説明

ワイヤーハーネス分岐部分保護部材

【課題】より柔軟に分岐形態に対応してワイヤーハーネスの分岐部分を保護できるようにすること。
【解決手段】複数の基板側孔部22が形成されている基板20と、基板20の複数の基板側孔部22に対応する位置関係で複数の蓋板側孔部32が形成されている蓋板30と、基板側孔部22に係止可能な基板側係止部42と、蓋板側孔部32に係止可能な蓋板側係止部46とを有し、複数の対応する基板側孔部22及び蓋板側孔部32に対して、選択的にそれぞれ基板側係止部42又は蓋板側係止部46を係止させた状態で、ワイヤーハーネスWHの分岐部分WHdを配設可能な間隔をあけて基板20と蓋板30とを連結する複数の連結部40とを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
ワイヤーハーネスの分岐部分を保護する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、ワイヤーハーネスの分岐部分を保持する技術として、ワイヤーハーネス用分岐治具兼用クランプが開示されている。このワイヤーハーネス用分岐治具兼用クランプは、基板の上面の所要位置より複数の支柱が突設され、各支柱の上端に設けられたロック爪が、蓋板の所要位置に設けられたロック孔に係止されることにより、基板と蓋板とが間隔をあけて配置されるように構成されている。そして、各支柱の間にワイヤーハーネスを分岐形態に配設した状態で蓋部を取付けることにより、ワイヤーハーネスの分岐部分が保持される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平8−249947号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1のワイヤーハーネス用分岐治具兼用クランプは、支柱が基板の上面の所要位置から突設されると共にロック孔が蓋板の所要位置に設けられているため、ワイヤーハーネスの分岐部分の分岐数、分岐形態が変更された場合等にまで対応することは困難であり、別の治具を設計製造する必要がある。
【0005】
そこで、本発明は、より柔軟に分岐形態に対応してワイヤーハーネスの分岐部分を保護することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1の態様は、ワイヤーハーネスの分岐部分を保護するためのワイヤーハーネス分岐部分保護部材であって、複数の基板側孔部が形成されている基板と、前記基板の前記複数の基板側孔部に対応する位置関係で複数の蓋板側孔部が形成されている蓋板と、前記基板側孔部に係止可能な基板側係止部と、前記蓋板側孔部に係止可能な蓋板側係止部とを有し、複数の対応する前記基板側孔部及び前記蓋板側孔部に対して、選択的にそれぞれ前記基板側係止部又は蓋板側係止部を係止させた状態で、前記ワイヤーハーネスの分岐部分を配設可能な間隔をあけて前記基板と前記蓋板とを連結する複数の連結部とを備えている。
【0007】
第2の態様は、第1の態様に係るワイヤーハーネス分岐部分保護部材であって、前記複数の連結部は、それぞれ、前記ワイヤーハーネスの分岐部分から延出する各分岐線を挟む位置関係で前記基板と前記蓋板とを連結する。
【0008】
第3の態様は、第1又は第2の態様に係るワイヤーハーネス分岐部分保護部材であって、前記複数の基板側孔部は、隣接する前記基板側孔部同士が部分的に重複して連通するように形成され、前記複数の蓋板側孔部は、隣接する前記蓋板側孔部同士が部分的に重複して連通するように形成されている。
【0009】
第4の態様は、第3の態様に係るワイヤーハーネス分岐部分保護部材であって、前記連結部は、前記基板側係止部及び前記蓋板側係止部が対応する前記基板側孔部及び前記蓋板側孔部に係止した状態で、前記基板側孔部内に配設される基板側挿入部と、前記蓋板側孔部内に配設される蓋板側挿入部とを有し、前記基板側挿入部及び前記蓋板側挿入部は、断面視円形状に形成されている。
【0010】
第5の態様は、第1〜第4のいずれか一態様に係るワイヤーハーネス分岐部分保護部材であって、前記複数の基板側孔部は、円周方向に沿って並ぶように前記基板に形成され、前記複数の蓋板側孔部は、前記複数の基板側孔部に対応して、円周方向に沿って並ぶように前記蓋板に形成されている。
【0011】
第6の態様は、第1〜第5のいずれか一態様に係るワイヤーハーネス分岐部分保護部材であって、前記基板又は前記蓋板の一方又は両方は、一側縁部から延出する板状の固定部を有している。
【0012】
第7の態様は、第1〜第6のいずれか一態様に係るワイヤーハーネス分岐部分保護部材であって、前記基板及び前記蓋板の一方又は両方には、前記複数の基板側孔部又は前記複数の蓋板側孔部の側方に、各位置に対応付けられた記号が付されている。
【発明の効果】
【0013】
第1の態様に係るワイヤーハーネス分岐部分保護部材によると、複数の対応する基板側孔部及び蓋板側孔部に対して、選択的にそれぞれ基板側係止部及び蓋板側係止部を係止させた状態で、連結部がワイヤーハーネスの分岐部分を配設可能な間隔をあけて基板と蓋板とを連結するように構成されている。このため、ワイヤーハーネスの分岐部分の形態に対応して基板と蓋板とを連結する連結部の位置を決定することができ、より柔軟に分岐形態に対応してワイヤーハーネスの分岐部分を保護することができる。
【0014】
第2の態様に係るワイヤーハーネス分岐部分保護部材によると、複数の連結部が、それぞれ、ワイヤーハーネスの分岐部分から延出する各分岐線を挟む位置関係で基板と蓋板とを連結するため、ワイヤーハーネスの分岐部分の形態維持に寄与すると共に、がたつきを抑制することができる。
【0015】
第3の態様に係るワイヤーハーネス分岐部分保護部材によると、複数の基板側孔部及び複数の蓋板側孔部は、それぞれ、隣接する基板側孔部同士又は蓋板側孔部同士が部分的に重複して連通するように形成されている。このため、複数の対応する基板側孔部及び複数の蓋板側孔部に対して選択的にそれぞれ係止させた基板側係止部及び蓋板側係止部を、連通した隣接する基板側孔部又は蓋板側孔部に係止させるように、連結部をスライド移動させることができる。これにより、基板と蓋板とを複数の連結部により連結した後においても、ワイヤーハーネスの分岐部分の分岐形態に対応して連結部の位置を調整することができる。
【0016】
第4の態様に係るワイヤーハーネス分岐部分保護部材によると、連結部は、対応する基板側孔部及び蓋板側孔部に基板側係止部及び蓋板側係止部が係止した状態で、基板側孔部内に配設される基板側挿入部と、蓋板側孔部内に配設される蓋板側挿入部とを有しており、当該基板側挿入部及び蓋板側挿入部が断面視円形状に形成されている。このため、対応する基板側孔部及び蓋板側孔部に対して係止させた基板側係止部及び蓋板側係止部を、連通した隣接する基板側孔部又は蓋板側孔部に係止させるように、連結部をスライド移動させやすい。
【0017】
第5の態様に係るワイヤーハーネス分岐部分保護部材によると、複数の基板側孔部及び複数の蓋板側孔部は、円周方向に沿って並ぶように基板又は蓋板に形成されているため、より柔軟にワイヤーハーネスの分岐部分の形態に対応することができる。
【0018】
第6の態様に係るワイヤーハーネス分岐部分保護部材によると、基板又は蓋板の一方又は両方が、一側縁部から延出する板状の固定部を有しているため、ワイヤーハーネスの分岐部分に対する位置ずれをより確実に抑制して保護性能を向上させることができる。
【0019】
第7の態様に係るワイヤーハーネス分岐部分保護部材によると、基板及び蓋板の一方又は両方には、複数の基板側孔部又は複数の蓋板側孔部の側方に、各位置に対応付けられた記号が付されているため、基板側孔部又は蓋板側孔部に対して連結部の基板側係止部又は蓋板側係止部を係止する際の組立作業性の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】ワイヤーハーネス分岐部分保護部材の斜視図である。
【図2】基板及び蓋板を示す斜視図である。
【図3】基板に付された記号を示す図である。
【図4】連結部の斜視図である。
【図5】基板と蓋板とを連結している連結部の断面図である。
【図6】基板に連結部を立設する様子を示す斜視図である。
【図7】複数の連結部の位置を示す平面図である。
【図8】変形例に係る基板を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
実施形態に係るワイヤーハーネス分岐部分保護部材10について説明する(図1参照)。このワイヤーハーネス分岐部分保護部材10は、ワイヤーハーネスWHの分岐部分WHdを保護するための部材である。
【0022】
ここでは、ワイヤーハーネスWHのうち、幹線Wtから2本の枝線Wbが分岐している分岐部分WHdを保護対象とする例で説明する。
【0023】
ワイヤーハーネス分岐部分保護部材10は、基板20と、蓋板30と、複数の連結部40とを有している。基盤20、蓋板30及び複数の連結部40は、それぞれPP(ポリプロピレン)等の合成樹脂材料で形成されているとよい。
【0024】
基板20は、複数の基板側孔部22が形成されている板状の部材である(図2参照)。より具体的には、基板20は、円板状に形成されている。この基板20の直径は、ワイヤーハーネスWHの分岐部分WHdより大きく(下記の基板側孔部22の位置も考慮して)設定されている。
【0025】
基板側孔部22は、円形に開口する貫通孔である。この複数の基板側孔部22は、円周方向に沿って並ぶように基板20に形成されている。より具体的には、複数の基板側孔部22は、ワイヤーハーネスWHの分岐部分WHdを内側に配設可能な円の周方向に沿って並んでいるとよい(図7参照)。ここでは、複数の基板側孔部22は、円板状に形成された基板20の周縁部に沿って並ぶように形成されている。また、複数の基板側孔部22は、隣接する基板側孔部22同士が部分的に重複して連通するように形成されている。ここでは、複数の基板側孔部22は、周方向に等角度間隔の4組の連通した集合に分かれて形成されている。すなわち、基板20の周縁部に沿った円弧状に並んで連通している複数の基板側孔部22が、円周方向に間隔をあけて4組並んでいる。
【0026】
もっとも、複数の基板側孔部22は、等角度間隔の4組に分かれて連通するように形成される場合に限られない。すなわち、連通した複数の基板側孔部22の内外の部分が当該連通した複数の基板側孔部22の側方で連結されていればよく、また、基板20の強度の観点から言うと、連通した複数の基板側孔部22の外周側の部分の撓みが抑制されるように複数箇所で連結されているとよい。
【0027】
蓋板30は、複数の基板側孔部22に対応する位置関係で複数の蓋板側孔部32が形成されている板状の部材である(図2参照)。複数の基板側孔部22に対応する位置関係とは、蓋板30を基板20に対して対向配置させた状態で、各基板側孔部22に対して対向する位置関係である。ここでは、蓋板30は、基板20と同形状に形成されている。すなわち、蓋板30は、円板状に形成されている。そして、複数の蓋板側孔部32は、円形に開口する貫通孔であり、隣接する蓋板側孔部32同士が部分的に重複して連通して円周方向に沿って並ぶように形成されている。
【0028】
上記基板20には、複数の基板側孔部22の側方に、各基板側孔部22の位置に対応付けられた記号が付されている(図3参照)。また、蓋板30にも、複数の蓋板側孔部32の側方に、各蓋板側孔部32の位置に対応付けられた記号が付されている。そして、対応する基板側孔部22及び蓋板側孔部32に対しては、同じ或いは対応する(ここでは同じ)記号が付されている。
【0029】
ここでは、基板20及び蓋板30それぞれに、記号として番号が1から連番で付されている。なお、図3では、基板20に付された記号について示しているが、ここでは蓋板30に付される記号も同様である。また、この記号は、複数の基板側孔部22の組ごとにA1、A2、・・・、B1、B2、・・・、C1、C2、・・・、D1、D2、・・・のように区別して付されてもよい。
【0030】
複数の連結部40は、基板20と蓋板30とを連結する部分である(図1、図5参照)。より具体的には、複数の連結部40は、基板20と蓋板30とを、その間にワイヤーハーネスWHの分岐部分WHdを配設可能な間隔をあけて連結可能に形成されている。
【0031】
連結部40は、基板側係止部42と、基板側挿入部44と、柱部45と、蓋板側係止部46と、蓋板側挿入部48とを有している(図4参照)。概略的に説明すると、連結部40は、基板20と蓋板30との間に柱部45を介在させた状態で、基板側孔部22内に基板側挿入部44が配設されると共に基板側係止部42が基板側孔部22に係止し、蓋板側孔部32内に蓋板側挿入部48が配設されると共に蓋板側係止部46が蓋板側孔部32に係止することにより、基板20と蓋板30とを連結する。
【0032】
柱部45は、基板側孔部22及び蓋板側孔部32の内周形状より大きい断面形状を有する柱状に形成されている。ここでは、柱部45は、基板側孔部22及び蓋板側孔部32の孔径より大きい直径の円柱形状に形成されている。柱部45の軸方向寸法は、保護対象となるワイヤーハーネスWHの幹線Wtの外径より大きく(ここでは僅かに大きく)設定されている。
【0033】
基板側挿入部44は、柱部45の一端部に連続するように設けられ、基板側孔部22内に配設可能に形成されている(図5参照)。より具体的には、基板側挿入部44は、基板側孔部22の内部形状と同じかそれより小さい外部形状の柱状に形成されている。ここでは、基板側挿入部44は、断面視円形状に形成され、グラつきなく収容されるように基板側孔部22の孔径と同寸法の直径に設定されている。また、基板側挿入部44及びの軸方向寸法は、基板20の厚さ寸法と略同寸法に設定されている。そして、基板側挿入部44は、柱部45に対して中心軸を一致させる形態で連続するように形成されている。また、柱部45との関係では、基板側挿入部44は、小径に形成されている。
【0034】
上述したように、複数の基板側孔部22は、隣接する基板側孔部22同士が部分的に重複して連通するように並んでいるため、連結部40に対して、隣接する基板側孔部22に向けて力を作用させることにより、1つの基板側孔部22に挿入された基板側挿入部44を当該隣接する基板側孔部22内に移動させることができる。図1では連結部40の移動方向を矢印で示している。また、ここでは、基板側挿入部44は、断面視円形状に形成されているため、引掛りを抑制して、隣接する基板側孔部22内によりスムーズに移動させることができる。
【0035】
より具体的には、基板側挿入部44が基板側孔部22内に配設された状態で、連結部40に対して隣接する基板側孔部22に向かう力を作用させると、隣接する基板側孔部22同士の境界部分である隙間が小さくなった部分に対して基板側挿入部44の外周面が当接し、当該境界部分を押し広げるように弾性変形させつつ連結部40が移動される。そして、基板側挿入部44が境界部分を乗り越えると、隣接する基板側孔部22内に収容され、連結部40の位置が変更される。
【0036】
蓋板側挿入部48は、柱部45の他端部に連続するように設けられ、蓋板側孔部32内に配設可能な形状に形成されている(図5参照)。この蓋板側挿入部48は上記基板側挿入部44と同形状に形成され、蓋板側挿入部48と蓋板側孔部32との関係は基板側挿入部44と基板側孔部22との関係と同様である。
【0037】
基板側係止部42は、基板側孔部22の周縁部に対して係止可能に形成されている(図5参照)。この基板側係止部42は、支軸部43により支持されている。支軸部43は、基板側挿入部44の先端部から突出する棒状に形成されている部分である。
【0038】
基板側係止部42は、支軸部43の先端部から支軸部43の基端側に向けて外周側に拡がる傘状に形成されている。そして、基板側係止部42は、端縁部(支軸部43の基端側に向かう端部)が基板側孔部22の周縁部に当接することにより、基板側孔部22に対して係止する。
【0039】
この基板側係止部42は、基板側孔部22を通過可能なように内周側に弾性変形可能に形成されている。そして、基板側係止部42は、その先端部から基板側孔部22に挿入されると、端縁部に向けて拡がる外面が基板側孔部22の周縁部に当接して内周側に弾性変形し、端縁部が基板側孔部22から抜け出る位置まで挿入されると、弾性復帰力により元の形状に戻って端縁部が基板側孔部22の周縁部に対して挿入方向前方側から当接する。
【0040】
また、基板側係止部42は、支軸部43により、端縁部が柱部45の一端部に対して基板20の厚さ寸法と略同一の間隔をあけて位置するように支持されている。すなわち、基板側挿入部44が基板側孔部22内に挿入された状態で、基板側係止部42と柱部45との間に基板側孔部22の周縁部が挟まれた状態となる。これにより、連結部40は基板20に対して固定される。
【0041】
もっとも、基板側係止部42は、基板側孔部22の周縁部に係止可能であればよく、上記形状に限られるものではない。上記基板側係止部42は傘状に形成されていたが、複数の係止片が支軸部43の先端部から支軸部43の基端側に向けて外周側に広がるように延出し、内周側に弾性変形可能に形成されていてもよい。また、基板側挿入部44が延長して形成され、基板側係止部が、その外周面から外周側に突出する凸部として形成されていてもよい。さらに、基板側係止部が基板側孔部22内に配設される基板側挿入部44の外周面から突出する凸部として形成され、当該基板側係止部が基板側孔部22の内周面に押し付けられることにより基板側孔部22に係止するように構成されていてもよい。
【0042】
蓋板側係止部46は、蓋板側孔部32の周縁部に対して係止可能に形成されている(図5参照)。この蓋板側係止部46は、基板側係止部42と同じ形状に形成されている。すなわち、蓋板側係止部46は、傘状に形成され、蓋板側挿入部48の先端部から突出する支軸部47の先端部に支持されている。また、蓋板側係止部46の支持位置も、基板側係止部42の支持位置と同様である。また、蓋板側係止部46も、基板側係止部42の変形例で説明した形状に形成されていてもよい。
【0043】
そして、基板側係止部42を基板側孔部22の周縁部に係止させると共に、蓋板側係止部46を蓋板側孔部32の周縁部に係止させることにより、複数の連結部40によって基板20と蓋板30とを連結することができる。この状態で、基板20と蓋板30とは、間に柱部45を介在させて連結されており、柱部45の軸方向寸法分の間隔をあけて対向配置されている。
【0044】
また、複数の連結部40は、それぞれ、ワイヤーハーネスWHの分岐部分WHdから延出する各幹線Wt又は枝線Wbを挟む位置関係で基板20と蓋板30とを連結するように設けられている(図7参照)。より具体的には、複数の基板側孔部22及び複数の蓋板側孔部32のうち、各幹線Wt又は枝線Wbを挟む位置に形成されている基板側孔部22及び蓋板側孔部32に対して基板側係止部42又は蓋板側係止部46を係止させている。すなわち、複数の連結部40は、複数の対応する基板側孔部22及び蓋板側孔部32に対して、選択的に(一部に)基板側係止部42及び蓋板側係止部46を係止させた状態で、基板20と蓋板30とを連結している。
【0045】
好ましくは、複数の連結部40は、上記位置関係で、且つ、幹線Wt又は枝線Wbの外周部に対して柱部45の外周面を接触させる位置に設けられるとよい。すなわち、幹線Wt及び枝線Wbをより厳しく位置規制することにより、ワイヤーハーネスWHの分岐部分WHdの形態をより確実に維持すると共に、ワイヤーハーネス分岐部分保護部材10のワイヤーハーネスWHに対するがたつきを抑制する。
【0046】
もっとも、連結部40は、各幹線Wt又は枝線Wbを挟む位置に限られず、他の位置に設けられてもよい。すなわち、各幹線Wt又は枝線Wbを挟む位置に設けられた連結部40同士の間の位置に、別の連結部40を設けてもよい。なお、部品点数を減らす観点からいうと、連結部40は、幹線Wt又は枝線Wbを挟む位置のみに設けられるとよい。
【0047】
次に、ワイヤーハーネス分岐部分保護部材10により、ワイヤーハーネスWHの分岐部分WHdを保護する工程について説明する。
【0048】
まず、基板20上にワイヤーハーネスWHの分岐部分WHdを配設する。より具体的には、当該分岐部分WHdが基板側孔部22の内側に位置するようにワイヤーハーネスWHを配設するとよい(図7参照)。
【0049】
そして、ワイヤーハーネスWHの分岐部分WHdから延出する各幹線Wt又は枝線Wbを挟む位置の基板側孔部22に対してそれぞれ連結部40の基板側係止部42を係止させる(図6、図7参照)。これにより、基板20上に複数の連結部40が立設された状態となり、ワイヤーハーネスWHの分岐部分WHdは、複数の連結部40の内側で基板20に平行な方向において位置規制される。
【0050】
この状態で、蓋板30を、基板20に対応する姿勢でワイヤーハーネスWHの分岐部分WHdを挟むように、基板20に対して近接させる。これにより、基板20に立設された複数の連結部40の蓋板側係止部46が、蓋板30の複数の蓋板側孔部32に対して係止する。
【0051】
以上の工程により、ワイヤーハーネス分岐部分保護部材10を、ワイヤーハーネスWHに対して取り付けることができ、その分岐部分WHdを保護することができる(図1参照)。
【0052】
ここで、基板20と蓋板30とを連結している複数の連結部40と、それに挟まれる幹線Wt又は枝線Wbとの間に隙間がある場合には、その幹線Wt又は枝線Wbを挟む一対の連結部40を近接させるように力を作用させて、連結部40を移動させるとよい。なお、連結部40の位置を変更する作業は、複数の連結部40を基板20に立設する工程で行ってもよい。
【0053】
ここでは、複数の連結部40を基板20に立設してから蓋板30を組み付ける例で説明したが、蓋板30に複数の連結部40を立設してから基板20を蓋板30に対して近接させて組み付けてもよい。また、複数の連結部40のうちの一部を基板20に立設すると共に、他の連結部40を蓋板30に立設し、基板20と蓋板30とを近接させて組み立ててもよい。
【0054】
また、これまで、基板20と蓋板30とは、同形状に形成されている例で説明してきたが、異なる形状に形成されていてもよい。より具体的には、基板20と蓋板30とは、複数の基板側孔部22と複数の蓋板側孔部32とが対応する位置関係で形成されていればよく、その外形状はそれぞれ異なる形状に形成されていてもよい。
【0055】
また、基板20及び蓋板30は、円板状の他にも、平面視楕円形、多角形等の板状に形成されていてもよい。
【0056】
また、複数の基板側孔部22及び複数の蓋板側孔部32は、円周方向に沿って並ぶように形成される場合に限られない。例えば、ワイヤーハーネスWHの分岐部分WHdの形態をより確実に維持するために、上記実施形態の複数の基板側孔部22及び複数の蓋板側孔部32の位置より内周側の位置に孔部を形成して、より内周側で幹線Wt又は枝線Wbに当接する位置に連結部40を設けてもよい。
【0057】
基板20又は蓋板30の一方又は両方は、一側縁部から延出する板状の固定部50を有していてもよい。なお、図8では、固定部50を有している基板20aを示し、基板側孔部は省略している。より具体的には、固定部50は、平面視略長方形の板状に形成されている。そして、基板20aを、固定部50が分岐部分WHdから一方側に延出する幹線Wt(又は枝線Wb)に対して延在方向に沿う姿勢で配設し、固定部50及び幹線Wtに対して一緒にテープTを巻付ける。これにより、ワイヤーハーネス分岐部分保護部材10をワイヤーハーネスWHに対してより確実に位置決めすることができる。すなわち、ワイヤーハーネス分岐部分保護部材10のワイヤーハーネスWHの分岐部分WHdに対する位置ずれをより確実に抑制して保護性能を向上させることができる。
【0058】
なお、固定部50をワイヤーハーネスWHに固定する作業は、基板20aに対して複数の連結部40を立設する前に行っても、蓋板30を組み付けた後に行ってもよい。また、固定部50をワイヤーハーネスWHに対して固定する部材はテープTに限られず、タイバンド等でもよい。また、固定部50は、基板及び蓋板の両方、又は、蓋板のみに設けられていてもよい。固定部50が基板及び蓋板の両方に設けられている場合、基板と蓋板とを、固定部50の向きを一致させる形態で組み合わせてもよいし、分岐部分WHdから延出する異なる幹線Wt又は枝線Wbに固定するように異なる向きに延出させる形態で組み合わせてもよい。
【0059】
このように固定部50を設けてワイヤーハーネスWHに固定する構成は、例えば、ワイヤーハーネスWHの分岐部分WHdの分岐数が少ない場合等、当該分岐部分WHdに対するワイヤーハーネス分岐部分保護部材10の装着状態が安定しない場合(がたつきがある場合等)に特に有効である。
【0060】
また、基板側孔部22又は蓋板側孔部32に対応して基板20又は蓋板30に記号が付される旨説明したが、当該記号は、基板20及び蓋板30の一方のみに付されてもよい。すなわち、上述したワイヤーハーネス分岐部分保護部材10の組立時には、連結部40が先に基板20に立設され、蓋板30が基板20に対して近接されて連結される。このため、基板20及び蓋板30が同形状に形成されている場合、蓋板30は基板20に対応する姿勢で近接させて組み付ければよいため、先に連結部40が立設される基板20にのみ記号が付されていればよい。また、前記記号は省略されてもよい。
【0061】
なお、サイズ(最大径)が異なるワイヤーハーネスWHに対しては、複数サイズ(直径)の基板20及び蓋板30を用意すると共に、複数サイズ(柱部45の軸方向寸法)の連結部40を用意しておき、ワイヤーハーネスWHのサイズに対応した基板20、蓋板30及び連結部40を選択すればよい。
【0062】
上記実施形態に係るワイヤーハーネス分岐部分保護部材10によると、複数の対応する基板側孔部22及び蓋板側孔部32に対して、選択的にそれぞれ基板側係止部42又は蓋板側係止部46を係止させた状態で、連結部40がワイヤーハーネスWHの分岐部分WHdを配設可能な間隔をあけて基板20と蓋板30とを連結するように構成されている。このため、ワイヤーハーネスWHの分岐部分WHdの形態に対応して基板20と蓋板30とを連結する連結部40の位置を決定することができ、より柔軟に分岐形態に対応してワイヤーハーネスWHの分岐部分WHdを保護できるようにすることができる。
【0063】
また、例えば、プロテクタと比較して、異なる形態のワイヤーハーネスWHの分岐部分WHdに対して、毎回新たに設計すると共に金型等を用意することを省略することができ、工数の軽減及びコストの低減に寄与する。
【0064】
また、複数の連結部40が、それぞれ、ワイヤーハーネスWHの分岐部分WHdから延出する各幹線Wt又は枝線Wbを挟む位置関係で基板20と蓋板30とを連結するため、ワイヤーハーネスWHの分岐部分WHdの形態維持に寄与すると共に、がたつきを抑制することができる。
【0065】
また、複数の基板側孔部22及び複数の蓋板側孔部32は、それぞれ、隣接する基板側孔部22同士又は蓋板側孔部32同士が部分的に重複して連通するように形成されている。このため、複数の対応する基板側孔部22及び複数の蓋板側孔部32に対して選択的にそれぞれ係止させた基板側係止部42及び蓋板側係止部46を、連通した隣接する基板側孔部22又は蓋板側孔部32に係止させるように、連結部40をスライド移動させることができる。これにより、基板20と蓋板30とを複数の連結部40により連結した後においても、ワイヤーハーネスWHの分岐部分WHdの分岐形態に対応して連結部40の位置を調整することができる。例えば、連結部40の位置間違えの場合も、正規の位置に簡単に修正移動させることができる。
【0066】
また、連結部40は、対応する基板側孔部22に基板側係止部42が係止した状態で、基板側孔部22内に配設される基板側挿入部44と、蓋板側孔部32に蓋板側係止部46が係止した状態で、蓋板側孔部32内に配設される蓋板側挿入部48とを有しており、当該基板側挿入部44及び蓋板側挿入部48が断面視円形状に形成されている。このため、対応する基板側孔部22及び蓋板側孔部32に対して係止させた基板側係止部42及び蓋板側係止部46を、連通した隣接する基板側孔部22又は蓋板側孔部32に係止させるように、連結部40をスライド移動させやすい。
【0067】
また、複数の基板側孔部22及び複数の蓋板側孔部32は、円周方向に沿って並ぶように基板20又は蓋板30に形成されているため、ワイヤーハーネスWHの分岐部分WHdの形態に対してより柔軟に対応させることができる。
【0068】
また、基板20及び蓋板30には、複数の基板側孔部22又は複数の蓋板側孔部32の側方に、各位置に対応付けられた記号が付されているため、ワイヤーハーネスWHに対してワイヤーハーネス分岐部分保護部材10を取り付ける繰返し作業において複数の連結部40の位置を容易に決定できると共に、基板20と蓋板30とをより確実に対応する姿勢で連結することができる。すなわち、基板側孔部22又は蓋板側孔部32に対して連結部40の基板側係止部42又は蓋板側係止部46を係止する際の組立作業性の向上を図ることができる。
【符号の説明】
【0069】
10 ワイヤーハーネス分岐部分保護部材
20、20a 基板
22 基板側孔部
30 蓋板
32 蓋板側孔部
40 連結部
42 基板側係止部
44 基板側挿入部
46 蓋板側係止部
48 蓋板側挿入部
50 固定部
Wb 枝線
Wt 幹線
WH ワイヤーハーネス
WHd 分岐部分

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワイヤーハーネスの分岐部分を保護するためのワイヤーハーネス分岐部分保護部材であって、
複数の基板側孔部が形成されている基板と、
前記基板の前記複数の基板側孔部に対応する位置関係で複数の蓋板側孔部が形成されている蓋板と、
前記基板側孔部に係止可能な基板側係止部と、前記蓋板側孔部に係止可能な蓋板側係止部とを有し、複数の対応する前記基板側孔部及び前記蓋板側孔部に対して、選択的にそれぞれ前記基板側係止部又は蓋板側係止部を係止させた状態で、前記ワイヤーハーネスの分岐部分を配設可能な間隔をあけて前記基板と前記蓋板とを連結する複数の連結部と、
を備えている、ワイヤーハーネス分岐部分保護部材。
【請求項2】
請求項1に記載のワイヤーハーネス分岐部分保護部材であって、
前記複数の連結部は、それぞれ、前記ワイヤーハーネスの分岐部分から延出する各分岐線を挟む位置関係で前記基板と前記蓋板とを連結する、ワイヤーハーネス分岐部分保護部材。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載のワイヤーハーネス分岐部分保護部材であって、
前記複数の基板側孔部は、隣接する前記基板側孔部同士が部分的に重複して連通するように形成され、
前記複数の蓋板側孔部は、隣接する前記蓋板側孔部同士が部分的に重複して連通するように形成されている、ワイヤーハーネス分岐部分保護部材。
【請求項4】
請求項3に記載のワイヤーハーネス分岐部分保護部材であって、
前記連結部は、前記基板側係止部及び前記蓋板側係止部が対応する前記基板側孔部及び前記蓋板側孔部に係止した状態で、前記基板側孔部内に配設される基板側挿入部と、前記蓋板側孔部内に配設される蓋板側挿入部とを有し、
前記基板側挿入部及び前記蓋板側挿入部は、断面視円形状に形成されている、ワイヤーハーネス分岐部分保護部材。
【請求項5】
請求項1〜請求項4のいずれか一項に記載のワイヤーハーネス分岐部分保護部材であって、
前記複数の基板側孔部は、円周方向に沿って並ぶように前記基板に形成され、
前記複数の蓋板側孔部は、前記複数の基板側孔部に対応して、円周方向に沿って並ぶように前記蓋板に形成されている、ワイヤーハーネス分岐部分保護部材。
【請求項6】
請求項1〜請求項5のいずれか一項に記載のワイヤーハーネス分岐部分保護部材であって、
前記基板又は前記蓋板の一方又は両方は、一側縁部から延出する板状の固定部を有している、ワイヤーハーネス分岐部分保護部材。
【請求項7】
請求項1〜請求項6のいずれか一項に記載のワイヤーハーネス分岐部分保護部材であって、
前記基板及び前記蓋板の一方又は両方には、前記複数の基板側孔部又は前記複数の蓋板側孔部の側方に、各位置に対応付けられた記号が付されている、ワイヤーハーネス分岐部分保護部材。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−147595(P2012−147595A)
【公開日】平成24年8月2日(2012.8.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−4718(P2011−4718)
【出願日】平成23年1月13日(2011.1.13)
【出願人】(000183406)住友電装株式会社 (6,135)
【Fターム(参考)】