ロボット及びロボット駆動方法
【課題】コンデンサー電圧が過大にならないように回生エネルギーを簡便に蓄電する方法を提供する。
【解決手段】目標位置に向かって移動している可動部に対して、目標位置に向かう方向とは逆方向の駆動力である予備制動力を作用させて予備減速速度まで減速させる予備減速を行わせる予備減速工程S103により予備減速速度まで減速してから、目標位置に向かう方向とは逆方向の駆動力である制動力を作用させて減速させることにより、可動部を目標位置に停止させる減速停止工程S105により目標位置に停止する。この時、予備減速速度設定工程S101では、停止時でのコンデンサー電圧が最大管理電圧以下になるように予備減速速度を設定する。
【解決手段】目標位置に向かって移動している可動部に対して、目標位置に向かう方向とは逆方向の駆動力である予備制動力を作用させて予備減速速度まで減速させる予備減速を行わせる予備減速工程S103により予備減速速度まで減速してから、目標位置に向かう方向とは逆方向の駆動力である制動力を作用させて減速させることにより、可動部を目標位置に停止させる減速停止工程S105により目標位置に停止する。この時、予備減速速度設定工程S101では、停止時でのコンデンサー電圧が最大管理電圧以下になるように予備減速速度を設定する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロボットの可動部を駆動する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
近年のロボット技術の進歩により、工業製品の製造現場では、多くのロボットが導入されている。例えば、工業製品の組み立てラインでは、ラインに沿って複数台のロボットが設置され、ライン上を流れる製造中の製品に対して、ロボットが自動で各種の部品を組み付けることで、生産効率を向上させることが広く行われている。あるいは、このようなロボットが組み付ける部品をラインサイドまで搬送する際にも、ロボットを用いて部品を搬送することで、工場全体としての生産効率を向上させることも広く行われている。
【0003】
ロボットを導入すれば、作業者を危険な作業から開放することが可能となり、あるいは、ロボットは全く同じ動作を繰り返すことができるので作業精度が向上する等、多くの利点が得られるが、時間あたりの作業量の増加に伴って生産性の向上が可能となることも大きな利点として挙げられる。もっとも、ロボットの導入時には多額の初期費用が必要となる。そこで、この初期費用を回収するためにも、ロボットにはできるだけ高い生産性が望まれる。そして、生産性を向上させるために、ロボットの動作速度をできるだけ高くする方法が特許文献1に開示されている。これによると、ロボットアーム等の可動部分を目標位置まで移動させる際には、可動部分をできるだけ短時間で最高速度まで加速した後に最高速度で定速移動させている。次に、目標位置の手前に達したら最高速度から急減速して目標位置に停止させる制御が行われる。
【0004】
例えば、ロボットアーム等のロボットの可動部分はかなりの重量を有することが通常である。このため、最高速度で移動している状態から停止させる際には、大きな運動エネルギーが放出される。そして、放出される運動エネルギーの大きさは、ロボットの生産性を向上させるために可動部分の移動速度を高くすればするほど大きくなる。従って、この運動エネルギーを熱として捨ててしまったのでは、生産性を向上させるためにロボットの動作速度を高くしても、それに伴ってロボットを動作させるためのエネルギーが増加することになる。従って、十分に生産性を向上させることが困難となる。尚、ロボットアーム等の可動部分を停止させる際に放出されるエネルギーは、回生エネルギーと呼ばれることがある。そして、特許文献2及び特許文献3にはロボットアーム等の可動部分を停止させる際に発生する回生エネルギーを電気エネルギーとして回収するようにした技術が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平9−311713号公報
【特許文献2】特許第3655056号公報
【特許文献3】特開2007−159213号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
回生エネルギーを回収する技術を用いるときコンデンサー電圧が最大定格電圧(以下最大管理電圧と称す)より過大にならないように特別な回路や制御が必要となる。従って、ロボットの制御装置が複雑になる。そこで、簡便な方法でコンデンサー電圧が過大にならないように回生エネルギーを回収する方法が求められていた。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態または適用例として実現することが可能である。
【0008】
[適用例1]
本適用例に係るロボット駆動方法は、本体部と前記本体部に対して移動可能に構成された可動部とを備えるロボット駆動方法であって、停止している前記可動部に対して、所定の目標位置に向かう方向の駆動力を作用させ、前記可動部を前記目標位置に向けて加速、及び定速駆動させる加速定速工程と、前記目標位置に向かって移動している前記可動部に対して、前記目標位置に向かう方向とは逆方向の駆動力である予備制動力を作用させて予備減速速度まで減速させる予備減速工程と、前記可動部を前記予備減速速度から前記目標位置に向かう方向とは逆方向の駆動力である制動力を作用させて減速させ、前記可動部を前記目標位置に停止させる減速停止工程と、前記予備減速速度を設定する予備減速速度設定工程と、を有し、前記予備減速工程、または前記減速停止工程では、前記予備減速速度から停止するまでに発生する回生エネルギーをコンデンサーに蓄電し、前記予備減速速度設定工程では、停止時でのコンデンサー電圧が最大管理電圧以下になる範囲で前記コンデンサー電圧が高い場合には前記予備減速速度を低く設定し、前記コンデンサー電圧が低い場合には前記予備減速速度を高く設定することを特徴とする。
【0009】
本適用例によれば、加速定速工程において、停止している可動部に対して、所定の目標位置に向かう方向の駆動力を作用させて、可動部を目標位置に向けて加速、及び定速駆動させている。予備減速工程では目標位置に向かって移動している可動部に対して、目標位置に向かう方向とは逆方向の駆動力である予備制動力を作用させて予備減速速度まで減速させている。減速停止工程では、可動部を予備減速速度から目標位置に向かう方向とは逆方向の駆動力である制動力を作用させて減速させて、可動部を目標位置に停止させている。予備減速工程、または減速停止工程では、予備減速速度から停止するまでに発生する回生エネルギーをコンデンサーに蓄電している。
【0010】
予備減速速度設定工程では予備減速速度を設定している。このとき、停止時でのコンデンサー電圧が最大管理電圧以下になるように予備減速速度を設定する。最大管理電圧はコンデンサーを安全に使用可能な電圧範囲のうち最大の電圧を示す。これにより、最大管理電圧までコンデンサーに蓄電することが可能である。そして、予備減速速度の設定により、停止時でのコンデンサー電圧が最大管理電圧以下にしている。従って、コンデンサー電圧が最大管理電圧以下になるように電圧を制御する回路が不要となる為、簡便な方法でコンデンサー電圧が過大にならないように回生エネルギーを回収することができる。さらに、コンデンサー電圧が高い場合には予備減速速度を低く設定し、コンデンサー電圧が低い場合には予備減速速度を高く設定している。従って、停止時のコンデンサー電圧が高くなるように予備減速速度を設定している為、生産性良く回生エネルギーをコンデンサーに蓄電することができる。
【0011】
[適用例2]
上記適用例に記載のロボット駆動方法では、前記予備減速速度設定工程は、前記コンデンサー電圧を検出する電圧検出工程と、前記コンデンサー電圧に対応する前記予備減速速度のテーブルを参照し前記コンデンサー電圧を用いて、停止時に最大管理電圧以下になるように前記予備減速速度を演算する予備減速速度演算工程と、を有することが望ましい。
【0012】
本適用例によれば、電圧検出工程にてコンデンサー電圧を検出している。そして、予備減速速度演算工程では検出したコンデンサー電圧とコンデンサー電圧に対応する予備減速速度のテーブルとを参照し、停止時に最大管理電圧以下になるように予備減速速度を演算している。従って、最大管理電圧までコンデンサーに蓄電することが可能な予備減速速度を簡便な方法で演算できる。
【0013】
[適用例3]
上記適用例に記載のロボット駆動方法では、前記予備減速速度設定工程は、前記可動部の負荷重量を設定する負荷重量設定工程をさらに有し、前記予備減速速度演算工程では前記負荷重量と前記コンデンサー電圧に対応する前記予備減速速度のテーブルを参照し前記コンデンサー電圧と前記負荷重量とを用いて、停止時に最大管理電圧以下になるように前記予備減速速度を演算することが望ましい。
【0014】
本適用例によれば、可動部の負荷重量が変更された場合に、負荷重量設定工程にて負荷重量を設定している。そして、負荷重量とコンデンサー電圧に対応する予備減速速度のテーブルを参照している。これにより、簡便に最大管理電圧までコンデンサーに蓄電することが可能な負荷重量に対応した予備減速速度を演算できる。従って、ロボット減速時に発生する回生エネルギーを可動部の負荷重量に応じて最大限蓄電することができる。
【0015】
[適用例4]
上記適用例に記載のロボット駆動方法では、前記予備減速速度設定工程は、前記コンデンサー電圧を検出する電圧検出工程と、前記コンデンサー電圧と前記予備減速速度との関係を示す予備減速速度係数を設定する予備減速速度係数設定工程と、前記コンデンサー電圧と前記予備減速速度係数とを用いて停止時に最大管理電圧以下になるように前記予備減速速度を演算する予備減速速度演算工程と、を有することが望ましい。
【0016】
本適用例によれば、電圧検出工程においてコンデンサー電圧を検出している。そして、予備減速速度係数設定工程ではコンデンサー電圧と予備減速速度との関係を示す予備減速速度係数を設定している。予備減速速度演算工程ではコンデンサー電圧と予備減速速度係数とを用いて停止時に最大管理電圧以下になるように予備減速速度を演算している。従って、簡単な演算により最大管理電圧までコンデンサーに蓄電することが可能な予備減速速度を演算できる。
【0017】
[適用例5]
本適用例に係るロボットは、本体部と、前記本体部に対して移動可能に設置された可動部と、前記可動部を電流にて駆動するモーターと、前記モーターを制御する駆動制御部と、を備え、前記駆動制御部は、前記可動部の移動速度を出力する軌道生成部と、前記移動速度に対応して前記モーターを駆動する電流量を出力する位置・速度制御部と、前記電流量に対応してパルス波形のデューティー比を出力する電流制御部と、前記デューティー比の前記パルス波形を形成するパルス幅変調部と、前記モーターに流動する電流と前記モーターが発電する電流とを蓄えるコンデンサーと、前記コンデンサーの電気を用いて前記パルス波形に対応する駆動波形にて前記モーターを駆動するインバーターと、を備え、前記軌道生成部は前記コンデンサーの電圧に応じて前記移動速度を出力することを特徴とする。
【0018】
本適用例によれば、ロボットは本体部を備えている。本体部には可動部が移動可能に設置されている。可動部はモーターによって電流にて駆動され、モーターは駆動制御部に制御される。駆動制御部は軌道生成部、位置・速度制御部、電流制御部、パルス幅変調部、コンデンサー、インバーターを備えている。軌道生成部はコンデンサーの電圧に応じて移動速度を位置・速度制御部に出力する。位置・速度制御部は移動速度に対応してモーターを駆動する電流量を電流制御部に出力する。電流制御部は電流量に対応してパルス波形のデューティー比をパルス幅変調部に出力する。パルス幅変調部はデューティー比のパルス波形を形成する。
【0019】
コンデンサーはモーターに流動する電流とモーターが発電する電流とを蓄える。そして、インバーターはコンデンサーの電気を用いてパルス波形に対応する駆動波形にてモーターを駆動する。これにより、モーターは軌道生成部の出力する移動速度に対応して駆動される。可動部が減速するときモーターには電気が充電される。このとき、モーターが減速する前の速度は制御されているので、コンデンサーに充電される電気の量は制御される。従って、コンデンサーには安全に充電可能な電圧である最大管理電圧まで蓄電することができる。モーターの速度を制御することによりコンデンサーの電圧が制御されている。従って、コンデンサー電圧が最大管理電圧以下になるように電圧を制御する回路が不要となる為、簡便な方法でコンデンサー電圧が過大にならないように回生エネルギーを回収することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】実施形態1に係るロボットの構成を示す概略構成図。
【図2】ロボットの動作範囲を示す模式上面図。
【図3】可動部の動作工程を示すフローチャート。
【図4】駆動部の回路構成を示すブロック図。
【図5】(a)は、可動部の速度変化を説明するための図、(b)は、コンデンサーの電圧変化を説明するための図。
【図6】比較例に係る(a)は、比較例における可動部の速度変化を説明するための図、(b)は、コンデンサーの電圧変化を説明するための図。
【図7】実施形態2に係る可動部の動作工程を示すフローチャート。
【図8】コンデンサー電圧予備減速速度対応テーブルを説明するための図。
【図9】駆動部の回路構成を示すブロック図。
【図10】(a)は、可動部の速度変化を説明するための図、(b)は、コンデンサーの電圧変化を説明するための図。
【図11】(a)は、可動部の速度変化を説明するための図、(b)は、コンデンサーの電圧変化を説明するための図。
【図12】実施形態3に係る可動部の動作工程を示すフローチャート。
【図13】負荷と予備減速速度対応テーブルを説明するための図。
【図14】変形例に係るコンデンサー電圧負荷有無予備減速速度対応テーブルを説明するための図。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して説明する。尚、以下の各図においては、各層や各部材を認識可能な程度の大きさにするため、各層や各部材の尺度を実際とは異ならせしめている。
【0022】
(実施形態1)
図1は、ロボットの構成を示す概略構成図である。図1に示すようにロボット10は、本体部11と可動部12で構成されている。可動部12は、本体部11に対して回転移動が可能な態様で設けられており、本体部11には可動部12を回転させるための動力を発生させるモーターや制御部等の駆動部20が内蔵されている。駆動部20はコンデンサーを備え、モーターの回転により生成される回生エネルギーを蓄電可能になっている。
【0023】
図2は、ロボットの動作範囲を示す模式上面図である。図2に示すように可動部12は同心円を描くように動作する。可動部12が動作開始する場所を位置(A)12aとし動作を終了する場所を位置(B)12bとする。そして、本実施形態では可動部12が位置(A)12aから位置(B)12bまで移動する例を用いて説明する。
【0024】
図3は、可動部の動作工程を示すフローチャートである。図3において、ロボット駆動開始S100では、可動部12は位置(A)12aに位置している。予備減速速度設定工程S101では、急減速しても回生エネルギーによりコンデンサー電圧が最大管理電圧以下となるような予備減速速度を設定する。この予備減速速度の設定方法は、例えば、実験を繰り返して試行錯誤的に決めることが可能である。予備減速速度を小さい値から段々と大きくしていくことで、目標位置に達した際のコンデンサー電圧が大きくなっていく。従って、目標位置に達した際のコンデンサー電圧が所望の電圧値になるように予備減速速度を設定可能である。
【0025】
加速定速工程S102では、目標位置に向かう方向の駆動力を作用することにより、可動部12を目標位置に向けて加速、及び定速駆動させる。予備減速工程S103では、例えば、摩擦トルクを利用して予備制動力のみで緩やかに減速させる。そのため大きな回生エネルギーがモーターから生成されることがない。従って、コンデンサーは蓄電されない。ただし、大きな回生エネルギーがモーターから生成されるときにはコンデンサーに蓄電しても良い。速度判別S104では、速度と予備減速速度とを比較する。そして、速度が予備減速速度よりも大きい場合には予備減速工程を繰り返す。可動部12の速度が予備減速速度以下の場合には減速停止工程に移行する。減速停止工程S105では、目標位置に向かう方向とは逆方向の駆動力である制動力を作用させて位置(B)12bに停止させる。ロボット駆動終了S106では可動部12が位置(B)12bに停止し、可動部12の動作が終了する。
【0026】
従来の減速は減速停止工程のみであるため、非常に大きな回生エネルギーが生じ、その分コンデンサー電圧が上昇する。本実施形態では回生エネルギーが生じ難い予備減速工程S103がある。これにより、予備減速速度を調整することでコンデンサー電圧が最大管理電圧以下になるように回生エネルギーを制御することが可能となる。その結果、コンデンサーに過剰な電圧がかかってコンデンサーが損傷することを防止することができる。
【0027】
図4は、駆動部の回路構成を示すブロック図である。図4に示すように駆動部20は回路部100と駆動制御部104とを備えている。回路部100はAC電源101(ACは交流を示す)から電流が供給される。回路部100はダイオードブリッジ102を有し、ダイオードブリッジ102にAC電源101の電圧が印加される。ダイオードブリッジ102は電流を整流しコンデンサー103に電力を供給する。
【0028】
駆動部20はインバーター105を備え、コンデンサー103はインバーター105に電力を供給する。インバーター105はコンデンサー103に蓄電された電力を利用してロボット106を駆動する。インバーター105は駆動制御部104と接続され、駆動制御部104に制御される。インバーター105は抵抗115を介してロボット106に内蔵されたモーター116と接続されている。そして、インバーター105はモーター116を駆動する。モーター116の駆動軸にはエンコーダー112が接続され、エンコーダー112はモーター116の回転角度を検出する。
【0029】
駆動制御部104は予備減速判定部107を備え、予備減速判定部107はモード選択部108と接続されている。さらに、モード選択部108はパルス幅変調部114を介してインバーター105と接続されている。予備減速判定部107の指令に基づいてモード選択部108は通常の制御モードと予備減速モードとを切り替える。
【0030】
予備減速判定部107は軌道生成部としての予備減速速度設定部109と接続されている。そして、予備減速判定部107の判定は予備減速速度設定部109にて設定される予備減速速度に基づいて行われる。モード選択部108は軌道生成部110及び位置・速度制御部111と接続されている。これにより、軌道生成部110が出力する信号はモード選択部108を介して位置・速度制御部111に出力される。
【0031】
まず、通常の制御モードでは軌道生成部110が位置指令を生成し、モード選択部108を介して位置・速度制御部111に出力する。位置・速度制御部111はエンコーダー112と接続され、エンコーダー112が出力するモーター116の回転角度の信号を位置・速度制御部111が入力する。
【0032】
位置・速度制御部111には電流制御部113が接続され、電流制御部113にはパルス幅変調部114が接続されている。位置・速度制御部111はエンコーダー112が出力する情報に基づいて位置指令に追従するように電流指令を生成し電流制御部113に出力する。電流制御部113は電流指令を入力しモーター116を駆動する波形のデューティー比を演算する。電流制御部113は演算したデューティー比をパルス幅変調部114に出力する。パルス幅変調部114はデューティー比を入力し、デューティー比に基づいてインバーター105をスイッチングするスイッチング信号を生成する。尚、デューティー比はモーター116を駆動する時間と駆動しない時間とを合計した時間の内モーター116を駆動する時間の割合を示す。そして、パルス幅変調部114はスイッチング信号をインバーター105に出力し、インバーター105はスイッチング信号に基きモーター116を駆動する。これにより、モーター116は所定の位置まで所定の速度で回転する。
【0033】
他方、予備減速モードでは強制的にデューティー比が零になるように電流制御部113がパルス幅変調部114に指令を出す。これにより、回生エネルギーによるコンデンサー103への蓄電が行われ難くなり、ロボット10が備える減速装置等の機械的な摩擦等の損失により緩やかに減速する。予備減速工程S103において、通常の制御モードと予備減速モードとを速度に応じて切り替えることにより可動部12の回転速度を予備減速速度にすることができる。従って、減速停止工程S105においてコンデンサー電圧が最大管理電圧以下になるように回生エネルギーを制御することが可能となる。
【0034】
予備減速モードではモード選択部108の判断により直接パルス幅変調部114に対してスイッチング信号を全てLOW信号(インバーター105のスイッチング素子がONにならない信号)にしても良い。このとき、デューティー比は零にしなくても良い。この方法でも同様の効果が得られる。
【0035】
図5(a)は、可動部の速度変化を説明するための図である。図5(a)において、横軸は位置を示し、位置(A)12aから位置(B)12bの間の位置を示している。縦軸は可動部12が移動する速度を示し、上側が下側より早い速度となっている。そして、速度推移線117は可動部の速度変化の推移を示している。
【0036】
速度推移線117において位置(A)12aから位置(B)12bの間は加速区間117a、定速区間117b、予備減速区間117c、減速停止区間117dから構成されている。加速区間117aは位置Aから目標位置に向かう方向の駆動力を作用することにより可動部12を加速させる区間である。定速区間117bは摩擦等の損失に等しい駆動力を作用することにより一定速に保つ区間である。予備減速区間117cは機械的な摩擦等の損失により緩やかに減速する区間である。減速停止区間117dは目標位置に向かう方向とは逆方向の駆動力である制動力を作用させて位置Bに停止させる区間である。この順の区間を経て可動部12は位置(B)12bに到達する。
【0037】
予備減速区間117cでは、機械的な摩擦等の損失により可動部12が緩やかに減速するため、回生エネルギーによるコンデンサーへの蓄電が行われない。減速停止区間117dでは、目標位置に向かう方向とは逆方向の駆動力である制動力をモーター116が可動部12に作用させて位置(B)12bに停止させる区間であり、回生エネルギーが蓄電される区間である。
【0038】
図5(b)は、コンデンサーの電圧変化を説明するための図である。図5(b)において、横軸は位置を示し、位置(A)12aから位置(B)12bの間の位置を示している。縦軸はコンデンサー103の電圧を示し、上側が下側より大きな電圧となっている。そして、電圧推移線118はコンデンサー103の電圧変化の推移を示している。
【0039】
電圧推移線118が示すように、加速区間117a、定速区間117b、予備減速区間117cでは回生エネルギーが蓄電され難いためコンデンサー電圧は上昇しない。減速停止区間117dでは強制的に逆方向の駆動力を作用させるため回生エネルギーが蓄電されコンデンサー電圧が上昇している。この蓄電されたエネルギーは次の動作時の加速区間117aで利用される。予備減速速度設定工程S101では予備減速速度を設定している。このとき、停止時でのコンデンサー電圧が最大管理電圧以下になるように予備減速速度を設定する。最大管理電圧はコンデンサーを安全に使用可能な電圧範囲のうち最大の電圧を示す。従って、可動部12が位置(B)12bに停止するとき、電圧推移線118は最大管理電圧以下になる。
【0040】
図6(a)は、比較例における可動部の速度変化を説明するための図である。図6(a)において、横軸と縦軸は図5(a)と同じであり、説明を省略する。そして、速度推移線119は可動部の速度変化の推移を示している。速度推移線119に示すように、速度推移線119における予備減速区間117cは速度推移線117のときより短くなっている。そして、速度推移線119における減速停止区間117dは速度推移線117のときより長くなっている。
【0041】
図6(b)は、コンデンサーの電圧変化を説明するための図である。図6(b)において、横軸と縦軸は図5(b)と同じであり、説明を省略する。そして、電圧推移線120はコンデンサー103の電圧変化の推移を示している。電圧推移線118に比べて電圧推移線120では予備減速区間117cが短く、十分に減速する前に減速停止区間117dに入っている。このため、減速停止区間117dでコンデンサーに蓄電される回生エネルギーが大きいため、位置(B)12bにおけるコンデンサー電圧は電圧推移線118のときより電圧推移線120の方が増加している。以上より、目標位置に達した時のコンデンサー電圧が予備減速速度によって調整可能であることがわかる。
【0042】
以上述べたように、実施形態1に関わるロボット駆動方法によれば、予備減速速度を設定し予備減速を行うことで、コンデンサーの最大管理電圧まで回生エネルギーを蓄電することが可能となり、ロボット駆動時に利用されるエネルギーを抑制できるという効果を得ることができる。
【0043】
上述したように、本実施形態によれば、以下の効果を有する。
(1)本実施形態によれば、予備減速速度設定工程S101では予備減速速度を設定している。このとき、停止時でのコンデンサー電圧が最大管理電圧以下になるように予備減速速度を設定する。これにより、最大管理電圧までコンデンサーに蓄電することが可能である。そして、予備減速速度の設定により、停止時でのコンデンサー電圧が最大管理電圧以下にしている。従って、コンデンサー電圧が最大管理電圧以下になるように電圧を制御する回路が不要となる為、簡便な方法でコンデンサー電圧が過大にならないように回生エネルギーを回収することができる。
【0044】
(実施形態2)
次に、回生エネルギーを蓄電するロボットの一実施形態について図7〜図11を用いて説明する。本実施形態が実施形態1と異なるところは、コンデンサーの電圧を検出して可動部の速度を制御する点にある。尚、実施形態1と同じ点については説明を省略する。
【0045】
図7は、可動部の動作工程を示すフローチャートである。実施形態1の制御フローにコンデンサー電圧検出工程と予備減速速度演算工程が追加された制御フローになっている。コンデンサー電圧検出工程S201では、コンデンサー103の電圧であるコンデンサー電圧を検出する。予備減速速度演算工程S202では、検出したコンデンサー電圧に基づいて予備減速速度を演算する。
【0046】
コンデンサー電圧検出工程S201及び予備減速速度演算工程S202の工程と予備減速速度設定工程S203〜予備減速工程S205の工程とは並行して行われる。従って、可動部12が移動している間にコンデンサー103の電圧が検出され、電圧に基く予備減速速度が演算される。速度判別S206では予備減速速度演算工程S202で演算された予備減速速度に基づいて予備減速工程を継続するか、減速停止工程に移行するかを判別する。
【0047】
予備減速速度設定工程S203〜予備減速工程S205は実施形態1の予備減速速度設定工程S101〜予備減速工程S103と同様な工程であり、説明を省略する。減速停止工程S207及びロボット駆動終了S208は減速停止工程S105及びロボット駆動終了S106と同様な工程であり、説明を省略する。
【0048】
予備減速速度演算工程S202の一例としてテーブルを用いる手法を用いても良い。図8はコンデンサー電圧予備減速速度対応テーブルを説明するための図である。図8に示すように、コンデンサー103の電圧と対応する予備減速速度が設定されている。従って、コンデンサー電圧予備減速速度対応テーブルを用いることにより容易にコンデンサー電圧の状態に適した予備減速速度を演算することが可能である。そして、コンデンサー電圧が最大管理電圧以下となるように予備減速速度を設定する。
【0049】
コンデンサー電圧が低い場合には、蓄電可能な回生エネルギーが多いため予備減速速度を高くする。また、コンデンサー電圧が高い場合には、蓄電可能な回生エネルギーが少ないため予備減速速度を低くする。このように、コンデンサー電圧に応じて予備減速速度を可変にすることにより、電源電圧変動やロボットの経年変化等に対応して最大限回生エネルギーを蓄積することが可能となる。さらにコンデンサー電圧に余裕がある場合にはその分予備減速速度を高くするためロボットの動作時間が短くなるという効果もある。
【0050】
また、予備減速速度演算工程の他の例として、次式(式1)のような演算式で算出する方法もある。
Vel=K1*E (式1)
但し、Velは予備減速速度、K1は設定可能な係数、Eは回生エネルギーにより増加するコンデンサー電圧である。この演算式は予備減速速度と回生エネルギーによるコンデンサー電圧の上昇が次式(式2)から線形の関係であることを利用したものである。
1/2*C*(E^2)=1/2*I*(Vel^2) (式2)
但し、Cはコンデンサーの合成容量、Iは慣性モーメントである。
【0051】
予備減速速度係数としての係数(K1)はロボット10を駆動する前に、予め、予備減速速度係数設定工程にて設定される。予備減速速度係数設定工程では予備減速速度とコンデンサー電圧の関係の実験を通して求めることにより係数(K1)が算出される。そして、予備減速速度演算工程S202では係数(K1)を用いて予備減速速度が演算される。
【0052】
図9は、駆動部の回路構成を示すブロック図である。図9に示すように回路部100はコンデンサー電圧検出部200を有し、駆動制御部104は軌道生成部としての予備減速速度演算部201を有する。コンデンサー電圧検出部200はコンデンサー103の両端と接続され、コンデンサー電圧を検出する。そして、コンデンサー電圧検出部200は予備減速速度演算部201と接続され、コンデンサー電圧の情報はコンデンサー電圧検出部200から予備減速速度演算部201に出力される。
【0053】
コンデンサー電圧の情報を用いて予備減速速度演算部201はコンデンサー電圧に応じた予備減速速度を演算する。予備減速速度演算部201は予備減速速度設定部109と接続され、予備減速速度設定部109に予備減速速度の情報を出力する。予備減速速度設定部109は予備減速速度を設定し直すことで、予備減速速度が変更される。その他の構成及び機能は実施形態1と同様であり、説明を省略する。
【0054】
図10(a)は、可動部の速度変化を説明するための図であり、図10(b)は、コンデンサーの電圧変化を説明するための図である。図10の縦軸と横軸とは図5と同じであり説明を省略する。そして、速度推移線123は可動部の速度変化の推移を示し、電圧推移線124はコンデンサー103の電圧変化の推移を示している。
【0055】
そして、速度推移線123及び電圧推移線124はコンデンサー電圧検出工程S201及び予備減速速度演算工程S202が行われないときの推移を示している。そして、減速停止区間117d以前におけるコンデンサー電圧124aが実施形態1の電圧推移線118よりも低くなっている。コンデンサー電圧が下がっているにも関わらず減速速度は固定のため、位置(B)12bに停止した際のコンデンサー電圧は最大管理電圧よりも低くなる。その結果、コンデンサー103は最大限利用されていない状態となる。
【0056】
図11(a)は、可動部の速度変化を説明するための図であり、図11(b)は、コンデンサーの電圧変化を説明するための図である。図11の縦軸と横軸とは図10と同じであり説明を省略する。そして、速度推移線125は可動部の速度変化の推移を示し、電圧推移線126はコンデンサー103の電圧変化の推移を示している。
【0057】
そして、速度推移線125及び電圧推移線126はコンデンサー電圧検出工程S201及び予備減速速度演算工程S202が行わるときの推移を示している。このとき減速停止区間117d以前におけるコンデンサー電圧126aに合わせて予備減速速度を変更している。このため速度推移線125における予備減速速度は速度推移線123における予備減速速度より高くなっている。これにより、速度推移線125は速度推移線123の場合よりも早く減速停止区間に移行する。このため位置(A)12aから位置(B)12bまでの駆動時間が短縮される。
【0058】
予備減速速度を上げることで位置(B)12bに停止するとき電圧推移線126ではコンデンサー電圧が最大管理電圧となっている。これはコンデンサー103の蓄電能力限界まで回生エネルギーを蓄電していることになる。但し、減速停止区間117dに移行した時点で予備減速速度の更新は停止している。駆動制御部104は定速区間117bで予備減速速度を更新することにしても良く、予備減速区間117cにおいてもさらに予備減速速度を更新することとしても良い。
【0059】
上述したように、本実施形態によれば、以下の効果を有する。
(1)本実施形態によれば、電源電圧の変動や経時変化等によりコンデンサー電圧が変動した際にもコンデンサー103の蓄電能力の限界まで回生エネルギーを蓄電することが可能となり、より一層ロボット駆動時に利用されるエネルギーを抑制できるという効果を得ることができる。さらに、コンデンサー103の蓄電能力の範囲内で駆動時間が短縮できるという効果を得ることができる。
【0060】
(2)本実施形態によれば、コンデンサー電圧検出工程S201にてコンデンサー電圧を検出している。そして、予備減速速度演算工程S202では検出したコンデンサー電圧とコンデンサー電圧予備減速速度対応テーブルとを参照し、停止時に最大管理電圧以下になるように予備減速速度を演算している。従って、最大管理電圧までコンデンサー103に蓄電することが可能な予備減速速度を簡便な方法で演算できる。
【0061】
(3)本実施形態によれば、コンデンサー電圧検出工程S201においてコンデンサー電圧を検出している。そして、予備減速速度係数設定工程ではコンデンサー電圧と予備減速速度との関係を示す係数(K1)を設定している。予備減速速度演算工程S202ではコンデンサー電圧と係数(K1)とを用いて停止時に最大管理電圧以下になるように予備減速速度(Vel)を演算している。従って、簡単な演算により最大管理電圧までコンデンサー103に蓄電することが可能な予備減速速度を演算できる。
【0062】
(実施形態3)
次に、回生エネルギーを蓄電するロボットの一実施形態について図12〜図13を用いて説明する。本実施形態が実施形態1と異なるところは、可動部がワークを保持するときと保持しないときとで可動部の速度を変更する点にある。尚、実施形態1と同じ点については説明を省略する。
【0063】
図12は、可動部の動作工程を示すフローチャートである。実施形態1に負荷重量設定工程及び負荷の有無判別を付加した制御フローになっている。ロボット駆動開始S300では位置(A)12aに可動部12が位置している。負荷重量設定工程S301では、ロボットが搬送する負荷重量を設定する。
【0064】
負荷の有無判別S302では、ロボットが負荷を持っているかどうかを判別する。負荷が有る場合には、予備減速速度設定工程(負荷有)S303に移行する。負荷が有る場合に急減速しても回生エネルギーによりコンデンサー電圧が最大管理電圧以下となるような予備減速速度を設定する。以下、加速定速工程S304〜ロボット駆動終了S308は実施形態1の加速定速工程S102〜ロボット駆動終了S106と同様であり説明を省略する。
【0065】
負荷の有無判別S302で負荷が無いと判別された場合には、予備減速速度設定工程(負荷無)S309に移行する。負荷が無い場合に急減速しても回生エネルギーによりコンデンサー電圧が最大管理電圧以下となるような予備減速速度を設定する。以下、加速定速工程S310〜ロボット駆動終了S314は実施形態1の加速定速工程S102〜ロボット駆動終了S106と同様であり説明を省略する。
【0066】
予備減速速度の設定方法は、例えば試行錯誤的に決めることが可能である。予備減速速度を小さい値から段々と大きくしていくことで、目標位置に達した際のコンデンサー電圧が大きくなっていく。従って、目標位置に達した際のコンデンサー電圧が所望の電圧値になるように予備減速速度を設定可能である。従って、この試行錯誤的な作業を負荷が有る場合と無い場合とを実施することで、負荷の有る場合と無い場合とのそれぞれの予備減速速度を設定可能である。
【0067】
負荷重量から予備減速速度を算出する方法は演算式を用いても良く、テーブルを用いて予備減速速度を算出しても良い。行きと帰りとで負荷が変化するためそれぞれ負荷重量を設定しても良い。
【0068】
図13は、負荷と予備減速速度対応テーブルを説明するための図である。図13に示すように、負荷の有無に対応して予備減速速度が設定されている。このテーブルは予備減速速度演算工程に利用するテーブルの一例である。
【0069】
位置(A)12aから位置(B)12bで動作する際には例えば把持対象を把持した負荷有りの状態とし、位置Bでそれを放し、位置Aまで把持対象が無い負荷なしの状態で戻ることがある。このとき、位置(A)12aから位置(B)12bの動作では負荷無の条件でテーブルが参照され予備減速速度が設定される。また位置(B)12bから位置(A)12aまでの動作では負荷有の条件でテーブルが参照され予備減速速度が設定される。
【0070】
上述したように、本実施形態によれば、以下の効果を有する。
(1)本実施形態によれば、負荷重量が変化した場合に、予備減速速度を再度実験等により設定しなおす工数が削減できるという効果と、動作中の負荷重量変化に対応して予備減速速度を変えることができることからコンデンサーの蓄電能力の範囲内で駆動時間が短縮できるという効果を得ることができる。更には、コンデンサーの蓄電能力の限界まで回生エネルギーを蓄電することが可能となり、より一層ロボット駆動時に利用されるエネルギーを抑制できるという効果を得ることができる。
【0071】
(2)本実施形態によれば、可動部12の負荷重量が変更された場合に、負荷重量設定工程にて負荷重量を設定している。これにより、簡便に最大管理電圧までコンデンサー103に蓄電することが可能な負荷重量に対応した予備減速速度を演算できる。従って、減速停止区間117dに発生する回生エネルギーを負荷重量に応じて最大限蓄電することができる。
【0072】
尚、本実施形態は上述した実施形態に限定されるものではなく、種々の変更や改良を加えることも可能である。変形例を以下に述べる。
(変形例1)
前記実施形態2では、コンデンサー電圧検出部200がコンデンサー103の電圧を検出し予備減速速度を制御した。また、前記実施形態3では負荷の有無により異なる予備減速速度を設定した。この2つの方法を合わせても良い。図14は、コンデンサー電圧負荷有無予備減速速度対応テーブルを説明するための図である。図14に示すように、コンデンサー電圧負荷有無予備減速速度対応テーブルには、コンデンサー103の電圧と負荷の有無とに対応する予備減速速度が設定されている。従って、コンデンサー電圧負荷有無予備減速速度対応テーブルを用いることにより容易にコンデンサー電圧の状態と負荷の有無に対応した予備減速速度を容易に選定することが可能である。そして、コンデンサー電圧が最大管理電圧以下となるように予備減速速度を設定することができる。
【0073】
(変形例2)
実施形態3では、負荷設定は有無であったが、これに限らない。重量や慣性モーメントの量の細かな区分に対応した予備減速速度を設定したテーブルを作成してもよい。そして、この表を用いて、負荷の重量や慣性モーメントの量に応じた速度設定をしても良い。
【0074】
(変形例3)
実施形態1〜実施形態3では、可動部12の数は1つだけであったが、可動部12の数は1つに限らない。複数の可動部12としても良い。この場合にも可動部毎に予備減速速度を設定することにより、簡便な方法でコンデンサー電圧が過大にならないように回生エネルギーを回収することができる。
【0075】
実施形態1〜実施形態3では、ロボット10は水平関節ロボット形式のロボットであったが、ロボットの形式はこれに限らない。垂直多関節ロボット、直交ロボット、パラレルリンクロボット等各種形態のロボットに上記の方法を用いることができる。この場合にも上記の方法と同様な方法を用いて簡便な方法でコンデンサー電圧が最大管理電圧を越えないように回生エネルギーを回収することができる。
【符号の説明】
【0076】
10…ロボット、11…本体部、12…可動部、103…コンデンサー、104…駆動制御部、105…インバーター、109…軌道生成部としての予備減速速度設定部、110…軌道生成部、111…位置・速度制御部、113…電流制御部、114…パルス幅変調部、116…モーター、201…軌道生成部としての予備減速速度演算部。
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロボットの可動部を駆動する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
近年のロボット技術の進歩により、工業製品の製造現場では、多くのロボットが導入されている。例えば、工業製品の組み立てラインでは、ラインに沿って複数台のロボットが設置され、ライン上を流れる製造中の製品に対して、ロボットが自動で各種の部品を組み付けることで、生産効率を向上させることが広く行われている。あるいは、このようなロボットが組み付ける部品をラインサイドまで搬送する際にも、ロボットを用いて部品を搬送することで、工場全体としての生産効率を向上させることも広く行われている。
【0003】
ロボットを導入すれば、作業者を危険な作業から開放することが可能となり、あるいは、ロボットは全く同じ動作を繰り返すことができるので作業精度が向上する等、多くの利点が得られるが、時間あたりの作業量の増加に伴って生産性の向上が可能となることも大きな利点として挙げられる。もっとも、ロボットの導入時には多額の初期費用が必要となる。そこで、この初期費用を回収するためにも、ロボットにはできるだけ高い生産性が望まれる。そして、生産性を向上させるために、ロボットの動作速度をできるだけ高くする方法が特許文献1に開示されている。これによると、ロボットアーム等の可動部分を目標位置まで移動させる際には、可動部分をできるだけ短時間で最高速度まで加速した後に最高速度で定速移動させている。次に、目標位置の手前に達したら最高速度から急減速して目標位置に停止させる制御が行われる。
【0004】
例えば、ロボットアーム等のロボットの可動部分はかなりの重量を有することが通常である。このため、最高速度で移動している状態から停止させる際には、大きな運動エネルギーが放出される。そして、放出される運動エネルギーの大きさは、ロボットの生産性を向上させるために可動部分の移動速度を高くすればするほど大きくなる。従って、この運動エネルギーを熱として捨ててしまったのでは、生産性を向上させるためにロボットの動作速度を高くしても、それに伴ってロボットを動作させるためのエネルギーが増加することになる。従って、十分に生産性を向上させることが困難となる。尚、ロボットアーム等の可動部分を停止させる際に放出されるエネルギーは、回生エネルギーと呼ばれることがある。そして、特許文献2及び特許文献3にはロボットアーム等の可動部分を停止させる際に発生する回生エネルギーを電気エネルギーとして回収するようにした技術が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平9−311713号公報
【特許文献2】特許第3655056号公報
【特許文献3】特開2007−159213号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
回生エネルギーを回収する技術を用いるときコンデンサー電圧が最大定格電圧(以下最大管理電圧と称す)より過大にならないように特別な回路や制御が必要となる。従って、ロボットの制御装置が複雑になる。そこで、簡便な方法でコンデンサー電圧が過大にならないように回生エネルギーを回収する方法が求められていた。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態または適用例として実現することが可能である。
【0008】
[適用例1]
本適用例に係るロボット駆動方法は、本体部と前記本体部に対して移動可能に構成された可動部とを備えるロボット駆動方法であって、停止している前記可動部に対して、所定の目標位置に向かう方向の駆動力を作用させ、前記可動部を前記目標位置に向けて加速、及び定速駆動させる加速定速工程と、前記目標位置に向かって移動している前記可動部に対して、前記目標位置に向かう方向とは逆方向の駆動力である予備制動力を作用させて予備減速速度まで減速させる予備減速工程と、前記可動部を前記予備減速速度から前記目標位置に向かう方向とは逆方向の駆動力である制動力を作用させて減速させ、前記可動部を前記目標位置に停止させる減速停止工程と、前記予備減速速度を設定する予備減速速度設定工程と、を有し、前記予備減速工程、または前記減速停止工程では、前記予備減速速度から停止するまでに発生する回生エネルギーをコンデンサーに蓄電し、前記予備減速速度設定工程では、停止時でのコンデンサー電圧が最大管理電圧以下になる範囲で前記コンデンサー電圧が高い場合には前記予備減速速度を低く設定し、前記コンデンサー電圧が低い場合には前記予備減速速度を高く設定することを特徴とする。
【0009】
本適用例によれば、加速定速工程において、停止している可動部に対して、所定の目標位置に向かう方向の駆動力を作用させて、可動部を目標位置に向けて加速、及び定速駆動させている。予備減速工程では目標位置に向かって移動している可動部に対して、目標位置に向かう方向とは逆方向の駆動力である予備制動力を作用させて予備減速速度まで減速させている。減速停止工程では、可動部を予備減速速度から目標位置に向かう方向とは逆方向の駆動力である制動力を作用させて減速させて、可動部を目標位置に停止させている。予備減速工程、または減速停止工程では、予備減速速度から停止するまでに発生する回生エネルギーをコンデンサーに蓄電している。
【0010】
予備減速速度設定工程では予備減速速度を設定している。このとき、停止時でのコンデンサー電圧が最大管理電圧以下になるように予備減速速度を設定する。最大管理電圧はコンデンサーを安全に使用可能な電圧範囲のうち最大の電圧を示す。これにより、最大管理電圧までコンデンサーに蓄電することが可能である。そして、予備減速速度の設定により、停止時でのコンデンサー電圧が最大管理電圧以下にしている。従って、コンデンサー電圧が最大管理電圧以下になるように電圧を制御する回路が不要となる為、簡便な方法でコンデンサー電圧が過大にならないように回生エネルギーを回収することができる。さらに、コンデンサー電圧が高い場合には予備減速速度を低く設定し、コンデンサー電圧が低い場合には予備減速速度を高く設定している。従って、停止時のコンデンサー電圧が高くなるように予備減速速度を設定している為、生産性良く回生エネルギーをコンデンサーに蓄電することができる。
【0011】
[適用例2]
上記適用例に記載のロボット駆動方法では、前記予備減速速度設定工程は、前記コンデンサー電圧を検出する電圧検出工程と、前記コンデンサー電圧に対応する前記予備減速速度のテーブルを参照し前記コンデンサー電圧を用いて、停止時に最大管理電圧以下になるように前記予備減速速度を演算する予備減速速度演算工程と、を有することが望ましい。
【0012】
本適用例によれば、電圧検出工程にてコンデンサー電圧を検出している。そして、予備減速速度演算工程では検出したコンデンサー電圧とコンデンサー電圧に対応する予備減速速度のテーブルとを参照し、停止時に最大管理電圧以下になるように予備減速速度を演算している。従って、最大管理電圧までコンデンサーに蓄電することが可能な予備減速速度を簡便な方法で演算できる。
【0013】
[適用例3]
上記適用例に記載のロボット駆動方法では、前記予備減速速度設定工程は、前記可動部の負荷重量を設定する負荷重量設定工程をさらに有し、前記予備減速速度演算工程では前記負荷重量と前記コンデンサー電圧に対応する前記予備減速速度のテーブルを参照し前記コンデンサー電圧と前記負荷重量とを用いて、停止時に最大管理電圧以下になるように前記予備減速速度を演算することが望ましい。
【0014】
本適用例によれば、可動部の負荷重量が変更された場合に、負荷重量設定工程にて負荷重量を設定している。そして、負荷重量とコンデンサー電圧に対応する予備減速速度のテーブルを参照している。これにより、簡便に最大管理電圧までコンデンサーに蓄電することが可能な負荷重量に対応した予備減速速度を演算できる。従って、ロボット減速時に発生する回生エネルギーを可動部の負荷重量に応じて最大限蓄電することができる。
【0015】
[適用例4]
上記適用例に記載のロボット駆動方法では、前記予備減速速度設定工程は、前記コンデンサー電圧を検出する電圧検出工程と、前記コンデンサー電圧と前記予備減速速度との関係を示す予備減速速度係数を設定する予備減速速度係数設定工程と、前記コンデンサー電圧と前記予備減速速度係数とを用いて停止時に最大管理電圧以下になるように前記予備減速速度を演算する予備減速速度演算工程と、を有することが望ましい。
【0016】
本適用例によれば、電圧検出工程においてコンデンサー電圧を検出している。そして、予備減速速度係数設定工程ではコンデンサー電圧と予備減速速度との関係を示す予備減速速度係数を設定している。予備減速速度演算工程ではコンデンサー電圧と予備減速速度係数とを用いて停止時に最大管理電圧以下になるように予備減速速度を演算している。従って、簡単な演算により最大管理電圧までコンデンサーに蓄電することが可能な予備減速速度を演算できる。
【0017】
[適用例5]
本適用例に係るロボットは、本体部と、前記本体部に対して移動可能に設置された可動部と、前記可動部を電流にて駆動するモーターと、前記モーターを制御する駆動制御部と、を備え、前記駆動制御部は、前記可動部の移動速度を出力する軌道生成部と、前記移動速度に対応して前記モーターを駆動する電流量を出力する位置・速度制御部と、前記電流量に対応してパルス波形のデューティー比を出力する電流制御部と、前記デューティー比の前記パルス波形を形成するパルス幅変調部と、前記モーターに流動する電流と前記モーターが発電する電流とを蓄えるコンデンサーと、前記コンデンサーの電気を用いて前記パルス波形に対応する駆動波形にて前記モーターを駆動するインバーターと、を備え、前記軌道生成部は前記コンデンサーの電圧に応じて前記移動速度を出力することを特徴とする。
【0018】
本適用例によれば、ロボットは本体部を備えている。本体部には可動部が移動可能に設置されている。可動部はモーターによって電流にて駆動され、モーターは駆動制御部に制御される。駆動制御部は軌道生成部、位置・速度制御部、電流制御部、パルス幅変調部、コンデンサー、インバーターを備えている。軌道生成部はコンデンサーの電圧に応じて移動速度を位置・速度制御部に出力する。位置・速度制御部は移動速度に対応してモーターを駆動する電流量を電流制御部に出力する。電流制御部は電流量に対応してパルス波形のデューティー比をパルス幅変調部に出力する。パルス幅変調部はデューティー比のパルス波形を形成する。
【0019】
コンデンサーはモーターに流動する電流とモーターが発電する電流とを蓄える。そして、インバーターはコンデンサーの電気を用いてパルス波形に対応する駆動波形にてモーターを駆動する。これにより、モーターは軌道生成部の出力する移動速度に対応して駆動される。可動部が減速するときモーターには電気が充電される。このとき、モーターが減速する前の速度は制御されているので、コンデンサーに充電される電気の量は制御される。従って、コンデンサーには安全に充電可能な電圧である最大管理電圧まで蓄電することができる。モーターの速度を制御することによりコンデンサーの電圧が制御されている。従って、コンデンサー電圧が最大管理電圧以下になるように電圧を制御する回路が不要となる為、簡便な方法でコンデンサー電圧が過大にならないように回生エネルギーを回収することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】実施形態1に係るロボットの構成を示す概略構成図。
【図2】ロボットの動作範囲を示す模式上面図。
【図3】可動部の動作工程を示すフローチャート。
【図4】駆動部の回路構成を示すブロック図。
【図5】(a)は、可動部の速度変化を説明するための図、(b)は、コンデンサーの電圧変化を説明するための図。
【図6】比較例に係る(a)は、比較例における可動部の速度変化を説明するための図、(b)は、コンデンサーの電圧変化を説明するための図。
【図7】実施形態2に係る可動部の動作工程を示すフローチャート。
【図8】コンデンサー電圧予備減速速度対応テーブルを説明するための図。
【図9】駆動部の回路構成を示すブロック図。
【図10】(a)は、可動部の速度変化を説明するための図、(b)は、コンデンサーの電圧変化を説明するための図。
【図11】(a)は、可動部の速度変化を説明するための図、(b)は、コンデンサーの電圧変化を説明するための図。
【図12】実施形態3に係る可動部の動作工程を示すフローチャート。
【図13】負荷と予備減速速度対応テーブルを説明するための図。
【図14】変形例に係るコンデンサー電圧負荷有無予備減速速度対応テーブルを説明するための図。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して説明する。尚、以下の各図においては、各層や各部材を認識可能な程度の大きさにするため、各層や各部材の尺度を実際とは異ならせしめている。
【0022】
(実施形態1)
図1は、ロボットの構成を示す概略構成図である。図1に示すようにロボット10は、本体部11と可動部12で構成されている。可動部12は、本体部11に対して回転移動が可能な態様で設けられており、本体部11には可動部12を回転させるための動力を発生させるモーターや制御部等の駆動部20が内蔵されている。駆動部20はコンデンサーを備え、モーターの回転により生成される回生エネルギーを蓄電可能になっている。
【0023】
図2は、ロボットの動作範囲を示す模式上面図である。図2に示すように可動部12は同心円を描くように動作する。可動部12が動作開始する場所を位置(A)12aとし動作を終了する場所を位置(B)12bとする。そして、本実施形態では可動部12が位置(A)12aから位置(B)12bまで移動する例を用いて説明する。
【0024】
図3は、可動部の動作工程を示すフローチャートである。図3において、ロボット駆動開始S100では、可動部12は位置(A)12aに位置している。予備減速速度設定工程S101では、急減速しても回生エネルギーによりコンデンサー電圧が最大管理電圧以下となるような予備減速速度を設定する。この予備減速速度の設定方法は、例えば、実験を繰り返して試行錯誤的に決めることが可能である。予備減速速度を小さい値から段々と大きくしていくことで、目標位置に達した際のコンデンサー電圧が大きくなっていく。従って、目標位置に達した際のコンデンサー電圧が所望の電圧値になるように予備減速速度を設定可能である。
【0025】
加速定速工程S102では、目標位置に向かう方向の駆動力を作用することにより、可動部12を目標位置に向けて加速、及び定速駆動させる。予備減速工程S103では、例えば、摩擦トルクを利用して予備制動力のみで緩やかに減速させる。そのため大きな回生エネルギーがモーターから生成されることがない。従って、コンデンサーは蓄電されない。ただし、大きな回生エネルギーがモーターから生成されるときにはコンデンサーに蓄電しても良い。速度判別S104では、速度と予備減速速度とを比較する。そして、速度が予備減速速度よりも大きい場合には予備減速工程を繰り返す。可動部12の速度が予備減速速度以下の場合には減速停止工程に移行する。減速停止工程S105では、目標位置に向かう方向とは逆方向の駆動力である制動力を作用させて位置(B)12bに停止させる。ロボット駆動終了S106では可動部12が位置(B)12bに停止し、可動部12の動作が終了する。
【0026】
従来の減速は減速停止工程のみであるため、非常に大きな回生エネルギーが生じ、その分コンデンサー電圧が上昇する。本実施形態では回生エネルギーが生じ難い予備減速工程S103がある。これにより、予備減速速度を調整することでコンデンサー電圧が最大管理電圧以下になるように回生エネルギーを制御することが可能となる。その結果、コンデンサーに過剰な電圧がかかってコンデンサーが損傷することを防止することができる。
【0027】
図4は、駆動部の回路構成を示すブロック図である。図4に示すように駆動部20は回路部100と駆動制御部104とを備えている。回路部100はAC電源101(ACは交流を示す)から電流が供給される。回路部100はダイオードブリッジ102を有し、ダイオードブリッジ102にAC電源101の電圧が印加される。ダイオードブリッジ102は電流を整流しコンデンサー103に電力を供給する。
【0028】
駆動部20はインバーター105を備え、コンデンサー103はインバーター105に電力を供給する。インバーター105はコンデンサー103に蓄電された電力を利用してロボット106を駆動する。インバーター105は駆動制御部104と接続され、駆動制御部104に制御される。インバーター105は抵抗115を介してロボット106に内蔵されたモーター116と接続されている。そして、インバーター105はモーター116を駆動する。モーター116の駆動軸にはエンコーダー112が接続され、エンコーダー112はモーター116の回転角度を検出する。
【0029】
駆動制御部104は予備減速判定部107を備え、予備減速判定部107はモード選択部108と接続されている。さらに、モード選択部108はパルス幅変調部114を介してインバーター105と接続されている。予備減速判定部107の指令に基づいてモード選択部108は通常の制御モードと予備減速モードとを切り替える。
【0030】
予備減速判定部107は軌道生成部としての予備減速速度設定部109と接続されている。そして、予備減速判定部107の判定は予備減速速度設定部109にて設定される予備減速速度に基づいて行われる。モード選択部108は軌道生成部110及び位置・速度制御部111と接続されている。これにより、軌道生成部110が出力する信号はモード選択部108を介して位置・速度制御部111に出力される。
【0031】
まず、通常の制御モードでは軌道生成部110が位置指令を生成し、モード選択部108を介して位置・速度制御部111に出力する。位置・速度制御部111はエンコーダー112と接続され、エンコーダー112が出力するモーター116の回転角度の信号を位置・速度制御部111が入力する。
【0032】
位置・速度制御部111には電流制御部113が接続され、電流制御部113にはパルス幅変調部114が接続されている。位置・速度制御部111はエンコーダー112が出力する情報に基づいて位置指令に追従するように電流指令を生成し電流制御部113に出力する。電流制御部113は電流指令を入力しモーター116を駆動する波形のデューティー比を演算する。電流制御部113は演算したデューティー比をパルス幅変調部114に出力する。パルス幅変調部114はデューティー比を入力し、デューティー比に基づいてインバーター105をスイッチングするスイッチング信号を生成する。尚、デューティー比はモーター116を駆動する時間と駆動しない時間とを合計した時間の内モーター116を駆動する時間の割合を示す。そして、パルス幅変調部114はスイッチング信号をインバーター105に出力し、インバーター105はスイッチング信号に基きモーター116を駆動する。これにより、モーター116は所定の位置まで所定の速度で回転する。
【0033】
他方、予備減速モードでは強制的にデューティー比が零になるように電流制御部113がパルス幅変調部114に指令を出す。これにより、回生エネルギーによるコンデンサー103への蓄電が行われ難くなり、ロボット10が備える減速装置等の機械的な摩擦等の損失により緩やかに減速する。予備減速工程S103において、通常の制御モードと予備減速モードとを速度に応じて切り替えることにより可動部12の回転速度を予備減速速度にすることができる。従って、減速停止工程S105においてコンデンサー電圧が最大管理電圧以下になるように回生エネルギーを制御することが可能となる。
【0034】
予備減速モードではモード選択部108の判断により直接パルス幅変調部114に対してスイッチング信号を全てLOW信号(インバーター105のスイッチング素子がONにならない信号)にしても良い。このとき、デューティー比は零にしなくても良い。この方法でも同様の効果が得られる。
【0035】
図5(a)は、可動部の速度変化を説明するための図である。図5(a)において、横軸は位置を示し、位置(A)12aから位置(B)12bの間の位置を示している。縦軸は可動部12が移動する速度を示し、上側が下側より早い速度となっている。そして、速度推移線117は可動部の速度変化の推移を示している。
【0036】
速度推移線117において位置(A)12aから位置(B)12bの間は加速区間117a、定速区間117b、予備減速区間117c、減速停止区間117dから構成されている。加速区間117aは位置Aから目標位置に向かう方向の駆動力を作用することにより可動部12を加速させる区間である。定速区間117bは摩擦等の損失に等しい駆動力を作用することにより一定速に保つ区間である。予備減速区間117cは機械的な摩擦等の損失により緩やかに減速する区間である。減速停止区間117dは目標位置に向かう方向とは逆方向の駆動力である制動力を作用させて位置Bに停止させる区間である。この順の区間を経て可動部12は位置(B)12bに到達する。
【0037】
予備減速区間117cでは、機械的な摩擦等の損失により可動部12が緩やかに減速するため、回生エネルギーによるコンデンサーへの蓄電が行われない。減速停止区間117dでは、目標位置に向かう方向とは逆方向の駆動力である制動力をモーター116が可動部12に作用させて位置(B)12bに停止させる区間であり、回生エネルギーが蓄電される区間である。
【0038】
図5(b)は、コンデンサーの電圧変化を説明するための図である。図5(b)において、横軸は位置を示し、位置(A)12aから位置(B)12bの間の位置を示している。縦軸はコンデンサー103の電圧を示し、上側が下側より大きな電圧となっている。そして、電圧推移線118はコンデンサー103の電圧変化の推移を示している。
【0039】
電圧推移線118が示すように、加速区間117a、定速区間117b、予備減速区間117cでは回生エネルギーが蓄電され難いためコンデンサー電圧は上昇しない。減速停止区間117dでは強制的に逆方向の駆動力を作用させるため回生エネルギーが蓄電されコンデンサー電圧が上昇している。この蓄電されたエネルギーは次の動作時の加速区間117aで利用される。予備減速速度設定工程S101では予備減速速度を設定している。このとき、停止時でのコンデンサー電圧が最大管理電圧以下になるように予備減速速度を設定する。最大管理電圧はコンデンサーを安全に使用可能な電圧範囲のうち最大の電圧を示す。従って、可動部12が位置(B)12bに停止するとき、電圧推移線118は最大管理電圧以下になる。
【0040】
図6(a)は、比較例における可動部の速度変化を説明するための図である。図6(a)において、横軸と縦軸は図5(a)と同じであり、説明を省略する。そして、速度推移線119は可動部の速度変化の推移を示している。速度推移線119に示すように、速度推移線119における予備減速区間117cは速度推移線117のときより短くなっている。そして、速度推移線119における減速停止区間117dは速度推移線117のときより長くなっている。
【0041】
図6(b)は、コンデンサーの電圧変化を説明するための図である。図6(b)において、横軸と縦軸は図5(b)と同じであり、説明を省略する。そして、電圧推移線120はコンデンサー103の電圧変化の推移を示している。電圧推移線118に比べて電圧推移線120では予備減速区間117cが短く、十分に減速する前に減速停止区間117dに入っている。このため、減速停止区間117dでコンデンサーに蓄電される回生エネルギーが大きいため、位置(B)12bにおけるコンデンサー電圧は電圧推移線118のときより電圧推移線120の方が増加している。以上より、目標位置に達した時のコンデンサー電圧が予備減速速度によって調整可能であることがわかる。
【0042】
以上述べたように、実施形態1に関わるロボット駆動方法によれば、予備減速速度を設定し予備減速を行うことで、コンデンサーの最大管理電圧まで回生エネルギーを蓄電することが可能となり、ロボット駆動時に利用されるエネルギーを抑制できるという効果を得ることができる。
【0043】
上述したように、本実施形態によれば、以下の効果を有する。
(1)本実施形態によれば、予備減速速度設定工程S101では予備減速速度を設定している。このとき、停止時でのコンデンサー電圧が最大管理電圧以下になるように予備減速速度を設定する。これにより、最大管理電圧までコンデンサーに蓄電することが可能である。そして、予備減速速度の設定により、停止時でのコンデンサー電圧が最大管理電圧以下にしている。従って、コンデンサー電圧が最大管理電圧以下になるように電圧を制御する回路が不要となる為、簡便な方法でコンデンサー電圧が過大にならないように回生エネルギーを回収することができる。
【0044】
(実施形態2)
次に、回生エネルギーを蓄電するロボットの一実施形態について図7〜図11を用いて説明する。本実施形態が実施形態1と異なるところは、コンデンサーの電圧を検出して可動部の速度を制御する点にある。尚、実施形態1と同じ点については説明を省略する。
【0045】
図7は、可動部の動作工程を示すフローチャートである。実施形態1の制御フローにコンデンサー電圧検出工程と予備減速速度演算工程が追加された制御フローになっている。コンデンサー電圧検出工程S201では、コンデンサー103の電圧であるコンデンサー電圧を検出する。予備減速速度演算工程S202では、検出したコンデンサー電圧に基づいて予備減速速度を演算する。
【0046】
コンデンサー電圧検出工程S201及び予備減速速度演算工程S202の工程と予備減速速度設定工程S203〜予備減速工程S205の工程とは並行して行われる。従って、可動部12が移動している間にコンデンサー103の電圧が検出され、電圧に基く予備減速速度が演算される。速度判別S206では予備減速速度演算工程S202で演算された予備減速速度に基づいて予備減速工程を継続するか、減速停止工程に移行するかを判別する。
【0047】
予備減速速度設定工程S203〜予備減速工程S205は実施形態1の予備減速速度設定工程S101〜予備減速工程S103と同様な工程であり、説明を省略する。減速停止工程S207及びロボット駆動終了S208は減速停止工程S105及びロボット駆動終了S106と同様な工程であり、説明を省略する。
【0048】
予備減速速度演算工程S202の一例としてテーブルを用いる手法を用いても良い。図8はコンデンサー電圧予備減速速度対応テーブルを説明するための図である。図8に示すように、コンデンサー103の電圧と対応する予備減速速度が設定されている。従って、コンデンサー電圧予備減速速度対応テーブルを用いることにより容易にコンデンサー電圧の状態に適した予備減速速度を演算することが可能である。そして、コンデンサー電圧が最大管理電圧以下となるように予備減速速度を設定する。
【0049】
コンデンサー電圧が低い場合には、蓄電可能な回生エネルギーが多いため予備減速速度を高くする。また、コンデンサー電圧が高い場合には、蓄電可能な回生エネルギーが少ないため予備減速速度を低くする。このように、コンデンサー電圧に応じて予備減速速度を可変にすることにより、電源電圧変動やロボットの経年変化等に対応して最大限回生エネルギーを蓄積することが可能となる。さらにコンデンサー電圧に余裕がある場合にはその分予備減速速度を高くするためロボットの動作時間が短くなるという効果もある。
【0050】
また、予備減速速度演算工程の他の例として、次式(式1)のような演算式で算出する方法もある。
Vel=K1*E (式1)
但し、Velは予備減速速度、K1は設定可能な係数、Eは回生エネルギーにより増加するコンデンサー電圧である。この演算式は予備減速速度と回生エネルギーによるコンデンサー電圧の上昇が次式(式2)から線形の関係であることを利用したものである。
1/2*C*(E^2)=1/2*I*(Vel^2) (式2)
但し、Cはコンデンサーの合成容量、Iは慣性モーメントである。
【0051】
予備減速速度係数としての係数(K1)はロボット10を駆動する前に、予め、予備減速速度係数設定工程にて設定される。予備減速速度係数設定工程では予備減速速度とコンデンサー電圧の関係の実験を通して求めることにより係数(K1)が算出される。そして、予備減速速度演算工程S202では係数(K1)を用いて予備減速速度が演算される。
【0052】
図9は、駆動部の回路構成を示すブロック図である。図9に示すように回路部100はコンデンサー電圧検出部200を有し、駆動制御部104は軌道生成部としての予備減速速度演算部201を有する。コンデンサー電圧検出部200はコンデンサー103の両端と接続され、コンデンサー電圧を検出する。そして、コンデンサー電圧検出部200は予備減速速度演算部201と接続され、コンデンサー電圧の情報はコンデンサー電圧検出部200から予備減速速度演算部201に出力される。
【0053】
コンデンサー電圧の情報を用いて予備減速速度演算部201はコンデンサー電圧に応じた予備減速速度を演算する。予備減速速度演算部201は予備減速速度設定部109と接続され、予備減速速度設定部109に予備減速速度の情報を出力する。予備減速速度設定部109は予備減速速度を設定し直すことで、予備減速速度が変更される。その他の構成及び機能は実施形態1と同様であり、説明を省略する。
【0054】
図10(a)は、可動部の速度変化を説明するための図であり、図10(b)は、コンデンサーの電圧変化を説明するための図である。図10の縦軸と横軸とは図5と同じであり説明を省略する。そして、速度推移線123は可動部の速度変化の推移を示し、電圧推移線124はコンデンサー103の電圧変化の推移を示している。
【0055】
そして、速度推移線123及び電圧推移線124はコンデンサー電圧検出工程S201及び予備減速速度演算工程S202が行われないときの推移を示している。そして、減速停止区間117d以前におけるコンデンサー電圧124aが実施形態1の電圧推移線118よりも低くなっている。コンデンサー電圧が下がっているにも関わらず減速速度は固定のため、位置(B)12bに停止した際のコンデンサー電圧は最大管理電圧よりも低くなる。その結果、コンデンサー103は最大限利用されていない状態となる。
【0056】
図11(a)は、可動部の速度変化を説明するための図であり、図11(b)は、コンデンサーの電圧変化を説明するための図である。図11の縦軸と横軸とは図10と同じであり説明を省略する。そして、速度推移線125は可動部の速度変化の推移を示し、電圧推移線126はコンデンサー103の電圧変化の推移を示している。
【0057】
そして、速度推移線125及び電圧推移線126はコンデンサー電圧検出工程S201及び予備減速速度演算工程S202が行わるときの推移を示している。このとき減速停止区間117d以前におけるコンデンサー電圧126aに合わせて予備減速速度を変更している。このため速度推移線125における予備減速速度は速度推移線123における予備減速速度より高くなっている。これにより、速度推移線125は速度推移線123の場合よりも早く減速停止区間に移行する。このため位置(A)12aから位置(B)12bまでの駆動時間が短縮される。
【0058】
予備減速速度を上げることで位置(B)12bに停止するとき電圧推移線126ではコンデンサー電圧が最大管理電圧となっている。これはコンデンサー103の蓄電能力限界まで回生エネルギーを蓄電していることになる。但し、減速停止区間117dに移行した時点で予備減速速度の更新は停止している。駆動制御部104は定速区間117bで予備減速速度を更新することにしても良く、予備減速区間117cにおいてもさらに予備減速速度を更新することとしても良い。
【0059】
上述したように、本実施形態によれば、以下の効果を有する。
(1)本実施形態によれば、電源電圧の変動や経時変化等によりコンデンサー電圧が変動した際にもコンデンサー103の蓄電能力の限界まで回生エネルギーを蓄電することが可能となり、より一層ロボット駆動時に利用されるエネルギーを抑制できるという効果を得ることができる。さらに、コンデンサー103の蓄電能力の範囲内で駆動時間が短縮できるという効果を得ることができる。
【0060】
(2)本実施形態によれば、コンデンサー電圧検出工程S201にてコンデンサー電圧を検出している。そして、予備減速速度演算工程S202では検出したコンデンサー電圧とコンデンサー電圧予備減速速度対応テーブルとを参照し、停止時に最大管理電圧以下になるように予備減速速度を演算している。従って、最大管理電圧までコンデンサー103に蓄電することが可能な予備減速速度を簡便な方法で演算できる。
【0061】
(3)本実施形態によれば、コンデンサー電圧検出工程S201においてコンデンサー電圧を検出している。そして、予備減速速度係数設定工程ではコンデンサー電圧と予備減速速度との関係を示す係数(K1)を設定している。予備減速速度演算工程S202ではコンデンサー電圧と係数(K1)とを用いて停止時に最大管理電圧以下になるように予備減速速度(Vel)を演算している。従って、簡単な演算により最大管理電圧までコンデンサー103に蓄電することが可能な予備減速速度を演算できる。
【0062】
(実施形態3)
次に、回生エネルギーを蓄電するロボットの一実施形態について図12〜図13を用いて説明する。本実施形態が実施形態1と異なるところは、可動部がワークを保持するときと保持しないときとで可動部の速度を変更する点にある。尚、実施形態1と同じ点については説明を省略する。
【0063】
図12は、可動部の動作工程を示すフローチャートである。実施形態1に負荷重量設定工程及び負荷の有無判別を付加した制御フローになっている。ロボット駆動開始S300では位置(A)12aに可動部12が位置している。負荷重量設定工程S301では、ロボットが搬送する負荷重量を設定する。
【0064】
負荷の有無判別S302では、ロボットが負荷を持っているかどうかを判別する。負荷が有る場合には、予備減速速度設定工程(負荷有)S303に移行する。負荷が有る場合に急減速しても回生エネルギーによりコンデンサー電圧が最大管理電圧以下となるような予備減速速度を設定する。以下、加速定速工程S304〜ロボット駆動終了S308は実施形態1の加速定速工程S102〜ロボット駆動終了S106と同様であり説明を省略する。
【0065】
負荷の有無判別S302で負荷が無いと判別された場合には、予備減速速度設定工程(負荷無)S309に移行する。負荷が無い場合に急減速しても回生エネルギーによりコンデンサー電圧が最大管理電圧以下となるような予備減速速度を設定する。以下、加速定速工程S310〜ロボット駆動終了S314は実施形態1の加速定速工程S102〜ロボット駆動終了S106と同様であり説明を省略する。
【0066】
予備減速速度の設定方法は、例えば試行錯誤的に決めることが可能である。予備減速速度を小さい値から段々と大きくしていくことで、目標位置に達した際のコンデンサー電圧が大きくなっていく。従って、目標位置に達した際のコンデンサー電圧が所望の電圧値になるように予備減速速度を設定可能である。従って、この試行錯誤的な作業を負荷が有る場合と無い場合とを実施することで、負荷の有る場合と無い場合とのそれぞれの予備減速速度を設定可能である。
【0067】
負荷重量から予備減速速度を算出する方法は演算式を用いても良く、テーブルを用いて予備減速速度を算出しても良い。行きと帰りとで負荷が変化するためそれぞれ負荷重量を設定しても良い。
【0068】
図13は、負荷と予備減速速度対応テーブルを説明するための図である。図13に示すように、負荷の有無に対応して予備減速速度が設定されている。このテーブルは予備減速速度演算工程に利用するテーブルの一例である。
【0069】
位置(A)12aから位置(B)12bで動作する際には例えば把持対象を把持した負荷有りの状態とし、位置Bでそれを放し、位置Aまで把持対象が無い負荷なしの状態で戻ることがある。このとき、位置(A)12aから位置(B)12bの動作では負荷無の条件でテーブルが参照され予備減速速度が設定される。また位置(B)12bから位置(A)12aまでの動作では負荷有の条件でテーブルが参照され予備減速速度が設定される。
【0070】
上述したように、本実施形態によれば、以下の効果を有する。
(1)本実施形態によれば、負荷重量が変化した場合に、予備減速速度を再度実験等により設定しなおす工数が削減できるという効果と、動作中の負荷重量変化に対応して予備減速速度を変えることができることからコンデンサーの蓄電能力の範囲内で駆動時間が短縮できるという効果を得ることができる。更には、コンデンサーの蓄電能力の限界まで回生エネルギーを蓄電することが可能となり、より一層ロボット駆動時に利用されるエネルギーを抑制できるという効果を得ることができる。
【0071】
(2)本実施形態によれば、可動部12の負荷重量が変更された場合に、負荷重量設定工程にて負荷重量を設定している。これにより、簡便に最大管理電圧までコンデンサー103に蓄電することが可能な負荷重量に対応した予備減速速度を演算できる。従って、減速停止区間117dに発生する回生エネルギーを負荷重量に応じて最大限蓄電することができる。
【0072】
尚、本実施形態は上述した実施形態に限定されるものではなく、種々の変更や改良を加えることも可能である。変形例を以下に述べる。
(変形例1)
前記実施形態2では、コンデンサー電圧検出部200がコンデンサー103の電圧を検出し予備減速速度を制御した。また、前記実施形態3では負荷の有無により異なる予備減速速度を設定した。この2つの方法を合わせても良い。図14は、コンデンサー電圧負荷有無予備減速速度対応テーブルを説明するための図である。図14に示すように、コンデンサー電圧負荷有無予備減速速度対応テーブルには、コンデンサー103の電圧と負荷の有無とに対応する予備減速速度が設定されている。従って、コンデンサー電圧負荷有無予備減速速度対応テーブルを用いることにより容易にコンデンサー電圧の状態と負荷の有無に対応した予備減速速度を容易に選定することが可能である。そして、コンデンサー電圧が最大管理電圧以下となるように予備減速速度を設定することができる。
【0073】
(変形例2)
実施形態3では、負荷設定は有無であったが、これに限らない。重量や慣性モーメントの量の細かな区分に対応した予備減速速度を設定したテーブルを作成してもよい。そして、この表を用いて、負荷の重量や慣性モーメントの量に応じた速度設定をしても良い。
【0074】
(変形例3)
実施形態1〜実施形態3では、可動部12の数は1つだけであったが、可動部12の数は1つに限らない。複数の可動部12としても良い。この場合にも可動部毎に予備減速速度を設定することにより、簡便な方法でコンデンサー電圧が過大にならないように回生エネルギーを回収することができる。
【0075】
実施形態1〜実施形態3では、ロボット10は水平関節ロボット形式のロボットであったが、ロボットの形式はこれに限らない。垂直多関節ロボット、直交ロボット、パラレルリンクロボット等各種形態のロボットに上記の方法を用いることができる。この場合にも上記の方法と同様な方法を用いて簡便な方法でコンデンサー電圧が最大管理電圧を越えないように回生エネルギーを回収することができる。
【符号の説明】
【0076】
10…ロボット、11…本体部、12…可動部、103…コンデンサー、104…駆動制御部、105…インバーター、109…軌道生成部としての予備減速速度設定部、110…軌道生成部、111…位置・速度制御部、113…電流制御部、114…パルス幅変調部、116…モーター、201…軌道生成部としての予備減速速度演算部。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
本体部と前記本体部に対して移動可能に構成された可動部とを備えるロボット駆動方法であって、
停止している前記可動部に対して、所定の目標位置に向かう方向の駆動力を作用させ、前記可動部を前記目標位置に向けて加速、及び定速駆動させる加速定速工程と、
前記目標位置に向かって移動している前記可動部に対して、前記目標位置に向かう方向とは逆方向の駆動力である予備制動力を作用させて予備減速速度まで減速させる予備減速工程と、
前記可動部を前記予備減速速度から前記目標位置に向かう方向とは逆方向の駆動力である制動力を作用させて減速させ、前記可動部を前記目標位置に停止させる減速停止工程と、
前記予備減速速度を設定する予備減速速度設定工程と、を有し、
前記予備減速工程、または前記減速停止工程では、前記予備減速速度から停止するまでに発生する回生エネルギーをコンデンサーに蓄電し、前記予備減速速度設定工程では、停止時でのコンデンサー電圧が最大管理電圧以下になる範囲で前記コンデンサー電圧が高い場合には前記予備減速速度を低く設定し、前記コンデンサー電圧が低い場合には前記予備減速速度を高く設定することを特徴とするロボット駆動方法。
【請求項2】
請求項1に記載のロボット駆動方法であって、
前記予備減速速度設定工程は、前記コンデンサー電圧を検出する電圧検出工程と、
前記コンデンサー電圧に対応する前記予備減速速度のテーブルを参照し前記コンデンサー電圧を用いて、停止時に最大管理電圧以下になるように前記予備減速速度を演算する予備減速速度演算工程と、を有することを特徴とするロボット駆動方法。
【請求項3】
請求項2に記載のロボット駆動方法であって、
前記予備減速速度設定工程は、前記可動部の負荷重量を設定する負荷重量設定工程をさらに有し、前記予備減速速度演算工程では前記負荷重量と前記コンデンサー電圧に対応する前記予備減速速度のテーブルを参照し前記コンデンサー電圧と前記負荷重量とを用いて、停止時に最大管理電圧以下になるように前記予備減速速度を演算することを特徴とするロボット駆動方法。
【請求項4】
請求項1に記載のロボット駆動方法であって、
前記予備減速速度設定工程は、前記コンデンサー電圧を検出する電圧検出工程と、前記コンデンサー電圧と前記予備減速速度との関係を示す予備減速速度係数を設定する予備減速速度係数設定工程と、前記コンデンサー電圧と前記予備減速速度係数とを用いて停止時に最大管理電圧以下になるように前記予備減速速度を演算する予備減速速度演算工程と、を有することを特徴とするロボット駆動方法。
【請求項5】
本体部と、前記本体部に対して移動可能に設置された可動部と、
前記可動部を電流にて駆動するモーターと、
前記モーターを制御する駆動制御部と、を備え、
前記駆動制御部は、前記可動部の移動速度を出力する軌道生成部と、
前記移動速度に対応して前記モーターを駆動する電流量を出力する位置・速度制御部と、
前記電流量に対応してパルス波形のデューティー比を出力する電流制御部と、
前記デューティー比の前記パルス波形を形成するパルス幅変調部と、
前記モーターに流動する電流と前記モーターが発電する電流とを蓄えるコンデンサーと、
前記コンデンサーの電気を用いて前記パルス波形に対応する駆動波形にて前記モーターを駆動するインバーターと、を備え、
前記軌道生成部は前記コンデンサーの電圧に応じて前記移動速度を出力することを特徴とするロボット。
【請求項1】
本体部と前記本体部に対して移動可能に構成された可動部とを備えるロボット駆動方法であって、
停止している前記可動部に対して、所定の目標位置に向かう方向の駆動力を作用させ、前記可動部を前記目標位置に向けて加速、及び定速駆動させる加速定速工程と、
前記目標位置に向かって移動している前記可動部に対して、前記目標位置に向かう方向とは逆方向の駆動力である予備制動力を作用させて予備減速速度まで減速させる予備減速工程と、
前記可動部を前記予備減速速度から前記目標位置に向かう方向とは逆方向の駆動力である制動力を作用させて減速させ、前記可動部を前記目標位置に停止させる減速停止工程と、
前記予備減速速度を設定する予備減速速度設定工程と、を有し、
前記予備減速工程、または前記減速停止工程では、前記予備減速速度から停止するまでに発生する回生エネルギーをコンデンサーに蓄電し、前記予備減速速度設定工程では、停止時でのコンデンサー電圧が最大管理電圧以下になる範囲で前記コンデンサー電圧が高い場合には前記予備減速速度を低く設定し、前記コンデンサー電圧が低い場合には前記予備減速速度を高く設定することを特徴とするロボット駆動方法。
【請求項2】
請求項1に記載のロボット駆動方法であって、
前記予備減速速度設定工程は、前記コンデンサー電圧を検出する電圧検出工程と、
前記コンデンサー電圧に対応する前記予備減速速度のテーブルを参照し前記コンデンサー電圧を用いて、停止時に最大管理電圧以下になるように前記予備減速速度を演算する予備減速速度演算工程と、を有することを特徴とするロボット駆動方法。
【請求項3】
請求項2に記載のロボット駆動方法であって、
前記予備減速速度設定工程は、前記可動部の負荷重量を設定する負荷重量設定工程をさらに有し、前記予備減速速度演算工程では前記負荷重量と前記コンデンサー電圧に対応する前記予備減速速度のテーブルを参照し前記コンデンサー電圧と前記負荷重量とを用いて、停止時に最大管理電圧以下になるように前記予備減速速度を演算することを特徴とするロボット駆動方法。
【請求項4】
請求項1に記載のロボット駆動方法であって、
前記予備減速速度設定工程は、前記コンデンサー電圧を検出する電圧検出工程と、前記コンデンサー電圧と前記予備減速速度との関係を示す予備減速速度係数を設定する予備減速速度係数設定工程と、前記コンデンサー電圧と前記予備減速速度係数とを用いて停止時に最大管理電圧以下になるように前記予備減速速度を演算する予備減速速度演算工程と、を有することを特徴とするロボット駆動方法。
【請求項5】
本体部と、前記本体部に対して移動可能に設置された可動部と、
前記可動部を電流にて駆動するモーターと、
前記モーターを制御する駆動制御部と、を備え、
前記駆動制御部は、前記可動部の移動速度を出力する軌道生成部と、
前記移動速度に対応して前記モーターを駆動する電流量を出力する位置・速度制御部と、
前記電流量に対応してパルス波形のデューティー比を出力する電流制御部と、
前記デューティー比の前記パルス波形を形成するパルス幅変調部と、
前記モーターに流動する電流と前記モーターが発電する電流とを蓄えるコンデンサーと、
前記コンデンサーの電気を用いて前記パルス波形に対応する駆動波形にて前記モーターを駆動するインバーターと、を備え、
前記軌道生成部は前記コンデンサーの電圧に応じて前記移動速度を出力することを特徴とするロボット。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2012−143850(P2012−143850A)
【公開日】平成24年8月2日(2012.8.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−5581(P2011−5581)
【出願日】平成23年1月14日(2011.1.14)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年8月2日(2012.8.2)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年1月14日(2011.1.14)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]