説明

レーザー溶接可能な熱可塑性ポリマー組成物、およびレーザー溶接するための方法

着色することができ、レーザー溶接用途での使用に適した熱可塑性ポリマー組成物、およびそれから作製された物体をレーザー溶接するための方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、着色することができ、レーザー溶接用途での使用に適した熱可塑性ポリマー組成物に関する。本発明は、さらに熱可塑性ポリマー組成物を含む物体をレーザー溶接するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
多くの場合、より複雑な部品に機械的に組み立てることができる成形プラスチック部品を生成することが望ましい。通常、プラスチック部品は、一緒に糊付けし、もしくはボルトで締めることによって、またはスナップ嵌め結合を使用することによって組み立てられる。これらの方法は、組立てプロセスに複雑な追加のステップを加える恐れがあるという欠点がある。スナップ嵌め結合は、気密および液密でないことが多く、複雑な設計が必要である。より新しい技法は、振動および超音波溶接であるが、これらは、複雑な部品設計および溶接装置も必要とする恐れがある。さらに、該プロセスによる摩擦によって、部品の内側を汚染する恐れがある塵埃が生じる恐れがある。これは、感受性の高い電気または電子部品が含まれるとき特有の問題である。
【0003】
さらに最近になって開発された技法は、レーザー溶接である。この方法では、接合させる2つのポリマー物体は、使用レーザー波長において異なる光透過レベルを有する。一物体は、レーザー光の波長に対して少なくとも部分的に透明である(「相対的に透明な」物体と呼ばれる)が、同時に第2の部分は、入射光のかなりの部分を吸収する(「相対的に不透明な」物体と呼ばれる)。物体はそれぞれ、接合面を提供し、相対的に透明な物体は、その接合面の反対側の衝突面を提供する。接合面は接触されており、したがって接合部が形成される。レーザー光線は、相対的に透明な物体の衝突面に向けられ、したがって第1の物体を通過し、第2の物体の接合面を照射し、第1および第2の物体が接合面の接合部において溶接される。一般に、参照により本明細書に援用される米国特許公報(特許文献1)を参照のこと。この方法は、非常に清浄で、簡易で、かつ速い場合があり、非常に強く、容易に再生産可能な溶接部、および際立った設計融通性を提供する。
【0004】
レーザー溶接にとっての欠点は、相対的に不透明な物体は、レーザー光の波長において光を吸収する材料を含まなくてはならないことである。レーザー光吸収性材料は、通常はカーボンブラックなどの顔料、またはニグロシンなどの黒色染料である。これらの材料の存在によって、通常は相対的に不透明な物体が、他の色の着色剤も存在しているときでさえ黒色になる。しかし、多くの場合、レーザー溶接物品の相対的に不透明な部分は、自然色を有し、または黒色以外の、白色を含む色で着色されていることが望まれている。したがって、その自然色、または黒色以外の色で使用されて、レーザー溶接方法で使用される相対的に不透明な物体を形成することができるポリマー組成物を得ることが望ましい。
【0005】
米国特許公報(特許文献2)は、レーザーに対して透明な熱可塑性材料および1つまたは複数の選択されたIR吸収化合物を含む熱可塑性成形組成物を開示している。この組成物は、カーボンブラック含量が0.1重量パーセント未満である。
【0006】
【特許文献1】米国特許第5,893,959号明細書
【特許文献2】米国特許出願公開第2003/0130381号明細書
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0007】
簡潔に述べると、本発明の一態様によれば、
(a)約17〜約99.5重量パーセントの熱可塑性ポリマー;
(b)約0.003〜約0.05重量パーセントのカーボンブラック;
(c)約0.4〜約10重量パーセントの二酸化チタン、硫化亜鉛、および酸化亜鉛の1つまたは複数から選択された鉱物;
(d)0〜約70重量パーセントの補強剤および/または無機充填剤;
(e)0〜約70重量パーセントの添加剤;ならびに
(f)0〜約3重量パーセントの1つまたは複数の着色剤
を含むポリマー組成物であって、
上記の重量百分率が、組成物の全重量を基準にしたものである組成物が提供される。
【0008】
本発明の別の態様によれば、レーザー放射線を使用して、第1のポリマー物体を第2のポリマー物体に溶接するための方法であって、前記第1のポリマー物体が、前記レーザー放射線に対して相対的に透明であり、前記第2の物体が、前記レーザー放射線に対して相対的に不透明であり、前記第1および第2の物体がそれぞれ、接合面を提供し、前記第1の物体が、その前記接合面の反対側の衝突面を提供し、前記方法が、(1)前記第1および第2の物体の接合面を、その間に接合部が形成されるように物理的に接触させるステップと、(2)前記第1および第2の物体に前記レーザー放射線を照射して、したがって前記レーザー放射線が衝突面に衝突し、前記第1の物体を通過し、前記第2の物体の前記接合面に照射して、前記第1および第2の物体が接合面の接合部において溶接されるステップとを含み、前記第2のポリマー物体が、
(a)約17〜約99.5重量パーセントの熱可塑性ポリマー;
(b)約0.003〜約0.05重量パーセントのカーボンブラック;
(c)約0.4〜約10重量パーセントの二酸化チタン、硫化亜鉛、および酸化亜鉛の1つまたは複数から選択された鉱物;
(d)0〜約70重量パーセントの補強剤および/または無機充填剤;
(e)0〜約70重量パーセントの添加剤;ならびに
(f)0〜約3重量パーセントの1つまたは複数の着色剤
を含む熱可塑性ポリマー組成物から形成され、
上記の重量百分率が、組成物の全重量を基準にしたものである方法が提供される。
【0009】
本発明の別の態様によれば、上記の組成物で作製された物品が提供される。これには、電気または電子センサー用のハウジング、玩具、医療装置、および印刷機、複写機、またはファックス機器用の部品が含まれるが、これらに限定されない。本発明の別の態様は、上記の方法で作製されたレーザー溶接物品である。これには、電気または電子センサー用のハウジング、玩具、医療装置、および印刷機、複写機、またはファックス機器用の部品が含まれるが、これらに限定されない。
【0010】
本発明は、添付図面と照らし合わせて、下記の詳細な説明からさらに完全に理解されよう。
【0011】
本発明を、好ましいその実施形態に関連して記載してきたが、本発明をその実施形態に限定するものではないことが理解されよう。一方、添付の特許請求の範囲によって定義されるように本発明の趣旨および範囲内に包含され得る代替形態、変更形態、および等価形態をすべて、包含するものとする。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明の組成物は、少なくとも1つの熱可塑性ポリマー、約0.003〜約0.05重量パーセントのカーボンブラック、および約0.5〜約10重量パーセントの二酸化チタン、硫化亜鉛、および酸化亜鉛の1つまたは複数から選択された鉱物を含む。本発明の組成物は、着色することができ、レーザー溶接方法で使用される非黒色の相対的に不透明な物体を形成するために使用してもよい。組成物は、その自然色で使用され、あるいは組成物に黒色以外の色を付与する染料および/または顔料などの着色剤を含有して使用される。「着色することができる」は、適切な量の非黒色の着色剤を含有するとき、組成物が白色を含めて、色を有する、すなわち黒色以外であることを意味する。「自然色」は、前記カーボンブラック、ならびに二酸化チタン、硫化亜鉛、および酸化亜鉛の1つまたは複数から選択された鉱物以外の染料、顔料、または他の着色剤が添加されていない組成物の色を意味する。
【0013】
適切な熱可塑性ポリマーの例としては、ポリアセタール、ポリエステル、液晶性ポリエステル、ポリアミド、ポリカーボネート、アクリロニトリル(acrylanitrile)−ブタジエン−スチレンポリマー(ABS)、ポリ(フェニレンオキシド)、ポリ(フェニレンスルフィド)、ポリスルホン、ポリアリーレート、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリエーテルケトンケトン(PEKK)、ポリスチレン、シンジオタクチックポリスチレン、ポリエチレン、ポリプロピレンが挙げられるが、これらに限定されない。ポリアセタール、ポリエステル、およびポリアミドが類好ましい。
【0014】
ポリアセタールは、1つまたは複数のホモポリマー、コポリマー、またはその混合物とすることができる。ホモポリマーは、ホルムアルデヒド、および/またはホルムアルデヒドの環状オリゴマーなどのホルムアルデヒド等価物を重合させることによって調製される。ホルムアルデヒドおよび/またはホルムアルデヒド等価物に加えて、コポリマーは、ポリアセタールを調製する際に一般に使用される1つまたは複数のコモノマーに由来する。一般的に使用されるコモノマーには、連続した2〜12個の炭素原子を有するエーテル単位のポリマー鎖への組込みをもたらすアセタールおよび環状のエーテルが含まれる。コポリマーが選択される場合、コモノマーの量は、20重量パーセントを超えず、好ましくは15重量パーセント以下、最も好ましくは約2重量パーセントである。好ましいコモノマーは、1,3−ジオキソラン、エチレンオキシド、およびブチレンオキシドであり、1,3−ジオキソランがより好ましい。好ましいポリアセタールコポリマーは、コモノマーの量が約2重量パーセントであるコポリマーである。ホモポリマーおよびコポリマーは、1)末端のヒドロキシ基が化学反応によってエンドキャップされて、エステルまたはエーテル基を形成するホモポリマー;あるいは2)完全にはエンドキャップされておらず、コモノマー単位からの遊離のヒドロキシ末端をいくらか有し、あるいはエーテル基で終端されているコポリマーであることも好ましい。ホモポリマー用の好ましい末端基は、アセテートおよびメトキシであり、コポリマー用の好ましい末端基は、ヒドロキシおよびメトキシである。
【0015】
適切な熱可塑性ポリアミド類は、ジカルボン酸およびジアミン、および/またはアミノカルボン酸の縮合生成物、ならびに/または環状ラクタムの開環重合生成物とすることができる。適切なジカルボン酸には、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカン二酸、イソフタル酸、およびテレフタル酸が含まれる。適切なジアミンには、テトラメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、オクタメチレンジアミン、ノナメチレンジアミン、ドデカメチレンジアミン、デカメチレンジアミン、2−メチルペンタメチレンジアミン、2−メチルオクタメチレンジアミン、トリメチルヘキサメチレンジアミン、ビス(p−アミノシクロヘキシル)メタン、m−キシリレンジアミン、およびp−キシリレンジアミンが含まれる。適切なアミノカルボン酸は、11−アミノドデカン酸である。適切な環状ラクタムは、カプロラクタムおよびラウロラクタムである。好ましいポリアミドには、ポリアミド6;ポリアミド6,6;ポリアミド4,6;ポリアミド6,10;ポリアミド6,12;ポリアミド11;ポリアミド12などの脂肪族ポリアミド;ポリ(m−キシリレンアジパミド)(ポリアミドMXD,6)、ポリ(ドデカメチレンテレフタルアミド)(ポリアミド12,T)、ポリ(デカメチレンテレフタルアミド)(ポリアミド10,T)、ポリ(ノナメチレンテレフタルアミド)(ポリアミド9,T)、ヘキサメチレンアジパミド−ヘキサメチレンテレフタルアミドコポリアミド(ポリアミド6,T/6,6)、ヘキサメチレンテレフタルアミド−2−メチルペンタメチレンテレフタルアミドコポリアミド(ポリアミド6,T/D,T)などの半芳香族ポリアミド;ならびにこれらのポリマーのコポリマーおよび混合物が含まれる。
【0016】
好ましい熱可塑性ポリエステル(大部分またはすべて、エステル連結基を有する)は、通常1つまたは複数のジカルボン酸(またはエステルなど、その誘導体)と1つまたは複数のジオールに由来する。好ましいポリエステルでは、ジカルボン酸は、テレフタル酸、イソフタル酸、および2,6−ナフタレンジカルボン酸の1つまたは複数を含み、ジオール成分は、HO(CH2nOH(I)、1,4−シクロヘキサンジメタノール、HO(CH2CH2O)mCH2CH2OH(II)、およびHO(CH2CH2CH2CH2O)zCH2CH2CH2CH2OH(III)(式中、nは2〜10の整数であり、mは平均して、1〜4であり、zは、平均して約7〜約40である)の1つまたは複数を含む。(II)および(III)は、化合物の混合物でもよく、mおよびzはそれぞれ、変化してもよく、mおよびzは平均値であるので、整数である必要はないことに留意されたい。熱可塑性ポリエステルを形成するために使用され得る他の二価酸には、セバシン酸およびアジピン酸が含まれる。ヒドロキシ安息香酸などのヒドロキシカルボン酸をコモノマーとして使用することができる。特有の好ましいポリエステルには、ポリ(エチレンテレフタレート)(PET)、ポリ(1,3−プロピレンテレフタレート)(PPT)、ポリ(1,4−ブチレンテレフタレート)(PBT)、ポリ(エチレン2,6−ナフトエート(napthoate))、ポリ(1,4−シクロヘキシルジメチレンテレフタレート(PCT);ポリ(1,4−ブチレンテレフタレート)およびポリ(テトラメチレンエーテル)グリコールブロックを有する熱可塑性エラストマー性ポリエステル(本願特許出願人からハイトレル(HYTREL)(登録商標)として入手可能)、ならびに上記のジオールおよび/またはジカルボン酸のいずれかを有するこれらのポリマーのいずれかのコポリマー含まれる。適切なポリエステルには、液晶性ポリエステルも含まれる。
【0017】
熱可塑性ポリマーは、組成物の全重量を基準にして約17〜約99.5重量パーセント、好ましくは約25〜約99重量パーセントで存在する。
【0018】
組成物は、組成物の全重量を基準にして約0.003〜約0.05重量パーセント、好ましくは約0.003〜約0.04重量パーセント、より好ましくは約0.003〜約0.01重量パーセントのカーボンブラックを含む。
【0019】
組成物は、約0.4〜約10重量パーセント、好ましくは約1〜約5重量パーセントの、二酸化チタン、硫化亜鉛、および酸化亜鉛の1つまたは複数から選択された鉱物をさらに含む。
【0020】
組成物は、任意選択的に約3.0重量パーセントまで、好ましくは約0.01〜1重量パーセントの1つまたは複数の着色剤をさらに含むことができる。好ましい着色剤には、顔料および染料が含まれる。着色剤は黒色でないことが好ましい。好ましい染料には、フタロシアニン、アゾ(モノアゾ(monoazom)およびアゾメチンを含めて)、アントロキノン、ナフタロイミド、メチン、ジオキサジン、ペリレン、ペリノン、キノリン、ベンゾアントロン、キナクリドン、およびベンゾイミダゾロン染料などが含まれる。
【0021】
本発明の組成物は、任意選択的に、上記の成分に加えて、造核剤、熱安定剤、酸化防止剤、UV光安定剤、滑剤、離型剤、難燃剤、および耐衝撃性改良剤などの添加剤を含むことができる。組成物は、任意選択的に、ガラス繊維および/または無機充填剤などの補強剤もさらに含むことができる。
【0022】
添加剤は、使用されるとき、組成物の全重量を基準にして約0〜約70重量パーセント、好ましくは約5〜約50重量パーセントで存在する。無機充填剤および補強剤は、使用されるとき、組成物の全重量を基準にして約0〜約70重量パーセント、または好ましくは約5〜約50重量パーセントで存在する。
【0023】
本発明の組成物は、溶融混合ブレンドの形態にあり、ポリマー成分のすべてが、相互内に十分に分散し、非ポリマー材料のすべてが、ポリマーマトリックスに均質に分散し、それによって結合され、したがってブレンドが統一された全体を成す。ブレンドは、任意の溶融混合方法を使用して、成分材料を化合させることによって得ることができる。単軸または二軸押出機、ブレンダ、混練機、バンバリーミキサーなどの溶融ミキサーを使用して、成分材料を混合して、樹脂組成物を得ることができる。あるいは、材料の一部分を溶融ミキサーで混合することができ、次いで残りの材料を添加し、さらに溶融混合することができる。本発明の組成物の製造において混合順序は、当業者によって理解されるように、個々の成分が1回で溶融され得るか、あるいは充填剤および/または他の成分がサイドフィーダなどから供給され得るようにすることができる。
【0024】
例えば、射出成形、ブロー成形、射出ブロー成形、または押出など、当業者に知られている方法を使用して、本発明の組成物を物体に形成することができる。本発明の組成物を含む物体を、他の物体にレーザー溶接することができ、レーザー溶接方法において相対的に透明な物体、または好ましくは相対的に不透明な物体、あるいは両方とすることができる。本発明のレーザー溶接方法での使用に好ましいレーザーは、約800nm〜約1200nmの範囲内の波長を有する光を発する任意のレーザーである。好ましいレーザーのタイプの例は、YAGおよびダイオードレーザーである。
【0025】
レーザー溶接方法で使用される相対的に透明な物体は、自然色を有することができ、またはレーザー溶接するために使用される光の波長に対して十分に透明である染料を含有することができる。このような染料は、例えばアントラキノン系染料を含むことができる。
【0026】
本発明は、本発明の方法で作製された任意のレーザー溶接物品も包含する。有用な物品は、電気および電子センサーのハウジングなどの自動車部品;印刷機、複写機、ファックス機器などのオフィス機器用の部品;コンベヤーなどの工業設備用の部品;医療装置用の部品;ならびに玩具やスポーツ用品などの消費者物品用の部品である。
【実施例】
【0027】
(試料の調製)
表1および2に示す材料を単軸押出機で溶融混合することによって、実施例および比較例で使用される組成物を調製した。
【0028】
表1では、「ポリアセタール」は、本願特許出願人から供給された、ポリアセタールコポリマーであるデルリン(Delrin)(登録商標)460を指す。表2では、「ポリアミド」は、本願特許出願人から供給された、ポリアミド6,6であるザイテル(ZYTEL)(登録商標)101L NC010を指す。表1では、「青色顔料」は、フタロシアニンブルーを指し、「紫色顔料」は、ジオキサジンバイオレット顔料を指す。
【0029】
組成物を、レーザー溶接するための試験バーに成形した。得られたバーの色を目視評価した。それを表1および2に示す。
【0030】
(レーザー溶接強度)
図1〜3は、実施例2〜9および比較例2〜6について本願明細書で報告されているようにレーザー溶接性および溶接強度を測定するために使用された典型的な試験片11の幾何形状を示す。試験片11は、形状が略長方形であり、寸法が70mm×18mm×3mmであり、一端において深さ20mmの半重ねであった。半重ねは、接合面13および蹴上げ15によって画定される。
【0031】
図4では、試験片11’は、相対的に透明なポリマー試験片であり、試験片11”は、相対的に不透明なポリマー試験片であり、試験片(11’および11”)はそれぞれ、上記に記載する典型的な試験片11の形および寸法を有する。試験片11’および11”の接合面13’および13”をそれぞれ、その間に接合部17が形成されるように接触させて配置した。相対的に透明な試験片11’は、矢印方向Aに移動するレーザー放射線19によって衝突される衝突面14’を画定する。レーザー放射線19は、相対的に透明な試験片11’を通過し、相対的に不透明な試験片11”の接合面13”を照射し、それによって試験片11’および11”が、試験バー21を形成するように接合部17において一緒に溶接された。
【0032】
(実施例2〜9および比較例2〜6)
実施例2〜9および比較例2〜6に対応する樹脂組成物を、相対的に不透明な試験片11”に成形した。実施例2〜4および比較例2〜5の場合は、デルリン(Delrin)(登録商標)460を相対的に透明な試験片11’に成形した。実施例5〜10および比較例6の場合は、ザイテル(ZYTEL)(登録商標)101L NC010を相対的に透明な試験片11’に成形した。
【0033】
それぞれの場合、試験片11’および11”を、上記に記載するようにクランプ圧0.3MPaで一緒に溶接して、試験バー21を形成した。ロフィン・ジナー・レーザー(Rofin−Sinar Laser GmbH)940nm ダイオードレーザーからレーザー放射線を発した。レーザー光線を直径3mmに絞り、項目名「溶接速度」で表1および2に示す速度で、試験片11’および11”の幅に沿って1回通過させた。レーザー出力を、約50から455Wの間で変えた。
【0034】
得られた試験バー21の11’および11”の試験片を分離するのに必要とされた力は、島津製作所(Shimadzu Seisakusho)によって製造された島津オートグラフ(Shimadzu Autograph)試験機を使用して、試験バーの肩部においてクランプ締めを行い、引張力を試験バーの長手方向に加えて決定した。試験機を速度2mm/分で操作した。表1および2に示されるように、試験片を分離するのに1kgfより大きい力が必要とされた場合、レーザー溶接可能であると見なされた。表1および2に示されるように、レーザー溶接中に試験片間に接着が生じなかった場合、レーザー溶接性がないと見なされた。表1および2に、各組成物に最適な溶接強度を提供する出力を「レーザー出力」という項目名で記載する。表1および2に、得られた溶接強度を「レーザー溶接強度」という項目名で記載する。
【0035】
(比較例1)
図5は、比較例1について本願明細書で報告されているようにレーザー溶接性および溶接強度を測定するために使用された比較例1の組成物から成形された相対的に不透明な試験片30の幾何形状を示す。試験片30は、形状が略長方形であり、寸法が40mm×20mm×3.2mmであった。図5は、比較例1について本願明細書で報告されているようにレーザー溶接性および溶接強度を測定するためにさらに使用された相対的に透明な試験片32の幾何形状も示す。試験片32は、デルリン(Delrin)(登録商標)460から成形され、形状が略長方形であり、寸法が40mm×20mm×1.6mmであった。試験片とその表面を、その間に接合部34が形成されるように互いに接触させて重ね合わせて、圧力0.3MPaでクランプ締めを行った。相対的に透明な試験片32は、矢印方向Aに移動するレーザー放射線19によって衝突される衝突面36を画定する。レーザー放射線19は、相対的に透明な試験片32を通過し、相対的に不透明な試験片30の表面を照射し、それによって試験片30および32が、試験バー38を形成するように接合部34において一緒に溶接されるように試みた。ロフィン・ジナー・レーザー(Rofin−Sinar Laser GmbH)940nm ダイオードレーザーからレーザー放射線を発した。レーザー光線を直径3mmに絞り、速度50〜500cm/分、出力200Wで、30および32の幅に沿って1回通過させた。レーザー溶接は不成功であり、試みた速度のいずれにおいても、結合が試験片30および32の間で形成されなかった。
【0036】
(実施例1)
図6および7は、実施例1の組成物から成形された相対的に不透明な試験片40の幾何形状を示す。試験片40は、コマ玩具の底部として働き、唇状部44を有する丸い開放椀状物体の形態にあった。図6〜8は、デルリン(Delrin)(登録商標)460から成形された相対的に透明な試験片42の幾何形状を示す。試験片42は、コマ玩具の蓋部として働き、中央開口部46および唇状部48を有する円盤である。照合番号50は、底部52および心棒54を有するコマ玩具のスピナーを指す。底部52を試験片40に挿入し、心棒54が開口部46を通り抜け、試験片42の底面が唇状部44の上面と接触しているように試験片42を試験片40の上に配置した。
【0037】
続いて、図6および7を参照して、試験片42を、試験片40に圧力0.3MPaでクランプ締めを行った。レーザー放射線19が、試験片42が唇状部44に接触している点において相対的に透明な試験片42を通過し、相対的に不透明な試験片40の表面に照射し、試験片40および42が溶接されるようになり、試験片56をコマ玩具の形態に形成した。溶融プロセス中、レーザー放射線を、その動きが速度150cm/分で円を描くように、試験片42の回りを一回放射状に通した。ロフィン・ジナー・レーザー(Rofin−Sinar Laser GmbH)940nm ダイオードレーザーからレーザー放射線を発した。レーザー光線を直径0.3mmに絞り、出力30Wで操作した。
【0038】
島津製作所(Shimadzu Seisakusho)によって製造された島津オートグラフ(Shimadzu Autograph)試験機を使用して、試験片56を円柱状のスチール製治具でクランプ締めし、下方方向で心棒54に力を加えることによって溶接強度を測定した。表1に、溶融試験片40および42を分離するのに必要な力を示す。
【0039】
したがって、本発明によれば、先に記載された目的および利点を完全に満足させるレーザー溶接可能な熱可塑性ポリマー組成物、およびレーザー溶接するための方法が提供されることは自明である。本発明を、特有のその実施形態に関連して記述してきたが、多くの代替形態、変更形態、および変形形態が当業者に自明であることは明らかである。したがって、添付の特許請求の範囲の趣旨および広い範囲内に入るこのような代替形態、変更形態、および変形形態をすべて包含するものとする。
【0040】
【表1】

【0041】
【表2】

【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】レーザー溶接性を決定し、溶接強度を測定するために本願明細書において使用された試験片11の側面図である。
【図2】レーザー溶接性を決定し、溶接強度を測定するために本願明細書において使用された試験片11の上平面図である。
【図3】レーザー溶接性を決定し、溶接強度を測定するために本願明細書において使用された試験片11の斜視図である。
【図4】それぞれの試験片の接合面を接触して配置され、一緒にレーザー溶接されるように配置された相対的に透明な試験片11’および相対的に不透明な試験片11”の斜視図である。
【図5】試験バー38を形成するように溶接されるときのレーザー溶接性を決定するために本願明細書において使用された相対的に透明な試験片32および相対的に不透明な試験片30の斜視図である。
【図6】試験片42が断面で示された、試験片40および42の分解図である。
【図7】接触して配置され、一緒にレーザー溶接されるように配置された相対的に透明な試験片42および相対的に不透明な試験片40の断面図である。
【図8】試験片42の上面図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリマー組成物であって、
(a)約17〜約99.5重量パーセントの熱可塑性ポリマー、
(b)約0.003〜約0.05重量パーセントのカーボンブラック、
(c)約0.4〜約10重量パーセントの二酸化チタン、硫化亜鉛、および酸化亜鉛の1つまたは複数から選択された鉱物、
(e)0〜約70重量パーセントの補強剤および/または無機充填剤、
(e)0〜約70重量パーセントの添加剤、ならびに
(f)0〜約3重量パーセントの1つまたは複数の着色剤
を含み、
上記の重量百分率が、組成物の全重量を基準にしたものであることを特徴とする組成物。
【請求項2】
約0.01〜約1.0重量パーセントの1つまたは複数の着色剤をさらに含むことを特徴とする請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記熱可塑性ポリマーが、ポリアミド、ポリアセタール、またはポリエステルの1つまたは複数であることを特徴とする請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
前記ポリアミドが、ポリアミド6;ポリアミド6,6;ポリアミド4,6;ポリアミド6,10;ポリアミド6,12;ポリアミド11;ポリアミド12;ポリアミドMXD,6、ポリアミド12,T、ポリアミド10,T、ポリアミド9,T、ポリアミド6,T/6,6、またはポリアミド6,T/D,Tの1つまたは複数であることを特徴とする請求項3に記載の組成物。
【請求項5】
前記ポリエステルが、ポリ(エチレンテレフタレート)(PET)、ポリ(1,3−プロピレンテレフタレート)(PPT)、ポリ(1,4−ブチレンテレフタレート)(PBT)、ポリ(エチレン 2,6−ナフトエート)、またはポリ(1,4−シクロヘキシルジメチレンテレフタレート(PCT)の1つまたは複数であることを特徴とする請求項3に記載の組成物。
【請求項6】
約5〜約50重量パーセントの1つまたは複数の補強剤または無機充填剤をさらに含むことを特徴とする請求項1に記載の組成物。
【請求項7】
約5〜約50重量パーセントの1つまたは複数の添加剤をさらに含むことを特徴とする請求項1に記載の組成物。
【請求項8】
請求項1に記載の組成物を含むことを特徴とする物品。
【請求項9】
電気または電子センサー用のハウジングの形態にあることを特徴とする請求項8に記載の物品。
【請求項10】
玩具の形態にあることを特徴とする請求項9に記載の物品。
【請求項11】
医療装置の形態にあることを特徴とする請求項9に記載の物品。
【請求項12】
レーザー放射線を使用して、第1のポリマー物体を第2のポリマー物体に溶接する方法であって、
前記第1のポリマー物体が、前記レーザー放射線に対して相対的に透明であり、前記第2の物体が、前記レーザー放射線に対して相対的に不透明であり、前記第1および第2の物体がそれぞれ、接合面を提供し、前記第1の物体が、その前記接合面の反対側の衝突面を提供し、
前記方法が、(1)前記第1および第2の物体の接合面を、その間に接合部が形成されるように物理的に接触させるステップと、(2)前記第1および第2の物体に前記レーザー放射線を照射して、したがって前記レーザー放射線が衝突面に衝突し、前記第1の物体を通過し、前記第2の物体の前記接合面に照射して、前記第1および第2の物体が接合面の接合部において溶接されるステップとを含み、
前記第2のポリマー物体が、
(a)約17〜約99.5重量パーセントの熱可塑性ポリマー、
(b)約0.003〜約0.05重量パーセントのカーボンブラック、
(c)約0.4〜約10重量パーセントの二酸化チタン、硫化亜鉛、および酸化亜鉛の1つまたは複数から選択された鉱物、
(d)0〜約70重量パーセントの補強剤および/または無機充填剤、
(e)0〜約70重量パーセントの添加剤、ならびに
(f)0〜約3重量パーセントの1つまたは複数の着色剤
を含む熱可塑性ポリマー組成物から形成され、
上記の重量百分率が、組成物の全重量を基準にしたものであることを特徴とする方法。
【請求項13】
前記熱可塑性ポリマー組成物が、約0.01〜約1重量パーセントの1つまたは複数の着色剤をさらに含むことを特徴とする請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記熱可塑性ポリマーが、ポリアミド、ポリアセタール、またはポリエステルの1つまたは複数であることを特徴とする請求項12に記載の方法。
【請求項15】
前記ポリアミドが、ポリアミド6;ポリアミド6,6;ポリアミド4,6;ポリアミド6,10;ポリアミド6,12;ポリアミド11;ポリアミド12;ポリアミドMXD,6、ポリアミド12,T、ポリアミド10,T、ポリアミド9,T、ポリアミド6,T/6,6、またはポリアミド6,T/D,Tの1つまたは複数であることを特徴とする請求項12に記載の方法。
【請求項16】
前記ポリエステルが、ポリ(エチレンテレフタレート)(PET)、ポリ(1,3−プロピレンテレフタレート)(PPT)、ポリ(1,4−ブチレンテレフタレート)(PBT)、ポリ(エチレン 2,6−ナフトエート)、またはポリ(1,4−シクロヘキシルジメチレンテレフタレート(PCT)の1つまたは複数であることを特徴とする請求項14に記載の方法。
【請求項17】
前記熱可塑性ポリマー組成物が、約5〜約50重量パーセントの1つまたは複数の補強剤または無機充填剤をさらに含むことを特徴とする請求項12に記載の方法。
【請求項18】
前記熱可塑性ポリマー組成物が、約5〜約50重量パーセントの1つまたは複数の添加剤をさらに含むことを特徴とする請求項12に記載の方法。
【請求項19】
請求項12に記載の方法によって作製されたことを特徴とするレーザー溶接物品。
【請求項20】
電気または電子センサー用のハウジングの形態にあることを特徴とする請求項19に記載のレーザー溶接物品。
【請求項21】
玩具の形態にあることを特徴とする請求項19に記載のレーザー溶接物品。
【請求項22】
印刷機、複写機、またはファックス機器用の部品の形態にあることを特徴とする請求項19に記載のレーザー溶接物品。
【請求項23】
医療装置の形態にあることを特徴とする請求項19に記載のレーザー溶接物品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公表番号】特表2008−521968(P2008−521968A)
【公表日】平成20年6月26日(2008.6.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−543367(P2007−543367)
【出願日】平成17年11月18日(2005.11.18)
【国際出願番号】PCT/US2005/042195
【国際公開番号】WO2006/080973
【国際公開日】平成18年8月3日(2006.8.3)
【出願人】(390023674)イー・アイ・デュポン・ドウ・ヌムール・アンド・カンパニー (2,692)
【氏名又は名称原語表記】E.I.DU PONT DE NEMOURS AND COMPANY
【Fターム(参考)】