説明

一体型電気モーターのインバータのための冷却構成装置

【課題】駆動モータ一体型インバータの冷却装置を提供する。
【解決手段】インバータ28はモーター16の一端部に隣接した区画室50内に配置され、液体冷却剤64をインバータに直接噴霧して閉鎖システム内で冷却される。冷却剤は、インバータから熱を吸収し、ラジエータ34から第2の冷却剤を運搬するパイプ78を備えたリザーバ74を備える熱交換器構成により冷却される。冷却剤は、インバータから、インバータを含む区画室と一体形成された環状リザーバに収集される。液体から蒸気への相変化の間にインバータからの熱を吸収することで液体冷却剤を蒸発させる。蒸発冷却剤は、モーター及び環状リザーバと同軸の凝縮器を通ってラジエータに接続されたパイプ内を循環する第2の冷却剤により凝縮される。環状リザーバは過度に噴霧された液体冷却剤を収集する。インバータ劣化防止のため冷却剤は誘電冷却剤である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一体型電気モーターのインバータのための冷却構成装置に関する。より詳しくは、本発明は、一体型電気モーターのインバータのための冷却構成装置に係り、該モーターは、例えばガス及び電気式ハイブリッド車両及び燃料電池駆動式電気車両等を始めとしてこれらに限定されない電気車両を駆動するため使用される駆動モーターである。
【背景技術】
【0002】
車両の車輪を駆動するため電気駆動モーターを利用する車両は、電気モーターがガス及び電気式ハイブリッド車両及び燃料電池駆動式電気車両のいずれに装備されようとも、典型的には、電源からの直流電流を交流電流に変換するインバータと連結された三相ACモーターを使用する。インバータ回路は、一般に、DBC(銅直接接合式)基板に取り付けられたIGBT(絶縁ゲートバイポーラトランジスタ)を備える。DBCは、一体化されたブスバーを持ち、電源電子回路パッケージに回路カード及び信号コネクターを提供する。
【0003】
自動車を始動させ、走行速度を変化させ、加速し、制動するとき、車両を駆動する電動駆動モーターの電力需要は、幅広い範囲に亘って揺れ動く。電力需要における揺動は、駆動モーターに接続されたインバータにおいて温度変化を引き起こす。インバータが一体化されたブスバーを備えたDBCに取り付けられたIGBTを備えているため、インバータは、様々な膨張係数を備えた様々に異なる材料から構成される。従って、熱揺動は、その一体化された構成部品が温度変動に応答するときこれらの構成部品が異なる率で膨張して互いに関して僅かにシフトしようとするので、インバータを劣化させ得る。従って、構成部品の膨張及び収縮を最適なレベル内に維持するため温度を制御することが必要となる。現在のところ、これは、DBCと連係したヒートシンクを通って流体を循環させることにより又は電力電子回路に亘って空気を流して熱を吸収して運び去ることにより達成される。これらのアプローチは現在のところ満足にいくように見えるが、車両の信頼性並びに車両によるパワー消費を支持するため、電気駆動モーターを利用する車両の寿命に亘って電力電子回路の温度をより正確に制御する必要が残されている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
組み立て及びメンテナンスの容易さを促進すると共に、自動車内のスペースの使用を最適化するように自動車を構成する持続的な努力が存在している。スペースの最適な使用を達成する際に、関連する構成部品をモジュールへと構成する試みがなされているが、モーターにインバータを組み込むことは、インバータが様々な冷却に関する要求を持っているので、問題となる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記考察事項に鑑みて、インバータ回路の構成部品を冷却するための冷却構成装置は、 自動車の少なくとも1つの駆動車輪を駆動するため電気駆動モーターに近接して収容された構成部品を有する。本冷却構成装置は、電気駆動モーターに近接して配置されたハウジングを有し、該ハウジングはインバータ回路の構成部品を含む空間を備える区画室を有する。この区画室は、インバータ回路の構成部品を含む前記空間と連通して流体を冷却するため、入口開口部及び流体出口を有する。冷却流体は、ポンプにより、空間に分配され、インバータ回路の構成部品へと分配される誘電冷却流体である。該ポンプは、構成部品から誘電冷却剤を収集するリザーバから誘電冷却剤を循環させるため提供される。リザーバは、誘電冷却剤流体が前記構成部品に亘って再び循環される前に誘電流体から熱を転移するため液体−流体間の熱交換器内の第2の冷却剤を使用する。
【0006】
本冷却構成装置の更なる態様では、リザーバは、構成部品を含む区画室に近接し、ポンプと共に、ハウジングの一体構成部分である。
本冷却構成装置の更なる態様では、区画室は、電気駆動モーターの一端部に配置されて該電気駆動モーターに対して横方向に延在し、リザーバは、ハウジング内に配置され、該ハウジングは、電気駆動モーターの回りに配置され、該モーターに対して同軸に延在する。
【0007】
本冷却構成装置の更なる態様では、冷却構成装置は、構成部品の冷却要求を監視するための制御部を更に備え、該制御部は、該構成部品の冷却要求に従ってポンプを駆動するため該ポンプに接続されている。
【0008】
本冷却構成装置の更なる態様では、冷却構成装置は、燃料電池スタック又はガス動力供給式駆動エンジンのための冷却システムと組み合わせられ、該冷却システムは、第2の冷却流体を冷却システムのラジエータを通して循環させる。
【0009】
本冷却構成装置の更なる態様では、上記構成部品は、少なくとも1つの絶縁ゲートバイポーラトランジスタの構成部品を備える。
本冷却構成装置の更なる態様では、誘電冷却剤流体は、プロピレングリコールメチルエーテルとヘキサメチルジシロキサンとの混合物である。
【0010】
本冷却構成装置の更なる態様では、誘電冷却剤は、冷却剤が蒸発する前に、冷却剤の沸点温度で実質的な量の熱を吸収するように選択された相変化点温度を有する。
本冷却構成装置のなお更なる態様では、冷却剤を構成部品へと再循環する前に凝縮器が蒸発冷却剤を液体冷却剤に転化する。
【0011】
本冷却構成装置のなお更なる態様では、凝縮器は、リザーバ及び電気モーターと同軸である。
本発明の様々な他の特徴及び付随した利点は、添付図面と間連付けて考察されるとき本発明がよりよく理解されるようになるので、より完全に理解されよう。添付図面では、同様の参照番号は、幾つかの図面を通して、同じか又は類似した構成部品を指し示している。
【実施例】
【0012】
図1を参照すると、車両の車輪18をトランスミッション20を介して駆動するため内燃エンジン14及び電気駆動モーター16を利用して車両12に電力供給するためのガス及び電気式駆動装置10の一例が示されている。電力分離装置22は、内燃エンジン14又は電気モーター16がトランスミッション20を駆動するか否か、又は、トランスミッション20又は内燃エンジンが発電機24を駆動するか否かを決定する。別の実施例では、発電機24は、電気駆動モーター16の次に取り付けられ、駆動モーターと同じ構成を用いて冷却される。発電機24は、バッテリー26を充電し、及び/又は、インバータ28に電流を提供して電流を電気駆動モーター16に分配する。本発明によれば、電気駆動モーター16及びインバータ28は、モジュール式ユニット30として構成される。これは、電気駆動モーター16及びインバータ28により占められる空間を減少させるための機会を提供する。インバータ28が熱を発生するので、インバータは、冷却構成部32を必要とする。本発明の一態様によれば、冷却構成部32は、密封式冷却回路を持ち、該冷却回路は、内燃エンジン14を冷却するラジエータ34に熱伝導可能に連結されている。冷却構成部32は、図1に示されるように、モジュール30から遠隔にあるか、又は、図2に示されるように、モジュールと一体成形されてもよい。
【0013】
ここで、図2を参照すると、燃料電池駆動システム10’は、燃料電池40を利用して電気駆動モーター16に電力供給し、トランスミッション20’を介して車輪18を駆動する。燃料電池40は、直接的にか又はバッテリーパック26’を介して、モーター16のためのインバータ28’に接続されている。図1のガス及び電気式ハイブリッド車に関して、インバータ28’は、パワーモジュール30’を提供するためモーター16と一体成形されている。その上、図1のガス及び電気式ハイブリッド車に関して、インバータ28’は、燃料電池40を冷却するため使用されるラジエータ34’に熱伝導可能に連結された冷却構成部32’を有する。モーター16及びインバータ28’は、モジュール30’内に連係され、該モジュール30’は、これと一体の冷却構成部32’を備える。代替例として、冷却構成部32’は、図1の冷却構成部32により示されるように、モジュール30’から遠隔に配置することができる。
【0014】
ここで、図3を参照すると、図1及び2に各々示された冷却システム32又は32’の第1の実施例は、ガス及び電気式ハイブリッド駆動装置10又は燃料電池駆動装置10’のいずれかを用いて使用可能である。ガス及び電気式ハイブリッド駆動装置10及び燃料電池駆動装置10’は、そのような装置のための様々な構成の単なる一例である。例えば、ガス及び電気式ハイブリッド駆動装置10は、並列構成、直列構成、又は、他の任意の有効構成として構成することができ、燃料電池駆動装置10’も同様に構成することができる。ガス及び電気式ハイブリッド駆動装置10は、ガソリンエンジン、ディーゼルエンジン、タービンエンジン、又は、他の任意のエンジン構成を使用することができる。
【0015】
インバータ28は、電気モーター16に隣接して配置された区画室50内に配置される。インバータ28は、銅直接接合式(DBC)基板54で結合された絶縁ゲートバイポーラトランジスタ(IGBT)52を備え、該基板は、インバータ回路を形成するためAC/DCバスと一体化されている。IGBT52は、IGBT52並びに関連するDBC54及びバスに、直接、液体形態の冷却剤64を分配する噴霧ノズル62を有する冷却剤分配器60により冷却される。図示の実施例が液滴として冷却剤64を噴霧する一方で、他の実施例では、冷却剤は、流れ形態で分配されるか又はインバータ28に亘って注がれる。更に別の実施例では、インバータ28は、液体冷却剤64に浸漬されるが、好ましくは、液体冷却剤64は、インバータ29上に霧として又は離散的な液滴として噴霧される。
【0016】
冷却剤分配器60を使用することによって、冷却剤液体64は、IGBT52の熱源に直接適用され、モーターインバータ28のパワー密度(単位体積当たりのパワー)が増加することを可能にする。液体冷却剤64により冷却されるために、IGBT52により発生された熱は、そのうちの幾つかが低い熱伝導度を有する多層の材料を通って伝導する必要は必ずしもない。それよりも、噴霧冷却により提供される直接的な熱経路がIGBT52の温度を低下させる。IGBT52のための温度がより低い状態では、増大したパワーがインバータ28を介して駆動モーター16に利用可能となる。代替例として、改善された冷却構成部を用いて、より小さいインバータ28が、駆動モーター16に対して同じパワーレベルを生成するため提供されてもよい。
【0017】
噴霧ノズル62により提供された噴霧冷却工程は、温度に敏感である、例えばキャパシタ、変圧器、集積回路及びブスバー等、インバータ28と連係した他の構成部品でも使用可能である。噴霧冷却工程は、IGBT52の要素の間のワイヤ結合に冷却を提供し、ワイヤ結合が過熱することを防止し、その結果、故障を最小にさせる。従って、その結果として生じた構成部品の温度の低下と共に、信頼性が改善される。
【0018】
噴霧冷却工程が、増大した冷却能力を提供するので、噴霧冷却工程は、パワー揺動を遷移させるようにインバータ29の抵抗を改善する。遷移パワー揺動は、短期間に車両12により要求されるパワーの突然の増大に起因してパワーインバータ28への入力経路上に存在する。この揺動は、モーター16の出力への増大した抵抗により引き起こされ得る。これは、IGBT52の要素52における温度上昇を引き起こす。冷却媒体64をIGBT52に直接的に適用することにより、温度変化は、持続時間及び温度増分の両方において減少される。
【0019】
冷却剤64がインバータ28の構成部品と電気的に相互作用せず且つ該構成部品を劣化させないようにするため、冷却剤は、誘電冷却剤である。示唆された冷却剤は、メチルシロキサンと、例えばポリプロピレングリコールメチルエーテル等の有機化合物の混合物であり、該冷却剤は、最小の不安定性及び反応度を有する。そのような液体の一例は、ドウコーニング社から市販されているOS−120であり、これは、ヘキサメチルジシロキサン及びプロピレングリコールメチルエーテルの混合物であり、ヘキサメチルジシロキサンは、60重量%以上を占め、プロピレングリコールメチルエーテルは、10重量%ないし30重量%の範囲を占める。最小の不安定性、及び、ンバータの電気構成部品との最小の反応度を有する、他の誘電冷却剤を、OS−120の代わりに使用することができる。
【0020】
再び図3を参照すると、冷却剤64は、液体として噴霧され、区画室50の排液貯留部70内に収集され、噴霧戻り部72を介してリザーバ74へと至る。該リザーバは、フィルター75を介してポンプ76に接続される。ポンプ76は、インバータ28の持続的冷却のため噴霧ノズル62に再生体冷却剤を供給する分配器60に接続されている。冷却剤64がリザーバ74を介して循環されている間、該冷却剤は、例えば水エチレングリコール溶液等の第2の液体冷却剤77により冷却される。該冷却剤は、リザーバ74内の管78を通って流れる。第2の液体冷却剤77は、図1の内燃エンジン14を冷却するラジエータ34により供給されるか、又は、図2の燃料電池スタック40を冷却するラジエータ34’により供給される。ポンプ76は、IGBT52の出力部により制御される可変速度ポンプであるのが好ましい。IGBT52の出力が増大するとき、ポンプ76の速度が増加し、これにより、噴霧ノズル62を介して噴霧された液体冷却剤64の量を増大させる。代替例として、IGBT52の温度が熱電対構成部で監視されてもよい。この場合、IGBT52の要素の温度が上昇するときポンプ76の速度が増加され、これによって、より多くの液体冷却剤を噴霧してIGBTの温度を低下させる。
【0021】
ここで、図4を参照すると、噴霧冷却式冷却剤ループ30又は30’のための好ましい構成が示されおり、図3の噴霧冷却式冷却剤ループは、ベース79上に支持されたインバータ28を含む区画室50と一体成形される。図4では、リザーバ74及び冷却コイル78は、モーター16を取り囲んでモーターに対して同軸に延在する、リザーバ部分74に配置される。リザーバ74は、実質的に環状形状であり、例えば、図1及び2の車両ラジエータ34又は34’のいずれか一つ等の車両ラジエータに入口80及び出口82により接続された、複数の冷却チャンネル又は一つの冷却チャンネル78を備える。リザーバ74には、インバータのための支持部79内の開口部83等の開口部を通してインバータ28から流れ出た、加熱された液体冷却剤64が充填される。リザーバ74は、戻り部84により、貯留部86に接続され、該貯留部はフィルター75を介して冷却剤ポンプ76に接続されている。冷却剤ポンプ76は、配管87により、分配器60及び噴霧ノズル62に接続されている。噴霧ノズル62は、インバータ28に、液滴又は霧等の液相で冷却剤64を分配するのが好ましい。熱は、インバータ28から液体冷却剤64に転移される。液体冷却剤64は、リザーバ74内に排出され、冷却される。該リザーバ内では、加熱された液体冷却剤64は、複数又は1つのチャンネル78に亘って流れ即ち該チャンネルとすれ違って流れ、該冷却剤64からは、該チャンネルを通って循環する第2の冷却剤77により熱が除去される。好ましくは、これらのパイプチャンネルは、第2の冷却流体77がモーター16のステータ89から熱を除去するように、リザーバ74の内側壁88に隣接している。ポンプ76は、インバータ28のパワー要求に従って液体冷却剤64を再循環させる。
【0022】
図5及び図6は、図4のモジュール30又は30’を、該モジュールが設置された実施例で見ることができるように示している。該実施例では、区画室50は、液体冷却剤64を分配する噴霧ノズル62を有する冷却剤分配器60を支持するベース90を内部に有することが理解できる。ベース90に支持されているものは、インバータ28であり、該インバータは、絶縁ゲートバイポーラトランジスタ(IGBT)52を表面に形成したDBC基板54から構成され、インバータ回路の一つの位相を形成するためAC/DCバスと一体化されている。図5及び図6では、これらの要素は、代替構成を図示するため図4の区画室50に対して様々に異なる角度位置にある。更にベース90に取り付けられているものは回路カード92であり、該回路カードは、インバータ28の入力電流及び出力電流を制御するため信号コネクター92に接続されている。インバータ28は、一対の直流電流ターミナル95及び96により、図1及び図2の、バッテリー26若しくは26’等のDC電源又は発電機24に接続されている。第2の冷却剤77のためのチャンネル78を備える、モジュール30の環状リザーバ部74は、取り付けリング97から延在し、該リングには、カバー98がボルト100によってボルト止めされている。これらのボルトは、カバーの凹み部分102内に収容され、取り付けリング97上の突出ナット部104にねじ込まれる。第2の冷却剤77をチャンネル78に供給する、入口80及び出口82は、リザーバ部分74の外側壁を貫通してチャンネルへと接続される。
【0023】
取り付けリング96における、開口部83等の開口部は、ベース90上にプールされる冷却剤64が環状リザーバ74へと流れ込むことを可能にし、該リザーバでは、冷却剤は、ラジエータ34又は34’を通過したガソリンエンジン又は燃料電池の冷却剤77により冷却される。冷却剤ポンプ76は、フィルター75によりフィルター処理された液体冷却剤64を入口配管87を介してノズル62へと戻す。フィルター75及びポンプ76は、貯留部86を備えるハウジング部107内に配置される。区画室50を形成するためカバー98をボルト100を用いて取り付けリング96へと取り付けさせることによって、回路カード92及びインバータ28は、要求された場合にメンテナンスのためにアクセス可能となる。区画室50及びリザーバ74は、協働してハウジング108を形成する。該ハウジングでは、区画室は、モーター16の軸線110から横方向に延在し、リザーバは、モーターと同軸である環状空間となる。
【0024】
ここで、図7乃至図9を参照すると、本発明の第2の実施例が示されている。図7乃至図9では、類似の参照番号が、図3乃至図6に示された類似の構造を同定する。本発明の第2の実施例に記載された冷却構成部は、冷却剤64の蒸発潜熱の利点を奏する。冷却剤64が、冷却剤の蒸気温度より暖かい構成部品へと噴霧されるとき、冷却剤は、液体から蒸気64’へと状態即ち相を変化させる。蒸気64’は、該蒸気がチャンバー50’内に分散するとき、浪費熱をインバータ28から離れて運ぶ。図7〜図9の実施例では、冷却剤ループ30又は30’は、リザーバ74’から分離された凝縮器200、並びに、区画室50’から凝縮器200へと蒸発冷却剤64’を運搬するための別個の配管206を備える。図3の第1の実施例に関しては、車両ラジエータ34又は34’からの第2の冷却剤77は、冷却剤64’の相を蒸気から液体に戻して変化させるため冷却剤パイプ78’を通して循環される。凝縮器からの液体64は、リザーバ74’の液体と混合され、フィルター75によりフィルター処理され、その後、ポンプ76により流体分配器60へとポンプ送出される。流体分配器では、冷却剤64は、パワーインバータ29上に液体形態で噴霧される。
【0025】
図7乃至図9の実施例では、ポンプ76’は、可変出力ポンプであるのが好ましく、該ポンプは、IGBT52の要素52からの出力電流信号により動作開始するコントローラ210により制御され、IGBTの出力パワーが増大したときポンプ流量を増大させる。可変噴霧冷却を提供することにより、全作働条件の下の温度制御が達成される。これは、インバータ28が実質的に等温条件の下で作働するように、温度変化を最小にすることにより、構成部品の信頼性を増大させる。液体霧を形成するように霧化ノズル62を通して噴霧される誘電冷却剤64の量を首尾一貫して制御することにより、最大パワー散逸条件では、一定流量の液体霧は、インバータ28に噴霧されるとき、蒸気64’へと転化する相変化を呈する。相変化が生じたとき、パワーを分配するIGBT52は、パワー散逸を増大させたか否かには依らずに実質的に一定の温度のままとなっている。実際の構成部品のパワー散逸に関して液体冷却剤64の流量を変動させることによって、液体冷却剤64を含む流体の相変化領域は、冷却剤が全ての作働条件に順応するように利用される。
【0026】
図7乃至図9の実施例で利用される冷却剤の一例は、ミシガン州、ミッドランドのドウコーニング社から市販されている前述したOS−120である。OS−120は、メチロシロキサンと有機化合物との混合物である。OS−120は、約98℃の沸点を有し、相互接続された電気的構成部品を冷却するため使用されるとき劣化しない誘電材料である。誘電液体冷却剤64は、冷却剤の熱容量がその沸点に達するまで、その蒸気形態64’へと相を変化させることなく、98℃で熱を吸収し続ける。その沸点に達したとき、液体冷却剤は、IGBT52や電力電子回路パッケージの他の構成部品により発生された熱を奪い取る。
【0027】
ここで、図8を参照すると、図7の噴霧冷却構成部は、図8により例示されるように、モジュール30又は30’の形態で利用されるのが好ましい。蒸気64’は、ベース79’の開口部83’を通ってポンプ76’の負の圧力により凝縮器200内へと引っ張られる。該凝縮器は、その内部に配置されるか又はそれに隣接して配置されるパイプ78’を有する環状チャンネル201として形成されている。蒸発した冷却剤64’は、通路206内を通過する前に、凝縮器200で液体冷却剤64へと凝縮される。残りの蒸気64’は、リザーバ74’内の液体冷却剤64と混合し、冷却され凝縮された冷却剤の全ては、ポンプ76’により、通路206を通って吸収され、貯留部86内に至る。液化され、冷却された冷却剤64は、ポンプ76’により、貯留部86から再循環され、ノズル62を通して液体霧64として噴霧される。
【0028】
ここで、図9を参照すると、斜視図が図8に示されたモジュール式ユニット30又は30’の構成を示しており、該モジュール式ユニットは、図5及び図6に示された第1のモジュール式ユニットと同様に構成されている。図9の実施例と図5及び図6の実施例との間の構成的差異は、図9では、凝縮器200が備えられ、該凝縮器が図5及び図6に示されたようなモジュール式ユニットの空間的及び利便的な態様を有するコンパクトなモジュール式モーターインバータを提供するため冷却リザーバ74’及び電気モーター16の両方と同軸である環状チャンネル201を備えるということである。好ましくは、図9では、凝縮器200は、過度に噴霧された液体64を収集するリザーバ74’と、蒸発した冷却剤64’が凝縮されるところの環状チャンネル201との間に配置される。他の構成では、凝縮器は、環状チャンネル201の外側に配置されてもよく、或いは、モーター16のステータ89に近接した内側壁88に隣接して配置されてもよい。更に別の構成では、別個のチャンネル78及び78’が液体64を冷却し、モジュール30又は30’内で蒸気64’を凝縮させる。図4に関する図5及び図6に対して、図9のノズル62に対するインバータ28の角度位置は、代替構成を示すため、図8の位置とは異なっている。
【0029】
前述した説明から、当業者は、本発明の本質的特徴を容易に確かめることができ、本発明の精神及び範囲から逸脱すること無く、本発明を様々な使用法及び条件に適合させるように本発明の様々な変更及び変形をなすことができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】図1は、ガス及び電気式ハイブリッド駆動装置を有する自動車の概略図である。
【図2】図2は、電気駆動モーターを駆動させるため燃料電池の電力を使用する自動車の概略図である。
【図3】図3は、図1又は図2の電気駆動モーターに連結されたインバータ構成部品を冷却するための冷却システムの第1の実施例の概略図である。
【図4】図4は、図3の冷却構成部を用いるように構成された、噴霧冷却式の一体型モーターインバータの立面図である。
【図5】図5は、図4の実施例と同様に構成された噴霧冷却式の一体型モーターインバータの部分断面の斜視図である。
【図6】図6は、図5の噴霧冷却式の一体型モーターインバータであるが、反対側から示された、その部分断面の斜視図である。
【図7】図7は、図1及び図2の車両を用いて利用された噴霧冷却式冷却剤ループであるが、本発明の第2の実施例に従って構成された、その概略図である。
【図8】図8は、図7に示された本発明の第2の実施例に従って構成された噴霧冷却式の一体型モーターインバータの断面図である。
【図9】図9は、図8と同様に構成された噴霧冷却式の一体型モーターインバータの部分立面斜視図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動車の少なくとも1つの駆動車輪を駆動するため電気駆動モーターに近接して収容された構成部品を有するインバータ回路を冷却するための冷却構成装置であって、
前記電気駆動モーターに近接して配置されたハウジングであって、前記インバータ回路の構成部品を含む空間を備える区画室を有する、前記ハウジングと、
前記インバータ回路の構成部品を含む前記空間と連通する、新鮮な冷却剤流体入口開口部及び使用済み冷却剤流体出口と、
誘電冷却剤流体と、
前記誘電冷却剤流体を、前記空間に分配して前記インバータ回路の構成部品へと分配するための流体分配器と、
前記誘電冷却剤流体が前記インバータ回路の構成部品から熱を吸収した後、誘電冷却剤流体を収容するためのリザーバであって、該リザーバは、前記誘電冷却流体から熱を転移するため自動車のラジエータから該リザーバを通して流れる第2の冷却流体を有する、前記リザーバと、
前記インバータ回路の構成部品を周期的に冷却するため、前記リザーバから前記空間へと、主要には液相である間の前記誘電冷却剤流体を循環させるためのポンプと、
を備える、冷却構成装置。
【請求項2】
前記誘電冷却流体は、誘電冷却液体であり、前記リザーバは、前記区画室に近接して前記ハウジングと一体形成されている、請求項1に記載の冷却構成装置。
【請求項3】
前記区画室は、前記電気駆動モーターの一端部に配置されて該電気駆動モーターの軸線に対して横方向に延在し、前記リザーバは、前記電気駆動モーターの回りに配置され、該モーターに対して同軸に延在する、請求項2に記載の冷却構成装置。
【請求項4】
前記構成部品の冷却要求を監視するための制御部を更に備え、該制御部は、該構成部品の冷却要求に従って前記ポンプを駆動するため該ポンプに接続されている、請求項3に記載の冷却構成装置。
【請求項5】
前記制御部は、前記インバータ回路のパワー出力を監視し、該パワー出力に従って前記ポンプの作動を調整する、請求項4に記載の冷却構成装置。
【請求項6】
前記制御部は、前記インバータ回路の構成部品の熱レベルを監視し、該熱レベルに従って前記ポンプの作動を調整する、請求項4に記載の冷却構成装置。
【請求項7】
前記冷却構成装置は、前記第2の冷却流体が前記冷却システムのラジエータを通って循環する状態で、燃料電池スタック又はガス動力供給式駆動エンジンのための冷却システムと組み合わせられている、請求項1に記載の冷却構成装置。
【請求項8】
前記誘電冷却剤流体は、プロピレングリコールメチルエーテルとヘキサメチルジシロキサンとの混合物である、請求項7に記載の冷却構成装置。
【請求項9】
前記誘電冷却剤流体は、プロピレングリコールメチルエーテルとヘキサメチルジシロキサンとの混合物である、請求項1に記載の冷却構成装置。
【請求項10】
前記誘電冷却剤流体は、前記冷却剤が蒸気となる前に前記誘電液体冷却剤の沸点温度で実質的な量の熱を吸収するように選択された相変化温度を有し、前記冷却構成装置は、前記冷却剤が前記ポンプにより再循環される前に、前記蒸気を冷却剤液体へと転化させるための凝縮器を更に備える、請求項2に記載の冷却構成装置。
【請求項11】
前記凝縮器は、前記誘電冷却剤蒸気を凝縮するため、前記自動車の駆動源を冷却するように使用されるラジエータから冷却流体を循環させる、請求項10に記載の冷却構成装置。
【請求項12】
前記凝縮器及び前記リザーバは、モジュール式ユニットを形成するため、互いに同軸であり、前記電気駆動モーターとも同軸である、請求項11に記載の冷却構成装置。
【請求項13】
前記誘電冷却剤流体は、プロピレングリコールメチルエーテルとヘキサメチルジシロキサンとの混合物である、請求項12に記載の冷却構成装置。
【請求項14】
前記凝縮器は、前記電気駆動モーター及び前記リザーバから離れている、請求項11に記載の冷却構成装置。
【請求項15】
前記誘電冷却剤流体は、プロピレングリコールメチルエーテルとヘキサメチルジシロキサンとの混合物である、請求項14に記載の冷却構成装置。
【請求項16】
自動車の少なくとも1つの駆動車輪を駆動するため電気駆動モーターに近接して収容された構成部品を有するインバータ回路を冷却するための冷却構成装置であって、
前記電気駆動モーターに近接して配置されたハウジングであって、前記インバータ回路の構成部品を含む空間を備える区画室を有する、前記ハウジングと、
前記インバータ回路の構成部品を含む前記空間と連通する、新鮮な冷却剤流体入口開口部及び使用済み冷却剤流体出口と、
誘電冷却剤液体と、
前記誘電冷却剤液体を、前記空間に分配して前記インバータ回路の構成部品へと分配するための流体分配器と、
噴霧後に液相のままであった前記誘電流体の過度に噴霧された部分を収集するためのリザーバと、
相を変化させるため前記インバータ回路の構成部品から十分な熱を吸収するとき液相から蒸気相へと転化された誘電冷却剤を液化するための凝縮器と、
前記インバータ回路の構成部品を周期的に冷却するため前記リザーバ及び前記凝縮器から前記空間へと、主要には液相である間の前記誘電冷却剤を循環させるためのポンプと、
を備える、冷却構成装置。
【請求項17】
前記凝縮器は、前記リザーバに近接しており、該凝縮器及び前記リザーバは、両方とも前記自動車を駆動するための電源を冷却するため該自動車のラジエータを通って循環される第2の冷却剤により冷却される、請求項16に記載の冷却構成装置。
【請求項18】
前記区画室は、前記電気駆動モーターの一端部に配置されて該モーターに対して横方向に延在し、前記凝縮器は、前記電気駆動モーターの回りに配置され、該モーターに対して同軸に延在する、請求項17に記載の冷却構成装置。
【請求項19】
前記構成部品の冷却要求を監視するための制御部を更に備え、該制御部は、該構成部品の冷却要求に従って前記ポンプを駆動するため該ポンプに接続されている、請求項18に記載の冷却構成装置。
【請求項20】
前記誘電冷却剤流体は、プロピレングリコールメチルエーテルとヘキサメチルジシロキサンとの混合物である、請求項17に記載の冷却構成装置。
【請求項21】
前記誘電冷却剤流体は、プロピレングリコールメチルエーテルとヘキサメチルジシロキサンとの混合物である、請求項16に記載の冷却構成装置。
【請求項22】
前記インバータ回路の構成部品は、少なくとも1つの絶縁ゲートバイポーラトランジスタを備える、請求項16に記載の冷却構成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2006−273317(P2006−273317A)
【公開日】平成18年10月12日(2006.10.12)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2006−32315(P2006−32315)
【出願日】平成18年2月9日(2006.2.9)
【出願人】(590001407)ゼネラル・モーターズ・コーポレーション (118)
【氏名又は名称原語表記】GENERAL MOTORS CORPORATION
【Fターム(参考)】