一酸化炭素メタン化触媒
【課題】低温から広い反応温度域でCOをメタン化して除去できる活性を有するとともに、導入ガス中にCO2が含まれていてもCOに対して高い反応選択性を有するCOメタン化触媒を提供すること、およびこの触媒を用いた水素中のCOの除去方法を提供することを課題とするものである。
【解決手段】一酸化炭素選択メタン化触媒がチタニウムの含有量が1〜49質量%であるシリカ多孔体と、ルテニウムから構成されることで、上記課題を解決する。
【解決手段】一酸化炭素選択メタン化触媒がチタニウムの含有量が1〜49質量%であるシリカ多孔体と、ルテニウムから構成されることで、上記課題を解決する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水素中に含まれる微量の一酸化炭素を効率的に除去するための触媒および除去方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
燃料電池における電気化学反応に供する水素リッチな燃料ガスは、通常都市ガスやプロパンガスを化学分解して得られる改質ガスが使用される。これら改質ガス中には、上記化学分解の工程で生じる1%前後の一酸化炭素(CO)が含まれている。水素を燃料とする固体高分子形燃料電池などは電極部に白金系の触媒を備えているが、燃料ガス中にCOが含まれると白金触媒が被毒され電池効率が低下する問題がある。
【0003】
この問題の解決には、改質ガスを燃料電池に供給するに際し予めCOを選択的に低減する方法が有効である。このとき、COの濃度は、少なくとも100ppm以下、望ましくは10ppm以下にすることが必要であると言われている。
COを除去するのには選択酸化触媒が広く利用されている。COの酸化反応は式1に示すような単純な反応であるが、大過剰の水素中で行う反応であるため式2に示す水素の酸化反応も同時に起こり得る。水素の消費は燃料電池の発電効率の低下に直結するため、水素に優先してCOを選択的に酸化させる高いCO選択性が要望される。ところが、十分に満足される選択性を持つ一酸化炭素選択酸化触媒はなかった。また、酸素を導入するためのブロワー等の機器を設置しなければならず、燃料改質器のスシステムが煩雑化・大型化してしまう問題があった。
【0004】
そこで近年、水素で還元することでCOをメタン化し除去する方法が考案されている。COのメタネーション反応は式3に示すようにCOと水素からメタンと水を生成する反応で、水蒸気改質の逆反応である。酸素を必要としないCO除去方式であるため空気の供給機類を省略できる。メタンを含む水素を燃料電池の水素極に供給した後、オフガスとして燃料改質器にリサイクルし、メタンを水蒸気改質反応により再び水素に転換するシステムを組むことで、燃料効率の低下を抑えることができる。
COのメタン化触媒は、無機担体にルテニウムやニッケルを担持する方法が知られているが(例えば、特許文献1参照。)、触媒は活性を発現するには220℃〜250℃以上にしなければならない。反応改質器において、CO除去部に導入される前段の水性ガスシフト反応の排気温度は約200℃であるため、加熱装置を別途設置する必要があり、燃料改質器のコストを上げてしまうという問題があった。そこで200℃以下の低温でCOを除去し得る触媒が提案されている(例えば、特許文献2参照。)。しかし水性ガスシフト反応により共される水素ガスにはCO以外に20%前後の二酸化炭素(CO2)が含まれており、式4に示すように副反応であるCO2のメタン化反応が起こることで、水素が消費されて望ましくないばかりでなく、発熱反応による反応の暴走が生じ危険性が高いという問題があった。以上のことから、200℃以下の低い反応温度域で、COの除去効率と高い反応選択性を両立する性能を有する一酸化炭素メタン化触媒が望まれている。
【0005】
【化1】
【0006】
【化2】
【0007】
【化3】
【0008】
【化4】
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2004−97859号公報
【特許文献2】特開2007−252990号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、低温から広い反応温度域でCOをメタン化して除去できる活性を有するとともに、導入ガス中にCO2が含まれていてもCOに対して高い反応選択性を有する一酸化炭素メタン化触媒を提供すること、およびこの触媒を用いた水素中のCOの除去方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは鋭意研究の結果、チタニウムを含有するシリカ多孔体にルテニウムを粒径1〜5nmの粒子状に担持させることにより、上記本発明の目的を効果的に達成しうることを見出し、本発明を完成させるに至った。
すなわち、本発明は、下記の通りである。
(1)チタニウムの含有量が1〜49質量%であるシリカ多孔体と、ルテニウムから構成されることを特徴とする一酸化炭素メタン化触媒。
(2)シリカ多孔体が1〜10nmの平均細孔直径を有し、400〜2000m2/gの比表面積を有し、かつX線回折のd間隔が2.0nmより大きいに位置に少なくとも1つのピークを有することを特徴とする前記(1)記載の一酸化炭素メタン化触媒。
(3)触媒中のルテニウムの含有量が0.5〜20重量%の範囲であり、シリカ多孔体の細孔内に粒径1〜5nmの粒子状に担持されていることを特徴とする前記(1)または(2)記載の一酸化炭素メタン化触媒。
(4)前記(1)〜(3)いずれか記載の一酸化炭素メタン化触媒に、水素と一酸化炭素と二酸化炭素を含有する混合ガスを接触させ一酸化炭素を選択的にメタン化することを特徴とする一酸化炭素除去方法。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、水素ガスを主成分とし微量のCOを含有する改質ガスを、チタニウムを含有するシリカ多孔体にルテニウムを粒径1〜5nmの粒子状に担持させた一酸化炭素メタン化触媒と接触させることにより、低温から広い反応温度域でCOをメタン化して除去できる活性を有するとともに、導入ガス中にCO2が含まれていてもCOに対して高い反応選択性を有することができ、燃料電池に供給する水素の精製において安定した性能を付与することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】図1は、シリカ多孔体Aの細孔分布の図である。
【図2】図2は、シリカ多孔体AのX線回折の図である。
【図3】図3は、シリカ多孔体A1の細孔分布の図である。
【図4】図4は、シリカ多孔体A1のX線回折の図である。
【図5】図5は、一酸化炭素メタン化触媒A1の透過電子顕微鏡写真の図である。
【図6】図6は、一酸化炭素メタン化触媒A1の透過電子顕微鏡写真の図である。
【図7】図7は、シリカ多孔体A2の細孔分布の図である。
【図8】図8は、シリカ多孔体A2のX線回折の図である。
【図9】図9は、一酸化炭素メタン化触媒A2の透過電子顕微鏡写真の図である。
【図10】図10は、一酸化炭素メタン化触媒Cの透過電子顕微鏡写真の図である。
【図11】図11は、微粒子シリカと酸化チタンの混合紛体のX線回折の図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
次に、本発明の実施形態について説明するが、本発明の技術的範囲は、これらの実施形態によって限定されるものではなく、発明の要旨を変更することなく様々な形態で実施することができる。また、本発明の技術的範囲は、均等の範囲にまで及ぶものである。
本発明の触媒は、チタニウムを含有するシリカ多孔体とルテニウムから構成される。
【0015】
本発明におけるシリカ多孔体とは、多孔質構造を持つケイ素酸化物を主成分とする物質を意味する。シリカ多孔体はメタン化触媒活性、CO反応選択性を向上させる観点でチタニウムを含有することが望ましい。チタニウムの含有量は1〜49質量%が好ましく、5〜40質量%がより好ましく、20〜40質量%が最も好ましい。チタニウムの含有量が少ないとメタン化触媒活性、CO反応選択性の向上効果が少なく、含有量が多いとシリカ多孔体の比表面積、細孔容積が減少するため、ルテニウムを高分散に担持できなくなってしまい、結果メタン化触媒活性が低下してしまう。チタニウムの含有量はX線蛍光分析装置により測定した。
【0016】
シリカ多孔体へのチタニウムの導入方法としては液相法、気相法等が挙げられる。液相法においてはチタニウムを含有する金属塩、金属アルコキシド等を水、エタノール、ベンゼン等の溶媒に溶解させ、その溶液中にシリカ多孔体を加えて撹拌混合することによりチタニウムがシリカ多孔体へ導入される。また、気相法では、チタニウムアルコキシド等の蒸気を発生するものや昇華しやすいものを前駆体に用い、それらの蒸気をシリカ多孔体と接触させることによりチタニウムが導入される。
チタニウム原料としてはチタンイソプロポキシド、チタンメトキドなどのチタンアルコキシド、4塩化チタンなどが利用できる。
【0017】
本発明におけるシリカ多孔体の平均細孔直径は1〜10nmの範囲内、好ましくは1〜5nmの範囲内である。平均細孔直径が1nm未満だとガスの拡散が制限されてしまい、反応が効率的に進行しないので好ましくない。また、平均細孔直径が10nmを超えるものはルテニウムを担持する際に粒径1〜5nmの粒子状に制御するのが困難なため好ましくない。本発明におけるシリカ多孔体の平均細孔直径は、公知の窒素吸脱着により算出した。すなはち、平均細孔直径は公知のBJH法により算出した。
【0018】
シリカ多孔体の比表面積は400〜2000m2/g以上、好ましくは600〜2000m2/gの範囲内である。比表面積が400m2/gより小さいとルテニウムを高分散に担持できない場合がある。また、比表面積が2000m2/gより大きいのものは、製造するのが実質的に困難である。本発明におけるシリカ多孔体の比表面積は、公知の窒素吸脱着により算出した。
【0019】
さらに、シリカ多孔体はそのX線回折パターンにおいてd間隔が2.0nmより大きいに位置に少なくとも1つのピークを有する。X線回折ピークはそのピーク角度に相当するd値の周期構造が試料中にあることを意味する。したがって、2nm以上のd値に相当する回折角度に1本以上のピークがあることは、細孔が2nm以上の間隔で規則的に配列していることを意味する。本発明におけるシリカ多孔体のX線回折パターンは全自動X線回折装置により測定した。
【0020】
本発明におけるシリカ多孔体の製造方法としては、特に限定されるものではないが、例えば次のようにして製造できる。まず、無機原料と有機原料を混合し、反応させることにより、有機物を鋳型としてそのまわりに無機物の骨格が形成された有機物と無機物の複合体を形成させる。次いで、得られた複合体から有機物を除去することにより、シリカ多孔体を製造する。
【0021】
無機系骨格成分としては、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラプロポキシシラン等のアルコキシシラン、ケイ酸ソーダ、カネマイト(kanemite、NaHSi2O5・3H2O)あるいはシリカを用いることができる。これらの骨格成分はシリケート骨格を形成する。これらは、単独で又は2種以上を混合して用いることができる。
【0022】
鋳型として使用される有機原料は、特に限定されるものではないが、例えば界面活性剤が挙げられる。界面活性剤は陽イオン性、陰イオン性、非イオン性のうちのいずれであってもよく、具体的には、アルキルトリメチルアンモニウム(好ましくはアルキル基の炭素数が8〜18のアルキルトリメチルアンモニウム)、アルキルアンモニウム、ジアルキルジメチルアンモニウム、ベンジルアンモニウムの塩化物、臭化物、ヨウ化物あるいは水酸化物の他、脂肪酸塩、アルキルスルホン酸塩、アルキルリン酸塩、ポリエチレンオキサイド系非イオン性界面活性剤、一級アルキルアミン、トリブロックコポリマー型のポリアルキレンオキサイド等が挙げられる。
上記の界面活性剤のうちの1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0023】
無機原料と有機原料を混合する場合、適当な溶媒を用いることができる。溶媒としては、特に限定されるものではないが、例えば水、有機溶媒、水と有機溶媒との混合物等をが挙げられる。
無機物と有機物の複合体の形成方法は特に限定されるのものではないが、例えば、有機原料を溶媒に溶解後、無機原料を添加し、所定のpHに調製した後に、反応混合物を所定の温度に保持して縮重合反応を行う方法が挙げられる。縮重合反応の反応温度は使用する有機原料や無機原料の種類や濃度によって異なるが、通常0℃〜100℃であり、好ましくは35℃〜80℃である。
縮重合反応の反応時間は通常、8時間〜24時間である。また、上記の縮重合反応は、静置状態、撹拌状態のいずれで行ってもよく、またそれらを組み合わせて行ってもよい。
【0024】
上記縮重合反応後に得られる複合体から有機原料を除去することによって、シリカ多孔体を得ることができる。ここで、有機物と無機物の複合体からの有機物の除去は、400〜800℃で焼成する方法、水やアルコール等の溶媒で処理する方法等により行うことができる。
【0025】
本発明において、ルテニウムはシリカ多孔体の細孔内に粒径1〜5nmの粒子状に担持されていることが望ましい。粒子径が1nmより小さい場合、及び5nmより大きい場合はメタン化触媒活性が低下して好ましくない。また、シリカ多孔体の細孔外に担持した場合は、金属の粒子成長が進行し粗大な粒子となりメタン化触媒活性が低下して好ましくない。
【0026】
本発明において、ルテニウム原料としては塩化ルテニウム、硝酸ルテニウム等が使用できる。
ルテニウムをシリカ多孔体の細孔内に粒径1〜5nmの粒子状に担持する方法として、特に制限はないが、通常、ルテニウム原料を含む水溶液を調製し、シリカ多孔体に担体に含浸させ、ついで乾燥する。乾燥条件は特に制限はないが、通常80〜200℃で乾燥する。乾燥した後、還元して一酸化炭素メタン化用触媒を得ることができる。
【0027】
還元方法として、還元剤、熱、光等で処理する方法を用いることができる。いずれの処理方法を用いるかは金属原料の種類にもよるが、金属原料である塩、錯塩が分解して金属粒子を生成する条件を設定する。また、過度の処理は生成したルテニウム粒子のシンタリングによる粒子径の増大の可能性があるので、適当な条件の設定が必要である。
例えば塩化ルテニウムを用いた場合では、還元剤として水素を使用し、200℃以上で処理を行う。
【0028】
本発明の一酸化炭素メタン化触媒をCOとCO2を含む水素ガスと接触させることで、選択的にCOをメタンに変換して除去することができる。接触方式は特に制限されないが、固定床方式が望ましい。反応温度は100〜400℃が好ましく、120〜300℃がさらに好ましく、130〜250℃が最も好ましい。反応温度が低すぎるとCOの転化率が充分ではない場合があり、反応温度が高すぎるとCOの反応選択性が充分ではない場合がある。
次に、実施例を示しつつ、本発明を更に詳細に説明するが、本発明の技術的範囲は下記実施例によっては限定されない。
【実施例】
【0029】
製造例1(シリカ多孔体の合成)
水ガラス(1号珪酸ソーダ)(SiO2/Na2O=2.00)50gにドコシルトリメチルアンモニウムブロマイドを0.1mol含むイオン交換水1Lに添加し70℃にて溶解した。さらに2NのHClを添加して、pHを8.5に調整し70℃で3時間撹拌した。その後水洗を5回繰り返し、40℃で乾燥した。この乾燥粉末を窒素ガス中450℃で3時間加熱した後、空気中550℃にて6時間焼成し、シリカ多孔体Aを得た。
【0030】
得られたシリカ多孔体Aの細孔分布をQuantachrome社製窒素吸着装置(Quadrasorb SI)で測定し、BJH法により求めたところ、平均細孔径は4.2nmであった(図1)。また、得られたシリカ多孔体をX線蛍光分析装置で測定したところ、チタニウムの含有量は0.05重量%以下であった。また、シリカ多孔体Aをリガク社製X線回折装置(RINT2000)で分析したところ、X線回折のd間隔が5.0nmの位置にピークを有していた(図2)。さらに、シリカ多孔体Aの比表面積を窒素吸脱着法により算出したところ970m2/gであった。
【0031】
製造例2(シリカ多孔体への液相法によるチタニウムの導入)
製造例1で得たシリカ多孔体A 5gに、2.5gのチタンイソプロポキシドを含むn‐イソプロパノール溶液5mlを含浸させ120℃で24時間乾燥させる工程を2度繰り返し、チタニウムを含有するシリカ多孔体A1を得た。
得られたシリカ多孔体A1の細孔分布をQuantachrome社製窒素吸着装置(Quadrasorb SI)で測定し、BJH法により求めたところ、平均細孔径は3.7nmであった(図3)。また、得られたシリカ多孔体A1のチタニウム含量をX線蛍光分析装置で測定したところ、33.0重量%であった。また、シリカ多孔体A1をリガク社製X線回折装置(RINT2000)で分析したところ、X線回折のd間隔が4.9nmの位置にピークを有していた(図4)。さらに、シリカ多孔体A1の比表面積を窒素吸脱着法により算出したところ741m2/gであった。
【0032】
実施例1(一酸化炭素メタン化触媒の製造)
製造例2で得たシリカ多孔体A1を3g、シュレンク管に入れて100℃に加熱し、1×10−4mmHgで2時間真空脱気を行った。
50mlナス型フラスコに塩化ルテニウムn水和物(RuCl3・nH2O)0.18gと6N塩酸4.8mlとを入れて60℃で加温溶解し、塩化ルテニウム水溶液を調製した。
【0033】
得られた塩化ルテニウム水溶液に水80mlを加え、さらにシリカ多孔体A1を加えて24時間撹拌した。その後、70℃に加熱しながらエバポレータを用いて水を留去し、さらに110℃のオーブンで24時間乾燥した。
次に、得られた残留物を空気中200℃で2時間焼成し、乾燥水素気流中350℃で3時間還元することにより本発明の一酸化炭素メタン化触媒A1を得た。一酸化炭素メタン化触媒A1のルテニウム担持量は、全自動蛍光X線分析装置(XRF−1700WS)で測定した結果5質量%であった。透過電子顕微鏡観察により粒径2〜3nmのルテニウム粒子が細孔に沿って一定の間隔で並んでいる様子が観察された(図5,6)。
【0034】
製造例3
製造例1で得たシリカ多孔体に、塩化チタンを原料としてCVD法によりチタニウムを導入し、チタニウムを含有するシリカ多孔体A2を得た。得られたシリカ多孔体A2の平均細孔径は3.9nmであった(図7)。また、得られたシリカ多孔体A2のチタニウム含量をX線蛍光分析装置で測定したところ、8.8重量%であった。また、シリカ多孔体A2をリガク社製X線回折装置(RINT2000)で分析したところ、X線回折のd間隔が4.9nmの位置にピークを有していた(図8)。さらに、シリカ多孔体A2の比表面積を窒素吸脱着法により算出したところ835m2/gであった。
【0035】
実施例2
シリカ多孔体A1に代えて、シリカ多孔体A2を用いた以外は実施例1と同様の方法で一酸化炭素メタン化触媒A2を得た。透過電子顕微鏡観察により粒径2〜3nmのルテニウム粒子が細孔に沿って一定の間隔で並んでいる様子が観察された(図9)。
【0036】
製造例4
ドコシルトリメチルアンモニウムブロマイドに代えて、ヘキサデシルトリメチルアンモニウムブロマイドを用いた以外は実施例1と同様の方法でシリカ多孔体Bを得た。続いてシリカ多孔体Aに代えてシリカ多孔体Bを用いる以外は製造例2と同様の方法でシリカ多孔体B1を得た。得られたシリカ多孔体B1の平均細孔径は2.3nmであった。また、チタニウム含量をX線蛍光分析装置で測定したところ、32.7重量%であった。また、リガク社製X線回折装置(RINT2000)で分析したところ、X線回折のd間隔が3.7nmの位置にピークを有していた。さらに、シリカ多孔体B1の比表面積を窒素吸脱着法により算出したところ734m2/gであった。
【0037】
実施例3
シリカ多孔体A1に代えて、シリカ多孔体B1を用いた以外は実施例1と同様の方法で一酸化炭素メタン化触媒Bを得た。透過電子顕微鏡観察により粒径2〜3nmのルテニウム粒子が細孔に沿って一定の間隔で並んでいる様子が観察された。
【0038】
比較例1
シリカ多孔体A1に代えて、製造例1で得たチタニウムを含有しないシリカ多孔体を用いた以外は実施例1と同様の方法で一酸化炭素メタン化触媒Cを得た。透過電子顕微鏡観察により粒径2〜3nmのルテニウム粒子が細孔に沿って一定の間隔で並んでいる様子が観察された(図10)。
【0039】
比較例2
微粒子シリカ(アエロジル300(日本アエロジル株式会社製))1.35gと微粒酸化チタン(和光純薬製)1.65gをよく混合しシリカと酸化チタンの混合粉体を得た。この混合粉体のチタニウム含量をX線蛍光分析装置で測定したところ、32.7重量%であった。また、この混合粉体をリガク社製X線回折装置(RINT2000)で分析したところ、X線回折のd間隔が2nmより大きいところにピークが存在しなかった(図11)。さらに、混合粉体の比表面積を窒素吸脱着法により算出したところ162m2/gであった。
【0040】
シリカ多孔体A1に代えて、上記のシリカと酸化チタンの混合粉体を用いた以外は実施例1と同様の方法で一酸化炭素メタン化触媒Dを得た。透過電子顕微鏡観察により凝集したルテニウム粒子がシリカおよび酸化チタンの外表面に担持されている様子が観察された。
【0041】
試験例1(一酸化炭素メタン化触媒を用いたCO除去反応)
直径8mmのSUS製反応管に石英ウールを入れて、ガラスビーズ1.5gと一酸化炭素メタン化触媒0.1gを混合して充填し、反応管の外周にヒーターを設置して一酸化炭素メタン化器を作成した。触媒層の温度は、触媒層に埋設した熱電対でモニタし、前記ヒーターにより触媒層の温度を調節した。
【0042】
触媒層は反応開始前に、水素気流下350℃で2時間前処理を行った後、室温まで冷却することで活性化を行った。
その後反応管に、模擬反応ガス(CO;0.6%、CO2;20.0%、水素バランスの混合ガス)を、マスフローメーターを用いてガス流量3000ml/(h・g―触媒)で導入し、触媒層において反応を行った。
【0043】
なお反応中には、石鹸膜流量計で所定の流量が流れているのか確認を行った。
触媒層温度を140℃〜230℃に変化させて一酸化炭素メタン化反応を行い、反応管出口でガス組成を、ガスクロマトグラフによって測定した結果を表1に示した。
なお、CO選択率は下記式により算出した。
【0044】
【数1】
【0045】
【表1】
【0046】
CO濃度<10ppm、選択率>50%となった反応条件を太字で標記した
【0047】
比較例1、2に示した一酸化炭素メタン化触媒C、DではCOの除去活性が低く、また、COの反応選択率が悪くCO2のメタン化反応が進行し、水素が浪費されてしまった。これに対し実施例に示した一酸化炭素メタン化触媒A1は反応温度150℃より高い温度では一酸化炭素を100%除去することができ、さらに210℃まで50%以上という高いCO反応選択率を維持することができた。また、実施例2および3に示した一酸化炭素メタン化触媒A2、一酸化炭素メタン化触媒Bもこれに近い性能を示した。
【0048】
このように本発明の一酸化炭素メタン化触媒は従来の触媒と比較し、低温から広い反応温度域でCOをメタン化して除去できる活性を有するとともに、導入ガス中にCO2が含まれていてもCOに対して高い反応選択性を有することができ、燃料電池の水素精製において安定した性能を付与することができる。
【産業上の利用可能性】
【0049】
本発明の、一酸化炭素選択メタン化触媒は、低温から広い反応温度域でCOをメタン化して除去できるとともに、導入ガス中にCO2が含まれていてもCOに対して高い反応選択性を有することができ、燃料電池に供給する水素の精製において安定した性能を付与することができき、産業上貢献大である。
【技術分野】
【0001】
本発明は、水素中に含まれる微量の一酸化炭素を効率的に除去するための触媒および除去方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
燃料電池における電気化学反応に供する水素リッチな燃料ガスは、通常都市ガスやプロパンガスを化学分解して得られる改質ガスが使用される。これら改質ガス中には、上記化学分解の工程で生じる1%前後の一酸化炭素(CO)が含まれている。水素を燃料とする固体高分子形燃料電池などは電極部に白金系の触媒を備えているが、燃料ガス中にCOが含まれると白金触媒が被毒され電池効率が低下する問題がある。
【0003】
この問題の解決には、改質ガスを燃料電池に供給するに際し予めCOを選択的に低減する方法が有効である。このとき、COの濃度は、少なくとも100ppm以下、望ましくは10ppm以下にすることが必要であると言われている。
COを除去するのには選択酸化触媒が広く利用されている。COの酸化反応は式1に示すような単純な反応であるが、大過剰の水素中で行う反応であるため式2に示す水素の酸化反応も同時に起こり得る。水素の消費は燃料電池の発電効率の低下に直結するため、水素に優先してCOを選択的に酸化させる高いCO選択性が要望される。ところが、十分に満足される選択性を持つ一酸化炭素選択酸化触媒はなかった。また、酸素を導入するためのブロワー等の機器を設置しなければならず、燃料改質器のスシステムが煩雑化・大型化してしまう問題があった。
【0004】
そこで近年、水素で還元することでCOをメタン化し除去する方法が考案されている。COのメタネーション反応は式3に示すようにCOと水素からメタンと水を生成する反応で、水蒸気改質の逆反応である。酸素を必要としないCO除去方式であるため空気の供給機類を省略できる。メタンを含む水素を燃料電池の水素極に供給した後、オフガスとして燃料改質器にリサイクルし、メタンを水蒸気改質反応により再び水素に転換するシステムを組むことで、燃料効率の低下を抑えることができる。
COのメタン化触媒は、無機担体にルテニウムやニッケルを担持する方法が知られているが(例えば、特許文献1参照。)、触媒は活性を発現するには220℃〜250℃以上にしなければならない。反応改質器において、CO除去部に導入される前段の水性ガスシフト反応の排気温度は約200℃であるため、加熱装置を別途設置する必要があり、燃料改質器のコストを上げてしまうという問題があった。そこで200℃以下の低温でCOを除去し得る触媒が提案されている(例えば、特許文献2参照。)。しかし水性ガスシフト反応により共される水素ガスにはCO以外に20%前後の二酸化炭素(CO2)が含まれており、式4に示すように副反応であるCO2のメタン化反応が起こることで、水素が消費されて望ましくないばかりでなく、発熱反応による反応の暴走が生じ危険性が高いという問題があった。以上のことから、200℃以下の低い反応温度域で、COの除去効率と高い反応選択性を両立する性能を有する一酸化炭素メタン化触媒が望まれている。
【0005】
【化1】
【0006】
【化2】
【0007】
【化3】
【0008】
【化4】
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2004−97859号公報
【特許文献2】特開2007−252990号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、低温から広い反応温度域でCOをメタン化して除去できる活性を有するとともに、導入ガス中にCO2が含まれていてもCOに対して高い反応選択性を有する一酸化炭素メタン化触媒を提供すること、およびこの触媒を用いた水素中のCOの除去方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは鋭意研究の結果、チタニウムを含有するシリカ多孔体にルテニウムを粒径1〜5nmの粒子状に担持させることにより、上記本発明の目的を効果的に達成しうることを見出し、本発明を完成させるに至った。
すなわち、本発明は、下記の通りである。
(1)チタニウムの含有量が1〜49質量%であるシリカ多孔体と、ルテニウムから構成されることを特徴とする一酸化炭素メタン化触媒。
(2)シリカ多孔体が1〜10nmの平均細孔直径を有し、400〜2000m2/gの比表面積を有し、かつX線回折のd間隔が2.0nmより大きいに位置に少なくとも1つのピークを有することを特徴とする前記(1)記載の一酸化炭素メタン化触媒。
(3)触媒中のルテニウムの含有量が0.5〜20重量%の範囲であり、シリカ多孔体の細孔内に粒径1〜5nmの粒子状に担持されていることを特徴とする前記(1)または(2)記載の一酸化炭素メタン化触媒。
(4)前記(1)〜(3)いずれか記載の一酸化炭素メタン化触媒に、水素と一酸化炭素と二酸化炭素を含有する混合ガスを接触させ一酸化炭素を選択的にメタン化することを特徴とする一酸化炭素除去方法。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、水素ガスを主成分とし微量のCOを含有する改質ガスを、チタニウムを含有するシリカ多孔体にルテニウムを粒径1〜5nmの粒子状に担持させた一酸化炭素メタン化触媒と接触させることにより、低温から広い反応温度域でCOをメタン化して除去できる活性を有するとともに、導入ガス中にCO2が含まれていてもCOに対して高い反応選択性を有することができ、燃料電池に供給する水素の精製において安定した性能を付与することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】図1は、シリカ多孔体Aの細孔分布の図である。
【図2】図2は、シリカ多孔体AのX線回折の図である。
【図3】図3は、シリカ多孔体A1の細孔分布の図である。
【図4】図4は、シリカ多孔体A1のX線回折の図である。
【図5】図5は、一酸化炭素メタン化触媒A1の透過電子顕微鏡写真の図である。
【図6】図6は、一酸化炭素メタン化触媒A1の透過電子顕微鏡写真の図である。
【図7】図7は、シリカ多孔体A2の細孔分布の図である。
【図8】図8は、シリカ多孔体A2のX線回折の図である。
【図9】図9は、一酸化炭素メタン化触媒A2の透過電子顕微鏡写真の図である。
【図10】図10は、一酸化炭素メタン化触媒Cの透過電子顕微鏡写真の図である。
【図11】図11は、微粒子シリカと酸化チタンの混合紛体のX線回折の図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
次に、本発明の実施形態について説明するが、本発明の技術的範囲は、これらの実施形態によって限定されるものではなく、発明の要旨を変更することなく様々な形態で実施することができる。また、本発明の技術的範囲は、均等の範囲にまで及ぶものである。
本発明の触媒は、チタニウムを含有するシリカ多孔体とルテニウムから構成される。
【0015】
本発明におけるシリカ多孔体とは、多孔質構造を持つケイ素酸化物を主成分とする物質を意味する。シリカ多孔体はメタン化触媒活性、CO反応選択性を向上させる観点でチタニウムを含有することが望ましい。チタニウムの含有量は1〜49質量%が好ましく、5〜40質量%がより好ましく、20〜40質量%が最も好ましい。チタニウムの含有量が少ないとメタン化触媒活性、CO反応選択性の向上効果が少なく、含有量が多いとシリカ多孔体の比表面積、細孔容積が減少するため、ルテニウムを高分散に担持できなくなってしまい、結果メタン化触媒活性が低下してしまう。チタニウムの含有量はX線蛍光分析装置により測定した。
【0016】
シリカ多孔体へのチタニウムの導入方法としては液相法、気相法等が挙げられる。液相法においてはチタニウムを含有する金属塩、金属アルコキシド等を水、エタノール、ベンゼン等の溶媒に溶解させ、その溶液中にシリカ多孔体を加えて撹拌混合することによりチタニウムがシリカ多孔体へ導入される。また、気相法では、チタニウムアルコキシド等の蒸気を発生するものや昇華しやすいものを前駆体に用い、それらの蒸気をシリカ多孔体と接触させることによりチタニウムが導入される。
チタニウム原料としてはチタンイソプロポキシド、チタンメトキドなどのチタンアルコキシド、4塩化チタンなどが利用できる。
【0017】
本発明におけるシリカ多孔体の平均細孔直径は1〜10nmの範囲内、好ましくは1〜5nmの範囲内である。平均細孔直径が1nm未満だとガスの拡散が制限されてしまい、反応が効率的に進行しないので好ましくない。また、平均細孔直径が10nmを超えるものはルテニウムを担持する際に粒径1〜5nmの粒子状に制御するのが困難なため好ましくない。本発明におけるシリカ多孔体の平均細孔直径は、公知の窒素吸脱着により算出した。すなはち、平均細孔直径は公知のBJH法により算出した。
【0018】
シリカ多孔体の比表面積は400〜2000m2/g以上、好ましくは600〜2000m2/gの範囲内である。比表面積が400m2/gより小さいとルテニウムを高分散に担持できない場合がある。また、比表面積が2000m2/gより大きいのものは、製造するのが実質的に困難である。本発明におけるシリカ多孔体の比表面積は、公知の窒素吸脱着により算出した。
【0019】
さらに、シリカ多孔体はそのX線回折パターンにおいてd間隔が2.0nmより大きいに位置に少なくとも1つのピークを有する。X線回折ピークはそのピーク角度に相当するd値の周期構造が試料中にあることを意味する。したがって、2nm以上のd値に相当する回折角度に1本以上のピークがあることは、細孔が2nm以上の間隔で規則的に配列していることを意味する。本発明におけるシリカ多孔体のX線回折パターンは全自動X線回折装置により測定した。
【0020】
本発明におけるシリカ多孔体の製造方法としては、特に限定されるものではないが、例えば次のようにして製造できる。まず、無機原料と有機原料を混合し、反応させることにより、有機物を鋳型としてそのまわりに無機物の骨格が形成された有機物と無機物の複合体を形成させる。次いで、得られた複合体から有機物を除去することにより、シリカ多孔体を製造する。
【0021】
無機系骨格成分としては、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラプロポキシシラン等のアルコキシシラン、ケイ酸ソーダ、カネマイト(kanemite、NaHSi2O5・3H2O)あるいはシリカを用いることができる。これらの骨格成分はシリケート骨格を形成する。これらは、単独で又は2種以上を混合して用いることができる。
【0022】
鋳型として使用される有機原料は、特に限定されるものではないが、例えば界面活性剤が挙げられる。界面活性剤は陽イオン性、陰イオン性、非イオン性のうちのいずれであってもよく、具体的には、アルキルトリメチルアンモニウム(好ましくはアルキル基の炭素数が8〜18のアルキルトリメチルアンモニウム)、アルキルアンモニウム、ジアルキルジメチルアンモニウム、ベンジルアンモニウムの塩化物、臭化物、ヨウ化物あるいは水酸化物の他、脂肪酸塩、アルキルスルホン酸塩、アルキルリン酸塩、ポリエチレンオキサイド系非イオン性界面活性剤、一級アルキルアミン、トリブロックコポリマー型のポリアルキレンオキサイド等が挙げられる。
上記の界面活性剤のうちの1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0023】
無機原料と有機原料を混合する場合、適当な溶媒を用いることができる。溶媒としては、特に限定されるものではないが、例えば水、有機溶媒、水と有機溶媒との混合物等をが挙げられる。
無機物と有機物の複合体の形成方法は特に限定されるのものではないが、例えば、有機原料を溶媒に溶解後、無機原料を添加し、所定のpHに調製した後に、反応混合物を所定の温度に保持して縮重合反応を行う方法が挙げられる。縮重合反応の反応温度は使用する有機原料や無機原料の種類や濃度によって異なるが、通常0℃〜100℃であり、好ましくは35℃〜80℃である。
縮重合反応の反応時間は通常、8時間〜24時間である。また、上記の縮重合反応は、静置状態、撹拌状態のいずれで行ってもよく、またそれらを組み合わせて行ってもよい。
【0024】
上記縮重合反応後に得られる複合体から有機原料を除去することによって、シリカ多孔体を得ることができる。ここで、有機物と無機物の複合体からの有機物の除去は、400〜800℃で焼成する方法、水やアルコール等の溶媒で処理する方法等により行うことができる。
【0025】
本発明において、ルテニウムはシリカ多孔体の細孔内に粒径1〜5nmの粒子状に担持されていることが望ましい。粒子径が1nmより小さい場合、及び5nmより大きい場合はメタン化触媒活性が低下して好ましくない。また、シリカ多孔体の細孔外に担持した場合は、金属の粒子成長が進行し粗大な粒子となりメタン化触媒活性が低下して好ましくない。
【0026】
本発明において、ルテニウム原料としては塩化ルテニウム、硝酸ルテニウム等が使用できる。
ルテニウムをシリカ多孔体の細孔内に粒径1〜5nmの粒子状に担持する方法として、特に制限はないが、通常、ルテニウム原料を含む水溶液を調製し、シリカ多孔体に担体に含浸させ、ついで乾燥する。乾燥条件は特に制限はないが、通常80〜200℃で乾燥する。乾燥した後、還元して一酸化炭素メタン化用触媒を得ることができる。
【0027】
還元方法として、還元剤、熱、光等で処理する方法を用いることができる。いずれの処理方法を用いるかは金属原料の種類にもよるが、金属原料である塩、錯塩が分解して金属粒子を生成する条件を設定する。また、過度の処理は生成したルテニウム粒子のシンタリングによる粒子径の増大の可能性があるので、適当な条件の設定が必要である。
例えば塩化ルテニウムを用いた場合では、還元剤として水素を使用し、200℃以上で処理を行う。
【0028】
本発明の一酸化炭素メタン化触媒をCOとCO2を含む水素ガスと接触させることで、選択的にCOをメタンに変換して除去することができる。接触方式は特に制限されないが、固定床方式が望ましい。反応温度は100〜400℃が好ましく、120〜300℃がさらに好ましく、130〜250℃が最も好ましい。反応温度が低すぎるとCOの転化率が充分ではない場合があり、反応温度が高すぎるとCOの反応選択性が充分ではない場合がある。
次に、実施例を示しつつ、本発明を更に詳細に説明するが、本発明の技術的範囲は下記実施例によっては限定されない。
【実施例】
【0029】
製造例1(シリカ多孔体の合成)
水ガラス(1号珪酸ソーダ)(SiO2/Na2O=2.00)50gにドコシルトリメチルアンモニウムブロマイドを0.1mol含むイオン交換水1Lに添加し70℃にて溶解した。さらに2NのHClを添加して、pHを8.5に調整し70℃で3時間撹拌した。その後水洗を5回繰り返し、40℃で乾燥した。この乾燥粉末を窒素ガス中450℃で3時間加熱した後、空気中550℃にて6時間焼成し、シリカ多孔体Aを得た。
【0030】
得られたシリカ多孔体Aの細孔分布をQuantachrome社製窒素吸着装置(Quadrasorb SI)で測定し、BJH法により求めたところ、平均細孔径は4.2nmであった(図1)。また、得られたシリカ多孔体をX線蛍光分析装置で測定したところ、チタニウムの含有量は0.05重量%以下であった。また、シリカ多孔体Aをリガク社製X線回折装置(RINT2000)で分析したところ、X線回折のd間隔が5.0nmの位置にピークを有していた(図2)。さらに、シリカ多孔体Aの比表面積を窒素吸脱着法により算出したところ970m2/gであった。
【0031】
製造例2(シリカ多孔体への液相法によるチタニウムの導入)
製造例1で得たシリカ多孔体A 5gに、2.5gのチタンイソプロポキシドを含むn‐イソプロパノール溶液5mlを含浸させ120℃で24時間乾燥させる工程を2度繰り返し、チタニウムを含有するシリカ多孔体A1を得た。
得られたシリカ多孔体A1の細孔分布をQuantachrome社製窒素吸着装置(Quadrasorb SI)で測定し、BJH法により求めたところ、平均細孔径は3.7nmであった(図3)。また、得られたシリカ多孔体A1のチタニウム含量をX線蛍光分析装置で測定したところ、33.0重量%であった。また、シリカ多孔体A1をリガク社製X線回折装置(RINT2000)で分析したところ、X線回折のd間隔が4.9nmの位置にピークを有していた(図4)。さらに、シリカ多孔体A1の比表面積を窒素吸脱着法により算出したところ741m2/gであった。
【0032】
実施例1(一酸化炭素メタン化触媒の製造)
製造例2で得たシリカ多孔体A1を3g、シュレンク管に入れて100℃に加熱し、1×10−4mmHgで2時間真空脱気を行った。
50mlナス型フラスコに塩化ルテニウムn水和物(RuCl3・nH2O)0.18gと6N塩酸4.8mlとを入れて60℃で加温溶解し、塩化ルテニウム水溶液を調製した。
【0033】
得られた塩化ルテニウム水溶液に水80mlを加え、さらにシリカ多孔体A1を加えて24時間撹拌した。その後、70℃に加熱しながらエバポレータを用いて水を留去し、さらに110℃のオーブンで24時間乾燥した。
次に、得られた残留物を空気中200℃で2時間焼成し、乾燥水素気流中350℃で3時間還元することにより本発明の一酸化炭素メタン化触媒A1を得た。一酸化炭素メタン化触媒A1のルテニウム担持量は、全自動蛍光X線分析装置(XRF−1700WS)で測定した結果5質量%であった。透過電子顕微鏡観察により粒径2〜3nmのルテニウム粒子が細孔に沿って一定の間隔で並んでいる様子が観察された(図5,6)。
【0034】
製造例3
製造例1で得たシリカ多孔体に、塩化チタンを原料としてCVD法によりチタニウムを導入し、チタニウムを含有するシリカ多孔体A2を得た。得られたシリカ多孔体A2の平均細孔径は3.9nmであった(図7)。また、得られたシリカ多孔体A2のチタニウム含量をX線蛍光分析装置で測定したところ、8.8重量%であった。また、シリカ多孔体A2をリガク社製X線回折装置(RINT2000)で分析したところ、X線回折のd間隔が4.9nmの位置にピークを有していた(図8)。さらに、シリカ多孔体A2の比表面積を窒素吸脱着法により算出したところ835m2/gであった。
【0035】
実施例2
シリカ多孔体A1に代えて、シリカ多孔体A2を用いた以外は実施例1と同様の方法で一酸化炭素メタン化触媒A2を得た。透過電子顕微鏡観察により粒径2〜3nmのルテニウム粒子が細孔に沿って一定の間隔で並んでいる様子が観察された(図9)。
【0036】
製造例4
ドコシルトリメチルアンモニウムブロマイドに代えて、ヘキサデシルトリメチルアンモニウムブロマイドを用いた以外は実施例1と同様の方法でシリカ多孔体Bを得た。続いてシリカ多孔体Aに代えてシリカ多孔体Bを用いる以外は製造例2と同様の方法でシリカ多孔体B1を得た。得られたシリカ多孔体B1の平均細孔径は2.3nmであった。また、チタニウム含量をX線蛍光分析装置で測定したところ、32.7重量%であった。また、リガク社製X線回折装置(RINT2000)で分析したところ、X線回折のd間隔が3.7nmの位置にピークを有していた。さらに、シリカ多孔体B1の比表面積を窒素吸脱着法により算出したところ734m2/gであった。
【0037】
実施例3
シリカ多孔体A1に代えて、シリカ多孔体B1を用いた以外は実施例1と同様の方法で一酸化炭素メタン化触媒Bを得た。透過電子顕微鏡観察により粒径2〜3nmのルテニウム粒子が細孔に沿って一定の間隔で並んでいる様子が観察された。
【0038】
比較例1
シリカ多孔体A1に代えて、製造例1で得たチタニウムを含有しないシリカ多孔体を用いた以外は実施例1と同様の方法で一酸化炭素メタン化触媒Cを得た。透過電子顕微鏡観察により粒径2〜3nmのルテニウム粒子が細孔に沿って一定の間隔で並んでいる様子が観察された(図10)。
【0039】
比較例2
微粒子シリカ(アエロジル300(日本アエロジル株式会社製))1.35gと微粒酸化チタン(和光純薬製)1.65gをよく混合しシリカと酸化チタンの混合粉体を得た。この混合粉体のチタニウム含量をX線蛍光分析装置で測定したところ、32.7重量%であった。また、この混合粉体をリガク社製X線回折装置(RINT2000)で分析したところ、X線回折のd間隔が2nmより大きいところにピークが存在しなかった(図11)。さらに、混合粉体の比表面積を窒素吸脱着法により算出したところ162m2/gであった。
【0040】
シリカ多孔体A1に代えて、上記のシリカと酸化チタンの混合粉体を用いた以外は実施例1と同様の方法で一酸化炭素メタン化触媒Dを得た。透過電子顕微鏡観察により凝集したルテニウム粒子がシリカおよび酸化チタンの外表面に担持されている様子が観察された。
【0041】
試験例1(一酸化炭素メタン化触媒を用いたCO除去反応)
直径8mmのSUS製反応管に石英ウールを入れて、ガラスビーズ1.5gと一酸化炭素メタン化触媒0.1gを混合して充填し、反応管の外周にヒーターを設置して一酸化炭素メタン化器を作成した。触媒層の温度は、触媒層に埋設した熱電対でモニタし、前記ヒーターにより触媒層の温度を調節した。
【0042】
触媒層は反応開始前に、水素気流下350℃で2時間前処理を行った後、室温まで冷却することで活性化を行った。
その後反応管に、模擬反応ガス(CO;0.6%、CO2;20.0%、水素バランスの混合ガス)を、マスフローメーターを用いてガス流量3000ml/(h・g―触媒)で導入し、触媒層において反応を行った。
【0043】
なお反応中には、石鹸膜流量計で所定の流量が流れているのか確認を行った。
触媒層温度を140℃〜230℃に変化させて一酸化炭素メタン化反応を行い、反応管出口でガス組成を、ガスクロマトグラフによって測定した結果を表1に示した。
なお、CO選択率は下記式により算出した。
【0044】
【数1】
【0045】
【表1】
【0046】
CO濃度<10ppm、選択率>50%となった反応条件を太字で標記した
【0047】
比較例1、2に示した一酸化炭素メタン化触媒C、DではCOの除去活性が低く、また、COの反応選択率が悪くCO2のメタン化反応が進行し、水素が浪費されてしまった。これに対し実施例に示した一酸化炭素メタン化触媒A1は反応温度150℃より高い温度では一酸化炭素を100%除去することができ、さらに210℃まで50%以上という高いCO反応選択率を維持することができた。また、実施例2および3に示した一酸化炭素メタン化触媒A2、一酸化炭素メタン化触媒Bもこれに近い性能を示した。
【0048】
このように本発明の一酸化炭素メタン化触媒は従来の触媒と比較し、低温から広い反応温度域でCOをメタン化して除去できる活性を有するとともに、導入ガス中にCO2が含まれていてもCOに対して高い反応選択性を有することができ、燃料電池の水素精製において安定した性能を付与することができる。
【産業上の利用可能性】
【0049】
本発明の、一酸化炭素選択メタン化触媒は、低温から広い反応温度域でCOをメタン化して除去できるとともに、導入ガス中にCO2が含まれていてもCOに対して高い反応選択性を有することができ、燃料電池に供給する水素の精製において安定した性能を付与することができき、産業上貢献大である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
チタニウムの含有量が1〜49質量%であるシリカ多孔体と、ルテニウムから構成されることを特徴とする一酸化炭素メタン化触媒。
【請求項2】
シリカ多孔体が1〜10nmの平均細孔直径を有し、400〜2000m2/gの比表面積を有し、X線回折のd間隔が2.0nmより大きいに位置に少なくとも1つのピークを有することを特徴とする請求項1記載の一酸化炭素メタン化触媒。
【請求項3】
触媒中のルテニウムの含有量が0.5〜20重量%の範囲であり、シリカ多孔体の細孔内に粒径1〜5nmの粒子状に担持されていることを特徴とする請求項1または2に記載の一酸化炭素メタン化触媒。
【請求項4】
請求項1〜3いずれかに記載の一酸化炭素メタン化触媒に、水素と一酸化炭素と二酸化炭素を含有する混合ガスを接触させ一酸化炭素を選択的にメタン化することを特徴とする一酸化炭素除去方法。
【請求項1】
チタニウムの含有量が1〜49質量%であるシリカ多孔体と、ルテニウムから構成されることを特徴とする一酸化炭素メタン化触媒。
【請求項2】
シリカ多孔体が1〜10nmの平均細孔直径を有し、400〜2000m2/gの比表面積を有し、X線回折のd間隔が2.0nmより大きいに位置に少なくとも1つのピークを有することを特徴とする請求項1記載の一酸化炭素メタン化触媒。
【請求項3】
触媒中のルテニウムの含有量が0.5〜20重量%の範囲であり、シリカ多孔体の細孔内に粒径1〜5nmの粒子状に担持されていることを特徴とする請求項1または2に記載の一酸化炭素メタン化触媒。
【請求項4】
請求項1〜3いずれかに記載の一酸化炭素メタン化触媒に、水素と一酸化炭素と二酸化炭素を含有する混合ガスを接触させ一酸化炭素を選択的にメタン化することを特徴とする一酸化炭素除去方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図7】
【図8】
【図11】
【図5】
【図6】
【図9】
【図10】
【図2】
【図3】
【図4】
【図7】
【図8】
【図11】
【図5】
【図6】
【図9】
【図10】
【公開番号】特開2012−250143(P2012−250143A)
【公開日】平成24年12月20日(2012.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−122537(P2011−122537)
【出願日】平成23年5月31日(2011.5.31)
【出願人】(000204181)太陽化学株式会社 (244)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年12月20日(2012.12.20)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年5月31日(2011.5.31)
【出願人】(000204181)太陽化学株式会社 (244)
【Fターム(参考)】
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