説明

一液硬化型エマルション組成物及びその製造方法

【課題】貯蔵安定性に優れると共に、常温の乾燥でも粘着性、接着性、強靭性、耐久性及び耐水性に優れ、経時での性能変化も少ない塗膜を形成する一液硬化型エマルション組成物及びその製造方法を提供する。
【解決手段】重合体粒子が水性媒体中に分散されてなるエマルション組成物であって、前記重合体粒子は、エチレン性不飽和カルボン酸単量体(A−1)及び(A−1)以外のエチレン性不飽和基を有する単量体(A−2)を、1分子中に少なくとも2個のエポキシ基を有する化合物(B)及び塩基性触媒(C)の存在下、乳化重合して製造されたものであることを特徴とする一液硬化型エマルション組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エポキシ基を有する化合物を粒子内に含む一液硬化型エマルション組成物及びその製造方法に関するものである。更に詳しくは、貯蔵安定性に優れるとともに、常温の乾燥でも優れた粘着性、接着性、強靭性、耐久性、耐水性などを発揮し、経時での性能変化も少ない塗膜を得ることができる一液硬化型エマルション組成物及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、アクリル系、アクリル−スチレン系、酢酸ビニル系、エチレン−酢酸ビニル系など乳化重合等により得られるエマルション組成物は、溶剤系のものに比べて、安全面および衛生面に優れており、粘接着剤、水性塗料、建築内外装用塗料、インク、繊維・紙等の含浸剤、シーリング剤、コーティング剤、フロアーポリッシュ等の各分野で幅広く使用されている。しかし、これら従来のエマルション組成物により形成された皮膜は金属、木材、セメント硬化物、プラスチック、既存塗膜等に対する接着性が不十分であり、特に湿潤状態や高温においてしばしば剥離や膨れを生じるという重大な欠点を有していた。このような欠陥を改良するために、エマルション組成物中に含まれる乳化剤や保護コロイド等の水溶性物質の低減を図ったり、官能基を導入して架橋構造を形成させることが試みられているが十分な効果をあげるに至っていない。また熱硬化性樹脂、例えばエポキシ樹脂等の併用により塗膜の耐水性の改善も試みられている。しかしながら、エポキシ樹脂のエマルションを単純にブレンドしただけでは、貯蔵中にエポキシ樹脂と残りの重合体とが分離したり、エポキシ樹脂エマルションを製造する時に使用される多量の乳化剤が耐水性に影響を及ぼすという問題があった。
【0003】
これらの問題に対し、例えば特許文献1には、エポキシ樹脂存在下で重合可能な二重結合を有する単量体を乳化重合する方法が開示されている。また、特許文献2には、エポキシ樹脂の末端を一部アクリロイル基とし、重合可能な二重結合を有する単量体と乳化重合して得られる常温架橋型エマルション組成物が開示されている。これらにより貯蔵中の分離に関してはいくらか解決されているものの、エマルションの貯蔵中にエポキシ樹脂のエポキシ基とポリマー中の官能基との反応が進行し、その結果、貯蔵中に増粘やゲル化などを起こす問題を含んでいた。
【0004】
これらに対し、例えば特許文献3では、エポキシ樹脂存在下で(メタ)アクリル酸を含むラジカル重合性モノマーを乳化重合する際、水性媒体のpHを5〜8に調整する方法が開示されている。また、特許文献4ではエポキシ樹脂を粒子内部に含み、かつ粒子外層にこのエポキシ樹脂と反応しうる官能基を有する共重合体を含む、常温架橋型エマルション組成物が開示されている。これらにより貯蔵中にエポキシ樹脂のエポキシ基とポリマー中の官能基との反応を抑制して、貯蔵安定性を向上させているものの、常温で成膜した場合の架橋反応速度が遅く、成膜後の塗膜の性能が経時で変化してしまうという問題を含んでいた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開昭49−106586号公報
【特許文献2】特開昭57−115418号公報
【特許文献3】特開平08−188605号公報
【特許文献4】特開平01−149864号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記に鑑み、貯蔵安定性に優れ、常温の乾燥でも粘着性、接着性、強靭性、耐久性、耐水性などが優れ、経時での性能変化も少ない塗膜を得ることができる一液硬化型エマルション組成物及びその製造方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は上記課題を解決するために種々検討した結果、エポキシ基を有する化合物の存在下にカルボキシル基を含む重合可能な二重結合を有する単量体を乳化重合する際に、エポキシ基とカルボキシル基を反応させる塩基性触媒を併用することで、乳化重合中に粒子内でエポキシ基とカルボキシル基の一部もしくは全部を予め反応させておくことにより、上記課題を克服することを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち、本発明は以下に示される。
1.重合体粒子が水性媒体中に分散されてなるエマルション組成物であって、前記重合体粒子は、エチレン性不飽和カルボン酸単量体(A−1)及び(A−1)以外のエチレン性不飽和基を有する単量体(A−2)を、1分子中に少なくとも2個のエポキシ基を有する化合物(B)及び塩基性触媒(C)の存在下、乳化重合して製造されたものであることを特徴とする一液硬化型エマルション組成物。
2.上記塩基性触媒(C)が、4級アンモニウム塩、4級ホスホニウム塩又は3級ホスフィン化合物からなる群より選択される少なくとも1つであることを特徴とする上記1.に記載の一液硬化型エマルション組成物。
3.上記塩基性触媒(C)の使用量が、上記(A−1)、(A−2)及び(B)の合計100質量部に対して、0.01〜5.0質量部であることを特徴とする上記1.又は2.に記載の一液硬化型エマルション組成物。
4.上記エポキシ基を有する化合物(B)の重量平均分子量が、100〜1000であることを特徴とする上記1.乃至3.のいずれかに記載の一液硬化型エマルション組成物。
5.上記乳化重合する場合の各成分量が、エチレン性不飽和カルボン酸単量体(A−1)0.1〜50質量%、(A−1)以外のエチレン性不飽和基を有する単量体(A−2)1〜99質量%、1分子中に少なくとも2個のエポキシ基を有する化合物(B)1〜50質量%であることを特徴とする上記1.乃至4.のいずれかに記載の一液硬化型エマルション組成物。
〔但し、上記(A−1)、(A−2)及び(B)の合計を100質量%とする。〕
6.上記(A−1)、(A−2)及び(B)の合計量のエポキシ基当量に対し、同カルボキシル基当量が0.05〜100であることを特徴とする上記1.乃至5.のいずれかに記載の一液硬化型エマルション組成物。
7.水性媒体中でエチレン性不飽和カルボン酸単量体(A−1)及び(A−1)以外のエチレン性不飽和基を有する単量体(A−2)を乳化重合する製造方法において、該乳化重合が1分子中に少なくとも2個のエポキシ基を有する化合物(B)及び塩基性触媒(C)の存在下で行うことを特徴とする一液硬化型エマルション組成物の製造方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明の一液硬化型エマルション組成物によれば、貯蔵安定性に優れると共に、常温の乾燥でも粘着性、接着性、強靭性、耐久性及び耐水性などが優れ、経時での性能変化もない塗膜を得ることができる一液硬化型エマルション組成物とすることができる。
また、本発明に係る重合体粒子の製造で使用する塩基性触媒(C)が、4級アンモニウム塩、4級ホスホニウム塩又は3級ホスフィン化合物からなる群より選択される少なくとも1つである場合には、エポキシ基とカルボキシル基の反応性を制御することが容易となり、より貯蔵安定性に優れ、経時での性能変化の少ない塗膜を形成する一液硬化型エマルション組成物とすることができる。
さらに、塩基性触媒(C)の使用量が、上記(A−1)、(A−2)及び(B)の合計100質量部に対して、0.01〜5.0質量部である場合は、重合安定性及び貯蔵安定性の優れた一液硬化型エマルション組成物とすることができる。
また、エポキシ基を有する化合物(B)の重量平均分子量が100〜1000である場合には、重合可能な二重結合を有する単量体への溶解性がよくなることにより、安定に乳化重合を行うことができ、より貯蔵安定性に優れた一液硬化型エマルション組成物とすることができる。
また、上記乳化重合する場合の各成分量が、エチレン性不飽和カルボン酸単量体(A−1)0.1〜50質量%、(A−1)以外のエチレン性不飽和基を有する単量体(A−2)1〜99質量%、1分子中に少なくとも2個のエポキシ基を有する化合物(B)1〜50質量%である場合には、より粘着性、接着性、強靭性、耐久性及び耐水性などが優れた塗膜を形成する一液硬化型エマルション組成物とすることができる。
〔但し、上記(A−1)、(A−2)及び(B)の合計を100質量%とする。〕
また、上記(A−1)、(A−2)及び(B)の合計量のエポキシ基当量に対して、同カルボキシル基当量が0.05〜100である場合には、より、貯蔵安定性に優れるとともに、より粘着性、接着性、強靭性、耐久性、耐水性などが優れた塗膜を形成する一液硬化型エマルション組成物とすることができる。
また、本発明の一液硬化型エマルション組成物の製造方法によれば、貯蔵安定性に優れると共に、常温の乾燥でも粘着性、接着性、強靭性、耐久性及び耐水性などが優れ、経時での性能変化もない塗膜を得ることができる一液硬化型エマルション組成物を製造することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。本明細書において「(メタ)アクリル」とは「アクリル又はメタクリル」を意味し、「(メタ)アクリレート」とはアクリレート及びメタクリレートを意味する。また、「乾燥膜」とは、一液硬化型エマルション組成物を塗布等により塗膜等の膜を形成させた後、乾燥(硬化)が終了した後の膜を意味する。
本発明の一液硬化型エマルション組成物は、重合体粒子が水性媒体中に分散されてなるエマルション組成物であって、前記重合体粒子は、エチレン性不飽和カルボン酸単量体(A−1)及び(A−1)以外のエチレン性不飽和基を有する単量体(A−2)を、1分子中に少なくとも2個のエポキシ基を有する化合物(B)及び塩基性触媒(C)の存在下、乳化重合して製造されたものであることを特徴とする。
【0011】
上記エチレン性不飽和カルボン酸単量体(A−1)としては例えば、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、ビニル酢酸、アクリロキシプロピオン酸等の不飽和一塩基酸、マレイン酸、イタコン酸、フマル酸、メサコン酸、シトラコン酸、シクロヘキサンジカルボン酸等の不飽和二塩基酸、無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水シトラコン酸、無水テトラヒドロフタル酸等の不飽和酸無水物等が挙げられる。これらは、単独で用いてよいし2つ以上を組み合わせて用いてもよい。これらの中でも不飽和一塩基酸が得られた一液硬化型エマルション組成物の貯蔵安定性が良好なため好ましく、(メタ)アクリル酸は安価であり、他の各種単量体と共重合反応を起こしやすいので更に好ましい。
【0012】
上記(A−1)以外のエチレン性不飽和基を有する単量体(A−2)としては、炭素数1〜18のアルキル基を有するアクリル(メタ)アクリレート、シアノ基を有するビニル単量体、ヒドロキシル基を有するビニル単量体、芳香族ビニル単量体、脂肪族環系ビニル単量体、アミノ基を有するビニル単量体、アミド基を有するビニル単量体、アルコキシル基を有するビニル単量体、カルボニル基を有するビニル単量体、共役ジエン系単量体、マレイミド系単量体、ビニルエステル単量体、ビニルエーテル単量体、グリシジル基を有するビニル単量体、不飽和ジカルボン酸のモノアルキルエステル、不飽和ジカルボン酸のジアルキルエステル、不飽和アルコール、塩素含有ビニル単量体、多ビニル単量体、珪素含有基を有する単量体等が挙げられる。これらは、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0013】
炭素数1〜18のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレート単量体としては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、sec−ブチル(メタ)アクリレート、tert−ブチル(メタ)アクリレート、n−ペンチル(メタ)アクリレート、イソアミル(メタ)アクリレート、n−ヘキシル(メタ)アクリレート、2−メチルペンチル(メタ)アクリレート、n−オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n−ノニル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート、2−メチルオクチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらのアルキル(メタ)アクリレートは、単独で用いてよいし2つ以上を組み合わせて用いてもよい。
【0014】
シアノ基を有するビニル単量体としては、例えば、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、α−エチルアクリロニトリル、α−イソプロピルアクリロニトリル、α−クロロアクリロニトリル、α−フルオロアクリロニトリル等が挙げられる。これらは、単独で用いてよいし2つ以上を組み合わせて用いてもよい。
【0015】
ヒドロキシル基を有する単量体としては、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、6−ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、8−ヒドロキシオクチル(メタ)アクリレート、12−ヒドロキシラウリル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピルアクリレート、2−ヒドロキシ−3−p−メチルフェノキシプロピルアクリレート、2−ヒドロキシ−3−2−エチルヘキシロキシプロピルアクリレート、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等のポリアルキレングリコールのモノ(メタ)アクリル酸エステル、及びp−ヒドロキシスチレン、m−ヒドロキシスチレン、o−ヒドロキシスチレン、p−イソプロペニルフェノール、m−イソプロペニルフェノール、o−イソプロペニルフェノール等が挙げられる。これらのヒドロキシル基を有するビニル単量体は、単独であるいは2つ以上を組み合わせて用いることができる。
【0016】
芳香族ビニル単量体としては、スチレン、2−メチルスチレン、3−メチルスチレン、4−メチルスチレン、α−メチルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、2,4−ジイソプロピルスチレン、4−tert−ブチルスチレン、tert−ブトキシスチレン、ビニルトルエン、ジビニルトルエン、ベンジル(メタ)アクリレート、ビニルナフタレン、モノクロロスチレン、ジクロロスチレン、モノブロモスチレン、ジブロモスチレン、トリブロモスチレン、フルオロスチレン、スチレンスルホン酸及びその塩、α−メチルスチレンスルホン酸及びその塩等が挙げられる。これらは、単独であるいは2つ以上を組み合わせて用いることができる。
【0017】
脂肪族環系ビニル単量体としては、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、メチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、t−ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、シクロドデシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらは、単独であるいは2つ以上を組み合わせて用いることができる。
【0018】
アミノ基を有するビニル単量体としては、アミノエチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノメチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノメチル(メタ)アクリレート、2−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、2−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、2−(ジ−n−プロピルアミノ)エチル(メタ)アクリレート、2−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、2−ジエチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、2−(ジ−n−プロピルアミノ)プロピル(メタ)アクリレート、3−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、3−ジエチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、3−(ジ−n−プロピルアミノ)プロピル(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらは、単独であるいは2つ以上を組み合わせて用いることができる。
【0019】
アミド基を有するビニル単量体としては、(メタ)アクリルアミド、N−メチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、N,N−ブトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N−アルコキシメチル(メタ)アクリルアミド等が挙げられる。これらは、単独であるいは2つ以上を組み合わせて用いることができる。
【0020】
アルコキシル基を有するビニル単量体としては、2−メトキシエチル(メタ)アクリレート、2−エトキシエチル(メタ)アクリレート、2−(n−プロポキシ)エチル(メタ)アクリレート、2−(n−ブトキシ)エチル(メタ)アクリレート、3−メトキシプロピル(メタ)アクリレート、3−エトキシプロピル(メタ)アクリレート、2−(n−プロポキシ)プロピル(メタ)アクリレート、2−(n−ブトキシ)プロピル(メタ)アクリレート等が挙げられる。等が挙げられる。これらは、単独であるいは2つ以上を組み合わせて用いることができる。
【0021】
カルボニル基を有するビニル単量体としては、(メタ)アクロレイン、ジアセトン(メタ)アクリルアミド、ホルミスチロール、(メタ)アクリルオキシアルキルプロパナール、ジアセトン(メタ)ビアクリレート、アセトニル(メタ)アクリレート、アセトアセトキシエチル(メタ)アクリレート、アセトアセトキシアリルエステル、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート−アセチルアセテート、ブタンジオール−1,4−アクリレート−アセチルアクリレート、ビニルメチルケトン、ビニルエチルケトン、ビニルイソブチルケトン等が挙げられる。これらは、単独であるいは2つ以上を組み合わせて用いることができる。
【0022】
共役ジエン系単量体としては、1,3−ブタジエン、イソプレン(2−メチル−1,3−ブタジエン)、2,3−ジメチル−1,3ブタジエン、クロロプレン(2−クロロ−1,3−ブタジエン)等が挙げられる。これらは、単独であるいは2つ以上を組み合わせて用いることができる。
【0023】
マレイミド系単量体としては、マレイミド、N−メチルマレイミド、N−イソプロピルマレイミド、N−ブチルマレイミド、N−ドデシルマレイミド、N−フェニルマレイミド、N−(2−メチルフェニル)マレイミド、N−(4−メチルフェニル)マレイミド、N−(2、6−ジメチルフェニル)マレイミド、N−(2、6−ジエチルフェニル)マレイミド、N−(2−メトキシフェニル)マレイミド、N−ベンジルマレイミド、N−(4−ヒドロキシフェニル)マレイミド、N−ナフチルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミド等が挙げられる。これらは、単独であるいは2つ以上を組み合わせて用いることができる。
【0024】
ビニルエステル単量体としては、メチレン脂肪族モノカルボン酸エステル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ピバリン酸ビニル、酪酸ビニル、安息香酸ビニル、ギ酸ビニル、桂皮酸ビニル、バーサチック酸ビニル等が挙げられる。これらは、単独であるいは2つ以上を組み合わせて用いることができる。
【0025】
ビニルエーテル単量体としては、ビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテル、ビニル−n−ブチルエーテル、ビニルイソブチルエーテル、ビニルフェニルエーテル、ビニルシクロヘキシルエーテル等が挙げられる。これらは、単独であるいは2つ以上を組み合わせて用いることができる。
【0026】
グリシジル基を有するビニル単量体としては、(メタ)アクリル酸グリシジル、(メタ)アリルグリシジルテーテル、(メタ)アクリル酸β−メチルグリシジル、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリル酸グリシジル、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル(メタ)アクリルレート、3,4−エポキシシクロヘキシルエチル(メタ)アクリルレート、3,4−エポキシシクロヘキシルプロピル(メタ)アクリルレート等が挙げられる。これらは、単独であるいは2つ以上を組み合わせて用いることができる。
【0027】
不飽和ジカルボン酸のモノアルキルエステルとしては、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸、メサコン酸、無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水シトラコン酸、無水テトラヒドロフタル酸等のモノアルキルエステルが挙げられる。これらは、単独であるいは2つ以上を組み合わせて用いることができる。
不飽和ジカルボン酸のジアルキルエステル等としては、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸、メサコン酸、無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水シトラコン酸、無水テトラヒドロフタル酸等のジアルキルエステルが挙げられる。これらは、単独であるいは2つ以上を組み合わせて用いることができる。
【0028】
不飽和アルコールとしては、アリルアルコール、メタリルアルコール、3−メチル−3−ブテン−1−オール、3−メチル−2−ブテン−1−オール、2−メチル−3−ブテン−2−オール等が挙げられる。これらは、単独であるいは2つ以上を組み合わせて用いることができる。
【0029】
塩素含有ビニル単量体としては、塩化ビニル、塩化ビニリデン等が挙げられる。これらは、単独であるいは2つ以上を組み合わせて用いることができる。
【0030】
多ビニル単量体としては、アリル(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,3−ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、グリセロールジ(メタ)アクリレート、1,1,1−トリスヒドロキシメチルエタンジ(メタ)アクリレート、1,1,1−トリスヒドロキシメチルエタントリ(メタ)アクリレート、1,1,1−トリスヒドロキシメチルプロパントリ(メタ)アクリレート、トリアリルイソシアヌレート、ジアリルテレフタレート、ジビニルベンゼン等が挙げられる。これらは、単独であるいは2つ以上を組み合わせて用いることができる。
【0031】
珪素含有基を有する単量体としては、ビニルトリクロロシラン、ビニルトリブロモシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリ−n−プロポキシシラン、ビニルトリ−i−プロポキシシラン、ビニルトリ−n−ブトキシシラン、ビニルトリス(2−ヒドロキシメトキシエトキシ)シラン、ビニルトリアセトキシシラン、ビニルジエトキシシラノール、ビニルエトキシシラジオール、ビニルメチルジエトキシシラン、ビニルジメチツエトキシシラン、ビニルメチルジアセトキシシラン、アリルトリメトキシシラン、アリルトリエトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリス(2−メトキシエトキシ)シラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルジメチルエトキシシラン、3−アクリロキシプロピルジメトキシシラン、2−アクリルアミドエチルトリエトキシシラン等が挙げられる。これらは、単独であるいは2つ以上を組み合わせて用いることができる。
【0032】
上記単量体(A−2)のうち、好ましくは、炭素数1〜18のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレート単量体、ヒドロキシル基を有する単量体、芳香族ビニル単量体、脂肪族環系ビニル単量体及びシアノ基を有するビニル単量体である。これらの単量体を用いることにより、安価に、貯蔵安定性、密着性、柔軟性、耐久性、凝集力に優れる一液硬化型エマルション組成物とすることができる。
【0033】
上記1分子中に少なくとも2個のエポキシ基を有する化合物(B)としては、例えば、グリシジルエーテル類、グリシジルエステル類、グリシジルアミン類、線状脂肪族エポキサイド類、脂肪族エポキサイド類などが挙げられる。
【0034】
グリシジルエーテル類としては、芳香族グリシジルエーテル、脂肪族グリシジルエーテルが挙げられ、芳香族グリシジルエーテルとしては例えばビスフェノールのジグリシジルエーテル、フェノールノボラックのポリグリシジルエーテル、ビフェノールのジグリシジルエーテルが挙げられる。該ビスフェノールのジグリシジルエーテルとしては、例えばビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールAD、ビスフェノールS、テトラメチルビスフェノールA、テトラブロモビスフェノールAなどのジグリシジルエーテルが挙げられ、フェノールノボラックのポリグリシジルエーテルとしては、例えばフェノールノボラック、クレゾールノボラック、ブロム化フェノールノボラックなどのポリグリシジルエーテルが挙げられ、ビフェノールのジグリシジルエーテルとしては例えばビフェノール、テトラメチルビフェノールのジグリシジルエーテルが挙げられる。脂肪族グリシジルエーテルとしては、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、グリセリン、テトラメチレングリコールなどのグリシジルエーテルが挙げられる。
【0035】
グリシジルエステル類としては、芳香族グリシジルエステル、脂環式グリシジルエステルなどが挙げられる。芳香族グリシジルエステルとしては、例えばフタル酸、テレフタル酸、イソフタル酸などのジグリシジルエステルが挙げられ、脂環式グリシジルエステルとしては例えばヘキサヒドロフタル酸、テトラヒドロフタル酸、ダイマー酸などのグリシジルエステルが挙げられる。
【0036】
グリシジルアミン類としては、例えばテトラグリシジルジアミノジフェニルメタン、テトラグリシジルメタキシリレンジアミン、トリグリシジルアミノフェールなどが挙げられる。線状脂肪族エポキサイド類としては例えば、エポキシ化ポリブタジエン、エポキシ化大豆油などが挙げられ、脂環族エポキサイドとしては例えば3,4エポキシ−6−メチルシクロヘキシルメチルカルボキシレート、3,4エポキシシクロヘキシルメチルカルボキシレート、3,4−エポキシシクロヘキセニルメチル−3’,4’−エポキシシクロヘキセンカルボキシレートなどが挙げられる。エポキシ基を有する化合物は単独で使用してもよく2種類以上を組み合わせてもよい。
【0037】
エポキシ基を有する化合物(B)の重量平均分子量(Mw)は特に限定されないが、好ましくは、100〜1000であり、より好ましくは150〜800であり、さらに好ましくは200〜500である。エポキシ基を有する化合物(B)の重量平均分子量が上記範囲にあると、上記単量体群への溶解性が良いため、重合安定性及び貯蔵安定性に優れた一液硬化型エマルション組成物とすることができる。
【0038】
上記エチレン性不飽和カルボン酸単量体(A−1)、(A−1)以外のエチレン性不飽和基を有する単量体(A−2)、1分子中に少なくとも2個のエポキシ基を有する化合物(B)の含有量は特に限定されないが、好ましくは(A−1)が0.1〜50質量%、(A−2)が1〜99質量%、(B)が1〜50質量%であり、より好ましくは(A−1)が0.3〜40質量%、(A−2)が20〜97質量%、(B)が3〜40質量%であり、更に好ましくは(A−1)が0.5〜30質量%、(A−2)が40〜95質量%、(B)が5〜30質量%である。〔但し、(A−1)、(A−2)及び(B)の合計を100質量%とする。〕(A−1)が0.1質量%より少ないと貯蔵安定性や耐久性が低下することがあり、50質量%より多いと耐水性や粘着性が低下してしまうことがある。また(A−2)が1質量%より少ないと貯蔵安定性や耐水性が低下することがあり、99質量%より多いと密着性や耐久性が低下してしまうことがある。また(B)が1質量%より少ないと密着性が低下することがあり、50質量%より多いと貯蔵安定性が低下することがある。
【0039】
上記(A−1)、(A−2)及び(B)の合計量のエポキシ基当量に対する、同カルボキシル基当量の比は特に限定されないが、好ましくは0.05〜100であり、より好ましくは0.1〜50、更に好ましくは0.2〜20である。エポキシ基当量に対するカルボキシル基当量の比が上記範囲内にあると、貯蔵安定性に優れた一液硬化型エマルション組成物とすることができる。また、当該エポキシ基とカルボキシル基の当量比は、用途に応じて調整することができる。例えば、本発明の一液硬化型エマルション組成物を粘着剤として使用する場合は、当該当量比は0.05〜20であることが好ましい。また、フロアーポリッシュ用として使用する場合には、当該当量比は0.5〜100であることが好ましい。
なお、エポキシ基を有する化合物(B)のエポキシ当量は、JIS K 7236の方法により測定することができる。また、上記(A−1)、(A−2)及び(B)の合計量のエポキシ基当量及びカルボキシル基当量は、下記式により求めた値である。
エポキシ基当量[meq]={(B)の質量%}÷{(B)のエポキシ当量}×1000
カルボキシル基当量[meq]={(A−1)の質量%}÷{(A−1)の分子量}×1000
【0040】
上記塩基性触媒(C)は、エポキシ基とカルボキシル基を反応させるための触媒である。塩基性触媒(C)としては、3級アミン化合物、4級アンモニウム化合物、3級ホスフィン化合物、4級ホスホニウム塩、イミダゾール化合物、水酸化アルカリ金属化合物及び水酸化アルカリ土類金属化合物等が挙げられる。これらは、単独であるいは2つ以上を組み合わせて用いることができる。
【0041】
3級アミン化合物としては、例えば、トリエチルアミン、トリ−n−プロピルアミン、トリイソプロピルアミン、トリ−n−ブチルアミン、トリ−sec−ブチルアミン、トリ−n−ヘキシルアミン、ジメチルベンジルアミン、ジエチルベンジルアミン、トリベンジルアミン、1,5−ジアザビシクロ[4.3.0]ノナ−5−エン、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ−7−エンなどを挙げることができる。
【0042】
4級アンモニウム化合物としては、例えば、水酸化テトラメチルアンモニウム、水酸化テトラエチルアンモニウム、水酸化テトラ−n−プロピルアンモニウム、水酸化テトラ−n−ブチルアンモニウム、水酸化テトラペンチルアンモニウム、水酸化トリオクチルメチルアンモニウム、水酸化トリメチルセチルアンモニウム、水酸化テトラヘキシルアンモニウム、水酸化トリメチルベンジルアンモニウム、水酸化トリエチルベンジルアンモニウム、水酸化トリブチルベンジルアンモニウム、水酸化テトラベンジルアンモニウム、水酸化セチルピリジウム等の水酸化4級アンモニウム化合物、塩化テトラメチルアンモニウム、塩化テトラエチルアンモニウム、塩化テトラ−n−プロピルアンモニウム、塩化テトラ−n−ブチルアンモニウム、塩化テトラペンチルアンモニウム、塩化トリオクチルメチルアンモニウム、塩化トリメチルセチルアンモニウム、塩化テトラヘキシルアンモニウム、塩化トリメチルベンジルアンモニウム、塩化トリエチルベンジルアンモニウム、塩化トリブチルベンジルアンモニウム、塩化テトラベンジルアンモニウム、塩化セチルピリジウム、塩化N−ベンジルシンコジウム、塩化N−ベンジルシンコジウム、臭化N−[4−(トリフルオロメチル)ベンジルシンコジウム]等の塩化4級アンモニウム化合物、臭化テトラメチルアンモニウム、臭化テトラエチルアンモニウム、臭化テトラ−n−プロピルアンモニウム、臭化テトラ−n−ブチルアンモニウム、臭化テトラペンチルアンモニウム、臭化トリオクチルメチルアンモニウム、臭化トリメチルセチルアンモニウム、臭化テトラヘキシルアンモニウム、臭化トリメチルベンジルアンモニウム、臭化トリエチルベンジルアンモニウム、臭化トリブチルベンジルアンモニウム、臭化テトラベンジルアンモニウム、臭化セチルピリジウム、臭化N−ベンジルシンコジウム、臭化N−[4−(トリフルオロメチル)ベンジルシンコジウム]、(R,R)−3,4,5−トリフルオロフェニル−XAS−ブロミド、(R,R)−3,5−ビスフルオロメチルフェニル−XAS−ブロミド等の臭化4級アンモニウム化合物、沃化テトラメチルアンモニウム、沃化テトラエチルアンモニウム、沃化テトラ−n−プロピルアンモニウム、沃化テトラ−n−ブチルアンモニウム、沃化テトラペンチルアンモニウム、沃化トリオクチルメチルアンモニウム、沃化トリメチルセチルアンモニウム、沃化テトラヘキシルアンモニウム、沃化トリメチルベンジルアンモニウム、沃化トリエチルベンジルアンモニウム、沃化トリブチルベンジルアンモニウム、沃化テトラベンジルアンモニウム、水酸化セチルピリジウム等の沃化4級アンモニウム化合物などを挙げることができる。
【0043】
3級ホスフィン化合物としては、例えば、トリメチルホスフィン、トリエチルホスフィン、トリ−n−ブチルホスフィン、トリ−tert−ブチルホスフィン、トリノニルホスフィン、トリ−n−オクチルホスフィン、トリフェニルホスフィン、トリ−o−トリルホスフィン、トリ−m−トリルホスフィン、トリ−p−トリルホスフィン、トリス(p−メトキシフェニル)ホスフィン、ジフェニルシクロヘキシルホスフィン、トリシクロヘキシルホスフィン等が挙げられる。
【0044】
4級ホスホニウム化合物としては、例えば、水酸化テトラメチルホスホニウム、水酸化テトラブチルホスホニウム、水酸化テトラプロピルホスホニウム、水酸化トリオクチルメチルホスホニウム、水酸化トリオクチルエチルスルホニウム、水酸化テトラヘキスルホスホニウム、水酸化テトラフェニルホスホニウム、水酸化メチルトリフェニルホスホニウム、水酸化エチルトリフェニルホスホウム、水酸化ベンジルトリフェニルホスホニウム等の水酸化4級ホスホニウム化合物、塩化テトラメチルホスホニウム、塩化テトラブチルホスホニウム、塩化テトラプロピルホスホニウム、塩化トリオクチルメチルホスホニウム、塩化トリオクチルエチルスルホニウム、塩化テトラヘキスルホスホニウム、塩化テトラフェニルホスホニウム、塩化メチルトリフェニルホスホニウム、塩化エチルトリフェニルホスホウム、塩化ベンジルトリフェニルホスホニウム等の塩化4級ホスホニウム化合物、臭化テトラメチルホスホニウム、臭化テトラブチルホスホニウム、臭化テトラプロピルホスホニウム、臭化トリオクチルメチルホスホニウム、臭化トリオクチルエチルスルホニウム、臭化テトラヘキスルホスホニウム、臭化テトラフェニルホスホニウム、臭化メチルトリフェニルホスホニウム、臭化エチルトリフェニルホスホウム、臭化ベンジルトリフェニルホスホニウム等の臭化4級ホスホニウム化合物等のハロゲン化4級ホスホニウム化合物、エチルトリフェニルホスホニウムアセテート等の酢酸4級ホスホニウム化合物等が挙げられる。
【0045】
イミダゾール化合物としては、2−メチルイミダゾール、2−エチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、1−(2’,4’,6’−トリメチルベンゾイル)−2−メチルイミダゾール、1−(2’,4’,6’−トリメチルベンゾイル)−2−メチルイミダゾール、1−(2’,4’,6’−トリメチルベンゾイル)−2−フェニルイミダゾール等が挙げられる。
【0046】
水酸化アルカリ金属化合物としては、例えば、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等を挙げられる。また、水酸化アルカリ土類金属化合物としては、例えば、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化バリウム等が挙げられる。
【0047】
これらの塩基性触媒(C)のうち、好ましい化合物としては、4級アンモニウム塩、4級ホスホニウム塩又は3級ホスフィン化合物である。これらの塩基性触媒を用いることにより、エポキシ基とカルボキシル基の反応性を制御することが容易となり、より貯蔵安定性、経時での性能変化の少ない塗膜を形成する一液硬化型エマルション組成物とすることができる。
【0048】
塩基性触媒(C)の使用量は特に限定されないが、上記(A−1)、(A−2)及び(B)の合計を100質量部としたときに、通常0.01〜5.0質量部であり、好ましくは0.03〜1.0質量部であり、より好ましくは0.05〜0.5質量部である。塩基性触媒の使用量が0.01質量部より少ないとエポキシ基とカルボキシル基の反応が遅くなり、貯蔵安定性の低下、経時での性能変化が起こることがあり、5.0質量部より多いと、エポキシ基とカルボキシル基の反応が早すぎて重合安定性が低下することがある。
【0049】
本発明における一液硬化型エマルション組成物の製造は、従来公知の乳化重合技術、すなわち重合可能な二重結合を有する単量体、ラジカル重合開始剤、水性媒体、乳化剤の存在下によって行われる。本発明の場合、例えばエポキシ基を有する化合物(B)とエチレン性不飽和基を有する単量体とを予め室温または加温させて十分に攪拌を行うことによって均一に溶解させ、これに乳化剤、分散剤、保護コロイド等と水性媒体及び塩基性触媒を加えて乳化分散液とした後、ラジカル重合開始剤を加えて重合する方法が挙げられる。この方法以外にも例えば、エポキシ基を有する化合物(B)とエチレン性不飽和基を有する単量体を別々に乳化分散させ重合する方法、エポキシ基を有する化合物(B)のみを乳化分散させエチレン性不飽和基を有する単量体を直接重合する方法等が挙げられ、またラジカル重合開始剤の添加方法も乳化分散液と一緒に添加させたり、個別に添加させたりもできる。また、乳化重合時にエポキシ基を有する化合物(B)の一部もしくは全部がエチレン性不飽和基を有する単量体と反応することが好ましい。尚、この水性媒体としては、水のみを、あるいは、水と、水溶性有機溶媒(アルコール、ケトン、エーテル、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド等)とからなる混合物を用いることができる。この水性媒体が混合物である場合、水の含有量は、水性媒体を100質量%としたときに、通常、30質量%以上である(以下、「水性媒体」に関し同様である)。
【0050】
使用する乳化剤としては、通常の乳化重合の際に用いられる公知の乳化剤を使用することができる。例えば、アニオン性乳化剤、ノニオン性乳化剤、カチオン性乳化剤、両性イオン性乳化剤等の各種の乳化剤を用いることができる。アニオン性乳化剤としては、ジアルキルスルホコハク酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキル硫酸塩、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸塩、ポリオキシエチレンアルキルジフェニルエーテル硫酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩、アルキルジフェニルエーテルジスルホン酸塩、高分子乳化剤等が挙げられる。更に、ノニオン性乳化剤としては、ポリオキシエチレン高級アルコールエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルジフェニルエーテル、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレンブロック共重合体、アセチレンジオール系乳化剤、ソルビタン高級脂肪酸エステル類、ポリオキシエチレンソルビタン高級脂肪酸エステル類、ポリオキシエチレン高級脂肪酸エステル類、グリセリン高級脂肪酸エステル類、ポリカルボン酸系高分子乳化剤、ポリビニルアルコール等が挙げられる。また、カチオン性乳化剤としては、アルキル(アミド)ベタイン、アルキルジミチルアミンオキシド、特殊乳化剤として、フッ素系乳化剤やシリコーン系乳化剤等が挙げられる。これらの乳化剤は、1種のみ用いてもよく、2種以上を併用することもできる。
【0051】
また、上記で挙げた非反応性の乳化剤以外にも反応性の乳化剤を使用することができる。この反応性乳化剤とは、エチレン性不飽和基等の重合性官能基を有する乳化剤である。反応性乳化剤としては、反応性基を有する乳化剤であれば特に限定されないが、例えば下記式(1)〜(12)に示される乳化剤が挙げられる。これらは、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。反応性乳化剤を使用して製造した場合は、耐水性に優れる硬化物が得られる一液硬化型エマルション組成物とすることができる。
【0052】
【化1】

【化2】

【化3】

【化4】

【化5】

【化6】

【化7】

【化8】

【化9】

【化10】

【化11】

【化12】

上記一般式(1)〜(12)において、R1はアルキル基、R2は水素原子又はメチル基、R3はアルキレン基、n、mは1以上の整数、l、kは1以上の整数(l+k=3)、Xは水素原子又はSO3NH4、SO3Na、YはSO3NH4又はSO3Naのいずれかである。
【0053】
上記乳化剤の使用量は、その種類、重合条件等により選択されるが、上記単量体を100質量部としたときに、通常、0.1〜50質量部であり、0.3〜30質量部、特に0.5〜20質量部とすることができる。
【0054】
また、重合工程において、単量体の重合は、過酸化物及びアゾ化合物等のラジカル重合開始剤を用いて行われる。また、過酸化物と、アスコルビン酸、アスコルビン酸ナトリウム、エリソルビン酸ナトリウム、酒石酸、クエン酸、ホルムアルデヒドスルホキシラートの金属塩、チオ硫酸ナトリウム、亜硫酸ナトリウム、重亜硫酸ナトリウム、メタ重亜硫酸ナトリウム、塩化第二鉄等の還元剤とを併用したレドックス重合開始系によっても重合させることができる。
【0055】
過酸化物としては、過酸化水素;過硫酸ナトリウム、過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウム等の過硫酸塩などの無機過酸化物が挙げられる。更に、クメンハイドロパーオキサイド、パラメンタンハイドロパーオキサイド、tert−ブチルハイドロパーオキサイド等のハイドロパーオキサイド;tert−ブチルクミルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド等のジアルキルパーオキサイド;ジアシルパーオキサイド;tert−ブチルパーオキシラウレート、tert−ブチルパーオキシベンゾエート等のパーオキシエステル;過酸化ベンゾイル、過酸化ラウロイル、過酢酸、過コハク酸等の有機過酸化物が挙げられる。これらの過酸化物は、1種のみ用いてもよく、2種以上を併用することもできる。
【0056】
アゾ化合物としては、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、2,2’−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)ジヒドロクロライド、2,2’−アゾビス〔N−(2−カルボキシエチル)−2−メチルプロピオンジアミン〕四水和塩等が挙げられる。これらのアゾ化合物は、1種のみ用いてもよく、2種以上を併用することもできる。
【0057】
上記ラジカル重合開始剤の使用量は、その種類、重合条件等により選択されるが、上記単量体を100質量部としたときに、通常、0.01〜10質量部である。
【0058】
また、上記重合工程においては、得られるエマルション組成物の用途等に応じて、連鎖移動剤(分子量調整剤)等を用いることができる。
この連鎖移動剤としては、メルカプト基含有化合物(エタンチオール、ブタンチオール、ドデカンチオール、ベンゼンチオール、トルエンチオール、α−トルエンチオール、フェネチルメルカプタン、メルカプトエタノール、3−メルカプトプロパノール、チオグリセリン、チオグリコール酸、2−メルカプトプロピオン酸、3−メルカプトプロピオン酸、α−メルカプトイソ酪酸、メルカプトプロピオン酸メチル、メルカプトプロピオン酸エチル、チオ酢酸、チオリンゴ酸、チオサリチル酸、オクチルメルカプタン、n−ドデシルメルカプタン、tert−ドデシルメルカプタン、n−ヘキサデシルメルカプタン、n−テトラデシルメルカプタン、tert−テトラデシルメルカプタン等)、キサントゲンジスルフィド化合物(ジメチルキサントゲンジスルフィド、ジエチルキサントゲンジスルフィド、ジイソプロピルキサントゲンジスルフィド等)、チウラムジスルフィド化合物(テトラメチルチウラムジスルフィド、テトラエチルチウラムジスルフィド、テトラブチルチウラムジスルフィド等)、ハロゲン化炭化水素(四塩化炭素、臭化エチレン等)、芳香族炭化水素(ペンタフェニルエタン、α−メチルスチレンダイマー等)等が挙げられる。これらは、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0059】
上記重合工程における重合温度は、単量体の種類、ラジカル重合開始剤の種類等により適宜選択されるが、通常、10〜100℃であり、30〜98℃、50〜95℃とすることができる。
【0060】
上記重合工程における水性媒体中のpHは単量体の種類、乳化剤、ラジカル開始剤の種類により適宜選択されるが、通常1〜10であり、1〜8、1〜5とすることができる。更に上記重合工程の終了後、得られる一液硬化型エマルション組成物の用途等に応じて、一液硬化型エマルション組成物のpHを調整するpH調整工程を備えることができる。
pH調整工程において、反応系のpHを調整する際には、通常、塩基性材料が用いられる。この塩基性材料としては、アルカリ金属化合物(水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等)、アルカリ土類金属化合物(水酸化カルシウム、炭酸カルシウム等)、アンモニア、有機アミン化合物(モノメチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、モノエチルアミン、ジエチルアミン、メチルエチルアミン、トリエチルアミン、モノプロピルアミン、ジメチルプロピルアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン等)等が挙げられる。これらは、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。尚、これらの化合物は、単独で用いてもよいが、水に溶解させてなる水溶液として用いてもよい。また、これらのうち、アンモニアが特に好ましい。
上記pH調整工程において、反応系のpHを調整するときの反応系の温度は、特に限定されない。この温度は、通常、上記重合工程終了時の反応系の温度以下とすることができる。
【0061】
上記乳化重合により得られる一液硬化型エマルション組成物の固形分濃度は、適宜の固形分濃度とすればよい。エマルション組成物の固形分濃度は、通常、10〜90質量%であり、好ましくは20〜85質量%であり、より好ましくは30〜80質量%である。
また、一液硬化型エマルション組成物の粘度は、特に限定されず、適宜の粘度とすればよい。温度25℃おけるエマルション組成物の粘度は、通常、1〜5000mPa・sであり、好ましくは5〜4000mPa・sであり、より好ましくは10〜3000mPa・sである。この一液硬化型エマルション組成物の粘度は、BM型粘度計により測定することができる。
【0062】
また、上記重合体粒子の平均粒子径は特に限定されないが、用途に応じて適宜調整すれば良く、好ましくは5μm以下であり、より好ましくは0.01〜3μmであり、更に好ましくは0.03〜2μmである。平均粒子径が、上記範囲内にあると、貯蔵安定性に優れるエマルション組成物とすることができる。
【0063】
共重合体のガラス転移温度(Tg)は、特に限定されないが、用途に応じて適宜調整すれば良く、好ましくは−80℃〜120℃であり、より好ましくは−80℃〜100℃である。このガラス転移温度(Tg)は示差走査熱量計(DSC)により測定できる。
【0064】
本発明の一液硬化型エマルション組成物はそのまま用いても良いが、含有しているエポキシ基を有する化合物(B)を硬化させるために必要に応じて硬化剤を配合しても良い。硬化剤としては例えば、ポリアミン系、酸無水物系、フェノール樹脂、ポリメルカプタン、ルイス酸錯体等が挙げられる。ポリアミン系硬化剤としては脂肪族ポリアミン、脂環族ポリアミン、芳香族ポリアミン、ポリアミド、第三級アミンが挙げられ、脂肪族ポリアミンとしては例えば、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミンやこれらの変性品等が挙げられる。脂環族ポリアミンとしては例えば、イソホロンジアミン、メンタンジアミン、N−アミノエチルピペラジン、ジアミノジシクロヘキシルメタンやこれらの変性品等が挙げられる。芳香族ポリアミンとしては例えば、m−キシリレンジアミン、ジアミノジフェニルメタン、m−フェニレンジアミン、ジアミノジフェニルスルホンやこれらの変性品等が挙げられる。ポリアミドとしては例えばダイマー酸等のジカルボン酸と先のポリアミンとの縮合品が挙げられる。第三級アミンとしては例えば、ジメチルベンジルアミン、2,4,6−トリスジメチルアミノメチルフェノール等の第三級アミノ基含有化合物やこれらの変性品や、イミダゾール、2−メチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾールなどのイミダゾール化合物やこれらの変性品等が挙げられる。その他ポリアミンとしてはジシアンジミド、アジピン酸ジヒドラジッド等が挙げられる。酸無水物としては例えば、1官能性として無水フタル酸、無水テトラヒドロフタル酸、無水ヘキサヒドロフタル酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸やこれらの変性品が挙げられ、2官能性として無水ピロメリット酸、無水ベンゾフェノンテトラカルボン酸やこれらの変性品が挙げられる。フェノール樹脂としては例えば、ノボラック型のフェノール樹脂、レゾール型のフェノール樹脂等が挙げられる、ポリメルカプタンとしては例えば、チオグリコール酸と多価アルコールとの縮合物やポリサルファイド等が挙げられる。ルイス酸錯体としては例えば三フッ化ホウ素のアミン錯体などが挙げられる。これらの硬化剤は一種または二種以上と組み合わせてもよい。好ましくはポリアミン系硬化剤である。ポリアミン系硬化剤の添加量は、特に限定されないが、含有しているエポキシ基の当量に対して0〜2当量であることが好ましい。
【0065】
本発明の一液硬化型エマルション組成物の硬化は常温(通常10〜30℃)又は加熱(通常40〜150℃)により水を揮散した後、常温で硬化を進めてもよく、また加熱(通常40〜200℃)により硬化を進めてもよい。また、水を揮散せずに被着体を張り合わせ、常温又は加熱(通常40〜200℃)により硬化を進めてもよい。
【0066】
一液硬化型エマルション組成物は、本発明の目的が達成される限り、更に、他の添加剤を含有することができる。この添加剤としては、増粘剤、消泡剤、顔料、pH調整剤、粘着付与剤、架橋剤、可塑剤、造膜助剤、アルカリ可溶性樹脂、滑り調整剤、湿潤剤、安定剤、防腐剤、防カビ剤、充填剤、凍結防止剤、溶剤、分散剤、沈降防止剤、帯電防止剤、抗菌剤、香料、紫外線吸収剤、紫外線安定剤、層状粘度鉱物、アルデヒド捕捉剤、酸化防止剤、繊維助剤、洗浄剤、レベリング剤、均染剤等、粘接着剤、水性塗料、フロアーポリッシュ、建築内外装用塗料・塗材・防水材、インク、繊維・紙等の含浸剤、シーリング剤、コーティング剤等に一般的に添加される添加剤(材)が挙げられる。
【0067】
上記増粘剤としては、例えば、アクリル系増粘剤、ウレタン系増粘剤、ポリエーテル系増粘剤、ポリビニルアルコール類、セルロース誘導体、ベントナイト、ヘクトライト、アパタルジャイトなどの無機系増粘剤等が挙げられる。これらは1種のみ含有されていても、2種以上が含有されていてもよい。
【0068】
上記消泡剤成分としては、例えば、シリコーン系、油脂系、脂肪酸系、脂肪酸エステル系及びリン酸エステル系等の消泡剤、これらの消泡剤の構造の一部が変性されたもの等が挙げられる。これらは1種のみ含有されていても、2種以上が含有されていてもよい。また、2種以上が含有されている場合、シリコーン系、油脂系、脂肪酸系、脂肪酸エステル系及びリン酸エステル系のいずれの消泡剤成分の組み合わせであってもよい。
【0069】
上記顔料としては、有機化合物(有機顔料)及び無機化合物(無機顔料)のいずれでもよい。有機顔料としては、不溶性アゾ顔料、縮合アゾ顔料、アゾレーキ、キレートアゾ顔料等のアゾ顔料;フタロシアニン顔料、ペリレン顔料、ペリノン顔料、アントラキノン顔料、キナクリドン顔料、ジオキサジン顔料、チオインジゴ顔料、イソインドリノン顔料、キノフタロン顔料等の多環式顔料;染料レーキ、ニトロ顔料、ニトロソ顔料、アニリンブラック、蛍光顔料等が挙げられる。これらのうち、アゾ顔料、フタロシアニン顔料、多環式顔料が好ましい。また、無機顔料としては、酸化チタン、カーボンブラック、べんがら、カドミウムレッド、モリブデンオレンジ、黄色酸化鉄、黄鉛、チタンイエロー、クロムグリーン、酸化クロム、コバルトブルー、マンガンバイオレット等が挙げられる。これらの顔料は1種のみ用いてもよく、2種以上を併用することもできる。
【0070】
上記粘着付与剤としては、例えば、クマロン・インデン樹脂、テルペン樹脂、テルペン・フェノール樹脂、ロジン樹脂、p−t−ブチルフェノール・アセチレン樹脂、フェノール・ホルムアルデヒド樹脂、キシレン・ホルムアルデヒド樹脂、石油系炭化水素樹脂、水添炭化水素樹脂、テレピン系樹脂等が挙げられる。これらは1種のみ含有されていても、2種以上が含有されていてもよい。
【0071】
上記架橋剤としては例えば、多価金属化合物、カルボジイミド系架橋剤、イソシアネート系架橋剤、エポキシ系架橋剤、オキサゾリン系架橋剤、アジリジン系架橋剤、ヒドラジン系架橋剤、シランカップリング剤などが挙げられる。
多価金属化合物としては、例えば多価金属イオンや多価金属イオンのアンモニア及びアミン錯体(及び特にNH3配位したもの)等が挙げられる。上記多価イオンとしては、水中に少なくとも1質量%程度の顕著な溶解性を有する酸化物、水酸化物または塩基性塩、酸性塩または中性塩の形態で組成物に添加することができる、ベリリウム、カドミウム、銅、カルシウム、マグネシウム、亜鉛、ジルコニウム、バリウム、ストロンチウム、アルミニウム、ビスマス、アンチモン、鉛、コバルト、ニッケル、鉄または多の多価金属イオン等が挙げられる。上記多価金属イオンのアンモニア及びアミン錯体の錯体形成が可能なアミンとしては、例えば、モルホリン、モノエタノールアミン、ジエチルアミノエタノール及びエチレンジアミン等が挙げられる。また、アルカリ性pH範囲で可溶化可能な有機酸の多価金属錯体(塩)も用いることが出来る。また、酢酸イオン、グルタミン酸イオン、ギ酸イオン、炭酸イオン、サリチル酸イオン、グルコール酸イオン、オクトン酸イオン、安息香酸イオン、グルコン酸イオン、蓚酸イオン、乳酸イオン等の陰イオンも用いられる。また、配位子がグリシン、アラニン等の二座アミノ酸である多価金属キレートも用いられる。
カルボジイミド系架橋剤としては、その分子中にカルボジイミド基(−N=C=N−)を2個以上含有する化合物であって、該カルボジイミド系架橋剤の市販品としては、例えば、「カルボジライトV−02」、「カルボジライトV−02−L2」、「カルボジライトV−04」、「カルボジライトE−01」、「カルボジライトE−02」(以上いずれも商品名、日清紡社製)等を挙げることができる。
イソシアネート系架橋剤としては、1分子中に2個以上のイソシアネート基を有する化合物であり、例えば、具体的には、脂肪族ポリイソシアネート、脂環族ポリイソシアネート、芳香脂肪族ポリイソシアネート、芳香族ポリイソシアネート及びこれらポリイソシアネートの誘導体などをあげることができる。
エポキシ系架橋剤としては、1分子中に2個以上のエポキシ基を有する化合物であり、具体的には、ビス(3,4−エポキシシクロヘキシルメチル)アジペート等のジエポキシ化合物、エポキシ基含有アクリル樹脂等をあげることができる。
オキサゾリン系架橋剤としては、2−イソプロペニル−2−オキサゾリン、2−ビニル−2−オキサゾリン等のオキサゾリン基含有エチレン性不飽和単量体を公知の重合方法を用いて単独重合させたもの、或いは、他の不飽和単量体と共重合させたものを使用することができ、市販品としては、商品名「エポクロスWS500」、「エポクロスK201E」(以上、日本触媒社製)等を挙げることができる。
アジリジン系架橋剤としては、1分子内に2個上のアジリジン環を有する化合物であり、例えば、トリメチロールプロパン−トリ3−[(1−アジリジニル)プロピオネート]、ジフェニルメタン−ビス−4,4’−N,N’−ジエチレンウレア、テトラメチロールメタン−トリ−β−アジリジニルプロピオネート、N,N’−トルエン−2,4−ビス−(1−アジリジンカルボキシアミド)、N,N’−ヘキサメチレン−1,6−ビス−(1−アジリジンカルボキシアミド)が挙げられる。市販品としては、例えば、日本触媒社製の、ケミタイトPZ−33、ケミタイトDZ−22Eが挙げられる。
ヒドラジン系架橋剤とは、分子内にヒドラジド基を2個以上含有する化合物であり、例えば、カルボヒドラジドや蓚酸ジヒドラジド、マロン酸ジヒドラジド、コハク酸ジヒドラジド、グルタル酸ジヒドラジド、アジピン酸ジヒドラジド、セバシン酸ジヒドラジド、ドデカン二酸ジヒドラジド、イソフタル酸ジヒドラジド、クエン酸ジヒドラジド、1,2,4−ベンゼントリジヒドラジド、チオカルボジヒドラジド、大塚化学社製の商品名「APA−M950」、「APA−M980」、「APA−P250」、「APA−P280」などのヒドラジドポリマー等が挙げられる。
シランカップリング剤としては、例えば、β−(3、4エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−アミノプロピルエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルシラン、N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルメチルトリメトキシシラン、イソシアネート官能性シラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロオピルメチルジエトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、N−[2−(ビニルベンジルアミノ)エチル]−3−アミノプロピルトリメトキシシラン等が挙げられる。
また、架橋剤は、例えば、油溶性または水溶性の架橋剤などが用いられ、あるいは、水分散型(エマルションタイプ)として調製された架橋剤も用いられる。これらは1種のみ含有されていても、2種以上が含有されていてもよい。
【0072】
可塑剤としては、クエン酸アセチルトリブチル等のクエン酸エステル類、リン酸トリブチル、リン酸トリ2−エチルヘキシル、リン酸トリフェニル、リン酸トリクレシル、リン酸トリブトキシエチル等のリン酸エステル類、アジピン酸ジブチル、アジピン酸ジ2−エチルヘキシル、アジピン酸ジ−n−アルキル610、アゼライン酸ジ2−エチルヘキシル、セバシン酸ジブチル、セバシン酸ジ−2−エチルヘキシル等の脂肪族二塩基酸エステル類、ペンタジオールのイソブチルエステル誘導体、塩素化パラフィン等を用いることができる。
【0073】
造膜助剤としては、エタノール、イソプロピルアルコール等のアルコール類、エチレングリコール等の多価アルコール類、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノ−2−メチルヘキシルエーテル、ジエチレングリコールモノ−2−メチルヘキシルエーテル等のグリコールエーテル類、α−アミノアルコール、β−アミノアルコール、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、2−アミノイソヘキシルアルコール、N,N−ジメチルエタノールアミン、N,N−ジエチルエタノールアミン、アミノエチルエタノールアミン、N−メチル−N,N−ジエタノールアミン、N,N−ブチルエタノールアミン、N−メチルエタノールアミン、3−アミノ−1−プロパノール等のアミン化合物を用いることができる。
【0074】
アルカリ可溶性樹脂としては、ジイソブチレン−無水マレイン酸共重合体、ロジン変性マレイン酸樹脂、スチレンマレイン酸樹脂、(メタ)アクリル酸エステル−(メタ)アクリル酸共重合体、シュラック等を用いることができる。
【0075】
滑り調整剤としては、キャンデリラワックス、カルナバワックス、ライスワックス、木ロウ、ホホバ油等の植物系ワックス、蜜蝋、ラノリン、鯨ロウ等の動物系ワックス、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、ペトロラタム等の石油系ワックス、フィッシャートロプシュワックス等の合成炭化水素系ワックス、(酸化)ポリエチレンワックス、(酸化)ポリプロピレンワックス等の合成ワックス等を用いることができる。
【0076】
湿潤剤としては、フッ素系界面活性剤、シリコーン系界面活性剤、高級アルコール硫酸エステルナトリウム、アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム、コハク酸ジアルキルエステルスルホン酸ナトリウム、アルキルジフェニルエーテルジスルホン酸ナトリウム、ポリオキシエチレンアルキル硫酸エステルナトリウム、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸エステルナトリウム、アルカンスルホン酸ナトリウム等のアニオン界面活性剤、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレン共重合体、蔗糖脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル等の脂肪酸エステル類、ヤシ油脂肪酸ジエタノールアミド、ラウリン酸ジエタノールアミド、ラウリン酸ミリスチン酸ジエタノールアミド、ミリスチン酸ジエタノールアミド、オレイン酸ジエタノールアミド、パーム核油脂肪酸ジエタノールアミドなどの脂肪酸アルカノールアミド類、アルキルグルコシド等の非イオン界面活性剤、ラウリルベタインなどのアルキルベタイン型両性イオン界面活性剤、2−アルキル−N−カルボキシメチルイミダゾリニウムベタイン、2−アルキル−N−カルボキシエチルイミダゾリニウムベタイン等のイミダゾリン型両性イオン界面活性剤、アルキルスルホベタイン型両性イオン界面活性剤、ヤシ油脂肪酸アミドジメチルヒドロキシプロピルスルホベタインなどのアミドスルホベタイン型両性界面活性剤、N−アルキル−β−アミノプロピオン酸塩、N−アルキル−β−イミノジプロピオン酸塩、β−アラニン型両性界面活性剤等の両性界面活性剤を用いることができる。
【0077】
本発明の一液硬化型エマルション組成物の用途は、特に限定されない。本発明の一液硬化型エマルション組成物は、貯蔵安定性に優れるとともに、常温の乾燥でも優れた粘着性、接着性、強靭性、耐久性、耐水性などを発揮し、経時での性能変化も少ない塗膜を形成するエマルション組成物であることから、例えば、粘接着剤、水性塗料、フロアーポリッシュ、建築内外装用塗料・塗材・防水材、インク、繊維・紙等の含浸剤、シーリング剤、コーティング剤等が挙げられる。
【実施例】
【0078】
以下、本発明について、実施例を挙げて具体的に説明する。但し、本発明は、これらの実施例に何ら限定されるものではない。尚、実施例及び比較例中の「部」及び「%」は、特に断らない限り質量基準である。
また、実施例及び比較例における、一液硬化型エマルション組成物中のガラス転移温度及び平均粒子径、並びに一液硬化型エマルション組成物の粘度及び貯蔵安定性の評価は、下記の方法により行なった。
【0079】
1−1.一液硬化型エマルション組成物の物性及び評価方法
(1)ガラス転移温度
示差走査熱量計「DSC5200」(セイコーインスツルメンツ社製)を用い、窒素雰囲気下で昇温速度が20℃/分の条件により、ガラス転移温度(Tg)を測定した。尚、測定に用いたサンプル量は5〜10mgとした。
(2)平均粒子径
レーザー回折・散乱式の粒度分析計マイクロトラックMT−3000(日機装社製)を用い、平均粒子径で測定した。尚、体積基準によるメジアン径を粒子径とした。
(3)粘度
BM型粘度計を用い、12rpmもしくは60rpm、25℃の条件で測定した。
(4)貯蔵安定性の評価
110mlのガラス瓶に一液硬化型エマルション組成物を約100ml投入し、次いで、このガラス瓶を密栓し、50℃で1ヶ月間静置した。その後、ガラス瓶中のエマルション組成物の状態を目視にて観察し、下記の基準により評価した。
○:凝集、増粘、沈殿及び分離のいずれも見られず良好であった。
△:凝集、増粘、沈殿及び分離のいずれかが少し見られた。
×:凝集、増粘、沈殿及び分離のいずれかが激しく見られた。又はゲル化していた。
【0080】
1−2.一液硬化型エマルション組成物の製造に用いたエポキシ基を有する化合物(B)、塩基性触媒(C)及び乳化剤
(1)エポキシ基を有する化合物(B)として下記のものを使用した。
エポキシ化合物(1):下記式(13)に示されるビスフェノールA型エポキシ化合物、ジャパンエポキシレジン社製、商品名「JER828」、エポキシ当量184〜194g/eq、Mw370。
【化13】

エポキシ化合物(2):下記式(14)に示される水添ビスフェノールA型エポキシ化合物、ナガセケムテックス社製、商品名「デナコールEX−252」、エポキシ当量213g/eq、Mw352。
【化14】

エポキシ化合物(3):下記式(15)に示されるネオペンチルグリコール系エポキシ化合物、ナガセケムテックス社製、商品名「デナコールEX−211」、エポキシ当量138g/eq、Mw246。
【化15】

エポキシ化合物(4):下記式(16)に示される脂環式エポキシ化合物、ダイセル化学社製、商品名「セロキサイド2021P」、エポキシ当量131g/eq、Mw242。
【化16】

エポキシ化合物(5):下記式(17)に示されるポリエチレングリコール系エポキシ化合物、ナガセケムテックス社製、商品名「デナコールEX−830」、エポキシ当量268g/eq、Mw526。
【化17】

【0081】
(2)塩基性触媒(C)として下記のものを使用した。
塩基性触媒(1):臭化テトラ−n−ブチルアンモニウム(以下「TBAB」と記す。)
塩基性触媒(2):トリフェニルホスフィン(以下「TPP」と記す。)
塩基性触媒(3):水酸化テトラブチルホスホニウム(以下「TBPH」と記す。)
塩基性触媒(4):トリエチルアミン(以下「TEA」と記す。)
【0082】
(3)乳化剤として下記の乳化剤を使用した。
乳化剤(1):下記式(18)に示される反応性乳化剤、ADEKA社製、商品名「アデカリアソープSR−1025」、有効成分量25質量%
【化18】

〔但し、上記式(18)において、Rはアルキル基を示し、nは1以上の整数である。〕
乳化剤(2):下記式(19)に示される反応性乳化剤、ADEKA社製、商品名「アデカリアソープER−30」、有効成分量100質量%
【化19】

〔但し、上記式(19)において、Rはアルキル基を示し、nは1以上の整数である。〕
乳化剤(3):ラウリル硫酸ナトリウム、花王社製、商品名「エマール2F」、有効成分量30質量%
【0083】
1−3.一液硬化型エマルション組成物の製造及びその評価
<実施例1−1>
攪拌機、還流冷却器、2個の滴下ロート、温度計、窒素導入管を備えた反応容器内にイオン交換水30部を仕込み、窒素ガスを吹き込みながら、攪拌下、加熱して80℃とした。一方、別の容器に、単量体としてメタクリル酸0.5部、n−ブチルアクリレート90.0部、メチルメタクリレート3.0部、ヒドロキシエチルアクリレート0.5部、アクリロニトリル5.0部からなる単量体混合物と、エポキシ基を有する化合物(1)1.0部、塩基性触媒(1)0.2部、乳化剤(1)8.0部及びイオン交換水21.0部からなる乳化液とを仕込み、これらの原料を攪拌し、単量体を含む乳化物を得た。次いで、得られた乳化物のうちの0.3%を反応容器中に添加し、10分経過後、5%過硫酸アンモニウム水溶液4部を反応容器に添加した。更に、10分経過後、残りの乳化物、及び5%過硫酸アンモニウム水溶液6部を、それぞれ別の滴下ロートにより4時間かけて連続的に反応容器内に滴下して乳化重合を行った。滴下終了後、反応容器内を80℃にて1時間保持した後、反応系を冷却して重合を終了し、重合体粒子が分散された一液硬化型エマルション組成物(1)を得た。得られた一液硬化型エマルション組成物について、ガラス転移温度(Tg)、固形分濃度、粘度、pH及び平均粒子径の物性を測定し、更に、貯蔵安定性を評価した。実施例1−1で使用した原料、並びに、測定した物性及び評価結果を表1に示す。
【0084】
<実施例1−2〜1−11、比較例1−1〜1−2>
単量体、エポキシ基を有する化合物、塩基性触媒、乳化剤及びイオン交換水の種類、並びに量を表1及び表3のようにした以外は、実施例1−1と同様にして、一液硬化型エマルション組成物(2)〜(11)及びエマルション組成物(21)〜(22)を得た。得られた一液硬化型エマルション組成物の物性及び評価結果を表1及び表3に併記する。
【0085】
<実施例1−12>
実施例1と同様の反応容器内にイオン交換水100部を仕込み、窒素ガスを吹き込みながら、攪拌下、加熱して85℃とした。一方、別の容器に、単量体としてアクリル酸3.0部、メタクリル酸7.0部、2−エチルヘキシルアクリレート20.0部、スチレン30.0部、メチルメタクリレート20.0部からなる単量体混合物と、エポキシ基を有する化合物(2)20.0部、塩基性触媒(1)0.2部、乳化剤(3)3.0部及びイオン交換水38.0部からなる乳化液とを仕込み、これらの原料を攪拌し、単量体を含む乳化物を得た。次いで、得られた乳化物のうちの15.0%を反応容器中に添加し、10分経過後、5%過硫酸アンモニウム水溶液4部を反応容器に添加した。更に、10分経過後、残りの乳化物、及び5%過硫酸アンモニウム水溶液6部を、それぞれ別の滴下ロートにより3時間かけて連続的に反応容器内に滴下して乳化重合を行った。滴下終了後、反応容器内を85℃にて1時間保持した後、反応系を冷却して重合を終了し、重合体粒子が分散された一液硬化型エマルション組成物(12)を得た。得られた一液硬化型エマルション組成物の物性及び評価結果を表2に示す。
【0086】
<実施例1−13〜1−18、比較例1−3〜1−4>
単量体、エポキシ基を有する化合物、塩基性触媒、乳化剤及びイオン交換水の種類、並びに量を表1及び表3のようにした以外は、実施例1−12と同様にして、一液硬化型エマルション組成物(13)〜(18)及び一液硬化型エマルション組成物(23)〜(24)を得た。得られた一液硬化型エマルション組成物の物性及び評価結果を表2及び表3に併記する。
【0087】
【表1】

【0088】
【表2】

【0089】
【表3】

【0090】
2.粘着剤組成物の製造及び粘着シートの製造、並びにその評価
一液硬化型エマルション組成物から得られる塗膜の物性等を評価するため、上記実施例1−1〜1−11及び上記比較例1−1〜1−2で得られたエマルション組成物を用いて、粘着剤組成物を製造し、粘着剤組成物より得られた粘着シートを評価した。この粘着剤組成物から得られる粘着シートを評価することにより、一液硬化型エマルション組成物から得られる塗膜の物性等を評価することができる。
また、実施例及び比較例における、粘着剤組成物を評価するための試験用粘着シートの製造方法、並びに、粘着シートの粘着力、耐水粘着力、保持力及び定荷重剥離強度の各評価は、下記の方法により行なった。
【0091】
2−1.粘着剤組成物の製造及び粘着シートの製造
<実施例2−1>
上記実施例1−1により得られた一液硬化型エマルション組成物100部に、中和剤として25%アンモニア水を添加し、pH7.5に調整した。更に、増粘剤としてアルカリ可溶型増粘剤〔東亞合成社製、(商品名)「アロンB−500」〕を添加及び混合して粘度を10,000mPa・sに調整して粘着剤組成物を得た。尚、粘度はBM型粘度計を用い、12rpm、25℃の条件で測定した。
次に、上記により得られた粘着剤組成物を下記の評価方法に従って、粘着シートを作製し、粘着シートの粘着力、耐水粘着力、保持力及び定荷重剥離強度の評価を行った。評価結果を表4に示す。
【0092】
<実施例2−2〜2−13及び比較例2−1〜2−3>
一液硬化型エマルションの種類、並びに各種添加剤の配合量を表4及び表5のように変更した以外は、実施例2−1と同様にして、粘着剤組成物を製造した。そして、下記評価方法に従って粘着シートを作製し、各種評価を行った。その結果を表4及び表5に併記する。
【0093】
2−2.粘着剤組成物及び粘着シートの評価方法、並びにその評価
(1)試験用粘着シートの製造
厚さ100μmのポリエチレンテレフタレートフィルムの表面に、乾燥後における粘着剤組成物から形成される層の厚さが、50μmとなるように粘着剤組成物を塗布した。次いで、熱風循環式乾燥器にて100℃で3分間乾燥して粘着シートを作製した。以下の項目の評価には、上記方法により製造した粘着シートを使用して評価した。
【0094】
(2)粘着力評価
上記粘着シート及び40℃で1ヶ月保管した上記粘着シート、並びに被着体としてステンレス板(以下、単に「SUS」ともいう。)及びポリプロピレン板(以下、単に「PP」ともいう。)を用い、温度23℃、及び湿度50%RHの条件において、JIS Z−0237に準じて180度剥離強度を測定し、粘着力及び経時での粘着力の評価とした。
【0095】
(3)耐水粘着力評価
上記粘着シート、並びに被着体としてステンレス板及びポリプロピレン板を用い、温度23℃、及び湿度50%RHの条件において、JIS Z−0237に準じて貼り付け、貼り付け30分後に、23℃でイオン交換水に24時間浸漬した。その後、イオン交換水中から浸漬に供した試験片を取り出し、軽く水分を拭き取った後、180度剥離強度を測定し、耐水粘着力の評価とした。
【0096】
(4)保持力評価
上記粘着シートを、ステンレス板に接着面積が25mm×25mmとなるように貼付け、温度80℃にて1kgの荷重をかけて剥がれ落ちるまでの時間を測定し、その保持時間を保持力の評価とした。24時間以上保持した場合は1440分とした。保持力の評価が高いほど、凝集力が優れていることを示す。
【0097】
(5)定荷重剥離強度評価
上記粘着シートを用い、温度23℃、及び湿度50%RHの条件において、ステンレス板に接着面積が25mm×50mmとなるように貼り付け、2kgローラーで一往復して圧着させ30分放置した。その後、貼り付けた粘着シートの短辺の一方の端部に、粘着シートに対して90度方向に100gの荷重をかけた。このとき、貼り付けた粘着シート及び被着体は重力方向に対して90°の角度(水平)になるように固定した。荷重をかけてから1時間後における、粘着シートがステンレス板から剥離した距離を測定した。1時間以内に剥離する場合は50mmとした。
【0098】
【表4】

【0099】
【表5】

【0100】
3.フロアーポリッシュ用組成物の製造及び塗膜の製造、並びにその評価
一液硬化型エマルション組成物から得られる塗膜の物性等を評価するため、上記実施例1−12〜1−18及び上記比較例1−3〜1−4で得られた一液硬化型エマルション組成物を用いて、フロアーポリッシュ用組成物を製造し、フロアーポリッシュ用組成物より得られた塗膜を評価した。また、このフロアーポリッシュ用組成物から得られる塗膜を評価することにより、一液硬化型エマルション組成物から得られる塗膜の物性等を評価することができる。
また、実施例及び比較例における、フロアーポリッシュ用組成物を評価するための塗膜の製造方法、並びに、塗膜の低温造膜性、光沢度、レベリング性、耐ブラックヒールマーク(BHM)性、耐スカッフ性、耐水性、剥離性及び密着性の各評価は、下記の方法により行なった。
【0101】
3−1.フロアーポリッシュ用組成物の製造及び塗膜の製造
<実施例2−14>
上記実施例1−12により得られた一液硬化型エマルション組成物100部に、イオン交換水124.4部、架橋剤として重炭酸亜鉛アンモニウム錯体水溶液(亜鉛量1.35mmol/g)0.86部、湿潤剤としてフッ素系界面活性剤(デュポン社製、商品名「Zonyl FSJ」、1%水溶液)1.0部、消泡剤としてサンノプコ社製、商品名「ノプコNXZ」0.05部、レベリング剤としてトリブトキシエチルフォスフェート5.0部、アルカリ可溶性樹脂として住友ベークライト社製、商品名「Durez19788」の15%濃度の樹脂水溶液16.0部、滑り調整剤として、ポリエチレンワックスエマルション(東邦化学社製、商品名「Hytec E−9015」、固形分濃度40%)19.0部を添加して攪拌混合して固形分濃度20%のフロアーポリッシュ用組成物を得た。得られたフロアーポリッシュ用組成物の固形分濃度、粘度及びpHの物性を測定した。尚、粘度はBM型粘度計を用い、60rpm、25℃の条件で測定した。評価結果を表6に示す。
次に、上記により得られたフロアーポリッシュ用組成物について下記の評価方法に従って、低温造膜性、光沢度、レベリング性、耐ブラックヒールマーク(BHM)性、耐スカッフ性、耐水性、剥離性、密着性の評価を行った。評価結果を表6に併記する。
【0102】
<実施例2−15〜2−23及び比較例2−4〜2−6>
一液硬化型エマルション組成物の種類、並びに各種添加剤の配合量を表6のように変更した以外は、実施例2−14と同様にしてフロアーポリッシュ用組成物を製造した。そして、下記の評価方法に従って、塗膜を作製し、各種評価を行った。フロアーポリッシュ用組成物の物性および塗膜の評価結果を表6に併記する。
【0103】
3−2.フロアーポリッシュ用組成物の評価方法
(1)低温造膜性
5℃の環境下でガラス板上に供試フロアーポリッシュ用組成物を50μmの厚さに塗布し、そのまま5℃の環境下で一昼夜静置乾燥させ、造膜状態を下記の判定基準に従って、目視にて判定した。
◎:均一な膜が形成できた。
○:塗膜は形成できたが、外周のみクラックが生じた。
△:塗膜は形成できたが、全体的にクラックが生じた。
×:塗膜は形成できず、粉々になった。
【0104】
(2)光沢度
JIS K 3920(フロアーポリッシュ試験法)に準拠し、ホモジニアスビニルタイル(東リ社製、商品名「マチコSプレーンNO.5626」)に、フロアーポリッシュ用組成物を3回塗布後(厚み15μm)、常温(10〜30℃)で1時間乾燥させたものの光沢度(60度)を鏡面光沢度計(日本電色工業社製、型式:PG−1M)により測定した。
【0105】
(3)レベリング性
JIS K 3920(フロアーポリッシュ試験法)に準拠し、ホモジニアスビニルタイル(東リ社製、商品名「マチコSプレーンNO.5626」)に、フロアーポリッシュ用組成物を3回塗布後、直ちに基材の対角線にそってX字状のマーク(以下「Xマーク」という。)を付けて常温(10〜30℃)で1時間乾燥させた。Xマークがどの程度消滅しているかを、下記の判定基準に従って、目視にて判定した。
◎:Xマークが見られない。
○:Xマークの輪郭が光沢差として見られる。
△:Xマークが一部尾根状になって見られる。
×:Xマークが全体的に尾根状になり、凸凹である。
【0106】
(4)耐ブラックヒールマーク(BHM)性
JIS K 3920(フロアーポリッシュ試験法)に準拠し、ホモジニアスビニルタイル(東リ社製、商品名「マチコSプレーンNO.5626」)に、フロアーポリッシュ用組成物を3回塗布し、常温(10〜30℃)にて一昼夜乾燥させたもをヒールマーク試験機にて試験し、目視にて10段階で判定した。
10:極めて高い耐BHM性を示す。
6〜9:適度な耐BHM性を有し、実用性を備えている。
2〜5:耐BHM性に欠け、実用性にも欠ける。
1:極めて耐BHM性に欠ける。
【0107】
(5)耐スカッフ性
JIS K 3920(フロアーポリッシュ試験法)に準拠し、ホモジニアスビニルタイル(東リ社製、商品名「マチコSプレーンNO.5626」)に、フロアーポリッシュ用組成物を3回塗布し、常温(10〜30℃)にて一昼夜乾燥させたもをヒールマーク試験機にて試験し、目視にて10段階で判定した。
10:極めて高い耐スカッフ性を示す。
6〜9:適度な耐スカッフ性を有し、実用性を備えている。
2〜5:耐スカッフ性に欠け、実用性にも欠ける。
1:極めて耐スカッフ性に欠ける。
【0108】
(6)耐水性
JIS K 3920(フロアーポリッシュ試験法)に準拠し、コンポジションビニルタイル(タジマ社製、商品名「P−60」)に、供試フロアーポリッシュ用組成物を3回塗布し、常温(10〜30℃)にて一昼夜乾燥させた後、0.2mlの蒸留水を滴下した。水滴を1時間保持した後に拭き取り、30分後の塗膜表面の白化状態を、下記判定基準に従って目視により判定した。
◎:全く白化が認められない。
○:薄く白化が認められる。
△:部分的に白化が認められる。
×:全体的に白化が認められる。
【0109】
(7)剥離性
JIS K 3920(フロアーポリッシュ試験法)に準拠し、コンポジションビニルタイル(タジマ社製、商品名「P−60」)に、フロアーポリッシュ用組成物を3回塗布し、50℃にて7日間乾燥させたものに対し、JIS K 3920(フロアーポリッシュ試験法)に記載の標準剥離液を塗膜が覆うように注いだ。2分後に500g荷重をかけた白パッドを用いて、75往復のラビング試験を行った。ラビング後に塗膜の剥離状態を、下記判定基準に従って目視により判定した。
◎:完全に剥離できる。
○:ほぼ剥離できる。
△:若干皮膜が残っている。
×:ほとんど剥離できない。
【0110】
(8)密着性
JIS K 3920(フロアーポリッシュ試験法)に準拠し、ホモジニアスビニルタイル(東リ社製、商品名「マチコSプレーンNO.5626」)に、フロアーポリッシュ用組成物を3回塗布し、常温(10〜30℃)にて一昼夜乾燥させたものついてセロテープ(登録商標)密着性試験を行った。3回測定した平均の残膜面積率(%)を示す。
【0111】
【表6】

【0112】
表1及び表2の結果より、実施例1−1〜1−18の本発明の一液硬化型エマルション組成物は、貯蔵安定性に優れていることが分かる。
また、表4の結果より、実施例2−1〜2−13に示される、本発明の一液硬化型エマルション組成物から得られた粘着剤組成物の塗膜は、いずれも粘着性、凝集力及び耐水性に優れ、塗膜の経時変化も少ないことが分かる。
更に、表6の結果より、実施例2−14〜2−23に示される、本発明の一液硬化型エマルション組成物から得られたフロアーポリッシュ用組成物の塗膜は、いずれも密着性、耐久性、耐水性及び経時後の剥離性に優れていることが分かる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
重合体粒子が水性媒体中に分散されてなるエマルション組成物であって、
前記重合体粒子は、エチレン性不飽和カルボン酸単量体(A−1)及び(A−1)以外のエチレン性不飽和基を有する単量体(A−2)を、1分子中に少なくとも2個のエポキシ基を有する化合物(B)及び塩基性触媒(C)の存在下、乳化重合して製造されたものであることを特徴とする一液硬化型エマルション組成物。
【請求項2】
上記塩基性触媒(C)が、4級アンモニウム塩、4級ホスホニウム塩又は3級ホスフィン化合物からなる群より選択される少なくとも1つであることを特徴とする請求項1に記載の一液硬化型エマルション組成物。
【請求項3】
上記塩基性触媒(C)の使用量が、上記(A−1)、(A−2)及び(B)の合計100質量部に対して、0.01〜5.0質量部であることを特徴とする請求項1又は2に記載の一液硬化型エマルション組成物。
【請求項4】
上記エポキシ基を有する化合物(B)の重量平均分子量が、100〜1000であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の一液硬化型エマルション組成物。
【請求項5】
上記乳化重合する場合の各成分量が、エチレン性不飽和カルボン酸単量体(A−1)0.1〜50質量%、(A−1)以外のエチレン性不飽和基を有する単量体(A−2)1〜99質量%、1分子中に少なくとも2個のエポキシ基を有する化合物(B)1〜50質量%であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の一液硬化型エマルション組成物。
〔但し、上記(A−1)、(A−2)及び(B)の合計を100質量%とする。〕
【請求項6】
上記(A−1)、(A−2)及び(B)の合計量のエポキシ基当量に対し、同カルボキシル基当量が0.05〜100であることを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の一液硬化型エマルション組成物。
【請求項7】
水性媒体中でエチレン性不飽和カルボン酸単量体(A−1)及び(A−1)以外のエチレン性不飽和基を有する単量体(A−2)を乳化重合する製造方法において、該乳化重合が1分子中に少なくとも2個のエポキシ基を有する化合物(B)及び塩基性触媒(C)の存在下で行うことを特徴とする一液硬化型エマルション組成物の製造方法。

【公開番号】特開2011−63746(P2011−63746A)
【公開日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−216847(P2009−216847)
【出願日】平成21年9月18日(2009.9.18)
【出願人】(000003034)東亞合成株式会社 (548)
【Fターム(参考)】