説明

ワイヤーグリッド偏光素子の製造方法及び液晶装置の製造方法

【課題】製造過程を簡素化することが可能なワイヤーグリッド偏光素子の製造方法及び液
晶装置の製造方法を提供すること。
【解決手段】ワイヤーの構成材料を含むワイヤー材料層を基体上に形成するワイヤー材料
層形成工程と、第1波長に感度を有する酸発生剤と前記第1波長よりも大きい第2波長に
感度を有する酸発生剤とを含む化学増幅型レジスト層を前記ワイヤー材料層上に形成する
レジスト層形成工程と、前記レジスト層の第1領域を前記第1波長の光によって干渉露光
する干渉露光工程と、前記レジスト層の第2領域を前記第2波長の光によって結像露光す
る結像露光工程と、前記干渉露光工程及び前記結像露光工程を行った後、前記レジスト層
を現像して部分的に剥離する現像剥離工程と、前記ワイヤー材料層のうち前記現像剥離工
程によって露出した部分をエッチングするエッチング工程とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワイヤーグリッド偏光素子の製造方法及び液晶装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
偏光分離機能を備える光学素子の1つとして、ワイヤーグリッド偏光素子が知られてい
る。ワイヤーグリッド偏光素子は、光の波長よりも短いピッチで並べられた多数の導体の
微細ワイヤーを持つ素子であり、入射光のうち微細ワイヤーに平行な偏光軸を有する成分
(TE)を反射するとともに、微細ワイヤーに垂直な偏光軸を有する成分(TM)を透過
する性質を持つ。このワイヤーグリッド偏光素子は、例えば1つの画素領域に光を透過さ
せて表示する透過表示領域と光を反射させて表示する反射表示領域とを有する半透過反射
型液晶装置に取り付けられる。半透過反射型液晶装置に取り付けられ場合、ワイヤーグリ
ッド(偏光分離部)の形成される領域が反射表示領域となる。
【0003】
ワイヤーグリッド偏光素子を製造する際には、ワイヤーの材料となるアルミニウムの層
を基体上に形成し、層全体をグリッド状にパターニングした後、このグリッド状のアルミ
ニウム層を偏光分離部の形状にパターニングする。
【0004】
具体的には、まずアルミニウム層にレジストを塗布し、波長248nmのKrFレーザ
や、波長約351nmのArレーザなどによってレジストを干渉露光した後、レジストを
現像する。現像後、ワイヤーの形状に対応する領域にレジストパターンが形成される。こ
のレジストパターン上からエッチングすることで、グリッド状のワイヤー層がアルミニウ
ム層全体に亘って形成される。
【0005】
ワイヤー層を形成後、当該ワイヤー層を偏光分離部の形状にパターニングする。偏光分
離部の形状パターンはワイヤーの形状パターンよりもピッチが大きいため、グリッド状の
パターン形成時の露光光よりも解像度の大きい露光光によって露光することができる。例
えばワイヤー層上にレジストを塗布し、波長436nm程度のg線や波長365nm程度
のi線などによってレジストを露光する。露光されたレジストを現像した後、偏光分離部
の形状に対応する領域にレジストパターンが形成される。このレジストパターン上からエ
ッチングすることで、偏光分離部にワイヤーがパターニングされることになる。
【特許文献1】特開2002−372749号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記のワイヤーグリッド偏光素子の製造過程では、干渉露光用のレジス
ト及び結像露光用のレジストを塗布する必要があり、レジスト層形成工程を2度行う必要
があるため、製造過程が煩雑になってしまう。
以上のような事情に鑑み、本発明の目的は、製造過程を簡素化することが可能なワイヤ
ーグリッド偏光素子の製造方法及び液晶装置の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明に係るワイヤーグリッド偏光素子の製造方法は、複数
のワイヤーがグリッド状に設けられた偏光分離部を基体上に有するワイヤーグリッド偏光
素子の製造方法であって、前記ワイヤーの構成材料を含むワイヤー材料層を前記基体上に
形成するワイヤー材料層形成工程と、第1波長に感度を有する酸発生剤と前記第1波長よ
りも大きい第2波長に感度を有する酸発生剤とを含む化学増幅型レジスト層を前記ワイヤ
ー材料層上に形成するレジスト層形成工程と、前記レジスト層の第1領域を前記第1波長
の光によって干渉露光する干渉露光工程と、前記レジスト層の第2領域を前記第2波長の
光によって結像露光する結像露光工程と、前記干渉露光工程及び前記結像露光工程を行っ
た後、前記レジスト層を現像して部分的に剥離する現像剥離工程と、前記ワイヤー材料層
のうち前記現像剥離工程によって露出した部分をエッチングするエッチング工程とを備え
ることを特徴とする。
【0008】
本発明によれば、基体上にワイヤー材料層を形成した後、第1波長に感度を有する酸発
生剤と当該第1波長よりも大きい第2波長に感度を有する酸発生剤とを含むレジストをワ
イヤー材料層上に塗布することとしたので、このレジスト層形成工程によって塗布された
レジスト層は第1波長の光及び第2波長の光の両方の光に感度を有することとなる。この
ため、第1波長の光に感度を有するレジスト及び第2波長に感度を有するレジストを2回
に分けて塗布する必要がなく、1回のレジスト層形成工程で済むことになる。これにより
、製造過程を簡素化することができる。
【0009】
上記のワイヤーグリッド偏光素子の製造方法は、前記第1領域は、前記複数のワイヤー
が形成される領域であり、前記第2領域は、前記複数のワイヤーが形成されない領域であ
ることを特徴とする。
本発明によれば、第1領域が複数のワイヤーが形成される領域であり、第2領域がワイ
ヤーの形成されない領域であることとしたので、解像度の異なる2つのパターンであって
も1回のレジスト層形成工程によって露光することができる。
【0010】
上記のワイヤーグリッド偏光素子の製造方法は、前記第2領域は、前記第1領域よりも
広い領域であることを特徴とする。
本発明によれば、第2領域が第1領域よりも広い領域であることとしたので、領域の広
さの異なる2つのパターンであっても1回のレジスト層形成工程によって露光することが
できる。
【0011】
上記のワイヤーグリッド偏光素子の製造方法は、前記基体のうち前記第2領域に平面視
で重なる領域には、光散乱機能を備えた回折光学素子の複数の段差部が設けられているこ
とを特徴とする。
本発明によれば、第2領域に平面視で重なる基体上の領域に、光散乱機能を備えた回折
光学素子の複数の段差部が設けられていることとした。このように回折光学素子を有する
ワイヤーグリッド偏光素子を形成する際に、当該段差部上に段差を有するレジスト層が形
成された場合であっても、製造工程を簡略化することができる。
【0012】
上記のワイヤーグリッド偏光素子の製造方法は、前記第1波長の光は、波長266nm
の紫外線であり、前記第2波長の光は、g線又はi線であることを特徴とする。
本発明によれば、第1波長の光が波長266nmの紫外線であり、第2波長の光がg線
又はi線であることとしたので、結像露光工程には汎用の露光装置を用いて簡単に露光す
ることができる。
【0013】
本発明に係る液晶装置の製造方法は、偏光板が設けられた液晶装置の製造方法であって
、上記のワイヤーグリッド偏光素子の製造方法を用いて前記偏光板を製造することを特徴
とする。
【0014】
本発明によれば、上記のワイヤーグリッド偏光素子の製造方法を用いて液晶装置の偏光
板を製造することとしたので、製造過程を簡素化することができると共に低い製造コスト
で液晶装置を製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態につき、図面を参照して説明する。なお、以下の説明に用いる
各図面では、各部材を認識可能な大きさとするため、各部材の縮尺を適宜変更している。
【0016】
[第1実施形態]
本発明の第1実施形態を説明する。
図1(a)は、本実施形態に係るワイヤーグリッド偏光素子1の斜視図であり、図2(
a)は、図1(a)のワイヤーグリッド偏光素子1のX− Z平面に沿った断面図である
。ワイヤーグリッド偏光素子1は、ガラス等からなる基体6と、基体6上に配置された回
折機能層4と、回折機能層4上に配置されたグリッド2とを有している。図1(a)は、
ワイヤーグリッド偏光素子1の一部を拡大したものであり、実際にはXY平面のより広い
範囲にわたって同様の構造が連続している。
【0017】
図1(b)は、回折機能層4の形状を示す斜視図であり、図1(a)からグリッド2を
取り除いた状態の図である。回折機能層4は、入射光に対して透光性を有するポリマーか
らなり、一方の面に多数の凹凸が形成されている。当該一方の面は、複数の第1の領域4
aと、複数の第2の領域4bとを含んでいる。ここで第2の領域4bは、回折機能層4の
他方の面4c(すなわち回折機能層4のうち基体6に接する面)からの高さが第1の領域
4aとは異なっている。本実施形態では、第2の領域4bが、第1の領域4aに対して高
くなっている。そして、第1の領域4aと第2の領域4bとの境界には、段差部8が設け
られている。段差部8の高さg(図2(a))は、入射光の波長より小さくなるように設
定される。また、段差部8は、第1の領域4aや第2の領域4bに対して略垂直となって
いる。すなわち、回折機能層4の断面は略矩形(矩形波状)となっている。
【0018】
第1の領域4a及び第2の領域4bの配置はランダム(不規則)であり、その形状は、
正方形か、又は当該正方形を縦横に不規則に繋ぎ合わせた形状となっている。ここで、第
1の領域4a及び第2の領域4bの最小寸法(すなわち上記正方形の1辺の長さ)δ(図
2(a))は、入射光の波長λより長く、可視光に用いる場合には例えば2μmとするこ
とができる。第1の領域4aと第2の領域4bとは、互いに平行な平面である。
【0019】
回折機能層4の一方の面上(すなわち第1の領域4a及び第2の領域4bの上)には、
実際には図1(a)のようにグリッド2が形成されている。グリッド2は、互いに平行な
多数のアルミニウムの微細ワイヤーから構成される。この微細ワイヤーは、第1の領域4
a及び第2の領域4bの外周の直線の1つと平行に配置されている。微細ワイヤーの配置
ピッチd(図2(a))は、入射光の波長λより短くなっており、例えば140nmとす
ることができる。なお、図1(a)においては、説明の便宜上、微細ワイヤーの本数を実
際より少なく描いている。
【0020】
図2(b)は、図2(a)の一部を拡大した断面図である。この図に示すように、グリ
ッド2は、SiO2又はSiN等からなる封止層3によって封止されており、回折機能層
4、グリッド2、及び封止層3によって囲まれた空間は真空状態となっている。
【0021】
回折機能層4とグリッド2との間には、回折機能層4及びグリッド2のいずれとも異な
る材料からなる密着層を形成してもよい。このとき、回折機能層4と密着層との間の密着
強度、及びグリッド2と密着層との間の密着強度は、回折機能層4とグリッド2との間の
密着強度より高いことが好ましい。このような構成とすれば、回折機能層4とグリッド2
との間の密着性を、密着層を介することによって向上させることができる。密着層の素材
としては、例えば、SiO2等の誘電体薄膜を用いることができる。
【0022】
図3は、ワイヤーグリッド偏光素子1の機能を説明するための模式図である。このうち
図3(a)は、回折機能層4の機能を示す図であり、図3(b)は、グリッド2の機能を
示す図である。
【0023】
図3(b)に示すように、グリッド2への入射光80は、微細ワイヤーと平行な偏光軸
を有する成分pがグリッド2によって反射され、微細ワイヤーと垂直な偏光軸を有する成
分sがグリッド2を透過する。すなわち、グリッド2を有するワイヤーグリッド偏光素子
1は偏光分離機能を備えており、入射光80を、偏光状態の異なる反射光80r及び透過
光80tに分離することができる。
【0024】
図3(a)に示すワイヤーグリッド偏光素子1においては、黒の領域が第1の領域4a
に相当し、白の領域が第2の領域4bに相当する。回折機能層4の一方の面には、この第
1の領域4aと第2の領域4bとによって形作られる凹凸が複数分布している(図1(b
))。回折機能層4は、この凹凸の分布によって入射光80を回折させて、図3(a)に
示すように、入射方向とは異なる方向に拡散させることができる。より詳しくは、回折機
能層4の作用によれば、グリッド2によって反射された反射光80rと、グリッド2を透
過した透過光80tの双方を拡散させることができる。そして、後述するように、反射光
80r及び透過光80tの拡散特性は調整することが可能である。
【0025】
ワイヤーグリッド偏光素子1を透過型の装置に適用する場合は、透過光特性が重要とな
る。図4は、ワイヤーグリッド偏光素子1の透過光特性を示すグラフであり、(a)は透
過率の波長依存性、(b)はコントラストの波長依存性を示している。ここで、コントラ
ストは、ワイヤーグリッド偏光素子1を透過する光のうち、成分s(図3(b))の強度
の、成分pの強度に対する比で定義される。この図からわかるように、透過率とコントラ
ストとの間にはトレードオフの関係が見られ、例えばコントラストを高めようとすると、
透過率が若干低下する。
【0026】
図3(a)に示した反射光80rの拡散効果と透過光80tの拡散効果は、回折機能層
4の段差部8の高さgを変えることで制御することができる。入射光80が回折機能層4
へ略垂直に入射する状況において、反射光80rの拡散効果が最大となる段差部8の高さ
grは以下の式(1)で与えられる。
gr=(2m+1)λ/4n (1)
ただし、mは0以上の整数、λは入射光80の波長、nはワイヤーグリッド偏光素子1の
周囲媒体の屈折率である。他方で、透過光80tの拡散効果が最大となる段差部8の高さ
gtは以下の式
(2)で与えられる。
gt=(2m+1)λ/2(N− 1) (2)
ただし、Nは回折機能層4の屈折率である。
【0027】
式(1),(2)から、反射光80rの拡散効果が最大となる段差部8の高さgrと、
透過光80tの拡散効果が最大となる段差部8の高さgtとは、互いに異なることがわか
る。したがって、回折機能層4の段差部8の高さをgrに等しくすれば、透過光80tの
拡散効果を抑えることが可能となる。
【0028】
例えば、λ=600nmの場合は、m=0に対して、式(1)よりgr=100nmと
なり、また式(2)よりgt=600nmとなる。ただし、n=1.5、N=1.5とす
る。ここで、段差部8の高さgを100nm(高さgr)とすれば、回折機能層4による
反射光80rの拡散効果を最大とすることができる。このとき、高さgが、透過光80t
の拡散効果を最大とする高さgt(600nm)とは異なっているため、透過光80tの
拡散効果は大きくならない。したがって、入射光80を偏光状態の異なる反射光80r及
び透過光80tに分離しつつ、反射光80rを広範囲に拡散させ、かつ透過光80tの拡
散を抑えることができる。
【0029】
ところで、式(2)のgtが取り得る値の中間値をgt’とすると、gt’は
gt’=(m+1)λ/(N− 1) (3)
を満たす。回折機能層4の段差部8の高さgを上記gt’とすれば、透過光80tの拡散
効果を最小とすることができる。すなわち、段差部8の高さgを上記gt’とすることに
よっても、入射光80を偏光状態の異なる反射光80r及び透過光80tに分離しつつ、
反射光80rを拡散させ、かつ透過光80tの拡散を抑えることができる。
【0030】
上記ワイヤーグリッド偏光素子1を具体的な表示デバイスに適用する場合、回折機能層
4の第1の領域4a及び第2の領域4bを全範囲で完全にランダムに配置してもよいが、
これに代えて次のようにすることもできる。すなわち、複数の第1の領域4aと複数の第
2の領域4bとが特定のランダムな分布に配置された単位パターンを作成し、複数の当該
単位パターンを繰り返し配置するというものである。ここで、単位パターンの大きさは任
意であるが、例えば1辺が400μmの正方形とすることができる。このような構成によ
れば、回折機能層4の製造に用いるフォトマスクも、上記単位パターンに相当するマスク
パターンが繰り返し配置された構造とすることができ、当該フォトマスクの作成が容易と
なる。これにより、光学素子を容易に製造することが可能となる。
【0031】
さらに、図5に示すように、隣接する単位パターン1uの方向が互いに異なるように配
置してもよい。図5においては、単位パターン1u内の矢印が単位パターン1uの方向を
示している。このような配置によれば、回折機能層4の周期性が低く抑えられる結果、単
位パターン1uの繰り返し周期に起因する拡散方向の偏りを解消することができ、回折に
よる色づきを実用上問題が生じない程度に緩和することができる。
【0032】
(製造方法)
続いて、図6及び図7を用いて、ワイヤーグリッド偏光素子の製造方法について説明す
る。図6はワイヤーグリッド偏光素子の製造過程を示すフローチャートである。図7は、
ワイヤーグリッド偏光素子の製造工程における断面図である。
【0033】
まず、基体6上に回折機能層4を形成する(工程S1)。この工程は、まず、厚さ0.
7mmのガラスからなる基体6上に、スピンコート法等を用いて、ポリマーからなる回折
機能材料層4Lを積層する。続いて、フォトマスクを用いて回折機能材料層4Lのうち第
1の領域4aに相当する領域を選択的に露光し、その後湿式現像で除去することにより、
回折機能材料層4Lの一方の面に、第1の領域4aと第2の領域4bの分布を形成する。
第1の領域4aと第2の領域4bとの高さの差、すなわち回折機能材料層4Lのうち現像
により除去される部分の深さは、例えば100nmとする。また、第1の領域4aと第2
の領域4bとが平行となるようにエッチングする。こうして、基体6上に回折機能層4が
形成される。回折機能層4を形成した後、当該下地層5上にスパッタ法等により厚さ12
0nmの導電膜としてのアルミ膜2Lを形成する(工程S2:ワイヤー材料層形成工程)

【0034】
次に、アルミ膜2L上に、真空蒸着、CVD又はスパッタ等により反射防止膜(不図示
)を形成する(工程S3)。反射防止膜としては、例えば、SiCやSiOxNy:H(x
、yは組成比)が適している。もしくは、ITO(Indium Tin Oxide)を用いてもよい。
【0035】
反射防止膜を形成したら、図7(b)に示すように、当該反射防止膜上(図7(b)で
はアルミ膜2L上に示す)に表面が略平坦な平面とされたレジスト層Rをスピンコート法
などによって形成する(工程S4:レジスト層形成工程)。レジスト層Rとしては、樹脂
材料に波長266nmの光に感度を有する酸発生剤と、波長365nmに感度を有する酸
発生剤の両者を添加させたレジストを用いる。
【0036】
レジスト層Rを形成した後、プリベークを行いレジストの溶剤成分を除去させる(工程
S5)。プリベークを行った後、レジスト層Rに対して干渉露光を行う(工程S6:干渉
露光工程)。図7(c)に示すように、レジスト層Rの全領域に渡り、微細ワイヤーの潜
像を形成する。図中領域R1は現像後に除去され、R2は残留することになる。干渉露光
に用いる露光光としては、波長266nmの連続発振DUV(Deep Ultra Violet)レー
ザを用いることができ、入射角θLは、例えば72°とすることができる。
【0037】
干渉露光を行った後、図7(d)に示すように、ワイヤーグリッド層2の形成位置に相
当する領域を除く領域R3を選択的に結像露光し、ワイヤーグリッド層2の潜像を形成す
る(工程S7:結像露光工程)。結像露光は、波長365nmの光源(i線)によって行
うことができる。ワイヤーグリッド層2の形成領域は1本1本のワイヤーの形成領域に比
べてピッチが大きいため、工程S6では干渉露光時(工程S4)に比べて波長の大きい露
光光によって露光することができる。この露光に用いる露光光として、例えばi線の代わ
りに波長436nmの光源(g線)であっても構わない。この場合、波長i線に感度を有
する酸発生剤ではなくg線に感度を有する酸発生剤をレジストに含ませておくようにする

【0038】
干渉露光及び結像露光を行った後、PEB(Post Exposure Bake)処理を行うことによ
りレジスト内の酸を増加させ、露光領域の保護基を脱離させる(工程S8)。その後、レ
ジスト層Rの現像を行う(工程S9:現像工程)。現像後、レジスト層Rのうち領域R2
及び領域R3が除去され、図7(e)に示すように、ワイヤーグリッド層2の形成領域に
ピッチ140nmの微細な線状のレジストパターンrが得られる。
【0039】
レジストパターンrを形成した後、当該レジストパターンrをエッチングマスクとして
アルミ膜2Lをエッチングする(工程S10:エッチング工程)。このエッチングにより
、アルミ膜2Lのうちレジストパターンrに重なる領域以外の領域が除去され、アルミ膜
2Lのパターンが形成されることになる。アルミ膜2Lのパターンを形成後、レジストパ
ターンrを除去する(工程S11)。これにより、図7(f)に示すように、回折機能層
4上に、140nmのピッチで配列された微細ワイヤーからなるワイヤーグリッド偏光層
2が形成される。
【0040】
ワイヤーグリッド偏光層2を形成後、当該ワイヤーグリッド偏光層2上にカバー層(不
図示)を形成する(工程S12)。この工程は、例えば、プラズマCVD法(Chemical V
apor Deposition)法、真空蒸着法等により、真空環境下においてワイヤーグリッド偏光
層2上にSiO2又はSiN等からなる層を形成することによって行う。この結果、微細
ワイヤー間に、基体6、ワイヤーグリッド偏光層2及びカバー層によって囲まれた空間を
真空状態で封止することができる。このようにして、本実施形態のワイヤーグリッド偏光
素子1を形成する。
【0041】
このように、本実施形態によれば、基体6上にアルミ膜2Lを形成した後、樹脂材料に
波長266nmの光に感度を有する酸発生剤と、波長365nmに感度を有する酸発生剤
の両者を添加させたレジストをアルミ膜2L上に塗布することとしたので、このレジスト
層Rは波長266nmの光又は波長365nmの光の両方の光に感度を有することとなる
。このため、各波長の光に感度を有するレジストを2回に分けて塗布する必要がなく、レ
ジスト層Rを1回形成すれば済むことになる。これにより、製造過程を簡素化することが
できる。
【0042】
また、本実施形態では、光散乱機能を備えた回折光学素子(DOE)の複数の段差部が
基体6に設けられていることとした。このように回折光学素子を有するワイヤーグリッド
偏光素子を形成する際に、当該段差部上に段差を有するレジスト層が形成された場合であ
っても、製造工程を簡略化することができる。
【0043】
[第2実施形態]
次に、本発明の第2実施形態を説明する。本実施形態では、上記実施形態で記載したワ
イヤーグリッド偏光素子を内蔵型の反射偏光層として備えた液晶装置について図面を参照
して説明する。
【0044】
本実施形態の液晶装置は、液晶に対して基板面方向の電界(横電界)を印加し、配向を
制御することにより画像表示を行う横電界方式のうち、FFS(Fringe Field Switching
)方式と呼ばれる方式を採用した液晶装置である。また本実施形態の液晶装置は、基板上
にカラーフィルタを具備したカラー液晶装置である。
【0045】
図8に示すように、液晶装置100は互いに対向して配置されたTFTアレイ基板10
と対向基板20との間に液晶層50が挟持されている。TFTアレイ基板10は、ガラス
や石英、プラスチック等の透光性の基板本体10Aを基体としてなり、基板本体10Aの
内面側(液晶層50側)には、配線3a、スイッチング素子70などが形成されており、
これらを覆うように層間絶縁膜12が形成されている。
【0046】
層間絶縁膜12上には、図1及び図2に示したワイヤーグリッド偏光層2、回折機能層
4及び基体6を有して構成された本発明に係る光学素子であるワイヤーグリッド偏光素子
1が部分的に形成されている。ワイヤーグリッド偏光素子1のちワイヤーグリッド偏光層
2の形成された領域では光を反射して表示を行う反射表示領域Rになっており、それ以外
の領域は光を透過して表示を行う透過表示領域Tになっている。このワイヤーグリッド偏
光素子1は上記第1実施形態と同一の手法によって製造される。ワイヤーグリッド偏光素
子1の上層には画素電極9が形成されている。画素電極9はコンタクトホール45を介し
てスイッチング素子70の半導体層31に接続されている。
【0047】
このように、本実施形態によれば、上記のワイヤーグリッド偏光素子1の製造方法を用
いて液晶装置100の偏光板19を製造することとしたので、製造過程を簡素化すること
ができると共に低い製造コストで液晶装置100を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】(a)は、本実施形態に係る光学素子の斜視図、(b)は、回折機能層の形状を示す斜視図。
【図2】(a)は、図1(a)の光学素子のX− Z平面に沿った断面図、(b)は、(a)の一部を拡大した断面図。
【図3】光学素子の機能を説明するための模式図。
【図4】光学素子の透過光特性を示すグラフであり、(a)は透過率の波長依存性、(b)はコントラストの波長依存性を示すグラフ。
【図5】光学素子における単位パターンの配置の例を示す図。
【図6】光学素子の製造方法のフローチャート。
【図7】(a)から(c)は、光学素子の製造工程における断面図。
【図8】本発明の第2実施形態に係る液晶装置の構成を示す断面図。
【符号の説明】
【0049】
1…ワイヤーグリッド偏光素子、1u…単位パターン、2…ワイヤーグリッド偏光層、
2L…アルミ膜、4…回折機能層、4L…回折機能材料層、4a…第1の領域、4b…第
2の領域、6…基体、8…段差部、R…レジスト、100…液晶装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のワイヤーがグリッド状に設けられた偏光分離部を基体上に有するワイヤーグリッ
ド偏光素子の製造方法であって、
前記ワイヤーの構成材料を含むワイヤー材料層を前記基体上に形成するワイヤー材料層
形成工程と、
第1波長に感度を有する酸発生剤と前記第1波長よりも大きい第2波長に感度を有する
酸発生剤とを含む化学増幅型レジスト層を前記ワイヤー材料層上に形成するレジスト層形
成工程と、
前記レジスト層の第1領域を前記第1波長の光によって干渉露光する干渉露光工程と、
前記レジスト層の第2領域を前記第2波長の光によって結像露光する結像露光工程と、
前記干渉露光工程及び前記結像露光工程を行った後、前記レジスト層を現像して部分的
に剥離する現像剥離工程と、
前記ワイヤー材料層のうち前記現像剥離工程によって露出した部分をエッチングするエ
ッチング工程と
を備えることを特徴とするワイヤーグリッド偏光素子の製造方法。
【請求項2】
前記第1領域は、前記複数のワイヤーが形成される領域であり、
前記第2領域は、前記複数のワイヤーが形成されない領域である
ことを特徴とする請求項1に記載のワイヤーグリッド偏光素子の製造方法。
【請求項3】
前記第2領域は、前記第1領域よりも広い領域である
ことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のワイヤーグリッド偏光素子の製造方法

【請求項4】
前記基体のうち前記第2領域に平面視で重なる領域には、光散乱機能を備えた回折光学
素子の複数の段差部が設けられている
ことを特徴とする請求項1から請求項3のうちいずれか一項に記載のワイヤーグリッド
偏光素子の製造方法。
【請求項5】
前記第1波長の光は、波長266nmの紫外線であり、
前記第2波長の光は、g線又はi線である
ことを特徴とする請求項1から請求項4のうちいずれか一項に記載のワイヤーグリッド
偏光素子の製造方法。
【請求項6】
偏光板が設けられた液晶装置の製造方法であって、
請求項1から請求項5のうちいずれか一項に記載のワイヤーグリッド偏光素子の製造方
法を用いて前記偏光板を製造する
ことを特徴とする液晶装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−169213(P2009−169213A)
【公開日】平成21年7月30日(2009.7.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−8808(P2008−8808)
【出願日】平成20年1月18日(2008.1.18)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】