ロボット制御システム
【課題】
手動運転時において、レーザセンサのセンシング点を教示しやすいロボット制御システムを提供する。
【解決手段】
ロボット制御システム10はレーザセンサLSのカメラ座標系の視野範囲及びツール座標系とカメラ座標系の変換行列を記憶するEEPROMを備える。又、ツール座標系の第1制御点を制御対象とする第1モードから、カメラ座標系の第2制御点を制御対象とする第2モードに外部操作により切り替える切替キーを備える。ロボット制御装置RCのCPUは、第2モードでは、ティーチペンダントTPによる操作がされた際、変換行列に基づいて第2制御点をレーザセンサLSの制御点としてマニピュレータM1の位置姿勢制御を行う。
手動運転時において、レーザセンサのセンシング点を教示しやすいロボット制御システムを提供する。
【解決手段】
ロボット制御システム10はレーザセンサLSのカメラ座標系の視野範囲及びツール座標系とカメラ座標系の変換行列を記憶するEEPROMを備える。又、ツール座標系の第1制御点を制御対象とする第1モードから、カメラ座標系の第2制御点を制御対象とする第2モードに外部操作により切り替える切替キーを備える。ロボット制御装置RCのCPUは、第2モードでは、ティーチペンダントTPによる操作がされた際、変換行列に基づいて第2制御点をレーザセンサLSの制御点としてマニピュレータM1の位置姿勢制御を行う。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はロボット制御システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、レーザセンサ及び溶接トーチをマニピュレータの先端に持つアーク溶接ロボット制御システムでは、センシングのための教示を行う際には、ワークに対して前記レーザセンサによりレーザを照射する。このとき、検出対象の開先が前記レーザセンサのセンサ視野範囲内に裕度を持って入るように、前記レーザセンサの位置・姿勢を手動修正することを繰り返すようにしている。
【0003】
このとき、前記レーザセンサのカメラ座標系が前記溶接トーチのツール座標系のXY,YZ,ZX平面のいずれかと平行になるようにレーザセンサが取付けられている場合、ツール座標系に沿って溶接トーチ先端を移動すると、センサ視野範囲も視野範囲面または視野範囲面と垂直な方向に平行に移動することができる。そのため、レーザを照射する位置の調整がやりやすい。
【0004】
なお、特許文献1及び特許文献2は、本件の出願時の技術水準を表すものである。特許文献1では、レーザセンサを用いたロボットの自動位置教示方法に関している。特許文献2は、レーザセンサを用いたロボットの位置教示方法に関する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平7−104831号公報
【特許文献2】特開平7−68481号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、レーザセンサを上記のように取り付けできない場合は少なからずある。この場合、レーザを照射する位置や姿勢を手動で調整するのに手間がかかる。
例えば、図10に示すように、視野範囲FOVを含む平面の高さ方向がロボット固有の座標系(図10では、ツール座標系)のZ軸と平行でない場合がある。なお、ツール座標系のZ軸は、ツールである溶接トーチ100の軸心と一致させ、ツール座標系のX軸は溶接進行方向にすることが一般的である。
【0007】
この場合、ロボット固有の座標系上で手動運転を行っても、視野範囲FOVの高さ方向と平行に移動することはできない。
そのため、レーザセンサLSの教示に以下のような不都合が生じる。例えば、図11(a)に示すようにワークW上の検出したい開先位置K1にレーザがあたるようにレーザセンサLSを移動した後、レーザセンサLSの位置・姿勢を調整するために手動運転する場合を考える。レーザセンサLSの位置・姿勢を調整する際、位置・姿勢の制御点は、あくまでもマニピュレータに取り付けられた溶接トーチ100の先端である。このために、溶接トーチ100の先端からオフセットされた位置に取り付けられているレーザセンサLSの位置・姿勢は、容易に所望の位置・姿勢に移動させることができず、例えば、図11(b)に示すように照射位置が所望の開先位置K1からずれてしまう。このため、ツール座標系のX軸、Y軸またはZ軸上を細かく動かし微調整することを繰り返さねばならない。
【0008】
なお、上記では、レーザセンサLSの位置・姿勢を調整する、という表現を用いたが、厳密には、レーザセンサLSの視野範囲FOVが所望の位置・姿勢となるように、溶接トーチ100の先端(制御点)を移動したり姿勢を変更したりすることを意味している。以下においても、特に断りのない限り、レーザセンサLSの位置・姿勢を調整するとは、レーザセンサLSの視野範囲FOVが所望の位置・姿勢となるように、溶接トーチ100の先端を基準とした位置・姿勢を手動運転操作によって調整することを意味するものとする。
【0009】
また、説明の便宜上、図11(a)、図11(b)ではレーザセンサLSの視野範囲FOVをエリア表示しているが、実際にはこのように視野範囲FOVを可視化することはできない。そのため、レーザの視野範囲FOV内(特に高さ方向)にワークWがあることを目視だけでは100%判断できない。そのため、この調整の際には、レーザの検出データをパソコンの画面に表示し、ワークWがレーザの視野範囲FOV内にあることを確認しながら高さを調整する必要がある。
【0010】
一般に、センシング点数は溶接点と同数またはそれ以上に必要となる場合が多いため、手動で行う調整操作の累積によりセンシングための教示工数が大きく増える問題がある。
前記説明では、ツールを溶接トーチとしたが、アーク溶接ロボット制御システム以外におけるロボット制御システム以外のツールとレーザセンサをマニピュレータが備える他のロボット制御システムにおいても手動で教示する場合は同様の問題がある。なお、特許文献1,2では、上記の課題を解決できない。
【0011】
本発明の目的は、手動運転時において、レーザセンサのセンシング点を教示しやすいロボット制御システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記問題点を解決するために、請求項1に記載の発明は、ツール及びレーザセンサを備えたマニピュレータと、このマニピュレータを手動操作するための操作手段と、前記マニピュレータを駆動制御するロボット制御手段を備え、前記操作手段の操作により前記ロボット制御手段を介して前記マニピュレータを予め定められたツール座標系を基準として駆動制御するロボット制御システムにおいて、前記レーザセンサのカメラ座標系の視野範囲を記憶する視野範囲記憶手段と、前記ツール座標系とカメラ座標系の変換行列を記憶する変換行列記憶手段と、前記ツール座標系の制御点(以下、第1制御点という)を制御対象とする第1モードから、前記カメラ座標系の制御点(以下、第2制御点という)を制御対象とする第2モードに外部操作により切り替える切替手段を備え、前記ロボット制御手段は、第2モードでは、前記操作手段による操作がされた際、前記変換行列に基づき、前記第2制御点を制御対象として前記マニピュレータの位置姿勢制御を行うことを特徴とするロボット制御システムを要旨としている。
【0013】
請求項2の発明は、請求項1において、前記視野範囲記憶手段は、前記レーザセンサの視野範囲に含まれる参照点を、前記カメラ座標系の基準で記憶し、前記ロボット制御手段は、前記第2モードでは、前記操作手段による操作がされた際、前記変換行列に基づき、前記参照点を前記第2制御点として前記マニピュレータの位置姿勢制御を行うことを特徴とする。
【0014】
請求項3の発明は、請求項1において、前記レーザセンサが前記視野範囲に含まれる検出対象部位を検出した後に、前記切替手段により前記第2モードに切り替えられた後は、前記ロボット制御手段は、前記操作手段による操作がされた際、前記変換行列に基づいて前記レーザセンサが検出した検出対象部位の点を第2制御点として、前記マニピュレータの位置姿勢制御を行うことを特徴とする。
【0015】
請求項4の発明は、請求項1において、前記視野範囲記憶手段は、前記レーザセンサの視野範囲に含まれる参照点を、カメラ座標系の基準で記憶し、ツール先端が、ワークの検出対象部位に位置している状態で、前記切替手段により前記第2制御点に切り替えられた場合、前記ロボット制御手段は、前記参照点を第2制御点とし、かつ、前記参照点が前記検出対象部位に位置するように前記マニピュレータの位置姿勢制御を行うことを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
請求項1の発明によれば、手動運転時において、レーザセンサのセンシング点が教示しやすいロボット制御システムを提供できる。
請求項2の発明によれば、手動運転時にカメラ座標系を基準としてマニピュレータ位置姿勢制御を行うようにしたことによって、例えば、カメラ座標系のYc方向やZc方向に操作をしても、レーザセンサは、常に検出対象部位の位置を通る平面内を照射することができる。すなわち、ツール座標系で行う場合に比して、x軸、y軸またはz軸上を細かく動かし微調整することを繰り返す必要が無くなる。
【0017】
請求項3の発明によれば、前記レーザセンサが検出した検出対象部位の点(検出点)を移動せずにワークに対するレーザセンサの姿勢調整ができるので、ワークの開先角度等に応じたレーザセンサの角度調整がより簡単になる。
【0018】
請求項4の発明によれば、レーザセンサによる検出点認識を調整する前であっても、ワークに対してほぼ適切な位置にセンシング点の教示を行うことできる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】(a)は一実施形態のロボットの制御装置のブロック図、(b)は同じくティーチペンダントTPの概略図。
【図2】ロボット制御装置RCのブロック図。
【図3】(a)、(b)はカメラ座標系と参照点の説明図。
【図4】ツール座標系、カメラ座標系、メカニカルインターフェース座標系との関係の説明図。
【図5】(a)、(b)はカメラ座標系の基準の手動操作の説明図。
【図6】ツール座標系とカメラ座標系の制御点の切替の説明図。
【図7】(a)〜(c)はセンシング教示点自動調整時の姿勢変化を示す説明図。
【図8】(a)、(b)は、センシング教示点自動調整の説明図。
【図9】(a)〜(c)はセンシング教示点自動調整時の姿勢変化を示し、(a)は調整前の説明図、(b)は姿勢保持を示している説明図、(c)はカメラ座標系の基準の姿勢変化の説明図。
【図10】ロボット固有の座標系とセンサ視野範囲の説明図。
【図11】(a)、(b)は従来のセンサ位置姿勢の調整の説明図。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明をアーク溶接ロボット制御システムに具体化した一実施形態を図1〜5を参照して説明する。
図1(a)はアーク溶接ロボット制御システム10の構成を示すブロック図である。アーク溶接ロボット制御システム10は、ワーク(作業対象物)Wに対してアーク溶接を自動で行うように制御するものである。アーク溶接ロボット制御システム10は、溶接作業を行うマニピュレータM1と、マニピュレータM1を制御するロボット制御装置RCと、ワークWの形状を検出するレーザセンサLSとを備える。前記レーザセンサLSは、レーザ変位センサであって、ラインレーザセンサからなる。
【0021】
又、ロボット制御装置RCには、可搬式操作部としてのティーチペンダントTPが接続されている。図1(b)に示すようにティーチペンダントTPにはキーボード41を備えている。
【0022】
キーボード41は、各種の操作キースイッチ(以下、操作キーという)を備えている。該操作キーの中で、教示操作に使用される操作キーは、例えば、溶接トーチの位置姿勢を教示する教示モード、及びレーザセンサの位置姿勢を教示するセンシング教示モードでロボットの動作又は停止を行うためのキーである。操作キーとしては、例えば、X軸の移動方向を示す「−X」キー及び「X+」キー、Y軸の移動方向を示す「−Y」キー及び「Y+」キー及び「−Y」キー、Z軸の移動方向を示す「−Z」キー及び「Z+」キー、教示結果の確認操作に使用するキー等がある。又、キーボード41は、前記X,Y,Z軸の周りでそれぞれ回転角度(正回転、逆回転を含む)を付与するための操作キーも備えている。これらの操作キーがセンシング教示モードにおいて操作されると、ロボットの位置姿勢を指示し、或いは停止を指示することとなる。又、キーボード41は、液晶表示装置等からなるディスプレイ42が設けられている。前記キーボード41の各種操作キーの操作により各種の教示データがロボット制御装置RCに入力される。本実施形態のティーチペンダントTPは操作手段に相当する。
【0023】
又、ティーチペンダントTPには、第1モードのツール座標系の基準から第2モードのカメラ座標系の基準に切り替える場合と、第2モードのカメラ座標系の基準から第1モードのツール座標系基準に切り替える場合に操作される切替キー43を備えている。前記第1モードが、溶接トーチの位置姿勢を教示する教示モードとなる。又、第2モードがセンシング教示モードとなる。前記切替キー43は、切替手段に相当する。
【0024】
マニピュレータM1は、フロア等に固定されるベース部材12と、複数の軸を介して連結された複数のアーム13とを備える。
最も先端側に位置するアーム13の先端部には、溶接トーチ14が設けられる。図4に示すように、溶接トーチ14はマニピュレータM1の先端の出力フランジ40に対してブラケット50を介して取付けされている。出力フランジ40は、ベース部材12側から数えて第6軸の出力フランジである。溶接トーチ14は、溶加材としてのワイヤ15を内装し、図示しない送給装置によって送り出されたワイヤ15の先端とワークWとの間にアークを発生させ、その熱でワイヤ15を溶着させることによりワークWに対してアーク溶接を施す。アーム13間には複数のモータ(図示しない)が配設されており、モータの駆動によって溶接トーチ14を前後左右に自在に移動できるように構成されている。
【0025】
ロボット制御装置RCは、図2に示すようにコンピュータからなる。すなわち、ロボット制御装置RCはCPU(中央処理装置)20、マニピュレータM1を制御するための各種プログラムや、各種の開先形状に応じて用意された複数の画像解析プログラムを記憶する書換可能なEEPROM21や、作業メモリとなるRAM22、各種データを記憶する書換可能な不揮発性メモリからなる記憶部23を備える。EEPROM21には、マニピュレータM1に設けられた溶接トーチ14をツール座標系で作動するための第1プログラム及びレーザセンサLSをカメラ座標系で作動するための第2プログラムが格納されている。切替キー43が切替操作されることにより、前記第1プログラム又は第2プログラムが実行され、実行されたプログラムに従ってマニピュレータM1を作動する。以下、第1プログラムが起動された場合を第1モードに設定されたとし、第2プログラムが起動された場合を第2モードに設定されたという。なお、本実施形態ではEEPROM21に各種プログラムを格納したが、限定するものではなく、フラッシュメモリ等の他のメモリ、或いは記憶装置に格納していてもよい。
【0026】
EEPROM21には、前記第2プログラムの他に、後述する変換行列及び視野範囲のデータが含まれている。CPU20は、ロボット制御手段に相当する。EEPROM21は変換行列記憶手段、視野範囲記憶手段に相当する。
【0027】
記憶部23は、第1記憶領域23a、及び第2記憶領域23b等の記憶領域を有する。第1記憶領域23aはレーザセンサLSにて視野範囲FOV(図3(a)、(b)及び図4参照)を測定して得られた距離情報(測距データ)を記憶するための領域である。第2記憶領域23bは、教示時にキーボード41にて入力された狙い角、前進後退角、教示点の位置(教示位置)、及び教示位置において入力された位置決め命令、直線補間命令等の各種命令や、センシング時におけるレーザセンサLSの位置姿勢、及び溶接トーチ14の各教示点における位置姿勢の教示データを記憶する。
【0028】
ロボット制御装置RCは、前記モータを駆動制御することにより、予め設定された教示データの主軌道に沿って溶接トーチ14を動作させる。又、ロボット制御装置RCは、溶接電流及び溶接電圧といった溶接条件を溶接電源WPSに対して出力し、溶接電源WPSからパワーケーブルPKを通じて供給される電力によって溶接作業を行わせる。
【0029】
レーザセンサLSは、レーザの発光及び受光によりワークWまでの距離を測定する走査型のレーザセンサであり、溶接トーチ14に搭載される。レーザセンサLSは、レーザをワークWに向けて発光する発光部と、ワークWで反射したレーザを受光する受光部等(ともに図示しない)を備える。前記発光部で発光されたレーザは、ワークWで乱反射され、受光部で受光される。受光部は、例えばCCDラインセンサ(ラインレーザセンサ)により構成されており、視野範囲FOVにおけるレーザセンサLSからワークWまでの距離を測定するようにされている。
【0030】
又、ロボット制御装置RCは、レーザセンサLSを制御し、測定されるレーザセンサLSとワークW間の距離(距離情報)に基づいて開先位置を検出する。
本実施形態では、取付環境の事情によりレーザ照射方向がツール座標系のいずれかの軸とは平行とはならないようにレーザセンサLSが溶接トーチ14に対して取り付けられている。なお、ツール座標系は、図4に示すように、ツールである溶接トーチ14の軸心にZT軸を一致させるとともに、XT軸を溶接進行方向に向けられている。又、カメラ座標系は、レーザセンサLSの視野範囲FOV中に設定された座標系である。視野範囲FOVの形状は、センサ正面から見ると、一般に図3(a)に示すように台形となる場合が多い。なお、視野範囲FOVの形状は、レーザセンサの照射範囲となるものであって、レーザセンサの仕様によって台形とならないものもあることが知られている。従って、視野範囲FOVの形状は、台形に限定されるものではない。例えば、視野範囲FOVの形状は円錐台、三角形、或いは直線等でも良い。
【0031】
本実施形態の視野範囲FOVを、説明の便宜上、二等辺台形であるとして、話を進める。この場合、本実施形態では、この台形の範囲を、カメラ座標系の基準での台形の各頂点の座標値で表し、EEPROM21に格納されている。又、EEPROM21には、レーザセンサLSのカメラ座標系データ(すなわち、キャリブレーションデータ)が格納されている。図3(a)では、下辺の中心位置をカメラ座標系原点としており、このカメラ座標系での台形の下辺の両端の座標値、及び、上辺の両端の座標値を一例として数値で具体的に示している。なお、図3(a)で示す座標値(数値)は一例であって、限定するものではない。
【0032】
そして、図3(a)、(b)に示すようにカメラ座標系は、右手直交座標系であって、視野範囲FOVを含む面の高さ方向をZc軸方向とし、視野範囲FOVの下辺に直交するとともに溶接進行方向側の軸をXc軸方向とし、下辺に含まれる軸をYc軸としている。又、視野範囲FOV内には、カメラ座標系で表される参照点Sが設定されている。参照点Sは、図3(b)では、視野範囲FOVの中心に位置しているが、限定するものではなく、視野範囲FOVに含まれる点であればよい。例えば、参照点Sをカメラ座標系の原点としてもよい。参照点Sの座標値は、EEPROM21に格納されている。
【0033】
前述したように、本実施形態ではレーザ照射方向がツール座標系のいずれの軸とも平行とはならないようにレーザセンサLSが溶接トーチ14に対して取り付けられているため、図3(b)に示すように、視野範囲FOVは、ツール座標系のZT軸とは平行になっていない関係となっている。又、レーザセンサLS、溶接トーチ14の先端から溶接進行方向側に所定距離離間した位置にレーザ照射するようにされている。
【0034】
(カメラ座標系とツール座標系との関係を表す変換行列)
ここで、カメラ座標系とツール座標系との関係を表す変換行列を説明する。
図4には、溶接トーチ14に関するツール座標系と、レーザセンサLS、カメラ座標系及びメカニカルインターフェース座標系の関係を示している。
【0035】
レーザセンサLSで得られた開先位置に、指定したレーザセンサLS姿勢で移動できるロボットのポーズ(姿勢)を求めるためには、ツール座標系とカメラ座標系の変換行列TTCが必要となる。
【0036】
図4において、マニピュレータM1が6軸ロボットを構成している場合、ロボットの第6軸の中心である出力フランジ40を原点とするメカニカルインターフェース座標系(XM,YM,ZM)から、カメラ座標系(Xc,Yc,Zc)への変換行列は、J6TCである。又、メカニカルインターフェース座標系(XM,YM,ZM)から、ツール座標系(XT,YT,ZT)への変換行列は、J6TTである。ツール座標系からカメラ座標系の変換行列はTTCである。
【0037】
このとき、ツール座標系から見たカメラ座標系への変換行列TTCは、以下のように、
【0038】
【数1】
で求められる。
【0039】
この変換行列TTCは、前記第2プログラムが実行されたとき使用される。
ロボット制御装置RCには、溶接作業が行われる前に、溶接が行われる際のマニピュレータM1の動作及び溶接条件等を示す教示データがティーチペンダントTPを介して入力され記憶部23の第2記憶領域23bに記憶されている。なお、以下では、特に断らない限り、「教示する」とはティーチペンダントTPを使用して入力することをいう。
【0040】
(作用)
さて、上記のように構成されたアーク溶接ロボット制御システム10の作用を説明する。なお、説明の便宜上、ティーチペンダントTPの切替キー43により、ツール座標系で溶接トーチ14の位置姿勢を行う側に設定されているものとする。すなわち、切替キー43により第1モードに設定されて第1プログラムが起動されており、ティーチペンダントTPにより教示操作することにより、従来と同様に溶接トーチ14の位置姿勢を教示する教示モードとなっている。従って、この教示モードでは、溶接トーチ14の位置姿勢は、ツール座標系で教示される。
【0041】
ここで、切替キー43をオペレータが操作することにより第1モードから第2モード(センシング教示モード)に切替する。すると、ロボット制御装置RCのCPU20は、第2プログラムを実行する。この第2プログラムでは、CPU20は、ティーチペンダントTPからの操作キーの操作、例えば、「−X」キー及び「X+」キー、「−Y」キー及び「Y+」キー及び「−Y」キー、「−Z」キー及び「Z+」キーを操作すると、CPU20は、前記変換行列TTCを使用して、カメラ座標系の制御点を基準としてマニピュレータM1の位置姿勢制御を行う。すなわち、CPU20は、第1モードではツール座標系の制御点(第1制御点)の位置を制御対象として制御していた代わりに、第2モードでは、カメラ座標系の参照点(第2制御点)の位置を制御対象として制御することになる。
【0042】
図5(a)、図5(b)では、レーザセンサLSが、カメラ座標系のXc,Yc,Zc軸方向にそれぞれ移動することが図示されている。このため、カメラ座標系のYc方向やZc方向に操作をしても、ワークWに対するレーザの照射位置は検出したい開先位置(すなわち、検出点)を通る平面を常に照射する。そのため、従来と異なりツール座標系のX軸、Y軸またはZ軸上を細かく動かし微調整することを繰り返す必要がなくなる。
【0043】
本実施形態のアーク溶接ロボット制御システム10によれば、下記の特徴がある。
(1) 本実施形態のアーク溶接ロボット制御システム10は、レーザセンサLSのカメラ座標系の視野範囲FOV、及びツール座標系とカメラ座標系の変換行列を記憶するEEPROM21(視野範囲記憶手段、変換行列記憶手段)を備える。又、ツール座標系の第1制御点を制御対象とする第1モードから、カメラ座標系の第2制御点を制御対象とする第2モードに切り替える切替キー43(切替手段)を備える。そして、ロボット制御装置RCのCPU20(ロボット制御手段)は、第2モードでは、ティーチペンダントTP(操作手段)による操作がされた際、前記変換行列に基づいて第2制御点を、制御対象として、マニピュレータM1の位置姿勢制御を行う。この結果、本実施形態によれば、手動運転時において、レーザセンサLSのセンシング点(検出点)を教示しやすいロボット制御システムを提供できる。
【0044】
(2) 本実施形態のアーク溶接ロボット制御システム10では、EEPROM21(視野範囲記憶手段)は、レーザセンサLSの視野範囲FOVに含まれる参照点を、前記カメラ座標系の基準で記憶する。又、CPU20(ロボット制御手段)は、第2モードでは、ティーチペンダントTP(操作手段)により操作がされた際、変換行列に基づいて参照点Sを第2制御点として、マニピュレータM1の位置姿勢制御を行う。
【0045】
この結果、本実施形態によれば、カメラ座標系のYc方向やZc方向に操作をしても、ワークWに対するレーザセンサの照射位置は検出対象部位の位置(開先位置)を通る平面を常に照射する。このため、オペレータは、ティーチペンダントTPを操作すると、カメラ座標系でマニピュレータM1の位置姿勢制御が行われるため、ツール座標系では、X軸、Y軸またはZ軸上を細かく動かし微調整することを繰り返して行っていた場合と異なり、容易にレーザセンサLSの位置・姿勢を調整することができる。
【0046】
特に、レーザセンサLSのカメラ座標系データ(すなわち、キャリブレーションデータ)をロボット制御装置RCで保持することにより、カメラ座標系に沿ってロボットを移動できる。そして、カメラ座標系のYc方向やZc方向に操作をすれば、ワークWに対して検出したい開先位置を通る平面を常にレーザ照射できるとともに、センシング点(検出点)を教示しやすくなる。
【0047】
(第2実施形態)
次に、第2実施形態を図6、図7(a)〜(c)を参照して説明する。なお、第2実施形態のアーク溶接ロボット制御システム10のハード構成は、第1実施形態と同一であるため、前記実施形態と同一構成については、同一符号を付して重複説明を省略し、ソフト的な構成の相違を中心に説明する。
【0048】
本実施形態の第2プログラムでは、切替キー43を第1モードから第2モードに切替操作すると、第2モードでは、レーザセンサLSがワークWの開先を検出した際、その開先における検出点Kを参照点Sの代わりにカメラ座標系の第2制御点とするところが第1実施形態の第2プログラムと異なっている。
【0049】
具体的に説明すると、第1モードにおいて、視野範囲FOVにワークWがあるように溶接トーチ14先端を移動した上で開先を検出できた場合に、オペレータは、切替キー43を操作して、第2モードに切り替える。
【0050】
すると、CPU20は、ツール座標系の第1制御点をカメラ座標系の基準である第2制御点へ切り替えるが、切替後は、この第2制御点として、開先上の検出点Kに切り替えられる。
【0051】
この状態で、キーボード41の操作キーのうち、X軸の周りで回転させる操作キーを操作して、例えば、カメラ座標系のXC軸周りで回転させると、カメラ座標系のXC軸上の検出点Kを移動することなく、ワークWに対するレーザセンサLSの姿勢調整が行える。なお、この姿勢調整際、CPU20は、前記変換行列を使用して、姿勢調整のための演算を行う。
【0052】
例えば、図6は、第1モードで、検出対象部位であるワークWの開先がレーザセンサLSにより検出されたところを表している。図7(a)〜(c)は、前記姿勢調整によりレーザセンサLSがXc軸周りで回転(姿勢調整)が行われているところが示されている。
【0053】
このように切替キー43により第2モードに切り替えると、検出点Kを移動せずにワークWに対するレーザセンサLSの姿勢調整ができるため、ワークWに合うレーザセンサLSの角度調整がより簡単になる。
【0054】
なお、上記では、Xc軸周りのレーザセンサLSの姿勢調整を説明したが、Yc軸周り、及びZc軸周りの調整も、キーボード41のY,Z軸周りでの回転角度を付与する操作キーを操作する。このことにより、上記と同様に検出点Kを移動せずにワークWに対するレーザセンサLSの姿勢調整を行うことが可能である。
【0055】
前記X(Xc),Y(Yc),Z(Zc)軸の周りで回転する回転指示をCPU20に出力するキーボード41の操作キーは軸周り回転指示手段に相当する。
本実施形態では下記の特徴がある。
【0056】
(3) 本実施形態では、レーザセンサLSが視野範囲FOVに含まれる開先を検出した後、切替キー43により第2モードに切り替えられると、CPU20はティーチペンダントTPによる操作がされた際、変換行列に基づいてレーザセンサLSが検出した検出点を第2制御点として、マニピュレータM1の位置姿勢制御を行う。従って、本実施形態によれば、レーザセンサLSが検出した検出点を移動せずにワークWに対するレーザセンサLSの姿勢調整ができるため、ワークWに合うレーザセンサLSの角度調整が従来より簡単になる。
【0057】
(第3実施形態)
次に、第3実施形態を図8(a)、(b)及び図9(a)〜(c)を参照して説明する。なお、第3実施形態のアーク溶接ロボット制御システム10のハード構成は、第1実施形態と略同一であるため、前記実施形態と同一構成については、同一符号を付して重複説明を省略し、ソフト的な構成の相違を中心に説明する。
【0058】
本実施形態の第2プログラムでは、参照点Sを、所望の開先上に移動できるところが、第1実施形態の第2プログラムと異なっている。
具体的に説明すると、従来と同様にしてティーチペンダントTPを操作して、第1モードにおいて、図8(a)、及び図9(a)に示すように検索対象部位であるワークWの開先に溶接トーチ14の先端を移動する。この場合、溶接トーチ14の先端に位置する、検索対象部位としてのワークWの開先上の点Aの位置は、CPU20には既知となっている。又、溶接トーチ14の先端を移動させるにあたり、レーザセンサLSから出力されるレーザが開先に当たるように位置させる(必ずしも開先が視野範囲FOV内となるように位置させる必要はない)。さらに、溶接トーチ14の前進後退角が0度又はほぼ0度に近い角度としておく。
【0059】
この状態で、切替キー43により第1モードから第2モードに切替操作すると、第3実施形態の第2プログラムでは、CPU20は、既知であるワークWの開先位置及び既知である式(1)により、操作する直前に溶接トーチ14先端があった開先上の点Aに参照点Sを移動する(図8(b)、及び図9(b)参照)。
【0060】
又、キーボード41には、第2モードになった場合、レーザセンサLSの姿勢を、調整前と同じ姿勢を保持(以下、姿勢S1という)するか、或いは、カメラ座標系で点Aのツール座標系基準の予め設定された姿勢角度の姿勢(以下、姿勢S2という)となるように姿勢変化するかを選択する選択キーが設けられている。前記第2モードに切替える前に、この選択キーで予めいずれかを選択することにより、CPU20は、選択された姿勢S1,又は姿勢S2で、レーザセンサLSの姿勢が所望値となるよう、マニピュレータM1を制御する。図9(b)は、姿勢S1が選択された場合、すなわち、図9(a)に示す調整前と同じ姿勢が保持された状態を示している。図9(c)は、姿勢S2が選択されたレーザセンサLSの姿勢を示している。
【0061】
本実施形態では下記の特徴がある。
(4) 本実施形態では、EEPROM21(視野範囲記憶手段)は、レーザセンサLSの視野範囲FOVに含まれる参照点Sを、カメラ座標系の基準で記憶する。
【0062】
又、溶接トーチ14の先端が、ワークWの開先(検出対象部位)に位置している状態で、切替キー43(切替手段)により切り替えると、CPU20は、参照点Sを第2制御点とし、かつ、参照点Sが前記開先に位置するようにマニピュレータM1の位置姿勢制御を行う。この結果、本実施形態によれば、レーザセンサLSによる検出点認識を調整する前であっても、ワークWに対してほぼ適切な位置に教示を行うことできる。
【0063】
すなわち、溶接トーチ14(ツール)先端を開先付近に移動後、切替キー43をワンタッチでレーザセンサLSの視野範囲FOVの参照点Sに開先がくるようにロボットを移動できる。
【0064】
なお、本発明は前記実施形態に限定されるものではなく、下記のように構成してもよい。
・ 前記実施形態のレーザセンサLSは、ラインレーザセンサを使用したが、レーザをミラーに当てて走査するスキャニング型のレーザセンサに代えてもよい。
【0065】
・ 前記各実施形態では、アーク溶接ロボット制御システムに具体化したが、他の産業ロボット制御システムにおいて、レーザセンサとツールをマニピュレータの先端に備えたものに具体化することは勿論可能である。
【0066】
・ 前記各実施形態では、マニピュレータM1は6軸ロボットにより構成したが、軸数は6軸に限定するものではなく、4軸、5軸,7軸等の他の軸数を有するロボットでもよい。
【符号の説明】
【0067】
M1…マニピュレータ、LS…レーザセンサ、
RC…ロボット制御装置、
TP…ティーチペンダント(操作手段)、
10…アーク溶接ロボット制御システム、
13…アーム、14…溶接トーチ(ツール)、
20…CPU(ロボット制御手段)、
21…EEPROM(変換行列記憶手段、視野範囲記憶手段)、
43…切替キー(切替手段)。
【技術分野】
【0001】
本発明はロボット制御システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、レーザセンサ及び溶接トーチをマニピュレータの先端に持つアーク溶接ロボット制御システムでは、センシングのための教示を行う際には、ワークに対して前記レーザセンサによりレーザを照射する。このとき、検出対象の開先が前記レーザセンサのセンサ視野範囲内に裕度を持って入るように、前記レーザセンサの位置・姿勢を手動修正することを繰り返すようにしている。
【0003】
このとき、前記レーザセンサのカメラ座標系が前記溶接トーチのツール座標系のXY,YZ,ZX平面のいずれかと平行になるようにレーザセンサが取付けられている場合、ツール座標系に沿って溶接トーチ先端を移動すると、センサ視野範囲も視野範囲面または視野範囲面と垂直な方向に平行に移動することができる。そのため、レーザを照射する位置の調整がやりやすい。
【0004】
なお、特許文献1及び特許文献2は、本件の出願時の技術水準を表すものである。特許文献1では、レーザセンサを用いたロボットの自動位置教示方法に関している。特許文献2は、レーザセンサを用いたロボットの位置教示方法に関する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平7−104831号公報
【特許文献2】特開平7−68481号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、レーザセンサを上記のように取り付けできない場合は少なからずある。この場合、レーザを照射する位置や姿勢を手動で調整するのに手間がかかる。
例えば、図10に示すように、視野範囲FOVを含む平面の高さ方向がロボット固有の座標系(図10では、ツール座標系)のZ軸と平行でない場合がある。なお、ツール座標系のZ軸は、ツールである溶接トーチ100の軸心と一致させ、ツール座標系のX軸は溶接進行方向にすることが一般的である。
【0007】
この場合、ロボット固有の座標系上で手動運転を行っても、視野範囲FOVの高さ方向と平行に移動することはできない。
そのため、レーザセンサLSの教示に以下のような不都合が生じる。例えば、図11(a)に示すようにワークW上の検出したい開先位置K1にレーザがあたるようにレーザセンサLSを移動した後、レーザセンサLSの位置・姿勢を調整するために手動運転する場合を考える。レーザセンサLSの位置・姿勢を調整する際、位置・姿勢の制御点は、あくまでもマニピュレータに取り付けられた溶接トーチ100の先端である。このために、溶接トーチ100の先端からオフセットされた位置に取り付けられているレーザセンサLSの位置・姿勢は、容易に所望の位置・姿勢に移動させることができず、例えば、図11(b)に示すように照射位置が所望の開先位置K1からずれてしまう。このため、ツール座標系のX軸、Y軸またはZ軸上を細かく動かし微調整することを繰り返さねばならない。
【0008】
なお、上記では、レーザセンサLSの位置・姿勢を調整する、という表現を用いたが、厳密には、レーザセンサLSの視野範囲FOVが所望の位置・姿勢となるように、溶接トーチ100の先端(制御点)を移動したり姿勢を変更したりすることを意味している。以下においても、特に断りのない限り、レーザセンサLSの位置・姿勢を調整するとは、レーザセンサLSの視野範囲FOVが所望の位置・姿勢となるように、溶接トーチ100の先端を基準とした位置・姿勢を手動運転操作によって調整することを意味するものとする。
【0009】
また、説明の便宜上、図11(a)、図11(b)ではレーザセンサLSの視野範囲FOVをエリア表示しているが、実際にはこのように視野範囲FOVを可視化することはできない。そのため、レーザの視野範囲FOV内(特に高さ方向)にワークWがあることを目視だけでは100%判断できない。そのため、この調整の際には、レーザの検出データをパソコンの画面に表示し、ワークWがレーザの視野範囲FOV内にあることを確認しながら高さを調整する必要がある。
【0010】
一般に、センシング点数は溶接点と同数またはそれ以上に必要となる場合が多いため、手動で行う調整操作の累積によりセンシングための教示工数が大きく増える問題がある。
前記説明では、ツールを溶接トーチとしたが、アーク溶接ロボット制御システム以外におけるロボット制御システム以外のツールとレーザセンサをマニピュレータが備える他のロボット制御システムにおいても手動で教示する場合は同様の問題がある。なお、特許文献1,2では、上記の課題を解決できない。
【0011】
本発明の目的は、手動運転時において、レーザセンサのセンシング点を教示しやすいロボット制御システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記問題点を解決するために、請求項1に記載の発明は、ツール及びレーザセンサを備えたマニピュレータと、このマニピュレータを手動操作するための操作手段と、前記マニピュレータを駆動制御するロボット制御手段を備え、前記操作手段の操作により前記ロボット制御手段を介して前記マニピュレータを予め定められたツール座標系を基準として駆動制御するロボット制御システムにおいて、前記レーザセンサのカメラ座標系の視野範囲を記憶する視野範囲記憶手段と、前記ツール座標系とカメラ座標系の変換行列を記憶する変換行列記憶手段と、前記ツール座標系の制御点(以下、第1制御点という)を制御対象とする第1モードから、前記カメラ座標系の制御点(以下、第2制御点という)を制御対象とする第2モードに外部操作により切り替える切替手段を備え、前記ロボット制御手段は、第2モードでは、前記操作手段による操作がされた際、前記変換行列に基づき、前記第2制御点を制御対象として前記マニピュレータの位置姿勢制御を行うことを特徴とするロボット制御システムを要旨としている。
【0013】
請求項2の発明は、請求項1において、前記視野範囲記憶手段は、前記レーザセンサの視野範囲に含まれる参照点を、前記カメラ座標系の基準で記憶し、前記ロボット制御手段は、前記第2モードでは、前記操作手段による操作がされた際、前記変換行列に基づき、前記参照点を前記第2制御点として前記マニピュレータの位置姿勢制御を行うことを特徴とする。
【0014】
請求項3の発明は、請求項1において、前記レーザセンサが前記視野範囲に含まれる検出対象部位を検出した後に、前記切替手段により前記第2モードに切り替えられた後は、前記ロボット制御手段は、前記操作手段による操作がされた際、前記変換行列に基づいて前記レーザセンサが検出した検出対象部位の点を第2制御点として、前記マニピュレータの位置姿勢制御を行うことを特徴とする。
【0015】
請求項4の発明は、請求項1において、前記視野範囲記憶手段は、前記レーザセンサの視野範囲に含まれる参照点を、カメラ座標系の基準で記憶し、ツール先端が、ワークの検出対象部位に位置している状態で、前記切替手段により前記第2制御点に切り替えられた場合、前記ロボット制御手段は、前記参照点を第2制御点とし、かつ、前記参照点が前記検出対象部位に位置するように前記マニピュレータの位置姿勢制御を行うことを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
請求項1の発明によれば、手動運転時において、レーザセンサのセンシング点が教示しやすいロボット制御システムを提供できる。
請求項2の発明によれば、手動運転時にカメラ座標系を基準としてマニピュレータ位置姿勢制御を行うようにしたことによって、例えば、カメラ座標系のYc方向やZc方向に操作をしても、レーザセンサは、常に検出対象部位の位置を通る平面内を照射することができる。すなわち、ツール座標系で行う場合に比して、x軸、y軸またはz軸上を細かく動かし微調整することを繰り返す必要が無くなる。
【0017】
請求項3の発明によれば、前記レーザセンサが検出した検出対象部位の点(検出点)を移動せずにワークに対するレーザセンサの姿勢調整ができるので、ワークの開先角度等に応じたレーザセンサの角度調整がより簡単になる。
【0018】
請求項4の発明によれば、レーザセンサによる検出点認識を調整する前であっても、ワークに対してほぼ適切な位置にセンシング点の教示を行うことできる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】(a)は一実施形態のロボットの制御装置のブロック図、(b)は同じくティーチペンダントTPの概略図。
【図2】ロボット制御装置RCのブロック図。
【図3】(a)、(b)はカメラ座標系と参照点の説明図。
【図4】ツール座標系、カメラ座標系、メカニカルインターフェース座標系との関係の説明図。
【図5】(a)、(b)はカメラ座標系の基準の手動操作の説明図。
【図6】ツール座標系とカメラ座標系の制御点の切替の説明図。
【図7】(a)〜(c)はセンシング教示点自動調整時の姿勢変化を示す説明図。
【図8】(a)、(b)は、センシング教示点自動調整の説明図。
【図9】(a)〜(c)はセンシング教示点自動調整時の姿勢変化を示し、(a)は調整前の説明図、(b)は姿勢保持を示している説明図、(c)はカメラ座標系の基準の姿勢変化の説明図。
【図10】ロボット固有の座標系とセンサ視野範囲の説明図。
【図11】(a)、(b)は従来のセンサ位置姿勢の調整の説明図。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明をアーク溶接ロボット制御システムに具体化した一実施形態を図1〜5を参照して説明する。
図1(a)はアーク溶接ロボット制御システム10の構成を示すブロック図である。アーク溶接ロボット制御システム10は、ワーク(作業対象物)Wに対してアーク溶接を自動で行うように制御するものである。アーク溶接ロボット制御システム10は、溶接作業を行うマニピュレータM1と、マニピュレータM1を制御するロボット制御装置RCと、ワークWの形状を検出するレーザセンサLSとを備える。前記レーザセンサLSは、レーザ変位センサであって、ラインレーザセンサからなる。
【0021】
又、ロボット制御装置RCには、可搬式操作部としてのティーチペンダントTPが接続されている。図1(b)に示すようにティーチペンダントTPにはキーボード41を備えている。
【0022】
キーボード41は、各種の操作キースイッチ(以下、操作キーという)を備えている。該操作キーの中で、教示操作に使用される操作キーは、例えば、溶接トーチの位置姿勢を教示する教示モード、及びレーザセンサの位置姿勢を教示するセンシング教示モードでロボットの動作又は停止を行うためのキーである。操作キーとしては、例えば、X軸の移動方向を示す「−X」キー及び「X+」キー、Y軸の移動方向を示す「−Y」キー及び「Y+」キー及び「−Y」キー、Z軸の移動方向を示す「−Z」キー及び「Z+」キー、教示結果の確認操作に使用するキー等がある。又、キーボード41は、前記X,Y,Z軸の周りでそれぞれ回転角度(正回転、逆回転を含む)を付与するための操作キーも備えている。これらの操作キーがセンシング教示モードにおいて操作されると、ロボットの位置姿勢を指示し、或いは停止を指示することとなる。又、キーボード41は、液晶表示装置等からなるディスプレイ42が設けられている。前記キーボード41の各種操作キーの操作により各種の教示データがロボット制御装置RCに入力される。本実施形態のティーチペンダントTPは操作手段に相当する。
【0023】
又、ティーチペンダントTPには、第1モードのツール座標系の基準から第2モードのカメラ座標系の基準に切り替える場合と、第2モードのカメラ座標系の基準から第1モードのツール座標系基準に切り替える場合に操作される切替キー43を備えている。前記第1モードが、溶接トーチの位置姿勢を教示する教示モードとなる。又、第2モードがセンシング教示モードとなる。前記切替キー43は、切替手段に相当する。
【0024】
マニピュレータM1は、フロア等に固定されるベース部材12と、複数の軸を介して連結された複数のアーム13とを備える。
最も先端側に位置するアーム13の先端部には、溶接トーチ14が設けられる。図4に示すように、溶接トーチ14はマニピュレータM1の先端の出力フランジ40に対してブラケット50を介して取付けされている。出力フランジ40は、ベース部材12側から数えて第6軸の出力フランジである。溶接トーチ14は、溶加材としてのワイヤ15を内装し、図示しない送給装置によって送り出されたワイヤ15の先端とワークWとの間にアークを発生させ、その熱でワイヤ15を溶着させることによりワークWに対してアーク溶接を施す。アーム13間には複数のモータ(図示しない)が配設されており、モータの駆動によって溶接トーチ14を前後左右に自在に移動できるように構成されている。
【0025】
ロボット制御装置RCは、図2に示すようにコンピュータからなる。すなわち、ロボット制御装置RCはCPU(中央処理装置)20、マニピュレータM1を制御するための各種プログラムや、各種の開先形状に応じて用意された複数の画像解析プログラムを記憶する書換可能なEEPROM21や、作業メモリとなるRAM22、各種データを記憶する書換可能な不揮発性メモリからなる記憶部23を備える。EEPROM21には、マニピュレータM1に設けられた溶接トーチ14をツール座標系で作動するための第1プログラム及びレーザセンサLSをカメラ座標系で作動するための第2プログラムが格納されている。切替キー43が切替操作されることにより、前記第1プログラム又は第2プログラムが実行され、実行されたプログラムに従ってマニピュレータM1を作動する。以下、第1プログラムが起動された場合を第1モードに設定されたとし、第2プログラムが起動された場合を第2モードに設定されたという。なお、本実施形態ではEEPROM21に各種プログラムを格納したが、限定するものではなく、フラッシュメモリ等の他のメモリ、或いは記憶装置に格納していてもよい。
【0026】
EEPROM21には、前記第2プログラムの他に、後述する変換行列及び視野範囲のデータが含まれている。CPU20は、ロボット制御手段に相当する。EEPROM21は変換行列記憶手段、視野範囲記憶手段に相当する。
【0027】
記憶部23は、第1記憶領域23a、及び第2記憶領域23b等の記憶領域を有する。第1記憶領域23aはレーザセンサLSにて視野範囲FOV(図3(a)、(b)及び図4参照)を測定して得られた距離情報(測距データ)を記憶するための領域である。第2記憶領域23bは、教示時にキーボード41にて入力された狙い角、前進後退角、教示点の位置(教示位置)、及び教示位置において入力された位置決め命令、直線補間命令等の各種命令や、センシング時におけるレーザセンサLSの位置姿勢、及び溶接トーチ14の各教示点における位置姿勢の教示データを記憶する。
【0028】
ロボット制御装置RCは、前記モータを駆動制御することにより、予め設定された教示データの主軌道に沿って溶接トーチ14を動作させる。又、ロボット制御装置RCは、溶接電流及び溶接電圧といった溶接条件を溶接電源WPSに対して出力し、溶接電源WPSからパワーケーブルPKを通じて供給される電力によって溶接作業を行わせる。
【0029】
レーザセンサLSは、レーザの発光及び受光によりワークWまでの距離を測定する走査型のレーザセンサであり、溶接トーチ14に搭載される。レーザセンサLSは、レーザをワークWに向けて発光する発光部と、ワークWで反射したレーザを受光する受光部等(ともに図示しない)を備える。前記発光部で発光されたレーザは、ワークWで乱反射され、受光部で受光される。受光部は、例えばCCDラインセンサ(ラインレーザセンサ)により構成されており、視野範囲FOVにおけるレーザセンサLSからワークWまでの距離を測定するようにされている。
【0030】
又、ロボット制御装置RCは、レーザセンサLSを制御し、測定されるレーザセンサLSとワークW間の距離(距離情報)に基づいて開先位置を検出する。
本実施形態では、取付環境の事情によりレーザ照射方向がツール座標系のいずれかの軸とは平行とはならないようにレーザセンサLSが溶接トーチ14に対して取り付けられている。なお、ツール座標系は、図4に示すように、ツールである溶接トーチ14の軸心にZT軸を一致させるとともに、XT軸を溶接進行方向に向けられている。又、カメラ座標系は、レーザセンサLSの視野範囲FOV中に設定された座標系である。視野範囲FOVの形状は、センサ正面から見ると、一般に図3(a)に示すように台形となる場合が多い。なお、視野範囲FOVの形状は、レーザセンサの照射範囲となるものであって、レーザセンサの仕様によって台形とならないものもあることが知られている。従って、視野範囲FOVの形状は、台形に限定されるものではない。例えば、視野範囲FOVの形状は円錐台、三角形、或いは直線等でも良い。
【0031】
本実施形態の視野範囲FOVを、説明の便宜上、二等辺台形であるとして、話を進める。この場合、本実施形態では、この台形の範囲を、カメラ座標系の基準での台形の各頂点の座標値で表し、EEPROM21に格納されている。又、EEPROM21には、レーザセンサLSのカメラ座標系データ(すなわち、キャリブレーションデータ)が格納されている。図3(a)では、下辺の中心位置をカメラ座標系原点としており、このカメラ座標系での台形の下辺の両端の座標値、及び、上辺の両端の座標値を一例として数値で具体的に示している。なお、図3(a)で示す座標値(数値)は一例であって、限定するものではない。
【0032】
そして、図3(a)、(b)に示すようにカメラ座標系は、右手直交座標系であって、視野範囲FOVを含む面の高さ方向をZc軸方向とし、視野範囲FOVの下辺に直交するとともに溶接進行方向側の軸をXc軸方向とし、下辺に含まれる軸をYc軸としている。又、視野範囲FOV内には、カメラ座標系で表される参照点Sが設定されている。参照点Sは、図3(b)では、視野範囲FOVの中心に位置しているが、限定するものではなく、視野範囲FOVに含まれる点であればよい。例えば、参照点Sをカメラ座標系の原点としてもよい。参照点Sの座標値は、EEPROM21に格納されている。
【0033】
前述したように、本実施形態ではレーザ照射方向がツール座標系のいずれの軸とも平行とはならないようにレーザセンサLSが溶接トーチ14に対して取り付けられているため、図3(b)に示すように、視野範囲FOVは、ツール座標系のZT軸とは平行になっていない関係となっている。又、レーザセンサLS、溶接トーチ14の先端から溶接進行方向側に所定距離離間した位置にレーザ照射するようにされている。
【0034】
(カメラ座標系とツール座標系との関係を表す変換行列)
ここで、カメラ座標系とツール座標系との関係を表す変換行列を説明する。
図4には、溶接トーチ14に関するツール座標系と、レーザセンサLS、カメラ座標系及びメカニカルインターフェース座標系の関係を示している。
【0035】
レーザセンサLSで得られた開先位置に、指定したレーザセンサLS姿勢で移動できるロボットのポーズ(姿勢)を求めるためには、ツール座標系とカメラ座標系の変換行列TTCが必要となる。
【0036】
図4において、マニピュレータM1が6軸ロボットを構成している場合、ロボットの第6軸の中心である出力フランジ40を原点とするメカニカルインターフェース座標系(XM,YM,ZM)から、カメラ座標系(Xc,Yc,Zc)への変換行列は、J6TCである。又、メカニカルインターフェース座標系(XM,YM,ZM)から、ツール座標系(XT,YT,ZT)への変換行列は、J6TTである。ツール座標系からカメラ座標系の変換行列はTTCである。
【0037】
このとき、ツール座標系から見たカメラ座標系への変換行列TTCは、以下のように、
【0038】
【数1】
で求められる。
【0039】
この変換行列TTCは、前記第2プログラムが実行されたとき使用される。
ロボット制御装置RCには、溶接作業が行われる前に、溶接が行われる際のマニピュレータM1の動作及び溶接条件等を示す教示データがティーチペンダントTPを介して入力され記憶部23の第2記憶領域23bに記憶されている。なお、以下では、特に断らない限り、「教示する」とはティーチペンダントTPを使用して入力することをいう。
【0040】
(作用)
さて、上記のように構成されたアーク溶接ロボット制御システム10の作用を説明する。なお、説明の便宜上、ティーチペンダントTPの切替キー43により、ツール座標系で溶接トーチ14の位置姿勢を行う側に設定されているものとする。すなわち、切替キー43により第1モードに設定されて第1プログラムが起動されており、ティーチペンダントTPにより教示操作することにより、従来と同様に溶接トーチ14の位置姿勢を教示する教示モードとなっている。従って、この教示モードでは、溶接トーチ14の位置姿勢は、ツール座標系で教示される。
【0041】
ここで、切替キー43をオペレータが操作することにより第1モードから第2モード(センシング教示モード)に切替する。すると、ロボット制御装置RCのCPU20は、第2プログラムを実行する。この第2プログラムでは、CPU20は、ティーチペンダントTPからの操作キーの操作、例えば、「−X」キー及び「X+」キー、「−Y」キー及び「Y+」キー及び「−Y」キー、「−Z」キー及び「Z+」キーを操作すると、CPU20は、前記変換行列TTCを使用して、カメラ座標系の制御点を基準としてマニピュレータM1の位置姿勢制御を行う。すなわち、CPU20は、第1モードではツール座標系の制御点(第1制御点)の位置を制御対象として制御していた代わりに、第2モードでは、カメラ座標系の参照点(第2制御点)の位置を制御対象として制御することになる。
【0042】
図5(a)、図5(b)では、レーザセンサLSが、カメラ座標系のXc,Yc,Zc軸方向にそれぞれ移動することが図示されている。このため、カメラ座標系のYc方向やZc方向に操作をしても、ワークWに対するレーザの照射位置は検出したい開先位置(すなわち、検出点)を通る平面を常に照射する。そのため、従来と異なりツール座標系のX軸、Y軸またはZ軸上を細かく動かし微調整することを繰り返す必要がなくなる。
【0043】
本実施形態のアーク溶接ロボット制御システム10によれば、下記の特徴がある。
(1) 本実施形態のアーク溶接ロボット制御システム10は、レーザセンサLSのカメラ座標系の視野範囲FOV、及びツール座標系とカメラ座標系の変換行列を記憶するEEPROM21(視野範囲記憶手段、変換行列記憶手段)を備える。又、ツール座標系の第1制御点を制御対象とする第1モードから、カメラ座標系の第2制御点を制御対象とする第2モードに切り替える切替キー43(切替手段)を備える。そして、ロボット制御装置RCのCPU20(ロボット制御手段)は、第2モードでは、ティーチペンダントTP(操作手段)による操作がされた際、前記変換行列に基づいて第2制御点を、制御対象として、マニピュレータM1の位置姿勢制御を行う。この結果、本実施形態によれば、手動運転時において、レーザセンサLSのセンシング点(検出点)を教示しやすいロボット制御システムを提供できる。
【0044】
(2) 本実施形態のアーク溶接ロボット制御システム10では、EEPROM21(視野範囲記憶手段)は、レーザセンサLSの視野範囲FOVに含まれる参照点を、前記カメラ座標系の基準で記憶する。又、CPU20(ロボット制御手段)は、第2モードでは、ティーチペンダントTP(操作手段)により操作がされた際、変換行列に基づいて参照点Sを第2制御点として、マニピュレータM1の位置姿勢制御を行う。
【0045】
この結果、本実施形態によれば、カメラ座標系のYc方向やZc方向に操作をしても、ワークWに対するレーザセンサの照射位置は検出対象部位の位置(開先位置)を通る平面を常に照射する。このため、オペレータは、ティーチペンダントTPを操作すると、カメラ座標系でマニピュレータM1の位置姿勢制御が行われるため、ツール座標系では、X軸、Y軸またはZ軸上を細かく動かし微調整することを繰り返して行っていた場合と異なり、容易にレーザセンサLSの位置・姿勢を調整することができる。
【0046】
特に、レーザセンサLSのカメラ座標系データ(すなわち、キャリブレーションデータ)をロボット制御装置RCで保持することにより、カメラ座標系に沿ってロボットを移動できる。そして、カメラ座標系のYc方向やZc方向に操作をすれば、ワークWに対して検出したい開先位置を通る平面を常にレーザ照射できるとともに、センシング点(検出点)を教示しやすくなる。
【0047】
(第2実施形態)
次に、第2実施形態を図6、図7(a)〜(c)を参照して説明する。なお、第2実施形態のアーク溶接ロボット制御システム10のハード構成は、第1実施形態と同一であるため、前記実施形態と同一構成については、同一符号を付して重複説明を省略し、ソフト的な構成の相違を中心に説明する。
【0048】
本実施形態の第2プログラムでは、切替キー43を第1モードから第2モードに切替操作すると、第2モードでは、レーザセンサLSがワークWの開先を検出した際、その開先における検出点Kを参照点Sの代わりにカメラ座標系の第2制御点とするところが第1実施形態の第2プログラムと異なっている。
【0049】
具体的に説明すると、第1モードにおいて、視野範囲FOVにワークWがあるように溶接トーチ14先端を移動した上で開先を検出できた場合に、オペレータは、切替キー43を操作して、第2モードに切り替える。
【0050】
すると、CPU20は、ツール座標系の第1制御点をカメラ座標系の基準である第2制御点へ切り替えるが、切替後は、この第2制御点として、開先上の検出点Kに切り替えられる。
【0051】
この状態で、キーボード41の操作キーのうち、X軸の周りで回転させる操作キーを操作して、例えば、カメラ座標系のXC軸周りで回転させると、カメラ座標系のXC軸上の検出点Kを移動することなく、ワークWに対するレーザセンサLSの姿勢調整が行える。なお、この姿勢調整際、CPU20は、前記変換行列を使用して、姿勢調整のための演算を行う。
【0052】
例えば、図6は、第1モードで、検出対象部位であるワークWの開先がレーザセンサLSにより検出されたところを表している。図7(a)〜(c)は、前記姿勢調整によりレーザセンサLSがXc軸周りで回転(姿勢調整)が行われているところが示されている。
【0053】
このように切替キー43により第2モードに切り替えると、検出点Kを移動せずにワークWに対するレーザセンサLSの姿勢調整ができるため、ワークWに合うレーザセンサLSの角度調整がより簡単になる。
【0054】
なお、上記では、Xc軸周りのレーザセンサLSの姿勢調整を説明したが、Yc軸周り、及びZc軸周りの調整も、キーボード41のY,Z軸周りでの回転角度を付与する操作キーを操作する。このことにより、上記と同様に検出点Kを移動せずにワークWに対するレーザセンサLSの姿勢調整を行うことが可能である。
【0055】
前記X(Xc),Y(Yc),Z(Zc)軸の周りで回転する回転指示をCPU20に出力するキーボード41の操作キーは軸周り回転指示手段に相当する。
本実施形態では下記の特徴がある。
【0056】
(3) 本実施形態では、レーザセンサLSが視野範囲FOVに含まれる開先を検出した後、切替キー43により第2モードに切り替えられると、CPU20はティーチペンダントTPによる操作がされた際、変換行列に基づいてレーザセンサLSが検出した検出点を第2制御点として、マニピュレータM1の位置姿勢制御を行う。従って、本実施形態によれば、レーザセンサLSが検出した検出点を移動せずにワークWに対するレーザセンサLSの姿勢調整ができるため、ワークWに合うレーザセンサLSの角度調整が従来より簡単になる。
【0057】
(第3実施形態)
次に、第3実施形態を図8(a)、(b)及び図9(a)〜(c)を参照して説明する。なお、第3実施形態のアーク溶接ロボット制御システム10のハード構成は、第1実施形態と略同一であるため、前記実施形態と同一構成については、同一符号を付して重複説明を省略し、ソフト的な構成の相違を中心に説明する。
【0058】
本実施形態の第2プログラムでは、参照点Sを、所望の開先上に移動できるところが、第1実施形態の第2プログラムと異なっている。
具体的に説明すると、従来と同様にしてティーチペンダントTPを操作して、第1モードにおいて、図8(a)、及び図9(a)に示すように検索対象部位であるワークWの開先に溶接トーチ14の先端を移動する。この場合、溶接トーチ14の先端に位置する、検索対象部位としてのワークWの開先上の点Aの位置は、CPU20には既知となっている。又、溶接トーチ14の先端を移動させるにあたり、レーザセンサLSから出力されるレーザが開先に当たるように位置させる(必ずしも開先が視野範囲FOV内となるように位置させる必要はない)。さらに、溶接トーチ14の前進後退角が0度又はほぼ0度に近い角度としておく。
【0059】
この状態で、切替キー43により第1モードから第2モードに切替操作すると、第3実施形態の第2プログラムでは、CPU20は、既知であるワークWの開先位置及び既知である式(1)により、操作する直前に溶接トーチ14先端があった開先上の点Aに参照点Sを移動する(図8(b)、及び図9(b)参照)。
【0060】
又、キーボード41には、第2モードになった場合、レーザセンサLSの姿勢を、調整前と同じ姿勢を保持(以下、姿勢S1という)するか、或いは、カメラ座標系で点Aのツール座標系基準の予め設定された姿勢角度の姿勢(以下、姿勢S2という)となるように姿勢変化するかを選択する選択キーが設けられている。前記第2モードに切替える前に、この選択キーで予めいずれかを選択することにより、CPU20は、選択された姿勢S1,又は姿勢S2で、レーザセンサLSの姿勢が所望値となるよう、マニピュレータM1を制御する。図9(b)は、姿勢S1が選択された場合、すなわち、図9(a)に示す調整前と同じ姿勢が保持された状態を示している。図9(c)は、姿勢S2が選択されたレーザセンサLSの姿勢を示している。
【0061】
本実施形態では下記の特徴がある。
(4) 本実施形態では、EEPROM21(視野範囲記憶手段)は、レーザセンサLSの視野範囲FOVに含まれる参照点Sを、カメラ座標系の基準で記憶する。
【0062】
又、溶接トーチ14の先端が、ワークWの開先(検出対象部位)に位置している状態で、切替キー43(切替手段)により切り替えると、CPU20は、参照点Sを第2制御点とし、かつ、参照点Sが前記開先に位置するようにマニピュレータM1の位置姿勢制御を行う。この結果、本実施形態によれば、レーザセンサLSによる検出点認識を調整する前であっても、ワークWに対してほぼ適切な位置に教示を行うことできる。
【0063】
すなわち、溶接トーチ14(ツール)先端を開先付近に移動後、切替キー43をワンタッチでレーザセンサLSの視野範囲FOVの参照点Sに開先がくるようにロボットを移動できる。
【0064】
なお、本発明は前記実施形態に限定されるものではなく、下記のように構成してもよい。
・ 前記実施形態のレーザセンサLSは、ラインレーザセンサを使用したが、レーザをミラーに当てて走査するスキャニング型のレーザセンサに代えてもよい。
【0065】
・ 前記各実施形態では、アーク溶接ロボット制御システムに具体化したが、他の産業ロボット制御システムにおいて、レーザセンサとツールをマニピュレータの先端に備えたものに具体化することは勿論可能である。
【0066】
・ 前記各実施形態では、マニピュレータM1は6軸ロボットにより構成したが、軸数は6軸に限定するものではなく、4軸、5軸,7軸等の他の軸数を有するロボットでもよい。
【符号の説明】
【0067】
M1…マニピュレータ、LS…レーザセンサ、
RC…ロボット制御装置、
TP…ティーチペンダント(操作手段)、
10…アーク溶接ロボット制御システム、
13…アーム、14…溶接トーチ(ツール)、
20…CPU(ロボット制御手段)、
21…EEPROM(変換行列記憶手段、視野範囲記憶手段)、
43…切替キー(切替手段)。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ツール及びレーザセンサを備えたマニピュレータと、このマニピュレータを手動操作するための操作手段と、前記マニピュレータを駆動制御するロボット制御手段を備え、前記操作手段の操作により前記ロボット制御手段を介して前記マニピュレータを予め定められたツール座標系を基準として駆動制御するロボット制御システムにおいて、
前記レーザセンサのカメラ座標系の視野範囲を記憶する視野範囲記憶手段と、前記ツール座標系とカメラ座標系の変換行列を記憶する変換行列記憶手段と、前記ツール座標系の制御点(以下、第1制御点という)を制御対象とする第1モードから、前記カメラ座標系の制御点(以下、第2制御点という)を制御対象とする第2モードに切り替える切替手段を備え、
前記ロボット制御手段は、第2モードでは、前記操作手段による操作がされた際、前記変換行列に基づき、前記第2制御点を制御対象として前記マニピュレータの位置姿勢制御を行うことを特徴とするロボット制御システム。
【請求項2】
前記視野範囲記憶手段は、前記レーザセンサの視野範囲に含まれる参照点を、前記カメラ座標系の基準で記憶し、
前記ロボット制御手段は、前記第2モードでは、前記操作手段による操作がされた際、前記変換行列に基づき、前記参照点を前記第2制御点として前記マニピュレータの位置姿勢制御を行うことを特徴とする請求項1に記載のロボット制御システム。
【請求項3】
前記レーザセンサが前記視野範囲に含まれる検出対象部位を検出した後に、前記切替手段により前記第2モードに切り替えられた後は、前記ロボット制御手段は、前記操作手段による操作がされた際、前記変換行列に基づいて前記レーザセンサが検出した検出対象部位の点を第2制御点として、前記マニピュレータの位置姿勢制御を行うことを特徴とする請求項1に記載のロボット制御システム。
【請求項4】
前記視野範囲記憶手段は、前記レーザセンサの視野範囲に含まれる参照点を、カメラ座標系の基準で記憶し、
ツール先端が、ワークの検出対象部位に位置している状態で、前記切替手段により前記第2制御点に切り替えられた場合、
前記ロボット制御手段は、前記参照点を第2制御点とし、かつ、前記参照点が前記検出対象部位に位置するように前記マニピュレータの位置姿勢制御を行うことを特徴とする請求項1に記載のロボット制御システム。
【請求項1】
ツール及びレーザセンサを備えたマニピュレータと、このマニピュレータを手動操作するための操作手段と、前記マニピュレータを駆動制御するロボット制御手段を備え、前記操作手段の操作により前記ロボット制御手段を介して前記マニピュレータを予め定められたツール座標系を基準として駆動制御するロボット制御システムにおいて、
前記レーザセンサのカメラ座標系の視野範囲を記憶する視野範囲記憶手段と、前記ツール座標系とカメラ座標系の変換行列を記憶する変換行列記憶手段と、前記ツール座標系の制御点(以下、第1制御点という)を制御対象とする第1モードから、前記カメラ座標系の制御点(以下、第2制御点という)を制御対象とする第2モードに切り替える切替手段を備え、
前記ロボット制御手段は、第2モードでは、前記操作手段による操作がされた際、前記変換行列に基づき、前記第2制御点を制御対象として前記マニピュレータの位置姿勢制御を行うことを特徴とするロボット制御システム。
【請求項2】
前記視野範囲記憶手段は、前記レーザセンサの視野範囲に含まれる参照点を、前記カメラ座標系の基準で記憶し、
前記ロボット制御手段は、前記第2モードでは、前記操作手段による操作がされた際、前記変換行列に基づき、前記参照点を前記第2制御点として前記マニピュレータの位置姿勢制御を行うことを特徴とする請求項1に記載のロボット制御システム。
【請求項3】
前記レーザセンサが前記視野範囲に含まれる検出対象部位を検出した後に、前記切替手段により前記第2モードに切り替えられた後は、前記ロボット制御手段は、前記操作手段による操作がされた際、前記変換行列に基づいて前記レーザセンサが検出した検出対象部位の点を第2制御点として、前記マニピュレータの位置姿勢制御を行うことを特徴とする請求項1に記載のロボット制御システム。
【請求項4】
前記視野範囲記憶手段は、前記レーザセンサの視野範囲に含まれる参照点を、カメラ座標系の基準で記憶し、
ツール先端が、ワークの検出対象部位に位置している状態で、前記切替手段により前記第2制御点に切り替えられた場合、
前記ロボット制御手段は、前記参照点を第2制御点とし、かつ、前記参照点が前記検出対象部位に位置するように前記マニピュレータの位置姿勢制御を行うことを特徴とする請求項1に記載のロボット制御システム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2011−253300(P2011−253300A)
【公開日】平成23年12月15日(2011.12.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−126079(P2010−126079)
【出願日】平成22年6月1日(2010.6.1)
【出願人】(000000262)株式会社ダイヘン (990)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年12月15日(2011.12.15)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年6月1日(2010.6.1)
【出願人】(000000262)株式会社ダイヘン (990)
【Fターム(参考)】
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