レーダ装置、物体検知システム、および、物体検知方法
【課題】レーダ装置で異なる物体情報を一つの物体と誤判定することを防止する技術を提供する。
【解決手段】第1の走査の代表検知点が第2の走査において存在しない場合、第1の走査において検知された代表検知点の次に車両に近い検知点を第2の走査における代表検知点に設定する。この第2の代表検知点が、第1の走査の代表検知点の位置から遠方側に所定距離以上に離れた位置に存在する場合は、第1の代表検知点と第2の代表検知点とを異なる物体の情報と判定する。これにより、異なる物体を一つの物体と誤判定することに起因する物体の移動方向の誤った判定を防止できる。
【解決手段】第1の走査の代表検知点が第2の走査において存在しない場合、第1の走査において検知された代表検知点の次に車両に近い検知点を第2の走査における代表検知点に設定する。この第2の代表検知点が、第1の走査の代表検知点の位置から遠方側に所定距離以上に離れた位置に存在する場合は、第1の代表検知点と第2の代表検知点とを異なる物体の情報と判定する。これにより、異なる物体を一つの物体と誤判定することに起因する物体の移動方向の誤った判定を防止できる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーダ装置で異なる物体情報を一つの物体と誤判定することを防止する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に車両に搭載されたレーダ装置は、連続的に車両周辺の走査を行って、複数回、同一物体が検知された場合は、この複数回検知された物体と自車両との位置関係などに応じて、物体情報(例えば、車両と物体との相対距離、相対速度、および、横方向の距離(角度)など)を車両制御部に出力し、車両制御(警告、ブレーキ、および、シートベルトの引き締めなど)を行っている。
【0003】
また、連続的な走査を行っている際に、新たに検知された新規検知物体に対しては、その物体が所定回数以上継続して検知された場合に、物体情報を車両制御部に出力していた。つまり、走査により1回検知されただけでは車両制御部への出力は行わず、その物体が複数回検知されている間に、物体と自車両との位置関係の変化を算出して、車両制御部への出力条件を満たせば、対象の物体の物体情報を車両制御部へ出力するという処理がなされていた。
【0004】
物体の検知はレーダ装置からの送信波が物体に反射して、レーダ装置に受信波として受信された信号に基づいて行われる。また、レーダ装置は1つの物体から複数の反射波を受信する場合がある。この場合、レーダ装置の信号処理部は自車両からの相対距離が最も近い反射点を代表検知点とし、その代表検知点から所定距離範囲内(結合範囲内)にある検知点をまとめて1つの物体として判定していた。そしてその物体情報をレーダ装置から車両制御部へ出力していた。
【0005】
そして、1度検知された代表検知点が後の走査において検知されていない場合は、前回検知された結合範囲内の検知点の中で、今回の走査で検知されなくなった代表検知点の次に自車両との距離が近い検知点が存在すれば、その検知点を新たな代表検知点とし、この新たな代表検知点に基づいて再度結合範囲を設定し、同一物体が前回の走査に続けて検知されているものとして処理を行っていた。なお、本発明と関連する技術を説明する資料としては特許文献1がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006−38755号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、結合範囲を設けて複数の検知点を1つの物体として判定する場合、別々の物体の検知点が1つの結合範囲内に入った際にも1つの物体の検知点として判定する場合があった。例えば、1台の車両が他の車両に接近して追従走行している場合に、別々の車両からの反射点をまとめて1つの物体として判定する場合があった。
【0008】
そのため、過去の走査で検知されていた代表検知点が後の走査で検知されなくなり、過去の走査の結合範囲内の検知点の中から、検知されなくなった代表検知点の次に自車両との距離が近い検知点が、これまで検知されていた車両とは別の他の車両の検知点である場合、この他の車両の検知点をこれまで検知されていた同一の車両の新たな代表検知点として誤って設定する場合があった。この場合、設定された代表検知点は本来であれば新規に検知された車両の検知点である。物体情報を出力された車両制御部においては、同一物体として複数回検知がされなければ車両制御の対象とはしないため、この代表検知点の物体情報も本来ならば、車両制御の対象とはならないはずである。そのため、レーダ装置が異なる物体を一つの物体と誤認識することに起因して、本来ならば車両制御部が車両制御の対象としない物体情報を車両制御の対象としてしまうことにより、車両の誤制御に繋がるという問題があった。
【0009】
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、レーダ装置で異なる物体情報を一つの物体と誤判定することを防止する技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するため、請求項1の発明は、車両に搭載され、送信波を走査して前記送信波の物体での反射波に基づいて前記車両の周辺の物体の位置を示す検知点を検知するレーダ装置であって、第1の走査において検知された前記車両に最も近い第1の代表検知点を含む検知点の情報が記憶されたメモリから、前記検知点の情報を読み出す読出手段と、読み出した情報の前記検知点が、前記第1の走査の後の第2の走査において継続して検知されているか否かを判定する継続判定手段と、前記第1の代表検知点が前記第2の走査において検知されない場合、前記第1の走査において前記第1の代表検知点から所定範囲内にある前記検知点のうち、前記第1の代表検知点の次に前記車両に近い検知点を前記第2の走査における第2の代表検知点に設定する設定手段と、前記第2の代表検知点が、前記第1の代表検知点の位置から遠方側に所定距離以上に離れた位置に存在する場合は、前記第1の代表検知点と前記第2の代表検知点とを異なる物体の情報と判定する物体判定手段と、を備える
また、請求項2の発明は、請求項1に記載のレーダ装置において、前記物体判定手段は、前記第2の代表検知点が、前記第1の代表検知点の位置から遠方側に所定距離未満に離れた位置に存在する場合は、前記第1の代表検知点と前記第2の代表検知点とを同一の物体の情報と判定する。
【0011】
また、請求項3の発明は、請求項1に記載のレーダ装置において、前記物体判定手段は、前記第2の代表検知点が、前記第1の代表検知点の位置から前記車両側に近い位置に存在する場合は、前記第1の代表検知点と前記第2の代表検知点とを同一の物体の情報と判定することを特徴とするレーダ装置。
【0012】
また、請求項4の発明は、請求項1ないし3のいずれかに記載のレーダ装置において、前記物体判定手段が同一の物体と判定した前記第1の代表検知点と前記第2の代表検知点との位置を比較した結果が所定条件を満足する場合に、当該物体の情報を前記車両を制御する制御装置に送信する情報送信手段をさらに備える。
【0013】
また、請求項5の発明は、請求項4に記載のレーダ装置において、前記情報送信手段は、同一の物体と判定した前記第1の代表検知点と前記第2の代表検知点とにおいて、前記第2の代表検知点の位置が前記第1の代表検知点の位置よりも前記車両の横方向の距離が近い場合は、前記物体の情報を前記制御装置に送信する。
【0014】
また、請求項6の発明は、請求項4または5に記載のレーダ装置と、前記情報送信手段からの前記物体の情報に基づいて前記車両を制御する制御装置とを備える。
【0015】
さらに、請求項7の発明は、車両に搭載され、送信波を走査して前記送信波の物体での反射波に基づいて前記車両の周辺の物体の位置を示す検知点を検知し、前記検知点に基づいて物体の情報を検知する物体検知方法であって、第1の走査において検知された前記車両に最も近い第1の代表検知点を含む検知点の情報が記憶されたメモリから、前記検知点の情報を読み出す工程と、読み出した情報の前記検知点が、前記第1の走査の後の第2の走査において継続して検知されているか否かを判定する工程と、前記第1の代表検知点が前記第2の走査において検知されない場合、前記第1の走査において前記第1の代表検知点から所定範囲内にある前記検知点のうち、前記第1の代表検知点の次に前記車両に近い検知点を前記第2の走査における第2の代表検知点に設定する工程と、前記第2の代表検知点が、前記第1の代表検知点の位置から遠方側に所定距離以上に離れた位置に存在する場合は、前記第1の代表検知点と前記第2の代表検知点とを異なる物体の情報と判定する工程と、を備える。
【発明の効果】
【0016】
請求項1ないし7の発明によれば、第2の代表検知点が第1の代表検知点の位置から遠方側に所定距離以上に離れた位置に存在する場合は、第1の代表検知点と第2の代表検知点とを異なる物体の情報と判定する。このため、異なる物体を一つの物体と誤判定することを防止できる。
【0017】
また、特に請求項2の発明によれば、第2の代表検知点が、第1の代表検知点の位置から遠方側に所定距離未満に離れた位置に存在する場合は、第1の代表検知点と第2の代表検知点とを同一の物体の情報と判定する。このため、同一物体を正しく一つの物体と判定できる。
【0018】
また、特に請求項3の発明によれば、第2の代表検知点が、第1の代表検知点の位置から車両側に近い位置に存在する場合は、第1の代表検知点と第2の代表検知点とを同一の物体の情報と判定する。このため、新たに検知された検出点が過去の走査で検知できなかった同一物体からの検知点の場合に、同一物体を正しく一つの物体と認識できる。
【0019】
また、特に請求項4の発明によれば、物体判定手段が同一の物体と判定した第1の代表検知点と第2の代表検知点との位置を比較した結果が所定条件を満足する場合に、当該物体の情報を車両を制御する制御装置に送信する。このため、異なる物体を一つの物体と誤判定して、代表検知点同士の位置が所定条件を満足している場合に、車両の誤制御を行うことを防止できる。
【0020】
また、特に請求項5の発明によれば、情報送信手段は、同一の物体と判定した第1の代表検知点と第2の代表検知点とにおいて、第2の代表検知点の位置が第1の代表検知点の位置よりも車両の横方向の距離が近い場合は、物体の情報を制御装置に送信する。このため、異なる物体を一つの物体と誤判定して近づいたと判断した場合に、車両の誤制御を行うことを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】図1は、車両1の全体図である。
【図2】図2は、物体検知システムのブロック図である。
【図3】図3は、FM−CW信号とビート信号を示す図である。
【図4】図4は、物体検知処理のフローチャートである。
【図5】図5は、第1検知点結合処理に伴い出力する物体情報の検知点結合処理を示したフローチャートである。
【図6】図6は、第1検知点結合処理に伴い出力する物体情報の検知点結合処理の具体例を説明する図である
【図7】図7は、第2検知点結合処理に伴い出力する物体情報の検知点結合処理を示したフローチャートである。
【図8】図8は、同一物体における代表検知点再設定処理を説明する図である。
【図9】図9は、結合範囲内の同一物体判定を示す図である。
【図10】図10は、新規物体における代表検知点再設定処理を説明する図である。
【図11】図11は、結合範囲内の新規物体判定を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
<1.構成>
図1は、車両1の全体図である。車両1は、本実施形態の物体検知システム10はレーダ装置2と、車両制御部3とを備えている。レーダ装置2は車両前方のフロント部分に設けられている。レーダ装置2は検知範囲REの範囲を走査して、車両1と物体との相対距離、および、相対速度を算出するとともに、車両1からみた物体の横方向の距離(角度)を算出する。なお、レーダ装置2の搭載位置は車両前方のフロント部分に限らず、車両1の後方や側方でもよい。
【0023】
車両制御部3は、レーダ装置2の物体の検知結果に応じて、車両1の車両制御を行う。車両制御の例としては、前方の車両に追従して走行する場合のアクセル制御やブレーキ制御、衝突防止のブレーキ制御がある。また、衝突時にシートベルトにより乗員を座席に固定して衝撃に備えたり、衝突時にヘッドレストを固定して乗員の身体へのダメージを軽減する。
【0024】
図2は物体検知システム10のブロック図である。物体検知システム10は、レーダ装置2と車両制御部3とが電気的に接続して構成されている。また、物体検知システム10の車両制御部3は、車速センサ30、ステアリングセンサ31、および、ヨーレートセンサ32などの車両1に設けられる各種センサと電気的に接続されている。さらに、車両制御部3はブレーキ40、スロットル41、および、警報器42などの車両1に設けられる各種装置と電気的に接続されている。
【0025】
レーダ装置2は、信号処理部11、変調部12、VCOVoltage Controlled Oscillation)13、方向性結合器14、平面アンテナ15、ミキサ16、フィルタ17、A/D(Analog Digital)変換器18、モータ駆動回路19、モータ20、および、エンコーダ21を備える。なお、平面アンテナ15は送信アンテナ15a、および、受信アンテナ15bより構成されている。また、以下に述べる実施の形態では、レーダ装置2のアンテナ走査方式をアンテナを所定の方向に駆動させるメカスキャン方式として説明を行なうが、アンテナを駆動させずに物体の方向推定にDBF(Digital Beam Formingなどの方式を採用する電子スキャン方式についても本発明は適用される。
【0026】
レーダ装置2による物体検知は、信号処理部11からの信号に基づき、変調部12が予め定められた周波数帯の変調信号を生成する。この変調信号はVCO13により送信信号に変換され、方向性結合器14を介して送信波として送信アンテナ15aの平面アンテナ15から出力される。
【0027】
平面アンテナ15から出力された送信波は物体にあたって反射し、反射波として平面アンテナ15に受信される。この受信された反射波と発振信号は方向性結合器14を介して、ミキサ16でミキシングされる。
【0028】
送信信号とミキシングされた受信信号は、物体からの相対距離や相対速度の情報を含むビート信号であり、フィルタ17によりフィルタリングされ、レーダ装置2を備えた車両1から物体までの相対距離や相対速度の情報を含む帯域のビート信号が検出される。
【0029】
フィルタ17により所定の周波数帯にフィルタリングされたビート信号は、A/D変換器18によりアナログ信号からデジタル信号に変換された後、信号処理部11に入力される。
【0030】
また、レーダ装置2は平面アンテナ15を所定の角度範囲で移動させ、送信波を走査させる。平面アンテナ15の角度は、レーダ装置2を車両1の前方のバンパー部分に備え、前方車両が車両1の真正面に位置している場合に、平面アンテナ15が前方車両と直交する位置にある場合を0度とする。例えば、平面アンテナ15は0度の状態から左右にそれぞれ15度ずつ走査する。なお、この角度0度の状態が車両1と前方車両との横方向の距離が0mの場合となる。この平面アンテナ15の走査はモータ駆動部19とモータ20を用いて行われ、平面アンテナ15の走査に伴うエンコーダ21の図示しないスリットの通過数と通過方向の情報を信号処理部11へ出力する。
【0031】
信号処理部11にはレーダ装置2の各部の制御と、車両制御部3とのデータの送受信を行う場合に情報処理を行うCPU11aと、CPU11aの処理に用いられるプログラムが格納されているメモリ11bが備えられている。CPU11aの各種の機能は、このプログラムを実行することで実現される。A/D変換部18から出力された信号に基づいて、車両1からの物体の相対距離や相対速度を検出する。また、エンコーダ21から出力される情報により車両1からの物体の横方向の距離(角度)を検出する。このようにそれぞれ物体情報のパラメータ値として検出する。
【0032】
なお、信号処理部11のメモリ11bは、信号処理部11内に設けられていることとして説明したが、信号処理部11内に限らずレーダ装置2の内部またはレーダ装置2の外部に設けられてもよい。
【0033】
本実施の形態では、レーダ装置2で検出される物体の情報を物体情報といい、この物体情報のパラメータ値として、相対距離、相対速度、および、車両1からみた物体の横方向の距離(角度)などが存在している。また、信号処理部11のメモリ11bには過去の物体検知処理により検知された物体情報などの複数のデータが格納されている。
【0034】
信号処理部11と電気的に接続されている車両制御部3はCPU3aとメモリ3bを備えており、CPU3aは車両1の各部の制御と、信号処理部11とのデータの送受信を行う際に情報処理を行う。また、メモリ3bはCPU3aの処理に用いられるプログラムが格納されており、さらに、信号処理部11から送信された物体情報も格納されている。またCPU3aの各種機能は、このプログラムを実行することで実現される。
【0035】
なお、車両制御部3のメモリ3bは、車両制御部3内に設けられていることとして説明したが、車両制御部3内に限らず車両制御部3の外部に設けられてもよい。
【0036】
この車両制御部3にはブレーキ40、スロットル41、および、警報器42が電気的に接続されており、物体情報に応じてこれらを制御することで、車両1の動作が制御される。例えば、警報器42は車両1と物体との距離が接近している場合に警報を発してユーザであるドライバーに異常を報知する。また、車両1と物体とが衝突する可能性がある場合は、ブレーキ40を作動させて車両1の速度を低下させたり、スロットル41を絞って、エンジンの回転数を低下させる。
【0037】
さらに、車両制御部3には車両1の速度を検知する車速センサ30、ステアリングホイールの操舵角を検知するステアリングセンサ31、および、車両1の旋回速度を検知するヨーレートセンサ32が接続されている。なお、ステアリングセンサ31とヨーレートセンサ32の両方を使用することで、ステアリング操作に応じた車両1の旋回方向、および、車両1の旋回速度を検知することが可能となる。そのため、両方のセンサを備えていることが好ましいが、ステアリングセンサ31またはヨーレートセンサ32のどちらか一方でも車両1の旋回方向を検知することは可能である。
【0038】
また、平面アンテナ15にて送受信される送信波および受信波は、電波、レーザ、または、超音波などの信号であり、平面アンテナ15から送信され、物体にあたってはね返り、反射波として受信することで、物体情報を検知できるものであればよい。
【0039】
さらに、本実施形態ではアンテナを平面アンテナ15としているが、送信波を出力し、送信波の物体からの反射波を受信可能なアンテナであれば、平面アンテナ15以外にレンズアンテナ、または、反射鏡アンテナ等であってもよい。また、送信アンテナ15aと受信アンテナ15bとを別々の構成として述べているが、1つのアンテナで送信、および、受信の両方を行なうことができる送受信兼用のアンテナを用いてもよい。
【0040】
次に、物体検知処理において用いられる信号処理の一例としてFM−CW(Frequency Modulated Continuous Wave)の方式について説明する。なお、本実施形態では、FM−CWの方式を例に説明を行うが、アップ区間とダウン区間のような複数の区間を組み合わせて物体情報を算出する方式であれば、この方式に限定されない。
【0041】
また、下記に記載の式や図3に示すFM−CW信号とビート信号についての各記号は以下に示すものである。fb:ビート周波数、fs:周波数、fr:距離周波数、fd:速度周波数、fo:送信波の中心周波数、△f:周波数偏移幅、fm:変調波の繰り返し周波数、C:光速(電波の速度)、T:物体までの電波の往復時間、R:物体までの距離、v:物体との相対速度。
【0042】
図3上図はFM−CWの送信信号および受信信号の信号波形を示す図である。また、図3下図は送信信号と受信信号との差分周波数により生じるビート周波数を示す図である。図3上図は横軸は時間、縦軸は周波数を示している。図中、実線で示す送信信号は、所定周期で周波数が変わる性質を有しており、周波数が上昇するアップ区間と、所定の周波数まで上昇した後に所定の周波数まで下降するダウン区間がある。そして、送信信号は、所定の周波数まで下降した後に再度所定の周波数まで上昇をするように一定の変化を繰り返す。また、送信信号は物体にあたって反射した後に受信され、同図の破線で示すような受信信号となる。受信信号についても送信信号と同じようにアップ区間とダウン区間が存在する。なお、本実施形態で用いられる周波数帯の例としては76Ghz帯の周波数があげられる。
【0043】
また、車両1と物体との距離に応じて、送信信号に比べて受信信号に時間的な遅れ(T=2R/C)が生じる。さらに、車両1と物体との間に速度差を有する場合は、送信信号に比べて受信信号が周波数fsの軸に平行にシフトする。このドップラーシフト分がfdとなる。
【0044】
図3下図は横軸を時間、縦軸をビート周波数として、式(1)に基づいてビート周波数を算出するものである。
fb=fr±fd=(4・△f・fm/C)R+(2・f0/C)v ・・・(1)
なお、式(1)に示されるビート信号を後述するFFT処理することで、周波数スペクトルを検出する。この検出された周波数スペクトルの中から所定の閾値を超えた周波数スペクトルをピーク信号として検出し、このピーク信号に対して後述する処理を行うことで車両1と物体との相対距離、相対速度、および、物体との横方向の距離(角度)を算出する。
【0045】
<2.動作>
<2−1.物体情報出力処理>
図4は物体検知処理のフローチャートである。この処理は車両の前方の走査が完了するごとに繰り返し実行される。送信信号と受信信号とをミキシングすることにより生じるビート信号をA/D変換器(Analog to Digital Converter)18によりA/D変換して、マイクロコンピュータなどの信号処理部11に取り込み、信号処理部11によりビート信号にFFT(Fast Fourier Transform 高速フーリエ変換)処理を施す(ステップS101)。
【0046】
FFT処理を施されたビート信号は周波数スペクトルとして検出される。一般に物体の周波数スペクトルは、相対的にノイズなどの周波数スペクトルよりもパワーレベルが大きいので、所定のパワーレベルに設けられている閾値を超えた周波数スペクトルをピーク信号として抽出する(ステップS102)。
【0047】
アンテナの角度ごとに抽出されたピーク信号について車両1の速度、ピーク信号の信号強度、および、ピーク信号の角度の情報に基づいて、複数のピーク信号が1つのグループとしてグルーピングされる(ステップS103)。その結果、複数のピーク信号を含んだ複数のグループがアップ区間とダウン区間のそれぞれに生成される。ここで、グルーピング処理は物体の所定の反射範囲から受信した受信信号が物体の連続する角度ごとの複数のピーク信号として検出され、この連続する角度ごとの所定の角度範囲の複数のピーク信号を1つのグループとし、これを1つの反射点として処理する。
【0048】
そして、アップ区間に生成された複数のグループと、ダウン区間に生成された複数のグループのピーク信号同士を、車両1の速度、グルーピングされたピーク信号の信号強度、および、グルーピングされた信号の角度の情報などに基づいてペアリングする(ステップS104)。このペアリング処理により、1つの物体からの反射点が検知点として判定される。
【0049】
そして、今回の走査で検知された検知点が、過去の走査で検知された検知点と同一の検知点が継続して検知されているか否かを判定する連続性判定を行う(ステップS105)。判定の一例としては、メモリ11bに記憶された過去の検知点の物体情報と、車速センサ30からの車両1の速度情報とから、過去の走査における検知点が今回の走査範囲のどの位置に検知されるかを予め予測しておき、予測した範囲内に検知点が存在すれば、過去に検知された検知点が今回の走査においても継続して検知されているものとして判定する。
【0050】
この連続性判定が行われると、信号処理部11は継続して検知されていると判定した対象の検知点の連続性の回数を+1回とカウントする。そして、複数回(例えば3回)の連続性があると判定された検知点のみを次の処理であるステップS107以降の処理の対象とする。ステップS107では、過去(例えば、前回)の後述する検知点結合処理の物体情報がメモリ11b内に記憶されているか否かを判定する(ステップS107)。
【0051】
メモリ11bに過去の走査の検知点結合処理に伴う物体情報が記憶されていない場合(ステップS107がNo)は、ステップS108の第1検知点結合の処理を行う。また、メモリ11bに過去の走査の検知点結合処理に伴う物体情報が記憶されている場合(ステップS107がYes)は、ステップ109の第2検知点結合の処理を行う。
【0052】
なお、ステップ105において、継続して検知されていると判定されなかった検知点、例えば新規に検知された検知点などは、後の走査で継続して検知されてからステップS107以降の処理の対象となる。
【0053】
ここでステップS108、または、ステップS109の検知点結合処理は、主に上述のように複数回の走査により複数回の連続性があると判定された検知点のうち車両1との距離が最も近い検知点を代表検知点とし、その代表検知点を略中心とした所定範囲内(結合範囲内)に含まれる検知点を1つの物体として結合する処理である。具体的には乗用車、トラック、および、バイクなどの移動物やガードレールや鉄橋などの静止物の1つの物体からの複数の反射点に基づく検知点を1つの物体の情報として結合する処理がこれにあたる。これらの第1検知点結合、および、第2検知点結合の処理については後に詳述する。
【0054】
そして、第1検知点結合(ステップS108)、または、第2検知点結合(ステップS109)の後、検知点を結合した物体情報を車両制御部3へ出力する(ステップS110)。出力された物体情報に基づき、車両制御部3はブレーキ40の操作、スロットル41の操作および、警報機42の操作などの車両制御を行う。
【0055】
ステップS110の物体情報出力後、車両1のACCがOFF状態でない場合(ステップS111がNo)、最初の処理(ステップS101)に戻り、後の走査に伴う物体検知処理を繰り返し行う。また、車両1のACCがOFF状態の場合は物体検知処理を終了する。
【0056】
なお、第2の検知点結合の処理において、後述する所定の判断(図7に示すステップS305がNoの場合)が行われると、ステップS110はなされず、ステップS111へ進む。
【0057】
<2−2.第1検知点結合>
次に、信号処理部11による第1検知点結合の処理について詳細に説明する。図5は図4の処理で示した第1検知点結合処理にあたり、第1検知点結合処理に伴い車両制御部3に出力する物体情報の検知点結合処理を示したフローチャートである。つまり、過去(例えば、前回)の検知点結合処理における検知点を結合した物体情報がメモリ11b内に記憶されていない場合に行う処理を説明するフローチャートである。
【0058】
また、図6は第1検知点結合処理に伴い車両制御部3に出力する物体情報の検知点結合処理の具体例を説明する図である。ここで、図6以降に示すxy座標軸は車両1に対して相対的に固定され、車両1の横方向がx軸方向、縦方向(進行方向)がy軸方向に対応する。
【0059】
図4のステップS106の処理の結果、複数回の連続性有りとされた検知点が、図6に示すように車両1が走行する車道R1上の車両100aの検知点JP1、車両1の横方向(+x軸方向)にある車道L1上の車両100bの検知点KP1、および、車両100cの検知点LP1を検知している。なお、これらの検知点は車両1のレーダ装置2の検知範囲REの範囲内である。
【0060】
第1検知点結合では、まず最初にこれらの複数の検知点の中から図5に示す代表検知点抽出を行う(ステップS201)。この代表検知点抽出は上述の複数の検知点JP1、KP1、および、LP1のうちから車両1との相対距離が最も近い検知点を抽出する。図6では、検知点JP1が代表検知点として抽出される。
【0061】
次に抽出された代表検知点に基づいて物体情報の結合範囲を設定する(ステップS202)。図6に示すように代表検知点JP1を略中心とした所定の範囲を有する結合範囲CE1を設定する。そして、この結合範囲CE1内に含まれる検知点を1つの物体情報として結合する(ステップS203)。図6では結合範囲CE1内の検知点は代表検知点であるJP1のみであり、この代表検知点JP1の位置などが一つの物体の物体情報として車両制御部3に出力される。
【0062】
なお、結合範囲CE1の形状は、1台の車両からの反射点である検知点が全て含まれる形状とし、図6に示すようなx軸方向、および、y軸方向のぞれぞれに辺を有する長方形である。その他に、1台の車両からの反射点である検知点が全て含まれる形状であれば、長方形以外の多角形などでもよい。
【0063】
次に、検知範囲RE内で検知された検知点のうち結合された検知点JP1以外に存在する他の検知点の有無を判定する(ステップS204)。判定の結果、他の検知点が有る場合(ステップS204がYes)、前回の結合処理で結合されていない残りの検知点に対して代表検知点抽出の処理を開始する(ステップS201)。また、結合されていない他の検知点がない場合(ステップS204がNo)は、結合した物体情報を1の物体の情報として車両制御部3に出力する。
【0064】
図6では前回の結合処理で結合された代表検知点JP1以外に車両100bの検知点KP1と、車両100cの検知点LP1とがある。そのため、図5のステップS204の判定で他の検知点有り(ステップS204がYes)となり、再び代表検知点抽出(ステップS201)が行われる。ここで、既に結合された検知点以外で車両1との相対距離が近い検知点は、車両100bの検知点KP1なので、検知点KP1が代表検知点として抽出される(ステップS201)。
【0065】
そして、代表検知点KP1を略中心とした結合範囲CE2が設定される(ステップS202)結合範囲CE2内には代表検知点であるKP1と検知点LP1とが含まれている。このため、代表検知点KP1と検知点LP1とが結合されて1つの物体として結合される(ステップS203)。このように代表検知点に基づいて結合された結合範囲CE1の物体情報と結合範囲CE2の物体情報とは異なる物体情報として判定される。
【0066】
ここで、本来ならば、1台の車両の反射点である検知点を結合するための結合範囲CE2であるが、上記のように1台の車両100bの検知点KP1と、異なる車両100cの検知点であるLP1とが近い距離にある場合はこのように異なる車両同士の検知点が1台の車両の検知点として結合されてしまう。
【0067】
そして、検知点結合後、図6ではその他の検知点が存在しない(ステップS204がNo)ため、図4のステップS110において物体情報を車両制御部3へ出力するとともに、代表検知点と、それに結合された検知点とを示す物体情報をメモリ11bに記憶しておく。
<2−3.第2検知点結合>
次に、信号処理部11による第2検知点結合処理について説明する。図7は、第2検知点結合処理に伴い出力する物体情報の検知点結合処理を示したフローチャートである。また、図7の処理説明に伴い、図8の同一物体における代表検知点再設定処理を説明する図、および、図9の結合範囲内の同一物体判定を示す図を用いる。また、図7の処理説明に伴い、図10の新規物体の代表検知点再設定処理を説明する図、および、図11の結合範囲内の新規物体判定を示す図を用いる。
【0068】
最初に、信号処理部11は、過去の走査の物体情報が記憶されているメモリ11bから物体情報を読み出す(ステップS301)。そして、過去の走査(例えば、前回の走査)の代表検知点に対応する検知点が今回の走査で存在する場合(ステップS302がYes)は、図6で説明したようにその代表検知点に対応する検知点を今回の走査の代表検知点とし、その代表検知点の略中心から所定範囲内の結合範囲を設定して(ステップS303)、その結合範囲内に含まれる検知点を1つの物体情報として結合する(ステップS304)。そして、代表検知点の位置などが一つの物体の物体情報として車両制御部3に出力される。
【0069】
ステップS302の処理に戻って、過去の走査の代表検知点に対応する検知点が今回の走査で存在しない場合(ステップS302がNo)は、過去の走査において、代表検知点の次に車両1との相対距離が近い検知点が存在するか否かを判定する(ステップS305)。代表検知点の次に車両1との相対距離が近い検知点が存在する場合(ステップS305がYes)は、その検知点が過去の走査の同一物体判定範囲内に存在するか否かを判定する(ステップS306)。
【0070】
ここで、同一物体判定範囲に関連する処理について、図8および図9に基づいて説明する。なお、ステップS305において、過去の走査において、代表検知点の次に自車に近い検知点が存在しない場合(ステップS305がNo)は、処理を終了し、図4のステップS111に進み、車両1のACCの状態を判定する。
【0071】
図8の上段の走査SC1は過去の走査において検知された物体情報を示しており、レーダ装置2を備えた車両1が車道R1を直進している(+y方向に走行している)。そして、車両1の走査範囲RE内には、車道L1上で車両1に近づく方向(−y方向)に走行する車両101aの検知点SP1、および、検知点SP2と、車両1に近づく方向(−y方向)の車両101bの検知点TP1とが結合範囲CE3内にある。そして、結合範囲CE3内では、車両1との相対距離が最も近い検知点SP1が略中心にあり、代表検知点となっている。
【0072】
次の走査であるSC2では、走査SC1で検知されていた代表検知点SP1が検知されなくなったことで、前回走査SC1の結合範囲CE3内で、代表検知点SP1の次に車両1との相対距離が近い検知点SP2が、走査SC2における新たな代表検知点として設定される。
【0073】
そして、新たな代表検知点SP2を略中心とした結合範囲CE3が設定され、この結合範囲CE3内の代表検知点SP2と検知点T1とが1つの物体として結合され、代表検知点SP2の位置などが一つの物体の物体情報として車両制御部3に出力される。なお、新たな代表検知点SP2は過去の走査SC1において、後述する同一物体判定範囲内に存在したため、過去の物体情報と同一の物体であるとして判定されている。この処理を詳細に示したのが図9である。
【0074】
図9の上段の走査SC1では、代表検知点SP1を略中心に縦(y軸)30m、横(x軸)4mの長方形の結合範囲CE3が設けられている。また、代表検知点SP1の遠方側(+y方向)の横方向(+x方向)に検知点SP2がある。言い換えると、代表検知点SP1の位置から遠方側(+y方向)に所定距離未満(例えば、3m未満)に離れた位置に検知点SP2がある。
【0075】
また、代表検知点SP1の遠方(+y方向)には検知点TP1がある。言い換えると、代表検知点SP1の位置から遠方側(+y方向)に所定距離以上(例えば、3m以上)に離れた位置に検知点TP1がある。
【0076】
なお、代表検知点SP1の位置から横方向(+x方向2m、および、−x方向2m)の結合範囲内で、縦方向(y軸方向)の代表検知点SP1の位置から遠方側(+y方向)に所定距離未満(例えば、3m未満)に離れた位置(代表検知点SP1の位置から+y方向に3mの位置)で囲まれた範囲を同一物体判定範囲AR1とする。また、代表検知点SP1の位置から横方向の結合範囲内で、代表検知点SP1の位置から車両側に近い位置(代表検知点SP1の位置から−y方向に15mの位置)で囲まれた範囲を同一物体判定範囲AR2とする。走査SC1の検知点SP2はこの同一物体判定範囲AR1内に存在している。このように走査SC1で同一物体判定範囲内に存在している検知点は、走査SC2で検出されなくなったSC1の代表検知点SP1と同一物体の検知点として判定される。
【0077】
そして、今回の走査SC2では、過去の走査SC1の代表検知点SP1が存在しないため、過去の走査において、代表検知点SP1の次に車両1との相対距離が近い検知点SP2が走査SC2における新たな代表検知点となる。また、この新たな代表検知点は過去の走査において同一物体判定範囲内に存在することから、代表検知点SP1と同一物体として判定される。
【0078】
走査SC2では新たに設定された代表検知点SP2に基づく過去の走査SC1と同一物体の結合範囲CE3が設定され、この結合範囲内に存在する代表検知点SP2と、検知点T1とが一つの物体として結合され、代表検知点SP2の位置などの情報が一つの物体の物体情報として車両制御部3へ出力される。これにより、同一の物体を正しく一つの物体として判定できる。
【0079】
次に図7のステップS306の処理に戻って、同一物体判定範囲内に検知点がない場合(ステップS306がNo)は、過去の走査で結合範囲内であり、同一物体判定範囲外の検知点のうち、車両1との相対距離が代表検知点の次に近い検知点を新たな代表検知点として再設定し(ステップS308)、この新たな代表検知点に基づいて結合範囲を設定し(ステップS303)、結合範囲内の検知点を結合し(ステップS304)、代表検知点の位置などの情報を新たな物体情報として車両制御部3へ出力する。
【0080】
図10の上段の走査SC1は過去の走査において検知された物体情報を示しており、レーダ装置2を備えた車両1が車道R1を直進している(+y方向に走行している)。そして、車両1の走査範囲RE内には、車道L1上で車両1に近づく方向(−y方向)に走行する車両102aの検知点MP1と、車両1に近づく方向(−y方向)の車両102bの検知点NP1とが結合範囲CE4内にある。そして、結合範囲CE4内では、車両1との相対距離が最も近い検知点MP1が略中心にあり、代表検知点となっている。
【0081】
次の走査であるSC2では、走査SC1で検知されていた代表検知点MP1が検知されなくなったことで、前回走査SC1の結合範囲CE4内で、代表検知点MP1の次に車両1との相対距離が近い検知点NP1が、走査SC2における新たな代表検知点として設定される。
【0082】
そして、新たな代表検知点NP1を略中心とした結合範囲CE5が新たに設定され、この結合範囲内の代表検知点NP1が1つの物体として結合され、代表検知点NP1の位置などが一つの物体の物体情報として車両制御部3に出力される。なお、結合範囲CE5では、代表検知点NP1以外の検知点がないため、一つの検知点で検知点の結合処理を行う。
【0083】
また、新たな代表検知点NP1は過去の走査SC1において、同一物体判定範囲外に存在したため、過去の物体情報とは異なる物体であるとして判定される。つまり、新たな代表検知点NP1が過去の走査SC1における代表検知点MP1の位置から遠方側(+y方向)に所定距離以上(例えば、3m以上)に離れた位置に存在している。そのため、走査SC1の代表検知点MP1と、走査SC2の代表検知点NP1とは異なる物体の情報として判定される。また、結合範囲もSC1の結合範囲CE4とは異なる物体情報の結合範囲としてCE5が用いられている。この処理を詳細に示したのが図11の図である。
【0084】
図11の上段の走査SC1では、代表検知点MP1を略中心に縦(y軸)30m、横(x軸)4mの長方形の結合範囲CE4が設けられている。また、代表検知点MP1の遠方側(+y方向)には検知点NP1がある。言い換えると、代表検知点MP1の位置から遠方側(+y方向)に所定距離以上(例えば、3m以上)に離れた位置に検知点NP1がある。
【0085】
なお、この検知点NP1は、代表検知点MP1の位置から横方向(+x方向2m、および、−x方向2m)の結合範囲内で、縦方向(y軸方向)の代表検知点SP1の位置から遠方側(+y方向)に所定距離未満(例えば、3m未満)に離れた位置(代表検知点MP1の位置から+y方向に3mの位置)で囲まれた範囲を同一物体判定範囲AR1とする。また、代表検知点MP1の位置から横方向の結合範囲内で、代表検知点MP1の位置から車両側に近い位置(代表検知点MP1の位置から−y方向に15mの位置)で囲まれた範囲を同一物体判定範囲AR2とする。走査SC1のNP1はこれらの同一物体判定範囲AR1およびAR2のいずれの範囲内でもない、結合範囲内CE4の範囲内に存在している。
【0086】
そして、今回の走査SC2では、過去の走査SC1の代表検知点MP1が存在しないため、過去の走査において、代表検知点SP1の次に車両1との相対距離が近い検知点NP1が走査SC2における新たな代表検知点となる。また、この新たな代表検知点は過去の走査において同一物体判定範囲外に存在することから、代表検知点MP1とは異なる物体の情報として判定される。つまり、代表検知点NP1は過去の走査SC1において、走査SC1における代表検知点MP1の位置から遠方側(+y方向)に所定距離以上(例えば3m以上)に離れた位置に存在するため、走査SC1の代表検知点MP1と走査SC2の代表検知点NP1とは異なる物体の物体情報として判定される。
【0087】
走査SC2では新たに設定された代表検知点NP1に基づく過去の走査SC1と異なる体情報の結合範囲CE5が設定され、この結合範囲内に存在する代表検知点NP1が物体情報として結合され、代表検知点NP1の位置などの情報が物体情報として車両制御部3へ出力される。このため、異なる物体を一つの物体と誤認することに起因する物体の移動方向の誤った判断を防止できる。
【0088】
なお、複数回の走査により、各々の走査の代表検知点が同一物体と判定されたことを条件に、過去の走査SC1における代表検知点の位置などに基づく物体情報と、後の走査SC2における代表検知点の位置などに基づく物体情報とを比較した結果、所定の条件を満足する場合に、物体情報を車両制御部3へ送信する。これにより、異なる物体を一つの物体と誤判定して、図4のステップS110において、代表検知点同士の位置が所定条件を満足している場合に、車両の誤制御を行うことを防止できる。
【0089】
なお、所定の条件を満足する場合の例としては、後の走査SC2における代表検知点の位置が、過去の走査SC1の代表検知点の位置よりも車両1の横方向の距離が近い場合などがある。言い換えると、過去の走査SC1の代表検知点に基づく物体情報と、後の走査SC2に基づく代表検知点とが同一物体情報であり、車両1からみて過去の走査SC1の代表検知点の位置よりも後の走査SC2の代表検知点の位置が近づいている場合などである。これにより、異なる物体を一つの物体として誤判定して近づいたと判定した場合に、車両1の誤制御を行うことを防止できる。
【符号の説明】
【0090】
1・・・・・車両
2・・・・・レーダ装置
3・・・・・車両制御部
10・・・・物体検知システム
11・・・・信号処理部
12・・・・変調部
13・・・・VCO
14・・・・方向性結合器
15・・・・平面アンテナ
16・・・・ミキサ
17・・・・フィルタ
18・・・・A/D変換器
19・・・・モータ駆動回路
20・・・・モータ
21・・・・エンコーダ
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーダ装置で異なる物体情報を一つの物体と誤判定することを防止する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に車両に搭載されたレーダ装置は、連続的に車両周辺の走査を行って、複数回、同一物体が検知された場合は、この複数回検知された物体と自車両との位置関係などに応じて、物体情報(例えば、車両と物体との相対距離、相対速度、および、横方向の距離(角度)など)を車両制御部に出力し、車両制御(警告、ブレーキ、および、シートベルトの引き締めなど)を行っている。
【0003】
また、連続的な走査を行っている際に、新たに検知された新規検知物体に対しては、その物体が所定回数以上継続して検知された場合に、物体情報を車両制御部に出力していた。つまり、走査により1回検知されただけでは車両制御部への出力は行わず、その物体が複数回検知されている間に、物体と自車両との位置関係の変化を算出して、車両制御部への出力条件を満たせば、対象の物体の物体情報を車両制御部へ出力するという処理がなされていた。
【0004】
物体の検知はレーダ装置からの送信波が物体に反射して、レーダ装置に受信波として受信された信号に基づいて行われる。また、レーダ装置は1つの物体から複数の反射波を受信する場合がある。この場合、レーダ装置の信号処理部は自車両からの相対距離が最も近い反射点を代表検知点とし、その代表検知点から所定距離範囲内(結合範囲内)にある検知点をまとめて1つの物体として判定していた。そしてその物体情報をレーダ装置から車両制御部へ出力していた。
【0005】
そして、1度検知された代表検知点が後の走査において検知されていない場合は、前回検知された結合範囲内の検知点の中で、今回の走査で検知されなくなった代表検知点の次に自車両との距離が近い検知点が存在すれば、その検知点を新たな代表検知点とし、この新たな代表検知点に基づいて再度結合範囲を設定し、同一物体が前回の走査に続けて検知されているものとして処理を行っていた。なお、本発明と関連する技術を説明する資料としては特許文献1がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006−38755号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、結合範囲を設けて複数の検知点を1つの物体として判定する場合、別々の物体の検知点が1つの結合範囲内に入った際にも1つの物体の検知点として判定する場合があった。例えば、1台の車両が他の車両に接近して追従走行している場合に、別々の車両からの反射点をまとめて1つの物体として判定する場合があった。
【0008】
そのため、過去の走査で検知されていた代表検知点が後の走査で検知されなくなり、過去の走査の結合範囲内の検知点の中から、検知されなくなった代表検知点の次に自車両との距離が近い検知点が、これまで検知されていた車両とは別の他の車両の検知点である場合、この他の車両の検知点をこれまで検知されていた同一の車両の新たな代表検知点として誤って設定する場合があった。この場合、設定された代表検知点は本来であれば新規に検知された車両の検知点である。物体情報を出力された車両制御部においては、同一物体として複数回検知がされなければ車両制御の対象とはしないため、この代表検知点の物体情報も本来ならば、車両制御の対象とはならないはずである。そのため、レーダ装置が異なる物体を一つの物体と誤認識することに起因して、本来ならば車両制御部が車両制御の対象としない物体情報を車両制御の対象としてしまうことにより、車両の誤制御に繋がるという問題があった。
【0009】
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、レーダ装置で異なる物体情報を一つの物体と誤判定することを防止する技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するため、請求項1の発明は、車両に搭載され、送信波を走査して前記送信波の物体での反射波に基づいて前記車両の周辺の物体の位置を示す検知点を検知するレーダ装置であって、第1の走査において検知された前記車両に最も近い第1の代表検知点を含む検知点の情報が記憶されたメモリから、前記検知点の情報を読み出す読出手段と、読み出した情報の前記検知点が、前記第1の走査の後の第2の走査において継続して検知されているか否かを判定する継続判定手段と、前記第1の代表検知点が前記第2の走査において検知されない場合、前記第1の走査において前記第1の代表検知点から所定範囲内にある前記検知点のうち、前記第1の代表検知点の次に前記車両に近い検知点を前記第2の走査における第2の代表検知点に設定する設定手段と、前記第2の代表検知点が、前記第1の代表検知点の位置から遠方側に所定距離以上に離れた位置に存在する場合は、前記第1の代表検知点と前記第2の代表検知点とを異なる物体の情報と判定する物体判定手段と、を備える
また、請求項2の発明は、請求項1に記載のレーダ装置において、前記物体判定手段は、前記第2の代表検知点が、前記第1の代表検知点の位置から遠方側に所定距離未満に離れた位置に存在する場合は、前記第1の代表検知点と前記第2の代表検知点とを同一の物体の情報と判定する。
【0011】
また、請求項3の発明は、請求項1に記載のレーダ装置において、前記物体判定手段は、前記第2の代表検知点が、前記第1の代表検知点の位置から前記車両側に近い位置に存在する場合は、前記第1の代表検知点と前記第2の代表検知点とを同一の物体の情報と判定することを特徴とするレーダ装置。
【0012】
また、請求項4の発明は、請求項1ないし3のいずれかに記載のレーダ装置において、前記物体判定手段が同一の物体と判定した前記第1の代表検知点と前記第2の代表検知点との位置を比較した結果が所定条件を満足する場合に、当該物体の情報を前記車両を制御する制御装置に送信する情報送信手段をさらに備える。
【0013】
また、請求項5の発明は、請求項4に記載のレーダ装置において、前記情報送信手段は、同一の物体と判定した前記第1の代表検知点と前記第2の代表検知点とにおいて、前記第2の代表検知点の位置が前記第1の代表検知点の位置よりも前記車両の横方向の距離が近い場合は、前記物体の情報を前記制御装置に送信する。
【0014】
また、請求項6の発明は、請求項4または5に記載のレーダ装置と、前記情報送信手段からの前記物体の情報に基づいて前記車両を制御する制御装置とを備える。
【0015】
さらに、請求項7の発明は、車両に搭載され、送信波を走査して前記送信波の物体での反射波に基づいて前記車両の周辺の物体の位置を示す検知点を検知し、前記検知点に基づいて物体の情報を検知する物体検知方法であって、第1の走査において検知された前記車両に最も近い第1の代表検知点を含む検知点の情報が記憶されたメモリから、前記検知点の情報を読み出す工程と、読み出した情報の前記検知点が、前記第1の走査の後の第2の走査において継続して検知されているか否かを判定する工程と、前記第1の代表検知点が前記第2の走査において検知されない場合、前記第1の走査において前記第1の代表検知点から所定範囲内にある前記検知点のうち、前記第1の代表検知点の次に前記車両に近い検知点を前記第2の走査における第2の代表検知点に設定する工程と、前記第2の代表検知点が、前記第1の代表検知点の位置から遠方側に所定距離以上に離れた位置に存在する場合は、前記第1の代表検知点と前記第2の代表検知点とを異なる物体の情報と判定する工程と、を備える。
【発明の効果】
【0016】
請求項1ないし7の発明によれば、第2の代表検知点が第1の代表検知点の位置から遠方側に所定距離以上に離れた位置に存在する場合は、第1の代表検知点と第2の代表検知点とを異なる物体の情報と判定する。このため、異なる物体を一つの物体と誤判定することを防止できる。
【0017】
また、特に請求項2の発明によれば、第2の代表検知点が、第1の代表検知点の位置から遠方側に所定距離未満に離れた位置に存在する場合は、第1の代表検知点と第2の代表検知点とを同一の物体の情報と判定する。このため、同一物体を正しく一つの物体と判定できる。
【0018】
また、特に請求項3の発明によれば、第2の代表検知点が、第1の代表検知点の位置から車両側に近い位置に存在する場合は、第1の代表検知点と第2の代表検知点とを同一の物体の情報と判定する。このため、新たに検知された検出点が過去の走査で検知できなかった同一物体からの検知点の場合に、同一物体を正しく一つの物体と認識できる。
【0019】
また、特に請求項4の発明によれば、物体判定手段が同一の物体と判定した第1の代表検知点と第2の代表検知点との位置を比較した結果が所定条件を満足する場合に、当該物体の情報を車両を制御する制御装置に送信する。このため、異なる物体を一つの物体と誤判定して、代表検知点同士の位置が所定条件を満足している場合に、車両の誤制御を行うことを防止できる。
【0020】
また、特に請求項5の発明によれば、情報送信手段は、同一の物体と判定した第1の代表検知点と第2の代表検知点とにおいて、第2の代表検知点の位置が第1の代表検知点の位置よりも車両の横方向の距離が近い場合は、物体の情報を制御装置に送信する。このため、異なる物体を一つの物体と誤判定して近づいたと判断した場合に、車両の誤制御を行うことを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】図1は、車両1の全体図である。
【図2】図2は、物体検知システムのブロック図である。
【図3】図3は、FM−CW信号とビート信号を示す図である。
【図4】図4は、物体検知処理のフローチャートである。
【図5】図5は、第1検知点結合処理に伴い出力する物体情報の検知点結合処理を示したフローチャートである。
【図6】図6は、第1検知点結合処理に伴い出力する物体情報の検知点結合処理の具体例を説明する図である
【図7】図7は、第2検知点結合処理に伴い出力する物体情報の検知点結合処理を示したフローチャートである。
【図8】図8は、同一物体における代表検知点再設定処理を説明する図である。
【図9】図9は、結合範囲内の同一物体判定を示す図である。
【図10】図10は、新規物体における代表検知点再設定処理を説明する図である。
【図11】図11は、結合範囲内の新規物体判定を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
<1.構成>
図1は、車両1の全体図である。車両1は、本実施形態の物体検知システム10はレーダ装置2と、車両制御部3とを備えている。レーダ装置2は車両前方のフロント部分に設けられている。レーダ装置2は検知範囲REの範囲を走査して、車両1と物体との相対距離、および、相対速度を算出するとともに、車両1からみた物体の横方向の距離(角度)を算出する。なお、レーダ装置2の搭載位置は車両前方のフロント部分に限らず、車両1の後方や側方でもよい。
【0023】
車両制御部3は、レーダ装置2の物体の検知結果に応じて、車両1の車両制御を行う。車両制御の例としては、前方の車両に追従して走行する場合のアクセル制御やブレーキ制御、衝突防止のブレーキ制御がある。また、衝突時にシートベルトにより乗員を座席に固定して衝撃に備えたり、衝突時にヘッドレストを固定して乗員の身体へのダメージを軽減する。
【0024】
図2は物体検知システム10のブロック図である。物体検知システム10は、レーダ装置2と車両制御部3とが電気的に接続して構成されている。また、物体検知システム10の車両制御部3は、車速センサ30、ステアリングセンサ31、および、ヨーレートセンサ32などの車両1に設けられる各種センサと電気的に接続されている。さらに、車両制御部3はブレーキ40、スロットル41、および、警報器42などの車両1に設けられる各種装置と電気的に接続されている。
【0025】
レーダ装置2は、信号処理部11、変調部12、VCOVoltage Controlled Oscillation)13、方向性結合器14、平面アンテナ15、ミキサ16、フィルタ17、A/D(Analog Digital)変換器18、モータ駆動回路19、モータ20、および、エンコーダ21を備える。なお、平面アンテナ15は送信アンテナ15a、および、受信アンテナ15bより構成されている。また、以下に述べる実施の形態では、レーダ装置2のアンテナ走査方式をアンテナを所定の方向に駆動させるメカスキャン方式として説明を行なうが、アンテナを駆動させずに物体の方向推定にDBF(Digital Beam Formingなどの方式を採用する電子スキャン方式についても本発明は適用される。
【0026】
レーダ装置2による物体検知は、信号処理部11からの信号に基づき、変調部12が予め定められた周波数帯の変調信号を生成する。この変調信号はVCO13により送信信号に変換され、方向性結合器14を介して送信波として送信アンテナ15aの平面アンテナ15から出力される。
【0027】
平面アンテナ15から出力された送信波は物体にあたって反射し、反射波として平面アンテナ15に受信される。この受信された反射波と発振信号は方向性結合器14を介して、ミキサ16でミキシングされる。
【0028】
送信信号とミキシングされた受信信号は、物体からの相対距離や相対速度の情報を含むビート信号であり、フィルタ17によりフィルタリングされ、レーダ装置2を備えた車両1から物体までの相対距離や相対速度の情報を含む帯域のビート信号が検出される。
【0029】
フィルタ17により所定の周波数帯にフィルタリングされたビート信号は、A/D変換器18によりアナログ信号からデジタル信号に変換された後、信号処理部11に入力される。
【0030】
また、レーダ装置2は平面アンテナ15を所定の角度範囲で移動させ、送信波を走査させる。平面アンテナ15の角度は、レーダ装置2を車両1の前方のバンパー部分に備え、前方車両が車両1の真正面に位置している場合に、平面アンテナ15が前方車両と直交する位置にある場合を0度とする。例えば、平面アンテナ15は0度の状態から左右にそれぞれ15度ずつ走査する。なお、この角度0度の状態が車両1と前方車両との横方向の距離が0mの場合となる。この平面アンテナ15の走査はモータ駆動部19とモータ20を用いて行われ、平面アンテナ15の走査に伴うエンコーダ21の図示しないスリットの通過数と通過方向の情報を信号処理部11へ出力する。
【0031】
信号処理部11にはレーダ装置2の各部の制御と、車両制御部3とのデータの送受信を行う場合に情報処理を行うCPU11aと、CPU11aの処理に用いられるプログラムが格納されているメモリ11bが備えられている。CPU11aの各種の機能は、このプログラムを実行することで実現される。A/D変換部18から出力された信号に基づいて、車両1からの物体の相対距離や相対速度を検出する。また、エンコーダ21から出力される情報により車両1からの物体の横方向の距離(角度)を検出する。このようにそれぞれ物体情報のパラメータ値として検出する。
【0032】
なお、信号処理部11のメモリ11bは、信号処理部11内に設けられていることとして説明したが、信号処理部11内に限らずレーダ装置2の内部またはレーダ装置2の外部に設けられてもよい。
【0033】
本実施の形態では、レーダ装置2で検出される物体の情報を物体情報といい、この物体情報のパラメータ値として、相対距離、相対速度、および、車両1からみた物体の横方向の距離(角度)などが存在している。また、信号処理部11のメモリ11bには過去の物体検知処理により検知された物体情報などの複数のデータが格納されている。
【0034】
信号処理部11と電気的に接続されている車両制御部3はCPU3aとメモリ3bを備えており、CPU3aは車両1の各部の制御と、信号処理部11とのデータの送受信を行う際に情報処理を行う。また、メモリ3bはCPU3aの処理に用いられるプログラムが格納されており、さらに、信号処理部11から送信された物体情報も格納されている。またCPU3aの各種機能は、このプログラムを実行することで実現される。
【0035】
なお、車両制御部3のメモリ3bは、車両制御部3内に設けられていることとして説明したが、車両制御部3内に限らず車両制御部3の外部に設けられてもよい。
【0036】
この車両制御部3にはブレーキ40、スロットル41、および、警報器42が電気的に接続されており、物体情報に応じてこれらを制御することで、車両1の動作が制御される。例えば、警報器42は車両1と物体との距離が接近している場合に警報を発してユーザであるドライバーに異常を報知する。また、車両1と物体とが衝突する可能性がある場合は、ブレーキ40を作動させて車両1の速度を低下させたり、スロットル41を絞って、エンジンの回転数を低下させる。
【0037】
さらに、車両制御部3には車両1の速度を検知する車速センサ30、ステアリングホイールの操舵角を検知するステアリングセンサ31、および、車両1の旋回速度を検知するヨーレートセンサ32が接続されている。なお、ステアリングセンサ31とヨーレートセンサ32の両方を使用することで、ステアリング操作に応じた車両1の旋回方向、および、車両1の旋回速度を検知することが可能となる。そのため、両方のセンサを備えていることが好ましいが、ステアリングセンサ31またはヨーレートセンサ32のどちらか一方でも車両1の旋回方向を検知することは可能である。
【0038】
また、平面アンテナ15にて送受信される送信波および受信波は、電波、レーザ、または、超音波などの信号であり、平面アンテナ15から送信され、物体にあたってはね返り、反射波として受信することで、物体情報を検知できるものであればよい。
【0039】
さらに、本実施形態ではアンテナを平面アンテナ15としているが、送信波を出力し、送信波の物体からの反射波を受信可能なアンテナであれば、平面アンテナ15以外にレンズアンテナ、または、反射鏡アンテナ等であってもよい。また、送信アンテナ15aと受信アンテナ15bとを別々の構成として述べているが、1つのアンテナで送信、および、受信の両方を行なうことができる送受信兼用のアンテナを用いてもよい。
【0040】
次に、物体検知処理において用いられる信号処理の一例としてFM−CW(Frequency Modulated Continuous Wave)の方式について説明する。なお、本実施形態では、FM−CWの方式を例に説明を行うが、アップ区間とダウン区間のような複数の区間を組み合わせて物体情報を算出する方式であれば、この方式に限定されない。
【0041】
また、下記に記載の式や図3に示すFM−CW信号とビート信号についての各記号は以下に示すものである。fb:ビート周波数、fs:周波数、fr:距離周波数、fd:速度周波数、fo:送信波の中心周波数、△f:周波数偏移幅、fm:変調波の繰り返し周波数、C:光速(電波の速度)、T:物体までの電波の往復時間、R:物体までの距離、v:物体との相対速度。
【0042】
図3上図はFM−CWの送信信号および受信信号の信号波形を示す図である。また、図3下図は送信信号と受信信号との差分周波数により生じるビート周波数を示す図である。図3上図は横軸は時間、縦軸は周波数を示している。図中、実線で示す送信信号は、所定周期で周波数が変わる性質を有しており、周波数が上昇するアップ区間と、所定の周波数まで上昇した後に所定の周波数まで下降するダウン区間がある。そして、送信信号は、所定の周波数まで下降した後に再度所定の周波数まで上昇をするように一定の変化を繰り返す。また、送信信号は物体にあたって反射した後に受信され、同図の破線で示すような受信信号となる。受信信号についても送信信号と同じようにアップ区間とダウン区間が存在する。なお、本実施形態で用いられる周波数帯の例としては76Ghz帯の周波数があげられる。
【0043】
また、車両1と物体との距離に応じて、送信信号に比べて受信信号に時間的な遅れ(T=2R/C)が生じる。さらに、車両1と物体との間に速度差を有する場合は、送信信号に比べて受信信号が周波数fsの軸に平行にシフトする。このドップラーシフト分がfdとなる。
【0044】
図3下図は横軸を時間、縦軸をビート周波数として、式(1)に基づいてビート周波数を算出するものである。
fb=fr±fd=(4・△f・fm/C)R+(2・f0/C)v ・・・(1)
なお、式(1)に示されるビート信号を後述するFFT処理することで、周波数スペクトルを検出する。この検出された周波数スペクトルの中から所定の閾値を超えた周波数スペクトルをピーク信号として検出し、このピーク信号に対して後述する処理を行うことで車両1と物体との相対距離、相対速度、および、物体との横方向の距離(角度)を算出する。
【0045】
<2.動作>
<2−1.物体情報出力処理>
図4は物体検知処理のフローチャートである。この処理は車両の前方の走査が完了するごとに繰り返し実行される。送信信号と受信信号とをミキシングすることにより生じるビート信号をA/D変換器(Analog to Digital Converter)18によりA/D変換して、マイクロコンピュータなどの信号処理部11に取り込み、信号処理部11によりビート信号にFFT(Fast Fourier Transform 高速フーリエ変換)処理を施す(ステップS101)。
【0046】
FFT処理を施されたビート信号は周波数スペクトルとして検出される。一般に物体の周波数スペクトルは、相対的にノイズなどの周波数スペクトルよりもパワーレベルが大きいので、所定のパワーレベルに設けられている閾値を超えた周波数スペクトルをピーク信号として抽出する(ステップS102)。
【0047】
アンテナの角度ごとに抽出されたピーク信号について車両1の速度、ピーク信号の信号強度、および、ピーク信号の角度の情報に基づいて、複数のピーク信号が1つのグループとしてグルーピングされる(ステップS103)。その結果、複数のピーク信号を含んだ複数のグループがアップ区間とダウン区間のそれぞれに生成される。ここで、グルーピング処理は物体の所定の反射範囲から受信した受信信号が物体の連続する角度ごとの複数のピーク信号として検出され、この連続する角度ごとの所定の角度範囲の複数のピーク信号を1つのグループとし、これを1つの反射点として処理する。
【0048】
そして、アップ区間に生成された複数のグループと、ダウン区間に生成された複数のグループのピーク信号同士を、車両1の速度、グルーピングされたピーク信号の信号強度、および、グルーピングされた信号の角度の情報などに基づいてペアリングする(ステップS104)。このペアリング処理により、1つの物体からの反射点が検知点として判定される。
【0049】
そして、今回の走査で検知された検知点が、過去の走査で検知された検知点と同一の検知点が継続して検知されているか否かを判定する連続性判定を行う(ステップS105)。判定の一例としては、メモリ11bに記憶された過去の検知点の物体情報と、車速センサ30からの車両1の速度情報とから、過去の走査における検知点が今回の走査範囲のどの位置に検知されるかを予め予測しておき、予測した範囲内に検知点が存在すれば、過去に検知された検知点が今回の走査においても継続して検知されているものとして判定する。
【0050】
この連続性判定が行われると、信号処理部11は継続して検知されていると判定した対象の検知点の連続性の回数を+1回とカウントする。そして、複数回(例えば3回)の連続性があると判定された検知点のみを次の処理であるステップS107以降の処理の対象とする。ステップS107では、過去(例えば、前回)の後述する検知点結合処理の物体情報がメモリ11b内に記憶されているか否かを判定する(ステップS107)。
【0051】
メモリ11bに過去の走査の検知点結合処理に伴う物体情報が記憶されていない場合(ステップS107がNo)は、ステップS108の第1検知点結合の処理を行う。また、メモリ11bに過去の走査の検知点結合処理に伴う物体情報が記憶されている場合(ステップS107がYes)は、ステップ109の第2検知点結合の処理を行う。
【0052】
なお、ステップ105において、継続して検知されていると判定されなかった検知点、例えば新規に検知された検知点などは、後の走査で継続して検知されてからステップS107以降の処理の対象となる。
【0053】
ここでステップS108、または、ステップS109の検知点結合処理は、主に上述のように複数回の走査により複数回の連続性があると判定された検知点のうち車両1との距離が最も近い検知点を代表検知点とし、その代表検知点を略中心とした所定範囲内(結合範囲内)に含まれる検知点を1つの物体として結合する処理である。具体的には乗用車、トラック、および、バイクなどの移動物やガードレールや鉄橋などの静止物の1つの物体からの複数の反射点に基づく検知点を1つの物体の情報として結合する処理がこれにあたる。これらの第1検知点結合、および、第2検知点結合の処理については後に詳述する。
【0054】
そして、第1検知点結合(ステップS108)、または、第2検知点結合(ステップS109)の後、検知点を結合した物体情報を車両制御部3へ出力する(ステップS110)。出力された物体情報に基づき、車両制御部3はブレーキ40の操作、スロットル41の操作および、警報機42の操作などの車両制御を行う。
【0055】
ステップS110の物体情報出力後、車両1のACCがOFF状態でない場合(ステップS111がNo)、最初の処理(ステップS101)に戻り、後の走査に伴う物体検知処理を繰り返し行う。また、車両1のACCがOFF状態の場合は物体検知処理を終了する。
【0056】
なお、第2の検知点結合の処理において、後述する所定の判断(図7に示すステップS305がNoの場合)が行われると、ステップS110はなされず、ステップS111へ進む。
【0057】
<2−2.第1検知点結合>
次に、信号処理部11による第1検知点結合の処理について詳細に説明する。図5は図4の処理で示した第1検知点結合処理にあたり、第1検知点結合処理に伴い車両制御部3に出力する物体情報の検知点結合処理を示したフローチャートである。つまり、過去(例えば、前回)の検知点結合処理における検知点を結合した物体情報がメモリ11b内に記憶されていない場合に行う処理を説明するフローチャートである。
【0058】
また、図6は第1検知点結合処理に伴い車両制御部3に出力する物体情報の検知点結合処理の具体例を説明する図である。ここで、図6以降に示すxy座標軸は車両1に対して相対的に固定され、車両1の横方向がx軸方向、縦方向(進行方向)がy軸方向に対応する。
【0059】
図4のステップS106の処理の結果、複数回の連続性有りとされた検知点が、図6に示すように車両1が走行する車道R1上の車両100aの検知点JP1、車両1の横方向(+x軸方向)にある車道L1上の車両100bの検知点KP1、および、車両100cの検知点LP1を検知している。なお、これらの検知点は車両1のレーダ装置2の検知範囲REの範囲内である。
【0060】
第1検知点結合では、まず最初にこれらの複数の検知点の中から図5に示す代表検知点抽出を行う(ステップS201)。この代表検知点抽出は上述の複数の検知点JP1、KP1、および、LP1のうちから車両1との相対距離が最も近い検知点を抽出する。図6では、検知点JP1が代表検知点として抽出される。
【0061】
次に抽出された代表検知点に基づいて物体情報の結合範囲を設定する(ステップS202)。図6に示すように代表検知点JP1を略中心とした所定の範囲を有する結合範囲CE1を設定する。そして、この結合範囲CE1内に含まれる検知点を1つの物体情報として結合する(ステップS203)。図6では結合範囲CE1内の検知点は代表検知点であるJP1のみであり、この代表検知点JP1の位置などが一つの物体の物体情報として車両制御部3に出力される。
【0062】
なお、結合範囲CE1の形状は、1台の車両からの反射点である検知点が全て含まれる形状とし、図6に示すようなx軸方向、および、y軸方向のぞれぞれに辺を有する長方形である。その他に、1台の車両からの反射点である検知点が全て含まれる形状であれば、長方形以外の多角形などでもよい。
【0063】
次に、検知範囲RE内で検知された検知点のうち結合された検知点JP1以外に存在する他の検知点の有無を判定する(ステップS204)。判定の結果、他の検知点が有る場合(ステップS204がYes)、前回の結合処理で結合されていない残りの検知点に対して代表検知点抽出の処理を開始する(ステップS201)。また、結合されていない他の検知点がない場合(ステップS204がNo)は、結合した物体情報を1の物体の情報として車両制御部3に出力する。
【0064】
図6では前回の結合処理で結合された代表検知点JP1以外に車両100bの検知点KP1と、車両100cの検知点LP1とがある。そのため、図5のステップS204の判定で他の検知点有り(ステップS204がYes)となり、再び代表検知点抽出(ステップS201)が行われる。ここで、既に結合された検知点以外で車両1との相対距離が近い検知点は、車両100bの検知点KP1なので、検知点KP1が代表検知点として抽出される(ステップS201)。
【0065】
そして、代表検知点KP1を略中心とした結合範囲CE2が設定される(ステップS202)結合範囲CE2内には代表検知点であるKP1と検知点LP1とが含まれている。このため、代表検知点KP1と検知点LP1とが結合されて1つの物体として結合される(ステップS203)。このように代表検知点に基づいて結合された結合範囲CE1の物体情報と結合範囲CE2の物体情報とは異なる物体情報として判定される。
【0066】
ここで、本来ならば、1台の車両の反射点である検知点を結合するための結合範囲CE2であるが、上記のように1台の車両100bの検知点KP1と、異なる車両100cの検知点であるLP1とが近い距離にある場合はこのように異なる車両同士の検知点が1台の車両の検知点として結合されてしまう。
【0067】
そして、検知点結合後、図6ではその他の検知点が存在しない(ステップS204がNo)ため、図4のステップS110において物体情報を車両制御部3へ出力するとともに、代表検知点と、それに結合された検知点とを示す物体情報をメモリ11bに記憶しておく。
<2−3.第2検知点結合>
次に、信号処理部11による第2検知点結合処理について説明する。図7は、第2検知点結合処理に伴い出力する物体情報の検知点結合処理を示したフローチャートである。また、図7の処理説明に伴い、図8の同一物体における代表検知点再設定処理を説明する図、および、図9の結合範囲内の同一物体判定を示す図を用いる。また、図7の処理説明に伴い、図10の新規物体の代表検知点再設定処理を説明する図、および、図11の結合範囲内の新規物体判定を示す図を用いる。
【0068】
最初に、信号処理部11は、過去の走査の物体情報が記憶されているメモリ11bから物体情報を読み出す(ステップS301)。そして、過去の走査(例えば、前回の走査)の代表検知点に対応する検知点が今回の走査で存在する場合(ステップS302がYes)は、図6で説明したようにその代表検知点に対応する検知点を今回の走査の代表検知点とし、その代表検知点の略中心から所定範囲内の結合範囲を設定して(ステップS303)、その結合範囲内に含まれる検知点を1つの物体情報として結合する(ステップS304)。そして、代表検知点の位置などが一つの物体の物体情報として車両制御部3に出力される。
【0069】
ステップS302の処理に戻って、過去の走査の代表検知点に対応する検知点が今回の走査で存在しない場合(ステップS302がNo)は、過去の走査において、代表検知点の次に車両1との相対距離が近い検知点が存在するか否かを判定する(ステップS305)。代表検知点の次に車両1との相対距離が近い検知点が存在する場合(ステップS305がYes)は、その検知点が過去の走査の同一物体判定範囲内に存在するか否かを判定する(ステップS306)。
【0070】
ここで、同一物体判定範囲に関連する処理について、図8および図9に基づいて説明する。なお、ステップS305において、過去の走査において、代表検知点の次に自車に近い検知点が存在しない場合(ステップS305がNo)は、処理を終了し、図4のステップS111に進み、車両1のACCの状態を判定する。
【0071】
図8の上段の走査SC1は過去の走査において検知された物体情報を示しており、レーダ装置2を備えた車両1が車道R1を直進している(+y方向に走行している)。そして、車両1の走査範囲RE内には、車道L1上で車両1に近づく方向(−y方向)に走行する車両101aの検知点SP1、および、検知点SP2と、車両1に近づく方向(−y方向)の車両101bの検知点TP1とが結合範囲CE3内にある。そして、結合範囲CE3内では、車両1との相対距離が最も近い検知点SP1が略中心にあり、代表検知点となっている。
【0072】
次の走査であるSC2では、走査SC1で検知されていた代表検知点SP1が検知されなくなったことで、前回走査SC1の結合範囲CE3内で、代表検知点SP1の次に車両1との相対距離が近い検知点SP2が、走査SC2における新たな代表検知点として設定される。
【0073】
そして、新たな代表検知点SP2を略中心とした結合範囲CE3が設定され、この結合範囲CE3内の代表検知点SP2と検知点T1とが1つの物体として結合され、代表検知点SP2の位置などが一つの物体の物体情報として車両制御部3に出力される。なお、新たな代表検知点SP2は過去の走査SC1において、後述する同一物体判定範囲内に存在したため、過去の物体情報と同一の物体であるとして判定されている。この処理を詳細に示したのが図9である。
【0074】
図9の上段の走査SC1では、代表検知点SP1を略中心に縦(y軸)30m、横(x軸)4mの長方形の結合範囲CE3が設けられている。また、代表検知点SP1の遠方側(+y方向)の横方向(+x方向)に検知点SP2がある。言い換えると、代表検知点SP1の位置から遠方側(+y方向)に所定距離未満(例えば、3m未満)に離れた位置に検知点SP2がある。
【0075】
また、代表検知点SP1の遠方(+y方向)には検知点TP1がある。言い換えると、代表検知点SP1の位置から遠方側(+y方向)に所定距離以上(例えば、3m以上)に離れた位置に検知点TP1がある。
【0076】
なお、代表検知点SP1の位置から横方向(+x方向2m、および、−x方向2m)の結合範囲内で、縦方向(y軸方向)の代表検知点SP1の位置から遠方側(+y方向)に所定距離未満(例えば、3m未満)に離れた位置(代表検知点SP1の位置から+y方向に3mの位置)で囲まれた範囲を同一物体判定範囲AR1とする。また、代表検知点SP1の位置から横方向の結合範囲内で、代表検知点SP1の位置から車両側に近い位置(代表検知点SP1の位置から−y方向に15mの位置)で囲まれた範囲を同一物体判定範囲AR2とする。走査SC1の検知点SP2はこの同一物体判定範囲AR1内に存在している。このように走査SC1で同一物体判定範囲内に存在している検知点は、走査SC2で検出されなくなったSC1の代表検知点SP1と同一物体の検知点として判定される。
【0077】
そして、今回の走査SC2では、過去の走査SC1の代表検知点SP1が存在しないため、過去の走査において、代表検知点SP1の次に車両1との相対距離が近い検知点SP2が走査SC2における新たな代表検知点となる。また、この新たな代表検知点は過去の走査において同一物体判定範囲内に存在することから、代表検知点SP1と同一物体として判定される。
【0078】
走査SC2では新たに設定された代表検知点SP2に基づく過去の走査SC1と同一物体の結合範囲CE3が設定され、この結合範囲内に存在する代表検知点SP2と、検知点T1とが一つの物体として結合され、代表検知点SP2の位置などの情報が一つの物体の物体情報として車両制御部3へ出力される。これにより、同一の物体を正しく一つの物体として判定できる。
【0079】
次に図7のステップS306の処理に戻って、同一物体判定範囲内に検知点がない場合(ステップS306がNo)は、過去の走査で結合範囲内であり、同一物体判定範囲外の検知点のうち、車両1との相対距離が代表検知点の次に近い検知点を新たな代表検知点として再設定し(ステップS308)、この新たな代表検知点に基づいて結合範囲を設定し(ステップS303)、結合範囲内の検知点を結合し(ステップS304)、代表検知点の位置などの情報を新たな物体情報として車両制御部3へ出力する。
【0080】
図10の上段の走査SC1は過去の走査において検知された物体情報を示しており、レーダ装置2を備えた車両1が車道R1を直進している(+y方向に走行している)。そして、車両1の走査範囲RE内には、車道L1上で車両1に近づく方向(−y方向)に走行する車両102aの検知点MP1と、車両1に近づく方向(−y方向)の車両102bの検知点NP1とが結合範囲CE4内にある。そして、結合範囲CE4内では、車両1との相対距離が最も近い検知点MP1が略中心にあり、代表検知点となっている。
【0081】
次の走査であるSC2では、走査SC1で検知されていた代表検知点MP1が検知されなくなったことで、前回走査SC1の結合範囲CE4内で、代表検知点MP1の次に車両1との相対距離が近い検知点NP1が、走査SC2における新たな代表検知点として設定される。
【0082】
そして、新たな代表検知点NP1を略中心とした結合範囲CE5が新たに設定され、この結合範囲内の代表検知点NP1が1つの物体として結合され、代表検知点NP1の位置などが一つの物体の物体情報として車両制御部3に出力される。なお、結合範囲CE5では、代表検知点NP1以外の検知点がないため、一つの検知点で検知点の結合処理を行う。
【0083】
また、新たな代表検知点NP1は過去の走査SC1において、同一物体判定範囲外に存在したため、過去の物体情報とは異なる物体であるとして判定される。つまり、新たな代表検知点NP1が過去の走査SC1における代表検知点MP1の位置から遠方側(+y方向)に所定距離以上(例えば、3m以上)に離れた位置に存在している。そのため、走査SC1の代表検知点MP1と、走査SC2の代表検知点NP1とは異なる物体の情報として判定される。また、結合範囲もSC1の結合範囲CE4とは異なる物体情報の結合範囲としてCE5が用いられている。この処理を詳細に示したのが図11の図である。
【0084】
図11の上段の走査SC1では、代表検知点MP1を略中心に縦(y軸)30m、横(x軸)4mの長方形の結合範囲CE4が設けられている。また、代表検知点MP1の遠方側(+y方向)には検知点NP1がある。言い換えると、代表検知点MP1の位置から遠方側(+y方向)に所定距離以上(例えば、3m以上)に離れた位置に検知点NP1がある。
【0085】
なお、この検知点NP1は、代表検知点MP1の位置から横方向(+x方向2m、および、−x方向2m)の結合範囲内で、縦方向(y軸方向)の代表検知点SP1の位置から遠方側(+y方向)に所定距離未満(例えば、3m未満)に離れた位置(代表検知点MP1の位置から+y方向に3mの位置)で囲まれた範囲を同一物体判定範囲AR1とする。また、代表検知点MP1の位置から横方向の結合範囲内で、代表検知点MP1の位置から車両側に近い位置(代表検知点MP1の位置から−y方向に15mの位置)で囲まれた範囲を同一物体判定範囲AR2とする。走査SC1のNP1はこれらの同一物体判定範囲AR1およびAR2のいずれの範囲内でもない、結合範囲内CE4の範囲内に存在している。
【0086】
そして、今回の走査SC2では、過去の走査SC1の代表検知点MP1が存在しないため、過去の走査において、代表検知点SP1の次に車両1との相対距離が近い検知点NP1が走査SC2における新たな代表検知点となる。また、この新たな代表検知点は過去の走査において同一物体判定範囲外に存在することから、代表検知点MP1とは異なる物体の情報として判定される。つまり、代表検知点NP1は過去の走査SC1において、走査SC1における代表検知点MP1の位置から遠方側(+y方向)に所定距離以上(例えば3m以上)に離れた位置に存在するため、走査SC1の代表検知点MP1と走査SC2の代表検知点NP1とは異なる物体の物体情報として判定される。
【0087】
走査SC2では新たに設定された代表検知点NP1に基づく過去の走査SC1と異なる体情報の結合範囲CE5が設定され、この結合範囲内に存在する代表検知点NP1が物体情報として結合され、代表検知点NP1の位置などの情報が物体情報として車両制御部3へ出力される。このため、異なる物体を一つの物体と誤認することに起因する物体の移動方向の誤った判断を防止できる。
【0088】
なお、複数回の走査により、各々の走査の代表検知点が同一物体と判定されたことを条件に、過去の走査SC1における代表検知点の位置などに基づく物体情報と、後の走査SC2における代表検知点の位置などに基づく物体情報とを比較した結果、所定の条件を満足する場合に、物体情報を車両制御部3へ送信する。これにより、異なる物体を一つの物体と誤判定して、図4のステップS110において、代表検知点同士の位置が所定条件を満足している場合に、車両の誤制御を行うことを防止できる。
【0089】
なお、所定の条件を満足する場合の例としては、後の走査SC2における代表検知点の位置が、過去の走査SC1の代表検知点の位置よりも車両1の横方向の距離が近い場合などがある。言い換えると、過去の走査SC1の代表検知点に基づく物体情報と、後の走査SC2に基づく代表検知点とが同一物体情報であり、車両1からみて過去の走査SC1の代表検知点の位置よりも後の走査SC2の代表検知点の位置が近づいている場合などである。これにより、異なる物体を一つの物体として誤判定して近づいたと判定した場合に、車両1の誤制御を行うことを防止できる。
【符号の説明】
【0090】
1・・・・・車両
2・・・・・レーダ装置
3・・・・・車両制御部
10・・・・物体検知システム
11・・・・信号処理部
12・・・・変調部
13・・・・VCO
14・・・・方向性結合器
15・・・・平面アンテナ
16・・・・ミキサ
17・・・・フィルタ
18・・・・A/D変換器
19・・・・モータ駆動回路
20・・・・モータ
21・・・・エンコーダ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載され、送信波を走査して前記送信波の物体での反射波に基づいて前記車両の周辺の物体の位置を示す検知点を検知するレーダ装置であって、
第1の走査において検知された前記車両に最も近い第1の代表検知点を含む検知点の情報が記憶されたメモリから、前記検知点の情報を読み出す読出手段と、
読み出した情報の前記検知点が、前記第1の走査の後の第2の走査において継続して検知されているか否かを判定する継続判定手段と、
前記第1の代表検知点が前記第2の走査において検知されない場合、前記第1の走査において前記第1の代表検知点から所定範囲内にある前記検知点のうち、前記第1の代表検知点の次に前記車両に近い検知点を前記第2の走査における第2の代表検知点に設定する設定手段と、
前記第2の代表検知点が、前記第1の代表検知点の位置から遠方側に所定距離以上に離れた位置に存在する場合は、前記第1の代表検知点と前記第2の代表検知点とを異なる物体の情報と判定する物体判定手段と、
を備えることを特徴とするレーダ装置。
【請求項2】
請求項1に記載のレーダ装置において、
前記物体判定手段は、前記第2の代表検知点が、前記第1の代表検知点の位置から遠方側に所定距離未満に離れた位置に存在する場合は、前記第1の代表検知点と前記第2の代表検知点とを同一の物体の情報と判定することを特徴とするレーダ装置。
【請求項3】
請求項1に記載のレーダ装置において、
前記物体判定手段は、前記第2の代表検知点が、前記第1の代表検知点の位置から前記車両側に近い位置に存在する場合は、前記第1の代表検知点と前記第2の代表検知点とを同一の物体の情報と判定することを特徴とするレーダ装置。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれかに記載のレーダ装置において、
前記物体判定手段が同一の物体と判定した前記第1の代表検知点と前記第2の代表検知点との位置を比較した結果が所定条件を満足する場合に、当該物体の情報を前記車両を制御する制御装置に送信する情報送信手段、
をさらに備えることを特徴とするレーダ装置。
【請求項5】
請求項4に記載のレーダ装置において、
前記情報送信手段は、同一の物体と判定した前記第1の代表検知点と前記第2の代表検知点とにおいて、前記第2の代表検知点の位置が前記第1の代表検知点の位置よりも前記車両の横方向の距離が近い場合は、前記物体の情報を前記制御装置に送信することを特徴とするレーダ装置。
【請求項6】
請求項4または5に記載のレーダ装置と、
前記情報送信手段からの前記物体の情報に基づいて前記車両を制御する制御装置と、
を備えることを特徴とする物体検知システム。
【請求項7】
車両に搭載され、送信波を走査して前記送信波の物体での反射波に基づいて前記車両の周辺の物体の位置を示す検知点を検知し、前記検知点に基づいて物体の情報を検知する物体検知方法であって、
第1の走査において検知された前記車両に最も近い第1の代表検知点を含む検知点の情報が記憶されたメモリから、前記検知点の情報を読み出す工程と、
読み出した情報の前記検知点が、前記第1の走査の後の第2の走査において継続して検知されているか否かを判定する工程と、
前記第1の代表検知点が前記第2の走査において検知されない場合、前記第1の走査において前記第1の代表検知点から所定範囲内にある前記検知点のうち、前記第1の代表検知点の次に前記車両に近い検知点を前記第2の走査における第2の代表検知点に設定する工程と、
前記第2の代表検知点が、前記第1の代表検知点の位置から遠方側に所定距離以上に離れた位置に存在する場合は、前記第1の代表検知点と前記第2の代表検知点とを異なる物体の情報と判定する工程と、
を備えることを特徴とする物体検知方法。
【請求項1】
車両に搭載され、送信波を走査して前記送信波の物体での反射波に基づいて前記車両の周辺の物体の位置を示す検知点を検知するレーダ装置であって、
第1の走査において検知された前記車両に最も近い第1の代表検知点を含む検知点の情報が記憶されたメモリから、前記検知点の情報を読み出す読出手段と、
読み出した情報の前記検知点が、前記第1の走査の後の第2の走査において継続して検知されているか否かを判定する継続判定手段と、
前記第1の代表検知点が前記第2の走査において検知されない場合、前記第1の走査において前記第1の代表検知点から所定範囲内にある前記検知点のうち、前記第1の代表検知点の次に前記車両に近い検知点を前記第2の走査における第2の代表検知点に設定する設定手段と、
前記第2の代表検知点が、前記第1の代表検知点の位置から遠方側に所定距離以上に離れた位置に存在する場合は、前記第1の代表検知点と前記第2の代表検知点とを異なる物体の情報と判定する物体判定手段と、
を備えることを特徴とするレーダ装置。
【請求項2】
請求項1に記載のレーダ装置において、
前記物体判定手段は、前記第2の代表検知点が、前記第1の代表検知点の位置から遠方側に所定距離未満に離れた位置に存在する場合は、前記第1の代表検知点と前記第2の代表検知点とを同一の物体の情報と判定することを特徴とするレーダ装置。
【請求項3】
請求項1に記載のレーダ装置において、
前記物体判定手段は、前記第2の代表検知点が、前記第1の代表検知点の位置から前記車両側に近い位置に存在する場合は、前記第1の代表検知点と前記第2の代表検知点とを同一の物体の情報と判定することを特徴とするレーダ装置。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれかに記載のレーダ装置において、
前記物体判定手段が同一の物体と判定した前記第1の代表検知点と前記第2の代表検知点との位置を比較した結果が所定条件を満足する場合に、当該物体の情報を前記車両を制御する制御装置に送信する情報送信手段、
をさらに備えることを特徴とするレーダ装置。
【請求項5】
請求項4に記載のレーダ装置において、
前記情報送信手段は、同一の物体と判定した前記第1の代表検知点と前記第2の代表検知点とにおいて、前記第2の代表検知点の位置が前記第1の代表検知点の位置よりも前記車両の横方向の距離が近い場合は、前記物体の情報を前記制御装置に送信することを特徴とするレーダ装置。
【請求項6】
請求項4または5に記載のレーダ装置と、
前記情報送信手段からの前記物体の情報に基づいて前記車両を制御する制御装置と、
を備えることを特徴とする物体検知システム。
【請求項7】
車両に搭載され、送信波を走査して前記送信波の物体での反射波に基づいて前記車両の周辺の物体の位置を示す検知点を検知し、前記検知点に基づいて物体の情報を検知する物体検知方法であって、
第1の走査において検知された前記車両に最も近い第1の代表検知点を含む検知点の情報が記憶されたメモリから、前記検知点の情報を読み出す工程と、
読み出した情報の前記検知点が、前記第1の走査の後の第2の走査において継続して検知されているか否かを判定する工程と、
前記第1の代表検知点が前記第2の走査において検知されない場合、前記第1の走査において前記第1の代表検知点から所定範囲内にある前記検知点のうち、前記第1の代表検知点の次に前記車両に近い検知点を前記第2の走査における第2の代表検知点に設定する工程と、
前記第2の代表検知点が、前記第1の代表検知点の位置から遠方側に所定距離以上に離れた位置に存在する場合は、前記第1の代表検知点と前記第2の代表検知点とを異なる物体の情報と判定する工程と、
を備えることを特徴とする物体検知方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2011−174720(P2011−174720A)
【公開日】平成23年9月8日(2011.9.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−36989(P2010−36989)
【出願日】平成22年2月23日(2010.2.23)
【出願人】(000237592)富士通テン株式会社 (3,383)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年9月8日(2011.9.8)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年2月23日(2010.2.23)
【出願人】(000237592)富士通テン株式会社 (3,383)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]