説明

レーザ加工方法、及び、レーザ加工装置

【課題】 加工を高効率で行う。
【解決手段】 (a)第1のアライメントマークの位置を測定し、測定された第1のアライメントマークの位置に基づいて第1の加工位置を決定する。(b)第1のアライメントマークとは異なる第2のアライメントマークの位置を測定し、測定された第2のアライメントマークの位置に基づいて第2の加工位置を決定する。(c)工程(b)が行われている期間に、工程(a)で決定された第1の加工位置に基づいてレーザビームを走査する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加工対象物にレーザビームを照射して加工を行うレーザ加工方法、及び、レーザ加工装置に関する。
【背景技術】
【0002】
図7は、レーザビームを照射してパターニング加工を行う加工対象物であるパネル50の概略的な平面図である。
【0003】
パネル50上には、たとえばパターニング加工の始点または終点を示すアライメントマーク50a〜50hが画定されている。アライメントマーク50a〜50hのそれぞれの座標は、パネル50上に画定された座標系において、CADデータで与えられている。
【0004】
たとえばアライメントマーク50aと50bとを結ぶ線分上にレーザビームを照射してパターニングを行う。同様に、アライメントマーク50cと50d、50eと50f、50gと50hとを結ぶ線分上の領域にレーザビームを入射させてパターニングを行う。パターニング加工位置(レーザビーム入射位置)の座標も、パネル50上に画定された座標系において把握される。
【0005】
パネル50のパターニング加工は、従来たとえば以下の方法で行われていた。まず、パネル50をレーザパターニング装置のステージ上に載置し、レーザパターニング装置の座標系における実際のアライメントマークの座標を計測する。アライメントマークの座標計測は、ステージ上に載置されたパネル50のアライメントマーク部分を撮像し、画像処理を施すことによって行う。次に、レーザパターニング装置の座標系における実際のアライメントマークの座標より、パターニング加工位置(レーザビーム入射位置)の座標データを補正し、実際のパターニング加工位置をレーザパターニング装置の座標系において把握する。そして補正されたパターニング加工位置にレーザビームを入射させ、パターニング加工を行う。
【0006】
この際、アライメントマーク50a、50b間の加工位置の座標データの補正、把握を行って、レーザビームを入射させ、両アライメントマーク50a、50b間のパターニングを行い、その後、アライメントマーク50c、50d間、50e、50f間、50g、50h間の加工位置について同様の処理(補正及びレーザビーム照射)を繰り返す方法がある。
【0007】
また、アライメントマーク50a、50b間、50c、50d間、50e、50f間、50g、50h間のすべての加工位置の座標データの補正、把握を行った後、レーザビームの照射を開始し、前述のアライメントマーク50a〜50h間の複数の線分状部分のレーザパターニングをまとめて行う一括加工方法がある。
【0008】
しかしこれらの方法には加工に長時間を要するという問題点がある。
【0009】
たとえば図7に示すパネル50のパターニングを上記一括加工方法で実施する場合、アライメントマーク50a〜50hのうちの1つの座標計測に必要な時間は1.5秒である。また、レーザビーム照射開始位置にレーザビームが入射するようにビーム走査器を駆動し、2つのアライメントマーク間にレーザビームを入射させてパターニングを行うのに必要な時間は3秒である。このため前述の加工には24秒を要する。
【0010】
仮にアライメントマークが100個、パターニングすべき線分部分が50箇所存在した場合であれば、加工時間は300秒となる。
【0011】
加工対象物を撮影して被加工線を検出し、検出された被加工線に基づいて自動位置合わせを行い、被加工線上にレーザビームを照射して溶接を行うレーザ加工装置の発明が開示されている(たとえば、特許文献1参照)。自動位置合わせに際しては、レーザビームの焦点位置と、当該焦点位置から最も近い被加工線上の点との間のずれを算出し、両者を一致させる制御を行う。
【0012】
しかし特許文献1記載の技術を用いて行うレーザ加工も、加工に要する時間は長い。
【0013】
【特許文献1】特開平9−141474号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明の目的は、加工を高効率で行うことのできるレーザ加工装置を提供することである。
【0015】
また、高効率のレーザ加工方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明の一観点によれば、(a)第1のアライメントマークの位置を測定し、測定された該第1のアライメントマークの位置に基づいて第1の加工位置を決定する工程と、(b)前記第1のアライメントマークとは異なる第2のアライメントマークの位置を測定し、測定された該第2のアライメントマークの位置に基づいて第2の加工位置を決定する工程と、(c)前記工程(b)が行われている期間に、前記工程(a)で決定された第1の加工位置に基づいてレーザビームを走査する工程とを有するレーザ加工方法が提供される。
【0017】
また、本発明の他の観点によれば、(a)加工対象物上のアライメントマークの位置を測定し、測定された該アライメントマークの位置に基づいて加工位置を決定し記憶する工程と、(b)前記工程(a)で記憶された加工位置データのうち未加工の加工位置データの有無を判定する工程と、(c)前記工程(b)で未加工の加工位置データが有ると判定された場合、該加工位置にレーザビームを入射させ、無いと判定された場合、有ると判定されるまでレーザビームの入射を待機させる工程とを有するレーザ加工方法が提供される。
【0018】
更に、本発明の他の観点によれば、レーザビームを出射するレーザ光源と、加工対象物を保持するステージと、前記ステージに保持された加工対象物の表面の像を取得する第1の受光装置と、前記第1の受光装置によって取得された前記加工対象物の表面の像に基づいて、複数の入射目標位置を決定し記憶する制御装置と、前記制御装置から与えられる制御信号に基づいて、前記加工対象物上に、前記レーザ光源を出射したレーザビームを照射するビーム走査器とを有し、前記制御装置は、記憶された前記入射目標位置データのうちレーザビーム未入射の入射目標位置データの有無を判定し、有ると判定された場合、該入射目標位置にレーザビームが照射されるように前記ビーム走査器に制御信号を与え、無いと判定された場合、有ると判定されるまでレーザビームの入射を待機させるレーザ加工装置が提供される。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、加工を高効率で行うことの可能なレーザ加工装置を提供することができる。
【0020】
また、高効率のレーザ加工方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
図1は、実施例によるレーザ加工装置を示す概略図である。実施例によるレーザ加工装置は、レーザ光源10、アッテネータ11、マスク12、フォーカスレンズ13、レンズ移動機構14、ダイクロイックミラー15、ガルバノスキャナ16a、16b、CCDカメラ17a、17b、制御装置18、折り返しミラー23、及び加工テーブル20を含んで構成される。
【0022】
レーザ光源10が、制御装置18から送られるトリガ信号を受けて、パルスレーザビーム30を出射する。レーザ光源10は、たとえばNd:YAGレーザ発振器、及び非線形光学結晶を含む。パルスレーザビーム30は、たとえばNd:YAGレーザの2倍高調波である。
【0023】
パルスレーザビーム30は、アッテネータ11でエネルギを減衰された後、マスク12に入射する。マスク12は透光領域と遮光領域とを有し、パルスレーザビーム30の断面形状を整形する。マスク12で断面形状を整形されたパルスレーザビーム30は、フォーカスレンズ13、ダイクロイックミラー15を透過してガルバノスキャナ16aに入射する。
【0024】
ガルバノスキャナ16aは2枚の揺動鏡を含んで構成され、制御装置18からの制御信号を受けて当該揺動鏡が駆動されることにより、パルスレーザビーム30を2次元方向に走査して出射することができる。パルスレーザビーム30は、ガルバノスキャナ16aで出射方向を変化されて、加工テーブル20上に載置されたパネル50に入射する。
【0025】
パネル50は、たとえば図7に示した、たとえばパターニング加工の始点または終点を示すアライメントマーク50a〜50hが画定されたパネルである。パネル50の、アライメントマーク50aと50bとを結ぶ線分上にパルスレーザビーム30を照射してパターニング加工を行う。同様に、アライメントマーク50cと50d、50eと50f、50gと50hとを結ぶ線分上の領域にレーザビームを入射させてパターニング加工を行う。
【0026】
レンズ移動機構14は、フォーカスレンズ13を、パルスレーザビーム30の光軸方向(進行方向)に移動可能に保持する。レンズ移動機構14によるフォーカスレンズ13の移動の制御は、制御装置18の信号により行われる。フォーカスレンズ13の移動により、パネル50上におけるパルスレーザビーム30の入射位置が変化しても、パルスレーザビーム30はパネル50上に焦点を結んで入射する。
【0027】
パネル50に入射するパルスレーザビーム30と逆の経路を進行する光が、ガルバノスキャナ16aを経由してダイクロイックミラー15で反射され、CCDカメラ17aで受光される。これによってパルスレーザビーム30入射位置近傍の像を得ることができる。
【0028】
ガルバノスキャナ16bも、ガルバノスキャナ16aと同様、2枚の揺動鏡を含んで構成され、制御装置18からの制御信号を受けて揺動鏡が駆動される。CCDカメラ17bは、ガルバノスキャナ16b及び折り返しミラー23を介して、パネル50上のアライメントマーク50a〜50hを撮像することができる。
【0029】
加工テーブル20は、制御装置18からの制御信号を受けて、パネル50を図の上下方向(パネル50の面内方向と交差する方向、たとえばパネル50の法線方向)に移動させることができる。これによりCCDカメラ17a、17bの焦点合わせを行うことができる。レーザ光源10の光軸とCCDカメラ17aの光軸は一致している。制御装置18は、レーザ光源10とCCDカメラ17a、17bの位置座標のマップをもっており、三者の座標系は一致している。CCDカメラ17a、17bで撮影された像のデータは制御装置18に送信され、レーザパターニング加工の制御に用いられる。
【0030】
図2(A)及び(B)は、実施例によるレーザ加工装置を用いたレーザパターニング方法(実施例によるレーザ加工方法)を説明するためのフローチャートである。
【0031】
パネル50上のアライメントマーク50a〜50hのそれぞれの座標は、パネル50上に画定された座標系によって、CADデータで与えられており、それらは制御装置18の記憶領域に記憶されている。
【0032】
図2(A)に、ガルバノスキャナ16b及びCCDカメラ17bを用いて実施する工程を示す。
【0033】
まず、ステップS101において、アライメントマーク位置計測が行われる。ステップS101では、図1に示したレーザ加工装置の加工テーブル20上に載置されたパネル50のアライメントマーク50a、50bをCCDカメラ17bで撮像し、撮像した画像データを制御装置18に送信する。制御装置18はこの画像データを処理し、レーザ加工装置の座標系における実際のアライメントマーク50a、50bの位置座標を計測する。
【0034】
次に、ステップS102において、アライメントマーク補正が行われる。ステップS101において計測された実際のアライメントマーク50a、50bの位置座標を基に、制御装置18の記憶領域に記憶されているアライメントマーク50a、50bの座標が補正される。
【0035】
続いて、ステップS103において、アライメント補正済み加工位置算出が行われる。このステップでは、ステップS102で補正されたアライメントマーク50a、50bの座標(レーザ加工装置の座標系における実際のアライメントマーク50a、50bの座標)より、アライメントマーク50aと50bとを結ぶ線分上の複数の点(パターニング加工位置、レーザビーム入射位置)の座標データを算出し、実際のパターニング加工位置をレーザ加工装置の座標系において把握する。算出、把握された加工位置のデータは制御装置18の記憶領域に記憶される。
【0036】
ステップS104においては、全点計測判定が行われる。パネル50上のすべてのアライメントマーク50a〜50hの位置が計測されている場合、ガルバノスキャナ16b及びCCDカメラ17bを用いて実施する工程は完了する。パネル50上に未計測のアライメントマーク50a〜50hがある場合、再びステップS101から同様の工程が繰り返される。たとえば次のループのステップS101においては、レーザ加工装置の座標系における実際のアライメントマーク50c、50dの位置座標が計測される。
【0037】
ステップS101〜ステップS104に示す工程が各1回行われるのに必要な時間はたとえば3秒である。
【0038】
図2(B)に、レーザ光源10からパルスレーザビーム30を出射し、ガルバノスキャナ16aを駆動して行う工程を示す。
【0039】
まず、ステップS105において、未加工の補正済み加工位置データの有無を判定する。補正済み加工位置データとは、ステップS103で算出された、2つのアライメントマーク間を結ぶ線分上の点(パターニング加工位置、レーザビーム入射位置)の座標データである。
【0040】
未加工の補正済み加工位置データが制御装置18の記憶領域に記憶されていない場合、ステップS107において全点加工判定が行われる。全点加工判定はパネル50上のすべてのアライメントマーク50a〜50hに係る加工が完了したか否かを判定する工程である。
【0041】
完了したと判定された場合、ガルバノスキャナ16aを駆動して行う工程は完了する。未完了であると判定された場合、ステップS105に戻って再び未加工の補正済み加工位置データの有無が判定される。
【0042】
ステップS105で未加工の補正済み加工位置データが有ると判定された場合、ステップS106に進み、パルスレーザビーム30を照射して行うパターニング加工が開始される。
【0043】
ステップS106においては、制御装置18からレーザ光源10にトリガ信号が入力されるとともに、ガルバノスキャナ16aに制御信号が送信される。パルスレーザビーム30の入射位置の位置決めが行われ、パルスレーザビーム30が2つのアライメントマーク間のパターニング加工位置に入射し、パターニング加工が行われる。
【0044】
2つのアライメントマーク間のパターニング加工が終了したら、ステップS107に進んで全点加工判定が行われる。
【0045】
ステップS105〜ステップS107に示す工程が各1回行われるのに必要な時間はたとえば3秒である。
【0046】
上述の制御を行うことにより、実施例によるレーザ加工開始直後の3秒間には、ステップS101〜ステップS104が実施され、アライメントマーク50a、50bを撮像することで、両アライメントマーク50a、50bを結ぶ線分上の点(パターニング加工位置、レーザビーム入射位置)の座標データが算出される。
【0047】
次の3秒間には、ステップS101〜ステップS104に示す工程とステップS105〜ステップS107に示す工程とが並行して行われる。すなわち、アライメントマーク50c、50dを撮像することで、両アライメントマーク50c、50dを結ぶ線分上の点(パターニング加工位置、レーザビーム入射位置)の座標データが算出される一方で、パルスレーザビーム30がアライメントマーク50a、50b間のパターニング加工位置に照射され、パターニング加工が行われる。
【0048】
以下、同様である。
【0049】
更に、次の3秒間にも、ステップS101〜ステップS104に示す工程とステップS105〜ステップS107に示す工程とが並行して行われ、アライメントマーク50e、50fを撮像することで、両アライメントマーク50e、50fを結ぶ線分上の点(パターニング加工位置、レーザビーム入射位置)の座標データが算出される一方で、パルスレーザビーム30がアライメントマーク50c、50d間のパターニング加工位置に照射され、パターニング加工が行われる。
【0050】
そしてそれに続く3秒間にも、ステップS101〜ステップS104に示す工程とステップS105〜ステップS107に示す工程とが並行して行われ、アライメントマーク50g、50hを撮像することで、両アライメントマーク50g、50hを結ぶ線分上の点(パターニング加工位置、レーザビーム入射位置)の座標データが算出される一方で、パルスレーザビーム30がアライメントマーク50e、50f間のパターニング加工位置に照射され、パターニング加工が行われる。
【0051】
そして最後の3秒間には、ステップS105〜ステップS107に示す工程が実行され、パルスレーザビーム30がアライメントマーク50e、50f間のパターニング加工位置に照射されて、パターニング加工が行われる。
【0052】
実施例によるレーザ加工方法によれば、アライメントマーク50a、50b間、50c、50d間、50e、50f間、及び50g、50h間のパターニング加工を15秒で行うことができる。仮にアライメントマークが100個、パターニングすべき線分部分が50箇所存在した場合であれば、加工時間は153秒となる。先述したような従来技術を用いて同じ加工を行う場合に比べ、約半分の加工時間で加工を行うことができる。
【0053】
以下、応用例によるレーザ加工方法について述べる。応用例によるレーザ加工方法も、図2(A)及び(B)を参照して説明した制御を行う点においては、実施例によるレーザ加工方法と同じである。
【0054】
図3(A)及び(B)を参照して、応用例によるレーザ加工について説明する。
【0055】
図3(A)は、応用例によるレーザ加工の加工対象物であるパネル50を示す平面図である。パネル50は、たとえば太陽電池製造の一工程に現れるパネルである。パネル50には、線状の凹部50iが縦横に形成されている。縦方向に延びる凹部50iと横方向に延びる凹部50iとの交点の一部を、交点50u〜50yとして本図に示した。
【0056】
図3(B)に、図3(A)の3B−3B線に沿う断面図を示す。パネル50は、表面に複数の凹部50iが形成された厚さ0.5mm〜0.7mmのガラス基板50jと、ガラス基板50j表面上に形成された透明導電膜、たとえば厚さ0.1μm〜0.2μmのITO(Indium Tin Oxide)膜50kを含んで構成される。ITO膜50kは、ガラス基板50jの凹部50i内にも形成される。
【0057】
太陽電池製造のため、パルスレーザビーム30を凹部50i上方からパネル50に照射し、照射位置のITO膜50kの除去加工を行う。本図には、パルスレーザビーム30の照射により除去されるITO膜50kに右下がりの斜線を付して示した。パルスレーザビーム30は、凹部50iの長さ方向に沿って走査される。この結果、凹部50i内のITO膜50kを、凹部50iの長さ方向に連続的に除去するパターニング加工が行われる。
【0058】
図4(A)〜(E)を参照して応用例によるレーザ加工方法について説明する。
【0059】
図4(A)に、図3(A)に示した交点50uと交点50vとの間の領域を拡大して示す。パネル50の線状凹部50iのそれぞれは原則として直線的に形成されているが、例外的に直線状に形成されていない部分もある。
【0060】
パネル50の各線状凹部50i上の点の座標は、各線状凹部50iが直線的に形成されているものとして、パネル50上に画定された座標系によってCADデータで与えられており、それらは制御装置18の記憶領域に記憶されている。制御装置18は、まず縦方向に伸びる凹部50iと横方向に伸びる凹部50iの複数の交点の座標を、パネル50上に画定された座標系において求め、記憶領域に保存する。またはあらかじめ求められた交点の座標を記憶領域に保存しておいてもよい。
【0061】
次に、パネル50を、図1に示したレーザ加工装置の加工テーブル20上に載置し、交点50u及び50vをCCDカメラ17bで撮像して画像処理を行うことで計測し、偏差を求めて、CCDカメラ17bの座標系における実際の交点50u及び50vの座標を測定する。
【0062】
制御装置18は、両交点50u、50vを結んだ線分を加工目標線50zとして決定する。加工目標線50zは加工開始時に暫定的に定められるレーザパターニングの実施位置である。制御装置18は、加工目標線50zに沿ってパルスレーザビーム30が走査されるように、加工目標線50z上に複数の入射目標位置を設定する。設定された入射目標位置は、制御装置18の記憶領域に記憶される。
【0063】
凹部50iが直線的に形成されている場合であれば、凹部50iの幅方向の中心線Lと加工目標線50zとは一致する。レーザパターニング加工は、凹部50iの幅方向の中心線Lに沿って行うのが望ましい。
【0064】
交点50u及び50vの撮像から設定された入射目標位置の記憶までに要する時間はたとえば3秒である。
【0065】
加工目標線50z上に設定された入射目標位置が記憶されたら、制御装置18はレーザ光源10にトリガ信号を入力するとともに、ガルバノスキャナ16aに制御信号を送信して、ビーム照射位置の位置決めを行い、パルスレーザビーム30を加工目標線50z上の入射目標位置に入射させはじめる。
【0066】
図4(B)に、パルスレーザビーム30が入射する位置のパネル50を撮影するCCDカメラ17aの画界を示す。本図に示すのは、図4(A)に一点鎖線で囲んだ領域の画像である。図4(B)には、画界の中心Cとパルスレーザビーム30のビームスポットの中心Cとが一致する場合を示した。パルスレーザビーム30のビームスポットが入射した部分に加工線50mが形成される。加工線50mは、加工目標線50zに沿ってパルスレーザビーム30が走査されてパターニングされた部分である。
【0067】
図4(B)に示す画像は、CCDカメラ17aから制御装置18に送信される。制御装置18は、凹部50iのパターン及びその幅方向の中心線(中心位置)Lを検出する。そして中心線(中心位置)Lと画界中心C(ビームスポットの中心C、加工線50m)との幅方向における差dを算出する。
【0068】
図4(C)を参照する。制御装置18は、算出された差dに基づいてガルバノスキャナ16aに補正された制御信号を送信し、揺動鏡を駆動して、パルスレーザビーム30のパネル50上への入射位置を制御する。
【0069】
ガルバノ目標値は、差dに基づく補正が反映可能な段階において、加工目標線50z上の入射目標位置にパルスレーザビーム30を入射させるための揺動鏡のミラー角度を示す。現在値は、図4(B)に示した位置にパルスレーザビーム30を入射させたときの揺動鏡のミラー角度を示す。制御装置18は、ガルバノ目標値に、差dに対応する補正ミラー角度を加え、現在値を減じて算出した制御信号(指令値)を、ガルバノスキャナ18に送信する。ガルバノスキャナ18の駆動により、現在の入射位置(図4(B)に示したビーム入射位置)から、算出された制御信号(指令値)による入射位置までパルスレーザビーム30が走査される。
【0070】
なお、制御信号(指令値)が算出されるまでは、入射目標位置にパルスレーザビーム30を入射させる。
【0071】
このような制御を行いながら、交点50uと交点50vとの間の凹部50iにパルスレーザビーム30を照射してパターニングが実施される。上記制御を行うことで、パルスレーザビーム30の入射位置(ビームスポットの中心C、加工線50m)と、凹部50iの幅方向の中心線(中心位置)Lとの差を小さくすることができ、凹部50iの幅方向の中心線(中心位置)Lに沿ってレーザパターニング加工を行うことも可能である。
【0072】
交点50u、50v間にパルスレーザビーム30を入射させてパターニング加工を行うのに必要な時間は3秒である。
【0073】
この3秒の間に、CCDカメラ17bで、図3(A)に示した2つの交点50x、50yを撮像し、撮像した画像データを制御装置18に送信して、実際の交点50x、50yの座標を計測する。また、交点50xと50yとを結ぶ加工目標線を決定し、その上に複数の入射目標位置を設定する。更に、設定された入射目標位置を、制御装置18の記憶領域に記憶する。
【0074】
すなわち交点50x、50yを撮像することによって、実際の交点50x、50yの座標を計測する工程以降、両交点50x、50yを結ぶ加工目標線上の複数の入射目標位置の記憶までの工程と、交点50u、50v間にレーザビームを照射してパターニングを行う工程とは、同時刻に並行して行われる。
【0075】
以下、実施例によるレーザ加工方法と同様に、2つの交点間にレーザビームを照射してパターニングを行う間に、次のパターニング加工位置を画定する2つの交点を撮像して実際の座標を計測し、加工目標線上に複数の入射目標位置を設定してこれを記憶する。
【0076】
応用例によるレーザ加工方法も、実施例によるレーザ加工方法と同様に、短い加工時間で加工を行うことができる。
【0077】
また、応用例によるレーザ加工方法は、加工中に加工位置周辺を撮像して画像処理を行い、加工位置の補正をリアルタイムに行う。パルスレーザビーム30のビームスポットの中心Cと、本来加工することが望まれる凹部50iの幅方向の中心線(中心位置)Lとの差dを検出し、差dに基づいてパルスレーザビーム30の入射位置を修正することで、高精度のレーザパターニング加工を実現することができる。
【0078】
図4(D)には、図4(B)と異なり、画界の中心Cとパルスレーザビーム30のビームスポットの中心Cとが一致しない場合を示した。レーザ加工の初期にレーザ光源10の光軸とCCDカメラ17aの光軸(座標系)が一致しているときでも、キャリブレーションの不足や経時変化などが原因で、両者が不一致となることがある。このような場合にも、凹部50iの幅方向の中心線(中心位置)Lとビームスポットの中心C(加工線50m)との幅方向における差dを算出して、図4(C)を参照して説明した制御と同じ制御を行えばよい。
【0079】
図4(E)に制御方法の他の例を示した。図4(C)に示した制御方法と比較した場合、差dに対応するミラー角度補正をどの段階で行うかの違いがあるのみである。本図に示す制御例においては、差dを現在値から減じることで補正を行う。
【0080】
図5は、変形例によるレーザ加工装置を示す概略図である。変形例によるレーザ加工装置は、CCDカメラ17aに代えて、ラインセンサカメラ19a、19bが用いられている点において実施例によるレーザ加工装置と異なる。
【0081】
パネル50に入射するパルスレーザビーム30と逆の経路を進行する光が、ガルバノスキャナ16aを経由してダイクロイックミラー15で反射され、ハーフミラー21で二分岐される。二分岐された光の一方は、ラインセンサカメラ19aで受光され、他方は折り返しミラー22で反射された後、ラインセンサカメラ19bで受光される。ラインセンサカメラ19a、19bで得られたデータは、制御装置18に送信される。
【0082】
図6(A)〜(C)を参照し、変形例によるレーザ加工装置を用いて行うレーザ加工方法について、応用例と異なる点を説明する。図6(A)〜(C)においては、ラインセンサカメラ19a、19bの画界をそれぞれ画界25a、25bと示した。
【0083】
ラインセンサカメラ19aは、パネル50の縦方向(図3(A)、図4(A)及び(B)の縦方向)に形成された直線状凹部50i内のITO膜50kを除去するパターニング加工に用いる。また、ラインセンサカメラ19bは、パネル50の横方向(図3(A)、図4(A)及び(B)の横方向)に形成された直線状凹部50i内のITO膜50kを除去するパターニング加工に用いる。
【0084】
本レーザ加工方法においては、パルスレーザビーム30の入射位置(ビームスポットの中心Cの位置)とラインセンサカメラ19a、19bの画界25a、25bの位置をあらかじめ計測しておく。
【0085】
パルスレーザビーム30の入射位置(ビームスポットの中心Cの位置)と、ラインセンサカメラ19a、19bの画界25a、25bとの相対的な位置関係は、図6(A)に示すようにパターニング加工の進行方向側にオフセットしていてもよいし、図6(B)に示すように一致させることも可能である。
【0086】
図6(A)を参照する。応用例と同様に、凹部50iに、加工目標線50zに沿ってパルスレーザビーム30を入射させる。パネル50の縦方向に形成された直線状凹部50i内に、パルスレーザビーム30が照射され、ITO膜50kが除去されて加工線50mが形成される。前述のように、縦方向にパターニングする際には、ラインセンサカメラ19aを用いて得られた画像を利用して加工を行う。
【0087】
図6(C)に、ラインセンサカメラ19aから制御装置18に送信された画像情報を基に求められる位置と輝度との関係をグラフにして示す。グラフ横軸の「位置」は、凹部50iの幅方向に沿う位置である。
【0088】
凹部50iが形成されている位置の輝度は高い。制御装置18は、高輝度部分の中央位置を凹部50iの幅方向に沿って求め、この位置を凹部50iの幅方向の中心位置Lとする。パルスレーザビーム30の入射位置(ビームスポットの中心Cの位置)は、あらかじめ計測されているため、ビームスポットの中心C(加工線50m)と凹部50iの中心位置Lとの幅方向の差dが制御装置18によって求められる。
【0089】
差dが得られた後は、図4(C)及び(E)を参照して説明した制御と同様の制御を行って、ラインセンサカメラ19aを用いて画像情報を得た位置にパルスレーザビーム30を入射させる。こうすることで、凹部50iの幅方向の中心線(中心位置)Lに沿って高精度のレーザパターニング加工を行うことが可能となる。
【0090】
変形例によるレーザ加工装置は、ラインセンサカメラを用いているため、差dを高速に計測することができる。このため差dを反映した補正制御を高速で行うことができる。
【0091】
以上、実施例に沿って本発明を説明したが、本発明はこれらに限定されるものではない。種々の変更、改良、組み合わせ等が可能なことは当業者には自明であろう。
【産業上の利用可能性】
【0092】
レーザ加工一般、殊にレーザパターニング加工に好適に利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0093】
【図1】実施例によるレーザ加工装置を示す概略図である。
【図2】(A)及び(B)は、実施例によるレーザ加工装置を用いたレーザパターニング方法(実施例によるレーザ加工方法)を説明するためのフローチャートである。
【図3】(A)及び(B)は、応用例によるレーザ加工について説明するための図である。
【図4】(A)〜(E)は、応用例によるレーザ加工方法について説明するための図である。
【図5】変形例によるレーザ加工装置を示す概略図である。
【図6】(A)〜(C)は、変形例によるレーザ加工装置を用いて行うレーザ加工方法について、応用例と異なる点を説明するための図である。
【図7】レーザビームを照射してパターニング加工を行う加工対象物であるパネル50の概略的な平面図である。
【符号の説明】
【0094】
10 レーザ光源
11 アッテネータ
12 マスク
13 フォーカスレンズ
14 レンズ移動機構
15 ダイクロイックミラー
16a、16b ガルバノスキャナ
17a、17b CCDカメラ
18 制御装置
19a、19b ラインセンサカメラ
20 加工テーブル
21 ハーフミラー
22、23 折り返しミラー
25a ラインセンサカメラ19aの画界
25b ラインセンサカメラ19bの画界
30 パルスレーザビーム
50 パネル
50a〜50h アライメントマーク
50i 凹部
50j ガラス基板
50k ITO膜
50m 加工線
50u〜50y 交点
50z 加工目標線
60 レーザビーム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)第1のアライメントマークの位置を測定し、測定された該第1のアライメントマークの位置に基づいて第1の加工位置を決定する工程と、
(b)前記第1のアライメントマークとは異なる第2のアライメントマークの位置を測定し、測定された該第2のアライメントマークの位置に基づいて第2の加工位置を決定する工程と、
(c)前記工程(b)が行われている期間に、前記工程(a)で決定された第1の加工位置に基づいてレーザビームを走査する工程と
を有するレーザ加工方法。
【請求項2】
前記第1のアライメントマークが相互に異なる2つの第1の点の位置を示し、前記第1の加工位置が前記2つの第1の点で規定される加工線上の複数の点であり、
前記第2のアライメントマークが相互に異なる2つの第2の点の位置を示し、前記第2の加工位置が前記2つの第2の点で規定される加工線上の複数の点である請求項1に記載のレーザ加工方法。
【請求項3】
(a)加工対象物上のアライメントマークの位置を測定し、測定された該アライメントマークの位置に基づいて加工位置を決定し記憶する工程と、
(b)前記工程(a)で記憶された加工位置データのうち未加工の加工位置データの有無を判定する工程と、
(c)前記工程(b)で未加工の加工位置データが有ると判定された場合、該加工位置にレーザビームを入射させ、無いと判定された場合、有ると判定されるまでレーザビームの入射を待機させる工程と
を有するレーザ加工方法。
【請求項4】
レーザビームを出射するレーザ光源と、
加工対象物を保持するステージと、
前記ステージに保持された加工対象物の表面の像を取得する第1の受光装置と、
前記第1の受光装置によって取得された前記加工対象物の表面の像に基づいて、複数の入射目標位置を決定し記憶する制御装置と、
前記制御装置から与えられる制御信号に基づいて、前記加工対象物上に、前記レーザ光源を出射したレーザビームを照射するビーム走査器と
を有し、
前記制御装置は、記憶された前記入射目標位置データのうちレーザビーム未入射の入射目標位置データの有無を判定し、有ると判定された場合、該入射目標位置にレーザビームが照射されるように前記ビーム走査器に制御信号を与え、無いと判定された場合、有ると判定されるまでレーザビームの入射を待機させるレーザ加工装置。
【請求項5】
更に、
前記ビーム走査器を介して、レーザビームの入射位置を含む領域、またはレーザビームの入射位置の移動方向前方の領域の、前記加工対象物の表面の像を取得する第2の受光装置を備え、
前記制御装置は、前記第2の受光装置で得られた像に基づいて前記入射目標位置を補正することにより、入射指令値を算出し、前記ビーム走査器に入射指令値を送信し、
前記ビーム走査器は、前記制御装置から与えられる入射指令値に基づいて、前記レーザ光源から出射したレーザビームの入射位置を、現在の入射位置から入射指令値で規定される位置まで移動させる請求項4に記載のレーザ加工装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−75952(P2010−75952A)
【公開日】平成22年4月8日(2010.4.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−246122(P2008−246122)
【出願日】平成20年9月25日(2008.9.25)
【出願人】(000002107)住友重機械工業株式会社 (2,241)
【Fターム(参考)】