説明

ロードセンシング制御装置

【課題】 スプール11がフルストロークしたときの流量を安定させる。
【解決手段】 可変容量型のポンプPと、このポンプの傾転角を制御するレギュレータ1と、上記ポンプに接続したアクチュエータ3と、これらポンプとアクチュエータとの間に設けたスプール弁Vと、上記ポンプの吐出圧を上記レギュレータに導く吐出圧用パイロット流路4と、上記アクチュエータの負荷圧を上記レギュレータに導く負荷圧用パイロット流路5とを備えている。そして、上記吐出圧用パイロット流路4とポンプPとを接続する接続ポイントと、負荷圧用パイロット流路5とアクチュエータ3とを接続する接続する接続ポイントとの間に、固定オリフィス25を設けている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、アクチュエータの負荷圧を検出して可変容量型のポンプの吐出量を制御するロードセンシング制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の装置として図6,7に示すものが従来から知られている。この従来の装置は、レギュレータ1によって傾転角が制御される可変容量型のポンプPに、流路2,2を介してアクチュエータ3,3を並列に接続するとともに、上記流路2,2のそれぞれには、スプール弁Vを設け、さらにこのスプール弁Vの下流に圧力補償弁CVを設けている。
【0003】
そして、上記レギュレータ1には、吐出圧用パイロット流路4を経由してポンプPの吐出圧が導かれるとともに、負荷圧用パイロット流路5を介して、アクチュエータ3,3の負荷圧が導かれるようにしている。なお、符号6は高圧選択弁で、この高圧選択弁6で最高負荷圧が選択されるとともに、その選択された高い負荷圧が上記負荷圧用パイロット流路5を介してレギュレータ1に導かれる。
このようにしてポンプ吐出圧と負荷圧とが導かれたレギュレータ1は、最高負荷圧に対して設定された差圧分だけ高い吐出圧を保つようにポンプPの吐出量を制御する。
【0004】
また、上記スプール弁Vの具体的な構成は、図7に示すとおりである。すなわち、スプール弁Vの弁本体7には、上記ポンプPに接続したポンプポート8a,8bを形成するとともに、アクチュエータ3に接続したアクチュエータポート9,10を形成している。
そして、上記弁本体7にはスプール11を摺動自在に組み込むとともに、このスプール11が図示の中立位置にあるとき、上記ポンプポート8a,8bと、弁本体7に形成した上流側供給流路12aとの連通が遮断される構成にしている。このようにした上流側供給流路12aは、弁本体7に組み込んだ圧力補償弁CVを介して下流側供給流路12bに連通する構成にしている。
【0005】
そして、スプール11が図示の中立位置から、例えば図面右方向に移動すると、スプール11に形成した一方のノッチ13aが、上流側供給流路12aに連通する環状凹部14に開口する。したがって、ポンプポート8aに供給された圧油は、上流側供給流路12aに導かれるとともに、圧力補償弁CVを押し開いてブリッジ状にした下流側供給流路12bに導かれる。
【0006】
また、スプール11が上記のように右方向に移動すれば、その一方の環状溝15を介して、上記下流側供給流路12bと一方のアクチュエータポート9とが連通する。したがって、下流側供給流路12bに導かれた圧油は、一方のアクチュエータポート9を経由してアクチュエータ3に供給される。このとき、スプール11に形成した他方の環状溝16がタンク通路17に開口するので、他方のアクチュエータポート10の戻り油は図示していないタンクに戻される。
【0007】
スプール11が上記とは反対側に移動すると、今度は、他方のノッチ13bが上記環状凹部14に開口するとともに、下流側供給流路12bと他方のアクチュエータポート10が環状溝16を介して連通し、一方のアクチュエータポート9とタンク通路17とが環状溝15を介して連通する。したがって、ポンプポート8bに供給された圧油は、上流側供給流路12aを経由して他方のアクチュエータポート10からアクチュエータ3に供給される。また、アクチュエータ3からの戻り油は、一方のアクチュエータポート9からタンク通路17を通って上記タンクに戻される。
【0008】
さらに、上記圧力補償弁CVは、上記上流側供給流路12aとは反対側に形成されるパイロット室18にスプリング19を設けるとともに、このパイロット室18にはアクチュエータ3のどちらか高い方の負荷圧が導かれるようにしている。また、この圧力補償弁CVの弁体20には、上流側供給流路12aと下流側供給流路12bとを連通させる制御絞り21を形成している。そして、この圧力補償弁Cは、上記上流側供給流路12aの圧力が最高負荷圧+スプリング19のばね力になるように、上記制御絞り21の開度を制御する。これによって、ノッチ13aの前後差圧が、レギュレータ1で設定された差圧からスプリング19のばね力を引いたものと等しくなる。
なお、図中符号22は、センタリングスプリングであり、このスプリング22のばね力の作用で、スプール11は通常は図示の中立位置を保つことになる。
【0009】
上記のようにした装置において、スプール11をフルストロークすると、スプール11に形成した環状溝23,24と環状凹部14との連通がノッチ13aあるいは13bで制御されることになる。したがって、上記ノッチ13aあるいは13bでアクチュエータ3の最高速度が制御されることになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特許第3776047号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
上記従来の装置では、スプール11をフルストロークさせたときに、当該アクチュエータの速度が最高になるが、スプール11のストロークにばらつきがあると、アクチュエータの最高速度にもばらつきが発生し、極端な場合にはオペレータに違和感を与えることがあった。
【0012】
また、例えば、一対の油圧モータを駆動して走行をする建設機械において、それら一対の油圧モータのそれぞれを最高速度で作動させて直進走行をする場合に、それら両油圧モータの最高速度にばらつきがあると、直進走行ができなくなるという問題も生じる。
なお、スプール11のノッチ13a、13bの形成位置の公差、ストローク量を決定するキャップやスプリングシートの寸法公差など、もろもろの寸法公差が累積した結果発生するものである。
【0013】
この発明の目的は、スプールのフルストロークにばらつきがあっても、アクチュエータの最高作動速度が一定になるようにしたロードセンシング制御装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
この発明は、可変容量型のポンプと、このポンプの傾転角を制御するレギュレータと、上記ポンプに接続したアクチュエータと、これらポンプとアクチュエータとの間に設けたスプール弁と、上記ポンプの吐出圧を上記レギュレータに導く吐出圧用パイロット流路と、上記アクチュエータの負荷圧を上記レギュレータに導く負荷圧用パイロット流路とを備えたロードセンシング制御装置に関するものである。
【0015】
そして、第1の発明は、上記吐出圧用パイロット流路とポンプとを接続する接続ポイントと、負荷圧用パイロット流路とアクチュエータとを接続する接続ポイントとの間に、固定オリフィスを設けた点に特徴を有する。
第2の発明は、上記スプール弁の下流側に圧力補償弁を設け、この圧力補償弁の上流に上記固定オリフィスを設けた点に特徴を有する。
第3の発明は、上記スプール弁の上流側に圧力補償弁を設け、この圧力補償弁の下流に上記固定オリフィスを設けた点に特徴を有する。
【0016】
第4の発明は、上記スプール弁に、その弁本体にポンプポートとアクチュエータポートとを形成するとともに、その弁本体にはスプールを摺動自在に組み込み、スプールの移動位置に応じて上記ポンプポートとアクチュエータポートとを、弁本体に形成した供給流路を介して連通させる一方、上記供給流路に上記固定オリフィスを設けた点に特徴を有する。
【0017】
第5の発明は、上記弁本体の供給流路に固定オリフィスを構成する絞り部材を組み付けた点に特徴を有する。
第6の発明は、上記弁本体の供給流路に圧力補償弁を組み込むとともに、この圧力補償弁の弁体に上記固定オリフィスを形成した点に特徴を有する。
【発明の効果】
【0018】
第1〜3の発明によれば、スプールがフルストロークされたとしても、そのときにアクチュエータに対する供給流量は固定オリフィスの開度で決まる。したがって、スプールのフルストローク時の供給流量は安定し、従来のようにそれがばらついたりしない。
【0019】
第4の発明によれば、スプール弁の弁本体に形成した供給流路に固定オリフィスを設けたので、固定オリフィスを設けるために特別なスペースを確保する必要がなく、その分、当該装置を小型化できる。
第5の発明によれば、固定オリフィスを形成した絞り部材を上記供給流路に組み込むようにしたので、固定オリフィスを簡単に設けることができる。
第6の発明によれば、圧力補償弁の弁体に固定オリフィスを形成したので、スプール弁の弁本体に圧力補償弁を組み込むことによって、固定オリフィスを設けることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】第1実施形態の回路図である。
【図2】第1実施形態のスプール弁の断面図である。
【図3】(a)はスプールのストロークとノッチの開口特性を示すグラフ、(b)はスプールのストロークと固定オリフィスの開口特性を示すグラフ、(c)はノッチおよび固定オリフィスの合成開口特性を示すグラフである。
【図4】第2実施形態のスプール弁の断面図である。
【図5】第3実施形態の回路図である。
【図6】従来のロードセンシング制御装置の回路図である。
【図7】従来のロードセンシング制御装置におけるスプール弁の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
図1,2に示した第1実施形態は、スプール弁Vと圧力補償弁CVとの間に固定オリフィス25を設けた点が従来と相違するもので、その他の構成は従来と同一である。そこで従来と同一の構成要素については、以下の説明において同一符号を用いるとともに、その詳細な説明は、従来の装置についての説明をそのまま援用する。
【0022】
上記第1実施形態では、スプール弁Vと圧力補償弁CVとの間に固定オリフィス25を設けているが、図2に示すように、スプール弁Vの上流側供給流路12aに、固定オリフィス25を形成した絞り部材26を組み込んだものである。
このようにした第1実施形態では、上記絞り部材26を上記のように上流側供給流路12aに組み込むだけで固定オリフィス25を構成することができる。
【0023】
上記のように構成することによって、スプール11のストロークに対するノッチ13a,13bと固定オリフィス25との合成開口特性は、図3(c)に示すとおりである。すなわち、スプール11のストロークに応じてノッチ13a,13bの開度は徐々に大きくなっていくが、当該ノッチがポンプポート8aと環状凹部14との境界を越えたときにポンプポート8a,8bが環状凹部14に開口し、ノッチ13a,13bがその制御機能を失い、ポンプポート8a,8bが、上流側供給流路12aに対して全開状態を維持する。
【0024】
つまり、図3(a)に示すように、スプール11のストロークが点線の部分を越えたとき、上記のようにノッチ13a,13bがその制御機能を失い、上流側供給流路12aに対するポンプポート8a,8bの開口面積が急激に大きくなる。
ただし、第1実施形態では、上記のように固定オリフィス25を設けているので、スプール11のストロークにかかわりなく、その最大流量が固定オリフィス25によって一定に保たれる。
【0025】
したがって、ノッチ13a,13bによる図3(a)に示した開口特性と、固定オリフィス25による図3(b)に示した開口特性とを合成すると、上記図3(c)に示す開口特性を得ることができる。
このようにして得られた合成開口特性においては、スプール11が一定以上ストロークすれば、その最大流量が一定になるので、例えば、スプール11のストロークのばらつきによって最大流量が不安定になったりしない。
【0026】
図4に示した第2実施形態は、固定オリフィス27を圧力補償弁CVに形成した点が第1実施形態と異なり、その他の構成はすべて第1実施形態と同じである。
したがって、この第2実施形態の説明においても、第1実施形態と同一符号を用いるとともに、重複する部分の詳細な説明は省略する。
【0027】
上記圧力補償弁CVは、その弁体20に形成した上記制御絞り21の上流側を円筒状にし、この円筒状にした部分の内側を固定オリフィス27としている。
したがって、スプール11のストロークに応じてノッチ13a,13bの開度は徐々に大きくなっていくが、当該ノッチがポンプポート8aと環状凹部14との境界を越えたときにポンプポート8a,8bが環状凹部14に開口し、ノッチ13a,13bがその制御機能を失い、ポンプポート8a,8bが、上流側供給流路12aに対して全開状態を維持する。
【0028】
つまり、図3(a)に示すように、スプール11のストロークが点線の部分を越えたとき、上記のようにノッチ13a,13bがその制御機能を失い、上流側供給流路12aに対するポンプポート8a,8bの開口面積が急激に大きくなる。
ただし、この第2実施形態では固定オリフィス27を設けているので、上記第1実施形態と同様に、スプール11のストロークにかかわりなく、その最大流量が固定オリフィス27によって一定に保たれる。
【0029】
したがって、ノッチ13a,13bによる図3(a)に示した開口特性と、固定オリフィス27による図3(b)に示した開口特性とを合成すると、上記図3(c)に示す開口特性を得ることができる。
このようにしてえられた合成開口特性においては、スプール11が一定以上ストロークすれば、その最大流量が一定になるので、例えば、スプール11のストロークのばらつきによって最大流量が不安定になったりしない。
【0030】
図5に示した第3実施形態は、圧力補償弁CVの下流側にスプール弁Vと固定オリフィス28を設けたのもので、スプール弁Vおよび固定オリフィス28は、第1,2実施形態のスプール弁Vおよび固定オリフィス25,27と同一の構成にすることができる。
そして、この第3実施形態においても、第1,2実施形態と同様に、スプール11のストロークにかかわりなく、その最大流量が固定オリフィス28によって一定に保たれる。
【0031】
したがって、ノッチ13a,13bによる図3(a)に示した開口特性と、固定オリフィス28による図3(b)に示した開口特性とを合成すると、上記図3(c)に示す開口特性を得ることができる。
このようにしてえられた合成開口特性においては、スプール11が一定以上ストロークすれば、その最大流量が一定になるので、例えば、スプール11のストロークのばらつきによって最大流量が不安定になったりしない。
【産業上の利用可能性】
【0032】
ロードセンシング制御をするパワーショベル等の建設機械に最適である。
【符号の説明】
【0033】
P ポンプ
1 レギュレータ
3 アクチュエータ
CV 圧力補償弁
4 吐出圧用パイロット流路
5 負荷圧用パイロット流路
V スプール弁
7 弁本体
11 スプール
12a 上流側供給流路
12b 下流側供給流路
25 固定オリフィス
27 固定オリフィス
28 固定オリフィス

【特許請求の範囲】
【請求項1】
可変容量型のポンプと、このポンプの傾転角を制御するレギュレータと、上記ポンプに接続したアクチュエータと、これらポンプとアクチュエータとの間に設けたスプール弁と、上記ポンプの吐出圧を上記レギュレータに導く吐出圧用パイロット流路と、上記アクチュエータの負荷圧を上記レギュレータに導く負荷圧用パイロット流路とを備えたロードセンシング制御装置において、上記吐出圧用パイロット流路とポンプとを接続する接続ポイントと、負荷圧用パイロット流路とアクチュエータとを接続する接続ポイントとの間に、固定オリフィスを設けたロードセンシング制御装置。
【請求項2】
上記スプール弁の下流側に圧力補償弁を設け、この圧力補償弁の上流に上記固定オリフィスを設けた請求項1記載のロードセンシング制御装置。
【請求項3】
上記スプール弁の上流側に圧力補償弁を設け、この圧力補償弁の下流に上記固定オリフィスを設けた請求項1記載のロードセンシング制御装置。
【請求項4】
上記スプール弁は、その弁本体にポンプポートとアクチュエータポートとを形成するとともに上記弁本体にはスプールを摺動自在に組み込み、スプールの移動位置に応じて上記ポンプポートとアクチュエータポートとを、弁本体に形成した供給流路を介して連通させる一方、上記供給流路に上記固定オリフィスを設けた請求項1〜3のいずれかに記載したロードセンシング制御装置。
【請求項5】
上記弁本体の供給流路に固定オリフィスを構成する絞り部材を組み付けた請求項4記載のロードセンシング制御装置。
【請求項6】
上記弁本体の供給流路に圧力補償弁を組み込むとともに、この圧力補償弁の弁体に上記固定オリフィスを形成した請求項4記載のロードセンシング制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−256892(P2011−256892A)
【公開日】平成23年12月22日(2011.12.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−129675(P2010−129675)
【出願日】平成22年6月7日(2010.6.7)
【出願人】(000000929)カヤバ工業株式会社 (2,151)
【Fターム(参考)】