説明

レーザ加工装置

【課題】基準となるスクライブラインに対して一定の距離を保って加工対象のスクライブラインを複数同時に形成すること。
【解決手段】レーザ加工装置は、基板と、基板に配置された薄膜とを有する太陽電池に用いられる被加工基板60を加工する。レーザ加工装置は、被加工基板60を保持する保持部1と、レーザ光Lを発振するレーザ発振器21と、レーザ発振器21から発振されるレーザ光Lを案内するとともに当該レーザ光Lを端面から外部に照射する複数の光ファイバ25と、保持部1および光ファイバ25の端面のうちの少なくとも一方を加工進行方向PDに沿って移動させる加工移動部35と、を備えている。レーザ加工装置は、光ファイバ25の端面の薄膜に対する位置情報を検知する検知部と、複数の光ファイバ25のうちの少なくとも一つに連結され、検知部からの情報に基づいて、光ファイバ25の端面を加工進行方向に直交する成分を含む方向に移動させるファイバ移動部も備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板と、基板に配置された薄膜とを有する太陽電池に用いられる被加工基板を加工するレーザ加工装置に関する。
【背景技術】
【0002】
薄膜太陽電池に用いられる被加工基板60は、ガラス基板61と、このガラス基板61に設けられた透明電極膜62と、この透明電極膜62に設けられたSiなどを含む光電変換層63と、この光電変換層63に設けられた裏面金属電極膜64とを有している(図8参照)。そして、所望の電圧を得るために、これら透明電極膜62、光電変換層63および裏面金属電極膜64をセルに分割して、互いに直列接続する必要がある。このような直列接続を成膜とレーザパターニングを交互に行うことにより、3次元的な各層(膜)の接続構造とすることで形成する方法がある。この接続構造部分は、集積線65と呼ばれる(図9参照)。
【0003】
これらの集積線65は、発電(光電変換)には寄与しないため、集積線65を構成するのべ3本のスクライブラインは、近接するほど太陽電池基板としての変換効率が高くなり好ましい。このため、透明電極膜62に形成されるTCOスクライブ(パターニング)ライン62に沿わせて、光電変換層63にSiスクライブ(パターニング)ライン63を形成するとともに、裏面金属電極膜64にメタルスクライブ(パターニング)ライン64を形成することが好ましい。従来は、それぞれのスクライブラインを、基板外形やアライメントマークを基準にして所定の距離だけ離れた位置に加工していた。
【0004】
しかしながら、被加工基板60の大型化に伴う温度変化による被加工基板60の伸縮や、レーザ加工装置の精度上の問題から、スクライブラインを互いに近接させるにも限界がある。また、被加工基板60の大型化により、基板外形やアライメントマークを基準にしてレーザパターニングを行うと、基準から加工線までの距離が遠くなり、機械的精度を上げる必要がある。また、成膜とレーザパターニングを繰り返し行うので、必ずしも同じ環境(とりわけ温度状況)でレーザパターニングが行われるわけではなく、同じ基板外形やアライメントマークを基準としていては大きなずれが生じてしまうこともあり、補正が必要となる。さらに、このような補正は、レーザパターニングの際に毎回必要となるので、非常に手間と時間がかかる。
【0005】
また、通常の加工プログラムは、直線補間法によるため、被加工基板60内に温度分布が生じて、基準となるべきTCOスクライブライン62が、後工程を行う際(Siスクライブライン63を形成するときやメタルスクライブライン64を形成するとき)に曲線状となってしまっている場合には、場所によってライン間距離が変化してしまう。
【0006】
また、従来、第1層上に積層される第2層に、第1層に形成された第1のスクライブラインに対応する第2のスクライブラインが第1のスクライブラインに沿う形で形成されるよう、相対移動機構を制御することも知られている(特許文献1参照)。この方法によれば、加工済み線の各々を直接検知して各レーザパターニングを補正しながら行うため、精度良くレーザパターニングを行うことができる。
【0007】
しかしながら、特許文献1に記載されている態様では、複数のスクライブラインを同時に形成することはできない。また、複数のレーザ加工装置を用いることも考え得るが、複数のレーザ加工装置を用いると装置が大型化するだけでなく、装置の価格も高くなり、メンテナンスの手間もかかってしまう。また、そもそも、複数のレーザ加工装置を用いた場合には、加工済み線の各々に一定の度合いで近接させてレーザパターニングを行うことは困難である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2007−048835号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、このような点を考慮してなされたものであり、基準となるスクライブライン(加工済み線)に対して一定の距離を保って加工対象のスクライブラインを複数同時に形成することができるレーザ加工装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明によるレーザ加工装置は、
基板と、該基板に配置された薄膜とを有する太陽電池に用いられる被加工基板を加工するレーザ加工装置であって、
前記被加工基板を保持する保持部と、
レーザ光を発振するレーザ発振器と、
前記レーザ発振器から発振されるレーザ光を案内するとともに当該レーザ光を端面から外部に照射する複数の光ファイバと、
前記保持部および前記光ファイバの端面のうちの少なくとも一方を加工進行方向に沿って移動させる加工移動部と、
前記光ファイバの端面の前記薄膜に対する位置情報を検知する検知部と、
前記複数の光ファイバのうちの少なくとも一つに連結され、前記検知部からの情報に基づいて、該光ファイバの端面を前記加工進行方向に直交する成分を含む方向に移動させるファイバ移動部と、
を備えている。
【0011】
本発明によるレーザ加工装置において、
前記位置情報は、既に加工された加工済み線に基づいて得られ、
前記検知部は、各光ファイバの端面に対応する加工済み線の位置を検知し、
前記ファイバ移動部は、各光ファイバの端面を、該光ファイバの端面に対応する前記加工済み線の位置に基づいて移動させてもよい。
【0012】
本発明によるレーザ加工装置において、
前記位置情報は、既に加工された加工済み線に基づいて得られ、
前記検知部は、前記光ファイバのうちの少なくとも一つの端面に対応する加工済み線の位置を検知し、
前記ファイバ移動部は、各光ファイバの端面を、前記加工済み線の位置情報に基づいて移動させてもよい。
【0013】
本発明によるレーザ加工装置において、
前記検知部は、前記薄膜に関する情報を取得するデータ取得部を有し、
前記データ取得部は、前記光ファイバの端面に対して前記加工進行方向に沿った一方側に位置する第一データ取得部と、前記光ファイバの端面に対して前記加工進行方向に沿った他方側に位置する第二データ取得部とを有してもよい。
【0014】
本発明によるレーザ加工装置において、
前記検知部は、前記薄膜に関する情報を取得するデータ取得部を有し、
前記データ取得部は、前記光ファイバの端面に対して前記加工進行方向に沿った一方側に配置され、
前記データ取得部と前記光ファイバの端面の位置関係が、反転可能となっていてもよい。
【0015】
本発明によるレーザ加工装置において、
前記検知部は、前記薄膜に関する情報を取得するデータ取得部と、該データ取得部で取得された該薄膜に関する情報を処理する情報処理部と、該情報処理部によって処理された情報に基づいて前記光ファイバの端面の前記薄膜に対する位置を判断する判断部と、を有してもよい。
【0016】
本発明によるレーザ加工装置において、
前記検知部は、前記被加工基板上の障害物に関する情報も検知し、
前記ファイバ移動部は、前記検知部によって検知された情報に基づいて前記障害物を回避するよう前記光ファイバの端面を移動させてもよい。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、複数の光ファイバの端面を、検知部からの情報に基づいて加工進行方向に直交する成分を含む方向に移動することができる。このため、基準となるスクライブライン(加工済み線)に対して一定の距離を保って加工対象のスクライブラインを複数同時に形成することができる。そして、精度良く既存のスクライブラインのすぐ近くに次のスクライブラインを加工することができるので、極めて近接した状態でスクライブラインを形成することができる。このため、集積線の占める領域を小さくすることができ、ひいては、発電効率の高い太陽電池基板を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の第1の実施の形態によるレーザ加工装置の構成を示した側方図。
【図2】本発明の第1の実施の形態によるレーザ加工装置のファイバ保持筐体内の構成を示した上方平面図。
【図3】本発明の第1の実施の形態によるレーザ加工装置のファイバ保持筐体内の構成を示した側方図。
【図4A】本発明の第1の実施の形態によるレーザ加工装置によって被加工基板を加工する態様を示した斜視図。
【図4B】本発明の第1の実施の形態によるレーザ加工装置によって被加工基板を加工する態様の一例を示した上方平面図。
【図4C】本発明の第1の実施の形態によるレーザ加工装置によって被加工基板を加工する態様の別の例を示した上方平面図。
【図5】本発明の第1の実施の形態によるレーザ加工装置における加工移動部の移動態様を示した上方平面図。
【図6】本発明の第1の実施の形態の変形例によるレーザ加工装置における加工移動部の移動態様を示した上方平面図。
【図7】本発明の第1の実施の形態における被加工基板の加工態様を示した側方断面図。
【図8】被加工基板の層構成を示した側方断面図。
【図9】加工された被加工基板を示した上方平面図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
第1の実施の形態
以下、本発明に係るレーザ加工装置の第1の実施の形態について、図面を参照して説明する。ここで、図1乃至図7は本発明の第1の実施の形態を示す図である。
【0020】
本実施の形態のレーザ加工装置は、ガラス基板(基板)61と、ガラス基板61に配置された薄膜62,63,64とを有する太陽電池に用いられる被加工基板60を加工するためのものである(図8参照)。このうち、薄膜は、ガラス基板61上に設けられた透明電極膜62と、この透明電極膜62上に設けられたSiなどを含む光電変換層63と、この光電変換層63上に設けられた裏面金属電極膜64とを有している。
【0021】
レーザ加工装置は、図1に示すように、被加工基板60を保持する保持部1と、レーザ光Lを発振するレーザ発振器21と、レーザ発振器21から発振されるレーザ光Lを案内するとともに当該レーザ光Lを端面から外部に照射する複数の光ファイバ25と、光ファイバ25の端面を加工進行方向PD(図2参照)に沿って移動させる加工移動部35と、光ファイバ25の端面の薄膜に対する位置を検知する検知部(図4Aの符号41,42,43,45、参照)と、複数(本実施の形態では4つ)の光ファイバ25の各々に連結され、検知部からの情報に基づいて、光ファイバ25の端面を加工進行方向PDに直交する方向に移動させるアクチュエータ(ファイバ移動部)10(図2参照)と、を備えている。
【0022】
このうち、光ファイバ25の端面はファイバ保持筐体11内に配置されている。そして、加工移動部35によって、ファイバ保持筐体11が加工進行方向PDに沿って移動されることによって、光ファイバ25の端面が加工進行方向PDに沿って移動されることとなる。なお、図2に示すように、ファイバ保持筐体11内には、アクチュエータ10も配置されており、当該アクチュエータ10によってファイバ保持筐体11内で光ファイバ25の端面が移動されることとなる。
【0023】
なお、本実施の形態では、ファイバ移動部としてアクチュエータ10を用いて説明するが、このアクチュエータ10として圧電素子、リニアモータ、リニアコイル、シリンダなどを用いることができる。ただし、ファイバ移動部は、大きさが小さく、動作応答性、動作速度が速いものからなることが好ましい。
【0024】
また、図2に示すように、アクチュエータ10の各々は、加工進行方向PDに沿って互いにずれた位置に配置されており、加工進行方向PDに対して直交する方向に光ファイバ25の端面を駆動するように構成されている。
【0025】
ところで、本実施の形態では、光ファイバ25の端面が加工進行方向PDに沿って移動される態様を用いて説明するが、光ファイバ25の端面が被加工基板60に対して相対的に移動されれば、これに限られることはない。例えば、保持部1が加工進行方向PDに沿って移動されてもよいし、保持部1と光ファイバ25の端面の両方が加工進行方向PDに沿って移動されてもよい。また、本実施の形態では、光ファイバ25の端面を加工進行方向PDに直交する方向に移動させる態様を用いて説明するが、移動方向が加工進行方向PDに直交する成分を含む方向であれば、これに限られることはない。例えば、光ファイバ25の端面を加工進行方向PDに対して斜め方向に移動させる態様でもよい。
【0026】
上述した検知部は、図4Aに示すように、薄膜を撮影することで薄膜の画像を取得するCCDカメラなどからなる撮影部41と、撮影部41によって撮影された薄膜の画像を処理する画像処理部(情報処理部)42と、画像処理部42によって処理された画像に基づいて光ファイバ25の端面の薄膜に対する位置を判断する判断部43と、画像処理部42によって処理された画像を表示する画像表示部45と、を有している。なおこのうち、撮影部41は、薄膜に関する情報を取得するデータ取得部を構成しており、後述するTCOスクライブライン62やSiスクライブライン63の位置情報を取得する。
【0027】
また、撮影部41は、光ファイバ25の端面に対して加工進行方向PDに沿った一方側に配置されるように加工移動部35に設けられている(図5参照)。なお、加工移動部35は180°反転可能となっており、撮影部41と光ファイバ25の端面の位置関係が、今までの加工進行方向に対して180°反転可能となっている。このため、撮影部41を常に光ファイバ25の端面に対して加工進行方向PDの前方側に位置づけることができ、加工前に加工済み線の位置情報あるいは不具合情報を得ることができる。
【0028】
また、本実施の形態では、位置情報が、既に加工された加工済み線(例えば、TCOスクライブライン62やSiスクライブライン63など)に基づいて得られる。そして、撮影部41が各光ファイバ25の端面に対応するTCOスクライブライン(加工済み線)62やSiスクライブライン(加工済み線)63の位置情報を取得し、当該位置情報に基づいて判断部43が各光ファイバ25の端面に対応するTCOスクライブライン(加工済み線)62やSiスクライブライン(加工済み線)63の位置を判断することで検知し、検知結果に基づいて、アクチュエータ10が各光ファイバ25の端面を当該光ファイバ25の端面に対応する加工済み線の位置に基づいて移動させるように構成されている。
【0029】
なお、図1に示すように、レーザ発振器21と光ファイバ25との間には、レーザ発振器21から発振されたレーザ光Lを集光するための集光レンズ22が設けられている。また、図3に示すように、各光ファイバ25の端面の下方には、光ファイバ25の端面から照射されたレーザ光Lを集光させる結像レンズ17が設けられている。また、本実施の形態では、光電変換層63および裏面金属電極膜64を成膜する成膜装置(図示せず)が設けられている。なお、当該成膜装置は、透明電極膜62を成膜するように構成されていてもよい。
【0030】
また、上記では結像レンズ17を一つで構成される態様を用いて説明したが、これに限られることはなく、結像レンズ17が複数のレンズにより構成されて、これら複数のレンズによってレーザ光Lを結像させてもよい。
【0031】
次に、このような構成からなる本実施の形態の作用について述べる。
【0032】
まず、ガラス基板61と、当該ガラス基板61に配置された透明電極膜62とを有する被加工基板60が準備される(図7(a)参照)。その後、保持部1によって被加工基板60が保持される。このとき、本実施の形態では透明電極膜62がガラス基板61の下方に位置するようにして、保持部1によって被加工基板60が保持される。なお、これに限られることはなく、透明電極膜62がガラス基板61の上方に位置するようにして、保持部1によって被加工基板60が保持されてもよい。
【0033】
次に、レーザ発振器21からレーザ光Lが発振される(図1参照)。そして、当該レーザ光Lが、集光レンズ22を通過した後、複数(本実施の形態では4つ)の光ファイバ25内を案内される。その後、光ファイバ25の端面から、レーザ光Lが外部に照射され、透明電極膜62が加工されることとなる(図7(b)参照)。このとき、加工移動部35によって、光ファイバ25の端面が加工進行方向PDに沿って移動され、この結果、透明電極膜62が加工進行方向PDに沿って加工され、透明電極膜62に複数のTCOスクライブライン62が形成されることとなる。
【0034】
次に、成膜装置によって、ガラス基板61に設けられた透明電極膜62上にSiなどを含む光電変換層63が形成される(図7(c)参照)。その後、再び、レーザ発振器21からレーザ光Lが発振される(図1参照)。そして、当該レーザ光Lが、集光レンズ22を通過した後、複数の光ファイバ25内を案内される。その後、光ファイバ25の端面から、レーザ光Lが外部に照射され、光電変換層63が加工されることとなる。
【0035】
このときもやはり、加工移動部35によって、光ファイバ25の端面が加工進行方向PDに沿って移動され、この結果、光電変換層63が加工進行方向PDに沿って加工され、光電変換層63に複数のSiスクライブライン63が形成されることとなる(図7(d)参照)。
【0036】
このように光電変換層63が加工進行方向PDに沿って加工される際、本実施の形態では、以下の工程が行われる。
【0037】
まず、光電変換層63へのレーザ光Lの照射に先立って、撮影部41によって透明電極膜62の画像が取得され、画像処理部42によって撮影部41によって撮影された透明電極膜62の画像が処理され、判断部43によって画像に基づいて光ファイバ25の端面の透明電極膜62に対する位置が判断される(図4A参照)。より具体的には、判断部43によって、既に加工された各TCOスクライブライン62(本実施の形態では4つのTCOスクライブライン62の各々)の位置が判断されるとともに、TCOスクライブライン62に対応する各光ファイバ25の端面(本実施の形態では4つの光ファイバ25の端面)の位置が判断される。そして、アクチュエータ10によって、各光ファイバ25の端面が当該光ファイバ25の端面に対応するTCOスクライブライン(加工済み線)62の位置に基づいて移動される(図2参照)。
【0038】
このように本実施の形態によれば、既に形成されたTCOスクライブライン62を基準にして、常時、各光ファイバ25の端面の位置を補正することができる。このため、TCOスクライブライン62が曲線状に形成された場合であっても、TCOスクライブライン62の全域にわたって近接させて、Siスクライブライン63を形成することができるので、ひいては、集積線65の占める領域を小さくすることができる。また、このように、各光ファイバ25の端面の位置を常時補正することができるので、周辺の温度管理や加工装置の精度に関する仕様を軽減することができる。また、TCOスクライブライン62の各々が異なる曲がり方をしていても、各々のTCOスクライブライン62に合わせてSiスクライブライン63を形成することができる(図4B参照)。
【0039】
また、本実施の形態によれば、複数の光ファイバ25の端面の各々を、検知部からの情報に基づいて加工進行方向に直交する方向に移動することができる。このため、基準となるTCOスクライブライン62に対して一定の距離を保って加工対象のSiスクライブライン63を複数同時に形成することができる。
【0040】
さらに、本実施の形態によれば、図2に示すように、アクチュエータ10の各々が、加工進行方向PDに沿って互いにずれた位置に配置されており、加工進行方向PDに対して直交する方向に光ファイバ25の端面を駆動するように構成されている。このため、形成されるSiスクライブライン63の間隔が狭い場合であっても、加工進行方向PDに直交する方向に光ファイバ25の端面を互いに近接させることができる。
【0041】
なお、加工移動部35が被加工基板60の一端まで移動されてレーザスクライブ加工が終了すると、当該加工移動部35は180°反転され、撮影部41と光ファイバ25の端面の位置関係が今までの加工進行方向に対して180°反転されることとなる(図5参照)。このため、本実施の形態によれば、レーザスクライブ加工を加工移動部35の往復で行い、毎回同じ方向でレーザスクライブ加工を行うよりも効率的に加工する場合であっても、撮影部41を常に光ファイバ25の端面に対して加工進行方向PDの前方側に位置づけることができ、TCOスクライブライン62を基準にして、常時、各光ファイバ25の端面の位置を補正することができる。
【0042】
以上のようにして光電変換層63が加工され、光電変換層63にSiスクライブライン63が形成されると、次に、成膜装置によって、透明電極膜62に設けられた光電変換層63上に裏面金属電極膜64が形成される(図7(e)参照)。その後、再び、レーザ発振器21からレーザ光Lが発振される。そして、当該レーザ光Lが、集光レンズ22を通過した後、複数の光ファイバ25内を案内される。その後、光ファイバ25の端面から、レーザ光Lが外部に照射され、光電変換層63および裏面金属電極膜64が加工されることとなる(図7(f)参照)。
【0043】
このときもやはり、加工移動部35によって、光ファイバ25の端面が加工進行方向PDに沿って移動され、この結果、光電変換層63および裏面金属電極膜64が加工進行方向PDに沿って加工され、光電変換層63および裏面金属電極膜64にメタルスクライブライン64が形成されることとなる。
【0044】
なお、このように光電変換層63および裏面金属電極膜64が加工進行方向PDに沿って加工される際、本実施の形態では、Siスクライブライン63を形成する際と同様の工程が行われる。この点、Siスクライブライン63を形成する際の説明と重複する内容となることから、主要な作用効果についてのみ以下記載する。
【0045】
まず、本実施の形態によれば、既に形成されたSiスクライブライン63またはTCOスクライブライン62を基準にして、常時、各光ファイバ25の端面の位置を補正することができる。このため、やはり、Siスクライブライン63またはTCOスクライブライン62が曲線状に形成された場合であっても、Siスクライブライン63の全域にわたって近接させて、メタルスクライブライン64を形成することができるので、集積線65の占める領域を小さくすることができる。また、このように、各光ファイバ25の端面の位置を常時補正することができるので、周辺の温度管理や加工装置の精度に関する仕様を軽減することができる。
【0046】
また、本実施の形態によれば、複数の光ファイバ25の端面の各々を、検知部からの情報に基づいて加工進行方向に直交する方向に移動することができる。このため、基準となるSiスクライブライン63に対して一定の距離を保って加工対象のメタルスクライブライン64を複数同時に形成することができる。
【0047】
さらに、図2に示すようにアクチュエータ10の各々が、加工進行方向PDに沿って互いにずれた位置に配置されており、加工進行方向PDに対して直交する方向に光ファイバ25の端面を駆動するように構成されているので、形成されるメタルスクライブライン64の間隔が狭い場合であっても、加工進行方向PDに直交する方向に光ファイバ25の端面を互いに近接させることができる。
【0048】
ところで、上記では、撮影部41が、光ファイバ25の端面に対して加工進行方向PDに沿った一方側に配置されるように加工移動部35に設けられ、加工移動部35が180°反転することで、撮影部41を常に光ファイバ25の端面に対して加工進行方向PDの前方側に位置づける態様を用いて説明した。
【0049】
しかしながら、これに限られることはなく、図6に示すように、撮影部(データ取得部)41が、光ファイバ25の端面に対して加工進行方向PDに沿った一方側に位置する第一撮影部(第一データ取得部)41aと、光ファイバ25の端面に対して加工進行方向PDに沿った他方側に位置する第二撮影部(第二データ取得部)41bとを有する態様を用いてもよい。このような態様によれば、加工移動部35を180°反転させることなく、撮影部41を常に光ファイバ25の端面に対して加工進行方向PDの前方側に位置づけることができる。
【0050】
また、図6に示すような態様によれば、加工進行方向PDの後方側に位置する撮影部(第一撮影部41aまたは第二撮影部41b)によって、ラインの加工状態や、基準となったラインに対する加工されたラインの近接度合いを常時確認することができる。そして、ラインの加工が不十分な場合には、該当箇所のみ再度レーザ光Lで加工することもできる。このため、被加工基板60の加工をより精度よく行うことができる。
【0051】
また、上記では、データ取得部として薄膜を撮影することで薄膜の画像を取得する撮影部41を用いて説明した(図4A参照)。しかしながら、これに限られることはなくデータ取得部として、例えばラインセンサやレーザスキャンなどを用いることができる。
【0052】
また、上記では、アクチュエータ10が各光ファイバ25に連結され、光ファイバ25の端面の各々が加工進行方向PDに直交する方向に移動される態様を用いて説明したが、これに限られることはなく、複数の光ファイバ25のうちの一つが加工移動部35に対して加工進行方向PDに直交する方向に移動せず固定され、このように固定された光ファイバ25に対して、それ以外の光ファイバ25が加工進行方向PDに直交する方向に移動される態様を用いてもよい。なお、この場合には、固定された光ファイバ25の端面は加工移動部35の移動によって加工進行方向PDに直交する方向に移動されることとなる。
【0053】
なお、図2では、端面が円形状からなる光ファイバを示しているが、これに限られることはなく、光ファイバ25の端面は矩形状からなっていてもよい。このように矩形状の端面からなる光ファイバ25を用いる場合には、薄膜に形成されるスクライブラインの両縁の直線性を実現することができ、好ましい。
【0054】
ところで、本実施の形態のデータ取得部である撮影部41は、被加工基板60上のゴミなどの障害物D(図4C参照)に関する情報も取得することができるようになっている。そして、撮影部41からの情報によってゴミなどの障害物Dが存在すると判断部43で判断されると、アクチュエータ10は、撮影部41によって取得された情報に基づいて当該障害物Dを回避するよう対応する光ファイバ25の端面を移動させる(図4C参照)。
【0055】
このため、ゴミなどの障害物Dによってレーザ光Lが遮断されて薄膜が加工されないことを未然に防止することができる。また、光ファイバ25の端面を個別に移動させることができるので、薄膜のうち本来加工すべき箇所からのずれを最小限に抑えることができる。
【0056】
また、上記では、レーザスクライブ加工を加工移動部35の往復で行う態様を用いて説明したが、これに限られることはなく、毎回同じ方向でレーザスクライブ加工を行ってもよい。この場合には、加工移動部35を180°反転させる必要はなく、また、二つの撮影部41a,41bを用いる必要もない。
【0057】
第2の実施の形態
次に、本発明の第2の実施の形態について説明する。第1の実施の形態は、検知部が各光ファイバ25の端面に対応するTCOスクライブライン(加工済み線)62やSiスクライブライン(加工済み線)63の位置を検知し、アクチュエータ10が各光ファイバ25の端面を当該光ファイバ25の端面に対応する加工済み線の位置に基づいて移動させる態様であった。これに対して、第2の実施の形態は、検知部が光ファイバ25の一つの端面に対応する加工済み線の位置を検知し、アクチュエータ10が各光ファイバ25の端面を検知した加工済み線の位置情報に基づいて移動させる態様からなっている。その他の構成は、第1の実施の形態と略同一である。
【0058】
被加工基板60の温度変化などによるTCOスクライブライン62やSiスクライブライン63の蛇行状況が、当該被加工基板60において同傾向であると判断できる場合などには、本実施の形態のように、光ファイバ25の一つの端面に対応するTCOスクライブライン62やSiスクライブライン63などの加工済み線の位置情報に基づいて、アクチュエータ10が各光ファイバ25の端面を移動させればよい。
【0059】
このような態様によれば、基準とする情報源を少なくすることができるので、各光ファイバ25の端面を容易かつ迅速に位置合わせすることができる。また、撮影部41によって撮影する範囲を小さくしたり、ラインセンサやレーザスキャンで走査させる範囲を短くしたりすることもでき、ひいては簡素で価格の安い部材を用いることができる。このため、上述したようにTCOスクライブライン62やSiスクライブライン63の蛇行状況が当該被加工基板60において同傾向であると判断できる場合などには、本実施の形態の態様を用いることが好ましい。
【0060】
ところで、上記では、薄膜が、ガラス基板61に設けられた透明電極膜62と、この透明電極膜62上に設けられたSiなどを含む光電変換層63と、この光電変換層63上に設けられた裏面金属電極膜64とを有している態様を用いて説明したが、これに限られることはなく、薄膜は2層からなってもよいし、4層以上からなってもよい
【0061】
また、上記では複数のレーザ発振器21を用いて説明したが、これに限られることはなく、一台のレーザ発振器21から照射されたレーザ光Lを分岐して、分岐されたレーザ光Lが各光ファイバ25を経て、その端面から照射される態様であってもよい。
【符号の説明】
【0062】
1 保持部
10 ファイバ移動部(アクチュエータ)
21 レーザ発振器
25 光ファイバ
35 加工移動部
41 撮影部(データ取得部)
41a 第一撮影部(第一データ取得部)
41b 第二撮影部(第二データ取得部)
42 画像処理部(情報処理部)
43 判断部
60 被加工基板
61 ガラス基板(基板)
62 透明電極膜(薄膜)
62 TCOスクライブライン(加工済み線)
63 光電変換層(薄膜)
63 Siスクライブライン(加工済み線)
64 裏面金属電極膜(薄膜)
64 メタルスクライブライン(加工済み線)
L レーザ光

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、該基板に配置された薄膜とを有する太陽電池に用いられる被加工基板を加工するレーザ加工装置において、
前記被加工基板を保持する保持部と、
レーザ光を発振するレーザ発振器と、
前記レーザ発振器から発振されるレーザ光を案内するとともに当該レーザ光を端面から外部に照射する複数の光ファイバと、
前記保持部および前記光ファイバの端面のうちの少なくとも一方を加工進行方向に沿って移動させる加工移動部と、
前記光ファイバの端面の前記薄膜に対する位置情報を検知する検知部と、
前記複数の光ファイバのうちの少なくとも一つに連結され、前記検知部からの情報に基づいて、該光ファイバの端面を前記加工進行方向に直交する成分を含む方向に移動させるファイバ移動部と、
を備えたことを特徴とするレーザ加工装置。
【請求項2】
前記位置情報は、既に加工された加工済み線に基づいて得られ、
前記検知部は、各光ファイバの端面に対応する加工済み線の位置を検知し、
前記ファイバ移動部は、各光ファイバの端面を、該光ファイバの端面に対応する前記加工済み線の位置に基づいて移動させることを特徴とする請求項1に記載のレーザ加工装置。
【請求項3】
前記位置情報は、既に加工された加工済み線に基づいて得られ、
前記検知部は、前記光ファイバのうちの少なくとも一つの端面に対応する加工済み線の位置を検知し、
前記ファイバ移動部は、各光ファイバの端面を、前記加工済み線の位置情報に基づいて移動させることを特徴とする請求項1に記載のレーザ加工装置。
【請求項4】
前記検知部は、前記薄膜に関する情報を取得するデータ取得部を有し、
前記データ取得部は、前記光ファイバの端面に対して前記加工進行方向に沿った一方側に位置する第一データ取得部と、前記光ファイバの端面に対して前記加工進行方向に沿った他方側に位置する第二データ取得部とを有することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載のレーザ加工装置。
【請求項5】
前記検知部は、前記薄膜に関する情報を取得するデータ取得部を有し、
前記データ取得部は、前記光ファイバの端面に対して前記加工進行方向に沿った一方側に配置され、
前記データ取得部と前記光ファイバの端面の位置関係が、反転可能となっていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載のレーザ加工装置。
【請求項6】
前記検知部は、前記薄膜に関する情報を取得するデータ取得部と、該データ取得部で取得された該薄膜に関する情報を処理する情報処理部と、該情報処理部によって処理された情報に基づいて前記光ファイバの端面の前記薄膜に対する位置を判断する判断部と、を有することを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載のレーザ加工装置。
【請求項7】
前記検知部は、前記被加工基板上の障害物に関する情報も検知し、
前記ファイバ移動部は、前記検知部によって検知された情報に基づいて前記障害物を回避するよう前記光ファイバの端面を移動させることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載のレーザ加工装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4A】
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【図4B】
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【図4C】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−167724(P2011−167724A)
【公開日】平成23年9月1日(2011.9.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−33793(P2010−33793)
【出願日】平成22年2月18日(2010.2.18)
【出願人】(000002428)芝浦メカトロニクス株式会社 (907)
【Fターム(参考)】