説明

レーダ装置

【課題】 レーダ装置の運用状態に応じて、データレーまたは目標の検出確率を向上させて最適化を図ることができるレーダ装置を提供することを目的とする。
【解決手段】 レーダ装置は、送信信号を空間に電波として放射し、空間からの電波を受信する空中線2と、送信信号を生成し、空中線2を送信する送信器1と、空中線2で受信した電波を増幅し、周波数変換して受信信号を生成する受信器3と、受信器3からの受信信号をパルス圧縮し、目標情報を抽出する目標検出器4と、目標情報に基づいて、ヒット数を制御するヒット数制御器5とを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、航空機、船舶等を探知するために、地上、機上、艦上等に設置されるレーダ装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来技術のレーダ装置としては、レーダ装置に対する電子妨害や天候のモニタを行うと共に、目標の捜索時間(捜索ビームにおいて目標の情報が入っている間隔)と目標の追尾時間(追尾ビームにおいて目標の情報が入っている間隔)との最適な配分値の算出を行い、レーダ装置の捜索ビームと追尾ビームの制御を最適化するレーダ装置が提供されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
しかし、特許文献1記載のレーダ装置では、データレートにおける捜索時間と追尾時間との時間配分の最適化のみを行なっており、データレート自体の時間長さを可変するような制御は行なっていなかった。その結果、レーダ装置制御の自由度に制約があった。
【0004】
【特許文献1】特開平10−160832号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来のレーダ装置は、以上のように構成されていたので、レーダ装置制御の自由度に制約があった。その結果、「より広角で探索を行うために、目標の検出確率を犠牲にして、データレートを向上(時間短縮)させる」、或いは、「データレートを犠牲にして(時間を長くして)特定方位の目標の検出確率を向上させる」といった要望に対して、十分に対応できないという課題があった。
【0006】
この発明は上記のような課題を解消するためになされたもので、レーダ装置の運用状態に応じて、データレートまたは目標の検出確率を向上させて最適化を図ることができるレーダ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明に係るレーダ装置は、送信信号を空間に電波として放射し、空間からの電波を受信する空中線と、前記送信信号を生成し、前記空中線へ送信する送信機と、前記空中線で受信した電波を増幅し、周波数変換して受信信号を生成する受信器と、前記受信器からの受信信号をパルス圧縮し、目標情報を抽出する目標検出器と、前記目標情報に基づいて、ヒット数を制御するヒット数制御器とを備えている。前記ヒット数制御器でヒット数を制御することにより、データレートまたは目標の検出確率を向上させる。
【発明の効果】
【0008】
この発明によれば、レーダ装置の運用状態に応じて、ヒット数制御器でヒット数を制御することにより、データレートまたは目標の検出確率を向上させて最適化を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
実施の形態1.
以下、この発明の実施の形態1について説明する。図1は、実施の形態1に係るレーダ装置のブロック図である。図1において、レーダ装置は、送信信号を空間に電波として放射し、空間からの電波を受信する空中線(アンテナ)2、空中線2へ生成した送信信号を送信する送信器1、空中線2で受信した電波を増幅し、周波数変換して受信信号を生成する受信器3、受信器3からの受信信号をパルス圧縮し、目標情報を抽出する目標検出器4、目標情報に基づいてヒット数(目標に当たるパルスの数)を制御するヒット数制御器5を備えている。
【0010】
次に、図1のレーダ装置の動作について説明する。送信器1は、生成した送信信号を増幅して空中線2から空間へ電波として放出する。放出された電波が目標で反射し、空中線2で受信される。受信器3は、空中線2で受信した電波を増幅し、中間周波数変換して受信信号を生成する。目標検出器4で受信信号をパルス圧縮し、種々の積分を行なうことで、目標の位置、目標の予測速度、将来の目標予測位置等の目標情報を抽出する。
【0011】
その際、ヒット数制御器5は、上記の目標情報に基づいて、所定のヒット数Hとなるように送信器1の送信信号(送信パルス幅τPCB)を制御する。また、制御した送信信号に応じて、受信機3の中間周波数への変換と、目標検出器4でのパルス圧縮(圧縮後パルス幅τPCA)を制御する。
【0012】
図1のレーダ装置の最大探知距離R、データレートT、目標の検出確率Pd、パルス圧縮比Dは、後述の式(1)〜式(6)のように表すことができる。所望の最大探知距離Rを得る場合に、目標のRader Cross Section(以下、RCS)を一定とし、目標の検出確率PdまたはデータレートTを向上させる。
【0013】
4=K1(σ×D×H) (1)
T=K2×H (2)
T=K3×D (3)
Pd=K4/H (4)
Pd=K5/D (5)
D=τPCB/τPCA (6)
R レーダ装置の最大探知距離[m]、σ 目標のRCS[m2]、D パルス圧縮比、τPCB 送信パルス幅、τPCA 圧縮後パルス幅、H ヒット数、Pd 目標の検出確率、T データレート[sec]、K1 定数[m2]、K2 定数[sec]、K3 定数[sec]、K4 定数、K5 定数
【0014】
以下、ヒット数制御器5の制御について、式(1)(2)(4)を用いて説明する。式(4)において、ヒット数制御器5を用いてヒット数Hを小さくすることにより、目標の検出確率Pdは緩和される(小さくする)。更に、式(2)において、同様にヒット数Hを小さくすることにより、データレートTを向上させる(小さくする)。その際、式(1)において、K1を大きくして最大探知距離Rは一定とする。
【0015】
一方、式(2)において、ヒット数制御器5を用いてヒット数Hを大きくすることにより、データレートTは緩和される(大きくする)。更に、式(4)において、同様にヒット数Hを大きくすることにより、目標の検出確率Pdを向上させる(大きくする)。その際、式(1)において、K1を小さくして最大探知距離Rは一定とする。
【0016】
以上のように、この実施の形態1によれば、通常のレーダ運用状態では、ヒット数Hを小さくすることによりデータレートTを向上させ、初期探知の早期化や捜索ビームの追尾性能の向上を図ることができる。また、重要方向を指定した場合には、ヒット数Hを大きくすることにより、目標の検出確率Pdを向上させることができる。その結果、レーダ装置の運用状態に応じた最適化を図ることができる。
【0017】
実施の形態2.
以下、この発明の実施の形態2について説明する。図2は、実施の形態2に係るレーダ装置のブロック図である。実施の形態2は、実施の形態1(図1)のヒット数制御器5の代わりに、送信パルス幅制御器6を加えたものである。送信パルス幅制御器6は、目標検出器4で抽出された目標情報に基づいて送信パルス幅τPCBを制御する。その他の構成は実施の形態1(図1)と同様であるので、説明を省略する。
【0018】
次に、図2のレーダ装置の動作について説明する。送信パルス幅制御器6も基本的にはヒット数制御器と同様の動作を行なう。ヒット数制御器5はヒット数Hが整数値となるように送信パルス幅τPCBを設定していたが、送信パルス幅制御器6は、送信パルス幅τPCBを任意に設定できる。また、制御した送信パルス幅τPCBに応じて、受信機3の中間周波数への変換と、目標検出器4でのパルス圧縮(圧縮後パルス幅τPCA)を制御する。その他の動作については、実施の形態1と同様であるので説明を省略する。
【0019】
以下、送信パルス幅制御器6の制御について、式(1)(3)(5)(6)を用いて説明する。式(6)において、送信パルス幅制御器6を用いて送信パルス幅τPCBを小さくすると、パルス圧縮比Dも小さくなる。式(5)において、同様にパルス圧縮比Dを小さくすることにより、目標の検出確率Pdは緩和される(小さくする)。式(3)において、パルス圧縮比Dを小さくすることにより、データレートTは向上される(小さくする)。その際、式(1)において、K1を大きくして最大探知距離Rは一定とする。
【0020】
逆に、式(6)において、送信パルス幅制御器6を用いて送信パルス幅τPCBを大きくすると、パルス圧縮比Dも大きくなる。式(3)において、同様にパルス圧縮比Dを大きくすることにより、データレートTは緩和される(大きくする)。更に、式(5)において、パルス圧縮比Dを大きくすることにより、目標の検出確率Pdは向上される(大きくする)。その際、式(1)において、K1を小さくして最大探知距離Rは一定とする。
【0021】
以上のように、この実施の形態2によれば、通常のレーダ運用状態では、送信パルス幅τPCBを小さくすることにより、データレートTを向上させ、初期探知の早期化や捜索ビームの追尾性能の向上を図ることができる。また、重要方向を指定した場合には、送信パルス幅τPCBを大きくすることにより、目標の検出確率Pdを向上させることができる。その結果、レーダ装置の運用状態に応じた最適化を図ることができる。
【0022】
実施の形態3.
以下、この発明の実施の形態3について説明する。図3は、実施の形態3に係るレーダ装置のブロック図である。実施の形態3は、実施の形態1(図1)のヒット数制御器5と実施の形態2(図2)の送信パルス幅制御器6を併せて備えた構成をとる。その他の構成については、実施の形態1、2と同様であるので説明を省略する。
【0023】
実施の形態3では、ヒット数制御器5と送信パルス幅制御器6については、それぞれ、実施の形態1、2と同様の操作を行なう。ヒット数制御器5だけでを用いた場合には、ヒット数Hが整数値しか取り得ないので、ヒット数Hを変化させる(制御する)だけでは、最適化に限界がある。一方、送信パルス幅制御器6だけを用いた場合には、より高精度な最適化が図れるものの、それと同時にレーダ装置の規模が拡大する。従って、実施の形態3に係るレーダ装置では、ヒット数制御器5及び送信パルス幅制御器6の双方を備えることで、レーダ装置の規模を拡大することなく、運用状態に応じた最適化(データレートTまたは目標の検出確率Pdの向上)を図ることができる。
【0024】
以上のように、この実施の形態3によれば、ヒット数制御器5及び送信パルス幅制御器6の双方を備えることで、運用状態に応じて、ヒット数H及び送信パルス幅τPCBの増減を任意に制御し、データレートTまたは目標の検出確率Pdを向上させることができる。その結果、レーダ装置の規模を拡大(コスト増大)することなく、最適化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】この発明の実施の形態1に係るレーダ装置のブロック図である。
【図2】この発明の実施の形態2に係るレーダ装置のブロック図である。
【図3】この発明の実施の形態3に係るレーダ装置のブロック図である。
【符号の説明】
【0026】
1 送信器、2 空中線、3 受信器、4 目標検出器、5 ヒット数制御器、6 送信パルス幅制御器。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
送信信号を空間に電波として放射し、空間からの電波を受信する空中線と、
前記送信信号を生成し、前記空中線へ送信する送信機と、
前記空中線で受信した電波を増幅し、周波数変換して受信信号を生成する受信器と、
前記受信器からの受信信号をパルス圧縮し、目標情報を抽出する目標検出器と、
前記目標情報に基づいて、ヒット数を制御するヒット数制御器とを備えたことを特徴とするレーダ装置。
【請求項2】
送信信号を空間に電波として放射し、空間からの電波を受信する空中線と、
前記送信信号を生成し、前記空中線へ送信する送信機と、
前記空中線で受信した電波を増幅し、周波数変換して受信信号を生成する受信器と、
前記受信器からの受信信号をパルス圧縮し、目標情報を抽出する目標検出器と、
前記目標情報に基づいて、送信パルス幅を制御する送信パルス幅制御器とを備えたことを特徴とするレーダ装置。
【請求項3】
送信信号を空間に電波として放射し、空間からの電波を受信する空中線と、
前記送信信号を生成し、前記空中線へ送信する送信機と、
前記空中線で受信した電波を増幅し、周波数変換して受信信号を生成する受信器と、
前記受信器からの受信信号をパルス圧縮し、目標情報を抽出する目標検出器と、
前記目標情報に基づいて、ヒット数を制御するヒット数制御器と、
前記目標情報に基づいて、送信パルス幅を制御する送信パルス幅制御器とを備えたことを特徴とするレーダ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−250885(P2006−250885A)
【公開日】平成18年9月21日(2006.9.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−71417(P2005−71417)
【出願日】平成17年3月14日(2005.3.14)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】