説明

ワックス剥離汚水処理方法

【課題】簡単な操作で凝集部分とろ過水に分離し、ろ過水は溶解物が少なく無害であり下水道に排水することができるワックス剥離汚水処理方法を提供する。
【解決手段】ワックスが含まれている汚水に、活性炭パウダーを投入して活性炭パウダーに亜鉛、窒素、リン等が十分に吸着されるように強く混ぜ合わせ、そこへ凝集剤を添加し撹拌し、さらに水を加えて撹拌し、所定時間静置する。その後さらに撹拌して大きな凝集物を作り、凝集物が生成した汚水を脱水機により脱水処理を行い、1次ろ過水と凝集物に分離する。凝集物は産業廃棄物として廃棄し、1次ろ過水は活性炭によるろ過処理を施して2次ろ過水として、下水道に排水する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ビルなどの床のワックス掛けの際に、古いワックスを剥離して新たにワックスを塗布する際の剥離作業や、古いワックスに新たにワックスを重ね塗りするリコート作業で生じる汚水を処理するワックス剥離汚水処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、床の保護や艶出しのために、床表面にワックスが塗布されている。ワックスは、定期的に剥離作業またはリコート作業が行われ、その際に汚水が生じるものであった。リコート作業で生じる汚水には、洗浄剤や少量のワックスの樹脂が含まれ、中性である。剥離作業で生じる汚水には、剥離剤やワックスの樹脂、洗浄剤等が含まれている。剥離剤はアルカリ度の高いものが多く、汚水もアルカリ性となる。そして、各作業で生じる汚水は、タンク等にためて産業廃棄物として処理していた。または、特許文献1に開示されているように、汚水に凝集剤などを混ぜて、古いワックス成分を凝集し、ザルなどでろ過して水分と固形分を分離していた。ろ過した水分は下水に廃棄し、ザルに残った凝集物は産業廃棄物として処理していた。
【0003】
そこで、特許文献2に開示されているように、水に溶けて酸性を示す有機酸と、水に溶けて凝集性のイオンを析出する物質の処理剤を用いて、廃液を中和して廃棄する処理方法も提案されている。
【特許文献1】特開2000−301162号公報
【特許文献2】特開2004−321861号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来の技術の前者の場合、汚水の全量を産業廃棄物として処理するには、運搬や保管が重くて大変であるとともに、産業廃棄物として処理する費用もかかっていた。また、汚水に凝集剤を入れて凝集物を分離する方法は、ろ過の工程で十分に水分が抜けるまで長時間放置する必要があり、作業効率が良くなく面倒なものであった。また、ろ過した水分には溶解物が残り、あまり清浄なものでは無かった。
【0005】
さらに、特許文献2に開示された処理方法は、薬剤を多く使用しコストがかかる上、廃液中の固形分の除去が十分ではなく、廃液にワックス成分やその他の不純物が残り、きれいなものではなかった。
【0006】
この発明は、上記従来の技術の問題点に鑑みてなされたものであり、簡単な操作で凝集部分とろ過水に分離し、ろ過水は溶解物が少なく無害であり下水道に排水することができるワックス剥離汚水処理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、ワックスが含まれている汚水に、活性炭パウダーを投入して活性炭パウダーに亜鉛、窒素、リン等が十分に吸着されるように強く混ぜ合わせ、そこへ凝集剤を添加し、さらに水を加えて十分に撹拌し、所定時間静置後さらに撹拌して大きな凝集物を作り、前記凝集物が生成した前記汚水を脱水機により脱水処理を行い、1次ろ過水と前記凝集物に分離するワックス剥離汚水処理方法である。前記凝集物は産業廃棄物として廃棄し、前記1次ろ過水は活性炭によるろ過処理を施して2次ろ過水とした後、下水道に排水する。凝集物は、乾燥して軽量化してから破棄してもよい。
【0008】
また、前記脱水処理により得られた1次ろ過水の、活性炭によるろ過処理は、活性炭が入れられたろ過袋に前記1次ろ過水を投入してろ過するものである。
【0009】
また、前記汚水の濃度が高い場合、前記脱水処理により得られた1次ろ過水の、活性炭によるろ過処理は、前記1次ろ過水に活性炭パウダーと粒状活性炭を入れて撹拌し、そこへ凝集剤を添加し撹拌して凝集物を作り、前記凝集物が生成した前記1次ろ過水をろ過袋に投入してろ過するものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明のワックス剥離汚水処理方法は、簡単な工程で、床のワックスの剥離作業やリコート作業の際に生じる汚水から、比較的清浄な2次ろ過水を取り出して排水し、ワックス剥離汚水の廃棄を容易にすることができる。さらに、産業廃棄物を減量することができ、廃棄のためのコストを抑え、また後始末の作業を容易にすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、この発明の実施形態について図面に基づいて説明する。図1はこの発明の一実施形態を示すもので、この実施形態のワックス剥離汚水処理方法は、床のワックス掛けの際に、古いワックスを剥離して新たにワックスを塗布する剥離作業や、古いワックスに重ね塗りするリコート作業で生じる汚水を処理するワックス汚水処理方法である。リコート作業で生じる汚水には洗浄剤や少量のワックスの樹脂が含まれ中性であり、剥離作業で生じる汚水には、剥離剤やワックスの樹脂、洗浄剤等が含まれ、剥離剤はアルカリ度の高いものが多く、汚水もアルカリ性となる。
【0012】
ワックス剥離汚水処理に必要な機材は、図3に示す脱水機10である。脱水機10は、圧縮機12と籠部14により形成されている。圧縮機12には、樹脂などから成るハンドル16が設けられ、ハンドル16はドーナッツ状の取手であり、取手の面に対して垂直な方向にノブ16aが突設されている。取手の内周面には、下方へ僅かに湾曲した複数の幅広状の取手支持部が延出し、取手中央位置の同軸上に設けられた軸部16bの外周に一体に結合されている。軸部16bには、側面全体に雄ネジが施されたステンレス等のシャフト18の上端部が嵌合し、回転不能に固定されている。
【0013】
シャフト18には、その雄ネジが螺合し貫通した雌ねじ穴20aが設けられた四角柱状の螺合部20が、相対的に回転可能に螺合している。螺合部20には、雌ねじ穴20aを中心にして対称位置の両側面から、適宜な厚みを有する金属棒状の長板22が設けられ、長板22の各々の端部には、掛金具24が一体に設けられている。そして、螺合部20、長板22、掛金具24により、固定部材26が形成されている。
【0014】
シャフト18の下端部は、ステンレス等の金属により筒状に形成されたバネ収容部28に、摺動可能に嵌合している。バネ収容部28には、圧縮可能にコイルバネ30が収納され、シャフト18の下端部がコイルバネ30の上端に当接している。そして、コイルバネ30の下端は、バネ収容部28底部に当接している。
【0015】
バネ収容部28は、ステンレス等の金属板により円形に形成された押圧板32の中央に位置し、メガネ板34を介して押圧板32にねじ等で固定されている。押圧板32は、ステンレスの網状、パンチングメタル、又はバネ収容部28と一体に形成された樹脂成型品でもよい。
【0016】
籠部14は、一端面が開口した円筒状に形成され、押圧板32の外径より僅かに大きい内径を有して形成されている。他端面は、側面端部より僅かに底上げ状に形成されている。また、開口した端面近傍の外周には、端面中心に対して対称に一対の受金具36が、掛金具24と着脱可能に各々設けられている。受金具36は、掛金具24が係合した状態で、固定部材26の螺合部20が移動不能に係止する。さらに、籠部14の骨格は、ステンレス等の金属棒体から形成され、側面及び底面には、水分が流出可能に、例えば線径2mmの線材で間隔が4mmの網目に形成された、金属製の網38が設けられている。
【0017】
籠部14の内側には、ろ過袋44が入れられて設けられている。ろ過袋44は、水分が通過可能なフェルトを袋状に縫製して設けられている。ろ過袋44に使われるフェルトは、例えば目付けが200g/mで厚さ5mmであり、リサイクルフェルトを使用すれば、環境に配慮したものとなる。籠部14の下方には、後述する1次ろ過水を受ける排水容器が設けられている。
【0018】
次に、ワックス剥離汚水処理方法について説明する。まず、ワックス掛けを行う床から剥離剤と洗浄剤で古いワックスを溶解し、床面の古いワックスが溶解した汚水40を、モップ等に吸収させて、汚水容器42に集める。集められた汚水容器42の汚水40の中へ、活性炭パウダーを投入し、活性炭パウダーに亜鉛、窒素、リン等が十分に吸着されるように相対的に強く混ぜ合わせ、活性炭に溶解物質を吸着させる。活性炭パウダーの粒径は、例えば1ミクロンメートル〜110ミクロンメートルである。
【0019】
次に、古いワックスを固める凝集剤を入れる。凝集剤は、汚水がアルカリ性の場合は酸化アルミニウム、硫黄等を成分とする薬剤、例えば商品名No.6−C(内田水処理研究所製)を使用し、汚水が中性の場合は二酸化珪素、酸化アルミニウム、炭酸カルシウム等を成分とする薬剤、例えば商品名ガイア・フロックα(有限会社清水研究所製)を使用する。凝集剤の添加量は、例えば汚水40に対して3%である。ガイア・フロックαの場合は、2.5%とする。凝集材を入れた後撹拌し、粘りのある液になれば中和状態であり、撹拌を終了する。中和状態になる所要時間は1〜2分である。そこへ、4〜5倍程度の水を加え、活性炭パウダーにワックス成分等が十分に吸着されるまで十分に撹拌し、5分程度静置する。すると、凝集剤により古いワックス成分が凝集して水分と分離し、凝集物が生成する。その後強く撹拌すると、大きな凝集物ができる。
【0020】
次に凝集物が含まれている汚水40を、脱水機10にセットしたろ過袋44の中へ投入する。ろ過袋44内に投入された汚水40は、水分がろ過袋44を浸透して1次ろ過水となり籠部14から流出し、図示しない排水容器に溜まる。また、凝集物はろ過袋44内部に残留する。そして凝集物を包み込む状態に、ろ過袋44の開口端部を折りたたむ。この後、押圧板32を籠部14に入れ、押圧板32の位置を螺合部20に近づけるようにして、位置を調節し、固定部材26の掛金具24を籠部14に設けられた受金具36に、それぞれ嵌合させる。これにより、固定部材26はシャフト18の軸方向には移動不能となる。
【0021】
そして、ハンドル16を回し、固定部材26の螺合部20に対し、締め付け方向へシャフト18を回転させる。すると、籠部14の凝集物が押圧板32に押圧され、凝集物の水分が押出されてろ過袋44を通過してさらに排出される。このとき、凝集物の体積が減少して押圧板32の押圧力が低下するが、シャフト18の端部の押圧されたコイルバネ30により、弾性付勢状態が維持され、押圧力低下分が補われる。そして、凝集物が十分に脱水された後、圧縮機12のハンドル16を回転させて、凝集物を包み込んだろ過袋44から押圧板32を離し、受金具36から掛金具24を外して圧縮機12を籠部14から抜き取る。そして、ろ過袋44に包み込まれた凝集物を取り出して産業廃棄物として廃棄する。なお、凝集物を乾燥して軽量化してもよい。
【0022】
排水容器に溜まった1次ろ過水は、淡い琥珀色である。次に、新たなろ過袋44の内側に活性炭を入れ、その中へ1次ろ過水を投入し、活性炭ろ過をする。活性炭ろ過したものは、無色透明な2次ろ過水となる。2次ろ過水は、下水排除基準を満たすものであり、下水口に排水する。1次ろ過水を2次ろ過水にするために使用した活性炭はリサイクル可能であり、数回の使い回しが可能である。
【0023】
このワックス剥離汚水処理方法は、15分〜20分の所要時間で行うことができる。汚水40の量は、5lを目安に作業を行うと、作業しやすくなる。脱水作業ができるスペースがある場合、現地処理することができる。脱水作業スペースが洗面陶器のみの場合、養生に油とりマットを使用するとよい。なお、ワックス掛けでは洗浄作業がメインであり、剥離作業は頻度が少ないものである。
【0024】
この実施形態のワックス剥離汚水処理方法によれば、簡単な工程で、ワックスが含まれている汚水40から比較的清浄な2次ろ過水を取り出して下水へ排水し、固形分の廃棄を容易にすることができる。廃棄は、ワックスが含まれた凝集物のみを産業廃棄物として廃棄するため、産業廃棄物の処理量が大幅に削減することができ、処理量は、例えば通常の10分の1程度に減少する。これにより、凝集物のみ持ち帰ればよく産廃量が格段に減り、後始末の作業効率が向上する。また産廃費用を抑えることもできる。汚水40の主成分であるワックス樹脂を凝集させ、また脱水機10を使用することにより、ろ過を短時間でスムースに行うことができる。
【0025】
2次ろ過水は、下水排水基準を満たすものであり、ワックス処理の作業現場で下水や側溝に排水することができる。ワックス成分を凝集させる際に、細かい浮遊物を凝集物に接着させるため、ろ過時にろ過袋44を透過することがなく、また油分のノルマルヘキサン、亜鉛含有物を除去することができる。汚水40は、剥離作業かリコート作業かによりpHが異なるが、それぞれに適した凝集剤を使用することにより、効率よく凝集化して無害とすることができる。また、汚水40のアルカリ濃度を中和させ、この点からも無害にすることができる。
【0026】
汚水40の脱水は脱水機10で行い、圧力を継続してかけることができるため、他の作業に従事することができて作業効率が良好となる。ろ過袋44は、使い捨てとすることができ衛生的であるが、数回使い回しができる強度を有しているため、凝集物が少ないときは何度でも使用することができ、経済的である。脱水機10は、市販のペール缶にすっぽり入るものであり、コンパクトで軽量であり、持ち運びが容易である。また作業者のスペースをとらず、有効にスペースを使うことができる。
【0027】
なお、汚水40がきわめて濃度が高い場合や、確実に2次ろ過水を清浄にする場合は、脱水処理により排出された1次ろ過水を、より確実に清浄とするために、図2に示す処理を施してもよい。これは、脱水処理により排水容器に排出された1次ろ過水に、粒状活性炭と活性炭パウダーを入れ、5分〜10分撹拌し1次ろ過水に分散させる。粒状活性炭の粒径は、例えば1mm〜5mmであり、活性炭パウダーの粒径は、汚水40の最初の工程で入れるものと同じ1ミクロンメートル〜110ミクロンメートルである。これにより取り残しの溶解物を吸着させる。次に、凝集剤(中性用)を0.2%程度投入し撹拌する。これにより取り残しの溶解物が凝集剤により凝集して水分と分離し、凝集化する。これを、再度脱水機10にセットしたろ過袋44の中へ投入する。脱水機10により脱水し、ろ過袋44に残った凝集物は産業廃棄物として廃棄する。過袋44を通過した2次ろ過水は、下水道に排水する。
【0028】
図2に示す2次ろ過水の処理方法は、界面活性剤(洗浄剤)を多量に含んだ汚水に効果がある。また、ワックス剥離で、強力な剥離剤を使用したときや、ワックス樹脂含有が高いワックスを剥離したときにも効果がある。そして、1次ろ過水のBOD(生物化学的酸素要求量)が高い状況を解決することができる。
【実施例1】
【0029】
この発明のワックス剥離汚水処理方法の処理能力を確認するため、処理前の汚水と処理後の2次ろ過水について、以下の表1の各項目について測定した。
【0030】
【表1】

【0031】
これにより、汚水は2次ろ過水は各項目で90%以上数値が減少し、ほぼ排水の基準を満たし、下水道に排水することができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】この発明の一実施形態のワックス剥離汚水処理方法の工程を示す概略図である。
【図2】この実施形態のワックス剥離汚水処理方法の変形例を示す概略図である。
【図3】この実施形態のワックス剥離汚水処理方法に使用する脱水機を示す分解斜視図である。
【符号の説明】
【0033】
10 脱水機
12 圧縮機
14 籠部
16 ハンドル
18 シャフト
32 押圧板
40 汚水
42 汚水容器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
剥離したワックスが含まれている汚水に、活性炭パウダーを投入して強く混ぜ合わせ、そこへ凝集剤を添加し、さらに水を加えて十分に撹拌し、所定時間静置後さらに撹拌して大きな凝集物を作り、前記凝集物が生成した前記汚水を脱水機により脱水処理を行い、1次ろ過水と前記凝集物に分離して、前記凝集物を産業廃棄物として廃棄し、前記1次ろ過水は活性炭によるろ過処理を施して2次ろ過水とした後、下水道に排水することを特徴とするワックス剥離汚水処理方法。
【請求項2】
前記脱水処理により得られた1次ろ過水の、活性炭によるろ過処理は、活性炭が入れられたろ過袋に前記1次ろ過水を投入してろ過することを特徴とする請求項1記載のワックス剥離汚水処理方法。
【請求項3】
前記脱水処理により得られた1次ろ過水の、活性炭によるろ過処理は、前記1次ろ過水に活性炭パウダーと粒状活性炭を入れて撹拌し、そこへ凝集剤を添加し撹拌して凝集物を作り、前記凝集物が生成した前記1次ろ過水をろ過袋に投入してろ過することを特徴とする請求項1記載のワックス剥離汚水処理方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2008−246275(P2008−246275A)
【公開日】平成20年10月16日(2008.10.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−84880(P2007−84880)
【出願日】平成19年3月28日(2007.3.28)
【出願人】(391013036)勝星産業株式会社 (9)
【Fターム(参考)】