ロボット制御カテーテルおよびその較正方法
心臓カテーテルのようなロボット装置を較正する方法は、第1振動周波数で第1振動ベクトルを与えることにより、第1作動軸において装置を振動させるステップを含む。装置を振動させている間に、装置の位置を周期的に測定して複数の位置データ点が生成され、複数の測定軸に関連して装置の位置が表されてもよい。その後、位置データ点は、フーリエ変換アルゴリズムのような信号処理アルゴリズムを用いて処理され、それにより装置の位置を作動軸の移動ベクトルに関連付ける伝達関数を導出する。伝達関数は、分解され、作動軸に対する較正ベクトルとして表現されてもよく、1つまたは複数の測定軸の各々に沿って方向づけられる、ゼロ成分を含む少なくとも1つの成分を含む較正ベクトルを含んでいてもよい。プロセスは、較正することが望ましい任意の作動軸に対して繰り返してもよい。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、米国特許出願第11/139,908号明細書の一部継続出願である、2007年8月22日に出願された係属中の米国特許出願第11/843,589号明細書に対する優先権を主張する。本出願はまた、2006年12月29日に出願された係属中の米国特許出願第11/647,300号明細書、2006年12月29日に出願された係属中の米国特許出願第11/647,298号明細書、2006年12月29日に出願された係属中の米国特許出願第11/647,272号明細書、2006年12月29日に出願された係属中の米国特許出願第11/647,296号明細書、2006年12月29日に出願された係属中の米国特許出願第11/647,297号明細書および2006年12月29日に出願された係属中の米国特許出願第11/647,304号明細書にも関連する。上述したものは、その内容全体を本明細書に記載したものとして参照により本明細書に援用される。
【0002】
(技術分野)
本発明は、位置フィードバックシステムを採用するロボット制御装置に関する。特に、本発明は、位置フィードバックに関してロボット制御装置の作動を較正するために伝達関数を取得する方法に関する。
【背景技術】
【0003】
カテーテルが用いられる医療処置は、ますます増加し続けている。ごくわずかな例を挙げると、カテーテルは、診断処置、治療処置およびアブレーション処置に用いられている。通常、医師は、カテーテルを患者の脈管構造を通して、患者の心臓内の部位等の意図された部位まで操作する。カテーテルは、通常、アブレーション、診断、心臓マッピング等に使用され得る1つまたは複数の電極あるいは他の診断または治療装置を搭載している。
【0004】
カテーテルを患者の脈管構造を通して意図された部位まで操作するのを容易にするために、カテーテルシャフトの部分、特にその遠位領域を操縦可能にする場合があることは既知である。たとえば、カテーテルは、標的部位に向かう途中に患者の脈管構造の曲がりくねった経路を通り抜けるために、医師が必要に応じてかつ要求通りにカテーテルの遠位端を並進させ、回転させかつ偏向させることができるように、製造される場合がある。
【0005】
例として、偏向性は、1本または複数本の操縦ワイヤ(「プルワイヤ」と呼ぶ場合がある)をカテーテルシャフトの長さに沿って取り付けることによって達成されることが多い。これらの操縦ワイヤは1つまたは複数のアクチュエータに結合され、医師はそれを利用してワイヤに対し選択的に張力をかけることができ、それによってカテーテルの遠位端を偏向させる。カテーテルを偏向軸上で作動させるために、プルワイヤを電動式電気機械制御システムに結合する場合もあることも知られている。同様に、カテーテルを前進させかつ後退させる(すなわち、並進させる)ために、カテーテルを電動キャリッジに結合する場合もある。
【0006】
位置フィードバックシステム(位置確認システム、ナビゲーションシステムまたはマッピングシステムと呼ぶ場合もあり、本明細書ではそれらのさまざまな用語を同義で用いる)を用いることにより、医師に対し、患者内におけるカテーテルの位置に関する情報を提供することができる。米国特許第5,697,377号明細書(‘377特許)および同第5,983,126号明細書(‘126特許)(ともに、その内容全体を本明細書に記載されたものとして参照により明示的に本明細書に援用される)は、患者の心臓におけるカテーテルの位置を確定するナビゲーションシステムを開示している。
【0007】
‘377特許および‘126特許のシステムでは、患者の身体上に配置される互いに直交するように配置されたパッチ電極の対に電流パルスを印加する。これらのパッチを用いて、患者内部に一組の直交するx測定軸、y測定軸およびz測定軸を画定する電界を形成する。それらの特許は、各軸に1つ、3つの異なる周波数で連続的に供給される振幅の小さい低電流パルスを教示している。これら電界内、たとえば患者の心臓内に配置される位置決め電極には、各軸を画定するパッチ電極の対の間のその位置に応じて電圧がかかる。位置決め電極における電圧は、基準電極の電圧と比較した時、位置決め電極の基準電極に対する位置を示す。したがって、3つの電圧を使用して3次元空間において位置決め電極、したがってカテーテルの位置を画定することができ、それを、一組の直交する測定軸に対する直交(x、y、z)座標として表すことができる。
【0008】
カテーテルを作動させるために用いられるモータ自体は極めて精密であるが、カテーテルを偏向させ、並進させまたは回転させるために採用される機械系は、特に作動力をかなりの距離にわたって伝達しなければならない場合、それほど精密ではない。特に、カテーテル先端の位置は、カテーテルの温度、その最新移動過程、およびそれが横断している、曲がりくねった経路とともに、プルワイヤまたは他の機械系要素および電気機械系要素に供給される変位に対する予期されかつ所望される依存性を含む、多くの変動要素によって決まる。この変動性の多くが、カテーテル本体および内部カテーテル構造の長さに沿った保持力(それらをまとめて「記憶(memory)」と呼ぶ場合がある)による。実際に、プルワイヤの所与の変位に対し、これらの要因により、先端位置の変動が1cmを上回る結果となる場合がある。先端位置に望まれる相対的な変化も、同じ理由で正確に予測可能ではない。
【0009】
さらに、上述したナビゲーションシステム等の現行の位置フィードバックシステムには、固有の誤差がある可能性がある。心臓内ナビゲーションシステムは、再現性に関しては堅牢であるが、それらが提供する寸法フィードバックは、状況による(contexual)、すなわち、特定の患者、心腔構造および他の要因に左右される傾向にある。これは、すべての部位が同じ相対的な状況でマッピングされマークされるマッピング応用では問題はないが、カテーテルの開ループでの特性評価では問題がある。たとえば、ナビゲーションシステムが、10mmの偏向が必要であることを示す場合、この移動は、実際には、カテーテルの特性により9mmのみであり、1mmの誤差がもたらされる。このナビゲーションシステム誤差は、上述した装置誤差に加わるものである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
したがって、3次元空間におけるカテーテルの所望の動きを、モータに供給される制御ベクトルまたは動作コマンド(本明細書では「移動ベクトル」と呼ぶ)に関連付ける伝達関数を得ることが望ましい。一次較正方法は、予測される移動に対してカテーテルを作動させ、上述したナビゲーションシステムを利用して実際の移動を測定するというものであり得る。予測された移動の実際の移動に対する比から、スケール補正係数を導出することができる。しかしながら、この手法は、カテーテル自体のいくつかの不確実性を考慮することはできるが、患者の動き、心臓の動き、患者の呼吸および電子ノイズ等の外部誤差源を考慮していない。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本明細書では、ロボット制御心臓カテーテルおよびそのカテーテルを較正する方法を開示する。較正方法は、カテーテルに供給される作動と、位置フィードバックシステムにおいて患者の動き、心臓の動き、患者の呼吸および電子ノイズ等の外部誤差源を考慮しながら得られる作動との関係を確立する。これにより、ロボット制御カテーテルの正確かつ精密な制御が容易になる。
【0012】
本発明の第1実施形態によれば、少なくとも1つの作動軸に対する移動が可能なロボット装置を較正する方法は、概して、第1振動周波数で第1振動ベクトルを与えることにより、第1作動軸においてロボット装置を振動させるステップと、第1作動軸においてロボット装置を振動させている間に、ロボット装置の位置を周期的に測定するステップであって、それにより時間の関数として測定される第1の複数の位置データ点を生成するステップと、フーリエ変換アルゴリズムを用いて第1の複数の位置データ点を処理するステップであって、それにより第1振動ベクトルを与えることに起因するロボット装置の変位を隔離するステップと、処理するステップの出力を、第1作動軸に対する較正ベクトルに分解するステップとを含む。ロボット装置の位置は、約0.5秒〜約10秒の間のサンプリング間隔で、第1サンプリングレートで測定され、第1サンプリングレートは、第1振動周波数の少なくとも約2倍の倍数であることが好ましく、約5倍〜約10倍の間であることが好ましい。ロボット装置の位置を、複数の測定軸に対して測定してもよく、それにより、測定軸の各々に対して第1の複数の位置データ点が生成され、それを後にフーリエ変換アルゴリズムを用いて独立して処理してもよい。そして、較正ベクトルは、測定軸の各々に対して少なくとも1つの値を含むことができる。複数の位置データ点をバッファまたは他のメモリに格納してもよい。プロセスを、ロボット装置を作動させることができる他の任意の作動軸に対して繰り返してもよく、それらの作動軸に対し、振動周波数、サンプリング間隔およびサンプリングレートのうちのいずれかまたはすべては、任意に等しくてもよい。作動軸は、並進軸、回転軸および偏向軸を含むことが好ましい。
【0013】
本発明の別の実施形態によれば、少なくとも1つの作動軸に対する移動が可能なロボット制御カテーテルを較正する方法は、概して、第1振動周波数で第1振動ベクトルを与えることにより、第1作動軸においてカテーテルを機械的に作動させるステップと、カテーテルの位置を周期的に測定するステップであって、それにより時間の関数として測定される第1の複数の位置データ点を生成するステップと、フーリエ変換アルゴリズムを用いて第1の複数の位置データ点を処理するステップであって、それにより患者の動き、心臓の動き、呼吸および電子ノイズのうちの少なくとも1つからカテーテルの機械的作動を識別するステップと、処理するステップの出力を、第1作動軸に対する較正ベクトルに分解するステップとを含む。カテーテルの位置は、約0.5秒〜約10秒の間のサンプリング間隔で、第1サンプリングレートで測定され、第1サンプリングレートは、第1振動周波数の少なくとも約2倍の倍数であることが好ましく、約5倍〜約10倍の間であることが好ましい。サンプリングレートは、好ましくは約60Hz〜約200Hzの間であり、より好ましくは約100Hzであって、第1振動周波数は、好ましくは約1Hz〜約10Hzの間であり、より好ましくは約3Hz〜約5Hzの間である。カテーテルの位置、たとえばカテーテルの先端の位置を、複数の測定軸に対して測定してもよく、それにより、測定軸の各々に対して第1の複数の位置データ点が生成され、それを後にフーリエ変換アルゴリズムを用いて独立して処理してもよい。そして、較正ベクトルは、測定軸の各々に対して少なくとも1つの値を含むことができる。複数の位置データ点をバッファまたは他のメモリに格納してもよい。プロセスを、カテーテルを作動させることができる他の任意の作動軸に対して繰り返してもよく、それらの作動軸に対し、振動周波数、サンプリング間隔およびサンプリングレートのうちのいずれかまたはすべては、任意に等しくてもよい。作動軸は、並進軸、回転軸および偏向軸を含むことが好ましい。
【0014】
本発明のさらに別の実施形態では、ロボット制御カテーテルを較正する方法は、概して、或る振動周波数で振動ベクトルを与えることにより、作動軸においてカテーテルを振動させるステップと、カテーテルの或る点の位置を周期的に測定するステップであって、それにより時間の関数として測定される複数の位置データ点を生成するステップと、複数の位置データ点に対し信号処理アルゴリズムを適用するステップであって、それにより振動ベクトルを与えることに起因するカテーテルの変位を隔離するステップと、信号処理アルゴリズムの出力を、作動軸に対する較正ベクトルに分解するステップとを含む。信号処理アルゴリズムはフーリエ変換アルゴリズムであってもよい。複数のデータ点は、振動周波数の好ましくは倍数でありかつ少なくとも約2倍であり、より好ましくは約5倍〜約20倍の間であるサンプリングレートで測定される。カテーテルの位置を、1つまたは複数の測定軸に対して測定してもよく、それにより、測定軸の各々に対して複数の位置データ点が生成される。それにより、較正ベクトルは、測定軸の1つまたは複数の各々に沿って、ゼロ成分を含む少なくとも1つの成分を含んでいてもよい。複数の位置データ点をバッファまたは他のメモリに格納してもよい。作動軸は、並進軸、偏向軸および回転軸からなる群から選択されることが好ましい。
【0015】
本発明のさらに別の実施形態によれば、少なくとも1つの作動軸に対する移動が可能なロボット制御カテーテルを較正する方法は、第1振動周波数で第1振動ベクトルを与えることにより、第1作動軸においてカテーテルを機械的に作動させるステップと、カテーテルの位置を周期的に測定することにより、時間の関数として測定される第1の複数の位置データ点を生成するステップと、フーリエ変換アルゴリズムを用いて第1の複数の位置データ点を処理することにより、ロボット制御カテーテルの位置を第1作動軸に対する移動ベクトルに関連付ける伝達関数を生成するステップとを含む。この方法はさらに別の作業軸について繰り返してもよい。
【0016】
本発明のさらなる実施形態では、ロボット制御医療機器は、概して、医療処置を行うように構成されたエンドエフェクタと、エンドエフェクタを移動させるアクチュエータと、エンドエフェクタに対し作動軸における振動ベクトルを与えるようにアクチュエータを起動することにより、エンドエフェクタを機械的に作動させるコントローラと、エンドエフェクタの位置を周期的に測定し、それにより時間の関数として測定される複数の位置データ点を生成する位置フィードバックシステムと、フーリエ変換アルゴリズムに従って複数の位置データ点を処理することにより、エンドエフェクタの位置を作動軸に対する移動ベクトルに関連付ける伝達関数を生成するプロセッサとを有する。エンドエフェクタは心臓カテーテルであってもよい。位置フィードバックシステムは、1つまたは複数の測定軸に対してエンドエフェクタの端部の位置を周期的に測定してもよく、それにより1つまたは複数の測定軸の各々に対して複数の位置データ点が生成され、それを後にフーリエ変換アルゴリズムを用いて独立して処理してもよい。伝達関数は、1つまたは複数の測定軸の各々に沿って方向づけられる、ゼロ成分を含む少なくとも1つの成分を有する較正ベクトルを含んでいてもよい。
【発明の効果】
【0017】
本発明の技術的利点は、ロボット制御装置を較正するための伝達関数を導出する際に、装置変動性誤差、位置フィードバックシステム誤差および外部要因誤差を考慮する、というものである。
【0018】
本発明の上述したおよび他の態様、特徴、詳細、有用性および利点は、以下の説明および特許請求の範囲を読むことにより、かつ添付図面を検討することにより明らかとなろう。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】ロボット手術システムの一実施形態の概略図である。
【図2】カテーテルが配置されているカテーテル保持装置の一実施形態の斜視図である。
【図3】図2のカテーテル保持装置の端面図である。
【図4】カテーテルが固定されているカテーテル保持装置の一実施形態の斜視図である。
【図5】図4のカテーテル保持装置の端面図である。
【図6】ロボット手術システムで使用され得るような例示的な操縦可能カテーテルを示す。
【図7】本発明で使用され得るようなロボット手術システムおよび位置確認システムを概略的に示す。
【図8】ロボット制御心臓カテーテルまたは他のロボット制御装置を較正する方法のフローチャートである。
【図9a】x測定軸における例示的な較正グラフを、生データとして、およびフーリエ変換アルゴリズムの適用等による信号処理後として示す。
【図9b】y測定軸における例示的な較正グラフを、生データとして、およびフーリエ変換アルゴリズムの適用等による信号処理後として示す。
【図9c】z測定軸における例示的な較正グラフを、生データとして、およびフーリエ変換アルゴリズムの適用等による信号処理後として示す。
【発明を実施するための形態】
【0020】
図1は、医療機器12をロボット操作および制御するロボット手術システム10の一実施形態を概略的に示す。医療機器12はカテーテルであることが好ましく、それは、単に例としてかつ限定なしに、アブレーションカテーテル、ガイドワイヤカテーテル、イントロデューサカテーテル、プローブまたはスタイレットを含む、いかなるタイプのカテーテルであってもよい。しかしながら、本発明の範囲から逸脱することなく、ロボット手術システム10により、他のいかなる治療用医療機器、診断用医療機器または補助医療機器を制御してもよい、ということが理解されるべきである。こうした他の機器には、限定されないが、カテーテルが搬送または送達することができる、注射器、電気泳動装置、イオン導入装置、経皮薬剤送達装置、筋芽細胞送達装置、幹細胞送達装置、アブレーション装置、ステントおよびペースメーカリードがある。ロボット手術システム10を用いて、本明細書で説明する迅速な取付けおよび取外し機能に従って2つ以上の医療機器12を操作し制御してもよい、ということがさらに理解されるべきである。したがって、本明細書では、「医療機器」、「プローブ」、「治療用装置」および「カテーテル」という用語を同義で用いる。「エンドエフェクタ」という一般用語もまた、医療機器12を説明するために用いる場合もある。
【0021】
ロボット手術システム10は、概して、トラック14と、カテーテル保持装置16と、並進サーボ機構18と、カテーテル偏向制御機構20と、偏向サーボ機構22と、並進サーボ機構18および偏向サーボ機構22のうちの少なくとも一方に動作可能に結合されるコントローラ24とを有している。並進サーボ機構18および偏向サーボ機構22は、連続モータ、ステッピングモータ、液圧アクチュエータ、プーリシステム、および当業者には既知である他の装置を含む、或る距離を置いて機械制御を提供するいかなるタイプの装置であってもよい。カテーテル偏向制御機構20および偏向サーボ機構22を、本明細書ではまとめて「カテーテル偏向機構」と呼ぶ。
【0022】
カテーテル保持装置16は、カテーテル受入部26を有している。カテーテル受入部26は、カテーテル12の近位端30近くに位置するカテーテル制御ハンドル28をカテーテル受入部26内に取り付けることにより、カテーテル12を受け入れるように構成されている。カテーテル受け部26は、いかなるタイプのカテーテル12(または上述したように別の医療機器)の迅速な取付けおよび取外しにも適合されていることが好ましく、それにより、ロボット手術システム10による制御のための装置12の取付け、および手動制御(たとえば、カテーテル制御ハンドル28の使用者による操作)のための装置12の取外しが容易になる。したがって、カテーテル制御ハンドル28を、摩擦嵌合により、あるいは1つまたは複数のクイックリリースファスナを用いて、カテーテル受入部26に固定することができる。別法として、カテーテル受入部26の内面とカテーテル制御ハンドル28の外面は、カテーテル制御ハンドル28をカテーテル保持装置16内にねじ込むことができるようにする嵌合ねじ部を有していてもよい。ロボット手術システム10の他の実施形態では、カテーテル制御ハンドル28は、カテーテル受入部26の適所に締め付けられるかまたはひもで縛られる。カテーテル受入部26内にカテーテル制御ハンドル28を受け入れるのを容易にするために、アダプタを用いてもよい。
【0023】
図2および図3に、カテーテル制御ハンドル28が配置されているが固定されてはいない、カテーテル保持装置16の一実施形態を示す。カテーテル保持装置16は、基板32と複数の直立した支持板34とを有している。支持板34は、プーリシステム38に連結されたカム36を支持する。
【0024】
カテーテル制御ハンドル28は、開口部40内を下方に、カテーテル受入部26内のプーリシステム38のベルト40の上に受け入れられる。カテーテル制御ハンドルが下方に付勢されると、ベルト40が上部プーリ38aおよび下部プーリ38bを矢印aの方向に回転させる。これにより、カム36がリンク42を介して下方に付勢され、上部プーリ38a、38bがリンク44を介して互いに向かって引き寄せられ、同時にベルト40がカテーテル制御ハンドル28の周囲に巻き付けられる。それにより、カテーテル制御ハンドル28が、図4および図5に示すようにカテーテル受入部26内に固定される。カテーテル制御ハンドル28をカテーテル保持装置16から取り外すためには、使用者は、カム26を解放するだけでよく、それは、上述したプロセスを逆転し、カテーテル受入部26を開放する。
【0025】
カテーテル保持装置16は、トラック14に並進可能に関連している。「並進可能に関連する」という句は、カテーテル保持装置16とトラック14とのすべての種類の相対的な横方向の動きを含む。たとえば、カテーテル保持装置16は、トラック14に対して摺動してもよい。別法として、カテーテル保持装置16は、トラック14に取り付けられているウォームギア、親ねじ、ボールねじ等のねじ機構46に沿って横方向に移動してもよい。カテーテル保持装置16のトラック14に対する並進範囲(すなわち、カテーテル保持装置16が両端の間でトラック14に対して移動することができる横方向距離)は、少なくとも約5cmであり、人間の心臓のおよその幅であることが好ましい。トラック14に対するカテーテル保持装置16の並進範囲が少なくとも約10cmであることがより好ましい。
【0026】
本発明の好ましい実施形態では、キャリッジ48が、ねじ機構46を介してトラック14の上に並進可能に取り付けられている。カテーテル保持装置16は、キャリッジ48によりトラック14に対して並進するように、キャリッジ48に取り付けられている。たとえば、基板32を、キャリッジ48に固定してまたは取外し可能に取り付けてもよい。別法として、カテーテル保持装置16を、キャリッジ48と、単一アセンブリとして一体的に形成してもよい(すなわち、基板32およびキャリッジ48が単一の単体部品であってもよい)。同様に、本発明の実施形態によっては、カテーテル保持装置16を、キャリッジが介在することなくトラック14に直接並進可能に取り付けてもよい。
【0027】
並進サーボ機構18は、カテーテル保持装置16に動作可能に結合され、カテーテル保持装置16のトラック14に沿った横方向の位置を調整するために、カテーテル保持装置16のトラック14に対する並進を制御するように適合されている。並進サーボ機構18は、キャリッジ48、したがってそれに取り付けられているカテーテル保持装置16を、トラック14に沿って横方向に移動させるために、キャリッジ48に動作可能に結合されていることが好ましい。図1に示す実施形態では、並進サーボ機構18は、ねじ機構46を駆動し、それによりキャリッジ48をねじ機構46に沿って横方向に移動させる。
【0028】
偏向サーボ機構22は、カテーテル偏向制御機構20に動作可能に結合されかつそれを制御するように適合されている。本発明の好ましい実施形態では、偏向サーボ機構22は、カテーテル偏向制御機構20を回転させることができるように、カテーテル偏向制御機構20に動作可能に結合されている。偏向サーボ機構22とカテーテル偏向制御機構20とを連結する伝達系を簡略化するために、偏向サーボ機構22およびカテーテル偏向制御機構20のいずれか一方または両方をキャリッジ48に取り付けてもよい。ロボット手術システム10の実施形態によっては、後述するように、カテーテル偏向制御機構20はカテーテル保持装置16に、たとえばプーリシステム38、特にベルト40を利用することにより組み込まれる。しかしながら、当業者は、本発明の精神および範囲から逸脱することなく、カテーテル偏向制御機構20をカテーテル保持装置16から分離してもよい、ということを理解するであろう。
【0029】
コントローラ24は、カテーテル保持装置16に受け入れられるカテーテル12をナビゲートするために、並進サーボ機構18および偏向サーボ機構22の少なくとも一方を制御するように適合されている。並進サーボ機構18および偏向サーボ機構22を制御するために複数のコントローラを使用することが、本発明の範囲内にあるとみなされることも留意されるべきである。この開示を通して、「コントローラ」という用語は、1つまたは複数のロボットシステムの移動または作動を制御する装置(すなわち、サーボ機構にコマンド入力を提供する構成要素)を指す。当業者は、ロボット手術システム10内で任意の特定の機構に対して、適当なコントローラをいかに選択するかを理解するであろう。さらに、「コントローラ」という用語は、1つまたは複数のロボットシステムを作動させる単一の統合コントローラと複数のコントローラとの両方を包含するものとみなされるべきである。
【0030】
図6に示すように、カテーテル12は、カテーテル12の近位端30近くのカテーテル制御ハンドル28からカテーテル12の遠位端52まで延在する少なくとも1本のプルワイヤ50を含む、操縦可能カテーテルであることが好ましい。プルワイヤ50を、同様にカテーテル12の遠位端52近くに位置する少なくとも1つのプルリング54に結合してもよい。プルワイヤ50は、緊張状態になると、カテーテル12の遠位端52をさまざまな形状になるように偏向させる。当業者は理解するように、プルワイヤ50を追加することにより、カテーテル12の遠位端52の偏向の多様性が向上する。たとえば、プルリング54への取付点が1つである単一プルワイヤ50により、カテーテル12の遠位端52は、単一軸上で、恐らくは一方向のみに、たとえば図6に対して上方に偏向することができる。第2プルワイヤ50を追加する(図6に示すように)ことにより、または単一プルワイヤ50を輪にしてプルリング54に2つの取付点56があるようにすることにより、カテーテル12の遠位端52を、2つの方向に、たとえば図6に対して上方および下方の両方に偏向させてもよい。4つのプルワイヤ50がプルリング54に約90°の間隔で取り付けられるカテーテル12は、4つの方向に、たとえば図6に対し上方、下方および用紙面に入る方向および出る方向に偏向することができる。
【0031】
カテーテル制御ハンドル28に1つまたは複数のカテーテル偏向アクチュエータ58を設けることにより、1本または複数本のプルワイヤ50に選択的に張力をかけるようにしてもよく、それにより、カテーテル12の遠位端52の偏向の方向および程度が制御される。実施形態によっては、1つまたは複数のノブを設けてもよく、その回転により、1本または複数本のプルワイヤ50に選択的に張力がかけられる。しかしながら、カテーテル偏向アクチュエータ58は、本発明の精神および範囲から逸脱することなく、限定されないがスライダおよびスイッチを含む他の多くの形態をとってもよいということが理解されるべきである。さらに、カテーテル制御ハンドル28自体を回転させることにより、選択的にプルワイヤ50に張力をかけカテーテル12の遠位端52を偏向させてもよい、ということも企図される。
【0032】
図1に戻ると、カテーテル制御ハンドル28がカテーテル受入部26内に受け入れられると、カテーテル12は、カテーテル保持装置16によりトラック14に対して並進し、それにより、カテーテル12を患者の体内に前進させかつ患者の体内から後退させることを可能にする第1自由度が提供される。さらに、カテーテル12は、カテーテル偏向制御機構20に動作可能に結合されており、カテーテル偏向制御機構20の作動によってカテーテル12の遠位端52が偏向し、それにより、カテーテル12に対し第2自由度が提供される。特に、カテーテル偏向アクチュエータ58をカテーテル偏向制御機構20に動作可能に結合してもよく、それによりカテーテル偏向制御機構20は、カテーテル偏向アクチュエータ58を作動させて、選択的に1本または複数本のプルワイヤ50に張力をかけ、カテーテル12の遠位端52を所望の方向に所望の量だけ偏向させることができる。
【0033】
本発明の実施形態によっては、カテーテル偏向制御機構20を回転させることにより、カテーテル偏向アクチュエータ58が回転し、それによりカテーテル12内で1本または複数本のプルワイヤ50に選択的に張力がかけられる。カテーテル偏向制御機構20とカテーテル偏向アクチュエータ58との間の伝達系は、たとえばカテーテル偏向制御機構20およびカテーテル偏向アクチュエータ58を包囲するゴム引きコーティングによって提供される、摩擦嵌合であってもよい。別法として、カテーテル偏向制御機構20およびカテーテル偏向アクチュエータ58を、嵌合ギア歯またはローレット削りによって結合してもよい。
【0034】
特に、図2〜図5に示すカテーテル保持装置16の実施形態を参照すると、カテーテル12がカテーテル受入部26に固定されると、ベルト40がカテーテル制御ハンドル28と摩擦係合する。それらはまた、カテーテル偏向アクチュエータ58と係合してもよい。したがって、プーリシステム38が偏向サーボ機構22によって駆動された場合、ベルト40は、選択的に1本または複数本のプルワイヤ50に張力をかけカテーテル12の遠位端52を偏向させるために、カテーテル制御ハンドル28またはカテーテル偏向アクチュエータ58あるいは両方を回転させることができる。
【0035】
上述したカテーテル偏向制御機構20およびカテーテル偏向アクチュエータ58の特定の構成は、単に例示的なものであり、本発明の精神および範囲から逸脱することなく変更が可能である、ということが理解されるべきである。たとえば、カテーテル偏向アクチュエータ58がノブではなくスライダである場合、カテーテル偏向制御機構20を、スライダを作動させるように好適に変更してもよく、またはさらにはモジュラユニットとして置き換えてもよい。これにより、さまざまな構成の既製医療機器とロボット手術システム10との容易な取付けおよび相互接続を可能にすることによって、ロボット手術システム10の迅速接続/分離操作が容易になる。
【0036】
上述したように、カテーテル12内に追加のプルワイヤ50を含めることにより、カテーテル12の遠位端52が偏向することができる方向の数が増加する。これを、本明細書では「偏向多様性」と呼ぶ。しかしながら、使用されるプルワイヤ50の数が比較的少ない場合(たとえば、約4本未満のプルワイヤ50)、失われる偏向多様性を、カテーテル12をその軸を中心に回転させることによって補償してもよい。たとえば、プルリング54への取付点が1つである単一プルワイヤ50のみを使用し、一方向にしか偏向することができないカテーテルでは、カテーテルを、単にその軸を中心に180°回転させることにより、反対方向に偏向させることができる。同様に、180°離れた2つの方向に偏向することができるカテーテルを、その軸を中心に90°回転させることにより、それらの間の中間の方向に偏向させることができる。
【0037】
したがって、本発明の実施形態によれば、カテーテル受入部26は回転可能である。こうした回転可能カテーテル受入部の一例は、図2〜図5に示すプーリシステム38によって画定されるカテーテル受入部26である。回転可能なカテーテル受入部26には回転サーボ機構60が回転可能に結合されており、回転可能なカテーテル受入部26を制御するように適合されている。したがって、プーリシステム38は、回転サーボ機構60によって駆動されてもよく、それにより、ベルト40と係合してカテーテル12をその軸を中心に回転させる。
【0038】
望ましい場合、回転サーボ機構60を、カテーテル保持装置16とともにトラック14に対して並進するように、キャリッジ48に取り付けるかまたはカテーテル保持装置16に取り付けてもよい。この構成により、回転サーボ機構60とカテーテル保持装置16との間に一定の距離関係がもたらされ、それによって、回転サーボ機構60をカテーテル保持装置16に結合する伝達系を簡略化することができる。
【0039】
カテーテル12は、カテーテル保持装置16に取り付けられると、カテーテル受入部26とともに回転し、それにより、カテーテル12に対して第3自由度が提供され、プルワイヤ50の数が比較的少ないことに起因する低い偏向多様性が補償される。カテーテル受入部26は、その軸を中心に少なくとも約360°回転可能であることが好ましく、それにより、そこに受け入れられたカテーテル12もまた、その軸を中心に少なくとも360°回転可能であり、それにより、カテーテル12の遠位端52の実質的に任意の方向での偏向が容易になり、カテーテル12の遠位端52の偏向多様性が大幅に向上する。カテーテル受入部26を、その軸を中心に約720°以上回転するように設計してもよい。
【0040】
カテーテル受入部26を回転させることによってカテーテル12を回転させることにより、カテーテル12の遠位端52が意図せず偏向することがある。当業者がこの開示から理解するように、カテーテル受入部26およびカテーテル12が回転する際、回転サーボ機構60によって加えられるトルクがカテーテル偏向制御機構20の慣性に打ち勝つには不十分である場合、カテーテル偏向アクチュエータ58は、カテーテル制御ハンドル28と回転するのではなく、固定されたままであることがある。すなわち、カテーテル偏向アクチュエータ58は、カテーテル偏向制御機構20に抗して動かないことがあり、カテーテル制御ハンドル28とカテーテル偏向アクチュエータ58との間に相対的な回転がもたらされる。この相対的な回転により、1本または複数本のプルワイヤ50に指示されていない張力が加わり、カテーテル12の遠位端52が不注意に偏向することがある。
【0041】
したがって、カテーテル12が回転する際に実質的に一定の偏向を維持するために、コントローラ24を、回転サーボ機構60と偏向サーボ機構22との両方に動作可能に結合してもよい。コントローラ24は、偏向サーボ機構22および回転サーボ機構60のうちの少なくとも一方を制御して、好ましくは偏向サーボ機構22および回転サーボ機構60の両方を同時に制御して、カテーテル受入部26およびカテーテル12が回転する際に遠位端52の実質的に一定の偏向を維持するよう適合されている。たとえば、コントローラ24は、回転サーボ機構60に対しカテーテル受入部26を回転させるように命令する際、同時に、偏向サーボ機構22に対し、カテーテル偏向制御機構20を反対方向に回転するよう作動させるように命令してもよく、それにより、カテーテル偏向アクチュエータ58とカテーテル制御ハンドル28との間の相対的な回転が実質的になくなり、カテーテル12の実質的に一定の偏向を維持するのに役立つ。別法として、コントローラ24は、回転サーボ機構60に対してカテーテル受入部26を回転させるように命令する際、同時に、偏向サーボ機構22に対し、カテーテル偏向制御機構20をカテーテル偏向アクチュエータ58から切り離すように命令してもよく、それによりカテーテル偏向アクチュエータ58はカテーテル制御ハンドル28とともに自由に回転することができる。いずれの場合も、コントローラ24を、偏向サーボ機構22と回転サーボ機構60とを差動装置等の機械的伝動システムを通して結合する必要をなくすように構成することができる。さらに、本明細書では並進サーボ機構18、偏向サーボ機構22および回転サーボ機構60を制御するように適合された単一コントローラとして説明しているが、本発明の精神および範囲から逸脱することなく、複数のコントローラを使用してもよい。
【0042】
イントロデューサ62、好ましくは操縦可能イントロデューサ、最も好ましくはアジリス(Agilis)(商標)操縦可能イントロデューサを、ロボット手術システム10の一部として提供してもよい。イントロデューサ62の近位端64は固定されていることが好ましく、一方、イントロデューサ62の遠位端66は、患者(明確にするために図示せず)内の標的部位(本明細書において「標的」という用語は、治療または診断が行われる場所を指す)に近接する位置まで延在する。イントロデューサ62は、イントロデューサ62の遠位端66を少なくとも1自由度で制御するように適合された少なくとも1つのサーボ機構70を含むロボット制御システム68を介して、操縦可能であってもよい。好ましくは、ロボット制御システム68は、ロボット手術システム10に対して合計6自由度をもたらす、3自由度(並進、偏向および回転)でイントロデューサ62の遠位端66を制御するように適合された3つのサーボ機構70と、サーボ機構70を制御するように適合された少なくとも1つのコントローラ72とを有している。本明細書においてロボット手術システム10および医療機器12に関して説明したものと同様の制御原理を、操縦可能イントロデューサ62に適用してもよい。
【0043】
患者の体外でカテーテル12の周囲に実質的無菌野を形成するために、伸張可能かつ折畳み可能な管状シャフト74が、カテーテル12のカテーテル保持装置16とイントロデューサ62の近位端64との間の領域等、カテーテル12の少なくとも一部を実質的に包囲する。好ましくは、シャフト74は、ロボット手術システム10の他の関連部品とともに使用前に殺菌される。カテーテル保持装置16がカテーテル12を患者内に(すなわち図1の右側に)前進させるように並進すると、管状シャフト74は折り畳まれる。反対に、カテーテル保持装置16がカテーテル12を患者から(すなわち図1の左側に)後退させるように並進すると、管状シャフト74は伸張する。管状シャフト74は、複数の入れ子式の管状要素76から組み立てられていることが好ましい。しかしながら、管状シャフト74は、別法として、アコーディオンプリーツ状構造または他の伸張可能かつ折畳み可能構造であってもよい、ということが企図される。
【0044】
ロボット手術システム10を採用して、並進サーボ機構18、偏向サーボ機構22および回転サーボ機構60(存在する場合)のうちの1つまたは複数を、コントローラ24を介して作動させることにより、カテーテル12を、患者内にかつ患者を通して患者の体内の1つまたは複数の部位までロボットによって進めることができる。ロボット手術システム10は、コントローラ24によって実行されるコンピュータプログラムに従って自動的に動作してもよい。また、外科医、心臓専門医または他の医師であり得る使用者が、3次元ジョイスティック(たとえば3入力軸を有するジョイスティック)、ステアリングヨークまたは使用者がカテーテル12をロボットによって操縦するのを可能にする別の好適な入力デバイス、もしくはこうしたデバイスの集まり等、適当な制御装置のセットによってロボット手術システム10を制御してもよい、ということも企図される。
【0045】
当業者は、サーボ機構18、22、60における移動ベクトル入力とカテーテル12の移動との関係を知っていることが望ましいことを理解するであろう。この関係を確立する方法およびシステムについて、図7および図8を参照して説明する。
【0046】
図7は、コントローラ24による命令に従いロボット手術システム10を介してロボット制御されるカテーテル12を含む手術システム80を概略的に示す。ロボット手術システム10への入力を、コンピュータシステム92を介して提供してもよい。
【0047】
例示の目的で、カテーテル12は、患者の心臓82の腔52内に挿入されているように示されている。カテーテル12は、位置フィードバックシステム86を用いてカテーテル12の位置を特定するために1つまたは複数のセンサまたは電極84、88を搭載している。好ましくは、位置フィードバックシステム86は、セント・ジュード・メディカル・インコーポレーテッド(St.Jude Medical,Inc.)のエンサイト(Ensite)NavX(商標)システムであり、それは、カテーテル12の位置を測定するために用いることができる測定軸を画定する対の電極90を有している。例示の目的で、1対の電極90のみを示す。たとえばバイオセンス・ウェブスター・インコーポレイテッド(Biosense Webster,Inc.)製のカルト(CARTO)ナビゲーションシステムを含む他の位置確認システムを採用してもよい、ということが理解される。
【0048】
コントローラ24が、サーボ機構18、22、60のうちの1つまたは複数等のアクチュエータを起動してカテーテル12に対し作動軸における振動ベクトルを与えることにより、カテーテル12を機械的に作動させるよう命令してもよい。カテーテル12が振動している間、位置フィードバックシステム86は、カテーテル12の位置を周期的に測定し、それにより、時間の関数として測定される複数の位置データ点を作成する。上述したように、複数の位置データ点を1つまたは複数の測定軸に対して測定することにより、1つまたは複数の軸の各々に対して複数の位置データ点を作成してもよい。
【0049】
コンピュータシステム92は、フーリエ変換アルゴリズム等の信号処理アルゴリズムに従って複数の位置データ点を処理して、カテーテル12の位置を作動軸に対する移動ベクトル(たとえば、サーボ機構18、22または60等のサーボ機構への入力)に関連付ける伝達関数を生成する、プロセッサをさらに含む。信号処理アルゴリズムを、1つまたは複数の測定軸の各々に対する複数の位置データ点に別個にかつ独立して適用してもよい。伝達関数は、1つまたは複数の測定軸の各々に沿って方向づけられる少なくとも1つの成分を含む較正ベクトルを含んでいてもよい。
【0050】
図8のフローチャートに、カテーテル12をその作動軸上で較正する方法を示す。ステップ110において、カテーテル12に対し第1振動周波数で第1振動ベクトルを与える。第1振動ベクトルは、第1作動軸、たとえば並進軸においてカテーテル12を機械的に作動させ、カテーテル12に振動をもたらす。好ましくは、第1振動ベクトルは、結果としての実際のカテーテル12の振動が第1作動軸に制限されるように、カテーテル12を第1作動軸のみで作動させる。したがって、第1振動ベクトルを与えるためには、サーボ機構18、22、60のうちの1つまたは複数への入力が必要であり得る。たとえば、上述したように、回転軸においてのみカテーテル12を作動させるには、偏向サーボ機構22と回転サーボ機構60との両方に対する入力が必要であり得る。
【0051】
当業者が理解するように、さまざまな誤差源が他の作動軸における見かけの振動をもたらす可能性がある(すなわち、誤差源により、カテーテル12が、第1作動軸において作動された時に残りの作動軸のうちの1つまたは複数の上でも移動しているように見える場合がある)。本明細書で述べているように、本発明の1つの目的は、第1作動軸におけるカテーテル12の実際の機械的振動を、これらの誤差源に起因するカテーテル12の見かけの振動から隔離することである。
【0052】
第1振動ベクトルは、小さい動きベクトルであることが好ましく、その結果、第1作動軸における予測される振動は約1mm〜約10mmの間になり、より好ましくは約2mm〜約3mmの間になる。より大きい距離が企図されるが、アクチュエータを正確に特性評価することができるためには短い間隔で十分な場合が多い。第1振動周波数は、好ましくは約1Hz〜約10Hzの間であり、より好ましくは約3Hz〜約5Hzの間である。
【0053】
ステップ120において、カテーテル12(またはその上の点)の位置を周期的に測定する。測定される位置は、カテーテル12の先端(たとえば電極84)の位置であってもよい。これにより、時間の関数として測定される第1の複数の位置データ点が生成される。本発明の実施形態によっては、複数の測定軸に対してカテーテル12の位置が測定され、その複数の測定軸は、作動軸とは異なっていてもよい。たとえば、カテーテル12の位置を、上述した‘377特許および‘126特許に開示されているナビゲーションシステムのx軸、y軸およびz軸に対して、または図7に示すパッチ電極90によって画定される軸に対して測定してもよい。このように、ステップ120により、測定軸の各々に対し時間の関数として複数の位置データ点(たとえば、複数の(x、y、z)座標点、または別法として測定軸の各々に対する別個の複数の位置データ点)が生成される。
【0054】
測定ステップ120は、約0.5秒〜約10秒の間、好ましくは約3秒の周期(本明細書では「サンプリング間隔」と呼ぶ)で発生し、振動ステップ110と同時に発生する(すなわち、カテーテル12が第1作動軸上で振動している間に、カテーテル12の位置が周期的に測定される)。第1の複数の位置データ点を、任意に、コンピュータシステム92の一部であってもよいバッファまたは他のメモリに格納してもよい。カテーテル12の位置が複数の測定軸に対して測定される場合、測定軸の各々に対する複数の位置データ点(たとえば、x軸に対する第1の複数の位置データ点、y軸に対する第1の複数の位置データ点およびz軸に対する第1の複数の位置データ点)を別個に格納してもよい。測定軸の各々に対する複数の位置データ点を、たとえば第1の複数の(x、y、z)座標としてまとめて格納してもよい、ということも企図される。
【0055】
サンプリング間隔中、第1の複数の位置データ点が第1サンプリングレートで測定され、第1サンプリングレートは、第1振動周波数の少なくとも2倍である、第1振動周波数の倍数であることが好ましく、より好ましくは、第1振動周波数の約5倍〜約20倍の間であることが好ましい。最も好ましくは、第1サンプリングレートは、約60Hz〜約200Hzの間であり、約100Hzであることが特に好ましい。第1サンプリングレートを第1振動周波数の倍数として設定することにより、サンプリング間隔中に整数の振動が確実に獲得される。
【0056】
当業者がこの開示から理解するように、かつ簡単に上述したように、ステップ120で生成される第1の複数の位置データ点は、カテーテル12の機械的作動と任意の誤差源とをともに反映する。これらの誤差源には、限定されないが、カテーテルの記憶(memory)、患者の動き、心臓の動き(たとえば心拍)、呼吸、摩擦および電子ノイズがある。後続するステップにおいて、ステップ110において第1振動ベクトルを与えたことに起因するカテーテル12の実際の変位が隔離され、それにより、第1振動ベクトルに起因するカテーテル12の機械的作動が、1つまたは複数の誤差源に起因する見かけの振動から識別される。
【0057】
したがって、ステップ130において、第1の複数の位置データ点を、信号処理アルゴリズムを用いて処理する。信号処理アルゴリズムはフーリエ変換アルゴリズムであることが好ましいが、本発明の精神および範囲から逸脱することなく他の信号処理アルゴリズムを採用してもよい。他の好適な信号処理アルゴリズムには、限定されないが同期復調(synchronous demodulation)または相互相関があり、機械的強制関数(たとえば振動ベクトル)の複製である波形に、各ナビゲーション(たとえば測定)軸から得られる測定されたナビゲーション信号(たとえば複数の位置データ点)を乗ずる。これにより、有利に、各ナビゲーション軸における相対的な変位を、機械的強制関数に関連しない動きおよびノイズから抽出することができる(すなわち、第1振動ベクトルに起因するカテーテル12の機械的作動を、1つまたは複数の誤差源または他の影響に起因する見かけの振動から隔離することができる)。
【0058】
複数の測定軸に対しカテーテル12の位置を測定し、その結果、測定軸の各々に対し複数の位置データ点が生成されると、処理ステップ130は、フーリエ変換アルゴリズム等の信号処理アルゴリズムを用いて、測定軸の各々に対し複数の位置データ点を別個に処理することを含んでもよいが、本発明の精神および範囲から逸脱することなく、測定軸の各々に対する複数の位置データ点をまとめて処理する(たとえば、複数の(x、y、z)座標点に信号処理アルゴリズムを適用する)ことも可能である。
【0059】
上述したように、サンプリング間隔は、第1作動軸におけるカテーテル12の整数の振動を獲得する。強制関数周波数とサンプリング間隔との整数関係を実施することにより、ステップ140において、フーリエパワースペクトルアルゴリズムによって、概して、2つ以上の周波数ビンにわたって広がるピークとは対照的に、第1振動周波数での単一ピークがもたらされる。そして、ステップ150において、強制関数に対応する周波数ビンからの値を単にスケーリングすることにより、寸法関連信号を回復することができる。この信号処理により、第1振動ベクトルを与えることに起因するカテーテル12の移動が有効に隔離され、この処理を、判断ブロック160に示すように、測定軸の各々に対して独立して繰り返してもよい。しかしながら、第1の複数の位置データ点を、測定軸成分に分解することなく処理してもよい、ということも企図される。
【0060】
ステップ170において、カテーテル12の位置を第1作動軸の移動ベクトルに関連付ける伝達関数を、信号処理中に回復された1つまたは複数の寸法信号から生成する。伝達関数は、所望のまたは予測されたカテーテル12の移動とそれに対する移動ベクトルコマンド入力(たとえば、サーボ機構18、22および60のうちの1つまたは複数に対する入力)との間の相関を確立することにより、第1作動軸においてカテーテル12を較正し、それにより、作動コマンドの正確な実行が確実になり、少なくとも第1作動軸に沿ったカテーテル12の精密な制御が可能になる。
【0061】
ステップ180において、ステップ170で生成された伝達関数を、第1作動軸に対する較正ベクトルに分解してもよい。較正ベクトルは、測定軸の各々に対して少なくとも1つの値を含んでいてもよく、言い換えれば、較正ベクトルは、与えられる振動ベクトルとカテーテル12の実際の測定された応答とのベクトル差を表す、測定軸の各々に沿って向けられた少なくとも1つの成分を含んでいてもよい。これらのベクトル成分のうちの1つまたは複数は、カテーテル12が、第1作動軸における特定の測定軸に対して予測されるように位置合せされる場合、ゼロ成分であり得る、ということが理解されるべきである。上述したように、較正ベクトルは、カテーテル12の所望のまたは予測された移動をカテーテル12の実際の移動に関連付け、それにより、カテーテル12に提供される入力(たとえば、並進サーボ機構18に送出される並進コマンド)とそれらの実際の出力(たとえばカテーテル12の遠位端52の並進)との間の関係を定義する。
【0062】
ステップ190に示すように、詳細に上述したプロセスを、任意の残りの作動軸(たとえば回転軸や偏向軸)に対して繰り返してもよい。たとえば、カテーテル12を、それぞれ第2振動周波数で第2振動ベクトルを与え第3振動周波数で第3振動ベクトルを与えることにより、第2作動軸および第3作動軸を中心に機械的に振動させてもよい。カテーテル12の位置を、それぞれ第2および第3の複数の位置データ点を生成するために周期的に測定してもよく、それらの位置データ点を、後に、カテーテル12の位置を第2作動軸および第3作動軸に対する移動ベクトルに関連付ける伝達関数を生成するために、信号処理アルゴリズムを用いて処理してもよい。これらの伝達関数を、第2作動軸および第3作動軸に対する較正ベクトルに分解しかつそうした較正ベクトルとして表してもよい。
【0063】
当業者は、この開示から、第2作動軸および第3作動軸に対するプロセスの詳細が、第1作動軸に関して説明した詳細に概して従うことを理解するはずである。たとえば、第2および第3の複数の位置データ点を、それぞれの第2サンプリングレートおよび第3サンプリングレートで測定してもよく、それらのサンプリングレートは、それぞれ、第2振動周波数および第3振動周波数の倍数であることが好ましい。同様に、第2および第3の複数の位置データ点のいずれかまたは両方をバッファまたは他のメモリに格納してもよい。第1振動周波数、第2振動周波数および第3振動周波数は等しくてもよく、第1サンプリングレート、第2サンプリングレートおよび第3サンプリングレートは等しくてもよい、ということも企図される。当業者は、さらに、この開示から、作動軸の各々に対し伝達関数および/または較正ベクトルを有益に隔離するように、作動軸の各々に対しプロセスを独立して実行することを理解するはずである。望ましい場合、その後、ステップ200において、これらのいくつかの伝達関数および/または較正ベクトルを較正行列にすることができ、たとえば治療を送達するかまたは診断処置を行うためにカテーテル12を患者内にナビゲートする際に、その較正行列を利用してもよい。
【0064】
ここで、本発明の実際的な例を、図9a〜図9cを参照して説明する。カテーテル12を、並進、回転、偏向等であってもよい作動軸を中心に、約1.5Hzの周波数で約4秒間、機械的に振動させ、カテーテル12の位置を、デカルト座標系において時間の関数として測定する。図9a〜図9cの左側のグラフは、x軸、y軸およびz軸それぞれで測定された生の動きデータ(たとえば、複数の位置データ点)を示す。図9a〜図9cの右側のグラフは、フーリエ変換アルゴリズムを用いた信号処理後の位置データを示す。フーリエ変換グラフに示すように、1.5Hz周波数ビンは、x方向に0.6mm、y方向に0.2mm、z方向に2.0mmの振幅を有している。1mm単位ベクトルにスケーリングすることにより、図示する作動軸に対して0.29i+0.10j+0.95kの較正ベクトルがもたらされる。
【0065】
本発明の実施形態を、ある程度の特定性をもって上述したが、当業者は、本発明の精神および範囲から逸脱することなく、開示した実施形態に対し多数の変更を行うことができる。たとえば、本発明を、ロボット制御カテーテルの背景で説明したが、本明細書で開示した較正方法を、位置フィードバックシステムを組み込んだ他の任意のロボット制御医療機器または非医療機器の背景において実施することができる。さらに、(x、y、z)座標系以外の座標系において位置を測定する位置フィードバックシステム(たとえば、パラメータ座標または変位ベクトルを用いて動作する位置フィードバックシステム)を含む、本明細書で説明したもの以外の位置確認システムを採用して、ロボット装置の位置を周期的に測定することができる。
【0066】
方向についてのすべての言及(たとえば、上、下、上方、下方、左、右、左方、右方、頂部、底部、上部、下部、垂直、水平、右回りおよび左回り)は、単に読者が本発明を理解するのを助ける識別目的のためにのみ使用するものであり、特に本発明の位置、向きまたは使用に関して限定をもたらすものではない。接合についての言及(たとえば、取り付けられた、結合された、接続された等)は、広く解釈されるべきであり、要素の接続の間に中間部材および要素間の相対移動を含んでもよい。このように、接合についての言及は、必ずしも、2つの要素が直接接続されかつ互いに固定関係にあることを意味するものではない。
【0067】
上記説明に含まれるかまたは添付図面に示したすべての事項は、限定するものではなく単に例示するものであると解釈されるべきであることが意図されている。添付の特許請求の範囲で定義されるような本発明の精神から逸脱することなく、詳細または構造に対する変更を行ってもよい。
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、米国特許出願第11/139,908号明細書の一部継続出願である、2007年8月22日に出願された係属中の米国特許出願第11/843,589号明細書に対する優先権を主張する。本出願はまた、2006年12月29日に出願された係属中の米国特許出願第11/647,300号明細書、2006年12月29日に出願された係属中の米国特許出願第11/647,298号明細書、2006年12月29日に出願された係属中の米国特許出願第11/647,272号明細書、2006年12月29日に出願された係属中の米国特許出願第11/647,296号明細書、2006年12月29日に出願された係属中の米国特許出願第11/647,297号明細書および2006年12月29日に出願された係属中の米国特許出願第11/647,304号明細書にも関連する。上述したものは、その内容全体を本明細書に記載したものとして参照により本明細書に援用される。
【0002】
(技術分野)
本発明は、位置フィードバックシステムを採用するロボット制御装置に関する。特に、本発明は、位置フィードバックに関してロボット制御装置の作動を較正するために伝達関数を取得する方法に関する。
【背景技術】
【0003】
カテーテルが用いられる医療処置は、ますます増加し続けている。ごくわずかな例を挙げると、カテーテルは、診断処置、治療処置およびアブレーション処置に用いられている。通常、医師は、カテーテルを患者の脈管構造を通して、患者の心臓内の部位等の意図された部位まで操作する。カテーテルは、通常、アブレーション、診断、心臓マッピング等に使用され得る1つまたは複数の電極あるいは他の診断または治療装置を搭載している。
【0004】
カテーテルを患者の脈管構造を通して意図された部位まで操作するのを容易にするために、カテーテルシャフトの部分、特にその遠位領域を操縦可能にする場合があることは既知である。たとえば、カテーテルは、標的部位に向かう途中に患者の脈管構造の曲がりくねった経路を通り抜けるために、医師が必要に応じてかつ要求通りにカテーテルの遠位端を並進させ、回転させかつ偏向させることができるように、製造される場合がある。
【0005】
例として、偏向性は、1本または複数本の操縦ワイヤ(「プルワイヤ」と呼ぶ場合がある)をカテーテルシャフトの長さに沿って取り付けることによって達成されることが多い。これらの操縦ワイヤは1つまたは複数のアクチュエータに結合され、医師はそれを利用してワイヤに対し選択的に張力をかけることができ、それによってカテーテルの遠位端を偏向させる。カテーテルを偏向軸上で作動させるために、プルワイヤを電動式電気機械制御システムに結合する場合もあることも知られている。同様に、カテーテルを前進させかつ後退させる(すなわち、並進させる)ために、カテーテルを電動キャリッジに結合する場合もある。
【0006】
位置フィードバックシステム(位置確認システム、ナビゲーションシステムまたはマッピングシステムと呼ぶ場合もあり、本明細書ではそれらのさまざまな用語を同義で用いる)を用いることにより、医師に対し、患者内におけるカテーテルの位置に関する情報を提供することができる。米国特許第5,697,377号明細書(‘377特許)および同第5,983,126号明細書(‘126特許)(ともに、その内容全体を本明細書に記載されたものとして参照により明示的に本明細書に援用される)は、患者の心臓におけるカテーテルの位置を確定するナビゲーションシステムを開示している。
【0007】
‘377特許および‘126特許のシステムでは、患者の身体上に配置される互いに直交するように配置されたパッチ電極の対に電流パルスを印加する。これらのパッチを用いて、患者内部に一組の直交するx測定軸、y測定軸およびz測定軸を画定する電界を形成する。それらの特許は、各軸に1つ、3つの異なる周波数で連続的に供給される振幅の小さい低電流パルスを教示している。これら電界内、たとえば患者の心臓内に配置される位置決め電極には、各軸を画定するパッチ電極の対の間のその位置に応じて電圧がかかる。位置決め電極における電圧は、基準電極の電圧と比較した時、位置決め電極の基準電極に対する位置を示す。したがって、3つの電圧を使用して3次元空間において位置決め電極、したがってカテーテルの位置を画定することができ、それを、一組の直交する測定軸に対する直交(x、y、z)座標として表すことができる。
【0008】
カテーテルを作動させるために用いられるモータ自体は極めて精密であるが、カテーテルを偏向させ、並進させまたは回転させるために採用される機械系は、特に作動力をかなりの距離にわたって伝達しなければならない場合、それほど精密ではない。特に、カテーテル先端の位置は、カテーテルの温度、その最新移動過程、およびそれが横断している、曲がりくねった経路とともに、プルワイヤまたは他の機械系要素および電気機械系要素に供給される変位に対する予期されかつ所望される依存性を含む、多くの変動要素によって決まる。この変動性の多くが、カテーテル本体および内部カテーテル構造の長さに沿った保持力(それらをまとめて「記憶(memory)」と呼ぶ場合がある)による。実際に、プルワイヤの所与の変位に対し、これらの要因により、先端位置の変動が1cmを上回る結果となる場合がある。先端位置に望まれる相対的な変化も、同じ理由で正確に予測可能ではない。
【0009】
さらに、上述したナビゲーションシステム等の現行の位置フィードバックシステムには、固有の誤差がある可能性がある。心臓内ナビゲーションシステムは、再現性に関しては堅牢であるが、それらが提供する寸法フィードバックは、状況による(contexual)、すなわち、特定の患者、心腔構造および他の要因に左右される傾向にある。これは、すべての部位が同じ相対的な状況でマッピングされマークされるマッピング応用では問題はないが、カテーテルの開ループでの特性評価では問題がある。たとえば、ナビゲーションシステムが、10mmの偏向が必要であることを示す場合、この移動は、実際には、カテーテルの特性により9mmのみであり、1mmの誤差がもたらされる。このナビゲーションシステム誤差は、上述した装置誤差に加わるものである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
したがって、3次元空間におけるカテーテルの所望の動きを、モータに供給される制御ベクトルまたは動作コマンド(本明細書では「移動ベクトル」と呼ぶ)に関連付ける伝達関数を得ることが望ましい。一次較正方法は、予測される移動に対してカテーテルを作動させ、上述したナビゲーションシステムを利用して実際の移動を測定するというものであり得る。予測された移動の実際の移動に対する比から、スケール補正係数を導出することができる。しかしながら、この手法は、カテーテル自体のいくつかの不確実性を考慮することはできるが、患者の動き、心臓の動き、患者の呼吸および電子ノイズ等の外部誤差源を考慮していない。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本明細書では、ロボット制御心臓カテーテルおよびそのカテーテルを較正する方法を開示する。較正方法は、カテーテルに供給される作動と、位置フィードバックシステムにおいて患者の動き、心臓の動き、患者の呼吸および電子ノイズ等の外部誤差源を考慮しながら得られる作動との関係を確立する。これにより、ロボット制御カテーテルの正確かつ精密な制御が容易になる。
【0012】
本発明の第1実施形態によれば、少なくとも1つの作動軸に対する移動が可能なロボット装置を較正する方法は、概して、第1振動周波数で第1振動ベクトルを与えることにより、第1作動軸においてロボット装置を振動させるステップと、第1作動軸においてロボット装置を振動させている間に、ロボット装置の位置を周期的に測定するステップであって、それにより時間の関数として測定される第1の複数の位置データ点を生成するステップと、フーリエ変換アルゴリズムを用いて第1の複数の位置データ点を処理するステップであって、それにより第1振動ベクトルを与えることに起因するロボット装置の変位を隔離するステップと、処理するステップの出力を、第1作動軸に対する較正ベクトルに分解するステップとを含む。ロボット装置の位置は、約0.5秒〜約10秒の間のサンプリング間隔で、第1サンプリングレートで測定され、第1サンプリングレートは、第1振動周波数の少なくとも約2倍の倍数であることが好ましく、約5倍〜約10倍の間であることが好ましい。ロボット装置の位置を、複数の測定軸に対して測定してもよく、それにより、測定軸の各々に対して第1の複数の位置データ点が生成され、それを後にフーリエ変換アルゴリズムを用いて独立して処理してもよい。そして、較正ベクトルは、測定軸の各々に対して少なくとも1つの値を含むことができる。複数の位置データ点をバッファまたは他のメモリに格納してもよい。プロセスを、ロボット装置を作動させることができる他の任意の作動軸に対して繰り返してもよく、それらの作動軸に対し、振動周波数、サンプリング間隔およびサンプリングレートのうちのいずれかまたはすべては、任意に等しくてもよい。作動軸は、並進軸、回転軸および偏向軸を含むことが好ましい。
【0013】
本発明の別の実施形態によれば、少なくとも1つの作動軸に対する移動が可能なロボット制御カテーテルを較正する方法は、概して、第1振動周波数で第1振動ベクトルを与えることにより、第1作動軸においてカテーテルを機械的に作動させるステップと、カテーテルの位置を周期的に測定するステップであって、それにより時間の関数として測定される第1の複数の位置データ点を生成するステップと、フーリエ変換アルゴリズムを用いて第1の複数の位置データ点を処理するステップであって、それにより患者の動き、心臓の動き、呼吸および電子ノイズのうちの少なくとも1つからカテーテルの機械的作動を識別するステップと、処理するステップの出力を、第1作動軸に対する較正ベクトルに分解するステップとを含む。カテーテルの位置は、約0.5秒〜約10秒の間のサンプリング間隔で、第1サンプリングレートで測定され、第1サンプリングレートは、第1振動周波数の少なくとも約2倍の倍数であることが好ましく、約5倍〜約10倍の間であることが好ましい。サンプリングレートは、好ましくは約60Hz〜約200Hzの間であり、より好ましくは約100Hzであって、第1振動周波数は、好ましくは約1Hz〜約10Hzの間であり、より好ましくは約3Hz〜約5Hzの間である。カテーテルの位置、たとえばカテーテルの先端の位置を、複数の測定軸に対して測定してもよく、それにより、測定軸の各々に対して第1の複数の位置データ点が生成され、それを後にフーリエ変換アルゴリズムを用いて独立して処理してもよい。そして、較正ベクトルは、測定軸の各々に対して少なくとも1つの値を含むことができる。複数の位置データ点をバッファまたは他のメモリに格納してもよい。プロセスを、カテーテルを作動させることができる他の任意の作動軸に対して繰り返してもよく、それらの作動軸に対し、振動周波数、サンプリング間隔およびサンプリングレートのうちのいずれかまたはすべては、任意に等しくてもよい。作動軸は、並進軸、回転軸および偏向軸を含むことが好ましい。
【0014】
本発明のさらに別の実施形態では、ロボット制御カテーテルを較正する方法は、概して、或る振動周波数で振動ベクトルを与えることにより、作動軸においてカテーテルを振動させるステップと、カテーテルの或る点の位置を周期的に測定するステップであって、それにより時間の関数として測定される複数の位置データ点を生成するステップと、複数の位置データ点に対し信号処理アルゴリズムを適用するステップであって、それにより振動ベクトルを与えることに起因するカテーテルの変位を隔離するステップと、信号処理アルゴリズムの出力を、作動軸に対する較正ベクトルに分解するステップとを含む。信号処理アルゴリズムはフーリエ変換アルゴリズムであってもよい。複数のデータ点は、振動周波数の好ましくは倍数でありかつ少なくとも約2倍であり、より好ましくは約5倍〜約20倍の間であるサンプリングレートで測定される。カテーテルの位置を、1つまたは複数の測定軸に対して測定してもよく、それにより、測定軸の各々に対して複数の位置データ点が生成される。それにより、較正ベクトルは、測定軸の1つまたは複数の各々に沿って、ゼロ成分を含む少なくとも1つの成分を含んでいてもよい。複数の位置データ点をバッファまたは他のメモリに格納してもよい。作動軸は、並進軸、偏向軸および回転軸からなる群から選択されることが好ましい。
【0015】
本発明のさらに別の実施形態によれば、少なくとも1つの作動軸に対する移動が可能なロボット制御カテーテルを較正する方法は、第1振動周波数で第1振動ベクトルを与えることにより、第1作動軸においてカテーテルを機械的に作動させるステップと、カテーテルの位置を周期的に測定することにより、時間の関数として測定される第1の複数の位置データ点を生成するステップと、フーリエ変換アルゴリズムを用いて第1の複数の位置データ点を処理することにより、ロボット制御カテーテルの位置を第1作動軸に対する移動ベクトルに関連付ける伝達関数を生成するステップとを含む。この方法はさらに別の作業軸について繰り返してもよい。
【0016】
本発明のさらなる実施形態では、ロボット制御医療機器は、概して、医療処置を行うように構成されたエンドエフェクタと、エンドエフェクタを移動させるアクチュエータと、エンドエフェクタに対し作動軸における振動ベクトルを与えるようにアクチュエータを起動することにより、エンドエフェクタを機械的に作動させるコントローラと、エンドエフェクタの位置を周期的に測定し、それにより時間の関数として測定される複数の位置データ点を生成する位置フィードバックシステムと、フーリエ変換アルゴリズムに従って複数の位置データ点を処理することにより、エンドエフェクタの位置を作動軸に対する移動ベクトルに関連付ける伝達関数を生成するプロセッサとを有する。エンドエフェクタは心臓カテーテルであってもよい。位置フィードバックシステムは、1つまたは複数の測定軸に対してエンドエフェクタの端部の位置を周期的に測定してもよく、それにより1つまたは複数の測定軸の各々に対して複数の位置データ点が生成され、それを後にフーリエ変換アルゴリズムを用いて独立して処理してもよい。伝達関数は、1つまたは複数の測定軸の各々に沿って方向づけられる、ゼロ成分を含む少なくとも1つの成分を有する較正ベクトルを含んでいてもよい。
【発明の効果】
【0017】
本発明の技術的利点は、ロボット制御装置を較正するための伝達関数を導出する際に、装置変動性誤差、位置フィードバックシステム誤差および外部要因誤差を考慮する、というものである。
【0018】
本発明の上述したおよび他の態様、特徴、詳細、有用性および利点は、以下の説明および特許請求の範囲を読むことにより、かつ添付図面を検討することにより明らかとなろう。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】ロボット手術システムの一実施形態の概略図である。
【図2】カテーテルが配置されているカテーテル保持装置の一実施形態の斜視図である。
【図3】図2のカテーテル保持装置の端面図である。
【図4】カテーテルが固定されているカテーテル保持装置の一実施形態の斜視図である。
【図5】図4のカテーテル保持装置の端面図である。
【図6】ロボット手術システムで使用され得るような例示的な操縦可能カテーテルを示す。
【図7】本発明で使用され得るようなロボット手術システムおよび位置確認システムを概略的に示す。
【図8】ロボット制御心臓カテーテルまたは他のロボット制御装置を較正する方法のフローチャートである。
【図9a】x測定軸における例示的な較正グラフを、生データとして、およびフーリエ変換アルゴリズムの適用等による信号処理後として示す。
【図9b】y測定軸における例示的な較正グラフを、生データとして、およびフーリエ変換アルゴリズムの適用等による信号処理後として示す。
【図9c】z測定軸における例示的な較正グラフを、生データとして、およびフーリエ変換アルゴリズムの適用等による信号処理後として示す。
【発明を実施するための形態】
【0020】
図1は、医療機器12をロボット操作および制御するロボット手術システム10の一実施形態を概略的に示す。医療機器12はカテーテルであることが好ましく、それは、単に例としてかつ限定なしに、アブレーションカテーテル、ガイドワイヤカテーテル、イントロデューサカテーテル、プローブまたはスタイレットを含む、いかなるタイプのカテーテルであってもよい。しかしながら、本発明の範囲から逸脱することなく、ロボット手術システム10により、他のいかなる治療用医療機器、診断用医療機器または補助医療機器を制御してもよい、ということが理解されるべきである。こうした他の機器には、限定されないが、カテーテルが搬送または送達することができる、注射器、電気泳動装置、イオン導入装置、経皮薬剤送達装置、筋芽細胞送達装置、幹細胞送達装置、アブレーション装置、ステントおよびペースメーカリードがある。ロボット手術システム10を用いて、本明細書で説明する迅速な取付けおよび取外し機能に従って2つ以上の医療機器12を操作し制御してもよい、ということがさらに理解されるべきである。したがって、本明細書では、「医療機器」、「プローブ」、「治療用装置」および「カテーテル」という用語を同義で用いる。「エンドエフェクタ」という一般用語もまた、医療機器12を説明するために用いる場合もある。
【0021】
ロボット手術システム10は、概して、トラック14と、カテーテル保持装置16と、並進サーボ機構18と、カテーテル偏向制御機構20と、偏向サーボ機構22と、並進サーボ機構18および偏向サーボ機構22のうちの少なくとも一方に動作可能に結合されるコントローラ24とを有している。並進サーボ機構18および偏向サーボ機構22は、連続モータ、ステッピングモータ、液圧アクチュエータ、プーリシステム、および当業者には既知である他の装置を含む、或る距離を置いて機械制御を提供するいかなるタイプの装置であってもよい。カテーテル偏向制御機構20および偏向サーボ機構22を、本明細書ではまとめて「カテーテル偏向機構」と呼ぶ。
【0022】
カテーテル保持装置16は、カテーテル受入部26を有している。カテーテル受入部26は、カテーテル12の近位端30近くに位置するカテーテル制御ハンドル28をカテーテル受入部26内に取り付けることにより、カテーテル12を受け入れるように構成されている。カテーテル受け部26は、いかなるタイプのカテーテル12(または上述したように別の医療機器)の迅速な取付けおよび取外しにも適合されていることが好ましく、それにより、ロボット手術システム10による制御のための装置12の取付け、および手動制御(たとえば、カテーテル制御ハンドル28の使用者による操作)のための装置12の取外しが容易になる。したがって、カテーテル制御ハンドル28を、摩擦嵌合により、あるいは1つまたは複数のクイックリリースファスナを用いて、カテーテル受入部26に固定することができる。別法として、カテーテル受入部26の内面とカテーテル制御ハンドル28の外面は、カテーテル制御ハンドル28をカテーテル保持装置16内にねじ込むことができるようにする嵌合ねじ部を有していてもよい。ロボット手術システム10の他の実施形態では、カテーテル制御ハンドル28は、カテーテル受入部26の適所に締め付けられるかまたはひもで縛られる。カテーテル受入部26内にカテーテル制御ハンドル28を受け入れるのを容易にするために、アダプタを用いてもよい。
【0023】
図2および図3に、カテーテル制御ハンドル28が配置されているが固定されてはいない、カテーテル保持装置16の一実施形態を示す。カテーテル保持装置16は、基板32と複数の直立した支持板34とを有している。支持板34は、プーリシステム38に連結されたカム36を支持する。
【0024】
カテーテル制御ハンドル28は、開口部40内を下方に、カテーテル受入部26内のプーリシステム38のベルト40の上に受け入れられる。カテーテル制御ハンドルが下方に付勢されると、ベルト40が上部プーリ38aおよび下部プーリ38bを矢印aの方向に回転させる。これにより、カム36がリンク42を介して下方に付勢され、上部プーリ38a、38bがリンク44を介して互いに向かって引き寄せられ、同時にベルト40がカテーテル制御ハンドル28の周囲に巻き付けられる。それにより、カテーテル制御ハンドル28が、図4および図5に示すようにカテーテル受入部26内に固定される。カテーテル制御ハンドル28をカテーテル保持装置16から取り外すためには、使用者は、カム26を解放するだけでよく、それは、上述したプロセスを逆転し、カテーテル受入部26を開放する。
【0025】
カテーテル保持装置16は、トラック14に並進可能に関連している。「並進可能に関連する」という句は、カテーテル保持装置16とトラック14とのすべての種類の相対的な横方向の動きを含む。たとえば、カテーテル保持装置16は、トラック14に対して摺動してもよい。別法として、カテーテル保持装置16は、トラック14に取り付けられているウォームギア、親ねじ、ボールねじ等のねじ機構46に沿って横方向に移動してもよい。カテーテル保持装置16のトラック14に対する並進範囲(すなわち、カテーテル保持装置16が両端の間でトラック14に対して移動することができる横方向距離)は、少なくとも約5cmであり、人間の心臓のおよその幅であることが好ましい。トラック14に対するカテーテル保持装置16の並進範囲が少なくとも約10cmであることがより好ましい。
【0026】
本発明の好ましい実施形態では、キャリッジ48が、ねじ機構46を介してトラック14の上に並進可能に取り付けられている。カテーテル保持装置16は、キャリッジ48によりトラック14に対して並進するように、キャリッジ48に取り付けられている。たとえば、基板32を、キャリッジ48に固定してまたは取外し可能に取り付けてもよい。別法として、カテーテル保持装置16を、キャリッジ48と、単一アセンブリとして一体的に形成してもよい(すなわち、基板32およびキャリッジ48が単一の単体部品であってもよい)。同様に、本発明の実施形態によっては、カテーテル保持装置16を、キャリッジが介在することなくトラック14に直接並進可能に取り付けてもよい。
【0027】
並進サーボ機構18は、カテーテル保持装置16に動作可能に結合され、カテーテル保持装置16のトラック14に沿った横方向の位置を調整するために、カテーテル保持装置16のトラック14に対する並進を制御するように適合されている。並進サーボ機構18は、キャリッジ48、したがってそれに取り付けられているカテーテル保持装置16を、トラック14に沿って横方向に移動させるために、キャリッジ48に動作可能に結合されていることが好ましい。図1に示す実施形態では、並進サーボ機構18は、ねじ機構46を駆動し、それによりキャリッジ48をねじ機構46に沿って横方向に移動させる。
【0028】
偏向サーボ機構22は、カテーテル偏向制御機構20に動作可能に結合されかつそれを制御するように適合されている。本発明の好ましい実施形態では、偏向サーボ機構22は、カテーテル偏向制御機構20を回転させることができるように、カテーテル偏向制御機構20に動作可能に結合されている。偏向サーボ機構22とカテーテル偏向制御機構20とを連結する伝達系を簡略化するために、偏向サーボ機構22およびカテーテル偏向制御機構20のいずれか一方または両方をキャリッジ48に取り付けてもよい。ロボット手術システム10の実施形態によっては、後述するように、カテーテル偏向制御機構20はカテーテル保持装置16に、たとえばプーリシステム38、特にベルト40を利用することにより組み込まれる。しかしながら、当業者は、本発明の精神および範囲から逸脱することなく、カテーテル偏向制御機構20をカテーテル保持装置16から分離してもよい、ということを理解するであろう。
【0029】
コントローラ24は、カテーテル保持装置16に受け入れられるカテーテル12をナビゲートするために、並進サーボ機構18および偏向サーボ機構22の少なくとも一方を制御するように適合されている。並進サーボ機構18および偏向サーボ機構22を制御するために複数のコントローラを使用することが、本発明の範囲内にあるとみなされることも留意されるべきである。この開示を通して、「コントローラ」という用語は、1つまたは複数のロボットシステムの移動または作動を制御する装置(すなわち、サーボ機構にコマンド入力を提供する構成要素)を指す。当業者は、ロボット手術システム10内で任意の特定の機構に対して、適当なコントローラをいかに選択するかを理解するであろう。さらに、「コントローラ」という用語は、1つまたは複数のロボットシステムを作動させる単一の統合コントローラと複数のコントローラとの両方を包含するものとみなされるべきである。
【0030】
図6に示すように、カテーテル12は、カテーテル12の近位端30近くのカテーテル制御ハンドル28からカテーテル12の遠位端52まで延在する少なくとも1本のプルワイヤ50を含む、操縦可能カテーテルであることが好ましい。プルワイヤ50を、同様にカテーテル12の遠位端52近くに位置する少なくとも1つのプルリング54に結合してもよい。プルワイヤ50は、緊張状態になると、カテーテル12の遠位端52をさまざまな形状になるように偏向させる。当業者は理解するように、プルワイヤ50を追加することにより、カテーテル12の遠位端52の偏向の多様性が向上する。たとえば、プルリング54への取付点が1つである単一プルワイヤ50により、カテーテル12の遠位端52は、単一軸上で、恐らくは一方向のみに、たとえば図6に対して上方に偏向することができる。第2プルワイヤ50を追加する(図6に示すように)ことにより、または単一プルワイヤ50を輪にしてプルリング54に2つの取付点56があるようにすることにより、カテーテル12の遠位端52を、2つの方向に、たとえば図6に対して上方および下方の両方に偏向させてもよい。4つのプルワイヤ50がプルリング54に約90°の間隔で取り付けられるカテーテル12は、4つの方向に、たとえば図6に対し上方、下方および用紙面に入る方向および出る方向に偏向することができる。
【0031】
カテーテル制御ハンドル28に1つまたは複数のカテーテル偏向アクチュエータ58を設けることにより、1本または複数本のプルワイヤ50に選択的に張力をかけるようにしてもよく、それにより、カテーテル12の遠位端52の偏向の方向および程度が制御される。実施形態によっては、1つまたは複数のノブを設けてもよく、その回転により、1本または複数本のプルワイヤ50に選択的に張力がかけられる。しかしながら、カテーテル偏向アクチュエータ58は、本発明の精神および範囲から逸脱することなく、限定されないがスライダおよびスイッチを含む他の多くの形態をとってもよいということが理解されるべきである。さらに、カテーテル制御ハンドル28自体を回転させることにより、選択的にプルワイヤ50に張力をかけカテーテル12の遠位端52を偏向させてもよい、ということも企図される。
【0032】
図1に戻ると、カテーテル制御ハンドル28がカテーテル受入部26内に受け入れられると、カテーテル12は、カテーテル保持装置16によりトラック14に対して並進し、それにより、カテーテル12を患者の体内に前進させかつ患者の体内から後退させることを可能にする第1自由度が提供される。さらに、カテーテル12は、カテーテル偏向制御機構20に動作可能に結合されており、カテーテル偏向制御機構20の作動によってカテーテル12の遠位端52が偏向し、それにより、カテーテル12に対し第2自由度が提供される。特に、カテーテル偏向アクチュエータ58をカテーテル偏向制御機構20に動作可能に結合してもよく、それによりカテーテル偏向制御機構20は、カテーテル偏向アクチュエータ58を作動させて、選択的に1本または複数本のプルワイヤ50に張力をかけ、カテーテル12の遠位端52を所望の方向に所望の量だけ偏向させることができる。
【0033】
本発明の実施形態によっては、カテーテル偏向制御機構20を回転させることにより、カテーテル偏向アクチュエータ58が回転し、それによりカテーテル12内で1本または複数本のプルワイヤ50に選択的に張力がかけられる。カテーテル偏向制御機構20とカテーテル偏向アクチュエータ58との間の伝達系は、たとえばカテーテル偏向制御機構20およびカテーテル偏向アクチュエータ58を包囲するゴム引きコーティングによって提供される、摩擦嵌合であってもよい。別法として、カテーテル偏向制御機構20およびカテーテル偏向アクチュエータ58を、嵌合ギア歯またはローレット削りによって結合してもよい。
【0034】
特に、図2〜図5に示すカテーテル保持装置16の実施形態を参照すると、カテーテル12がカテーテル受入部26に固定されると、ベルト40がカテーテル制御ハンドル28と摩擦係合する。それらはまた、カテーテル偏向アクチュエータ58と係合してもよい。したがって、プーリシステム38が偏向サーボ機構22によって駆動された場合、ベルト40は、選択的に1本または複数本のプルワイヤ50に張力をかけカテーテル12の遠位端52を偏向させるために、カテーテル制御ハンドル28またはカテーテル偏向アクチュエータ58あるいは両方を回転させることができる。
【0035】
上述したカテーテル偏向制御機構20およびカテーテル偏向アクチュエータ58の特定の構成は、単に例示的なものであり、本発明の精神および範囲から逸脱することなく変更が可能である、ということが理解されるべきである。たとえば、カテーテル偏向アクチュエータ58がノブではなくスライダである場合、カテーテル偏向制御機構20を、スライダを作動させるように好適に変更してもよく、またはさらにはモジュラユニットとして置き換えてもよい。これにより、さまざまな構成の既製医療機器とロボット手術システム10との容易な取付けおよび相互接続を可能にすることによって、ロボット手術システム10の迅速接続/分離操作が容易になる。
【0036】
上述したように、カテーテル12内に追加のプルワイヤ50を含めることにより、カテーテル12の遠位端52が偏向することができる方向の数が増加する。これを、本明細書では「偏向多様性」と呼ぶ。しかしながら、使用されるプルワイヤ50の数が比較的少ない場合(たとえば、約4本未満のプルワイヤ50)、失われる偏向多様性を、カテーテル12をその軸を中心に回転させることによって補償してもよい。たとえば、プルリング54への取付点が1つである単一プルワイヤ50のみを使用し、一方向にしか偏向することができないカテーテルでは、カテーテルを、単にその軸を中心に180°回転させることにより、反対方向に偏向させることができる。同様に、180°離れた2つの方向に偏向することができるカテーテルを、その軸を中心に90°回転させることにより、それらの間の中間の方向に偏向させることができる。
【0037】
したがって、本発明の実施形態によれば、カテーテル受入部26は回転可能である。こうした回転可能カテーテル受入部の一例は、図2〜図5に示すプーリシステム38によって画定されるカテーテル受入部26である。回転可能なカテーテル受入部26には回転サーボ機構60が回転可能に結合されており、回転可能なカテーテル受入部26を制御するように適合されている。したがって、プーリシステム38は、回転サーボ機構60によって駆動されてもよく、それにより、ベルト40と係合してカテーテル12をその軸を中心に回転させる。
【0038】
望ましい場合、回転サーボ機構60を、カテーテル保持装置16とともにトラック14に対して並進するように、キャリッジ48に取り付けるかまたはカテーテル保持装置16に取り付けてもよい。この構成により、回転サーボ機構60とカテーテル保持装置16との間に一定の距離関係がもたらされ、それによって、回転サーボ機構60をカテーテル保持装置16に結合する伝達系を簡略化することができる。
【0039】
カテーテル12は、カテーテル保持装置16に取り付けられると、カテーテル受入部26とともに回転し、それにより、カテーテル12に対して第3自由度が提供され、プルワイヤ50の数が比較的少ないことに起因する低い偏向多様性が補償される。カテーテル受入部26は、その軸を中心に少なくとも約360°回転可能であることが好ましく、それにより、そこに受け入れられたカテーテル12もまた、その軸を中心に少なくとも360°回転可能であり、それにより、カテーテル12の遠位端52の実質的に任意の方向での偏向が容易になり、カテーテル12の遠位端52の偏向多様性が大幅に向上する。カテーテル受入部26を、その軸を中心に約720°以上回転するように設計してもよい。
【0040】
カテーテル受入部26を回転させることによってカテーテル12を回転させることにより、カテーテル12の遠位端52が意図せず偏向することがある。当業者がこの開示から理解するように、カテーテル受入部26およびカテーテル12が回転する際、回転サーボ機構60によって加えられるトルクがカテーテル偏向制御機構20の慣性に打ち勝つには不十分である場合、カテーテル偏向アクチュエータ58は、カテーテル制御ハンドル28と回転するのではなく、固定されたままであることがある。すなわち、カテーテル偏向アクチュエータ58は、カテーテル偏向制御機構20に抗して動かないことがあり、カテーテル制御ハンドル28とカテーテル偏向アクチュエータ58との間に相対的な回転がもたらされる。この相対的な回転により、1本または複数本のプルワイヤ50に指示されていない張力が加わり、カテーテル12の遠位端52が不注意に偏向することがある。
【0041】
したがって、カテーテル12が回転する際に実質的に一定の偏向を維持するために、コントローラ24を、回転サーボ機構60と偏向サーボ機構22との両方に動作可能に結合してもよい。コントローラ24は、偏向サーボ機構22および回転サーボ機構60のうちの少なくとも一方を制御して、好ましくは偏向サーボ機構22および回転サーボ機構60の両方を同時に制御して、カテーテル受入部26およびカテーテル12が回転する際に遠位端52の実質的に一定の偏向を維持するよう適合されている。たとえば、コントローラ24は、回転サーボ機構60に対しカテーテル受入部26を回転させるように命令する際、同時に、偏向サーボ機構22に対し、カテーテル偏向制御機構20を反対方向に回転するよう作動させるように命令してもよく、それにより、カテーテル偏向アクチュエータ58とカテーテル制御ハンドル28との間の相対的な回転が実質的になくなり、カテーテル12の実質的に一定の偏向を維持するのに役立つ。別法として、コントローラ24は、回転サーボ機構60に対してカテーテル受入部26を回転させるように命令する際、同時に、偏向サーボ機構22に対し、カテーテル偏向制御機構20をカテーテル偏向アクチュエータ58から切り離すように命令してもよく、それによりカテーテル偏向アクチュエータ58はカテーテル制御ハンドル28とともに自由に回転することができる。いずれの場合も、コントローラ24を、偏向サーボ機構22と回転サーボ機構60とを差動装置等の機械的伝動システムを通して結合する必要をなくすように構成することができる。さらに、本明細書では並進サーボ機構18、偏向サーボ機構22および回転サーボ機構60を制御するように適合された単一コントローラとして説明しているが、本発明の精神および範囲から逸脱することなく、複数のコントローラを使用してもよい。
【0042】
イントロデューサ62、好ましくは操縦可能イントロデューサ、最も好ましくはアジリス(Agilis)(商標)操縦可能イントロデューサを、ロボット手術システム10の一部として提供してもよい。イントロデューサ62の近位端64は固定されていることが好ましく、一方、イントロデューサ62の遠位端66は、患者(明確にするために図示せず)内の標的部位(本明細書において「標的」という用語は、治療または診断が行われる場所を指す)に近接する位置まで延在する。イントロデューサ62は、イントロデューサ62の遠位端66を少なくとも1自由度で制御するように適合された少なくとも1つのサーボ機構70を含むロボット制御システム68を介して、操縦可能であってもよい。好ましくは、ロボット制御システム68は、ロボット手術システム10に対して合計6自由度をもたらす、3自由度(並進、偏向および回転)でイントロデューサ62の遠位端66を制御するように適合された3つのサーボ機構70と、サーボ機構70を制御するように適合された少なくとも1つのコントローラ72とを有している。本明細書においてロボット手術システム10および医療機器12に関して説明したものと同様の制御原理を、操縦可能イントロデューサ62に適用してもよい。
【0043】
患者の体外でカテーテル12の周囲に実質的無菌野を形成するために、伸張可能かつ折畳み可能な管状シャフト74が、カテーテル12のカテーテル保持装置16とイントロデューサ62の近位端64との間の領域等、カテーテル12の少なくとも一部を実質的に包囲する。好ましくは、シャフト74は、ロボット手術システム10の他の関連部品とともに使用前に殺菌される。カテーテル保持装置16がカテーテル12を患者内に(すなわち図1の右側に)前進させるように並進すると、管状シャフト74は折り畳まれる。反対に、カテーテル保持装置16がカテーテル12を患者から(すなわち図1の左側に)後退させるように並進すると、管状シャフト74は伸張する。管状シャフト74は、複数の入れ子式の管状要素76から組み立てられていることが好ましい。しかしながら、管状シャフト74は、別法として、アコーディオンプリーツ状構造または他の伸張可能かつ折畳み可能構造であってもよい、ということが企図される。
【0044】
ロボット手術システム10を採用して、並進サーボ機構18、偏向サーボ機構22および回転サーボ機構60(存在する場合)のうちの1つまたは複数を、コントローラ24を介して作動させることにより、カテーテル12を、患者内にかつ患者を通して患者の体内の1つまたは複数の部位までロボットによって進めることができる。ロボット手術システム10は、コントローラ24によって実行されるコンピュータプログラムに従って自動的に動作してもよい。また、外科医、心臓専門医または他の医師であり得る使用者が、3次元ジョイスティック(たとえば3入力軸を有するジョイスティック)、ステアリングヨークまたは使用者がカテーテル12をロボットによって操縦するのを可能にする別の好適な入力デバイス、もしくはこうしたデバイスの集まり等、適当な制御装置のセットによってロボット手術システム10を制御してもよい、ということも企図される。
【0045】
当業者は、サーボ機構18、22、60における移動ベクトル入力とカテーテル12の移動との関係を知っていることが望ましいことを理解するであろう。この関係を確立する方法およびシステムについて、図7および図8を参照して説明する。
【0046】
図7は、コントローラ24による命令に従いロボット手術システム10を介してロボット制御されるカテーテル12を含む手術システム80を概略的に示す。ロボット手術システム10への入力を、コンピュータシステム92を介して提供してもよい。
【0047】
例示の目的で、カテーテル12は、患者の心臓82の腔52内に挿入されているように示されている。カテーテル12は、位置フィードバックシステム86を用いてカテーテル12の位置を特定するために1つまたは複数のセンサまたは電極84、88を搭載している。好ましくは、位置フィードバックシステム86は、セント・ジュード・メディカル・インコーポレーテッド(St.Jude Medical,Inc.)のエンサイト(Ensite)NavX(商標)システムであり、それは、カテーテル12の位置を測定するために用いることができる測定軸を画定する対の電極90を有している。例示の目的で、1対の電極90のみを示す。たとえばバイオセンス・ウェブスター・インコーポレイテッド(Biosense Webster,Inc.)製のカルト(CARTO)ナビゲーションシステムを含む他の位置確認システムを採用してもよい、ということが理解される。
【0048】
コントローラ24が、サーボ機構18、22、60のうちの1つまたは複数等のアクチュエータを起動してカテーテル12に対し作動軸における振動ベクトルを与えることにより、カテーテル12を機械的に作動させるよう命令してもよい。カテーテル12が振動している間、位置フィードバックシステム86は、カテーテル12の位置を周期的に測定し、それにより、時間の関数として測定される複数の位置データ点を作成する。上述したように、複数の位置データ点を1つまたは複数の測定軸に対して測定することにより、1つまたは複数の軸の各々に対して複数の位置データ点を作成してもよい。
【0049】
コンピュータシステム92は、フーリエ変換アルゴリズム等の信号処理アルゴリズムに従って複数の位置データ点を処理して、カテーテル12の位置を作動軸に対する移動ベクトル(たとえば、サーボ機構18、22または60等のサーボ機構への入力)に関連付ける伝達関数を生成する、プロセッサをさらに含む。信号処理アルゴリズムを、1つまたは複数の測定軸の各々に対する複数の位置データ点に別個にかつ独立して適用してもよい。伝達関数は、1つまたは複数の測定軸の各々に沿って方向づけられる少なくとも1つの成分を含む較正ベクトルを含んでいてもよい。
【0050】
図8のフローチャートに、カテーテル12をその作動軸上で較正する方法を示す。ステップ110において、カテーテル12に対し第1振動周波数で第1振動ベクトルを与える。第1振動ベクトルは、第1作動軸、たとえば並進軸においてカテーテル12を機械的に作動させ、カテーテル12に振動をもたらす。好ましくは、第1振動ベクトルは、結果としての実際のカテーテル12の振動が第1作動軸に制限されるように、カテーテル12を第1作動軸のみで作動させる。したがって、第1振動ベクトルを与えるためには、サーボ機構18、22、60のうちの1つまたは複数への入力が必要であり得る。たとえば、上述したように、回転軸においてのみカテーテル12を作動させるには、偏向サーボ機構22と回転サーボ機構60との両方に対する入力が必要であり得る。
【0051】
当業者が理解するように、さまざまな誤差源が他の作動軸における見かけの振動をもたらす可能性がある(すなわち、誤差源により、カテーテル12が、第1作動軸において作動された時に残りの作動軸のうちの1つまたは複数の上でも移動しているように見える場合がある)。本明細書で述べているように、本発明の1つの目的は、第1作動軸におけるカテーテル12の実際の機械的振動を、これらの誤差源に起因するカテーテル12の見かけの振動から隔離することである。
【0052】
第1振動ベクトルは、小さい動きベクトルであることが好ましく、その結果、第1作動軸における予測される振動は約1mm〜約10mmの間になり、より好ましくは約2mm〜約3mmの間になる。より大きい距離が企図されるが、アクチュエータを正確に特性評価することができるためには短い間隔で十分な場合が多い。第1振動周波数は、好ましくは約1Hz〜約10Hzの間であり、より好ましくは約3Hz〜約5Hzの間である。
【0053】
ステップ120において、カテーテル12(またはその上の点)の位置を周期的に測定する。測定される位置は、カテーテル12の先端(たとえば電極84)の位置であってもよい。これにより、時間の関数として測定される第1の複数の位置データ点が生成される。本発明の実施形態によっては、複数の測定軸に対してカテーテル12の位置が測定され、その複数の測定軸は、作動軸とは異なっていてもよい。たとえば、カテーテル12の位置を、上述した‘377特許および‘126特許に開示されているナビゲーションシステムのx軸、y軸およびz軸に対して、または図7に示すパッチ電極90によって画定される軸に対して測定してもよい。このように、ステップ120により、測定軸の各々に対し時間の関数として複数の位置データ点(たとえば、複数の(x、y、z)座標点、または別法として測定軸の各々に対する別個の複数の位置データ点)が生成される。
【0054】
測定ステップ120は、約0.5秒〜約10秒の間、好ましくは約3秒の周期(本明細書では「サンプリング間隔」と呼ぶ)で発生し、振動ステップ110と同時に発生する(すなわち、カテーテル12が第1作動軸上で振動している間に、カテーテル12の位置が周期的に測定される)。第1の複数の位置データ点を、任意に、コンピュータシステム92の一部であってもよいバッファまたは他のメモリに格納してもよい。カテーテル12の位置が複数の測定軸に対して測定される場合、測定軸の各々に対する複数の位置データ点(たとえば、x軸に対する第1の複数の位置データ点、y軸に対する第1の複数の位置データ点およびz軸に対する第1の複数の位置データ点)を別個に格納してもよい。測定軸の各々に対する複数の位置データ点を、たとえば第1の複数の(x、y、z)座標としてまとめて格納してもよい、ということも企図される。
【0055】
サンプリング間隔中、第1の複数の位置データ点が第1サンプリングレートで測定され、第1サンプリングレートは、第1振動周波数の少なくとも2倍である、第1振動周波数の倍数であることが好ましく、より好ましくは、第1振動周波数の約5倍〜約20倍の間であることが好ましい。最も好ましくは、第1サンプリングレートは、約60Hz〜約200Hzの間であり、約100Hzであることが特に好ましい。第1サンプリングレートを第1振動周波数の倍数として設定することにより、サンプリング間隔中に整数の振動が確実に獲得される。
【0056】
当業者がこの開示から理解するように、かつ簡単に上述したように、ステップ120で生成される第1の複数の位置データ点は、カテーテル12の機械的作動と任意の誤差源とをともに反映する。これらの誤差源には、限定されないが、カテーテルの記憶(memory)、患者の動き、心臓の動き(たとえば心拍)、呼吸、摩擦および電子ノイズがある。後続するステップにおいて、ステップ110において第1振動ベクトルを与えたことに起因するカテーテル12の実際の変位が隔離され、それにより、第1振動ベクトルに起因するカテーテル12の機械的作動が、1つまたは複数の誤差源に起因する見かけの振動から識別される。
【0057】
したがって、ステップ130において、第1の複数の位置データ点を、信号処理アルゴリズムを用いて処理する。信号処理アルゴリズムはフーリエ変換アルゴリズムであることが好ましいが、本発明の精神および範囲から逸脱することなく他の信号処理アルゴリズムを採用してもよい。他の好適な信号処理アルゴリズムには、限定されないが同期復調(synchronous demodulation)または相互相関があり、機械的強制関数(たとえば振動ベクトル)の複製である波形に、各ナビゲーション(たとえば測定)軸から得られる測定されたナビゲーション信号(たとえば複数の位置データ点)を乗ずる。これにより、有利に、各ナビゲーション軸における相対的な変位を、機械的強制関数に関連しない動きおよびノイズから抽出することができる(すなわち、第1振動ベクトルに起因するカテーテル12の機械的作動を、1つまたは複数の誤差源または他の影響に起因する見かけの振動から隔離することができる)。
【0058】
複数の測定軸に対しカテーテル12の位置を測定し、その結果、測定軸の各々に対し複数の位置データ点が生成されると、処理ステップ130は、フーリエ変換アルゴリズム等の信号処理アルゴリズムを用いて、測定軸の各々に対し複数の位置データ点を別個に処理することを含んでもよいが、本発明の精神および範囲から逸脱することなく、測定軸の各々に対する複数の位置データ点をまとめて処理する(たとえば、複数の(x、y、z)座標点に信号処理アルゴリズムを適用する)ことも可能である。
【0059】
上述したように、サンプリング間隔は、第1作動軸におけるカテーテル12の整数の振動を獲得する。強制関数周波数とサンプリング間隔との整数関係を実施することにより、ステップ140において、フーリエパワースペクトルアルゴリズムによって、概して、2つ以上の周波数ビンにわたって広がるピークとは対照的に、第1振動周波数での単一ピークがもたらされる。そして、ステップ150において、強制関数に対応する周波数ビンからの値を単にスケーリングすることにより、寸法関連信号を回復することができる。この信号処理により、第1振動ベクトルを与えることに起因するカテーテル12の移動が有効に隔離され、この処理を、判断ブロック160に示すように、測定軸の各々に対して独立して繰り返してもよい。しかしながら、第1の複数の位置データ点を、測定軸成分に分解することなく処理してもよい、ということも企図される。
【0060】
ステップ170において、カテーテル12の位置を第1作動軸の移動ベクトルに関連付ける伝達関数を、信号処理中に回復された1つまたは複数の寸法信号から生成する。伝達関数は、所望のまたは予測されたカテーテル12の移動とそれに対する移動ベクトルコマンド入力(たとえば、サーボ機構18、22および60のうちの1つまたは複数に対する入力)との間の相関を確立することにより、第1作動軸においてカテーテル12を較正し、それにより、作動コマンドの正確な実行が確実になり、少なくとも第1作動軸に沿ったカテーテル12の精密な制御が可能になる。
【0061】
ステップ180において、ステップ170で生成された伝達関数を、第1作動軸に対する較正ベクトルに分解してもよい。較正ベクトルは、測定軸の各々に対して少なくとも1つの値を含んでいてもよく、言い換えれば、較正ベクトルは、与えられる振動ベクトルとカテーテル12の実際の測定された応答とのベクトル差を表す、測定軸の各々に沿って向けられた少なくとも1つの成分を含んでいてもよい。これらのベクトル成分のうちの1つまたは複数は、カテーテル12が、第1作動軸における特定の測定軸に対して予測されるように位置合せされる場合、ゼロ成分であり得る、ということが理解されるべきである。上述したように、較正ベクトルは、カテーテル12の所望のまたは予測された移動をカテーテル12の実際の移動に関連付け、それにより、カテーテル12に提供される入力(たとえば、並進サーボ機構18に送出される並進コマンド)とそれらの実際の出力(たとえばカテーテル12の遠位端52の並進)との間の関係を定義する。
【0062】
ステップ190に示すように、詳細に上述したプロセスを、任意の残りの作動軸(たとえば回転軸や偏向軸)に対して繰り返してもよい。たとえば、カテーテル12を、それぞれ第2振動周波数で第2振動ベクトルを与え第3振動周波数で第3振動ベクトルを与えることにより、第2作動軸および第3作動軸を中心に機械的に振動させてもよい。カテーテル12の位置を、それぞれ第2および第3の複数の位置データ点を生成するために周期的に測定してもよく、それらの位置データ点を、後に、カテーテル12の位置を第2作動軸および第3作動軸に対する移動ベクトルに関連付ける伝達関数を生成するために、信号処理アルゴリズムを用いて処理してもよい。これらの伝達関数を、第2作動軸および第3作動軸に対する較正ベクトルに分解しかつそうした較正ベクトルとして表してもよい。
【0063】
当業者は、この開示から、第2作動軸および第3作動軸に対するプロセスの詳細が、第1作動軸に関して説明した詳細に概して従うことを理解するはずである。たとえば、第2および第3の複数の位置データ点を、それぞれの第2サンプリングレートおよび第3サンプリングレートで測定してもよく、それらのサンプリングレートは、それぞれ、第2振動周波数および第3振動周波数の倍数であることが好ましい。同様に、第2および第3の複数の位置データ点のいずれかまたは両方をバッファまたは他のメモリに格納してもよい。第1振動周波数、第2振動周波数および第3振動周波数は等しくてもよく、第1サンプリングレート、第2サンプリングレートおよび第3サンプリングレートは等しくてもよい、ということも企図される。当業者は、さらに、この開示から、作動軸の各々に対し伝達関数および/または較正ベクトルを有益に隔離するように、作動軸の各々に対しプロセスを独立して実行することを理解するはずである。望ましい場合、その後、ステップ200において、これらのいくつかの伝達関数および/または較正ベクトルを較正行列にすることができ、たとえば治療を送達するかまたは診断処置を行うためにカテーテル12を患者内にナビゲートする際に、その較正行列を利用してもよい。
【0064】
ここで、本発明の実際的な例を、図9a〜図9cを参照して説明する。カテーテル12を、並進、回転、偏向等であってもよい作動軸を中心に、約1.5Hzの周波数で約4秒間、機械的に振動させ、カテーテル12の位置を、デカルト座標系において時間の関数として測定する。図9a〜図9cの左側のグラフは、x軸、y軸およびz軸それぞれで測定された生の動きデータ(たとえば、複数の位置データ点)を示す。図9a〜図9cの右側のグラフは、フーリエ変換アルゴリズムを用いた信号処理後の位置データを示す。フーリエ変換グラフに示すように、1.5Hz周波数ビンは、x方向に0.6mm、y方向に0.2mm、z方向に2.0mmの振幅を有している。1mm単位ベクトルにスケーリングすることにより、図示する作動軸に対して0.29i+0.10j+0.95kの較正ベクトルがもたらされる。
【0065】
本発明の実施形態を、ある程度の特定性をもって上述したが、当業者は、本発明の精神および範囲から逸脱することなく、開示した実施形態に対し多数の変更を行うことができる。たとえば、本発明を、ロボット制御カテーテルの背景で説明したが、本明細書で開示した較正方法を、位置フィードバックシステムを組み込んだ他の任意のロボット制御医療機器または非医療機器の背景において実施することができる。さらに、(x、y、z)座標系以外の座標系において位置を測定する位置フィードバックシステム(たとえば、パラメータ座標または変位ベクトルを用いて動作する位置フィードバックシステム)を含む、本明細書で説明したもの以外の位置確認システムを採用して、ロボット装置の位置を周期的に測定することができる。
【0066】
方向についてのすべての言及(たとえば、上、下、上方、下方、左、右、左方、右方、頂部、底部、上部、下部、垂直、水平、右回りおよび左回り)は、単に読者が本発明を理解するのを助ける識別目的のためにのみ使用するものであり、特に本発明の位置、向きまたは使用に関して限定をもたらすものではない。接合についての言及(たとえば、取り付けられた、結合された、接続された等)は、広く解釈されるべきであり、要素の接続の間に中間部材および要素間の相対移動を含んでもよい。このように、接合についての言及は、必ずしも、2つの要素が直接接続されかつ互いに固定関係にあることを意味するものではない。
【0067】
上記説明に含まれるかまたは添付図面に示したすべての事項は、限定するものではなく単に例示するものであると解釈されるべきであることが意図されている。添付の特許請求の範囲で定義されるような本発明の精神から逸脱することなく、詳細または構造に対する変更を行ってもよい。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの作動軸に対する移動が可能なロボット装置を較正する方法であって、
第1振動周波数で第1振動ベクトルを与えることにより、第1作動軸において前記ロボット装置を振動させるステップと、
前記第1作動軸において前記ロボット装置を振動させている間に、前記ロボット装置の位置を周期的に測定するステップであって、それにより時間の関数として測定される第1の複数の位置データ点を生成するステップと、
フーリエ変換アルゴリズムを用いて前記第1の複数の位置データ点を処理するステップであって、それにより前記第1振動ベクトルを与えることに起因する前記ロボット装置の変位を隔離するステップと、
前記処理するステップの出力を、前記第1作動軸に対する較正ベクトルに分解するステップと
を含む方法。
【請求項2】
前記測定するステップが、前記ロボット装置を振動させている間に、複数の測定軸に対して前記ロボット装置の位置を周期的に測定し、それにより前記測定軸の各々に対して第1の複数の位置データ点を生成することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記処理するステップが、フーリエ変換アルゴリズムを用いて前記測定軸の各々に対し前記第1の複数の位置データ点を処理することを含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記分解するステップが、前記第1作動軸に対する較正ベクトルを計算することを含み、前記較正ベクトルが前記測定軸の各々に対し少なくとも1つの値を含む、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
第2振動周波数で第2振動ベクトルを与えることにより、第2作動軸において前記ロボット装置を振動させるステップと、
前記第2作動軸において前記ロボット装置を振動させている間に、前記ロボット装置の位置を周期的に測定するステップであって、それにより時間の関数として測定される第2の複数の位置データ点を生成するステップと、
フーリエ変換アルゴリズムを用いて前記第2の複数の位置データ点を処理するステップであって、それにより前記第2振動ベクトルを与えることに起因する前記ロボット装置の変位を隔離するステップと、
前記処理するステップの出力を、前記第2作動軸に対する較正ベクトルに分解するステップと
をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記第2の複数の位置データ点を格納するステップをさらに含む、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
第3振動周波数で第3振動ベクトルを与えることにより、第3作動軸において前記ロボット装置を振動させるステップと、
前記第3作動軸において前記ロボット装置を振動させている間に、前記ロボット装置の位置を周期的に測定するステップであって、それにより時間の関数として測定される第3の複数の位置データ点を生成するステップと、
フーリエ変換アルゴリズムを用いて前記第3の複数の位置データ点を処理するステップであって、それにより前記第3振動ベクトルを与えることに起因する前記ロボット装置の変位を隔離するステップと、
前記処理するステップの出力を、前記第3作動軸に対する較正ベクトルに分解するステップと
をさらに含む、請求項5に記載の方法。
【請求項8】
前記第3の複数の位置データ点を格納するステップをさらに含む、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記測定するステップの各々が、約0.5秒〜約10秒の間のサンプリング間隔で実行される、請求項7に記載の方法。
【請求項10】
前記第1振動周波数、前記第2振動周波数および前記第3振動周波数が等しい、請求項7に記載の方法。
【請求項11】
前記第1の複数の位置データ点、前記第2の複数の位置データ点および前記第3の複数の位置データ点が、それぞれ第1サンプリングレート、第2サンプリングレートおよび第3サンプリングレートで測定される、請求項7に記載の方法。
【請求項12】
前記第1サンプリングレート、前記第2サンプリングレートおよび前記第3サンプリングレートが等しい、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記第1サンプリングレートが前記第1振動周波数の倍数であり、前記第2サンプリングレートが前記第2振動周波数の倍数であり、前記第3サンプリングレートが前記第3振動周波数の倍数である、請求項11に記載の方法。
【請求項14】
前記第1作動軸、前記第2作動軸および前記第3作動軸が、並進軸、回転軸および偏向軸を含む、請求項7に記載の方法。
【請求項15】
前記第1の複数の位置データ点を格納するステップをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
前記第1の複数の位置データ点が第1サンプリングレートで測定され、前記第1サンプリングレートが前記第1振動周波数の倍数である、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
前記第1サンプリングレートが、前記第1振動周波数の少なくとも約2倍である、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記第1サンプリングレートが、前記第1振動周波数の約5倍〜約20倍の間である、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記第1サンプリングレートが、約60Hz〜約200Hzの間である、請求項16に記載の方法。
【請求項20】
少なくとも1つの作動軸に対する移動が可能なロボット制御カテーテルを較正する方法であって、
第1振動周波数で第1振動ベクトルを与えることにより、第1作動軸において前記カテーテルを機械的に作動させるステップと、
前記カテーテルの位置を周期的に測定するステップであって、それにより時間の関数として測定される第1の複数の位置データ点を生成するステップと、
フーリエ変換アルゴリズムを用いて前記第1の複数の位置データ点を処理するステップであって、それにより患者の動き、心臓の動き、呼吸および電子ノイズのうちの少なくとも1つから前記カテーテルの機械的作動を識別するステップと、
前記処理するステップの出力を、前記第1作動軸に対する較正ベクトルに分解するステップと
を含む方法。
【請求項21】
前記測定するステップが、前記カテーテルを機械的に作動させている間に、複数の測定軸に対する前記カテーテルの位置を周期的に測定し、それにより前記測定軸の各々に対し第1の複数の位置データ点を生成することを含む、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記処理するステップが、フーリエ変換アルゴリズムを用いて、前記測定軸の各々に対し前記第1の複数の位置データ点を処理することを含む、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記分解するステップが、前記第1作動軸に対する較正ベクトルを計算することを含み、前記較正ベクトルが前記測定軸の各々に対し少なくとも1つの値を含む、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
第2振動周波数で第2振動ベクトルを与えることにより、第2作動軸において前記カテーテルを機械的に作動させるステップと、
前記第2作動軸において前記カテーテルを機械的に作動させている間に、前記カテーテルの位置を周期的に測定するステップであって、それにより時間の関数として測定される第2の複数の位置データ点を生成するステップと、
フーリエ変換アルゴリズムを用いて前記第2の複数の位置データ点を処理するステップであって、それにより患者の動き、心臓の動き、呼吸および電子ノイズのうちの少なくとも1つから前記カテーテルの機械的作動を識別するステップと、
前記処理するステップの出力を、前記第2作動軸に対する較正ベクトルに分解するステップと、
第3振動周波数で第3振動ベクトルを与えることにより、第3作動軸において前記カテーテルを機械的に作動させるステップと、
前記第3作動軸において前記カテーテルを機械的に作動させている間に、前記カテーテルの位置を周期的に測定するステップであって、それにより時間の関数として測定される第3の複数の位置データ点を生成するステップと、
フーリエ変換アルゴリズムを用いて前記第3の複数の位置データ点を処理するステップであって、それにより患者の動き、心臓の動き、呼吸および電子ノイズのうちの少なくとも1つから前記カテーテルの機械的作動を識別するステップと、
前記処理するステップの出力を、前記第3作動軸に対する較正ベクトルに分解するステップと
を含む、請求項20に記載の方法。
【請求項25】
前記測定するステップが、前記カテーテルの先端の位置を周期的に測定することを含む、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記第1作動軸、前記第2作動軸および前記第3作動軸が、並進軸、回転軸および偏向軸を含む、請求項24に記載の方法。
【請求項27】
前記第1振動周波数が約1Hz〜約10Hzの間である、請求項20に記載の方法。
【請求項28】
前記第1振動周波数が約3Hz〜約5Hzの間である、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
ロボット制御カテーテルを較正する方法であって、
或る振動周波数で振動ベクトルを与えることにより、作動軸において前記カテーテルを振動させるステップと、
前記カテーテルの或る点の位置を周期的に測定するステップであって、それにより時間の関数として測定される複数の位置データ点を生成するステップと、
前記複数の位置データ点に対し信号処理アルゴリズムを適用するステップであって、それにより前記振動ベクトルを与えることに起因する前記カテーテルの変位を隔離するステップと、
前記信号処理アルゴリズムの出力を、前記作動軸に対する較正ベクトルに分解するステップと
を含む方法。
【請求項30】
前記複数の位置データ点に信号処理アルゴリズムを適用するステップが、前記複数の位置データ点にフーリエ変換アルゴリズムを適用することを含む、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
前記測定するステップが、1つまたは複数の測定軸に対する前記カテーテルの或る点の位置を周期的に測定し、それにより前記1つまたは複数の測定軸の各々に対する複数の位置データ点を生成することを含む、請求項29に記載の方法。
【請求項32】
前記分解するステップが、前記作動軸に対する較正ベクトルを計算することを含み、前記較正ベクトルが、前記1つまたは複数の測定軸の各々に沿って向けられた少なくとも1つの成分を含む、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
前記複数の位置データ点が或るサンプリングレートで測定され、前記サンプリングレートが前記振動周波数の倍数である、請求項29に記載の方法。
【請求項34】
前記サンプリングレートが、前記振動周波数の約5倍〜約20倍の間である、請求項29に記載の方法。
【請求項35】
前記作動軸が、回転軸、並進軸および偏向軸からなる群から選択される、請求項29に記載の方法。
【請求項36】
ロボット制御医療機器であって、
医療処置を行うように構成されたエンドエフェクタと、
前記エンドエフェクタを移動させるアクチュエータと、
前記エンドエフェクタに対し作動軸における振動ベクトルを与えるように前記アクチュエータを起動することにより、前記エンドエフェクタを機械的に作動させるコントローラと、
前記エンドエフェクタの位置を周期的に測定し、それにより時間の関数として測定される複数の位置データ点を生成する位置フィードバックシステムと、
フーリエ変換アルゴリズムに従って前記複数の位置データ点を処理することにより、前記エンドエフェクタの位置を前記作動軸に対する移動ベクトルに関連付ける伝達関数を生成するプロセッサと
を備える医療機器。
【請求項37】
前記エンドエフェクタが心臓カテーテルを含む、請求項36に記載の医療機器。
【請求項38】
前記位置フィードバックシステムが、1つまたは複数の測定軸に対して前記エンドエフェクタの位置を周期的に測定し、それにより前記1つまたは複数の測定軸の各々に対し複数の位置データ点を生成する、請求項36に記載の医療機器。
【請求項39】
前記プロセッサが、フーリエ変換アルゴリズムに従って、前記1つまたは複数の測定軸の各々に対して前記複数の位置データ点を処理する、請求項38に記載の医療機器。
【請求項40】
前記伝達関数が、前記1つまたは複数の測定軸に沿って向けられた少なくとも1つの成分を含む較正ベクトルを含む、請求項38に記載の医療機器。
【請求項41】
少なくとも1つの作動軸に対する移動が可能なロボット制御カテーテルを較正する方法であって、
第1振動周波数で第1振動ベクトルを与えることにより、第1作動軸において前記カテーテルを機械的に作動させるステップと、
前記カテーテルの位置を周期的に測定することにより、時間の関数として測定される第1の複数の位置データ点を生成するステップと、
フーリエ変換アルゴリズムを用いて前記第1の複数の位置データ点を処理することにより、前記ロボット制御カテーテルの位置を前記第1作動軸に対する移動ベクトルに関連付ける伝達関数を生成するステップと
を含む方法。
【請求項42】
第2振動周波数で第2振動ベクトルを与えることにより、第2作動軸において前記カテーテルを機械的に作動させるステップと、
前記カテーテルの位置を周期的に測定することにより、時間の関数として測定される第2の複数の位置データ点を生成するステップと、
フーリエ変換アルゴリズムを用いて前記第2の複数の位置データ点を処理することにより、前記ロボット制御カテーテルの位置を前記第2作動軸に対する移動ベクトルに関連付ける伝達関数を生成するステップと、
第3振動周波数で第3振動ベクトルを与えることにより、第3作動軸において前記カテーテルを作動させるステップと、
前記カテーテルの位置を周期的に測定することにより、時間の関数として測定される第3の複数の位置データ点を生成するステップと、
フーリエ変換アルゴリズムを用いて前記第3の複数の位置データ点を処理することにより、前記ロボット制御カテーテルの位置を前記第3作動軸に対する移動ベクトルに関連付ける伝達関数を生成するステップと
をさらに含む、請求項41に記載の方法。
【請求項1】
少なくとも1つの作動軸に対する移動が可能なロボット装置を較正する方法であって、
第1振動周波数で第1振動ベクトルを与えることにより、第1作動軸において前記ロボット装置を振動させるステップと、
前記第1作動軸において前記ロボット装置を振動させている間に、前記ロボット装置の位置を周期的に測定するステップであって、それにより時間の関数として測定される第1の複数の位置データ点を生成するステップと、
フーリエ変換アルゴリズムを用いて前記第1の複数の位置データ点を処理するステップであって、それにより前記第1振動ベクトルを与えることに起因する前記ロボット装置の変位を隔離するステップと、
前記処理するステップの出力を、前記第1作動軸に対する較正ベクトルに分解するステップと
を含む方法。
【請求項2】
前記測定するステップが、前記ロボット装置を振動させている間に、複数の測定軸に対して前記ロボット装置の位置を周期的に測定し、それにより前記測定軸の各々に対して第1の複数の位置データ点を生成することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記処理するステップが、フーリエ変換アルゴリズムを用いて前記測定軸の各々に対し前記第1の複数の位置データ点を処理することを含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記分解するステップが、前記第1作動軸に対する較正ベクトルを計算することを含み、前記較正ベクトルが前記測定軸の各々に対し少なくとも1つの値を含む、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
第2振動周波数で第2振動ベクトルを与えることにより、第2作動軸において前記ロボット装置を振動させるステップと、
前記第2作動軸において前記ロボット装置を振動させている間に、前記ロボット装置の位置を周期的に測定するステップであって、それにより時間の関数として測定される第2の複数の位置データ点を生成するステップと、
フーリエ変換アルゴリズムを用いて前記第2の複数の位置データ点を処理するステップであって、それにより前記第2振動ベクトルを与えることに起因する前記ロボット装置の変位を隔離するステップと、
前記処理するステップの出力を、前記第2作動軸に対する較正ベクトルに分解するステップと
をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記第2の複数の位置データ点を格納するステップをさらに含む、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
第3振動周波数で第3振動ベクトルを与えることにより、第3作動軸において前記ロボット装置を振動させるステップと、
前記第3作動軸において前記ロボット装置を振動させている間に、前記ロボット装置の位置を周期的に測定するステップであって、それにより時間の関数として測定される第3の複数の位置データ点を生成するステップと、
フーリエ変換アルゴリズムを用いて前記第3の複数の位置データ点を処理するステップであって、それにより前記第3振動ベクトルを与えることに起因する前記ロボット装置の変位を隔離するステップと、
前記処理するステップの出力を、前記第3作動軸に対する較正ベクトルに分解するステップと
をさらに含む、請求項5に記載の方法。
【請求項8】
前記第3の複数の位置データ点を格納するステップをさらに含む、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記測定するステップの各々が、約0.5秒〜約10秒の間のサンプリング間隔で実行される、請求項7に記載の方法。
【請求項10】
前記第1振動周波数、前記第2振動周波数および前記第3振動周波数が等しい、請求項7に記載の方法。
【請求項11】
前記第1の複数の位置データ点、前記第2の複数の位置データ点および前記第3の複数の位置データ点が、それぞれ第1サンプリングレート、第2サンプリングレートおよび第3サンプリングレートで測定される、請求項7に記載の方法。
【請求項12】
前記第1サンプリングレート、前記第2サンプリングレートおよび前記第3サンプリングレートが等しい、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記第1サンプリングレートが前記第1振動周波数の倍数であり、前記第2サンプリングレートが前記第2振動周波数の倍数であり、前記第3サンプリングレートが前記第3振動周波数の倍数である、請求項11に記載の方法。
【請求項14】
前記第1作動軸、前記第2作動軸および前記第3作動軸が、並進軸、回転軸および偏向軸を含む、請求項7に記載の方法。
【請求項15】
前記第1の複数の位置データ点を格納するステップをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
前記第1の複数の位置データ点が第1サンプリングレートで測定され、前記第1サンプリングレートが前記第1振動周波数の倍数である、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
前記第1サンプリングレートが、前記第1振動周波数の少なくとも約2倍である、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記第1サンプリングレートが、前記第1振動周波数の約5倍〜約20倍の間である、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記第1サンプリングレートが、約60Hz〜約200Hzの間である、請求項16に記載の方法。
【請求項20】
少なくとも1つの作動軸に対する移動が可能なロボット制御カテーテルを較正する方法であって、
第1振動周波数で第1振動ベクトルを与えることにより、第1作動軸において前記カテーテルを機械的に作動させるステップと、
前記カテーテルの位置を周期的に測定するステップであって、それにより時間の関数として測定される第1の複数の位置データ点を生成するステップと、
フーリエ変換アルゴリズムを用いて前記第1の複数の位置データ点を処理するステップであって、それにより患者の動き、心臓の動き、呼吸および電子ノイズのうちの少なくとも1つから前記カテーテルの機械的作動を識別するステップと、
前記処理するステップの出力を、前記第1作動軸に対する較正ベクトルに分解するステップと
を含む方法。
【請求項21】
前記測定するステップが、前記カテーテルを機械的に作動させている間に、複数の測定軸に対する前記カテーテルの位置を周期的に測定し、それにより前記測定軸の各々に対し第1の複数の位置データ点を生成することを含む、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記処理するステップが、フーリエ変換アルゴリズムを用いて、前記測定軸の各々に対し前記第1の複数の位置データ点を処理することを含む、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記分解するステップが、前記第1作動軸に対する較正ベクトルを計算することを含み、前記較正ベクトルが前記測定軸の各々に対し少なくとも1つの値を含む、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
第2振動周波数で第2振動ベクトルを与えることにより、第2作動軸において前記カテーテルを機械的に作動させるステップと、
前記第2作動軸において前記カテーテルを機械的に作動させている間に、前記カテーテルの位置を周期的に測定するステップであって、それにより時間の関数として測定される第2の複数の位置データ点を生成するステップと、
フーリエ変換アルゴリズムを用いて前記第2の複数の位置データ点を処理するステップであって、それにより患者の動き、心臓の動き、呼吸および電子ノイズのうちの少なくとも1つから前記カテーテルの機械的作動を識別するステップと、
前記処理するステップの出力を、前記第2作動軸に対する較正ベクトルに分解するステップと、
第3振動周波数で第3振動ベクトルを与えることにより、第3作動軸において前記カテーテルを機械的に作動させるステップと、
前記第3作動軸において前記カテーテルを機械的に作動させている間に、前記カテーテルの位置を周期的に測定するステップであって、それにより時間の関数として測定される第3の複数の位置データ点を生成するステップと、
フーリエ変換アルゴリズムを用いて前記第3の複数の位置データ点を処理するステップであって、それにより患者の動き、心臓の動き、呼吸および電子ノイズのうちの少なくとも1つから前記カテーテルの機械的作動を識別するステップと、
前記処理するステップの出力を、前記第3作動軸に対する較正ベクトルに分解するステップと
を含む、請求項20に記載の方法。
【請求項25】
前記測定するステップが、前記カテーテルの先端の位置を周期的に測定することを含む、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記第1作動軸、前記第2作動軸および前記第3作動軸が、並進軸、回転軸および偏向軸を含む、請求項24に記載の方法。
【請求項27】
前記第1振動周波数が約1Hz〜約10Hzの間である、請求項20に記載の方法。
【請求項28】
前記第1振動周波数が約3Hz〜約5Hzの間である、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
ロボット制御カテーテルを較正する方法であって、
或る振動周波数で振動ベクトルを与えることにより、作動軸において前記カテーテルを振動させるステップと、
前記カテーテルの或る点の位置を周期的に測定するステップであって、それにより時間の関数として測定される複数の位置データ点を生成するステップと、
前記複数の位置データ点に対し信号処理アルゴリズムを適用するステップであって、それにより前記振動ベクトルを与えることに起因する前記カテーテルの変位を隔離するステップと、
前記信号処理アルゴリズムの出力を、前記作動軸に対する較正ベクトルに分解するステップと
を含む方法。
【請求項30】
前記複数の位置データ点に信号処理アルゴリズムを適用するステップが、前記複数の位置データ点にフーリエ変換アルゴリズムを適用することを含む、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
前記測定するステップが、1つまたは複数の測定軸に対する前記カテーテルの或る点の位置を周期的に測定し、それにより前記1つまたは複数の測定軸の各々に対する複数の位置データ点を生成することを含む、請求項29に記載の方法。
【請求項32】
前記分解するステップが、前記作動軸に対する較正ベクトルを計算することを含み、前記較正ベクトルが、前記1つまたは複数の測定軸の各々に沿って向けられた少なくとも1つの成分を含む、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
前記複数の位置データ点が或るサンプリングレートで測定され、前記サンプリングレートが前記振動周波数の倍数である、請求項29に記載の方法。
【請求項34】
前記サンプリングレートが、前記振動周波数の約5倍〜約20倍の間である、請求項29に記載の方法。
【請求項35】
前記作動軸が、回転軸、並進軸および偏向軸からなる群から選択される、請求項29に記載の方法。
【請求項36】
ロボット制御医療機器であって、
医療処置を行うように構成されたエンドエフェクタと、
前記エンドエフェクタを移動させるアクチュエータと、
前記エンドエフェクタに対し作動軸における振動ベクトルを与えるように前記アクチュエータを起動することにより、前記エンドエフェクタを機械的に作動させるコントローラと、
前記エンドエフェクタの位置を周期的に測定し、それにより時間の関数として測定される複数の位置データ点を生成する位置フィードバックシステムと、
フーリエ変換アルゴリズムに従って前記複数の位置データ点を処理することにより、前記エンドエフェクタの位置を前記作動軸に対する移動ベクトルに関連付ける伝達関数を生成するプロセッサと
を備える医療機器。
【請求項37】
前記エンドエフェクタが心臓カテーテルを含む、請求項36に記載の医療機器。
【請求項38】
前記位置フィードバックシステムが、1つまたは複数の測定軸に対して前記エンドエフェクタの位置を周期的に測定し、それにより前記1つまたは複数の測定軸の各々に対し複数の位置データ点を生成する、請求項36に記載の医療機器。
【請求項39】
前記プロセッサが、フーリエ変換アルゴリズムに従って、前記1つまたは複数の測定軸の各々に対して前記複数の位置データ点を処理する、請求項38に記載の医療機器。
【請求項40】
前記伝達関数が、前記1つまたは複数の測定軸に沿って向けられた少なくとも1つの成分を含む較正ベクトルを含む、請求項38に記載の医療機器。
【請求項41】
少なくとも1つの作動軸に対する移動が可能なロボット制御カテーテルを較正する方法であって、
第1振動周波数で第1振動ベクトルを与えることにより、第1作動軸において前記カテーテルを機械的に作動させるステップと、
前記カテーテルの位置を周期的に測定することにより、時間の関数として測定される第1の複数の位置データ点を生成するステップと、
フーリエ変換アルゴリズムを用いて前記第1の複数の位置データ点を処理することにより、前記ロボット制御カテーテルの位置を前記第1作動軸に対する移動ベクトルに関連付ける伝達関数を生成するステップと
を含む方法。
【請求項42】
第2振動周波数で第2振動ベクトルを与えることにより、第2作動軸において前記カテーテルを機械的に作動させるステップと、
前記カテーテルの位置を周期的に測定することにより、時間の関数として測定される第2の複数の位置データ点を生成するステップと、
フーリエ変換アルゴリズムを用いて前記第2の複数の位置データ点を処理することにより、前記ロボット制御カテーテルの位置を前記第2作動軸に対する移動ベクトルに関連付ける伝達関数を生成するステップと、
第3振動周波数で第3振動ベクトルを与えることにより、第3作動軸において前記カテーテルを作動させるステップと、
前記カテーテルの位置を周期的に測定することにより、時間の関数として測定される第3の複数の位置データ点を生成するステップと、
フーリエ変換アルゴリズムを用いて前記第3の複数の位置データ点を処理することにより、前記ロボット制御カテーテルの位置を前記第3作動軸に対する移動ベクトルに関連付ける伝達関数を生成するステップと
をさらに含む、請求項41に記載の方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9a】
【図9b】
【図9c】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9a】
【図9b】
【図9c】
【公表番号】特表2010−536493(P2010−536493A)
【公表日】平成22年12月2日(2010.12.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−521993(P2010−521993)
【出願日】平成20年8月20日(2008.8.20)
【国際出願番号】PCT/US2008/073694
【国際公開番号】WO2009/026351
【国際公開日】平成21年2月26日(2009.2.26)
【出願人】(506257180)セント・ジュード・メディカル・エイトリアル・フィブリレーション・ディヴィジョン・インコーポレーテッド (57)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成22年12月2日(2010.12.2)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年8月20日(2008.8.20)
【国際出願番号】PCT/US2008/073694
【国際公開番号】WO2009/026351
【国際公開日】平成21年2月26日(2009.2.26)
【出願人】(506257180)セント・ジュード・メディカル・エイトリアル・フィブリレーション・ディヴィジョン・インコーポレーテッド (57)
【Fターム(参考)】
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