レーザ接合方法、太陽電池の製造方法および太陽電池製造装置
【課題】電極が適正な荷重もしくは圧力で押圧されて、電極と接続配線が良好な接触状態にあり、レーザ接合後に良好な接合状態が得られる接触状態を規定し、規定した接触状態でレーザ接合を実施するためのレーザ接合方法、これを応用した太陽電池の製造方法および太陽電池製造装置を提供する。
【解決手段】レーザ接合方法は、素子が形成され、前記素子に電気的に接続された電極を有する素子基板に、接続配線としてのインターコネクタ2を重ね合わせる工程と、前記重ね合わせる工程の後に、インターコネクタ2のうち窪み部10を露出させつつその周囲の平坦部を押圧するための押圧治具13を用いて、窪み部10を前記電極に重ね合わせた状態で前記平坦部を押圧することによって、前記平坦部を前記素子基板に向けて変形させる工程と、前記変形させる工程の後に、前記窪み部に向けてレーザ光を照射する工程とを含む。
【解決手段】レーザ接合方法は、素子が形成され、前記素子に電気的に接続された電極を有する素子基板に、接続配線としてのインターコネクタ2を重ね合わせる工程と、前記重ね合わせる工程の後に、インターコネクタ2のうち窪み部10を露出させつつその周囲の平坦部を押圧するための押圧治具13を用いて、窪み部10を前記電極に重ね合わせた状態で前記平坦部を押圧することによって、前記平坦部を前記素子基板に向けて変形させる工程と、前記変形させる工程の後に、前記窪み部に向けてレーザ光を照射する工程とを含む。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザ接合方法、太陽電池の製造方法および太陽電池製造装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の半導体装置の一例として、太陽電池がある。
「太陽電池」の一形態として、複数の太陽電池セルを所定の金属配線(インターコネクタ)によって互いに電気的に接続させた態様の太陽電池および太陽電池モジュールがある。この種の太陽電池では、個々の太陽電池セルの表面(受光面)と裏面(非受光面)とに、表面電極と裏面電極とがそれぞれ形成されている。この種の太陽電池は次のように製造される。
【0003】
まず、図14に示すように、1つの太陽電池は複数の太陽電池セル1をインターコネクタ2によって連結した構造となっている。太陽電池セル1の表面電極側(表面電極は図示せず)に、インターコネクタ2の一端側が接続され、インターコネクタ2のもう一端側が隣接する太陽電池セル1の裏面電極側(裏面電極は図示せず)に接続されている。このような関係で複数の太陽電池セル1はインターコネクタ2によって直列に接続されている。
インターコネクタ2と電極とは、予めインターコネクタ2にめっきされているはんだを介して、もしくはセル1に予めめっきされているはんだを介して、もしくはその両方を介して、接合される。
【0004】
太陽電池セル1の表面側は図15のように、銀などからなる導電粒子ペーストによって形成されている表面電極3とフィンガー電極4とが形成されている。太陽光によって発電された電流は、フィンガー電極4から表面電極3へと集まり、表面電極3に接続されたインターコネクタ2によってモジュールの外へと集電される。
【0005】
ところが、このような太陽電池の受光面においては、フィンガー電極4および表面電極3およびインターコネクタ2が形成された領域は、太陽光が遮光されるため、発電には寄与しない。そこで、より高い変換率を求めて表面電極を裏面側に配置した構造が提案されている。そのような太陽電池を開示した文献の一例として特開平2−51282号公報(特許文献1)がある。
【0006】
特許文献1に開示された太陽電池では、太陽電池セルのP型およびN型の半導体層の基本的な構成は変更せずに、太陽電池セルに貫通電極を形成することによって、インターコネクタを太陽電池セルの裏面側に配置し、表面側に配置する電極は、従来のものよりも幅を小さくした表面電極およびフィンガー電極のみとする構造が提案されている。
【0007】
特許文献1の構造では、図16に断面図で示すように、太陽電池セルに貫通孔5を形成し、太陽電池表面側に形成されたN型半導体層上(図示せず)に形成された表面電極3から貫通孔5中に形成された導電体層を通じて、太陽電池裏面上に形成されたN型電極6と電気的に接続されている。図16においては、上側の面が裏面(非受光面)であり、下側の面が表面(受光面)である。太陽電池裏面には、P型半導体層(図示せず)が形成され、P型半導体層上にはP型裏面電極8とこれに電気的に接続されたP型電極7が形成されている。太陽電池裏面上に形成されたN型電極6は、P型電極7とはクリアランスを設けて配置されるか、または絶縁材料層9を間に挟むように配置されることによって、N型電極6とP型電極7とが電気的に接続しないように形成されている。これらの平面的位置関係の一例を図17に示す。特許文献1においては、N型電極6およびP型電極7を全て太陽電池セル1の裏面側に形成することにより、インターコネクタ2は太陽電池セル1の裏面のみに接続される構造となっている。このような特許文献1の構造は、インターコネクタによって遮光されていた面積を低減することで、太陽電池モジュールの発電効率向上を図ったものといえる。
【0008】
ところが、太陽電池セル1の裏面のみにインターコネクタ2を接続する上記構造では、従来のリフロー加熱などでの全体加熱方式でインターコネクタ2とN型電極6およびP型電極7とをはんだ接合すると、主に銅材で形成されているインターコネクタ2と主にシリコンで形成されている太陽電池セル1との線膨張係数差によって熱応力が発生し、インターコネクタ2とN型電極6およびP型電極7との接合部が破断したり、または太陽電池セル1が反ることにより後の樹脂封止工程で太陽電池セル1が割れる、などの不具合が生じる。
【0009】
そこで、インターコネクタ2とシリコン1の熱応力による不具合を回避する手段として、特開2004−134654号公報(特許文献2)では、インターコネクタ2とN型電極6およびP型電極7との接続を、全体加熱で行なうのではなく、レーザ光によりインターコネクタ2と接続する電極上の領域のみを局所加熱することによって行なう方法が採られている。特許文献2に開示されている発明は、インターコネクタ2および太陽電池セル1の加熱される領域を最小限にとどめることで、熱応力の発生する度合いを低減し、上記不具合の発生を回避するものである。
【0010】
さらに、後述する関連技術が特開平7−335697号公報(特許文献3)に記載されている。
【特許文献1】特開平2−51282号公報
【特許文献2】特開2004−134654号公報
【特許文献3】特開平7−335697号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
レーザ接合を行なう場合には、レーザ光照射時における電極とインターコネクタとの接触状態を良好にしておく必要がある。もし両者間の接触状態が悪いと、溶融したはんだが電極もしくはインターコネクタと接することができず、インターコネクタと電極とが接合されないという不具合や、接合されたとしても接合面積が小さくなってしまい、その結果、接合強度が低くなるという不具合が発生する。また、インターコネクタから電極に熱が伝わりにくく、電極がはんだ接合温度に達しないことで、はんだが濡れずにはんだ接合されないという不具合も発生する。また、レーザー照射時にインターコネクタから電極および太陽電池セルへの熱伝導性が悪くなることによって、インターコネクタの温度が過剰に上昇し、インターコネクタの穴開き不具合が発生することもある。
【0012】
1〜100ミリ秒オーダーの短い時間で高出力のレーザーを照射する、いわゆる高密度パワーでのレーザ接合時には、上記の接合不具合を回避するためには、インターコネクタと電極との接触状態の管理がより重要になる。
【0013】
図18は、図16に示した断面構造を有する太陽電池セルについて、インターコネクタ2と接続されるN型電極6とP型電極7を、太陽電池セル1を裏面側(非受光面)から見たときの透視図で示した一例である。図18のように、1つの太陽電池セル上の複数の電極とインターコネクタとを接続する場合には生産性を向上させるために、レーザ出射口などのレーザ照射部や、太陽電池セルを配置するステージなどを移動させることなく、ガルバノミラーなどでレーザ光をスキャンしてする。こうして複数の電極、たとえば1つの太陽電池セル内の全ての電極に対する接合作業を一括して行なう。
【0014】
このように、1つの太陽電池セル上の複数の電極とインターコネクタとを一括して接合する場合には、複数の電極とインターコネクタとを均一な状態で接触させるために、インターコネクタ上部から治具によって、一括して複数のインターコネクタと複数の電極とを適正範囲で押圧する必要がある。
【0015】
しかし、複数の電極と配線材とを一括して押圧する場合、押圧する複数の電極間において、太陽電池セルやインターコネクタの厚みバラツキや、レーザ接合装置および治具の平行度バラツキなどがあることによって、一括して接合する全電極間で均一な接触状態となるように押圧しにくいという問題がある。
【0016】
それに対して、複数の電極と配線材とを一括して押圧するときの接触状態を良好にするための手段の一例が、上記特許文献3に記載されている。この特許文献3では、複数の電極と接続配線とを一括して押圧するための治具において、複数の電極に対して個別電極毎に押圧量を調整できるように、1つの電極に対して1つの上下可動構造またはバネ構造を有する治具によって押圧し、被接合部材の厚みバラツキを吸収して、全電極において、接合配線と均一な接触状態を作ることで、良好な接合を得ることを目的としている。
【0017】
しかし、特許文献3で用いる治具のバネ構造は、繰り返し使用することでバネが劣化し、バネの変形量が小さくなったり、またはバネ定数が不均一となることで、適正な接触状態を得られない電極が発生するという不具合がある。
【0018】
また、上記の不具合は定期的に押圧状態を検査しない場合には、レーザ光を照射した後でないとわからず、実際の製品で不具合が発生して初めてわかるものである。
【0019】
接合不良を未然に防止するためには、各電極が適正な接触状態になっているか否かをレーザ光照射前に確認することが求められる。そのためには、電極とインターコネクタとの適正な接触状態とは、どのような押圧状態であるかを事前に規定して把握しておく必要がある。
【0020】
そこで、本発明は、電極が適正な荷重もしくは圧力で押圧されて、電極と接続配線が良好な接触状態にあり、レーザ接合後に良好な接合状態が得られる接触状態を規定し、規定した接触状態でレーザ接合を実施するためのレーザ接合方法、これを応用した太陽電池の製造方法および太陽電池製造装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0021】
上記目的を達成するため、本発明に基づくレーザ接合方法は、素子が形成され、前記素子に電気的に接続された電極を有する素子基板に、平坦部と窪み部とを有する接続配線を重ね合わせる工程と、前記重ね合わせる工程の後に、前記接続配線のうち前記窪み部を露出させつつ前記窪み部の周囲の前記平坦部を押圧するための押圧治具を用いて、前記窪み部を前記電極に重ね合わせた状態で前記平坦部を押圧することによって、前記平坦部を前記素子基板に向けて変形させる工程と、前記変形させる工程の後に、前記窪み部に向けて前記レーザ光を照射する工程とを含む。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、良好な接合状態を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
(実施の形態1)
本発明に基づく実施の形態1におけるレーザ接合方法、太陽電池の製造方法および太陽電池製造装置について説明する。
【0024】
以下、本実施の形態では、太陽電池セル上の電極と窪み部を有するインターコネクタとの適正な押圧条件を規定し、規定した条件でレーザ接合した例を示す。上述の各発明は、下記の各種実験評価によって裏付けられたものである。
【0025】
まず、太陽電池を構成する太陽電池セルおよびインターコネクタおよび押圧治具を備えたレーザー照射装置について説明する。
【0026】
図16に、本実施の形態で用いられる太陽電池セル1の断面構造を示す。この太陽電池セル1自体は従来と同じものである。この太陽電池セル1においてはPN結合が形成され、裏面にN型電極6およびP型電極7が形成されている。N型電極6とP型電極7とは、電極のクリアランスおよび絶縁材料層9によって、電気的には接続していない構造になっている。N型電極6およびP型電極7の厚みはそれぞれ30μm、P型裏面電極8の厚みは50μm、太陽電池セル表面から絶縁材料層9表面までは60μmである。
【0027】
図1は、図16に示した断面構造を有する太陽電池セル1について、インターコネクタ2と接続されるN型電極6およびP型電極7を、太陽電池セル1裏面(非受光面)側から透視した様子を示した図である。図1に示す太陽電池セル1は15.5cm角であり、この中に、直径3mmのN型電極6とP型電極7とが、銀粒子ペーストを焼成して形成されている。1つの太陽電池セル1には、N型電極6が32個、P型電極7が16個形成されており、N型電極6とP型電極7との合計で48個形成されている。
【0028】
N型電極6とP型電極7とは図1に示すように1つの直線上に連なるように混在して形成されているため、インターコネクタ2はそれぞれ櫛歯状の形状を有している。インターコネクタ2は、太陽電池セル1を縦断する延在部2aと、延在部2aからN型電極6とP型電極7上に向かって存在する櫛部2bとがあり、延在部2aの幅は7mm、櫛部2bの幅は7mmで、延在部2aから突出している櫛部2bの長さは5mmである。
【0029】
インターコネクタ2とP型電極7とが重なる部分の断面図を図2に示す。図2に示すようにインターコネクタ2はP型電極7に重なる部分に窪み部10を有する。窪み部10は上から見て円形であり、その内径は2mm、窪み深さが100μmとなっている。窪み部10は、予め金型でのパンチ加工などによって、インターコネクタ2の櫛部2bに形成されたものである。
【0030】
インターコネクタ2においては、厚さ100μmの銅材11の表裏両面にそれぞれ無鉛はんだが予めめっきされることによって、表裏両面にそれぞれ厚み40μmのはんだ層12が形成されている。
【0031】
窪み部10の外側で窪んでおらず平板状の形状を保っている領域のうち、窪み部10の中心から2.5mm〜3.5mm外側の周縁部を押圧治具13にて押圧する。
【0032】
押圧治具13および太陽電池セル1の全体を上からみたところを図3に示す。押圧治具13の形状を太線で表示している。押圧治具としては様々な平面形状のものが考えられるが、押圧治具の第1の例としてここでは押圧治具13を示している。この例では、N型電極6およびP型電極7からなるひとまとまり、すなわち1列分に対して1枚の押圧治具13が被さることとなる。押圧治具13は細長い長方形の板状であり、N型電極6およびP型電極7に対応する位置にはN型電極6およびP型電極7を露出させるための開口部17が設けられている。
【0033】
押圧治具の第2の例を図4に示す。ここで第2の例として示す押圧治具130は、1列分の電極だけでなく、1つの太陽電池セル1の全体を被覆するような広い面積の板状の部材となっており、複数列の開口部17が設けられている。
【0034】
再び押圧治具の第1の例に戻って説明を続ける。
図2では、1つのP型電極7上にインターコネクタ2を押圧する様子を示している。実際には、1つの太陽電池セル1上の、N型電極6とP型電極7との合計48個の全ての電極に対応する各領域において同時に押圧する。図2に示すように、押圧治具13は窪み部10の外側を押圧する。全48個の電極を同時に押圧するために、本レーザ接合装置は、電極上に存在する押圧治具13を一括して押圧する平板状の治具(図示せず)を備えている。
【0035】
1つの太陽電池セル1上の48個の電極全てを同時に押圧治具13にて押圧した状態で、出射口から照射されたレーザ光を、ガルバノミラーで反射して、全48個の電極に照射する。このとき、レーザ光の照射口および、太陽電池セル1を配置しているステージは移動させない。ガルバノミラーにて照射位置を制御することで、照射位置精度を向上し、また、全電極を照射するのにかかる時間を短縮している。押圧治具13の開口部17を通じてレーザ光が照射される様子を図5に示す。レーザ光は矢印16aまたは矢印16bで示すように窪み部10の底面に向けて照射される。レーザ光によって窪み部10の底面が加熱されて底面のはんだ層12が溶融し、P型電極7とインターコネクタ2との間ではんだ付けがなされ、両者は電気的に接合される。
【0036】
ここからは、最適な押圧条件を規定する方法について説明する。
まず、押圧状態とインターコネクタ2の変形状態の関係について説明する。
【0037】
図2は、押圧治具13にて押圧し始める前の状態の電極近傍の断面模式図である。ここでは電極としてP型電極7を例にとって説明しているが、N型電極6とインターコネクタ2との間の接続に関しても同様である。
【0038】
図6は、窪み部10の外側を上記の位置にて押圧治具13にて押圧し、インターコネクタ2が、P型電極7側に変形している状態の模式図である。図6の状態よりもさらに押圧荷重を大きくしてインターコネクタ2の変形を大きくし、インターコネクタ2がP型裏面電極8に接触した状態の模式図を図7に示す。
【0039】
なお、図7の状態に至っていても、押圧治具13を取り去った後には、図8に示すようにインターコネクタ2の接合されていない部分はある程度弾性回復して浮き上がる。
【0040】
(荷重の大きさと変位量との関係を調べる実験)
以下、良好な接合を得るための押圧条件を求めた手法とその結果を記す。まず、1つの電極において、押圧荷重とインターコネクタ2の変形量との関係を求める。1つの電極(たとえばP型電極7)において、押圧治具13上に重りをのせて、その重りに対応するインターコネクタ2の変位量を測定する。以下「荷重の大きさ」という場合、重り自体の重さに押圧治具13の重さを加えたものを意味するものとする。
【0041】
インターコネクタ2の変位量は、押圧治具13の上面の位置に注目し、重りをのせる前後でのP型電極7の側への押圧治具13上面の変位量をレーザー変位計にて測定する。このとき、押圧治具13は、剛性体である金属材で形成されているものを使用する。
【0042】
このようにして求めた、荷重の大きさとインターコネクタ2の変位量との関係を図9に示す。電極1個当りの荷重の大きさを「押圧荷重」として横軸に記している。
【0043】
図9のグラフでは、インターコネクタ2の変位量から、弾性変形領域、塑性変形領域、変形完了領域の3つの範囲に分けられる。弾性変形領域はインターコネクタ2の変位が微小で弾性限界を超えていない状態である。塑性変形領域はインターコネクタ2が弾性限界を超えて塑性変形している状態である。変形完了領域はインターコネクタ2がP型裏面電極8の表面に接触して変位が止まった状態である。これら3つの状態は、それぞれ図2、図6、図7の模式図で示される状態である。
【0044】
インターコネクタ2が塑性変形領域になる、すなわち図6の状態になるためには、図9のグラフから判断すると、少なくとも100g重の押圧荷重が必要である。
【0045】
押圧荷重が150g重では、図7に示すようにインターコネクタ2がP型裏面電極8の表面に接触して変位が止まった状態となった。
【0046】
そこで、インターコネクタ2を変形させるために必要な最低限の押圧荷重を100g重と結論付けた。少なくとも100g重より大きい荷重で押圧し、インターコネクタ2が電極側に変形している状態では、窪み部10の底部と電極とは良好な接触状態になっていることが推測される。
【0047】
(押圧荷重を求める実験)
次に、実際にレーザ光接合を行なう状態、すなわち、レーザ接合装置において1つの太陽電池セル内の32個のN型電極6と16個のP型電極7との合計48個の電極を一括して押圧したときに、実際に各電極にかかる押圧荷重を、感圧紙を用いて求める実験を行なった。すなわち、太陽電池セル1上に厚み100μmの感圧紙を配設し、その上からインターコネクタ2の窪み部10外側を押圧治具13により押圧した。感圧紙とは、圧力が加わるとその強度に応じて強く発色する性質を有する紙である。窪み部10と電極とが接触して押圧された領域は、感圧シートに圧力痕が残り、圧力痕の面積と発色強度を解析することによって、窪み部10と電極との接触面積と接触荷重すなわち押圧荷重とを測定できる。
【0048】
まず、上述したように、インターコネクタ2を変形させるためには100g重以上の荷重が必要である、1電極当りの押圧荷重を平均256g重、1つの太陽電池セル1上の全48電極に12.3kg重の全体荷重をかけて押圧した。そのときの全48ヶ所に作用した荷重を各電極毎に測定した。
【0049】
各電極に作用していた押圧荷重は、全48個の平均値は230g重と設定荷重値(256g重)と近い値となっているが、最小では100g重、最大で350g重と、48電極間でのバラツキ範囲が大きい状態となっていた。ただし、作用した押圧荷重が最小であった電極でも、インターコネクタ2の変位量評価から策定した1電極当りの必要最低押圧荷重である100g重には達していたことが確認できた。
【0050】
1電極当りの押圧荷重が平均256g重である条件でも、太陽電池セル1やインターコネクタ2やレーザ接合装置のステージおよび押圧治具の厚みや高低差バラツキによって、実際には、48電極のうちの最小押圧荷重が100g重であったことから、1電極当りの押圧荷重が平均100g重である条件では、実際には押圧荷重が100g重未満になっている電極は多数存在することが考えられる。
【0051】
(レーザ接合による接合状態の評価実験)
次に、太陽電池セル1とインターコネクタ2とのレーザ接合を実施し、接合状態の評価を行なう。
【0052】
3つのサンプルA,B,Cを用意し、これらにそれぞれ異なる条件で全体押圧荷重を加えて押圧した状態でそれぞれインターコネクタと電極とをレーザ接合し、インターコネクタ2の外観の評価を行なった。その結果を表1に示す。
【0053】
【表1】
【0054】
サンプルBは、バラツキも含めて48ヶ所の電極の全てにおいて平均押圧荷重が100g重以上となる条件として全体押圧荷重を12.3kg重と設定したので、1電極当りの平均の押圧荷重が256g重である。サンプルAは、全体押圧荷重を4.8kg重と設定したので、1電極当りの平均の押圧荷重は100g重である。サンプルCは、全体押圧荷重を20.5kg重と設定したので、1電極当りの平均の押圧荷重は427g重である。
【0055】
これら3通りの条件で実験したところ、条件Aでは、48個中1個の電極上において、インターコネクタ2の穴開き不具合が発生した。不具合が発生した電極では、インターコネクタ2の窪み部10底部と電極との接触状態が悪かったために、レーザ光の照射時に、インターコネクタ2の熱が電極に伝導しにくくなり、その結果、インターコネクタ2の温度が銅の融点以上に上昇し、インターコネクタ2が溶けて穴となったと考えられる。なお、サンプルB,Cでは、インターコネクタ2の穴開き不具合は発生していない。さらに、サンプルB,Cではいずれも外観上は問題なく接合されていることを確認した。
【0056】
(割れ、浮きについての評価)
次に、太陽電池セル1の割れや窪み部10の電極からの浮きについての評価を行なった。ここでいう「電極からの浮き」とは、図10に示すように窪み部10の底面の中央部が凸形状となって電極に付かずに浮いている状態を意味する。図10ではP型電極7について示しているがN型電極6においても同様の現象が起こり得る。
【0057】
サンプルB,Cでは、多くの電極において、図9で示すところの変形完了領域にあることが推測される。インターコネクタ2がP型裏面電極8表面に接触した状態では、押圧荷重はそのまますべて太陽電池セル1に作用するので、大きな荷重を付与した場合には、太陽電池セル1が割れるなどの不具合の発生が懸念される。
【0058】
そこで、このサンプルB,Cについて、エレクトロルミネッセンス試験を行なった。「エレクトロルミネッセンス試験」とは、太陽電池セルと接合されたインターコネクタに電流を流して、太陽電池セルを発光状態とし、その発光状態を観察する試験方法である。この方法によって、セル内のクラック発生の有無を観察したが、クラックの発生は見られなかった。
【0059】
また、サンプルB,Cにおいて、接合後の断面観察をした結果、窪み部10が図10に示したように浮いている電極はないことが確認できた。
【0060】
よって、サンプルB,Cでは、良好な接合状態を得ていることを確認した。
(接合強度評価)
次に、良好な接合状態となっているサンプルB,Cのうち、サンプルBについて、インターコネクタ2と電極との接合強度の評価を行なった。
【0061】
サンプルBについて、インターコネクタ2と電極との接合強度をインターコネクタの引張り試験により評価した結果を図11に示す。
【0062】
図11は、感圧紙で測定した各電極の押圧荷重と、その電極での引張り強度との関係を示している。押圧荷重と引張り強度との相関関係は見られなかった。全ての電極において引張り強度の限界に達して生じる破断の態様は、電極とインターコネクタのはんだ接合部で破断するというものではなく、太陽電池セルが割れるというものであった。したがって、はんだ接合自体は良好に行なえていたことが確認できた。
【0063】
この評価結果から、本実施の形態(窪み部10の深さが100μm)において、良好な接合を得るために電極部に必要な押圧加重に関する条件は、インターコネクタ2が電極側に変形した状態で、1電極あたり100g重より大きい押圧荷重が負荷されることであるといえる。
【0064】
この条件で押圧しつつレーザ接合をすることで、インターコネクタ2の穴開きや、太陽電池セル1の割れ、窪み部10の浮きなどの不具合のない、良好な接合を実施することができた。
【0065】
なお、上記実験で用いたインターコネクタでは、はんだの厚みは40μmであったが、はんだの厚みは片面当たり10μm以上40μm以下であればよい。押圧治具で押圧する位置は、窪み部の底部の中心から2.5mm以上3.5mm以下だけ離れた周縁部であればよい。電極の表面凹凸については1μm以上10μm以下であればよい。
【0066】
本実施の形態で示した各種実験から発明者らが得た知見から、本実施の形態における発明は以下のように把握することができる。なお、「接続配線」はインターコネクタに相当する。
【0067】
本実施の形態におけるレーザ接合方法は、素子が形成され、前記素子に電気的に接続された電極を有する素子基板に、平坦部と窪み部とを有する接続配線を重ね合わせる工程と、前記重ね合わせる工程の後に、前記接続配線のうち前記窪み部を露出させつつ前記窪み部の周囲の前記平坦部を押圧するための押圧治具を用いて、前記窪み部を前記電極に重ね合わせた状態で前記平坦部を押圧することによって、前記平坦部を前記素子基板に向けて変形させる工程と、前記変形させる工程の後に、前記窪み部に向けてレーザ光を照射する工程とを含む。
【0068】
前記接続配線は予めはんだがめっきされたものであることが好ましい。
本発明は、レーザ接合方法についての発明としても抽出することができるが、以下のように太陽電池の製造方法についての発明としても抽出することができる。
【0069】
本実施の形態における太陽電池の製造方法は、太陽電池素子が形成され、前記太陽電池素子に電気的に接続された電極を有する太陽電池素子基板に、平坦部と窪み部とを有する接続配線を重ね合わせる工程と、前記重ね合わせる工程の後に、前記接続配線のうち前記窪み部を露出させつつ前記窪み部の周囲の前記平坦部を押圧するための押圧治具を用いて、前記窪み部を前記電極に重ね合わせた状態で前記平坦部を押圧することによって、前記平坦部を前記太陽電池素子基板に向けて変形させる工程と、前記変形させる工程の後に、前記窪み部に向けてレーザ光を照射する工程とを含む。
【0070】
前記接続配線は、厚み100μmの銅板材の両面に片面当たり厚み10μm以上40μm以下のはんだがめっきされたものであり、前記窪み部の底部の内径が2mmであり、前記窪み部の深さが100μmであり、前記電極の大きさが直径2mm以上であり、前記電極の表面凹凸は1μm以上10μm以下であり、前記変形させる工程において、前記押圧治具は、前記窪み部の底部の中心から2.5mm以上3.5mm以下だけ離れた周縁部を押圧することが好ましい。
【0071】
前記レーザ光を照射する工程では、前記窪み部と前記電極との接触により前記電極に作用する圧力が0.31MPaより大きい状態として前記レーザ光を照射することが好ましい。ここでいう圧力値「0.31MPa」は、インターコネクタ2の窪み形状10とN型電極6またはP型電極7とが接する領域が窪み形状10の内側の直径2mmの領域であるときに、1つの電極当たり100g重の荷重をかけているものとして導き出された圧力値である。
【0072】
(実施の形態2)
本発明に基づく実施の形態2におけるレーザ接合方法、太陽電池の製造方法および太陽電池製造装置について説明する。
【0073】
本実施の形態での太陽電池セル、インターコネクタおよび押圧治具などの構造および寸法は、窪み部10の深さを除いてすべて実施の形態1で示したものと同じ条件である。
【0074】
本実施の形態では、インターコネクタ2がP型裏面電極8または絶縁材料層9に接触して変位が止まった状態である変形完了領域(図7に示した状態)に至るように押圧した状態でレーザ接合を実施することを前提条件として、良好な接合状態を得ることができるインターコネクタ2の窪み部10の深さを規定した。なお、変形完了領域に至っている状態は、押圧状態を管理しやすい状態でもある。
【0075】
本実施の形態では、50μm、100μm、150μm、200μmの4通りの深さの窪み部10の各々について、インターコネクタ2が変形完了領域に至るまで、すなわち、図7に示した状態になるまで押圧し、その状態でレーザ光を照射して接合を行ない、得られた接合状態の評価を行なった。表2に示すようにこれらの4通りの深さのサンプルをそれぞれサンプルD,E,F,Gというものとする。
【0076】
【表2】
【0077】
まず、実施の形態1で押圧荷重とインターコネクタ2の変位量との関係を求めた方法と同じ方法によって、変形完了領域に達するために必要な押圧荷重を求めた。求めた押圧荷重にて窪み部10の外側を、実施の形態1と同様に押圧してレーザ接合を実施した。
【0078】
接合後に、実施の形態1と同様に、その外観検査および太陽電池セルの割れの有無を評価したところ、サンプルD,E,F,Gのいずれにおいても太陽電池セルの割れの発生はなかったが、サンプルDでは、インターコネクタの穴開き不具合が発生した。
【0079】
本実施の形態の1枚の太陽電池セルの内部での厚みバラツキは30μmで、N型電極、P型電極、P型裏面電極、絶縁材料層の各層の厚みバラツキの合計は10μmであり、厚みバラツキの合計量は40μmである。
【0080】
サンプルDでは、インターコネクタ2の可能変位量は20μmであり、太陽電池セル基板の厚みバラツキである40μmよりも小さいので、太陽電池セル基板の厚みバラツキをインターコネクタの変位量によって吸収できない。そのため、窪み部10底部と電極との接触状態が悪い電極があり、インターコネクタ2の穴開き不具合が発生した。
【0081】
また、インターコネクタ2の穴開き不具合のなかったサンプルE,F,Gについて、インターコネクタ2の引張り試験を実施したところ、上記3つのいずれの深さのものでも、その破断の態様は太陽電池セルが割れることによるものであり、電極とインターコネクタ2のはんだ接合部での破断はなく、良好なはんだ接合が得られていた。
【0082】
しかし、接合部の断面観察を行なった結果、サンプルGでは、図10に示したように、窪み部10の底面中央部の電極からの浮きが見られた。このため、窪み部10の中心部付近では電極とはんだ接合されていないものが多く存在した。この図10に示したような状態では、接合部への応力集中によって、長期使用時の接合部寿命の低下が懸念されるため、良好な接合状態とはいえない。
【0083】
サンプルE,Fでは、図10のような浮きのある接合部は確認されず、良好な接合断面状態となっていた。
【0084】
したがって、押圧状態を管理しやすい状態であるところの変形完了領域(図7に示した状態)に押圧した状態でレーザ接合を実施する場合は、インターコネクタ2の窪み部10の深さは、100μm以上かつ150μm以下にする必要があることがわかった。
【0085】
本実施の形態では、実施の形態1と同じく、N型電極6およびP型電極7の厚みはいずれも30μm、P型裏面電極8の厚みは50μm、太陽電池セル1の表面から絶縁材料層表面までは60μmであるので、窪み部10の深さとインターコネクタ2の変位量との関係は、表3に示すようになる。
【0086】
【表3】
【0087】
よって、本実施の形態において、インターコネクタ2がP型裏面電極8もしくは絶縁材料層9に接触して変位が止まる状態、すなわち変形完了領域に達した状態(図7の状態)になるように押圧した状態でレーザ接合をするためには、良好な接合状態が得られるインターコネクタ2の変位量の範囲は、70μm以上、120μm以下であるといえる。
【0088】
表3において「インターコネクタの変位量」とは、インターコネクタ2の窪み部10外側の押圧治具13によって押圧されている箇所が、電極側に向かって変形し始めて、太陽電池素子基板に接触するまでの鉛直方向の移動距離である。
【0089】
したがって、本実施の形態における発明は以下のように表すことができる。本実施の形態における太陽電池の製造方法は、好ましいことに、既に述べた構成に加えて、前記接続配線は、厚み100μmの銅板材の両面に片面当たり厚み10μm以上40μm以下のはんだがめっきされたものであり、前記窪み部の底部の内径が2mmであり、前記電極の大きさが直径2mm以上であり、前記電極の表面凹凸は1μm以上10μm以下であり、前記変形させる工程において、前記押圧治具は、前記窪み部の底部の中心から2.5mm以上3.5mm以下だけ離れた周縁部を押圧するものであり、前記窪み部の深さは、前記変形させる工程において前記押圧治具によって押圧される前記周縁部が前記電極側に変形し始めてから前記基板に接触するまでの前記基板面に垂直な方向での移動距離が70μm以上120μm以下となるような深さである。
【0090】
本実施の形態における太陽電池の製造方法において、前記接続配線は予めはんだがめっきされたものであることが好ましい。
【0091】
なお、ここまでの説明では、インターコネクタ2と電極とを接合するためのはんだを、インターコネクタ2の両面に予めめっきしておくこととしていたが、図12に示すように電極上にもめっきなどの方法ではんだ層14を予め形成しておいてもよい。本実施の形態における太陽電池の製造方法において、前記電極は、予めその表面にはんだがめっきされたものであることが好ましい。
【0092】
あるいは、図13に示すように電極上に板状のはんだ材15を配設し、インターコネクタ2と板状のはんだ材15とを同時に電極に向けて押圧してレーザ接合することとしてもよい。本実施の形態における太陽電池の製造方法において、前記重ね合わせる工程は、前記電極と前記接続配線との間に板状はんだを配設する工程を含み、前記変形させる工程は、前記電極と前記接続配線との間に前記板状はんだを挟み込んだ状態で、前記接続配線を押圧することが好ましい。
【0093】
ここまで述べた内容は、太陽電池の製造方法の発明としてだけでなく、太陽電池製造装置の発明としても把握することができる。本実施の形態における太陽電池製造装置は、太陽電池素子が形成され、前記太陽電池素子に電気的に接続された電極を有する太陽電池素子基板に、平坦部と窪み部とを有する接続配線を重ね合わせたものに対して、前記接続配線のうち前記窪み部を露出させつつ前記窪み部の周囲の前記平坦部を押圧するための押圧治具と、前記窪み部に向けてレーザ光を照射するためのレーザ光照射部とを備え、前記押圧治具は、前記窪み部を前記電極に重ね合わせた状態で前記平坦部を押圧することによって、前記平坦部を前記太陽電池素子基板に向けて変形させるためのものである。この太陽電池製造装置においては、前記押圧治具は、前記窪み部の底部の中心から2.5mm以上3.5mm以下だけ離れた周縁部を押圧するためのものであることが好ましい。
【0094】
なお、上記各実施の形態において、押圧治具13に圧力または荷重を測定するための測定機構を設けて、治具での押圧が適正条件で実施されているかを随時測定することとしてもよい。
【0095】
本実施の形態における太陽電池製造装置においては、前記押圧治具は、弾性体を備えないことが好ましい。このようにすれば、押圧治具の弾性体の消耗などによる押圧バラツキが発生せず、接合不良を避けることができるからである。
【0096】
なお、上記各実施の形態において、押圧治具13に変位量測定機構を設けて、押圧治具13による押圧が適正条件で実施されているかを随時測定することとしてもよい。すなわち、本実施の形態における太陽電池製造装置において、前記押圧治具は、変位量測定機構を備えることが好ましい。
【0097】
なお、今回開示した上記実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではない。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更を含むものである。
【図面の簡単な説明】
【0098】
【図1】本発明に基づく実施の形態1における太陽電池セルについて、裏面側から見た透視図である。
【図2】本発明に基づく実施の形態1における太陽電池の製造方法においてインターコネクタとP型電極とが重なる部分の押圧し始める前の状態の断面図である。
【図3】本発明に基づく実施の形態1における押圧治具の第1の例および太陽電池セルの平面図である。
【図4】本発明に基づく実施の形態1における押圧治具の第2の例および太陽電池セルの平面図である。
【図5】本発明に基づく実施の形態1における押圧治具の開口部を通じてレーザ光が照射される様子の説明図である。
【図6】本発明に基づく実施の形態1における太陽電池の製造方法においてインターコネクタが変形している状態の断面図である。
【図7】本発明に基づく実施の形態1における太陽電池の製造方法においてインターコネクタがP型裏面電極に接触した状態の断面図である。
【図8】本発明に基づく実施の形態1における太陽電池セルにおいて押圧治具を取り去った後の図である。
【図9】本発明に基づく実施の形態1において荷重の大きさとインターコネクタの変位量との関係を示すグラフである。
【図10】本発明に基づく実施の形態1における太陽電池セルにおいて電極からの浮きが生じた箇所の断面図である。
【図11】本発明に基づく実施の形態1において各電極の押圧荷重とその電極での引張り強度との関係を示すグラフである。
【図12】本発明に基づく実施の形態1における太陽電池の製造方法において電極上にはんだ層を予め形成しておいた場合の電極近傍の断面図である。
【図13】本発明に基づく実施の形態1における太陽電池の製造方法において電極上にはんだ材を配置する場合の電極近傍の断面図である。
【図14】従来技術に基づく太陽電池の断面図である。
【図15】従来技術に基づく太陽電池セルの平面図である。
【図16】従来技術に基づく太陽電池セルの断面図である。
【図17】従来技術に基づく太陽電池セル上の電極の平面的位置関係を示す図である。
【図18】従来技術に基づく太陽電池セルについて、裏面側から見た透視図である。
【符号の説明】
【0099】
1 太陽電池セル、2 インターコネクタ、3 表面電極、4 フィンガー電極、5 貫通孔、6 N型電極、7 P型電極、8 P型裏面電極、9 絶縁材料層、10 窪み部、11 銅材、12,14 はんだ層、13,130 押圧治具、15 はんだ材、16a,16b (レーザ光の照射を示す)矢印、17 開口部。
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザ接合方法、太陽電池の製造方法および太陽電池製造装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の半導体装置の一例として、太陽電池がある。
「太陽電池」の一形態として、複数の太陽電池セルを所定の金属配線(インターコネクタ)によって互いに電気的に接続させた態様の太陽電池および太陽電池モジュールがある。この種の太陽電池では、個々の太陽電池セルの表面(受光面)と裏面(非受光面)とに、表面電極と裏面電極とがそれぞれ形成されている。この種の太陽電池は次のように製造される。
【0003】
まず、図14に示すように、1つの太陽電池は複数の太陽電池セル1をインターコネクタ2によって連結した構造となっている。太陽電池セル1の表面電極側(表面電極は図示せず)に、インターコネクタ2の一端側が接続され、インターコネクタ2のもう一端側が隣接する太陽電池セル1の裏面電極側(裏面電極は図示せず)に接続されている。このような関係で複数の太陽電池セル1はインターコネクタ2によって直列に接続されている。
インターコネクタ2と電極とは、予めインターコネクタ2にめっきされているはんだを介して、もしくはセル1に予めめっきされているはんだを介して、もしくはその両方を介して、接合される。
【0004】
太陽電池セル1の表面側は図15のように、銀などからなる導電粒子ペーストによって形成されている表面電極3とフィンガー電極4とが形成されている。太陽光によって発電された電流は、フィンガー電極4から表面電極3へと集まり、表面電極3に接続されたインターコネクタ2によってモジュールの外へと集電される。
【0005】
ところが、このような太陽電池の受光面においては、フィンガー電極4および表面電極3およびインターコネクタ2が形成された領域は、太陽光が遮光されるため、発電には寄与しない。そこで、より高い変換率を求めて表面電極を裏面側に配置した構造が提案されている。そのような太陽電池を開示した文献の一例として特開平2−51282号公報(特許文献1)がある。
【0006】
特許文献1に開示された太陽電池では、太陽電池セルのP型およびN型の半導体層の基本的な構成は変更せずに、太陽電池セルに貫通電極を形成することによって、インターコネクタを太陽電池セルの裏面側に配置し、表面側に配置する電極は、従来のものよりも幅を小さくした表面電極およびフィンガー電極のみとする構造が提案されている。
【0007】
特許文献1の構造では、図16に断面図で示すように、太陽電池セルに貫通孔5を形成し、太陽電池表面側に形成されたN型半導体層上(図示せず)に形成された表面電極3から貫通孔5中に形成された導電体層を通じて、太陽電池裏面上に形成されたN型電極6と電気的に接続されている。図16においては、上側の面が裏面(非受光面)であり、下側の面が表面(受光面)である。太陽電池裏面には、P型半導体層(図示せず)が形成され、P型半導体層上にはP型裏面電極8とこれに電気的に接続されたP型電極7が形成されている。太陽電池裏面上に形成されたN型電極6は、P型電極7とはクリアランスを設けて配置されるか、または絶縁材料層9を間に挟むように配置されることによって、N型電極6とP型電極7とが電気的に接続しないように形成されている。これらの平面的位置関係の一例を図17に示す。特許文献1においては、N型電極6およびP型電極7を全て太陽電池セル1の裏面側に形成することにより、インターコネクタ2は太陽電池セル1の裏面のみに接続される構造となっている。このような特許文献1の構造は、インターコネクタによって遮光されていた面積を低減することで、太陽電池モジュールの発電効率向上を図ったものといえる。
【0008】
ところが、太陽電池セル1の裏面のみにインターコネクタ2を接続する上記構造では、従来のリフロー加熱などでの全体加熱方式でインターコネクタ2とN型電極6およびP型電極7とをはんだ接合すると、主に銅材で形成されているインターコネクタ2と主にシリコンで形成されている太陽電池セル1との線膨張係数差によって熱応力が発生し、インターコネクタ2とN型電極6およびP型電極7との接合部が破断したり、または太陽電池セル1が反ることにより後の樹脂封止工程で太陽電池セル1が割れる、などの不具合が生じる。
【0009】
そこで、インターコネクタ2とシリコン1の熱応力による不具合を回避する手段として、特開2004−134654号公報(特許文献2)では、インターコネクタ2とN型電極6およびP型電極7との接続を、全体加熱で行なうのではなく、レーザ光によりインターコネクタ2と接続する電極上の領域のみを局所加熱することによって行なう方法が採られている。特許文献2に開示されている発明は、インターコネクタ2および太陽電池セル1の加熱される領域を最小限にとどめることで、熱応力の発生する度合いを低減し、上記不具合の発生を回避するものである。
【0010】
さらに、後述する関連技術が特開平7−335697号公報(特許文献3)に記載されている。
【特許文献1】特開平2−51282号公報
【特許文献2】特開2004−134654号公報
【特許文献3】特開平7−335697号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
レーザ接合を行なう場合には、レーザ光照射時における電極とインターコネクタとの接触状態を良好にしておく必要がある。もし両者間の接触状態が悪いと、溶融したはんだが電極もしくはインターコネクタと接することができず、インターコネクタと電極とが接合されないという不具合や、接合されたとしても接合面積が小さくなってしまい、その結果、接合強度が低くなるという不具合が発生する。また、インターコネクタから電極に熱が伝わりにくく、電極がはんだ接合温度に達しないことで、はんだが濡れずにはんだ接合されないという不具合も発生する。また、レーザー照射時にインターコネクタから電極および太陽電池セルへの熱伝導性が悪くなることによって、インターコネクタの温度が過剰に上昇し、インターコネクタの穴開き不具合が発生することもある。
【0012】
1〜100ミリ秒オーダーの短い時間で高出力のレーザーを照射する、いわゆる高密度パワーでのレーザ接合時には、上記の接合不具合を回避するためには、インターコネクタと電極との接触状態の管理がより重要になる。
【0013】
図18は、図16に示した断面構造を有する太陽電池セルについて、インターコネクタ2と接続されるN型電極6とP型電極7を、太陽電池セル1を裏面側(非受光面)から見たときの透視図で示した一例である。図18のように、1つの太陽電池セル上の複数の電極とインターコネクタとを接続する場合には生産性を向上させるために、レーザ出射口などのレーザ照射部や、太陽電池セルを配置するステージなどを移動させることなく、ガルバノミラーなどでレーザ光をスキャンしてする。こうして複数の電極、たとえば1つの太陽電池セル内の全ての電極に対する接合作業を一括して行なう。
【0014】
このように、1つの太陽電池セル上の複数の電極とインターコネクタとを一括して接合する場合には、複数の電極とインターコネクタとを均一な状態で接触させるために、インターコネクタ上部から治具によって、一括して複数のインターコネクタと複数の電極とを適正範囲で押圧する必要がある。
【0015】
しかし、複数の電極と配線材とを一括して押圧する場合、押圧する複数の電極間において、太陽電池セルやインターコネクタの厚みバラツキや、レーザ接合装置および治具の平行度バラツキなどがあることによって、一括して接合する全電極間で均一な接触状態となるように押圧しにくいという問題がある。
【0016】
それに対して、複数の電極と配線材とを一括して押圧するときの接触状態を良好にするための手段の一例が、上記特許文献3に記載されている。この特許文献3では、複数の電極と接続配線とを一括して押圧するための治具において、複数の電極に対して個別電極毎に押圧量を調整できるように、1つの電極に対して1つの上下可動構造またはバネ構造を有する治具によって押圧し、被接合部材の厚みバラツキを吸収して、全電極において、接合配線と均一な接触状態を作ることで、良好な接合を得ることを目的としている。
【0017】
しかし、特許文献3で用いる治具のバネ構造は、繰り返し使用することでバネが劣化し、バネの変形量が小さくなったり、またはバネ定数が不均一となることで、適正な接触状態を得られない電極が発生するという不具合がある。
【0018】
また、上記の不具合は定期的に押圧状態を検査しない場合には、レーザ光を照射した後でないとわからず、実際の製品で不具合が発生して初めてわかるものである。
【0019】
接合不良を未然に防止するためには、各電極が適正な接触状態になっているか否かをレーザ光照射前に確認することが求められる。そのためには、電極とインターコネクタとの適正な接触状態とは、どのような押圧状態であるかを事前に規定して把握しておく必要がある。
【0020】
そこで、本発明は、電極が適正な荷重もしくは圧力で押圧されて、電極と接続配線が良好な接触状態にあり、レーザ接合後に良好な接合状態が得られる接触状態を規定し、規定した接触状態でレーザ接合を実施するためのレーザ接合方法、これを応用した太陽電池の製造方法および太陽電池製造装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0021】
上記目的を達成するため、本発明に基づくレーザ接合方法は、素子が形成され、前記素子に電気的に接続された電極を有する素子基板に、平坦部と窪み部とを有する接続配線を重ね合わせる工程と、前記重ね合わせる工程の後に、前記接続配線のうち前記窪み部を露出させつつ前記窪み部の周囲の前記平坦部を押圧するための押圧治具を用いて、前記窪み部を前記電極に重ね合わせた状態で前記平坦部を押圧することによって、前記平坦部を前記素子基板に向けて変形させる工程と、前記変形させる工程の後に、前記窪み部に向けて前記レーザ光を照射する工程とを含む。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、良好な接合状態を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
(実施の形態1)
本発明に基づく実施の形態1におけるレーザ接合方法、太陽電池の製造方法および太陽電池製造装置について説明する。
【0024】
以下、本実施の形態では、太陽電池セル上の電極と窪み部を有するインターコネクタとの適正な押圧条件を規定し、規定した条件でレーザ接合した例を示す。上述の各発明は、下記の各種実験評価によって裏付けられたものである。
【0025】
まず、太陽電池を構成する太陽電池セルおよびインターコネクタおよび押圧治具を備えたレーザー照射装置について説明する。
【0026】
図16に、本実施の形態で用いられる太陽電池セル1の断面構造を示す。この太陽電池セル1自体は従来と同じものである。この太陽電池セル1においてはPN結合が形成され、裏面にN型電極6およびP型電極7が形成されている。N型電極6とP型電極7とは、電極のクリアランスおよび絶縁材料層9によって、電気的には接続していない構造になっている。N型電極6およびP型電極7の厚みはそれぞれ30μm、P型裏面電極8の厚みは50μm、太陽電池セル表面から絶縁材料層9表面までは60μmである。
【0027】
図1は、図16に示した断面構造を有する太陽電池セル1について、インターコネクタ2と接続されるN型電極6およびP型電極7を、太陽電池セル1裏面(非受光面)側から透視した様子を示した図である。図1に示す太陽電池セル1は15.5cm角であり、この中に、直径3mmのN型電極6とP型電極7とが、銀粒子ペーストを焼成して形成されている。1つの太陽電池セル1には、N型電極6が32個、P型電極7が16個形成されており、N型電極6とP型電極7との合計で48個形成されている。
【0028】
N型電極6とP型電極7とは図1に示すように1つの直線上に連なるように混在して形成されているため、インターコネクタ2はそれぞれ櫛歯状の形状を有している。インターコネクタ2は、太陽電池セル1を縦断する延在部2aと、延在部2aからN型電極6とP型電極7上に向かって存在する櫛部2bとがあり、延在部2aの幅は7mm、櫛部2bの幅は7mmで、延在部2aから突出している櫛部2bの長さは5mmである。
【0029】
インターコネクタ2とP型電極7とが重なる部分の断面図を図2に示す。図2に示すようにインターコネクタ2はP型電極7に重なる部分に窪み部10を有する。窪み部10は上から見て円形であり、その内径は2mm、窪み深さが100μmとなっている。窪み部10は、予め金型でのパンチ加工などによって、インターコネクタ2の櫛部2bに形成されたものである。
【0030】
インターコネクタ2においては、厚さ100μmの銅材11の表裏両面にそれぞれ無鉛はんだが予めめっきされることによって、表裏両面にそれぞれ厚み40μmのはんだ層12が形成されている。
【0031】
窪み部10の外側で窪んでおらず平板状の形状を保っている領域のうち、窪み部10の中心から2.5mm〜3.5mm外側の周縁部を押圧治具13にて押圧する。
【0032】
押圧治具13および太陽電池セル1の全体を上からみたところを図3に示す。押圧治具13の形状を太線で表示している。押圧治具としては様々な平面形状のものが考えられるが、押圧治具の第1の例としてここでは押圧治具13を示している。この例では、N型電極6およびP型電極7からなるひとまとまり、すなわち1列分に対して1枚の押圧治具13が被さることとなる。押圧治具13は細長い長方形の板状であり、N型電極6およびP型電極7に対応する位置にはN型電極6およびP型電極7を露出させるための開口部17が設けられている。
【0033】
押圧治具の第2の例を図4に示す。ここで第2の例として示す押圧治具130は、1列分の電極だけでなく、1つの太陽電池セル1の全体を被覆するような広い面積の板状の部材となっており、複数列の開口部17が設けられている。
【0034】
再び押圧治具の第1の例に戻って説明を続ける。
図2では、1つのP型電極7上にインターコネクタ2を押圧する様子を示している。実際には、1つの太陽電池セル1上の、N型電極6とP型電極7との合計48個の全ての電極に対応する各領域において同時に押圧する。図2に示すように、押圧治具13は窪み部10の外側を押圧する。全48個の電極を同時に押圧するために、本レーザ接合装置は、電極上に存在する押圧治具13を一括して押圧する平板状の治具(図示せず)を備えている。
【0035】
1つの太陽電池セル1上の48個の電極全てを同時に押圧治具13にて押圧した状態で、出射口から照射されたレーザ光を、ガルバノミラーで反射して、全48個の電極に照射する。このとき、レーザ光の照射口および、太陽電池セル1を配置しているステージは移動させない。ガルバノミラーにて照射位置を制御することで、照射位置精度を向上し、また、全電極を照射するのにかかる時間を短縮している。押圧治具13の開口部17を通じてレーザ光が照射される様子を図5に示す。レーザ光は矢印16aまたは矢印16bで示すように窪み部10の底面に向けて照射される。レーザ光によって窪み部10の底面が加熱されて底面のはんだ層12が溶融し、P型電極7とインターコネクタ2との間ではんだ付けがなされ、両者は電気的に接合される。
【0036】
ここからは、最適な押圧条件を規定する方法について説明する。
まず、押圧状態とインターコネクタ2の変形状態の関係について説明する。
【0037】
図2は、押圧治具13にて押圧し始める前の状態の電極近傍の断面模式図である。ここでは電極としてP型電極7を例にとって説明しているが、N型電極6とインターコネクタ2との間の接続に関しても同様である。
【0038】
図6は、窪み部10の外側を上記の位置にて押圧治具13にて押圧し、インターコネクタ2が、P型電極7側に変形している状態の模式図である。図6の状態よりもさらに押圧荷重を大きくしてインターコネクタ2の変形を大きくし、インターコネクタ2がP型裏面電極8に接触した状態の模式図を図7に示す。
【0039】
なお、図7の状態に至っていても、押圧治具13を取り去った後には、図8に示すようにインターコネクタ2の接合されていない部分はある程度弾性回復して浮き上がる。
【0040】
(荷重の大きさと変位量との関係を調べる実験)
以下、良好な接合を得るための押圧条件を求めた手法とその結果を記す。まず、1つの電極において、押圧荷重とインターコネクタ2の変形量との関係を求める。1つの電極(たとえばP型電極7)において、押圧治具13上に重りをのせて、その重りに対応するインターコネクタ2の変位量を測定する。以下「荷重の大きさ」という場合、重り自体の重さに押圧治具13の重さを加えたものを意味するものとする。
【0041】
インターコネクタ2の変位量は、押圧治具13の上面の位置に注目し、重りをのせる前後でのP型電極7の側への押圧治具13上面の変位量をレーザー変位計にて測定する。このとき、押圧治具13は、剛性体である金属材で形成されているものを使用する。
【0042】
このようにして求めた、荷重の大きさとインターコネクタ2の変位量との関係を図9に示す。電極1個当りの荷重の大きさを「押圧荷重」として横軸に記している。
【0043】
図9のグラフでは、インターコネクタ2の変位量から、弾性変形領域、塑性変形領域、変形完了領域の3つの範囲に分けられる。弾性変形領域はインターコネクタ2の変位が微小で弾性限界を超えていない状態である。塑性変形領域はインターコネクタ2が弾性限界を超えて塑性変形している状態である。変形完了領域はインターコネクタ2がP型裏面電極8の表面に接触して変位が止まった状態である。これら3つの状態は、それぞれ図2、図6、図7の模式図で示される状態である。
【0044】
インターコネクタ2が塑性変形領域になる、すなわち図6の状態になるためには、図9のグラフから判断すると、少なくとも100g重の押圧荷重が必要である。
【0045】
押圧荷重が150g重では、図7に示すようにインターコネクタ2がP型裏面電極8の表面に接触して変位が止まった状態となった。
【0046】
そこで、インターコネクタ2を変形させるために必要な最低限の押圧荷重を100g重と結論付けた。少なくとも100g重より大きい荷重で押圧し、インターコネクタ2が電極側に変形している状態では、窪み部10の底部と電極とは良好な接触状態になっていることが推測される。
【0047】
(押圧荷重を求める実験)
次に、実際にレーザ光接合を行なう状態、すなわち、レーザ接合装置において1つの太陽電池セル内の32個のN型電極6と16個のP型電極7との合計48個の電極を一括して押圧したときに、実際に各電極にかかる押圧荷重を、感圧紙を用いて求める実験を行なった。すなわち、太陽電池セル1上に厚み100μmの感圧紙を配設し、その上からインターコネクタ2の窪み部10外側を押圧治具13により押圧した。感圧紙とは、圧力が加わるとその強度に応じて強く発色する性質を有する紙である。窪み部10と電極とが接触して押圧された領域は、感圧シートに圧力痕が残り、圧力痕の面積と発色強度を解析することによって、窪み部10と電極との接触面積と接触荷重すなわち押圧荷重とを測定できる。
【0048】
まず、上述したように、インターコネクタ2を変形させるためには100g重以上の荷重が必要である、1電極当りの押圧荷重を平均256g重、1つの太陽電池セル1上の全48電極に12.3kg重の全体荷重をかけて押圧した。そのときの全48ヶ所に作用した荷重を各電極毎に測定した。
【0049】
各電極に作用していた押圧荷重は、全48個の平均値は230g重と設定荷重値(256g重)と近い値となっているが、最小では100g重、最大で350g重と、48電極間でのバラツキ範囲が大きい状態となっていた。ただし、作用した押圧荷重が最小であった電極でも、インターコネクタ2の変位量評価から策定した1電極当りの必要最低押圧荷重である100g重には達していたことが確認できた。
【0050】
1電極当りの押圧荷重が平均256g重である条件でも、太陽電池セル1やインターコネクタ2やレーザ接合装置のステージおよび押圧治具の厚みや高低差バラツキによって、実際には、48電極のうちの最小押圧荷重が100g重であったことから、1電極当りの押圧荷重が平均100g重である条件では、実際には押圧荷重が100g重未満になっている電極は多数存在することが考えられる。
【0051】
(レーザ接合による接合状態の評価実験)
次に、太陽電池セル1とインターコネクタ2とのレーザ接合を実施し、接合状態の評価を行なう。
【0052】
3つのサンプルA,B,Cを用意し、これらにそれぞれ異なる条件で全体押圧荷重を加えて押圧した状態でそれぞれインターコネクタと電極とをレーザ接合し、インターコネクタ2の外観の評価を行なった。その結果を表1に示す。
【0053】
【表1】
【0054】
サンプルBは、バラツキも含めて48ヶ所の電極の全てにおいて平均押圧荷重が100g重以上となる条件として全体押圧荷重を12.3kg重と設定したので、1電極当りの平均の押圧荷重が256g重である。サンプルAは、全体押圧荷重を4.8kg重と設定したので、1電極当りの平均の押圧荷重は100g重である。サンプルCは、全体押圧荷重を20.5kg重と設定したので、1電極当りの平均の押圧荷重は427g重である。
【0055】
これら3通りの条件で実験したところ、条件Aでは、48個中1個の電極上において、インターコネクタ2の穴開き不具合が発生した。不具合が発生した電極では、インターコネクタ2の窪み部10底部と電極との接触状態が悪かったために、レーザ光の照射時に、インターコネクタ2の熱が電極に伝導しにくくなり、その結果、インターコネクタ2の温度が銅の融点以上に上昇し、インターコネクタ2が溶けて穴となったと考えられる。なお、サンプルB,Cでは、インターコネクタ2の穴開き不具合は発生していない。さらに、サンプルB,Cではいずれも外観上は問題なく接合されていることを確認した。
【0056】
(割れ、浮きについての評価)
次に、太陽電池セル1の割れや窪み部10の電極からの浮きについての評価を行なった。ここでいう「電極からの浮き」とは、図10に示すように窪み部10の底面の中央部が凸形状となって電極に付かずに浮いている状態を意味する。図10ではP型電極7について示しているがN型電極6においても同様の現象が起こり得る。
【0057】
サンプルB,Cでは、多くの電極において、図9で示すところの変形完了領域にあることが推測される。インターコネクタ2がP型裏面電極8表面に接触した状態では、押圧荷重はそのまますべて太陽電池セル1に作用するので、大きな荷重を付与した場合には、太陽電池セル1が割れるなどの不具合の発生が懸念される。
【0058】
そこで、このサンプルB,Cについて、エレクトロルミネッセンス試験を行なった。「エレクトロルミネッセンス試験」とは、太陽電池セルと接合されたインターコネクタに電流を流して、太陽電池セルを発光状態とし、その発光状態を観察する試験方法である。この方法によって、セル内のクラック発生の有無を観察したが、クラックの発生は見られなかった。
【0059】
また、サンプルB,Cにおいて、接合後の断面観察をした結果、窪み部10が図10に示したように浮いている電極はないことが確認できた。
【0060】
よって、サンプルB,Cでは、良好な接合状態を得ていることを確認した。
(接合強度評価)
次に、良好な接合状態となっているサンプルB,Cのうち、サンプルBについて、インターコネクタ2と電極との接合強度の評価を行なった。
【0061】
サンプルBについて、インターコネクタ2と電極との接合強度をインターコネクタの引張り試験により評価した結果を図11に示す。
【0062】
図11は、感圧紙で測定した各電極の押圧荷重と、その電極での引張り強度との関係を示している。押圧荷重と引張り強度との相関関係は見られなかった。全ての電極において引張り強度の限界に達して生じる破断の態様は、電極とインターコネクタのはんだ接合部で破断するというものではなく、太陽電池セルが割れるというものであった。したがって、はんだ接合自体は良好に行なえていたことが確認できた。
【0063】
この評価結果から、本実施の形態(窪み部10の深さが100μm)において、良好な接合を得るために電極部に必要な押圧加重に関する条件は、インターコネクタ2が電極側に変形した状態で、1電極あたり100g重より大きい押圧荷重が負荷されることであるといえる。
【0064】
この条件で押圧しつつレーザ接合をすることで、インターコネクタ2の穴開きや、太陽電池セル1の割れ、窪み部10の浮きなどの不具合のない、良好な接合を実施することができた。
【0065】
なお、上記実験で用いたインターコネクタでは、はんだの厚みは40μmであったが、はんだの厚みは片面当たり10μm以上40μm以下であればよい。押圧治具で押圧する位置は、窪み部の底部の中心から2.5mm以上3.5mm以下だけ離れた周縁部であればよい。電極の表面凹凸については1μm以上10μm以下であればよい。
【0066】
本実施の形態で示した各種実験から発明者らが得た知見から、本実施の形態における発明は以下のように把握することができる。なお、「接続配線」はインターコネクタに相当する。
【0067】
本実施の形態におけるレーザ接合方法は、素子が形成され、前記素子に電気的に接続された電極を有する素子基板に、平坦部と窪み部とを有する接続配線を重ね合わせる工程と、前記重ね合わせる工程の後に、前記接続配線のうち前記窪み部を露出させつつ前記窪み部の周囲の前記平坦部を押圧するための押圧治具を用いて、前記窪み部を前記電極に重ね合わせた状態で前記平坦部を押圧することによって、前記平坦部を前記素子基板に向けて変形させる工程と、前記変形させる工程の後に、前記窪み部に向けてレーザ光を照射する工程とを含む。
【0068】
前記接続配線は予めはんだがめっきされたものであることが好ましい。
本発明は、レーザ接合方法についての発明としても抽出することができるが、以下のように太陽電池の製造方法についての発明としても抽出することができる。
【0069】
本実施の形態における太陽電池の製造方法は、太陽電池素子が形成され、前記太陽電池素子に電気的に接続された電極を有する太陽電池素子基板に、平坦部と窪み部とを有する接続配線を重ね合わせる工程と、前記重ね合わせる工程の後に、前記接続配線のうち前記窪み部を露出させつつ前記窪み部の周囲の前記平坦部を押圧するための押圧治具を用いて、前記窪み部を前記電極に重ね合わせた状態で前記平坦部を押圧することによって、前記平坦部を前記太陽電池素子基板に向けて変形させる工程と、前記変形させる工程の後に、前記窪み部に向けてレーザ光を照射する工程とを含む。
【0070】
前記接続配線は、厚み100μmの銅板材の両面に片面当たり厚み10μm以上40μm以下のはんだがめっきされたものであり、前記窪み部の底部の内径が2mmであり、前記窪み部の深さが100μmであり、前記電極の大きさが直径2mm以上であり、前記電極の表面凹凸は1μm以上10μm以下であり、前記変形させる工程において、前記押圧治具は、前記窪み部の底部の中心から2.5mm以上3.5mm以下だけ離れた周縁部を押圧することが好ましい。
【0071】
前記レーザ光を照射する工程では、前記窪み部と前記電極との接触により前記電極に作用する圧力が0.31MPaより大きい状態として前記レーザ光を照射することが好ましい。ここでいう圧力値「0.31MPa」は、インターコネクタ2の窪み形状10とN型電極6またはP型電極7とが接する領域が窪み形状10の内側の直径2mmの領域であるときに、1つの電極当たり100g重の荷重をかけているものとして導き出された圧力値である。
【0072】
(実施の形態2)
本発明に基づく実施の形態2におけるレーザ接合方法、太陽電池の製造方法および太陽電池製造装置について説明する。
【0073】
本実施の形態での太陽電池セル、インターコネクタおよび押圧治具などの構造および寸法は、窪み部10の深さを除いてすべて実施の形態1で示したものと同じ条件である。
【0074】
本実施の形態では、インターコネクタ2がP型裏面電極8または絶縁材料層9に接触して変位が止まった状態である変形完了領域(図7に示した状態)に至るように押圧した状態でレーザ接合を実施することを前提条件として、良好な接合状態を得ることができるインターコネクタ2の窪み部10の深さを規定した。なお、変形完了領域に至っている状態は、押圧状態を管理しやすい状態でもある。
【0075】
本実施の形態では、50μm、100μm、150μm、200μmの4通りの深さの窪み部10の各々について、インターコネクタ2が変形完了領域に至るまで、すなわち、図7に示した状態になるまで押圧し、その状態でレーザ光を照射して接合を行ない、得られた接合状態の評価を行なった。表2に示すようにこれらの4通りの深さのサンプルをそれぞれサンプルD,E,F,Gというものとする。
【0076】
【表2】
【0077】
まず、実施の形態1で押圧荷重とインターコネクタ2の変位量との関係を求めた方法と同じ方法によって、変形完了領域に達するために必要な押圧荷重を求めた。求めた押圧荷重にて窪み部10の外側を、実施の形態1と同様に押圧してレーザ接合を実施した。
【0078】
接合後に、実施の形態1と同様に、その外観検査および太陽電池セルの割れの有無を評価したところ、サンプルD,E,F,Gのいずれにおいても太陽電池セルの割れの発生はなかったが、サンプルDでは、インターコネクタの穴開き不具合が発生した。
【0079】
本実施の形態の1枚の太陽電池セルの内部での厚みバラツキは30μmで、N型電極、P型電極、P型裏面電極、絶縁材料層の各層の厚みバラツキの合計は10μmであり、厚みバラツキの合計量は40μmである。
【0080】
サンプルDでは、インターコネクタ2の可能変位量は20μmであり、太陽電池セル基板の厚みバラツキである40μmよりも小さいので、太陽電池セル基板の厚みバラツキをインターコネクタの変位量によって吸収できない。そのため、窪み部10底部と電極との接触状態が悪い電極があり、インターコネクタ2の穴開き不具合が発生した。
【0081】
また、インターコネクタ2の穴開き不具合のなかったサンプルE,F,Gについて、インターコネクタ2の引張り試験を実施したところ、上記3つのいずれの深さのものでも、その破断の態様は太陽電池セルが割れることによるものであり、電極とインターコネクタ2のはんだ接合部での破断はなく、良好なはんだ接合が得られていた。
【0082】
しかし、接合部の断面観察を行なった結果、サンプルGでは、図10に示したように、窪み部10の底面中央部の電極からの浮きが見られた。このため、窪み部10の中心部付近では電極とはんだ接合されていないものが多く存在した。この図10に示したような状態では、接合部への応力集中によって、長期使用時の接合部寿命の低下が懸念されるため、良好な接合状態とはいえない。
【0083】
サンプルE,Fでは、図10のような浮きのある接合部は確認されず、良好な接合断面状態となっていた。
【0084】
したがって、押圧状態を管理しやすい状態であるところの変形完了領域(図7に示した状態)に押圧した状態でレーザ接合を実施する場合は、インターコネクタ2の窪み部10の深さは、100μm以上かつ150μm以下にする必要があることがわかった。
【0085】
本実施の形態では、実施の形態1と同じく、N型電極6およびP型電極7の厚みはいずれも30μm、P型裏面電極8の厚みは50μm、太陽電池セル1の表面から絶縁材料層表面までは60μmであるので、窪み部10の深さとインターコネクタ2の変位量との関係は、表3に示すようになる。
【0086】
【表3】
【0087】
よって、本実施の形態において、インターコネクタ2がP型裏面電極8もしくは絶縁材料層9に接触して変位が止まる状態、すなわち変形完了領域に達した状態(図7の状態)になるように押圧した状態でレーザ接合をするためには、良好な接合状態が得られるインターコネクタ2の変位量の範囲は、70μm以上、120μm以下であるといえる。
【0088】
表3において「インターコネクタの変位量」とは、インターコネクタ2の窪み部10外側の押圧治具13によって押圧されている箇所が、電極側に向かって変形し始めて、太陽電池素子基板に接触するまでの鉛直方向の移動距離である。
【0089】
したがって、本実施の形態における発明は以下のように表すことができる。本実施の形態における太陽電池の製造方法は、好ましいことに、既に述べた構成に加えて、前記接続配線は、厚み100μmの銅板材の両面に片面当たり厚み10μm以上40μm以下のはんだがめっきされたものであり、前記窪み部の底部の内径が2mmであり、前記電極の大きさが直径2mm以上であり、前記電極の表面凹凸は1μm以上10μm以下であり、前記変形させる工程において、前記押圧治具は、前記窪み部の底部の中心から2.5mm以上3.5mm以下だけ離れた周縁部を押圧するものであり、前記窪み部の深さは、前記変形させる工程において前記押圧治具によって押圧される前記周縁部が前記電極側に変形し始めてから前記基板に接触するまでの前記基板面に垂直な方向での移動距離が70μm以上120μm以下となるような深さである。
【0090】
本実施の形態における太陽電池の製造方法において、前記接続配線は予めはんだがめっきされたものであることが好ましい。
【0091】
なお、ここまでの説明では、インターコネクタ2と電極とを接合するためのはんだを、インターコネクタ2の両面に予めめっきしておくこととしていたが、図12に示すように電極上にもめっきなどの方法ではんだ層14を予め形成しておいてもよい。本実施の形態における太陽電池の製造方法において、前記電極は、予めその表面にはんだがめっきされたものであることが好ましい。
【0092】
あるいは、図13に示すように電極上に板状のはんだ材15を配設し、インターコネクタ2と板状のはんだ材15とを同時に電極に向けて押圧してレーザ接合することとしてもよい。本実施の形態における太陽電池の製造方法において、前記重ね合わせる工程は、前記電極と前記接続配線との間に板状はんだを配設する工程を含み、前記変形させる工程は、前記電極と前記接続配線との間に前記板状はんだを挟み込んだ状態で、前記接続配線を押圧することが好ましい。
【0093】
ここまで述べた内容は、太陽電池の製造方法の発明としてだけでなく、太陽電池製造装置の発明としても把握することができる。本実施の形態における太陽電池製造装置は、太陽電池素子が形成され、前記太陽電池素子に電気的に接続された電極を有する太陽電池素子基板に、平坦部と窪み部とを有する接続配線を重ね合わせたものに対して、前記接続配線のうち前記窪み部を露出させつつ前記窪み部の周囲の前記平坦部を押圧するための押圧治具と、前記窪み部に向けてレーザ光を照射するためのレーザ光照射部とを備え、前記押圧治具は、前記窪み部を前記電極に重ね合わせた状態で前記平坦部を押圧することによって、前記平坦部を前記太陽電池素子基板に向けて変形させるためのものである。この太陽電池製造装置においては、前記押圧治具は、前記窪み部の底部の中心から2.5mm以上3.5mm以下だけ離れた周縁部を押圧するためのものであることが好ましい。
【0094】
なお、上記各実施の形態において、押圧治具13に圧力または荷重を測定するための測定機構を設けて、治具での押圧が適正条件で実施されているかを随時測定することとしてもよい。
【0095】
本実施の形態における太陽電池製造装置においては、前記押圧治具は、弾性体を備えないことが好ましい。このようにすれば、押圧治具の弾性体の消耗などによる押圧バラツキが発生せず、接合不良を避けることができるからである。
【0096】
なお、上記各実施の形態において、押圧治具13に変位量測定機構を設けて、押圧治具13による押圧が適正条件で実施されているかを随時測定することとしてもよい。すなわち、本実施の形態における太陽電池製造装置において、前記押圧治具は、変位量測定機構を備えることが好ましい。
【0097】
なお、今回開示した上記実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではない。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更を含むものである。
【図面の簡単な説明】
【0098】
【図1】本発明に基づく実施の形態1における太陽電池セルについて、裏面側から見た透視図である。
【図2】本発明に基づく実施の形態1における太陽電池の製造方法においてインターコネクタとP型電極とが重なる部分の押圧し始める前の状態の断面図である。
【図3】本発明に基づく実施の形態1における押圧治具の第1の例および太陽電池セルの平面図である。
【図4】本発明に基づく実施の形態1における押圧治具の第2の例および太陽電池セルの平面図である。
【図5】本発明に基づく実施の形態1における押圧治具の開口部を通じてレーザ光が照射される様子の説明図である。
【図6】本発明に基づく実施の形態1における太陽電池の製造方法においてインターコネクタが変形している状態の断面図である。
【図7】本発明に基づく実施の形態1における太陽電池の製造方法においてインターコネクタがP型裏面電極に接触した状態の断面図である。
【図8】本発明に基づく実施の形態1における太陽電池セルにおいて押圧治具を取り去った後の図である。
【図9】本発明に基づく実施の形態1において荷重の大きさとインターコネクタの変位量との関係を示すグラフである。
【図10】本発明に基づく実施の形態1における太陽電池セルにおいて電極からの浮きが生じた箇所の断面図である。
【図11】本発明に基づく実施の形態1において各電極の押圧荷重とその電極での引張り強度との関係を示すグラフである。
【図12】本発明に基づく実施の形態1における太陽電池の製造方法において電極上にはんだ層を予め形成しておいた場合の電極近傍の断面図である。
【図13】本発明に基づく実施の形態1における太陽電池の製造方法において電極上にはんだ材を配置する場合の電極近傍の断面図である。
【図14】従来技術に基づく太陽電池の断面図である。
【図15】従来技術に基づく太陽電池セルの平面図である。
【図16】従来技術に基づく太陽電池セルの断面図である。
【図17】従来技術に基づく太陽電池セル上の電極の平面的位置関係を示す図である。
【図18】従来技術に基づく太陽電池セルについて、裏面側から見た透視図である。
【符号の説明】
【0099】
1 太陽電池セル、2 インターコネクタ、3 表面電極、4 フィンガー電極、5 貫通孔、6 N型電極、7 P型電極、8 P型裏面電極、9 絶縁材料層、10 窪み部、11 銅材、12,14 はんだ層、13,130 押圧治具、15 はんだ材、16a,16b (レーザ光の照射を示す)矢印、17 開口部。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
素子が形成され、前記素子に電気的に接続された電極を有する素子基板に、平坦部と窪み部とを有する接続配線を重ね合わせる工程と、
前記重ね合わせる工程の後に、前記接続配線のうち前記窪み部を露出させつつ前記窪み部の周囲の前記平坦部を押圧するための押圧治具を用いて、前記窪み部を前記電極に重ね合わせた状態で前記平坦部を押圧することによって、前記平坦部を前記素子基板に向けて変形させる工程と、
前記変形させる工程の後に、前記窪み部に向けてレーザ光を照射する工程とを含む、レーザ接合方法。
【請求項2】
前記接続配線は予めはんだがめっきされたものである、請求項1に記載のレーザ接合方法。
【請求項3】
太陽電池素子が形成され、前記太陽電池素子に電気的に接続された電極を有する太陽電池素子基板に、平坦部と窪み部とを有する接続配線を重ね合わせる工程と、
前記重ね合わせる工程の後に、前記接続配線のうち前記窪み部を露出させつつ前記窪み部の周囲の前記平坦部を押圧するための押圧治具を用いて、前記窪み部を前記電極に重ね合わせた状態で前記平坦部を押圧することによって、前記平坦部を前記太陽電池素子基板に向けて変形させる工程と、
前記変形させる工程の後に、前記窪み部に向けてレーザ光を照射する工程とを含む、太陽電池の製造方法。
【請求項4】
前記接続配線は、厚み100μmの銅板材の両面に片面当たり厚み10μm以上40μm以下のはんだがめっきされたものであり、
前記窪み部の底部の内径が2mmであり、前記窪み部の深さが100μmであり、
前記電極の大きさが直径2mm以上であり、前記電極の表面凹凸は1μm以上10μm以下であり、
前記変形させる工程において、前記押圧治具は、前記窪み部の底部の中心から2.5mm以上3.5mm以下だけ離れた周縁部を押圧する、請求項3に記載の太陽電池の製造方法。
【請求項5】
前記レーザ光を照射する工程では、前記窪み形状と前記電極との接触により前記電極に作用する圧力が0.31MPaより大きい状態として前記レーザ光を照射する、請求項4に記載の太陽電池の製造方法。
【請求項6】
前記接続配線は、厚み100μmの銅板材の両面に片面当たり厚み10μm以上40μm以下のはんだがめっきされたものであり、
前記窪み部の底部の内径が2mmであり、
前記電極の大きさが直径2mm以上であり、前記電極の表面凹凸は1μm以上10μm以下であり、
前記変形させる工程において、前記押圧治具は、前記窪み部の底部の中心から2.5mm以上3.5mm以下だけ離れた周縁部を押圧するものであり、
前記窪み部の深さは、前記変形させる工程において前記押圧治具によって押圧される前記周縁部が前記電極側に変形し始めてから前記基板に接触するまでの前記基板面に垂直な方向での移動距離が70μm以上120μm以下となるような深さである、請求項3に記載の太陽電池の製造方法。
【請求項7】
前記接続配線は予めはんだがめっきされたものである、請求項3から6のいずれかに記載の太陽電池の製造方法。
【請求項8】
前記電極は、予めその表面にはんだがめっきされたものである、請求項3から6のいずれかに記載の太陽電池の製造方法。
【請求項9】
前記重ね合わせる工程は、前記電極と前記接続配線との間に板状はんだを配設する工程を含み、
前記変形させる工程は、前記電極と前記接続配線との間に前記板状はんだを挟み込んだ状態で、前記接続配線を押圧する、請求項3から6のいずれかに記載の太陽電池の製造方法。
【請求項10】
太陽電池素子が形成され、前記太陽電池素子に電気的に接続された電極を有する太陽電池素子基板に、平坦部と窪み部とを有する接続配線を重ね合わせたものに対して、前記接続配線のうち前記窪み部を露出させつつ前記窪み部の周囲の前記平坦部を押圧するための押圧治具と、
前記窪み部に向けてレーザ光を照射するためのレーザ光照射部とを備え、
前記押圧治具は、前記窪み部を前記電極に重ね合わせた状態で前記平坦部を押圧することによって、前記平坦部を前記太陽電池素子基板に向けて変形させるためのものである、太陽電池製造装置。
【請求項11】
前記押圧治具は、前記窪み部の底部の中心から2.5mm以上3.5mm以下だけ離れた周縁部を押圧するためのものである、請求項10に記載の太陽電池製造装置。
【請求項12】
前記押圧治具は、弾性体を備えない、請求項10または11に記載の太陽電池製造装置。
【請求項13】
前記押圧治具は、変位量測定機構を備える、請求項10から12のいずれかに記載の太陽電池製造装置。
【請求項1】
素子が形成され、前記素子に電気的に接続された電極を有する素子基板に、平坦部と窪み部とを有する接続配線を重ね合わせる工程と、
前記重ね合わせる工程の後に、前記接続配線のうち前記窪み部を露出させつつ前記窪み部の周囲の前記平坦部を押圧するための押圧治具を用いて、前記窪み部を前記電極に重ね合わせた状態で前記平坦部を押圧することによって、前記平坦部を前記素子基板に向けて変形させる工程と、
前記変形させる工程の後に、前記窪み部に向けてレーザ光を照射する工程とを含む、レーザ接合方法。
【請求項2】
前記接続配線は予めはんだがめっきされたものである、請求項1に記載のレーザ接合方法。
【請求項3】
太陽電池素子が形成され、前記太陽電池素子に電気的に接続された電極を有する太陽電池素子基板に、平坦部と窪み部とを有する接続配線を重ね合わせる工程と、
前記重ね合わせる工程の後に、前記接続配線のうち前記窪み部を露出させつつ前記窪み部の周囲の前記平坦部を押圧するための押圧治具を用いて、前記窪み部を前記電極に重ね合わせた状態で前記平坦部を押圧することによって、前記平坦部を前記太陽電池素子基板に向けて変形させる工程と、
前記変形させる工程の後に、前記窪み部に向けてレーザ光を照射する工程とを含む、太陽電池の製造方法。
【請求項4】
前記接続配線は、厚み100μmの銅板材の両面に片面当たり厚み10μm以上40μm以下のはんだがめっきされたものであり、
前記窪み部の底部の内径が2mmであり、前記窪み部の深さが100μmであり、
前記電極の大きさが直径2mm以上であり、前記電極の表面凹凸は1μm以上10μm以下であり、
前記変形させる工程において、前記押圧治具は、前記窪み部の底部の中心から2.5mm以上3.5mm以下だけ離れた周縁部を押圧する、請求項3に記載の太陽電池の製造方法。
【請求項5】
前記レーザ光を照射する工程では、前記窪み形状と前記電極との接触により前記電極に作用する圧力が0.31MPaより大きい状態として前記レーザ光を照射する、請求項4に記載の太陽電池の製造方法。
【請求項6】
前記接続配線は、厚み100μmの銅板材の両面に片面当たり厚み10μm以上40μm以下のはんだがめっきされたものであり、
前記窪み部の底部の内径が2mmであり、
前記電極の大きさが直径2mm以上であり、前記電極の表面凹凸は1μm以上10μm以下であり、
前記変形させる工程において、前記押圧治具は、前記窪み部の底部の中心から2.5mm以上3.5mm以下だけ離れた周縁部を押圧するものであり、
前記窪み部の深さは、前記変形させる工程において前記押圧治具によって押圧される前記周縁部が前記電極側に変形し始めてから前記基板に接触するまでの前記基板面に垂直な方向での移動距離が70μm以上120μm以下となるような深さである、請求項3に記載の太陽電池の製造方法。
【請求項7】
前記接続配線は予めはんだがめっきされたものである、請求項3から6のいずれかに記載の太陽電池の製造方法。
【請求項8】
前記電極は、予めその表面にはんだがめっきされたものである、請求項3から6のいずれかに記載の太陽電池の製造方法。
【請求項9】
前記重ね合わせる工程は、前記電極と前記接続配線との間に板状はんだを配設する工程を含み、
前記変形させる工程は、前記電極と前記接続配線との間に前記板状はんだを挟み込んだ状態で、前記接続配線を押圧する、請求項3から6のいずれかに記載の太陽電池の製造方法。
【請求項10】
太陽電池素子が形成され、前記太陽電池素子に電気的に接続された電極を有する太陽電池素子基板に、平坦部と窪み部とを有する接続配線を重ね合わせたものに対して、前記接続配線のうち前記窪み部を露出させつつ前記窪み部の周囲の前記平坦部を押圧するための押圧治具と、
前記窪み部に向けてレーザ光を照射するためのレーザ光照射部とを備え、
前記押圧治具は、前記窪み部を前記電極に重ね合わせた状態で前記平坦部を押圧することによって、前記平坦部を前記太陽電池素子基板に向けて変形させるためのものである、太陽電池製造装置。
【請求項11】
前記押圧治具は、前記窪み部の底部の中心から2.5mm以上3.5mm以下だけ離れた周縁部を押圧するためのものである、請求項10に記載の太陽電池製造装置。
【請求項12】
前記押圧治具は、弾性体を備えない、請求項10または11に記載の太陽電池製造装置。
【請求項13】
前記押圧治具は、変位量測定機構を備える、請求項10から12のいずれかに記載の太陽電池製造装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【公開番号】特開2010−129675(P2010−129675A)
【公開日】平成22年6月10日(2010.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−301100(P2008−301100)
【出願日】平成20年11月26日(2008.11.26)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年6月10日(2010.6.10)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年11月26日(2008.11.26)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】
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