説明

レーザ照射装置、及びレーザ照射方法

【課題】 高品質の加工を行う。
【解決手段】 レーザビームを出射するレーザ出射装置と、レーザ出射装置を出射したレーザビームが入射する加工対象物を保持するステージと、ステージに保持された加工対象物の、レーザビームが入射する位置の温度を測定する温度測定装置と、温度測定装置によって測定された加工対象物の温度が、(i)第1の温度範囲にある場合には、ステージに保持された加工対象物に入射するレーザビームの照射エネルギを変化させず、(ii)第1の温度範囲にない場合には、ステージに保持された加工対象物の、レーザビームが入射する位置の温度が第1の温度範囲内の温度となるように、レーザ出射装置を制御して、ステージに保持された加工対象物に入射するレーザビームの照射エネルギを変化させる制御装置とを有するレーザ照射装置を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加工対象物にレーザビームを照射して加工、特にレーザアニール加工を行うレーザ照射装置、及びレーザ照射方法に関する。
【背景技術】
【0002】
不純物が添加されたシリコンウエハにレーザビームを照射して、不純物を活性化させる活性化アニールにおいては、シリコンウエハに照射されるレーザビームのエネルギ(単位時間、単位面積当たりのエネルギ)を均一にすることが必要である。照射ビームのエネルギ均一化は、レーザ発振器の出力エネルギの安定化、レーザ照射装置の光学系による損失の補償、レーザビーム照射面の平坦化、動作ステージの移動速度の安定化などの総合的な組み合わせによって実現が図られている。
【0003】
シリコンウエハに照射されるレーザビームのエネルギは、照射が行われる前に計測され、計測値が、目標値から一定の幅をもつ所定範囲内にない場合には、所定範囲内におさまるよう補正される。
【0004】
図6は、シリコンウエハに照射されるレーザビームのエネルギ補正方法を示すフローチャートである。まずステップS101(ステージ計測位置移動)において、レーザビームの入射位置に、レーザビームのエネルギを計測する計測器、たとえばジュールメータを移動させる。次にステップS102(レーザ照射)において、レーザビームを照射し、ステップS103(ジュールメータ計測)において、照射されたレーザビームのエネルギを計測する。
【0005】
ステップS104においては、ステップS103で計測されたレーザビームのエネルギが所定範囲内にあるか否かが判定される。所定範囲内にある場合には、シリコンウエハのレーザアニール処理が実施される。所定範囲内にない場合には、ステップS105(目標VA値計算)に進む。ステップS105においては、エネルギの計測値と目標値の差から、バリアブルアッテネータ(VA)の目標設定値が計算される。バリアブルアッテネータはその設定に従い、入射するレーザビームの強度を変化させて出射することができる。目標設定値とは、計測器ひいてはシリコンウエハに入射するレーザビームのエネルギ(単位時間、単位面積当たりのエネルギ)を目標値とする、バリアブルアッテネータの設定値をいう。目標設定値の計算後、ステップS106において、バリアブルアッテネータの設定が、目標設定値とされる。
【0006】
バリアブルアッテネータの設定変更が行われたら、再びステップS102に戻り、以後の処理を繰り返す。
【0007】
また、活性化アニールには、フィードバック機能を備えた高精度ステージが使用される。ステージは、メンテナンスのたびにその動作精度が測定され、問題があった場合、精度補正のための調整が行われる。
【0008】
レーザビームのエネルギやステージ動作精度の補正は、シリコンウエハのレーザアニール処理の実施前に行われる。このため、たとえばレーザアニール処理中にレーザビームのエネルギに変動が生じた場合などには、活性化アニールが適当に実施されないことがある。活性化アニールの結果の適否は、アニール処理後のシート抵抗測定や、デバイスを実際に作製した後、動作測定するまでは不明である。
【0009】
アニール対象物のレーザビーム入射位置の温度を計測する発明が開示されている(たとえば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2008−116269号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の目的は、高品質の加工を行うことのできるレーザ照射装置、及びレーザ照射方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の一観点によれば、レーザビームを出射するレーザ出射装置と、前記レーザ出射装置を出射したレーザビームが入射する加工対象物を保持するステージと、前記ステージに保持された加工対象物の、レーザビームが入射する位置の温度を測定する温度測定装置と、前記温度測定装置によって測定された前記加工対象物の温度が、(i)第1の温度範囲にある場合には、前記ステージに保持された加工対象物に入射するレーザビームの照射エネルギを変化させず、(ii)前記第1の温度範囲にない場合には、前記ステージに保持された加工対象物の、レーザビームが入射する位置の温度が前記第1の温度範囲内の温度となるように、前記レーザ出射装置を制御して、前記ステージに保持された加工対象物に入射するレーザビームの照射エネルギを変化させる制御装置とを有するレーザ照射装置が提供される。
【0013】
また、本発明の他の観点によれば、(a)加工対象物にレーザビームを入射させながら、該レーザビームが入射した位置の該加工対象物の温度を測定する工程と、(b)前記工程(a)で測定された温度が、第1の温度範囲にあるか否かを判定する工程と、(c)前記工程(b)で、(i)前記第1の温度範囲にあると判定された場合には、前記加工対象物自身に入射するレーザビームの照射エネルギを変化させず、(ii)前記第1の温度範囲にないと判定された場合には、前記加工対象物自身について、レーザビームが入射する位置の温度が前記第1の温度範囲内の温度となるように、前記加工対象物自身に入射するレーザビームの照射エネルギを変化させる工程とを有するレーザ照射方法が提供される。
【0014】
更に、本発明の他の観点によれば、(a)加工対象物にレーザビームを入射させながら、該レーザビームが入射した位置の該加工対象物の温度を測定する工程と、(b)前記工程(a)で測定された温度が、第1の温度範囲にあるか否かを判定する工程と、(c)前記工程(b)で、(i)前記第1の温度範囲にあると判定された場合には、前記加工対象物とは異なる加工対象物に入射するレーザビームの照射エネルギを変化させず、(ii)前記第1の温度範囲にないと判定された場合には、前記加工対象物とは異なる加工対象物について、レーザビームが入射する位置の温度が前記第1の温度範囲内の温度となるように、前記加工対象物とは異なる加工対象物に入射するレーザビームの照射エネルギを変化させる工程とを有するレーザ照射方法が提供される。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、高品質の加工を行うことが可能なレーザ照射装置、及びレーザ照射方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】実施例によるレーザ照射装置を示す概略図である。
【図2】シリコンウエハに照射するレーザビームの強度と、シリコンウエハの表面温度との関係(シミュレーション結果)を示すグラフである。
【図3】第1の実施例によるレーザ照射方法を示すフローチャートである。
【図4】シリコンウエハの測定温度の時間的変化の一例を示す。
【図5】第2の実施例によるレーザ照射方法を示すフローチャートである。
【図6】シリコンウエハに照射されるレーザビームのエネルギ補正方法を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図1は、実施例によるレーザ照射装置を示す概略図である。実施例によるレーザ照射装置は、レーザ光源10、ミラー11、13、バリアブルアッテネータ12、レンズ14、フォトディテクタ15、温度測定器16、温度処理装置17、制御装置18、及び加工ステージ19を含んで構成される。制御装置18は、たとえばメモリである記憶装置18aを含み、実施例によるレーザ照射装置の動作の制御を行う。
【0018】
レーザ光源10は、たとえばダイオード励起Nd:YLFレーザ発振器を含む。レーザ光源10は、制御装置18からのトリガ信号に同期して、Nd:YLFレーザの第2高調波であるパルスレーザビーム30を出射する。
【0019】
パルスレーザビーム30は、ミラー11、13、バリアブルアッテネータ12、レンズ14を経由して、加工ステージ19上に保持されたワーク20に入射する。バリアブルアッテネータ20は、入射するレーザビーム30の強度を変化させて(減衰率を変化させて)出射することができる。レーザビーム30の強度変化(減衰率変化)は制御装置18により制御することができる。
【0020】
レンズ14は、パルスレーザビーム30をワーク20上に集光する。ワーク20は、たとえば不純物を添加されたシリコンウエハであり、パルスレーザビーム30の照射により、不純物の活性化アニールが行われる。
【0021】
加工ステージ19は、ステージ19a、駆動系19b、及びエネルギメータ(ジュールメータ)19cを含む。ステージ19aは、加工対象物を保持する保持面を備え、ワーク20は、ステージ19aの保持面に保持されている。駆動系19bは、ステージ19aを2次元方向に移動させることができる。エネルギメータ19cは、たとえばステージ19aに固定されており、駆動系19bによってステージ19aとともに移動させることが可能である。駆動系19bによるステージ19aの移動は、制御装置18により制御することができる。
【0022】
駆動系19bによってエネルギメータ19cを移動させ、レーザビーム30をエネルギメータ19cに入射させて、レーザビーム30のエネルギを計測することができる。計測値は制御装置18に伝達され、必要に応じて記憶装置18aに記憶される。
【0023】
フォトディテクタ15は、バリアブルアッテネータ12通過後のレーザビーム30を検出する光検出器である。検出されたレーザビーム30のデータは制御装置18に伝達される。制御装置18は伝達されるデータから、バリアブルアッテネータ12通過後のレーザビーム30のエネルギ(単位時間、単位面積当たりのエネルギ)を把握することができる。把握されたエネルギは、必要に応じて記憶装置18aに格納される。
【0024】
温度測定器16は、特許文献1に記載されている温度測定のための要素、たとえばレーザビーム30が照射されたワーク20から放射される放射光検出器を含み、ワーク20のレーザビーム30入射位置の温度を測定するための情報、たとえば放射光の強度を取得する。取得された情報は、たとえばコンピュータである温度処理装置17に伝達される。
【0025】
温度処理装置17は、温度測定器16から伝達された情報に基づいて、レーザビーム30が照射された位置のワーク20の温度を計算する。
【0026】
制御装置18は、温度処理装置17と専用の回線、たとえばデジタル回線で接続されており、両者の情報はリアルタイムで共有される。前述のように、制御装置18は加工ステージ19の動作を制御するため、温度処理装置17で導出されたワーク20の温度は、加工ステージ19の座標に基づく測定位置と関係づけることができる。測定されたワーク20の温度は、測定位置(レーザビーム30照射箇所のステージポジション)とともに、記憶装置18aに記憶される。
【0027】
図2は、シリコンウエハに照射するレーザビームの強度と、シリコンウエハの表面温度との関係(シミュレーション結果)を示すグラフである。グラフの横軸は、シリコンウエハに照射するレーザビームの強度を、単位「J/cm」で表し、縦軸は、レーザビームが照射された位置のシリコンウエハの温度を、単位「℃」で表す。照射するレーザビームは、Nd:YLFレーザの第2高調波(パルス幅130ns)とした。また、シリコンウエハは、多結晶シリコン上にアモルファスシリコン層が形成されたシリコンウエハを想定した。グラフより、照射するレーザビームの強度を強くすると、シリコンウエハの表面温度が高くなる関係があることがわかる。すなわち、シリコンウエハの表面温度は、照射するレーザビームの強度を変化させることで変えることができる。
【0028】
図3は、第1の実施例によるレーザ照射方法を示すフローチャートである。ステップS101〜S106の処理は、図6に示したレーザビームのエネルギ補正方法と等しい。
【0029】
まずステップS101において、パルスレーザビーム30の入射位置に、エネルギメータ19cを移動させる。次にステップS102において、レーザ光源10から、たとえばNd:YLFレーザの第2高調波であるパルスレーザビーム30を照射し、ステップS103において、照射されたパルスレーザビーム30のエネルギを、エネルギメータ19cを用いて計測する。計測値は、制御装置18に送信される。
【0030】
ステップS104において、ステップS103で計測されたレーザビーム30のパルスエネルギが所定範囲内にあるか否かが、制御装置18により判定される。判定の基準となる範囲(所定範囲)は、制御装置18の記憶装置18aに記憶されている。計測値が所定範囲内にある場合には、シリコンウエハのレーザアニール処理が開始される。所定範囲内にない場合には、ステップS105に進む。
【0031】
記憶装置18aには、シリコンウエハに照射されるべきレーザビーム30のパルスエネルギの適正値(目標値)が記憶されている。ステップS105においては、ステップS103におけるパルスエネルギの計測値と、記憶装置18aに記憶されている目標値との差から、シリコンウエハに照射されるレーザビーム30のパルスエネルギを目標値とするような、バリアブルアッテネータ12の目標設定値(減衰率)が計算される。計算は制御装置18で行われ、制御装置18は、バリアブルアッテネータ12がその設定値(減衰率)でレーザビーム30の強度を減衰するように、バリアブルアッテネータ12を制御する。
【0032】
バリアブルアッテネータ12の設定変更後、シリコンウエハのアニール処理(シリコンウエハへのレーザビーム30の照射)が開始されるまで、ステップS102以降の処理を繰り返す。
【0033】
実施例によるレーザ照射方法は、シリコンウエハへのレーザビーム30照射後においても、照射エネルギ(単位時間、単位面積当たりのエネルギ)の適正化制御を行う点で、図6に示したレーザビームのエネルギ補正方法と異なる。シリコンウエハの実際の処理状態(シリコンウエハの温度)を観測し、観測値に基づいてフィードバックを行うことで、加工品質の向上を実現することができる。
【0034】
第1の実施例によるレーザ照射方法においては、アニール処理開始後、ステップS201において、シリコンウエハにパルスレーザビーム30を照射しながら、測定可能インターバルで、レーザビーム30が照射された位置のシリコンウエハの温度を測定し、測定値を、測定位置(レーザビーム30照射箇所のステージポジション)とともに記録する。温度の測定は、温度測定器16及び温度処理装置17を用いて行われ、測定値と測定位置の記録は、制御装置18によって記憶装置18aに格納される。
【0035】
次に、ステップS202において、加工ステージ19上に保持されているシリコンウエハの処理(レーザアニール加工)が完了したか否かが、制御装置18により判定される。完了したと判定された場合、活性化アニールは終了する。異なるシリコンウエハの処理を行う場合には、ステップS101またはステップS201から開始することができる。
【0036】
ステップS202において、シリコンウエハの処理が未完了と判定された場合には、ステップS203に進み、ステップS201で測定された温度測定値が、幅計測で基準温度から大幅にはずれているか否かが判定される。基準温度、及び基準温度からのずれの許容値は、たとえば記憶装置18aに記憶されており、判定は制御装置18で行われる。温度測定値の基準温度からのずれが許容値を超えている場合、エラー処理がなされる。許容値以内であればステップS204に進む。
【0037】
ステップS204においては、制御装置18により、ステップS201で測定された温度測定値が、目標温度の範囲内であるか否かが判定される。判定の基準となる範囲(目標温度範囲)は、記憶装置18aに記憶されている。測定値が目標温度の範囲内にある場合には、ステップS201に戻り、レーザビームの照射エネルギ(単位時間、単位面積当たりのエネルギ)を変化させないで活性化アニールを継続する。測定値が目標温度の範囲内にないと判定された場合には、ステップS205に進み、照射エネルギ制御が行われる。
【0038】
記憶装置18aには、たとえば単位時間、単位面積当たりのレーザビーム照射エネルギと、そのエネルギでレーザビーム30を照射したときに実現されるシリコンウエハの表面温度とが、対応づけられて記憶されている。ステップS205では、その記憶内容を参照して、レーザビーム30を照射したシリコンウエハが、その照射位置において、目標温度範囲内の温度となるように、単位時間、単位面積当たりのレーザビーム照射エネルギが決定される。そしてそのようなレーザビーム照射エネルギが実現されるように、バリアブルアッテネータ12の目標設定値(減衰率)が計算される。決定及び計算は制御装置18で行われる。その後、制御装置18は、バリアブルアッテネータ12がその設定値(減衰率)でレーザビーム30の強度を減衰するように、バリアブルアッテネータ12を制御する。バリアブルアッテネータ12を介したレーザビーム照射エネルギの制御後、ステップS201に戻る。
【0039】
なお、ステップS205とステップS201との間に、フォトディテクタ15で検出され、制御装置18で把握されるバリアブルアッテネータ12通過後のレーザビーム30のエネルギ(単位時間、単位面積当たりのエネルギ)と、ステップS205で決定されるレーザビーム照射エネルギとのずれを確認するステップを設けてもよい。ずれが許容範囲内にない場合は、ステップS205に戻って、再度照射エネルギ制御を行う。
【0040】
図4を参照して、ステップS204について詳述する。上述のように、ステップS204においては、ステップS201で測定された温度測定値が、目標温度範囲内にあるか否かの判定が行われる。図4に、シリコンウエハの測定温度の時間的変化の一例を示す。
【0041】
本図に示すような温度の時間的変化が生じた場合、第1の実施例においては、時刻tで測定温度が目標温度範囲の下限値を下回るため、たとえば時刻tにおける温度測定値が、ステップS204において判定の対象となったときに、ステップS205に進み、照射エネルギの制御が行われる。
【0042】
また、本図に示す温度変化例では、時刻t〜時刻tにおいて、測定温度が目標温度範囲の下限値を下回っている。たとえばステップS204において、連続して目標温度範囲を逸脱した時間が一定値(図4においては「T」)を超えるか否かを判定し、越えない場合はステップS201に戻り、超える場合にステップS205に進む処理を行ってもよい。本図に示す温度変化例においてこのような処理を行う場合、たとえば時刻tにおける温度測定値が、ステップS204において判定の対象となったときに、ステップS205に進み、照射エネルギの制御が行われる。
【0043】
第1の実施例によるレーザ照射方法は、1枚のシリコンウエハに対する活性化アニールの最中に、レーザ照射位置の温度測定を行い、測定された温度に基づいて、リアルタイムに照射エネルギ(単位時間、単位面積当たりのエネルギ)の適正化制御を行う。このため、活性化の均一性の向上、及び、ウエハ活性化率(代替特性である表面シート抵抗)の安定化が実現される、高品質のレーザアニール加工を行うことができる。
【0044】
図5は、第2の実施例によるレーザ照射方法を示すフローチャートである。第1の実施例においては、測定されたシリコンウエハの温度に基づいて、当該シリコンウエハに照射するレーザビームのエネルギを制御した。第2の実施例においては、測定されたシリコンウエハの温度に基づき、それとは異なるシリコンウエハ、たとえば温度測定されたシリコンウエハの次に加工するシリコンウエハに照射するレーザビームのエネルギを制御する。
【0045】
ステップS101〜S106の処理(活性化アニール開始前の処理)は、第1の実施例と等しい。
【0046】
第2の実施例によるレーザ照射方法においては、アニール処理開始後、ステップS301において、シリコンウエハにパルスレーザビーム30を照射しつつ、測定可能インターバルで、レーザビーム30が照射された位置のシリコンウエハの温度を測定し、測定値を、測定位置(レーザビーム30照射箇所のステージポジション)とともに記録しながら、シリコンウエハ1枚分のレーザアニール加工を終了させる。
【0047】
シリコンウエハの温度測定は、温度測定器16及び温度処理装置17を用いて行われ、測定値と測定位置の記録は、制御装置18によって記憶装置18aに格納される。
【0048】
ステップS302において、処理(加工)必要枚数分の処理が完了したか否かが、制御装置18により判定される。完了したと判定された場合、レーザアニール加工は終了する。
【0049】
ステップS302において、必要枚数分の処理が未完了と判定された場合には、ステップS303に進み、ステップS301で測定され、記録された温度(記録値)が、幅計測で基準温度から大幅にはずれているか否かが判定される。基準温度、及び基準温度からのずれの許容値は、たとえば記憶装置18aに記憶されており、判定は制御装置18で行われる。記録値の基準温度からのずれが、許容値を超えている場合、エラー処理がなされる。許容値以内であれば、ステップS304に進む。
【0050】
ステップS304においては、制御装置18により、記録値が目標温度の範囲内であるか否かが判定される。判定の基準となる範囲(目標温度範囲)は、記憶装置18aに記憶されている。記録値が目標温度の範囲内にある場合には、ステップS301に戻り、レーザビームの照射エネルギを変化させないで、次のシリコンウエハに対し、活性化アニールを実施する。記録値が目標温度の範囲内にないと判定された場合には、ステップS305に進み、照射エネルギ制御が行われる。ステップS305における照射エネルギ制御は、第1の実施例のステップS205における照射エネルギ制御と同様の制御である。照射エネルギ制御終了後、ステップS301に戻り、次のシリコンウエハに対し、活性化アニールを実施する。
【0051】
第2の実施例によるレーザ照射方法によっても、活性化の均一性の向上、及び、ウエハ活性化率(代替特性である表面シート抵抗)の安定化が実現される、高品質のレーザアニール加工を行うことができる。
【0052】
なお、第1及び第2の実施例において、測定値と測定位置とをあわせて記録することにより、たとえば半導体デバイスの製作後、ウエハごとに特性の違いやばらつきが生じた場合、測定された温度と位置とを突き合わせることにより、ウエハのどの位置で製作されたデバイスが違った特性をもっているかを確認することができる。また、突き合わせ作業により、特性の違いやばらつきがレーザ照射によるものなのか、それともその他の工程やウエハ自身がもつ特性によるものなのかを確認することができる。したがって、製作工程における不具合の是正や、製品の品質改善が容易となる。
【0053】
以上実施例に沿って本発明を説明したが、本発明はこれらに制限されるものではない。
【0054】
たとえば、実施例においては、ビーム照射位置のシリコンウエハの温度が、目標温度範囲に含まれるように、バリアブルアッテネータを制御して、レーザビーム照射エネルギの調整を行った。バリアブルアッテネータでなく、レーザ発振器の出力を制御することもできる。また、パルスレーザビームのパルス幅を変化させて、ビーム照射エネルギを制御してもよい。更に、たとえば短パルス幅のレーザパルスを、短い時間間隔をおいて複数パルス出射するマルチパルス(たとえばダブルパルス)を用いて活性化アニールを行う場合は、レーザパルス間の時間間隔を制御することによっても、ビーム照射エネルギを調整することができる。
【0055】
その他、種々の変更、改良、組み合わせ等が可能なことは当業者に自明であろう。
【産業上の利用可能性】
【0056】
レーザ加工一般、殊にレーザアニール加工に好適に利用することができる。
【符号の説明】
【0057】
10 レーザ光源
11、13 ミラー
12 バリアブルアッテネータ
14 レンズ
15 フォトディテクタ
16 温度測定器
17 温度処理装置
18 制御装置
18a 記憶装置
19 加工ステージ
19a ステージ
19b 駆動系
19c エネルギメータ
20 ワーク
30 レーザビーム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザビームを出射するレーザ出射装置と、
前記レーザ出射装置を出射したレーザビームが入射する加工対象物を保持するステージと、
前記ステージに保持された加工対象物の、レーザビームが入射する位置の温度を測定する温度測定装置と、
前記温度測定装置によって測定された前記加工対象物の温度が、(i)第1の温度範囲にある場合には、前記ステージに保持された加工対象物に入射するレーザビームの照射エネルギを変化させず、(ii)前記第1の温度範囲にない場合には、前記ステージに保持された加工対象物の、レーザビームが入射する位置の温度が前記第1の温度範囲内の温度となるように、前記レーザ出射装置を制御して、前記ステージに保持された加工対象物に入射するレーザビームの照射エネルギを変化させる制御装置と
を有するレーザ照射装置。
【請求項2】
更に、記憶装置を含み、
前記制御装置は、前記ステージに保持された加工対象物の、レーザビームが入射する位置の温度を、該レーザビームの入射位置とともに、前記記憶装置に記憶させる請求項1に記載のレーザ照射装置。
【請求項3】
前記制御装置は、前記温度測定装置によって測定された前記加工対象物の温度が、前記第1の温度範囲にない場合、前記ステージに保持された加工対象物自身について、レーザビームが入射する位置の温度が前記第1の温度範囲内の温度となるように、前記レーザ出射装置を制御して、前記加工対象物自身に入射するレーザビームの照射エネルギを変化させる請求項1または2に記載のレーザ照射装置。
【請求項4】
前記制御装置は、前記温度測定装置によって測定された前記加工対象物の温度が、前記第1の温度範囲にない場合、前記ステージに保持された加工対象物とは異なる加工対象物について、レーザビームが入射する位置の温度が前記第1の温度範囲内の温度となるように、前記レーザ出射装置を制御して、前記加工対象物とは異なる加工対象物に入射するレーザビームの照射エネルギを変化させる請求項1または2に記載のレーザ照射装置。
【請求項5】
前記制御装置は、前記温度測定装置によって測定された前記加工対象物の温度が、一定時間継続的に前記第1の温度範囲にない場合に、前記ステージに保持された加工対象物の、レーザビームが入射する位置の温度が前記第1の温度範囲内の温度となるように、前記レーザ出射装置を制御して、前記ステージに保持された加工対象物に入射するレーザビームの照射エネルギを変化させる請求項1〜4のいずれか1項に記載のレーザ照射装置。
【請求項6】
前記レーザ出射装置は、入射するレーザビームの強度を変化させて出射するバリアブルアッテネータを含み、
前記制御装置は、前記温度測定装置によって測定された前記加工対象物の温度が、前記第1の温度範囲にない場合、前記ステージに保持された加工対象物の、レーザビームが入射する位置の温度が前記第1の温度範囲内の温度となるように、前記バリアブルアッテネータを制御して、前記ステージに保持された加工対象物に入射するレーザビームの照射エネルギを変化させる請求項1〜5のいずれか1項に記載のレーザ照射装置。
【請求項7】
(a)加工対象物にレーザビームを入射させながら、該レーザビームが入射した位置の該加工対象物の温度を測定する工程と、
(b)前記工程(a)で測定された温度が、第1の温度範囲にあるか否かを判定する工程と、
(c)前記工程(b)で、(i)前記第1の温度範囲にあると判定された場合には、前記加工対象物自身に入射するレーザビームの照射エネルギを変化させず、(ii)前記第1の温度範囲にないと判定された場合には、前記加工対象物自身について、レーザビームが入射する位置の温度が前記第1の温度範囲内の温度となるように、前記加工対象物自身に入射するレーザビームの照射エネルギを変化させる工程と
を有するレーザ照射方法。
【請求項8】
(a)加工対象物にレーザビームを入射させながら、該レーザビームが入射した位置の該加工対象物の温度を測定する工程と、
(b)前記工程(a)で測定された温度が、第1の温度範囲にあるか否かを判定する工程と、
(c)前記工程(b)で、(i)前記第1の温度範囲にあると判定された場合には、前記加工対象物とは異なる加工対象物に入射するレーザビームの照射エネルギを変化させず、(ii)前記第1の温度範囲にないと判定された場合には、前記加工対象物とは異なる加工対象物について、レーザビームが入射する位置の温度が前記第1の温度範囲内の温度となるように、前記加工対象物とは異なる加工対象物に入射するレーザビームの照射エネルギを変化させる工程と
を有するレーザ照射方法。
【請求項9】
前記工程(a)が、該レーザビームが入射した位置の該加工対象物の温度を、該レーザビームの入射位置とともに記憶する工程を含む請求項7または8に記載のレーザ照射方法。
【請求項10】
前記工程(b)において、前記工程(a)で測定された温度が、一定時間継続的に前記第1の温度範囲にあるか否かを判定し、
前記工程(c)において、一定時間継続的に前記第1の温度範囲にないと判定された場合に、レーザビームが入射する位置の温度が前記第1の温度範囲内の温度となるように、加工対象物に入射するレーザビームの照射エネルギを変化させる請求項7〜9のいずれか1項に記載のレーザ照射方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−3630(P2011−3630A)
【公開日】平成23年1月6日(2011.1.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−143992(P2009−143992)
【出願日】平成21年6月17日(2009.6.17)
【出願人】(000002107)住友重機械工業株式会社 (2,241)
【Fターム(参考)】