説明

レーザ加工方法および装置

【課題】 被加工物上に形成された1次パターニングラインに基づいて、2次パターニングラインを高速かつ高精度に加工することが可能なレーザ加工方法および装置を提供する。
【解決手段】 被加工物(1)に対してレーザ光を走査し、前記被加工物上に形成されている1次パターニングラインを基準とした所定の位置に2次パターニングラインを形成するレーザ加工装置において、前記被加工物の被加工面に対してガルバノスキャンミラー(14)を用いてレーザ光を走査するためのレーザ光学系と、1次パターニングラインと前記被加工物の被加工面でのレーザ反射光とを撮像する撮像手段(17)と、前記撮像手段により撮像して得られた画像上で1次パターニングラインとレーザ反射光の相対位置を検出し、検出された相対位置と、1次パターニングラインを基準とした2次パターニングラインの所定の位置とを比較して補正量を検出する補正量検出手段(21)と、前記補正量に基づいて、レーザ光の走査位置を補正可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インラインで供給される被加工物に対してガルバノスキャンミラーを用いてレーザ光を走査し、この被加工物上に予め形成した1次パターニングラインを基準として2次パターニングラインを形成するレーザ加工技術に関し、特に、太陽電池用の薄膜パターン形成に好適なレーザ加工方法および装置に関する。
【背景技術】
【0002】
薄膜太陽電池は、単一の領域に第1電極、薄膜半導体層からなる光電変換層、および第2電極の3層が積層された光電変換素子(または太陽電池素子)が、フレキシブルな絶縁性基板上に多数並設され、それらが相互に直列接続されることで、単位モジュールを構成している。
【0003】
すなわち、ある光電変換素子の第1電極と、それに隣接する光電変換素子の第2電極とが電気的に接続され、並設されたすべての光電変換素子間でこのような直列接続がなされることで、単位モジュールの一端に位置した光電変換素子の第1電極と、他端に位置した光電変換素子の第2電極との間に、所望する電圧を出力させることができる。例えば、インバータを用いて交流100Vの商用電力源を得るためには、100V以上の直流電圧を出力させるようにすることが望ましく、実用的なモジュールでは、数十個以上の光電変換素子が直列に接続される。
【0004】
上記のような光電変換素子の直列接続構造は、各電極層および光電変換層の成膜と各層のパターニング、およびそれらの組み合わせ手順により形成される。このうちパターニングでは、前工程で加工された1次パターニングラインに重ねて2次パターニングラインを加工する必要がある。このような加工には、位置決めの精度が高く、微細なパターニングラインの形成が可能なレーザ加工が適している。
【0005】
図6は、従来のレーザ加工装置の構成例を示している。このレーザ加工装置は、フィルム基板1上の薄膜に形成された1次パターニングライン上に、レーザ照射により薄膜を除去し、2次パターニングラインを重ねて加工するために、フィルム基板1の巻き出しロール2と、加工済みのフィルム基板1の巻き取りロール3を備えており、巻き出しロール2から巻き取りロール3に至るフィルム基板1の搬送経路に加工処理ステージ40が設けられている。
【0006】
加工処理ステージ40は、フィルム基板1にレーザ光を照射して、2次パターニングラインを加工するための領域であり、この加工処理ステージ40に搬送されたフィルム基板1は、該フィルム基板1上に設けられているマーカホールを位置決めセンサ4が検出することにより、加工処理ステージ40に位置決めされて停止され、加工処理ステージ40に吸着固定されるようになっている。
【0007】
加工処理ステージ40の下方には、加工光学ユニット41が設けられている。この加工光学ユニット41は、X−Yステージ42上に搭載されており、レーザ発振器43から出射されたレーザ光が、光ファイバからなるファイバ光学系44を通じて加工光学ユニット41に入射されるように構成されている。加工光学ユニット41に入射されたレーザ光は、該加工光学ユニット41内の入射光学系41aを通じて、特定の波長のみ反射するダイクロイックミラー41bに入射され、加工処理ステージ40の方向に反射される。
【0008】
そして、ダイクロイックミラー41bで反射されたレーザ光は、出射光学系41cによりフィルム基板1上の薄膜に焦点が合うように調整されてフィルム基板1に照射される。これと共に、X−Yステージ42の動作により、加工光学ユニット41がフィルム基板1に平行なX−Y方向に移動され、フィルム基板1上にレーザ光が走査される。
【0009】
また、ダイクロイックミラー41bの下方には、CCD(電荷結合素子)カメラ等からなる撮像部41dが、レーザ光と光軸が一致するように設けられている。この撮像部41dは、レーザ光が照射されたフィルム基板1上の領域を、ダイクロイックミラー41b(ハーフミラー)を介して撮像する。
【0010】
さらに、このレーザ加工装置は、上記の各機構を制御するための処理機能ブロックとして、画像処理ユニット45と、制御ユニット46とを具備している。画像処理ユニット45は、振像部41dによって撮像された画像信号の入力を受けて画像処理を行い、フィルム基板1の薄膜上に形成された1次パターニングラインの基準位置座標を検出して、位置情報として制御ユニット46に出力する。制御ユニット46は、画像処理ユニット45からの位置情報を基に、後述する位置ずれを補正しながらX−Yステージ42およびレーザ発振器43の動作を制御し、2次パターニングラインの加工を実行させる。
【0011】
ところで、実用的なモジュールにおける光電変換素子の形成では、1次パターニング工程と2次パターニング工程との間に熱処理工程が行われるため、フィルム基板1への熱影響によりパターニングエリアにずれが生じる場合がある。また、フィルム基板1の搬送時における蛇行や、位置決め精度の誤差等の影響により、制御ユニット46からの指示に基づくX−Yステージ42の座標系と、実際にフィルム基板1上に形成された1次パターニングエリアの座標系との間にずれが生じる場合もある。
【0012】
そこで、制御ユニット46は、画像処理ユニット45からの位置情報に応じて、上記のような位置ずれを補正した位置情報を算出し、X−Yステージ42に指定するようにしている。このような位置ずれを補正するためのアラインメント手順は、例えば以下のように行われる。
【0013】
まず、フィルム基板1上の1次パターニングエリアの始端部および終端部の各近傍領域において、1次パターニングラインの交点を基準位置として指定しておく。そして、X−Yステージ42を駆動して、これらの領域を撮像部41dにより撮像する。この撮像画像に基づいて画像処理ユニット45が各基準位置の座標を検出し、制御ユニット46に出力する。制御ユニット46は、これらの基準位置座標を基に、X−Yステージ42の座標系と1次パターニングエリアの座標系との間の位置ずれに対して、位置および角度の補正を行う。
【0014】
次に、1次パターニングラインと重ね合わせて2次パターニングラインを加工する際には、上記の各基準位置間において、加工を行う1次パターニングライン上の交点を撮像部41dにより撮像して、この交点の座標を画像処理によって取得する。そして、制御ユニット46は、この座標を基にX−Yステージ42およびレーザ発振器43を制御し、2次パターニングラインを加工する。同様にして、加工対象の交点の取得と加工処理とを繰り返すことで、パターニングエリア上の全域で2次パターニングラインが形成される。
【0015】
このようなレーザ加工装置を用いたパターニング工程では、加工光学ユニット41をX−Yステージ42上で移動させて加工を行うために、レーザ発振器43と加工光学ユニット41とがファイバ光学系44を介して接続されていることや、加工光学ユニット41等の移動体の慣性負荷が大きくなること等により、レーザ光の走査速度の高速化が困難であり、生産性が低いという問題があった。
【0016】
これに対して、レーザ光の走査にX−Yステージを使用せず、慣性負荷を小さくして高速でレーザ光を照射できる方法として、ガルバノスキャニング方式が知られている。ガルバノスキャニング方式では、2枚の反射ミラーをモータ等の回転駆動機構により回転される構造を有するガルバノスキャンミラーを用い、レーザ発振器からの出射光の反射角度を変化させることで、フィルム基板上でX−Y方向に高速に走査させることが可能となる。
【0017】
このようなガルバノスキャニング方式のレーザ加工装置のうち、大面積への加工を目的としたFθレンズを用いないレーザ加工装置では、あらかじめプログラムされた数値データを基にレーザ光を走査させる方法が一般的に採られている。特許文献1には、このようなレーザ加工装置において、連続シート状の被加工物に予め設けられた特定パターンを、固定または停止状態において撮像カメラで撮像して基準位置からのずれ量を検出し、XYガルバノミラーおよびスキャンレンズを用いてレーザ光を走査させる際に、検出したずれ量に基づいて補正する方法が開示されている。
【0018】
また、特許文献2には、ガルバノスキャニング方式を用いて、被加工物上に形成されている1次パターニングラインを基準とした位置に2次パターニングラインを形成するレーザ加工装置において、位置測定のための撮像位置に配置して被加工物の被加工面を撮像し、その撮像信号を基に1次パターニングライン上の複数点の位置座標値を算出する位置測定工程と、レーザ照射のための加工位置に被加工物を配置して、位置測定工程により算出された位置座標値に基づいてレーザ光の走査位置を補正する方法が開示されている。
【0019】
【特許文献1】特開平8−71780号公報
【特許文献2】特開2005−81392号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0020】
上記特許文献1に開示されたレーザ加工装置における位置ずれ補正方法では、画像処理による位置ずれ量の検出に際して、被加工物に予め設けた特定パターンを用いるため、前工程においてその被加工物に形成された任意の1次パターニングラインに、熱影響等による位置ずれが生じていた場合に、この位置ずれは補正に反映されないので、補正精度が低い上、応用範囲も狭いという問題があった。
【0021】
また、上記特許文献2に開示されたレーザ加工装置における位置ずれ補正方法では、画像処理による1次パターニングラインの位置測定工程と、2次パターニングラインの加工工程とが分離されているため、全体としての工程に時間を要する上、位置測定工程での撮像光学系と、加工工程でのレーザ光学系との間の光軸ずれにより、補正精度が低下するという問題があった。
【0022】
本発明はこのような実状に鑑みてなされたものであって、その目的は、被加工物上に形成された1次パターニングラインに基づいて、2次パターニングラインを高速かつ高精度に加工することが可能なレーザ加工方法および装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0023】
上記従来技術の有する課題を解決するため、本発明のレーザ加工方法は、インラインで供給される被加工物に対してガルバノスキャンミラーを用いてレーザ光を走査し、前記被加工物上に形成されている1次パターニングラインを基準とした所定の位置に2次パターニングラインを形成するレーザ加工方法において、
レーザ加工中に、前記1次パターニングラインと前記被加工物の被加工面でのレーザ反射光とを撮像して得られた画像上で1次パターニングラインとレーザ反射光の相対位置を検出し、該検出された相対位置と、1次パターニングラインを基準とした2次パターニングラインの所定の位置とを比較して補正量を検出し、それに基づいてレーザ光の走査位置を補正することを特徴とする。
【0024】
上記レーザ加工方法において、レーザ加工の開始前に、前記被加工物を損傷しない低強度のレーザ光を照射し、前記1次パターニングラインと前記被加工物の被加工面での低強度レーザ反射光とを撮像して得られた画像上で1次パターニングラインと低強度レーザ反射光の相対位置を検出し、該検出された相対位置と、1次パターニングラインを基準とした2次パターニングラインの所定の位置とを比較して初期補正量を検出し、それに基づいてレーザ光の走査開始位置を補正し、次いで、加工可能な強度にてレーザ加工を開始することが好適である。
【0025】
上記レーザ加工方法において、前記補正量を検出する工程が、前記画像上でレーザ反射光の中心位置を検出し、その中心位置を基準とした所定の位置に、少なくとも2つの検出領域を設定し、これら2つの検出領域の平均輝度の差から補正量を算出する画像処理工程を含むことが好適である。
【0026】
また、本発明は、上記レーザ加工方法を実施するための装置として、
前記被加工物の被加工面に対してガルバノスキャンミラーを用いてレーザ光を走査するためのレーザ光学系と、
前記1次パターニングラインと前記被加工物の被加工面でのレーザ反射光とを撮像する撮像手段と、
前記撮像手段により撮像して得られた画像上で1次パターニングラインとレーザ反射光の相対位置を検出し、検出された相対位置と、1次パターニングラインを基準とした2次パターニングラインの所定の位置とを比較して補正量を検出する補正量検出手段と、
を備え、前記補正量に基づいてレーザ光の走査位置を補正可能なレーザ加工装置を構成した。
【0027】
上記レーザ加工装置において、前記レーザ光学系は、レーザ光を減衰する減衰器を含むことが好適である。
また、前記撮像手段は、前記レーザ発振器と前記ガルバノスキャンミラーとの間に挿入され、レーザ光の波長の光とレーザ光の波長を含まない光のうち、いずれか一方を透過させ他方を反射させることにより、レーザ光の波長の光からレーザ光の波長を含まない光を分離するダイクロイックミラーと、前記レーザ光の波長の光を減衰させる波長フィルタと、を備え、前記ガルバノスキャンミラー、前記ダイクロイックミラー、および、前記波長フィルタを介して、前記1次パターニングラインと前記被加工物の被加工面でのレーザ反射光とを撮像可能であることが好適である。
【0028】
また、前記補正量検出手段は、前記撮像手段により撮像された画像上で前記レーザ反射光の中心位置を検出し、その中心位置を基準とした所定の位置に、少なくとも2つの検出領域を設定し、これら2つの検出領域の平均輝度の差から補正量を算出する画像処理手段を含むことが好適である。
さらに、前記撮像手段の撮像範囲を、前記レーザ光の光軸と異なる方向から照明する照明手段をさらに備えていることが好適である。
【発明の効果】
【0029】
本発明のレーザ加工方法および装置は、上述のように構成されているので、以下に記載されるような効果を奏する。
【0030】
1次パターニングラインとレーザ反射光とを撮像して、1次パターニングラインと加工される2次パターニングラインとの位置ずれを、レーザ加工中にリアルタイムで補正しながら、レーザ光を走査させて2次パターニングラインを加工することができ、被加工物の搬送時の蛇行や位置決め精度の影響等による加工位置での被加工物の位置ずれは勿論、熱影響等による被加工物上の1次パターニングラインの位置ずれをも補正することが可能となり、高速かつ高精度のレーザ加工を行うことができる。
【0031】
また、1次パターニングラインを基準とした補正量検出と、それに基づくレーザ走査位置の補正を、レーザ加工と共通の光学系を介して加工と同時に行えるため、1次パターニングラインの位置を測定する別の工程が不要となり、加工全体の工程時間を短縮することが可能である。
【0032】
さらに、レーザ反射光の位置を基準として、補正量を検出するようにしたことで、レーザ光学系の光軸と撮像手段の光軸とにずれが発生した場合でも、正確な補正量を検出することが可能であり、温度変化、経年変化等による光軸ずれの較正が不要となり、保守性を向上するとともに維持コストを低減することが可能となる。
【0033】
また、レーザ加工の開始前に、被加工物を損傷しない低強度のレーザ光を照射して初期補正量を検出し、それに基づいてレーザ光の走査開始位置を補正し、次いで、加工可能な強度にてレーザ加工を開始する態様では、レーザ加工と共通の光学系を介して、加工中の補正量検出と同様の制御でレーザ光の走査開始位置を補正でき、加工開始から加工終了に至る全工程で高精度のレーザ加工を行うことができるとともに、制御系が簡素化される利点もある。
【0034】
1次パターニングラインを基準とした補正量の検出工程または手段が、画像上でレーザ反射光の中心位置を検出し、その中心位置を基準とした所定の位置に、少なくとも2つの検出領域を設定し、これら2つの検出領域の平均輝度の差から補正量を算出する画像処理工程または手段を含む態様では、加工範囲全体の照度分布に関係なく、撮像領域における相対的な輝度差から正確な補正量を検出することが可能である。
【0035】
また、前記撮像手段の撮像範囲を、前記レーザ光の光軸と異なる方向から照明する照明手段を備えることにより、1次パターニングラインの加工領域と未加工領域との輝度差が明確になり、一層正確な補正量の検出が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0036】
以下、本発明を図示の実施の形態に基づいて詳細に説明する。
図1は本発明実施形態のレーザ加工装置の概略を示す構成図である。図1に示すレーザ加工装置は、フィルム基板1上に形成された薄膜に対してレーザ照射を行い、当該部分における薄膜を除去して所定のパターンを形成するための装置であり、特に、前工程においてフィルム基板1上の薄膜に形成された1次パターニングラインを基準とした所定の位置に2次パターニングラインを正確に加工するものである。
【0037】
このレーザ加工装置は、フィルム基板1の巻き出しロール2と、加工済みのフィルム基板1の巻き取りロール3を備えており、巻き出しロール2から巻き取りロール3に至るフィルム基板1の搬送経路に加工処理ステージ10が設けられている。
【0038】
加工処理ステージ10は、フィルム基板1にレーザ光を照射して、2次パターニングラインを加工するための領域であって、フィルム基板1のパスラインに沿って配設された平坦面に多数の吸着用孔を備えている。この加工処理ステージ10に搬送されたフィルム基板1は、該フィルム基板1上に設けられているマーカホールを位置決めセンサ4が検出することにより、加工処理ステージ10に位置決めされて停止され、次いで、吸着用孔に吸引を生じさせることで吸着固定されるようになっている。
【0039】
加工処理ステージ10の下方には、加工処理ステージ10に位置決めされたフィルム基板1に対してレーザを照射するためのレーザ光学系が設けられている。このレーザ光学系は、レーザ発振器11、減衰器12、焦点調整ユニット13およびガルバノスキャンミラー14などから構成されている。なお、加工処理ステージ10およびレーザ光学系は、図示しない遮光部材(加工室)で覆われ、外乱光が遮断される一方、加工処理ステージ10をレーザの光軸と異なる方向から照らす照明ランプ(図示せず)が設けられている。
【0040】
レーザ発振器11は、フィルム基板1上の薄膜を加工するためのレーザ光を出射するレーザ光源であり、波長変換ユニットを含むNd:YAGレーザ発振器が好適であるが、加工材料の種類に応じて、YAG、YLF、YVO等のレーザ光を用いることもできる。減衰器12は、レーザ光源から出射されたレーザ光がフィルム基板上で所望の光量を有するように該レーザ光を減衰させる機能を有し、後述する初期補正量検出時の低光量レーザと、レーザ加工時のレーザ光量とを切換可能な光減衰器、または可変光減衰器を用いることができる。焦点調整ユニット13は、レーザ発振器11からの出射光がフィルム基板1上で結像するようにその焦点を調整可能な集光レンズ等で構成されている。
【0041】
ガルバノスキャンミラー14は、それぞれ加工面上におけるX−Y方向への走査に対応した一対の反射ミラー(ガルバノミラー)と、それらを回動させるサーボモータ等の回転駆動機構から構成されており、レーザ発振器11からの出射光を反射させて加工処理ステージ10に導くとともに、その反射角を変化させることによって、加工処理ステージ10に配置されたフィルム基板1上で、レーザ光をX−Y方向に高速に走査することが可能である。
【0042】
また、レーザ発振器11とガルバノスキャンミラー14の間には、レーザ光の波長は透過し、それ以外の波長の光は反射するダイクロイックミラー15(ビームスプリッタ)が設けられ、ダイクロイックミラー15からの反射光の光軸に沿って波長フィルタ16と撮像部17が設けられている。この撮像部17は、CCDカメラ等の撮像手段で構成されており、波長フィルタ16、ダイクロイックミラー15およびガルバノスキャンミラー14を介して、レーザ光が照射されるフィルム基板1上の領域および該領域で反射されたレーザ反射光を撮像可能である。
【0043】
さらに、このレーザ加工装置は、上記の各機構を制御するための処理機能ブロックとして、面像処理ユニット21と、制御ユニット22とを具備している。
【0044】
画像処理ユニット21は、撮像部17によって撮像された画像を基に2次パターニングラインを形成するための補正量を検出し、その補正量を制御ユニット22に出力する。上記撮像部17によって撮像された画像データにおいて、1次パターニングラインが加工された領域は、薄膜が除去されることによってフィルム面が露出し、未加工領域に比べて表面が平滑になるため、拡散反射が起き難く、照明光は正反射され、反射光がガルバノスキャンミラー14に到達しないので、低輝度領域となる。一方、未加工領域では、フィルム基板1の表面にスパッタリングやプラズマCVDなどの成膜工程で形成された金属電極膜や半導体膜が残存しており、これらの表面はフィルム面に比べて粗面であるため、照明光が拡散反射され、反射光がガルバノスキャンミラー14に到達するので、高輝度領域となる。従って、このような画像データの輝度情報から1次パターニングラインが加工された領域を識別可能である。
【0045】
制御ユニット22は、制御プログラムや加工情報を予め記憶させておくための記憶手段を含み、該記憶手段から得られる所定の座標値と画像処理ユニット21から出力された補正量に基づいて、レーザ発振器11、減衰器12、焦点調整ユニット13およびガルバノスキャンミラー14の動作を制御し、加工処理ステージ10上のフィルム基板1に対して、位置ずれが補正された正確なレーザ光が照射されるようにするものである。
【0046】
次に、上記実施形態に基づくレーザ加工装置の動作の概要について、1次パターニングラインを基準とした所定の位置に2次パターニングラインを形成するレーザ加工工程に沿って図面を参照しながら説明する。なお、以下の説明においては、理解を容易にするため、1次パターニングラインの中心に2次パターニングラインを加工する場合を例に述べる。
【0047】
図2は、上記のレーザ加工装置における2次パターニングラインの加工工程の流れを示すフローチャートであり、1つの1次パターニングエリアに対して、2次パターニングラインの加工が終了するまでの工程を示している。
【0048】
先ず、ステップS11では、巻き出しロール2および巻き取りロール3を回転させてフィルム基板1を搬送し、位置決めセンサ4の検出信号により搬送を停止することで、フィルム基板1上の加工対象となる1次パターニングエリアが加工処理ステージ10に位置決めされ、その状態でフィルム基板1が加工処理ステージ10に吸着固定される。なお、フィルム基板1の巻き取りや吸着の動作は、制御ユニット22、あるいは図示しない他の制御回路によって制御される。
【0049】
次に、ステップS12では、補正量を検出するための領域の設定が行われる。図3は、ステップS12の詳細を示すフローチャートであり、図4は、画像上のレーザ反射光の位置と、2つの補正量検出領域A,Bの関係を示す模式図である。なお、図4において、ガルバノスキャンミラー14の走査方向は上下方向となっている。
【0050】
このステップS12では、ステップS121において、制御ユニット22により、減衰器12を制御して、フィルム基板1に損傷を与えない程度の強度にレーザ光量を調整し、この低光量レーザ光をフィルム基板1に照射する。次いで、ステップS122では、レーザ反射光を撮像部17により撮像し、画像処理ユニット21によりレーザ反射光の中心位置Cを検出する。
【0051】
続いて、ステップS123では、レーザ反射光の中心位置Cを基準に、2つの補正量検出領域A,Bを設定する。このとき、補正量検出領域A,B間の中心位置Dは、レーザ反射光の中心位置Cに対して、2次パターニングラインの加工内容に応じた所定量だけ左右方向にずれた位置に設定し、各補正量検出領域A,Bは、それらの左右方向の中心が仮想1次パターニングラインEの左右のエッジと一致する位置に設定する。
【0052】
例えば、1次パターニングラインの中心に2次パターニングラインの加工を行う場合は、レーザ反射光の中心位置Cと補正量検出領域A,B間の中心位置Dとが左右方向に一致するように設定する。この場合、上記所定量は「0」ということになる。また、2次パターニングラインを1次パターニングラインから一定間隔の位置に加工する場合には、レーザ反射光の中心位置Cに対して、補正量検出領域A,B間の中心位置Dを画像倍率から決まる所定の間隔だけ左右方向にオフセットした位置に設定すれば良い。
【0053】
次に、ステップS13では、制御ユニット22により、ガルバノスキャンミラー14を制御して、レーザ光を加工開始位置に移動させ、ステップS14では、画像処理ユニット21により補正量を検出する。図5は補正量の検出方法を示す模式図である。図5Aは、位置ずれがない状態、図5Bは位置ずれがある場合を示している。このとき、補正量は、次式で表される。
補正量=k(補正量検出領域Aの平均輝度−補正量検出領域Bの平均輝度)
【0054】
ここでkは比例係数であり、平均輝度の差と位置ずれ量との関係から決定される。図5(A)のようにレーザ反射光の中心位置Cに対して、1次パターニングラインFの位置がずれていない場合は、補正量検出領域A,Bの平均輝度は等しく、補正量は「0」となる。一方、図5(B)のように位置ずれがある場合には、補正量検出領域A,Bの平均輝度は異なり、図5(B)の場合には、補正量検出領域Aの平均輝度が補正量検出領域Bの平均輝度よりも小さくなり、これに伴い補正量が検出される。
【0055】
続いて、ステップS15では補正量を判定し、補正量が「0」の場合、つまり位置ずれがない場合は、そのまま次のステップS17に進む。補正量が「0」でない場合、つまり位置ずれがある場合は、ステップS16に進む。ステップS16では、制御ユニット22により、補正量に基づいて、ガルバノスキャニングミラー14を制御して、レーザ光を移動させ、ステップS14に戻る。このループを繰り返すことにより位置ずれが補正され、補正量が「0」となった時点で、次のステップS17に進む。
【0056】
ステップS17では、制御ユニット22により、レーザ発振器11、減衰器12、焦点調整ユニット13およびガルバノスキャンミラー14の動作を制御し、レーザ光の強度を加工可能な強度としてレーザ光の走査を行い、2次パターニングラインを加工する。この加工中にはステップS18で、1つのパターニングラインの加工終了を監視し、加工終了の場合はステップS22に進む。ステップS22では、全2次パターニングラインの加工終了の判定を行い、判定結果に基づいて次の2次パターニングラインの加工または、加工終了に進む。
【0057】
ステップS19では、2次パターニングラインの加工中に、上記ステップS14と同様に補正量の検出を行い、さらに、上記ステップS15,S16と同様に補正量が「0」でなければ、その補正量に基づいて制御ユニット22でガルバノスキャニングミラー14を制御し、走査方向と直交する方向にレーザ光を移動させて位置ずれを補正する。
【0058】
以上の処理では、1次パターニングラインとレーザ反射光とを撮像して、1次パターニングラインと加工される2次パターニングラインとの位置ずれを検出して、走査位置をリアルタイムで補正しながらレーザ光の走査を行い、2次パターニングラインを加工するので、被加工物の搬送時の蛇行や位置決め精度の影響等による加工位置上の被加工物の位置ずれと共に、熱影響等による被加工物上の1次パターニングラインの位置ずれをも補正することが可能である。また、加工と同時に共通の光学系を介して位置ずれの補正を行うので、1次パターニングラインの位置を測定する別工程および装置が不要となり、加工全体の工程時間を短縮することが可能であるとともに、加工装置の構成が簡素化される。
【0059】
さらに、レーザ反射光の位置を基準として、補正量を検出するようにしたことで、レーザ光学系の光軸と撮像手段の光軸とにずれが発生した場合でも、正確な補正量を検出することが可能であり、温度変化、経年変化等による光軸ずれに対する較正が不要となるため、保守性を向上することが可能である。
【0060】
なお、上記実施形態では、主に1次パターニングラインの中心に2次パターニングラインを加工する場合の例について述べたが、例えば、1次パターニングライン上の一部に2次パターニングラインを重ね合わせて形成する場合や、1次パターニングライン上の所定位置から一定の間隔を有して離間した位置に2次パターニングラインを形成する場合等にも、正確かつ高速な加工を行うことが可能である。
【0061】
また、上記実施形態では、レーザ発振器11とガルバノスキャンミラー14の間に、レーザ光の波長は透過し、それ以外の波長の光は反射するダイクロイックミラー15が設けられ、ダイクロイックミラー15からの反射光の光軸に沿って波長フィルタ16と撮像部17が設けられている場合を示したが、これとは逆に、レーザ光の波長は反射し、それ以外の波長の光は透過するダイクロイックミラー(ビームスプリッタ)を設け、ダイクロイックミラーからの透過光の光軸に沿って波長フィルタ16と撮像部17を設け、ダイクロイックミラーからの反射光の光軸に沿ってレーザ光学系(11、12、13)を構成するようにしても良い。
【0062】
また、上記実施形態では、レーザ反射光の中心位置Cに対する1次パターニングラインFの位置ずれの補正量を、画像中に設定した補正量検出領域A,Bの平均輝度の差を利用した画像処理を通じて検出する場合を示したが、位置ずれの補正量を他の画像処理方法により検出することもできる。
【0063】
例えば、撮像部17によって撮像された画像から得られる二値化画像から、1次パターニングラインFの両側のエッジ位置を検出し、それらの中心位置と、レーザ反射光の中心位置Cとの相対的な変位から補正量を検出することもできる。但し、この方法では、輝度データの二値化、エッジ位置の検出、中心位置の検出などの処理を要するため、処理速度の点では、平均輝度差を利用する画像処理方法が有利である。
【0064】
また、上記実施形態では、水平下向きに配設された加工処理ステージ10の下面に沿ってフィルム基板1を搬送し、加工処理ステージ10の下方にレーザ光学系を設ける場合を示したが、加工処理ステージの向きやフィルム基板の搬送方向はこれに限定されるものではなく、垂直に配設された加工処理ステージに対して、上下方向または横方向にフィルム基板1を搬送する場合にも実施可能である。さらに、本発明のレーザ加工装置は、薄膜太陽電池の加工に限定されるものではなく、ロールから供給される他の被加工物は勿論、ロール以外の搬送手段で供給される被加工物などに対しても実施可能である。
【0065】
以上、本発明の実施の形態につき述べたが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、上記以外にも本発明の技術的思想に基づいて各種の変形および変更が可能であることを付言する。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】本発明実施形態に係るレーザ加工装置の構成例を示す図である。
【図2】本発明実施形態に係るレーザ加工装置における2次パターニングラインの加工工程を示すフローチャートである。
【図3】本発明実施形態に係るレーザ加工装置における2次パターニングラインの加工工程の一部を示す詳細フローチャートである。
【図4】本発明実施形態に係るレーザ加工装置での画像処理における補正量検出領域の設定例を示す模式図である。
【図5】(A)および(B)は、図4に示した設定例に基づく補正量の検出方法を示す模式図である。
【図6】従来のレーザ加工装置の構成例を示す図である。
【符号の説明】
【0067】
1 フィルム基板
2 巻き出しロール
3 巻き取りロール
10 加工処理ステージ
11 レーザ発振器
12 減衰器
13 焦点調整ユニット
14 ガルバノスキャンミラー
15 ダイクロイックミラー
16 波長フィルタ
17 撮像部
21 画像処理ユニット
22 制御ユニット
A,B 補正量検出領域
C レーザ反射光の中心位置
D 2つの領域の中心位置
E 仮想1次パターニングライン
F 1次パターニングライン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
インラインで供給される被加工物に対してガルバノスキャンミラーを用いてレーザ光を走査し、前記被加工物上に形成されている1次パターニングラインを基準とした所定の位置に2次パターニングラインを形成するレーザ加工方法において、
レーザ加工中に、前記1次パターニングラインと前記被加工物の被加工面でのレーザ反射光とを撮像して得られた画像上で1次パターニングラインとレーザ反射光の相対位置を検出し、該検出された相対位置と、1次パターニングラインを基準とした2次パターニングラインの所定の位置とを比較して補正量を検出し、それに基づいてレーザ光の走査位置を補正することを特徴とするレーザ加工方法。
【請求項2】
レーザ加工の開始前に、前記被加工物を損傷しない低強度のレーザ光を照射し、前記1次パターニングラインと前記被加工物の被加工面での低強度レーザ反射光とを撮像して得られた画像上で1次パターニングラインと低強度レーザ反射光の相対位置を検出し、該検出された相対位置と、1次パターニングラインを基準とした2次パターニングラインの所定の位置とを比較して初期補正量を検出し、それに基づいてレーザ光の走査開始位置を補正し、次いで、加工可能な強度にてレーザ加工を開始することを特徴とする請求項1に記載のレーザ加工方法。
【請求項3】
前記補正量を検出する工程が、前記画像上でレーザ反射光の中心位置を検出し、その中心位置を基準とした所定の位置に、少なくとも2つの検出領域を設定し、これら2つの検出領域の平均輝度の差から補正量を算出する画像処理工程を含むことを特徴とする請求項1または2に記載のレーザ加工方法。
【請求項4】
インラインで供給される被加工物に対してレーザ光を走査し、前記被加工物上に形成されている1次パターニングラインを基準とした所定の位置に2次パターニングラインを形成するためのレーザ加工装置であって、
前記被加工物の被加工面に対してガルバノスキャンミラーを用いてレーザ光を走査するためのレーザ光学系と、
前記1次パターニングラインと前記被加工物の被加工面でのレーザ反射光とを撮像する撮像手段と、
前記撮像手段により撮像して得られた画像上で1次パターニングラインとレーザ反射光の相対位置を検出し、検出された相対位置と、1次パターニングラインを基準とした2次パターニングラインの所定の位置とを比較して補正量を検出する補正量検出手段と、
を備え、前記補正量に基づいてレーザ光の走査位置を補正可能であることを特徴とするレーザ加工装置。
【請求項5】
前記レーザ光学系は、レーザ光を減衰する減衰器を含むことを特徴とする請求項4に記載のレーザ加工装置。
【請求項6】
前記撮像手段は、
前記レーザ発振器と前記ガルバノスキャンミラーとの間に挿入され、レーザ光の波長の光とレーザ光の波長を含まない光のうち、いずれか一方を透過させ他方を反射させることにより、レーザ光の波長の光からレーザ光の波長を含まない光を分離するダイクロイックミラーと、
前記レーザ光の波長の光を減衰させる波長フィルタと、を備え、
前記ガルバノスキャンミラー、前記ダイクロイックミラー、および、前記波長フィルタを介して、前記1次パターニングラインと前記被加工物の被加工面でのレーザ反射光とを撮像可能であることを特徴とする請求項4に記載のレーザ加工装置。
【請求項7】
前記補正量検出手段は、
前記撮像手段により撮像された画像上で前記レーザ反射光の中心位置を検出し、その中心位置を基準とした所定の位置に、少なくとも2つの検出領域を設定し、これら2つの検出領域の平均輝度の差から補正量を算出する画像処理手段を含むことを特徴とする請求項4に記載のレーザ加工装置。
【請求項8】
前記撮像手段の撮像範囲を、前記レーザ光の光軸と異なる方向から照明する照明手段をさらに備えていることを特徴とする請求項4〜7のいずれか1項に記載のレーザ加工装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−238229(P2008−238229A)
【公開日】平成20年10月9日(2008.10.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−83831(P2007−83831)
【出願日】平成19年3月28日(2007.3.28)
【出願人】(591083244)富士電機システムズ株式会社 (1,717)
【Fターム(参考)】