説明

ロールボンドパネル及びその製造方法

【課題】 両面ともに平坦で、内部に微小な細径管路を有する薄肉軽量なロールボンドパネルを、圧着防止剤を用いることなく、かつ膨管工程を実施することなく簡易に製造しうる方法を提供する。
【解決手段】 互いに圧着接合すべき2枚の金属板1A、1Bの接合面に予め所定パターンに管路形成用溝4、4を形成したのち、これら両金属板1A、1Bを熱間圧延によって圧着接合することにより、内部に上記溝4、4が狭窄されて縮小された細径管路2を残存形成させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、放熱器、凝縮器、ヒートパイプ等の各種熱交換器の熱交換器部材として使用されるロールボンドパネル、特に両面が平坦な薄型で内部に微細な管路を有するロールボンドパネル及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
冷蔵庫等の熱交換器部材として、従来からロールボンドパネルが広く用いられている。かかるロールボンドパネルは、一般的に次のような製法によって製造されるものである。即ち、アルミニウム板等の2枚の金属板の少なくとも一方の接合面に、所定の管路形成パターンに対応した形に圧着防止剤を塗布したのち、この塗布面側を対向させて2枚の金属板を重ね合わせる。そして、これに圧延操作を施すことによって2枚の金属板を圧着接合したのち、圧着防止剤の塗布による非圧着部を、その一端を閉塞し他端から流体圧を導入することにより膨管し、内部に所定のパターンの管路を形成せしめるものである。こうして製造されたロールボンドパネルは、管路に冷媒や熱媒体を流通させ、あるいは作動液を封入して、熱交換器部材として使用される。
【0003】
しかしながら、このような一般的なロールボンドパネルは、その適用用途との関係で次のような問題点があった。
【0004】
先ず第1に、上記ロールボンドパネルは、両面または少なくとも片面に、管路に沿った膨隆部を有する。このため、例えばノートブック式パソコンのMPU用の熱拡散板などに用いられるプレート型ヒートパイプ、その他電子部品の担持用放熱板等の、両面ともに平坦面であることが要求される用途においては使用することができない。
【0005】
第2に、製造工程で使用される圧着防止剤は、炭素を主成分とした離型剤であり、膨管後の中空管路内にこれが不純物残渣として残る。このため、用途との関係で内部異物の残存許容量制限が厳しい場合には、そのままでは使用することができず、膨管後、中空管路内を後洗浄する必要が生じる。このことは、製造工程を厄介なものとし、製品コストを引き上げる。
【0006】
第3に、2枚の金属板を圧着接合した後、流体圧の導入による膨管操作によって管路形成を行うものであるため、断面積の微少な管路、即ち細径管路を形成することが困難である。このため、例えばプレート型ヒートパイプの用途において、熱交換性能を最大限に発揮させるべく、封入作動液に対して毛細管作用を及ぼし得るような円相当直径の小さい細径管路を有するものとすることが困難である。
【0007】
第4に管路部分における周壁の厚さが膨管によって薄いものとなるため、耐圧性能の点から、薄型のロールボンドパネルの提供が困難であり、用途との関係では設置スペース上の制約を受ける。
【0008】
第5に、製造上の工数が多く、必ずしも生産性の点で有利なものとはいえない。
【0009】
以上のような種々の問題点に対し、それらの1つまたは複数の問題点を解決しうる技術として、従来、次のような種々の提案がなされている。
【0010】
例えば、下記特許文献1においては、互いに接合すべき2枚の金属板の一方または両方の対向面に予め細溝を形成したのち、これらの金属板を重ね合わせて、接着、ろう付け等により接合一体化することにより、プレート型ヒートパイプとする技術が提案されている。この提案技術によれば、両面が平坦で、かつ比較的細径の管路を有するプレートを得ることができると共に、圧着防止剤の塗布工程を省略することができ、その残渣の問題も解消しうる。
【0011】
また、特許文献2においては、互いに接合すべき2枚の金属板の管路形成部分の肉厚を他の部分より薄いものとした上で、接合面に予めドライエッチングを施して表面活性化させたのち、直後に非酸化性雰囲気中で両金属板を極めて低い圧下率、例えば0.1%の圧下率で圧延接合することにより、前記薄肉部分を非接合部として残存せしめ、しかるのち該部分を膨管して管路を形成する技術が記載されている。この提案技術によっても、圧着防止剤の塗布工程を省略することが可能であり、その残渣の問題を解消しうる。
【特許文献1】特開平7−63487号(要約、図1、図2)
【特許文献2】特開2003−22491(特許請求の範囲、段落番号0014、図1、図2)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
ところが、特許文献1のような先行技術にあっては、両金属板を溶接、ろう付け、接着等の手法で面接合するものであるため、微細な中空管路が閉塞されないように接合することが技術的に難しい。このため、管路が細径のものであればあるほど、管路閉塞の欠陥を生じ易く、製造歩溜りの向上のためには依然として管路の円相当径を十分に小さく設定することに制約を受けるという問題があった。
【0013】
また、特許文献2のような先行技術にあっては、圧着防止剤の塗布工程を排除しうるものの、予め金属板を表面活性化処理し、真空または不活性ガス雰囲気等の非酸化性雰囲気中で、しかも管路形成部分を非圧着部として残しうるような比較的低い圧下率で圧着接合操作を行わなければならず、高度な製造工程管理を行う必要があり、製造コスト面で不利であった。
【0014】
この発明は、上記のような従来技術の背景下において、両面が平坦であるロールボンドパネルを提供すること、内部に十分に微細な細径中空管路を有するロールボンドパネルを提供すること、そのようなロールボンドパネルを、管路内に不純物残渣を残すおそれのある圧着防止剤を使用することなく、しかも面倒な膨管工程を必要とすることなく、簡易に製作しうる有利な製造方法を提供すること、従ってまた、性能に優れた熱交換器部品を廉価に提供可能なものとすること、を主たる技術的課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明は、上記技術課題を下記の手段よって解決する。
【0016】
〔1〕互いに圧着接合すべき2枚の金属板の接合面の少なくとも一方に、所定のパターンで管路形成用溝を形成したのち、前記両金属板を圧延操作によって積層接合することにより、接合板内に前記溝の狭窄された細径管路を残存形成せしめるものとしたことを特徴とするロールボンドパネルの製造方法。
【0017】
〔2〕前記圧延操作を、熱間圧延により、圧下率40〜70%の範囲に設定して行う前項1に記載のロールボンドパネルの製造方法。
【0018】
〔3〕互いに圧着接合すべき2枚の金属板の接合面に、互いに対応する形に所定のパターンで管路形成用溝を形成したのち、上記両金属板を、それらの管路形成用溝を対向させて重ね合わせたのち、圧延操作を施して積層接合することにより、接合板内に前記溝の狭窄された細径管路を残存形成せしめるものとしたことを特徴とするロールボンドパネルの製造方法。
【0019】
〔4〕前記圧延操作を、熱間圧延により、圧下率40〜70%の範囲に設定して行う前項3に記載のロールボンドパネルの製造方法。
【0020】
〔5〕管路形成用溝を、断面コ字状、U字状、またはV字状に形成する前項1ないし4のいずれか1項に記載のロールボンドパネルの製造方法。
【0021】
〔6〕管路形成用溝の深さを、金属板の板厚の40〜70%の深さに設定する前項1ないし5のいずれか1項に記載のロールボンドパネルの製造方法。
【0022】
〔7〕管路形成用溝の幅を、金属板の板厚の40%以上に設定する前項1ないし6のいずれか1項に記載のロールボンドパネルの製造方法。
【0023】
〔8〕管路形成用溝の幅を、金属板の板厚の40%〜200%の範囲に設定する前項1ないし6のいずれか1項に記載のロールボンドパネルの製造方法。
【0024】
〔9〕前項1ないし8のいずれか1項に記載の方法によって製造されたロールボンドパネル。
【0025】
〔10〕前項9に記載のロールボンドパネルからなる熱交換器部材。
【0026】
〔11〕前項9に記載のロールボンドパネルからなるプレート型ヒートパイプ。
【発明の効果】
【0027】
前記〔1〕の発明によれば、互いに圧着接合すべき2枚の金属板の接合面の少なくとも一方に、所定のパターンで管路形成用溝を形成したのち、前記両金属板を圧延操作によって積層接合することにより、接合板内に前記溝の狭窄された細径管路を残存形成せしめるものとし、膨管操作を行わないので、両面とも平坦面としたロールボンドパネルを得ることができる。従って、例えばノートブック型パソコンのMPU用の熱拡散板等の両面ともに平坦面であることが要求される用途の熱交換器部材として支障なく適用可能なものとすることができる。
【0028】
しかも、パネルの内部に形成される管路は、当初の金属板の接合面に形成された管路形成用溝が、圧延操作によって周りから狭窄され細径化して残存せられることにより形成されるものであるから、前記管路形成用溝の断面の大きさと、圧延圧下率の設定との調和、調整により、任意に小さい断面の細径流路をもつものに形成することが可能である。即ち、従来の通常のロールボンドパネルの製法による場合はもとより、前記特許文献1あるいは2に記載されるような先行提案技術による場合に較べても、より一層、小さい断面の細径管路をもつロールボンドパネルを歩溜り良く、安定した品質のもとに製造することが可能になる。
【0029】
更には、圧着防止剤を使用しない製法であることにより、管路内に異物残渣が残ることもなく、その洗浄を不要とし、また膨管工程を排しうることも相俟って、比較的簡易な製造工程により、製品精度、熱交換性能に優れたロールボンドパネルを能率良く製作することができ、その廉価な提供を可能にする。
【0030】
前記〔2〕の発明においては、両金属板の面接合、即ち圧着のための圧延操作を熱間圧延により、しかも圧下率40〜70%の十分に高い圧延条件で行うので、上記のような効果に加え、2枚の金属板が確実にかつ強固に圧着接合された、一体性に優れたロールボンドパネルを製作提供しうる。また、金属板の接合面に設けた管路形成用溝を、圧延操作によって十分に細径化することができるので、ハンドリング及び溝付加工等の容易な比較的厚い金属板を出発材料として用いながらも、十分に断面の小さい細径管路をもつ薄型のロールボンドパネルを製作することができる。
【0031】
前記〔3〕の発明においては、互いに接合すべき2枚の金属板の両者の接合面に予め管路形成用溝を形成したのち、これらを重ね合わせて、圧延操作を施すことによって所期するロールボンドパネルを製造するものであるから、前記〔1〕の発明の効果に加え、パネルの板厚方向のほぼ中央部に細径管路をもち、表裏両面に熱交換性能差のないロールボンドパネルを得ることができる。
【0032】
前記〔4〕の発明においては、熱間圧延により、かつ圧下率を40〜70%の範囲に設定して両金属板の圧着接合を行うので、前記〔3〕の発明の効果に加え、前記〔2〕の発明と同等の付加的効果を享受することができる。
【0033】
前記〔5〕の発明においては、管路形成用溝を断面コ字状、U字状、またはV字状に形成するので、苛酷な圧延操作によって上記溝が周りから大きく狭窄されることがあっても、確実に中空部を残して細径管路の形成を確実に行うことができる。
【0034】
前記〔6〕の発明においては、管路形成用溝の深さを、金属板の板厚の40〜70%の範囲に設定するので、両金属板の確実な接合を達成しうる40〜70%の圧下率で圧延操作を行う場合であって、細径管路を確実に残存形成せしめることができ、不本意な管路閉塞部分を有しない品質安定性に優れたロールボンドパネルを製造することができる。
【0035】
前記〔7〕の発明にあっては、管路形成用溝の溝幅を金属板の厚さの40%以上に設定するものであるから、両金属板の圧着接合のために行う熱間圧延操作を、好適な40%〜70%の圧下率のもとで行う場合において特に、幅方向に管路閉塞部分を生じるのを回避することができ、細径管路の残存形成を確実に達成することができる。
【0036】
前記〔8〕の発明にあっては、前記〔7〕の発明と同様の効果を奏する上、更に、圧延によって管路部分の板面に生じることのある凹陥状の変形を抑制することができる。
【0037】
前記〔9〕の発明は、前記〔1〕ないし〔8〕のいずれかの発明の製造方法によって得られるロールボンドパネルである。従って、両面が平坦で、かつ溝型で、内部に十分に断面の小さい細径管路をもち、しかも管路内に不純物残渣を有しない、各種熱交換器部材として好適に使用可能なものを提供しうる。
【0038】
前記〔10〕の発明は、上記ロールボンドパネルからなる熱交換器部材であるから、両面共に平坦であり、薄型で大きな設置スペースを占めることがなく、しかも熱交換性能に優れたものであることが要求される例えば電子部品用放熱器等の用途に好適に使用しうるものとなしうる。
【0039】
前記〔11〕の発明に係るプレート型ヒートパイプは、前記〔10〕の発明と同様に、例えばノートブック式パソコンのMPU用熱拡散板などとして好適に使用しうるものとなしうる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0040】
次に、本発明の好ましい形態について説明する。
【0041】
図1は、本発明の一実施形態に係るロールボンドパネル(1)を熱交換器部材の一種としてのプレート型ヒートパイプに適用した例を示す。このロールボンドパネル(1)は2枚の金属板の圧着接合板からなるプレート状のもので、内部に一文字状に形成された細径管路(2)を有する。この細径管路(2)は一端を閉塞し、他端をロールボンドパネル(1)の端縁に開口している。そして、この開口部に拡管部(2a)が形成され、これに熱輸送管(3)が接続されている。
【0042】
上記ロールボンドパネル(1)の製造にあたっては、図2に示すように、互いに圧着接合すべき所定厚みの2枚の金属板(1A)(1B)の両接合面に所定の幅と深さをもった管路形成用溝(4)(4)を形成する。そして、図3に示すように、上記両管路形成用溝(4)(4)を対向させた状態に両金属板(1A)(1B)を重ね合わせ、続いて熱間圧延操作を施す。これにより、図4に示すように両金属板(1A)(1B)を積層状に圧着接合して一体化する。このとき、圧延操作に伴う両金属板(1A)(1B)の塑性変形によりそれらの板厚が減じられるのと同時に、前記管路形成用溝(4)(4)が上下及び左右方向に狭窄され、図4に示すように両金属板(1A)(1B)による接合板の中間部に断面積を減少した微細な細径管路(2)が形成され、ロールボンドパネル(1)が完成される。
【0043】
金属板(1A)(1B)の材質としては、ロールボンドパネル(1)の用途との関係で任意の金属材料が選択使用され得る。例えばAl、Fe、Ni、Cu、Zn、Sn等の種々の金属を挙げることができるが、特に熱交換器用としての用途においては熱伝導性にすぐれたAl、Cu、Ni、およびそれらの一種を主成分として含む合金を好適に用いることができる。なかでも特に、Alまたはその合金を用いるのが最も一般的である。
【0044】
管路形成用溝(4)の形成は、切削、放電加工、プレス成形等の任意の手段で行うことができる。切削によるものが最も簡易である。
【0045】
この溝(4)の形状は、図示の例においては接合面に一直線状に形成した例が示されているが、求める管路形成パターンに応じて、蛇行状、格子状等任意の形状に形成して良い。
【0046】
また、溝(4)の断面形状は、特に限定されるものではないが、V字状、コ字状、U字状等に形成するのが好ましい。
【0047】
この断面形状の如何よりも、溝(4)の幅と深さの設定の方が、細径管路(2)を確実に残存形成せしめるためには重要な要素となる。一般的に言えば、金属板(1A)(1B)の圧着接合の溝(4)が完全に潰されてしまうのを回避しうるような幅と深さを最低限の値として設定すべきである。これは、圧延時の圧下率との関係に主として依存する。
【0048】
そこで、圧延操作時の圧下率について先に述べると、該圧下率は、40〜70%の範囲に設定するのが好ましく、特に金属板(1A)(1B)がAlまたはその合金である場合、50〜55%の範囲に設定するのが好ましい。常法による熱間圧延操作のみで、両金属板(1A)(1B)の確実な圧着接合を達成するためである。
【0049】
このような圧下率の設定下において、前記管路形成用溝(4)の深さ(d)は、それを形成する金属板(1A)(1B)の板厚(t)との相対値において、該板厚の40〜70%の深さ(d)に設定するのが好ましい。特に好ましい深さ(d)は、板厚(t)の50〜60%である。
【0050】
また、溝(4)の幅(w)は、金属板(1A)(1B)の板厚(t)の40%以上に設定するのが好ましい。幅(w)の上限の値は特に限定されるものではないが、板厚(t)の10倍以下、特に6倍以下の程度に設定するのが望ましい。更に望ましい幅(w)の上限の値は板厚(t)の200%(即ち2倍)以下である。幅(w)をこのような範囲に設定することにより、圧延によって管路(2)部分の板面に生じることのある凹陥状の変形を抑制することができる。
【0051】
溝(4)の深さ(d)、及び幅(w)は、上記の下限値を超えて小さすぎるときは、金属板の圧延時等に生じる金属材料の移動により、溝(4)が押し潰されて、部分的に管路(2)の形成が行われないおそれが生じる。逆にそれらの値が大きすぎるときは、管路(2)の壁厚さが薄いものとなり、耐圧強度に劣るものとなり易いと共に、圧延時に管壁部分が大きく変形し、所期する正しい断面形状の管路(2)の形成が行われ難い。もっとも後述の実施例に示すように、特に溝(4)の幅を比較的大きく設定した場合においては、圧延によって管路(2)部分の板面に凹陥状の変形を生じるが、かかる管壁の変形は、事後的に管路(2)内に流体圧を導入することによって簡単に矯正することができる。
【0052】
なお、図示の実施形態においては、管路形成用溝(4)を互いに接合すべき2枚の金属板(1A)(1B)の対向接合面の両者に形成した例を示したが、いずれか一方の接合面のみに形成するものとしても良い。
【0053】
1つのより具体的な好ましい実施形態として、ロールボンドパネル(1)の材料や寸法仕様を例示するならば、金属板(1A)(1B)としてはA1000系のアルミニウム合金材であって板厚(t)が2.0〜4.0mm程度のものを好適に用いうる。またその場合、管路形成用溝(4)は、幅(w)を2.0〜10mm、深さ(d)を0.8〜2.5mm程度に設定し、圧延圧下率を50〜55%程度に設定して圧延操作をすることにより、厚さ(T)1.8〜4.0mm、管路(2)の円相当直径0.2〜2.0mm程度のロールボンドパネル(1)とするのが一般的である。
【0054】
このようなロールボンドパネル(1)は、各種の熱交換器部材として使用しうるものであるが、特に管路(2)内に作動液を封入したプレート型ヒートパイプとして、例えばノートブック式パソコン等のコンピュータ用のコールドプレートや熱拡散板等に好適に使用しうる。
【実施例1】
【0055】
図5の参酌において、互いに圧着接合すべき2枚の金属板(1A)(1B)としてA1100合金からなる厚さ(t)2.1mmのアルミニウム合金板を用いた。そして、これらの2枚の金属板(1A)(1B)の互いの接合面に、幅(w)3.0mm×深さ(d)1.05mmの管路形成用溝(4)を、金属板の一端縁から他端縁近傍の位置までに亘って一文字状に切削により形成した。
【0056】
次いで、上記溝(4)(4)どおしを対向させた形に両金属板(1A)(1B)を重ね合わせ、熱間圧延工程に供した。この熱間圧延は、常法に従うロール圧延法により圧下率を50%、圧延方向を溝(4)の長さ方向に設定して行った。
【0057】
これにより、2枚の金属板(1A)(1B)が上記溝(4)(4)部分を除いて面接合状態に完全圧着一体化された厚さ(T)2.1mmの接合板が形成されると共に、該接合板の内部、即ち板厚方向の中間部に1本の直線状の細径管路(2)を有する上下両面共に平坦なロールボンドパネル(1)を得ることができた。上記細径管路(2)は、幅(W)0.5mm、高さ(H)0.3mmの極めて微細な断面積をもつ断面略正方形のものであった。
【実施例2】
【0058】
金属板(1A)(1B)に刻設する管路形成用溝(4)の幅(w)及び深さ(d)を、それぞれ(w)=3.0mm、(d)=1.1mmに設定すると共に、圧延圧下率55%に設定した以外は、前記実施例1と同様の条件でロールボンドパネル(1)を製作した。
【0059】
このロールボンドパネル(1)は、厚さ(T)が1.85mmであり、細径管路(2)が断面長方形でその幅(W)が0.15mm、同高さ(H)が0.2mmのものであった。
【実施例3】
【0060】
金属板(1A)(1B)に刻設する管路形成用溝(4)の幅(w)及び深さ(d)を、それぞれ(w)=4.0mm、(d)=1.05mmに設定すると共に、圧延圧下率50%に設定した以外は、前記実施例1と同様の条件でロールボンドパネル(1)を製作した。
【0061】
このロールボンドパネル(1)は、厚さ(T)が2.1mmであり、細径管路(2)が断面長方形でその幅(W)が0.7mm、同高さ(H)が0.35mmのものであった。
【実施例4】
【0062】
図6の参酌において、管路形成用溝(4)の幅(w)を1.0mm、同深さ(d)を1.05mmに設定した以外は、前記実施例1と同様の条件(圧下率50%)で加工し、図6の右側上段に示すようなロールボンドパネルの中間製品(11)を製作した。
【0063】
このロールボンドパネル(1)は、厚さ(T)が2.1mmであり、細径管路(2)が断面長方形でその幅(W)が0.1mm、同高さ(H)が0.15mmのものであった。
【実施例5】
【0064】
図6の参酌において、管路形成用溝(4)の幅(w)を6.0mm、同深さ(d)を1.05mmに設定した以外は、前記実施例1と同様の条件(圧下率50%)で加工し、図6の右側上段に示すようなロールボンドパネルの中間製品(11)を製作した。
【0065】
この中間製品(11)は、厚さ(T)が2.1mmの略平板状のものであるが、溝(w)の幅が広いために圧延後の状態では、該溝部分において上下両面に凹陥状の変形部分(12)を有するものであった。
【0066】
そこで、この中間製品(11)の上下両面を抑圧板で平面規制した状態で、溝(4)の残存空間である中空部(13)内に流体圧を導入し、変形部分(12)を矯正した。これにより、図6の右下部に示すように、板内に幅(W)4.0mm、高さ(H)0.7mmの横長方形の細径管路(2)を有するロールボンドパネル(1)を完成することができた。
【実施例6】
【0067】
管路形成用溝(4)の幅(w)を10.0mm、同深さ(d)を1.05mmに設定した以外は、前記実施例1と同様の条件(圧下率50%)で圧延加工し、図6の右側上段に示すようなロールボンドパネルの中間製品(11)を製作した。
【0068】
この中間製品(11)は、厚さ(T)が2.1mmの略平板状のものであるが、溝(w)の幅が広いために圧延後の状態では、該溝部分において上下両面に凹陥状の変形部分(12)を有するものであった。
【0069】
そこで、この中間製品(11)の上下両面を抑圧板で平面規制した状態で、溝(4)の残存空間である中空部(13)内に流体圧を導入し、変形部分(12)を矯正した。これにより、図6の右下部に示すように、板内に幅(W)7.0mm、高さ(H)0.65mmの横長方形の細径管路(2)を有するロールボンドパネル(1)を完成することができた。
【産業上の利用可能性】
【0070】
この発明は、放熱器、凝縮器、プレート型ヒートパイプ等の各種熱交換器の熱交換部材として使用されるロールボンドパネルの製造に活用される。該ロールボンドパネルは、特に、両面が平坦で、内部に微細な細径管路を有するものであることにより、コンピュータ用のコールドプレートないし熱拡散板としての用途に好適に使用しうる。
【図面の簡単な説明】
【0071】
【図1】本発明によるロールボンドパネルの一好適例としてのプレート型ヒートパイプの構成例を示す斜視図である。
【図2】本発明によるロールボンドパネルの製造に用いる2枚の金属板を、それらの接合面に管路形成用溝を刻設形成した状態で示す斜視図である。
【図3】図2の両金属板の重ね合わせ状態を示す横断面図である。
【図4】両金属板を圧延により積層状態に圧着接合した状態を示す断面図である。
【図5】本発明の実施例1および2の説明図である。
【図6】本発明の実施例3及び4の説明図である。
【符号の説明】
【0072】
1 ……………… ロールボンドパネル
1A、1B …… 金属板
2 ……………… 細径管路
4 ……………… 細径管路形成用溝

【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに圧着接合すべき2枚の金属板の接合面の少なくとも一方に、所定のパターンで管路形成用溝を形成したのち、前記両金属板を圧延操作によって積層接合することにより、接合板内に前記溝の狭窄された細径管路を残存形成せしめるものとしたことを特徴とするロールボンドパネルの製造方法。
【請求項2】
前記圧延操作を、熱間圧延により、圧下率40〜70%の範囲に設定して行う請求項1に記載のロールボンドパネルの製造方法。
【請求項3】
互いに圧着接合すべき2枚の金属板の接合面に、互いに対応する形に所定のパターンで管路形成用溝を形成したのち、上記両金属板を、それらの管路形成用溝を対向させて重ね合わせたのち、圧延操作を施して積層接合することにより、接合板内に前記溝の狭窄された細径管路を残存形成せしめるものとしたことを特徴とするロールボンドパネルの製造方法。
【請求項4】
前記圧延操作を、熱間圧延により、圧下率40〜70%の範囲に設定して行う請求項3に記載のロールボンドパネルの製造方法。
【請求項5】
管路形成用溝を、断面コ字状、U字状、またはV字状に形成する請求項1ないし4のいずれか1項に記載のロールボンドパネルの製造方法。
【請求項6】
管路形成用溝の深さを、金属板の板厚の40〜70%の深さに設定する請求項1ないし5のいずれか1項に記載のロールボンドパネルの製造方法。
【請求項7】
管路形成用溝の幅を、金属板の板厚の40%以上に設定する請求項1ないし6のいずれか1項に記載のロールボンドパネルの製造方法。
【請求項8】
管路形成用溝の幅を、金属板の板厚の40%〜200%の範囲に設定する請求項1ないし6のいずれか1項に記載のロールボンドパネルの製造方法。
【請求項9】
請求項1ないし8のいずれか1項に記載の方法によって製造されたロールボンドパネル。
【請求項10】
請求項9に記載のロールボンドパネルからなる熱交換器部材。
【請求項11】
請求項9に記載のロールボンドパネルからなるプレート型ヒートパイプ。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2006−10305(P2006−10305A)
【公開日】平成18年1月12日(2006.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−147709(P2005−147709)
【出願日】平成17年5月20日(2005.5.20)
【出願人】(000002004)昭和電工株式会社 (3,251)
【Fターム(参考)】