Notice: Undefined variable: fterm_desc_sub in /mnt/www/biblio_conv.php on line 353
レーダ装置
説明

レーダ装置

【課題】レーダ装置において生成する物標情報の信頼性を向上させること。
【解決手段】方位解析処理では、角度差絶対値abが閾値α以下となる到来波の組合せがあれば(S390:YES)、その組合せを構成する到来波についての到来方位θA,θBの中間地点を仮想方位とし、その仮想方位に受信波ビームを向けたときの電力を、仮想電力として導出する(S400)。その仮想方位及び仮想電力を方位情報の1つとして、到来波の各々についての到来方位θ及び到来電力(即ち、方位情報)に加えて登録する(S420)。つまり、方位解析処理では、複数の到来波に対する各到来方位のうち、隣接する2つの物標からの到来波に対する到来方位の間の角度範囲が分離能以下となる場合には、より確からしい方位情報として仮想方位及び仮想電力を導出し、物標認識処理にてペアマッチングを実行する際に用いる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーダ波を送受信した結果に基づいて、物標を認識するレーダ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、時間軸に沿って周波数が漸増する上り区間、及び時間軸に沿って周波数が漸減する下り区間を1周期として変調したレーダ波を送信し、該レーダ波が物標にて反射することで生じた到来波を複数のアンテナがアレイ状に配置された受信アンテナにて受信した結果に基づいて、レーダ波を反射した物標に関する情報(以下、物標情報と称す)を生成するレーダ装置(いわゆるFMCWレーダ装置)が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
この種のレーダ装置では、上り区間及び下り区間のそれぞれについて、ビート信号を周波数解析した結果から、物標の候補を表す周波数ピークを求める。さらに、各周波数ピークについて、到来波の到来方位(即ち、基準軸に対する角度)及び到来波の受信電力である到来電力を導出する(即ち、方位推定を実行する)。そして、上り区間の周波数ピークと、下り区間の周波数ピークとの間で、到来方位の差が設定角度の範囲内であること、かつ到来電力の差が設定電力の範囲内であることなどの規定条件を満たした周波数ピークの組合せを1つの組(以下、周波数ペアと称す)として生成するペアマッチングを実行する。
【0004】
さらに、レーダ装置では、ペアマッチングによって生成した周波数ペアに基づいて、FMCWレーダに周知の手法から、物標までの距離、物標の相対速度を求め、それら物標までの距離、物標の相対速度、及び物標の方位としての到来方位を含む情報を物標情報として生成する。
【0005】
ところで、方位推定の方法として、Multiple Signal Classification(MUSIC)やEstimation of signal Parameters via Rotational Invariance Techniques(ESPRIT)といった、高分離能アルゴリズムが知られている。
【0006】
この種の高分離能アルゴリズムでは、上り区間と下り区間とのそれぞれにおける各周波数ピークについて、受信信号の相関行列を生成して固有値分解した結果に基づいて、到来波の数を推定する。そして、例えば、高分離能アルゴリズムとしてMUSICを用いる場合、MUSICスペクトルの中から、到来波の数分のピーク(ヌル点)を検出することで、到来方位及び到来電力を推定する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2006−47282号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、方位推定の性能を表す指標として、方位分離能が知られている。
このうち、レーダの方位分離能は、隣接する2つの物標からの到来波を正確に分離可能な角度を表し、受信アンテナを構成するアンテナの特性や該アンテナの配置間隔など、受信アンテナの物理的特性等によるハードウェアの性能や、方位推定手法等の信号処理による性能に基づいて決まる。
【0009】
この結果、近接する2つの物標からの到来波について方位推定を実行する場合、それら2つの到来波に対する到来方位及び到来電力の推定精度は低下することがあった。
つまり、安定して分離できる角度差よりも小さい角度差に2つの物標が接近すると、その2つの物標からの到来波を正確に安定して分離できなくなるという問題があった。
【0010】
例えば、レーダ装置が搭載された自動車の前方を、一台の大型トラックのような先行車両が走行し、その走行している先行車両の車幅方向全体が方位分離能の範囲内に収まっている場合を想定する。このような場合、先行車両においてレーダ波を反射するポイント(即ち、物標)は、レーダ波の上り区間とレーダ波の下り区間との間で、車両における左右両方の端となったり車両の中央部分となったりするなど変動するだけでなく、1台の先行車両に対して2つに分離してしまうなど、到来波の数が異なる可能性があった。
【0011】
このとき、各到来波の到来方位は設定角度範囲内となる可能性が高いが、各到来波の到来電力は大きさにばらつきが生じ、それぞれの大きさが設定電力の範囲を超える可能性が高い。このため、レーダ装置において、ペアマッチングを実行しても、適切な周波数ペアを生成できず、レーダ装置にて生成される物標情報の信頼性が低下するという問題があった。
【0012】
そこで、本発明は、レーダ装置において生成する物標情報の信頼性を向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成するためになされた本発明では、送受信手段が、時間軸に沿って周波数が漸増する上り区間、及び時間軸に沿って周波数が漸減する下り区間を1周期として変調したレーダ波を繰り返し送信し、反射されたレーダ波である到来波を、複数のアンテナからなる受信アンテナにて受信する。
【0014】
その送受信手段がレーダ波を送受信する毎に、ピーク検出手段が、上り区間及び下り区間のそれぞれについて、受信アンテナにて受信した受信信号に送信に用いた送信信号を混合することで生成したビート信号を周波数解析し、周波数解析それぞれの結果において極大となる周波数成分を各々周波数ピークとして検出すると、その周波数ピークのそれぞれについて、方位推定手段が、アンテナの各々における受信信号の相関行列を導出し、その相関行列を固有値分解した結果から送受信手段にて受信した到来波の数を求め、その求めた到来波の数分、到来波が到来した方位を表す到来方位及び受信した到来波の電力を表す到来電力を推定し、それらの推定結果を含む方位情報を生成する。
【0015】
さらに、ペアマッチング手段が、少なくとも、上り区間の周波数ピークそれぞれに対する方位情報と、下り区間の周波数ピークそれぞれに対する方位情報とを照合し、予め規定された条件を満たす上り区間の周波数ピークと下り区間の周波数ピークとを1つの組とした周波数ペアを生成すると、物標情報生成手段が、その生成された周波数ペアに基づいて、各周波数ペアに対応し、かつレーダ波を反射した物標までの距離、該物標の相対速度を導出する共に、到来方位それぞれを、各周波数ペアに対応する物標の方位とし、それら物標までの距離、該物標の相対速度、及び該物標の方位を少なくとも含む物標情報を、周波数ペア毎に生成する。
【0016】
ただし、本発明における方位推定手段では、仮想方位導出手段が、複数の到来波のうち、隣接する2つの物標からの到来波に対する到来方位の間の角度範囲が、受信アンテナの特性によって予め決まる角度範囲である分離能以下である場合、該2つの物標からの到来波に対する到来方位の間に存在する方位を表す仮想方位を導出すると共に、該仮想方位からの到来波に対する到来電力を表す仮想電力を導出し、その導出された仮想方位及び仮想電力を、方位情報の1つとする。
【0017】
つまり、本発明のレーダ装置では、複数の到来波に対する各到来方位のうち、隣接する2つの物標からの到来波に対する到来方位の間の角度範囲が分離能以下、即ち、各到来波の到来電力に関する推定結果が不正確となる可能性が高い場合には、より確からしい方位情報として仮想方位及び仮想電力を導出する。
【0018】
このため、本発明のレーダ装置であれば、上り区間と下り区間とにおいて反射波の数が異なり、上り区間と下り区間との間で同一物標からの方位情報が大きく異なるような場合であっても、適切にペアマッチングを実施し、周波数ペアを生成することができる。
【0019】
これにより、本発明のレーダ装置によれば、当該レーダ装置が生成する物標情報の信頼性が低下することを抑制できる。
なお、本発明の仮想方位導出手段が導出する仮想方位及び仮想電力は、隣接する2つの物標からの到来波に対する到来方位の間の角度範囲が分離能以下となる到来波それぞれの到来方位及び到来電力に加えて生成しても良いし、隣接する2つの物標からの到来波に対する到来方位の間の角度範囲が分離能以下となる到来波それぞれの到来方位及び到来電力に替えて生成しても良い。
【0020】
本発明の仮想方位導出手段では、2つの物標からの到来波に対する到来方位の中間点となる位置を、仮想方位として導出しても良い(請求項2)。
このようなレーダ装置によれば、簡易な手法で仮想方位を導出することができる。
【0021】
また、本発明の仮想方位導出手段では、受信波ビームを仮想方位に向けたときの電力を、仮想電力として導出しても良い(請求項3)。
このようなレーダ装置によれば、簡易な手法で仮想電力を導出することができる。
【0022】
さらに、本発明においては、到来方位及び到来電力の推定方法として、Multiple Signal Classification(MUSIC)、またはEstimation of signal Parameters via Rotational Invariance Tecniques(ESPRIT)を用いても良い(請求項4)。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】レーダ装置の概略構成を示す図である。
【図2】信号処理部が実行する物標認識の処理手順を示したフローチャートである。
【図3】方位解析処理の処理手順を示したフローチャートである。
【図4】仮想方位及び仮想電力を推定する手法を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下に本発明の実施形態を図面と共に説明する。
〈走行支援制御システムについて〉
図1は、本発明が適用されたレーダ装置を用いて構成され、自動車に搭載して用いられる走行支援制御システムの概略構成を示すブロック図である。
【0025】
走行支援制御システム1は、レーダ波を送信し、該レーダ波が反射されることで生じた反射波(以下、到来波とも称す)を受信することで、該レーダ波を反射した物標を検出し、該物標に関する情報(以下、物標情報とする)を生成するレーダ装置30と、そのレーダ装置30にて生成された物標情報に基づいて自車両を制御する走行支援電子制御装置(以下、走行支援ECUとする)10とを備えている。
【0026】
なお、本実施形態における物標とは、物体において、レーダ波を反射したポイントを表すものである。通常、1つの物体から1つの物標が検出されるものの、例えば、トラックの後部のように物体の大きさが大きい場合、1つの物体から複数検出されることがある。
【0027】
また、本実施形態における物標情報は、検出した物標までの自車両からの距離と、予め規定された基準軸に対して物標が存在する方位(即ち、角度、以下、物標方位と称す)と、自車両と物標との間の相対速度とを少なくとも含むものである。
【0028】
この走行支援ECU10は、少なくともROM、RAM、CPUを備えた周知のマイクロコンピュータを中心に構成され、少なくともLAN通信バスを介して通信を行うためのバスコントローラを備えている。
【0029】
また、走行支援ECU10には、図示しない警報ブザー、モニター、クルーズコントロールスイッチ、目標車間設定スイッチ等が接続されている他、LAN通信バスを介して、ブレーキ電子制御装置(ブレーキECU)や、エンジン電子制御装置(エンジンECU)、シートベルト電子制御装置(シートベルトECU)等が接続されている。
【0030】
つまり、走行支援ECU10は、レーダ装置30からの物標情報に基づいて、自車両の走行を支援する走行支援制御を実行するように構成されている。本実施形態における走行支援制御として、例えば、先行車両と自車両との車間距離を予め設定された距離に保持するアダプティブクルーズ制御や、自車両と先行車両との車間距離が予め設定された距離以下となると、警告を出力したり、シートベルトを巻き上げたりするプリクラッシュセーフティ制御がある。
〈レーダ装置の構成について〉
次に、レーダ装置30は、FMCW方式のいわゆるミリ波レーダ装置として構成されたものであり、時間に対して周波数が直線的に増加(漸増)する上り区間、及び周波数が直線的に減少(漸減)する下り区間を一変調周期として有するように変調されたミリ波帯の高周波信号を生成する発振器31と、発振器31が生成する高周波信号を増幅する増幅器32と、増幅器32の出力を送信信号Ssとローカル信号Lsとに電力分配する分配器34と、送信信号Ssに応じたレーダ波を放射する送信アンテナ36と、レーダ波を受信するN個(Nは、2以上の自然数)のアンテナ391〜39Nからなる受信アンテナ40とを備えている。なお、受信アンテナ40を構成するアンテナ391〜39Nは、アレイ状に配置されており、アンテナ391〜39Nのそれぞれに、チャンネルCH1〜CHNが割り当てられている。
【0031】
また、レーダ装置30は、受信アンテナ40を構成するアンテナ391〜39Nのいずれかを順次選択し、選択されたアンテナ391〜39Nからの受信信号Srを後段に供給する受信スイッチ41と、受信スイッチ41から供給される受信信号Srを増幅する増幅器42と、増幅器42にて増幅された受信信号Srにローカル信号Lsを混合して、送信信号Ssと受信信号Srとの周波数の差を表すビート信号BTを生成するミキサ43と、ミキサ43が生成したビート信号BTから不要な信号成分を除去するフィルタ44と、フィルタ44の出力をサンプリングしデジタルデータに変換するA/D変換器45と、ビート信号BTのサンプリングデータを用いて、レーダ波を反射した物標を検出すると共に、その物標についての物標情報を生成する物標認識処理を実行する信号処理部46とを備えている。
【0032】
この信号処理部46は、少なくとも、ROM、RAM、CPUを備えた周知のマイクロコンピュータを中心に構成され、さらに、A/D変換器45を介して取り込んだデータに対して、高速フーリエ変換(FFT)処理等を実行するための演算処理装置(例えば、DSP)を備えている。
【0033】
つまり、このように構成されたレーダ装置30では、信号処理部46からの指令に従って発振器31が振動すると、その発振器31で生成され、増幅器32で増幅した高周波信号を、分配器34が電力分配することにより、送信信号Ss及びローカル信号Lsを生成し、このうち送信信号Ssを送信アンテナ36を介してレーダ波として送信する。
【0034】
そして、送信アンテナ36から送出されて物標に反射されたレーダ波(即ち、到来波)は、受信アンテナ40を構成する全てのアンテナ391〜39Nにて受信され、受信スイッチ41によって選択されている受信チャンネルCHi(i=1〜N)の受信信号Srのみが増幅器32で増幅された後、ミキサ43に供給される。すると、ミキサ43では、この受信信号Srに分配器34からのローカル信号Lsを混合することによりビート信号BTを生成する。そして、このビート信号BTは、フィルタ44にて不要な信号成分が除去された後、A/D変換器45にてサンプリングされ、信号処理部46に取り込まれる。
【0035】
なお、受信スイッチ41は、レーダ波の一変調周期の間に、全てのチャンネルCH1からCHNが所定回(例えば、512回)ずつ選択されるよう切り替えられ、また、A/D変換器45は、この切り替えタイミングに同期してサンプリングを実行する。つまり、レーダ波の一変調周期の間に、各チャンネルCH1〜CHN毎かつレーダ波の上り、及び下り区間毎にサンプリングデータが蓄積されることになる。
〈物標認識処理について〉
次に、レーダ装置30にて実行する物標認識処理について説明する。
【0036】
ここで、図2は、物標認識処理の処理手順を示すフローチャートである。
この物標認識処理は、予め規定された規定時間間隔(即ち、測定サイクル)毎に起動されるものであり、起動されると、図2に示すように、まず、発振器31を起動してレーダ波の送信を開始する(S110)。続いて、A/D変換器45を介してビート信号BTのサンプリング値を取得し(S120)、必要なだけサンプリング値を取得すると、発振器31を停止することにより、レーダ波の送信を停止する(S130)。
【0037】
次に、S130にて取得したサンプリング値について周波数解析(本実施形態では、FFT処理)を実行し、受信チャンネルCH1〜CHN毎かつ上り/下り区間毎にビート信号BTのパワースペクトルを求める(S140)。このパワースペクトルは、ビート信号BTに含まれる周波数と、各周波数における強度とを表したものである。
【0038】
そして、上り区間について、パワースペクトル上に存在する各周波数ピークfbu1mを検出すると共に、下り区間について、パワースペクトル上に存在する各周波数ピークfbd1mを検出する(S150)。なお、検出された周波数ピークfbu,fbdの各々は、到来波の発生源となった物標の候補(以下、物標候補と称す)が存在する可能性があることを意味する。
【0039】
具体的に本実施形態のS150では、受信チャンネルCH毎に求められたパワースペクトルを、全ての受信チャンネルで相加平均した平均スペクトルを導出する。そして、その平均スペクトルの中で、強度が予め設定された設定閾値を超える周波数のピーク点に対応する(即ち、平均スペクトルにおける強度が極大となる)周波数を周波数ピークfbu,fbdとして検出する。
【0040】
続いて、周波数ピークfbu,fbdの各々について、当該周波数ピークfbu,fbdに対応する物標候補の方位(即ち、基準軸に対する角度)を表す到来方位、及び当該物標候補からの到来波を受信した受信電力を表す到来電力を推定する方位解析を実行する(S160)。
【0041】
そのS160にて推定した到来方位及び到来電力に基づいて、上り区間のビート信号BTから求められた周波数ピークfbu1mと、下り区間のビート信号BTから求められた周波数ピークfbd1mとを、同一物標にてレーダ波を反射したとみなせるもの同士でマッチングして登録するペアマッチングを実行する(S170)。以下、マッチングして登録された周波数ピークfbu,fbdの組を、周波数ペアと称す。
【0042】
具体的に本実施形態のS170では、上り区間の周波数ピークfbuと下り区間の周波数ピークfbdとの全ての組合せについて、到来電力の差、及び到来方位の角度差が予め規定された許容範囲内であるか否かを判定する。その判定の結果、到来電力の差及び到来方位の角度差が共に、許容範囲内であれば、対応する周波数ピークの組を周波数ペアとする。
【0043】
さらに、登録された周波数ペアに対して、FMCW方式のレーダ装置における周知の手法により、レーダ装置30から物標候補までの距離、物標候補と自車両との相対速度を導出する(S180)。本実施形態のS180では、このとき、物標候補と自車両との相対速度、及び自車両の車速に基づいて、各物標候補の速度を導出すると共に、その物標候補が、停止物体であるか移動物体であるかを判定する。それらの導出した距離及び相対速度(速度)に物標候補が存在する方位を加えた情報を、各周波数ペアと対応付けた上で、物標候補として登録する。
【0044】
続いて、今回の測定サイクルのS180で登録された周波数ペア(以下、今サイクルペアと称す)の情報(即ち、距離,速度,方位など)と、前回の測定サイクルで登録された周波数ペア(以下、前サイクルペアと称す)の情報とに基づき、同一物標に対応する周波数ペアを検出する履歴追尾処理を実行する(S190)。
【0045】
具体的に本実施形態の履歴追尾処理(S190)では、前サイクルペアと今サイクルペアとの全ての組み合わせ(以下、組合せペアと称す)を設定し、その組合せペアの中からいずれか1つを取り出す。そして、取り出した組合せペアにおける前サイクルペアの情報に基づいて予測され、その前サイクルペアに対応する今サイクルペアが存在する位置(以下、予測位置とする)、及び今サイクルペアの速度(以下、予測速度とする)を導出する。この予測位置及び予測速度の導出は、周知の処理であるため、ここでの詳しい説明は省略するが、例えば、カルマンフィルタなどを用いて、時系列に沿った周波数ペア(即ち、物標候補)の挙動を予測し、その予測した結果を、予測位置及び予測速度とすることが考えられる。
【0046】
そして、履歴追尾処理では、導出した予測位置及び予測速度と、今サイクルペアから導出された位置及び速度とに基づいて、両者の位置差分、及び速度差分を導出する。すなわち、位置差分とは、今サイクルペアから導出された位置(即ち、今サイクルペアに対応する物標候補の位置)と予測位置との差分であり、速度差分とは、今サイクルペアから導出された速度(即ち、今サイクルペアに対応する物標候補の速度)と予測速度との差分である。
【0047】
続いて、位置差分が予め規定された基準距離より小さく、かつ速度差分が予め規定された上限速度差よりも小さい場合にのみ、当該組合せペアを構成する周波数ペアは同一物標に対応するもの(即ち、履歴追尾があるもの)として、今サイクルペアの接続カウンタのカウント値を、前サイクルペアの接続カウンタのカウント値に1を加算した値へと更新する。
【0048】
つまり、本実施形態の履歴追尾処理では、前サイクルペアとの履歴追尾がある今サイクルペアは、対応する前サイクルペアの情報(接続カウンタのカウント値)が引き継がれ、前サイクルペアとの履歴追尾が無い今サイクルペアについては、接続カウンタのカウント値が「0」に維持される。
【0049】
さらに、予め規定された認識閾値以上の履歴追尾が確認された周波数ペアを物標として認識し登録する(S200)。具体的に本実施形態のS200では、接続カウンタのカウント値が認識閾値以上であることを、認識閾値以上の履歴追尾が確認されたものとする。
【0050】
次に、レーダ装置の物標認識処理において周知の外挿補間を実行する(S210)。
具体的に本実施形態の外挿補間は、前サイクルペアの中で、今サイクルペアと履歴追尾がないもののうち、履歴追尾が途絶えてから予め規定された外挿期間内のものについては、周波数ペアの外挿を許可することにより、周波数ペアの登録を継続する。そして、外挿期間が経過した後に、履歴追尾が再開された周波数ペアが検出されなければ、当該周波数ペアの登録を削除する。この外挿補間は、周知の処理であるため、これ以上の詳しい説明は省略する。
【0051】
そして、S200にて登録された物標についての物標情報を、走行支援ECU10に出力する(S220)。なお、S220で出力する物標情報に含まれる物標方位は、S200にて登録された物標に対応する物標候補の到来方位である。
【0052】
その後、今サイクルの物標認識処理を終了し、次の起動タイミングまで待機する。
〈方位解析処理について〉
次に、物標認識処理のS160にて実行する方位解析処理について説明する。
【0053】
ここで、図3は、方位解析処理の処理手順を示すフローチャートである。
この方位解析処理は、図3に示すように、物標認識処理のS160で起動されると、まず、上り区間のパワースペクトルから抽出された周波数ピークfbu、及び下り区間のパワースペクトルから抽出された周波数ピークfbdのうち、本方位解析処理での処理が未処理であるものを1つ選択する(S310)。
【0054】
続いて、下記(1)式に示すように、その選択された周波数の信号成分(FFT処理結果データ)を、全チャンネルCH1〜CHNのパワースペクトルから抽出して配列してなる受信ベクトルXi(k)を生成する(S320)。本実施形態において、受信ベクトルXi(k)を生成する際には、データ数を増加するために複数のヌル(即ち、「0」値)を仮想データとして追加しても良い。
【0055】
なお、(1)式において、符号“T”は、ベクトル転置を意味する。
【0056】
【数1】

その生成した受信ベクトルXi(k)に基づき、(2)式に従って相関行列Rxx(k)を生成する(S330)。なお、(2)式において、符号“H”は、複素転置行列を意味する。
【0057】
【数2】

そして、S330にて生成した相関行列Rxxの固有値λ1〜λN(但し、λ1≧λ2≧…≧λN)を求めると共に、固有値λ1〜λNに対応する固有ベクトルE1〜ENを算出する(S340)。
【0058】
その固有値λ1〜λNの中で、予め規定された閾値Th以下となる固有値λの数を、到来波数L(ただし、L<N)として推定する(S350)。この到来波数Lを推定する手法は、周知の手法であり、数々の手法が提案されているので、ここでの詳しい説明は省略するが、例えば、閾値Thとして、熱雑音電力に相当する値を規定することが一例として考えられる。
【0059】
そして、閾値Th以下となる(N−L)個の固有値に対応した固有ベクトルからなる雑音固有ベクトルENOを、下記(3)式で定義し、自車の進行方向を基準とした方位θに対する受信アンテナ40の複素応答をa(θ)で表すものとして、(4)式に示す評価関数PMU(θ)を求める。
【0060】
【数3】

この評価関数PMU(θ)から得られる角度スペクトル(MUSICスペクトル)は、到来波が到来した方向と一致する方位θにおいて発散して鋭いピークが立つように設定されている。このため、到来波の到来方位θ1〜θL、即ち、物標候補の方位は、MUSICスペクトルのピークを検出することにより求められる(S360)。
【0061】
なお、本実施形態のS360では、到来方位θにおけるMUSICスペクトルの値が、到来波の受信電力を表す到来電力として求められる。
続いて、到来波数Lが2以上であるか否かを判定し(S370)、判定の結果、到来波数Lが2以上、即ち、到来波数Lが複数であれば(S370:YES)、S360で求めた到来波の到来方位θ1〜θLのうち、隣接する2つの物標からの到来波における到来方位θの角度差を、絶対値で導出する(S380)。以下、このS380で導出される、隣接する2つの物標からの到来波における到来方位θの角度差の絶対値を角度差絶対値abと称す。
【0062】
そして、S380で導出した角度差絶対値abが、予め規定された閾値α以下であるか否かを判定する(S390)。なお、本実施形態における閾値αは、隣接する2つの到来波の到来方位θを確実に分離可能な角度範囲を表す方位分離能として規定されている。この方位分離能は、受信アンテナ40を構成するアンテナ39の特性や、該アンテナ39の配置間隔などに基づいて、周知の考え方によって決まる。
【0063】
そして、S390での判定の結果、角度差絶対値abが閾値α以下であれば(S390:YES)、当該角度差絶対値abに対応する2つの到来方位θ(図4中、到来方位θA,θB)の中間地点を方位(以下、仮想方位と称す)とし、その仮想方位からの到来波を受信した場合の電力(以下、仮想電力とする)を推定する(S400)。具体的に本実施形態のS400では、受信波ビームを仮想方位に向けたときの電力を、仮想電力として導出する(図4参照)。
【0064】
その後、S410へと移行する。
一方、S390での判定の結果、角度差絶対値abが閾値αよりも大きければ(S390:NO)、仮想方位及び仮想電力を推定する必要がないため、S400を実行することなく、S410へと移行する。
【0065】
そのS410では、隣接する2つの物標からの到来波全てについて、角度差絶対値abを導出して、S380〜S410のステップを実行したか否かを判定する。その判定の結果、隣接する2つの物標からの到来波全てについて、角度差絶対値abを導出して、S380〜S410のステップを実行していなければ(S410:NO)、S360へと戻り、新たな角度差絶対値abを導出し、S380〜S410のステップを実行する。
【0066】
なお、S410での判定の結果、隣接する2つの物標からの到来波全てについて、角度差絶対値abを導出して、S380〜S410のステップを実行していれば(S410:YES)、方位情報を登録する(S420)。
【0067】
具体的に本実施形態のS420では、到来波の数Lが「1」であれば、その到来波の到来方位θ及び到来電力を方位情報として登録する。
また、到来波の数Lが「2」以上(即ち、複数)である場合、その複数の到来波の中に、角度差絶対値abが閾値α以下となる到来波の組合せがなければ、複数の到来波それぞれについての到来方位θ及び到来電力を方位情報として登録する。一方、複数の到来波の中に、角度差絶対値abが閾値α以下となる到来波の組合せがあれば、複数の到来波それぞれについて、到来方位θ及び到来電力を方位情報として登録することに加えて、S400にて導出した仮想方位及び仮想電力を方位情報の1つとして、新たな周波数ピークと対応付けて登録する。
【0068】
続いて、全ての周波数ピークfbu,fbdに対して、本方位解析処理での処理を実行したか否かを判定する(S430)。このS430での判定の結果、全ての周波数ピークfbu,fbdに対して、本方位解析処理での処理を実行していなければ(S430:NO)、S310へと戻り、本方位解析処理を未実行の周波数ピークfbu,fbdの中から、1つの周波数ピークを選択して、S320〜S430のステップを実行する。
【0069】
一方、S430での判定の結果、全ての周波数ピークfbu,fbdに対して、本方位解析処理での処理を実行していれば(S430:YES)、本方位解析処理を終了し、その後、物標認識処理のS170へと戻る。
【0070】
以上説明したように、本実施形態の方位解析処理では、角度差絶対値abが閾値α以下となる到来波の組合せがあれば、その組合せを構成する到来波についての到来方位θA,θBの中間地点を仮想方位とし、その仮想方位に受信波ビームを向けたときの電力を、仮想電力として導出する。その仮想方位及び仮想電力を方位情報の1つとして、到来波の各々についての到来方位θ及び到来電力(即ち、方位情報)に加えて登録する。
【0071】
つまり、本実施形態の方位解析処理では、複数の到来波に対する各到来方位のうち、隣接する2つの物標からの到来波に対する到来方位の間の角度範囲が分離能以下、即ち、各到来波の到来電力に関する推定結果が不正確となる場合には、より確からしい方位情報として仮想方位及び仮想電力を導出する。
【0072】
したがって、物標認識処理にてペアマッチングを実行する際に、仮想方位及び仮想電力が利用される。
[実施形態の効果]
この結果、本実施形態の物標認識処理によれば、同一物標からの方位情報が上り区間と下り区間との間で大きく異なるような場合であっても、上り区間から抽出した周波数ピークfbuと下り区間から抽出した周波数ピークfbdとを適切にペアマッチングを実施し、周波数ペアを生成することができる。
【0073】
これにより、レーダ装置30によれば、当該レーダ装置30が生成する物標情報の信頼性が低下することを抑制できる。
[その他の実施形態]
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、様々な態様にて実施することが可能である。
【0074】
例えば、上記実施形態では、複数の到来波の中に、角度差絶対値abが閾値α以下となる到来波の組合せがある場合、方位解析処理のS420において、複数の到来波それぞれについて、到来方位θ及び到来電力を方位情報として登録することに加えて、S400にて導出した仮想方位及び仮想電力を方位情報の1つとして、新たな周波数ピークと対応付けて登録していたが、このような場合にS420にて登録する情報は、S400にて導出した仮想方位及び仮想電力のみを方位情報として、新たな周波数ピークと対応付けて登録しても良い。
【0075】
また、上記実施形態では、方位解析として、MUSIC法による方法を説明したが、本発明における方位解析の手法は、これに限るものではなく、例えば、ESPRIT法でも良い。
【0076】
つまり、相関行列Rxxを生成して固有値分解した結果に基づいて到来波数Lを推定し、その到来波数L分、到来方位θ及び到来電力を推定する手法であれば、方位解析の手法は、どのようなものでも良い。
【0077】
また、上記実施形態のレーダ装置30では、受信アンテナ40から信号処理部46までの構成(以下、受信系と称す)として、N個のアンテナ39と、一つの受信スイッチ41、増幅器42、ミキサ43、フィルタ44、及びA/D変換器45とを備えていたが、本発明における受信系は、受信スイッチ41を備えていなくとも良い。この場合、受信系は、受信アンテナ40を構成するアンテナ391〜39Nそれぞれについて、個々のアンテナ391〜39Nから供給される受信信号Srを増幅するN個の増幅器421〜42Nと、増幅器421〜42Nそれぞれにて増幅された受信信号Srにローカル信号Lsを混合してビート信号BTを生成するN個のミキサ431〜43Nと、ミキサ431〜43Nそれぞれが生成したビート信号BTから不要な信号成分を除去するN個のフィルタ441〜44Nと、フィルタ441〜44Nそれぞれの出力をサンプリングしてデジタルデータに変換するN個のA/D変換器451〜45Nとを備えていても良い。
[実施形態と特許請求の範囲との対応関係]
最後に、上記実施形態の記載と、特許請求の範囲の記載との関係を説明する。
【0078】
上記実施形態における発振器31,増幅器32,分配器34,送信アンテナ36,受信アンテナ40が、特許請求の範囲における送受信手段に相当し、上記実施形態における物標認識処理のS140,S150が、特許請求の範囲におけるピーク検出手段に相当する。上記実施形態における物標認識処理のS160が、特許請求の範囲における方位推定手段に相当し、物標認識処理のS170が、特許請求の範囲におけるペアマッチング手段に相当する。さらに、物標認識処理のS180が、特許請求の範囲における物標情報生成手段に相当し、方位解析処理のS380〜S400が、特許請求の範囲における仮想方位導出手段に相当する。
【符号の説明】
【0079】
1…走行支援制御システム 10…走行支援ECU 30…レーダ装置 31…発振器 32…増幅器 34…分配器 36…送信アンテナ 39…アンテナ 40…受信アンテナ 41…受信スイッチ 42…増幅器 43…ミキサ 44…フィルタ 45…A/D変換器 46…信号処理部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
時間軸に沿って周波数が漸増する上り区間、及び時間軸に沿って周波数が漸減する下り区間を1周期として変調したレーダ波を繰り返し送信し、反射されたレーダ波である到来波を、複数のアンテナからなる受信アンテナにて受信する送受信手段と、
前記送受信手段がレーダ波を送受信する毎に、前記上り区間及び前記下り区間のそれぞれについて、前記受信アンテナにて受信した受信信号に送信に用いた送信信号を混合することで生成したビート信号を周波数解析し、周波数解析それぞれの結果において極大となる周波数成分を各々周波数ピークとして検出するピーク検出手段と、
前記ピーク検出手段にて検出した前記上り区間における周波数ピーク及び前記下り区間における周波数ピークのそれぞれについて、前記アンテナの各々における受信信号の相関行列を導出し、その相関行列を固有値分解した結果から前記送受信手段にて受信した前記到来波の数を求め、その求めた到来波の数分、前記到来波が到来した方位を表す到来方位及び受信した到来波の電力を表す到来電力を推定し、それらの推定結果を含む方位情報を生成する方位推定手段と、
少なくとも、前記方位推定手段で生成した上り区間の周波数ピークそれぞれに対する方位情報と、下り区間の周波数ピークそれぞれに対する方位情報とを照合し、予め規定された条件を満たす前記上り区間の周波数ピークと前記下り区間の周波数ピークとを1つの組とした周波数ペアを生成するペアマッチング手段と、
前記ペアマッチング手段にて生成された周波数ペアに基づいて、各周波数ペアに対応し、かつ前記レーダ波を反射した物標までの距離、該物標の相対速度を導出すると共に、前記方位推定手段で推定した到来方位それぞれを、各周波数ペアに対応する物標の方位とし、それら前記物標までの距離、該物標の相対速度、及び該物標の方位を少なくとも含む物標情報を、前記周波数ペア毎に生成する物標情報生成手段と
を備え、
前記方位推定手段は、
複数の到来波のうち、隣接する2つの到来波に対する前記到来方位の間の角度範囲が、前記受信アンテナの特性によって予め決まる角度範囲である分離能以下である場合、該2つの到来波に対する到来方位の間に存在する方位を表す仮想方位を導出すると共に、該仮想方位からの到来波に対する到来電力を表す仮想電力を導出する仮想方位導出手段を備え、
前記仮想方位導出手段で導出された仮想方位及び仮想電力を、前記方位情報の1つとすることを特徴とするレーダ装置。
【請求項2】
前記仮想方位導出手段は、
前記2つの物標からの到来波に対する到来方位の中間点となる位置を、前記仮想方位として導出することを特徴とする請求項1に記載のレーダ装置。
【請求項3】
前記仮想方位導出手段は、
受信波ビームを前記仮想方位に向けたときの電力を、前記仮想電力として導出することを特徴とする請求項1または請求項2に記載のレーダ装置。
【請求項4】
前記方位推定手段は、
MUSIC(Multiple Signal Classification)、またはESPRIT(Estimation of signal Parameters via Rotational Invariance Tecniques)により、前記到来方位及び前記到来電力を推定することを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載のレーダ装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2012−225817(P2012−225817A)
【公開日】平成24年11月15日(2012.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−94924(P2011−94924)
【出願日】平成23年4月21日(2011.4.21)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】