説明

ロックアップクラッチ用摩擦板の製造装置及びその製造方法

【課題】クラッチピストンに対して複数の扇形摩擦材の相互間の圧力を均一化し、互いに密着させて環状の摩擦材としたこと。
【解決手段】環状または略環状摩擦材10の一部を構成する扇形に打ち抜いてなる扇形摩擦材10-1〜10-8の相互間が、接触しない状態で、配置金型30に合わせて略環状に配置する。そして、扇形摩擦材10-1〜10-8を縮径金型50に移動する。そこで、扇形摩擦材10-1〜10-8をその径が小さくなるように、扇形摩擦材10-1〜10-8を環状の中心方向へ移動させて扇形摩擦材10-1〜10-8の相互間を環状または略環状とし、複数枚の扇形摩擦材10-1〜10-8の一面とクラッチピストン60の接合面の一方または両方に接着剤を塗布し、クラッチピストン60を複数枚の扇形摩擦材10-1〜10-8に押圧して、前記対向する面をクラッチピストン60に接着する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トルクコンバータのロックアップクラッチ用摩擦板の製造装置及びその製造方法に関するものであり、特に、芯金に対して複数の扇形摩擦材を環状または略環状に接合するロックアップクラッチ用摩擦板の製造装置及び製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ロックアップクラッチ用摩擦板の組付けに際しては、芯金に対して摩擦材を環状に接合する必要があるが、摩擦材を環状に打ち抜いて使用すると、多量のスクラップを生ずることになって製造コストが高くなる。そこで、扇形に打ち抜いた複数の扇形摩擦材を、互いに密着させて芯金に対して環状に接合する技術が開発されている。
従来技術において、芯金に対して複数の扇形摩擦材を接合したロックアップクラッチ用摩擦板及びその製造方法として、特許文献1に記載の技術がある。
【0003】
この特許文献1には、芯板(23)の側面に、平坦な摩擦面を持つ円環状の摩擦ライニング(24)を接着してなる摩擦板(F)を製造する平坦な摩擦面を持つ摩擦板の製造方法にあって、摩擦ライニング材テープ(38)から打ち抜いた複数枚の扇形のライニングセグメント(24a)を互いに重なることなくインデックステーブル(32)上に概ね円環状に仮配列する工程と、インデックステーブル(32)上に仮配列した複数枚のライニングセグメント(24a)をインデックステーブル(32)の中心に向けて一斉に移動することにより、ライニングセグメント(24a)の仮配列を各ライニングセグメント(24a)間から隙間を排除した円環状に修正する工程と、円環状に配列修正した複数枚のライニングセグメント(24a)を芯板(23)の側面に接着する工程とを備えるロックアップクラッチ用摩擦板の製造装置及びその製造方法が開示されている。
なお、( )内の数字は、特許文献1における部品番号である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第3614763号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1によれば、摩擦ライニング材テープ(38)から複数枚の扇形ライニングセグメント(24a)を歩留り良く打ち抜き、これらにより摩擦面が平坦な円環状の摩擦ライニング(24)を構成すると共に、これを芯板(23)の側面に接着することによって、平坦な摩擦面を持つ摩擦板(F)を能率良く製造することができ、該摩擦板(F)のコスト低減に寄与し得るものとなる。
【0006】
しかしながら、特許文献1は、各ライニングセグメント(24a)を芯板(23)に接着し、同時に全部のライニングセグメント(24a)の圧縮変形により、各隣接するライニングセグメント(24a)は、芯板(23)の面に配置する必要があり、正確に全部のライニングセグメント(24a)が配置されていないと、全部のライニングセグメント(24a)の圧縮変形が乱れ、各隣接するライニングセグメント(24a)の端面相互密着を均一化できないという可能性がある。
【0007】
そこで、この発明はかかる課題を解決するためになされたものであって、クラッチピストンに対して複数の扇形摩擦材の相互間の圧力を均一化し、互いに密着させて環状または略環状の摩擦材とし、特性の良いロックアップクラッチ用摩擦板の製造装置及びその製造方法の提供を目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に係るロックアップクラッチ用摩擦材の製造装置において、環状または略環状摩擦材の一部を構成する扇形に打ち抜いてなる扇形摩擦材は、配置金型を用いて略環状に配置する。また、前記略環状配置手段で略環状に配置された前記扇形摩擦材を、スライド手段で前記略環状の前記扇形摩擦材をその径が小さくなるように移動させる。そして、接着剤塗布手段で、前記環状または略環状に整列した扇形摩擦材の一面またはクラッチピストンの接合面の一方または両方に接着剤を塗布し、押圧接合手段で前記クラッチピストンを前記環状または略環状に整列した複数枚の扇形摩擦材に押圧して、前記対向する面を前記クラッチピストンに接着するものである。
ここで、上記略環状配置手段は、特定の金型に対して所定の間隔で扇形摩擦材を略環状に配置するものであればよい。
また、上記スライド手段は、前記略環状配置手段で略環状に配置された前記扇形摩擦材を、前記略環状に配置された前記扇形摩擦材の径が小さくなるように加工する状態に設定でき、前記扇形摩擦材を環状または略環状の中心方向へ移動させて前記扇形摩擦材を環状または略環状に縮径できる配置関係となればよい。前記縮径金型及び前記複数枚の扇形摩擦材の一方または両方を移動させることができればよい。
そして、前記略環状に配置された扇形摩擦材をその径が小さくなるように、前記扇形摩擦材を環状または略環状の中心方向へ移動させて前記扇形摩擦材の端部相互間を接触または所定の隙間とした環状または略環状とするものである。個々に扇形摩擦材をその径が小さくなるように移動させても、また、全体を同時に縮径してもよい。
なお、このスライド手段は、前記略環状配置手段で略環状に配置された複数枚からなる前記扇形摩擦材を、前記配置金型とは異なる縮径金型に相対移動する相対移動手段と、前記略環状配置手段で略環状に配置された複数枚からなる前記扇形摩擦材をその径が小さくなるように、前記扇形摩擦材を環状または略環状の中心方向へ移動させて前記扇形摩擦材を環状または略環状とする環状縮径手段とすることもできる。
更に、上記接着剤塗布手段は、前記環状または略環状に整列した扇形摩擦材の一面またはクラッチピストンの接合面の何れか一方または両方に接着剤を塗布するものである。
加えて、押圧接合手段は、前記クラッチピストンを前記環状または略環状に整列した扇形摩擦材に押圧して、前記扇形摩擦材を環状または略環状として前記対向する面を前記クラッチピストンに接着するものである。
また、上記スライド手段は、テーパ面を有するリング金型と略環状に配置した扇形に打ち抜いた扇形摩擦材との相対移動によって縮径するものである。上記スライド手段のテーパ面を有するリング金型と略環状に配置した扇形に打ち抜いた扇形摩擦材との相対移動は、リング金型または扇形摩擦材の一方または両方を上下動させて相対移動させればよい。
なお、摩擦材の一部を構成する扇形に打ち抜いて扇形摩擦材を形成する上記打ち抜き手段は、通常、帯状の摩擦材材料から連続的に特定方向に湾曲した扇形摩擦材を打ち抜くものである。上記打ち抜き手段は、略環状配置手段付近に配設しても良いし、離れた箇所に配設しても良い。
【0009】
請求項2に係るロックアップクラッチ用摩擦材の製造装置の前記スライド手段は、略環状に配置した扇形に打ち抜いた前記扇形摩擦材の中心方向への移動時に生ずる上下動を規制する規制板を有するものである。
上記規制板は、略環状に配置した扇形に打ち抜いた扇形摩擦材の中心方向への移動時に生ずる上下動を規制するものであり、扇形に打ち抜いた扇形摩擦材の上下動を面で規制するものであればよい。
【0010】
請求項3に係るロックアップクラッチ用摩擦材の製造装置の前記スライド手段は、略環状に配置した扇形に打ち抜いた扇形摩擦材を吸引して位置決めし、縮径の際に吸引力を弱めるものである。ここで扇形摩擦材を吸引して位置決めするのは初期位置を正確に定めるためであり、縮径の際に吸引力を弱めるのは、無駄な動きが生じないようにし、しかも、正確に移動するためのものであり、通常、扇形摩擦材を載置する部材に形成される。
【0011】
請求項4に係るロックアップクラッチ用摩擦材の製造方法は、略環状配置工程で環状摩擦材の一部を構成する扇形に打ち抜いてなる扇形摩擦材を配置金型に略環状に配置する。また、前記略環状配置工程で略環状に配置された前記扇形摩擦材を、スライド工程で前記略環状の前記扇形摩擦材をその径が小さくなるように移動させる。そして、接着剤塗布工程で、前記環状に整列した扇形摩擦材の一面またはクラッチピストンの接合面の一方または両方に接着剤を塗布し、押圧接合工程で前記クラッチピストンを前記環状に整列した複数枚の扇形摩擦材に押圧して、前記対向する面を前記クラッチピストンに接着するものである。
ここで、上記略環状配置工程は、特定の金型に対して所定の間隔で扇形摩擦材を略環状に配置するものであればよい。
また、上記スライド工程は、前記略環状配置工程で略環状に配置された前記扇形摩擦材を、前記扇形摩擦材を略環状の中心方向へ移動させて前記扇形摩擦材を環状または略環状に縮径できる配置関係となればよい。このとき、前記縮径金型及び前記複数枚の扇形摩擦材の一方または両方を相対移動させることができればよい。そして、前記略環状に配置された扇形摩擦材をその径が小さくなるように、前記扇形摩擦材を略環状の中心方向へ移動させて前記扇形摩擦材の端部相互間を接触または所定の隙間とした環状または略環状とするものである。個々に扇形摩擦材をその径が小さくなるように移動させても、また、全体を同時に縮径してもよい。
なお、このスライド工程は、前記略環状配置工程で略環状に配置された複数枚からなる前記扇形摩擦材を、前記配置金型とは異なる縮径金型に相対移動する相対移動工程と、前記略環状配置工程で略環状に配置された複数枚からなる前記扇形摩擦材をその径が小さくなるように、前記扇形摩擦材を略環状の中心方向へ移動させて前記扇形摩擦材を環状または略環状とする環状縮径工程とすることもできる。
更に、上記接着剤塗布工程は、前記環状または略環状に整列した扇形摩擦材の一面またはクラッチピストンの接合面の何れか一方または両方に接着剤を塗布するものである。
加えて、押圧接合工程は、前記クラッチピストンを前記環状または略環状に整列した扇形摩擦材に押圧して、前記扇形摩擦材を環状または略環状として前記対向する面を前記クラッチピストンに接着するものである。
なお、摩擦材の一部を構成する扇形に打ち抜いて扇形摩擦材を形成する上記打ち抜き工程は、通常、帯状の摩擦材材料から連続的に特定方向に湾曲した扇形摩擦材を打ち抜くものである。上記打ち抜き手段は、略環状配置工程付近に配設しても良いし、離れた箇所に配設しても良い。
【0012】
請求項5に係るロックアップクラッチ用摩擦材の製造方法の前記スライド工程は、テーパ面を有するリング金型と環状または略環状に配置した扇形に打ち抜いた扇形摩擦材との相対移動によって縮径するものである。
上記スライド工程のテーパ面を有するリング金型と環状または略環状に配置した扇形に打ち抜いた扇形摩擦材との相対移動は、リング金型または扇形摩擦材の一方または両方を上下動させて相対移動させればよい。
【0013】
請求項6に係るロックアップクラッチ用摩擦材の製造方法の前記スライド工程は、略環状に配置した扇形に打ち抜いた前記扇形摩擦材の中心方向への移動時に生ずる上下動を規制する規制板を有するものである。
上記規制板は、略環状に配置した扇形に打ち抜いた扇形摩擦材の中心方向への移動時に生ずる上下動を規制するものであり、扇形に打ち抜いた扇形摩擦材の上下動を面で規制するものであればよい。
【0014】
請求項7に係るロックアップクラッチ用摩擦材の製造方法の前記スライド工程は、略環状に配置した扇形に打ち抜いた扇形摩擦材を吸引して位置決めし、縮径の際に吸引力を弱めるものである。ここで扇形摩擦材を吸引して位置決めするのは初期位置を正確に定めるためであり、縮径の際に吸引力を弱めるのは、無駄な動きが生じないようにし、しかも、正確に移動するためのものであり、通常、扇形摩擦材を載置する部材に形成される。
【発明の効果】
【0015】
請求項1の発明のロックアップクラッチ用摩擦材の製造装置は、環状または略環状摩擦材の一部を構成する扇形に打ち抜いてなる扇形摩擦材の相互間が、一部が接触または全部が接触しない状態に配置金型に配置する。そして、スライド手段で前記略環状に配置された複数枚からなる前記扇形摩擦材を、前記略環状に配置された前記扇形摩擦材の径が小さくなるように移動させ前記扇形摩擦材を環状または略環状とし、前記環状または略環状に整列した複数枚の扇形摩擦材の一面とクラッチピストンの接合面の何れか一方または両方に接着剤を塗布し、前記クラッチピストンを前記環状または略環状に整列した複数枚の扇形摩擦材に押圧して、前記対向する面を前記クラッチピストンに接着するものである。
したがって、環状摩擦材の一部を構成する扇形に打ち抜いてなる扇形摩擦材の相互間が接触しない状態またはその一部が接触した状態で、配置金型に合わせて略環状に配置するとき、その直径を大きくでき、全枚数の扇形摩擦材を縮径して、全枚数の扇形摩擦材の端部相互間の接触圧力または間隙の間隔を均一化または扇形摩擦材の配置を所望の配置にでき、全体の特性の安定した環状または略環状の摩擦材とすることができる。よって、クラッチピストンに対して複数の扇形摩擦材の相互間の圧力を均一化し、互いに密着または所定の間隔の平坦な環状または略環状の摩擦材とすることができ、その特性が安定化できる。また、この間の略環状配置手段、スライド手段、接着剤塗布手段、押圧接合手段が、少なくとも2箇所以上の位置で行うことができるから、各工程の分散化によって効率のよい生産性が確保できる。そして、テーパ面を有するリング金型と略環状に配置した扇形に打ち抜いた扇形摩擦材との相対移動は、リング金型または扇形摩擦材の一方または両方を上下動させて相対移動させればよいので設計自由度が高くなる。
【0016】
請求項2の発明のロックアップクラッチ用摩擦材の製造装置の前記スライド手段は、略環状に配置した扇形に打ち抜いた前記扇形摩擦材の中心方向への移動時に生ずる上下動を規制する規制板を有するものであるから、請求項1に記載の効果に加えて、上記規制板は環状または略環状に配置した扇形に打ち抜いた扇形摩擦材の上下動を規制するものであり、扇形に打ち抜いた扇形摩擦材が重なり合うことがない。
【0017】
請求項3の発明のロックアップクラッチ用摩擦材の製造装置の前記スライド手段は、環状に配置した扇形に打ち抜いた扇形摩擦材を吸引して位置決めし、縮径の際に吸引力を弱めるものであるから、請求項1または請求項2の何れか1つに記載の効果に加えて、扇形摩擦材の初期位置を正確に定め、かつ、無駄な動きが生じないように縮径の際に吸引力を弱め、正確に移動させるものであるから、規制板のような外力を加える手段が不要となり、全体の構造を簡単化することができる。
【0018】
請求項4の発明のロックアップクラッチ用摩擦材の製造方法は、環状摩擦材の一部を構成する扇形に打ち抜いてなる扇形摩擦材の相互間が、接触しない状態または一部が接触する状態で、配置金型に配置し、そして、前記略環状に配置された複数枚からなる前記扇形摩擦材を縮径金型でその径が小さくなるように、前記扇形摩擦材を環状または略環状の中心方向へ移動させて前記扇形摩擦材の相互間を接触させて環状または所定の隙間の環状または一部のみが接触する環状とし、前記整列した複数枚の扇形摩擦材の一面とクラッチピストンの接合面の何れか一方または両方に接着剤を塗布し、前記クラッチピストンを前記環状に整列した複数枚の扇形摩擦材に押圧して、前記対向する面を前記クラッチピストンに接着するものである。
したがって、特に、ロックアップクラッチ用摩擦材の製造方法では、少なくとも、時間がかかる扇形摩擦材を配置金型に略環状に配置する略環状配置工程と、その径が小さくなるように移動させるスライド工程との工程に分割できるから、一連の作業が単一の場所で連続するものに比較して、高効率で生産性のよいクラッチピストンの製造、トルクコンバータの製造が可能となる。
しかも、環状摩擦材の一部を構成する扇形に打ち抜いてなる扇形摩擦材の相互間が、接触しない状態またはその一部のみが接触する状態で配置金型に配置するとき、その直径を大きくでき、全枚数の扇形摩擦材を徐々に縮径でき、全枚数の扇形摩擦材の端部相互間の接触圧力を、またはその間隙を均一化でき、またはその間隙を所望の間隔に設定できる。よって、クラッチピストンに対して複数の扇形摩擦材の端部相互間の圧力または間隙を均一化したり、所望の間隙とすることができ、所望の平坦な環状または略環状の摩擦材とすることができるから、そのロックアップクラッチ用摩擦材としての特性が安定化でき、その製造過程に特性がばらつく要因が存在しない。また、この間の略環状配置工程、スライド工程、接着剤塗布工程、押圧接合工程が、少なくとも2箇所以上の位置で行うことができるから、各工程の分散化によって効率のよい生産性が確保できる。
【0019】
請求項5の発明のロックアップクラッチ用摩擦材の製造方法のスライド工程は、テーパ面を有するリング金型と略環状に配置した扇形に打ち抜いた扇形摩擦材との相対移動によって縮径するものであるから、請求項4に記載の効果に加えて、テーパ面を有するリング金型と略環状に配置した扇形に打ち抜いた扇形摩擦材との相対移動は、リング金型または扇形摩擦材の一方または両方を上下動させて相対移動させればよいので設計自由度が高くなる。
【0020】
請求項6の発明のロックアップクラッチ用摩擦材の製造装置の前記スライド工程は、環状に配置した扇形に打ち抜いた前記扇形摩擦材の中心方向への移動時に生ずる上下動を規制する規制板を有するものであるから、請求項4または請求項5に記載の効果に加えて、上記規制板は略環状に配置した扇形に打ち抜いた扇形摩擦材の上下動を規制するものであり、扇形に打ち抜いた扇形摩擦材が重なり合うことがない。
【0021】
請求項7の発明のロックアップクラッチ用摩擦材の製造方法の前記スライド工程は、略環状に配置した扇形に打ち抜いた扇形摩擦材を吸引して位置決めし、縮径の際に吸引力を弱めることを特徴とする請求項4乃至請求項6の何れか1つに記載の効果に加えて、真空引きによって吸引する吸引ヘッドを配設したものであるから、扇形摩擦材の複数枚の枚数と同一またはその整数倍の吸引ヘッドを配設したものであれば、各扇形摩擦材の部分に機械的負担が加わらないから、各扇形摩擦材に歪のない処理が可能となり、ロックアップクラッチの特性が安定化でき、その製造過程に特性がばらつく要因が存在しない。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】図1は本発明の実施の形態1に係るロックアップクラッチ用摩擦材の製造装置の扇形摩擦材の略環状配置手段の動作を示す説明図である。
【図2】図2は本発明の実施の形態1に係るロックアップクラッチ用摩擦材の製造装置の扇形摩擦材の摩擦材移動手段で移動された扇形摩擦材のみの位置関係を説明する説明図である。
【図3】図3は本発明の実施の形態1に係るロックアップクラッチ用摩擦材の製造装置の扇形摩擦材の摩擦材移動手段を説明する説明図である。
【図4】図4は本発明の実施の形態1に係るロックアップクラッチ用摩擦材の製造装置の扇形摩擦材の環状縮径手段で整列された扇形摩擦材のみの位置関係を説明する説明図で、(a)は扇形摩擦材が密着した平面図であり、(b)は扇形摩擦材が隙間を形成して配置された平面図である。
【図5】図5は本発明の実施の形態1に係るロックアップクラッチ用摩擦材の製造装置の扇形摩擦材の環状縮径手段で整列する動作を説明する説明図で、(a)は扇形摩擦材の環状配置状態を示し、(b)は扇形摩擦材の縮径状態を示すものである。
【図6】図6は本発明の実施の形態1に係るロックアップクラッチ用摩擦材の製造装置の扇形摩擦材の接着接合動作を説明する説明図で、(a)は接着剤塗布状態を説明し、(b)は押圧接合状態を示すものである。
【図7】図7は本発明の実施の形態2に係るロックアップクラッチ用摩擦材の製造装置の扇形摩擦材の略環状配置手段の供給を示す説明図である。
【図8】図8は本発明の実施の形態2に係るロックアップクラッチ用摩擦材の製造装置の略環状配置手段による相対移動を説明する説明図である。
【図9】図9は本発明の実施の形態2に係るロックアップクラッチ用摩擦材の製造装置の縮径金型と摩擦材載置部との配置関係を説明する説明図である。
【図10】図10は本発明の実施の形態2に係るロックアップクラッチ用摩擦材の製造装置の環状縮径手段の上にクラッチピストンを載置する直前の動作を説明する説明図である。
【図11】図11は本発明の実施の形態2に係るロックアップクラッチ用摩擦材の製造装置の環状縮径手段で縮径動作に入る直前を説明する説明図である。
【図12】図12は本発明の実施の形態2に係るロックアップクラッチ用摩擦材の製造装置の扇形摩擦材の接着接合のための加圧動作を説明する説明図である。
【図13】図13は本発明の実施の形態3に係るロックアップクラッチ用摩擦材の製造装置の扇形摩擦材の接着接合動作を説明する説明図で、(a)は縮径過程を説明し、(b)は縮径後の押圧接合状態を示すものである。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施の形態について、図面に基づいて説明する。なお、実施の形態において、図中、同一記号及び同一符号は、同一または相当する機能部分であるから、ここでは重複する説明を省略する。
[実施の形態1]
【0024】
図1乃至図6において、本実施の形態においては、扇形摩擦材10-1〜10-8(以下、本実施の形態において、略環状を含む環状摩擦材については「10」で、扇形摩擦材については「10-1〜10-8」で示すこととする)は、図示しない別の場所で帯状の摩擦材材料から公知の打ち抜き手段で扇形に打ち抜いて扇形摩擦材10-1〜10-8を形成したものであり、1枚の扇形摩擦材10-1〜10-8は環状擦材10の一部を構成するものである。
【0025】
扇形に打ち抜いた扇形摩擦材10-1〜10-8は、供給路20を順次送出される。供給路20を順次送出された扇形摩擦材10-1〜10-8は、扇形摩擦材10-1〜10-8の端部10a,10bの相互間が接触しない状態で配置金型30の区画桟31に合わせて略環状に配置される。この扇形摩擦材10-1〜10-8が、扇形摩擦材10-1〜10-8の端部10a,10bの相互間が接触しない状態で、配置金型30の区画桟31に合わせて略環状に配置する略環状配置手段を構成している。詳しくは、配置金型30は円板にその中心から放射状に8個の区画桟31を配設したものである。配置金型30は等速回転運動または連続する区画桟31が供給路20の両側にあるとき、一旦停止する回転運動を行う。
【0026】
なお、本実施の形態では、扇形摩擦材10-1〜10-8の端部10a,10bの相互間が接触しない状態で配置金型30の区画桟31に合わせて略環状に配置されるものとして説明するが、本発明を実施する場合には、本実施の形態に限られるものではなく、配置時に一部の扇形摩擦材10-1〜10-8は端部10a,10bが接触して配するもの、及び縮径後に扇形摩擦材10-1〜10-8の端部10a,10bが接触した部分と接触しない部分が混在するものにも使用できる。
【0027】
回転軸37を中心に回転する円板状の配置金型30は、各配置場所を特定する8箇所の配置位置33-1〜33-8を有している。したがって、供給路20を順次送出された扇形摩擦材10-1〜10-8は、8箇所の配置位置33-1〜33-8に順次配置される。配置位置33-1〜33-8に順次配置された扇形摩擦材10-1〜10-8は、アジャスタ32によって、設定された位置に扇形摩擦材10-1〜10-8を整列させている。
【0028】
このアジャスタ32は、扇形摩擦材10-1〜10-8の2箇所をその中心方向に押圧するものであるが、ローラによって押圧する構成とすることも、単なる2箇所の支持部材で押圧することもできる。勿論、各扇形摩擦材10-1〜10-8の中心位置を押圧してもよい。また、配置金型30に配置する際の精度によっては、アジャスタ32を省略できる。なお、本実施の形態では、区画桟31のみで配置位置を決定しているが、本発明を実施する場合には、扇形摩擦材10-1〜10-8の端部10a,10bの相互間が接触しない状態とする区画桟31のみではなく、内周及び外周にも桟を設けてもよい。
【0029】
配置金型30の設定された位置に扇形摩擦材10-1〜10-8を配置させると、所定の位置で配置金型30の回転軸37を中心に行う回転を停止させ、略環状に配置された複数枚の扇形摩擦材10-1〜10-8を吸引する吸引ヘッド41を配設した摩擦材移動手段40で、配置金型30で整列された扇形摩擦材10-1〜10-8を吸引して引き上げ、引き上げた状態で配置金型30とは異なる縮径金型50に移動する。なお、摩擦材移動手段40には、吸引ヘッド41の空気を吸引する空気吸引通路42を内蔵し、図示しないポンプに接続されている。この略環状に配置された扇形摩擦材10-1〜10-8を取り出し、配置金型30とは異なる縮径金型50に移動する摩擦材移動手段40は、本実施の形態の摩擦材移動工程を構成している。
【0030】
即ち、略環状に配置された複数枚からなる扇形摩擦材10-1〜10-8を取り出し、吸引ヘッド41を具備する摩擦材移動手段40からなるワークの移動工程によって配置金型30とは異なる図2に示す縮径金型50上に扇形摩擦材10-1〜10-8を移動する。なお、図2は扇形摩擦材10-1〜10-8の配置関係のみを示すものである。
縮径金型50では、複数枚からなる扇形摩擦材10-1〜10-8が、扇形摩擦材10-1〜10-8の端部相互間に所定の隙間δの間隔を置いて配置される。
【0031】
それを図4(a)に示すように、回転軸37を中心とするように縮径する。このとき、隙間δの間隔をおいて配置された扇形摩擦材10-1〜10-8の端部相互間は、全体が隙間δを密接(ゼロ)して所定の接触状態になっているとその相対移動が停止され、接触圧を上げないからバランスの取れた接触圧となる。
また、図4(b)に示すように回転軸37を中心とするように縮径する場合もある。このとき、隙間αの間隔をおいて配置された扇形摩擦材10-1〜10-8の端部相互間は、全体が隙間αの間隔で配置された状態になっている。この場合も、扇形摩擦材10-1〜10-8の端部相互間が重なり合わないから、バランスの取れた接触圧となる。この際には、隙間αの間隔を維持する間隔保持材によって間隔を維持するようにしてよいし、所定の回転軸37を中心とするように縮径するのみでもよい。
なお、以下に説明する実施の形態では、図4(a)に示すように、全体が隙間δを密接(ゼロ)して所定の接触状態になっている事例で説明するが、その違いは縮径する程度の違いである。また、環状摩擦材または略環状摩擦材の区別なく、環状摩擦材の事例で説明する。
【0032】
具体的には、図5に示す縮径金型50の断面図によって説明する。
図5において、縮径金型50の縮径本体金型56は全体が略円板状であり、外周に環状溝51が形成されている。その内側には、平坦面の摩擦材載置部52が形成されており、扇形摩擦材10-1〜10-8はこの摩擦材載置部52に置かれる。平坦面の摩擦材載置部52に扇形摩擦材10-1〜10-8が載置され、載置された扇形摩擦材10-1〜10-8が彎曲するのを防止するために、その彎曲を防止する規制板53を所定の圧力で配置している。
縮径金型50は、その位置を決定する配置基台39に配設された位置決め軸38で位置を特定している。即ち、縮径金型50は、摺動リング金型55及び縮径本体金型56から構成され、それが、配置基台39に載せられ、かつ、位置決め軸38で位置決めされる。
【0033】
規制板53は、縮径金型50の本体に形成された複数個穿設した嵌合凹部54に対してガイド53aを挿入し、嵌合凹部54に対してガイド53aが垂直方向に摺動自在となっている。したがって、規制板53は縮径金型50の摩擦材載置部52の面に対して垂直方向の押圧力を付与している。故に、規制板53によって、摩擦材載置部52に載置された互いに隣り合っている扇形摩擦材10-1〜10-8の端部相互間が彎曲したり、浮き上がったりすることを防止することができる。
【0034】
また、縮径金型50の環状溝51は、外側の立ち上がり壁である外周面51a及び内側の立ち上がり壁である内周面51bも、縮径金型50の摩擦材載置部52の面に対して垂直方向の面として形成されている。摺動リング金型55は、外周55bが環状溝51の外周面51aに接触している。したがって、摺動リング金型55は環状溝51の外周面51aに対して平行方向の摺動のみ、即ち、縮径金型50の摩擦材載置部52の面に対して垂直方向の上下動を行う。
【0035】
摺動リング金型55の内周面はテーパ面55aとなっており、下端の内径が上端の内径よりも大きな径となっており、直線的に変化している。この下端の内径は、縮径金型50の摩擦材載置部52の面に載置された扇形摩擦材10-1〜10-8の外周よりも大きく形成されていて、摺動リング金型55の下降または縮径金型50の上昇、即ち、両者の相対移動によって扇形摩擦材10-1〜10-8の外周に接触するようになっている。更に、摺動リング金型55が下降または縮径金型50が上昇するとテーパ面55aが扇形摩擦材10-1〜10-8の外周を内周側に押圧し、扇形摩擦材10-1〜10-8を環状の中心方向へ移動させて扇形摩擦材10-1〜10-8の端部相互間を接触させて環状とし、扇形摩擦材10-1〜10-8の端部相互間を所定の接触圧とすることになる。なお、このとき、規制板53によって形摩擦材10-1〜10-8の端部相互間が一部で浮き上がることがない。
【0036】
次に、扇形摩擦材10-1〜10-8の端部相互間を、図4に示すように、所定の接触圧とした状態で、自己のみで環状摩擦材10として維持する状態としたとき、規制板53を外し、スプレイまたは塗布によって、接着剤を環状摩擦材10に付着させる。接着剤の付着は、スプレイで噴霧してもよいし、直接塗布してもよい。また、接着剤の塗布は環状摩擦材10側のみではなく、図6に示すクラッチピストン60の接合面側にも塗布してもよい。即ち、接着剤の塗布は環状摩擦材10側の面、クラッチピストン60側の接合面の何れか1方または双方とすることができる。この際、摩擦材載置部52に図13に示すような吸引手段59を設けることができる。この吸引手段59により扇形摩擦材10-1〜10-8は摩擦材載置部52に吸引固定され、接着剤が塗布されるときに位置ずれを起こすことなく、環状摩擦材10の形状維持が確実になり、精度のよい組み立てが可能となる。
【0037】
扇形摩擦材10-1〜10-8の接着剤の付着された面側には、クラッチピストン60側の接合面を当てて、クラッチピストン60に扇形摩擦材10-1〜10-8方向の圧力を加える。本実施の形態では、クラッチピストン60を扇形摩擦材10-1〜10-8の接着剤の付着された面側に押圧した後、加圧手段70で継続して押圧力を加えるようにしている。また、接着剤の固化を早めるためにクラッチピストン60を直接加熱したり、加圧手段70を過熱したりすることもできる。
【0038】
このように、本実施の形態のロックアップクラッチ用摩擦材の製造装置は、環状摩擦材10の一部を構成する扇形に打ち抜いて扇形摩擦材10-1〜10-8を形成するものは、公知の打ち抜き手段を構成し、加工工程からすれば打ち抜き工程を有することになる。通常、長方形(帯状)の摩擦材材料から連続的に特定方向に湾曲した扇形摩擦材10-1〜10-8を打ち抜く方法によって形成される。打ち抜き手段による扇形摩擦材10-1〜10-8の打ち抜きの分割数が高いと摩擦材材料の利用効率がよくなるが、作業効率が低下することから、通常、6枚から12枚程度で環状となるように形成されている。
また、本実施の形態の特定の配置金型30に対して所定の間隔で扇形摩擦材10-1〜10-8の端部10a,10bを当該配置金型30の区画桟31に当接させるように配置し、それら扇形摩擦材10-1〜10-8を取り上げたとき、扇形摩擦材10-1〜10-8の端部相互が接触しない状態で、配置金型30に略環状に配置する手段は、本実施の形態の略環状配置手段を構成している。これは、加工工程からすれば略環状配置工程に相当する。なお、配置金型30の区画桟31に扇形摩擦材10-1〜10-8の端部10a,10bを当接させるように、配置する略環状配置手段は、扇形摩擦材10-1〜10-8が接触することを前提とするものではなく、接触しない状態で縮径可能な状態で配置されるものであるが、本発明を実施する場合には、これに限定されるものではなく、扇形摩擦材10-1〜10-8の一部、例えば、2枚毎に密着させて相互に接触した状態で、全体を縮径可能な状態に配置される場合にも対応できる。
【0039】
本実施の形態の環状に配置された複数枚の扇形摩擦材10-1〜10-8を吸引する摩擦材移動手段40は、空気吸引通路42及び吸引ヘッド41を有する吸引手段であり、扇形摩擦材10-1〜10-8を吸引保持して次の環状縮径手段による縮径金型50の処理が行える場所に移動するものであればよく、その移動も専用機であっても、ロボットであっても、トランスファーマシン、ターンテーブル等であっても良い。
何れにせよ、略環状配置手段で略環状に配置された扇形摩擦材10-1〜10-8を取り出し、配置金型30とは異なる縮径金型50に移動する機能からなる摩擦材移動手段(相対移動手段)40を構成するものであればよい。これは加工工程からすれば摩擦材移動工程に相当するものである。ここで摩擦材移動手段40を移動させる専用機、トランスファーマシン、ターンテーブル等が位置制御手段として使用できる。
【0040】
本実施の形態の環状縮径手段は、略環状に配置された複数枚からなる扇形摩擦材10-1〜10-8をその径が小さくなるように、扇形摩擦材10-1〜10-8を環状の中心方向へ移動させて扇形摩擦材10-1〜10-8の端部10a,10bの相互間を接触させて環状とするものである。これは加工工程からすれば環状縮径工程に相当する。個々に複数枚からなる扇形摩擦材10-1〜10-8を独立して、その径が小さくなるように移動させるのが望ましい。
そして、本発明を実施する接着剤塗布手段は、環状に整列配置した扇形摩擦材10-1〜10-8、即ち、環状摩擦材10の上面またはクラッチピストン60の下面(環状摩擦材10の接合面)の一方または両方に接着剤を塗布するものである。
更に、本発明を実施する押圧接合手段は、クラッチピストン60を環状に整列した複数枚の扇形摩擦材10-1〜10-8に加圧手段70で押圧して、対向する面をクラッチピストン60に接着するものである。これは、加工工程からすれば押圧接合工程に相当する。
【0041】
本実施の形態は、略環状配置工程で略環状に配置された複数枚からなる扇形摩擦材10-1〜10-8を、配置金型30とは異なる縮径金型50に相対移動する相対移動工程と、略環状配置工程で略環状に配置された複数枚からなる扇形摩擦材10-1〜10-8をその径が小さくなるように、扇形摩擦材10-1〜10-8を略環状の中心方向へ移動させて扇形摩擦材10-1〜10-8の端部相互間を接触させて環状とする環状縮径工程とを具備するものであり、これは、略環状配置手段で略環状に配置された扇形摩擦材10-1〜10-8を縮径金型50に移動し、略環状に配置された扇形摩擦材10-1〜10-8をその径が小さくなるように、扇形摩擦材10-1〜10-8を環状の中心方向へ移動させて扇形摩擦材10-1〜10-8の端部10a,10bの相互間を接触させて環状または所望の隙間間隔の略環状とするスライド手段を構成している。
【0042】
以上のように、本実施の形態のロックアップクラッチ用摩擦材の製造装置は、環状摩擦材10の一部を構成する扇形に打ち抜いて扇形摩擦材10-1〜10-8を形成する打ち抜き手段と、扇形摩擦材10-1〜10-8を配置金型30に所望の形状で略環状に配置する略環状配置手段と、前記略環状配置手段で略環状に配置された扇形摩擦材10-1〜10-8を取り出し、配置金型30とは異なる縮径金型50に移動し、略環状に配置された扇形摩擦材10-1〜10-8をその径が小さくなるように、扇形摩擦材10-1〜10-8を環状の中心方向へ移動させて扇形摩擦材10-1〜10-8の端部10a,10bの相互間を接触させて環状または所望の隙間間隔の略環状とするスライド手段と、環状に整列した扇形摩擦材10-1〜10-8の一面とクラッチピストン60の接合面の一方または両方に接着剤を塗布する接着剤塗布手段と、前記クラッチピストン60を環状に整列した複数枚の扇形摩擦材10-1〜10-8に加圧手段70で押圧して、環状摩擦材10の一面をクラッチピストン60の環状摩擦材10の一面を接合する面に接着する押圧接合手段を具備するものである。
【0043】
故に、環状摩擦材10の一部を構成する扇形に打ち抜いてなる扇形摩擦材10-1〜10-8の端部10a,10bの相互間が接触しない状態で、扇形摩擦材10-1〜10-8を配置金型30に略環状に配置する。そして、前記略環状に配置された扇形摩擦材10-1〜10-8を取り出し、前記配置金型30とは異なる縮径金型50に移動する。そこで、前記略環状に配置された扇形摩擦材10-1〜10-8をその径が小さくなるように、前記扇形摩擦材10-1〜10-8を環状の中心方向へ移動させて前記扇形摩擦材10-1〜10-8の相互間を接触させて所望の環状とし、環状摩擦材10の上面とクラッチピストン60の下面の一方または両方に接着剤を塗布し、前記クラッチピストン60を環状摩擦材10に押圧して、前記対向する面を前記クラッチピストン60に接着できる。
特に、ロックアップクラッチ用摩擦材の製造方法では、配置金型30に略環状に配置する工程と、次の工程とを分割することができるから、高効率で生産性のよいクラッチピストンの製造、トルクコンバータの製造が可能となる。
【0044】
更に、環状摩擦材10の一部を構成する扇形に打ち抜いてなる扇形摩擦材10-1〜10-8の端部10a,10bの相互間が、接触しない状態で、配置金型30に合わせて略環状に配置するとき、その直径を大きくでき、全枚数の扇形摩擦材10-1〜10-8を均一に縮径でき、全枚数の扇形摩擦材10-1〜10-8の端部10a,10bの相互間の接触圧力を均一化できる。よって、クラッチピストン60に対して複数の扇形摩擦材10-1〜10-8の端部10a,10bの相互間の圧力を均一化し、互いに密着させて平坦な環状の摩擦材とすることができるから、その特性が安定化できる。
【0045】
また、本実施の形態のロックアップクラッチ用摩擦材の製造装置は、打ち抜き手段で形成した扇形に打ち抜いた扇形摩擦材10-1〜10-8を、接着剤塗布面がその反対面の面積より小さくなるようにすることにより、接着剤が扇形摩擦材10-1〜10-8の端部10a,10bに入り込むことができ、接着剤の接合面積を広くすることができる。
特に、打ち抜きを行うときに扇形摩擦材10-1〜10-8の端面が、接着剤を塗布する上面側の角度が開くように端面を形成すると、現実に開いていなくても、接着剤を塗布した後に接着のための押圧力で余剰接着剤が端部10a,10bの相互間に進入し易くなるから、その接着剤の端部10a,10bの相互間に対する進入は、端部10a,10b相互間を接合する機能となり、上面に位置していた接着剤の接合面積を広くすることができ機械的強度が安定する。また、端部10a,10b相互間の接着剤に侵入により、剥離され難い接合状態が維持できる。
[実施の形態2]
【0046】
次に、実施の形態2を説明する。なお、実施の形態2において、実施の形態1と同一記号及び同一符号は、同一または相当する機能部分を示すものであるから、ここでは重複する説明を省略する。
図7乃至図12の本実施の形態においては、扇形摩擦材10-1〜10-8は、図示しない別の場所で帯状の摩擦材材料から公知の打ち抜き手段で扇形に打ち抜いて扇形摩擦材10-1〜10-8を形成したものであり、1枚の扇形摩擦材10-1〜10-8は、図2に示す環状摩擦材10の一部を構成するものである。
【0047】
扇形に打ち抜いた扇形摩擦材10-1〜10-8は、図7に示す供給路20を順次送出される。供給路20を順次送出された扇形摩擦材10-1〜10-8は、扇形摩擦材10-1〜10-8の端部10a,10bの相互間が接触しない状態で、円板状の配置基台132の上面に形成した配置枠体131の内側の境界である内側桟131a、外側の境界である外側桟131b、相互間の境界である区画桟131cに合わせて略環状に配置される。この扇形摩擦材10-1〜10-8が、扇形摩擦材10-1〜10-8の端部10a,10bの相互間が接触しない状態で、配置金型130は配置枠体131の内側桟131a、外側桟131b、区画桟131cに合わせて略環状に配置する略環状配置手段を構成している。詳しくは、配置金型130には、配置枠体131の内側桟131a、外側桟131b、区画桟131cの内側数ミリ以下、通常1mm以下の間隙を形成して、その中心から放射状に8個の配置受台133-1〜133-8を配設している。8個の配置受台133-1〜133-8と配置枠体131は、等速回転運動または連続する区画桟131cが供給路20の両側にあるとき、一旦停止する回転運動を行い、配置基台132と配置枠体131と配置受台133-1〜133-8で、配置金型130を構成している。なお、本実施の形態の配置枠体131の高さは、10mm以下である。
【0048】
具体的には、図8乃至図12に示す縮径金型150の断面図によって略環状配置手段及び環状縮径手段を説明する。
図8において、配置基台132の内側桟131a、外側桟131b、区画桟131c(図7参照)からなる配置枠体131の内部には、8個の配置受台133-1〜133-8を収容している。内側縮径金型151及び外側縮径金型155からなる縮径金型150には、両者間に間隙が形成され、そこに、扇形摩擦材10-1〜10-8を載置した8箇所の配置受台133-1〜133-8が出入り自在に移動する。
【0049】
本実施の形態では、8個の配置受台133-1〜133-8と配置枠体131は、配置基台132と同時に回動する配置金型130の事例で説明したが、本発明を実施する場合には、供給路20のみに内側桟131a、外側桟131b、区画桟131cからなる配置枠体131を配設し、他の部分には、内側桟131a、外側桟131b、区画桟131cからなる配置枠体131の配置を省略することもできる。このとき、内側桟131a、外側桟131b、区画桟131cからなる配置枠体131が配置基台132から離れ、8個の配置受台133-1〜133-8が順次45度毎に回動することになるから、8個の配置受台133-1〜133-8が高速回転、急速加または急減速を行うと、その加速度によって扇形摩擦材10-1〜10-8の位置が変化する可能性があるので、8個の配置受台133-1〜133-8と配置枠体131は、配置基台132と一体となって回動するのが望ましい。
【0050】
配置金型130は、各配置場所を特定する8箇所の配置受台133-1〜133-8を有している。8箇所の配置受台133-1〜133-8は、昇降基体136に取り付けられており、8箇所の配置受台133-1〜133-8が同時に昇降するようになっている。そして、配置中心軸137を中心として同一距離の円周上に配設されている。また、8箇所の配置受台133-1〜133-8が同時に昇降するから、8箇所の配置受台133-1〜133-8が正確な位置を維持する。
したがって、供給路20を順次送出された扇形摩擦材10-1〜10-8は、8箇所の配置受台133-1〜133-8に順次配置される。配置受台133-1〜133-8に順次配置された扇形摩擦材10-1〜10-8は、設定された位置に整列する。
【0051】
配置金型130の配置受台133-1〜133-8の設定された位置に扇形摩擦材10-1〜10-8を配置させると、所定の位置で配置金型130の回転を停止させる。
この状態で配置受台133-1〜133-8の配置中心軸137が、ターンテーブル中心軸237を中心に所定の角度毎に回動させる。通常、配置中心軸137は2乃至4本程度配設され、図7の例では、ターンテーブル中心軸237を中心に、90度毎に回動させるよう、配置中心軸137は4本配設されている。即ち、配置金型130の配置受台133-1〜133-8に扇形摩擦材10-1〜10-8が配置されると、その配置中心軸137の本数に応じて180乃至90度の等角度を回動させる。
この状態で配置金型130の配置受台133-1〜133-8の位置が移動すると、次の別の配置金型130の配置受台133-1〜133-8の位置が供給路20の下に位置し、そこで、前述の設定された位置に扇形摩擦材10-1〜10-8を整列させる工程に入る。
【0052】
まず、配置金型130の配置受台133-1〜133-8に扇形摩擦材10-1〜10-8が配置されると、当該配置金型130が図7に示すように、昇降基体136と共にターンテーブル中心軸237を中心に所定の角度(図示では90度)だけ回動され、扇形摩擦材10-1〜10-8が配置された配置中心軸137が回動する。その回動した昇降基体136の配置中心軸137には、まず、内側縮径金型151が挿着される。内側縮径金型151の上面には、クラッチピストン60が安定して載置できる段差152a乃至152dが形成されている。また、その外周下端には、内側桟131aを収容する切り欠き溝151aにより、内側桟131aの内面を内側縮径金型151の外周面と同一に形成している。この内側縮径金型151の基準は、回動移動した配置中心軸137となり、内側縮径金型151が下降して切り欠き溝151aが配置金型130の内側桟131aに嵌合したとき、そこが配置中心軸137と共に基準位置となる。
【0053】
内側縮径金型151の配置中心軸137に対する挿着工程に対して、前後して、外側縮径金型155の挿着が行われる。外側縮径金型155は配置基台132の外周にその下端の内周面156の挿着が開始され、更に、挿着状態の進行によって、その内周には、外側桟131bを収容する切り欠き溝155aにより、外側桟131bの内面を外側縮径金型155の内周面155bと同一に形成しているので、内側縮径金型151と外側縮径金型155の両者は一体に組み付けられる。ここで、外側縮径金型155の基準は、配置基台132の外周と内周面156となる。
なお、本実施の形態では、内側縮径金型151の配置の後に外側縮径金型155を配置する順序で説明したが、本発明を実施する場合には、外側縮径金型155が下降して切り欠き溝155aが外側桟131bに嵌合したとき、両者が一体となるから、内側縮径金型151の挿着と外側縮径金型155の挿着は、何れが先でもよい。
【0054】
外側縮径金型155の内周面155bは、下部よりも上部の径が小さいテーパ面155cに繋がっている。
また、外側縮径金型155の上面157aは、クラッチピストン60の外周部を載置する部分であり、また、上部内面157bはクラッチピストン60の外周部を規制する部分である。この内側縮径金型151と外側縮径金型155は、本実施の形態の縮径金型150を構成する。
【0055】
また、配置金型130の配置枠体131と、内側縮径金型151の外側の立ち上がり壁である外周面151b及び外側縮径金型155の内側の立ち上がり壁である内周面155bは、縮径金型150の配置受台内側の立ち上がり壁である外側縮径金型155の内周面155bも、縮径金型150の配置受台133-1〜133-8の面に対して垂直方向の面として形成されている。外側縮径金型155は、内周のテーパ面155cが扇形摩擦材10-1〜10-8の外周に接触する。したがって、外側縮径金型155のテーパ面155cは扇形摩擦材10-1〜10-8に対して平行方向の摺動のみ、即ち、縮径金型150の配置受台133-1〜133-8の面に対して平行方向の移動を行う。
【0056】
外側縮径金型155のテーパ面155cは、下端の内径が上端の内径よりも大きな径となっている。この下端の内径は、縮径金型150の配置受台133-1〜133-8の面に載置された扇形摩擦材10-1〜10-8の外周よりも大きく形成されていて、配置受台133-1〜133-8の上昇によって扇形摩擦材10-1〜10-8の外周に接触するようになっている。更に、配置受台133-1〜133-8が上昇すると扇形摩擦材10-1〜10-8の外周を内周側に押圧し、扇形摩擦材10-1〜10-8を環状の中心方向へ移動させて扇形摩擦材10-1〜10-8の端部相互間を接触させて環状とし、扇形摩擦材10-1〜10-8の端部相互間を所定の接触圧とすることになる。
【0057】
ここで、内側縮径金型151は配置基台132の配置中心軸137側に位置し、外側縮径金型155は配置基台132の外周側に位置し、図10に示すように、クラッチピストン60を内側縮径金型151の段差152a乃至152d及び外側縮径金型155の上面157a、上部内面157bに載置する。このとき、クラッチピストン60は水平方向には、内側縮径金型151の段差152aと外側縮径金型155の上部内面157bによって規制を受ける。また、内側縮径金型151の段差152b乃至152dと外側縮径金型155の上面157aによって水平面を出している。
【0058】
この状態で、クラッチピストン60と内側縮径金型151及び外側縮径金型155との関係は、図11に示すようになる。
図11に示す状態で配置金型130の配置受台133-1〜133-8の位置が回動し、更に90度回動すると、その間に、配置金型130の配置受台133-1〜133-8の位置が上昇し、同時に、そこで、クラッチピストン60に上から押圧力を加える押圧ピストン等の加圧手段170が下降する。クラッチピストン60の上から押圧ピストン等の加圧手段170が押圧力を加えた後、この状態で昇降基体136を配置基台132に対して上昇させ、配置受台133-1〜133-8を上昇させる。
【0059】
縮径金型150では、複数枚からなる扇形摩擦材10-1〜10-8が、図12に示すように、扇形摩擦材10-1〜10-8の端部相互間に所定の隙間δ(図2参照)の間隔を置いて、配置受台133-1〜133-8の上に配置されている。それを図10乃至図12に示すように縮径する。このとき、隙間δの間隔をおいて配置された扇形摩擦材10-1〜10-8の端部相互間は、全体が隙間δを密接(ゼロ)して所定の接触状態になっているとその相対移動が停止され、接触圧を上げないからバランスの取れた接触圧となる。
【0060】
次に、クラッチピストン60を縮径金型から離し、扇形摩擦材10-1〜10-8の端部相互間を、所定の接触圧とした状態で、自己のみで環状摩擦材10として維持する状態としたとき、スプレイまたは塗布によって、接着剤を環状形摩擦材10に付着させる。接着剤の付着は、スプレイで噴霧してもよいし、直接塗布してもよい。また、接着剤の付着は扇形摩擦材10-1〜10-8側のみではなく、クラッチピストン60の接合面側にも付着してもよい。即ち、接着剤の塗布は環状摩擦材10側の一面、クラッチピストン60側の接合面の何れか一面または双方の面とすることができる。
【0061】
扇形摩擦材10-1〜10-8の接着剤の付着された面側には、クラッチピストン60側の接合面を当てて、クラッチピストン60に扇形摩擦材10-1〜10-8方向の圧力を加える。本実施の形態では、クラッチピストン60を扇形摩擦材10-1〜10-8の接着剤の付着された面側に押圧した後、加圧手段170で継続して押圧力を加えるようにしている。また、接着剤の固化を早めるためにクラッチピストン60を直接加熱したり、加圧手段170を加熱したりすることもできる。
【0062】
このように、本実施の形態のロックアップクラッチ用摩擦材の製造装置は、環状摩擦材10の一部を構成する扇形に打ち抜いて扇形摩擦材10-1〜10-8を形成するものは、公知の打ち抜き手段を構成し、加工工程からすれば打ち抜き工程を有することになる。通常、長方形(帯状)の摩擦材材料から連続的に特定方向に湾曲した扇形摩擦材10-1〜10-8を打ち抜く方法によって形成される。打ち抜き手段による扇形摩擦材10-1〜10-8の打ち抜きの分割数が高いと摩擦材材料の利用効率がよくなるが、作業効率が低下することから、通常、6枚から12枚程度で環状となるように形成されている。
【0063】
また、本実施の形態の特定の配置金型130に対して所定の間隔で扇形摩擦材10-1〜10-8の端部10a,10bを当該配置金型130の配置枠体131内に入るように配置し、扇形摩擦材10-1〜10-8の端部相互が接触しない状態で、配置金型130に略環状に配置する略環状配置手段を構成している。これは、加工工程からすれば略環状配置工程に相当する。なお、配置金型130の配置枠体131に扇形摩擦材10-1〜10-8の端部10a,10bを当接させるように、配置する略環状配置手段は、扇形摩擦材10-1〜10-8が接触することを前提とするものではなく、接触しない状態で縮径可能な状態で配置されるものである。
【0064】
本実施の形態の環状に配置された複数枚の扇形摩擦材10-1〜10-8を移動する摩擦材移動手段140は、略環状に配置された扇形摩擦材10-1〜10-8を、配置金型130とは異なる縮径金型150の処理が行える場所に移動するものであればよく、その移動も専用機であっても、ロボットであっても、トランスファーマシン、ターンテーブル等であっても良い。ここで、本実施の形態では扇形摩擦材10-1〜10-8を縮径金型150の位置に移動しているが、縮径金型150を扇形摩擦材10-1〜10-8の位置に移動させることもできる。その移動は専用機であっても、ロボットであっても、トランスファーマシン、ターンテーブル等であっても良い。
何れにせよ、略環状配置手段で略環状に配置された扇形摩擦材10-1〜10-8を、配置金型130とは異なる縮径金型150に移動する機能を行う相対移動手段を構成するものであればよい。これは加工工程からすれば相対移動工程に相当するものである。
ここで、扇形摩擦材10-1〜10-8を縮径金型150の位置に移動させる専用機やロボット、トランスファーマシン、ターンテーブル等が位置制御手段である。また、扇形摩擦材10-1〜10-8を縮径金型150に移動する際、配置金型130の配置受台133-1〜133-8の扇形摩擦材10-1〜10-8を載置する面に吸引孔(図示せず)を配設し、図示しない吸引装置によって吸引がなされると、扇形摩擦材10-1〜10-8は、吸引孔を介して配置受台133-1〜133-8に保持されるため移動時に環状摩擦材10の形状維持が確保できる。勿論、扇形摩擦材10-1〜10-8を縮径するときには、吸引を弱めることで縮径を可能にする。
【0065】
本実施の形態の環状縮径手段は、略環状に配置された複数枚からなる扇形摩擦材10-1〜10-8をその径が小さくなるように、扇形摩擦材10-1〜10-8を環状の中心方向へ移動(本実施の形態では水平移動)させて扇形摩擦材10-1〜10-8の端部10a,10bの相互間を接触させて環状とするものであり、加工工程からすれば環状縮径工程に相当する。個々に複数枚からなる扇形摩擦材10-1〜10-8を独立して、その径が小さくなるように移動させるのが望ましい。
【0066】
そして、本発明を実施する接着剤塗布手段は、環状に整列配置した扇形摩擦材10-1〜10-8、即ち、環状摩擦材10の上面またはクラッチピストン60の下面の接合面の一方または両方に接着剤を塗布するものである。
更に、本発明を実施する押圧接合手段は、クラッチピストン60を環状に整列した複数枚の扇形摩擦材10-1〜10-8に加圧手段170で押圧して、環状摩擦材10の上面とクラッチピストン60の下面の対向する面をクラッチピストン60に接着するものであり、加工工程からすれば押圧接合工程に相当する。
【0067】
以上のように、本実施の形態のロックアップクラッチ用摩擦材の製造装置は、環状摩擦材10の一部を構成する扇形に打ち抜いて扇形摩擦材10-1〜10-8を形成する打ち抜き手段と、扇形摩擦材10-1〜10-8の端部10a,10bの相互間が接触しない状態で配置金型130に合わせて略環状に配置する略環状配置手段と、前記略環状配置手段で略環状に配置された扇形摩擦材10-1〜10-8を、配置金型130とは異なる縮径金型150に移動する摩擦材移動手段、略環状に配置された扇形摩擦材10-1〜10-8をその径が小さくなるように、扇形摩擦材10-1〜10-8を環状の中心方向へ移動させて扇形摩擦材10-1〜10-8の端部10a,10bの相互間を接触させて環状とするか、または所望の隙間間隔の略環状とする環状縮径手段からなるスライド手段と、環状に整列した扇形摩擦材10の上面とクラッチピストン60の下面の一方または両方に接着剤を塗布する接着剤塗布手段と、前記クラッチピストン60を環状または略環状に整列した複数枚の扇形摩擦材10-1〜10-8に加圧手段170で押圧して、対向する面をクラッチピストン60に接着する押圧接合手段を具備するものである。
【0068】
故に、環状摩擦材10の一部を構成する扇形に打ち抜いてなる扇形摩擦材10-1〜10-8の端部10a,10bの相互間が、接触しない状態で、配置金型130に合わせて略環状に配置する。そして、前記略環状に配置された扇形摩擦材10-1〜10-8を前記配置金型130とは異なる縮径金型150に移動する。そこで、前記略環状に配置された扇形摩擦材10-1〜10-8をその径が小さくなるように、前記扇形摩擦材10-1〜10-8を環状の中心方向へ移動させて前記扇形摩擦材10-1〜10-8の相互間を接触させて環状とし、前記環状摩擦材10の面とクラッチピストン60の面の一方または両方に接着剤を塗布し、前記クラッチピストン60を環状摩擦材10に押圧して、前記対向する面を前記クラッチピストン60に接着するものである。
特に、ロックアップクラッチ用摩擦材の製造方法では、配置金型130に合わせて略環状に配置する工程と、次の工程を分割することができるから、高効率で生産性のよいクラッチピストンの製造、トルクコンバータの製造が可能となる。
【0069】
したがって、環状摩擦材10の一部を構成する扇形に打ち抜いてなる扇形摩擦材10-1〜10-8の端部10a,10bの相互間が、接触しない状態で、配置金型130に合わせて略環状に配置するとき、その直径を大きくでき、全枚数の扇形摩擦材10-1〜10-8を均一に縮径でき、全枚数の扇形摩擦材10-1〜10-8の端部10a,10bの相互間の接触圧力を均一化できる。また、所望の隙間間隔の略環状とすることによっても整列した配置とすることができる。よって、クラッチピストン60に対して複数の扇形摩擦材10-1〜10-8の端部10a,10bの相互間の圧力を均一化し、互いに密着させて平坦な環状の摩擦材とすることができるから、その特性が安定化できる。
【0070】
また、本実施の形態のロックアップクラッチ用摩擦材の製造装置は、打ち抜き手段で形成した扇形に打ち抜いた扇形摩擦材10-1〜10-8を、接着剤塗布面がその反対面の面積より小さくなるようにすることにより、接着剤が扇形摩擦材10-1〜10-8の端部10a,10bにまで入り込むことができ、接着剤の接合面積を広くすることができる。
特に、打ち抜きを行うときに扇形摩擦材10-1〜10-8の端面が、接着剤を塗布する上面側の角度が開くように端面を形成すると、現実に開いていなくても、接着剤を塗布した後に接着のための押圧力で余剰接着剤が端部10a,10bの相互間に進入し易くなるから、その接着剤の端部10a,10bの相互間に対する進入は、端部10a,10b相互間を接合する機能となり、上面に位置していた接着剤の接合面積を広くすることができ機械的強度が安定する。また、端部10a,10b相互間の接着剤に侵入により、剥離され難い接合状態が維持できる。
[実施の形態3]
【0071】
次に、実施の形態3を説明する。なお、実施の形態3において、実施の形態1と同一記号及び同一符号は、同一または相当する機能部分を示すものであるから、ここでは重複する説明を省略する。
図13の本実施の形態においては、扇形摩擦材10-1〜10-8は、図示しない別の場所で帯状の摩擦材材料から公知の打ち抜き手段で扇形に打ち抜いて扇形摩擦材10-1〜10-8を形成したものであり、1枚の扇形摩擦材10-1〜10-8は、図2に示す環状摩擦材10の一部を構成するものである。
実施の形態1と実施の形態3との相違点は、本実施の形態では規制板53を廃止している。その規制板53の代わりに、吸引手段59を配設している。吸引手段59は縮径金型50の摩擦材載置部52に空気通路を形成したもので、その上端面が扇形摩擦材10-1〜10-8の下面となっており、負圧によって扇形摩擦材10-1〜10-8が吸着される。
【0072】
本実施の形態のロックアップクラッチ用摩擦材の製造装置は、環状摩擦材10の一部を構成する扇形に打ち抜いて扇形摩擦材10-1〜10-8を形成する打ち抜き手段と、扇形摩擦材10-1〜10-8の端部10a,10bの相互間が接触しない状態で配置金型30に合わせて略環状に配置する略環状配置手段と、前記略環状配置手段で略環状に配置された扇形摩擦材10-1〜10-8を吸引固定し、テーパ面を有するリング金型55を移動する摩擦材移動手段140からなる相対移動手段と、前記扇形摩擦材10-1〜10-8の吸引力を弱めて、略環状に配置された扇形摩擦材10-1〜10-8をその径が小さくなるように、扇形摩擦材10-1〜10-8を環状の中心方向へ移動させて扇形摩擦材10-1〜10-8の端部10a,10bの相互間を接触させて環状とする環状縮径手段と、環状に整列した扇形摩擦材10の一面とクラッチピストン60の環状摩擦材10が接着する接合面の一方または両方に接着剤を塗布する接着剤塗布手段と、前記クラッチピストン60を環状に整列した複数枚の扇形摩擦材10-1〜10-8に加圧手段70で押圧して、対向する面をクラッチピストン60に接着する押圧接合手段を具備するものである。
【0073】
故に、環状摩擦材10の一部を構成する扇形に打ち抜いてなる扇形摩擦材10-1〜10-8の端部10a,10bの相互間が、接触しない状態で、配置金型30に合わせて略環状に配置する。そして、前記略環状に配置された扇形摩擦材10-1〜10-8をその径が小さくなるように、前記扇形摩擦材10-1〜10-8を環状の中心方向へ移動させて前記扇形摩擦材10-1〜10-8の相互間を接触させて環状または所定の隙間の環状とし、前記環状摩擦材10の一面とクラッチピストン60の接合面の一方または両方に接着剤を塗布し、前記クラッチピストン60を環状摩擦材10に押圧して、前記対向する面を前記クラッチピストン60に接着できる。
特に、ロックアップクラッチ用摩擦材の製造方法では、配置金型30に合わせて略環状に配置する工程と、次の工程とを分割することができるから、高効率で生産性のよいクラッチピストンの製造、トルクコンバータの製造が可能となる。
【0074】
したがって、環状摩擦材10の一部を構成する扇形に打ち抜いてなる扇形摩擦材10-1〜10-8の端部10a,10bの相互間が、接触しない状態で、配置金型30に合わせて略環状に配置するとき、その直径を大きくでき、全枚数の扇形摩擦材10-1〜10-8を均一に縮径でき、全枚数の扇形摩擦材10-1〜10-8の端部10a,10bの相互間の接触圧力を均一化、または端部10a,10bの相互間の隙間を均一化できる。よって、クラッチピストン60に対して複数の扇形摩擦材10-1〜10-8の端部10a,10bの互間の圧力を均一化し、互いに密着させて平坦な環状の摩擦材とすることができるから、その特性が安定化できる。
【0075】
上記実施の形態1のロックアップクラッチ用摩擦材の製造装置における環状摩擦材10の一部を構成する扇形に打ち抜いて扇形摩擦材10-1〜10-8を形成する打ち抜き手段と、扇形摩擦材10-1〜10-8の端部10a,10bの相互間が接触しない状態で配置金型30に合わせて略環状に配置する略環状配置手段と、前記略環状配置手段で略環状に配置された扇形摩擦材10-1〜10-8を取り出し、配置金型30とは異なる縮径金型50に移動する摩擦材移動手段140からなる相対移動手段と、略環状に配置された扇形摩擦材10-1〜10-8をその径が小さくなるように、扇形摩擦材10-1〜10-8を環状の中心方向へ移動させて扇形摩擦材10-1〜10-8の端部10a,10bの相互間を接触させて環状とする環状縮径手段は、実施の形態3の環状摩擦材10の一部を構成する扇形に打ち抜いた扇形摩擦材10-1〜10-8の相互間が接触しない状態で配置金型30に合わせて略環状に配置する略環状配置手段と、相対的な上下運動を、扇形摩擦材10-1〜10-8の水平方向移動とし、略環状に配置された複数枚からなる扇形摩擦材10-1〜10-8をその径が小さくなるように移動させるスライド手段との構成とすることができる。
【0076】
即ち、実施の形態1〜3のロックアップクラッチ用摩擦材の製造装置は、環状摩擦材10の一部を構成する扇形に打ち抜いた扇形摩擦材10-1〜10-8を配置金型30に略環状に配置する略環状配置手段と、前記略環状配置手段で略環状に配置された扇形摩擦材10-1〜10-8を、摺動リング金型55や縮径金型150の下降または扇形摩擦材10-1〜10-8の上昇等の相対的な上下運動によって、前記略環状に配置された扇形摩擦材10-1〜10-8を水平方向に、かつ、その径が小さくなるように移動させるスライド手段と、環状に整列した環状摩擦材10の一面とクラッチピストン60の環状摩擦材10が接着する面の一方または両方に接着剤を塗布する接着剤塗布手段と、前記クラッチピストン60を環状に整列した複数枚の扇形摩擦材10-1〜10-8に加圧手段70で押圧して、環状摩擦材10をクラッチピストン60に接着する押圧接合手段を具備するものである。
【0077】
したがって、環状摩擦材10の一部を構成する扇形に打ち抜いてなる扇形摩擦材10-1〜10-8を、配置金型30に略環状に配置する。そして、略環状に配置された複数枚からなる扇形摩擦材10-1〜10-8を縮径金型50または縮径金型150に移動する。そこで、略環状に配置された扇形摩擦材10-1〜10-8をその径が小さくなるように移動させて扇形摩擦材10-1〜10-8を所望の環状とし、環状に整列した複数枚の扇形摩擦材10-1〜10-8の一面とクラッチピストン60の環状摩擦材10が接着する面の一方または両方に接着剤を塗布し、クラッチピストン60を環状に整列した複数枚の扇形摩擦材10-1〜10-8に押圧して、環状摩擦材10をクラッチピストン60に接着することができる。
ここで、環状摩擦材10の一部を構成する扇形に打ち抜いてなる扇形摩擦材10-1〜10-8の相互間が接触しない状態で、配置金型30に合わせて略環状に配置するとき、その直径を大きくでき、全枚数の扇形摩擦材10-1〜10-8を縮径して、全枚数の扇形摩擦材10-1〜10-8の端部相互間の接触圧力または間隙の間隔を均一化でき、環状全体の特性の安定した環状摩擦材とすることができる。勿論、扇形摩擦材10-1〜10-8の一部が相互に接触した状態で配置金型30に配置するとき、その直径を大きくしても同様の効果は期待できる。よって、クラッチピストンに対して複数の扇形摩擦材10-1〜10-8の相互間の圧力を均一化し、互いに密着または所定の間隔の平坦な環状摩擦材10とすることができ、その特性が安定化できる。また、この間の略環状配置手段、相対移動手段、スライド手段、接着剤塗布手段、押圧接合手段が、少なくとも2箇所以上の位置で行うことができるから、各工程の分散化によって効率のよい生産性が確保できる。
【0078】
前記スライド手段は、テーパ面55aを有するリング金型55またはテーパ面155cを有する外側縮径金型155と環状に配置した扇形に打ち抜いた扇形摩擦材10-1〜10-8との相対移動によって縮径するものであるから、テーパ面55aを有するリング金型55と環状に配置した扇形に打ち抜いた扇形摩擦材10-1〜10-8との相対移動は、リング金型55または扇形摩擦材10-1〜10-8の一方または両方を上下動させて相対移動させればよいので設計自由度が高くなる。
また、前記スライド手段は、環状に配置した扇形に打ち抜いた扇形摩擦材10-1〜10-8の上下動を規制する規制板53を有するものであるから、環状に配置した扇形に打ち抜いた扇形摩擦材10-1〜10-8の上下動を規制し、扇形に打ち抜いた扇形摩擦材10-1〜10-8が重なり合うことがない。
そして、前記スライド手段は、環状に配置した扇形に打ち抜いた扇形摩擦材10-1〜10-8を吸引して位置決めし、縮径の際に吸引力を弱める吸引手段59を有するから、扇形摩擦材10-1〜10-8の初期位置を正確に定め、かつ、無駄な動きが生じないように縮径の際に吸引力を弱め、正確に移動させるものであるから、規制板53のような外力を加える手段が不要となり、全体の構造を簡単化することができる。
【0079】
上記実施の形態の略環状配置手段で略環状に配置された複数枚からなる扇形摩擦材10-1〜10-8の位置が縮径金型50の位置に移動する摩擦材移動手段と、略環状配置手段で略環状に配置された複数枚からなる扇形摩擦材10-1〜10-8の位置に縮径金型50を移動する金型移動手段とは、扇形摩擦材10-1〜10-8、即ち、ワーク側を移動させるか、縮径金型50側を移動させるかの違いであるから、相対的に移動させればよいことから、相対移動手段とすることができる。
【符号の説明】
【0080】
10 扇形摩擦材
10-1〜10-8 扇形摩擦材
20 供給路
30,130 配置金型
40,140 摩擦材移動手段
41 吸引ヘッド
42 空気吸引通路
50 縮径金型
53 規制板
55 摺動リング金型
56 縮径本体金型
59 吸引手段
60 クラッチピストン
70 加圧手段
150 縮径金型
151 内側縮径金型
155 外側縮径金型
170 加圧手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
扇形に打ち抜いた複数枚の扇形摩擦材を配置金型に略環状に配置する略環状配置手段と、
前記略環状に配置した複数枚の扇形摩擦材を、その径が小さくなるように移動させるスライド手段と、
前記複数枚の扇形摩擦材の一面とクラッチピストンの前記扇形摩擦材を接合する面の一方または両方に接着剤を塗布する接着剤塗布手段と、
前記複数枚の扇形摩擦材の一面を前記クラッチピストンの前記複数枚の扇形摩擦材を接合する面に押圧して接着する押圧接合手段とを具備し、
前記スライド手段は、テーパ面を有するリング金型と前記略環状に配置した複数枚の扇形摩擦材との相対移動によって縮径することを特徴とするロックアップクラッチ用摩擦材の製造装置。
【請求項2】
前記スライド手段は、略環状に配置した扇形に打ち抜いた前記扇形摩擦材の中心方向への移動時に生ずる上下動を規制する規制板を有していることを特徴とする請求項1に記載のロックアップクラッチ用摩擦材の製造装置。
【請求項3】
前記スライド手段は、略環状に配置した扇形に打ち抜いた扇形摩擦材を吸引して位置決めし、縮径の際に吸引力を弱めることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のロックアップクラッチ用摩擦材の製造装置。
【請求項4】
扇形に打ち抜いた複数枚の扇形摩擦材を配置金型に略環状に配置する略環状配置工程と、
前記複数枚の扇形摩擦材を、その径が小さくなるように移動させるスライド工程と、
前記複数枚の扇形摩擦材の一面とクラッチピストンの前記扇形摩擦材を接合する面の一方または両方に接着剤を塗布する接着剤塗布工程と、
前記複数枚の扇形摩擦材に押圧して、前記扇形摩擦材の一面を前記クラッチピストンの前記複数枚の扇形摩擦材を接合する面に接着する押圧接合工程と
を具備することを特徴とするロックアップクラッチ用摩擦材の製造方法。
【請求項5】
前記スライド工程は、テーパ面を有するリング金型と前記略環状に配置した扇形に打ち抜いた扇形摩擦材との相対移動によって縮径することを特徴とする請求項4に記載のロックアップクラッチ用摩擦材の製造方法。
【請求項6】
前記スライド工程は、前記略環状に配置した扇形に打ち抜いた前記扇形摩擦材の中心方向への移動時に生ずる上下動を規制する規制板を有していることを特徴とする請求項4または請求項5に記載のロックアップクラッチ用摩擦材の製造方法。
【請求項7】
前記スライド工程は、前記略環状に配置した扇形に打ち抜いた扇形摩擦材を吸引して位置決めし、縮径の際に吸引力を弱めることを特徴とする請求項4乃至請求項6の何れか1つに記載のロックアップクラッチ用摩擦材の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2010−286066(P2010−286066A)
【公開日】平成22年12月24日(2010.12.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−141077(P2009−141077)
【出願日】平成21年6月12日(2009.6.12)
【出願人】(000100780)アイシン化工株式会社 (171)
【Fターム(参考)】