説明

ロッキング装置及びこれを用いる放熱装置及び電子装置

【課題】本発明は、取り外し易いロッキング装置ならびにこれを用いる放熱装置及び電子装置を提供することを目的とする。
【解決手段】本発明に係るロッキング装置は、ポール、前記ポールが貫く弾性素子、前記ポールの上端に位置する操作部及び前記ポールの下端に位置する係合部を備え、前記係合部は、前記ポールの下端に接続する本体部と、前記本体部の対向する両側からそれぞれに外に向って直交して延在する2つの当止部と、少なくとも1つの当止部の前記ポールに向う片側から前記当止部から遠ざかる方向へ延在される少なくとも1つの定位部と、を備える。本発明は、放熱器及び前記放熱器に取り付けられる複数のロッキング装置を備える放熱装置も提供する。本発明は、放熱器、積載板及び前記放熱器を前記積載板に固定する複数のロッキング装置を備える電子装置も提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放熱装置に関するものであって、特に電子装置に用いる放熱装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電子装置内部の電子素子の演算速度が向上し且つ電力消費が増大することに伴い、発生する熱も増加する。電子素子の正常な作動温度を確保するために、前記電子素子の表面に放熱器を設置して、前記電子素子が作動する時に生じる熱を即時に放熱しなければならない。放熱器を電子素子に緊密に接触させて放熱効率を高めるために、いろいろな放熱器用ロッキング装置が採用される。
【0003】
図1に示されたように、従来のロッキング装置は、2つのファスナー10及び前記2つのファスナー10が貫く2つのコイルスプリング18を備える。前記ロッキング装置で放熱器20を電気回路基板30に装着して、前記放熱器20を前記電気回路基板30の上にある電子素子40に緊密に接触させる。前記放熱器20の2つの対角箇所には、それぞれ1つの取付部22が突出されており、前記取付部22には、前記ファスナー10が貫く貫通孔24が設けられる。前記電気回路基板30には、前記放熱器20の2つの貫通孔24に対応する2つの貫通孔32が設けられる。前記ファスナー10は、円形の頭部12と、前記頭部12から下に向って延在する柱状のポール14と、前記ポール14の底部の対向する両側からそれぞれ上に向かって斜めに延在する2つのフック16と、を備える。前記頭部12と前記フック16との間には、前記ポール14を被せる前記コイルスプリング18が設置される。
【0004】
前記ロッキング装置を使用する時、先ず、前記ファスナー10、前記放熱器20の貫通孔24及び前記電気回路基板30の貫通孔32を位置合わせ、次に、前記ファスナー10の頭部12を押圧すると、前記コイルスプリング18は、前記取付部22に当接して弾性変形し、前記ファスナー10の2つのフック16は、前記放熱器20の貫通孔24の内壁及び前記電気回路基板30の貫通孔32の内壁に押圧されて前記ポール14に向って移動して、前記ファスナー10のポール14は前記放熱器20の貫通孔24及び前記電気回路基板30の貫通孔32を順次貫き、前記ファスナー10のポール14が前記電気回路基板30の貫通孔32から伸び出すと、前記ファスナー10の2つのフック16は元の状態に戻り、最終に、前記ファスナー10の頭部12に印加する外力を取り除くと、前記コイルスプリング18の弾性回復力によって、前記ファスナー10が上に向かって移動し、前記ファスナー10の2つのフック16は前記電気回路基板30の下面に当止する。このように前記ファスナー10の2つのフック16で前記電気回路基板30をロックし、前記放熱器20を前記電子素子40に緊密に接触させる。前記ロッキング装置を取り外す時、外部工具によって前記ファスナー10の2つのフック16を前記ファスナー10のポール14に向って押圧して、前記ファスナー10を前記電気回路基板30の貫通孔32及び前記放熱器20の貫通孔24から退出させるため、操作が面倒であり且つ時間も掛かり、なお、外部工具の使用によって前記ファスナー10の2つのフック16を切断し易く、従って前記ファスナー10が廃品になって重複利用することができない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、前記課題を解決し、取り外し易いロッキング装置及びこれを用いる放熱装置及び電子装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係るロッキング装置は、ポール、前記ポールが貫く弾性素子、前記ポールの上端に位置する操作部及び前記ポールの下端に位置する係合部を備え、前記係合部は、前記ポールの下端に接続する本体部と、前記本体部の対向する両側からそれぞれに外に向って直交して延在する2つの当止部と、少なくとも1つの当止部の前記ポールに向う片側から前記当止部から遠ざかる方向へ延在される少なくとも1つの定位部と、を備える。
【0007】
本発明に係る放熱装置は、放熱器及び前記放熱器に取り付けられる複数のロッキング装置を備え、各々のロッキング装置は、ポール、前記ポールが貫く弾性素子、前記ポールの上端に位置する操作部及び前記ポールの下端に位置する係合部を備え、前記係合部は、前記放熱器の底部に位置し、前記弾性素子は、前記操作部と前記放熱器の上面との間に挟持され、前記係合部は、前記ポールの下端に接続する本体部と、前記本体部の対向する両側からそれぞれに外に向って直交して延在する2つの当止部と、少なくとも1つの当止部の前記ポールに向う片側から前記当止部から遠ざかる方向へ延在される少なくとも1つの定位部と、を備える。
【0008】
本発明に係る電子装置は、放熱器、積載板及び前記放熱器を前記積載板に固定する複数のロッキング装置を備え、各々のロッキング装置は、ポール、前記ポールが貫く弾性素子、前記ポールの上端に位置する操作部及び前記ポールの下端に位置する係合部を備えて、前記係合部は、前記ポールの下端に接続する本体部と、前記本体部の対向する両側に位置し且つ前記積載板の下面に当接する2つの当止部と、少なくとも1つの当止部の前記ポールに向う片側から前記当止部から遠ざかる方向へ延在し且つ前記積載板内に収容される少なくとも1つの定位部と、を備える。
【発明の効果】
【0009】
本発明の放熱装置において、ロッキング装置のポールを回転するだけで、放熱器を積載板に装着するか又は前記積載板から取り外すことができ、外部工具を必要としなく、操作が簡単であり、且つ外部工具で前記ロッキング装置を破壊しないため、前記ロッキング装置を複数回使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】従来の技術に係る電子装置の立体分解図である。
【図2】本発明の実施形態に係る電子装置の立体分解図である。
【図3】図2に示す電子装置のロッキング装置のファスナーの立体拡大図である。
【図4】図2に示す電子装置の立体組立図である。
【図5】図4に示す電子装置のロッキング装置のファスナーが積載板に係合する前のV-V線に沿う断面図である。
【図6】図4に示す電子装置のロッキング装置のファスナーが積載板に係合した後のV-V線に沿う断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態について説明する。
【0012】
図2を参照すると、本発明の実施形態に係る電子装置は、積載板300及び該積載板300の上に取り付けられる放熱装置を備える。
【0013】
前記積載板300の上面には、CPU(中央処理装置)などの電子素子400が溶接されている。前記積載板300における前記電子素子400の2つの対角の近傍には、それぞれ1つの貫通孔310が設けられ、且つ前記積載板300における前記貫通孔310の対向する両側には、それぞれ1つの収容部312が設けられる。本実施形態において、前記収容部312は貫通孔であるが、他の実施形態において、前記収容部312は、非貫通穴(blind hole)又は溝であることができる。
【0014】
前記放熱装置は、前記電子素子400が作動する時に生じる熱を放熱するために用いられる。前記放熱装置は、放熱器200と、前記放熱器200を前記積載板300の上に装着して前記放熱器200を前記電子素子400に緊密に接触させる2つのロッキング装置100と、を備える。
【0015】
前記放熱器200は、略方形のベース230と、前記ベース230の上面から上に向かって延在する複数の放熱フィン232と、を備える。前記ベース230の下面は、前記電子素子400に接触して吸熱する。前記複数の放熱フィン232の間には、横方向及び縦方向に沿って延在する複数の気流通路250が形成される。前記放熱器200の2つの対角箇所には、前記2つのロッキング装置100の回転空間となる2つの空間240が形成される。前記ベース230の2つの対角箇所には、それぞれ1つの取付部210が突出しており、前記取付部210の中部には貫通孔220が設けられる。前記放熱器200の2つの貫通孔220は、前記積載板300の2つの貫通孔310にそれぞれに対応する。
【0016】
図3を一緒に参照すると、前記ロッキング装置100は、ファスナー110及び前記ファスナー110が貫くコイルスプリング120を備える。前記ファスナー110は、プラスチック材料又は他の材料から一体成形され、ポール114と、前記ポール114の上端に位置する操作部112と、前記ポール114の下端に位置する係合部116と、を備える。
【0017】
前記ポール114は円柱状であるが、これに限定されるものではなく、前記コイルスプリング120を前記ポール114に被せてから、前記コイルスプリング120が前記操作部112に当止さえすればよい。
【0018】
前記係合部116は、略T字状であり、前記ポール114の下端に接続する四角柱状の本体部1161と、前記本体部1161の対向する両側からそれぞれに外に向って直交して延在する2つの当止部1164と、前記2つの当止部1164の上面から上に向かって直交して延在する2つの定位部1162と、を備える。前記本体部1161の幅は、前記積載板300の貫通孔310の幅と等しく、前記本体部1161が前記貫通孔310の内部に収容される際、前記本体部1161は前記当止部1164が前記貫通孔310の内部で水平回転できないようにする。本実施形態において、前記2つの定位部1162は、全体的に突出した柱であり、且つ前記本体部1161の対向する両側に位置し、各々の定位部1162と前記本体部1161との間には、隙間が形成される。他の実施形態において、前記係合部116は、ただ1つの定位部1162を備え、前記定位部1162は前記本体部1161の片側の当止部11644の上面から上に向かって直交して延在し、前記定位部1162は突起であることができる。本実施形態において、前記当止部1164は、矩形であるが、これに限定されるものではなく、前記係合部116が前記積載板300の貫通孔310を貫いてから所定の角度に回転すると、前記当止部1164が前記積載板300の下面に当止さえすればよい。前記当止部1164の下端は切削されて案内面1165を形成して、前記係合部116が前記放熱器200の貫通孔220及び前記積載板300の貫通孔310を容易に貫くことができる。前記放熱器200の貫通孔220の内部輪郭は、前記係合部116の当止部1164の外部輪郭よりわずかに大きいため、前記係合部116は前記放熱器200の貫通孔220を容易に貫くことができる。
【0019】
図4及び図6を参照すると、前記電子装置を組み立てる時、先ず、前記ファスナー110の係合部116、前記放熱器200の貫通孔220及び前記積載板300の貫通孔310を位置合わせし、次に、前記ファスナー110の操作部112を押圧すると、前記コイルスプリング120は前記取付部210に当接して弾性変形し、前記係合部116は前記放熱器200の貫通孔220及び前記積載板30の貫通孔310を順次貫いて、前記係合部116の2つの当止部1164が前記積載板300の貫通孔310から伸び出し、前記当止部1164の上面が前記積載板300の下面を超過し、前記ロッキング装置100、前記放熱器200の取付部210及び前記積載板300は、図5に示された状態になり、最終的に、前記ファスナー110を90度回転して、前記ファスナー110の2つの定位部1162及び前記積載板300の対応する貫通孔310の両側の2つの収容部312を位置合わせしてから、前記操作部112に印加する外力を取り除くと、前記コイルスプリング120の弾性回復力によって、前記ファスナー110は上に向かって移動して、前記本体部1161は、前記積載板300の対応する貫通孔310の内部に収容され、前記2つの定位部1162は、前記貫通孔310の両側の2つの収容部312に係合され、前記当止部1164の上面は前記積載板300の下面に当接して、前記放熱器200のベース230の下面は前記電子素子400に緊密に接触し、前記ロッキング装置100、前記放熱器200の取付部210及び前記積載板300は、図6に示された状態になる。
【0020】
前記ロッキング装置を取り外す時、先ず、前記ファスナー110の操作部112を押圧して、前記ファスナー110の定位部1162を前記積載板300の収容部312から退出させ、次に、前記ファスナー110を90度回転して、前記ファスナー110の定位部1162を前記積載板300の貫通孔312に対応させ、最終に、前記ファスナー110を上に向かって引っ張り上げて、前記ファスナー110の係合部116を前記積載板30の貫通孔310及び前記放熱器200の貫通孔220から順次退出させる。
【0021】
従来の技術に比べて、ただ前記ロッキング装置100のファスナー110を押圧するか又は引っ張り上げるか且つ回転するだけで、前記放熱器200を前記積載板300に装着するか又は前記積載板300から取り外すことができ、操作が簡単であり、且つ前記ロッキング装置100を複数回使用することができる。又、前記ロッキング装置100のファスナー110の定位部1162は、前記積載板300の収容部312に係合されるため、前記ファスナー110を前記積載板300に位置決めることができ、従って振動によって前記ファスナー110が回転して前記積載板300から脱落されることを免れる。
【0022】
以上、本発明を実施例に基づいて具体的に説明したが、本発明は、上述の実施例に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において、種種の変更が可能であることは勿論であって、本発明の技術的範囲は、以下の特許請求の範囲から決まる。
【符号の説明】
【0023】
10,110 ファスナー
12 頭部
14,114 ポール
16 フック
18,120 コイルスプリング
20,200 放熱器
22,210 取付部
24,32,220,310 貫通孔
30 電気回路基板
40,400 電子素子
100 ロッキング装置
112 操作部
116 係合部
230 ベース
232 放熱フィン
240 空間
250 気流通路
300 積載板
312 収容部
1161 本体部
1162 定位部
1164 当止部
1165 案内面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポール、前記ポールが貫く弾性素子、前記ポールの上端に位置する操作部及び前記ポールの下端に位置する係合部を備えてなるロッキング装置において、
前記係合部は、前記ポールの下端に接続する本体部と、前記本体部の対向する両側からそれぞれに外に向って直交して延在する2つの当止部と、少なくとも1つの当止部の前記ポールに向う片側から前記当止部から遠ざかる方向へ延在した少なくとも1つの定位部と、を備えることを特徴とするロッキング装置。
【請求項2】
前記少なくとも1つの定位部と前記本体部との間には、隙間が形成されることを特徴とする請求項1に記載のロッキング装置。
【請求項3】
放熱器及び前記放熱器に取り付けられる複数のロッキング装置を備え、各々のロッキング装置は、ポール、前記ポールが貫く弾性素子、前記ポールの上端に位置する操作部及び前記ポールの下端に位置する係合部を備え、前記係合部は、前記放熱器の底部に位置し、前記弾性素子は、前記操作部と前記放熱器の上面との間に挟持されてなる放熱装置において、
前記係合部は、前記ポールの下端に接続する本体部と、前記本体部の対向する両側からそれぞれに外に向って直交して延在する2つの当止部と、少なくとも1つの当止部の前記ポールに向う片側から前記当止部から遠ざかる方向へ延在した少なくとも1つの定位部と、を備えることを特徴とする放熱装置。
【請求項4】
前記少なくとも1つの定位部と前記本体部との間には、隙間が形成されることを特徴とする請求項3に記載の放熱装置。
【請求項5】
放熱器、積載板及び前記放熱器を前記積載板に固定する複数のロッキング装置を備え、各々のロッキング装置は、ポール、前記ポールが貫く弾性素子、前記ポールの上端に位置する操作部及び前記ポールの下端に位置する係合部を備えてなる電子装置において、
前記係合部は、前記ポールの下端に接続する本体部と、前記本体部の対向する両側に位置し且つ前記積載板の下面に当接する2つの当止部と、少なくとも1つの当止部の前記ポールに向う片側から前記当止部から遠ざかる方向へ延在し且つ前記積載板内に収容される少なくとも1つの定位部と、を備えることを特徴とする電子装置。
【請求項6】
前記少なくとも1つの定位部と前記本体部との間には、隙間が形成されることを特徴とする請求項5に記載の電子装置。
【請求項7】
前記積載板には、前記係合部が貫く貫通孔が設けられ、前記積載板における前記貫通孔の少なくとも1つの片側には、前記定位部を収容するための収容部が設けられることを特徴とする請求項6に記載の電子装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−94791(P2011−94791A)
【公開日】平成23年5月12日(2011.5.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−216827(P2010−216827)
【出願日】平成22年9月28日(2010.9.28)
【出願人】(500080546)鴻海精密工業股▲ふん▼有限公司 (1,018)
【Fターム(参考)】