説明

レーザー加工装置

【課題】ワークピースの薄膜の一部を除去加工するためにレーザー光を用いるドライエッチング方式により、ワークピースに短時間で微細パターンを形成できるレーザー加工装置を提供する。
【解決手段】薄膜となっている導電膜の一部をレーザー光12により除去加工することでワークピース9に形成される加工パターンは、微細パターンである。レーザー発振器1とワークピース9との間に可変マスク5が配置され、マスク5は、レーザー光をワークピース9へ選択的に到達、不到達させるために作動する多数のセルを備え、これらのセルが制御装置11で個別的制御されることで、レーザー光をワークピース9に到達させるセルパターンが形成され、制御装置11で制御されるワークピース移動装置10によるワークピース9の移動と、制御装置11によるセルパターンの変更とにより、ワークピース9に微細パターンが形成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザー光により、基材の表面に金属膜等の薄膜を設けることによって形成されているワークピース(加工対象物)の薄膜の一部を除去加工するためのレーザー加工装置に係り、例えば、タッチパネル、プラズマディスプレイ、電子ペーパー、有機EL(エレクトリック ルミネッセンス)、さらには、太陽光発電パネル等を製造するために利用できるものである。
【背景技術】
【0002】
指やペン等で触られることにより通電するタッチパネルは、基材の表面に設けられた金属膜等の薄膜状となっている導電膜の一部を除去することにより形成され、このような導電膜の一部の除去加工をレーザー光により行うためのレーザー加工装置は、下記の特許文献1に示されている。このレーザー加工装置は、レーザー光を発振するレーザー発振器と、レーザー光で加工される加工対象物であるワークピースがセットされ、互いに直交するX方向とY方向のうち、少なくとも一方の方向へワークピースを移動させるためのワークピース移動装置と、を有しており、ワークピースの上記導電膜の一部をこの導電膜に到達した前記レーザー光により除去する加工を、ワークピース移動装置によりワークピースを移動させて行うようにしている。
【0003】
このレーザー加工装置によってワークピースに形成することができる加工パターンは、ワークピース移動装置によるワークピースの直線的な移動によって形成される直線的なものとなる。このため、このレーザー加工装置は、抵抗膜方式のタッチパネルを製造するために適している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−306082号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、近年、投影型静電容量方式のタッチパネルの需要が増加しており、この投影型静電容量方式のタッチパネルにレーザー光によって形成しなければならない加工パターンは、例えば、互いに連結された多数の斜方形を有するパターンや、ジグザグ部を有するパターンであり、これらのパターンは、微細なパターンとなっている。このような微細パターンをワークピースに形成するために上記レーザー加工装置を用いると、ワークピース移動装置によりワークピースをX方向とY方向の両方の成分を有する方向に同時に移動させるとともに、この移動方向を頻繁に変更することを繰り返さなければならない。これによると、1個のワークピースの加工終了までに長時間がかかり、作業効率を向上させることはできない。
【0006】
一方、従来より、基材の表面に設けられた導電膜の一部を除去する加工を、フォトレジストや、フォトマスク、化学処理液を用いて行うウェットエッチング方式が知られている。このウェットエッチング方式によると、フォトマスクに微細パターンを形成することにより、ワークピースにも、この微細パターンと対応したパターンを形成することができる。
【0007】
しかし、このウェットエッチング方式によると、ワークピースにフォトレジストを付着させる工程や、フォトマスクによりワークピースに露光する工程、化学処理液によりワークピースを洗浄する工程などが必要となる。このため、ウェットエッチング方式によると、加工ラインを設置しなければならないため、大きな作業スペースが必要になる。
【0008】
これに対して上述のレーザー光を用いるドライエッチング方式によると、必要とされる作業スペースはレーザー加工装置を設置するためのスペースとなるため、ウェットエッチング方式よりも作業スペースを小さくできることになる。
【0009】
本発明の目的は、ワークピースの金属膜等の薄膜の一部を除去加工するためにレーザー光を用いるドライエッチング方式により、ワークピースに短時間で微細パターンを形成することができるレーザー加工装置を提供するところにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係るレーザー加工装置は、レーザー光を発振するレーザー発振器と、前記レーザー光で加工されるワークピースがセットされ、互いに直交するX方向とY方向のうち、少なくとも一方の方向へ前記ワークピースを移動させるためのワークピース移動装置と、を有し、このワークピース移動装置で移動し、かつ基材の表面に薄膜を設けることによって形成されている前記ワークピースの前記薄膜の一部を前記レーザー光により除去加工するレーザー加工装置において、前記薄膜の一部を前記レーザー光により除去加工することによって前記ワークピースに形成される加工パターンは、微細パターンであり、前記レーザー発振器と前記ワークピースとの間に配置され、前記レーザー光を前記ワークピースへ選択的に到達、不到達させるために作動する多数のセルを備えているとともに、これらのセルの選択的作動によってセルパターンが形成される可変マスクと、前記レーザー発振器、前記可変マスク及び前記ワークピース移動装置を制御するための制御装置と、を有し、この制御装置の制御によって行われる前記レーザー発振器からの前記レーザー光の発振と、前記制御装置による前記ワークピース移動装置の制御によって行われる前記ワークピースの移動と、前記制御装置による前記可変マスクの前記多数のセルの個別的制御によって行われる前記セルパターンの変更とにより、前記ワークピースに前記微細パターンが形成されることを特徴とするものである。
【0011】
本発明に係るレーザー加工装置には、レーザー発振器とワークピースとの間に可変マスクが配置され、この可変マスクは、レーザー光をワークピースへ選択的に到達、不到達させるために作動する多数のセルを備えているとともに、制御装置の制御によるこれらのセルの選択的作動により可変マスクにセルパターンを形成されることになる。そして、制御装置によるワークピース移動装置の制御によりワークピースが移動し、制御装置による可変マスクの多数のセルの個別的制御によりセルパターンの変更が行われ、これらのワークピースの移動とセルパターンの変更とにより、ワークピースの薄膜の一部をレーザー光で除去加工して形成する加工パターンを、微細パターンとすることができる。
【0012】
このため、本発明によると、レーザー光を用いるドライエッチング方式により、ワークピースに形成する加工パターンを微細パターンとすることができ、このドライエッチング方式によると、ウェットエッチング方式よりも必要とされる作業スペースを小さくすることができる。また、制御装置により可変マスクの多数のセルを個別に制御することにより、セルパターンを容易に変更することができるため、複雑な微細パターンでも、また、任意な形状の微細パターンでも、ワークピースに形成することができ、しかも、これらの微細パターンをワークピースに短時間で形成することができ、作業効率を向上させることができる。
【0013】
本発明において、制御装置で制御されるレーザー発振器からパルス光となって発振されたレーザー光を、下記の複数の態様により、可変マスクに照射することができる。
【0014】
その第1番目の態様では、制御装置で制御されるレーザー発振器からパルス光となって発振されるレーザー光を、可変マスクのセル配置面のうち、セルパターンが形成される部分の全体に照射する。
【0015】
なお、ここでいう可変マスクのセル配置面のうち、セルパターンが形成される部分の全体とは、セル配置面のうち、一部を、例えば、セルの故障時等のときに利用するための予備面とする場合には、セル配置面のうち、この予備面を除いた部分の全体のことであり、このような予備面をセル配置面に設けない場合には、セル配置面の全体のことである。
【0016】
このようにレーザー光を、可変マスクのセル配置面のうち、セルパターンが形成される部分の全体に照射するには、制御装置によるワークピース移動装置の制御によって行われるワークピースの移動の距離が、前記一方の方向における前記部分の寸法と対応する距離又はこの距離よりも短い距離に達するごとに、制御装置は、レーザー発振器の制御を制御することにより、レーザー光を前記部分の全体に照射するようにする。
【0017】
この第1番目の態様において、ワークピースの移動を、制御装置によるワークピース移動装置の制御によって行われるワークピースの移動の距離が、前記一方の方向における前記部分の寸法と対応する距離又はこの距離よりも短い距離となるごとに、ワークピースを停止させる断続移動としてもよいが、ワークピースの移動を連続移動とすることが好ましい。
【0018】
これによると、前記一方の方向へのワークピース移動速度を高速化し、作業の効率を向上させることができる。
【0019】
また、第2番目の態様では、可変マスクのセル配置面のうち、前記セルパターンが形成される部分に、前記一方の方向に区分けされた複数個の領域を設定する。
【0020】
このように可変マスクのセル配置面のうち、前記セルパターンが形成される部分に、前記一方の方向に区分けされた複数個の領域を設定する場合には、制御装置で制御されるレーザー発振器からパルス光となって発振されたレーザー光の可変マスクへの照射は、このレーザー光が、複数個の領域を、一方の端部の領域側から他方の端部の領域側へ順番に走査することにより行われる。また、制御装置は、レーザー光の照射が終了した領域に配置されている多数のセルによるパターンを、ワークピース移動装置によるワークピースの移動によってこのワークピースに前記微細パターンを形成するための次のパターンに変更することを開始する。さらに、制御装置によるワークピース移動装置の制御によって行われるワークピースの移動は断続移動であり、レーザー光が、複数個の領域を、一方の端部の領域側から他方の端部の領域側へ順番に走査するごとに、制御装置がワークピース移動装置を制御することにより、ワークピースは、前記一方の方向における前記部分の寸法と対応する距離又はこの距離よりも短い距離を移動する。
【0021】
これにより、第2番目の態様に係るレーザー加工装置により、ワークピースに微細パターンを形成することができる。
【0022】
この第2番目の態様に係るレーザー加工装置において、レーザー発振器と可変マスクとの間に、レーザー光を可変マスクに照射するためにガルバノミラー装置を配置し、制御装置により制御されるこのガルバノミラー装置により、レーザー光が、複数個の領域を、一方の端部の領域側から他方の端部の領域側へ順番に走査するようにしてもよい。
【0023】
しかし、レーザー発振器と可変マスクとの間に、制御装置により制御され、レーザー光を可変マスクに照射するためにポリコンミラー装置を配置し、このポリゴンミラー装置の多角形ミラーの回転により、レーザー光が、上述したように、複数個の領域を、一方の端部の領域側から他方の端部の領域側へ順番に走査するように構成することが好ましい。
【0024】
これによると、ポリゴンミラー装置の多角形ミラーを一方向へ回転させることにより、レーザー光が、複数個の領域を、一方の端部の領域側から他方の端部の領域側へ順番に走査するようになるため、レーザー光の走査速度を向上させことができる。
【0025】
第3番目の態様では、制御装置で制御されるレーザー発振器からパルス光となって発振されて可変マスクに照射されるレーザー光を、前記一方の方向に分割された2個のレーザー光とし、また、可変マスクのセル配置面のうち、セルパターンが形成される部分に、前記一方の方向における寸法が同じになっていて、この一方の方向に区分けされた偶数個の小領域を設定し、これらの小領域のうち、前半の複数個の小領域により前半の大領域を形成するとともに、この前半の小領域の個数と同数になっている後半の小領域により後半の大領域を形成する。
【0026】
この第3番目の態様においては、パルス光となっている前記2個のレーザー光の可変マスクへの照射は、これらのレーザー光が、偶数個の小領域を、前半の大領域と後半の大領域とについて、一方の端部の小領域側から他方の端部の小領域側へ順番に走査することにより行われる。また、制御装置は、レーザー光の照射が終了した小領域に配置されている多数のセルによるパターンを、ワークピース移動装置によるワークピースの移動によってこのワークピースに微細パターンを形成するための次のパターンに変更することを開始する。さらに、制御装置によるワークピース移動装置の制御によって行われるワークピースの移動は連続移動である。また、2個のレーザー光が、偶数個の小領域のうち、前半の大領域と後半の大領域のそれぞれ1個の小領域を同時に照射するごとに、制御装置はワークピース移動装置に、ワークピースが前記一方の方向における小領域の寸法の2倍に対応する距離又はこの距離よりも短い距離を移動することを行わせる。
【0027】
これにより、第3番目の態様に係るレーザー加工装置により、ワークピースに微細パターンを形成することができる。
【0028】
この第3番目のレーザー加工装置においても、レーザー発振器と可変マスクとの間に、制御装置により制御され、2個のレーザー光を前記可変マスクに照射するためのガルバノミラー装置を配置してもよいが、ガルバノミラー装置ではなく、ポリコンミラー装置をレーザー発振器と可変マスクとの間に配置し、このポリゴンミラー装置の多角形ミラーの一方向への回転により、2個のレーザー光が、偶数個の小領域を、前半の大領域と後半の大領域とについて、一方の端部の小領域側から他方の端部の小領域側へ順番に走査するように構成することが好ましい。
【0029】
以上のそれぞれの態様に係るレーザー加工装置には、可変マスクとワークピース移動装置との間において、レーザー光がワークピースに到達する位置を、ワークピース移動装置によるワークピースの移動の真直度誤差が修正された位置とするためのレーザー光到達位置修正装置を配置してもよい。
【0030】
これによると、ワークピース移動装置によるワークピースの移動の真直度に誤差が生じても、レーザー光到達位置修正装置により、レーザー光がワークピースに到達する位置が修正されるため、ワークピースに微細パターンを正確に形成することができる。
【0031】
レーザー光到達位置修正装置は任意な原理、構造によるものでもよい。その一例は、レーザー光到達位置修正装置を、レーザー光が通過可能であってこのレーザー光に対する傾き角度が調整可能となった透光板を含んで構成されているものとすることである。レーザー光が透光板を通過する際に、透光板がレーザー光に対して傾いていると、透光板から出射するレーザー光の進行方向は、透光板の内部におけるレーザー光の屈折方向に変化し、これにより、レーザー光がワークピースに到達する位置が修正される。そして、透光板のレーザー光に対する傾き角度が調整されることにより、レーザー光がワークピースに到達する位置の修正量も調整される。このため、透光板のレーザー光に対する傾き角度を調整することにより、ワークピース移動装置によるワークピースの移動の真直度誤差に応じて、レーザー光がワークピースに到達する位置を正確に修正することができる。
【0032】
また、このレーザー光到達位置修正装置によると、透光板と、この透光板のレーザー光に対する傾き角度を調整するための手段とにより装置を構成することができるため、装置の小型化、構造の簡単化を図ることができる。
【0033】
また、制御装置によるワークピース移動装置の制御によって行われるワークピースの移動が、互いに直交するX方向とY方向の両方の移動である場合には、レーザー光到達位置修正装置として、X方向用装置とY方向用装置とを用意し、これらのX方向用装置とY方向用装置とをレーザー光の進行方向に並設し、X方向用レーザー光到達位置修正装置の透光板を、X方向に対する傾き角度を調整可能とし、Y方向用レーザー光到達位置修正装置の透光板を、Y方向に対する傾き角度を調整可能とする。
【0034】
これにより、X方向とY方向の両方について、レーザー光のワークピースへの到達位置を修正することができる。
【0035】
また、制御装置によるワークピース移動装置の制御によって行われるワークピースの移動が、互いに直交するX方向とY方向の両方の移動である場合には、制御装置がワークピース移動装置に行う制御が、ワークピースが、可変マスクのセル配置面のうち、前記セルパターンが形成される部分のX方向寸法と対応する距離よりも長い距離をX方向に前進移動した後に、ワークピースが、前記部分のY方向寸法と対応する距離又はこの距離よりも短い距離をY方向に前進移動し、次いで、ワークピースが、前記部分のセル配置面のX方向寸法と対応する距離よりも長い距離をX方向に後退移動することを行わせる制御となるようにする。
【0036】
これによると、ワークピースが、前記部分のX方向寸法と対応する距離よりも長い距離をX方向に前進移動した後に、ワークピースが、この前進距離と同じ距離を後退移動し、次いで、ワークピースが、前記部分のY方向寸法と対応する距離又はこの距離よりも短い距離をY方向に前進移動し、この後に、ワークピースが、上記前進距離と同じ距離を再度前進移動することを行うことが、不必要となる。このため、ワークピースを移動させて実行するワークピースへの微細パターンの加工作業を、短時間で実施できるようになる。
【0037】
なお、上述したように、ワークピースが、前記部分のX方向寸法と対応する距離よりも長い距離をX方向に後退移動した後も、ワークピース移動装置によりワークピースの移動を継続させる場合には、ワークピースが、前記部分のX方向寸法と対応する距離よりも長い距離をX方向に後退移動した後に、ワークピースに、前記部分のY方向寸法と対応する距離又はこの距離よりも短い距離をY方向に前進移動することを行わせ、次いで、上述と同様に、ワークピースが、前記部分のX方向寸法と対応する距離よりも長い距離をX方向に前進移動することを実行させ、これ以後は、以上のワークピース移動を繰り返すこととする。
【0038】
また、本発明において、可変マスクに多数設けられ、レーザー光をワークピースへ選択的に到達、不到達させるために作動する前述したそれぞれのセルは、ミラーによるものでもよく、液晶によるものでもよい。すなわち、可変マスクは、ミラー式可変マスクでもよく、液晶式可変マスクでもよい。
【0039】
ミラー式可変マスクでは、可変マスクに照射されるレーザー光に対してそれぞれのミラーの傾き角度が制御装置で制御されることになり、この制御により、ミラーで反射されたレーザー光をワークピースへ選択的に到達、不到達させることができる。
【0040】
また、液晶式可変マスクでは、可変マスクに照射されるレーザー光が、シャッターとなっているそれぞれの液晶において透過、遮断させることができるように、それぞれの液晶は制御装置でオン、オフ制御され、液晶を透過したレーザー光だけがワークピースに到達し、液晶で遮断されたレーザー光はワークピースに到達しない。
【0041】
一般的に、制御装置の制御に対するミラー式可変マスクの応答速度は、液晶式可変マスクの応答速度よりも速い。このため、ミラー式可変マスクを採用することが好ましい。
【0042】
しかし、液晶式可変マスクを採用しても、本発明に係るレーザー加工装置を前述した第2番目及び第3番目の態様に係るレーザー加工装置とすることにより、液晶式可変マスクの応答速度でも、ワークピースに微細パターンを形成する作業を高速化することができる。
【0043】
以上説明した本発明は、基材の表面に金属膜等の薄膜を設けることによって形成されるワークピースであれば、各種の用途に用いられるワークピースに適用することができ、このワークピースは、例えば、タッチパネル、プラズマディスプレイ、電子ペーパー、有機EL、太陽光発電パネルのためのものでよい。
【発明の効果】
【0044】
本発明によると、ワークピースの金属膜等の薄膜の一部を除去加工するためにレーザー光を用いるドライエッチング方式により、ワークピースに短時間で微細パターンを形成できるという効果を得られる。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】図1は、本発明の第1実施形態に係るレーザー加工装置の全体を示す概略図である。
【図2】図2は、図1で示されているレーザー発振器からパルス光として発振されるレーザー光の形状を示す図1のS2−S2線断面図である。
【図3】図3は、図1で示されているビーム成形レンズ群で成形された後のレーザー光の形状を示す図1のS3−S3線断面図である。
【図4】図4は、図1で示されているレーザー光到達位置修正装置の透光板を示す図であって、透光板がレーザー光の光軸に対して傾いているときのレーザー光の透過状態を示す正面図である。
【図5】図5は、図1で示されているワークピース移動装置にセットされているワークピースを示す正面図である。
【図6】図6は、図1で示されているワークピース移動装置を示す平面図である。
【図7】図7は、レーザー光によりワークピースに形成する微細パターンを示す平面図である。
【図8】図8は、図7の微細パターンを複数の区域で区分けした場合を示す平面図である。
【図9】図9は、微細パターンの一部の部分パターンであって、図8の第1番目となっている区域にある部分パターンと対応するセルパターンが可変マスクに形成されたときを示す図である。
【図10】図10は、微細パターンの一部の部分パターンであって、図8の第2番目となっている区域にある部分パターンと対応するセルパターンが可変マスクに形成されたときを示す図である。
【図11】図11は、微細パターンの一部の部分パターンであって、図8の第3番目となっている区域にある部分パターンと対応するセルパターンが可変マスクに形成されたときを示す図である。
【図12】図12は、ワークピース移動装置によるワークピースの移動軌跡を示す図である。
【図13】図13は、第2実施形態に係るレーザー加工装置の全体を示す概略図である。
【図14】図14は、第3実施形態に係るレーザー加工装置の全体を示す概略図である。
【図15】図15は、可変マスクのセル配置面に、パルス光となっているレーザー光で走査される複数個の領域を設定し、レーザー光の走査によってレーザー光が照射される領域を、ハッチングを付することによって示した図であって、(A)〜(F)が、レーザー光が照射される順番であることを示している図である。
【図16】図16は、図7及び図8に示されている微細パターンを形成している1個の部分パターンを示す図であって、図15の複数個の領域に次ぎに形成すべきパターンと対応している部分パターンを示している図である。
【図17】図17は、第4実施形態に係るレーザー加工装置の全体を示す概略図である。
【図18】図18は、レーザー発振器からパルス光として発振されるレーザー光の形状を示す図17のS18−S18線断面図である。
【図19】図19は、可変マスクのセル配置面に、パルス光となっているレーザー光で走査される偶数個の小領域と、複数個の小領域による前半及び後半の大領域とを設定した場合の図であって、レーザー光が最初に照射される2個の小領域を、ハッチングを付して示している図である。
【図20】図20は、図19の次にレーザー光が照射される2個の小領域を、ハッチングを付して示している図である。
【図21】図21は、図20の次にレーザー光が照射される2個の小領域を、ハッチングを付して示している図である。
【図22】図22は、図21の次にレーザー光が照射される2個の小領域を、ハッチングを付して示している図である。
【図23】図23は、図22の次にレーザー光が照射される2個の小領域を、ハッチングを付して示している図である。
【図24】図24は、図23の次にレーザー光が照射される2個の小領域を、ハッチングを付して示している図である。
【図25】図25は、図7及び図8に示されている微細パターンを形成している1個の部分パターンを示す図であって、図19の偶数個の小領域に次ぎに形成すべきパターンと対応している部分パターンを示している図である。
【図26】図26は、図12とは異なるワークピースの移動軌跡を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0046】
以下に本発明を実施するための形態を図面に基づいて説明する。本実施形態に係るレーザー加工装置は、投影型静電容量方式のタッチパネルを製造するための装置であり、図1には、第1実施形態に係るレーザー加工装置の全体の概略図が示されている。
【0047】
この第1実施形態に係るレーザー加工装置は、レーザー発振器1と、シリンドリカルレンズによるビームエキスパンダ及び拡大投影レンズ等からなるビーム成形レンズ群2と、ミラー4と、可変マスク5と、ダンパー6と、レーザー光到達位置修正装置7と、縮小投影レンズ群8と、ワークピース9がセットされるワークピース移動装置10とを有している。また、レーザー発振器1と可変マスク5とレーザー光到達位置修正装置7とワークピース移動装置10は、コンピュータ11Aと制御手段11Bが構成要素となって構成されている制御装置11により制御される。この制御装置11は、コンピュータ11Aの記録部に記録されているプログラムに基づき、後述する説明から明らかになるように、制御手段11Bによりレーザー発振器1と可変マスク5とワークピース移動装置10とを同期させて制御するものであり、コンピュータ11Aの記録部に記録されている上記プログラムは、例えば、コンピュータの入力部に入力セットされる記録媒体からコンピュータ11Aの記録部に記録される。
【0048】
図2は、レーザー発振器1からパルス光として発振されるレーザー光12の形状を示す図1のS2−S2線断面図であり、図3は、ビーム成形レンズ群2で成形された後のレーザー光12Aの形状を示す図1のS3−S3線断面図である。図2に示されているように、レーザー発振器1から発振されたときのレーザー光12の形状は円形であるが、図3に示されているように、ビーム成形レンズ群2で成形された後のレーザー光12Aの形状は、四角形、具体的には長方形となっている。
【0049】
ビーム成形レンズ群2で成形された後のレーザー光12Aは、図1に示されているように、ミラー4により反射され、可変マスク5に照射される。この可変マスク5は、レーザー光12Aが照射されるセル配置面を有しており、このセル配置面には、レーザー光12Aをワークピース9へ選択的に到達、不到達させるために作動する多数の微小なセルが配置され、これらのセルの選択的作動により、可変マスク5にセルパターンが形成されることが可能となっている。
【0050】
この実施形態に係る可変マスク5のそれぞれのセルは、微小なミラーによって形成されたものとなっている。すなわち、本実施形態に係る可変マスク5は、ミラータイプの可変マスクである。それぞれのミラーは、可変マスク5に照射されるレーザー光に対する傾き角度が制御装置11により個別に制御されるようになっており、これらのミラーの傾き角度の制御により、可変マスク5に照射されたレーザー光のうち、一部のレーザー光は、ワークピース移動装置10にセットされたワークピース9側へ進行し、残りのレーザー光はダンパー6側へ進行し、このダンパー6側へ進行したレーザー光は、ダンパー6により吸収されて消滅する。
【0051】
なお、可変マスク5に多数配置されている微小なミラーのうち、レーザー光をワークピース9側へ進行させる傾き角度となったミラーにより、上述のセルパターンが形成される。
【0052】
レーザー光到達位置修正装置7は、レーザー光が通過可能となっている透明ガラス製又は透明プラスチック製の透光板13と、この透光板13のレーザー光に対する傾き角度を調整する装置本体14とを有している。図4には、レーザー光到達位置修正装置7に向かって進行してきたレーザー光12Aの光軸12Bに対して透光板13が傾斜している場合を示している。透光板13から出射するレーザー光の光軸12Bは、透光板13の内部における光軸12Bの屈折方向に変化しており、これにより、ワークピース9に到達するレーザー光の位置が修正される。この修正量をLhとしたとき、Lh=t・sin(θ)・(1−(cos(θ)/n/cos(θ’))となる。この数式において、tは、透光板13の厚さであり、θは、レーザー光の透光板13への入射角度であり、θ’は、レーザー光の透光板13内での屈折角度であり、nは、レーザー光の波長に対する透光板13の屈折率である。
【0053】
レーザー光に対する透光板13の傾き角度が装置本体14により変更されることにより、修正量Lhが変更される。このように修正量Lhを変更するための透光板13の傾き角度の調整は、後述するように、装置本体14を制御装置11が駆動制御することにより行われる。
【0054】
図5にはワークピース9が示されており、このワークピース9は、ガラス製又はプラスチック製の基材9Aの表面に、薄膜の金属膜となっている導電膜9Bを設けたものになっている。この導電膜9Bは、例えば、ITO(Indium Tin Oxide 酸化インジウムスズ)である。
【0055】
なお、導電膜9Bは、金属膜に限定されず、導電性を有するものであれば、例えば、炭素膜やプラスチック膜等の薄膜でもよい。
【0056】
図6には、ワークピース移動装置10の平面図が示されている。このワークピース移動装置10は、ワークピース9を互いに直交するX方向とY方向に移動させるためのものであり、基台16の上にY方向移動テーブル17がガイドレール16Aで案内されてY方向に移動自在に配置され、Y方向移動テーブル17の上にX方向移動テーブル18がガイドレール17Aで案内されてX方向に移動自在に配置されている。Y方向移動テーブル17には、ボールねじ軸20が螺入されたナット部材20Aが取り付けられているため、Y方向移動テーブル17のY方向移動は、基台16に設置された電動モータ19でボールねじ軸20が正逆回転することにより行われる。また、X方向移動テーブル18には、ボールねじ軸22が螺入されたナット部材22Aが取り付けられているため、X方向移動テーブル18のX方向移動は、Y方向移動テーブル17に設置された電動モータ21でボールねじ軸22が正逆回転することにより行われる。X方向移動テーブル18の上面には、ワークピース9がクランプ部材23で位置決め固定セットされており、したがって、基台16に対するY方向移動テーブル17のY方向移動と、Y方向移動テーブル17に対するX方向移動テーブル18のX方向移動とにより、ワークピース9は、X方向とY方向の両方に移動する。
【0057】
図1で示す制御装置11のコンピュータ11Aの記録部には、ワークピース9をX方向とY方向に移動させるための順序及び移動量等の情報、すなわち、ワークピース移動装置10を駆動制御するためのデータが記録されており、これらのデータに基づき制御装置11の制御手段11Bは電動モータ19,21を駆動する。これにより、ワークピース9は、制御装置11で制御されるワークピース移動装置10の作動により、X方向及びY方向に、予め設定された順序により予め設定された距離を移動する。
【0058】
また、図6に示されているように、基台16には、Y方向移動テーブル17のY方向移動についての真直度誤差を検出するためのセンサ24が配置され、Y方向移動テーブル17には、X方向移動テーブル18のX方向移動についての真直度誤差を検出するためのセンサ25が配置されている。これらのセンサ24,25で検出された真直度誤差に関するデータは、図1で示す制御装置11のコンピュータ11Aに入力し、コンピュータ11Aの演算部は、コンピュータ11Aの記録部に予め記録されている前述した数式等に関するデータに基づき、ワークピース9に到達するレーザー光の位置を真直度誤差が修正された位置とするための演算を行う。この演算は、制御装置11の制御手段11Bがレーザー光到達位置修正装置7を駆動制御することにより、ワークピース9に到達するレーザー光の位置を真直度誤差が修正された位置とするための演算であり、演算結果のデータに基づき、制御手段11Bによってレーザー光到達位置修正装置7の装置本体14が駆動制御されることにより、前述したようにレーザー光到達位置修正装置7の透光板13が、演算結果で決定された角度分だけレーザー光の光軸12Aに対して傾く。したがって、透光板13の傾き角度の調整は、制御装置11により行われることになる。
【0059】
上述したように、ワークピース移動装置10によるワークピース9の移動は、X方向とY方向に両方について行われ、ワークピース9の移動についての真直度誤差は、X方向とY方向の両方に生ずることがあるため、図1に示されているように、レーザー光到達位置修正装置7には、X方向用レーザー光到達位置修正装置7AとY方向用レーザー光到達位置修正装置7Bとがあり、これらの装置7A,7Bはレーザー光の進行方向に並設されている。装置7Aの透光板13がX方向に対して傾き、この傾き角度が調整されることにより、ワークピース9に到達するレーザー光の位置がX方向に修正され、また、装置7Bの透光板13がY方向に対して傾き、この傾き角度が調整されることにより、ワークピース9に到達するレーザー光の位置がY方向に修正される。
【0060】
図7には、レーザー光によりワークピース9の導電膜9Bの一部を除去加工することにより、ワークピース9に形成する加工パターンの平面図が示されている。この加工パターンは、互いに連結された多数の斜方形30Aを有する幾何学的な微細パターン30となっている。そして、それぞれの斜方形30Aにおけるレーザー光で線状に除去されるそれぞれの斜辺は、X方向とY方向の両方に対して傾斜している。図8は、微細パターン30を複数の区域31で区分けした場合を示している。これらの区域31は、X方向寸法がW1であって、Y方向寸法がW2となった同じ大きさ及び同じ形状となっており、X方向とY方向にマトリックス状に並んでいる。そして、それぞれの区域31には、微細パターン30の構成要素となっている部分パターン33が含まれることになる。
【0061】
図9〜図11は、可変マスク5にセルとして多数設けられたミラーが配置されているセル配置面5Aを示しており、このセル配置面5Aに、図1のミラー4で反射されたレーザー光が照射される。セル配置面5Aからワークピース9側へ進行するレーザー光は、図1の縮小投影レンズ群8により縮小された後に、図8で示す1個の区域31に照射される。このため、セル配置面5Aは、1個の区域31よりも大きく、かつこの区域31と相似形の形状となっている。また、セル配置面5Aには、前述したように、レーザー光をワークピース9へ選択的に到達、不到達させるために作動するセルとなっている微小なミラーが多数配置されており、レーザー光をワークピース9側へ進行させる傾き角度となったミラーにより、セル配置面5Aに図9〜図11で示すセルパターン32が形成される。これらのセルパターン32は、図1の制御装置11のコンピュータ11Aの記録部に記録されているデータに基づき、制御装置11の制御手段11Bがそれぞれの微小なミラーを個別に傾き制御することにより形成される。
【0062】
コンピュータ11Aの記録部に記録されている上記データは、図7及び図8に示されている微細パターン30のうち、図8のそれぞれの区域31に含まれている部分パターン33の形状に関するデータである。このため、図8のそれぞれの区域31の順番を矢印A〜Gで示す順番とした場合に、コンピュータ11Aの記録部に記録されているデータは、この順番にしたがってコンピュータ11Aから制御手段11Bに送信される。これにより、それぞれの区域31に含まれている部分パターン33の形状に関するデータより、可変マスク5のセル配置面5Aには、制御手段11Bによって可変マスク5のそれぞれのミラーが制御されることにより、図9〜図11に示されているように、矢印A〜Gの順番にしたがって、部分パターン33と対応するセルパターン32が形成されることになる。
【0063】
すなわち、図9で示すセルパターン32Aは、図8の第1番目となっている区域31Aにおける部分パターン33Aと対応するセルパターンであり、図10で示すセルパターン32Bは、図8の第2番目となっている区域31Bにおける部分パターン33Bと対応するセルパターンであり、図11で示すセルパターン32Cは、図8の第3番目となっている区域31Cにおける部分パターン33Cと対応するセルパターンである。
【0064】
また、本実施形態において、制御装置11の制御によりワークピース9を移動させるためのワークピース移動装置10のX方向についての作動は、連続的な作動となっている。このようにワークピース移動装置10の連続作動によりワークピース9がX方向に連続移動し、この連続移動により、ワークピース9が図8に示されている1個の区域31のX方向寸法W1と同じ距離だけ移動するごとに、制御装置11で制御されるレーザー発振器1は、パルス光となっているレーザー光を1回発振する。また、ワークピース9は、ワークピース移動装置10の1回の作動によりY方向へ移動し、このY方向への移動距離は、図8で示されている1個の区域31のY方向寸法W2と同じ距離である。このようにワークピース9がY方向寸法W2と同じ距離だけ移動したときも、レーザー発振器1はレーザー光を1回発振する。
【0065】
そして、前述したように、区域31と可変マスク5のセル配置面5Aは相似形になっているため、制御装置11によるワークピース移動装置10の制御によって行われるワークピース9のX方向への移動の距離が、図9で示す可変マスク5のセル配置面5AのX方向寸法L1と対応する距離に達するごとに、レーザー発振器1から発振されたレーザー光が可変マスク5のセル配置面5Aを照射する。また、ワークピース9のY方向への移動の距離が、図9で示す可変マスク5のセル配置面5AのY方向寸法L2と対応する距離に達するごとに、レーザー発振器1から発振されたレーザー光が可変マスク5のセル配置面5Aを照射する。
【0066】
図12は、制御装置11がワークピース移動装置10を制御することによりワークピース9を移動させる軌跡を示している。なお、この移動軌跡は、図1で示した可変マスク5から縮小投影レンズ群8を介してワークピース9に到達したレーザー光によってワークピース9に形成される結像が、X方向及びY方向について反転していないときの移動軌跡である。
【0067】
図12に示されているように、ワークピース9は、最初に矢印A’で示すようにX方向に連続的に前進移動し、次いで、矢印B’で示すようにY方向に前進移動し、この後に、ワークピース9は、矢印C’のようにX方向に連続的に後退移動する。次いで、ワークピース9は、矢印D’のようにY方向に前進移動し、この後に、矢印E’のようにX方向に連続的に前進移動し、さらに、矢印F’のようにY方向に前進移動し、最後にワークピース9は、矢印G’のようにX方向に連続的に後退移動する。
【0068】
そして、矢印A’,C’,E’,G’で示されているワークピース9のX方向への移動距離は、図8で示した1個の区域31のX方向寸法W1の整数倍の距離、具体的には、X方向に並設されている区域31の個数にX方向寸法W1を乗じた距離である。また、矢印B’,D’,F’で示されているワークピース9のY方向への移動距離は、図8で示した1個の区域31のY方向寸法W2と同じ距離である。
【0069】
なお、これらの矢印A’〜G’で示されているワークピース9の移動方向は、図8で示した矢印A〜Gの方向と逆である。
【0070】
矢印A’〜G’で示すようにワークピース9をX方向とY方向に移動させる順序及び距離に関するデータは、制御装置11のコンピュータ11Aの記録部に記録されており、これらのデータに基づき制御装置11の制御手段11Bは、ワークピース移動装置10を制御する。
【0071】
ワークピース9の導電膜9Bの一部をレーザー光で除去加工することにより図7及び図8で示す微細パターン30をワークピース9に形成するためのレーザー加工作業は、制御装置11がレーザー発振器1、可変マスク5、レーザー光到達位置修正装置7及びワークピース移動装置10を駆動制御することにより行われる。レーザー加工作業の開始時には、可変マスク5のセル配置面5Aには、制御装置11の駆動制御により図9のセルパターン32Aが形成されている。制御装置11の駆動制御によりレーザー発振器1からパルス光となって最初に発振されたレーザー光は、可変マスク5のセル配置面5Aを照射し、この照射は、セル配置面5Aの全体に対して行われる。このようにセル配置面5Aの全体を照射したレーザー光のうち、一部のレーザー光は、セルパターン32Aを形成している可変マスク5のミラーで反射されることより、ワークピース9に到達する。このため、ワークピース9に到達したレーザー光により、ワークピース9の図8で示す第1番目の区域31Aには、微細パターン30のうちの一部である部分パターン33Aが形成されることになる。
【0072】
この後、制御装置11がワークピース移動装置10を制御することにより、前述したようにワークピース9は図12の矢印A’のX方向へ連続移動し、この連続移動による移動距離が、図9で示す可変マスク5のセル配置面5AのX方向寸法L1と対応する距離に達すると、レーザー発振器1から発振された第2番目のレーザー光が可変マスク5のセル配置面5Aの全体を照射する。このようにレーザー光が可変マスク5のセル配置面5Aの全体を照射することは、ワークピース9が矢印A’のX方向へ連続移動し、この連続移動による移動距離が、X方向寸法L1と対応する距離に達するごとに行われる。また、上述の最初に発振されたレーザー光がセル配置面5Aの全体を照射した後は、このセル配置面5Aに形成されているセルパターン32は、制御装置11の制御により、図10のセルパターン32Bに変更され、このセル配置面5Aの全体を上述の第2番目のレーザー光が照射した後は、このセル配置面5A形成されているセルパターン32は、制御装置11の制御により、図11のセルパターン32Cに変更される。
【0073】
以上のセル配置面5Aの全体へのレーザー光の照射と、セル配置面5Aに形成されているセルパターン32の変更は、ワークピース9が図12の矢印A’のX方向の終端部に達するまで行われる。また、ワークピース9が矢印A’のX方向の終端部に達した後は、セル配置面5A形成されているセルパターン32の変更が行われるとともに、制御装置11によるワークピース移動装置10の制御により、ワークピース9は、図12の矢印B’のY方向へ、図9で示すセル配置面5AのY方向寸法L2と対応する距離だけ移動する。
【0074】
この後、ワークピース9は図12の矢印C’のX方向へ連続移動することや、矢印D’のY方向へ寸法L2と対応する距離だけ移動すること、さらには、矢印E’のX方向へ連続移動することや、矢印F’のY方向へ寸法L2と対応する距離だけ移動すること、矢印G’のX方向へ連続移動することを行い、ワークピース9の移動が矢印G’のX方向の終端部に達すると、制御装置11によってワークピース移動装置10が駆動制御されることにより、ワークピース9の移動は停止する。このようにしてワークピース9が移動を行うときも、矢印A’及びB’について述べたと同様に、セル配置面5Aの全体へのレーザー光の照射と、セル配置面5Aに形成されているセルパターン32の変更とが行われる。
【0075】
以上のようにレーザー発振器1からレーザー光が発振され、また、可変マスク5のセル配置面5Aに形成されるセルパターンが順次変更され、さらに、ワークピース9がワークピース移動装置10によって図12の矢印A’〜G’で示すように移動することにより、ワークピース9には、セル配置面5Aのセルパターン32に基づき、図7及び図8の微細パターン30が形成されることになる。
【0076】
また、ワークピース移動装置10によりワークピースがX方向及びY方向に移動する際に、X方向の移動に真直度誤差が生じた場合には、この真直度誤差は図6で示したセンサ25で検出され、また、Y方向の移動に真直度誤差が生じた場合には、この真直度誤差は図6で示したセンサ24で検出される。これらのセンサ24,25からの検出信号が送られた制御装置11のコンピュータ11Aの演算部は、ワークピース9に到達するレーザー光の位置を真直度誤差が修正された位置とするための演算を行い、この演算結果のデータに基づき制御装置11の制御手段11Bは、X方向用レーザー光到達位置修正装置7AとY方向用レーザー光到達位置修正装置7Bを駆動制御することにより、ワークピース9に到達するレーザー光の位置は、真直度誤差が修正された正確な位置となる。
【0077】
以上説明した本実施形態によると、ワークピース9に微細パターン30を形成する作業はレーザー光を用いるドライエッチング方式により行われるため、この作業を、レーザー加工装置が設置された小さいスペースで行うことができ、ウェットエッチング方式よりも作業スペースの点で有利となる。
【0078】
また、可変マスク5のセルとなっている多数のミラーを制御装置11によって個別に制御することにより、可変マスク5に形成するセルパターン32を容易に変更することができるため、複雑な微細パターンでも、また、任意な形状の微細パターンでも、ワークピース9に形成することができ、しかも、これらの微細パターンをワークピース9に短時間で形成することができ、作業効率を向上させることができる。
【0079】
また、ワークピース移動装置10によるワークピース9の移動に真直度誤差が生じても、レーザー光到達位置修正装置7により、ワークピース9に到達するレーザー光の位置を真直度誤差が修正された正確な位置とすることができるため、ワークピース9に正確な微細パターン30を形成することができる。
【0080】
さらに、このレーザー光到達位置修正装置7では、透光板13のレーザー光に対する傾き角度が調整されることにより、レーザー光がワークピース9に到達する位置の修正量(図4のLh)が変化するため、透光板13のレーザー光に対する傾き角度を調整だけにより、ワークピース移動装置10によるワークピース9の移動の真直度誤差に応じて、レーザー光がワークピース9に到達する位置を正確に修正できる。
【0081】
また、レーザー光到達位置修正装置7は、透光板13と、この透光板13のレーザー光に対する傾き角度を調整するための手段とにより構成することができるため、装置の小型化、構造の簡単化を図ることができる。
【0082】
なお、本実施形態では、ワークピース移動装置10にワークピースの移動の真直度誤差を検出するためのセンサ24,25を配置したが、この真直度誤差が、例えば、図6で示したボールねじ軸20,22の成形精度等に基づくものであって、ワークピース移動装置10を試行駆動させることにより、習慣的に同じ移動位置で同じ真直度誤差が繰り返し生ずる場合ことが判明している場合には、センサ24,25を用いず、制御装置11のコンピュータ11Aの記録部にこの真直度誤差に関するデータを記録しておき、このデータに基づき制御手段11Bがレーザー光到達位置修正装置7を駆動制御することにより、レーザー光がワークピース9に到達する位置を、真直度誤差が修正された位置とするようにしてもよい。
【0083】
また、上述のようにレーザー光に対する傾き角度が調整される透光板13を備えたレーザー光到達位置修正装置7は、可変マスクを用いないレーザー加工装置やレーザー加工方法、さらには、他の装置や方法にも適用することができる。
【0084】
さらに本実施形態では、制御装置11によってワークピース移動装置10を制御することによりワークピース9が移動することは、図12の矢印A’〜G’から理解することができるように、ワークピース9が、可変マスク5のセル配置面5Aの図9のX方向寸法L1と対応する距離よりも長い距離をX方向に前進移動(矢印A’方向への移動)した後に、ワークピース9が、可変マスク5のセル配置面5Aの図9のY方向寸法L2と対応する距離をY方向に前進移動(矢印B’方向への移動)し、この後に、ワークピース9が、可変マスク5のセル配置面5AのX方向寸法L1と対応する距離よりも長い距離をX方向に後退移動(矢印C’方向への移動)することにより、行うようになっている。
【0085】
その一方で、ワークピース9が、可変マスク5のセル配置面5AのX方向寸法L1と対応する距離よりも長い距離をX方向に前進移動した後に、ワークピース9がこの前進距離と同じ距離を後退移動することを行い、次いで、ワークピース9が、可変マスク5のセル配置面5AのY方向寸法L2と対応する距離をY方向に前進移動することを行い、この後に、ワークピース9が上記前進距離と同じ距離を再度前進移動することを行なうようにすることもできる。
【0086】
しかし、これによると、ワークピース9を、Y方向の同じ位置において、X方向に前進移動させた後に後退移動させることになり、この後退移動時には、ワークピース9に微細パターン30の部分パターン33を形成することを行わないため、ワークピース移動装置10によりワークピース9を移動させて実行するワークピース9に微細パターン30を形成するための作業が、長時間かかる作業となってしまう。
【0087】
これに対して本実施形態では、ワークピース9に微細パターン30を形成することを行わないワークピース9の後退移動が存在しないため、微細パターン30をワークピース9に形成するための作業のための時間を短縮することができる。
【0088】
なお、ワークピース9の移動軌跡を図12のように設定することは、可変マスクを用いないレーザー加工装置やレーザー加工方法、さらには、他の装置や方法にも適用することができる。
【0089】
また、以上説明した本実施形態では、制御装置11によるワークピース移動装置10の制御によって行われるワークピース9のX方向の移動の距離が、可変マスク5のセル配置面5AのX方向寸法L1と対応する距離に達するごとに、レーザー光がセル配置面5Aを照射するようにしたが、ワークピース9の移動の距離が、セル配置面5AのX方向寸法L1と対応する距離よりも短い距離に達するごとに、レーザー光がセル配置面5Aを照射するようにしてもよい。
【0090】
これと同様なことは、ワークピース移動装置10によりワークピース9をY方向に移動させる距離についても行える。すなわち、ワークピース9をY方向に移動させる距離を、図9で示したY方向寸法L2と対応する距離よりも短い距離、言い換えると、図8で示した区域31のY方向寸法W2よりも短い距離としてもよい。
【0091】
このようにワークピース9の移動距離を設定する場合には、可変マスク5のセル配置面5Aに順次変更して形成するセルパターン32を、前回のセルパターンと次回のセルパターンとにおいて、一部が重複したパターンにすればよい。これによると、図8で示した第1番目の区域31と最後の区域31とに含まれる部分パターン33を除くそれぞれの部分パターン33を、パルス光のレーザー光を可変マスク5のセル配置面5Aに複数回照射することにより形成できるため、微細パターン30を一層明瞭に形成することができる。なお、最初と最後のセルパターン32が形成されている可変マスク5のセル配置面5Aについても、パルス光のレーザー光を複数回照射することにより、第1番目の区域31と最後の区域31とに含まれる部分パターン33を一層明瞭に形成することができる。
【0092】
また、以上説明した実施形態では、可変マスク5のセル配置面5Aの全体にレーザー光を照射するようにしたが、このセル配置面5Aのうち、一部を、例えば、セルの故障時等のときに利用するための予備面とし、これにより、セル配置面5Aのうち、レーザー光を照射する部分を、この予備面を除いた部分だけとしてもよい。
【0093】
このため、このような予備面をセル配置面5Aに設ける場合のことを含めると、本実施形態に係るレーザー光は、セル配置面5Aのうち、セルパターン32が形成される部分の全体を照射することになる。言い換えると、予備面をセル配置面5Aに設ける場合には、レーザー光が照射される面は、セル配置面5Aのうち、セルパターン32が形成される部分だけであり、また、予備面をセル配置面5Aに設けない場合には、レーザー光はセル配置面5Aの全体に照射されることになる。
【0094】
図9〜図11で説明した本実施形態は、予備面をセル配置面5Aに設けない場合の実施形態となっている。
【0095】
また、本実施形態では、前述したように、図12の矢印A’,C’,E’,G’のX方向にワークピース9を連続移動させるようにしていたが、ワークピース9のX方向の移動を、ワークピース9のX方向への移動距離が、セル配置面5AのX方向寸法L1と対応する距離又はこの距離よりも短い距離に達するごとに、ワークピース9を停止させる断続移動とし、ワークピース9が停止するごとに、セル配置面5Aをレーザー光で照射するようにしてもよい。
【0096】
しかし、本実施形態のように、ワークピース9をX方向に連続移動させると、矢印A’,C’,E’,G’のそれぞれの始端から終端までのワークピース9の移動時間を短縮することができ、これにより、ワークピース9に微細パターン30を形成するための作業効率を向上させることができる。
【0097】
また、以上説明した本実施形態は、前述したように、図1で示した可変マスク5から縮小投影レンズ群8を介してワークピース9に到達したレーザー光によってワークピース9に形成される結像が、X方向及びY方向について反転していない場合であったが、この結像がX方向及びY方向について反転している場合には、ワークピース9をワークピース移動装置10により移動させる移動軌跡を、図26で示した移動軌跡とすればよい。この移動軌跡における矢印A”〜G”の向きは、図12の矢印A’〜G’の向きと逆になっている。
【0098】
次に、本発明の別実施形態に係る装置について説明する。以下の説明において、既に説明した部材や手段、装置と同じもの又は同じ機能のものには、同一符号を用いることとする。
【0099】
図13は、第2実施形態に係るレーザー加工装置を示している。このレーザー加工装置では、レーザー発振器1からパルス光となって発振されたレーザー光12は、シリンドリカルレンズによるビームエキスパンダ3により長方形に拡張成形された後に、ミラー40により進行方向が変更され、そして、レーザー光がレンズ44により平行光線となる位置に可変マスク45が配置されている。この可変マスク45は、セル配置面に多数配置されているセルが微小な液晶で形成されている液晶タイプの可変マスクである。
【0100】
この可変マスク45のシャッターとなっているそれぞれの液晶は、制御装置11によるオン、オフ制御により、個別的にレーザー光を透過、遮断させる開閉作動を行い、レーザー光をワークピース9に到達させるためにレーザー光を透過させる開き作動を行った液晶により、可変マスク45のセル配置面にセルパターンが形成される。このセルパターンは、図7及び図8で示した微細パターン30をワークピース9に形成するために、制御装置11が可変マスク45を駆動制御することにより、順次変更される。
【0101】
このため、レーザー発振器1からパルス光として発振されたレーザー光が、可変マスク5のセル配置面の全体を照射し、可変マスク45のセル配置面に形成されるセルパターンが順次変更され、ワークピース9がワークピース移動装置10により、図12の矢印A’〜G’で示すようにX方向及びY方向に、前述の実施形態と同じく、移動することにより、ワークピース9に微細パターン30が形成されることになる。
【0102】
なお、この実施形態においても、可変マスク45のセル配置面のうち、一部を、例えば、セルの故障時等のときに利用するための予備面とし、これにより、セル配置面5Aのうち、レーザー光を照射する部分を、この予備面を除いた部分だけとしてもよい。
【0103】
また、この実施形態でも、図12の矢印A’〜G’で示すようにワークピース9を移動させることは、可変マスク45から縮小投影レンズ群8を介してワークピース9に到達したレーザー光によってワークピース9に形成される結像が、X方向及びY方向について反転していない場合に行われ、この結像がX方向及びY方向について反転している場合には、ワークピース9をワークピース移動装置10により移動させる移動軌跡を、図26で示した移動軌跡とすればよい。
【0104】
図14は、第3実施形態に係るレーザー加工装置を示している。このレーザー加工装置でも、レーザー発振器1からパルス光となって発振されるレーザー光は、レンズ44により平行光線となり、このようにレーザー光が平行光線となっている位置において、可変マスク55が配置されている。この可変マスク55も、セル配置面に多数配置されているセルが微小な液晶で形成されている液晶タイプの可変マスクである。そして、この実施形態でも、レーザー光をワークピース9に到達させるためにレーザー光を透過させる開き作動を行った液晶により、可変マスク55のセル配置面にセルパターンが形成される。このセルパターンは、制御装置11が可変マスク55を駆動制御することにより、順次変更される。
【0105】
また、この実施形態では、レーザー光は、ビームエキスパンダ56により拡張されることにより、これまでの実施形態と同様に長方形となるが、この長方形は、X方向の寸法が、これまでの実施形態よりも小さい細幅の長方形である。さらにこの実施形態ではビームエキスパンダ56から出射したレーザー光は、ポリゴンミラー装置50の多角形ミラー51で反射されて可変マスク55の側へ進行する。このポリゴンミラー装置50は制御装置11により駆動制御されるものとなっており、ポリゴンミラー装置50の多角形ミラー51の回転が、レーザー発振器1、可変マスク55及びワークピース移動装置10と同期して制御される。
【0106】
図15は、可変マスク55のセルパターンが形成されるセル配置面55Aを示している。このセル配置面55Aには、X方向に区分けされた複数個の領域A1〜A11が設定され、それぞれの領域A1〜A11のX方向寸法は、同じになっており、Y方向寸法は、セル配置面55AのY方向寸法と同じになっている。ポリゴンミラー装置50から可変マスク55に到達するレーザー光の大きさ及び形状は、1個の領域と同じであり、ポリゴンミラー装置50の多角形ミラー51が一方向に回転することにより、パルス光となっているレーザー光は、複数個の領域A1〜A11を、一方の端部の領域A1側から他方の端部の領域A11側へ順番に走査する。
【0107】
なお、この実施形態でも、可変マスク55のセル配置面55Aのうち、一部を、例えば、セルの故障時等のときに利用するための予備面とし、これにより、セル配置面55Aのうち、レーザー光を照射する部分を、この予備面を除いた部分だけとしてもよい。
【0108】
図15で示す本実施形態では、セル配置面55Aに予備面が設けられておらず、セル配置面55Aの全体に、レーザー光の走査により、レーザー光が照射されるようになっている。
【0109】
また、図15の(A)〜(F)は、レーザー光により走査される領域A1〜A11の順番を示しており、ハッチングが付されている領域が、レーザー光がパルス光として照射されている領域である。
【0110】
図16は、図7及び図8で示した微細パターン30を形成している複数個の部分パターン33のうち、図8に示されている第2番目の区域31Bに含まれている部分パターン33Bを示している。この区域31Bにも、X方向に区分けされた複数個の分域B1〜B11が設定され、これらの分域B1〜B11の個数は、可変マスク55のセル配置面55Aに設定されている領域A1〜A11の個数と同じである。また、それぞれの分域B1〜B11のX方向寸法は、同じになっており、それぞれの分域B1〜B11のY方向寸法は、区域31BのY方向寸法と同じになっている。また、それぞれの分域B1〜B11には、上記部分パターン33BがX方向に分割された分割パターン52が含まれることになり、これらの分割パターン52は、制御装置11のコンピュータ11Aの記録部に記録される。
【0111】
このように図8で示した区域を複数個の分域に分割することは、図8に示されている第2番目の区域31Bから最後の区域まで行われ、また、これらの区域のそれぞれの分域に含まれる分割パターンも、制御装置11のコンピュータ11Aの記録部に記録される。
【0112】
この実施形態では、ワークピース9にレーザー光により微細パターン30を形成するためのレーザー加工作業は、制御装置11がレーザー発振器1、ポリゴンミラー装置50、可変マスク55、レーザー光到達位置修正装置7及びワークピース移動装置10を駆動制御することにより行われる。レーザー加工作業の開始時には、可変マスク55のセル配置面55Aの全体には、制御装置11の駆動制御により、図15(A)で示されているセルパターン53が形成されており、このセルパターン53は、図8で示した多数個の区域31のうち、第1番目の区域31Aに含まれている部分パターン33Aと対応するものである。
【0113】
そして、制御装置11の駆動制御によりレーザー発振器1からレーザー光がパルス光となって発振され、このレーザー光は、ポリゴンミラー装置50で反射されて可変マスク55のセル配置面55Aに照射され、この照射は、ポリゴンミラー装置50の多角形ミラー51が制御装置11による駆動制御により一方向へ回転することにより、図15の(A)〜(F)に示されているように、レーザー光が、可変マスク55のセル配置面55Aに設定されている複数個の領域A1〜A11を、一方の端部の領域A1側から他方の端部の領域A11側へ順番に走査することにより行われる。図15(A)〜(F)において、ハッチングが付されている領域が、レーザー光が照射されている領域であるため、図15では、一方の端部の領域A1側から6番目となっている領域A6までがレーザー光により走査されたときを示している。
【0114】
このようにそれぞれの領域A1〜A11がレーザー光で順番に走査されているとき、セルパターン53の一部を形成しているものであって、パルス光となっているレーザー光の照射が終了した領域に形成されていたパターンは、制御装置11の駆動制御により順次消去される。そして、レーザー光の照射が終了した領域には、図15(B)〜(F)に示されているように、制御装置11の駆動制御により領域パターン54が順次形成される。これらの領域パターン54は、図16で示した分割パターン52と対応するものであり、このように、レーザー光の照射が終了した領域には、この照射が終了したそれぞれの領域A1〜A11と対応している図16の分域B1〜B11に含まれている分割パターン52と対応する領域パターン54が形成される。
【0115】
すなわち、制御装置11は、レーザー光の照射が終了した領域に、この領域と対応している分域に含まれている分割パターン52と対応する領域パターン54を形成する制御を、可変マスク55に対して行うのである。言い換えると、制御装置11は、レーザー光の照射が終了した領域に配置されている多数の液晶によるパターンを、ワークピース移動装置10によるワークピース9の移動によってこのワークピース9に微細パターン30を形成するための次のパターンである領域パターン54に変更することを開始するのである。
【0116】
上述のようにして、レーザー光が一方の端部の領域A1から他方の端部の領域A11まで順番に走査することが終了すると、制御装置11によってワークピース移動装置10が駆動制御されることにより、ワークピース9は、X方向のうち、図12の矢印A’の方向へ、図15(A)で示す可変マスク55のセル配置面55AのX方向寸法L3と対応する距離だけ前進移動し、そして、停止する。この後、レーザー発振器1から発振されたレーザー光は、ポリゴンミラー装置50の多角形ミラー51の一方向への回転により、可変マスク55のセル配置面55Aに複数個設定されている領域A1〜A11を、再び一方の端部の領域A1から他方の端部の領域A11まで順番に走査する。このようにしてレーザー光が走査するときのセル配置面55Aには、図8の第2番目の区域31Bに含まれている部分パターン33Bと対応するセルパターンが形成されている。
【0117】
そして、このようにレーザー光が、再び領域A1〜A11を、一方の端部の領域A1から他方の端部の領域A11まで順番に走査したときも、制御装置11は、レーザー光の照射が終了した領域に配置されている多数の液晶によるパターンを、ワークピース移動装置10によるワークピース9の移動によってこのワークピース9に微細パターン30を形成するための次のパターンに変更することを開始する。このとき、レーザー光の照射が終了した領域に配置されている多数の液晶によって形成されるパターンは、図8で示す第3番目の区域31Cの部分パターン33Cを分割して形成した分割パターンと対応する領域パターンである。この後に、制御装置11によってワークピース移動装置10が駆動制御されることにより、再びワークピース9は、X方向のうち、図12の矢印A’の方向へ、X方向寸法L3と対応する距離だけ前進移動し、そして、停止する。
【0118】
このようにワークピース9がX方向に断続的に前進移動し、この前進移動が矢印A’の方向の端部に達すると、制御装置11によってワークピース移動装置10が駆動制御されることにより、ワークピース9は、Y方向のうち、図12の矢印B’の方向へ、図15(A)で示すY方向寸法L4と対応する距離だけ前進移動する。この後、ワークピース9は、制御装置11によってワークピース移動装置10が駆動制御されることにより、図12の矢印C’の方向へ、X方向寸法L3と対応する距離だけ断続的に後退移動することを繰り返し、この後退移動が、矢印C’の方向の端部に達すると、制御装置11によってワークピース移動装置10が駆動制御されることにより、ワークピース9は、Y方向のうち、図12の矢印D’の方向へ、Y方向寸法L4と対応する距離だけ前進移動する。
【0119】
そして、これ以後は、上述と同様にしてワークピース9は、図12の矢印E’の方向へ、X方向寸法L3と対応する距離だけ断続的に前進移動することと、図12の矢印F’の方向へY方向寸法L4と対応する距離だけ前進移動することと、図12の矢印G’の方向へ、X方向寸法L3と対応する距離だけ断続的に後退移動することとを行い、ワークピースの後退移動が矢印G’の方向の端部に達すると、制御装置11によってワークピース移動装置10が駆動制御されることにより、ワークピース9の移動は停止する。
【0120】
以上のようにワークピース9が、図12の矢印A’,C’,E’,G’の方向へ、X方向寸法L3と対応する距離だけ断続的に移動するごとに、また、ワークピースが、図12の矢印B’,D’,F’で示す方向へ、Y方向寸法L4と対応する距離だけ前進移動ごとに、前述したようにレーザー光が、可変マスク55のセル配置面55Aに設定されている複数個の領域A1〜A11を、ポリゴンミラー装置50の多角形ミラー51の一方向への回転により、一方の端部の領域側から他方の端部の領域側へ順番に走査することと、レーザー光の照射が終了した領域に、制御装置11の駆動制御により、微細パターン30のための領域パターン54が形成されることと、が繰り返される。
【0121】
このような繰り返しにより、本実施形態において、ワークピース9に、図7及び図8で示した微細パターン30が形成されることになる。
【0122】
なお、図12に示すワークピース9の移動軌跡は、図14で示した可変マスク55から縮小投影レンズ群8を介してワークピース9に到達したレーザー光によってワークピース9に形成される結像が、X方向及びY方向について反転していないときの移動軌跡である。この結像が、X方向及びY方向について反転しているときには、ワークピース9の移動軌跡を図26で示したものにすればよい。
【0123】
この実施形態によると、レーザー光が可変マスク55のセル配置面55Aを照射することは、レーザー光が、複数個の領域を、一方の端部の領域側から他方の端部の領域側へ順番に走査することにより行われ、そして、レーザー光の照射が終了した領域に配置されている多数の液晶によるパターンを、制御装置11の制御により、ワークピース移動装置10によるワークピース9の移動によってこのワークピース9に微細パターン30を形成するための次のパターンに変更されることが開始され、この後に、レーザー光が、再び複数個の領域を、一方の端部の領域側から他方の端部の領域側へ再度順番に走査することが行われるため、制御装置11の駆動制御による可変マスク55の応答速度が、言い換えると、可変マスク55にセルとして配置されている液晶の応答速度が、可変マスクにセルとして配置されている前述のミラーの応答速度よりも遅くてもよいことになり、この遅い応答速度に適合させて、レーザー光を可変マスク55のセル配置面55Aに照射することができる。
【0124】
すなわち、この実施形態は、可変マスク55に多数配置されているセルの作動速度が遅い場合に、有効に適用することができる。
【0125】
なお、この実施形態は、可変マスク55に配置されているセルが前述のミラーである場合にも、適用することができる。
【0126】
また、この実施形態では、パルス光となっているレーザー光をセル配置面55Aの全体に1回で照射するのではないため、レーザー光の出力に対してセル配置面55Aの面積が十分に大きくなっている可変マスク55を用いることができるようになる。
【0127】
また、この実施形態では、レーザー光を、一方の端部の領域側から他方の端部の領域側へ順番に走査することは、図12又は図26で示すワークピース9の移動軌跡全体を通して、ポリゴンミラー装置50の多角形ミラー51を同じ方向である一方向に回転させることにより実施することができ、レーザー光の上記走査のためにガルバノミラー装置を用いた場合には、このガルバノミラー装置のミラーを往復回動させなければならず、本実施形態のようにポリゴンミラー装置50を用いた場合には、このような往復回動は不必要になるため、レーザー光の走査速度の向上により、微細パターン30をワークピース9に形成する作業の作業効率を向上させることができる。
【0128】
また、この実施形態では、ワークピース移動装置10によりワークピース9をX方向に1回で移動させる距離は、図15(A)で示したX方向寸法L3と対応する距離としたが、図1の実施形態で説明した場合と同様に、ワークピース9の1回のX方向移動距離を、X方向寸法L3よりも短い距離としてもよい。これと同様なことは、ワークピース移動装置10によりワークピース9をY方向に移動させることについても行え、すなわち、ワークピース9をY方向に移動させる距離を、図15(A)で示したY方向寸法L4と対応する距離よりも短い距離としてもよい。
【0129】
図17は、第4実施形態に係るレーザー加工装置を示す。この実施形態では、レーザー発振器1からパルス光となって発振するレーザー光12は、ビームエキスパンダ62で長方形に拡張された後に、屈曲角度をもって接合された2枚のミラー等によるビームスプリッタ63により、図17のS18−S18線断面図である図18に示されているように、それぞれ同じ大きさ、形状となっている2個のレーザー光12C,12Dに分割される。
【0130】
また、この実施形態でも、図17に示されているように、2個のレーザー光12C,12Dは、制御装置11により駆動制御されるポリゴンミラー装置60の多角形ミラー61で反射されて可変マスク65の側へ進行する。そして、制御装置11による多角形ミラー61の回転の制御は、制御装置11によるレーザー発振器1、可変マスク65及びワークピース移動装置10の駆動制御と同期して行われる。
【0131】
可変マスク65は、レンズ64により平行光線となる位置に配置されており、また、この可変マスク65も、図14の実施形態の可変マスク55と同じく、セル配置面に多数配置されているセルが微小な液晶で形成されている液晶タイプの可変マスクである。
【0132】
図19は、可変マスク65のセルパターンが形成されるセル配置面65Aを示している。このセル配置面65Aには、X方向に区分けされた偶数個の小領域C1〜C12が設定され、それぞれの小領域C1〜C12のX方向寸法は、同じになっており、Y方向寸法は、セル配置面65AのY方向寸法と同じになっている。ポリゴンミラー装置60から可変マスク65に到達するそれぞれのレーザー光12C,12Dについての大きさ及び形状は、1個の小領域と同じになっている。また、可変マスク65に到達したときの2個のレーザー光12C,12Dの図18で示すX方向間隔寸法LXは、偶数個の小領域C1〜C12の個数を2で割った数と同数の小領域についてのX方向寸法と同じになっている。本実施形態では、偶数個となっている小領域C1〜C12の個数は12個であり、それぞれの小領域C1〜C12のX方向寸法はL5であるため、可変マスク65に到達したときの2個のレーザー光12C,12DのX方向間隔寸法LXは、LX=6・L5である。なお、図19で示されているL6は、可変マスク65のセル配置面65AについてのY方向寸法である。
【0133】
また、この実施形態では、図19に示されているように、偶数個の小領域C1〜C12は、X方向に前半の大領域D1と後半の大領域D2とに区分けされ、これらの大領域D1とD2は、それぞれ同数の小領域によって形成されたものとなっている。このため、前半の大領域D1のX方向寸法と後半の大領域D2のX方向寸法は、同じになっている。
【0134】
なお、この実施形態でも、可変マスク65のセル配置面65Aのうち、一部を、例えば、セルの故障時等のときに利用するための予備面とし、これにより、セル配置面65Aのうち、レーザー光を照射する部分を、この予備面を除いた部分だけとしてもよい。
【0135】
図19で示す本実施形態では、セル配置面65Aに予備面が設けられておらず、セル配置面65Aの全体に、後述するようにレーザー光の走査により、レーザー光が照射されるようになっている。
【0136】
図25は、図16と同様に、図7及び図8で示した微細パターン30を形成している複数個の部分パターン33のうち、図8に示されている第2番目の区域31Bに含まれている部分パターン33Bを示している。図25に示すように、区域31Bには、可変マスク65のセル配置面65Aと同様に、X方向に区分けされた複数個の分域E1〜E12が設定され、これらの分域E1〜E12の個数は、小領域C1〜C12の個数と同じである。また、それぞれの分域E1〜E12のX方向寸法は、同じ寸法のL7になっている。それぞれの分域E1〜E12には、上記部分パターン33BがX方向に分割された分割パターン72が含まれていることになり、これらの分割パターン72は、制御装置11のコンピュータ11Aの記録部に記録される。
【0137】
このように図8で示した区域31を複数個の分域に分割することは、図8に示されている第2番目の区域31Bから最後の区域まで行われ、また、これらの区域のそれぞれの分域に含まれる分割パターンも、制御装置11のコンピュータ11Aの記録部に記録される。
【0138】
この実施形態でも、ワークピース9にレーザー光により微細パターン30を形成するためのレーザー加工作業は、制御装置11がレーザー発振器1、ポリゴンミラー装置60、可変マスク65、レーザー光到達位置修正装置7及びワークピース移動装置10を駆動制御することにより行われる。レーザー加工作業の開始時には、可変マスク65のセル配置面65Aの全体には、制御装置11の駆動制御により、図19で示されているセルパターン73が形成されており、このセルパターン73は、図8で示した多数個の区域31のうち、第1番目の区域31Aに含まれている部分パターン33Aと対応するものである。
【0139】
そして、制御装置11の駆動制御によりレーザー発振器1からレーザー光がパルス光となって発振され、このレーザー光がビームスプリッタ63により、図18の2個のレーザー光12C,12Dに分割された後に、これらのレーザー光12C,12Dは、ポリゴンミラー装置60の多角形ミラー61により反射されて可変マスク65のセル配置面65Aに照射される。この照射は、制御装置11による駆動制御により多角形ミラー61が一方向に回転することにより、これらのレーザー光12C,12Dが、偶数個の小領域C1〜C12を、セル配置面65Aに設定されている前半の大領域D1と後半の大領域D2とについて、一方の端部の小領域C1,C7側から他方の端部の小領域C6,C12側へ順番に走査することにより行われる。図19〜図24は、この走査により、パルス光となっているレーザー光12C,12Dが照射された小領域を示しており、図19〜図24において、ハッチングが付されている2個の小領域が、レーザー光12C,12Dが同時に照射されている小領域である。
【0140】
このようにレーザー光12C,12Dが、偶数個の小領域C1〜C12を、セル配置面65Aに設定されている前半の大領域D1と後半の大領域D2とについて、一方の端部の小領域C1,C7側から他方の端部の小領域C6,C12側へ順番に走査しているとき、セルパターン73の一部を形成するものであって、パルス光となっている2個のレーザー光12C,12Dの照射が終了した2個の小領域に形成されていたパターンは、制御装置11の駆動制御により順次消去される。そして、レーザー光の照射が終了した2個の小領域には、図20〜図24に示されているように、制御装置11の駆動制御により小領域パターン74が順次形成される。これらの小領域パターン74は、図25で示した分割パターン72と対応するものであり、レーザー光の照射が終了した2個の小領域に形成される小領域パターン74は、この照射が終了したそれぞれの小領域C1〜C12と対応している図25の分域E1〜E12に含まれている分割パターン72と対応したものになる。
【0141】
すなわち、制御装置11は、レーザー光12C,12Dの照射が終了した2個の小領域に、これらの小領域と対応している2個の分域に含まれている分割パターン72と対応する小領域パターン74を形成する制御を、可変マスク65に対して行うのである。言い換えると、制御装置11は、レーザー光の照射が終了した2個の小領域に配置されている多数の液晶によるパターンを、ワークピース移動装置10によるワークピース9の移動によってこのワークピース9に微細パターン30を形成するための次のパターンである小領域パターン74に変更することを開始するのである。
【0142】
以上のように2個のレーザー光12C,12Dが、図19で示す偶数個の小領域C1〜C12を、前半の大領域D1と後半の大領域D2とについて、一方の端部の小領域C1,C7から他方の端部の小領域C6,C12まで順番に走査することが終了すると、これら2個のレーザー光12C,12Dは、ポリゴンミラー装置60の多角形ミラー61が制御装置11の駆動制御により上述と同じ一方向へ回転することにより、再び偶数個の小領域C1〜C12を、前半の大領域D1と後半の大領域D2とについて、一方の端部の小領域C1,C7から他方の端部の小領域C6,C12まで順番に走査することを繰り返す。このようにして2個のレーザー光12C,12Dが走査するときのセル配置面65Aには、図8の第2番目の区域31Bに含まれている部分パターン33Bと対応するセルパターンが形成されている。
【0143】
このようにして繰り返される2個のレーザー光12C,12Dによる走査は、制御装置11によって駆動制御されるワークピース移動装置10により、ワークピース9がX方向に連続して移動しながら行われ、また、2個のレーザー光12C,12Dが、偶数個の小領域C1〜C12のうち、前半の大領域D1と後半の大領域D2のそれぞれ1個の小領域を同時に照射するごとに、すなわち、2個のレーザー光12C,12Dが2個の小領域を同時に照射するごとに、ワークピース9がワークピース移動装置10によりX方向に移動する距離は、図19で示した1個の小領域のX方向寸法L5の2倍に対応する距離、すなわち、図25で示した1個の分域のX方向寸法L7の2倍と同じ距離となる。
【0144】
本実施形態は、これでの実施形態と同様に、図17で示した可変マスク65から縮小投影レンズ群8を介してワークピース9に到達したレーザー光によってワークピース9に形成される結像が、X方向及びY方向について反転していないときの実施形態となっている。このため、本実施形態では、制御装置11により駆動制御されるワークピース移動装置10によるワークピース9のX方向における移動方向は、ポリゴンミラー装置60の多角形ミラー61による2個のレーザー光12C,12Dの上述した走査方向と同じとなっている。
【0145】
このように本実施形態では、制御装置11によるワークピース移動装置10の制御によって行われるワークピース9のX方向の移動が、連続移動となっているとともに、2個のレーザー光12C,12Dが可変マスク65の2個の小領域を同時に照射するごとに、ワークピース9がX方向に移動する距離は、図19のX方向寸法L5の2倍に対応する距離となっており、また、ワークピース9が移動する方向は、2個のレーザー光12C,12Dの上記走査方向と同じ方向になっている。
【0146】
これにより、ワークピース9をX方向に連続移動させながら、制御装置11の駆動制御により可変マスク65のセル配置面65Aに形成したパターンと対応するパターンを、ワークピース9において、X方向に形成することができる。
【0147】
本実施形態は、上述したように、図17で示した可変マスク65から縮小投影レンズ群8を介してワークピース9に到達したレーザー光によってワークピース9に形成される結像が、X方向及びY方向について反転していないときの実施形態となっているため、ワークピース9が、制御装置11によって駆動制御されるワークピース移動装置10により移動する軌跡を、図12で示した軌跡と同じにする。したがって、図12の矢印A’で示されているように、ワークピース9は、最初にX方向に連続移動により前進し、この前進移動が矢印A’の端部に達すると、ワークピース9は、Y方向のうち、矢印B’の方向へ、図19で示すY方向寸法L6と対応する距離だけ前進移動する。この後、ワークピース9は、矢印C’の方向へ、連続的に後退移動し、この後退移動が、矢印C’の方向の端部に達すると、ワークピース9は、Y方向のうち、矢印D’の方向へ、Y方向寸法L6と対応する距離だけ前進移動する。そして、これ以後は、上述と同様にしてワークピース9は、矢印E’の方向へ連続的に前進移動することと、矢印F’の方向へY方向寸法L6と対応する距離だけ前進移動することと、矢印G’の方向へ連続的に後退移動することとを行い、ワークピース9の後退移動が矢印G’の方向の端部に達すると、制御装置11によってワークピース移動装置10が駆動制御されることにより、ワークピース9の移動は停止する。
【0148】
そして、この実施形態において、2個のレーザー光12C,12Dが、偶数個の小領域C1〜C12を、前半の大領域D1と後半の大領域D2とについて、一方の端部の小領域側から他方の端部の小領域側へ順番に走査することは、ワークピース9が図12の矢印A’,E’の方向に前進移動するときと、図12の矢印C’,G’の方向に後退移動するときでは、逆とする。すなわち、ワークピースが、図12の矢印C’,G’の方向に後退移動するときには、図19で示す大領域D1が後半の大領域となるとともに、大領域D2が前半の大領域となり、2個のレーザー光12C,12Dが、前半の大領域D2と後半の大領域D1とについて、一方の端部の小領域C12,C6側から他方の端部の小領域C7,C1側へ順番に走査するようにする。このように2個のレーザー光12C,12Dの走査方向を逆とすることは、ポリゴンミラー装置60の多角形ミラー61の回転方向を逆転させることにより行われる。
【0149】
以上により、本実施形態においては、ワークピース9をX方向に連続移動させながら、このワークピース9に図7及び図8で示した微細パターン30を形成することができる。
【0150】
この実施形態によると、ワークピース9のX方向への移動を、断続移動ではなく、連続移動とすることができるため、ワークピース9のX方向への移動時間を一層短縮することができ、これにより、ワークピース9に微細パターン30を形成する作業の一層高効率化を図ることができる。
【0151】
なお、上述の説明では、2個のレーザー光12C,12Dが、偶数個の小領域C1〜C12のうち、前半の大領域と後半の大領域のそれぞれ1個の小領域を同時に照射するごとに、すなわち、2個のレーザー光12C,12Dが2個の小領域を同時に照射するごとに、ワークピース9がX方向に移動する距離は、図19で示した1個の小領域のX方向寸法L5の2倍に対応する距離としたが、この移動距離を、前述した実施形態についての説明から分かるように、1個の小領域のX方向寸法L5の2倍に対応する距離よりも短い距離としてもよく、また、ワークピース9がY方向に移動距離は、Y方向寸法L6よりも短い距離としてもよい。
【0152】
また、本実施形態は、図17で示した可変マスク65から縮小投影レンズ群8を介してワークピース9に到達したレーザー光によってワークピース9に形成される結像が、X方向及びY方向について反転していないときの実施形態であったため、ワークピース9のX方向における移動方向は、ポリゴンミラー装置60の多角形ミラー61の回転によって行われる2個のレーザー光12C,12Dのセル配置面65Aについての走査方向と同じ方向となっていたが、上記結像が、X方向及びY方向について反転しているときには、ワークピース9のX方向における移動方向を、ポリゴンミラー装置60の多角形ミラー61の回転によって行われる2個のレーザー光12C,12Dのセル配置面65Aについての走査方向とは逆の方向とする。
【0153】
また、このように上記結像が、X方向及びY方向について反転しているときには、ワークピース9の移動軌跡を図26で示したものとする。
【0154】
さらに、本実施形態も、可変マスクに多数配置されているセルが、作動速度が遅い液晶の場合に有効に適用することができる。また、本実施形態は、可変マスクに配置されているセルが前述のミラーである場合にも、適用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0155】
本発明は、例えば、タッチパネル、プラズマディスプレイ、電子ペーパー、有機EL、太陽光発電パネルを製造するために利用することができる。
【符号の説明】
【0156】
1 レーザー発振器
5,45,55,65 可変マスク
5A,55A,65A セル配置面
7 レーザー光到達位置修正装置
7A X方向レーザー光到達位置修正装置
7B Y方向レーザー光到達位置修正装置
9 ワークピース
9A 基材
9B 薄膜である導電膜
10 ワークピース移動装置
11 制御装置
12,12A,12C,12D レーザー光
13 透光板
30 微細パターン
31 ワークピースに設定される区域
32 セルパターン
50,60 ポリゴンミラー装置
51,61 ポリゴンミラー装置の多角形ミラー
A1〜A11 領域
C1〜C12 小領域
D1 大領域
D2 大領域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザー光を発振するレーザー発振器と、前記レーザー光で加工されるワークピースがセットされ、互いに直交するX方向とY方向のうち、少なくとも一方の方向へ前記ワークピースを移動させるためのワークピース移動装置と、を有し、このワークピース移動装置で移動し、かつ基材の表面に薄膜を設けることによって形成されている前記ワークピースの前記薄膜の一部を前記レーザー光により除去加工するレーザー加工装置において、
前記薄膜の一部を前記レーザー光により除去加工することによって前記ワークピースに形成される加工パターンは、微細パターンであり、
前記レーザー発振器と前記ワークピースとの間に配置され、前記レーザー光を前記ワークピースへ選択的に到達、不到達させるために作動する多数のセルを備えているとともに、これらのセルの選択的作動によってセルパターンが形成される可変マスクと、前記レーザー発振器、前記可変マスク及び前記ワークピース移動装置を制御するための制御装置と、を有し、
この制御装置の制御によって行われる前記レーザー発振器からの前記レーザー光の発振と、前記制御装置による前記ワークピース移動装置の制御によって行われる前記ワークピースの移動と、前記制御装置による前記可変マスクの前記多数のセルの個別的制御によって行われる前記セルパターンの変更とにより、前記ワークピースに前記微細パターンが形成されることを特徴とするレーザー加工装置。
【請求項2】
請求項1に記載のレーザー加工装置において、前記制御装置で制御される前記レーザー発振器からパルス光となって発振される前記レーザー光は、前記可変マスクのセル配置面のうち、前記セルパターンが形成される部分の全体に照射されることを特徴するレーザー加工装置。
【請求項3】
請求項2に記載のレーザー加工装置において、前記制御装置による前記ワークピース移動装置の制御によって行われる前記ワークピースの移動の距離が、前記一方の方向における前記部分の寸法と対応する距離又はこの距離よりも短い距離に達するごとに、前記制御装置は、前記レーザー発振器の制御を制御することにより、前記レーザー光を前記部分の全体に照射することを特徴とするレーザー加工装置。
【請求項4】
請求項3に記載のレーザー加工装置において、前記制御装置による前記ワークピース移動装置の制御によって行われる前記ワークピースの移動が連続移動となっていることを特徴とするレーザー加工装置。
【請求項5】
請求項1に記載のレーザー加工装置において、前記可変マスクのセル配置面のうち、前記セルパターンが形成される部分には、前記一方の方向に区分けされた複数個の領域が設定されており、前記制御装置で制御される前記レーザー発振器からパルス光となって発振された前記レーザー光の前記可変マスクへの照射は、このレーザー光が、前記複数個の領域を、一方の端部の領域側から他方の端部の領域側へ順番に走査することにより行われ、
前記制御装置は、前記レーザー光の照射が終了した領域に配置されている前記多数のセルによるパターンを、前記ワークピース移動装置による前記ワークピースの移動によってこのワークピースに前記微細パターンを形成するための次のパターンに変更することを開始し、
前記制御装置による前記ワークピース移動装置の制御によって行われる前記ワークピースの移動は断続移動であり、
前記レーザー光が、前記複数個の領域を、一方の端部の領域側から他方の端部の領域側へ順番に走査するごとに、前記制御装置が前記ワークピース移動装置を制御することにより、前記ワークピースは、前記一方の方向における前記部分の寸法と対応する距離又はこの距離よりも短い距離を移動することを特徴とするレーザー加工装置。
【請求項6】
請求項5に記載のレーザー加工装置において、前記レーザー発振器と前記可変マスクとの間には、前記制御装置により制御され、前記レーザー光を前記可変マスクに照射するためのポリコンミラー装置が配置されており、このポリゴンミラー装置の多角形ミラーの一方向への回転により、前記レーザー光が、前記複数個の領域を、前記一方の端部の領域側から前記他方の端部の領域側へ順番に走査することを特徴とするレーザー加工装置。
【請求項7】
請求項1に記載のレーザー加工装置において、前記制御装置で制御される前記レーザー発振器からパルス光となって発振されて前記可変マスクに照射される前記レーザー光は、前記一方の方向に分割された2個のレーザー光となっており、
前記可変マスクのセル配置面のうち、前記セルパターンが形成される部分には、前記一方の方向における寸法が同じになっていて、この一方の方向に区分けされた偶数個の小領域が設定され、これらの小領域のうち、前半の複数個の小領域により前半の大領域が形成されているとともに、この前半の小領域の個数と同数になっている後半の小領域により後半の大領域が形成されており、パルス光となっている前記2個のレーザー光の前記可変マスクへの照射は、これらのレーザー光が、前記偶数個の小領域を、前記前半の大領域と前記後半の大領域とについて、一方の端部の小領域側から他方の端部の小領域側へ順番に走査することにより行われ、
前記制御装置は、前記レーザー光の照射が終了した小領域に配置されている前記多数のセルによるパターンを、前記ワークピース移動装置による前記ワークピースの移動によってこのワークピースに前記微細パターンを形成するための次のパターンに変更することを開始し、
前記制御装置による前記ワークピース移動装置の制御によって行われる前記ワークピースの移動は連続移動であり、
前記2個のレーザー光が、前記偶数個の小領域のうち、前記前半の大領域と前記後半の大領域のそれぞれ1個の小領域を同時に照射するごとに、前記制御装置は前記ワークピース移動装置に、前記ワークピースが前記一方の方向における前記小領域の寸法の2倍に対応する距離又はこの距離よりも短い距離を移動することを行わせることを特徴とするレーザー加工装置。
【請求項8】
請求項7に記載のレーザー加工装置において、前記レーザー発振器と前記可変マスクとの間には、前記制御装置により制御され、前記2個のレーザー光を前記可変マスクに照射するためのポリコンミラー装置が配置されており、このポリゴンミラー装置の多角形ミラーの一方向への回転により、前記2個のレーザー光が、前記偶数個の小領域を、前記前半の大領域と前記後半の大領域とについて、前記一方の端部の小領域側から前記他方の端部の小領域側へ順番に走査することを特徴とするレーザー加工装置。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれかに記載のレーザー加工装置において、前記可変マスクと前記ワークピース移動装置との間には、前記レーザー光が前記ワークピースに到達する位置を、前記ワークピース移動装置による前記ワークピースの移動の真直度誤差が修正された位置とするためのレーザー光到達位置修正装置が配置されていることを特徴とするレーザー加工装置。
【請求項10】
請求項9に記載のレーザー加工装置において、前記レーザー光到達位置修正装置は、前記レーザー光が通過可能であってこのレーザー光に対する傾き角度が調整可能となった透光板を含んで構成されていることを特徴とするレーザー加工装置。
【請求項11】
請求項10に記載のレーザー加工装置において、前記制御装置による前記ワークピース移動装置の制御によって行われる前記ワークピースの移動は、前記X方向と前記Y方向の両方の移動であり、
前記レーザー光到達位置修正装置には、前記レーザー光の進行方向に並設されたX方向用レーザー光到達位置修正装置とY方向用レーザー光到達位置修正装置とがあり、前記X方向用レーザー光到達位置修正装置の前記透光板は、前記X方向に対する傾き角度が調整可能となっており、前記Y方向用レーザー光到達位置修正装置の前記透光板は、前記Y方向に対する傾き角度が調整可能となっていることを特徴とするレーザー加工装置。
【請求項12】
請求項1〜11のいずれかに記載のレーザー加工装置において、前記制御装置による前記ワークピース移動装置の制御によって行われる前記ワークピースの移動は、前記X方向と前記Y方向の両方の移動であり、
前記制御装置が前記ワークピース移動装置に行う制御は、前記ワークピースが、前記可変マスクのセル配置面のうち、前記セルパターンが形成される部分のX方向寸法と対応する距離よりも長い距離を前記X方向に前進移動した後に、前記ワークピースが、前記部分のY方向寸法と対応する距離又はこの距離よりも短い距離を前記Y方向に前進移動し、次いで、前記ワークピースが、前記部分のX方向寸法と対応する距離よりも長い距離を前記X方向に後退移動することを行わせる制御であることを特徴とするレーザー加工装置。
【請求項13】
請求項1〜12のレーザー加工装置において、前記可変マスクの前記セルはミラーによって形成されていることを特徴とするレーザー加工装置。
【請求項14】
請求項1〜12のレーザー加工装置において、前記可変マスクの前記セルは液晶によって形成されていることを特徴とするレーザー加工装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate

【図18】
image rotate

【図19】
image rotate

【図20】
image rotate

【図21】
image rotate

【図22】
image rotate

【図23】
image rotate

【図24】
image rotate

【図25】
image rotate

【図26】
image rotate


【公開番号】特開2012−96246(P2012−96246A)
【公開日】平成24年5月24日(2012.5.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−244165(P2010−244165)
【出願日】平成22年10月29日(2010.10.29)
【出願人】(303018056)株式会社ユーアイテック (1)
【Fターム(参考)】