説明

ロールスタンパ

【課題】スリーブのマンドレルへの装着性が良好であり、かつスリーブのがたつきが抑えられたロールスタンパを提供する。
【解決手段】マンドレル10と、マンドレル10の先端側から基端側に向かってマンドレル10の外周に着脱可能に装着されるスリーブ40とを有し、スリーブ40の外周面50に形成された微細凹凸構造を被転写体に転写するロールスタンパ1であって、マンドレル10が、マンドレル10の先端側にあるスリーブ40の開口部(小径開口部42)に対応する部分(小径部18)の外径よりも、マンドレル10の基端側にあるスリーブ40の開口部(大径開口部46、フランジ受け部48)に対応する部分(大径部22、フランジ部24)の外径が大きくされ、スリーブ40とマンドレル10との隙間が、スリーブ40の両端の開口部よりも、これらの間のスリーブ中間部44において広くされている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、外周面に形成された微細凹凸構造を被転写体に転写するロールスタンパに関する。
【背景技術】
【0002】
可視光波長以下の周期の微細凹凸構造を表面に有する光学フィルムは、反射防止機能等を発現することから、その有用性が注目されている。特に、モスアイ(Moth−Eye)構造と呼ばれる微細凹凸構造は、空気の屈折率から材料の屈折率に連続的に増大していくことで有効な反射防止機能を発現することが知られている。
【0003】
微細凹凸構造を表面に有する光学フィルムの製造方法としては、基材フィルム(被転写体)の表面に、スタンパの表面に形成された微細凹凸構造を転写するインプリント法が挙げられる。該インプリント法としては、例えば、下記の方法が知られている(特許文献1)。
複数の細孔を有する陽極酸化アルミナが表面に形成されたロールスタンパと、透明な基材フィルムとの間に、紫外線硬化性樹脂が介在した状態で、紫外線硬化性樹脂に紫外線を照射し、紫外線硬化性樹脂を硬化させた後、硬化樹脂とともに基材フィルムをロールスタンパから剥離する光インプリント法。
【0004】
該ロールスタンパは、中空円柱状のアルミニウム基材の外周面に、複数の細孔を有する陽極酸化アルミナが形成されたスリーブを、円柱状のマンドレル(軸芯)の外周に装着したものである。
該ロールスタンパにおいては、スリーブとマンドレルとの隙間は、スリーブのがたつきを抑えるため、30〜160μm程度とされる。また、アルミニウム基材の外周面に、規則性が高く、かつサイズのばらつきの小さい複数の細孔を有する陽極酸化アルミナを形成するためには、アルミニウム基材として純アルミニウム(純度99%以上)のものを用いる必要がある。
【0005】
しかし、純アルミニウムは、アルミニウム合金に比べ柔らかいため、ロールスタンパの大面積化のためにスリーブを長くしたり、スリーブの軽量化のためにスリーブを肉薄にしたりすると、中空円柱状のスリーブの中心軸が曲がりやすくなる。
そして、スリーブとマンドレルとの隙間が30〜160μm程度しかないため、スリーブの中心軸がわずかにでも曲がってしまうと、スリーブをマンドレルに装着できなくなるという問題が生じる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2009−174007号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、スリーブのマンドレルへの装着性が良好であり、かつスリーブのがたつきが抑えられたロールスタンパを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のロールスタンパは、円柱状のマンドレルと、該マンドレルの先端側から基端側に向かって該マンドレルの外周に着脱可能に装着される中空円柱状のスリーブとを有し、該スリーブの外周面に形成された微細凹凸構造を被転写体に転写するロールスタンパであって、前記マンドレルが、該マンドレルの先端側にある前記スリーブの開口部に対応する部分の外径よりも、該マンドレルの基端側にある前記スリーブの開口部に対応する部分の外径が大きくされ、前記スリーブと前記マンドレルとの隙間が、前記スリーブの両端の開口部よりも、これらの間の中間部において広くされていることを特徴とする。
【0009】
前記スリーブは、純度99%以上のアルミニウムからなる中空円柱状のアルミニウム基材の外周面に、複数の細孔を有する陽極酸化アルミナが形成されたものであることが好ましい。
前記スリーブの両端の開口部における前記スリーブと前記マンドレルとの隙間は、40〜120μmであることが好ましい。
【発明の効果】
【0010】
本発明のロールスタンパは、スリーブのマンドレルへの装着性が良好であり、かつスリーブのがたつきが抑えられたものとなる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明のロールスタンパの一例を示す断面図である。
【図2】本発明におけるマンドレルの一例を示す断面図である。
【図3】本発明におけるマンドレルの一例を示す側面図である。
【図4】本発明におけるスリーブの一例を示す断面図である。
【図5】アルミニウム基材の外周面に、複数の細孔を有する陽極酸化アルミナが形成されたスリーブの製造工程を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
(ロールスタンパ)
図1は、本発明のロールスタンパの一例を示す断面図である。ロールスタンパ1は、円柱状のマンドレル10と、該マンドレル10の先端側から基端側に向かって該マンドレル10の外周に着脱可能に装着される中空円柱状のスリーブ40と、マンドレル10の先端側のスリーブ40の端部に当接する、スリーブ40の抜けを防止するための締め付けネジ60とを有するものである。
【0013】
マンドレル10は、図1および図2に示すように、中空円柱状のマンドレル本体部12と、マンドレル本体部12の開口部に一方の端部が挿入され、マンドレル本体部12からマンドレル10の先端側に向かって延びる円柱状の軸受け部14と、マンドレル本体部12の開口部に一方の端部が挿入され、マンドレル本体部12からマンドレル10の基端側に向かって延びる円柱状の軸受け部16とを有する。
【0014】
マンドレル本体部12は、マンドレル10の先端側から順に、マンドレル10の先端側にあるスリーブ40の小径開口部42と略嵌合する小径部18と、小径部18よりも外径が大きくされたマンドレル中間部20と、マンドレル10の基端側にあるスリーブ40の大径開口部46と略嵌合する、マンドレル中間部20よりも外径が大きくされた大径部22と、マンドレル10の基端側にあるスリーブ40のフランジ受け部48と略嵌合する、大径部22よりも外径が大きくされたフランジ部24とを有する。
【0015】
マンドレル中間部20は、温調水を充填する空間26が形成されている。また、図3に示すように、マンドレル10の先端側の空間26の端部には、温調水導入孔30が複数穿設され(図示では1ヶ所)、マンドレル10の基端側の空間26の端部には、温調水導出孔32が複数穿設されている。
【0016】
軸受け部14および軸受け部16の外径は、マンドレル本体部12の小径部18よりも小さくされている。
軸受け部14には、中心軸に沿って延びる温調水供給孔34が穿設され、該温調水供給孔34の終端は、マンドレル中間部20の温調水導入孔30に連通している。また、軸受け部16には、中心軸に沿って延びる温調水排出孔36が穿設され、該温調水排出孔36の始端は、マンドレル中間部20の温調水導出孔32に連通している。
【0017】
スリーブ40は、図1および図4に示すように、マンドレル10の先端側から順に、マンドレル本体部12の小径部18と略嵌合する小径開口部42と、小径開口部42よりも内径が大きくされたスリーブ中間部44と、マンドレル本体部12の大径部22と略嵌合する、スリーブ中間部44よりも内径が大きくされた大径開口部46と、マンドレル本体部12のフランジ部24と略嵌合する、大径開口部46よりも内径が大きくされたフランジ受け部48とを有する。
スリーブ中間部44は、スリーブ40の両端部よりも外径が大きくされ、スリーブ中間部44の外周面50には、微細凹凸構造が形成されている。
【0018】
スリーブ40においては、マンドレル10の先端側から基端側に向かって段階的に内径が大きくされ、これに対応して、マンドレル10においても、マンドレル10の先端側から基端側に向かって段階的に外径が大きくされ、結果的に、マンドレル10の先端側にあるスリーブ40の開口部(小径開口部42)に対応する部分(小径部18)の外径よりも、マンドレル10の基端側にあるスリーブ40の開口部(大径開口部46およびフランジ受け部48)に対応する部分(大径部22およびフランジ部24)の外径が大きくされている。このような基端側から先端側に向かって縮径する構造によって、スリーブ40のマンドレル10への装着およびマンドレル10からの取り外しが容易となる。
【0019】
また、スリーブ40とマンドレル10との隙間が、スリーブ40の小径開口部42および大径開口部46よりも、これらの間のスリーブ中間部44において広くされている。スリーブ40とマンドレル10との隙間がスリーブ中間部44において広くされていることによって、ロールスタンパ1の大面積化のためにスリーブ40を長くしたり、スリーブ40の軽量化のためにスリーブ40を肉薄にしたりした際に、スリーブ40の中心軸が曲がったとしても、スリーブ40のマンドレル10への装着が可能である。
【0020】
また、スリーブ40とマンドレル10との隙間が、スリーブ中間部44よりも、これらの両側のスリーブ40の小径開口部42および大径開口部46において狭くされていることによって、スリーブ40の両端の開口部においてスリーブ40とマンドレル10とがほぼ嵌合に近い状態となり、スリーブ40のがたつきが抑えられる。
【0021】
スリーブ40の小径開口部42、大径開口部46およびフランジ受け部48におけるスリーブ40とマンドレル10との隙間は、40〜120μmであることが好ましく、40〜80μmであることがより好ましい。該隙間が40μm以上であれば、スリーブ40のマンドレル10への装着およびマンドレル10からの取り外しがさらに容易となる。該隙間が120μm以下であれば、スリーブ40のがたつきが充分に抑えられる。なお、スリーブ40の両端の開口部においてスリーブ40とマンドレル10との間に若干の隙間があっても、スリーブ40の両端の開口部においてスリーブ40とマンドレル10との間にOリング52、Oリング54が介在しているため、マンドレル中間部20の温調水の空間26を流れる温調水が、該隙間から流れ出ることはない。
【0022】
(スリーブの製造方法)
スリーブ40としては、純度99%以上のアルミニウムからなる中空円柱状のアルミニウム基材の外周面に、複数の細孔を有する陽極酸化アルミナ(アルミニウムの酸化皮膜(アルマイト))が形成されたものが好ましい。以下、該スリーブ40の製造方法の一例について説明する。
【0023】
スリーブ40の製造方法としては、大面積化が可能であり、かつ作製が簡便である点から、下記の工程(a)〜(f)を有する方法が好ましい。
(a)中空円柱状のアルミニウム基材を電解液中、定電圧下で陽極酸化して、外周面に酸化皮膜を形成する工程。
(b)酸化皮膜を除去し、陽極酸化の細孔発生点を形成する工程。
(c)前記工程(b)の後、電解液中、再度陽極酸化し、細孔発生点に細孔を有する酸化皮膜を形成する工程。
(d)前記工程(c)の後、細孔の径を拡大させる工程。
(e)前記工程(d)の後、電解液中、再度陽極酸化する工程。
(f)前記工程(d)と工程(e)を繰り返し行う工程。
【0024】
工程(a):
図5に示すように、アルミニウム基材64を陽極酸化すると、細孔66を有する酸化皮膜68が形成される。アルミニウムの純度は、99%以上であり、99.5%以上が好ましく、99.8%以上がより好ましい。アルミニウムの純度が低いと、陽極酸化した時に、不純物の偏析により可視光線を散乱する大きさの凹凸構造が形成されたり、陽極酸化で得られる細孔の規則性が低下したりする。電解液としては、シュウ酸、硫酸等が挙げられる。
【0025】
<シュウ酸を電解液として用いる場合>
シュウ酸の濃度は、0.7M以下が好ましい。シュウ酸の濃度が0.7Mを超えると、電流値が高くなりすぎて酸化皮膜の表面が粗くなることがある。
化成電圧が30〜60Vの時、周期が100nmの規則性の高い細孔を有する陽極酸化アルミナを得ることができる。化成電圧がこの範囲より高くても低くても規則性が低下する傾向にある。
電解液の温度は、60℃以下が好ましく、45℃以下がより好ましい。電解液の温度が60℃を超えると、いわゆる「ヤケ」といわれる現象がおこり、細孔が壊れたり、表面が溶けて細孔の規則性が乱れたりすることがある。
【0026】
<硫酸を電解液として用いる場合>
硫酸の濃度は0.7M以下が好ましい。硫酸の濃度が0.7Mを超えると、電流値が高くなりすぎて定電圧を維持できなくなることがある。
化成電圧が25〜30Vの時、周期が63nmの規則性の高い細孔を有する陽極酸化アルミナを得ることができる。化成電圧がこの範囲より高くても低くても規則性が低下する傾向がある。
電解液の温度は、30℃以下が好ましく、20℃以下がよりに好ましい。電解液の温度が30℃を超えると、いわゆる「ヤケ」といわれる現象がおこり、細孔が壊れたり、表面が溶けて細孔の規則性が乱れたりすることがある。
【0027】
工程(b):
図5に示すように、酸化皮膜68を一旦除去し、これを陽極酸化の細孔発生点70にすることで細孔の規則性を向上することができる。
【0028】
酸化皮膜を除去する方法としては、アルミニウムを溶解せず、酸化皮膜を選択的に溶解する溶液に溶解させて除去する方法が挙げられる。このような溶液としては、例えば、クロム酸/リン酸混合液等が挙げられる。
【0029】
工程(c):
図5に示すように、酸化皮膜を除去したアルミニウム基材64を再度、陽極酸化すると、円柱状の細孔66を有する酸化皮膜68が形成される。
陽極酸化は、工程(a)と同様な条件で行えばよい。陽極酸化の時間を長くするほど深い細孔を得ることができる。
【0030】
工程(d):
図5に示すように、細孔66の径を拡大させる処理(以下、細孔径拡大処理と記す。)を行う。細孔径拡大処理は、酸化皮膜を溶解する溶液に浸漬して陽極酸化で得られた細孔の径を拡大させる処理である。このような溶液としては、例えば、5質量%程度のリン酸水溶液等が挙げられる。
細孔径拡大処理の時間を長くするほど、細孔径は大きくなる。
【0031】
工程(e):
図5に示すように、再度、陽極酸化すると、円柱状の細孔66の底部から下に延びる、直径の小さい円柱状の細孔66がさらに形成される。
陽極酸化は、工程(a)と同様な条件で行えばよい。陽極酸化の時間を長くするほど深い細孔を得ることができる。
【0032】
工程(f):
図5に示すように、工程(d)の細孔径拡大処理と、工程(e)の陽極酸化を繰り返すと、直径が開口部から深さ方向に連続的に減少する形状の細孔66を有する陽極酸化アルミナ(アルミニウムの多孔質の酸化皮膜(アルマイト))が形成され、外周面に微細凹凸構造を有するスリーブ40が得られる。最後は工程(d)で終わることが好ましい。
繰り返し回数は、合計で3回以上が好ましく、5回以上がより好ましい。繰り返し回数が2回以下では、非連続的に細孔の直径が減少するため、このような細孔を転写して製造され光学フィルムの反射率低減効果は不充分である。
【0033】
細孔66の形状としては、略円錐形状、角錐形状等が挙げられる。
細孔66間の平均周期は、可視光線の波長以下、すなわち400nm以下である。細孔66間の平均周期は、25nm以上が好ましい。
【0034】
細孔66の深さは、100〜500nmが好ましく、150〜400nmがより好ましい。細孔66のアスペクト比(細孔の深さ/細孔の開口部の幅)は、1.5以上が好ましく、2.0以上がより好ましい。図5に示すような細孔66を転写して製造された光学フィルムの表面は、いわゆるモスアイ構造となる。
【0035】
スリーブ40の外周面は、被転写体との分離が容易になるように、離型剤で処理されていてもよい。離型剤としては、シリコーン樹脂、フッ素樹脂、フッ素化合物等が挙げられ、離型性に優れる点、スリーブ40との密着性に優れる点から、加水分解性シリル基を有するフッ素化合物が好ましい。フッ素化合物の市販品としてはフルオロアルキルシラン、ダイキン工業社製の「オプツール」シリーズが挙げられる。
【0036】
以上説明したロールスタンパ1にあっては、マンドレル10の先端側にあるスリーブ40の開口部(小径開口部42)に対応する部分(小径部18)の外径よりも、マンドレル10の基端側にあるスリーブ40の開口部(大径開口部46およびフランジ受け部48)に対応する部分(大径部22およびフランジ部24)の外径が大きくされ、かつスリーブ40とマンドレル10との隙間が、スリーブ40の小径開口部42および大径開口部46よりも、これらの間のスリーブ中間部44において広くされているため、スリーブ40のマンドレル10への装着性が良好であり、かつスリーブ40のがたつきが抑えられたものとなる。
【0037】
なお、本発明のロールスタンパは、マンドレルが、該マンドレルの先端側にあるスリーブの開口部に対応する部分の外径よりも、該マンドレルの基端側にあるスリーブの開口部に対応する部分の外径が大きくされ、スリーブとマンドレルとの隙間が、スリーブの両端の開口部よりも、これらの間の中間部において広くされているものであればよく、図示例のロールスタンパ1に限定はされない。
【実施例】
【0038】
以下、本発明を実施例により具体的に説明する。
〔実施例1〕
円柱状のアルミニウム(純度99.99%)を切削加工して、図4に示すスリーブ40と同じ、中空円柱状のアルミニウム基材(長さ:320mm、外周面50における外径:φ200mm、小径開口部42の内径:135mm、スリーブ中間部44の内径:156mm、大径開口部46の内径:160mm、フランジ受け部48の内径:182mm)を作製した。
【0039】
ついで、アルミニウム基材を、0.3Mシュウ酸水溶液中で、浴温:16℃、直流:40Vの条件下で30分間陽極酸化を行い、酸化皮膜(厚さ:3μm)を形成した(工程(a))。形成された酸化皮膜を、6質量%のリン酸と1.8質量%のクロム酸混合水溶液中で一旦溶解除去した(工程(b))後、再び工程(a)と同一条件下において、45秒間陽極酸化を行い、酸化皮膜を形成した(工程(c))。
【0040】
その後、5質量%リン酸水溶液(32℃)中に8分間浸漬して、酸化皮膜の細孔を拡径する孔径拡大処理(工程(d))を施した。
さらに、工程(a)と同一条件下において、45秒間陽極酸化を行い、酸化皮膜を形成した(工程(e))。
さらに工程(d)と工程(e)を繰り返し、工程(d)を合計で5回、工程(e)を合計で4回行った(工程(f))。アルミニウム基材の外周面に、周期:100nm、深さ:190nmの略円錐形状のテーパ状の細孔を有する陽極酸化アルミナが形成されたスリーブ40を得た。
ついで、離型剤(ダイキン工業社製、オプツールDSX(商品名))の0.1質量%溶液にスリーブ40を10分間ディッピングし、24時間風乾して離型処理を行った。
【0041】
これとは別に、図2および図3に示す、ステンレス鋼製のマンドレル10(小径部18の外径:135mm、マンドレル中間部20の外径:154mm、大径部22の外径:160mm、フランジ部24の外径:182mm)を作製した。なお、スリーブ40の小径開口部42、大径開口部46およびフランジ受け部48におけるスリーブ40とマンドレル10との隙間が80μmとなるように、マンドレル10の小径部18、大径部22およびフランジ部24の外径は若干小さくされている。
【0042】
スリーブ40を、マンドレル10の先端側から基端側に向かって該マンドレル10の外周に装着したところ、スムーズに装着することができた。また、装着後のスリーブ40が、がたつくこともなかった。
【産業上の利用可能性】
【0043】
本発明のロールスタンパは、モスアイ構造と呼ばれる微細凹凸構造を表面に有する光学フィルムの製造に有用である。
【符号の説明】
【0044】
1 ロールスタンパ
10 マンドレル
12 マンドレル本体部
18 小径部
20 マンドレル中間部
22 大径部
24 フランジ部
40 スリーブ
42 小径開口部
44 スリーブ中間部
46 大径開口部
48 フランジ受け部
50 外周面
64 アルミニウム基材
66 細孔
68 酸化皮膜(陽極酸化アルミナ)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
円柱状のマンドレルと、
該マンドレルの先端側から基端側に向かって該マンドレルの外周に着脱可能に装着される中空円柱状のスリーブとを有し、
該スリーブの外周面に形成された微細凹凸構造を被転写体に転写するロールスタンパであって、
前記マンドレルが、該マンドレルの先端側にある前記スリーブの開口部に対応する部分の外径よりも、該マンドレルの基端側にある前記スリーブの開口部に対応する部分の外径が大きくされ、
前記スリーブと前記マンドレルとの隙間が、前記スリーブの両端の開口部よりも、これらの間の中間部において広くされている、ロールスタンパ。
【請求項2】
前記スリーブが、純度99%以上のアルミニウムからなる中空円柱状のアルミニウム基材の外周面に、複数の細孔を有する陽極酸化アルミナが形成されたものである、請求項1に記載のロールスタンパ。
【請求項3】
前記スリーブの両端の開口部における前記スリーブと前記マンドレルとの隙間が、40〜120μmである、請求項1または2に記載のロールスタンパ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−131424(P2011−131424A)
【公開日】平成23年7月7日(2011.7.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−290928(P2009−290928)
【出願日】平成21年12月22日(2009.12.22)
【出願人】(000006035)三菱レイヨン株式会社 (2,875)
【Fターム(参考)】