説明

ロボット血管造影システムを用いた2D/2D診断及び治療併用静脈造影器検査のための臨床ワークフロー

【課題】複数画像化モダリティの支援に適したロボット血管造影法を利用した静脈造影検査の診断を支援するためのシステムを提供する。
【解決手段】 静脈造影検査の実施するためのシステムが、
患者を静止位置に支持する患者支持装置と、
静脈造影検査中、患者の一部の画像を取得し、さらに、少なくとも2つの画像化モダリティの内の1つを利用して画像を取得する医用画像化装置と、
医用画像化装置に結合されて、取得した患者の画像を受信し、さらに、患者の一部の画像の可視化を生じるプロセッサとを含んでいる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、静脈造影検査の診断を支援するためのシステム及び方法に関し、とりわけ、複数画像化モダリティの支援に適したロボット血管造影法を利用した静脈造影検査に関する。
【背景技術】
【0002】
静脈造影検査は、患者の深部静脈血栓症または肺塞栓症の存在を確認するため、医師または医療関係者によって実施される検査である。一般に、静脈造影法(静脈撮影法、上行静脈造影撮影法、または、静脈造影撮影法とも呼ばれる)は、腿及び下腿の静脈、大静脈(大静脈造影法)、肺動脈(肺血管造影法)、または、それらの組み合わせの血管造影画像を提供する観血的診断検査である。静脈造影法によって、血栓の位置及び範囲が確認され、腿深静脈の状態を診断することが可能になる。静脈造影法は、非観血的検査による疾患の確認に失敗した後、深部静脈血栓症の疑いが強い場合にとりわけ有効である。
【0003】
今日の画像化システムでは、複式超音波が、下肢または上肢の浅及び部静脈系に関する深部静脈血栓症または静脈機能不全の診断にとって望ましい診断モダリティになっている。複式超音波に加えて、患肢、入り組んだ解剖学的構造、肥満が関係する最近の手術または傷害によって障害が起きた患者、及び、治療前にさらなる描写を必要とする病変のある患者には、静脈撮影法を利用することができる。静脈撮影法を用いる必要を示唆するものとしては、血栓溶解または血栓摘出のようなカテーテルによって行われる診療に対する準備作業としての深静脈血栓症(DVT)の描写、診断に役立たないかまたは技術的に不十分な超音波の存在、または、ふくらはぎの静脈のより詳細な画像を得る必要が含まれる。
【0004】
肺塞栓症の診断において、医師または医療関係者は画像化モダリティとしてコンピュータ断層撮影法を利用することができる。コンピュータ断層撮影法の代わりにまたはそれに加えて、患者によっては磁気共鳴画像化を利用することもできる。しかしながら、医師及び医療関係者は、カテーテルベースの診療のような直接診療にコンピュータ断層撮影法または磁気共鳴を利用することはできない。例えば、コンピュータ断層撮影血管造影法または磁気共鳴血管造影法によって不確定な結果または別様に診断に役立たない結果が生じるか、あるいは、否定的な検討結果と肺塞栓症の強い臨床的疑いとの食い違いが生じる場合、これらの方法の代わりにまたはそれらに加えて、カテーテルベースの肺動脈造影法を利用することができる。一般に、末梢性塞栓または慢性塞栓のような小さいかまたは微細な異常の確認、及び、コンピュータ断層撮影血管造影法または磁気共鳴血管造影法では見逃す可能性のある軸平面に沿った配向の血管内における塞栓の検出には従来の肺血管造影法が用いられる。さらに、肺動脈カテーテルによって肺動脈圧を直接測定することができる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
現代の診療において、深部静脈血栓症を伴わない肺塞栓症の疑いのある患者の診断は、複雑であり時間がかかる。一般に、肺塞栓症の治療には、まず、緊急治療室において患者にDダイマー検査を実施することが含まれる。Dダイマー検査は、不適当な凝固傾向である凝固性亢進を生じさせる疾病及び状態を除外、診断、及び、監視するため、他の臨床検査及び画像化走査と共に頻繁に要求される。こうした状態のうち最も一般的なものの1つは、深部静脈血栓症であり、これには、最も多いのが下肢であるが、身体の深部静脈における血塊形成が関与する。これらの血塊は、非常に大きく成長して、下肢の血流を妨げ、腫れ、痛み、及び、組織損傷を生じさせる可能性がある。一片の血塊が離脱して、肺塞栓症を生じさせる可能性のある身体の他の部分へ移動する可能性がある。
【0006】
従来の診断におけるDダイマー検査に引き続き、患者は、患者を超音波部に移して、二重超音波検査を受けさせ、患者をコンピュータ断層撮影部に移し、胸部のコンピュータ断層撮影走査、磁気共鳴走査、または、それらの組み合わせを実施して、肺塞栓症を除外または確認し、患者を血管造影室に移して、放射線治療を実施し、最後に、患者を緊急治療室に送り返すのような、いくつかの異なるタイプの画像化を受ける場合が多い。プロセス全体に多大の時間を要する可能性があるだけではなく、患者の各走査に手間がかかり、時間を食う可能性もある。
【0007】
診断プロセス全体を通じ、前述の各画像化システムは、この複雑な方法を個別に有効にするには患者の被曝が不十分である。さらに、これらの画像化システムは、1回のセッションで患者の末梢静脈及び肺動脈の画像化走査を実施する能力に欠ける場合が多い。最後に、正確な造影剤送達計画の難しさが、画像化装置の制限された移動度と相俟って、深部静脈血栓症、肺塞栓症、または、それらの合併症の診断及び治療を妨げることになる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前置きとして、下記の実施形態には、静脈造影検査を実施するためのシステム及び方法が含まれている。1つの実施形態では、システムは、患者支持装置と、医用画像化システムと、医用画像化装置に結合されたプロセッサとを含んでいる。患者支持装置は患者を静止位置に支持する働きをする。医用画像化装置は、静脈造影検査中の患者の一部の画像を取得する働きをする。医用画像化装置は、少なくとも2つの画像化モダリティの内の1つを用いて画像を取得することができる。2つの画像化モダリティには、1つ又は複数の2次元画像化モダリティ、1つ又は複数の3次元画像化技術、または、それらの組み合わせを含むことができる。医用画像化装置に結合されたプロセッサは、患者の取得画像を受信して、可視化された画像を生じる働きをする。患者の一部の可視化画像はプロセッサに結合されたディスプレイ装置に表示することができる。
【0009】
1つの実施形態では、静脈造影検査を実施するための方法には、治療場所から患者を受け入れて、患者を患者支持装置に運ぶステップが含まれる。この方法は、少なくとも静脈造影検査を決定するステップと、医用画像化装置を用いて患者に静脈造影検査を実施するステップとをも含む。この方法は、さらに、患者を治療場所に戻すステップも含む。1つの代替実施態様では、この方法は、患者に治療上の処置を施すか否かを決定するステップと、患者に治療上の処置を施すステップと、その後、治療上の処置がうまくいったか否かを検証するステップとを含んでいる。さらにもう1つの実施態様では、この方法は、患者が呼吸困難を知覚しているか否かを決定するステップと、患者支持装置を調整して、患者の呼吸困難を軽減する位置に患者を支持するステップとを含んでいる。
【0010】
本発明は、付属の請求項によって規定されており、このセクションにはそれら請求項に対する制限とみなすべきものは何もない。実施形態のさらなる態様及び利点については、望ましい実施形態に関連して後述され、請求項において独立してまたは組み合わせて請求されるものとする。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
図1は、静脈造影検査を実施するためのロボット血管造影室の1つの実施形態に関するブロック図である。図1に示すロボット血管造影室は、ロボット血管造影システム102である。図1に示すように、システム102は、医用画像化装置128の第1の実施形態、患者支持装置116、及び、関連する診断及び治療装置を含んでいる。システム102には、図1に示す装置より多いかまたは少ない診断及び治療装置を含むことができる。個別ユニット、装置、及び、機器は、有線接続、無線接続、または、それらの組み合わせを利用して相互通信を行うことができる。有線接続には、制限するわけではないが、PS/2、USB、イーサネット、IDE/ATA、SCSI、SATA、IEEE1394、VGA、DVI、現在知られているかまたは今後開発される任意の他の有線接続、または、それらの組み合わせが含まれる。無線接続には、制限するわけではないが、802.11 a/b/g、ブルートゥース、RF、赤外線、現在知られているかまたは今後開発される任意の他の無線接続、または、それらの組み合わせが含まれる。図1に示す破線の使用は、1つ又は複数の装置に代替接続の利用が可能であることを表わしている。システム102に結合されたネットワークインタフェース146は、システム102における機器と装置間の通信を円滑にするために用いられる。ネットワーク146は、さらに、他のネットワーク、治療システム、病院、臨床家、または、それらの組み合わせと通信して、システム102を利用した静脈造影検査に関する情報の取得または送信を行う働きをする。ネットワークインタフェース146は、1つ又は複数の有線接続、無線接続、または、それらの組合せを利用して、通信を円滑にすることができる。
【0012】
医用画像化装置128は、X線透視画像、血管造影画像、超音波画像、X線画像、現在知られているかまたは今後開発される任意の他の2次元画像取得技法、または、それらの組み合わせのような、2次元画像を生成する働きをする医用画像化装置である。例えば、1つの実施形態では、医用画像化装置128は、ペンシルベニア州マルヴァーンに本社を置くSiemens Medical Solutions of Siemens AGから入手可能なARCADIS Orbit Cアーム型画像化装置のようなX線撮像装置である。もう1つの実施形態では、医用画像化装置128は、やはりSiemens Medical Solutions of Siemens AGから入手可能なAXIOM Iconos R200のような蛍光透視画像を生成可能な画像化装置である。医用画像化装置128は、やはりSiemens Medical Solutions of Siemens AGから入手可能なAXIOM Artis dTAのような血管造影画像を生成することができる画像化装置とすることもできる。
【0013】
1つの実施形態では、医用画像化装置128はC型アームX線装置128である。C型アームX線装置128は、X線源130とX線検出器122が取付けられたC型アーム支持体138を含んでいる。X線源130とX線検出器122は、さらに、放射または回転の中心軸線に沿って全く正反対の位置にあって互いに向かい合うように取付けることができる。X線源130、X線検出器122、または、それらの組み合わせには、さらに、患者に照射することができる放射線照射野を制限するための隔壁を含むことができる。
【0014】
C型アーム支持体138は、コントローラ144による制御が可能であるロボット装置134に取付けられている。1つの実施形態では、ロボット装置134には、1つ又は複数の軸の周りで回転可能な関節アーム132が含まれている。例えば、直角座標系に関して、関節アーム132は、x軸、y軸、z軸、または、それらの組み合わせの周りで回転可能である。コントローラ144は、駆動装置112に関節アームを回転させるコマンドを送ることができる。駆動装置112は、モータ、油圧機構、現在知られているかまたは今後開発される任意の他の駆動装置、または、それらの組み合わせとすることができる。1つの実施形態では、駆動装置112は壁面140に取付けられる。しかしながら、駆動装置112は、天井、床、または、現在知られているかまたは今後開発される任意の他の取付け面、または、それらの組み合わせに取付けることができる。駆動装置112は、さらに、取付け面140に対して縦方向及び/または横方向に移動可能である。
【0015】
C型アームX線装置128は、複数の静脈造影2次元画像を取得するために回転可能である。一般に、C型アームX線装置128によって取得される2次元画像は、X線透視画像、血管造影画像、X線画像、任意の他の同等2次元画像、または、それらの組み合わせである。
【0016】
X線以外のモダリティを利用することもできる。例えば、2次元画像は、超音波画像化、コンピュータ断層撮影(CT)、磁気共鳴断層撮影(MRT)、現在知られているかまたは今後開発される任意の他の2次元画像化技術、または、それらの組み合わせを利用して取得することができる。2次元画像は、患者の末梢または深静脈に造影剤を注入し、引き続き患者のX線走査を実施して静脈血栓症の有無を決定するためのカテーテル静脈撮影法を利用して取得することもできる。あるいはまた、2次元画像は、走査される器官腔または静脈造影検査を受ける患者の一部の2次元画像とすることもできる。例えば、2次元画像は、患者の胸腔の血管造影画像とすることができる。もう1つの例として、2次元画像は患者の下肢のX線透視画像とすることができる。さらにもう1つの例では、2次元画像は、患者の骨盤腔の血管造影画像とすることができる。2次元画像は、患者の下大静脈または腹部、肺動脈または胸部、または、それらの組み合わせの血管造影画像とすることができる。
【0017】
C型アームX線装置128または他の装置は、さらに、3次元画像を生成するために用いられる3次元画像データセットを取得する働きをすることもできる。一般に、3次元画像データセットは、C型アームX線装置128によって取得される器官腔または患者の一部を表わすデータセットである。3次元画像データセットは、術前技法、術中技法、または、それらの組み合わせを含む任意の3次元技法を用いて取得することができる。術前技法には、制限するわけではないが、超音波画像化法、コンピュータ断層撮影法、従来の血管造影法、または、それらの組み合わせが含まれる。術中技法の例には、制限するわけではないが、3Dディジタルサブトラクション血管造影法、3Dディジタル血管造影法、Siemens Medical Solutions of Siemens AGによって開発されたDyna−CT技法のような回転血管造影法、3D超音波技法、または、それらの組み合わせが含まれる。現在知られているかまたは今後開発される他のタイプの3次元画像化技術も考えられる。
【0018】
さらに図1を参照すると、患者支持装置116はC型アームX線装置128のような医用画像化装置128の近くに配置されるかまたはそれに結合される。患者支持装置116は患者(図示されていない)を支持する働きをする。患者支持装置116は、担架、移動ベッド、現在知られているかまたは今後開発される任意の他の支持装置、または、それらの組み合わせとすることができる。患者支持装置116は、床のような取付け面に取付けることもできるが、壁面、天井、現在知られているかまたは今後開発される任意の他の取付け面、または、それらの組み合わせに取付けることもできる。
【0019】
1つの実施形態では、患者支持装置116は駆動装置142に結合され、駆動装置142は、さらにシステムコントローラ144、コントローラ118、または、それらの組み合わせに結合される。駆動装置142は患者支持装置116の回転及び/また直進を可能にする。例えば、患者支持装置116は、水平な軸線の周りを縦方向に回転する働き、垂直な軸線の周りを横方向に回転する働き、または、それらを組み合わせた働きをするのようなように、1つ又は複数の回転軸線の周りを回転する働きが可能である。1つの実施形態では、患者支持装置116は、さらに医用画像化装置128の軸線の周りを回転する働きも可能である。さらに、患者支持装置が医用画像化装置128から放出された放射線を照射される場合に、取得された2次元画像または3次元画像の可視化において患者支持装置が透明に見えるようにすることもできる。
【0020】
もう1つの実施形態において、患者支持装置116及び駆動装置142は、ロボット装置を形成するように結合される。患者支持装置116及び駆動装置142がロボット装置を形成するように結合されるこの実施形態では、患者支持装置116及び駆動装置142は、C型X線装置128とほぼ同様に配置することができる。例えば、患者支持装置116は、1つ又は複数の軸線の周りで傾斜または回転する働きをするようにC型X線装置のアームの1つに取付けることができる。さらにこの実施形態では、患者支持装置116及び駆動装置142は、システムコントローラ144、コントローラ118、ユーザインタフェース126、または、それらの組み合わせから1つ又は複数のコマンドを受信することができる。
【0021】
軟部組織プロセッサ108が、C型X線装置128に結合されている。軟部組織プロセッサ108は、C型X線装置128を用いて患者から取得した画像の2次元画像または可視化を生成する働きをする。軟部組織プロセッサ108は、さらに、C型X線装置128を用いて患者から取得した画像の3次元可視化を生成する働きをする。
【0022】
軟部組織プロセッサ108は、汎用プロセッサ、データ信号プロセッサ、グラフィックスカード、グラフィックスチップ、パーソナルコンピュータ、マザーボード、メモリ、バッファ、スキャンコンバータ、フィルタ、補間回路、フィールドプログラマブル・ゲートアレイ、特定用途向け集積回路、アナログ回路、ディジタル回路、それらの組み合わせ、または、現在知られているかまたは今後開発される任意の他のプロセッサとすることができる。軟部組織プロセッサ108には、例えば相対放射線濃度に従って2次元可視化のピクセルを表示することによって、C型X線装置128を用いて取得された患者の一部の2次元可視化を表示するためのソフトウェア及び/またはハードウェアが含まれる。軟部組織プロセッサ108には、αブレンディング、最低強度投影、最高強度提示、表面レンダリング、現在知られているかまたは今後開発される任意の他の表現技法、または、それらの組み合わせのような、3次元画像データセットの3次元表現を描くためのソフトウェア及び/またはハードウェアも含まれる。
【0023】
ディスプレイ装置110は、軟部組織プロセッサ108に結合されている。ディスプレイ装置110は、さらに、患者モニタ114、人工呼吸器136、患者端末器124、超音波センサ120、または、それらの組み合わせのような、図1に示す他の機器または装置に結合することができる。ディスプレイ装置110は、モニタ、CRT、LCD、プラズマスクリーン、フラットパネル、プロジェクター、現在知られているかまたは今後開発される任意の他のディスプレイ装置、または、それらの組み合わせである。ディスプレイ装置110は、軟部組織プロセッサ108によって生成される患者の撮像された部分の2次元可視化、患者の撮像された部分の3次元可視化、または、それらの組み合わせを表示する働きをする。ディスプレイ装置110は、さらに、C型X線装置128によって捕捉される患者の撮像された部分の個別の3次元画像の表示及び患者の撮像された部分の2次元可視化の表示を行う働きをすることもできる。ディスプレイ装置110は、統計量に関する情報、及び、人工呼吸器136、超音波センサ120、衝突防止システム106、ユーザインタフェース126、患者端末器124、または、それらの組み合わせによって記憶されているかまたはモニタされる情報を表示するように構成することもできる。
【0024】
システム102には、さらに超音波センサ120を含むことができる。超音波センサ120は、C型X線装置128、患者支持装置116、システム102内の任意の他の装置または機器、または、それらの組み合わせに結合することができる。1つの実施形態では、超音波センサ120は、C型X線装置128、患者支持装置116、システム内の任意の他の装置または機器の部分間、または、それらの組み合わせの部分間の相対距離を1〜2回測定して、それらの装置または機器間における望ましくない接触の回避を助ける働きをする。超音波センサ120は、衝突防止システム106に伝えることができる相対位置データ及び超音波データを生成する。衝突防止システム106は、危険な位置決めを阻止するように構成することができる。超音波センサ120は、さらに、システム102の装置または機器のそれぞれにおけるセンサまたは制御装置に関する他の相対位置の決定を補完するように構成することもできる。1つの実施形態では、超音波センサ120を位置決め入力として用いて、システム102内の装置または機器が互いから予め定められた距離範囲内に侵入するのを阻止する。
【0025】
位置決め入力であることに加えてまたはその代替として、超音波センサ120は、二重超音波検査のような超音波検査を実施するように構成することができる。一般に、二重超音波検査は、医師が血管を検査できるようにするためのドップラ超音波法及び従来の超音波法の利用を表わしている。二重超音波検査では、患者の血流がひどく妨げられる位置並びに血流の速度及び方向を医師に示すため、カラーコーディングすることができる画像を生成することができる。1つの実施形態では、超音波センサ120は、超音波を送波及び受波するために用いられるトランスデューサを含んでいる。超音波センサ120に、超音波検査において患者の一部を走査するために用いられるトランスデューサが含まれているか否かにかかわらず、軟部組織プロセッサ108は、受波した超音波を処理して、走査された患者の一部の2次元画像、3次元画像、または、それらの組み合わせを再現するように構成することができる。
【0026】
1つの実施形態では、C型アームX線装置128は、システムコントローラ144によって制御される。システムコントローラ144は、さらに、X線発生器104、高電圧電源、または、それらの組合せを含むことができる。静脈造影検査システム102は、患者モニタ114、人工呼吸器136、患者端末器124、及び、ユーザインタフェース126を含むこともできる。
【0027】
患者支持装置116に患者モニタ114を結合して、静脈造影検査を受ける患者の生命徴候を監視することができる。1つの実施形態では、患者モニタ114は心電図装置である。患者モニタ114を軟部組織プロセッサ108に結合して、ある時間期間にわたって患者の撮像された部分の2次元及び3次元可視化を生成することもできる。例えば、患者モニタ114と軟部組織プロセッサ108を併用して、ある時間期間にわたって変化する、2次元可視化、3次元可視化、または、それらの組み合わせとして表現される患者の撮像された部分の4次元可視化を生成することができる。
【0028】
患者端末器124は、ロボット血管造影システム102と患者に関する情報をやりとりする働きをする。例えば、患者端末器124は、有線接続、無線接続、または、それらの組合せを利用して、静脈造影検査システム102と患者に関する情報をやりとりすることができる。患者情報には、制限するわけではないが、人口統計情報、投薬情報、以前の治療情報、以前の病気、現在の症状の状態、現在の健康情報、または、それらの組み合わせを含むことができる。例えば、静脈造影検査システム102のユーザは、患者端末器124を利用して、静脈造影検査を受ける患者が以前に肺塞栓症にかかったことがあるか否か、あるいは、以前に深部静脈血栓症と診断されたことがあるか否かを決定することができる。
【0029】
図2Aは従来技術による6つの回転軸線を備えたロボットアームの1つの実施形態に関する概略図である。ターンテーブル204が、床のような取付け面に永久設置されたベースフレーム202に取付けられる。ターンテーブル204は、第1の回転軸線A1の周りで回転する働きをする。フローティングリンク206が、第2の回転軸線A2の周りを旋回できるようにターンテーブル204に取付けられる。アーム208が、第3の回転軸線A3の周りを回転できるようにフローティングリンク206に固定される。ハンド210が、第4の回転軸線A4の周りを回転できるようにアーム208の端部に取付けられる。ハンド210は、回転軸線A6の周りを回転し、それに対して垂直に延びる第5の回転軸線A5の周りを旋回することができる取付け素子212を備えている。
【0030】
図2Bは、図1のシステム102に従って静脈造影検査を実施するための医用画像化装置224の第2の実施形態に関する概略図である。医用画像化装置には、取付け素子212に結合された支持装置214が含まれている。支持装置214と取付け素子212の結合及び分離のために、詳細には示されていない結合部を設けることができる。支持装置214は、取付け素子212に対して垂直方向に延びる中央部材222を含んでいる。中央部材222の両端から、第1のアーム216aと第2のアーム216bが突き出している。第1のアーム216aにはX線検出器218が取付けられており、第2のアーム216bにはX線源が取付けられている。第1のアーム216a及び第2のアーム216bは、中央部材222に沿って線形移動できるように中央部材222に取付けられている。第1のアーム216a及び第2のアーム216bは、静脈造影検査全体を通じて予め定められた距離Bを保つようにすることができる。しかしながら、第1のアーム216a及び第2のアーム216bが中央部材222に沿って移動することもできるので、静脈造影検査前、中、及び、後に予め定められた距離Bを調整することができる。医用画像化装置224の第2の実施形態は、図1に示す第1の医用画像化装置128の代わりにまたはそれに加えて用いることができる。
【0031】
図1及び図2Bに関連して、図3Aは、静脈造影検査を実施するための医用画像化装置224の1つの実施形態及び患者支持装置116の斜視図である。患者支持装置116はある角度位置にあり、これにより患者支持装置116上に横たわっている患者302もある角度位置に横たわることになる。駆動装置142と患者支持装置116の間の旋回位置306によって、患者支持装置116は1つ又は複数の軸線の周りを回転することが可能になる。ほぼ45°の角度位置をなすように示されているが、患者支持装置116はさらに0°〜90°の移動度で傾斜する働きも可能である。
【0032】
患者302が患者支持体116によって支持されると、医用画像化装置224は患者302にほぼ近い位置に案内することができる。図3Aに示すように、医用画像化装置224は患者に向かって進み、患者302を、第1のアーム216aに取付けられたX線検出器218と第2のアーム216bに取付けられたX線源220との間の位置に案内することができる。これにより、医用画像化装置224は、その複数の回転軸線を利用して患者302のある部分または位置の周りを回転し、1つ又は複数の血管造影またはX線蛍光透視2次元、3次元画像データセット、または、それらの組み合わせを得ることが可能になる。次に、3次元画像データセットを用いて、患者302の走査部分または位置の3次元画像を生成することが可能になる。
【0033】
さらに、医用画像化装置224は、1つ又は複数のモダリティ内で作動する働きをするので、患者302は、静脈造影検査全体にわたる医用画像化装置224による1回又は複数回の走査中、患者支持装置116上にとどまることができる。例えば、静脈造影検査の最初のステップとして、超音波センサ120は、まず患者の二重超音波検査を実施する働きが可能である。
【0034】
従来の静脈増益検査における二重超音波検査の後、患者302は別の場所に移されて、さらなる走査を受けることになるであろう。しかしながら、患者302を別の場所または他の部門に移す代わりに、医用画像化装置224は、その後コンピュータ断層撮影モダリティ内で作動し、患者302のコンピュータ断層撮影走査を実施することができる。例えば、医用画像化装置224は、患者302の胸部のコンピュータ断層撮影走査を実施して、患者302が肺塞栓症にかかっているか否かを決定する。さらに、駆動装置142を用いて、旋回位置306の周りで患者支持装置116を回転させて、画像を得ることができるが、別な方法であれば患者302を別個の施設に移すことが必要になるであろう。
【0035】
コンピュータ断層撮影走査によって、患者が肺塞栓症にかかっていることが明らかになると、従来の静脈造影検査では、患者302を別個の血管造影検査室に移すことが必要になるであろう。しかしながら、医用画像化装置224は、1つ又は複数の軸線に沿って患者302の周りを自由に回転することができるので、医用画像化装置224は、肺血管造影を実施するように構成することができる。1つの実施形態では、ロボット血管造影システム102は、1つ又は複数の血管造影検査、静脈造影検査、または、それらの組み合わせを実施することができる。さらに、軟部組織プロセッサ108は、患者の1つ又は複数の走査部分の3次元データセットからCTのような軟部組織画像を再現するように構成することができる。例えば、軟部組織プロセッサ108は、異なる画像化設定を利用して、軟部組織、骨、任意の他の組織の質の描写、または、それらの組み合わせのような異なる組織の質の描写を行うことができる。
【0036】
医師304は、ロボット血管造影システム102を利用して、患者302に放射線治療を施し、肺塞栓を除去または治療することができる。患者支持装置116に関連した医用画像化装置224の構成により、医師304は従来の静脈造影検査の場合よりも患者302に近い位置につくことが可能になる。従って、医師304は、従来の静脈造影検査の場合よりも、患者302にいっそう接近し、対応しやすくなる。治療処置の後、医師304は、医用画像化装置224を利用して患者302をさらに走査し、治療処置がうまくいったか否かを決定する。
【0037】
図1及び図2Bに関連して、図3Bは、静脈造影検査を実施するための医用画像化装置224及び患者支持装置116の代替斜視図である。図3Bにおいて、患者支持装置116は、患者が患者支持装置116を取付けた床に対してほぼ平行になるようにほぼ水平位置に配置されている。図3Aに関連して既述の静脈造影検査と同様、医師304は、患者302がこの水平位置で横たわった状態のまま、患者302に静脈造影検査を実施することができる。図示されていないが、医師304は、患者302が患者支持装置116を取付けた床に対してほぼ垂直になるように患者支持装置116がほぼ垂直位置にある場合に、静脈造影検査を実施することもできる。
【0038】
図1及び図2Bに関連して、図4A、図4B、及び、図4Cは、患者302の静脈造影検査中に医用画像化装置224を用いて捕捉した患者302の異なる器官腔の可視化である。図4Aは、右肺大動脈並びに左肺大動脈の大きい血栓形成及び塞栓(明るい造影剤を充填された血管の暗い部分)を示すコンピュータ断層撮影血管造影の軸方向断面である。図4Bは、従来の肺血管造影装置を画像化モダリティとして用いて、医用画像化装置224によって捕捉された2次元画像である。すなわち、図4Bには、陰影欠損によって表わされた画像右側の肺動脈の大きい血栓形成が描かれている。図4Cは、カテーテル静脈撮影法を用いて医用画像化装置224によって捕捉された、患者302の下肢の静脈血栓を描写した2次元画像である。一般に、カテーテル静脈撮影法には、造影剤とX線を用いて、血栓症の可能性を決定することが含まれ、図4Cは、造影剤によって包囲された管腔の陰影欠損として頚骨及び膝窩静脈の広範囲にわたる血栓症を描写している。
【0039】
次に図1及び図2Bに関して図5を参照すると、この図は医用画像化装置224及び患者支持装置116を用いて静脈造影検査を実施するための方法の1つの実施形態に関するブロック図である。図5に示されるものより多い、少ない、及び/または、異なるステップを実施することもできる。
【0040】
最初になすべきこととして、患者302がロボット血管造影室に移される(ブロック502)。ロボット血管造影室には、医用画像化装置128、患者支持装置116、及び、図1に示す機器または装置の1つ又は複数が含まれている。ロボット血管造影室には、図1に示す医用画像化装置128に加えてまたはその代わりに、医用画像化装置224を含むこともできる。ロボット血管造影室に患者302を迎え入れた後(ブロック502)、患者302は病院用ベッドから患者支持装置116に移される(ブロック504)。1つの実施形態では、患者支持装置116は、患者302を助けて、病院用ベッドから患者支持装置116に移すように構成されている。例えば、患者支持装置116は、駆動装置142を用いて、縦軸の周りで回転する働きをすることができるが、この場合、患者支持装置116が回転して、病院用ベッドに接触し、患者302を患者支持装置116に移すために利用することが可能になる。代替案として、患者302が歩くのような他の手段を用いて患者支持装置116に接近し、それに入ることもできる。
【0041】
患者302が患者支持装置116に移された後、医師304または他の医療関係者は、患者302が呼吸困難に陥っているか否かを確認することができる(ブロック506)。一般に、呼吸困難は、知覚される呼吸しにくさまたは呼吸時の痛みである。検出器304または他の医療関係者が、患者302が呼吸困難に陥っていると判断した場合、医師304は患者302を収容するように患者支持装置316を調整することができる(ブロック508)。1つの実施形態では、患者302が横臥中に呼吸困難に陥る場合、患者支持装置316を横軸の周りで回転させて、直立または垂直位置まで患者支持装置316を回転させることができる。もう1つの実施形態では、患者が直立している間に呼吸困難に陥る場合、患者支持装置316を回転させて、ほぼ水平位置につけることができる。患者支持装置316は、患者302、医師304、ロボット血管造影室の追加機器、または、それらの組み合わせの要求にさらに対応するように、追加軸の周りにおけるさらなる回転が可能である。
【0042】
患者支持装置316の調整が済むと(ブロック508)、または医師304が患者302が呼吸困難に陥ってはいないと判断すると(ブロック506)、医師304は静脈造影検査法を選択する(ブロック510)。前述のように、静脈造影検査法には、制限するわけではないが、下肢の静脈造影法、骨盤腔の断面画像法、下大静脈または腹部の静脈造影法、及び、肺動脈または胸部の肺血管造影法または断面画像法が含まれる。用語「静脈造影法」は、静脈撮影法、上行静脈造影撮影法、静脈造影撮影法、及び、それらの組み合わせを含む。例えば、医師304は、患者302の下肢の静脈造影法を選択して、患者が深部静脈血栓症にかかっているか否かを決定することができる。代わりに、医師304は、患者302の肺血管造影法の実施を選択して、患者302が肺塞栓症にかかっているか否かを決定することができる。さらにもう1つの例として、医師304は、カテーテルベースの静脈撮影法の実施を選択して、患者302が血栓症にかかっているか否かを決定することができる。
【0043】
ロボット血管造影室の1つの実施形態では、軟部組織プロセッサ108または他のプロセッサに、ディスプレイ装置110に静脈造影検査のリストを表示するようにあらかじめプログラムしておくことができる。その結果、医師304はユーザインタフェース126を利用して、ディスプレイ装置110によって表示される1つ又は複数の静脈造影検査の内の1つを選択することが可能になる。ディスプレイ装置110によって表示される静脈造影検査のリストの代わりにまたはそれに加えて、医師304はユーザインタフェース126を利用して、軟部組織プロセッサ108のために静脈造影検査の選択またはプログラミングを手動で実施することができる。
【0044】
静脈造影検査法を選択した後(ブロック510)、静脈造影検査法を実施するための画像化モダリティが選択される(ブロック512)。前述のように、医用画像化装置の第1の実施形態128または医用画像化装置の第2の実施形態224は、1つ又は複数の画像化モダリティを実施するように構成される。実施可能な画像化モダリティには、制限するわけではないが、2次元画像化技術または3次元画像化技術が含まれる。画像化モダリティは、軟部組織プロセッサ108、医師304、または、それらの組み合わせによる選択が可能である。1つの実施形態では、医師304は選択された静脈造影検査法にどの画像化モダリティを用いるかを選択する。例えば、医師304は、二重超音波検査法、従来の肺血管造影法、コンピュータ断層撮影肺血管造影法、磁気共鳴画像化法、現在知られているかまたは今後開発される任意の他の2次元画像化技術、または、それらの組み合わせのような2次元画像化技術を選択することができる。選択された2次元画像化技術の代わりにまたはそれに加えて、医師304は、Dyna−CT、コンピュータ断層撮影法、現在知られているかまたは今後開発される任意の他の3次元画像化技術、または、それらの組み合わせのような3次元画像化技術を選択することができる。
【0045】
代替1つの実施形態では、軟部組織プロセッサは選択された静脈造影法に適した画像化モダリティを選択するようにあらかじめ構成される。例えば、選択された静脈造影法が下肢の静脈造影法である場合、軟部組織プロセッサ108または他の装置または機器は、コンピュータ断層撮影のような2次元画像化モダルティを自動的に選択することができる。
【0046】
もう1つの例では、選択された静脈造影法が胸部の静脈造影法である場合(ブロック510)、軟部組織プロセッサ108は、画像化モダリティとしてDyna−CTのような3次元画像化技術を選択することができる。軟部組織プロセッサ108または他の装置または機器は、制限するわけではないが、従来の肺血管造影法、コンピュータ断層撮影肺血管造影法、及び、現在知られているかまたは今後開発される任意の他の2次元または3次元画像化技術、または、それらの組み合わせを含む他の画像化モダリティを選択することができる。
【0047】
画像化モダリティの選択が済むと(ブロック512)、次に、選択された画像化モダリティを用いて、患者302に静脈造影検査が施される(ブロック514)。静脈造影検査は、医師または医療関係者304、軟部組織プロセッサ108、システムコントローラ144のような任意の他の装置または機器、または、それらの組み合わせよる実施が可能である。選択された静脈造影検査には、選択された画像化モダリティを用いた患者302の走査を含むことができる。走査は、医用画像化装置の第1の実施形態128、医用画像化装置の第2の実施形態224、または、それらの組み合わせによって実施可能である。例えば、医用画像化装置の第2の実施形態224を用いて患者302を走査する場合、医用画像化装置224は、選択された静脈造影検査法に従って1つ又は複数の軸の周りを回転し、患者302の1つ又は複数の領域を走査することができる。走査または静脈造影検査の結果はディスプレイ装置110に表示することができる。例えば、走査または静脈造影検査結果の2次元可視化、3次元可視化、または、それらの組み合わせは、ディスプレイ装置110に表示することができる。
【0048】
選択された静脈造影検査法を患者302に施した後(ブロック514)、医師304、軟部組織プロセッサ108、駆動装置142、または、それらの組み合わせは、患者の体位を変える(ブロック516)。例えば、患者302の異なる角度からの走査が必要になる場合、駆動装置142を用いて、1つ又は複数の軸の周りで患者支持装置116を調整し、患者302の体位を変えることができる。もう1つの例として、選択された静脈造影検査において患者の複数走査が必要とされる可能性があるが、その場合、患者支持装置116を調整することによって患者302の体位を変えることができる。代替案として、選択された静脈造影検査法にさらなる走査が必要とされないことあり得るが、その場合、患者の体位を変えることはない。
【0049】
選択された静脈造影検査法の実施後(ブロック514)、追加静脈造影検査が必要か否かあるいは選択されているか否かについて確認される(ブロック518)。追加静脈造影検査法が必要か否かあるいは選択されているか否かに関する確認は、医師304、軟部組織プロセッサ108、システムコントローラ144、任意の他の装置または機器、または、それらの組み合わせによる実施が可能である。1つの実施形態では、医師304が最初に複数の静脈造影検査を選択し、システム102によって全ての静脈造影検査が実施されるまで、静脈造影検査が順次実施されるようにすることができる。もう1つの実施形態では、医師304は、ディスプレイ装置110及びユーザインタフェース126を介して静脈造影検査法を選ぶ選択範囲が与えられる。さらにもう1つの実施形態では、軟部組織プロセッサ108は、あらかじめ構成されたかまたはあらかじめプログラムされたプロセスに従って追加静脈造影検査法を実施する。追加静脈造影検査を実施すべき場合、この方法は、静脈造影検査法を選択するステップ(ブロック510)、画像化モダリティを選択するステップ(ブロック512)、静脈造影検査法を実施するステップ(ブロック516)、または、それらの組み合わせに戻ることができる。
【0050】
静脈造影検査法が完了すると(ブロック518)、1つ又は複数の治療処置が必要か否かに関する診断がなされる(ブロック520)。例えば、1つ又は複数の静脈造影検査の結果、患者302が肺塞栓症にかかっていることが明らかになると、医師304、軟部組織プロセッサ108、他の装置または機器、または、それらの組み合わせによって、肺塞栓症を治すための治療処置を実施することが望ましいかあるいは必要かを判断することができる。もう1つの例では、1つ又は複数の静脈造影検査の結果、患者302が深部静脈血栓症にかかっていることが明らかになると、医師304、軟部組織プロセッサ108、他の装置または機器、または、それらの組み合わせによって、深部静脈血栓症を治すための治療処置を実施することが望ましいかあるいは必要かを判断することができる。代替案として、医師304、軟部組織プロセッサ108、他の装置または機器、または、それらの組み合わせによって、治療処置が不要であると判断することもできる。
【0051】
1つ又は複数の治療処置が望ましいかまたは必要であると判断されると、医師304、軟部組織プロセッサ108、または、それらの組み合わせによって、治療処置が実施される(ブロック522)。前述のように、治療処置は肺塞栓症または深部静脈血栓症に関連する場合がある。実施される治療処置には、制限するわけではないが、カテーテルベースの治療、血栓溶解治療、抗凝血治療、現在知られているかまたは今後開発される深部静脈血栓症または肺塞栓症を治療するための任意の他の治療処置、または、それらの組み合わせを含むことができる。血栓溶解剤には、制限するわけではないが、ストレプトキナーゼ、ウロキナーゼ、遺伝子組換え型組織プラスミノゲン活性化因子、ヘパリン、ワルファリン、現在知られているかまたは今後開発される任意の他の血栓溶解剤、または、それらの組み合わせが含まれる。
【0052】
患者302に対する治療処置の実施後(ブロック522)、医師304、軟部組織プロセッサ108、または、それらの組み合わせによって、治療処置がうまくいったか否かが検証される(ブロック524)。治療処置がうまくいったか否かの検証には、医用画像化装置128、医用画像化装置224、システム102の任意の他の装置または機器、または、それらの組み合わせの利用を含むことができる。検証には、コンピュータ断層撮影肺血管造影法、磁気共鳴肺血管造影法、従来の肺血管造影法、現在知られているかまたは今後開発される任意の他の画像化モダリティ、または、それらの組み合わせのような1つ又は複数の画像化モダリティの利用を含むこともできる。検証には、2次元画像化技術、3次元画像化技術、または、それらの組合せを含むこともできる。
【0053】
治療処置がうまくいかなかったと判断されると、医師304、軟部組織プロセッサ108、または、それらの組み合わせによって、1つ又は複数の治療処置を実施することが必要かあるいは望ましいかを判断することができる(ブロック522)。もしくは、治療処置がうまくいったと判断されると、患者支持装置116から病院用ベッドのような別の表面または車椅子のような他の医療機器に患者を移すことができる(ブロック526)。うまくいったという判断には、肺塞栓の除去、深部静脈血栓の除去または縮小、または、それらの組合せを含むことができる。もう1つの実施形態の場合、治療処置がうまくいかなかったと判断されると、患者を病院用ベッドまたは他の表面に戻すことができる(ブロック526)。患者支持装置116から患者を移すには、軟部組織プロセッサ108、システムコントローラ144、駆動装置142、駆動装置112、任意の他の装置または機器、または、それらの組み合わせの利用を含むことができる。患者が患者支持装置116から病院用ベッドに移された後(ブロック526)、患者は緊急治療室または他の部門に戻される。
【0054】
本発明のさまざまな実施形態について述べてきたが、当該技術者には明らかなように、本発明の範囲内においてさらに多くの実施形態及び実施例が可能である。従って、本発明は、付属の請求項及びその同等物を踏まえるという点を除けば、制限されるべきではない。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】静脈造影検査を実施するためのシステムの1つの実施形態に関するブロック図である。
【図2A】先行技術による6つの回転軸線を備えたロボットアームの1つの実施形態に関する概略図である。
【図2B】静脈造影検査を実施するための医用画像化装置の1つの実施形態に関する概略図である。
【図3A】静脈造影検査を実施するための医用画像化装置及び患者支持装置の1つの実施形態に関する斜視図である。
【図3B】静脈造影検査を実施するための医用画像化装置及び患者支持装置の代替斜視図である。
【図4A】医用画像化装置のモダリティの1つを利用して捕捉した患者の画像を例示した図である。
【図4B】医用画像化装置のあるモダリティを利用して捕捉した患者の画像を例示した図である。
【図4C】医用画像化装置のあるモダリティを利用して捕捉した患者のさらにもう1つの画像を例示した図である。
【図5】医用画像化装置を利用して静脈造影検査を実施するための方法の1つの実施形態に関するブロック図である。
【符号の説明】
【0056】
102 ロボット血管造影システム
104 X線発生源
106 衝突防止システム
108 軟部組織プロセッサ
110 ディスプレイ装置
112 駆動装置
114 患者モニタ
116 患者支持装置
118 コントローラ
120 超音波センサ
122 X線検出器
124 患者端末器
126 ユーザインタフェース
128 医用画像化装置
130 X線源
132 関節アーム
134 ロボット装置
136 人工呼吸器
138 C型アーム支持体
140 取付け面
142 駆動装置
144 システムコントローラ
146 ネットワークインタフェース
202 ベースフレーム
204 ターンテーブル
206 フローティングリンク
208 アーム
210 ハンド
214 支持装置
216a 第1のアーム
216b 第2のアーム
220 X線源
222 中央部材
224 医用画像化装置
302 患者
304 医師

【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者を静止位置に支持する患者支持装置と、
静脈造影検査中、患者の一部の画像を取得し、さらに、少なくとも2つの画像化モダリティの内の1つを利用して画像を取得する医用画像化装置と、
医用画像化装置に結合されて、患者の取得した画像を受信し、さらに、患者の一部の画像を可視化するプロセッサと
が含まれていることを特徴とする静脈造影検査を実施するためのシステム。
【請求項2】
患者支持装置がさらに水平な軸線の周りを縦方向に回転することを特徴とする請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
患者支持装置がさらに垂直な軸線の周りを縦方向に回転することを特徴とする請求項1又は2に記載のシステム。
【請求項4】
患者支持装置が、医用画像化装置から放出された放射線を照射される場合に実質的に透明であることを特徴とする請求項1乃至3に記載のシステム。
【請求項5】
患者支持装置が医用画像化装置の軸線の周りを回転可能であることを特徴とする請求項1乃至4に記載のシステム。
【請求項6】
患者支持装置が壁、床、及び、天井から構成されるグループから選択された表面に取付けられることを特徴とする請求項1乃至5に記載のシステム。
【請求項7】
医用画像化装置がCアーム型X線装置であることを特徴とする請求項1乃至6に記載のシステム。
【請求項8】
医用画像化装置が少なくとも3つの軸線の周りを回転可能であることを特徴とする請求項1乃至7に記載のシステム。
【請求項9】
医用画像化装置が、さらに、少なくとも1つの2次元画像化モダリティと1つの3次元画像化技術の一方を利用して、患者の一部の画像を取得することを特徴とする請求項1乃至8に記載のシステム。
【請求項10】
プロセッサが、さらに、医用画像化装置を用いて取得した患者の一部の2次元可視化画像を生成することを特徴とする請求項1乃至9に記載のシステム。
【請求項11】
プロセッサが、さらに、医用画像化装置を用いて取得した患者の一部の画像の3次元可視化を生じることを特徴とする請求項1乃至10に記載のシステム。
【請求項12】
プロセッサが、さらに、医用画像化装置を用いて取得した患者の一部の画像の4次元可視化を生じることを特徴とする請求項1乃至11に記載のシステム。
【請求項13】
患者を静止位置に支持する患者支持装置を設けるステップと、
静脈造影検査中、患者の一部の画像を取得し、さらに、少なくとも2つの画像化モダリティの内の1つを利用して画像を取得する医用画像化装置をロボット血管造影室に設けるステップと、
患者に実施する少なくとも1つの静脈造影検査を決定するステップと、
医用画像化装置を利用して、患者支持装置上に位置する患者に静脈造影検査を実施するステップと
が含まれていることを特徴とする静脈造影検査を実施するための方法。
【請求項14】
さらに、患者が呼吸困難を知覚しているか否かを決定するステップと、
患者支持装置を調整して、患者が陥っている呼吸困難を軽減する位置に患者を支持するステップとが含まれることを特徴とする請求項13に記載の方法。
【請求項15】
静脈造影検査が患者の下肢の静脈造影であることを特徴とする請求項13又は14に記載の方法。
【請求項16】
静脈造影検査が患者の肺動脈の肺血管造影であることを特徴とする請求項13乃至15に記載の方法。
【請求項17】
患者が肺塞栓症と診断されることを特徴とする請求項13乃至16に記載の方法。
【請求項18】
静脈造影検査が、患者の下肢の静脈造影と患者の肺動脈の肺血管造影との少なくとも一方を含むことを特徴とする請求項13乃至17に記載の方法。
【請求項19】
さらに、医用画像化装置を用いて患者に治療処置を施すべきか否かを決定するステップと、
医用画像化装置を用いて患者に治療処置を施すステップと、
治療処置の実施後、治療処置がうまくいったか否かを検証するステップと
が含まれることを特徴とする請求項13乃至18に記載の方法。
【請求項20】
治療処置が深部静脈血栓症と肺塞栓症との少なくとも一方の治療に利用されることを特徴とする請求項19に記載の方法。
【請求項21】
患者支持装置がさらに水平な軸線に沿って縦方向に回転することを特徴とする請求項13乃至20に記載の方法。
【請求項22】
患者支持装置がさらに垂直な軸線に沿って縦方向に回転することを特徴とする請求項13乃至21に記載の方法。
【請求項23】
医用画像化装置が少なくとも3つの軸線の周りを回転可能であることを特徴とする請求項13乃至22に記載の方法。
【請求項24】
医用画像化装置が、さらに、少なくとも1つの2次元画像化モダリティと1つの3次元画像化技術の一方を利用して、患者の一部の画像を取得することを特徴とする請求項13乃至23に記載の方法。

【図1】
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【図2A】
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【図2B】
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【図3A】
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【図3B】
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【図4A】
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【図4B】
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【図4C】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−168128(P2008−168128A)
【公開日】平成20年7月24日(2008.7.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−1295(P2008−1295)
【出願日】平成20年1月8日(2008.1.8)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.イーサネット
【出願人】(390039413)シーメンス アクチエンゲゼルシヤフト (2,104)
【氏名又は名称原語表記】Siemens Aktiengesellschaft
【住所又は居所原語表記】Wittelsbacherplatz 2, D−80333 Muenchen, Germany
【Fターム(参考)】