説明

レーザ装置、エキシマレーザ装置、光照射装置及び露光装置、並びに光発生方法、光照射方法、露光方法及びデバイス製造方法

【課題】目標波長のレーザ光を安定して射出する。
【解決手段】波長変換部160がダイクロイックミラーなどの合波光学素子を介することなく配置された一組の波長変換素子167d、167eをその最終段に有するので、合波光学素子の位置決め、及びレーザ光の照射による合波光学素子の劣化などを考慮する必要がない。従って、レーザ光源で発生されるレーザ光L1〜L4のパワーを高くしても、波長変換部160から目標波長のレーザ光を安定して射出することが可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザ装置、エキシマレーザ装置、光照射装置及び露光装置、並びに光発生方法、光照射方法、露光方法及びデバイス製造方法に係り、さらに詳しくは、紫外域の所定波長のレーザ光を射出するレーザ装置及びエキシマレーザ装置、前記レーザ装置又はエキシマレーザ装置を備える光照射装置及び露光装置、並びに紫外域の所定波長のレーザ光を発生する光発生方法、該方法を用いる光照射方法、前記光発生方法を用いる露光方法及び該露光方法を用いるデバイス製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、物体の微細構造の検査、物体の微細加工、また、視力矯正の治療等に光照射装置が使用されている。例えば、半導体素子等を製造するためのリソグラフィ工程では、マスク又はレチクルに形成されたパターンを、投影光学系を介してレジスト等が塗布されたウエハ又はガラスプレート等の基板上に転写するために、光照射装置の一種である露光装置が用いられている。また、視力矯正のために、角膜表面のアブレーション(PRK:Photorefractive Keratectomy)あるいは角膜内部のアブレーション(LASIK:Laser Intrastromal keratomileusis)を行って近視や乱視等の治療をするために、光照射装置の一種であるレーザ治療装置が用いられている。
【0003】
かかる光照射装置のために、短波長の光を発生する光源について多くの開発がなされてきた。こうした短波長光源の開発の方向は、主に次の2種に大別される。その一つはレーザの発振波長自身が短波長であるエキシマレーザ光源の開発であり、もう一つは赤外又は可視光レーザの高調波発生を利用した短波長光源の開発である。
【0004】
このうち、前者の方向に沿っては、KrFエキシマレーザ(出力波長248nm)、ArFエキシマレーザ(出力波長193nm)等を使用する光源装置が実用化されている。しかし、これらのエキシマレーザは大型であること、扱いに慎重を要するフッ素ガスを使用するため、レーザのメンテナンスが煩雑でかつ費用が高額となるなど、光源装置として不利な点が存在する。
【0005】
そこで、後者の方向に沿った短波長化の方法として、非線形光学結晶の非線形光学効果を利用して、長波長の光(赤外光、可視光)を、より短波長の紫外光に変換する方法が注目を集めている(例えば、特許文献1、2等参照)。
【0006】
しかしながら、例えば特許文献1、2などに開示される最終波長が193nmの波長変換部では、最終段の波長変換素子に入射する200nm帯の深紫外光と1μm帯の赤外光との合成のために少なくともダイクロイックミラーが必要であった。一般のダイクロイックミラーは、深紫外光により損傷する。また、最終段の波長変換素子に入射する200nm帯の深紫外光と1μm帯の赤外光とをダイクロイックミラーで重ね合わせるための調整が必要であり、この作業が困難であった。
【0007】
【特許文献1】国際公開第99/46835号パンフレット
【特許文献2】特開2004−086193号公報
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、第1の観点からすると、所定波長のレーザ光を射出するレーザ装置であって、波長の異なる第1、第2のレーザ光をそれぞれ発生する第1、第2のレーザ光源と;前記第1及び第2のレーザ光を用いた複数段の波長変換を経て前記所定波長のレーザ光を発生するとともに、合波光学素子を介することなく配置された一組の波長変換素子をその最終段に有する波長変換部と;を備える第1のレーザ装置である。
【0009】
ここで、合波光学素子を介することなく配置された一組の波長変換素子とは、複数のレーザ光を同軸に合成する例えばダイクロイックミラー、プリズムなどの光学素子が、波長変換素子と別の波長変換素子との間に介在されていない一組の波長変換素子を意味する。従って、波長変換素子と波長変換素子との間に光学素子が間に全く存在しない場合は勿論、合波の機能を有しない光学素子、例えばレンズやガラス板などが間に存在している場合の両者を含む。
【0010】
これによれば、波長変換部が合波光学素子を介することなく配置された一組の波長変換素子をその最終段に有するので、合波光学素子の位置決め精度、及びレーザ光の照射による合波光学素子の劣化などを考慮する必要がない。従って、第1、第2のレーザ光源で発生されるレーザ光のパワーを高くしても、波長変換部から所定波長のレーザ光を安定して射出することが可能となる。
【0011】
本発明は、第2の観点からすると、所定波長のレーザ光を射出するレーザ装置であって、波長が1.0〜1.2μmの第1のレーザ光を発生する第1のレーザ光源と;波長が1.5〜2.1μmの第2のレーザ光を発生する第2のレーザ光源と;前記第1及び第2のレーザ光を用いた複数段の波長変換を経て前記所定波長のレーザ光を発生するとともに、前記第1のレーザ光と前記第2のレーザ光との和周波混合を行い第3のレーザ光を発生する第1変換部を含む波長変換部と;を備える第2のレーザ装置である。
【0012】
これによれば、波長変換部の第1変換部により、波長が1.0〜1.2μmの第1のレーザ光と波長が1.5〜2.1μmの第2のレーザ光との和周波混合が行われ、第1のレーザ光の高調波及び第2のレーザ光の高調波のいずれとも異なる波長の第3のレーザ光が発生する。この第3のレーザ光を用いて更なる波長変換が可能になるので、第1のレーザ光の高調波、あるいは第2のレーザ光の高調波を、所定波長のレーザ光とする波長変換の場合に使用できなかった波長変換素子の使用、及び/又は波長変換部の構成の採用が可能となる。
【0013】
本発明は、第3の観点からすると、所定波長のレーザ光を射出するレーザ装置であって、波長の異なる第1、第2のレーザ光をそれぞれ発生する第1、第2のレーザ光源と;前記第1及び第2のレーザ光を用いた複数段の波長変換を経て前記所定波長のレーザ光を発生するとともに、前記第1のレーザ光と前記第2のレーザ光との和周波混合を行い600nmより大きく750nmより小さい範囲の波長の第3のレーザ光を発生する第1変換部を含む波長変換部とを有する第3のレーザ装置である。
【0014】
これによれば、波長変換部の第1変換部により、第1のレーザ光と第2のレーザ光との和周波混合が行われ、600nmより大きく750nmより小さい範囲の波長の第3のレーザ光が発生する。この場合、一例として第1、第2のレーザ光としてそれぞれ波長が1.0〜1.2μmのレーザ光、波長が1.5〜2.1μmのレーザ光を用いることができる。従って、第1のレーザ光の高調波、あるいは第2のレーザ光の高調波を、所定波長のレーザ光とする波長変換の場合に使用できなかった波長変換素子の使用、及び/又は波長変換部の構成の採用が可能となる。
【0015】
本発明は、第4の観点からすると、対象物に光を照射する光照射装置であって、本発明の第1ないし第3のレーザ装置のいずれかと;そのレーザ装置から前記対象物に向けて射出されるレーザ光が経由する光学系と;を備える第1の光照射装置である。
【0016】
これによれば、本発明の第1ないし第3のレーザ装置のいずれかを備えているため、所定波長のレーザ光を、光学系を経由して対象物に安定して照射することが可能となる。
【0017】
本発明は、第5の観点からすると、エキシマレーザ光を射出するエキシマレーザ装置であって、本発明の第1ないし第3のレーザ装置のいずれかを含む主発振器と;前記主発振器から出力されるレーザ光をシード光とし、該シード光を増幅するガスレーザチャンバと;を備えるエキシマレーザ装置である。
【0018】
これによれば、主発振器が本発明の第1ないし第3のレーザ装置のいずれかを含むので、エキシマレーザ光を、安定して射出することが可能となる。
【0019】
本発明は、第6の観点からすると、対象物に光を照射する光照射装置であって、本発明のエキシマレーザ装置と;該エキシマレーザ装置から前記対象物に向けて射出されるレーザ光が経由する光学系と;を備える第2の光照射装置である。
【0020】
これによれば、本発明のエキシマレーザ装置を備えているため、所定波長のエキシマレーザ光を、光学系を経由して対象物に安定して照射することが可能となる。
【0021】
本発明は、第7の観点からすると、物体を露光して前記物体上にパターンを形成する露光装置であって、本発明の第1ないし第3のレーザ装置のいずれかと;そのレーザ装置から前記物体に向けて射出されるレーザ光が経由する光学系と;を備える露光装置である。
【0022】
これによれば、レーザ装置から射出される所定波長のレーザ光を、光学系を経由して物体に安定して照射することで、物体上にパターンを安定して形成することが可能となる。
【0023】
本発明は、第8の観点からすると、所定波長のレーザ光を発生する光発生方法であって、第1、第2のレーザ光源から波長の異なる第1、第2のレーザ光をそれぞれ発生する工程と;合波光学素子を介することなく配置された一組の波長変換素子をその最終段に有する波長変換部により、前記第1及び第2のレーザ光を用いた複数段の波長変換を行う工程と;を含む第1の光発生方法である。
【0024】
これによれば、合波光学素子を介することなく配置された一組の波長変換素子をその最終段に有する波長変換部が用いられるので、合波光学素子の位置決め精度、及びレーザ光の照射による合波光学素子の劣化などを考慮する必要がない。従って、第1、第2のレーザ光源で発生されるレーザ光のパワーを高くしても、波長変換部から所定波長のレーザ光が安定して射出されることとなる。
【0025】
本発明は、第9の観点からすると、所定波長のレーザ光を発生する光発生方法であって、第1、第2のレーザ光源から波長が1.0〜1.2μmの第1のレーザ光、波長が1.5〜2.1μmの第2のレーザ光を、それぞれ発生する工程と;前記第1のレーザ光と前記第2のレーザ光との和周波混合を行い第3のレーザ光を発生する波長変換を含む、複数段の波長変換を行う工程と;を含む第2の光発生方法である。
【0026】
これによれば、波長が1.0〜1.2μmの第1のレーザ光と波長が1.5〜2.1μmの第2のレーザ光との和周波混合が行われ、第1のレーザ光の高調波及び第2のレーザ光の高調波のいずれとも異なる波長の第3のレーザ光が発生する。この第3のレーザ光を用いて更なる波長変換が可能になるので、第1のレーザ光の高調波、あるいは第2のレーザ光の高調波を、所定波長のレーザ光とする波長変換の場合に使用できなかった波長変換素子の使用、及び/又は波長変換部の構成の採用が可能となる。
【0027】
本発明は、第10の観点からすると、所定波長のレーザ光を発生する光発生方法であって、第1、第2のレーザ光源から波長の異なる第1、第2のレーザ光をそれぞれ発生する工程と;前記第1のレーザ光と前記第2のレーザ光との和周波混合を行い600nmより大きく750nmより小さい範囲の波長の第3のレーザ光を発生する第1変換を含む複数段の波長変換を行う工程と;を含む第3の光発生方法である。
【0028】
これによれば、第1のレーザ光と第2のレーザ光との和周波混合が行われ、600nmより大きく750nmより小さい範囲の波長の第3のレーザ光が発生する。この場合、一例として第1、第2のレーザ光としてそれぞれ波長が1.0〜1.2μmのレーザ光、波長が1.5〜2.1μmのレーザ光を用いることができる。従って、第1のレーザ光の高調波、あるいは第2のレーザ光の高調波を、所定波長のレーザ光とする波長変換の場合に使用できなかった波長変換素子の使用、及び/又は波長変換部の構成の採用が可能となる。
【0029】
本発明は、第11の観点からすると、所定波長のレーザ光を発生するエキシマレーザ光発生方法であって、本発明の第1〜第3の光発生方法のいずれかにより前記所定波長のレーザ光を発生する第1工程と;前記レーザ光をガスレーザチャンバにシード光として入射させ、そのシード光を前記ガスレーザチャンバで増幅する第2工程と;を含むエキシマレーザ光発生方法である。
【0030】
これによれば、本発明の第1〜第3の光発生方法のいずれかにより発生されたレーザ光がガスレーザチャンバにシード光として入射し、そのシード光がガスレーザチャンバで増幅される。これにより、ガスレーザチャンバから増幅されたエキシマレーザ光を、安定して射出することが可能となる。
【0031】
本発明は、第12の観点からすると、対象物に光を照射する光照射方法であって、本発明の第1ないし第3の光発生方法のいずれかによりレーザ光を発生する工程と;前記レーザ光を光学系を介して前記対象物に向けて射出する工程と;を含む光照射方法である。
【0032】
これによれば、本発明の第1ないし第3の光発生方法のいずれかにより、所定波長のレーザ光が、光学系を経由して対象物に安定して照射される。
【0033】
本発明は、第13の観点からすると、物体を露光して前記物体上にパターンを形成する露光方法であって、本発明の第1ないし第3の光発生方法のいずれかによりレーザ光を発生する工程と;前記レーザ光を光学系を介して前記物体に向けて射出する工程と;を含む露光方法である。
【0034】
これによれば、本発明の第1ないし第3の光発生方法のいずれかにより、所定波長のレーザ光が、光学系を経由して物体に安定して照射され、物体上にパターンが安定して形成される。
【0035】
リソグラフィ工程において、本発明の露光方法を用いて物体上にパターンを形成することで、物体上にパターンを安定して形成され、デバイスの生産性を向上させることができる。従って、本発明は、さらに別の観点からすると、本発明の露光方法を用いるデバイス製造方法であるとも言える。
【発明を実施するための最良の形態】
【0036】
以下、本発明の一実施形態を図1〜図3に基づいて説明する。図1には、本発明の光発生方法及び光照射方が適用される一実施形態に係る露光装置10の概略構成が示されている。この露光装置10は、ステップ・アンド・スキャン方式の走査型露光装置(いわゆるスキャナ)である。
【0037】
露光装置10は、レーザ装置16、照明光学系ユニット12、この照明光学系ユニット12からの露光用照明光(以下、適宜「照明光」又は「露光光」という)ILにより照明されるレチクル(マスク)Rを保持するレチクルステージRST、レチクルRを介した露光光ILをウエハ(物体)W上に投射する投影光学系PL、ウエハWを保持するウエハステージWST、及びこれらを制御する主制御装置50等を備えている。
【0038】
前記レーザ装置16は、一例として波長193.4nmの紫外パルス光を射出する装置である。このレーザ装置16は、図2に示されるように、クロック発生器161、4個のディレイ回路(162a、162b、162c、162d)、4個のパルス発生器(163a、163b、163c、163d)、4個のレーザ光源(164a、164b、164c、164d)、4個の光増幅器(165a、165b、165c、165d)、及び波長変換部160等を備えている。
【0039】
クロック発生器161は、主制御装置50によって制御され、クロック信号を生成する。このクロック発生器161で生成されたクロック信号は、ディレイ回路162a、162b、162c、162dのそれぞれに供給される。
【0040】
ディレイ回路162a、162b、162c、162dのそれぞれは、異なる経路を通ったレーザ光同士の和周波混合を行う後述する各波長変換素子(非線形光学結晶)、特に波長変換素子167d、167eでの波長変換が可能な限り効率良く行われるように、すなわちそれらの波長変換素子の内部で波長の異なる複数のレーザ光が極力重なるように、クロック発生器161からのクロック信号をそれぞれ遅延させる。ディレイ回路162a、162b、162c、162dそれぞれの遅延時間は、各波長変換素子中の各レーザ光の速度の違い、及び各レーザ光源から各波長変換素子までの光路長の違いなどを考慮して、予め定められている。従って、ディレイ回路162a、162b、162c、162dのそれぞれに代えて、光学的に各レーザ光に遅延を与えるディレイ装置を用いても良い。また、ディレイ回路162a、162b、162c、162dそれぞれの遅延時間は、特定の1つのディレイ回路の遅延時間を基準として、残りのディレイ回路の遅延時間が設定されるので、その特定の1つのディレイ回路は必ずしも設けなくても良い。ディレイ装置を用いる場合も同様である。
【0041】
パルス発生器163a、163b、163c、163dは、それぞれディレイ回路162a、162b、162c、162dを介したクロック信号に基づいてパルス信号を生成する。
【0042】
レーザ光源164aは、発振波長が1020nm〜1150nmの範囲、一例として1105nmの単一波長発振レーザ、例えばDFB半導体レーザを含み、パルス発生器163aからのパルス信号に応じて、波長1105nmのレーザ光をパルス発光する。
【0043】
レーザ光源164bは、発振波長が1020nm〜1150nmの範囲、一例として1105nmの単一波長発振レーザ、例えばDFB半導体レーザを含み、パルス発生器163bからのパルス信号に応じて、波長1105nmのレーザ光をパルス発光する。
【0044】
レーザ光源164cは、発振波長が1520nm〜1620nmの範囲、一例として1547nmの単一波長発振レーザ、例えばDFB半導体レーザを含み、パルス発生器163cからのパルス信号に応じて、波長1547nmのレーザ光をパルス発光する。
【0045】
レーザ光源164dは、発振波長が1020nm〜1150nmの範囲、一例として1105nmの単一波長発振レーザ、例えばDFB半導体レーザを含み、パルス発生器163dからのパルス信号に応じて、波長1105nmのレーザ光をパルス発光する。
【0046】
レーザ光源164a、164b、164dをそれぞれ構成する単一波長発振レーザとしては、例えばイッテルビウム・ドープ・ファイバレーザを用いることができる。また、レーザ光源164cを構成する単一波長発振レーザとしては、例えばエルビウム・ドープ・ファイバレーザを用いることができる。
【0047】
本実施形態では、主制御装置50が、レーザ光源164a、164b、164c、164dにおけるレーザ光の発光パワーを個別に検出(モニタ)し、その検出結果に応じて各単一波長発振レーザの駆動信号を個別に制御する。
【0048】
光増幅器165aは、レーザ光源164aからの波長1105nmのレーザ光を増幅する。光増幅器165aとしては、例えばモード径が大きいイッテルビウム・ドープ・ファイバ光増幅器(以下、「YDFA」と略述する)が用いられている。このため、光増幅器165aから集光レンズ166aを介して後述する波長変換素子167aに入射する波長1105nmのレーザ光のピークパワーを高くすることができる。
【0049】
光増幅器165bは、レーザ光源164bからの波長1105nmのレーザ光を増幅する。光増幅器165bとしては、例えばモード径が大きいYDFAが用いられている。このため、光増幅器165bから集光レンズ166cを介して後述するダイクロイックミラー168aに入射する波長1105nmのレーザ光のピークパワーを高くすることができる。
【0050】
光増幅器165cは、レーザ光源164cからの波長1547nmのレーザ光を増幅する。光増幅器165cとしては、例えばモード径が大きいエルビウム・ドープ・ファイバ光増幅器(以下、「EDFA」と略述する)が用いられている。このため、光増幅器165cから集光レンズ166eを介して後述するダイクロイックミラー168aに入射する波長1547nmのレーザ光のピークパワーを高くすることができる。
【0051】
光増幅器165dは、レーザ光源164dからの波長1105nmのレーザ光を増幅する。光増幅器165dとしては、例えばモード径が大きいYDFAが用いられている。このため、光増幅器165dから集光レンズ166fを介して後述するダイクロイックミラー168bに入射する波長1105nmのレーザ光のピークパワーを高くすることができる。
【0052】
なお、図2では光増幅器165a〜165dがそれぞれ1段のみ設けられているものとしたが、このうちの少なくとも1つを、複数段設けても良いことは勿論である。換言すれば、光増幅器165a〜165dの少なくとも1つにおいて、ファイバ光増幅器を多段構成として、入射するレーザ光を複数回増幅しても良い。また、光増幅器165a〜165dの少なくとも1つにおいて、入射するレーザ光を複数に分岐し、その複数の分岐光をそれぞれ1段又は多段構成のファイバ光増幅器で増幅しても良い。この場合、その増幅された複数の分岐光を同軸に合成して出力することとしても良い。さらに、各レーザ光源におけるレーザ光の発光パワーを個別に検出し、その検出結果に応じてレーザ光源の駆動信号を個別に制御する代わりに、あるいは、これとともに、光増幅器165a、165b、165c、165dがそれぞれ設けられた光路上で各レーザ光のパワーなどを検出(モニタ)し、その検出結果に応じて各光増幅器を制御することとしても良い。
【0053】
波長変換部160は、図3に拡大して示されるように、複数の波長変換素子(非線形光学結晶)167a〜167eを含み、光増幅器165a〜165dからのパルスレーザ光を入射光として、複数段の波長変換を行って、ArFエキシマレーザ光とほぼ同じ波長である波長193.4nmのパルス紫外光を発生する。
【0054】
ここで、図3に基づいて、波長変換部160について説明する。なお、図3には、光増幅器165a、165b、165dからそれぞれ射出される波長1105nmのレーザ光L1、L2、L4を第1基本波(第1基本光)とし、かつ光増幅器165cからの波長1547nmのレーザ光L3を第2基本波(第2基本光)として、非線形光学結晶を用いて波長変換を行い、ArFエキシマレーザとほぼ同じ波長である193.4nmの紫外光を発生する構成例が示されている。ここで、基本波(基本光)とは、波長変換部160に外部から入射したレーザ光であって、波長変換部160の内部では一度も波長変換に用いられていない、波長変換の基本となるレーザ光を意味する。
【0055】
光増幅器165aから射出された波長1105nm(周波数ω1)のレーザ光L1(第1基本波)は、波長変換素子167aに入射する。この第1基本波L1が、波長変換素子167aを通る際に、2次高調波発生により第1基本波の周波数ω1の2倍、すなわち周波数2ω1(波長は1105nmの1/2の552.5nm)の2倍波が発生する。
【0056】
この波長変換素子167aとして、LiB結晶(LBO結晶)から成る非線形光学素子が用いられ、基本波を2倍波に波長変換するための位相整合にLBO結晶の温度調節による方法、すなわちNCPM(Non-Critical Phase Matching)が使用される。NCPMは、非線形光学結晶内での基本波と第二高調波との角度ずれ(ウォークオフ(Walk-off))が起こらないため、高効率で2倍波への変換を可能にし、また発生した2倍波はウォークオフによるビームの変形も受けないという利点がある。この場合、NCPMが満たされるように、波長変換素子167aは、温度が103℃に保持されている。また、波長変換素子167aの非線形係数deffは0.86pm/Vである。
【0057】
この場合、波長変換素子167aには、ピークパワーの高い波長1105nmのレーザ光L1が入射するので、波長変換素子167aでは、変換効率を高めることができる。そのため、波長変換素子167aに入射するレーザ光のビーム径が比較的大きくても、所望の変換効率で波長552.5nmのレーザ光を発生させることが可能となる。また、LBO結晶の長さを短くしても、所望の変換効率で波長552.5nmのレーザ光を発生させることが可能となる。
【0058】
このように、波長変換素子167aでは、NCPMが使用され、高い変換効率で波長変換が行われるので、波長変換素子167aから射出されるレーザ光のビーム形状が楕円形状となるのを抑制することができる。すなわち、ビーム品質に優れたレーザ光が波長変換素子167aから射出されることとなる。
【0059】
波長変換素子167aで波長変換されずに透過した第1基本波と、波長変換で発生した2倍波とは、集光レンズ166bを介して不図示の波長板でそれぞれ半波長、1波長の遅延が与えられて、基本波のみその偏光方向が90度回転し、波長変換素子167bに入射する。波長変換素子167bとして、β−BaB24(BBO)結晶から成る非線形光学素子が用いられている。波長変換素子167bは、波長変換素子167aで発生した2倍波と、波長変換されずにその波長変換素子167aを透過した第1基本波との和周波混合を行って周波数3ω1(波長は1105nmの1/3の368.3nm)の3倍波を発生する。波長変換素子167bの非線形係数deffは2.0pm/V、ウォークオフ角は70mradである。このように、波長変換素子167bから発生する3倍波は、ウォークオフのため、断面が楕円形をしており、そのままでは集光性が悪くて、次の波長変換に使用できない。このため、本実施形態では、波長変換素子167の後段にシリンドリカルレンズ169a及びシリンドリカルレンズ169bが配置されており、波長変換素子167bからのレーザ光は、シリンドリカルレンズ169a、169bによってその断面形状が円形になるようにビーム整形された後、ダイクロイックミラー168cに入射する。
【0060】
一方、光増幅器165bから射出された波長1105nm(周波数ω1)のレーザ光L2(第1基本波)と、光増幅器165cから射出された波長1547nm(周波数ω2)のレーザ光L3(第2基本波)とは、ダイクロイックミラー168aによって、同軸に合成される。そして、この同軸に合成されたレーザ光L2とレーザ光L3との合成光(合波された光)は、後段の波長変換素子167cに入射する。
【0061】
波長変換素子167cとしては、LBO結晶から成る非線形光学素子が用いられるとともに、該波長変換素子167cでは波長変換素子(LBO結晶)167aとは異なる温度(例えば12℃)でのNCPMが使用される。この波長変換素子167cでは、波長1105nm(周波数ω1)のレーザ光L2と、波長1547nm(周波数ω2)のレーザ光L3との和周波混合により、周波数(ω1+ω2)(レーザ光L1,L2の波長をそれぞれλL1,λL2として波長はλL1λL2/λL1+λL2≒645nm)のレーザ光を発生する。波長変換素子167cの非線形係数deffは0.86pm/Vである。
【0062】
この波長変換素子167cには、ピークパワーの高い波長1105nmのレーザ光L2及びピークパワーの高い波長1547nmのレーザ光L3が入射するので、波長変換素子167cでは、変換効率を高めることができる。そのため、波長変換素子167cに入射するレーザ光のビーム径が比較的大きくても所望の変換効率で波長645nmのレーザ光を発生させることが可能となる。また、LBO結晶の長さを短くしても所望の変換効率で波長645nmのレーザ光を発生させることが可能となる。
【0063】
また、波長変換素子167cでは、NCPMが使用されているので、ウォークオフが起こらず、高効率な波長変換が可能であるとともに、ウォークオフによるビーム形状の変形も生じない。従って、波長変換素子167cからは、ビーム品質に優れたレーザ光が波長変換素子167cから射出されることとなる。
【0064】
波長変換素子167cから射出される波長645nmのレーザ光は、集光レンズ166dを介してダイクロイックミラー168bに入射し、該ダイクロイックミラー168bで、光増幅器165dから射出された波長1105nmのレーザ光L4(第1基本波)と同軸に合成され、ダイクロイックミラー168cに向かって進む。ダイクロイックミラー168bは、波長645nmのレーザ光を反射し、波長1105nmのレーザ光を透過させる。
【0065】
そして、この同軸に合成された波長645nmのレーザ光と、波長1105nmのレーザ光L4とは、ダイクロイックミラー168cによって、シリンドリカルレンズ169a、169bによってビーム整形された波長368.3nmのレーザビームと同軸に合成され、波長変換素子167dに入射する。
【0066】
波長変換素子167dとしては、一例としてCsLiB10結晶(CLBO結晶)から成る非線形光学素子が用いられている。波長変換素子167dの非線形係数deffは0.93pm/V、ウォークオフ角は15mradである。波長変換素子167dは、ダイクロイックミラー168cを介したレーザ光に含まれる、波長変換素子167bで発生した波長368.3nmのレーザ光と、波長変換素子167cで発生した波長645nmのレーザ光との和周波混合を行い、波長234nm(周波数は4ω1+ω2)のレーザ光を発生する。
【0067】
この場合、波長変換素子167dには、高いビーム品質のレーザ光が入射するとともに、波長変換素子167dは、非線形係数deffが比較的大きく、ウォークオフ角が小さくなる角度で使用されている。また、前述したように、本実施形態では、各光増幅器としてモード径が大きいファイバ光増幅器が用いられ、高いピークパワーのレーザ光を各基本波として使用できるので、各波長変換素子の結晶長を短くできる、及び/又は入射ビーム径が大きくなることを許容できる。このような理由により、波長変換素子167dでは、高い変換効率での波長変換が可能であるとともに、該波長変換によって発生したレーザ光は、ガウスビームからの歪が小さいレーザ光である。すなわち、波長変換素子167dからの波長234nm(深紫外域)のレーザ光は、ビーム品質が優れている。従って、波長変換素子167dからの波長234nm(深紫外域)のレーザ光は何ら補正することなく、次段以降の波長変換素子(本実施形態では波長変換素子167e)での波長変換に用いることができる。このため、本実施形態では、波長変換素子167dと波長変換素子167eとの間には、光学素子が何も設けられていない。波長変換素子167dからのレーザ光の光路上に、シリンドリカルレンズなどは勿論、波長が200nm帯(一例として234nm)の深紫外光と波長が1μm帯(一例として波長1105nm)の赤外光とを合波するためのダイクロイックミラーなども介在させることなく、波長変換素子167eを配置することができる。
【0068】
なお、波長変換素子167dと波長変換素子167eとの間のレーザ光の光路上に、例えばガラス板などが配置されていても良い。また、波長変換素子167d及び波長変換素子167eの少なくとも一方が、いわゆるセル化され、保護ガラスで覆われていても良い。
【0069】
波長変換素子167dで発生した波長234nmのレーザ光は、波長変換素子167dを通過したファイバ光増幅器165dからの波長1105nm(1.1μm帯)のレーザ光L4とともに、直後に配置された波長変換素子167eに入射する。この波長変換素子167eとしては、一例としてCLBO結晶から成る非線形光学素子が用いられている。波長変換素子167eは、非線形係数deffが1.1pm/V、ウォークオフ角が3mradである。波長変換素子167eは、波長変換素子167dで発生した波長234nmのレーザ光とレーザ光L4との和周波混合により、波長193.4nm(周波数は5ω1+ω2)のレーザ光を発生する。
【0070】
この場合、波長変換素子167eには、高いビーム品質のレーザ光が入射するとともに、波長変換素子167eとして、ウォークオフ角がほぼ零となる角度でCLBO結晶を使用しているため、波長変換素子167eからの波長193.4nmのレーザ光は、ビーム品質が極めて優れている。この波長193.4nmのレーザ光がレーザ装置16から射出され、照明光学系12に入射する。
【0071】
図1に戻り、前記照明光学系ユニット12は、例えばレーザ装置16に送光光学系を介して接続された照明系ハウジング及び該照明系ハウジング内部の照明光学系を含む。照明光学系は、例えば特開2001−313250号公報(対応する米国特許出願公開第2003/0025890号公報)などに開示されるように、オプティカルインテグレータ等を含む照度均一化光学系、レチクルブラインド等(いずれも不図示)を含む。ここで、オプティカルインテグレータとしては、フライアイレンズ、内面反射型インテグレータ(ロッドインテグレータ等)あるいは回折光学素子等が用いられる。照明光学系ユニット12から射出された露光光ILは、ミラーMによって光路が垂直下方に折り曲げられた後、コンデンサレンズ32を経て、レチクルステージRST上に保持されたレチクルR上でX軸方向(図1における紙面直交方向)に細長く伸びるスリット状の照明領域42Rを均一な照度分布で照明する。なお、前述の照明光学系はミラーM及びコンデンサレンズ32も含むものとしても良い。
【0072】
前記レチクルステージRST上には、レチクルRが載置され、不図示のバキュームチャック等を介して吸着保持されている。レチクルステージRSTは、水平面(XY平面)内で微小駆動可能であるとともに、レチクルステージ駆動系49によって走査方向(ここでは図1の紙面左右方向であるY軸方向とする)に所定ストローク範囲で走査される。この走査中のレチクルステージRSTの位置及び回転量は、レチクルステージRST上に固定された移動鏡52R(又はその側面に形成される反射面)を介してレーザ干渉計54Rによって計測され、このレーザ干渉計54Rの計測値が主制御装置50に供給される。
【0073】
前記投影光学系PLは、例えば両側テレセントリックな縮小系であり、Z軸方向と平行な光軸AXに沿って配列される複数枚のレンズエレメントを含む。また、この投影光学系PLとしては、投影倍率βが例えば1/4、1/5、1/6などのものが使用されている。このため、露光光ILによりレチクルR上の照明領域42Rが照明されると、そのレチクルRに形成されたパターンが投影光学系PLによって投影倍率βで縮小投影され、パターンの縮小像(部分像)が表面にレジスト(感光剤)が塗布されたウエハW上の前記照明領域42Rに共役な露光領域42Wに生成(形成)される。なお、投影光学系は縮小系のみならず等倍系及び拡大系のいずれでも良いし、屈折系のみならず反射系及び反射屈折系のいずれでも良いし、その投影像は倒立像及び正立像のいずれでも良い。
【0074】
前記ウエハステージWSTは、例えばリニアモータ等を含むウエハステージ駆動系56によってXY面内で駆動されるXYステージ14と、該XYステージ14上に搭載されたZチルトステージ58とを含む。Zチルトステージ58上に、ウエハWが、ウエハホルダ(不図示)を介して真空吸着等により保持されている。Zチルトステージ58は、例えば3つのアクチュエータ(ピエゾ素子又はボイスコイルモータなど)によってウエハWのZ軸方向の位置(フォーカス位置)を調整するとともに、XY平面(投影光学系PLの像面)に対するウエハWの傾斜角を調整する機能を有する。また、Zチルトステージ58のXY面内の位置情報及び回転情報(X軸回りの回転(θx回転)、Y軸回りの回転(θy回転)、及びZ軸回りの回転(θz回転))は、Zチルトステージ58上に固定された移動鏡52Wを介してレーザ干渉計54Wにより計測され、このレーザ干渉計54Wの計測値が主制御装置50に供給される。なお、XYステージ14及びZチルトステージ58の代わりに、ウエハが載置される単一の6自由度ステージを用いても良い。また、移動鏡52Wの代わりに、Zチルトステージ58の端面を鏡面加工して反射面(移動鏡52Wの反射面に相当)を形成しても良い。
【0075】
主制御装置50は、CPU(中央演算処理装置)、ROM(リード・オンリ・メモリ)、RAM(ランダム・アクセス・メモリ)等から成るいわゆるマイクロコンピュータ(又はワークステーション)を備えており、これまでに説明した各種の制御を行う他、露光動作が的確に行われるように、例えばレチクルRとウエハWの同期走査、ウエハWのステッピング、露光タイミング等を制御する。また、主制御装置50は、走査露光の際の露光量の制御を行ったりする等の他、装置全体を統括制御する。
【0076】
具体的には、主制御装置50は、例えば走査露光時には、レチクルRがレチクルステージRSTを介して+Y方向(又は−Y方向)に速度VR=Vで走査されるのに同期して、ウエハステージWSTを介してウエハWが露光領域42Wに対して−Y方向(又は+Y方向)に速度VW=β・V(βはレチクルRからウエハWに対する投影倍率)で走査されるように、レーザ干渉計54R、54Wの計測値に基づいてレチクルステージ駆動系49、ウエハステージ駆動系56をそれぞれ介してレチクルステージRST、ウエハステージWSTの位置及び速度をそれぞれ制御する。また、ステッピングの際には、主制御装置50はレーザ干渉計54Wの計測値に基づいてウエハステージ駆動系56を介してウエハステージWSTの位置を制御する。
【0077】
露光装置10では、デバイスの製造に際し、通常のスキャニング・ステッパ(スキャナ)と同様の手順で、レチクルアライメント及び不図示のアライメント系のベースライン計測、ウエハアライメント(例えば特開昭61−44429号公報に開示されるエンハンスト・グローバル・アライメント(EGA)など)が行われた後、上述したレチクルステージRSTとウエハステージWSTとの同期移動を行う走査露光動作と、ウエハステージWSTをショット領域の露光終了後、次ショット領域の露光のための加速開始位置に移動するショット間移動(ステッピング)動作とを交互に繰り返すステップ・アンド・スキャン方式の露光動作が行われ、ウエハW上の複数のショット領域にレチクルRのパターンがそれぞれ転写される。
【0078】
以上説明したように、本実施形態に係るレーザ装置16によると、波長変換部160が、レーザ光の光路上にダイクロイックミラーなどの合波光学素子を介することなく隣接して配置された一組の波長変換素子167d及び167eをその最終段に有するので、レーザ光の照射による合波光学素子の劣化などを考慮する必要がない。従って、レーザ光源164a〜164dで発生するレーザ光のパワーを高くできるので、波長変換部160から波長193.4nmのレーザ光を安定して射出することが可能となる。また、波長変換素子167dと波長変換素子167eとの間に合波光学素子がないので、その合波光学素子の位置調整などは考慮する必要がない。
【0079】
また、レーザ装置16によると、波長変換部160のダイクロイックミラー168aによって波長が1.1μm帯、一例として1105nmのレーザ光L2と、波長が1.5μm帯、一例として1547nmのレーザ光L3とが同軸に合成され(合波され)、波長変換素子167cにより、レーザ光L2とレーザ光L3との和周波混合が行われ、波長1105nm(1.1μm帯)のレーザ光の高調波及び波長1547(1.5μm帯)のレーザ光の高調波のいずれとも異なる波長645nmのレーザ光が発生する。このため、この波長645nmのレーザ光を用いて更なる波長変換が可能になるので、波長1105nm(1.1μm帯)のレーザ光の高調波、あるいは波長1547(1.5μm帯)のレーザ光の高調波を、目標波長のレーザ光とする波長変換の場合に使用できなかった波長変換素子、具体的には非線形係数deffが0.93pm/V、ウォークオフ角が15mradとなる角度でのCLBO結晶、非線形係数deffが1.1pm/V、ウォークオフ角が3mradとなる角度でのCLBO結晶を、波長変換素子167d、167eとして使用が可能となるとともに、上述したような従来にない波長変換部160の構成の採用が可能となっている。
【0080】
そして、波長変換素子167d、167eを採用した結果、前述したように、波長変換素子167dでビーム品質が優れた波長234nmのレーザ光を発生することができるとともに、波長変換素子167eでビーム品質に優れた波長193.4nmのレーザ光を発生することができる。
【0081】
また、本実施形態のレーザ装置16によると、レーザ光L1〜L4は、それぞれモード径が大きいファイバ光増幅器で高ピークパワーのレーザ光に増幅されて、各波長変換素子に入射する。従って、比較的高い変換効率を保ちつつ、各波長変換素子の結晶長を短くできる、及び/又は入射ビーム径が大きくなることを許容できる。また、モード径が大きいファイバ光増幅器が使用されているので、比較的高いピークパワーを保ちつつ、パルスの時間的な幅を長くすることができ、その結果、レーザ装置16から射出される193.4nmのレーザ光のスペクトルを狭帯域化することが可能となる。
【0082】
本実施形態の露光装置10によると、前述した走査露光にあたって、レーザ装置16で発生した波長193.4nmのレーザ光(照明光IL)が、照明光学系ユニット12(照明光学系)を介してレチクルRに照射され、レチクルRを透過した照明光ILが投影光学系PLを介してウエハW上に投射される。この場合、レーザ装置16で発生した波長193.4nmのレーザ光(照明光IL)はビーム品質に優れているとともに、繰り返し周波数は従来のエキシマレーザに比べて同等以上であるから、ウエハW上の各ショット領域にレチクルRのパターンを精度良く形成することが可能である。
【0083】
なお、上記実施形態では、波長変換素子167cにより、レーザ光L2とレーザ光L3との和周波混合が行われ、波長645nmのレーザ光が発生される場合について説明したが、本発明がこれに限定されるものではない。YDFAの増幅可能な波長範囲が1020nm〜1150nmであり、EDFAの増幅可能な波長範囲が1520nm〜1620nmであるものと仮定し、波長変換素子167cが、レーザ光L2とレーザ光L3との和周波混合により発生するレーザ光の波長をλ1とすると、λ1の範囲は、YDFAとEDFAの増幅可能な波長範囲から、610nm<λ1<660nmを満足すれば良い。このような場合には、一例としてレーザ光L2、L3としてそれぞれ波長が1.1μm帯のレーザ光、波長が1.5μm帯のレーザ光を用いることができ、上記実施形態と同様の波長変換素子の採用、及び/又は波長変換部の構成の採用が可能となる。
【0084】
この場合において、波長変換素子167bで発生する光の波長をλ2、波長変換素子167dで発生する光の波長をλ3とし、最終波長を193.4nmとすると、位相整合の範囲と、YDFAの増幅可能な波長範囲から、λ3の範囲は、232nm<λ3<235nmとなる。従って、λ2の範囲は、上記λ3の範囲、λ1の範囲から、357nm<λ2<383nmとなる。
【0085】
なお、図3に示されるような構成を有する波長変換部160では、第2基本波として、EDFAから出力される光の代わりに、Tm(ツリウム)、若しくはHo(ホロミウム)が添加されたファイバ光増幅器から出力される光を用いても良い。出力波長が前述のように1.5μm帯であるEDFAでなく、出力波長が2μm帯であるツリウム(又はホロミウム)・ドープ・ファイバ光増幅器を適用した場合には、YDFAから出力される光の波長は、約1062nmとなる。Ybの蛍光断面積は、波長1062nmでは波長1105nmより大きいので、高ピークパワーの増幅に有利となる。ただし、この場合でも、上記L4として使用するレーザ光の波長は、波長変換素子167eにおける位相整合の条件から、1105nm近辺である必要がある。
【0086】
また、上述した波長変換部160は、ArFエキシマレーザの発振波長と略同一の波長(193.4nm)の光が得られるものであったが、本実施形態では、この波長変換部160の構成を変更すれば、例えばKrFエキシマレーザの発振波長(248nm近傍)、あるいはF2レーザの発振波長(157nm近傍)と略同一の波長を得ることもできるようになる。なお、上記実施形態のレーザ装置は、その発振波長がKrFエキシマレーザ光、ArFエキシマレーザ光、及びFレーザ光のいずれの発振波長とも異なっていても良いし、遠紫外域又は真空紫外域に限られるものでもないが、特に波長が200nm以下のレーザ光を発生するレーザ装置として有効である。
【0087】
なお、上記実施形態で説明した各波長変換素子を構成する非線形光学結晶は、一例であって、本発明がこれに限定されるものではない。例えば、波長換素子167cとしては、LBO結晶から成る非線形光学素子に限らず、例えば、PPLN(Periodically Poled Lithium Niobate)あるいはPPSLT(Periodically Poled Stoichiometric Lithium Tantalate)を用いた非線形光学素子を用いることもできる。
【0088】
なお、上記実施形態のレーザ装置では、各単一波長発振レーザからレーザ光がパルス発光される場合について説明したが、これに限らず、各単一波長発振レーザからレーザ光を連続的に発光させ、そのレーザ光を、例えば電気光学変調器(二電極型変調器など)などを用いてパルス光としても良い。また、各単一波長発振レーザからパルス発光されるレーザ光のパルス幅を、その電気光学変調器などによって狭くしても良い。
【0089】
また、上記実施形態のレーザ装置では、各光増幅器が、全てファイバ光増幅器である場合について説明したが、本発明がこれに限定されるものではない。各光増幅器は、ファイバ光増幅器の代わりに、あるいはそれと組み合わせて、例えば希土類元素が高濃度で添加されたガラス体などを含むものとしても良い。
【0090】
また、上記実施形態のレーザ装置では、発振波長が1020nm〜1150nmの単一波長発振レーザを3個備える場合について説明したが、発振波長が1020nm〜1150nmの単一波長発振レーザを1個備え、そのレーザからのレーザ光を3分割しても良い。
【0091】
なお、上記実施形態のレーザ装置では、発振波長が1020nm〜1150nmの単一波長発振レーザ、すなわち第1基本波(L1、L2、L4)を発生するレーザ光源としてイッテルビウム・ドープ・ファイバレーザを用い、発振波長が1520nm〜1620nmの単一波長発振レーザ、すなわち第2基本波(L3)を発生するレーザ光源としてエルビウム・ドープ・ファイバレーザを用いるものとしたが、レーザ光源はこれらに限られるものではなく、他の固体レーザ光源、あるいは高調波発生装置などを用いても良い。
【0092】
また、上記実施形態のレーザ装置では、3つのレーザ光(第1基本波)L1、L2、L4はその波長が同一であるものとしたが、これに限らず、その3つのレーザ光の一部又は全部でその波長を異ならせても良い。例えば、前述の如くEDFAの代わりに、出力波長が2μm帯のツリウム(又はホロミウム)・ドープ・ファイバ光増幅器を用いる場合、レーザ光L1、L2はその波長が約1062nm、レーザ光L4はその波長が約1105nmとなる。
【0093】
なお、上記実施形態のレーザ装置では、最終波長が193nmであることを前提として、第1基本波はその波長が1.1μm帯、第2基本波はその波長が1.5μm帯であるものとしたが、最終波長が190nm〜200nmであるものとすると、第1基本波(レーザ光L1、L2、L4)の波長は1.0μm〜1.2μm、第2基本波(レーザ光L3)の波長は1.5μm〜2.1μmであれば良い。この場合には、第1基本波を発生するレーザ光源として、上記実施形態と同様に、イッテルビウム・ドープ・ファイバレーザを用いることができるとともに、第2基本波を発生するレーザ光源として、エルビウム・ドープ・ファイバレーザ又はツリウム・ドープ・ファイバレーザを用いることができる。ツリウム・ドープ・ファイバレーザを用いる場合、EDFAに代えて、ツリウム・ドープ・ファイバ光増幅器が用いられる。この場合、波長変換素子167cが、レーザ光L2とレーザ光L3との和周波混合により発生するレーザ光の波長λ1の範囲は、YDFAとEDFAの増幅可能な波長範囲又はYDFAとツリウム・ドープ・ファイバ光増幅器の増幅可能な波長範囲から、600nm<λ1<750nmを満足すれば良い。この場合、最終波長を190nm〜200nmとすると、波長変換素子167dで発生する光の波長λ3の範囲は、234nm<λ3<240nmとなる。従って、波長変換素子167bで発生する光の波長をλ2の範囲は、352nm<λ2<383nmとなる。
【0094】
また、上記実施形態において、CLBO結晶及びBBO結晶の潮解性が問題となる場合には、周囲雰囲気を窒素、又は乾燥空気などでパージする、あるいはCLBO結晶及びBBO結晶を高温に温度調節することとすれば良い。
【0095】
なお、上記実施形態の露光装置10において、レーザ装置16に代えて、図4に模式的に示されるようなエキシマレーザ装置20を用いても良い。このエキシマレーザ装置20は、レーザ装置16と同様の構成である主発振器 (Master Oscillator)としてのレーザ装置16’と、該レーザ装置16’から射出される波長193.4nmのレーザ光をシード光として増幅する光出力増幅器(Power Oscillator 又はPower Amplifier)としてのガスレーザチャンバ18と、レーザ装置16’及びガスレーザチャンバ18を制御する制御装置19とを備える、主発振器光出力増幅器(MOPO又はMOPA)レーザシステムである。
【0096】
このエキシマレーザ装置20では、ガスレーザチャンバ18として、通常のArFエキシマレーザ装置と同様に共振器を有するガスレーザチャンバ(Power Oscillator (PO))が用いられる。このガスレーザチャンバ18の内部には、媒質ガスであるAr、F2、及びバッファガスであるNe等が充填されている。なお、このガスレーザチャンバ18は、通常のArFエキシマレーザ装置から共振器となる部分(フロントミラー、及びリアミラー又は狭帯域化モジュール)を取り除いた構成のガスレーザチャンバ(Power Amplifier )でも良い。
【0097】
このエキシマレーザ装置20では、レーザ装置16’から射出される波長193.4nmの高い繰り返し周波数のシード光が、ガスレーザチャンバ18内部でパワー増幅され、その増幅された波長193.4nmのレーザ光が射出される。エキシマレーザ装置20では、ビーム品質に優れたパルス光がレーザ装置16’から安定してガスレーザチャンバ18に供給されるため、ArFエキシマレーザ光を安定して射出することが可能となる。また、レーザ装置16’では、光源として単一波長発振レーザ(固体レーザ)が用いられているので、通常のArFエキシマレーザに比べて狭帯域化されかつ高い繰り返し周波数でのレーザ光の発振が可能である。従って、このエキシマレーザ装置20を露光光源として備えた露光装置では、エキシマレーザ装置20から狭帯域化されかつ高い繰り返し周波数の波長193.4nmのレーザ光が照明光学系に向かって射出されることとなる。これにより、パルスのピークパワーを抑えて露光装置等の光学素子へ与えるダメージを抑制できる。また、露光装置では、全体として高エネルギ(大パワー)で、かつリソグラフィに用いるのに十分な程度に狭帯域化されたレーザ光を用いて前述の走査露光が行われる。従って、ウエハW上の各ショット領域にレチクルRのパターンを精度良く形成することが可能であり、スループットの向上も図ることができる。
【0098】
また、エキシマレーザ装置20のように、主発振器光出力増幅器(MOPO又はMOPA)レーザシステムを構成する場合に、ガスレーザチャンバ18を並列に複数、例えば2つ配置し、この2つのガスレーザチャンバ18に対してレーザ装置16’からのパルスレーザ光(シード光)を異なるタイミングで入射させる、例えば交互に供給する構成を採用しても良い。この場合、例えば光変調器(音響光学変調器(AOM)など)によって、固体レーザ装置16’からのシード光を1パルス又は複数パルス単位で、2つのガスレーザチャンバ18に振り分けても良い。あるいは、シード光を分岐して2つのガスレーザチャンバ18に導き、その2つの分岐光路にそれぞれ設けられる、例えば電気光学変調器(EOM)などによって、2つのガスレーザチャンバ18にシード光を入射させるタイミングを制御しても良い。かかる場合には、2つのガスレーザチャンバ18から異なるタイミングでレーザ光がが発振され、例えばミラー又は偏光ビームスプリッタなどによってそのレーザ光を同軸に合成して出力することで、エキシマレーザ装置20の繰り返し周波数が2倍になるので、同一のパワーを得たい場合には、パルスのピークパワーを1/2にすることができ、これにより、露光装置等の光学素子へ与えるダメージを一層抑制できる。一方、ピークパワーを同一に維持する場合には、2倍のパワーを得ることができる。
【0099】
なお、前述のMOPO又はMOPAレーザシステムにおいて、1つの固体レーザ装置16’に対して複数、例えば2つのガスレーザチャンバ(PO又はPA)18を直列に配置し、その2つのガスレーザチャンバ18での放電タイミングを異ならせることで、エキシマレーザ装置20の繰り返し周波数を2倍にすることとしても良い。
【0100】
また、前述のMOPO又はMOPAレーザシステムにおいて、ガスレーザチャンバ(PO又はPA)18の1回の放電中に、固体レーザ装置16’から射出される複数のパルスレーザ光(シード光)を異なるタイミングで入射させても良い。この場合、例えば固体レーザ装置16’内でパルスレーザ光(シード光)を複数に分割し、かつ長さの異なる複数のファイバあるいは時分割光分岐装置(Time Division Multiplexer:TDM)などによって、その分割された複数のパルスレーザ光を互いに遅延させてガスレーザチャンバ18に入射させても良い。あるいは、複数の固体レーザ装置16’を並列に配置し、例えば発振タイミングの制御などによって、その複数の固体レーザ装置16’からそれぞれ所定時間ずれて射出される複数のパルスレーザ光をガスレーザチャンバ18に入射させても良い。かかる場合、1回の放電中にガスレーザチャンバ18に入射するその複数、例えば2つのパルスレーザ光(シード光)のパルス間隔は、ガスレーザチャンバ18の放電時間(例えば20ns)に比べて十分に短くする(例えば10ns程度以下にする)ことが好ましく、これにより、固体レーザ装置16’のピークパワーを2倍にしたことと同じ効果を得ることができる。なお、このレーザシステムでは主発振器(MO)16が固体レーザ装置に限られるものでなく他のレーザ装置を用いても良い。
【0101】
なお、上記実施形態では、本発明に係るレーザ装置がステップ・アンド・スキャン方式の走査型露光装置に適用された場合について説明したが、これに限らず、静止露光型、例えばステップ・アンド・リピート方式あるいはステップ・アンド・スティッチ方式の露光装置は勿論、プロキシミティー方式の露光装置、ミラープロジェクション・アライナーなどにも適用できる。この他、例えば国際公開第99/49504号パンフレットなどに開示される、投影光学系PLとウエハとの間に液体(例えば純水など)が満たされる液浸型露光装置などにも本発明を適用することができる。さらに、例えば国際公開第2001/035168号パンフレットに開示されているように、干渉縞をウエハ上に形成することによって、ウエハ上にライン・アンド・スペースパターンを形成する露光装置、例えば特表2004−519850号公報(対応米国特許第6,611,316号)に開示されているように、2つのレチクルパターンを投影光学系を介してウエハ上で合成し、1回の走査露光によってウエハ上の1つのショット領域をほぼ同時に二重露光する露光装置などにも本発明を適用することができる。
【0102】
また、上記実施形態の露光装置は、例えば特開平10−214783号公報、及び国際公開WO98/40791号などに開示されているように、投影光学系を介してレチクルパターンの転写が行われる露光位置と、ウエハアライメント系によるマーク検出が行われる計測位置(アライメント位置)とにそれぞれウエハステージを配置して、露光動作と計測動作とをほぼ並行して実行可能なツイン・ウエハステージタイプでも良い。さらに、例えば特開平11−135400号公報、特開2000−164504号公報等に開示されているように、ウエハステージとは独立に可動で、基準マークが形成された基準部材及び/又は各種の光電センサを搭載した計測ステージを備えた露光装置にも本発明を適用することができる。
【0103】
なお、上記実施形態においては、光透過性の基板上に所定の遮光パターン(又は位相パターン・減光パターン)を形成した光透過型マスク(レチクル)を用いたが、このレチクルに代えて、例えば米国特許第6,778,257号明細書に開示されているように、露光すべきパターンの電子データに基づいて、透過パターン又は反射パターン、あるいは発光パターンを形成する電子マスク(可変成形マスクとも呼ばれ、例えば非発光型画像表示素子(空間光変調器)の一種であるDMD(Digital Micro-mirror Device)などを含む)を用いても良い。
【0104】
半導体デバイスは、デバイスの機能・性能設計を行うステップ、この設計ステップに基づいたレチクルを製作するステップ、シリコン材料からウエハを製作するステップ、前述した実施形態の露光装置により前述の露光方法を実行し、レチクルのパターンをウエハに転写するリソグラフィステップ、デバイス組み立てステップ(ダイシング工程、ボンディング工程、パッケージ工程を含む)、検査ステップ等を経て製造される。この場合、リソグラフィステップで、上記実施形態の露光装置を用いて前述の露光方法が実行され、ウエハ上にデバイスパターンが形成されるので、高集積度のデバイスを生産性良く製造することができる。
【0105】
なお、これまでは、本発明に係るレーザ装置、又はエキシマレーザ装置が露光用照明光を発生するレーザ装置として使用される例を説明したが、露光用照明光とほぼ同一の波長の光を必要とするレチクルアライメント用のレーザ装置、あるいは投影光学系の物体面又は像面に配置されるマークの投影像を検出して当該投影光学系の光学特性求める空間像検出系のレーザ装置等として使用することも可能である。
【0106】
なお、本発明に係るレーザ装置、又はエキシマレーザ装置は、露光装置以外でデバイス製造工程などに用いられる装置(デバイス製造装置、リソグラフィ装置)、例えば、ウエハ上に形成された回路パターンの一部(ヒューズなど)を切断するために用いられるレーザリペア装置、レチクルのパターン又はウエハ上に形成されたパターンを検査する検査装置などにも適用することができる。また、本発明に係るレーザ装置、又はエキシマレーザ装置は、その他の加工装置、例えば高分子結晶の加工装置などにも使用することができる。
【0107】
この他、本発明に係るレーザ装置、又はエキシマレーザ装置は、例えばレーザ光を角膜に照射して表面のアブレーション(あるいは切開した角膜内部のアブレーション)を行い、角膜の曲率若しくは凹凸を矯正して近眼、乱視などの治療を行うレーザ治療装置に使用されるレーザ装置として利用することができる。また、マスク欠陥検査装置などの光学式検査装置等におけるレーザ装置としても、本発明に係るレーザ装置、又はエキシマレーザ装置は利用可能である。いずれの装置も、本発明に係るレーザ装置、又はエキシマレーザ装置を備えているため、所定波長のエキシマレーザ光を、光学系を経由して対象物に安定して照射することが可能となる。
【0108】
また、本発明のレーザ装置は、上記の実施形態における投影光学系のような光学系の光学調整(光軸合わせ等)用又は検査用としても利用可能である。
【産業上の利用可能性】
【0109】
以上説明したように、本発明のレーザ装置及び光発生方法は、ビーム品質に優れた所定波長のレーザ光を射出するのに適している。また、本発明のエキシマレーザ装置は、高い繰り返し周波数のエキシマレーザ光を射出するのに適している。また、本発明の光照射装置及び光照射方法は、ビーム品質に優れたレーザ光を物体(照射対象物)に照射するのに適している。
【図面の簡単な説明】
【0110】
【図1】本発明の一実施形態に係る露光装置の構成を概略的に示す図である。
【図2】図1のレーザ装置の構成を示すブロック図である。
【図3】図2の波長変換部を取り出して示す拡大図である。
【図4】別の実施形態に係るエキシマレーザ装置の構成を模式的に示すブロック図である。
【符号の説明】
【0111】
10…露光装置(光照射装置)、16,16’…レーザ装置、18…ガスレーザチャンバ、20…エキシマレーザ装置、160…波長変換部、164a〜164d…レーザ光源、165a〜165d…光増幅器、167a〜167e…波長変換素子、W…ウエハ(物体)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定波長のレーザ光を射出するレーザ装置であって、
波長の異なる第1、第2のレーザ光をそれぞれ発生する第1、第2のレーザ光源と;
前記第1及び第2のレーザ光を用いた複数段の波長変換を経て前記所定波長のレーザ光を発生するとともに、合波光学素子を介することなく配置された一組の波長変換素子をその最終段に有する波長変換部と;を備えるレーザ装置。
【請求項2】
前記波長変換部は、前記第1及び第2のレーザ光を用いた波長変換により第3のレーザ光を発生する第1変換部を有し、前記第3のレーザ光が前記一組の波長変換素子に入射する請求項1に記載のレーザ装置。
【請求項3】
前記波長変換部は、前記第1のレーザ光を用いた波長変換により第4のレーザ光を発生する第2変換部をさらに有し、前記第4のレーザ光は、前記一組の波長変換素子に入射する請求項2に記載のレーザ装置。
【請求項4】
前記第2変換部は、前記第1のレーザ光を用いた複数段の波長変換により前記第1のレーザ光の高調波を前記第4のレーザ光として発生する複数の波長変換素子を含む請求項3に記載のレーザ装置。
【請求項5】
前記波長変換部は、前記一組の波長変換素子を含み、前記第3のレーザ光と前記第4のレーザ光とを用いて第5のレーザ光を発生する波長変換を含む複数段の波長変換を行う第3変換部をさらに有する請求項3又は4に記載のレーザ装置。
【請求項6】
前記一組の波長変換素子は、前記第3のレーザ光と前記第4のレーザ光との和周波混合を行って220nmより大きく250nmより小さい範囲の波長の第5のレーザ光を発生する波長変換素子を含む請求項5に記載のレーザ装置。
【請求項7】
前記一組の波長変換素子は、前記第5のレーザ光と前記第1のレーザ光とを用いた波長変換により前記所定波長のレーザ光を発生する別の波長変換素子をさらに含む請求項6に記載のレーザ装置。
【請求項8】
前記第1変換部は、前記第1のレーザ光と前記第2のレーザ光との和周波混合を行い前記第3のレーザ光を発生する波長変換素子を含む請求項2〜7のいずれか一項に記載のレーザ装置。
【請求項9】
前記第3のレーザ光は、600nmより大きく750nmより小さい範囲の波長のレーザ光である請求項2〜8のいずれか一項に記載のレーザ装置。
【請求項10】
前記第1のレーザ光源は、1.0〜1.2μmの波長の第1のレーザ光を発生し、
前記第2のレーザ光源は、1.5〜2.1μmの波長の第2のレーザ光を発生する請求項1〜9のいずれか一項に記載のレーザ装置。
【請求項11】
前記一組の波長変換素子は、CsLiB10結晶から成る非線形光学素子である請求項1〜10のいずれか一項に記載のレーザ装置。
【請求項12】
所定波長のレーザ光を射出するレーザ装置であって、
波長が1.0〜1.2μmの第1のレーザ光を発生する第1のレーザ光源と;
波長が1.5〜2.1μmの第2のレーザ光を発生する第2のレーザ光源と;
前記第1及び第2のレーザ光を用いた複数段の波長変換を経て前記所定波長のレーザ光を発生するとともに、前記第1のレーザ光と前記第2のレーザ光との和周波混合を行い第3のレーザ光を発生する第1変換部を含む波長変換部と;を備えるレーザ装置。
【請求項13】
前記波長変換部は、前記第1のレーザ光を用いた波長変換により第4のレーザ光を発生する第2変換部と、前記第3のレーザ光と前記第4のレーザ光を用いた波長変換により第5のレーザ光を発生する波長変換素子を含む第3変換部と、をさらに含む請求項12に記載のレーザ装置。
【請求項14】
前記第3変換部は、前記波長変換素子を通過して前記第1のレーザ光及びその高調波の少なくとも一方が、前記第5のレーザ光とともに入射する別の波長変換素子をさらに含む請求項13に記載のレーザ装置。
【請求項15】
前記第5のレーザ光は、220nmより大きく250nmより小さい範囲の波長の光であり、
前記別の波長変換素子は、前記第5のレーザ光と前記第1のレーザ光との和周波混合により前記所定波長のレーザ光を発生する請求項14に記載のレーザ装置。
【請求項16】
前記第3のレーザ光は、600nmより大きく750nmより小さい範囲の波長の光である請求項12〜15のいずれか一項に記載のレーザ装置。
【請求項17】
所定波長のレーザ光を射出するレーザ装置であって、
波長の異なる第1、第2のレーザ光をそれぞれ発生する第1、第2のレーザ光源と;
前記第1及び第2のレーザ光を用いた複数段の波長変換を経て前記所定波長のレーザ光を発生するとともに、前記第1のレーザ光と前記第2のレーザ光との和周波混合を行い600nmより大きく750nmより小さい範囲の波長の第3のレーザ光を発生する第1変換部を含む波長変換部と;を備えるレーザ装置。
【請求項18】
前記波長変換部は、前記第1のレーザ光を用いた波長変換を行って前記第1のレーザ光の高調波である第4のレーザ光を発生する第2変換部をさらに含む請求項17に記載のレーザ装置。
【請求項19】
前記波長変換部は、前記第3のレーザ光と前記第4のレーザ光との和周波混合を行って220nmより大きく250nmより小さい範囲の波長の第5のレーザ光を発生し、該第5のレーザ光と前記第1のレーザ光との和周波混合により前記所定波長のレーザ光を発生する第3変換部をさらに含む請求項18に記載のレーザ装置。
【請求項20】
前記第1のレーザ光源で発生する前記第1のレーザ光を増幅する第1ファイバ増幅器と、前記第2のレーザ光源で発生する前記第2のレーザ光を増幅する第2ファイバ増幅器とを含む増幅部をさらに備える請求項1〜19のいずれか一項に記載のレーザ装置。
【請求項21】
前記第1のレーザ光源は、イッテルビウム・ドープ・ファイバレーザであり、
前記第2のレーザ光源は、エルビウム・ドープ・ファイバレーザである請求項1〜20のいずれか一項に記載のレーザ装置。
【請求項22】
前記所定波長のレーザ光は、ArFエキシマレーザ光とほぼ同一波長のレーザ光である請求項1〜21のいずれか一項に記載のレーザ装置。
【請求項23】
対象物に光を照射する光照射装置であって、
請求項1〜22のいずれか一項に記載のレーザ装置と;
前記レーザ装置から前記対象物に向けて射出されるレーザ光が経由する光学系と;を備える光照射装置。
【請求項24】
エキシマレーザ光を射出するエキシマレーザ装置であって、
請求項1〜22のいずれか一項に記載のレーザ装置を含む主発振器と;
前記主発振器から出力されるレーザ光をシード光とし、該シード光を増幅するガスレーザチャンバと;を備えるエキシマレーザ装置。
【請求項25】
前記ガスレーザチャンバは複数設けられ、その複数のガスレーザチャンバは、前記シード光を増幅したレーザ光を異なるタイミングで発振する請求項24に記載のエキシマレーザ装置。
【請求項26】
前記複数のガスレーザチャンバは並列に設けられ、かつ前記シード光が異なるタイミングで入射する請求項25に記載のエキシマレーザ装置。
【請求項27】
対象物に光を照射する光照射装置であって、
請求項24〜26のいずれか一項に記載のエキシマレーザ装置と;
該エキシマレーザ装置から前記対象物に向けて射出されるレーザ光が経由する光学系と;を備える光照射装置。
【請求項28】
前記対象物は、パターンを有する物体である請求項23又は27に記載の光照射装置。
【請求項29】
物体を露光して前記物体上にパターンを形成する露光装置であって、
請求項1〜22のいずれか一項に記載のレーザ装置と;
前記レーザ装置から前記物体に向けて射出されるレーザ光が経由する光学系と;を備える露光装置。
【請求項30】
所定波長のレーザ光を発生する光発生方法であって、
第1、第2のレーザ光源から波長の異なる第1、第2のレーザ光をそれぞれ発生する工程と;
合波光学素子を介することなく配置された一組の波長変換素子をその最終段に有する波長変換部により、前記第1及び第2のレーザ光を用いた複数段の波長変換を行う工程と;を含む光発生方法。
【請求項31】
前記波長変換を行う工程では、前記第1及び第2のレーザ光を用いた波長変換により第3のレーザ光を発生する第1変換と、前記第1のレーザ光を用いた波長変換により第4のレーザ光を発生する第2変換と、前記一組の波長変換素子により、前記第3のレーザ光と前記第4のレーザ光を用いた波長変換により第5のレーザ光を発生した後に、該第5のレーザ光と前記第1のレーザ光とを用いた波長変換により前記所定波長のレーザ光を発生する第3変換とが行われる請求項30に記載の光発生方法。
【請求項32】
所定波長のレーザ光を発生する光発生方法であって、
第1、第2のレーザ光源から波長が1.0〜1.2μmの第1のレーザ光、波長が1.5〜2.1μmの第2のレーザ光を、それぞれ発生する工程と;
前記第1のレーザ光と前記第2のレーザ光との和周波混合を行い第3のレーザ光を発生する波長変換を含む、複数段の波長変換を行う工程と;を含む光発生方法。
【請求項33】
所定波長のレーザ光を発生する光発生方法であって、
第1、第2のレーザ光源から波長の異なる第1、第2のレーザ光をそれぞれ発生する工程と;
前記第1のレーザ光と前記第2のレーザ光との和周波混合を行い600nmより大きく750nmより小さい範囲の波長の第3のレーザ光を発生する第1変換を含む複数段の波長変換を行う工程と;を含む光発生方法。
【請求項34】
前記波長変換を行う工程では、前記第1のレーザ光を用いた波長変換を行って前記第1のレーザ光の高調波である第4のレーザ光を発生する第2変換をさらに行う請求項33に記載の光発生方法。
【請求項35】
前記波長変換を行う工程では、前記第3のレーザ光と前記第4のレーザ光との和周波混合を行って220nmより大きく250nmより小さい範囲の波長の第5のレーザ光を発生し、該第5のレーザ光と前記第1のレーザ光との和周波混合により前記所定波長のレーザ光を発生する第3変換をさらに行う請求項34に記載の光発生方法。
【請求項36】
所定波長のエキシマレーザ光を発生するエキシマレーザ光発生方法であって、
請求項30〜35のいずれか一項に記載の光発生方法により前記所定波長のレーザ光を発生する第1工程と;
前記レーザ光をガスレーザチャンバにシード光として入射させ、そのシード光を前記ガスレーザチャンバで増幅する第2工程と;を含むエキシマレーザ光発生方法。
【請求項37】
前記第2工程では、複数の前記ガスレーザチャンバが、前記シード光を増幅したレーザ光を異なるタイミングで発振する請求項36に記載のエキシマレーザ光発生方法。
【請求項38】
前記複数のガスレーザチャンバは並列に設けられ、かつ前記シード光が異なるタイミングで入射する請求項37に記載のエキシマレーザ光発生方法。
【請求項39】
対象物に光を照射する光照射方法であって、
請求項30〜35のいずれか一項に記載の光発生方法によりレーザ光を発生する工程と;
前記レーザ光を光学系を介して前記対象物に向けて射出する工程と;を含む光照射方法。
【請求項40】
前記対象物は、パターンが形成された物体である請求項39に記載の光照射方法。
【請求項41】
物体を露光して前記物体上にパターンを形成する露光方法であって、
請求項30〜35のいずれか一項に記載の光発生方法によりレーザ光を発生する工程と;
前記レーザ光を光学系を介して前記物体に向けて射出する工程と;を含む露光方法。
【請求項42】
請求項41に記載の露光方法を用いて物体上にパターンを形成するリソグラフィ工程を含むデバイス製造方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2008−122785(P2008−122785A)
【公開日】平成20年5月29日(2008.5.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−307992(P2006−307992)
【出願日】平成18年11月14日(2006.11.14)
【出願人】(000004112)株式会社ニコン (12,601)
【Fターム(参考)】