説明

ロッドアンテナ及び携帯端末装置

【課題】スライド式携帯端末装置で、筐体のスライド引き出し時にアンテナが飛び出すことを防止する。
【解決手段】ロッドアンテナ10は、第1のアンテナ部材と、第1のアンテナ部材を軸方向に引き出し自在に収容する第2のアンテナ部材と、第1のアンテナ部材及び第2のアンテナ部材の一方のアンテナ部材11に固定され、他方のアンテナ部材14を軸方向と直交する方向(径方向)に押圧する弾性部材13とを備える。他方のアンテナ部材14は、第1のアンテナ部材の第2のアンテナ部材への収容時に弾性部材13と係合する係合部17を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロッドアンテナ及び携帯端末装置に関し、更に詳しくは、電波受信機能を有する携帯端末装置の筐体内に引き出し自在に収容されるロッドアンテナ、及び、そのようなロッドアンテナを備える携帯端末装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、地上デジタルテレビに対応した携帯電話機(携帯端末装置)が普及しており、テレビ受信用アンテナとして、ロッドアンテナを用いる携帯端末装置がある。地上デジタルテレビで使用しているUHF帯は470〜770MHzであり、携帯電話機でロッドアンテナをλ/4の長さで使用する場合には、アンテナ長として16cm程度の長さが必要となる。
【0003】
携帯電話機のような小型端末装置では、16cmもの長さを収容することは装置の大型化を招く。このため、収容時のアンテの体積を小さくできるように、2段式や3段式の伸縮可能なロッドアンテナを用いることが多い。図6は、一般的な2段式の伸縮可能なロッドアンテナの構造を示している。
【0004】
図6に示すロッドアンテナ10Bは、キャップ12を頂部に有する1段目のアンテナエレメント11と、2段目のアンテナエレメント14とが、1段目のアンテナ11が2段目のアンテナエレメント14から引き出し自在となるように接続される。1段目のアンテナエレメント11と2段目のアンテナエレメント14とは、1段目のアンテナエレメント11に固定された第1の接触ばね13を介して接続している。また、2段目のアンテナエレメント14と携帯端末装置の筐体21とは、2段目のアンテナエレメント14が筐体21から引き出し自在となるように、筐体21内の支持金具15に固定された第2の接触ばね16により結合している。
【0005】
図6の2段式ロッドアンテナ10Bでは、アンテナを使用しないときには、携帯端末装置の筐体21内に収容している。ロッドアンテナ10Bの収容時には、金属パイプで構成された2段目のアンテナエレメント14は、支持金具15内に配置された第2の接触ばね16により保持される。また、1段目のアンテナエレメント11は、第1の接触ばね13により、2段目のアンテナエレメント14の内部に保持される。上記形式のロッドアンテナ10Bは、細部の形状や段数が幾らか異なるものの、例えば特許文献1、及び、特許文献2に記載されている。
【0006】
上記形式のロッドアンテナは、上部筐体と下部筐体とがスライド式に結合されるスライド式携帯電話機では、図7に示すように、筐体21の開/閉時のスライド方向とロッドアンテナ10Bの引き出し方向とが一致するように配置される。筐体21のスライド方向とロッドアンテナ10Bの引出し方向とを一致させることにより、スライド式携帯電話機の筐体内における各機器の効率的な配置が可能になる。
【0007】
ところが、上記スライド式携帯電話機では、筐体21のスライド方向とロッドアンテナ10Bの引き出し方向とが同じであるので、アンテナの保持力が弱いと、筐体21の開/閉スライドに際して筐体21に加わる振動又は衝撃により、ロッドアンテナ10Bが徐々に筐体21から飛び出してしまうことがある。このような、ユーザの意図しないアンテナの飛び出しは、ユーザには煩わしく感じられる。
【0008】
特許文献1では、1段目のアンテナエレメントを2段目のアンテナエレメントに収容した際に、その間の保持力の調節が可能な接触ばねが記載されている。図8は、特許文献1に開示された接触ばねを示している。接触ばね30は、全体として中空円筒形状を有し、その周面には、軸方向に延びるスリット31が形成され、また、内周面には、図示しない1段目のアンテナエレメントに固定するためのボス33が形成されている。接触ばね30には、更に、コの字状の切欠き34が形成されており、その切欠き34の内側に矩形片32が形成される。
【0009】
矩形片32は、その自由端である先端部が径方向外側に僅かに曲げられており、径方向外側に押圧力を与えるばね片として機能する。矩形片32は、その先端部の折り曲げ量を調整することにより、径方向外側の2段目のアンテナエレメントとの接触力を調整可能である。つまり、矩形片32は、2段目のアンテナエレメントによる1段目のアンテナエレメントの保持力を調整可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2009−188873号公報
【特許文献2】実開平6−81107号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
特許文献1に記載された接触ばね30は、その形状が複雑である。また、保持力の調整が折り曲げ量の調整により行われるため、ユーザによるアンテナ引き出しに必要な力の大きさを抑えつつ、アンテナエレメントの意図しない飛び出しを防止するには、極めて微細な調整が必要である。
【0012】
上記に鑑み、本発明は、接触ばねの形状を簡素にし、且つ、接触ばねの保持力の微細な調整を必要とすることなく、アンテナエレメントの飛び出しを防止する機能を有するロッドアンテナ、及び、そのようなロッドアンテナを備える携帯端末装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成するために、本発明は、第1の態様において、第1のアンテナ部材と、前記第1のアンテナ部材を軸方向に引き出し自在に収容する第2のアンテナ部材と、前記第1のアンテナ部材及び第2のアンテナ部材の一方の部材に固定され、前記第1のアンテナ部材及び第2のアンテナ部材の他方の部材を軸方向と直交する方向(径方向)に押圧する弾性部材とを備え、前記他方の部材は、前記第1のアンテナ部材の前記第2のアンテナ部材への収容時に前記弾性部材と係合する係合部を有するロッドアンテナを提供する。
【0014】
また、本発明は、上記本発明のロッドアンテナを備える携帯端末装置を提供する。
【0015】
更に、本発明は、第2の態様において、アンテナ部材と、前記アンテナ部材を軸方向に引き出し自在に収容する筐体と、前記筐体に固定され、前記アンテナ部材を軸方向と直交する方向(径方向)に押圧する弾性部材とを備え、前記アンテナ部材は、該アンテナ部材の前記筐体への収容時に前記弾性部材と係合する係合部を有する携帯端末装置を提供する。
【0016】
本発明のロッドアンテナ、及び、本発明の携帯端末装置では、弾性部材と係合部との係合により、アンテナ部材の意図しない飛び出しが抑制される効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の一実施形態に係るロッドアンテナを含む携帯端末装置の断面図。
【図2】図1のロッドアンテナを携帯端末装置の筐体内に収容した状態で、ロッドアンテナの上端部分を示す断面図。
【図3】図1の実施形態の変形例のロッドアンテナについて、図2と同様に示す断面図。
【図4】図1のロッドアンテナを携帯端末装置の筐体内に収容した状態で、ロッドアンテナの下端部分を示す断面図。
【図5】図1の実施形態の変形例のロッドアンテナについて、図4と同様に示す断面図。
【図6】一般的な2段式ロッドアンテナを示す断面図。
【図7】(a)及び(b)はそれぞれ、2段式ロッドアンテナを実装したスライド式携帯端末装置の正面図及び断面図。
【図8】特許文献1に記載されたロッドアンテナにおける弾性部材の斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の実施形態を説明する前に、本発明の概要を説明する。本発明のロッドアンテナは、その最小構成において、第1のアンテナ部材と、前記第1のアンテナ部材を軸方向に引き出し自在に収容する第2のアンテナ部材と、前記第1のアンテナ部材及び第2のアンテナ部材の一方の部材に固定され、前記第1のアンテナ部材及び第2のアンテナ部材の他方の部材を軸方向と直交する方向(径方向)に押圧する弾性部材とを備え、前記他方の部材は、前記第1のアンテナ部材の前記第2のアンテナ部材への収容時に前記弾性部材と係合する係合部を有する。
【0019】
また、本発明の携帯端末装置は、アンテナ部材と、前記アンテナ部材を軸方向に引き出し自在に収容する筐体と、前記筐体に固定され、前記アンテナ部材を軸方向と直交する方向(径方向)に押圧する弾性部材とを備え、前記アンテナ部材は、該アンテナ部材の前記筐体への収容時に前記弾性部材と係合する係合部を有する。
【0020】
本発明のロッドアンテナ及び携帯端末装置では、弾性部材がアンテナ部材の係合部と係合し、弾性部材とアンテナ部材との相対移動を制限することにより、アンテナ部材の飛び出しを抑制するので、意図しないアンテナ部材の飛び出しを防止できる。
【0021】
以下、図面を参照し、本発明の実施形態について詳細に説明する。図面では、全図を通して、同様な要素には同様な符号を付して示した。図1は、本発明の一実施形態に係るロッドアンテナの構成を示す断面図である。ロッドアンテナ10は、1段目のアンテナ部材(アンテナエレメント)11と、2段目のアンテナエレメント14とを有する、2段式の伸縮可能なロッドアンテナとして構成される。1段目のアンテナエレメント11は、ワイヤーで構成されており、上端にはキャップ12が形成されている。2段目のアンテナエレメント14は、中空円筒形状の金属材料、つまり、金属パイプで形成されている。
【0022】
1段目のアンテナエレメント11の下端には、1段目のアンテナエレメント11と2段目のアンテナエレメント14とを接続する接触ばね(第1の接触ばね)13が配置される。2段目のアンテナエレメント14の下端は、携帯端末装置の筐体21に固定された円筒状の支持金具15により、支持金具15内に配置された接触ばね(第2の接触ばね)16を介して支持される。
【0023】
2段目のアンテナエレメント14の上端部に隣接して、アンテナ収容時に接触ばね16が当接する外周面に窪み17が形成されている。また、2段目のアンテナエレメント14の下端部に隣接して、ロッドアンテナ10の収容時に接触ばね16が当接する部分の上側の内周面に、突起19が形成されている。
【0024】
図2は、図1のロッドアンテナ10を、携帯電話機の筐体21内に収容したときの状態で示す断面図である。携帯電話機の筐体21には、支持金具15が固定されており、ロッドアンテナ10の2段目のアンテナエレメント14は、支持金具15の内側を貫通して、携帯電話機の筐体21の内部に収容される。また、1段目のアンテナエレメント11は、2段目のアンテナエレメント14の内部に収容される。2段目のアンテナエレメント14の上端部分に形成された窪み17は、ロッドアンテナの収容時に、支持金具15の内側に固定された第2の接触ばね16に対して係合する。このように、ロッドアンテナ10の収容状態において、2段目のアンテナエレメント14の窪み17が第2の接触ばね16に係合するので、筐体21の開/閉スライド時の振動又は衝撃に起因するロッドアンテナ10の飛び出しが防止できる。窪み17及び突起19から成る係合部は、接触ばね(弾性部材)13、16と2段目のアンテナ素子14との間における軸方向の相対移動を制限する制限部材として機能する。
【0025】
図3は、上記実施形態の変形例に係るロッドアンテナ10Aを、筐体21内に収容した状態で示す断面図である。本変形例では、2段目のアンテナエレメント14を構成する金属パイプの外周面に突起18を形成している。突起18は、ロッドアンテナ10Aの筐体21への収容時に、筐体21表面から見て第2の接触ばね16の奥側となるように配置されている。本変形例は、その他の構成については、前記実施形態と同様な構成を有する。
【0026】
変形例のロッドアンテナ10Aでは、ロッドアンテナの収容状態において、アンテナエレメントの飛び出しを抑制するストッパーとなるように、第2の接触ばね16の奥側に突起18を形成している。この突起18が、筐体21の開/閉スライドに起因するロッドアンテナ10Aの飛び出しを防止する機構を構成する。
【0027】
図4は、図1の実施形態のロッドアンテナ10について、その筐体21内部への収容時におけるロッドアンテナ10の下端を示している。2段目のアンテナエレメント14の内面には、筐体21表面から見て、第1の接触ばね13に係合する部分の手前側に突起19が形成されている。この突起19は、例えば金属パイプの外周面に窪みを形成することで形成される。
【0028】
突起19は、1段目のアンテナエレメント11が2段目のアンテナエレメント14から突出する際のストッパとして機能する。この係合により、筐体21の開/閉スライド時に、1段目のアンテナエレメントが2段目のアンテナエレメントから飛び出すという、ユーザの意図しない飛び出しが防止できる。
【0029】
図5は、上記実施形態の変形例に係るロッドアンテナ10の下端を、図4と同様に示している。本変形例は、2段目のアンテナエレメント14を構成する金属パイプの内周面に窪み20を形成している。窪み20は、アンテナの筐体21への収容時に、1段目のアンテナエレメント11と、2段目のアンテナエレメント14とをスライド自在に結合する第1の接触ばね13と係合する。つまり、接触ばね13が窪み20に嵌合する。このため、筐体21の開/閉スライド時に、1段目のアンテナエレメント11が、2段目のアンテナエレメント14から飛び出すという、ユーザの意図しない飛び出しが防止できる。
【0030】
なお、上記実施形態及び変形例では、1段目のアンテナエレメント11をワイヤーで構成し、その後段である2段目のアンテナエレメント14を金属パイプで構成した。しかし、逆に、1段目のアンテナエレメントを金属パイプで構成し、2段目のアンテナエレメントをワイヤーで構成してもよい。この場合にも、ワイヤー側に第1の接触ばねを固定し、金属パイプ側に係合部を形成することが好ましい。金属パイプの部分に窪みや突起を形成することで、窪みや突起が容易に形成可能である。窪みや突起を何れの側に形成しても、接触ばねには、特別な形状を採用する必要がなく、また、飛び出しを抑制するための微細な調整を行う必要もない。
【0031】
また、本発明のロッドアンテナは、2段式のロッドアンテナだけでなく、1段式のロッドアンテナ又は3段以上の多段式のロッドアンテナにも適用可能である。この場合には、複数のアンテナエレメントのうち、例えば金属パイプで構成したアンテナエレメントに、上記窪みや突起を形成することで同様な効果が期待できる。
【0032】
更に、上記実施形態及び変形例では、第1の接触ばね及び係合部の組合せと、第2の接触ばね及び係合部の組合せとを備えるロッドアンテナを例示したが、この例には限らず、何れか一方の組合せを有するロッドアンテナでもよい。更に、上記実施形態及び変形例では、TV受信用のロッドアンテナを例に挙げて説明したが、本発明のロッドアンテナは、この例に限らず、通信用のロッドアンテナなど、何れの用途であっても適用可能である。
【0033】
本発明を特別に示し且つ例示的な実施形態を参照して説明したが、本発明は、その実施形態及びその変形に限定されるものではない。当業者に明らかなように、本発明は、添付の特許請求の範囲に規定される本発明の精神及び範囲を逸脱することなく、種々の変更が可能である。
【符号の説明】
【0034】
10、10A、10B:ロッドアンテナ
11:1段目のアンテナエレメント
12:キャップ
13:第1の接触ばね
14:2段目のアンテナエレメント
15:支持金具
16:第2の接触ばね
17、20:窪み
18、19:突起
21:携帯電話機(携帯端末装置)の筐体
30:接触ばね
31:スリット
32:矩形片
33:ボス
34:切欠き

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1のアンテナ部材と、
前記第1のアンテナ部材を軸方向に引き出し自在に収容する第2のアンテナ部材と、
前記第1のアンテナ部材及び第2のアンテナ部材の一方の部材に固定され、前記第1のアンテナ部材及び第2のアンテナ部材の他方の部材を軸方向と直交する方向(径方向)に押圧する弾性部材とを備え、
前記他方の部材は、前記第1のアンテナ部材の前記第2のアンテナ部材への収容時に前記弾性部材と係合する係合部を有するロッドアンテナ。
【請求項2】
前記係合部は、前記他方の部材に形成された窪みである、請求項1に記載のロッドアンテナ。
【請求項3】
前記係合部は、前記他方の部材に形成された突起である、請求項1に記載のロッドアンテナ。
【請求項4】
前記第1のアンテナ部材が1段目のアンテナエレメントであり、前記第2のアンテナ部材が該1段目のアンテナエレメントの下段である2段目のアンテナエレメントであり、前記弾性部材が前記1段目のアンテナエレメントに固定され、前記係合部が前記2段目のアンテナエレメントに形成される、請求項1〜3の何れか一に記載のロッドアンテナ。
【請求項5】
前記第2のアンテナ部材が1段目のアンテナエレメントであり、前記第1のアンテナ部材が該1段目のアンテナエレメントの下段である2段目のアンテナエレメントであり、前記弾性部材が前記2段目のアンテナエレメントに固定され、前記係合部が前記1段目のアンテナエレメントに形成される、請求項1〜3の何れか一に記載のロッドアンテナ。
【請求項6】
請求項1〜5の何れか一に記載のロッドアンテナを備える携帯端末装置。
【請求項7】
アンテナ部材と、
前記アンテナ部材を軸方向に引き出し自在に収容する筐体と、
前記筐体に固定され、前記アンテナ部材を軸方向と直交する方向(径方向)に押圧する弾性部材とを備え、
前記アンテナ部材は、該アンテナ部材の前記筐体への収容時に前記弾性部材と係合する係合部を有する携帯端末装置。
【請求項8】
前記アンテナ部材が中空円筒形状を有し、前記係合部が該アンテナ部材の外周面に形成された窪みである、請求項7に記載の携帯端末装置。
【請求項9】
前記アンテナ部材が中空円筒形状を有し、前記係合部が該アンテナ部材の外周面に形成された突起である、請求項8に記載の携帯端末装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−130049(P2011−130049A)
【公開日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−284773(P2009−284773)
【出願日】平成21年12月16日(2009.12.16)
【出願人】(000004237)日本電気株式会社 (19,353)
【Fターム(参考)】