説明

ロボットシステム

【課題】検出したギャップ長が、溶接条件テーブルで設定されたギャップ長近傍において短周期で変化する場合でも安定した溶接が行えるロボットシステムを提供する。
【解決手段】センサ803によって検出した溶接線の位置に基づき溶接トーチ702の位置を補正するとともに、ギャップ長に応じて溶接条件を変更しながら溶接作業を行うロボットシステムにおいて、ロボット制御装置804は、ギャップ長とギャップ長に応じて段階的に変化する所定の前記溶接条件との対応を記録した溶接条件テーブル104と、ギャップ長の変化に伴う前記溶接条件の変更の遅れ量を設定する条件緩和パラメータ102と、溶接条件テーブル104での溶接条件の変化点に対応するギャップ長近傍における溶接条件の変更を条件緩和パラメータ102によって設定された分だけ遅らせて出力する条件緩和演算部101とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、溶接作業を行うロボットシステムに関し、特にワークの溶接線の位置を検出して溶接線に追従するように溶接トーチの位置を補正し、ワークの溶接線のギャップ長に応じて溶接条件を変更しながら溶接作業を行うロボットシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
ロボットによる溶接作業において、センサを用いてワークの溶接線の位置を検出しながらロボットに取り付けられた溶接トーチの位置を溶接線に追従するように補正して溶接作業を行う制御は、トラッキング制御として広く知られている。トラッキング制御においては、溶接線のギャップ長に応じて溶接条件を変更するギャップ制御が行われる場合がある。
図8は、トラッキング制御を行うロボットシステムの構成を示す模式図である。図において、801は複数の駆動軸を有するロボットであり、その先端には溶接トーチ802とセンサ803が装着されている。
溶接トーチ802は溶接電源805と接続され、溶接電源805によって溶接電流が生成される。センサ803にはセンサ制御装置806が接続され、センサ制御装置806によってセンサ803の制御、データ処理、データ入出力が行われる。
一方ロボット801はロボット制御装置804と接続され、ロボット制御装置804によってロボット801の駆動軸の制御が行われる。ロボット制御装置804にはさらに溶接電源805と接続され、溶接電源805へ溶接指令を送信し、溶接電源805から応答を受信する。ロボット制御装置804にはセンサ制御装置806も接続され、ロボット制御装置804はセンサ制御装置806へ計測指令を送信し、センサ制御装置806から計測データ、ステータス等のセンサデータを受信する。
【0003】
図8に示すワーク807の突き合わせ継ぎ手を溶接トーチ802によって溶接する場合、センサ803から発せられるレーザスリット光808を溶接点の先行位置に照射し、レーザスリット光808の段差部分の位置を突き合わせ継ぎ手の位置として検出する。同時に突き合わせ継ぎ手のギャップ長809も検出する。検出されたデータは、センサ制御装置806からロボット制御装置804に送られ、ロボット制御装置804は、センサ803の検出位置に基づいて溶接トーチ802が突き合わせ継ぎ手を通るようにロボット801の位置を補正する。また、ロボット制御装置804はギャップ長809の大きさに応じて溶接条件を変更する。
なお、センサ803はトラッキングセンサとして広く知られており、市販もされている。
【0004】
以上述べたようなロボットシステムを使い、ギャップ長809に応じて溶接条件を変更する例として、ウィービング溶接を実施する例がある(例えば、特許文献1)。
図9は、従来の溶接条件テーブルを示す図である。図9(b)はウィービング条件番号とギャップ長とを対応付けたテーブルであり、図9(a)はウィービング条件番号と溶接条件(ウィービングパターン、周波数、振幅等)とを対応付けたテーブルである。
ロボット制御装置804内にこのような溶接条件テーブルを作成することにより、センサ803から得られるギャップ長809に応じて溶接条件を変更することができる。
【0005】
【特許文献1】特開平10−244367号公報(第6−7頁、図12)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ここで、ギャップ長809の変化に応じた溶接条件の変化について考察する。
溶接条件テーブルとして、図5に示したテーブルを利用する。図5における溶接条件テーブルのうち、溶接条件番号とは、ロボット制御装置804が溶接電源805に出力する番号である。溶接電源805はこの溶接条件番号を受信し、溶接電源805内に設定されている該当溶接条件に従って溶接電流を生成する。
図6は、図5の溶接条件テーブルのうち、ギャップ長と溶接条件番号との関係をグラフ化したものである。横軸がギャップ長で、縦軸が溶接条件番号を表している。ギャップ長に応じて溶接条件番号は階段状に変化している。
ところが、溶接条件番号の変化点(例えば、図6においてギャップ長が0.30[mm]近傍)において、センサ803から検出されるギャップ長809が短周期で変化する場合(例えば、0.29[mm]から0.31[mm]の間を短周期に変化する場合)、溶接条件番号も短周期で変化する(例えば、溶接条件番号2と3の間を短周期で変化する)。これにより短周期で溶接条件が変化するため、安定した溶接が行えないという問題が発生する。
一方図7は、図5の溶接条件テーブルのうち、ギャップ長と溶接速度との関係をグラフ化したものである。横軸がギャップ長で、縦軸が溶接速度を表している。図6と同じくギャップ長に応じて溶接速度が階段状に変化している。
よって、溶接速度の変化点(例えば、図7においてギャップ長が0.30[mm]近傍)においてセンサ803から検出されるギャップ長809が短周期で変化する場合、溶接条件番号と同様に短周期で溶接速度が変化する(例えば、溶接速度95[%]と90[%]との間を短周期で変化する)ため、安定した溶接が行えないという問題が発生する。
センサ803によって検出したギャップ長が溶接条件テーブルで指定したギャップ長と等しい値になるのは、(1)ワーク807のギャップ長809が実際にその距離になっている場合や、(2)センサの検出誤差やセンサが誤検出している場合、等のケースがあり、通常起こり得るものである。
【0007】
このように、従来のロボットシステムは、検出したギャップ長が、溶接条件テーブルで設定されたギャップ長近傍において短周期で変化する場合、溶接条件が短周期で変化するために溶接品質が劣化するという問題があった。
本発明はこのような問題点に鑑みてなされたものであり、検出したギャップ長が、溶接条件テーブルで設定されたギャップ長近傍において短周期で変化する場合でも安定した溶接が行えるロボットシステムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記問題を解決するため、本発明は、次のように構成したのである。
請求項1に記載の発明は、複数の駆動軸を有し、先端に溶接トーチを装着するロボットと、前記溶接トーチに接続され前記溶接トーチへ溶接電流を出力する溶接電源と、前記溶接トーチ近傍に装着されワークの溶接線の位置および前記溶接線のギャップ長を前記溶接トーチに先行して検出するセンサと、前記センサに接続され前記センサを制御するセンサ制御装置と、前記ロボットに接続され前記ロボットの駆動軸を制御するとともに、前記溶接電源および前記センサ制御装置に接続され情報の入出力を行うロボット制御装置とを備え、前記センサによって検出した前記溶接線の位置に基づき前記溶接トーチの位置を補正するとともに、前記ギャップ長に応じて溶接条件を変更しながら溶接作業を行うロボットシステムにおいて、前記ロボット制御装置は、前記ギャップ長と前記ギャップ長に応じて段階的に変化する前記溶接条件との対応を記録した溶接条件テーブルと、前記ギャップ長の変化に伴う前記溶接条件の変更の遅れ量を設定する条件緩和パラメータと、前記溶接条件テーブルでの前記溶接条件の変化点に対応するギャップ長近傍における前記溶接条件の変更を前記条件緩和パラメータによって設定された分だけ遅らせて出力する条件緩和演算部とを備えることを特徴とする。
【0009】
また、請求項2に記載の発明は、前記条件緩和パラメータは、前記ギャップ長の変化の絶対量あるいは変化の比率によって指定されることを特徴とする。
【0010】
また、請求項3に記載の発明は、前記条件緩和演算部は、前記ギャップ長が減少する際に前記条件緩和パラメータに従って前記溶接条件の変更を遅らせることを特徴とする。
【0011】
また、請求項4に記載の発明は、前記条件緩和演算部は、前記ギャップ長が増加する際に前記条件緩和パラメータに従って前記溶接条件の変更を遅らせることを特徴とする。
【0012】
また、請求項5に記載の発明は、複数の駆動軸を有し、先端に溶接トーチを装着するロボットと、前記溶接トーチに接続され前記溶接トーチへ溶接電流を出力する溶接電源と、前記溶接トーチ近傍に装着されワークの溶接線の位置および前記溶接線のギャップ長を前記溶接トーチに先行して検出するセンサと、前記センサに接続され前記センサを制御するセンサ制御装置と、前記ロボットに接続され前記ロボットの駆動軸を制御するとともに、前記溶接電源および前記センサ制御装置に接続され情報の入出力を行うロボット制御装置とを備え、前記センサによって検出した前記溶接線の位置に基づき前記溶接トーチの位置を補正するとともに、前記ギャップ長に応じて溶接条件を変更しながら溶接作業を行うロボットシステムにおいて、前記ロボット制御装置は、前記ギャップ長と前記ギャップ長に応じて段階的に変化する前記溶接条件との対応を記録した溶接条件テーブルと、前記センサによって検出したギャップ長と前記溶接条件テーブルに設定された前記溶接条件の変化点に対応するギャップ長とを照合し、前記センサによって検出したギャップ長の前後2つの溶接条件を読み出し、前記2つの溶接条件に対応するギャップ長と前記センサによって検出したギャップ長との差の比率から前記2つの溶接条件を補間する演算を行い、前記演算によって得られた溶接条件を出力する条件補間演算部とを備えることを特徴とする。
【0013】
また、請求項6に記載の発明は、前記溶接条件は溶接速度であることを特徴とする。
【0014】
また、請求項7に記載の発明は、前記溶接条件はウィービング周波数であることを特徴とする。
【0015】
また、請求項8に記載の発明は、前記溶接条件はウィービング振幅であることを特徴とする。
【0016】
また、請求項9に記載の発明は、前記ギャップ長は、前記ワーク表面に対して平行方向あるいは鉛直方向に生じるズレの大きさであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
請求項1に記載の発明によると、条件緩和演算部が条件緩和パラメータを利用して、溶接線のギャップ長の変化に対応した溶接条件の変更を遅らせるので、検出したギャップ長が、溶接条件テーブルで設定されたギャップ長近傍において短周期で変化する場合でも溶接条件は短周期で変化せず、安定した溶接が行えるという効果がある。
請求項2に記載の発明によると、条件緩和パラメータを溶接線のギャップ量に対応する量、または溶接線のギャップ長の割合とすることができるので、状況に応じて設定しやすい方を選択することができ、使い勝手が向上するという効果がある。
また、請求項3または4に記載の発明によると、溶接条件の変更を遅らせるのをギャップ長の減少の際、増加の際のどちらで行うかを選択することができ、使い勝手が向上するという効果がある。
また、請求項5に記載の発明によると、条件補間演算部が、溶接線のギャップ長に対応した溶接条件の変化を補間することができるため、検出したギャップ長が、溶接条件テーブルで設定されたギャップ長近傍において短周期で変化する場合でも、溶接条件は短周期で変化することなく緩やかに変化するため、安定した溶接が行えるという効果がある。
また、請求項6乃至8に記載の発明によると、様々な溶接条件について請求項1または請求項5の発明を適用することができ、様々な状況のもとでより安定した溶接を行うことができるという効果がある。
請求項9に記載の発明によると、溶接線のギャップ長がワーク表面方向のズレである場合に加え、ワーク表面に対する鉛直方向のズレである場合にも対応できるので、より広範囲なギャップ制御に対応できるという効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態について図を参照して説明する。
【実施例1】
【0019】
図1は、本発明の第1実施例のロボットシステムのロボット制御装置804のブロック図である。このブロック図は、既に説明した図7のトラッキング制御を行うロボットシステムにおけるロボット制御装置804の内部のうち、トラッキング制御に関連のある部分のみを記載している。
図において、103はセンサ処理部であり、センサ803が検出するセンサデータ(位置、ギャップ長、タイムスタンプ等)を入力とし、データのフィルタリングや、センサが検出した位置データをワールド座標系に基づく値へと変換する等の処理を行う。そして、隣接する条件緩和演算部101が必要とするデータを出力する。本実施例の場合は検出したギャップ長を出力する。
【0020】
条件緩和演算部101は、センサ処理部103からギャップ長が入力された時に、前回センサ処理部103から入力されたギャップ長を一時的な記憶領域に退避させると共に、溶接条件テーブル104を参照して、今回入力されたギャップ長に対応する溶接条件を取り出す。溶接条件テーブル104は前述の図5と同じもので、溶接線のギャップ長に対応する溶接条件を記載したテーブルである。以下では溶接条件として溶接条件番号を例にとる。
条件緩和演算部101は前回と今回のギャップ長を比較してギャップ長の増減を調べるとともに条件緩和パラメータ102を参照する。条件緩和パラメータ102は溶接条件テーブル104にて規定された溶接条件の変化を遅らせることを目的として、予めロボット制御装置804内に設定されている。そして条件緩和演算部101はギャップ長の変化と、溶接条件テーブル104から取得した溶接条件と、条件緩和パラメータ102とを照らし合わせて溶接条件番号を変更するか否かを決定する。
図2は、条件緩和パラメータ102を適用した場合のギャップ長と溶接条件番号との関係をグラフ化したものである。図6のグラフと比較すると、ギャップ長の減少に伴う溶接条件番号の変化に遅れ特性が表れているのが分かる。
【0021】
以下に条件緩和パラメータ102を適用した場合の溶接条件変化の具体的な例を示す。図2のグラフにおいて、センサ処理部103から入力されるギャップ長が前回から増加して0.29[mm]となった時、溶接条件番号は「2」である。ギャップ長がさらに増加し0.30[mm]になった時に、溶接条件番号は「3」に変化する。
逆にギャップ長が0.31[mm](この時の溶接条件番号は「3」である)から0.30[mm]に減少した場合、溶接条件番号は「3」のままである。引き続きギャップ長が0.29[mm]、0.28[mm]と減少しても溶接条件番号は「3」のままである。
条件緩和パラメータ102で設定した幅だけギャップ長が減少した場合(この場合はギャップ長が0.25[mm]になった場合)に、溶接条件番号は「2」に変化し、溶接電源805へと出力される。
条件緩和パラメータ102は、図2に示すようにギャップ長変化の絶対量(この場合0.05[mm])で指定してもよいし、割合で指定してもよい。
割合で指定する場合は、溶接条件テーブルにて設定されたギャップ長の間隔が0.10[mm]であるのに対し条件緩和パラメータの設定値が0.05[mm]であるので、50[%]となる。
【0022】
また、このような溶接条件番号の変化を条件緩和パラメータの分だけ遅らせる制御を常には行わず、従来のようにギャップ長の変化に伴い即座に溶接条件を変化させる制御と併用できるようにしてもよい。
具体的には図5の溶接条件テーブルに示すように、「溶接条件番号」に関する「処理方法」の項目において、「条件緩和の有/無」を選択できるようにして、「有」の場合には条件緩和パラメータを適用して溶接条件を図2のように変化させ、「無」の場合には溶接条件を図6のように変化させてもよい。
また溶接条件番号の他に、図5の溶接条件テーブルに設定されたウィービング周波数についても同様に適用できるのは言うまでもない。
以上述べたように、条件緩和演算部101が条件緩和パラメータ102に従って溶接線のギャップ長の変化に伴う溶接条件の変化を遅らせることができるため、ギャップ長の検出値が溶接条件テーブル104に設定しているギャップ長近傍において短周期で変化する場合でも、溶接条件は短周期で変化しない。よって安定した溶接を行うことができる。特に溶接条件番号のような、ギャップ長に対して離散的な変化しかできない溶接条件について有効である。
なお、本実施例ではギャップ長が減少する場合に条件緩和パラメータ102を適用したが、本発明はこれに限らず、ギャップ長が増加する場合に適用しても同様の効果を奏することができるのは明らかである。
【実施例2】
【0023】
図3は、本発明の第2実施例のロボット制御装置804のブロック図である。このブロック図は、既に説明した図7のトラッキング制御を行うロボットシステムにおけるロボット制御装置804の内部のうち、トラッキング制御に関連のある部分のみを記載している。なお、既に説明した構成要素については、同一の符号を付して説明を割愛する。
図において、301は条件補間演算部であり、溶接線のギャップ長に対応した溶接条件の変化を補間する。条件補間演算部301の詳細について、図4を用いて説明する。以下では溶接条件として溶接速度を例にとる。
図4は、図5の溶接条件テーブルをもとに、条件補間演算部301にて補間演算したギャップ長と溶接速度との関係をグラフ化したものである。図7のグラフと比較すると、ギャップ長の減少に伴う溶接速度の変化が階段状から直線状になっていることが分かる。
条件補間演算部301は、センサ処理部103からギャップ長が入力された時に、溶接条件テーブル104の「溶接速度」の列を参照し、図4に示したグラフのように、ギャップ長に従って補間された溶接速度を出力する。
【0024】
以下に条件補間演算部301での処理の具体的な例を示す。センサ処理部103から入力されるギャップ長が0.28[mm]の場合、条件補間演算部301は溶接条件テーブル104の「ギャップ長」の列を参照し、0.28[mm]を挟む2つのギャップ長(0.30[mm]と0.20[mm])を求める。 そして2つのギャップ長にそれぞれ対応する溶接速度すなわち溶接速度90[%]と95[%]とを読み出す。
そして実際のギャップ長と、その値を挟む、予め溶接条件テーブル104に設定されている2つのギャップ長(0.30[mm]と0.20[mm])との差の比率を用いて2つの溶接速度(90[%]と95[%])を補間する演算を行い、実際のギャップ長に対応する溶接速度を求める。その結果、ギャップ長が0.28[mm]の時、溶接速度は91[%]となる。
【0025】
なお、図5の溶接条件テーブルに示したように、「溶接速度」に関する処理方法の項目において、「補間の有/無」を選択できるようにして、「有」の場合には溶接速度を図4のように変化させ、「無」の場合には図7のように階段状に変化させるようにしてもよい。
以上の説明では、溶接速度の補間を例としたが、図5の溶接条件テーブルに設定されたウィービング振幅についても同様に補間を行えるのは言うまでもない。補間の有/無についても同様に設定可能である。
このように、条件補間演算部301が、溶接線のギャップ長に対応した溶接条件の変化を補間することができるため、ギャップ長の検出値が、溶接条件テーブル104に設定しているギャップ長近傍において短周期で変化する場合でも、溶接条件は短周期で変化せず緩やかに変化するため、安定した溶接を行うことができる。特に溶接速度のような、ギャップ長に対して連続的に変化する溶接条件について有効である。
なお、条件補間演算部301で演算する補間は、直線に限らず、曲線補間を利用してもよい。
【0026】
また、実施例1または実施例2においては溶接線のギャップ長を、ワーク表面の横方向のズレとして説明したが、これがワーク表面に対する鉛直方向のズレ(一般にミスマッチと呼ぶ)である場合にも、本発明を適用して実施例1または実施例2と同様の効果を奏することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の第1実施例のロボットシステムのロボット制御装置のブロック図。
【図2】本発明の第1実施例のギャップ長と溶接条件番号との関係をグラフ化した図。
【図3】本発明の第2実施例のロボットシステムのロボット制御装置のブロック図。
【図4】本発明の第2実施例のギャップ長と溶接速度との関係をグラフ化した図。
【図5】溶接条件テーブルの画面。
【図6】溶接条件テーブルの溶接条件番号の変化をグラフ化した図。
【図7】溶接条件テーブルの溶接速度の変化をグラフ化した図。
【図8】トラッキング制御を行うロボットシステムの構成図。
【図9】従来の溶接条件テーブルの画面。
【符号の説明】
【0028】
101 条件緩和演算部
102 条件緩和パラメータ
103 センサ処理部
104 溶接条件テーブル
301 条件補間演算部
801 ロボット
802 溶接トーチ
803 センサ
804 ロボット制御装置
805 溶接電源
806 センサ制御装置
807 ワーク
808 レーザスリット光
809 ギャップ長

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の駆動軸を有し、先端に溶接トーチを装着するロボットと、
前記溶接トーチに接続され前記溶接トーチへ溶接電流を出力する溶接電源と、
前記溶接トーチ近傍に装着されワークの溶接線の位置および前記溶接線のギャップ長を前記溶接トーチに先行して検出するセンサと、
前記センサに接続され前記センサを制御するセンサ制御装置と、
前記ロボットに接続され前記ロボットの駆動軸を制御するとともに、前記溶接電源および前記センサ制御装置に接続され情報の入出力を行うロボット制御装置とを備え、
前記センサによって検出した前記溶接線の位置に基づき前記溶接トーチの位置を補正するとともに、前記ギャップ長に応じて溶接条件を変更しながら溶接作業を行うロボットシステムにおいて、
前記ロボット制御装置は、前記ギャップ長と前記ギャップ長に応じて段階的に変化する前記溶接条件との対応を記録した溶接条件テーブルと、
前記ギャップ長の変化に伴う前記溶接条件の変更の遅れ量を設定する条件緩和パラメータと、
前記溶接条件テーブルでの前記溶接条件の変化点に対応するギャップ長近傍における前記溶接条件の変更を前記条件緩和パラメータによって設定された分だけ遅らせて出力する条件緩和演算部とを備えることを特徴とするロボットシステム。
【請求項2】
前記条件緩和パラメータは、前記ギャップ長の変化の絶対量あるいは変化の比率によって指定されることを特徴とする請求項1記載のロボットシステム。
【請求項3】
前記条件緩和演算部は、前記ギャップ長が減少する際に前記条件緩和パラメータに従って前記溶接条件の変更を遅らせることを特徴とする請求項1記載のロボットシステム。
【請求項4】
前記条件緩和演算部は、前記ギャップ長が増加する際に前記条件緩和パラメータに従って前記溶接条件の変更を遅らせることを特徴とする請求項1記載のロボットシステム。
【請求項5】
複数の駆動軸を有し、先端に溶接トーチを装着するロボットと、
前記溶接トーチに接続され前記溶接トーチへ溶接電流を出力する溶接電源と、
前記溶接トーチ近傍に装着されワークの溶接線の位置および前記溶接線のギャップ長を前記溶接トーチに先行して検出するセンサと、
前記センサに接続され前記センサを制御するセンサ制御装置と、
前記ロボットに接続され前記ロボットの駆動軸を制御するとともに、前記溶接電源および前記センサ制御装置に接続され情報の入出力を行うロボット制御装置とを備え、
前記センサによって検出した前記溶接線の位置に基づき前記溶接トーチの位置を補正するとともに、前記ギャップ長に応じて溶接条件を変更しながら溶接作業を行うロボットシステムにおいて、
前記ロボット制御装置は、前記ギャップ長と前記ギャップ長に応じて段階的に変化する前記溶接条件との対応を記録した溶接条件テーブルと、
前記センサによって検出したギャップ長と前記溶接条件テーブルに設定された前記溶接条件の変化点に対応するギャップ長とを照合し、
前記センサによって検出したギャップ長の前後2つの溶接条件を読み出し、
前記2つの溶接条件に対応するギャップ長と前記センサによって検出したギャップ長との差の比率から前記2つの溶接条件を補間する演算を行い、前記演算によって得られた溶接条件を出力する条件補間演算部とを備えることを特徴とするロボットシステム。
【請求項6】
前記溶接条件は溶接速度であることを特徴とする請求項1または5記載のロボットシステム。
【請求項7】
前記溶接条件はウィービング周波数であることを特徴とする請求項1または5記載のロボットシステム。
【請求項8】
前記溶接条件はウィービング振幅であることを特徴とする請求項1または5記載のロボットシステム。
【請求項9】
前記ギャップ長は、前記ワーク表面に対して平行方向あるいは鉛直方向に生じるズレの大きさであることを特徴とする請求項1または5記載のロボットシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2008−264845(P2008−264845A)
【公開日】平成20年11月6日(2008.11.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−113075(P2007−113075)
【出願日】平成19年4月23日(2007.4.23)
【出願人】(000006622)株式会社安川電機 (2,482)
【Fターム(参考)】