説明

ロジック制御ワイヤハーネスを有する電子制御式ロッキングディファレンシャル

【課題】ロジック制御ワイヤハーネスを有する電子制御式ロッキングディファレンシャルを提供する。
【解決手段】電子制御式ロッキングディファレンシャル10は、電磁コイル50と、回路56を有し、ディファレンシャルを論理的に制御操作するワイヤハーネスとを含む。回路56は、第1電源に電気的に接続され、かつディファレンシャルのラッチング力を与えるラッチングスイッチ62を有する。二極双投制御リレー72は、ラッチングスイッチ62に電気的に接続され、第1、第2スイッチ74,76およびコイル78を含み、第2スイッチ76はラッチングスイッチ62を切替えるように構成される。回路56は、ハーネスへの電力が切断された時に不能となり、ハーネスへの電力が供給されると「スタンバイ」モードになる。ラッチングスイッチ62が作動されると、電流が回路の始動点から流れ、回路を通過してリレー72を駆動させ、第1スイッチ74を閉じると、ディファレンシャルが励起し、第2スイッチ76が閉じると、ラッチングスイッチ62に電流が流れて、ディファレンシャルが作動される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般的に電子制御式ロッキングディファレンシャルに関するものであり、特に、ディファレンシャルにおけるロジック制御操作に適応したワイヤハーネスを有する電子制御式ロッキングディファレンシャルに関する。
【背景技術】
【0002】
自動車の運転において、関連技術における電子制御式ロッキングディファレンシャルは、手動で作動される場合があり、望みに応じてディファレンシャルのロックまたはアンロックを許容する、特に4輪駆動(4WD)車向けに設計されている。ドライバーは、車両のダッシュボードや制御盤に取付けられるスイッチやボタンを手動で作動させることで、前輪および/または後輪をロックすることができる。
このタイプのトルク制御装置は、アフターマーケットで公知である。更に具体的に説明をすると、ディファレンシャルを含むアフターマーケットシステムは、ワイヤハーネス、ギヤサービスキット、ロッキング機構キット、ステータ/アーマチュアキットおよびユニバーサルワイヤリングキットを用いて取付けることができる。このアフターマーケット用のディファレンシャルは、ある一定の条件下で作動されるべきもので、特に、車両が4WDの機能性を必要とするとき、または比較的ゆっくりとしたスピード(約10mphを超えない範囲)で走行するときに該当する。
【0003】
しかしながら、4WD車のドライバーが一旦手動で電子制御式ディファレンシャルを作動させると、通常ドライバーが手動で、ボタンを押したりまたはスイッチを切ることで作動を停止させない限り、ディファレンシャルの有効性は維持される。実際には、ディファレンシャルは不必要に動力が維持され、この状態は、ドライバーがスイッチを切るまでのかなり長い時間に及ぶこともある。更に、仮に車両の電源を切るときにディファレンシャルが駆動されたままだとすると、車両の電源がオンにされた時にディファレンシャルが自動的に再稼動される。この再稼動は、実際にはディファレンシャルの操作を望まない場合にも起こる。また、不注意で衝突し、ハイウェイの速度、例えば70mphの走行時に危険にもスイッチを作動させることもある。いずれにしても、不要なディファレンシャルの作動は、4WD車の走行中にその車軸を不要にロックする原因となる。これは、ディファレンシャル、その関連パーツ、車軸およびそのタイヤの磨耗を早める原因にもなる。また、必要がないにも関わらず、長時間かつ頻繁にディファレンシャルを稼動させると、4WD車の電源寿命が短くなる。
【0004】
従って、上記関連技術を勘案すると、4WD車にコントロール、パワー、トラクションおよびオフロードパフォーマンスを提供することができる電子作動式ロッキングディファレンシャルのニーズがある。また、上記関連技術において、4WDの機能性が必要でないとき、または比較的にゆっくりと走行していないときに、作動を停止するディファレンシャルのニーズもある。また、瞬時「オン/オフ」ラッチングや電力低下を制御するディファレンシャルのニーズもある。更に、関連パーツ、車軸およびそのタイヤの早期磨耗の原因を除去し、かつ、乗客に対してより安全なディファレンシャルを提供するニーズがある。そして、車両の電源寿命の長期化を助けるディファレンシャルのニーズがあり、とりわけ、上記した特徴が組み込まれたアフターマーケットの電子作動式ロッキングディファレンシャルシステムのニーズがある。
【発明の概要】
【0005】
本発明は、電子制御式ロッキングディファレンシャルにおける上記関連技術の欠点を克服しており、当該ディファレンシャルは、電磁コイル、ディファレンシャルのロジカル制御操作に適応したワイヤハーネスおよび回路を有している。
回路は、第1電源に電気的に接続したラッチングスイッチを有し、ディファレンシャルのラッチング力を与えている。二極双投制御リレーは、ラッチングスイッチに電気的に接続されており、第1スイッチ、第2スイッチおよびコイルを含んでいる。第2スイッチは、ラッチングスイッチの切替(jump)に対応している。ハーネスへの電力が切断されると、回路は不能となる一方、ハーネスへの電力が供給されると、「スタンバイ」モードとなる。ラッチングスイッチが作動すると、電流は回路の始動点から流れ、回路内を通過し、リレーを駆動する。そして、第1スイッチが閉じると、ディファレンシャルに電力が供給される。第2スイッチが閉じると、ラッチングスイッチが切り替わり、ディファレンシャルが駆動される。
【0006】
本発明の電子制御式ロッキングディファレンシャルは、4WD車に対して、コントロール、パワー、トラクション、オフロードパフォーマンスを提供する。また、ディファレンシャルの瞬時「オン/オフ」ラッチングおよび電力低下を制御する。そして、ディファレンシャルの作動は、車両の4WD機能性を望まない時または必要としない時、又は4WD車が比較的ゆっくりしたスピードで走行しないときは、阻止される。更に、ディファレンシャルの操作はロジカルに制御されており、4WD車がファーストギヤまたはリバースから解除される時は、ディファレンシャルは自動的に外されるとともに、アンロックされる。また、4WD車のディファレンシャル、関連パーツ、車軸およびそのタイヤの早期磨耗の発生は予防される。そして、4WD車への電力が切断されると、ディファレンシャルはリセットされるため、車両の電源寿命の長期化に貢献することとなる。更に、ディファレンシャルのハーネスは、アフターマーケットの電子駆動式ロッキングディファレンシャルシステムの一部として構成することができる。ディファレンシャルのハーネスは、OEMアプリケーションでまかなってもよい。
【0007】
本発明のその他の目的、特徴および利点は、添付図面を基に下記説明を参照することで容易に理解することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】作動されたロックモードのディファレンシャルを示す、本発明の電子制御式ロッキングディファレンシャルの軸断面図である。
【図2】非作動、非ロックモードのディファレンシャルを示す、図1で説明されたディファレンシャルの拡大分解軸断面図である。
【図3】図1および図2で説明された電子制御式ロッキングディファレンシャルを論理的に制御する、本発明に係るワイヤハーネスの回路図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
図面において、同じ参照番号は、同じ構成部品を示している。本発明のワイヤハーネスをロジカルに制御する電子制御式ロッキングディファレンシャルの1つの実施形態は、概略、参照番号10で示されている。
ディファレンシャル10は、特に4WD車への使用に適しているが、その他一般車両へ応用できる点は当業者に広く知られている。また、本発明のワイヤハーネスは、適当な電子制御式ロッキングディファレンシャルに使用できる点も当業者がよく知るところである。
下記の説明および図1および図2に示される構成は、単に具体例であり、ワイヤハーネスは、構造的および機能的に異なる電子制御式ロッキングディファレンシャルにも応用できる。また、ワイヤハーネスは、OEMやアフターマーケットによってまかなうことができる点も周知である。
後者のケースにおいては、ワイヤハーネスは、ギヤサービスキット、ロッキングメカニズムキット、ステータ/アーマチュアキットおよびユニバーサルワイヤリングキット(図示および説明を省く)を含むシステムの一部とすることも可能である。ワイヤハーネス、種々のキットおよび最小限の道具のみで、ディファレンシャルの車両(図示せず)への取付けが可能である点は、当業者において周知である。
【0010】
図1および図2に図示される通り、ディファレンシャル10は、概略、参照番号12で表示されるギヤケースおよび、概略、参照番号14で表示されるエンドキャップを有している。エンドキャップ14は、ギヤケース12に、例えば、複数のボルト(図示せず)等の適当な締結具で固定することができる。
概略、参照番号16で表示されるギヤ室は、ギヤケース12およびエンドキャップ14の両者により定められる。ディファレンシャル10へのトルク入力は、一般的には入力リングギヤ(図示せず)で行われ、この入力リングギヤは、フランジ18に取付け可能に構成されている。
ギヤセットは、ギヤ室16内に支持されており、少なくとも1組の入力ピニオンギヤ20(1組だけ図示される)を有する。ピニオンギヤ20は、ピニオン軸22に回転可能に取付けられており、ピニオン軸22は、適当な手段によりギヤケース12に対して固定されている。
ピニオンギヤ20は、ギヤセットの入力ギヤであり、概略、参照番号24、26で表示されるそれぞれ対の左右サイドギヤにかみ合い係合している。サイドギヤ24、26は、それぞれ対の内部ストレートスプライン28、30を形成しており、これら内部ストレートスプライン28、30は、それぞれ対の左右車軸(図示せず)のかみ合い外歯スプラインにスプライン係合されている。ギヤケース12は、環状ハブ部32、34を形成しており、これら環状ハブ部32、34には、それぞれ対のベアリングセット(図示せず)を取付けることができる。ベアリングセットは、アウターハウジングやキャリヤ(図示せず)に対する回転ディファレンシャル10の回転支持体を与えるために使用することができる。
【0011】
回転防止機構は、概略、参照番号36で表示され、一般的に環状カラー部材38を有しており、この環状カラー部材38は、完全にギヤケース12内に配置されるとともに、サイドギヤ24(第1出力ギヤ)に対して作動関係を有するものである。アクチュエータは、概略、参照番号40で表示され、ギヤケース12の外に配置されることが多い。具体的には、アクチュエータ40は、サイドギヤ26(第2出力ギヤ)に隣接したギヤケース12の終端およびその回りに配置され、概略、参照番号42で表示される一枚のランププレートを有する。ランププレート42は、複数のランプ面44を形成する。ギヤケース12は、複数の円筒孔46を定めており、それぞれの円筒孔46には細長く、通常円筒状の作動部48が、摺動可能に配置されている。作動部48のそれぞれに対して、一つのランプ面44が設けられている。ディファレンシャル10のロッキング機構は、カラー部材38および作動部材48で構成されている。アクチュエータ40は、概略、参照番号50で表示されている電磁コイルを有しており、この電磁コイル50は、ランププレート42上に必要な制動トルクを働かせ、作動部材48のランプアップ(ramp-up)を促進させるものである。カラー部材38は、波形ばね52により非作動の「アンロック」モードに付勢されている。電磁コイル50は、1組の導線54により電力が供給される。
【0012】
ディファレンシャル10が使用される通常の前進操作の間は、左右車軸間、またはサイドギヤ24、26間に差動は起こらない。従って、ピニオンギヤ20は、ピニオン軸22に対して回転することはない。その結果、ギヤケース12、ピニオンギヤ20およびサイドギヤ24、26の全体が、一体のユニットとして回転軸Aを中心に回転する。
【0013】
ディファレンシャル10は、手動で制御することも可能である。この際、ドライバーは手動で(「アンロック」モードではなく)「ロック」モードを選択し、ディファレンシャル10を作動させる。例えば、車両停車中に、ドライバーは、単に手動でスイッチやボタン(図示せず)を作動させることができる。このときのスイッチやボタンは、例えば、車両のダッシュボードや制御盤(図示せず)に取付けられたシンプルモーメンタリ (simple momentary)式の「オンオフ」トグル、ロッカスイッチや押しボタンとなる。このようにして、電気回路(以下に記載)はオンとなり、トグルスイッチや押圧ボタン内に、またはその近くに位置する回路やランプ(図示されず)に電流を流すことで、ドライバーにディファレンシャルの作動を表示する。電流が回路内に流れ、最終的には、ディファレンシャル10の電磁回路50へ到達する。そして、ディファレンシャル10は、「ロック」モード(すなわち、ファーストギアまたはリバース)で作動される。これにより、第1出力ギヤ24は、ギヤケース12に対してロックされ、第1出力ギヤ24およびギヤケース12間のこれ以上の差動を防ぐ。図1は、作動された「ロック」モード状態のディファレンシャル10を表示し、図2は、非作動の「アンロック」モード状態のディファレンシャル10を示す。
【0014】
図3は、ディファレンシャル10のためのロジック制御式ワイヤハーネスの、概略、参照番号56で表示される回路を図示している。具体的には、回路56は、ディファレンシャル10の電磁コイル50、ハーネスの1組のバットジョイントコネクタ60にプラグインされたピグテールまたは2ピンコネクタ58を図示している(ピグテール58は、電磁コイル50の一部とすることもできる)。これにより、ディファレンシャル10は、電気的にハーネスに接続されている。トグルスイッチまたはラッチングスイッチは、概略、参照番号62で表示され、常開接点の「オン」スイッチ64と常閉接点の「オフ」スイッチ66を有している。
トグルスイッチ62は、ラッチング「オン/オフ」パワーおよび「開/閉」コンビネーションを与えるとともに、概略、参照番号68で表示されるランプに電気的に接続されている。トグルスイッチ62は、ランプ68を点灯させることで、ディファレンシャル10が作動されることをドライバーに表示する。一方、ランプ68は、ワイヤハーネスが取付けられ、かつ、回路56が接地されたシャーシ70に電気的に接続されている。
【0015】
「オン」「オフ」スイッチ64、66は、二極双投制御リレーに電気的に接続されており、このリレーは、概略、参照番号72で表示され、第1スイッチ74、第2スイッチ76およびコイル78を含んでいる。図3において、互いに関連して、第1スイッチは、トップスイッチ74として示され、第2スイッチは、ボトムスイッチ76として示される。具体的には、トップスイッチ74は、1組の高電流用接点を有し、また、ボトムスイッチ76は、1組の低電流用接点を有している。更に、コイル78は、電流が変化する時に、逆起電力を回路56に導く。一つの具体例としては、リレー72は、“TycoVF28シリーズ”リレーとなる。ボトムスイッチ76は、「オン」スイッチ64を切替(jump)るように構成されている。
【0016】
電源、例えば、12ボルト電源80は、ヒューズ、例えば、10アンペアのヒューズ82に電気的に接続されるとともに、リレー72にも電気的に接続されている。この組み合わせにより最大12ボルト/10アンペア許容用のスイッチ動作を与える。電源80は、「オン」スイッチ64にも電気的に接続されている。その他の電源、例えば、12ボルトの切換イグニションまたはキースイッチ84は、ハイサイドフォールト(high-side-fault)ドロップアウトを与えるように構成されており、電気的に第1ギヤスイッチ86に接続されるとともに、「オン」「オフ」スイッチ64、66にも電気的に接続されている。第1ギヤスイッチ86は、マイクロスイッチであり、常時開の状態である。第1ギヤスイッチ86は、車両がファーストギヤの状態の時に、シフトレバーに対して機械的に連結することにより閉じられる。
【0017】
リバーススイッチ88は、電気的に接続されており、これにより、電源80や切換イグニション84等の既存の12ボルト電源から電流が供給される仕組みとなっている。更に、リバーススイッチ88は、車両がリバースの状態の時に、シフトレバーに対して機械的に連結されることにより、閉じられる。リバーススイッチ88は、概略、参照番号90で表示される、車両の「リバース」ライトにも電気的に接続されている。「リバース」ライトは、1組のランプ92、94を含み、点灯時に、車両がリバースの状態にあることをドライバーに表示する。また、ランプ92、94は、電気的にシャーシ70(アース)に接続されている。リバーススイッチ88は、「オン」「オフ」スイッチ64、66に電流を導くように構成されたダイオード96にも電気的に接続されている。ダイオード96の1つの具体例としては“IN5402”ダイオードを挙げることができる。更に、インラインダイオード98は、バットジョイントコネクタ60の近くに配置されており、リレー72に電流を供給するとともに、逆バイアスのスパイク電圧を抑制する構造を有している。
【0018】
リレー72は、電源80、第1ギヤスイッチ86、リバーススイッチ88および「オン」「オフ」スイッチ64、66からのいずれかの信号により駆動され、電流が、シャーシ70(アース)、ディファレンシャル10の電磁コイル50、またはインラインダイオード98に分岐することで制御される。更に、ファーストギヤからリバースへギヤチェンジする際に、回路56が再起動する。また、車両への電力が遮断されると、回路56は停止する。
【0019】
回路56が、ディファレンシャル10、電源80および切換イグニション84のそれぞれに適当な手段により電気的に接続されることは、当業者に広く知られている。また、第1、第2スイッチ74、76は、相関関係を有する点も当業者に広く知られるところである。リレー72は、適当な形式のリレーであってもよい点も周知である。ダイオード96、98のそれぞれは、適当な形式のダイオードであればよい点も周知である。2ピンコネクタ58およびインラインダイオード98は、在庫品であってもよい点はよく知られている。第1ギヤスイッチ86およびリバーススイッチ88は、例えば、コンピュータコマンド等の適当な方法によって、車両がファーストギヤおよびリバースの際に、閉じされる点もよく知られるところである。回路56を流れる電流径路は、適当な点を始動点とすることができることも周知である。
【0020】
操作において、切換イグニション84からの電力が切断されると、回路56の全機能が不能となり、その結果、回路56内に電流が供給されなくなる。しかしながら、切換イグニション84からの電流が供給されると、回路は「スタンバイ」モードの状態になる。このモードにおいて、12ボルトの直流が、ディファレンシャル10を起動するために、「オン」スイッチ64で待機状態となる。回路56内には、まだ電流の流れが生じない。具体的には、図3に示す通り、この12ボルトの電圧は、「オン」スイッチ64のすぐ左に位置している。
【0021】
ドライバーがトグルスイッチ62を起動すると(トグルスイッチ62を「オン」の位置に押し込む)、図3のシャーシ70(接地)に位置する始動点“S”から電流が流れ、電流はコイル78を通り、常閉接点の「オフ」スイッチ66へと流れる。電流は、続いて、「オン」スイッチ64、ヒューズ82へ流れ、リレー72を起動する。このような電流の流れにおいて、トップスイッチ74は、閉じて、その結果、ディファレンシャル10の電磁コイル50を励磁する。この間、ボトムスイッチ76が閉じることで、電流が「オン」スイッチ64に流れて、ディファレンシャル10を「ロック」モードへ作動する。その結果、ランプ68が点灯し、ディファレンシャル10の起動をドライバーへ表示する。
【0022】
ディファレンシャル10は、トグルスイッチ62が「オフ」の位置に押されるまで、または切換イグニション84からの電力が中断または切断されるまで、ロック状態を維持する。いずれの方法においても、回路56は、停止またはフォールアウト(fall out)し、ディファレンシャル10は、アンロックされる。
その結果、ランプ68の点灯が停止され、ディファレンシャル10が非作動であることをドライバーに表示させる。その後、ドライバーが回路56にコマンドを入力し、ディファレンシャル10が起動されるまで、再起動はされない(ランプ68は再点灯されない)。
【0023】
ハーネスは、ディファレンシャル10への安全機能の提供だけでなく、ディファレンシャル10の制御をも許容する。ハーネスの操作は、ラッチングリレーシステムを基礎としており、二極双投制御リレー72も含む。ハーネスは、ディファレンシャル10のパワーラッチングまたは保持機能および瞬時「オン/オフ」制御を提供するとともに、切換イグニション84のラインからの外部安全入力も与える。また、ハーネスは、ディファレンシャル10の誤動作を保護することにより、電流が車両から不要に流出すること、及びディファレンシャル10のノンコマンドの使用を禁止する。
【0024】
ディファレンシャル10は、4WD車に、コントロール、パワー、トラクションおよびオフロードのパフォーマンスを与える。更に、ディファレンシャル10における瞬時「オン/オフ」ラッチングおよび電力低下を制御する。
また、車両の4WD機能性を望まないとき、または必要でないとき、4WD車が比較的ゆっくりと走行していない時には、ディファレンシャル10の動作は阻止される。そして、ディファレンシャル10の操作は、論理的に制御されており、4WD車両がファーストギヤまたはリバースから外された時は、ディファレンシャル10が自動的に切られ、またはアンロックされる。
従って、4WD車両のディファレンシャル10、その関連部品、車軸、そして対応タイヤの早期磨耗が抑制される。4WD車両への電力が切断されると、ディファレンシャル10がリセットされるので、車両の電源寿命の長期化に貢献する。また、ディファレンシャル10のハーネスは、アフターマーケットの電子駆動式ロッキングディファレンシャルシステムの一部として構成してもよい。ディファレンシャルのハーネスは、OEMアプリケーションでまかなうこともできる。
【0025】
上記の通り、本発明を例証してきたが、使用する用語は説明のみを意図し、限定を意図するものではない。本発明の多くの修正例及び変形例は、上記技術に照らして可能である。それゆえ、本発明は、添付される請求項の範囲内において、記載された内容以外のものも実施することが可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子制御式ロッキングディファレンシャル(10)であって、
電磁コイル(50)と、
前記ディファレンシャルを論理的に制御操作するように構成されたワイヤハーネスとを含み、該ワイヤハーネスは、回路(56)を含んでおり、
該回路(56)は、
第1電源に電気的に接続され、前記ディファレンシャルのラッチング力を与えるラッチングスイッチ(62)と、
前記ラッチングスイッチ(62)に電気的に接続され、第1スイッチ(74)、第2スイッチ(76)およびコイル(78)を含む二極双投制御リレー(72)と、を含み、
前記第2スイッチ(76)は、前記ラッチングスイッチ(62)を切替えるように構成されており、
前記回路(56)は、前記ハーネスへの電力が切断された時に不能となり、前記ハーネスへの電力が供給されると、「スタンバイ」モードとなり、
前記ラッチングスイッチ(62)が駆動されると、電流が前記回路の始動点から流れ、該回路を通過して前記リレー(72)を駆動し、
前記第1スイッチ(74)が閉じると、前記ディファレンシャルに電力を供給し、
前記第2スイッチ(76)が閉じると、前記ラッチングスイッチ(62)に電流を流して、前記ディファレンシャルが作動されることを特徴とする電子制御式ロッキングディファレンシャル。
【請求項2】
前記第1スイッチ(74)は1組の高電流用接点を有し、前記第2スイッチ(76)は1組の低電流用接点を有しており、また、前記コイル(78)は、電流が変化するときに、逆起電力を前記回路に導くように構成されていることを特徴とする請求項1に記載の電子制御式ロッキングディファレンシャル。
【請求項3】
前記ワイヤハーネスがシャーシ上に組み込まれるとともに、前記回路(56)がシャーシに対して接地されていることを特徴とする請求項1に記載の電子制御式ロッキングディファレンシャル。
【請求項4】
前記ワイヤハーネスは、更にインラインダイオード(98)を含み、該インラインダイオード(98)は、前記リレー(72)に電流を導くとともに、逆バイアスのスパイク電圧を抑制するように構成されていることを特徴とする請求項1に記載の電子制御式ロッキングディファレンシャル。
【請求項5】
前記ワイヤハーネスは、更にコネクタ(60)を含み、前記電磁コイル(50)を前記ワイヤハーネスに電気的に接続するために、前記コネクタ(60)は、前記電磁コイル(50)に接続されるように構成されていることを特徴とする請求項1に記載の電子制御式ロッキングディファレンシャル。
【請求項6】
前記ラッチングスイッチ(62)は、前記第2スイッチ(76)により切り替わるように構成された常開接点の「オン」スイッチ(64)と、常閉接点の「オフ」スイッチ(66)を含んでおり、
前記「オン」スイッチ(64)が作動されるとき、電流が前記回路の前記始動点から流れ、該回路を通過して前記リレー(72)を駆動させ、
前記第1スイッチ(74)が閉じると、前記ディファレンシャルに電力を供給し、
前記第2スイッチ(76)が閉じると、前記「オン」スイッチ(64)に電流を流して前記ディファレンシャルが作動されることを特徴とする請求項1に記載の電子制御式ロッキングディファレンシャル。
【請求項7】
前記回路は、更に第2電源と常開型の前記「オン」および「オフ」スイッチに電気的に接続される第1ギヤスイッチ(86)を含み、前記ディファレンシャルが稼動されている車両がファーストギヤの状態にあるときのみ、前記第1ギヤスイッチ(86)が閉じられることを特徴とする請求項6に記載の電子制御式ロッキングディファレンシャル。
【請求項8】
前記回路は、更に前記第1、第2電源のいずれか、及び前記「オン」および「オフ」スイッチ(64、66)に電気的に接続するリバーススイッチ(88)を含み、前記リバーススイッチ(88)は、車両がリバースの状態にあるときにのみ、閉じられることを特徴とする請求項7に記載の電子制御式ロッキングディファレンシャル。
【請求項9】
前記第1ギヤスイッチ(86)および前記リバーススイッチ(88)のそれぞれは、車両のシフトレバーに対する機械的な連結により、閉じられることを特徴とする請求項8に記載の電子制御式ロッキングディファレンシャル。
【請求項10】
前記リバーススイッチ(88)は、前記「オン」および「オフ」スイッチに電流を導くように構成されたダイオード(96)に電気的に接続されていることを特徴とする請求項8に記載の電子制御式ロッキングディファレンシャル。
【請求項11】
電子制御式ロッキングディファレンシャルを論理的に制御操作するように構成されたワイヤハーネスにおいて、該ワイヤハーネスは回路(56)を含んでおり、
該回路(56)は、
第1電源に電気的に接続され、前記ディファレンシャルのラッチング力を与えるラッチングスイッチ(62)と、
前記ラッチングスイッチ(62)に電気的に接続され、第1スイッチ(74)、第2スイッチ(76)およびコイル(78)を含む二極双投制御リレー(72)と、を含み、
前記第2スイッチ(76)は、前記ラッチングスイッチ(62)を切替えるように構成されており、
前記回路(56)は、前記ハーネスへの電力が切断された時に不能となり、前記ハーネスへの電力が供給されると「スタンバイ」モードとなり、
前記ラッチングスイッチ(62)が作動されると、電流が前記回路の始動点から流れ、該回路を通過して前記リレー(72)を駆動し、
前記第1スイッチ(74)が閉じると、前記ディファレンシャルに電力を供給し、
前記第2スイッチ(76)が閉じると、前記ラッチングスイッチ(62)に電流を流して前記ディファレンシャルが作動されることを特徴とするワイヤハーネス。
【請求項12】
前記第1スイッチ(74)は1組の高電流用接点を有し、前記第2スイッチ(76)は1組の低電流用接点を有しており、また、前記コイル(78)は、電流が変化するときに、前記回路に逆起電力を導くように構成されていることを特徴とする請求項11に記載のワイヤハーネス。
【請求項13】
前記ワイヤハーネスは、シャーシ上に組み込まれるとともに、前記回路(56)は、シャーシに対して接地されていることを特徴とする請求項11に記載のワイヤハーネス。
【請求項14】
前記ワイヤハーネスは、更にインラインダイオード(98)を含み、該インラインダイオード(98)は、前記リレー(72)に電流を導くとともに、逆バイアスのスパイク電圧を抑制するように構成されていることを特徴とする請求項11に記載のワイヤハーネス。
【請求項15】
前記ワイヤハーネスは、前記ディファレンシャルを前記ワイヤハーネスに電気的に接続するために、プラグインするように構成されたコネクタ(60)をさらに含んでいることを特徴とする請求項11に記載のワイヤハーネス。
【請求項16】
前記ラッチングスイッチ(62)は、前記第2スイッチ(76)により切り替わるように構成された常開接点の「オン」スイッチ(64)と、常閉接点の「オフ」スイッチ(66)を含み、
前記「オン」スイッチ(64)が作動されるとき、電流が前記回路の前記始動点から流れ、該回路を通過して前記リレー(72)を駆動し、
前記第1スイッチ(74)が閉じると、前記ディファレンシャルに電力を供給し、
前記第2スイッチ(76)が閉じると、前記「オン」スイッチ(64)に電流が流れて、前記ディファレンシャルが作動されることを特徴とする請求項11に記載のワイヤハーネス。
【請求項17】
前記回路は、第2電源と、常開型の前記「オン」および「オフ」スイッチとに電気的に接続される第1ギヤスイッチ(86)をさらに含んでおり、
前記第1ギヤスイッチ(86)は、前記ディファレンシャルが稼動されている車両が、ファーストギヤの状態にあるときにのみ、閉じられることを特徴とする請求項16に記載のワイヤハーネス。
【請求項18】
前記回路(56)は、前記第1、第2電源のいずれかと、常開型の前記「オン」および「オフ」スイッチ(64、66)とに電気的に接続されるリバーススイッチ(88)をさらに含んでおり、
前記リバーススイッチ(88)は、車両がリバースの状態にあるときにのみ、閉じられることを特徴とする請求項17に記載のワイヤハーネス。
【請求項19】
前記第1ギヤスイッチ(86)および前記リバーススイッチ(88)のそれぞれは、車両のシフトレバーに対する機械的な連結により、閉じられることを特徴とする請求項18に記載のワイヤハーネス。
【請求項20】
前記リバーススイッチ(88)は、前記「オン」および「オフ」スイッチに電流を導くように構成されたダイオード(96)に電気的に接続されていることを特徴とする請求項18に記載のワイヤハーネス。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2012−527372(P2012−527372A)
【公表日】平成24年11月8日(2012.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−511363(P2012−511363)
【出願日】平成22年5月20日(2010.5.20)
【国際出願番号】PCT/IB2010/001188
【国際公開番号】WO2010/133954
【国際公開日】平成22年11月25日(2010.11.25)
【出願人】(390033020)イートン コーポレーション (290)
【氏名又は名称原語表記】EATON CORPORATION
【Fターム(参考)】