レーザー光源装置、モニター装置および画像表示装置
【課題】小型であって、かつ、複数のレーザー光同士のコヒーレンスを低減させ、スペックルノイズを抑えたレーザー光源装置及びこれを備えた画像表示装置を提供する。
【解決手段】本発明のレーザー光源装置は、基本波光を出力する光源部分と、前記基本波光を入射して、該基本波光に含まれる所定の波長を選択的に透過する波長選択素子と、を備え、前記波長選択素子は、前記基本波光の入射によって選択波長が変化することを特徴とする。
【解決手段】本発明のレーザー光源装置は、基本波光を出力する光源部分と、前記基本波光を入射して、該基本波光に含まれる所定の波長を選択的に透過する波長選択素子と、を備え、前記波長選択素子は、前記基本波光の入射によって選択波長が変化することを特徴とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザー光源装置、レーザー光源装置を用いたモニター装置および画像表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の投射型画像表示装置では、光源として超高圧水銀ランプなどの放電ランプが用いられるのが一般的である。しかし、このような放電ランプは、寿命が比較的短い、瞬時点灯が難しい、色再現性範囲が狭い、ランプから放射された紫外線が液晶ライトバルブを劣化させてしまうことがある等の課題がある。そこで、このような放電ランプの代わりに、単色光を照射するレーザー光源を用いた投射型画像表示装置が提案されている。しかしながら、レーザー光源は、上記の課題を持たない反面、干渉性を有するという欠点を持っている。これにより、レーザー光が投射される被投射面より干渉縞がスペックルノイズとして現れ画像が劣化してしまう。高精細な画像を表示させるためには、スペックルノイズの対策が必要となる。
【0003】
スペックルノイズはコヒーレンス長に依存するため、コヒーレンス長を短くすることによりスペックルノイズを低減することが可能である。スペックルノイズを低減する手段としては、被投射面や、被投射面にレーザー光を投影する光学系内に散乱素子を配置したり、散乱素子を振動させたりする手段がある。このような手段を備えた画像表示装置が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
この特許文献1に記載の画像表示装置は、表面に所定形状の凹凸が形成された拡散素子を備えている。この拡散素子を光軸に直交する平面内において、加振手段により、所定の周波数で振動させることで、拡散素子に入射したレーザー光の強度分布が変化する。これによって、スペックルノイズを抑えることが可能となっている。
コヒーレンス長はスペクトル幅と反比例の関係があるため、スペクトル幅を広げる手段によりスペックルノイズが低減されることも知られている。レーザー光源の出力波長幅を制御する手段(例えば、特許文献2参照。)を用いることにより、スペックルノイズを低減することが可能である。
【0004】
また、高輝度であるプロジェクターの光源には、高出力レーザーが必要となり、高出力化のためにアレイ光源が用いられている。このアレイ光源によるスペックルノイズの対策方法として、アレイ光源の温度を制御する方法が提案されている(例えば、特許文献3参照。)。この特許文献3に記載の画像表示装置は、アレイ光源の一つ一つの半導体レーザーが、異なる温度に維持されており、各半導体レーザーが、この温度の違いに応じて異なる波長の光束を射出している。このように、出力波長を異ならせることにより、半導体レーザー同士のコヒーレンスが低減し、出力光全体としてスペックルノイズが低減する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−144936号公報
【特許文献2】特開平4−69987号公報
【特許文献3】特開2004−144794号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記特許文献1に記載の画像表示装置は、拡散素子を振動させるために、加振手段を用いているため、装置全体が大型化し、また、振動による騒音等が発生してしまう。
また、上記特許文献2に記載の光源装置は、所定の波長の光を選択的に透過する平面板状のバンドパスフィルターを回転させることで、バンドパスフィルターの光軸に対する傾きを連続して変化させる。このようにすることで、バンドパスフィルターを透過する光の波長が連続的に変化して、光源装置全体としてコヒーレンスを低減することができる。しかしながら、このような光源装置をレーザー光源装置として用いた場合には、バンドパスフィルターを回転させるための駆動部が必要となり、光源装置としての実装サイズが大きくなるという問題や騒音、安定的な動作が見込めないという問題等が発生し得る。
また、回転等の駆動部を設ける以外の方法を取る場合はバンドパスフィルターに対して精密加工処理などを施す必要がありコスト上昇の問題が生じる。
【0007】
特許文献3に記載の画像表示装置は、外部共振器構造を必要としない光源、すなわち、直接レーザー光を出力する光源の使用を前提としたものである。確かに、外部共振器構造を必要としない光源の場合には、スペックルノイズを抑える効果がある。
ここで、外部共振器を備える光源の場合、基本構成要素は、発光素子、波長選択素子、共振器ミラーである。また、複数の発光素子を用いる場合であっても、コストや組み立ての容易さを考慮して、単一の波長を選択する波長選択素子が用いられるのが一般的である。その結果、特許文献3に記載のように、アレイ光源から射出される光それぞれの波長にばらつきを持たせたとしても、波長選択素子により、単一の波長が選択されることになり、波長選択素子を含めた光源全体のコヒーレンスは低下しない。
【0008】
なお、上述した問題点は、画像表示装置に用いる光源装置に限らず、照明装置など、光源装置を必要とする様々な装置において起こり得る。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するように、以下の形態または適用例として実現される。
【0010】
〔適用例1〕本適用例にかかるレーザー光源装置は、基本波光を出力する光源部分と、前記基本波光を入射して、該基本波光に含まれる所定の波長を選択的に透過する波長選択素子と、を備え、前記波長選択素子は、前記基本波光の入射によって選択波長が変化することを特徴とする。
【0011】
〔適用例2〕本適用例にかかるレーザー光源装置は、共振用の第1のミラーと、外部共振の対象となる基本波光を共振させて得られるレーザー光の一部を透過すると共に、残りの光を前記第1のミラーに向けて反射する共振用の第2のミラーと、前記第1のミラーと前記第2のミラーとの間に配置され、前記基本波光を入射して、該基本波光に含まれる所定の波長の光を選択的に透過する波長選択素子と、を備え、前記波長選択素子は、前記基本波光の入射によって選択波長が変化することを特徴とする。
【0012】
上記適用例によれば、レーザー光源装置から射出される光のスペクトルを外部制御することなく時間的に変化させ、スペクトル幅を広げることが可能となる。また、この射出光を利用した場合、スペックルノイズの低減が可能となる。
【0013】
〔適用例3〕上記適用例に記載のレーザー光源装置であって、前記波長選択素子は、前記基本波光の入射によって吸収波長が変化する材料からなってもよい。
【0014】
本適用例では、波長選択素子は光の入射により吸収スペクトルが変化する機能性色素分子を用いる。レーザー光による色素分子の励起により色素分子で吸収される波長が変化することを利用し、選択波長を空間的・時間的に外部制御することなく変化させることができる。
【0015】
〔適用例4〕上記適用例に記載のレーザー光源装置であって、前記波長選択素子が、異なる吸収波長帯を持つ少なくとも2種類の混合材料からなることを特徴とする。
【0016】
本適用例では、波長選択素子に用いる色素分子は分子構造、pH等により吸収スペクトルを変化させることが可能である。色素分子の吸収波長の選択に応じて上記波長選択素子の透過波長のバンド幅、中心波長を選択することが可能となる。その結果、最終的に出力されるレーザー光の出力波長の自由度を向上させることが可能である。
【0017】
〔適用例5〕上記適用例に記載のレーザー光源装置であって、前記波長選択素子が、異なる吸収波長帯を持つ材料からなる少なくとも2つの分割領域を持つことを特徴とする。
【0018】
この結果、波長選択素子において、基本波光の少なくとも2つの入射位置における吸収スペクトルが互いに異なり、これら2つの基本波光の中から透過される光の波長を互いに異なるものとすることができる。
【0019】
〔適用例6〕上記適用例に記載のレーザー光源装置であって、前記波長選択素子が、波長選択材料の攪拌のための循環機構を持つことを特徴とする。
【0020】
前記波長選択素子に用いる色素分子は液体であるためセル内を流動させることが可能であることを利用し、セル内の色素分子を循環させる機構を色素分子セルに用いてもよい。この結果、波長選択素子において、異なる励起状態の色素分子が常に入れ替わるため入射位置により吸収スペクトルを時間変化させることが可能となる。
【0021】
〔適用例7〕上記適用例に記載のレーザー光源装置であって、前記基本波光を射出する光源にアレイ光源を用いることを特徴とする。
【0022】
アレイ光源を用いて異なる複数の光路を通る複数の基本波光を上記波長選択素子に入射させると、入射位置それぞれの位置で色素分子は励起される。複数の基本波光は異なるエミッタより出力された光であるため波長、光強度が各々異なる。その結果、分子の励起状態も入射位置により異なり吸収スペクトルの変化も異なる。透過する光の波長が互いに異なることにより、アレイビーム全体で複数の波長が得られ低コヒーレンス光を射出することが可能となる。また、本適用例における波長選択素子は励起後飽和状態の後に光の放出により非励起状態へ外部制御無しに戻すことが可能である。波長選択素子の吸収スペクトルの可逆反応を利用することにより、波長選択素子自体を回転する等の駆動、もしくは波長を位置により異ならせるための精密加工をする必要なく、励起光の入射のみで自律的に吸収スペクトルの変化を空間的・時間的に生じさせることができ低コヒーレンス化の効果が得られる。
【0023】
〔適用例8〕上記適用例に記載のレーザー光源装置であって、前記波長選択素子と異なる別の波長選択素子を備えることを特徴とする。
【0024】
基本波光を出力する光源の出力波長幅が色素分子の吸収波長幅よりも狭い場合は、色素分子の吸収中心波長を制御することにより所望の透過波長が得られる。一方、基本波光を出力する光源の出力波長幅が色素分子の吸収波長幅よりも広い場合は、色素分子の吸収波長外の波長は長波長側も短波長側も全て透過する。その結果、前記波長選択素子単独で特定の透過波長を選択することが困難となる。そこで、別の波長選択素子を用いて基本波光の出力波長を色素分子の吸収波長幅程度に制限することにより、色素分子による波長選択を効果的に行うことが可能となる。
【0025】
〔適用例9〕上記適用例に記載のレーザー光源装置であって、前記別の波長選択素子は、選択波長が固定であることを特徴とする。
【0026】
これにより、色素分子による波長選択を効果的に行うことが可能となる。
【0027】
〔適用例10〕上記適用例に記載のレーザー光源装置であって、さらに、前記基本波光を入射して、波長を変換する波長変換素子を備え、前記波長変換素子は、前記波長選択素子において選択的に透過される光の波長に対応した波長変換を行うことを特徴とする。
【0028】
これにより、波長変換を伴うレーザー光源装置においても、スペックルノイズの低減が可能となる。
【0029】
〔適用例11〕上記適用例1から適用例10のいずれか一つに記載のレーザー光源装置と、前記レーザー光源装置により照射された被写体を撮像する撮像部と、を備えることを特徴とするモニター装置。
【0030】
〔適用例12〕上記適用例1から適用例10のいずれか一つに記載のレーザー光源装置と、前記レーザー光源装置から射出されたレーザー光を画像信号に応じて変調する光変調部と、前記光変調部により形成された画像を投写する投写光学系と、を備えることを特徴とする画像表示装置。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明の第1実施形態に係る光源装置を示す平面図。
【図2】バンドパスフィルターの吸収特性(色素A,色素B基底状態)。
【図3】バンドパスフィルターの透過特性(色素A,色素B基底状態)。
【図4】レーザー色素のエネルギー準位図概略図。
【図5】バンドパスフィルターの吸収特性(色素A基底状態、色素B飽和状態)。
【図6】バンドパスフィルターの透過特性(色素A基底状態、色素B飽和状態)。
【図7】バンドパスフィルターの吸収特性(色素A飽和状態、色素B基底状態)。
【図8】バンドパスフィルターの透過特性(色素A飽和状態、色素B基底状態)。
【図9】本発明の第2実施形態に係る光源装置を示す平面図。
【図10】本発明の第3実施形態に係る光源装置を示す平面図。
【図11】本発明の第4実施形態に係る光源装置を示す平面図。
【図12】本発明の第5実施形態に係る光源装置を示す平面図。
【図13】本発明の第6実施形態に係る光源装置を示す平面図。
【図14】本発明の第7実施形態に係るモニター装置を示す概略図。
【図15】本発明の第8実施形態に係るプロジェクターを示す概略図。
【発明を実施するための形態】
【0032】
[第1の実施形態]
次に、本発明の第1の実施形態について、図1から図8を参照して説明する。
図1は、本発明の一実施形態としてのレーザー光源装置の概略構成を示す説明図である。このレーザー光源装置100は、外部共振型のレーザー光源装置であって、光源としての半導体レーザー20と、第2のミラーとしての出力ミラー50と、半導体レーザー20と出力ミラー50との間に設けられた波長選択素子としてのバンドパスフィルター30と、を備えている。半導体レーザー20は、レーザー素子21〜24がX軸方向に並ぶアレイ構造を有する。各レーザー素子21〜24は、面発光型のレーザー素子である。各レーザー素子21〜24は、基本波光としての基本レーザー光をY軸方向に射出する。基本レーザー光は、中心波長が635nmであって所定の帯域幅を有する赤色光である。なお、半導体レーザー20が備えるレーザー素子の数は図に示すアレイ以外に単一素子であってもよい。また、アレイのレーザー素子数は4つに限らず、任意の数であってもよい。出力ミラー50は、各レーザー素子21〜24の有する第1のミラーとしての共振用ミラー(図示せず)と対をなして外部共振器を構成する。
【0033】
レーザー光源装置100は、各面発光レーザー素子21〜24から射出される基本レーザー光を、出力ミラー50と共振用ミラーとで構成される外部共振器を用いて更に共振して増幅させ、より高い出力のレーザー光として射出する。具体的には、各レーザー素子21〜24から射出した基本レーザー光W11〜W14のうち、所定の波長の光W21〜W24が、バンドパスフィルター30において選択的に透過する。光W21〜W24は、出力ミラー50においてその大部分が反射され、反射光R21〜R24となって、バンドパスフィルター30を介して再び各レーザー素子21〜24に入射する。出力ミラー50において反射されなかった光は、射出光W41〜W44として、レーザー光源装置100から射出する。レーザー素子21〜24に戻ってきたレーザー光は、光R11〜R14として、基本レーザー光W11〜W14と共に半導体レーザー20から射出する。
【0034】
バンドパスフィルター30は、液体色素分子二種類が混合されたセルから構成される。例えば、赤色の光源に対しては600〜700nmの波長に吸収領域を持つ色素(Rhodamine700, Rhodamine800, Oxazine750, Nile Blue690 等)を用い、一種類もしくは吸収中心波長が異なる二種類の色素を混合することによりバンドパスフィルターとしての機能を持たせる。また、色素の種類は所望の光源の波長により応じて選択し、緑色の光源に対しては500〜600nmの波長に吸収領域を持つ色素(Rhodamine590, Rhodamine610, Rhodamine6G等)を用いる。青色の光源に対しては、400〜500nmの波長に吸収領域を持つ色素(Coumarin440, Coumarin460, Coumarin450 等)を用いてバンドパスフィルターとして利用する。
【0035】
図2〜図8は、図1に示すバンドパスフィルター30の吸収・透過特性およびエネルギー準位図を模式的に示す説明図である。バンドパスフィルター30は、二種類の色素(色素A、色素B)の二つの吸収ピーク間の波長を透過させる。色素分子の持つ特性により、光を入射させた際に色素分子は励起され基底状態S0から励起状態S1に遷移し、その際に光の吸収が生じる。励起された色素分子は不安定な状態であるため、各色素分子が独自に持つエネルギーバンドに応じて発光し基底状態に戻る。再び光が入射した場合は励起され、光を吸収し励起状態に遷移しこの過程を繰り返す。全ての色素分子が一斉に同じ過程を繰り返すことはなく、分子の中には励起状態が維持され吸収が生じない分子も混在する状態となり色素セルの位置に応じて異なる波長が透過する。その結果、上記波長選択素子により時間的・空間的に異なる波長が選択される。よって、レーザー光源装置100から射出される射出光W41〜W44は時間的に波長が異なり、射出光W41〜W44はそれぞれの波長が異なることになる。具体的には、Nile Blue640とRhodamine700の混合色素を用いた場合、基底状態ではレーザーの入射により、各色素で吸収が生じる(Nile Blue 640吸収最大:640nm, Rhodamine700 吸収最大:650nm)。基本波光の出力波長幅が各色素の吸収波長幅より概ね狭い場合、透過するのは、各吸収中心波長に挟まれた波長領域である。よって、透過光の中心波長は645nmである。光源による励起後、Nile Blue640が先に飽和状態になった場合は640nmに吸収が無くなるため透過中心波長は、645nmよりも短波長側に移動する。一方、Rhodamine700が先に飽和状態になった場合は、645nmよりも長波長側に透過中心波長が移動する。さらに、両色素分子が飽和状態となった場合は、色素セルにバンドパスフィルターとしての機能はなくなり光源の波長がそのまま透過する。各色素の飽和状態はアレイ光源の発振波長および強度に依存して変化する。本実施形態の目的は波長シフトによるスペックルノイズ低減にあるため、バンドパスフィルターの透過波長の精密な制御は必要ではなく透過波長が変化する現象が生じることを利用する。
以上から、レーザー光源装置100から射出される射出光のスペクトルが時間的に変化することになる。また、レーザー光源装置100から射出される射出光を全体でみると、即ち射出光W41〜W44を合成したものとしてみると、スペクトル幅が広がることになる。これにより、この射出光を利用した場合、スペックルノイズの低減が可能となる。
吸収波長が変化する応答時間は色素分子の材料にも依存するが、応答速度が速い材料でピコ秒レベルであり、ヒトの目の積算時間未満である。その結果、励起光の入射のみで自律的に吸収スペクトルの変化を時間的に生じさせることができ反応前後の波長が目で積算されることにより低コヒーレンス化と同様の効果が得られる。
【0036】
[第2の実施形態]
図9は、第2の実施形態におけるレーザー光源装置の概略構成を示す説明図である。このレーザー光源装置100aは、バンドパスフィルター30aの形状が異なる点において、図1に示すレーザー光源装置100と異なり、他の構成については、第1の実施形態と同じである。第1の実施形態におけるバンドパスフィルター30(図1)は、1個のセル内に色素分子を入れていたのに対して、バンドパスフィルター30aは、領域分割されたセル形状を有している。
領域分割されたセルは各々異なる吸収波長を持つ色素を用いる。また、色素分子(シアニン系色素等)はpH濃度により吸収波長が変化する性質を持つため、同じ色素分子でもpH濃度が異なる色素分子でも良い。
レーザー光源装置100aの動作およびバンドパスフィルター30aにおける選択波長が変化する動作は第1の実施形態と同様である。
領域により異なる吸収波長を持つ分子を用いることにより、より広い透過スペクトル幅、複数種類の透過スペクトルを得ることが可能となる。領域により透過スペクトルが異なることにより、スペックルノイズ低減効果を増加させることが可能となる。
【0037】
[第3の実施形態]
図10は、第3の実施形態におけるレーザー光源装置の概略構成を示す説明図である。このレーザー光源装置100bは、バンドパスフィルター30bの形状が異なる点において、図1に示すレーザー光源装置100と異なり、他の構成については、第1の実施形態と同じである。第1の実施形態におけるバンドパスフィルター30(図1)は、1個のセル内に色素分子を入れていたのに対して、バンドパスフィルター30bは、1個のセルに対して内部の色素分子を循環させる機構60を有している点で異なる。アレイレーザー光源の入射ビームにより励起された分子をセル内で循環させることにより、異なる励起状態の色素分子が常に入れ替わるため入射位置により吸収スペクトルを時間変化させることが可能となる。セルの循環には小型ポンプ等を用いる。
これにより、より広い透過スペクトル幅、複数種類の透過スペクトルを得ることが可能となる。したがって、スペックルノイズ低減効果を増加させることが可能となる。
【0038】
[第4の実施形態]
図11は、第4の実施形態におけるレーザー光源装置の概略構成を示す説明図である。このレーザー光源装置100cは、バンドパスフィルター30に加えてさらに別の波長選択素子としてのバンドパスフィルター31が加えられた点において、図1に示すレーザー光源装置100と異なり、他の構成については、第1の実施形態と同じである。バンドパスフィルター31は一般的なバンドパスフィルターであり、バンドパスフィルター30のように選択波長が変化するものではない。バンドパスフィルター31としては、その選択波長の範囲がバンドパスフィルター30の持つ吸収波長のバンド幅と概ね等しいものを使用する。半導体レーザー20から射出される基本波光の出力波長幅が、バンドパスフィルター30の色素分子の吸収波長の変化範囲よりも広い場合は、吸収波長より外側の短波長の光や長波長の光がバンドパスフィルター30を透過することとなる。すると、所望の波長によるレーザー共振を得られなくなってしまう。よって、バンドパスフィルター31を用いることにより基本波光のスペクトル幅をバンドパスフィルター30の持つ吸収波長のバンド幅と概ね等しくなる程度に制限する。その結果、所望の波長から大きく外れた波長はバンドパスフィルター30には入射しないため、バンドパスフィルター30の吸収波長に応じて特定の波長のみを透過させることが可能となる。そして、所望の波長のレーザー光が得られる。
これにより、レーザー光の安定した共振が可能となる。
【0039】
[第5の実施形態]
図12は、第5の実施形態におけるレーザー光源装置の概略構成を示す説明図である。このレーザー光源装置100dは、波長変換素子40を備えている点において、図1に示すレーザー光源装置100と異なる。波長変換素子40は、第2高調波発生(SHG:Second Harmonic Generation)の現象、すなわち、2個の光子が2倍の振動数をもつ1つの光子に変換される(1/2の波長の光に変換される)2次の非線形光学現象を引き起こす素子であり、強誘電体材料に分極反転構造が形成されたものである。例えば、波長変換素子40として、PPLN(Periodically Poled LiNb3)を用いることができる。なお、この分極反転構造における自発分極と反転分極との分極反転周期(ドメインピッチ)は、初期状態では波長変換素子40内において均一であるものとする。波長変換素子40は、半導体レーザー20と、バンドパスフィルター30と、の間に配置されている。そして、波長変換素子40は、基本レーザー光(基本波光源)W11〜W14が入射され、それぞれ1/2の波長に変換された光を射出する。特に、直接発振が現時点では技術的に困難である緑色の波長領域においては本手法の波長変換が最も実用的である。また、波長変換素子40はバンドパスフィルター30と出力ミラー50の間に配置されてもよい。この実施形態では、出力ミラー50は、基本波光を反射し、第2高調波を透過する特性を有するものであっても良い。
これにより、波長変換素子を用いて第2高調波を得る形式のレーザー光源装置においても、広いスペクトル幅や、時間的に変化するスペクトルを得ることが可能となる。したがって、スペックルノイズを低減させることが可能となる。
【0040】
[第6の実施形態]
図13は、第6の実施形態におけるレーザー光源装置の概略構成を示す説明図である。このレーザー光源装置100eは、バンドパスフィルター30eを配置する位置が異なる点において、図1に示すレーザー光源装置100と異なり、他の構成については、第1の実施形態と同じである。第1の実施形態におけるバンドパスフィルター30(図1)は、共振器内に配置されていたが、本実施形態では、バンドパスフィルター30eを光源部分としての共振器の外に配置している。このような場合でも、レーザー発振後のビームに対して空間的、時間的に異なる波長を選択することが可能であり、スペックルノイズの低減が可能となる。
【0041】
[第7の実施形態]
図14は、本発明のレーザー光源装置を適用したモニター装置の実施形態(第7の実施形態)を示す概略構成図である。このモニター装置400は、装置本体410と、光伝送部420と、を備えている。装置本体410は、上述した第1の実施形態におけるレーザー光源装置100(図1)を備えている。また、装置本体410は、集光レンズ150と、カメラ411と、を備えている。
【0042】
光伝送部420は、光を送る側のライトガイド421と、光を受ける側のライトガイド422と、を備えている。各ライドガイド421,422は、多数本の光ファイバを束ねたものであり、レーザー光を遠方に送ることができる。光を送る側のライトガイド421の入射側にはレーザー光源装置100が配置され、他方の射出側には拡散板423が配置されている。光を受ける側のライトガイド422の入射側には結像レンズ424が配置されている。
【0043】
レーザー光源装置100から射出されたレーザー光は、集光レンズ150で集められ、ライトガイド421を伝って拡散板423により拡散されて被写体を照射する。そして、被写体からの反射光は、結像レンズ424に入射して、ライトガイド422を伝ってカメラ411に送られる。このようにして、レーザー光源装置100により射出したレーザー光によって被写体を照射したことで得られる反射光に基づく画像を、カメラ411で撮像することができる。なお、モニター装置400において、レーザー光源装置100に代えて、上述したレーザー光源装置100a〜100eのいずれかを備えるようにしてもよい。
【0044】
[第8の実施形態]
図15は、本発明のレーザー光源装置を適用したプロジェクターの実施形態(第8の実施形態)を示す概略構成図である。このプロジェクター500は、赤色光を射出する前述のレーザー光源装置100(図1)と、緑色光を射出するレーザー光源装置100fと、青色光を射出するレーザー光源装置100jと、を備えている。レーザー光源装置100fは、半導体レーザー20aと、バンドパスフィルター30eと、波長変換素子40と、出力ミラー50aと、を備えている。レーザー光源装置100fから射出されるレーザー光は、低コヒーレンスとなっている。レーザー光源装置100jは、半導体レーザー20bと、バンドパスフィルター30gと、波長変換素子40aと、出力ミラー50bと、を備えている。レーザー光源装置100jから射出されるレーザー光は、低コヒーレンスとなっている。なお、レーザー光源装置100fやレーザー光源装置100jには、上述したレーザー光源装置100や100a〜100eのいずれかの構成を適用してもよい。
【0045】
また、プロジェクター500は、各色光を射出するレーザー光源装置100,100f,100jから射出された各色のレーザー光LBr,LBg,LBbをパソコン(図示省略)等から送られてきた画像信号に応じてそれぞれ変調する液晶ライトバルブ504R,504G,504Bを備えている。また、プロジェクター500は、液晶ライトバルブ504R,504G,504Bから射出された光を合成するクロスダイクロイックプリズム506と、投写レンズ507と、を備えている。
【0046】
さらに、プロジェクター500は、各レーザー光源装置100,100f,100jから射出されたレーザー光の照度分布を均一化させるため、各レーザー光源装置100,100f,100jよりも光路下流側に、均一化光学系502R,502G,502Bが配置されている。プロジェクター500は、これらの均一化光学系502R,502G,502Bによって照度分布が均一化された光で液晶ライトバルブ504R,504G,504Bを照射している。なお、均一化光学系502R,502G,502Bは、例えば、ホログラムとフィールドレンズとの組み合わせによって構成することができる。
【0047】
各液晶ライトバルブ504R,504G,504Bによって変調された3つの色光は、クロスダイクロイックプリズム506に入射する。このプリズム506は、4つの直角プリズムを貼り合わせて形成され、その内面に赤色光を反射する誘電体多層膜と青色光を反射する誘電体多層膜とが十字状に配置されている。そして、合成された光は投写レンズ507によってスクリーン510上に投写され、拡大された画像が表示される。
【0048】
上述したように、各レーザー光源装置100,100f,100jから射出されたレーザー光はコヒーレンスが低くなっている。従って、合成光が投写されるスクリーン510において、スペックルノイズを低減することができる。上述した第8の実施形態では、プロジェクター500における光変調手段としては、液晶ライトバルブを用いるものであったが、液晶ライトバルブに限らず、DMD(デジタルマイクロミラーデバイス:Texas Instruments社の商標)など、他の任意の変調手段を用いる構成であってもよい。また、上述した第1〜第6の実施形態におけるレーザー光源装置100〜100eは、モニター装置(第7の実施形態)及びプロジェクター(第8の実施形態)以外にも、照明装置など、光源を必要とする任意の装置に用いることができる。
【符号の説明】
【0049】
20,20a,20b…半導体レーザー、21〜24…レーザー素子、30、31…バンドパスフィルター、40,40a…波長変換素子、50,50a,50b…出力ミラー、60…機構、100,100a〜100j…レーザー光源装置、150…集光レンズ、400…モニター装置、410…装置本体、411…カメラ、420…光伝送部、421,422…ライトガイド、423…拡散板、424…結像レンズ、500…プロジェクター、502R…均一化光学系、504R…液晶ライトバルブ、506…クロスダイクロイックプリズム、507…投写レンズ、510…スクリーン。
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザー光源装置、レーザー光源装置を用いたモニター装置および画像表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の投射型画像表示装置では、光源として超高圧水銀ランプなどの放電ランプが用いられるのが一般的である。しかし、このような放電ランプは、寿命が比較的短い、瞬時点灯が難しい、色再現性範囲が狭い、ランプから放射された紫外線が液晶ライトバルブを劣化させてしまうことがある等の課題がある。そこで、このような放電ランプの代わりに、単色光を照射するレーザー光源を用いた投射型画像表示装置が提案されている。しかしながら、レーザー光源は、上記の課題を持たない反面、干渉性を有するという欠点を持っている。これにより、レーザー光が投射される被投射面より干渉縞がスペックルノイズとして現れ画像が劣化してしまう。高精細な画像を表示させるためには、スペックルノイズの対策が必要となる。
【0003】
スペックルノイズはコヒーレンス長に依存するため、コヒーレンス長を短くすることによりスペックルノイズを低減することが可能である。スペックルノイズを低減する手段としては、被投射面や、被投射面にレーザー光を投影する光学系内に散乱素子を配置したり、散乱素子を振動させたりする手段がある。このような手段を備えた画像表示装置が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
この特許文献1に記載の画像表示装置は、表面に所定形状の凹凸が形成された拡散素子を備えている。この拡散素子を光軸に直交する平面内において、加振手段により、所定の周波数で振動させることで、拡散素子に入射したレーザー光の強度分布が変化する。これによって、スペックルノイズを抑えることが可能となっている。
コヒーレンス長はスペクトル幅と反比例の関係があるため、スペクトル幅を広げる手段によりスペックルノイズが低減されることも知られている。レーザー光源の出力波長幅を制御する手段(例えば、特許文献2参照。)を用いることにより、スペックルノイズを低減することが可能である。
【0004】
また、高輝度であるプロジェクターの光源には、高出力レーザーが必要となり、高出力化のためにアレイ光源が用いられている。このアレイ光源によるスペックルノイズの対策方法として、アレイ光源の温度を制御する方法が提案されている(例えば、特許文献3参照。)。この特許文献3に記載の画像表示装置は、アレイ光源の一つ一つの半導体レーザーが、異なる温度に維持されており、各半導体レーザーが、この温度の違いに応じて異なる波長の光束を射出している。このように、出力波長を異ならせることにより、半導体レーザー同士のコヒーレンスが低減し、出力光全体としてスペックルノイズが低減する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−144936号公報
【特許文献2】特開平4−69987号公報
【特許文献3】特開2004−144794号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記特許文献1に記載の画像表示装置は、拡散素子を振動させるために、加振手段を用いているため、装置全体が大型化し、また、振動による騒音等が発生してしまう。
また、上記特許文献2に記載の光源装置は、所定の波長の光を選択的に透過する平面板状のバンドパスフィルターを回転させることで、バンドパスフィルターの光軸に対する傾きを連続して変化させる。このようにすることで、バンドパスフィルターを透過する光の波長が連続的に変化して、光源装置全体としてコヒーレンスを低減することができる。しかしながら、このような光源装置をレーザー光源装置として用いた場合には、バンドパスフィルターを回転させるための駆動部が必要となり、光源装置としての実装サイズが大きくなるという問題や騒音、安定的な動作が見込めないという問題等が発生し得る。
また、回転等の駆動部を設ける以外の方法を取る場合はバンドパスフィルターに対して精密加工処理などを施す必要がありコスト上昇の問題が生じる。
【0007】
特許文献3に記載の画像表示装置は、外部共振器構造を必要としない光源、すなわち、直接レーザー光を出力する光源の使用を前提としたものである。確かに、外部共振器構造を必要としない光源の場合には、スペックルノイズを抑える効果がある。
ここで、外部共振器を備える光源の場合、基本構成要素は、発光素子、波長選択素子、共振器ミラーである。また、複数の発光素子を用いる場合であっても、コストや組み立ての容易さを考慮して、単一の波長を選択する波長選択素子が用いられるのが一般的である。その結果、特許文献3に記載のように、アレイ光源から射出される光それぞれの波長にばらつきを持たせたとしても、波長選択素子により、単一の波長が選択されることになり、波長選択素子を含めた光源全体のコヒーレンスは低下しない。
【0008】
なお、上述した問題点は、画像表示装置に用いる光源装置に限らず、照明装置など、光源装置を必要とする様々な装置において起こり得る。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するように、以下の形態または適用例として実現される。
【0010】
〔適用例1〕本適用例にかかるレーザー光源装置は、基本波光を出力する光源部分と、前記基本波光を入射して、該基本波光に含まれる所定の波長を選択的に透過する波長選択素子と、を備え、前記波長選択素子は、前記基本波光の入射によって選択波長が変化することを特徴とする。
【0011】
〔適用例2〕本適用例にかかるレーザー光源装置は、共振用の第1のミラーと、外部共振の対象となる基本波光を共振させて得られるレーザー光の一部を透過すると共に、残りの光を前記第1のミラーに向けて反射する共振用の第2のミラーと、前記第1のミラーと前記第2のミラーとの間に配置され、前記基本波光を入射して、該基本波光に含まれる所定の波長の光を選択的に透過する波長選択素子と、を備え、前記波長選択素子は、前記基本波光の入射によって選択波長が変化することを特徴とする。
【0012】
上記適用例によれば、レーザー光源装置から射出される光のスペクトルを外部制御することなく時間的に変化させ、スペクトル幅を広げることが可能となる。また、この射出光を利用した場合、スペックルノイズの低減が可能となる。
【0013】
〔適用例3〕上記適用例に記載のレーザー光源装置であって、前記波長選択素子は、前記基本波光の入射によって吸収波長が変化する材料からなってもよい。
【0014】
本適用例では、波長選択素子は光の入射により吸収スペクトルが変化する機能性色素分子を用いる。レーザー光による色素分子の励起により色素分子で吸収される波長が変化することを利用し、選択波長を空間的・時間的に外部制御することなく変化させることができる。
【0015】
〔適用例4〕上記適用例に記載のレーザー光源装置であって、前記波長選択素子が、異なる吸収波長帯を持つ少なくとも2種類の混合材料からなることを特徴とする。
【0016】
本適用例では、波長選択素子に用いる色素分子は分子構造、pH等により吸収スペクトルを変化させることが可能である。色素分子の吸収波長の選択に応じて上記波長選択素子の透過波長のバンド幅、中心波長を選択することが可能となる。その結果、最終的に出力されるレーザー光の出力波長の自由度を向上させることが可能である。
【0017】
〔適用例5〕上記適用例に記載のレーザー光源装置であって、前記波長選択素子が、異なる吸収波長帯を持つ材料からなる少なくとも2つの分割領域を持つことを特徴とする。
【0018】
この結果、波長選択素子において、基本波光の少なくとも2つの入射位置における吸収スペクトルが互いに異なり、これら2つの基本波光の中から透過される光の波長を互いに異なるものとすることができる。
【0019】
〔適用例6〕上記適用例に記載のレーザー光源装置であって、前記波長選択素子が、波長選択材料の攪拌のための循環機構を持つことを特徴とする。
【0020】
前記波長選択素子に用いる色素分子は液体であるためセル内を流動させることが可能であることを利用し、セル内の色素分子を循環させる機構を色素分子セルに用いてもよい。この結果、波長選択素子において、異なる励起状態の色素分子が常に入れ替わるため入射位置により吸収スペクトルを時間変化させることが可能となる。
【0021】
〔適用例7〕上記適用例に記載のレーザー光源装置であって、前記基本波光を射出する光源にアレイ光源を用いることを特徴とする。
【0022】
アレイ光源を用いて異なる複数の光路を通る複数の基本波光を上記波長選択素子に入射させると、入射位置それぞれの位置で色素分子は励起される。複数の基本波光は異なるエミッタより出力された光であるため波長、光強度が各々異なる。その結果、分子の励起状態も入射位置により異なり吸収スペクトルの変化も異なる。透過する光の波長が互いに異なることにより、アレイビーム全体で複数の波長が得られ低コヒーレンス光を射出することが可能となる。また、本適用例における波長選択素子は励起後飽和状態の後に光の放出により非励起状態へ外部制御無しに戻すことが可能である。波長選択素子の吸収スペクトルの可逆反応を利用することにより、波長選択素子自体を回転する等の駆動、もしくは波長を位置により異ならせるための精密加工をする必要なく、励起光の入射のみで自律的に吸収スペクトルの変化を空間的・時間的に生じさせることができ低コヒーレンス化の効果が得られる。
【0023】
〔適用例8〕上記適用例に記載のレーザー光源装置であって、前記波長選択素子と異なる別の波長選択素子を備えることを特徴とする。
【0024】
基本波光を出力する光源の出力波長幅が色素分子の吸収波長幅よりも狭い場合は、色素分子の吸収中心波長を制御することにより所望の透過波長が得られる。一方、基本波光を出力する光源の出力波長幅が色素分子の吸収波長幅よりも広い場合は、色素分子の吸収波長外の波長は長波長側も短波長側も全て透過する。その結果、前記波長選択素子単独で特定の透過波長を選択することが困難となる。そこで、別の波長選択素子を用いて基本波光の出力波長を色素分子の吸収波長幅程度に制限することにより、色素分子による波長選択を効果的に行うことが可能となる。
【0025】
〔適用例9〕上記適用例に記載のレーザー光源装置であって、前記別の波長選択素子は、選択波長が固定であることを特徴とする。
【0026】
これにより、色素分子による波長選択を効果的に行うことが可能となる。
【0027】
〔適用例10〕上記適用例に記載のレーザー光源装置であって、さらに、前記基本波光を入射して、波長を変換する波長変換素子を備え、前記波長変換素子は、前記波長選択素子において選択的に透過される光の波長に対応した波長変換を行うことを特徴とする。
【0028】
これにより、波長変換を伴うレーザー光源装置においても、スペックルノイズの低減が可能となる。
【0029】
〔適用例11〕上記適用例1から適用例10のいずれか一つに記載のレーザー光源装置と、前記レーザー光源装置により照射された被写体を撮像する撮像部と、を備えることを特徴とするモニター装置。
【0030】
〔適用例12〕上記適用例1から適用例10のいずれか一つに記載のレーザー光源装置と、前記レーザー光源装置から射出されたレーザー光を画像信号に応じて変調する光変調部と、前記光変調部により形成された画像を投写する投写光学系と、を備えることを特徴とする画像表示装置。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明の第1実施形態に係る光源装置を示す平面図。
【図2】バンドパスフィルターの吸収特性(色素A,色素B基底状態)。
【図3】バンドパスフィルターの透過特性(色素A,色素B基底状態)。
【図4】レーザー色素のエネルギー準位図概略図。
【図5】バンドパスフィルターの吸収特性(色素A基底状態、色素B飽和状態)。
【図6】バンドパスフィルターの透過特性(色素A基底状態、色素B飽和状態)。
【図7】バンドパスフィルターの吸収特性(色素A飽和状態、色素B基底状態)。
【図8】バンドパスフィルターの透過特性(色素A飽和状態、色素B基底状態)。
【図9】本発明の第2実施形態に係る光源装置を示す平面図。
【図10】本発明の第3実施形態に係る光源装置を示す平面図。
【図11】本発明の第4実施形態に係る光源装置を示す平面図。
【図12】本発明の第5実施形態に係る光源装置を示す平面図。
【図13】本発明の第6実施形態に係る光源装置を示す平面図。
【図14】本発明の第7実施形態に係るモニター装置を示す概略図。
【図15】本発明の第8実施形態に係るプロジェクターを示す概略図。
【発明を実施するための形態】
【0032】
[第1の実施形態]
次に、本発明の第1の実施形態について、図1から図8を参照して説明する。
図1は、本発明の一実施形態としてのレーザー光源装置の概略構成を示す説明図である。このレーザー光源装置100は、外部共振型のレーザー光源装置であって、光源としての半導体レーザー20と、第2のミラーとしての出力ミラー50と、半導体レーザー20と出力ミラー50との間に設けられた波長選択素子としてのバンドパスフィルター30と、を備えている。半導体レーザー20は、レーザー素子21〜24がX軸方向に並ぶアレイ構造を有する。各レーザー素子21〜24は、面発光型のレーザー素子である。各レーザー素子21〜24は、基本波光としての基本レーザー光をY軸方向に射出する。基本レーザー光は、中心波長が635nmであって所定の帯域幅を有する赤色光である。なお、半導体レーザー20が備えるレーザー素子の数は図に示すアレイ以外に単一素子であってもよい。また、アレイのレーザー素子数は4つに限らず、任意の数であってもよい。出力ミラー50は、各レーザー素子21〜24の有する第1のミラーとしての共振用ミラー(図示せず)と対をなして外部共振器を構成する。
【0033】
レーザー光源装置100は、各面発光レーザー素子21〜24から射出される基本レーザー光を、出力ミラー50と共振用ミラーとで構成される外部共振器を用いて更に共振して増幅させ、より高い出力のレーザー光として射出する。具体的には、各レーザー素子21〜24から射出した基本レーザー光W11〜W14のうち、所定の波長の光W21〜W24が、バンドパスフィルター30において選択的に透過する。光W21〜W24は、出力ミラー50においてその大部分が反射され、反射光R21〜R24となって、バンドパスフィルター30を介して再び各レーザー素子21〜24に入射する。出力ミラー50において反射されなかった光は、射出光W41〜W44として、レーザー光源装置100から射出する。レーザー素子21〜24に戻ってきたレーザー光は、光R11〜R14として、基本レーザー光W11〜W14と共に半導体レーザー20から射出する。
【0034】
バンドパスフィルター30は、液体色素分子二種類が混合されたセルから構成される。例えば、赤色の光源に対しては600〜700nmの波長に吸収領域を持つ色素(Rhodamine700, Rhodamine800, Oxazine750, Nile Blue690 等)を用い、一種類もしくは吸収中心波長が異なる二種類の色素を混合することによりバンドパスフィルターとしての機能を持たせる。また、色素の種類は所望の光源の波長により応じて選択し、緑色の光源に対しては500〜600nmの波長に吸収領域を持つ色素(Rhodamine590, Rhodamine610, Rhodamine6G等)を用いる。青色の光源に対しては、400〜500nmの波長に吸収領域を持つ色素(Coumarin440, Coumarin460, Coumarin450 等)を用いてバンドパスフィルターとして利用する。
【0035】
図2〜図8は、図1に示すバンドパスフィルター30の吸収・透過特性およびエネルギー準位図を模式的に示す説明図である。バンドパスフィルター30は、二種類の色素(色素A、色素B)の二つの吸収ピーク間の波長を透過させる。色素分子の持つ特性により、光を入射させた際に色素分子は励起され基底状態S0から励起状態S1に遷移し、その際に光の吸収が生じる。励起された色素分子は不安定な状態であるため、各色素分子が独自に持つエネルギーバンドに応じて発光し基底状態に戻る。再び光が入射した場合は励起され、光を吸収し励起状態に遷移しこの過程を繰り返す。全ての色素分子が一斉に同じ過程を繰り返すことはなく、分子の中には励起状態が維持され吸収が生じない分子も混在する状態となり色素セルの位置に応じて異なる波長が透過する。その結果、上記波長選択素子により時間的・空間的に異なる波長が選択される。よって、レーザー光源装置100から射出される射出光W41〜W44は時間的に波長が異なり、射出光W41〜W44はそれぞれの波長が異なることになる。具体的には、Nile Blue640とRhodamine700の混合色素を用いた場合、基底状態ではレーザーの入射により、各色素で吸収が生じる(Nile Blue 640吸収最大:640nm, Rhodamine700 吸収最大:650nm)。基本波光の出力波長幅が各色素の吸収波長幅より概ね狭い場合、透過するのは、各吸収中心波長に挟まれた波長領域である。よって、透過光の中心波長は645nmである。光源による励起後、Nile Blue640が先に飽和状態になった場合は640nmに吸収が無くなるため透過中心波長は、645nmよりも短波長側に移動する。一方、Rhodamine700が先に飽和状態になった場合は、645nmよりも長波長側に透過中心波長が移動する。さらに、両色素分子が飽和状態となった場合は、色素セルにバンドパスフィルターとしての機能はなくなり光源の波長がそのまま透過する。各色素の飽和状態はアレイ光源の発振波長および強度に依存して変化する。本実施形態の目的は波長シフトによるスペックルノイズ低減にあるため、バンドパスフィルターの透過波長の精密な制御は必要ではなく透過波長が変化する現象が生じることを利用する。
以上から、レーザー光源装置100から射出される射出光のスペクトルが時間的に変化することになる。また、レーザー光源装置100から射出される射出光を全体でみると、即ち射出光W41〜W44を合成したものとしてみると、スペクトル幅が広がることになる。これにより、この射出光を利用した場合、スペックルノイズの低減が可能となる。
吸収波長が変化する応答時間は色素分子の材料にも依存するが、応答速度が速い材料でピコ秒レベルであり、ヒトの目の積算時間未満である。その結果、励起光の入射のみで自律的に吸収スペクトルの変化を時間的に生じさせることができ反応前後の波長が目で積算されることにより低コヒーレンス化と同様の効果が得られる。
【0036】
[第2の実施形態]
図9は、第2の実施形態におけるレーザー光源装置の概略構成を示す説明図である。このレーザー光源装置100aは、バンドパスフィルター30aの形状が異なる点において、図1に示すレーザー光源装置100と異なり、他の構成については、第1の実施形態と同じである。第1の実施形態におけるバンドパスフィルター30(図1)は、1個のセル内に色素分子を入れていたのに対して、バンドパスフィルター30aは、領域分割されたセル形状を有している。
領域分割されたセルは各々異なる吸収波長を持つ色素を用いる。また、色素分子(シアニン系色素等)はpH濃度により吸収波長が変化する性質を持つため、同じ色素分子でもpH濃度が異なる色素分子でも良い。
レーザー光源装置100aの動作およびバンドパスフィルター30aにおける選択波長が変化する動作は第1の実施形態と同様である。
領域により異なる吸収波長を持つ分子を用いることにより、より広い透過スペクトル幅、複数種類の透過スペクトルを得ることが可能となる。領域により透過スペクトルが異なることにより、スペックルノイズ低減効果を増加させることが可能となる。
【0037】
[第3の実施形態]
図10は、第3の実施形態におけるレーザー光源装置の概略構成を示す説明図である。このレーザー光源装置100bは、バンドパスフィルター30bの形状が異なる点において、図1に示すレーザー光源装置100と異なり、他の構成については、第1の実施形態と同じである。第1の実施形態におけるバンドパスフィルター30(図1)は、1個のセル内に色素分子を入れていたのに対して、バンドパスフィルター30bは、1個のセルに対して内部の色素分子を循環させる機構60を有している点で異なる。アレイレーザー光源の入射ビームにより励起された分子をセル内で循環させることにより、異なる励起状態の色素分子が常に入れ替わるため入射位置により吸収スペクトルを時間変化させることが可能となる。セルの循環には小型ポンプ等を用いる。
これにより、より広い透過スペクトル幅、複数種類の透過スペクトルを得ることが可能となる。したがって、スペックルノイズ低減効果を増加させることが可能となる。
【0038】
[第4の実施形態]
図11は、第4の実施形態におけるレーザー光源装置の概略構成を示す説明図である。このレーザー光源装置100cは、バンドパスフィルター30に加えてさらに別の波長選択素子としてのバンドパスフィルター31が加えられた点において、図1に示すレーザー光源装置100と異なり、他の構成については、第1の実施形態と同じである。バンドパスフィルター31は一般的なバンドパスフィルターであり、バンドパスフィルター30のように選択波長が変化するものではない。バンドパスフィルター31としては、その選択波長の範囲がバンドパスフィルター30の持つ吸収波長のバンド幅と概ね等しいものを使用する。半導体レーザー20から射出される基本波光の出力波長幅が、バンドパスフィルター30の色素分子の吸収波長の変化範囲よりも広い場合は、吸収波長より外側の短波長の光や長波長の光がバンドパスフィルター30を透過することとなる。すると、所望の波長によるレーザー共振を得られなくなってしまう。よって、バンドパスフィルター31を用いることにより基本波光のスペクトル幅をバンドパスフィルター30の持つ吸収波長のバンド幅と概ね等しくなる程度に制限する。その結果、所望の波長から大きく外れた波長はバンドパスフィルター30には入射しないため、バンドパスフィルター30の吸収波長に応じて特定の波長のみを透過させることが可能となる。そして、所望の波長のレーザー光が得られる。
これにより、レーザー光の安定した共振が可能となる。
【0039】
[第5の実施形態]
図12は、第5の実施形態におけるレーザー光源装置の概略構成を示す説明図である。このレーザー光源装置100dは、波長変換素子40を備えている点において、図1に示すレーザー光源装置100と異なる。波長変換素子40は、第2高調波発生(SHG:Second Harmonic Generation)の現象、すなわち、2個の光子が2倍の振動数をもつ1つの光子に変換される(1/2の波長の光に変換される)2次の非線形光学現象を引き起こす素子であり、強誘電体材料に分極反転構造が形成されたものである。例えば、波長変換素子40として、PPLN(Periodically Poled LiNb3)を用いることができる。なお、この分極反転構造における自発分極と反転分極との分極反転周期(ドメインピッチ)は、初期状態では波長変換素子40内において均一であるものとする。波長変換素子40は、半導体レーザー20と、バンドパスフィルター30と、の間に配置されている。そして、波長変換素子40は、基本レーザー光(基本波光源)W11〜W14が入射され、それぞれ1/2の波長に変換された光を射出する。特に、直接発振が現時点では技術的に困難である緑色の波長領域においては本手法の波長変換が最も実用的である。また、波長変換素子40はバンドパスフィルター30と出力ミラー50の間に配置されてもよい。この実施形態では、出力ミラー50は、基本波光を反射し、第2高調波を透過する特性を有するものであっても良い。
これにより、波長変換素子を用いて第2高調波を得る形式のレーザー光源装置においても、広いスペクトル幅や、時間的に変化するスペクトルを得ることが可能となる。したがって、スペックルノイズを低減させることが可能となる。
【0040】
[第6の実施形態]
図13は、第6の実施形態におけるレーザー光源装置の概略構成を示す説明図である。このレーザー光源装置100eは、バンドパスフィルター30eを配置する位置が異なる点において、図1に示すレーザー光源装置100と異なり、他の構成については、第1の実施形態と同じである。第1の実施形態におけるバンドパスフィルター30(図1)は、共振器内に配置されていたが、本実施形態では、バンドパスフィルター30eを光源部分としての共振器の外に配置している。このような場合でも、レーザー発振後のビームに対して空間的、時間的に異なる波長を選択することが可能であり、スペックルノイズの低減が可能となる。
【0041】
[第7の実施形態]
図14は、本発明のレーザー光源装置を適用したモニター装置の実施形態(第7の実施形態)を示す概略構成図である。このモニター装置400は、装置本体410と、光伝送部420と、を備えている。装置本体410は、上述した第1の実施形態におけるレーザー光源装置100(図1)を備えている。また、装置本体410は、集光レンズ150と、カメラ411と、を備えている。
【0042】
光伝送部420は、光を送る側のライトガイド421と、光を受ける側のライトガイド422と、を備えている。各ライドガイド421,422は、多数本の光ファイバを束ねたものであり、レーザー光を遠方に送ることができる。光を送る側のライトガイド421の入射側にはレーザー光源装置100が配置され、他方の射出側には拡散板423が配置されている。光を受ける側のライトガイド422の入射側には結像レンズ424が配置されている。
【0043】
レーザー光源装置100から射出されたレーザー光は、集光レンズ150で集められ、ライトガイド421を伝って拡散板423により拡散されて被写体を照射する。そして、被写体からの反射光は、結像レンズ424に入射して、ライトガイド422を伝ってカメラ411に送られる。このようにして、レーザー光源装置100により射出したレーザー光によって被写体を照射したことで得られる反射光に基づく画像を、カメラ411で撮像することができる。なお、モニター装置400において、レーザー光源装置100に代えて、上述したレーザー光源装置100a〜100eのいずれかを備えるようにしてもよい。
【0044】
[第8の実施形態]
図15は、本発明のレーザー光源装置を適用したプロジェクターの実施形態(第8の実施形態)を示す概略構成図である。このプロジェクター500は、赤色光を射出する前述のレーザー光源装置100(図1)と、緑色光を射出するレーザー光源装置100fと、青色光を射出するレーザー光源装置100jと、を備えている。レーザー光源装置100fは、半導体レーザー20aと、バンドパスフィルター30eと、波長変換素子40と、出力ミラー50aと、を備えている。レーザー光源装置100fから射出されるレーザー光は、低コヒーレンスとなっている。レーザー光源装置100jは、半導体レーザー20bと、バンドパスフィルター30gと、波長変換素子40aと、出力ミラー50bと、を備えている。レーザー光源装置100jから射出されるレーザー光は、低コヒーレンスとなっている。なお、レーザー光源装置100fやレーザー光源装置100jには、上述したレーザー光源装置100や100a〜100eのいずれかの構成を適用してもよい。
【0045】
また、プロジェクター500は、各色光を射出するレーザー光源装置100,100f,100jから射出された各色のレーザー光LBr,LBg,LBbをパソコン(図示省略)等から送られてきた画像信号に応じてそれぞれ変調する液晶ライトバルブ504R,504G,504Bを備えている。また、プロジェクター500は、液晶ライトバルブ504R,504G,504Bから射出された光を合成するクロスダイクロイックプリズム506と、投写レンズ507と、を備えている。
【0046】
さらに、プロジェクター500は、各レーザー光源装置100,100f,100jから射出されたレーザー光の照度分布を均一化させるため、各レーザー光源装置100,100f,100jよりも光路下流側に、均一化光学系502R,502G,502Bが配置されている。プロジェクター500は、これらの均一化光学系502R,502G,502Bによって照度分布が均一化された光で液晶ライトバルブ504R,504G,504Bを照射している。なお、均一化光学系502R,502G,502Bは、例えば、ホログラムとフィールドレンズとの組み合わせによって構成することができる。
【0047】
各液晶ライトバルブ504R,504G,504Bによって変調された3つの色光は、クロスダイクロイックプリズム506に入射する。このプリズム506は、4つの直角プリズムを貼り合わせて形成され、その内面に赤色光を反射する誘電体多層膜と青色光を反射する誘電体多層膜とが十字状に配置されている。そして、合成された光は投写レンズ507によってスクリーン510上に投写され、拡大された画像が表示される。
【0048】
上述したように、各レーザー光源装置100,100f,100jから射出されたレーザー光はコヒーレンスが低くなっている。従って、合成光が投写されるスクリーン510において、スペックルノイズを低減することができる。上述した第8の実施形態では、プロジェクター500における光変調手段としては、液晶ライトバルブを用いるものであったが、液晶ライトバルブに限らず、DMD(デジタルマイクロミラーデバイス:Texas Instruments社の商標)など、他の任意の変調手段を用いる構成であってもよい。また、上述した第1〜第6の実施形態におけるレーザー光源装置100〜100eは、モニター装置(第7の実施形態)及びプロジェクター(第8の実施形態)以外にも、照明装置など、光源を必要とする任意の装置に用いることができる。
【符号の説明】
【0049】
20,20a,20b…半導体レーザー、21〜24…レーザー素子、30、31…バンドパスフィルター、40,40a…波長変換素子、50,50a,50b…出力ミラー、60…機構、100,100a〜100j…レーザー光源装置、150…集光レンズ、400…モニター装置、410…装置本体、411…カメラ、420…光伝送部、421,422…ライトガイド、423…拡散板、424…結像レンズ、500…プロジェクター、502R…均一化光学系、504R…液晶ライトバルブ、506…クロスダイクロイックプリズム、507…投写レンズ、510…スクリーン。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基本波光を出力する光源部分と、
前記基本波光を入射して、該基本波光に含まれる所定の波長を選択的に透過する波長選択素子と、を備え、
前記波長選択素子は、前記基本波光の入射によって選択波長が変化することを特徴とするレーザー光源装置。
【請求項2】
共振用の第1のミラーと、
外部共振の対象となる基本波光を共振させて得られるレーザー光の一部を透過すると共に、残りの光を前記第1のミラーに向けて反射する共振用の第2のミラーと、
前記第1のミラーと前記第2のミラーとの間に配置され、前記基本波光を入射して、該基本波光に含まれる所定の波長の光を選択的に透過する波長選択素子と、を備え、
前記波長選択素子は、前記基本波光の入射によって選択波長が変化することを特徴とするレーザー光源装置。
【請求項3】
請求項1もしくは請求項2に記載のレーザー光源装置において、
前記波長選択素子は、前記基本波光の入射によって吸収波長が変化する材料からなることを特徴とするレーザー光源装置。
【請求項4】
請求項3に記載のレーザー光源装置において、
前記波長選択素子が、異なる吸収波長帯を持つ少なくとも2種類の混合材料からなることを特徴とするレーザー光源装置。
【請求項5】
請求項3に記載のレーザー光源装置において、
前記波長選択素子が、異なる吸収波長帯を持つ材料からなる少なくとも2つの分割領域を持つことを特徴とするレーザー光源装置。
【請求項6】
請求項3に記載のレーザー光源装置において、
前記波長選択素子が、波長選択材料の攪拌のための循環機構を持つことを特徴とするレーザー光源装置。
【請求項7】
請求項1〜請求項6のいずれか一項に記載のレーザー光源装置において、
前記基本波光を射出する光源がアレイ光源からなるレーザー光源装置。
【請求項8】
請求項1〜請求項7のいずれか一項に記載のレーザー光源装置において、
前記波長選択素子と異なる別の波長選択素子を備えたことを特徴とするレーザー光源装置。
【請求項9】
請求項8に記載のレーザー光源装置において、
前記別の波長選択素子は、選択波長が固定であることを特徴とするレーザー光源装置。
【請求項10】
請求項1〜請求項9のいずれか一項に記載のレーザー光源装置であって、
さらに、前記基本波光を入射して、波長を変換する波長変換素子を備え、
前記波長変換素子は、前記波長選択素子において選択的に透過される光の波長に対応した波長変換を行うことを特徴とするレーザー光源装置。
【請求項11】
請求項1〜請求項10のいずれか一項に記載のレーザー光源装置と、
前記レーザー光源装置により照射された被写体を撮像する撮像部と、を備えることを特徴とするモニター装置。
【請求項12】
請求項1〜請求項10のいずれか一項に記載のレーザー光源装置と、
前記レーザー光源装置から射出されたレーザー光を画像信号に応じて変調する光変調部と、
前記光変調部により形成された画像を投写する投写光学系と、を備えることを特徴とする画像表示装置。
【請求項1】
基本波光を出力する光源部分と、
前記基本波光を入射して、該基本波光に含まれる所定の波長を選択的に透過する波長選択素子と、を備え、
前記波長選択素子は、前記基本波光の入射によって選択波長が変化することを特徴とするレーザー光源装置。
【請求項2】
共振用の第1のミラーと、
外部共振の対象となる基本波光を共振させて得られるレーザー光の一部を透過すると共に、残りの光を前記第1のミラーに向けて反射する共振用の第2のミラーと、
前記第1のミラーと前記第2のミラーとの間に配置され、前記基本波光を入射して、該基本波光に含まれる所定の波長の光を選択的に透過する波長選択素子と、を備え、
前記波長選択素子は、前記基本波光の入射によって選択波長が変化することを特徴とするレーザー光源装置。
【請求項3】
請求項1もしくは請求項2に記載のレーザー光源装置において、
前記波長選択素子は、前記基本波光の入射によって吸収波長が変化する材料からなることを特徴とするレーザー光源装置。
【請求項4】
請求項3に記載のレーザー光源装置において、
前記波長選択素子が、異なる吸収波長帯を持つ少なくとも2種類の混合材料からなることを特徴とするレーザー光源装置。
【請求項5】
請求項3に記載のレーザー光源装置において、
前記波長選択素子が、異なる吸収波長帯を持つ材料からなる少なくとも2つの分割領域を持つことを特徴とするレーザー光源装置。
【請求項6】
請求項3に記載のレーザー光源装置において、
前記波長選択素子が、波長選択材料の攪拌のための循環機構を持つことを特徴とするレーザー光源装置。
【請求項7】
請求項1〜請求項6のいずれか一項に記載のレーザー光源装置において、
前記基本波光を射出する光源がアレイ光源からなるレーザー光源装置。
【請求項8】
請求項1〜請求項7のいずれか一項に記載のレーザー光源装置において、
前記波長選択素子と異なる別の波長選択素子を備えたことを特徴とするレーザー光源装置。
【請求項9】
請求項8に記載のレーザー光源装置において、
前記別の波長選択素子は、選択波長が固定であることを特徴とするレーザー光源装置。
【請求項10】
請求項1〜請求項9のいずれか一項に記載のレーザー光源装置であって、
さらに、前記基本波光を入射して、波長を変換する波長変換素子を備え、
前記波長変換素子は、前記波長選択素子において選択的に透過される光の波長に対応した波長変換を行うことを特徴とするレーザー光源装置。
【請求項11】
請求項1〜請求項10のいずれか一項に記載のレーザー光源装置と、
前記レーザー光源装置により照射された被写体を撮像する撮像部と、を備えることを特徴とするモニター装置。
【請求項12】
請求項1〜請求項10のいずれか一項に記載のレーザー光源装置と、
前記レーザー光源装置から射出されたレーザー光を画像信号に応じて変調する光変調部と、
前記光変調部により形成された画像を投写する投写光学系と、を備えることを特徴とする画像表示装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公開番号】特開2010−186111(P2010−186111A)
【公開日】平成22年8月26日(2010.8.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−31008(P2009−31008)
【出願日】平成21年2月13日(2009.2.13)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年8月26日(2010.8.26)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年2月13日(2009.2.13)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】
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