ロック機構付き電気コネクタ
【課題】小型で強度の高いロック機構付き電気コネクタを提供する。
【解決手段】金属製の補強板6が、ハウジングの対応する側部に固定された固定片21を有する本体22と、本体22から接続部材の挿入方向X1とは反対方向X2に延設された片持ち状のロックレバー25と、本体22から延設され基板の導電部に半田付けされる脚部26とを備える。本体22、ロックレバー25および脚部26を単一の材料で一体に形成する。ロックレバー25の基端28は本体22に接続され、先端29には、操作部30が設けられる。ロックレバー25の中間部31に、接続部材の側部に設けられた凹部と係合することにより、挿入溝からの接続部材の抜脱を防止する係合突起32を設ける。
【解決手段】金属製の補強板6が、ハウジングの対応する側部に固定された固定片21を有する本体22と、本体22から接続部材の挿入方向X1とは反対方向X2に延設された片持ち状のロックレバー25と、本体22から延設され基板の導電部に半田付けされる脚部26とを備える。本体22、ロックレバー25および脚部26を単一の材料で一体に形成する。ロックレバー25の基端28は本体22に接続され、先端29には、操作部30が設けられる。ロックレバー25の中間部31に、接続部材の側部に設けられた凹部と係合することにより、挿入溝からの接続部材の抜脱を防止する係合突起32を設ける。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はロック機構付き電気コネクタに関する。
【背景技術】
【0002】
電気コネクタにおいて、接続されたFPC(フレキシブル・プリンテッド・サーキット)等の平形の接続部材が、ハウジングから抜脱しないように保持する方式として、スライダを用いる方式がある(例えば特許文献1を参照)。
一方、スライダを用いない方式として、合成樹脂製のハウジングに、水平方向に延びる支軸を介して、回動可能なロックレバーを支持する構造が提案されている(例えば特許文献2を参照)。特許文献2では、ハウジングの挿入溝に挿入されたFPCの突起部に、ロックレバーの水平部を係合させて、FPCの抜脱を防止する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−196130号公報
【特許文献2】特開2005−4993号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1のようなスライダを用いる方式では、部品点数が多くなり、製造コストが高くなる。
また、特許文献2のように、支軸によって回動可能に支持されたロックレバーを用いる非スライダ方式では、ロックレバーの支持構造が複雑となり、製造コストが高くなる。
また、何れの方式においても、接続部材をハウジングにロックした状態で、接続部材を引っ張った場合、基板にハウジング付けされたコンタクトから、ハウジングが離脱するおそれがある。
【0005】
一方、ハウジングに固定された金属製の補強部材を基板に半田付けして用いることで、ハウジングの離脱を防止する技術が提案されている。
ロックレバーやスライダとは別体の補強部材を用いた場合、部品点数が増大し、製造コストが高くなる。また、電気コネクタが大型化する。
本発明の目的は、小型で強度の高いロック機構付き電気コネクタを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、請求項1の発明は、平形の接続部材(2)が挿入方向(X1)に沿って挿入される挿入溝(3)を有する合成樹脂製のハウジング(4)と、上記挿入溝に挿入される接続部材の導電部に接触可能にハウジングに保持され、上記ハウジングの左右方向(Y)に並ぶ複数のコンタクト(5)と、上記ハウジングの一対の側部(4a,4b)にそれぞれ固定された一対の金属製の補強板(6,7;106,107;206,207)と、を備え、各補強板は、ハウジングの対応する側部に固定された固定部(21)を有する本体(22;122;222)と、上記本体から上記挿入方向とは反対方向(X2)へ延設された弾性変形可能な片持ち状のロックレバー(25;125;225)と、上記本体から延設され基板(K)の導電部に半田付けされる脚部(26)と、を単一の材料で一体に有しており、各補強板のロックレバーは、上記本体に接続された基端(28;128;228)と、上記ハウジングから挿入方向とは反対方向に突出する先端(29;129;229)と、上記基端と上記先端との間に設けられ、接続部材の対応する側部(2a,2b;102a,102b)に設けられた係合部(8,9;108,109)とそれぞれ係合することにより、上記挿入溝からの接続部材の抜脱を防止する係合突起(32;132;232)と、を含むロック機構付き電気コネクタ(1;100)を提供するものである。
【0007】
また、請求項2のように、上記ロックレバーは、上記先端に設けられた操作部(30;130;230)を含む場合がある。
また、請求項3のように、各補強板の本体およびロックレバーは、互いの接続部(27)において直交している場合がある。
また、請求項4のように、各補強板のロックレバーは、挿入溝と平行に配置されている場合がある。
【0008】
また、請求項5のように、各補強板の本体およびロックレバーは、左右方向の同じ位置に配置されている場合がある。
なお、上記において、括弧内の英数字は、後述の実施形態における対応構成要素の参照符号を表すものであるが、これらの参照符号により特許請求の範囲を限定する趣旨ではない。
【発明の効果】
【0009】
請求項1の発明によれば、基板に半田付けされる補強板に、ロックレバーを単一の材料で一体に形成したので、これらを別部材で構成する場合と比較して、格段の小型化を達成することができる。また、強度のある補強板の本体によってロックレバーを片持ち状に支持するので、十分な強度を確保した状態で、挿入方向に関するロックレバーの長さを十分に長くして、ロックレバーの弾性スパンを長く確保することができる。可及的に、ロックレバーの耐久性を向上でき、ひいては電気コネクタの耐久性を向上することができる。
【0010】
また、請求項2のように、ロックレバーが上記先端に設けられた操作部(30;130;230)を含む場合には、操作部を操作して、ロックレバーによるロックを容易に解除することができる。
また、請求項3のように、各補強板の本体およびロックレバーが、互いの接続部において直交している場合には、挿入方向に関してロックレバーの長さを十分に長くして、ロックレバーの基端が、基板側に近接して配置されるレイアウトの採用が実質的に可能となる。これは、本体とロックレバーの接続部が直角に屈曲しているので、補強板を基板に半田付けするときに、半田が脚部から本体を介してロックレバーの基端まで到達することを確実に防止することができることによる。
【0011】
また、請求項4のように、各補強板のロックレバーが、挿入溝と平行に配置されている場合には、電気コネクタの小型化を達成することができる。
また、請求項5のように、各補強板の本体およびロックレバーが、左右方向の同じ位置に配置されている場合には、左右方向に関して電気コネクタを格段に小型化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の一実施の形態のロック機構付き電気コネクタおよび接続部材の概略斜視図である。
【図2】(a)、(b)および(c)は、それぞれ、ロック機構付き電気コネクタの平面図、後面図および側面図である。
【図3】図2(b)のIII −III 線に沿う断面図である。
【図4】図2(b)のIV−IV線に沿う断面図である。
【図5】図2(b)のV−V線に沿う断面図である。
【図6】コンタクトの斜視図である。
【図7】補強板の斜視図である。
【図8】ロック機構付き電気コネクタの概略断面図であり、(a),(b)は接続部材の接続工程を順次に示し、(c)は接続部材の抜脱工程を示している。
【図9】本発明の別の実施の形態のロック機構付き電気コネクタの断面図である。
【図10】本発明のさらに別の実施の形態のロック機構付き電気コネクタの断面図である。
【図11】各実施の形態のロック機構付き電気コネクタが適用可能な接続部材の変形例を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の好ましい実施の形態を添付図面を参照しつつ説明する。 図1は、本発明の一実施の形態のロック機構付き電気コネクタおよび接続部材の概略斜視図である。図2(a)、(b)および(c)は、それぞれ、ロック機構付き電気コネクタの平面図、後面図および側面図である。
図1に示すように、ロック機構付き電気コネクタ1(以下では、単に電気コネクタ1という)は、リセプタクルコネクタとしてのベースコネクタとして構成されている。すなわち、電気コネクタ1は、平形の接続部材2が挿入方向X1に沿って挿入される挿入溝3を区画する絶縁性の合成樹脂からなるハウジング4と、ハウジング4に保持された複数のコンタクト5と、ハウジング4の側部4a,4bにそれぞれ固定された一対の金属製の補強板6,7とを備えている。各コンタクト5および各補強板6,7は、基板Kの表面Kaの導電部に半田付けされている。
【0014】
接続部材2は、例えばFPC、FFCであり、挿入方向X1に平行に延びる一対の側部2a,2bと、一対の側部2a,2bにそれぞれ形成された一対のロック用の係合部としての凹部8,9とを有している。
図1並びに図2(a),(b)および(c)に示すように、ハウジング4は、前壁10と、後壁11と、一対の側壁12,13とを有し、左右方向Yに長い直方体形状をなしている。ハウジング4の後壁11の内面には、挿入溝3に臨む複数のコンタクト収容溝14が横並びに形成されており、各コンタクト収容溝14に対応するコンタクト5の一部が収容され、保持されている。
【0015】
電気コネクタ1は、挿入溝3に挿入された接続部材2をロックするための弾性変形可能なロックレバー25を備えている。ロックレバー25は、当該ロックレバー25を操作するための操作部30を有しており、操作部30は、ハウジング4の上方(挿入方向X1とは反対方向X2)へ突出している。また、ハウジング4は、例えば上方へ突出するリブからなるストッパ40を有している。ストッパ40は、操作時のロックレバー25の移動量を規制する機能を果たす〔図8(c)を参照〕。これにより、ロックレバー25のへたりが防止され、ロックレバー25の耐久性が確保されている。
【0016】
図2(b)のIII −III 線に沿う断面図である図3および図6に示すように、コンタクト5は、本体15と、本体15から、挿入方向X1と平行に延びハウジング4のコンタクト固定孔16に圧入された固定片17と、本体15から延びるL字状をなす弾性片18と、本体15の後端から延び基板Kの表面Kaに半田付けされたリード19とを備えている。
【0017】
各コンタクト5の弾性片18の一部が対応するコンタクト収容溝14に収容されている。各弾性片18は、挿入溝3内に突出する山形の接触部20を有している。挿入溝3内に接続部材2が挿入されると、各弾性片18が弾性変形し、その反発力によって、各接触部20が、挿入溝3に挿入される接続部材2の対応する導電部(図示せず)に加圧接触されるようになっている。
【0018】
一対の補強板6,7は対称な形状をなしているので、補強板6に則して説明する。図2(b)のIV−IV線に沿う断面図である図4、図2(b)のV−V線に沿う断面図である図5、および図7に示すように、補強板6は、ハウジング4の対応する側部4aに固定された固定部としての固定片21を有する本体22と、本体22から挿入方向X1とは反対方向X2へ延びる弾性片からなる片持ち状のロックレバー25と、本体22から延設され基板Kの導電部に半田付けされるL字形をなす脚部26とを単一の材料で一体に構成している。固定片21は、挿入方向X1とは反対方向X2へ延び、ハウジング4の固定孔23に圧入されている。
【0019】
本体22は、前後方向Zに沿う板状をなし、ロックレバー25は左右方向Yに沿う板状をなしている。すなわち、本体22とロックレバー25は、互いの接続部27において直交しており、ロックレバー25は、挿入溝3内に挿入溝3と平行に配置されている。
ロックレバー25は、接続部27を介して本体22に接続された基端28と、ハウジング4から挿入方向X1とは反対方向X2に突出する先端29と、先端29に設けられた傾斜状の操作部30とを備えている。
【0020】
また、ロックレバー25は、基端28と先端29との間の中間部31に設けられた山形をなす係合突起32を備えている。係合突起32は、挿入溝3に挿入された接続部材2の対応する側部4aに設けられた凹部8と係合することにより、挿入溝3からの接続部材2の抜脱を防止する機能を果たす。
係合突起32は、挿入方向X1とは反対方向X2に臨む傾斜状カム面33を有している。傾斜状カム面33は、挿入される接続部材2の挿入側端と係合することにより、ロックレバー25を撓ませて、接続部材2のさらなる挿入を可能とする。
【0021】
次いで、図8(a),(b)は、接続部材2の接続工程を順次に示し、(c)は接続部材2の抜脱工程を示している。図8(a)に示すように、接続部材2を挿入方向X1に沿って挿入溝3に挿入していくと、図示していないが、傾斜状カム面33の働きでロックレバー25が一端撓まされた後、図8(b)に示すように復帰する。これにより、ロックレバー25の係合突起32が、接続部材2の凹部8,9に係合し、ロックが達成されて、接続部材2の抜脱が防止される。
【0022】
一方、接続部材2を抜脱するときには、図示しない工具によって操作部30を挿入方向X1に押すことにより、図8(c)に示すように、ロックレバー25を弾性変形させる。これにより、凹部8,9から係合突起32が離脱され、ロックが解除されて、接続部材2の抜脱が可能となる。
本実施の形態によれば、基板Kに半田付けされる補強板6,7に、ロックレバー25を単一の材料で一体に形成したので、これらを別部材で構成する場合と比較して、格段の小型化を達成することができる。また、強度のある補強板6,7の本体15によってロックレバー25を片持ち状に支持するので、十分な強度を確保した状態で、挿入方向X1に関するロックレバー25の長さを十分に長くして、ロックレバー25の弾性スパンを長く確保することができる。可及的に、ロックレバー25の耐久性を向上でき、ひいては電気コネクタ1の耐久性を向上することができる。
【0023】
また、各補強板6,7の本体22およびロックレバー25が、互いの接続部27において直交しているので、挿入方向X1に関してロックレバー25の長さを十分に長くして、ロックレバー25の基端28が、基板K側に近接して配置されるレイアウトの採用が実質的に可能となる。これは、本体22とロックレバー25の接続部27が直角に屈曲しているので、補強板6,7の脚部26を基板Kに半田付けするときに、半田が脚部26から本体22を介してロックレバー25の基端28まで到達することを確実に防止することができることによる。
【0024】
また、各補強板6,7のロックレバー25が、挿入溝3内に挿入溝3と平行に配置されているので、電気コネクタ1の小型化を達成することができる。
本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、上記の実施の形態では、補強板6,7の本体22とロックレバー25が互いに直交していたが、これに限らない。
例えば図9に示すように、補強板106(107)の本体122およびL字状をなすロックレバー125が、左右方向Y(図9の紙面と直交する方向)の同じ位置に配置されていてもよい。この場合、補強板106(107)が同一平面上に配置されることになる。
【0025】
ロックレバー125の基端128が本体122に接続され、ロックレバー125は片持ち状に支持されている。ロックレバー125の先端129に、ロックレバー125を解除操作するための操作部130が設けられている。操作部130は挿入方向X1の反対方向X2に延びており、操作部130と係合突起32との間には、傾斜部150が設けられている。
【0026】
図9の構成要素において、図4、図5の実施の形態と同じ構成要素には、図4、図5の実施の形態と同じ参照符号を付してある。図9の実施の形態によれば、図4,図5の実施の形態と同様に、小型で耐久性に優れた電気コネクタ100を実現でき、特に、左右方向Yに関して電気コネクタ100を格段に小型化することができる。
また、図10に示すように、補強板206(207)の本体222から延設されたロックレバー225が、接続部材2の側方に配置されるものであってもよい。図10の例では、ロックレバー225の基端228が本体222に接続されている。また、ロックレバー225の途中部に、傾斜部250が設けられ、傾斜部250よりロックアーム225の先端229側が二股に分岐されている。
【0027】
その分岐された一方は、逆U字状に折り曲げられて、その先端によって、接続部材2の凹部8(9)に係合するための係合突起232が構成されている。また、分岐された他方は、挿入方向X1とは反対方向X2に直線状に延びる操作部230を構成している。図10の実施の形態においても、図4,図5の実施の形態と同様に、小型で耐久性に優れた電気コネクタ200を実現できる。
【0028】
また、上記実施の形態では、接続部材2の一対の側部2a,2bに、係合部としての凹部8,9を設けていたが、これに代えて、図11に示すように、接続部材102の一対の側部102a,102bに、係合部としての凸部108,109を設けてもよい。この場合、これらの凸部108,109が、図8、図9、図10で示したロックレバー25;125;225の係合突起32;132;232と係合することになる。
【0029】
その他、本発明は請求項記載の範囲内で種々の変更を施すことができる。
【符号の説明】
【0030】
1;100;200 電気コネクタ(ロック機構付き電気コネクタ)
2;102 接続部材
2a,2b;102a,102b 側部
3 挿入溝
4 ハウジング
4a,4b 側部
5 コンタクト
6,7;106,107;206,207 補強板
8,9 凹部(係合部)
108,109 凸部(係合部)
10 前壁
11 後壁
12,13 側壁
14 コンタクト収容溝
15 本体
16 固定孔
17 固定片
18 弾性片
19 リード
20 接触部
21 固定片(固定部)
22;122;222 本体
23 固定孔
25;125;225 ロックレバー
26 脚部
27 接続部
28;128;228 基端
29;129;229 先端
30;130;230 操作部
31 中間部
32;132;232 係合突起
33 傾斜状カム面
150;250 傾斜部
K 基板
Ka 表面
X1 挿入方向
X2 反対方向
Y 左右方向
Z 前後方向
【技術分野】
【0001】
本発明はロック機構付き電気コネクタに関する。
【背景技術】
【0002】
電気コネクタにおいて、接続されたFPC(フレキシブル・プリンテッド・サーキット)等の平形の接続部材が、ハウジングから抜脱しないように保持する方式として、スライダを用いる方式がある(例えば特許文献1を参照)。
一方、スライダを用いない方式として、合成樹脂製のハウジングに、水平方向に延びる支軸を介して、回動可能なロックレバーを支持する構造が提案されている(例えば特許文献2を参照)。特許文献2では、ハウジングの挿入溝に挿入されたFPCの突起部に、ロックレバーの水平部を係合させて、FPCの抜脱を防止する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−196130号公報
【特許文献2】特開2005−4993号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1のようなスライダを用いる方式では、部品点数が多くなり、製造コストが高くなる。
また、特許文献2のように、支軸によって回動可能に支持されたロックレバーを用いる非スライダ方式では、ロックレバーの支持構造が複雑となり、製造コストが高くなる。
また、何れの方式においても、接続部材をハウジングにロックした状態で、接続部材を引っ張った場合、基板にハウジング付けされたコンタクトから、ハウジングが離脱するおそれがある。
【0005】
一方、ハウジングに固定された金属製の補強部材を基板に半田付けして用いることで、ハウジングの離脱を防止する技術が提案されている。
ロックレバーやスライダとは別体の補強部材を用いた場合、部品点数が増大し、製造コストが高くなる。また、電気コネクタが大型化する。
本発明の目的は、小型で強度の高いロック機構付き電気コネクタを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、請求項1の発明は、平形の接続部材(2)が挿入方向(X1)に沿って挿入される挿入溝(3)を有する合成樹脂製のハウジング(4)と、上記挿入溝に挿入される接続部材の導電部に接触可能にハウジングに保持され、上記ハウジングの左右方向(Y)に並ぶ複数のコンタクト(5)と、上記ハウジングの一対の側部(4a,4b)にそれぞれ固定された一対の金属製の補強板(6,7;106,107;206,207)と、を備え、各補強板は、ハウジングの対応する側部に固定された固定部(21)を有する本体(22;122;222)と、上記本体から上記挿入方向とは反対方向(X2)へ延設された弾性変形可能な片持ち状のロックレバー(25;125;225)と、上記本体から延設され基板(K)の導電部に半田付けされる脚部(26)と、を単一の材料で一体に有しており、各補強板のロックレバーは、上記本体に接続された基端(28;128;228)と、上記ハウジングから挿入方向とは反対方向に突出する先端(29;129;229)と、上記基端と上記先端との間に設けられ、接続部材の対応する側部(2a,2b;102a,102b)に設けられた係合部(8,9;108,109)とそれぞれ係合することにより、上記挿入溝からの接続部材の抜脱を防止する係合突起(32;132;232)と、を含むロック機構付き電気コネクタ(1;100)を提供するものである。
【0007】
また、請求項2のように、上記ロックレバーは、上記先端に設けられた操作部(30;130;230)を含む場合がある。
また、請求項3のように、各補強板の本体およびロックレバーは、互いの接続部(27)において直交している場合がある。
また、請求項4のように、各補強板のロックレバーは、挿入溝と平行に配置されている場合がある。
【0008】
また、請求項5のように、各補強板の本体およびロックレバーは、左右方向の同じ位置に配置されている場合がある。
なお、上記において、括弧内の英数字は、後述の実施形態における対応構成要素の参照符号を表すものであるが、これらの参照符号により特許請求の範囲を限定する趣旨ではない。
【発明の効果】
【0009】
請求項1の発明によれば、基板に半田付けされる補強板に、ロックレバーを単一の材料で一体に形成したので、これらを別部材で構成する場合と比較して、格段の小型化を達成することができる。また、強度のある補強板の本体によってロックレバーを片持ち状に支持するので、十分な強度を確保した状態で、挿入方向に関するロックレバーの長さを十分に長くして、ロックレバーの弾性スパンを長く確保することができる。可及的に、ロックレバーの耐久性を向上でき、ひいては電気コネクタの耐久性を向上することができる。
【0010】
また、請求項2のように、ロックレバーが上記先端に設けられた操作部(30;130;230)を含む場合には、操作部を操作して、ロックレバーによるロックを容易に解除することができる。
また、請求項3のように、各補強板の本体およびロックレバーが、互いの接続部において直交している場合には、挿入方向に関してロックレバーの長さを十分に長くして、ロックレバーの基端が、基板側に近接して配置されるレイアウトの採用が実質的に可能となる。これは、本体とロックレバーの接続部が直角に屈曲しているので、補強板を基板に半田付けするときに、半田が脚部から本体を介してロックレバーの基端まで到達することを確実に防止することができることによる。
【0011】
また、請求項4のように、各補強板のロックレバーが、挿入溝と平行に配置されている場合には、電気コネクタの小型化を達成することができる。
また、請求項5のように、各補強板の本体およびロックレバーが、左右方向の同じ位置に配置されている場合には、左右方向に関して電気コネクタを格段に小型化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の一実施の形態のロック機構付き電気コネクタおよび接続部材の概略斜視図である。
【図2】(a)、(b)および(c)は、それぞれ、ロック機構付き電気コネクタの平面図、後面図および側面図である。
【図3】図2(b)のIII −III 線に沿う断面図である。
【図4】図2(b)のIV−IV線に沿う断面図である。
【図5】図2(b)のV−V線に沿う断面図である。
【図6】コンタクトの斜視図である。
【図7】補強板の斜視図である。
【図8】ロック機構付き電気コネクタの概略断面図であり、(a),(b)は接続部材の接続工程を順次に示し、(c)は接続部材の抜脱工程を示している。
【図9】本発明の別の実施の形態のロック機構付き電気コネクタの断面図である。
【図10】本発明のさらに別の実施の形態のロック機構付き電気コネクタの断面図である。
【図11】各実施の形態のロック機構付き電気コネクタが適用可能な接続部材の変形例を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の好ましい実施の形態を添付図面を参照しつつ説明する。 図1は、本発明の一実施の形態のロック機構付き電気コネクタおよび接続部材の概略斜視図である。図2(a)、(b)および(c)は、それぞれ、ロック機構付き電気コネクタの平面図、後面図および側面図である。
図1に示すように、ロック機構付き電気コネクタ1(以下では、単に電気コネクタ1という)は、リセプタクルコネクタとしてのベースコネクタとして構成されている。すなわち、電気コネクタ1は、平形の接続部材2が挿入方向X1に沿って挿入される挿入溝3を区画する絶縁性の合成樹脂からなるハウジング4と、ハウジング4に保持された複数のコンタクト5と、ハウジング4の側部4a,4bにそれぞれ固定された一対の金属製の補強板6,7とを備えている。各コンタクト5および各補強板6,7は、基板Kの表面Kaの導電部に半田付けされている。
【0014】
接続部材2は、例えばFPC、FFCであり、挿入方向X1に平行に延びる一対の側部2a,2bと、一対の側部2a,2bにそれぞれ形成された一対のロック用の係合部としての凹部8,9とを有している。
図1並びに図2(a),(b)および(c)に示すように、ハウジング4は、前壁10と、後壁11と、一対の側壁12,13とを有し、左右方向Yに長い直方体形状をなしている。ハウジング4の後壁11の内面には、挿入溝3に臨む複数のコンタクト収容溝14が横並びに形成されており、各コンタクト収容溝14に対応するコンタクト5の一部が収容され、保持されている。
【0015】
電気コネクタ1は、挿入溝3に挿入された接続部材2をロックするための弾性変形可能なロックレバー25を備えている。ロックレバー25は、当該ロックレバー25を操作するための操作部30を有しており、操作部30は、ハウジング4の上方(挿入方向X1とは反対方向X2)へ突出している。また、ハウジング4は、例えば上方へ突出するリブからなるストッパ40を有している。ストッパ40は、操作時のロックレバー25の移動量を規制する機能を果たす〔図8(c)を参照〕。これにより、ロックレバー25のへたりが防止され、ロックレバー25の耐久性が確保されている。
【0016】
図2(b)のIII −III 線に沿う断面図である図3および図6に示すように、コンタクト5は、本体15と、本体15から、挿入方向X1と平行に延びハウジング4のコンタクト固定孔16に圧入された固定片17と、本体15から延びるL字状をなす弾性片18と、本体15の後端から延び基板Kの表面Kaに半田付けされたリード19とを備えている。
【0017】
各コンタクト5の弾性片18の一部が対応するコンタクト収容溝14に収容されている。各弾性片18は、挿入溝3内に突出する山形の接触部20を有している。挿入溝3内に接続部材2が挿入されると、各弾性片18が弾性変形し、その反発力によって、各接触部20が、挿入溝3に挿入される接続部材2の対応する導電部(図示せず)に加圧接触されるようになっている。
【0018】
一対の補強板6,7は対称な形状をなしているので、補強板6に則して説明する。図2(b)のIV−IV線に沿う断面図である図4、図2(b)のV−V線に沿う断面図である図5、および図7に示すように、補強板6は、ハウジング4の対応する側部4aに固定された固定部としての固定片21を有する本体22と、本体22から挿入方向X1とは反対方向X2へ延びる弾性片からなる片持ち状のロックレバー25と、本体22から延設され基板Kの導電部に半田付けされるL字形をなす脚部26とを単一の材料で一体に構成している。固定片21は、挿入方向X1とは反対方向X2へ延び、ハウジング4の固定孔23に圧入されている。
【0019】
本体22は、前後方向Zに沿う板状をなし、ロックレバー25は左右方向Yに沿う板状をなしている。すなわち、本体22とロックレバー25は、互いの接続部27において直交しており、ロックレバー25は、挿入溝3内に挿入溝3と平行に配置されている。
ロックレバー25は、接続部27を介して本体22に接続された基端28と、ハウジング4から挿入方向X1とは反対方向X2に突出する先端29と、先端29に設けられた傾斜状の操作部30とを備えている。
【0020】
また、ロックレバー25は、基端28と先端29との間の中間部31に設けられた山形をなす係合突起32を備えている。係合突起32は、挿入溝3に挿入された接続部材2の対応する側部4aに設けられた凹部8と係合することにより、挿入溝3からの接続部材2の抜脱を防止する機能を果たす。
係合突起32は、挿入方向X1とは反対方向X2に臨む傾斜状カム面33を有している。傾斜状カム面33は、挿入される接続部材2の挿入側端と係合することにより、ロックレバー25を撓ませて、接続部材2のさらなる挿入を可能とする。
【0021】
次いで、図8(a),(b)は、接続部材2の接続工程を順次に示し、(c)は接続部材2の抜脱工程を示している。図8(a)に示すように、接続部材2を挿入方向X1に沿って挿入溝3に挿入していくと、図示していないが、傾斜状カム面33の働きでロックレバー25が一端撓まされた後、図8(b)に示すように復帰する。これにより、ロックレバー25の係合突起32が、接続部材2の凹部8,9に係合し、ロックが達成されて、接続部材2の抜脱が防止される。
【0022】
一方、接続部材2を抜脱するときには、図示しない工具によって操作部30を挿入方向X1に押すことにより、図8(c)に示すように、ロックレバー25を弾性変形させる。これにより、凹部8,9から係合突起32が離脱され、ロックが解除されて、接続部材2の抜脱が可能となる。
本実施の形態によれば、基板Kに半田付けされる補強板6,7に、ロックレバー25を単一の材料で一体に形成したので、これらを別部材で構成する場合と比較して、格段の小型化を達成することができる。また、強度のある補強板6,7の本体15によってロックレバー25を片持ち状に支持するので、十分な強度を確保した状態で、挿入方向X1に関するロックレバー25の長さを十分に長くして、ロックレバー25の弾性スパンを長く確保することができる。可及的に、ロックレバー25の耐久性を向上でき、ひいては電気コネクタ1の耐久性を向上することができる。
【0023】
また、各補強板6,7の本体22およびロックレバー25が、互いの接続部27において直交しているので、挿入方向X1に関してロックレバー25の長さを十分に長くして、ロックレバー25の基端28が、基板K側に近接して配置されるレイアウトの採用が実質的に可能となる。これは、本体22とロックレバー25の接続部27が直角に屈曲しているので、補強板6,7の脚部26を基板Kに半田付けするときに、半田が脚部26から本体22を介してロックレバー25の基端28まで到達することを確実に防止することができることによる。
【0024】
また、各補強板6,7のロックレバー25が、挿入溝3内に挿入溝3と平行に配置されているので、電気コネクタ1の小型化を達成することができる。
本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、上記の実施の形態では、補強板6,7の本体22とロックレバー25が互いに直交していたが、これに限らない。
例えば図9に示すように、補強板106(107)の本体122およびL字状をなすロックレバー125が、左右方向Y(図9の紙面と直交する方向)の同じ位置に配置されていてもよい。この場合、補強板106(107)が同一平面上に配置されることになる。
【0025】
ロックレバー125の基端128が本体122に接続され、ロックレバー125は片持ち状に支持されている。ロックレバー125の先端129に、ロックレバー125を解除操作するための操作部130が設けられている。操作部130は挿入方向X1の反対方向X2に延びており、操作部130と係合突起32との間には、傾斜部150が設けられている。
【0026】
図9の構成要素において、図4、図5の実施の形態と同じ構成要素には、図4、図5の実施の形態と同じ参照符号を付してある。図9の実施の形態によれば、図4,図5の実施の形態と同様に、小型で耐久性に優れた電気コネクタ100を実現でき、特に、左右方向Yに関して電気コネクタ100を格段に小型化することができる。
また、図10に示すように、補強板206(207)の本体222から延設されたロックレバー225が、接続部材2の側方に配置されるものであってもよい。図10の例では、ロックレバー225の基端228が本体222に接続されている。また、ロックレバー225の途中部に、傾斜部250が設けられ、傾斜部250よりロックアーム225の先端229側が二股に分岐されている。
【0027】
その分岐された一方は、逆U字状に折り曲げられて、その先端によって、接続部材2の凹部8(9)に係合するための係合突起232が構成されている。また、分岐された他方は、挿入方向X1とは反対方向X2に直線状に延びる操作部230を構成している。図10の実施の形態においても、図4,図5の実施の形態と同様に、小型で耐久性に優れた電気コネクタ200を実現できる。
【0028】
また、上記実施の形態では、接続部材2の一対の側部2a,2bに、係合部としての凹部8,9を設けていたが、これに代えて、図11に示すように、接続部材102の一対の側部102a,102bに、係合部としての凸部108,109を設けてもよい。この場合、これらの凸部108,109が、図8、図9、図10で示したロックレバー25;125;225の係合突起32;132;232と係合することになる。
【0029】
その他、本発明は請求項記載の範囲内で種々の変更を施すことができる。
【符号の説明】
【0030】
1;100;200 電気コネクタ(ロック機構付き電気コネクタ)
2;102 接続部材
2a,2b;102a,102b 側部
3 挿入溝
4 ハウジング
4a,4b 側部
5 コンタクト
6,7;106,107;206,207 補強板
8,9 凹部(係合部)
108,109 凸部(係合部)
10 前壁
11 後壁
12,13 側壁
14 コンタクト収容溝
15 本体
16 固定孔
17 固定片
18 弾性片
19 リード
20 接触部
21 固定片(固定部)
22;122;222 本体
23 固定孔
25;125;225 ロックレバー
26 脚部
27 接続部
28;128;228 基端
29;129;229 先端
30;130;230 操作部
31 中間部
32;132;232 係合突起
33 傾斜状カム面
150;250 傾斜部
K 基板
Ka 表面
X1 挿入方向
X2 反対方向
Y 左右方向
Z 前後方向
【特許請求の範囲】
【請求項1】
平形の接続部材が挿入方向に沿って挿入される挿入溝を有する合成樹脂製のハウジングと、
上記挿入溝に挿入される接続部材の導電部に接触可能にハウジングに保持され、上記ハウジングの左右方向に並ぶ複数のコンタクトと、
上記ハウジングの一対の側部にそれぞれ固定された一対の金属製の補強板と、を備え、 各補強板は、ハウジングの対応する側部に固定された固定部を有する本体と、上記本体から上記挿入方向とは反対方向へ延設された弾性変形可能な片持ち状のロックレバーと、上記本体から延設され基板の導電部に半田付けされる脚部と、を単一の材料で一体に有しており、
各補強板のロックレバーは、上記本体に接続された基端と、上記ハウジングから挿入方向とは反対方向に突出する先端と、上記基端と上記先端との間に設けられ、接続部材の対応する側部に設けられた係合部とそれぞれ係合することにより、上記挿入溝からの接続部材の抜脱を防止する係合突起と、を含むロック機構付き電気コネクタ。
【請求項2】
請求項1において、上記ロックレバーは、上記先端に設けられた操作部を含むロック機構付き電気コネクタ。
【請求項3】
請求項1または2において、各補強板の本体およびロックレバーは、互いの接続部において直交しているロック機構付き電気コネクタ。
【請求項4】
請求項3において、各補強板のロックレバーは、挿入溝と平行に配置されているロック機構付き電気コネクタ。
【請求項5】
請求項1または2において、各補強板の本体およびロックレバーは、左右方向の同じ位置に配置されているロック機構付き電気コネクタ。
【請求項1】
平形の接続部材が挿入方向に沿って挿入される挿入溝を有する合成樹脂製のハウジングと、
上記挿入溝に挿入される接続部材の導電部に接触可能にハウジングに保持され、上記ハウジングの左右方向に並ぶ複数のコンタクトと、
上記ハウジングの一対の側部にそれぞれ固定された一対の金属製の補強板と、を備え、 各補強板は、ハウジングの対応する側部に固定された固定部を有する本体と、上記本体から上記挿入方向とは反対方向へ延設された弾性変形可能な片持ち状のロックレバーと、上記本体から延設され基板の導電部に半田付けされる脚部と、を単一の材料で一体に有しており、
各補強板のロックレバーは、上記本体に接続された基端と、上記ハウジングから挿入方向とは反対方向に突出する先端と、上記基端と上記先端との間に設けられ、接続部材の対応する側部に設けられた係合部とそれぞれ係合することにより、上記挿入溝からの接続部材の抜脱を防止する係合突起と、を含むロック機構付き電気コネクタ。
【請求項2】
請求項1において、上記ロックレバーは、上記先端に設けられた操作部を含むロック機構付き電気コネクタ。
【請求項3】
請求項1または2において、各補強板の本体およびロックレバーは、互いの接続部において直交しているロック機構付き電気コネクタ。
【請求項4】
請求項3において、各補強板のロックレバーは、挿入溝と平行に配置されているロック機構付き電気コネクタ。
【請求項5】
請求項1または2において、各補強板の本体およびロックレバーは、左右方向の同じ位置に配置されているロック機構付き電気コネクタ。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2012−146557(P2012−146557A)
【公開日】平成24年8月2日(2012.8.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−4957(P2011−4957)
【出願日】平成23年1月13日(2011.1.13)
【出願人】(390033318)日本圧着端子製造株式会社 (457)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年8月2日(2012.8.2)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年1月13日(2011.1.13)
【出願人】(390033318)日本圧着端子製造株式会社 (457)
【Fターム(参考)】
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