説明

ロジンを用いて変性したアイオノマーおよびそれからの物品

開示されているのは、ロジンまたはロジン誘導体、および任意選択的に有機酸およびそれらの塩を用いて変性した、部分的または完全に中和されたカルボン酸をベースとしてアイオノマーを含む、熱可塑性組成物である。それらの熱可塑性組成物を製造するための方法もまた提供される。その熱可塑性組成物は、典型的なアイオノマー組成物よりも高い硬度および剛性を示す。前記熱可塑性組成物を含むゴルフボール、スポーツ用品、およびその他の非スポーツ物品、ならびにそれらの製造方法もまた開示されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は熱可塑性組成物に関し、特に、ロジンまたはロジン誘導体を用いて変性した、部分的または全面的に中和したカルボン酸ベースのアイオノマーおよび、任意選択的に有機酸およびその塩を含む熱可塑性組成物に関する。典型的なアイオノマー組成物よりも高い硬度と合成を示す本発明の組成物には、熱可塑性の非アイオノマー性ポリマー、充填剤および/または繊維、その他の添加剤を含んでいてもよい。
【0002】
(関連出願の相互参照)
本出願は、35U.S.C.§120に基づき、米国仮特許出願第60/475,723号(出願日:2003年6月2日)および米国仮特許出願第60/542,762号(出願日:2004年2月6日)の優先権を主張するものであって、この両出願のすべてを、本明細書に援用するものとする。
【背景技術】
【0003】
本明細書においては、本発明に関連のある現行技術をより完全に説明する目的で、いくつかの特許および公刊物を引用する。それらの特許および公刊物におけるすべての開示を、参照することにより、本明細書に援用するものとする。
【0004】
アイオノマー性樹脂(アイオノマー)は、オレフィンたとえばエチレンと、不飽和カルボン酸たとえばアクリル酸、メタクリル酸、またはマレイン酸と、任意選択的に軟化性モノマーとのコポリマーであって、そのコポリマー中の酸基の一部が、金属イオンたとえばナトリウムまたは亜鉛によって中和されている。アイオノマーは、ゴルフボールのカバー構成としてバラタに勝る、たとえば、改良された弾性、剛性もしくは軟度、靱性、耐久性などの優れた性質を示す熱可塑性樹脂である(以下参照)。その弾性、靱性、耐久性および切傷抵抗性に優れていることから、本願特許出願人から商標「サーリン(Surlyn,登録商標)」として、またテキサス州ヒューストン(Houston,TX)のエクソン・モービル・ケミカル・コーポレーション(Exxon Mobil Chemical Corporation)から商標「エスコール(Escor,商標)」および「ロテック(lotek,商標)」として販売されている各種のアイオノマー樹脂が、従来からのバラタ(天然または合成ゴム)カバーに代わって、ゴルフボールカバーの構成のための材料として選択されるようになってきた。よりソフトなバラタカバーは、優れた競技性(playability)を示すものの、繰り返してプレーする場合に望ましい耐久性および切傷抵抗性に欠ける。耐久性が改良されるのに加えて、カバーまたはマントルがよりハードであるために、ボールのスピンを最小限に抑え、クラブフェースから飛び出すボールの直線性を最大にする。ゴルファーによっては、距離を最大限に伸ばし、低いスピン特性を有するゴルフボールを好む。したがって、硬度と剛性がより高いゴルフボールのための材料開発を続けることが望まれている。
【0005】
現在市販されているジポリマーから誘導されるアイオノマーの性質は、金属カチオンのタイプと量、ベース樹脂の分子量と組成(すなわち、エチレンと、メタクリル酸および/またはアクリル酸基との相対含量)に従って変化する。アイオノマーは、それらの物理的性質を変化させるためのコモノマーを添加することによっても、変性することができる。たとえば、オレフィンたとえばエチレン、不飽和カルボン酸およびその他のコモノマーたとえば(メタ)アクリル酸アルキルからのターポリマーは、「よりソフトな」樹脂を与え、それを中和することによって、よりソフトなアイオノマーとすることが可能である。
【0006】
よりハードなアイオノマーを得るためのアプローチ方法としては、コポリマー中に比較的高い割合でカルボン酸残基を使用する方法がある。都合が悪いことには、酸の割合が高いエチレン・酸コポリマーは、モノマー−ポリマーの相分離が起きるために、連続重合器で製造することが困難である。この問題は、米国特許公報(特許文献1)に記載されているような、「共溶媒技術(co−solvent technology)」を用いるか、または、酸がより低いコポリマーを製造する場合よりも幾分高い圧力をかけることによって、回避することができる。そのような手段があるとはいえ、エチレン・酸コポリマー中にモノマーとして取り込むことができるカルボン酸の量には、固有の限界が存在する。さらに、それらの方法では、コストが高くなり、プロセスがより複雑となってしまう。
【0007】
エチレン・酸コポリマーおよびそれからのアイオノマーのような、熱可塑性樹脂の性質は、ポリマー溶融物の中に他の成分をブレンドすることによって変性することも可能である。たとえば、米国特許公報(特許文献2)には、テルペン樹脂粘着付与剤および/またはロジンエステル粘着付与剤を添加することによって変性したアイオノマー性樹脂を含むカバーを有するゴルフボールが記載されている。同様にしてたとえば、米国特許公報(特許文献3)には、熱可塑性エラストマーと、テルペン樹脂粘着付与剤および/またはロジンエステル粘着付与剤とを添加することによって変性したアイオノマー性樹脂を含むカバーを有するゴルフボールが記載されている。これらの特許におけるゴルフボールカバーのために使用される組成物は、40〜65のショアーD硬度を有していることが特徴である。
【0008】
【特許文献1】米国特許第5,028,674号明細書
【特許文献2】米国特許第6,608,127号明細書
【特許文献3】米国特許第6,371,869号明細書
【特許文献4】米国特許第4,274,637号明細書
【特許文献5】米国特許第4,264,075号明細書
【特許文献6】米国特許第4,323,247号明細書
【特許文献7】米国特許第4,337,947号明細書
【特許文献8】米国特許第4,398,000号明細書
【特許文献9】米国特許第4,526,375号明細書
【特許文献10】米国特許第4,567,219号明細書
【特許文献11】米国特許第4,674,751号明細書
【特許文献12】米国特許第4,884,814号明細書
【特許文献13】米国特許第4,911,451号明細書
【特許文献14】米国特許第4,984,804号明細書
【特許文献15】米国特許第4,986,545号明細書
【特許文献16】米国特許第5,000,459号明細書
【特許文献17】米国特許第5,068,151号明細書
【特許文献18】米国特許第5,098,105号明細書
【特許文献19】米国特許第5,120,791号明細書
【特許文献20】米国特許第5,155,157号明細書
【特許文献21】米国特許第5,197,740号明細書
【特許文献22】米国特許第5,222,739号明細書
【特許文献23】米国特許第5,253,871号明細書
【特許文献24】米国特許第5,298,571号明細書
【特許文献25】米国特許第5,321,089号明細書
【特許文献26】米国特許第5,328,959号明細書
【特許文献27】米国特許第5,330,837号明細書
【特許文献28】米国特許第5,338,038号明細書
【特許文献29】米国特許第5,338,610号明細書
【特許文献30】米国特許第5,359,000号明細書
【特許文献31】米国特許第5,368,304号明細書
【特許文献32】米国特許第5,567,772号明細書
【特許文献33】米国特許第5,757,483号明細書
【特許文献34】米国特許第5,810,678号明細書
【特許文献35】米国特許第5,873,796号明細書
【特許文献36】米国特許第5,902,855号明細書
【特許文献37】米国特許第5,971,870号明細書
【特許文献38】米国特許第5,971,871号明細書
【特許文献39】米国特許第5,971,872号明細書
【特許文献40】米国特許第5,973,046号明細書
【特許文献41】米国特許第5,976,443号明細書
【特許文献42】米国特許第6,018,003号明細書
【特許文献43】米国特許第6,096,830号明細書
【特許文献44】国際公開第99/48569号パンフレット
【特許文献45】米国特許第4,846,910号明細書
【特許文献46】米国特許第3,836,153号明細書
【特許文献47】米国特許第4,326,716号明細書
【特許文献48】米国特許第4,504,520号明細書
【特許文献49】米国特許第5,078,398号明細書
【特許文献50】米国特許第6,146,571号明細書
【特許文献51】欧州特許第737,493B号明細書
【特許文献52】仏国特許出願公開2523854A号明細書
【特許文献53】英国特許第2132092B号明細書
【特許文献54】特開平02−124182A号公報
【特許文献55】特開平04−144704A号公報
【特許文献56】特開平04−002375A号公報
【特許文献57】特開平09−225076A号公報
【特許文献58】特開昭57−203460A号公報
【特許文献59】特開昭59−194802A号公報
【特許文献60】特開昭62−224382A号公報
【特許文献61】特許第3302407B号公報
【特許文献62】特公平04−015702B号公報
【特許文献63】国際公開第2002004694号パンフレット
【特許文献64】国際公開第2002010470号パンフレット
【非特許文献1】ザ・メルク・インデックス(The Merck Index)第10版、(米国ニュージャージー州ローウェー(Rahway,NJ,USA)1983、p.1191、項目番号8134
【非特許文献2】ザ・メルク・インデックス(The Merck Index)第10版、p.1299、項目番号8917
【非特許文献3】『モダーン・プラスチックス・エンサイクロペディア(Modern Plastics Encyclopedia)』、マグローヒル(McGraw−Hill)、ニューヨーク州ニューヨーク(New York,NY)、1995
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
したがって、硬度、剛性および良好な耐擦り傷性と共に、改良された熱安定性および溶融加工性を組合せて有する、ゴルフボールカバー、マントル、中間層などのための材料が開発されれば望ましい。高酸コポリマーによって示されるのと同等またはそれを超えるような硬度を示す、低〜中程度の酸含量を有するエチレン・酸コポリマーの組成物を改良できれば、特に望ましい。
【0010】
したがって本発明の1つの目的は、典型的なアイオノマー性組成物よりも、よりハードでより剛直なアイオノマー組成物を提供することである。
【0011】
本発明のさらなる目的は、良好な弾性および耐久性を有するハードなカバーおよび/または中間層を有するゴルフボールを提供することである。
【0012】
本発明のさらなる目的は、低スピンで、耐久性があり、飛距離の出る特性を好適に併せ持つゴルフボールを提供することである。
【0013】
本発明のさらなる目的は、カバーおよび/または中間層を有し、製造することが容易なゴルフボールを提供することである。
【0014】
本発明のさらなる目的は、スポーツ用品、特にゴルフクラブにおいて金属および木材の代替え物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明のそれらおよびその他の目的は、典型的なアイオノマー性樹脂よりハードで、変性剤としてロジンおよび/またはロジン誘導体を含むアイオノマー組成物によって、また本発明の、よりハードなアイオノマー組成物を含むゴルフボールを製造することによって、実現することが可能である。
【0016】
したがって、第一の態様においては、本発明は、アイオノマーと、ロジン、ロジン誘導体、またはロジンおよびロジン誘導体の両方とを含む熱可塑性組成物を提供するが、ただし、ロジン成分がロジンエステルからなる場合には、その熱可塑性組成物にはさらに、有機酸、有機酸の塩、または有機酸と有機酸の塩の両方を含む。
【0017】
注目すべきは、以下の本発明の熱可塑性組成物である:
(i)少なくとも1種のE/X/Yコポリマーであって、Eはエチレンであり、XはC〜Cα,β−エチレン性不飽和カルボン酸であり、Yはアクリル酸アルキルおよびメタクリル酸アルキルから選択される軟化性コモノマーであり、アルキル基は1〜8個の炭素原子を有し、XはE/X/Yコポリマーの約2〜約30重量%、YはE/X/Yコポリマーの0〜約40重量%である、E/X/Yコポリマーと、
(ii)約3重量%〜約50重量%の、ロジン、ロジン誘導体、またはロジンとロジン誘導体との組合せと、任意選択的に、
(iii)約5重量%〜約50重量%の1種または複数の有機酸またその塩を含み、
成分(ii)と成分(iii)(存在している場合)を合わせた重量%が、全組成物の約3重量%〜約60重量%となるようにするが、ここで、そのブレンド中のすべての成分におけるカルボン酸官能基を合わせたものの内の少なくとも一部が、1種または複数のアルカリ金属、遷移金属、またはアルカリ土類金属カチオンによって中和されているが、ただし、成分(ii)がロジンエステルからなる場合には、成分(iii)の存在は必須である。
【0018】
注目すべきは、以下の組成物である:
(i)少なくとも1種のE/X/Yコポリマーであって、Eはエチレンであり、XはC〜Cα,β−エチレン性不飽和カルボン酸であり、Yはアクリル酸アルキルおよびメタクリル酸アルキルから選択される軟化性コモノマーであり、アルキル基は1〜8個の炭素原子を有し、XはE/X/Yコポリマーの約2〜約30重量%、YはE/X/Yコポリマーの0〜約40重量%である、E/X/Yコポリマーと、
(ii)約3重量%〜約50重量%のロジンと、を含み、
ここで、そのブレンド中のすべての成分におけるカルボン酸官能基を合わせたものの内の少なくとも一部が、1種または複数のアルカリ金属、遷移金属、またはアルカリ土類金属カチオンによって中和されている。
【0019】
本発明はさらに、非アイオノマー性熱可塑性または熱硬化性ポリマーから選択される、少なくとも1種の追加の成分をさらに含む、上述の組成物も提供する。
【0020】
また別な態様においては、本発明は、本発明の熱可塑性組成物を含むワンピースゴルフボールを提供する。本発明はさらに、本発明の熱可塑性組成物から本質的になるワンピースゴルフボールを提供する。
【0021】
本発明はさらに、上述のようなワンピースゴルフボールを製造するための方法も提供するが、それには、本発明の組成物をゴルフボールの形状に成形することを含む。
【0022】
本発明はさらに、マルチピースゴルフボールも提供するが、そこでは、ゴルフボールを形成する以下の構成要素、たとえばカバー、マントル、各種中間層、コアまたはセンターのいずれかが、本発明の熱可塑性組成物を含む。
【0023】
本発明はさらに、マルチピースゴルフボールも提供するが、そこでは、ゴルフボールを形成する構成要素の内の少なくとも1種が本発明の熱可塑性組成物を含み、少なくとも1種の他の成分が非アイオノマー性熱可塑性ポリマーを含む。
【0024】
本発明はさらに、マルチピースゴルフボールも提供するが、そこでは、ゴルフボールを形成する構成要素の内の1種が、本発明の熱可塑性組成物から本質的になる。
【0025】
本発明はさらに、上述のようなカバー、マントル、中間層、コアおよび/またはセンターを有するゴルフボールを製造するための方法を提供するが、それには、ゴルフボールのコアまたはセンターを得る工程、および本発明の熱可塑性組成物で形成された前記コアおよび/または前記センターの上に、カバー、マントル、および/または中間層を形成させる工程が含まれる。
【0026】
本発明はさらに、上述のようなゴルフボールを製造するための方法を提供するが、それには、本発明の組成物をゴルフボールのマントル、中間層、コアおよび/またはセンターの形状に成形する工程、およびそれらの上にカバーを形成する工程が含まれる。
【0027】
さらに、スポーツ用品、特にゴルフクラブにおける金属および木材を置きかえる材料も提供されるが、それには、アイオノマーと、ロジン、ロジン誘導体、またはロジンおよびロジン誘導体の両方とが含まれる。
【0028】
注目すべきは、以下の組成物である:
(i)少なくとも1種のE/X/Yコポリマーであって、Eはエチレンであり、XはC〜Cα,β−エチレン性不飽和カルボン酸であり、Yはアクリル酸アルキルおよびメタクリル酸アルキルから選択される軟化性コモノマーであり、アルキル基は1〜8個の炭素原子を有し、XはE/X/Yコポリマーの約2〜約30重量%、YはE/X/Yコポリマーの0〜約40重量%である、E/X/Yコポリマーと、
(ii)約3重量%〜約50重量%の、ロジン、ロジン誘導体、またはロジンとロジン誘導体との組合せと、任意選択的に、
(iii)約5重量%〜約50重量%の1種または複数の有機酸またその塩を含み、
成分(ii)と成分(iii)(存在している場合)を合わせた重量%が、全組成物の約3重量%〜約60重量%となるようにするが、ここで、そのブレンド中のすべての成分におけるカルボン酸官能基を合わせたものの内の少なくとも一部が、1種または複数のアルカリ金属、遷移金属、またはアルカリ土類金属カチオンによって中和されている。
【0029】
また別な態様においては、スポーツシューズのスパイク(cleat)、ゴルフクラブのフェースプレートまたはインサート、成形ゴルフクラブヘッド、クラブヘッドのコーティングまたはケーシング、ゴルフクラブヘッドの内部キャビティのための充填剤、および履き物の構造からなる群より選択される成形物品に、上記の本発明の熱可塑性組成物が含まれる。
【0030】
また別な態様においては、本発明はさらに、上述の本発明の熱可塑性組成物を含む、コーキング材、シーラント、セメントおよびアスファルトのための変性剤、またはコーティングを提供する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0031】
「コポリマー」という用語は、2種以上の異なったモノマーを含むポリマーを意味する。「ジポリマー」および「ターポリマー」という用語は、それぞれ2種および3種の異なったモノマーだけを含むポリマーを意味する。「各種のモノマーのコポリマー」という用語は、その構成単位が各種のモノマーから誘導されたコポリマーを意味する。
【0032】
熱可塑性組成物とは、加熱したときに圧力を加えると流動するポリマー材料である。メルトインデックス(MI)は、調節した温度と圧力の条件下で、特定の毛細管を通してポリマーが流動する速度である。本明細書において言及されるメルトインデックスは、ASTM1238に従い、190℃で2160gの重量を用いて測定したもので、MIの数値は、g/10分の単位で表されている。
【0033】
アイオノマー性樹脂(「アイオノマー」)は、オレフィンたとえばエチレンと、不飽和カルボン酸たとえばアクリル酸、メタクリル酸、またはマレイン酸とのコポリマーであって、その酸基の少なくとも一部が、少なくとも1種のアルカリ金属、遷移金属、またはアルカリ土類金属カチオンを用いて中和されており、たとえばリチウム、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウム、もしくは亜鉛、またはそれらのカチオンの組合せを用いて、コポリマーの中の酸基のいくらかの部分を中和してある。
【0034】
本明細書で使用するとき、「(メタ)アクリル」という用語単独、または"「(メタ)アクリレート」のように組合せた形の用語は、アクリルおよび/またはメタクリル、たとえばアクリル酸および/またはメタクリル酸、またはアクリル酸アルキルおよび/またはメタクリル酸アルキルを指す。この関連で、「エチレン/(メタ)アクリル酸(E/(M)AAと省略)」という用語は、エチレン(略号E)/アクリル酸(略号AA)および/またはメタクリル酸(略号MAA)のコポリマーを意味し、次いでそれを、1種または複数のアルカリ金属、遷移金属、またはアルカリ土類金属カチオンによって少なくとも部分的に中和して、アイオノマーを形成させることができる。
【0035】
本明細書で使用するとき、「ロジン」単独、または組合せた形、たとえば、ロジン性またはロジネートという用語には、天然または変性ロジン、天然または変性ロジン酸、精製した天然または変性ロジン酸、天然または変性ロジン酸の塩(酸および塩の部分的から全面的までの中和混合物を含む)、および上述のロジンの1種または複数の組合せが含まれる。ロジン、ロジン酸、およびロジン塩の変性としては、水素化、エポキシ化、二量化、などが挙げられる。変性または天然ロジン、ロジン酸、およびロジン塩の誘導体化としては、エステル化、アミド化などが挙げられる。
【0036】
本明細書で使用するとき、「有限量(finite amount)」という用語は、ゼロに等しくない量を表す。
【0037】
本明細書で使用するとき、「約(about)」という用語は、量、大きさ、配合、パラメーター、およびその他の量ならびに特性が、正確でなかったり、正確である必要がなかったりして、おおよそであってよいか、および/または、許容差、換算係数、まるめ方、測定誤差など、および当業者公知のその他の因子を反映して、場合によっては、より大きくても、あるいはより小さくてもよい、ということを意味している。一般的に言って、量、大きさ、配合、パラメーターまたはその他の量や特性は、明確な記載の有無に関わらず、「約」(aboutまたはapproximate)である。
【0038】
ゴルフボールに使用するのに好ましい本発明の熱可塑性組成物は、アイオノマーと、ロジン、ロジン誘導体、またはロジンおよびロジン誘導体の両方とを含む熱可塑性組成物を提供するが、ただし、ロジン成分がロジンエステルからなる場合には、その熱可塑性組成物にはさらに、有機酸、有機酸の塩、または有機酸と有機酸の塩の両方を含む。
【0039】
本発明において有用なアイオノマーのための好適な前駆体は、酸コポリマー、好ましくは「直接的な」酸コポリマーである。それらは、アルファオレフィン、より好ましくはエチレンと、C〜Cのα,β−エチレン性不飽和カルボン酸、より好ましくは(メタ)アクリル酸とのコポリマーであるのが好ましい。
【0040】
その酸コポリマーには、任意選択的に、ポリマーの結晶化度を乱すための「軟化性(softening)」モノマーを含んでいてもよい。それらの酸コポリマーは、アルファオレフィンがエチレンである場合には、E/X/Yコポリマーと記述することができるが、ここでEはエチレン、Xは(上述のような)α,β−エチレン性不飽和カルボン酸、特にアクリル酸およびメタクリル酸、そしてYは軟化性コモノマーである。軟化性コモノマーとして好ましいのは、アクリル酸C〜Cアルキルまたはメタクリル酸C〜Cアルキルエステルである。その他の軟化性コモノマーとしては、無水マレイン酸およびマレイン酸モノエステルを挙げることができる。XとYは広い範囲のパーセントで存在することができるが、Xは典型的にはポリマーの約35重量パーセントまで、Yは典型的にはコポリマーの約50重量パーセントまでである。
【0041】
上述の溶融加工可能なアイオノマーを得るための、アルファオレフィン、C〜Cα,β−エチレン性不飽和カルボン酸、および任意成分の軟化性モノマーからのコポリマーは、当業者公知の方法によって製造することができる。好適なコポリマーを非限定的に挙げれば、エチレン/酸コポリマー、たとえばエチレン/(メタ)アクリル酸、エチレン/(メタ)アクリル酸/無水マレイン酸、エチレン/(メタ)アクリル酸/マレイン酸モノエステル、エチレン/マレイン酸、エチレン/マレイン酸モノエステル、エチレン/(メタ)アクリル酸/(メタ)アクリル酸n−ブチル、エチレン/(メタ)アクリル酸/(メタ)アクリル酸イソ−ブチル、エチレン/(メタ)アクリル酸/(メタ)アクリル酸メチル、エチレン/(メタ)アクリル酸/(メタ)アクリル酸エチルターポリマーなどがある。
【0042】
本発明において使用するのに適したアイオノマーとしては、溶融加工が可能であって、少なくとも部分的に中和した、エチレンとC〜Cα,β−エチレン性不飽和カルボン酸とのコポリマーが挙げられる。本発明において使用するのに好ましいアイオノマーとしては、約2〜約30重量%の(M)AAを含み、1種または複数のアルカリ金属、遷移金属、またはアルカリ土類金属カチオンによって少なくとも部分的に中和したE/(M)AAジポリマーが挙げられる。酸コポリマーを中和してアイオノマーを形成させるための方法は、当業者には周知である。
【0043】
ロジンは、ピヌス・パルストリス(Pinus palustris)およびその他のマツ科マツ属の種から得られる含油樹脂から、揮発性のオイルを留去した後に残る残渣である。ウッドロジン(サザンパイン(Southern pine)の切り株から)、ガムロジン(ピヌス・パルストリス(P.palustris)およびピヌス・カリバエ(P.caribaea)の生木に傷をつけて滲出させたもの)、およびトール油ロジンなどが入手可能である。典型的には、ロジンには約90%のロジン酸と約10%の中性物質が含まれる。ロジン酸の約90%が、アビエチン酸(C2030)の異性体であり;残りの10%が、ジヒドロアビエチン酸(C2032)とデヒドロアビエチン酸(C2028)の混合物である。((非特許文献1)を参照されたい)。ロジン酸は、トール油(液状ロジンと呼ばれることもある)からも得ることができるが、トール油は、木材パルプ工業の副生物であって、硫酸塩法またはクラフトペーパー法の「黒液(black liquor)」から通常回収される。トール油には、ロジン酸(34〜40%)、脂肪酸たとえばオレイン酸およびリノール酸(50〜60%)および中性物質(5〜10%)が含まれる。((非特許文献2)を参照されたい)。
【0044】
天然ロジンの中に存在する酸は、たとえば、鹸化、中性物質の抽出、および再酸性化により精製することができる。ロジン中の遊離の酸の部分は、たとえば、鹸化によってカルボン酸塩を形成させて、金属イオンを用いて部分的ないし全面的に中和した塩、たとえば、レジネートを得ることにより、変性することができる。ロジン酸はまた、化学的な方法たとえば、水素化、二量化、エポキシ化などによって変性し、酸官能基の部分は無影響で残しながら、分子の化学構造を変化させることもできる。
【0045】
ロジンはいくつかのグレードの商品として入手可能であり、例を挙げれば、コネチカット州スタンフォード(Stamford,CT)のレジノール・コーポレーション(Resinall Corporation)(レジノール(Resinall)社)から、商品名レジノール(Resinall,商標)として、および、同様な製品として、デラウェア州ウィルミントン(Wilmington,DE)のハーキュリーズ(Hercules)、テネシー州キングスポート(Kingsport,TN)のイーストマン・ケミカル・カンパニー(Eastman Chemical Company)(イーストマン(Eastman)社)、イリノイ州シカゴ(Chicago,IL)のアラワカ・ケミカル(USA)・インコーポレーテッド(Arakawa Chemical(USA),Inc.)などから供給されるものがある。
【0046】
ロジンの誘導体はさらに、カルボン酸残基、またはカルボン酸塩アニオンまたは酸塩化物基などの少なくとも一部を、カルボキシリックなカルボニル基と共有結合を形成することが可能な残基と反応させることにより製造することも可能で、それによって、ロジンを非酸性にしたり、および/またはカルボン酸塩を形成することを不可能としたりする。ロジン誘導体の例としては、アルコール残基を用いてカルボン酸残基をエステル化することによって調製される、ロジンエステル;および、カルボン酸残基(または、その誘導体たとえば上述のエステルや酸クロリド)をアミン残基と反応させることによって調製される、ロジンアミドなどが挙げられる。ロジンエステルが、本発明において使用するロジン誘導体として好ましい。
【0047】
好ましくは、1種のロジンまたは1種のロジン誘導体が、本発明の熱可塑性組成物の中に含まれるようにする。しかしながら、2種以上のロジンの組合せ、2種以上のロジン誘導体の組合せ、および、少なくとも1種のロジンと少なくともロジン誘導体との組合せもまた考えられる。
【0048】
本発明の組成物は、少なくとも1種のアルカリ金属、アルカリ土類金属または遷移金属カチオンによって、少なくとも部分的に中和された、酸コポリマーおよび少なくとも1種のロジンまたはロジン誘導体の混合物からなる。その組成物の中の利用可能な酸残基の、少なくとも30%、別な場合では少なくとも45%、別な場合では少なくとも50%、別な場合では少なくとも60%が中和されているのが好ましい。カチオンは、リチウム、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウム、バリウム、鉛、スズ、または亜鉛(ここで印は、より好ましいカチオンを表す)、またはそれらのカチオンの組合せからなる群より選択するのが好ましい。
【0049】
さらに、追加の中和剤をアイオノマー−ロジンブレンドに添加して、所望のレベルの中和を達成させることも可能である。しかしながら、当業者には自明のことであるが、追加の中和剤を添加する効果は、ロジン塩、またはロジンとロジン塩の両方を含むアイオノマーブレンドを製造することになる。
【0050】
本発明において任意選択的に使用することが可能な有機酸は、非揮発性、かつ、非移行性のものである。本発明において使用可能な有機酸としては、脂肪族、単官能(飽和、不飽和、またはマルチ不飽和)有機酸、特に6〜36個の炭素原子を有するものが挙げられる。それらの有機酸の塩もまた使用することが可能である。直鎖状の飽和脂肪酸または脂肪酸塩は、特に、6〜36個の炭素原子を有する単官能有機酸またはその塩であるのが好ましい。
【0051】
本発明において有用な、好適な有機酸としては、カプロン酸、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ステアリン酸、ベヘン酸、パルミチン酸およびミリスチン酸などが挙げられる。ステアリン酸、ベヘン酸、パルミチン酸およびミリスチン酸が、より好ましい。
【0052】
1種の有機酸または1種の有機酸塩が本発明の熱可塑性組成物に含まれているのが好ましい。しかしながら、2種以上の有機酸の組合せ、1種または複数の有機酸塩の組合せ、および少なくとも1種の有機酸と少なくとも1種の有機酸塩との組合せを考えることもできる。
【0053】
さらに、1種または複数の有機酸を含むブレンドに追加の中和剤を添加して、所望のレベルの中和状態とすることも可能である。しかしながら、当業者には自明のことではあるが、有機酸および追加の中和剤を添加する効果は、有機酸の塩、または有機酸と有機酸の塩の両方を含むポリマーブレンドを作ることになる。
【0054】
1種または複数のロジン、および任意選択的に1種または複数の有機酸および/またはその塩を、その組成物の硬度および/または剛性特性を向上させるのに充分な量で非変性のアイオノマーに添加する。1種または複数のロジンおよび任意成分の有機酸および/または塩は、熱可塑性組成物またはブレンドの全量の、少なくとも約3%(重量基準)から最高約50%(重量基準)または約60%(重量基準)の量で添加するのが好ましい。1種または複数のロジンおよび任意成分の有機酸および/またはその塩を、少なくとも約8または10重量%の量で添加するのが、より好ましい。注目すべきは、1種または複数のロジンおよび任意成分の有機酸および/またはその塩を、少なくとも約20重量%の量、より好ましくは少なくとも約25重量%の量で添加した組成物である。
【0055】
別な方法として、1種または複数のロジン誘導体および1種または複数の有機酸および/またはその塩を、その組成物の硬度および/または剛性特性を向上させるのに充分な量で非変性のアイオノマーに添加する。1種または複数のロジン誘導体を、約3重量%〜約50重量%の量で添加し、そして1種または複数の有機酸またはその塩を約5重量%〜約50重量%の量で添加し、その結果として、1種または複数のロジン誘導体と1種または複数の有機酸および/または塩を合計した重量%が、本発明の熱可塑性組成物の全量の、約8または10重量%から約50または60重量%になるようにすることができる。注目すべきは、1種または複数のロジン誘導体および任意成分の有機酸および/またはその塩を、少なくとも約20重量%の量、より好ましくは少なくとも約25重量%の量で添加した組成物である。
【0056】
さらに別な方法としては、任意選択的に1種または複数の有機酸および/またはその塩と共に、1種または複数のロジンおよび1種または複数のロジン誘導体を組合せて使用する場合、それらを、その組成物の硬度特性を向上させるのに充分な量で非変性のアイオノマーに添加する。ロジンおよび/またはロジン誘導体、および任意成分の有機酸および/または塩は、熱可塑性組成物またはブレンドの全量の、少なくとも約3%(重量基準)から最高約50%(重量基準)または約60%(重量基準)の量で添加するのが好ましい。ロジンおよび/またはロジン誘導体、および任意成分の有機酸および/またはその塩を、少なくとも約8または10重量%の量で添加するのが、より好ましい。注目すべきは、ロジンおよび/またはロジン誘導体、および任意成分の有機酸および/またはその塩を、少なくとも約20重量%の量、より好ましくは少なくとも約25重量%の量で添加した組成物である。
【0057】
先に示したように、上述のハードなアイオノマー組成物を、追加の非アイオノマー性熱可塑性ポリマーとブレンドすることも可能である。好適な非アイオノマー性熱可塑性樹脂を、非限定的に挙げてみれば、熱可塑性エラストマーたとえば、ポリウレタン、ポリ−エーテル−エステル、ポリ−アミド−エーテル、ポリエーテル−ウレア、ペバックス(Pebax,商標)(ポリエーテル−ブロック−アミドをベースとした一連のブロックコポリマー、ペンシルバニア州フィラデルフィア(Philadelphia,PA)のアトケム(Atochem)から市販)、スチレン−ブタジエン−スチレン(SBS)ブロックコポリマー、スチレン−(エチレン−ブチレン)−スチレンブロックコポリマーなど、ポリアミド(オリゴマー性およびポリマー性)、ポリエステル、ポリオレフィンたとえばポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン/プロピレンコポリマーなど、エチレンと各種のコモノマー、たとえば、酢酸ビニル、(メタ)アクリル酸エステル、(メタ)アクリル酸、エポキシ−官能性モノマー、COなどとのコポリマー、ポリカーボネート、アクリル樹脂たとえばメタクリル酸メチルのホモポリマーまたはコポリマー、ポリスチレン、無水マレイン酸、エポキシ化などを用いるか、共重合によるかグラフト化することによって官能化させたポリマー、エラストマーたとえばEPDM、メタロセン触媒によるPEおよびコポリマー、熱硬化性エラストマーの微粉砕粉体などがある。
【0058】
本発明の熱可塑性組成物には、100重量部のハードなアイオノマーブレンドを基準にして、200重量部までの熱可塑性非アイオノマー性ポリマーを含むことができる。
【0059】
本発明の熱可塑性組成物の中に、任意成分の充填剤を添加してアイオノマーまたは、アイオノマーと他の材料とのブレンドの密度を上げることも可能である。充填した組成物の密度は、未充填のポリマーの密度から1.8グラム/ccまでの範囲の密度とするのが好ましい。一般には、充填剤は、その密度が約4グラム/ccより大、好ましくは5グラム/ccより大の無機物とし、組成物の全重量を基準にして、0〜約60重量%の間の量で存在させる。有用な充填剤の例としては、酸化亜鉛、硫酸バリウム、ケイ酸鉛および炭化タングステン、酸化スズ、さらにはその他公知のそれらに対応する塩および酸化物などが挙げられる。アイオノマーの中和が完全にまで達していない場合には、充填剤材料が、ポリマー成分と非反応性であるか、またはほとんど非反応性であるのが好ましい。アイオノマーが完全に中和されているならば、反応性充填剤を使用することも可能である。酸化亜鉛のグレードとしては、特にアイオノマーが完全には中和されていない様な場合には、遊離の酸と容易に反応してその結果として架橋とそれに伴うMIの低下を招いたりすることがない、たとえばペンシルバニア州モナカ(Monaca,PA)のジンク・コーポレーション・オブ・アメリカ(Zinc Corporation of America)から入手可能なXX503Rの様なグレードが好ましい。
【0060】
本発明の組成物には、100重量部のハードなアイオノマーブレンドを基準にして、170重量部までの1種または複数の充填剤を含むことができる。
【0061】
本発明において使用するのに適したその他の添加剤としては、二酸化チタン(これは、白化剤または充填剤として使用できる);その他の顔料;任意成分の光沢剤;界面活性剤;加工助剤などを挙げることができる。
【0062】
繊維、たとえばチョップド繊維またはパルプ、および無機または有機材料を本発明の組成物の中に加えて、たとえば補強性や耐摩耗性を付与することも可能である。
【0063】
本発明のポリマー組成物にはさらに、一般的に熱可塑性組成物において使用される、たとえば安定剤や加工助剤のようなその他の添加剤を含んでいてもよい。それらの添加剤の好適なレベル、および添加剤をポリマー組成物の中に取り込む方法は、当業者には公知である。たとえば、(非特許文献3)を参照されたい。
【0064】
簡単に言えば、本発明のある熱可塑性組成物を調製するためには、1種または複数のアイオノマーを、ロジンおよび/またはロジン誘導体、および、任意選択的に1種または複数の有機酸またはその塩とブレンドする。
【0065】
より詳しくは、本発明のロジン変性アイオノマーは、
(a)(1)エチレン、α,β−エチレン性不飽和C〜Cカルボン酸コポリマーまたはその溶融加工可能なアイオノマー(軟化性モノマーを任意選択的に添加したコポリマーを含む)を、(2)充分な量のロジンおよび/またはロジン誘導体、および(3)任意選択的に、充分に非揮発性、非移行性の有機酸またはその塩とを溶融ブレンドする工程、およびそれと同時並行またはその後に、
(b)添加水の存在下に充分な量のカチオンソースを添加して、酸コポリマー、ロジン、および存在しているならば非揮発性、非移行性の有機酸に含まれる、すべての酸残基を所望のレベルで中和させる工程、により製造することができる。
【0066】
別な方法としては、本発明の熱可塑性組成物を、ロジンおよび/またはロジン誘導体、ならびに任意選択的に有機酸(またはその塩)を溶融加工可能なアイオノマーと溶融ブレンドし、次いで、必要ならば、同一または異なったカチオンを用いてさらに中和して、得られるブレンドに所望の中和レベルを与えることによって、製造することもできる。
【0067】
さらに別な方法としては、非中和のエチレン/酸コポリマー、ロジンおよび/またはロジン誘導体、および任意成分の有機酸または塩を溶融ブレンドし、インサイチューたとえば押出機の中で中和させる。この場合には、ブレンドと所望のレベルへの中和とを、1段で実施することが可能である。
【0068】
たとえば、(メタ)アクリル酸を含むエチレンコポリマーを、ロジン、ロジン塩、および任意選択的にステアリン酸カルシウム(またはその他の有機酸のカルシウム塩)と溶融ブレンドすることも可能であるし、また別な方法では、ロジンおよび任意選択的にステアリン酸(または他の有機酸)と溶融ブレンドするが、その際インサイチューで水酸化ナトリウムのようなカチオンソースを用いて中和して、ロジンおよびステアリン酸変性コポリマーを、各種のレベル(最高100%を含む)で中和されたロジン塩およびステアリン酸塩変性アイオノマーに変換させることもできる。
【0069】
混合イオンを有する組成物は、既に部分的に中和されているアイオノマーまたはアイオノマーブレンドを、1つまたは複数の異なったカチオンソースを用いて処理することにより、調製することができる。たとえば、水酸化ナトリウムを用いた中和が完全ではないアイオノマーまたはアイオノマーブレンドを、ナトリウムおよびマグネシウムイオンの混合物を用いて変性することにより、アイオノマーまたはアイオノマーブレンドを形成させることもできる。混合カチオンを有するアイオノマーまたはアイオノマーブレンドは、ナトリウムアイオノマーまたはアイオノマーブレンドを、ナトリウムアイオノマーの未中和であった酸官能基の幾分かを中和させるのに充分な量の水酸化マグネシウムを用いて溶融ブレンドすることにより、製造することができる。
【0070】
さらなる例を挙げれば、独国ディンケルスビュール(Dinkelsbuehl,Germany)のワーナー・アンド・フライダー・レーベンスミッテルテクニーク・GmbH(Werner & Pfleiderer Lebensmitteltechnik GmbH)から入手可能なワーナー・アンド・フライダー(Werner & Pfleiderer)2軸スクリュー押出機を使用して、酸コポリマーを、その酸コポリマーを中和するのに化学量論的に充分な量の水酸化マグネシウムと、ロジンおよび/またはロジン誘導体と、任意選択的に1種または複数の有機酸または有機酸の塩と予備ブレンドすることにより、ペレット状のブレンドを得ることができる。そのペレット状ブレンドを、W&P2軸スクリュー押出機の中で、追加の水の存在下に溶融混合と中和を行う。
【0071】
本発明の組成物は、40より高い、典型的には約50、55、または60以上のショアーD硬度を示す。65以上のショアーD硬度を示す組成物が好ましく、70または75以上のショアーD硬度を示す組成物ならば、より好ましい。
【0072】
本発明の組成物は、50kpsiを超える、典型的には60kpsi以上の曲げ弾性率を示す。注目すべきは、65kpsi以上の曲げ弾性率を示す組成物および70kpsi以上の曲げ弾性率を示す組成物である。75kpsi以上、別な場合では80kpsi以上、別な場合では90kpsi以上、別な場合では100kpsi以上の弾性率を示す組成物が好ましい。
【0073】
本発明の熱可塑性組成物は、多くの有利な物理的性質を与える。たとえば、本発明のロジン変性アイオノマーは、非変性のアイオノマーに比較して、高い剛性、ショアーD硬度、曲げ弾性率、および/またはアッティ圧縮(Atti compression)を示すことができる。また、比較的酸含量が低いアイオノマーのロジンブレンドでも、比較的酸含量が高いアイオノマーと同等またはよりハードとすることができる。
【0074】
本発明によって得られる顕著な1つの相乗効果は、比較的にハードな、あるいは剛直な本発明の組成物が、思いがけないことには高い弾性を有していることである。たとえば、比較的ハードまたは剛直な本発明の組成物を用いてカバーされたツーピースゴルフボールが、驚くべきことには、より弾性の高い組成物を用いてカバーされた同一のコアからなるツーピースボールが示すよりも、高い反撥係数を示すことができる。同様にして、比較的ハードまたは剛直な本発明の組成物を含むマントルまたは中間層を有する多層ゴルフボールもやはり、予想もできなかったことであるが、対応するマントルまたは中間層により弾性の高い材料を使用する以外は同等の多層ボールが示すよりも、高い反撥係数を示すことができる。
【0075】
さらに、ロジンのタイプが、ロジン−アイオノマーブレンドの物理的性質に顕著に高い影響を与える。そのことから、本発明の熱可塑性組成物は、樹脂を選択することによって、システマチックに要求に合わせることができる。たとえば、曲げ弾性率の硬度に対する比は、ロジンを選択するだけで大幅に変化する。同様にして、ロジンの選択だけが異なり、他の点においては同一のブレンドのメルトインデックスを1桁以上変化させることも可能である。他の点では同一のブレンドの曲げ弾性率の測定においても、同様の顕著な変化が認められる。
【0076】
これら多くの望ましい物理的性質があり、またそれを調節することが比較的に容易であることを、ゴルフボールの性能特性を最適化するために有利に使用することが可能となる。
【0077】
(ゴルフボール中におけるハードなアイオノマー組成物の使用)
本明細書に記載したハードなアイオノマーブレンドは、ゴルフボール、またはワンピースゴルフボールのカバー、マントル、中間層、コア、およびセンターにおいて使用するための、当業者の教示のレベルにおいて、当業者が教示する1つまたは複数の材料の有用な置きかえ物である。たとえば、ゴルフボールのカバーのための材料としては、以下の特許を参照されたい:米国特許公報(特許文献4);米国特許公報(特許文献5);米国特許公報(特許文献6);米国特許公報(特許文献7);米国特許公報(特許文献8);米国特許公報(特許文献9);米国特許公報(特許文献10);米国特許公報(特許文献11);米国特許公報(特許文献12);米国特許公報(特許文献13);米国特許公報(特許文献14);米国特許公報(特許文献15);米国特許公報(特許文献16);米国特許公報(特許文献17);米国特許公報(特許文献18);米国特許公報(特許文献19);米国特許公報(特許文献20);米国特許公報(特許文献21);米国特許公報(特許文献22);米国特許公報(特許文献23);米国特許公報(特許文献24);米国特許公報(特許文献25);米国特許公報(特許文献26);米国特許公報(特許文献27);米国特許公報(特許文献28);米国特許公報(特許文献29);米国特許公報(特許文献30);米国特許公報(特許文献31);米国特許公報(特許文献32);米国特許公報(特許文献33);米国特許公報(特許文献34);米国特許公報(特許文献35);米国特許公報(特許文献36);米国特許公報(特許文献37);米国特許公報(特許文献38);米国特許公報(特許文献39);米国特許公報(特許文献40);米国特許公報(特許文献41);米国特許公報(特許文献42);米国特許公報(特許文献43);および(特許文献44)。
【0078】
本発明に従って製造したゴルフボールには、従来からのゴルフボール材料、あるいは各種のゴルフボールカバー、センター、コア、または中間層材料、たとえばサーリン(Surlyn,登録商標)アイオノマー樹脂、バラタゴム、熱硬化性または熱可塑性ポリウレタンなど、に置きかえた本明細書に記載したハードなアイオノマーブレンドを含む。
【0079】
ゴルフボールに使用するための本発明の熱可塑性組成物の好ましい実施態様には、
(i)少なくとも1種のE/X/Yコポリマーであって、Eはエチレンであり、XはC〜Cα,β−エチレン性不飽和カルボン酸であり、Yはアクリル酸アルキルおよびメタクリル酸アルキルから選択される軟化性コモノマーであり、アルキル基は1〜8個の炭素原子を有し、XはE/X/Yコポリマーの約2〜約30重量%、YはE/X/Yコポリマーの0〜約40重量%である、E/X/Yコポリマーと、
(ii)約3重量%〜約50重量%の、ロジン、ロジン誘導体、またはロジンとロジン誘導体との組合せと、任意選択的に、
(iii)約5重量%〜約50重量%の1種または複数の有機酸またその塩を含み、
成分(ii)と成分(iii)(存在している場合)を合わせた重量%が、全組成物の約3重量%〜約60重量%となるようにするが、ここで、そのブレンド中のすべての成分におけるカルボン酸官能基を合わせたものの内の少なくとも一部が、1種または複数のアルカリ金属、遷移金属、またはアルカリ土類金属カチオンによって中和されているが、ただし、成分(ii)がロジンエステルからなる場合には、成分(iii)の存在は必須である。
【0080】
注目すべきは、以下の組成物である:
(i)少なくとも1種のE/X/Yコポリマーであって、Eはエチレンであり、XはC〜Cα,β−エチレン性不飽和カルボン酸であり、Yはアクリル酸アルキルおよびメタクリル酸アルキルから選択される軟化性コモノマーであり、アルキル基は1〜8個の炭素原子を有し、XはE/X/Yコポリマーの約2〜約30重量%、YはE/X/Yコポリマーの0〜約40重量%である、E/X/Yコポリマーと、
(ii)約3重量%〜約50重量%のロジンと、を含み、
ここで、そのブレンド中のすべての成分におけるカルボン酸官能基を合わせたものの内の少なくとも一部が、1種または複数のアルカリ金属、遷移金属、またはアルカリ土類金属カチオンによって中和されている。
【0081】
先に示したように、本発明のゴルフボールは、成形プロセスによって、コアのまわりに、ハードなアイオノマーブレンドを含むカバー、マントル、またはその他の中間層を形成させることにより、製造することができる。たとえば、圧縮成形においては、ディンプルをつけたゴルフボールの型の中の、コアのまわりに位置させた滑らかな半球形のシェルの中に、たとえば、約380゜F〜約450゜Fで射出することによりカバー組成物を形成させ、たとえば、200〜450゜Fで1〜10分間圧縮成形にかけ、次いで50〜70゜Fで1〜10分間かけて冷却し、シェルを互いに融合させた単一のボールを形成させる。射出成形の1つのタイプにおいては、カバーまたはマントル組成物を、ゴルフボールの型の中央に位置させたコアのまわりに型温度約50゜F〜150゜Fで、ある時間かけて、直接射出成形する。
【0082】
ワンピースボール、コア、およびセンターは、同様の射出成形方法により製造することができる。
【0083】
成形した後で、製造されたゴルフボールを、バフ仕上げ、塗装、捺印など各種のさらなる加工工程にかけることができる。
【0084】
前記ゴルフボールは、従来からのディンプルパターンを有していて、ポリウレタン塗料でコーティングするか、見栄えをよくするための塗装をすることができるが、そのようなコーティングおよび/または塗装は、ボールの性能特性には影響しない。しかしながら、コーティングおよび/または塗装は、ボールの耐擦り傷性には影響する可能性がある。具体的には、そのようなコーティングおよび/または塗装によって、その仕上げをしなかったボールに比較して、耐擦り傷性が改良されることがある。本発明の目的においては、コーティングおよび/または塗装および/または捺印は、ゴルフボールカバーの一部とはみなさないものとする。
【0085】
(ワンピースゴルフボール)
本明細書で使用するとき、「ワンピースボール」という用語は、熱可塑性組成物から成形されたゴルフボールを指していて、すなわち、エラストマー性の巻物、コアまたはマントルを有さず、ボール全体が均質な球状固体となっている。先に述べたように、ワンピースボールは、直接射出成形法または圧縮成形法により製造される。そのようなボールにおいては、本明細書に記載したハードなアイオノマーブレンドを、それらのボールに典型的に使用されるその他の材料と組合せて用いることにより、本発明のゴルフボールを製造する。注目すべきは、本発明の組成物がボール全体を形成しているようなワンピースゴルフボールである。
【0086】
本明細書で使用するとき、「マルチピースボール」という用語は、ツーピース、スリーピースおよび多層ゴルフボール(以下に詳述)を指すものとする。
【0087】
(ツーピースゴルフボール)
本明細書で使用するとき、「ツーピースボール」という用語は、コアとカバーからなるゴルフボールを指す。先に述べたように、ツーピースボールを製造するには、まず熱硬化性または熱可塑性組成物からコアを成形し、得られたコアを引き抜き可能なピンを用いて射出成形キャビティ中に位置させ、次いでそのコアのまわりにカバー材料を射出成形する。別な方法として、コアの上にカバー材料を圧縮成形することによって、カバーを作ることもできる。本明細書に記載したハードなアイオノマーブレンドを、コアとして使用することもできるし、あるいは好ましくはそのようなゴルフボールのカバーとして使用して、本発明のゴルフボールを製造する。
【0088】
(スリーピースゴルフボール)
本明細書で使用するとき、「スリーピースボール」という用語は、センター、そのセンターのまわりに巻き付けた従来からのエラストマー性の巻物、およびカバーからなる、ゴルフボールを指す。スリーピースゴルフボールは、たとえば、米国特許公報(特許文献45)に詳述されているような、公知の技術により製造することができる。本明細書に記載したハードなアイオノマーブレンドを、そのようなゴルフボールのカバーおよび/またはセンターとして使用して、本発明のゴルフボールを製造することができる。
【0089】
(多層ゴルフボール)
本明細書で使用するとき、「多層ボール」という用語は、コア、カバー、およびそのコアとカバーの間に1つまたは複数のマントルまたは中間層を含む、ゴルフボールを指す。先に述べたように、多層ボールを製造するには、まずコアを成形または製造し、そのコアの上にマントルを典型的には圧縮成形または射出成形し、次いでそのマントルの上にカバーを圧縮成形または射出成形する。
【0090】
先に示したように、マルチピースボールのゴルフボールコアは、固形物であっても、巻物であってもよい。固形物のコアは、圧縮成形法または射出成形法を用いて、一体物として成形することができる。巻物のコアは一般に、固形のセンターまたは液体を充填した風船状のセンターのまわりに、非常に太い弾性糸を巻き付けることによって製造する。先に示したように、多層ボールを製造するには、追加のマントル層をコアの上に加える。本発明の目的のためには、「固形のコア」という用語は、ゴムバンドを巻き付けていない、成形コアのことを指す。ゴルフボールのコアまたはセンターは典型的には、熱硬化性ポリウレタンまたは熱可塑性ウレタン樹脂を含む。
【0091】
本明細書に記載したハードなアイオノマーブレンドは、本発明のマルチピースゴルフボールの固形のコア、マントル、中間層、またはカバーに使用することができる。
【0092】
この対象発明において使用される弾性と圧縮の具体的な組合せは、目的とするゴルフボールのタイプ(たとえば、ワンピース、ツーピース、スリーピース、または多層)、および得られるゴルフボールに要求される性能のタイプにその大半を依存するが、それらについては後に詳述する。さらに、ゴルフボールは典型的には、全米ゴルフ協会(United States Golfing Association,U.S.G.A.)が定めた最大重量制限(45.93グラム以下)および最小サイズ制限(直径が、1.680インチすなわち42.67mm以上)、およびゴルフ管理機構(golfer’s governing authority)が定めた幾つかのその他の制限を満たしていなければならない。ボールの密度が約1.128g/cmであるのが好ましい。
【0093】
ツーピース、スリーピースまたは多層ボールにおいては、ゴルフボールの1つまたは複数の構成要素(すなわち、コア、マントル、中間層、および/またはカバー)に充分な量の充填剤を添加して、ゴルフボールの質量を、ゴルフ管理機構によって決められた限度に適合するレベルに調節することができる。上述の質量とサイズの規制は、ゴルフボール全体に対して適用される。そのため、ゴルフボールの密度は、その半径に応じて必ずしも一定ではないということになる。したがって、本発明の熱可塑性組成物を含むボールの各種構成要素の密度は、充填剤を用いることにより、1.128g/cmよりも大きい密度にもあるいは小さい密度にも変化させることが可能であるが、ただし、ゴルフボール全体としては、ゴルフ管理機構によって決められた最大重量を超えたり、最小直径より小さくなったりしてはならない。注目すべきはワンピースボールで、この場合、本発明の組成物に充分な量の充填剤を加え、それによって、充填組成物から形成されるゴルフボールの質量が、ゴルフ管理機構によって定められた限度に適合するように密度を調整する。ボールの密度が約1.128g/cmになるように、充分な量の充填剤を使用するのが好ましい。
【0094】
(他の用途におけるハードなアイオノマー組成物の使用)
先に示したように、アイオノマーと、ロジン、ロジン誘導体、またはロジンおよびロジン誘導体の両方とを含む本発明の熱可塑性組成物は、ワンピースゴルフボールならびにマルチピースゴルフボールのカバー、マントル、中間層、コアおよびセンター以外にも、幅広い対象物においても有用である。
【0095】
ゴルフボール以外の対象物において使用するための好ましい実施態様は、以下の組成物である。
(i)少なくとも1種のE/X/Yコポリマーであって、Eはエチレンであり、XはC〜Cα,β−エチレン性不飽和カルボン酸であり、Yはアクリル酸アルキルおよびメタクリル酸アルキルから選択される軟化性コモノマーであり、アルキル基は1〜8個の炭素原子を有し、XはE/X/Yコポリマーの約2〜約30重量%、YはE/X/Yコポリマーの0〜約40重量%である、E/X/Yコポリマーと、
(ii)約3重量%〜約50重量%の、ロジン、ロジン誘導体、またはロジンとロジン誘導体との組合せと、任意選択的に、
(iii)約5重量%〜約50重量%の1種または複数の有機酸またその塩を含み、
成分(ii)と成分(iii)(存在している場合)を合わせた重量%が、全組成物の約3重量%〜約60重量%となるようにするが、ここで、そのブレンド中のすべての成分におけるカルボン酸官能基を合わせたものの内の少なくとも一部が、1種または複数のアルカリ金属、遷移金属、またはアルカリ土類金属カチオンによって中和されている。
【0096】
好適で好ましい任意成分および濃度範囲は、ゴルフボールにおいて有用な本発明の実施態様において先に述べたものと同じである。
【0097】
たとえば、本発明の組成物は、他のスポーツ用品用途においても有用であり、具体例としては、ゴルフシューズのスパイク、ゴルフクラブの各種構成要素たとえば、ゴルフクラブのフェースプレートまたはインサート、成形ゴルフクラブヘッド、クラブヘッドのコーティングまたはケーシング、およびゴルフクラブヘッドの内部キャビティのための充填剤などが挙げられる。
【0098】
この組成物はさらに、クラブフェースに使用する当業者周知の材料に置きかえて使用することも可能で、そのような材料としては、たとえば、充填材または繊維で強化したポリ−イミド、(メタ)アクリル酸メチルコポリマー、炭素−繊維強化ポリカーボネート、PMMAと架橋性モノマーをベースとした材料、および架橋合成ゴムなどが挙げられる。この組成物はまた、ウッドのクラブヘッドに含浸させるために使用される硬化アクリルモノマー、オリゴマー、ポリマー、クラブヘッドにおけるゴム状弾性コア、および成形ポリウレタンクラブヘッドに、置きかえることも可能である。このようなことで、ゴルフクラブヘッドは、打球のために用いられるフロントストライキングフェースと、そのストライキングフェースの上に搭載するインサートとを有するように製造することが可能であるが、ここで前記インサートに、上述の組成物を含む成形物品が含まれる。さらに、金属ボディとその金属ボディの前面の打球面に固定され上述の組成物から作られたインサートプレートとを含むゴルフクラブヘッドに、溝付きに成形された外側金属層を積層させる。それに加えて、本発明には、シャフトと、そのシャフトに固定したクラブヘッドを有するゴルフクラブも含まれるが、ここで、そのクラブヘッドは上述のものであり、上述の組成物を含む成分が含まれる。
【0099】
本発明の組成物はさらに、履き物の構造部材、たとえば履き物のための、かかと革、つま先の詰め物、および靴底、さらにはスパイクなどの成形物品を製造するのにも有用である。履き物の構造部材、たとえばかかと革、つま先の詰め物、および靴底は、履き物構造のための形状を維持するのに役立っている。本明細書で使用するとき、「かかと革(heel counter)」という用語は、靴のかかとの部分に形状と構造を付与するための硬い、曲線状の部品を指す。本明細書で使用するとき、「つま先の詰め物(toe puff、またはtoe box)という用語は、靴のつま先の部分に形状と構造を付与するための硬い、アーチ状の部品を指す。本明細書で使用するとき、「靴底(sole)」という用語は、靴の底に形状と構造を付与するための硬く、一般にフラットな部品を指す。これらの構造部材は典型的には、靴の内部構造に組み入れられていて、着用および/または外観のための他の部材で覆われている。
【0100】
特にゴルフ用具および靴に関連する、材料と用途の例については、以下の特許を参照されたい:米国特許公報(特許文献46);米国特許公報(特許文献47);米国特許公報(特許文献48);米国特許公報(特許文献49);米国特許公報(特許文献50);(特許文献51);(特許文献52);(特許文献53);(特許文献54);(特許文献55);(特許文献56);(特許文献57);(特許文献58);(特許文献59);(特許文献60);(特許文献61);(特許文献62);(特許文献63);および(特許文献64)。
【0101】
本発明の組成物はさらに、非スポーツ商品用途においても有用であり、そのような用途の例を挙げれば、コーキング材、シーラント、セメントおよびアスファルト用変性剤、およびコーティングなどがある。それらに加えて、本発明の組成物は、玩具、装飾物、不活性物質のための容器などにおいても有用である。
【0102】
特に注目すべきは、以下に示す本発明の実施態様である:
1.熱可塑性組成物であって、
(i)少なくとも1種のE/X/Yコポリマーであって、Eはエチレンであり、XはC〜Cα,β−エチレン性不飽和カルボン酸であり、Yはアクリル酸アルキルおよびメタクリル酸アルキルから選択される軟化性コモノマーであり、アルキル基は1〜8個の炭素原子を有し、XはE/X/Yコポリマーの約2〜約30重量%、YはE/X/Yコポリマーの0〜約40重量%である、E/X/Yコポリマーと、
(ii)約3重量%〜約50重量%のロジン;または約3重量%〜約50重量%のロジンエステルと、任意選択的に
(iii)約5重量%〜約50重量%の1種または複数の有機酸またその塩を含み、
成分(ii)と成分(iii)(存在している場合)を合わせた重量%が、全組成物の約3重量%〜約60重量%となるようにするが、ここで、そのブレンド中のすべての成分におけるカルボン酸官能基を合わせたものの内の少なくとも一部が、1種または複数のアルカリ金属、遷移金属、またはアルカリ土類金属カチオンによって中和されているが、ただし、成分(ii)がロジンエステルからなる場合には、成分(iii)の存在は必須である、熱可塑性組成物。
【0103】
2.組成物1であって、以下の
(i)少なくとも1種のE/X/Yコポリマーであって、Eはエチレンであり、XはC〜Cα,β−エチレン性不飽和カルボン酸であり、Yはアクリル酸アルキルおよびメタクリル酸アルキルから選択される軟化性コモノマーであり、アルキル基は1〜8個の炭素原子を有し、XはE/X/Yコポリマーの約2〜約30重量%、YはE/X/Yコポリマーの0〜約40重量%である、E/X/Yコポリマーと、
(ii)約3重量%〜約50重量%のロジンと、を含み、
ここで、そのブレンド中のすべての成分におけるカルボン酸官能基を合わせたものの内の少なくとも一部が、1種または複数のアルカリ金属、遷移金属、またはアルカリ土類金属カチオンによって中和されている、組成物。
【0104】
3.組成物1または2であって、非アイオノマー性熱可塑性ポリマーから選択される少なくとも1種の追加の成分をさらに含む、組成物。
【0105】
4.組成物3であって、前記少なくとも1種の非アイオノマー性熱可塑性ポリマーが、ポリウレタン;ポリウレア;ポリアミド;ポリエステル;ポリスチレン;アクリルポリマー;ポリカーボネート;コポリ−エーテル−エステル;コポリ−エーテル−アミド;コポリ−エーテル−ウレタン;コポリ−エーテル−ウレア;ポリオレフィン;エラストマー性ポリオレフィン;エチレン−プロピレン−ジエンモノマーポリマー;メタロセン触媒によるポリエチレンおよびポリプロピレン;エチレンと、極性コモノマーたとえば、酢酸ビニル、(メタ)アクリル酸アルキル、一酸化炭素、およびエポキシ含有コモノマーとのコポリマー;無水マレイン酸変性ポリマー;およびスチレン−ブタジエンブロックコポリマーおよび誘導体をベースとする熱可塑性エラストマー、からなる群より選択される、組成物。
【0106】
5.組成物1〜4であって、約60以上のショアーD硬度を示す、組成物。
【0107】
6.組成物5であって、65以上のショアーD硬度を示す、組成物。
【0108】
7.組成物6であって、70以上のショアーD硬度を示す、組成物。
【0109】
8.組成物1〜4であって、60kpsi以上の曲げ弾性率を示す、組成物。
【0110】
9.組成物8であって、65kpsi以上の曲げ弾性率を示す、組成物。
【0111】
10.組成物9であって、70kpsi以上の曲げ弾性率を示す、組成物。
【0112】
11.組成物10であって、75kpsi以上の曲げ弾性率を示す、組成物。
【0113】
12.組成物11であって、80kpsi以上の曲げ弾性率を示す、組成物。
【0114】
13.組成物12であって、90kpsi以上の曲げ弾性率を示す、組成物。
【0115】
14.組成物13であって、100kpsi以上の曲げ弾性率を示す、組成物。
【0116】
15.ワンピースゴルフボールであって、組成物1〜14の1つまたは複数を含む、ゴルフボール。
【0117】
16.ゴルフボール15であって、前記ゴルフボールを製造するために、使用する前記組成物に、ゴルフ管理機構により定められた限度に適合するレベルに前記ゴルフボールの質量を調整するのに充分な充填剤を添加した、ゴルフボール。
【0118】
17.ワンピースゴルフボールであって、組成物1〜14の1つまたは複数から本質的になる、ゴルフボール。
【0119】
18.マルチピースゴルフボールであって、ゴルフボールを形成する、カバー、マントル、各種中間層、コアおよびセンターからなる群より選択される構成要素のいずれかが、熱可塑性組成物1〜14の1つまたは複数を含む、ゴルフボール。
【0120】
19.ゴルフボール18であって、ゴルフボールを形成する少なくとも1種の前記構成要素が、組成物1〜14の1つまたは複数を含み、そして、少なくとも1種の他の構成要素が非アイオノマー性熱可塑性ポリマーを含む、ゴルフボール。
【0121】
20.ゴルフボール18であって、組成物1〜14の1つまたは複数を含むカバーを有する、ゴルフボール。
【0122】
21.ゴルフボール19であって、熱可塑性または熱硬化性組成物のコア、熱可塑性組成物1〜14の1つまたは複数を含むマントルまたは中間層、および相対的によりソフトなカバーを有する、ゴルフボール。
【0123】
22.ゴルフボール21であって、前記カバーが、熱硬化性ポリウレタンまたは熱可塑性ウレタン樹脂を含む、ゴルフボール。
【0124】
23.マルチピースゴルフボールであって、ゴルフボールを形成する、カバー、マントル、各種中間層、コアおよびセンターからなる群より選択される構成要素のいずれかが、熱可塑性組成物1〜14の少なくとも1つから本質的になる、ゴルフボール。
【0125】
24.ゴルフボール18〜23であって、前記ゴルフボールの1つまたは複数の構成要素に、ゴルフ管理機構により定められた限度に適合するレベルに前記ゴルフボールの質量を調整するのに充分な充填剤を添加した、ゴルフボール。
【0126】
25.スポーツシューズのスパイク、ゴルフクラブのフェースプレートまたはインサート、成形ゴルフクラブヘッド、クラブヘッドのコーティングまたはケーシング、ゴルフクラブヘッドの内部キャビティのための充填剤、および履き物の構造からなる群より選択される成形物品であって、
(i)少なくとも1種のE/X/Yコポリマーであって、Eはエチレンであり、XはC〜Cα,β−エチレン性不飽和カルボン酸であり、Yはアクリル酸アルキルおよびメタクリル酸アルキルから選択される軟化性コモノマーであり、アルキル基は1〜8個の炭素原子を有し、XはE/X/Yコポリマーの約2〜約30重量%、YはE/X/Yコポリマーの0〜約40重量%である、E/X/Yコポリマーと、
(ii)約3重量%〜約50重量%の、ロジン、ロジンエステル、またはロジンとロジンエステルの両方と、任意選択的に、
(iii)約5重量%〜約50重量%の1種または複数の有機酸またその塩を含有する熱可塑性組成物を含み、
成分(ii)と成分(iii)(存在している場合)を合わせた重量%が、全組成物の約3重量%〜約60重量%となるようにするが、ここで、そのブレンド中のすべての成分におけるカルボン酸官能基を合わせたものの内の少なくとも一部が、1種または複数のアルカリ金属、遷移金属、またはアルカリ土類金属カチオンによって中和されており、そして任意選択的に少なくとも1種の非アイオノマー性熱可塑性樹脂をさらに含む、成形物品。
【0127】
26.成形物品25であって、かかと革、つま先の詰め物、および靴底、からなる群より選択される履き物構造部材である、成形物品。
【0128】
27.コーキング材、シーラント、セメントおよびアスファルトのための変性剤、またはコーティングであって、
(i)少なくとも1種のE/X/Yコポリマーであって、Eはエチレンであり、XはC〜Cα,β−エチレン性不飽和カルボン酸であり、Yはアクリル酸アルキルおよびメタクリル酸アルキルから選択される軟化性コモノマーであり、アルキル基は1〜8個の炭素原子を有し、XはE/X/Yコポリマーの約2〜約30重量%、YはE/X/Yコポリマーの0〜約40重量%である、E/X/Yコポリマーと、
(ii)約3重量%〜約50重量%の、ロジン、ロジンエステル、またはロジンとロジンエステルの両方と、任意選択的に、
(iii)約5重量%〜約50重量%の1種または複数の有機酸またその塩を含有する熱可塑性組成物を含み、
成分(ii)と成分(iii)(存在している場合)を合わせた重量%が、全組成物の約3重量%〜約60重量%となるようにするが、ここで、そのブレンド中のすべての成分におけるカルボン酸官能基を合わせたものの内の少なくとも一部が、1種または複数のアルカリ金属、遷移金属、またはアルカリ土類金属カチオンによって中和されており、そして任意選択的に少なくとも1種の非アイオノマー性熱可塑性樹脂をさらに含む、コーキング材、シーラント、セメントおよびアスファルトのための変性剤、またはコーティング。
【0129】
28.シャフトと、前記シャフトに固定したクラブヘッドとを有するゴルフクラブであって、前記クラブヘッドが、打球のために用いられるフロントストライキングフェースと、そのストライキングフェースの上に搭載するインサートとを有し、前記インサートが成形物品25を含む、ゴルフクラブ。
【0130】
29.金属ボディと前記金属ボディの前面の打球面に固定されそして以下の組成物から作られたインサートプレートとを含む、ゴルフクラブヘッドであって、
(i)少なくとも1種のE/X/Yコポリマーであって、Eはエチレンであり、XはC〜Cα,β−エチレン性不飽和カルボン酸であり、Yはアクリル酸アルキルおよびメタクリル酸アルキルから選択される軟化性コモノマーであり、アルキル基は1〜8個の炭素原子を有し、XはE/X/Yコポリマーの約2〜約30重量%、YはE/X/Yコポリマーの0〜約40重量%である、E/X/Yコポリマーと、
(ii)約3重量%〜約50重量%の、ロジン、ロジンエステル、またはロジンとロジンエステルの両方と、任意選択的に、
(iii)約5重量%〜約50重量%の1種または複数の有機酸またその塩を含み、
成分(ii)と成分(iii)(存在している場合)を合わせた重量%が、全組成物の約3重量%〜約60重量%となるようにするが、ここで、そのブレンド中のすべての成分におけるカルボン酸官能基を合わせたものの内の少なくとも一部が、1種または複数のアルカリ金属、遷移金属、またはアルカリ土類金属カチオンによって中和されており、そして任意選択的に少なくとも1種の非アイオノマー性熱可塑性樹脂をさらに含み、前記組成物が溝付きに成形された外側金属層を積層されている、ゴルフクラブヘッド。
【0131】
31.アイオノマーの硬度および/または剛性を上昇させる方法であって、アイオノマーを、ロジン、ロジンエステル、またはロジンとロジンエステルの両方とブレンドすることによる、方法。
【0132】
32.ゴルフボールの反撥係数を上昇させる方法であって、アイオノマーを提供する工程、前記アイオノマーを、ロジン、ロジンエステル、またはロジンとロジンエステルの両方とブレンドして、アイオノマーブレンドを形成させる工程、および前記アイオノマーブレンドを成形してコア、センター、マントル、層、カバー、またはゴルフボール全体とする工程、を含む方法。
【0133】
33.ゴルフボールの硬度および/または剛性を上昇させる方法であって、アイオノマーを提供する工程、前記アイオノマーを、ロジン、ロジンエステル、またはロジンとロジンエステルの両方とブレンドして、アイオノマーブレンドを形成させる工程、および前記アイオノマーブレンドを成形してコア、センター、マントル、層、カバー、またはゴルフボール全体とする工程、を含む方法。
【0134】
これ以上の説明をしなくても、当業者ならば、上述の説明を利用すれば、本発明をその最大限にまで応用することが可能であろうと考えられる。以下の実施例は、本発明をさらに詳しく説明するためのものである。これらの実施例は、本発明を実施するにあたって現時点で好ましいと考えられるモードを記述しているが、それらは、本発明を説明するのが目的であって、本発明を限定しようとするものではない。
【実施例】
【0135】
(分析方法)
メルトインデックス(MI)は、ASTM D−1238に従って測定し、条件E、190℃で、2160グラムの荷重を用いたが、MIの数値はグラム/10分として報告した。
【0136】
ショアーD硬度はASTM D−2240に従って測定した。ショアーD硬度はまた、報告にあるように、ニートの樹脂の球体について測定した。
【0137】
反撥係数(COR)は球体の弾性の測定方法であって、その組成物の弾性、すなわち、衝撃を与えたときの跳ね返る能力の指標である。CORは、直径約1.51インチの大きさの球体を、空気式の発射筒から発射させて測定するが、その速度は発射筒のバレルの中の空気圧によって一定に決められている。その球体は、射出成形した試験用樹脂のニートな球体であってもよいし、あるいはマルチピースボールであってもよい。その球体は、初速度を測定している点から3フィート離れた位置にある鋼鉄板にあたり、跳ね返って、初速度の測定をしているのと同じ場所に設けた速度測定器を通過する。戻りの速度を初速度で割ったのが、CORである。初速度は一般に、125フィート/秒(COR−125)を用いる。
【0138】
アッティ圧縮(Atti Compression、Atti Comp.)はPGA圧縮(PGA Compression)とも呼ばれているが、ゴルフボールの変形に対する抵抗性と定義され、アッティ圧縮ゲージを用いて測定する。アッティ圧縮ゲージは、変形に対する抵抗性、すなわち直径1.680インチのゴルフボールの圧縮に対する抵抗性を測定するように設計されている。本明細書の実施例においては、少し小さい直径約1.51インチの球体を使用した。したがって、その直径の違いを補償するために、スペーサーあるいはシムを使用した。球体の直径を測定してから、厚さの異なる1つまたは複数のシムを選択して、球の直径と全部のシムの厚みを加えたものが、1.680インチ±0.0025インチの中に入るように、補正した。
【0139】
球体とシム(1つまたは複数)のPGA圧縮を測定してから、標準的な方法を用いて、得られた数値を数学的に補正して、球体の直径が本来の1.680インチからずれている分を補償する。具体的には、球体の直径とシムの厚みの合計が1.680インチよりも少ない場合には、1.680インチから0.001インチ低い毎に、1圧縮単位(compression unit)ずつ加えた。球体の直径とシムの厚みの合計が1.680インチよりも多い場合には、1.680インチから0.001インチ高い毎に、1圧縮単位ずつ減じた。
【0140】
耐衝撃性は、市販されている熱硬化性ポリブタジエンコアの上にカバーとしてハードな本発明のアイオノマー組成物を有するツーピースゴルフボールを、175フィート/秒の速度で鋼鉄板に向けて繰り返し発射して、鋼鉄板に対する衝撃によりそのゴルフボールが割れるまで繰り返すことにより、測定した。耐久性、すなわち本明細書に記載されているような、鋼鉄板に対するヒット数を、3個のゴルフボールについて測定して、平均の耐久性とした。
【0141】
(使用材料)
非中和のエチレン/(メタ)アクリル酸コポリマーは、本願特許出願人からヌクレル(Nucrel,登録商標)の商品名で市販されているものである。アイオノマーベース樹脂は、本願特許出願人からサーリン(Surlyn,登録商標)の商品名で市販されているものである。実施例において使用したアイオノマーは、メタクリル酸含量が15重量%または19重量%のいずれかであり、メルトインデックス(MI)が約60の、エチレン/(メタ)アクリル酸コポリマーから誘導したものである。エチレン/(メタ)アクリル酸コポリマーを標準的な条件下で中和して、アイオノマー樹脂を得る。これらの実施例で使用したアイオノマー樹脂としては、以下のものが挙げられる。
【0142】
【表1】

【0143】
ロジン塩は、コネチカット州スタンフォード(Stamford,CT)のレジノール・コーポレーション(Resinall Corporation)(レジノール(Resinall)社)から、レジノール(Resinall,商標)の商品名で市販されているものである。使用したグレードは以下の通りである。
【0144】
【表2】

【0145】
本発明による組成物は、ワーナー・アンド・フライダー(Werner & Pfleiderer)2軸スクリュー押出機を用いて、アイオノマー樹脂とロジン塩変性剤とを溶融ブレンドすることにより調製した。ブレンドした後で、その組成物を、機械的性質試験に合わせた形状に押出し成形した。
【0146】
比較例は、ロジン変性剤を含まないアイオノマーまたはアイオノマーブレンドであり、同様にして調製、押出し成形した。それらには、本発明の組成物の実施例に対応する番号を付けた(たとえば、実施例1および4は、比較例C1/4と同一のアイオノマーベース樹脂を使用しているが、ただし、実施例1および4には、表示したロジンも含まれている)。表1および2において、「−−」の印は、成分がその組成物に含まれていないことを示している。
【0147】
実施例および比較例として以下に述べる組成物においては、それぞれの成分について示すパーセントは、特定の例において特に断らない限り、熱可塑性ブレンドの全重量を基準にした重量パーセントである。
【0148】
(実施例1〜13および比較例)
実施例1〜13として調製した本発明の熱可塑性組成物を、表1に示す。これらの組成物は、射出成形して、機械的性質試験のための屈曲性のある試験片とした。周囲温度(約23℃)において2週間のアニーリングをしてから、ショアーD硬度を測定したが、その結果を表1に示す。それらの組成物を樹脂球体としても射出成形し、周囲温度において2週間を超えるエージングをした後、ゴルフボールとしての性質を試験した。ニートな球体のアッティ圧縮および反撥係数もまた、表1に示す。
【0149】
【表3】

【0150】
表1に示したデータから、本発明のロジン変性アイオノマーは、非変性のアイオノマーに比較して、高いショアーD硬度とアッティ圧縮を示すことが判る(たとえば、実施例1および4と比較例C1/4とを比較されたい)。さらに、酸コモノマー含量がより低いロジン変性アイオノマーが、より高い酸コモノマー含量を有する非変性のアイオノマーが示すショアーDの値と同等またはそれより高いショアーDにまで硬度を上げることができる(たとえば、実施例1および4と比較例C9とを比較されたい)。
【0151】
(実施例21〜28、31〜36、および比較例)
実施例21〜28および31〜36として表した本発明の熱可塑性組成物について、表2に示す。これらの組成物は、射出成形して、機械的性質試験のための屈曲性のある試験片とした。周囲温度(約23℃)における2週間のアニーリングの後、ショアーD硬度と曲げ弾性率を測定した。それに加えて、それらの組成物を射出成形によりニートな樹脂球体とし、周囲温度において2週間を超えるエージングをしてから、ゴルフボールとしての性質の試験をした。それらのニートな球体のアッティ圧縮、ショアーD硬度、および反撥係数についてもまた、表2に示す。
【0152】
【表4】

【0153】
表2に示したデータから、本発明のロジン変性アイオノマーは、非変性のアイオノマーに比較して、高いショアーD硬度およびまたは曲げ弾性率を示すことが判る(たとえば、実施例21および24と比較例C21〜24とを比較されたい)。酸コモノマー含量がより低いロジン変性アイオノマーの実施例では、より高い酸コモノマー含量を有する非変性のアイオノマーが示すショアーDの値と同等またはそれより高いショアーDにまで硬度を上げることができる(たとえば、実施例24と比較例C25〜28とを比較されたい)。
【0154】
表2のデータからはさらに、本発明のハードなアイオノマーブレンドが、約60〜約120の範囲の曲げ弾性率を示すことも判る。
【0155】
さらに、本発明のある種のハードなアイオノマーブレンドは、表3に見られるように約1〜約3の範囲のメルトインデックスを示し、本発明によって、比較的よりハードなあるいはより剛直な材料のための、より好ましい加工条件が選択できる可能性を示している。
【0156】
【表5】

【0157】
(実施例37〜42および比較例)
(表4に見られるように)、実施例37〜42ならびに比較例C39およびC43では、それぞれ実施例31〜36、C33/34、およびC21〜24の組成物を、同一の通常の熱硬化性ポリブタジエンコアの上に射出成形することにより成形して、ツーピースボールを製造した。
【0158】
【表6】

【0159】
これらの結果から判ることは、より剛直な本発明の組成物(たとえば、実施例33)を用いて覆ったツーピースボール(たとえば、実施例39)は、より弾性の高い組成物(たとえば、比較例C33)を用いて覆った同一の熱硬化性コアからなるツーピースボール(比較例C39)によって示されるCORよりも、高いCORを示す。したがって、実施例33は(表2に報告したニートな樹脂球体として試験したときに)、比較例C33よりもCORが低いにも関わらず、ツーピースボール中の熱硬化性コアを覆うカバーとして使用すると、すぐれた弾性を示す。
【0160】
(実施例43〜48)
実施例43〜48に示したように調製した本発明のハードなアイオノマー組成物について表5に示す。これらの組成物は、射出成形して、機械的性質試験のための屈曲性のある試験片とした。周囲温度(約23℃)における2週間のアニーリングを行ってから、ショアーD硬度および曲げ弾性率を下記のようにして測定したが、その結果を表5に示す。
【0161】
【表7】

【0162】
表5のデータから、ロジン−アイオノマーブレンドの物理的性質には、ロジンのタイプが大きな影響を持つことが判る。たとえば、ロジンの選択だけが異なり、他の点においては同一のブレンドのメルトインデックスが、1桁以上変化していた。同様にして、このシリーズにおける曲げ弾性率の間の最大の変動は、約2倍の違いがある。
【0163】
これらの結果から、明らかに、樹脂を選択することによって、本発明の熱可塑性組成物の性質をシステマチックに、要求に合わせることが可能である。たとえば、曲げ弾性率の硬度に対する比は、ロジンを選択するだけで、2倍にもなる。
【0164】
(実施例49〜50)
実施例49および50に従って製造した本発明のハードなアイオノマー組成物について、表6に示す。これらの組成物は、射出成形して、機械的性質試験のための屈曲性のある試験片とした。周囲温度(約23℃)における2週間のアニーリングを行ってから、ショアーD硬度および曲げ弾性率を測定したが、その結果を表7に示す。
【0165】
【表8】

【0166】
【表9】

【0167】
表7のデータから、本発明の熱可塑性ブレンドに有機酸塩を添加すると、有機酸塩を含まない同様の実施例、たとえば、実施例10および比較例C25〜28の場合に比較して、測定した物理的性質すべてにおいて数値が低下したことが判る。
【0168】
ある程度の具体性を持たせながら、本発明について記述、例示してきたが、特許請求項はそれらに限定されることはなく、むしろ、特許請求項およびその等価物の要素に対応した範囲が与えられるものと、理解すべきである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱可塑性組成物であって、
(i)少なくとも1種のE/X/Yコポリマーであって、Eはエチレンであり、XはC〜Cα,β−エチレン性不飽和カルボン酸であり、Yはアクリル酸アルキルおよびメタクリル酸アルキルから選択される軟化性コモノマーであり、アルキル基は1〜8個の炭素原子を有し、Xの量は、E/X/Yコポリマーの約2〜約30重量%であり、Yの量は、E/X/Yコポリマーの0〜約40重量%であり、そしてカルボン酸官能基が、1種または複数のアルカリ金属、遷移金属、またはアルカリ土類金属カチオンによって少なくとも部分的に中和されている、E/X/Yコポリマーと、(ii)少なくとも1種のロジン、少なくとも1種のロジン誘導体、またはロジンとロジン誘導体との両方と、を含むが、
ただし、成分(ii)がロジンエステルからなる場合には、前記熱可塑性組成物にはさらに、
(iii)1種または複数の有機酸、1種または複数の有機酸の塩、または有機酸と有機酸の塩との両方を含むことを特徴とする熱可塑性組成物。
【請求項2】
成分(ii)がロジンから本質的になることを特徴とする請求項1に記載の熱可塑性組成物。
【請求項3】
1種または複数の有機酸、1種または複数の有機酸の塩、または有機酸と有機酸の塩との両方を含むことを特徴とする請求項1に記載の熱可塑性組成物。
【請求項4】
少なくとも1種の非アイオノマー性熱可塑性ポリマーをさらに含むことを特徴とする請求項1、2、または3に記載の熱可塑性組成物。
【請求項5】
前記少なくとも1種の非アイオノマー性熱可塑性ポリマーが、ポリウレタン;ポリウレア;ポリアミド;ポリエステル;ポリスチレン;アクリルポリマー;ポリカーボネート;コポリ−エーテル−エステル;コポリ−エーテル−アミド;コポリ−エーテル−ウレタン;コポリ−エーテル−ウレア;ポリオレフィン;エラストマー性ポリオレフィン;エチレン−プロピレン−ジエンモノマーポリマー;メタロセン触媒によるポリエチレンおよびポリプロピレン;エチレンと極性コモノマーとのコポリマー;無水マレイン酸変性ポリマー;およびスチレン−ブタジエンブロックコポリマーおよび誘導体をベースとする熱可塑性エラストマー、からなる群より選択されることを特徴とする請求項4に記載の熱可塑性組成物。
【請求項6】
前記少なくとも1種のロジン、少なくとも1種のロジン誘導体、またはロジンとロジン誘導体との両方が、約3重量パーセント〜約50重量パーセントの量で存在し、前記1種または複数の有機酸、1種または複数の有機酸の塩、または有機酸と有機酸の塩との両方が存在する場合には、ロジン、ロジン誘導体、有機酸および有機酸の塩を組合せたものが、3重量パーセント〜約60重量パーセントの量で存在することを特徴とする請求項1に記載の熱可塑性組成物。
【請求項7】
約60以上のショアーD硬度を示すことを特徴とする請求項1に記載の組成物。
【請求項8】
65以上のショアーD硬度を示すことを特徴とする請求項1に記載の組成物。
【請求項9】
70以上のショアーD硬度を示すことを特徴とする請求項1に記載の組成物。
【請求項10】
60kpsi以上の曲げ弾性率を示すことを特徴とする請求項1に記載の組成物。
【請求項11】
75kpsi以上の曲げ弾性率を示すことを特徴とする請求項1に記載の組成物。
【請求項12】
80kpsi以上の曲げ弾性率を示すことを特徴とする請求項1に記載の組成物。
【請求項13】
90kpsi以上の曲げ弾性率を示すことを特徴とする請求項1に記載の組成物。
【請求項14】
100kpsi以上の曲げ弾性率を示すことを特徴とする請求項1に記載の組成物。
【請求項15】
請求項1〜14のいずれか一項に記載の熱可塑性組成物を含むことを特徴とするワンピースゴルフボール。
【請求項16】
前記ゴルフボールを製造するために、使用する前記組成物に、ゴルフ管理機構により定められた限度に適合するレベルに前記ゴルフボールの重量を調整するのに充分な充填剤を添加することを特徴とする請求項15に記載のワンピースゴルフボール。
【請求項17】
請求項1〜14のいずれか一項に記載の熱可塑性組成物から本質的になることを特徴とするワンピースゴルフボール。
【請求項18】
ゴルフボールを形成する、1つまたは複数の構成要素が、請求項1〜14のいずれか一項に記載の熱可塑性組成物を含み、前記1つまたは複数の構成要素は、カバー、マントル、1つまたは複数の中間層、コア、およびセンターからなる群より選択されることを特徴とするマルチピースゴルフボール。
【請求項19】
カバー、マントル、1つまたは複数の中間層、コア、およびセンターからなる群より選択される少なくとも1つの他の構成要素が、非アイオノマー性熱可塑性ポリマーを含むことを特徴とする請求項18に記載のマルチピースゴルフボール。
【請求項20】
前記コアが熱可塑性または熱硬化性組成物を含み、前記構成要素がマントルまたは1つまたは複数の中間層であり、そして前記カバーが、前記マントルまたは少なくとも1種の中間層よりも相対的に、よりソフトであることを特徴とする請求項18に記載のマルチピースゴルフボール。
【請求項21】
前記カバーが、熱硬化性ポリウレタンまたは熱可塑性ポリウレタン樹脂を含むことを特徴とする請求項20に記載のマルチピースゴルフボール。
【請求項22】
ゴルフボールを形成する、カバー、マントル、1つまたは複数の中間層、コア、およびセンターからなる群より選択される構成要素のいずれかが、請求項1〜14のいずれか一項に記載の熱可塑性組成物から本質的になることを特徴とするマルチピースゴルフボール。
【請求項23】
前記ゴルフボールの1つまたは複数の構成要素に、ゴルフ管理機構により定められた限度に適合するレベルに前記ゴルフボールの重量を調整するのに充分な充填剤を添加することを特徴とする請求項18に記載のマルチピースゴルフボール。
【請求項24】
アイオノマーを、ロジン、ロジン誘導体、またはロジンとロジン誘導体の両方とブレンドすることを特徴とする、アイオノマーの硬度および/または剛性を上昇させる方法。
【請求項25】
ゴルフボールの反撥係数を上昇させる方法であって、アイオノマーを提供する工程、前記アイオノマーを、ロジン、ロジン誘導体、またはロジンとロジン誘導体の両方とブレンドして、アイオノマーブレンドを形成させる工程、および前記アイオノマーブレンドを成形してコア、センター、マントル、層、カバー、またはゴルフボール全体とする工程、を含むことを特徴とする方法。
【請求項26】
ゴルフボールの硬度および/または剛性を上昇させる方法であって、アイオノマーを提供する工程、前記アイオノマーを、ロジン、ロジン誘導体、またはロジンとロジン誘導体の両方とブレンドして、アイオノマーブレンドを形成させる工程、および前記アイオノマーブレンドを成形してコア、センター、マントル、層、カバー、またはゴルフボール全体とする工程、を含むことを特徴とする方法。
【請求項27】
成形物品であって、
(i)少なくとも1種のE/X/Yコポリマーであって、Eはエチレンであり、XはC〜Cα,β−エチレン性不飽和カルボン酸であり、Yはアクリル酸アルキルおよびメタクリル酸アルキルから選択される軟化性コモノマーであり、アルキル基は1〜8個の炭素原子を有し、Xの量は、E/X/Yコポリマーの約2〜約30重量%であり、Yの量は、E/X/Yコポリマーの0〜約40重量%であり、そして前記カルボン酸官能基が、1種または複数のアルカリ金属、遷移金属、またはアルカリ土類金属カチオンによって少なくとも部分的に中和されている、E/X/Yコポリマーと、(ii)少なくとも1種のロジン、少なくとも1種のロジン誘導体、またはロジンとロジン誘導体との両方と、を含有する熱可塑性組成物を含むことを特徴とする成形物品。
【請求項28】
前記組成物が、少なくとも1種の非アイオノマー性熱可塑性ポリマーをさらに含むことを特徴とする請求項27に記載の成形物品。
【請求項29】
前記少なくとも1種の非アイオノマー性熱可塑性ポリマーが、ポリウレタン;ポリウレア;ポリアミド;ポリエステル;ポリスチレン;アクリルポリマー;ポリカーボネート;コポリ−エーテル−エステル;コポリ−エーテル−アミド;コポリ−エーテル−ウレタン;コポリ−エーテル−ウレア;ポリオレフィン;エラストマー性ポリオレフィン;エチレン−プロピレン−ジエンモノマーポリマー;メタロセン触媒によるポリエチレンおよびポリプロピレン;エチレンと極性コモノマーとのコポリマー;無水マレイン酸変性ポリマー;およびスチレン−ブタジエンブロックコポリマーおよび誘導体をベースとする熱可塑性エラストマー、からなる群より選択されることを特徴とする請求項28に記載の成形物品。
【請求項30】
前記少なくとも1種のロジン、少なくとも1種のロジン誘導体、またはロジンとロジン誘導体との両方が、約3重量パーセント〜約50重量パーセントの量で存在することを特徴とする請求項27に記載の成形物品。
【請求項31】
1種または複数の有機酸、1種または複数の有機酸の塩、または有機酸と有機酸の塩との両方をさらに含むことを特徴とする請求項27に記載の成形物品。
【請求項32】
ロジン、ロジン誘導体、有機酸、および有機酸の塩を組合せたものが、3重量パーセント〜約60重量パーセントの量で存在することを特徴とする請求項31に記載の成形物品。
【請求項33】
スポーツシューズのスパイク、ゴルフクラブフェースプレートまたはインサート、ゴルフクラブヘッド、ゴルフクラブヘッドのコーティングまたはケーシング、ゴルフクラブヘッドの内部キャビティのための充填剤、および履き物構造部材、からなる群より選択されることを特徴とする請求項27に記載の成形物品。
【請求項34】
かかと革、つま先の詰め物、および靴底からなる群より選択される履き物構造部材であることを特徴とする請求項27に記載の成形物品。
【請求項35】
シャフトと、前記シャフトに固定したクラブヘッドとを有するゴルフクラブであって、前記クラブヘッドが、金属ボディと、打球のために用いられるフロントストライキングフェースと、そのストライキングフェースの上に搭載するインサートとを有し、前記インサートが請求項27に記載の成形物品を含むことを特徴とするゴルフクラブ。
【請求項36】
前記成形物品が外側金属層を用いて積層され、前記外側金属層が溝を含むことを特徴とする請求項35に記載のゴルフクラブヘッド。
【請求項37】
コーキング材、シーラント、セメントおよびアスファルトのための変性剤、またはコーティングであって、
(i)少なくとも1種のE/X/Yコポリマーであって、Eはエチレンであり、XはC〜Cα,β−エチレン性不飽和カルボン酸であり、Yはアクリル酸アルキルおよびメタクリル酸アルキルから選択される軟化性コモノマーであり、アルキル基は1〜8個の炭素原子を有し、Xの量は、E/X/Yコポリマーの約2〜約30重量%であり、Yの量は、E/X/Yコポリマーの0〜約40重量%であり、そして前記カルボン酸官能基が、1種または複数のアルカリ金属、遷移金属、またはアルカリ土類金属カチオンによって少なくとも部分的に中和されている、E/X/Yコポリマーと、
(ii)少なくとも1種のロジン、少なくとも1種のロジン誘導体、またはロジンとロジン誘導体との両方と、
を含有する熱可塑性組成物を含むことを特徴とする、コーキング材、シーラント、セメントおよびアスファルトのための変性剤、またはコーティング。
【請求項38】
前記組成物が、少なくとも1種の非アイオノマー性熱可塑性ポリマーをさらに含むことを特徴とする、請求項37に記載のコーキング材、シーラント、セメントおよびアスファルトのための変性剤、またはコーティング。
【請求項39】
前記少なくとも1種の非アイオノマー性熱可塑性ポリマーが、ポリウレタン;ポリウレア;ポリアミド;ポリエステル;ポリスチレン;アクリルポリマー;ポリカーボネート;コポリ−エーテル−エステル;コポリ−エーテル−アミド;コポリ−エーテル−ウレタン;コポリ−エーテル−ウレア;ポリオレフィン;エラストマー性ポリオレフィン;エチレン−プロピレン−ジエンモノマーポリマー;メタロセン触媒によるポリエチレンおよびポリプロピレン;エチレンと極性コモノマーとのコポリマー;無水マレイン酸変性ポリマー;およびスチレン−ブタジエンブロックコポリマーおよび誘導体をベースとする熱可塑性エラストマー、からなる群より選択されることを特徴とする、請求項38に記載のコーキング材、シーラント、セメントおよびアスファルトのための変性剤、またはコーティング。
【請求項40】
前記少なくとも1種のロジン、少なくとも1種のロジン誘導体、またはロジンとロジン誘導体との両方が、約3重量パーセント〜約50重量パーセントの量で存在することを特徴とする、請求項37に記載のコーキング材、シーラント、セメントおよびアスファルトのための変性剤、またはコーティング。
【請求項41】
前記熱可塑性組成物が、1種または複数の有機酸、1種または複数の有機酸の塩、または有機酸と有機酸の塩との両方をさらに含むことを特徴とする、請求項37に記載のコーキング材、シーラント、セメントおよびアスファルトのための変性剤、またはコーティング。
【請求項42】
ロジン、ロジン誘導体、有機酸、および有機酸の塩を組合せたものが、3重量パーセント〜約60重量パーセントの量で存在することを特徴とする、請求項41に記載のコーキング材、シーラント、セメントおよびアスファルトのための変性剤、またはコーティング。

【公表番号】特表2006−526703(P2006−526703A)
【公表日】平成18年11月24日(2006.11.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−515158(P2006−515158)
【出願日】平成16年6月2日(2004.6.2)
【国際出願番号】PCT/US2004/017589
【国際公開番号】WO2004/108817
【国際公開日】平成16年12月16日(2004.12.16)
【出願人】(390023674)イー・アイ・デュポン・ドウ・ヌムール・アンド・カンパニー (2,692)
【氏名又は名称原語表記】E.I.DU PONT DE NEMOURS AND COMPANY
【Fターム(参考)】