説明

ロータリージョイント、及びスパッタリング装置

【課題】装置サイズの小型化を図りつつ、効率的に冷却可能なロータリージョイントを提供する。
【解決手段】
本発明ロータリージョイント200は、挿通孔を有し、かつ外部から流体を導入するための導入口215を有する筐体204と、回転軸に対して筐体と相対回転可能とされるべく、筐体の挿通孔に挿通された軸体ユニット201と、軸体ユニット内に回転軸方向に沿って形成され、導入口と連通させるための第一軸体ユニット導入路及び第二軸体ユニット導入路の途中に設けられ、該流体の流量を切り替えるための切替部材208とを備える。切替部材は、第1穴209と、第1穴の径より小さく、第一軸体ユニット導入路及び第二軸体ユニット導入路の径より小さい第2穴210と有する。切替部材により、第一軸体ユニット導入路を流れる流体の流量及び第二軸体ユニット導入路を流れる流体の流量を変更可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロータリージョイント、及びそれを備えたスパッタリング装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、スパッタリング装置などプラズマ処理装置において、固定部側から回転部側へ流体を流すために、ロータリージョイントが使用されてきた。
例えば、特許文献1に記載には、複数のターゲットを搭載可能なカソード面を有する支持体を備えたスパッタリング装置が開示されている。このスパッタリング装置のカソードを同時に冷却するため、例えば、特許文献2のようなロータリージョイントが用いられていた。特許文献2には、複数の流路を切り替える円柱状の軸体と円筒状の筐体とで構成され、円筒状の筐体より供給された流体は、円柱状の軸体が回転すると流路の向きが変わるロータリージョイントが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−147519号公報
【特許文献2】特開2006−177453号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、スパッタリング装置の小型化の要求が高まるにつれ、従来のロータリージョイントでは対応できなくなっていた。そこで、発明者は鋭意検討した結果、ロータリージョイントの小型化を図りながら、効率的にターゲットを冷却するため、使用中のターゲットを大流量の冷却水で集中的に冷却し、使用していないターゲットについては、比較的少量の冷却水で冷却する方法を見出した。
【0005】
そこで、本発明は、上記課題を解決するためになされたものであって、装置サイズのコンパクト化を図りつつ、効率的に冷却可能なロータリージョイント、及びロータリージョイントを備えたスパッタリング装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するため、本発明のロータリージョイントは、挿通孔を有するとともに、かつ外部から流体を導入するための導入口を有する筐体と、回転軸に対して前記筐体と相対回転可能とされるべく、前記筐体の挿通孔に挿通された軸体ユニットと、前記軸体ユニット内に前記回転軸方向に沿って形成され、前記導入口と連通させるための第一軸体ユニット導入路及び第二軸体ユニット導入路と、前記第一軸体ユニット導入路及び第二軸体ユニット導入路の途中に設けられ、該流体の流量を切り替えるための切替部材とを備え、前記切替部材は、第1穴と、前記第1穴の径より小さく、かつ、前記第一軸体ユニット導入路及び前記第二軸体ユニット導入路の径より小さい第2穴と有し、前記切替部材の第1穴を、前記第一軸体ユニット導入路又は第二軸体ユニット導入路の一方に合わせて、上流側と下流側とを連通するように切り替えるとともに、前記切替部材の第2穴を、前記第一軸体ユニット導入路又は第二軸体ユニット導入路の他方に合わせて、上流側と下流側とを連通するように切り替え可能なことを特徴とする。
本発明のスパッタリング装置は、挿通孔を有するとともに、かつ外部から流体を導入するための導入口を有する筐体と、回転軸に対して前記筐体と相対回転可能とされるべく、前記筐体の挿通孔に挿通された軸体ユニットと、前記軸体ユニット内に前記回転軸方向に沿って形成され、前記導入口と連通させるための第一軸体ユニット導入路及び第二軸体ユニット導入路と、前記第一軸体ユニット導入路及び第二軸体ユニット導入路の途中に設けられ、該流体の流量を切り替えるための切替部材とを備え、前記切替部材は、第1穴と、前記第1穴の径より小さく、かつ、前記第一軸体ユニット導入路及び前記第二軸体ユニット導入路の径より小さい第2穴と有し、前記切替部材の第1穴を、前記第一軸体ユニット導入路又は第二軸体ユニット導入路の一方に合わせて、上流側と下流側とを連通するように切り替えるとともに、前記切替部材の第2穴を、前記第一軸体ユニット導入路又は第二軸体ユニット導入路の他方に合わせて、上流側と下流側とを連通するように切り替え可能なロータリージョイントと、複数のターゲットを支持するための回転可能な支持体と、ターゲットをスパッタするために前記支持体に設けられ、前記第一軸体ユニット導入路からの流体を流すための第一配管を備えた第一カソードと、ターゲットをスパッタするために前記支持体に設けられ、前記第二軸体ユニット導入路からの流体を流すための第二配管を備えた第二カソードと、を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、ロータリージョイント内に流体を切り替えるための切替部材を具備することで、装置サイズの小型化を図りつつ、効率的に冷却可能なロータリージョイント、及びロータリージョイントを備えたスパッタリング装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明に係るスパッタリング装置の全体構成を説明するための概略平面図である。
【図2】図1に示す3つの支持体を、基板側から見た概略平面図である。
【図3】本発明の第1の実施形態に係るロータリージョイント構成と流体量の切替部材の分解斜視図である。
【図4】図3のロータリージョイントの概略断面図である。
【図5】本発明の実施形態に係る制御系の構成を説明する図である。
【図6】図4より流体量の切替部材を回転し、流量を可変したときのロータリージョイントの概略断面図である。
【図7】流体量の切替部材を説明する図である。
【図8】図1のスパッタリング成膜装置のスパッタリング室にあるターゲット70aが成膜のとき、カソードと流体量の切替部材の位置関係を説明する断面図である。
【図9】図1のスパッタリング成膜装置のスパッタリング室にあるターゲット70aが180°回転した方向で放電するとき、カソードと流体量の切替部材の位置関係を説明する断面図である。
【図10】本発明の第2の実施形態に係るロータリージョイントの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態を説明するが、本発明は本実施形態に限定されるものではない。
【0010】
(第1の実施形態)
図1は、本発明に係るスパッタリング装置の全体構成を説明するための概略平面図である。
スパッタリング室14は、基板(ガラス基板)12を搭載するためのトレイ10と、トレイ10の両面側に同一構成の支持体を3個ずつ具えている。基板12の形状は、矩形型の平行平面板である。トレイ10は、矢印aの方向から、基板12を搭載した状態で、スパッタリング室14内へとゲートバルブ16を介して搬入されて位置決めされている。支持体50,52,54,50′,52′及び54′は、それぞれほぼ六角柱の形状をしているが、一つ置きに側面が大きく形成されていて、それら側面にカソードが設けられている。各支持体には、それぞれ中心軸C50、C52,・・・を回転軸として、矢印cで示すように、正逆方向に回転(回動)し、適当な回転位置で停止可能な回転駆動機構101を備えている。各支持体の中心軸は、被成膜面に平行かつそれぞれの中心軸と平行と成っている。なお、図5に示すように支持体を回転させるための回転駆動機構101は、制御部100によって回転動作を制御されている。
【0011】
支持体50及び52のそれぞれの回転軸をC50及びC52とし、支持体の3つの側面に設けられているカソードを60a,60b、60c及び62a,62b、62cとする。各カソードのターゲット搭載面50a,50b,50c,52a,52b,52c上には、ターゲット70a,70b,70c,72a,72b,72cがそれぞれ搭載されている。一つの支持体に対する3個のターゲットは、異なる種類のターゲットとする。支持体同士では、同一の順番位置には同一種類のターゲットを搭載している。従って、基板に対し同時に同一種類のターゲットが対向する。また、図5に示すように各カソードには、DC電力を導入するための電力導入機構102が設けられ、どのカソードに電力を導入するかは制御部によって制御されている。
【0012】
図1に示す構成例では、各支持体を回転させて、互いに同一種類の第1のターゲットを基板に対向させて位置決めして、成膜を行う。2回目の成膜に当たり、それぞれの支持体を回転させて、第1のターゲットとは異なる種類であるが、互いに同一種類の第2のターゲットが基板に対向するように位置決めして、成膜を行う。3回目の成膜に当たり、それぞれの支持体をさらに回転させて、第1及び第2のターゲットとは異なる種類であるが、互いに同一種類の第3のターゲットが基板に対向するように位置決めして、成膜を行う。このようにして、同一のスパッタリング室内で、一枚の基板12に、3つの異なる成分の膜を成膜することが出来る。
【0013】
図1に示す構成例においては、成膜時には、ターゲットの被スパッタリング面を基板の被成膜面に対向させている。即ち、基板の中心側に配置された中心側支持体52の場合には、支持体のターゲット搭載面は、被成膜面12aと平行である。また基板の周辺側に配置された周辺側支持体50の場合には、支持体のターゲット搭載面は、被成膜面12aに対して角度αで傾斜している。しかしながら、これに限定されず成膜時に基板に対面する全てのターゲットの被スパッタリング面を、この基板面に平行となるようにしても良い。
【0014】
図1に示す構成例では、さらに、各支持体に、支持体を覆うシールド(防着治具とも称する。)80,82,84,80′,82′,84′をそれぞれ設けられている。これらシールドは、それぞれの支持体の中心軸方向に沿って、上下方向において、カソードやターゲットの全長を実質的に覆うように、設けれれている。そして、このシールド80,82,84,80′,82′,84′は、支持体の周囲を囲むように、しかも、支持体の回転の妨げと成らないように、設けられている。さらに、このシールドは、成膜のときに基板の被成膜面に対向するターゲット70a,72aが、このシールド80,82から露出するように、すなわち成膜時にスパッタリングされる当該ターゲットに対して非包囲となるように、形成されている。
【0015】
図1に示す構成例では、このシールドの横断面は、ほぼC字状の形状となっている。従って、このC字状のシールド80,82,84,80′,82′,84′の縦割りの開口部80a,82a,84a,80′a,82′a,84′aに成膜時に必要なターゲットが位置決めされる。
【0016】
このように、シールドを設けることにより、成膜時に飛来するスパッタ原子や不所望なパーティクルが、成膜時に使用されていないで退避しているターゲットやカソードの面に、被着するのを防ぐことが出来る。
【0017】
図2は、図1に示す3つの支持体を、基板側から見た概略平面図である。スパッタリング室14の中には複数の支持体が配置しており、矩形型の平行平面板上の基板に対して、成膜が行なえるようになっている。なお、詳細は後述するが、各ターゲットの背後には、各々の支持体のターゲットを冷却するためにロータリージョイント200を介して冷却水を導入するための配管が設けられている。
【0018】
ここで、図1を参照して本発明のスパッタリング装置を用いた、電子デバイスの製造方法を説明する。なお、以下では、支持体50を例に説明するが、他の支持体も同様である。
ターゲット60aを基板12側から180°回転して、C字状のシールド80に対向させて、プリスパッタを行なう。このプリスパッタとは、スパッタリング室を大気開放して酸化されたターゲット表面(被スパッタリング面)を、成膜開始時の放電安定化のため、基板成膜前にスパッタリングして除去することを言う。
基板12側から180°回転した位置にあるターゲット60aをプリスパッタするため、ターゲット60aのカソードにDCパワーラインの接点を切り替える。つまり、ターゲット60b、60cのカソードには、電力は供給させず、スパッタは行なわれない。同時に、ターゲット60aの温度が上昇しないように、後述するロータリージョイント200を切り替えることで、ターゲット60a側に対して比較的多い流量の冷却水を供給し、ターゲット60bとターゲット60cに比較的少ない流量の冷却水を供給するようにして、プリスパッタを行なう。スパッタ装置内のヒーターからの熱やプラズマからの熱などにより、使用していないカソードも加熱されてしまうので、冷却水によりカソードを冷却しなければならない。
次に、ターゲット60aを基板12に対向するように回転して、基板に対してスパッタリング成膜を行なう。基板側に回転されたターゲット60aにDCパワーラインの接点を切替えるとともに、ロータリージョイント200を切替えて、基板側に回転されたターゲット60aに対して、比較的多い流量の冷却水を供給し、ターゲット60bとターゲット60cに比較的少ない流量の冷却水を流しながら、基板に対してスパッタリング成膜を行なう。
【0019】
図3及び図4を参照して、本発明の特徴部分であるロータリージョイント200の構成を説明する。
図3は、本発明に係るロータリージョイント200内部の構成と流体量の切替部材を説明する分解斜視図である。
ロータリージョイント200は、軸体205が挿通される挿通孔が形成された略円筒形の筐体204と、略円柱形の軸体205等により構成される軸体ユニット201とから構成され、軸体ユニット201と筐体204が軸体ユニット201の回転軸217の回りに相対回転可能に構成されている。筐体204の側壁には、外部から流体を導入するための導入口215と、該流体を外部へ導出するための導出口216が形成されている。
図3に示すように、筐体204は円筒形をしており、スパッタリング室14に固定されている。一方、軸体ユニット201は支持体50と連結されているため、軸体ユニット201は支持体50とともに回転可能である。軸体ユニット201は、軸体50、シールプレート207a、切替部材208、シールプレート207b、及び配管体230とを重ね合わせて組立可能に構成されている。軸体205の内部には、導入口215と連通させるための3本の導入路213a、214a、215a、及び導出口216と連通させるための3本の導出路213b、214b、215bが回転軸217方向に沿って形成されている。具体的には、一つの導入路213aは、軸体205内に形成された流通路と、シールプレート207aに形成された穴と、切替部材208に形成された穴と、シールプレート207bに形成された穴と、配管体230に形成された配管とによって組み合わせて構成されている。同様に、導入路及び導出路213b、214a、214b、215a、215bも、軸体205内に形成された各導入路及び導出路と、シールプレート207aに形成された各穴と、切替部材208に形成された各穴と、シールプレート207bに形成された各穴と、配管体230に形成された各配管とによって組み合わせて構成されている。なお、本例では、導入路及び導出路213a、213b、214a、214b、215a、215bは、全て同じ径の大きさとしてが、これに限定されず、それぞれの径の大きさを異なっていてもよい。
【0020】
シールプレート207a、及びシールプレート207bは、ふっ素樹脂やエラストマーなどからなる。一方、切替部材207は、ステンレスからなる。
この導入路及び導出路213a、213b、214a、214b、215a、215bの途中には、軸体の回転軸方向へ移動する流体の流量を切り替えるための切替部材208が設けられている。切替部材208には、導入路及び導出路213a、213b、214a、214b、215a、215bと略同一の径の大きさを有する一対の第1穴(大きい穴)209a、209bと、該第1穴(大きい穴)209a、209bより径が小さく、かつ導入路及び導出路213a、213b、214a、214b、215a、215bの径より小さい径を有する一対の第2穴(小さい穴)210a、210b及び、第2穴と同様の大きさの一対の第3穴211a、211b(小さい穴)が設けられている。なお、穴の数は、これに限定されず、一対の第1穴と、一対の第2穴だけでもよい。また、第1穴(大きい穴)209a、209bの径の大きさは、導入路及び導出路の径より大きくても、若干小さくてもよい。
なお、請求項の第一軸体ユニット導入路及び第二軸体ユニット導入路は、導入路213a、214a、215aのうちのいずれか2本のことである。また、請求項の第三軸体ユニット導出路及び第四軸体ユニット導出路は、第一軸体ユニット導入路及び第二軸体ユニット導入路となる2本の導入路と対になる2本の導出路のことである。つまり、切替部材208は、第1穴209と、第1穴の径より小さく、かつ、第一軸体ユニット導入路及び第二軸体ユニット導入路の径より小さい第2穴210と有し、切替部材の第1穴209を、第一軸体ユニット導入路又は第二軸体ユニット導入路の一方に合わせて、上流側と下流側とを連通するように切り替えるとともに、
切替部材の第2穴210を、第一軸体ユニット導入路又は第二軸体ユニット導入路の他方に合わせて、上流側と下流側とを連通するように切り替え可能なものである。
【0021】
図4は、本発明に係るロータリージョイント200の概略断面図である。
軸体205と筐体204の間には、オイルシールやOリングなどによるシール部材206が設けられている。軸体205の外側には、第一環状流路219aとしての溝が形成されている。筐体204に形成された導入口215は、導入口215と連通させるための第一環状流路219aと、同じ高さに形成されている。軸体205の外側に形成された第一環状流路219aの内側側面には、3つの穴が設けられており、これらの穴がそれぞれ、前述した導入路213a、214a、215aの始点となる第一貫通孔221a、222a、223aとなる。これらの第一貫通孔221a、222a、223aから、L字型の導入路213a、214a、215aが形成されている。
【0022】
軸体205の外側で、第一環状流路219aの上方には、第二環状流路219bとしての溝が形成されている。筐体204に形成された導出口216は、導出口216と連通させるための第二環状流路219bと、同じ高さに形成されている。軸体205の外側に形成された第二環状流路219bの内側側面には、3つの穴が設けられており、これらの穴がそれぞれ、前述した導出路213b、214b、215bの終点となる第二貫通孔221b、222b、223bとなる。これらの第二貫通孔221b、222b、223bから、L字型の導出路213b、214b、215bが形成されている。
【0023】
なお、図示されていないが、導入路213a、導出路213bは、支持体50のカソード内に設けられた配管を通じて、繋がっている。同様に導入路214a、215aと、導出路214b、215bとは、それぞれの配管を通じて、繋がっている。
図4に示すように、軸体205とシールプレート207a、207b及び配管230とは連結されているため、シールプレート207a、207b及び配管230も同様に、支持体50とともに回転する。シールプレート207aと207bの間には、ステンレス製の切替部材208が設けられている。流量を切り替える切替部材208及びシールプレート207は表面粗さを6.3a以下に加工し流体の漏れを防いでいる。
切替部材208は、回転軸217を介して、回転駆動器(サーボモータ)220と固定されている。そのため、切替部材208は、支持体50が回転しても回転しないが、回転軸217を介して、3つの伝達部材(ギア)218a、伝達部材(ギア)218b、伝達部材(ギア)218cと係合されており、さらに伝達部材(ギア)218cは回転駆動器(サーボモータ)220と連結されているので、切替部材208は、回転駆動器220を駆動することで、支持体50とは別に回転させることができる。また、回転駆動器220は、制御部100によって回転動作を制御されている。
【0024】
次に、図4を参照して、ロータリージョイント200内部の冷却水の流れについて説明する。
ロータリージョイント200の筐体204側面に設けられた導入口215から導入された冷却水は、軸体205内の第一環状流路219aから、第一軸体ユニット流通路213a、214a、214aに分岐され、その後、支持体50の内部を通って、カソード60a、60b、60c内に形成された配管600a、600b、600cに供給される。
第一軸体ユニット流通路213a、214a、215aの途中には、流体の流量を切り替えるための切替部材208が設けられ、この切替部材208によって第一軸体ユニット流通路213a、214a、215aにそれぞれ供給される冷却水の流量を変更可能である。第一軸体ユニット流通路213a、214a、215aからターゲット70a、70b、70cを冷却した後の、戻り方向の冷却水は、第二軸体ユニット流通路213b、214b、215bを通って、軸体205内の第二環状流路219bで、合流して、導出口216より排出される。
【0025】
図5に、本発明の実施形態のスパッタリング装置における制御系の主要な構成を示す。制御部100は、1個または複数個のマイクロコンピュータを含み、ユニット内の各部、特に支持体54の回転駆動機構101、各カソードへの電力導入機構102および切替部材208の回転駆動器202や、基板ホルダー10の移動手段103等の個々の動作と全体の動作(シーケンス)を制御する。特に、制御部100は、スパッタリング処理および基板の搬送処理、ロータリージョイントの回転処理、支持体の回転処理に関する一切の制御や各種付加機能に関する一切の制御を実行するためのプログラム(ソフトウェア)を格納するプログラムメモリを有しており、マイクロコンピュータの中央演算制御部(CPU)がプログラムメモリから逐次所要のプログラムを読み出して実行するようになっている。また、プログラムの保存管理にハードディスク、光ディスク、フラッシュメモリ等の各種記憶媒体を用いることができる。
【0026】
図6は流体量の切替部材208を回転させ、第1穴(大きい穴)209から第2穴(小さい穴)210に切り替わったときの状態を説明する図である。回転駆動器220を駆動して、切替部材208を回転させると、導入路213a、及び導出路213bに流れる流体の流量を切り替えることができ、結果として支持体50における各カソードへ供給される冷却水の流量を可変することができる。
【0027】
図7は、切替部材208の上面図である。切替部材208には、流路の径を可変するため、第1穴(大きい穴)209、第2穴(小さい穴)210、及び第3穴(小さい穴)211が形成されている。切替部材208の中心部には、回転軸217が設けられている。
なお、本例では、第2穴として小さい穴210と小さい穴211の大きさを同じにしたが、これに限定されず、第1穴209、第2穴210、第3穴211として、全て異なる大きさにしてもよい。
【0028】
図8及び図9を参照して、支持体の回転動作と切替部材の回転動作との関係を説明する。
図8はカソード60aがスパッタリング成膜できる状態にある支持体50の断面図である。三つのカソード60a、カソード60b、及びカソード60cが支持体50の各面に配置されている。カソード60a、カソード60b、及びカソード60cの内部には、それぞれターゲットを冷却するための冷却水を流す配管600a、600b、600cが設けられている。また、上述したようにスパッタリング装置の動作、支持体の回転動作、及び切替部材208の回転動作等の本発明の動作は、すべて制御部100によって制御されている。
成膜時にターゲットに発生する熱を冷却するために毎分100リットルを超える冷却水が、第1穴(大きい穴)209aを介して、配管600aに供給される。このとき、成膜処理が施されていないターゲットの冷却のため、カソード60bの配管600bとカソード60cの配管600cには、それぞれ第2穴(小さい穴)210a、211aを介して、毎分10リットルの冷却水が供給される。
【0029】
カソード60cがスパッタリング成膜されるときは、支持体50を反時計回りに約120°回転し、カソード60cを基板12に対向させる。このとき、回転駆動器220は駆動せずに、回転軸217を介して、切替部材208を固定している。こうして、支持体50が回転しても、スパッタリングされるカソード60cの配管600cには、第1穴(大きい穴)209aを介して、毎分100リットルを超える大流量の冷却水が導入される。カソード60aとカソード60bには、それぞれ小さい穴210a、211aを介して、毎分10リットルの冷却水が供給される。
【0030】
カソード60bがスパッタリング成膜されるときは、さらに支持体50を反時計回りに約120°回転し、カソード60bを基板12に対向される。このとき、回転駆動器220は駆動せずに、回転軸217を介して、切替部材208を固定している。こうして、支持体50が回転しても、スパッタリングされるカソード60bの配管600bには、第1穴(大きい穴)209aを介して、毎分100リットルを超える大流量の冷却水が導入される。カソード60aとカソード60cには、それぞれ小さい穴210a、211aを介して、毎分10リットルの冷却水が供給される。
【0031】
図9はプリスパッタ時の、支持体50の概略断面図である。このとき、カソード60a側をプリスパッタするため、支持体50を回転して、カソード60aは基板側から180°回転した位置に位置している。このとき、同時に回転駆動器220が駆動して、回転軸217を介して、切替部材208を回転する。このとき、切替部材208の第1穴(大きい穴)209も、基板側から180°回転した位置に位置させる。こうして、カソード60aが180°回転した場合も、配管600aには切替部材208を回転させ、第1穴(大きい穴)209aを介して、毎分100リットルを越える冷却水を供給することができる。カソード60bの配管600bとカソード60cの配管600cには、それぞれ第2穴(小さい穴)210a、211aを介して、毎分10リットルの冷却水が供給される。
以上のように、スパッタリング処理を実施しているカソードの配管に対して、第1穴を合わせ、大流量の冷却水でカソードを冷却するとともに、スパッタリング処理を実施していないカソードの配管に対して、第2穴を合わせて、比較的少量の冷却水でカソードを冷却することができる。つまり、ロータリージョイントの導入口や導出口、第一環状流路、第二環状流路を小型化しながらも、複数のカソードを効率的に冷却することができる。
なお、前述した制御部は、スパッタリング処理を実施している第一カソードの第一配管に対して、第1穴を合わせるとともに、スパッタリング処理を実施していない第二カソードの第二配管に対して、第2穴を合わせるようにロータリージョイントを制御することができる。
【0032】
(第2の実施形態)
図10は、本発明の第2の実施形態に係るロータリージョイントの断面図である。本実施形態におけるロータリージョイントは、図4に示した第1の実施形態に係るロータリージョイントとは異なり、導入口215及び導出口216が、筐体204の底部に設けられている。
また、筐体の導入口215と連通させるように、軸体の底部には、第一環状流路219aとしての溝が形成されている。第一環状流路219aの上側面には、3つの穴が設けられており、これらの穴がそれぞれ、導入路213a、214a、215aの始点となる第一貫通孔221a、222a、223aとなる。3本の導入路213a、214a、215aは、屈曲した流路となっている。
同様に、筐体の導出口216と連通させるように、軸体の底部で、かつ第一環状流路219aの径方向の内側には第二環状流路219bとしての溝が形成されている。軸体205の底部に形成された第二環状流路219bの上側面には、3つの穴が設けられており、これらの穴がそれぞれ、導出路213b、214b、215bの終点となる第二貫通孔221b、222b、223bとなる。導出路213b、214b、215bは、屈曲した流路となっている。
また、図4に示した第1の実施形態に係るロータリージョイントとは異なり、切替部材208と連結された回転軸217に、ギア218a、218b、218cを介さず、直接、回転駆動器220に接続されている。本実施形態におけるロータリージョイントは、第1の実施形態に係るロータリージョイントと比べて、筐体の高さ方向の厚さを薄くすることができる。
【0033】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述した実施形態に限定されるものではない。
例えば、ターゲットが2つであれば、流体量の切替部材の大小孔を4つとし、ターゲットが4つであれば、流体量の切替部材の大小孔を8つとすることで、本発明は任意の流路数に対して適用が可能である。
また、本発明の流体としてははガス・エア・水・油などが挙げられる。本発明はこれらの流体の流量を切り替える必要があるロータリージョイントに応用可能である。例えば、エアのロータリージョイントを介してエアシリンダーを駆動するとき、本発明による流体量の切替部材を備えたロータリージョイントを使用することで、流量を切り替えてエアシリンダーの動作速度を可変することが可能となる。
【0034】
また、上述の実施形態では、一つのロータリージョイントの中に、導入口と導出口を設けたが、これに限定されるものではない。例えば、導入口を有するロータリージョイントと、導出口を有するロータリージョイントを組み合わせた装置とすることもできる。
【0035】
上述の実施形態では、軸体ユニットと筐体のうち、筐体をスパッタリング装置に固定したが、これに限定されず、軸体ユニットを固定して、筐体を回転可能に構成してもよい。例えば、本発明の支持体の周りに、移動手段103によって移動可能な基板ホルダー10を設け、該基板ホルダー10を各カソードに対向させて配置することが可能な場合、又は支持体の各ターゲットに対向して、それぞれの基板ホルダー10が配置した場合などに有効である。なお、基板ホルダーの移動手段103による移動動作は、制御部によって制御されている。
【0036】
本発明は、例示したスパッタリング装置のみならず、ドライエッチング装置、プラズマアッシャ装置、CVD装置、及び蒸着装置などのプラズマ処理装置に適用可能である。本発明に係る電子デバイスとしては、液晶ディスプレイ、太陽電池、半導体、磁気記録媒体などが挙げられる。
【0037】
本発明のロータリージョイントは、各実施形態で述べられたいかなる特徴をも組み合わせることによって構成することができる。
【符号の説明】
【0038】
10 トレイ(基板ホルダー)
12 基板
14 スパッタリング室
16 ゲートバルブ
50 支持体
60a、60b、60c、62a、62b、62c カソード
70a、70b、70c ターゲット
72、74 ターゲット
80、82、84 シールド
100 制御部
200 ロータリージョイント
201 軸体ユニット
204 筐体
205 軸体
206 シール部材
207 シールプレート
208 切替部材
209 第1穴
210 第2穴
211 第3穴
212 ベアリング
213a、214a、215a 導入路
213b、214b、215b 導出路
215 導入口
216 導出口
217 回転軸
218 伝達部材
219a 第一環状流路
219b 第二環状流路
220 回転駆動器
221a、222a、223a 第一貫通孔
221b、222b、223b 第二貫通孔
230 配管体
600a、600b、600c 配管


【特許請求の範囲】
【請求項1】
挿通孔を有するとともに、かつ外部から流体を導入するための導入口を有する筐体と、
回転軸に対して前記筐体と相対回転可能とされるべく、前記筐体の挿通孔に挿通された軸体ユニットと、
前記軸体ユニット内に前記回転軸方向に沿って形成され、前記導入口と連通させるための第一軸体ユニット導入路及び第二軸体ユニット導入路と、
前記第一軸体ユニット導入路及び第二軸体ユニット導入路の途中に設けられ、該流体の流量を切り替えるための切替部材とを備え、
前記切替部材は、第1穴と、前記第1穴の径より小さく、かつ、前記第一軸体ユニット導入路及び前記第二軸体ユニット導入路の径より小さい第2穴と有し、
前記切替部材の第1穴を、前記第一軸体ユニット導入路又は第二軸体ユニット導入路の一方に合わせて、上流側と下流側とを連通するように切り替えるとともに、
前記切替部材の第2穴を、前記第一軸体ユニット導入路又は第二軸体ユニット導入路の他方に合わせて、上流側と下流側とを連通するように切り替え可能なことを特徴とするロータリージョイント。
【請求項2】
前記軸体ユニットの外側に形成され、前記筐体の前記導入口と連通させるための第一環状流路と、
前記第一軸体ユニット導入路と前記第二軸体ユニット導入路は、前記第一環状流路と連通することを特徴とする請求項1に記載のロータリージョイント。
【請求項3】
前記筐体は、外部へ流体を導出する導出口を有し、
前記軸体ユニットの外側に形成され、前記筐体の前記導出口と連通させるための第二環状流路と、
前記軸体ユニット内に前記回転軸方向に形成され、前記第一軸体ユニット導入路と第一配管を通じて連通するとともに、前記第二環状流路と連通した第三軸体ユニット導出路と、
前記軸体ユニット内に前記回転軸方向に形成され、前記第二軸体ユニット導入路と第二配管を通じて連通するとともに、前記第二環状流路と連通した第四軸体ユニット導出路と、を備え
前記切替部材は、前記第一軸体ユニット導入路、前記第二軸体ユニット導入路、前記第三軸体ユニット導出路、及び第四軸体ユニット導出路の途中に設けられ、
前記切替部材は、一対の第1穴と、前記第1穴の径より小さく、かつ、前記第一軸体ユニット導入路及び前記第二軸体ユニット導入路の径より小さい一対の第2穴と有し、
前記切替部材の一対の第1穴を、前記第一軸体ユニット導入路及び前記第三軸体ユニット導出路、又は前記第二軸体ユニット導入路及び前記第四軸体ユニット導出路のいずれか一方に合わせて、上流側と下流側とを連通するように切り替えるとともに、
前記切替部材の一対の第2穴を、前記第一軸体ユニット導入路及び前記第三軸体ユニット導出路、又は前記第二軸体ユニット導入路及び前記第四軸体ユニット導出路のいずれか他方に合わせて、上流側と下流側とを連通するように切り替え可能なことを特徴とする請求項2に記載のロータリージョイント。
【請求項4】
挿通孔を有するとともに、かつ外部から流体を導入するための導入口を有する筐体と、
回転軸に対して前記筐体と相対回転可能とされるべく、前記筐体の挿通孔に挿通された軸体ユニットと、
前記軸体ユニット内に前記回転軸方向に沿って形成され、前記導入口と連通させるための第一軸体ユニット導入路及び第二軸体ユニット導入路と、
前記第一軸体ユニット導入路及び第二軸体ユニット導入路の途中に設けられ、該流体の流量を切り替えるための切替部材とを備え、
前記切替部材は、第1穴と、前記第1穴の径より小さく、かつ、前記第一軸体ユニット導入路及び前記第二軸体ユニット導入路の径より小さい第2穴と有し、
前記切替部材の第1穴を、前記第一軸体ユニット導入路又は第二軸体ユニット導入路の一方に合わせて、上流側と下流側とを連通するように切り替えるとともに、
前記切替部材の第2穴を、前記第一軸体ユニット導入路又は第二軸体ユニット導入路の他方に合わせて、上流側と下流側とを連通するように切り替え可能なロータリージョイントと、
複数のターゲットを支持するための回転可能な支持体と、
ターゲットをスパッタするために前記支持体に設けられ、前記第一軸体ユニット導入路からの流体を流すための第一配管を備えた第一カソードと、
ターゲットをスパッタするために前記支持体に設けられ、前記第二軸体ユニット導入路からの流体を流すための第二配管を備えた第二カソードと、
を備えたことを特徴とするスパッタリング装置。
【請求項5】
スパッタリング処理を実施している前記第一カソードの第一配管に対して、前記第1穴を合わせるとともに
スパッタリング処理を実施していない前記第二カソードの第二配管に対して、前記第2穴を合わせるように前記ロータリージョイントを制御する制御部とを備えることを特徴とする請求項4に記載のスパッタリング装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−57755(P2012−57755A)
【公開日】平成24年3月22日(2012.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−203241(P2010−203241)
【出願日】平成22年9月10日(2010.9.10)
【出願人】(000227294)キヤノンアネルバ株式会社 (564)
【Fターム(参考)】