝される虞がある。
【0016】
以上のことに鑑みて、本項に記載されたレーザクリーニング方法においては、接合面を有する部材をそれの軸線回りに回転させた状態で、その部材に向かって、その部材のそれの軸線の延びる方向のいずれかの側に配設された吹出ノズルからシールドガスが吹き付けられ、接合面全体がシールドガスによって覆われるようになっている。したがって、本項に記載のレーザクリーニング方法によれば、接合面の酸化等を好適に防止しつつ、接合面の付着物を全周にわたって除去することが可能となる。
【0017】
本項に記載の「吹出ノズル」は、接合面全体をシールドガスによって覆うことができるように、接合面を有する部材のそれの軸線の延びる方向のいずれかの側から、その部材に向かってシールドガスを吹出すものであればよい。つまり、接合面全体をシールドガスによって覆うことができるように、例えば、接合面を有する部材の端に向かってシールドガスを吹出すものであってもよく、ノズルの開口が接合面を有する部材の端と向かい合うように配設されるものであってもよい。また、「吹出ノズル」は、接合面を有する部材の軸線上に配設されてもよく、その軸線からズレた位置に配設されてもよい。軸線上に配設された場合には、吹出ノズルがその軸線と平行な方向にシールドガスを吹出すように構成されることが望ましく、軸線からズレた位置に配設された場合には、吹出ノズルがその軸線と接合面を有する部材の端において交差する方向にシールドガスを吹出すように構成されることが望ましい。
【0018】
(2)前記吹出ノズルが、前記軸線と平行な方向にシールドガスを吹き出すように構成された(1)項に記載のレーザクリーニング方法。
【0019】
(3)前記吹出ノズルが、前記軸線上に配設された(1)項または(2)項に記載のレーザクリーニング方法。
【0020】
(4)前記接合面が外周面である場合には外径、内周面である場合には内径が、
前記吹出ノズルの開口の内径以下とされた(1)項ないし(3)項のいずれか1つに記載のレーザクリーニング方法。
【0021】
上記1番目に記載の態様では、吹出ノズルの中心軸線と接合面を有する部材の軸線とが平行とされており、上記2番目に記載の態様では、吹出ノズルの中心軸線と接合面を有する部材の軸線とが一致しており、上記3番目に記載の態様では、吹出ノズルの開口が、接合面を有する部材の外径若しくは内径以上とされている。これにより、上記3つの項に記載の態様において、接合面全体を好適にシールドガスによって覆うことが可能となる。
【0022】
(5)前記接合面が、ボンデ処理されたものである(1)項ないし(4)項のいずれか1つに記載のレーザクリーニング方法。
【0023】
ボンデ処理とは、金属素材の表面にリン酸塩被膜をコーティングする処理であり、例えば、冷間鍛造法によって部材を成形する際に施される処理である。電磁弁を構成する部材のなかには、この冷間鍛造法によって成形されているものがあり、その冷間鍛造法によって成形された部材の表面はリン酸塩被膜によってコーティングされている。リン酸塩被膜は、溶接等の処理を阻害するものであり、除去する必要があるが、洗浄液等では非常に除去し難い。しかし、リン酸塩被膜にレーザ光を照射することで、リン酸塩被膜を融解し、リン,亜鉛等として析出させることが可能であり、レーザクリーニング法はリン酸塩被膜の除去方法として好適な方法であることが知られている。したがって、本項に記載の態様では、レーザ光によって接合面をクリーニングする効果が充分に活かされる。
【0024】
(6)前記電磁弁が、
プランジャと、そのプランジャがそれの軸線方向に移動可能に収容されるハウジングとを備え、
そのハウジングが、
(a)強磁性材料により形成された円柱形状のコアと、(b)前記プランジャが挿入されるとともに、強磁性材料により形成された円筒形状の円筒部材と、(c)前記コアと前記円筒部材とが両端から嵌め入れられ、それらコアと円筒部材とを連結するとともに、非磁性材料により形成された円筒形状の連結部材とからなり、
当該レーザクリーニング方法が、前記コアの外周面と前記円筒部材の外周面と前記連結部材の内周面とのうちのいずれかを前記接合面としてレーザ光によってクリーニングする方法である(1)項ないし(5)項のいずれか1つに記載のレーザクリーニング方法。
【0025】
本項に記載の態様では、電磁弁のハウジングが、円柱形状のコアと、円筒形状の円筒部材と、コアと円筒部材とに外嵌されてコアと円筒部材とを連結する円筒形状の連結部材とから構成されている。それら3つの部材から構成されているハウジングには、コアの外周面と円筒部材の外周面との各々と連結部材の内周面とがレーザ溶接によって固着されるものがある。ただし、コアの外周面,円筒部材の外周面,連結部材の内周面といった接合面に何らかの不純物が付着していると、レーザ溶接時にクラック,ブローホール等が生じ、そのレーザ溶接された箇所に穴があく虞がある。このため、接合面に付着している不純物を除去する必要があるが、接合面には、コア等の成形時に使用された加工油,潤滑油等の油分であったり、上述したリン酸塩被膜が付着しており、それら油分,リン酸塩被膜等は洗浄液等では非常に除去し難い。しかし、レーザクリーニング法であれば、加工油,潤滑油等の油分を蒸発させ、リン酸塩被膜をリン,亜鉛等として析出させることが可能である。したがって、本項に記載の態様では、レーザ光によって接合面をクリーニングする効果が充分に活かされる。
【0026】
(11)電磁弁を構成する複数の部材のうちの1つの部材の外周面若しくは内周面であって他の部材に接合される接合面をレーザ光によってクリーニングするレーザクリーニング装置であって、
前記接合面を有する部材を保持するとともに、その部材をそれの軸線回りに回転させる回転装置と、
その回転装置によって保持されている部材の前記軸線の延びる方向のいずれかの側に配設された吹出ノズルを有し、その吹出ノズルからその部材に向かって、前記接合面全体を覆うようにシールドガスを吹き付けるシールドガス吹付装置と、
レーザ光を発信するレーザ光発信器を有し、前記回転装置によって保持された部材の前記接合面にレーザ光を照射するレーザ光照射装置と
を備えたレーザクリーニング装置。
【0027】
本項に記載の態様は、カテゴリをレーザクリーニング装置とした請求可能発明の態様である。本項に記載のレーザクリーニング装置によれば、先に説明したように、接合面全体をシールドガスによって覆うことで、接合面の酸化等を好適に防止しつつ、接合面の付着物を全周にわたって除去することが可能となる。なお、本項に記載のレーザクリーニング装置は、レーザクリーニング方法に関する上記各態様の技術的特徴を適用させたものとすることが可能である。
【0028】
(21)プランジャとそのプランジャがそれの軸線方向に移動可能に収容されるハウジングとを備え、プランジャを移動させて弁を開閉する電磁弁を製造する電磁弁製造方法であって、
前記ハウジングが、(a)強磁性材料により形成された円柱形状のコアと、(b)前記プランジャが挿入されるとともに、強磁性材料により形成された円筒形状の円筒部材と、(c)前記コアと前記円筒部材とが両端から嵌め入れられ、それらコアと円筒部材とを連結するとともに、非磁性材料により形成された円筒形状の連結部材とからなり、
当該電磁弁製造方法が、
前記コアと前記円筒部材と前記連結部材とのうちの1つのものの外周面若しくは内周面であって他のものへ接合される接合面をレーザ光によってクリーニングするレーザクリーニング工程と、
前記コアと前記円筒部材との各々を前記連結部材に嵌め入れる嵌入工程と、
レーザ光発信器によって発信されるレーザ光の焦点を調整することで焦点の合わされたレーザ光によって、前記コアと前記円筒部材との各々と前記連結部材とを溶接するレーザ溶接工程とを含む電磁弁製造方法。
【0029】
本項に記載された態様は、請求可能発明の前提をなす態様であり、請求可能発明の電磁弁製造方法の基本的な工程を列挙した態様である。本項に記載の態様においては、レーザ溶接される接合面が、レーザ溶接の前処理として、レーザクリーニングされており、レーザクリーニングによって接合面の付着物を全周にわたって適切に除去することで、レーザ溶接時でのクラック,ブローホール等の発生を防止することが可能となる。
【0030】
(22)前記レーザクリーニング工程が、
前記レーザ溶接工程において用いられる前記レーザ光発信器によって発信されるレーザ光の焦点を調整することで焦点のずらされたレーザ光によって、前記接合面をクリーニングする工程である(21)項に記載の電磁弁製造方法。
【0031】
本項に記載された態様においては、レーザ溶接に用いられるレーザ発信器によって、接合面をレーザクリーニングしている。つまり、1つのレーザ発信器によって、レーザ溶接を行なうとともに、レーザクリーニングを行なっている。ただし、レーザ溶接を行なうためには、レーザ溶接される箇所の温度を溶接可能な温度まで上昇させる必要があり、非常に高い照射エネルギーのレーザ光を発信可能なレーザ発信器を用意する必要がある。一方、レーザクリーニングを行なうためには、接合面の温度を油分等の蒸発可能な温度、具体的には、350〜700℃まで上昇させればよく、接合面の変質等を防止するべく、700℃を超える温度まで上昇させることは望ましくない。
【0032】
本項に記載された態様では、レーザ溶接に用いられるレーザ発信器によって接合面をレーザクリーニングする際に、レーザ光の焦点を接合面からずらすことで、レーザ光が照射される箇所のエネルギー密度を低くしている。これにより、レーザ溶接に用いられるレーザ発信器によって接合面をレーザクリーニングすることが可能となる。したがって、本項に記載された態様によれば、1つのレーザ発信器によって、レーザ溶接およびレーザクリーニングを行なうことが可能となり、電磁弁を製造するための設備等を簡素化することが可能となる。また、本項に記載された態様では、レーザ光の焦点がずらされることで、レーザ光が照射される面積が大きくなるため、そのレーザ光によってクリーニングされる接合面の面積が大きくなる。したがって、本項に記載の態様によれば、効率良くレーザクリーニングを行なうことが可能となる。
【0033】
(23)前記レーザ溶接工程および前記レーザクリーニング工程において用いられる前記レーザ光発信器が、0.1秒以上連続してレーザ光を発信可能なものである(22)項に記載の電磁弁製造方法。
【0034】
(24)前記レーザ溶接工程および前記レーザクリーニング工程において用いられる前記レーザ光発信器が、CWレーザ光を発信可能なものである(23)項に記載の電磁弁製造方法。
【0035】
(25)前記レーザ溶接工程および前記レーザクリーニング工程において用いられる前記レーザ光発信器が、パルスレーザ光を発信可能なものである(23)項に記載の電磁弁製造方法。
【0036】
上記3つの項に記載の態様では、レーザ発信器に関して具体的に限定されており、上記3つの項に記載の「レーザ発信器」によれば、レーザ溶接される箇所の温度を溶接可能な温度まで容易に上昇させることが可能である。
【0037】
(26)前記レーザクリーニング工程が、
前記接合面を有する前記コアと前記円筒部材と前記連結部材とのうちの1つのものをそれの軸線回りに回転させた状態で、その1つのものの前記軸線の延びる方向に配設された吹出ノズルからその1つのものに向かって、前記接合面全体を覆うようにシールドガスを吹き付けつつ、前記接合面にレーザ光を照射して、前記接合面を全周にわたってクリーニングする工程である(21)項ないし(25)項のいずれか1つに記載の電磁弁製造方法。
【0038】
(27)前記吹出ノズルが、前記軸線と平行な方向にシールドガスを吹き出すように構成された(26)項に記載の電磁弁製造方法。
【0039】
(28)前記吹出ノズルが、前記軸線上に配設された(26)項または(27)項に記載の電磁弁製造方法。
【0040】
(29)前記接合面が外周面である場合には外径、内周面である場合には内径が、
前記吹出ノズルの開口の内径以下とされた(26)項ないし(28)項のいずれか1つに記載の電磁弁製造方法。
【0041】
(30)前記接合面が、ボンデ処理されたものである(21)項ないし(29)項のいずれか1つに記載の電磁弁製造方法。
【0042】
上記5つの項に記載の態様は、電磁弁製造方法に関する上記各態様にレーザクリーニング方法に関する上記各態様の技術的特徴を適用させたものである。上記5つの項の態様についての詳しい説明は、前述のレーザクリーニング方法における説明と重複するため、ここでは省略する。
【0043】
(41)プランジャとそのプランジャがそれの軸線方向に移動可能に収容されるハウジングとを備え、プランジャを移動させて弁を開閉する電磁弁を製造する電磁弁製造装置であって、
前記ハウジングが、(a)強磁性材料により形成された円柱形状のコアと、(b)前記プランジャが挿入されるとともに、強磁性材料により形成された円筒形状の円筒部材と、(c)前記コアと前記円筒部材とが両端から嵌め入れられ、それらコアと円筒部材とを連結するとともに、非磁性材料により形成された円筒形状の連結部材とからなり、
当該電磁弁製造装置が、
前記コアと前記円筒部材と前記連結部材とのうちの1つのものである被保持部材を保持するとともに、その被保持部材をそれの軸線回りに回転させる回転装置と、
その回転装置を第1の位置から第2の位置まで移動させる移動装置と、
(a)レーザ光を発信するレーザ光発信器と、(b)そのレーザ光発信器によって発信されたレーザ光の光路を、そのレーザ光が前記第1の位置において前記回転装置によって保持されている前記被保持部材に向かう光路と前記第2の位置において前記回転装置によって保持されている前記被保持部材に向かう光路とで切換える光路切換器と、(c)前記第1の位置において前記回転装置によって保持されている前記被保持部材に向かうレーザ光が通過する第1レンズと、(d)前記第2の位置において前記回転装置によって保持されている前記被保持部材に向かうレーザ光が通過する第2レンズとを有し、前記第1レンズを通過するレーザ光と前記第2レンズを通過するレーザ光とを選択的に照射可能なレーザ光照射装置とを備えた電磁弁製造装置。
【0044】
本項に記載の態様は、カテゴリを電磁弁製造装置とした請求可能発明の態様である。本項に記載の電磁弁製造装置では、例えば、第1の位置において、被保持部材の接合面をレーザクリーニングし、次に、被保持部材にコアと円筒部材と連結部材とのうちの被保持部材を除く他のものを嵌合した後に、第2の位置において、それら被保持部材と他のものとをレーザ溶接することが可能である。したがって、本項に記載の電磁弁製造装置によれば、電磁弁のハウジングをインライン方式によって製造することが可能となり、レーザクリーニングによって油分,リン酸塩被膜等が除去されたされた部材が長時間放置されることがなくなり、放置による酸化,錆等を防止することが可能となる。
【0045】
また、本項に記載の電磁弁製造装置が、さらに、(e)コアと円筒部材と連結部材とのうちの被保持部材を除く他のものを保持するとともに、その他のものを回転装置によって保持されている被保持部材に嵌合する嵌合装置を備え、移動装置が、回転装置を、上記第1の位置から、前記被保持部材に前記他のものを前記嵌合装置によって嵌合可能な位置を経由して、上記第2の位置まで移動させるように構成されてもよい。このような構成によって、電磁弁のハウジングをオートメーションで製造することが可能となる。
【0046】
(42)当該電磁弁製造装置が、
前記第1レンズを通過するレーザ光の焦点が、前記第1の位置において前記回転装置によって保持されている前記被保持部材の外周面若しくは内周面であって前記コアと前記円筒部材と前記連結部材とのうちの前記被保持部材を除く他のものへ接合される接合面からずれ、前記被保持部材に前記他のものが嵌合された後に、前記第2レンズを通過するレーザ光の焦点が、前記第2の位置において前記被保持部材と前記他のものとが嵌合された箇所に合うように設定された(42)項に記載の電磁弁製造装置。
【0047】
(43)当該電磁弁製造装置が、
前記第1の位置において、前記被保持部材を回転させた状態で、焦点のずらさせた前記第1レンズを通過するレーザ光によって、前記接合面をクリーニングし、前記第2の位置において、前記被保持部材を回転させた状態で、焦点の合わされた前記第2レンズを通過するレーザ光によって、前記被保持部材と前記他のものとを溶接するように構成された(42)項に記載の電磁式リニア弁。
【0048】
上記2つの項に記載の態様は、電磁弁製造装置に関する上記態様にレーザクリーニング工程およびレーザ溶接工程に関する上記態様の技術的特徴を適用させたものである。上記2つの項に記載の電磁弁製造装置によれば、先に説明したように、1つのレーザ発信器によって、レーザ溶接およびレーザクリーニングを行なうことが可能となり、電磁弁を製造するための設備等を簡素化することが可能となる。また、上記2つの項に記載の電磁弁製造装置は、例えば、第1、第2レンズと被保持部材との間の距離を変化させることで、レーザ光の焦点が調整されるように構成されていてもよく、そのように構成される場合、第1、第2レンズが被保持部材に接近離間可能に構成されてもよく、被保持部材が第1、第2レンズに接近離間可能に構成されてもよい。なお、上記2つの項に記載の電磁弁製造装置は、電磁弁製造方法でのレーザ光発信器に関する上記各態様の技術的特徴を適用させたものとすることが可能である。
【0049】
(44)当該電磁弁製造装置が、
前記第1の位置において前記回転装置によって保持されている前記被保持部材のそれの軸線の延びる方向のいずれかの側に配設された吹出ノズルを有し、その吹出ノズルから前記被保持部材に向かって、前記接合面全体を覆うようにシールドガスを吹き付けるシールドガス吹付装置を備えた(41)項ないし(43)項のいずれか1つに記載の電磁弁製造装置。
【0050】
本項に記載の態様は、電磁弁製造装置に関する上記各態様にレーザクリーニング装置に関する上記態様の技術的特徴を適用させたものである。本項に記載の電磁弁製造装置によれば、先に説明したように、接合面全体をシールドガスによって覆うことで、接合面の酸化等を好適に防止しつつ、接合面の付着物を全周にわたって除去することが可能となる。なお、本項に記載の電磁弁製造装置は、電磁弁製造方法での吹出ノズルに関する上記各態様の技術的特徴を適用させたものとすることが可能である。
【0051】
(51)(a)強磁性材料により形成された円柱形状のコアと、(b)強磁性材料により形成された円筒形状の円筒部材と、(c)前記コアと前記円筒部材とが両端から嵌め入れられ、それらコアと円筒部材とを連結するとともに、非磁性材料により形成された円筒形状の連結部材と、(d)前記円筒部材の内部を前記コアの側に位置する第1液室と前記コアとは反対側に位置する第2液室とに区画し、それら第1液室と第2液室とを連通するように自身を貫通する貫通穴が形成された区画部材と、(e)前記第1液室と連通する流出ポートと、(f)前記第2液室と連通する流入ポートとを有するハウジングと、
一端部が前記コアと、他端部が前記貫通穴の開口と対向する状態で軸線方向に移動可能に前記第1液室内に配設され、その他端部において前記開口に着座可能なプランジャと、
そのプランジャの他端部が前記貫通穴の前記開口に接近する方向と前記開口から離間する方向との一方に前記プランジャを付勢する弾性体と、
前記ハウジングの周りに設けられ、前記弾性体が前記プランジャを付勢する方向とは反対の方向に前記プランジャを移動させるための磁界を形成するコイルと
を備えた電磁弁であって、
前記連結部材に嵌め入れられる前記コアと前記円筒部材との一方と前記連結部材とが、レーザ溶接によって固着され、
そのコアと円筒部材との一方が、
外周面の前記連結部材に嵌め入れられる領域の全周にわたって形成され、外周面の前記連結部材の内周面にレーザ溶接される箇所の前記連結部材に嵌め入れられる側の端部とは反対側に位置する環状溝を有する電磁弁。
【0052】
本項に記載の電磁弁では、円柱形状のコアと、円筒形状の円筒部材と、コアと円筒部材とに外嵌されてコアと円筒部材とを連結する円筒形状の連結部材とからハウジングが構成されており、コアの外周面と円筒部材の外周面との一方と連結部材の内周面とがレーザ溶接によって固着されている。レーザ溶接されるコアの外周面,円筒部材の外周面,連結部材の内周面といった接合面に、上述したように、油分,リン酸塩被膜等が付着していると、レーザ溶接時にクラック,ブローホール等が生じるため、レーザ溶接の前処理として、接合面をクリーニングしておく必要があり、その接合面のクリーニング方法として、レーザ光によってクリーニングする方法が好適な方法として知られている。接合面をレーザ光によってクリーニングすることで、油分等は蒸発するため、接合面から油分等を除去することが可能であるが、リン酸塩被膜は蒸発せずに融解するため、処理されている金属、具体的には、リン,亜鉛等が接合面に析出する。このような金属の析出物は、当然、接合面から除去する必要があるが、接合面から除去された金属の析出物がハウジングの内部に入り込んでいくと、電磁弁の信頼性が低下する虞がある。
【0053】
以上のことに鑑みて、本項に記載の電磁弁では、コアと円筒部材との一方の外周面に、連結部材の内周面にレーザ溶接される箇所の連結部材に嵌め入れられる側の端部とは反対側に位置するように、連結部材の内周面と接合する部分の全周にわたって環状溝を形成している。これにより、レーザクリーニングによって接合面に析出した金属は、その接合面を有するコア等が連結部材に嵌め入れられる際に連結部材の端によって削り取られ、その削り取られた金属は、環状溝内に封じ込められる。したがって、本項に記載の電磁弁によれば、接合面に析出した金属を散乱させることなく除去することが可能となり、電磁弁の信頼性を担保することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】請求可能発明の実施例である電磁式リニア弁を示す概略断面図である。
【図2】請求可能発明の実施例であるレーザクリーニング装置を示す斜視図である。
【図3】従来のレーザクリーニング装置を示す斜視図である。
【図4】請求可能発明の実施例である電磁弁製造方法における嵌入工程を計時的に示す概略断面図である。
【図5】請求可能発明の実施例である電磁弁製造装置を示す概略的に示す図である。
【図6】レーザ光が照射された基材の表面温度とその基材表面の位置との関係を、焦点の合わされたレーザ光と焦点のずらされたレーザ光とを比較して示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0055】
以下、請求可能発明の実施例を、図を参照しつつ詳しく説明する。なお、本請求可能発明は、下記実施例の他、前記〔発明の態様〕の項に記載された態様を始めとして、当業者の知識に基づいて種々の変更、改良を施した種々の態様で実施することができる。
【実施例】
【0056】
<電磁式リニア弁の構成>
図1に、本発明の実施例の電磁式リニア弁10を示す。本電磁式リニア弁10は、高圧側の作動液路12および低圧側の作動液路14に接続されており、通常、弁体が弁座を塞ぐことで、高圧側の作動液路12から低圧側の作動液路14への作動液の流れを禁止している。一方、弁体と弁座との間に隙間が生じることで、高圧側の作動液路12から低圧側の作動液路14への作動液の流れを許容し、作動液の流れを許容する際の高圧側の作動液路12内の作動液の液圧と低圧側の作動液路14内の作動液の液圧との差圧を制御可能に変更することが可能とされている。
【0057】
電磁式リニア弁10は、図1に示すように、中空形状のハウジング20と、そのハウジング20内に自身の軸線方向に移動可能に設けられたプランジャ22と、ハウジング20の外周に設けられた円筒状のコイル24とを備えている。ハウジング20は、上端部に設けられた円柱状のコア26と、壁面を構成する概して円筒状の円筒部材28と、その円筒部材28の下端部に嵌入された有蓋円筒状の弁部材30とを有している。コア26は、強磁性材料により形成されており、上部に位置する第1外径部32と、下部に位置するとともに、第1外径部32の外径より僅かに小さな外径の第2外径部34とに区分けすることができ、段付の円柱形状とされている。円筒部材28も、強磁性材料により形成されており、上端部に位置する上端部36の外径は、コア26の第2外径部34の外径と同じとされている。その円筒部材28の上端部36とコア26の第2外径部34とが、非磁性材料により形成された円筒状のスリーブ38の両端から、離間した状態で嵌め入れられている。つまり、強磁性のコア26と円筒部材28とが、非磁性の連結部材としてのスリーブ38を介して、離間した状態で連結されている。
【0058】
そのコア26の第2内径部34のスリーブ38に接合している面である接合面、つまり、外周面の上端部には、全周にわたって環状溝50が形成されている。また、円筒部材28の上端部36のスリーブ38に接合している面である接合面、つまり、外周面の下端部にも、全周にわたって環状溝52が形成されている。それらコア26の第2外径部34と円筒部材28の上端部36との外周面の各々は、スリーブ38の内周面とレーザ溶接によって固着されている。詳しいことは後述するが、コア26の第2外径部34の外周面とスリーブ38の内周面とは、環状溝50とコア26の下端との間の箇所54においてレーザ溶接されており、円筒部材28の上端部36の外周面とスリーブ38の内周面とは、環状溝52と円筒部材28の上端との間の箇所56においてレーザ溶接されている。
【0059】
円筒部材28の内径は均一とされており、その円筒部材28の下端部に区画部材としての弁部材30が固定的に嵌入されている。その弁部材30によってハウジング20の内部は、コア26の側に位置する第1液室58とコア26とは反対側に位置する第2液室60との2つの液室に区画されている。第2液室60はハウジング20の下端面に開口しており、その開口が流入ポートとして機能することで、高圧側の作動液路12が第2液室60に接続されている。また、弁部材30には軸線方向に貫通する貫通穴62が形成されている。その貫通穴62の上方の開口64はテーパ状に形成され、その開口64が弁座として機能している。
【0060】
プランジャ22は、円筒部材28とスリーブ38とコア26と弁部材30とによって区画された第1液室58内において、軸線方向に移動可能とされている。プランジャ22は、強磁性材料により形成された円柱状のプランジャ本体70を含んで構成されており、そのプランジャ本体70は、それの上端面とコア26の下端面とが対向するように、円筒部材28の内部に挿入されている。プランジャ本体70の外径は、円筒部材28の内径より僅かに小さくされており、プランジャ22はハウジング20内を軸線方向に円滑に移動できるようになっている。なお、プランジャ本体70の下端面には、有底穴72が形成されており、その有底穴72に、ロッド部材74が固定的に嵌合されている。
【0061】
そのプランジャ22のロッド部材74の先端は、半球状とされており、弁部材30に形成された貫通穴62の開口64と向かい合うようにされている。そのロッド部材74の先端は、開口64に着座するようにされており、弁体として機能するものとされている。その弁体として機能するロッド部材74の先端が、弁座として機能する開口64に着座することで、貫通穴62を塞ぐことが可能とされている。なお、ロッド部材74の周囲に位置する第1液室58、詳しく言えば、弁部材30と円筒部材28とプランジャ本体70とによって区画される弁室76は円筒部材28の外壁面に開口しており、その開口が流出ポートとして機能することで、低圧側の作動液路14が弁室76、つまり、第1液室58に接続されている。
【0062】
また、ハウジング20のコア26の下端面には、プランジャ22の上端面に形成された凸部78と対向するように凹部80が形成されており、その凹部80に、プランジャ22の軸線方向への移動に伴って、プランジャ22の凸部78が進入するようになっている。そのプランジャ22の凸部78の上端面には、有底穴82が形成されており、その有底穴82には圧縮コイルスプリング84が挿入されている。圧縮コイルスプリング84の上端部はプランジャ22の上端面から突出しており、圧縮コイルスプリング84は、コア26に形成された凹部80の底面と有底穴82の底面とによって圧縮された状態で配設されている。このため、プランジャ22は、弾性体としての圧縮コイルスプリング84の弾性力によってコア26から離れる方向に付勢されている。つまり、プランジャ22のロッド部材74の先端が開口64に接近する方向に付勢されている。なお、有底穴82には、圧縮コイルスプリング84に囲まれるようにして棒状のストッパ86が挿入されており、そのストッパ86によって、プランジャ22の上方への移動量が制限されている。
【0063】
また、コイル24は、樹脂製の保持部材88によってハウジング20の外周部において保持されており、その保持部材88とともに、強磁性材料によって形成されたコイルケース90によって覆われている。コイルケース90は、上端部においてコア26に固定されるとともに、下端部において円筒部材28に固定されている。このため、コイル24による磁界の形成に伴って、コイルケース90,コア26,プランジャ22,円筒部材28に磁路が形成されるようになっている。
【0064】
<電磁式リニア弁の製造>
本電磁式リニア弁10を構成するハウジング20は、上述したように、レーザ溶接によってコア26の第2外径部34と円筒部材28の上端部36との各々がスリーブ38に固着されることで製造される。ただし、スリーブ38の内周面に接合されるコア26の第2外径部34の外周面と円筒部材28の上端部36の外周面、さらには、そのスリーブの内周面に不純物が付着していると、レーザ溶接時にクラック,ブローホール等が生じ、そのレーザ溶接された箇所に穴があく虞がある。このため、レーザ溶接されるコア26の第2外径部34の外周面,円筒部材28の上端部36の外周面、スリーブの内周面といった接合面に付着している不純物を除去する必要がある。コア26,円筒部材28,スリーブ38の接合面には、それらの成形時に使用された加工油、潤滑油等の油分が付着しており、それらの油分を洗浄液等で確実に除去することは困難となっている。特に、コア26および円筒部材28は、冷間鍛造法によって成形されており、成形時に、金属素材の表面にリン酸亜鉛被膜をコーティングする処理、所謂、ボンデ処理が施されてため、この被膜を洗浄液等で除去することは非常に困難となっている。
【0065】
そこで、本電磁式リニア弁10を製造する際には、レーザ溶接の前処理として、レーザ溶接される上記接合面をレーザ光によってクリーニングするレーザクリーニング法を採用している。レーザクリーニング法とは、照射されるレーザ光のエネルギーを、基材の極めて薄い表層面の融解および蒸発に費やすことで、基材の表面に付着した不純物を除去する方法であり、不純物を好適に除去することが可能とされている。詳しく言えば、レーザ光の照射によって、基材の表面の温度は350〜700℃となる。上述した加工油、潤滑油等の油分は約150〜300℃で蒸発するため、油分は完全に除去される。また、リン酸亜鉛は蒸発しないが、融解し、リン,亜鉛等が基材表面に析出するため、容易に除去することが可能となる。
【0066】
本電磁式リニア弁10において、クリーニングされる接合面は、円筒形状、若しくは円柱形状の部材の外周面若しくは内周面であることから、そのレーザクリーニングされる部材を保持機構等で保持し、その保持された部材、つまり、被保持部材をそれの軸線回りに回転させた状態で、その被保持部材の外周面若しくは内周面にレーザ光を照射することで、その外周面若しくは内周面を全周にわたってクリーニングするのである。
【0067】
具体的には、図2に示すように、レーザクリーニングされる部材(図では円筒部材28)を3本の保持爪100を有する回転装置102によって保持する。この回転装置102は、円筒部材28等の被保持部材を、3本の保持爪100によって鉛直方向に立設させた状態で保持することが可能となっており、それら3本の保持爪100が固定された円柱形状の回転台104がそれの軸線回りに回転可能となっている。このような構造によって、被保持部材28等がそれの軸線回りに回転させられる。この回転装置102に保持された被保持部材28等の側方には、レーザ光を照射可能なレーザ光照射装置106が設けられており、その被保持部材28等の外周面にレーザ光を照射可能とされている。ちなみに、被保持部材がスリーブ38である場合には、内周面にレーザ光を照射できるように、レーザ光照射装置106が、図示されている状態よりある程度角度のある状態で配置される。
【0068】
また、レーザクリーニング法は、上述したように、レーザ光を基材表面に照射し、不純物を融解,蒸発させる方法であるため、酸素の存在する状況下で基材表面にレーザ光が照射されると、基材表面に煤が付着したり、基材表面が酸化する虞がある。このため、レーザ光が照射される基材表面を酸素とは異なるガスによってシールドすることで、酸化,煤の付着等を防止するべく、シールドガスを吹付け可能なシールドガス吹付装置108が設けられている。シールドガス吹付装置108は、シールドガスが吹き出される吹出ノズル110を有しており、その吹出ノズル110は、回転装置102に保持された被保持部材28等の上方に配設されるとともに、被保持部材28等と同軸的に配設されている。これにより、吹出ノズル110は、上方から被保持部材28等に向かって、その被保持部材28等の軸線と平行な方向にシールドガスを吹出すようにされている。さらに、吹出ノズル110の開口は、被保持部材28等の接合面の径方向の寸法より大きくされている。つまり、コア26の第2外径部34の外径,円筒部材28の上端部36の外径,スリーブ38の内径は、吹出ノズル110の開口の内径より小さくされている。このため、吹出ノズル110から吹出されるシールドガスは、被保持部材28等の接合面全体を覆うことが可能となり、接合面全体を確実にシールドすることが可能となっている。
【0069】
上述した構造によって、回転装置102,レーザ光照射装置106,シールドガス吹付装置108によって構成されるレーザクリーニング装置では、被保持部材28等をそれの軸線回りに回転させた状態で、接合面全体をシールドガスで覆いつつ、接合面にレーザ光を照射することで、接合面が全周にわたってクリーニングされるようになっている。これにより、酸化,煤等の付着を防止しつつ、接合面の油分等を除去するとともに、リン,亜鉛等を接合面表面に析出させることが可能となる。
【0070】
ちなみに、本レーザクリーニング装置では、吹出ノズル110は回転装置102に保持された被保持部材28等と同軸的に配設されていたが、従来のレーザクリーニング装置の吹出ノズル112は、図3に示すように、概して水平方向に延びるとともに、回転装置102に保持された被保持部材28等の接合面に向かって延びるように配設されていた。つまり、従来のレーザクリーニング装置では、接合面に向かってシールドガスが吹き付けられていた。このように、接合面に向かってシールドガスが吹き付けられると、接合面のシールドガスが吹き付けられている部分はシールドガスによって覆われるが、接合面のシールドガスが吹き付けられている部分以外の部分、特に、シールドガスが吹き付けられている部分とは径方向における反対側の部分は、シールドガスによって覆われず、大気に曝される虞がある。このため、従来のレーザクリーニング装置では、接合面に煤が付着したり、基材表面が酸化する虞があったが、本クリーニングレーザ装置では、接合面全体を確実にシールドすることで、酸化,煤等の付着等を好適に防止することが可能となっている。
【0071】
上述したように、接合面全体をシールドガスで覆われた状態でレーザクリーニングされた接合面には、油分等は除去されているが、リン,亜鉛等が析出している場合がある。接合面に析出したリン,亜鉛等は、スリーブ38にコア26、若しくは、円筒部材28が嵌入される際に削り取られる。具体的には、例えば、円筒部材28の外周面がレーザ光によってクリーニングされた場合には、図4(a)に示すように、その外周面にリン,亜鉛等120が析出する。そして、嵌入工程において、スリーブ38に円筒部材28が嵌入されると、図4(b)に示すように、円筒部材28の外周面に析出しているリン,亜鉛等120の析出物が、スリーブ38の端によって削り取られ、その外周面からリン,亜鉛等が除去される。そして、円筒部材28が、さらに、スリーブ38に嵌入されていくと、スリーブ38の端によって削り取られたリン,亜鉛等120の析出物が、図4(c)に示すように、円筒部材28の外周面に形成された環状溝52に封じ込められるようになっている。このことは、スリーブ38にコア26が嵌入される場合も同じであり、コア26の外周面に形成された環状溝50にリン,亜鉛等の析出物が封じ込められる。このように、電磁式リニア弁10の製造時において、削り取られた析出物を散乱させること無く、溝内に封じ込めておくことが可能となっている。
【0072】
そして、スリーブ38にコア26、若しくは、円筒部材28が嵌入された後に、コア26、若しくは、スリーブ38と円筒部材28とがレーザ光によって溶接されることで、電磁式リニア弁10のハウジング20の外壁部分が製造される。このハウジング20の外壁部分を製造するための電磁弁製造装置130は、図5に示すように、レーザ光を照射する上記レーザ光照射装置106と、円筒部材等28等の被保持部材を保持しつつ、回転させる上記回転装置102と、その回転装置102を各製造工程に応じた位置に移動させる移動装置132と、シールドガス吹付装置108(図2参照)とを備えている。
【0073】
レーザ光照射装置106は、レーザ光を発信するレーザ光発信器134と、そのレーザ光発信器134から発信されたレーザ光の光路を切換える光路切換器としての光路切換用ミラー136と、その光路切換用ミラー136によって反射されたレーザ光をレーザクリーニング工程を行なう位置である第1の位置に反射する第1照射用ミラー138と、その第1照射用ミラー138からのレーザ光の焦点を調整可能な第1レンズ140と、光路切換用ミラー136によって反射されたレーザ光をレーザ溶接工程を行なう位置である第2の位置に反射する第2照射用ミラー142と、その第2照射用ミラー142からのレーザ光の焦点を調整可能な第2レンズ144とから構成されている。また、移動装置132は、被保持部材28等を保持した回転装置102を、レーザクリーニング工程を行なう位置から、嵌入工程を行なう位置を経由して、レーザ溶接工程を行なう位置まで移動させるようになっている。
【0074】
光路切換用ミラー136は、レーザ光発信器134から発信されたレーザ光を第1照射用ミラー138に向かって反射可能な状態(図では実線で示されている)と、レーザ光発信器134から発信されたレーザ光を第2照射用ミラー142に向かって反射可能な状態(図では2点鎖線で示されている)とで切換可能とされており、レーザクリーニング工程が行なわれる場合には、レーザ光を第1照射用ミラー138に向かって反射させ、レーザ溶接工程が行なわれる場合には、レーザ光を第2照射用ミラー142に向かって反射させるように構成されている。そして、第1照射用ミラー138によって反射されたレーザ光150(図では点線で示されている)は、第1レンズ140によって焦点が調整され、その調整されたレーザ光によって、被保持部材28等の接合面がクリーニングされる。一方、第2照射用ミラー142によって反射されたレーザ光152(図では2点鎖線で示されている)は、第2レンズ144によって焦点が調整され、その調整されたレーザ光によって、被保持部材28等とその被保持部材28等に嵌合された部材とが溶接される。
【0075】
レーザ光発信器134は、連続的なレーザ光、所謂、CWレーザ光(Continuous Wave Laser)を発信可能な装置である。CWレーザ光は、非常に照射エネルギーが高いため、エネルギー密度を高くすることで、基材表面の温度を溶接可能な温度まで容易に加熱することが可能となっており、レーザ溶接を好適に行なうことが可能となっている。一方、基材表面をレーザクリーニングする際には、上述したように、基材表面の温度が350〜700℃とされる必要がある。このため、本レーザ光照射装置106においては、レーザ溶接工程が行なわれる際に、第2レンズ144によってレーザ光の焦点を、被保持部材28等若しくは、その被保持部材28等に嵌合された部材の表面に合わせ、レーザクリーニング工程が行なわれる際には、第1レンズ140によってレーザ光の焦点を被保持部材28等の接合面からずらすように構成されている。これにより、レーザ溶接工程が行なわれる際の表面温度は、図6での実線に示すように、照射位置の中央部A付近において、700℃を大きく超えて、レーザ溶接可能な温度まで上昇し、レーザクリーニング工程が行なわれる際の表面温度は、図6での点線に示すように、照射位置の中央部Aを中心として比較的広い範囲において350〜700℃とすることが可能となる。つまり、CWレーザ光を発信するレーザ光発信器134によって、接合面の比較的広範囲の部分をレーザクリーニングするとともに、ピンポイントでレーザ溶接することが可能となる。
【0076】
ちなみに、レーザクリーニング工程が行なわれる位置および、レーザ溶接工程が行なわれる位置には、レーザ光が照射される基材の表面温度を測定可能な温度測定センサ(図示省略)が設けられており、そのセンサによって測定された表面温度に基づいて、第1レンズ140および第2レンズ144の焦点が調整されるようになっている。また、レーザクリーニング工程が行なわれる位置とレーザ溶接工程が行なわれる位置との間には、回転装置102によって保持された被保持部材28等に嵌め合わされる部材である嵌合部材を保持するとともに、被保持部材28等に嵌合部材を嵌合する装置(図示省略)が設けられている。これにより、電磁式リニア弁10のハウジング20の外壁部分をインライン方式により製造することが可能となる。なお、本レーザ光発信器134は、CWレーザ光を発信可能な装置であったが、0.1秒以上連続してパルスレーザ光を発信可能な装置であってもよい。パルス幅が0.1秒以上のパルスレーザ光であれば、焦点を合わせることで、好適にレーザ溶接を行なうことが可能であり、焦点をずらすことで、好適にレーザクリーニングを行なうことが可能となる。
【符号の説明】
【0077】
10:電磁式リニア弁(電磁弁) 20:ハウジング 22:プランジャ 24:コイル 26:コア(被保持部材) 28:円筒部材(被保持部材) 30:弁部材(区画部材) 38:スリーブ(連結部材)(被保持部材) 50:環状溝 52:環状溝 58:第1液室 60:第2液室 62:貫通穴 64:開口 84:圧縮コイルスプリング(弾性体) 102:回転装置 106:レーザ光照射装置 108:シールドガス吹付装置 110:吹出ノズル 130:電磁弁製造装置 132:移動装置 134:レーザ光発信器 136:光路切換用ミラー(光路切換器) 140:第1レンズ 144:第2レンズ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電磁弁を構成する複数の部材のうちの1つの部材の外周面若しくは内周面であって他の部材に接合される接合面をレーザ光によってクリーニングする方法であって、
前記接合面を有する部材をそれの軸線回りに回転させた状態で、その部材の前記軸線の延びる方向のいずれかの側に配設された吹出ノズルからその部材に向かって、前記接合面全体を覆うようにシールドガスを吹き付けつつ、前記接合面にレーザ光を照射して、前記接合面を全周にわたってクリーニングするレーザクリーニング方法。
【請求項2】
前記接合面が外周面である場合には外径、内周面である場合には内径が、
前記吹出ノズルの開口の内径以下とされた請求項1に記載のレーザクリーニング方法。
【請求項3】
前記電磁弁が、
プランジャと、そのプランジャがそれの軸線方向に移動可能に収容されるハウジングとを備え、
そのハウジングが、
(a)強磁性材料により形成された円柱形状のコアと、(b)前記プランジャが挿入されるとともに、強磁性材料により形成された円筒形状の円筒部材と、(c)前記コアと前記円筒部材とが両端から嵌め入れられ、それらコアと円筒部材とを連結するとともに、非磁性材料により形成された円筒形状の連結部材とからなり、
当該レーザクリーニング方法が、前記コアの外周面と前記円筒部材の外周面と前記連結部材の内周面とのうちのいずれかを前記接合面としてレーザ光によってクリーニングする方法である請求項1または請求項2に記載のレーザクリーニング方法。
【請求項4】
電磁弁を構成する複数の部材のうちの1つの部材の外周面若しくは内周面であって他の部材に接合される接合面をレーザ光によってクリーニングするレーザクリーニング装置であって、
前記接合面を有する部材を保持するとともに、その部材をそれの軸線回りに回転させる回転装置と、
その回転装置によって保持されている部材の前記軸線の延びる方向のいずれかの側に配設された吹出ノズルを有し、その吹出ノズルからその部材に向かって、前記接合面全体を覆うようにシールドガスを吹き付けるシールドガス吹付装置と、
レーザ光を発信するレーザ光発信器を有し、前記回転装置によって保持された部材の前記接合面にレーザ光を照射するレーザ光照射装置と
を備えたレーザクリーニング装置。
【請求項5】
プランジャとそのプランジャがそれの軸線方向に移動可能に収容されるハウジングとを備え、プランジャを移動させて弁を開閉する電磁弁を製造する電磁弁製造方法であって、
前記ハウジングが、(a)強磁性材料により形成された円柱形状のコアと、(b)前記プランジャが挿入されるとともに、強磁性材料により形成された円筒形状の円筒部材と、(c)前記コアと前記円筒部材とが両端から嵌め入れられ、それらコアと円筒部材とを連結するとともに、非磁性材料により形成された円筒形状の連結部材とからなり、
当該電磁弁製造方法が、
前記コアと前記円筒部材と前記連結部材とのうちの1つのものの外周面若しくは内周面であって他のものへ接合される接合面をレーザ光によってクリーニングするレーザクリーニング工程と、
前記コアと前記円筒部材との各々を前記連結部材に嵌め入れる嵌入工程と、
レーザ光発信器によって発信されるレーザ光の焦点を調整することで焦点の合わされたレーザ光によって、前記コアと前記円筒部材との各々と前記連結部材とを溶接するレーザ溶接工程とを含み、
前記レーザクリーニング工程が、
前記接合面を有する前記コアと前記円筒部材と前記連結部材とのうちの1つのものをそれの軸線回りに回転させた状態で、その1つのものの前記軸線の延びる方向に配設された吹出ノズルからその1つのものに向かって、前記接合面全体を覆うようにシールドガスを吹き付けつつ、前記接合面にレーザ光を照射して、前記接合面を全周にわたってクリーニングする工程である電磁弁製造方法。
【請求項6】
前記接合面が外周面である場合には外径、内周面である場合には内径が、
前記吹出ノズルの開口の内径以下とされた請求項5に記載の電磁弁製造方法。
【請求項7】
前記レーザクリーニング工程が、
前記レーザ溶接工程において用いられる前記レーザ光発信器によって発信されるレーザ光の焦点を調整することで焦点のずらされたレーザ光によって、前記接合面をクリーニングする工程である請求項5または請求項6に記載の電磁弁製造方法。
【請求項8】
前記レーザ溶接工程および前記レーザクリーニング工程において用いられる前記レーザ光発信器が、0.1秒以上連続してレーザ光を発信可能なものである請求項7に記載の電磁弁製造方法。
【請求項9】
プランジャとそのプランジャがそれの軸線方向に移動可能に収容されるハウジングとを備え、プランジャを移動させて弁を開閉する電磁弁を製造する電磁弁製造装置であって、
前記ハウジングが、(a)強磁性材料により形成された円柱形状のコアと、(b)前記プランジャが挿入されるとともに、強磁性材料により形成された円筒形状の円筒部材と、(c)前記コアと前記円筒部材とが両端から嵌め入れられ、それらコアと円筒部材とを連結するとともに、非磁性材料により形成された円筒形状の連結部材とからなり、
当該電磁弁製造装置が、
前記コアと前記円筒部材と前記連結部材とのうちの1つのものである被保持部材を保持するとともに、その被保持部材をそれの軸線回りに回転させる回転装置と、
その回転装置を第1の位置から第2の位置まで移動させる移動装置と、
(a)レーザ光を発信するレーザ光発信器と、(b)そのレーザ光発信器によって発信されたレーザ光の光路を、そのレーザ光が前記第1の位置において前記回転装置によって保持されている前記被保持部材に向かう光路と前記第2の位置において前記回転装置によって保持されている前記被保持部材に向かう光路とで切換える光路切換器と、(c)前記第1の位置において前記回転装置によって保持されている前記被保持部材に向かうレーザ光が通過する第1レンズと、(d)前記第2の位置において前記回転装置によって保持されている前記被保持部材に向かうレーザ光が通過する第2レンズとを有し、前記第1レンズを通過するレーザ光と前記第2レンズを通過するレーザ光とを選択的に照射可能なレーザ光照射装置と、
前記第1の位置において前記回転装置によって保持されている前記被保持部材のそれの軸線の延びる方向のいずれかの側に配設された吹出ノズルを有し、その吹出ノズルから前記被保持部材に向かって、前記接合面全体を覆うようにシールドガスを吹き付けるシールドガス吹付装置と
を備えた電磁弁製造装置。
【請求項10】
当該電磁弁製造装置が、
前記第1レンズを通過するレーザ光の焦点が、前記第1の位置において前記回転装置によって保持されている前記被保持部材の外周面若しくは内周面であって前記コアと前記円筒部材と前記連結部材とのうちの前記被保持部材を除く他のものへ接合される接合面からずれ、前記被保持部材に前記他のものが嵌合された後に、前記第2レンズを通過するレーザ光の焦点が、前記第2の位置において前記被保持部材と前記他のものとが嵌合された箇所に合うように設定された請求項11に記載の電磁弁製造装置。
【請求項11】
(a)強磁性材料により形成された円柱形状のコアと、(b)強磁性材料により形成された円筒形状の円筒部材と、(c)前記コアと前記円筒部材とが両端から嵌め入れられ、それらコアと円筒部材とを連結するとともに、非磁性材料により形成された円筒形状の連結部材と、(d)前記円筒部材の内部を前記コアの側に位置する第1液室と前記コアとは反対側に位置する第2液室とに区画し、それら第1液室と第2液室とを連通するように自身を貫通する貫通穴が形成された区画部材と、(e)前記第1液室と連通する流出ポートと、(f)前記第2液室と連通する流入ポートとを有するハウジングと、
一端部が前記コアと、他端部が前記貫通穴の開口と対向する状態で軸線方向に移動可能に前記第1液室内に配設され、その他端部において前記開口に着座可能なプランジャと、
そのプランジャの他端部が前記貫通穴の前記開口に接近する方向と前記開口から離間する方向との一方に前記プランジャを付勢する弾性体と、
前記ハウジングの周りに設けられ、前記弾性体が前記プランジャを付勢する方向とは反対の方向に前記プランジャを移動させるための磁界を形成するコイルと
を備えた電磁弁であって、
前記連結部材に嵌め入れられる前記コアと前記円筒部材との一方と前記連結部材とが、レーザ溶接によって固着され、
そのコアと円筒部材との一方が、
外周面の前記連結部材に嵌め入れられる領域の全周にわたって形成され、外周面の前記連結部材の内周面にレーザ溶接される箇所の前記連結部材に嵌め入れられる側の端部とは反対側に位置する環状溝を有する電磁弁。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−172786(P2012−172786A)
【公開日】平成24年9月10日(2012.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−36590(P2011−36590)
【出願日】平成23年2月23日(2011.2.23)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】