説明

一酸化窒素調節剤、それを含有する飲食品、食品添加物、医薬及び香粧品

【課題】 継続的に使用しても安全かつ効果的な、一酸化窒素産生量を調節することより、血管内皮機能改善作用を高めることが可能な一酸化窒素調節剤、それを含有する飲食品、食品添加物、医薬及び香粧品を提供する。
【解決手段】
(1)リンゴ抽出物を有効成分として含有してなることを特徴とする一酸化窒素調節剤。
(2)前記一酸化窒素調節剤を含有することを特徴とする飲食品、食品添加物、医薬及び香粧品。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は一酸化窒素産生量を調節することことにより血管内皮機能を改善する一酸化窒素調節剤、それを含有する飲食品、食品添加物、医薬及び香粧品に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、食生活やライフスタイルの変化に伴って生活習慣病が増加している。生活習慣病とは高脂血症、高血圧症、糖尿病などに加え狭心症、心筋梗塞、脳循環障害、悪性腫瘍など生活習慣を改善することによって発病を予防することができると考えられる疾患の総称である。高脂血症、高血圧症、糖尿病などは重複して発症することが多く、合併した場合は互いにその病態を増悪させ、動脈硬化などの続発症を高率に引き起こして予後を悪化させることになる。
【0003】
最近、こういった悪循環の要因の一つに血管の内皮機能の低下が関与していることがわかってきた。血管の内皮細胞は血管拡張や単球接着抑制、血栓形成阻害などの働きをもつ種々の血管作動物質を放出して血管を保護し、動脈硬化を抑制する機能をもっている(非特許文献1、非特許文献2)。高血圧や高脂血症、糖尿病などの病態が血管を傷害し、内皮機能を低下させると、血管の収縮や単球の接着、血栓形成などがおこりやすくなり、それによってさらに高血圧が助長され、心血管病変を進展させるといった悪循環に陥ることとなる。従って血管病変の終末的な状態である動脈硬化をきたす前に、その端緒である血管内皮機能低下を発見し、病態進展を予防することが、生活習慣病の予後を改善する上で非常に重要であると考えられる。
【0004】
しかしながら、血管内皮機能低下の機序は未だ解明されていない部分も多く、多岐にわたるものと考えられている。その例として、高血糖の場合は、増加した糖化最終産物(AGE)が血管内皮のもつAGE受容体に結合することで血管内皮機能を傷害するといわれており(非特許文献3)、また高血糖に伴うインスリン抵抗性の増大からくる高インスリン血症も血管内皮機能を低下させることがわかっている(非特許文献4)。高コレステロール血症を有する場合、血中の酸化LDLの増加が血管内皮細胞への単球接着を促すことで血管内皮機能を低下させるとも言われており(非特許文献5)、また、高血圧についてはズリ応力増大、レニン−アンジオテンシン系の活性化による血管収縮などによる血管壁への機械的刺激も原因のひとつと考えられる。一方、血管内皮機能が低下すると、血管を弛緩させる作用を有する一酸化窒素の産生が低下し血管が収縮するため、血圧上昇を招き、糖代謝に関しては、骨格筋への血流低下からインスリンの供給能の低下、つまりインスリン抵抗性の増大が促進されると考えられる。また血管内皮機能の低下は血管内皮細胞膜上に存在するリポ蛋白リパーゼの低下をきたし、血中での脂質代謝の異常を招くことになる(非特許文献6)。
【0005】
このように、生活習慣病には血管内皮機能を中心とした悪循環が存在することがわかっており、その治療には血糖や血圧などの端緒に現れた現象を治療するだけでなく、基盤にひそんでいる血管内皮機能の改善に焦点をあてる必要があると考えられる(非特許文献7)。
【0006】
一方で、血管内皮機能の改善作用をもつものとして一部の抗高脂血症薬などが挙げられるが、効能とともに副作用を考慮しなければならない。慢性的で無症候な病態である血管病変に対しては、長く安全に摂取できる食品による予防がより重要であると考えられ、血管内皮機能の改善作用をもつ食品の開発が期待されている。
【0007】
血管内皮細胞は血管の最内層を覆っている一層の扁平な細胞である。上述の通り、血管内皮細胞は一酸化窒素を産生放出し、血管拡張性、血小板機能抑制に作用し、積極的に血管内での血栓形成を防いでいる細胞であることが判明している。例えば血管の中を流れる血液が多くなると、血管内皮細胞には強いズリ応力がかかる。すると血管内皮細胞はそのメカニカルなストレスを生化学的なシグナルに置き換えて、一酸化窒素の産生が高まる。一酸化窒素は血管平滑筋細胞を弛緩させるので、血管は自動的に拡張し、血流が増す。このように血管内皮細胞は、単なるバリア役を超えた分泌機能をも発揮して、諸臓器、諸システムの機能を制御している細胞である(非特許文献8)。よって、この一酸化窒素が過剰に産生されたり、産生が抑制されることを調節することが血管内皮機能改善において非常に重要である。
【0008】
しかしながら、特許文献1でプロアントシアニジンを含む「血栓形成抑制剤及び機能性食品」が開示されているが、一酸化窒素産生量を調節することにより血管内皮機能を改善することに関しては一切言及されていない。
【0009】
また、「血管変性性疾患の予防および処置のための組成物および方法」(特許文献2)においては、ココアポリフェノールとコンドロイチン硫酸との組合せによってのみ血管変性性疾患の予防および処置がなされることが開示されている。
【0010】
「ココア成分、高められたポリフェノール含有量を有する食用製品、その製造法、および医学的利用法」(特許文献3)でも、ココアポリフェノールのみに限定しての医学的利用法が開示されている。
【0011】
さらに、「窒素酸化物の生成を促進するためにポリフェノールおよびL−アルギニンを含有する製品」(特許文献4)」ではプロシアニジンとアルギニンの組合せによってのみ、窒素酸化物の生成を促進することが開示されている。
【0012】
以上のように、上述の先行特許文献には、プロアントシアニジン又はポリフェノールの由来はブドウ種子及び松樹皮などであると開示され、リンゴ由来であるという記載はない。このように、いずれの特許文献にも、リンゴ抽出物が一酸化窒素産生量を調節する作用を有するという開示はなされていなく、一酸化窒素産生量を調節することより、血管内皮機能改善作用を高めることが可能な、簡便かつ安全な飲食品、食品添加物、医薬及び香粧品が待ち望まれていた。
【非特許文献1】Vanhoutte P. M. Hypertension. 13. 1989. 658-667.
【非特許文献2】Luscher T. F. Am J Hypertens. 3. 1990. 317-330.
【非特許文献3】Wautiar J. L. Circ Res. Aug6. 95 (3) 2004. 233-238.
【非特許文献4】Sternberg H. O. J Clin Invest. 97 (11) 1996. 2601-2610.
【非特許文献5】沢村達也、遺伝子医学、2. 2. 1998. 290-292.
【非特許文献6】島本 和明、インスリン抵抗性と生活習慣病、2003. 50-53.
【非特許文献7】Ross R. N Eng J Med. 314. 1986. 488-500.
【非特許文献8】日本抗加齢医学会専門医・指導士認定委員会編集、アンチエイジング医学の基礎と臨床、2004. 87-90.
【特許文献1】特開2004-238289公報
【特許文献2】特表2001-511153公報
【特許文献3】特開2003-204758公報
【特許文献4】特表2002-505864公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明の目的は、継続的に使用しても安全かつ効果的な、一酸化窒素産生量を調節することより、血管内皮機能改善作用を高めることが可能な一酸化窒素調節剤、それを含有する飲食品、食品添加物、医薬及び香粧品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記課題を解決するため鋭意研究を重ねた結果、本発明者はリンゴ抽出物が、一酸化窒素調節作用を有することを見出し、本発明を完成するに至った。
【0015】
すなわち、本発明は以下の内容を要旨とするものである。
(1)リンゴ抽出物を有効成分として含有してなることを特徴とする一酸化窒素調節作用剤。
(2)前記リンゴ抽出物がリンゴ由来ポリフェノールであることを特徴とする(1)に記
載の一酸化窒素調節作用剤。
(3)前記リンゴ由来ポリフェノールは、総ポリフェノール中のプロシアニジン類の含有
率が、20〜100重量%であることを特徴とする(2)に記載の一酸化窒素調節作用剤。
(4)(1)から(3)のいずれか1に記載の一酸化窒素調節作用剤を含有する飲食品。
(5)(1)から(3)のいずれか1に記載の一酸化窒素調節作用剤を含有する食品添加物。
(6)(1)から(3)のいずれか1に記載の一酸化窒素調節作用剤を含有する医薬。
(7)(1)から(3)のいずれか1に記載の一酸化窒素調節作用剤を含有する香粧品。
【発明の効果】
【0016】
本発明のリンゴ抽出物を有効成分とする一酸化窒素調節剤は、副作用が極めて少なく一酸化窒素を調節することができる。
【0017】
また、上記の一酸化窒素調節作用剤を有効成分として含有する飲食品、食品添加物、医薬及び香粧品は、副作用が極めて少なく一酸化窒素を調節することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
本発明における一酸化窒素調節作用剤は、一酸化窒素産生量を調節し、血管内皮機能を改善するものを指す。
【0019】
本発明におけるリンゴ抽出物は、バラ科リンゴ属植物の果実、例えば、フジ、陸奥、津軽、スターキング・デリシャス等の栽培品種及び原種リンゴ等より公知抽出手段により抽出して得られるものである。
【0020】
果実としては成熟果実、幼果ともに用いることができるが、より多くのポリフェノール化合物を含有すること、及び広範な生理作用を有する各種活性成分を多量に含むことから、幼果が特に好ましい。
【0021】
本発明におけるリンゴ由来ポリフェノールは、リンゴ抽出物中にポリフェノールを有効成分として含まれているものである。本発明における一酸化窒素調節剤は、リンゴ抽出物あるいはリンゴ由来ポリフェノールのいずれでもよいが、好ましくはリンゴ由来ポリフェノールである。精製度の高いリンゴ由来ポリフェノールは、飲食品等に添加する場合、おりや濁りを発生しにくく、また、飲食品等自身に与える風味の影響も抑えることができるといった加工上の応用性が高い。
【0022】
本発明におけるリンゴ由来ポリフェノールは、総ポリフェノール中のプロシアニジン類の含有率が、好ましくは20〜100重量%、より好ましくは30〜90重量%、特に好ましくは20〜65重量%である。総ポリフェノールに占めるプロシアニジン類の割合が20重量%より低いと一酸化窒素を調節する作用が低下する。プロシアニジン類の含有率が20重量%より低いということはリンゴ由来ポリフェノールに占める単量体(カテキン)の割合が80重量%以上であることを意味し、単量体の割合が80重量%以上になると一酸化窒素調節の効果を得にくくなるからである。
【0023】
本発明のリンゴ抽出物中に含有されるリンゴ由来ポリフェノールは、リンゴ果実、若しくは幼果実の搾汁果汁または、抽出液より精製されたポリフェノール画分からなるものであるが、当該ポリフェノール画分の精製は、搾汁果汁、抽出液を吸着剤で処理することにより行なわれ、吸着剤に吸着する画分(以下、吸着画分という)にポリフェノールは含有されている。吸着剤としては、ポリフェノールを吸着するものであれば特に限定されないが、例えば親水性ビニルポリマー樹脂(東ソー社製「トヨパールHW40」)、スチレン−ジビニルベンゼン樹脂(三菱化学社製「セパビーズSP−850」)、ゲル型合成樹脂(三菱化学社製「ダイヤイオンHP−20」)を挙げることができる。
【0024】
前記吸着剤に吸着した吸着画分を、例えば含水エタノール等のアルコール溶媒で溶出させることにより、ポリフェノール画分が精製される。当該ポリフェノール画分は、次いで濃縮処理することにより液体製剤を得ることができ、さらに、当該液体製剤を噴霧乾燥もしくは凍結乾燥処理することにより粉末製剤を得ることもできる。
【0025】
リンゴ由来ポリフェノールの原料となるリンゴ抽出物の抽出方法としては、例えば洗浄した原料をpH3.2〜4.6、好ましくはpH3.5〜4.3で破砕し、得られた果汁にペクチナーゼを5〜75℃、好ましくは30〜60℃で10〜100ppm、さらに好ましくは20〜30ppm添加して清澄化を行い、遠心分離後、5〜75℃、好ましくは15〜25℃で珪藻土(商品名「シリカ300S」、中央シリカ社製)濾過によりさらに清澄化を行い、清澄果汁を得る。或いはヘキサン、クロロホルム等の有機溶媒による分配及び濾過を行い、清澄抽出液としてリンゴ抽出物が得られる。
【0026】
リンゴ抽出物よりリンゴ由来ポリフェノールを得るには、次いで清澄抽出液を0〜40℃、好ましくは15〜25℃、pH1.5〜4.2、好ましくはpH1.8〜2.5で前記吸着剤を充填した吸着カラム(商品名「ダイヤイオンHP−20」、三菱化学社製)に通液し、ポリフェノール類を吸着させる。続いて純水を通液し、カラム中の非吸着物質(糖類、有機酸類等)を除去した後、10〜90%、好ましくは30〜80%のエタノールで吸着画分を溶出する。得られた吸着画分からエタノールを25〜100℃、好ましくは35〜90℃で減圧留去濃縮し、濃縮液をそのままで液体のリンゴ由来ポリフェノールとしてもよい。或いはデキストリン等の粉末助剤を添加し、噴霧乾燥又は凍結乾燥を行い、リンゴ由来ポリフェノールの抽出粉末品としてもよい。
【0027】
本発明の一酸化窒素調節剤により、一酸化窒素を調節する効果を得るための成人1日あたりの投与量は、リンゴ抽出物あるいはリンゴ由来ポリフェノールとして、100〜2500mgであるが、好ましくは150〜1500mg、更に好ましくは150〜1000mg、特に150〜750mgであるのが好ましい。
【0028】
本発明の一酸化窒素調節剤を利用する場合、ポリフェノール類の吸収の点から、1日あたりのリンゴ抽出物量またはリンゴ由来ポリフェノール量を少ない回数で摂取する方がポリフェノール類の血中濃度が高くなり、ポリフェノール類の作用を発現しやすい。
【0029】
本発明の一酸化窒素調節剤は、飲料を含む、広く食品一般に食品添加物として添加して用いることができ、例えばスープ類、飲料(ジュース、酒、ミネラルウォーター、コーヒー、茶、ノンアルコールビール等)、菓子類(ガム、キャンディー、チョコレート、スナック、ゼリー等)、麺類(そば、うどん、ラーメン等)、アルコール飲料(ビール、発泡酒、カクテル、チューハイ、焼酎、日本酒、ウィスキー、ブランデー、ワイン等)に好適に用いられる。
【0030】
本発明の一酸化窒素調節剤を含む医薬品の剤形は特に限定されないが、例えば錠剤、散剤、細粒剤、顆粒剤、カプセル剤、丸剤等の固形製剤、水剤、懸濁剤、シロップ剤、乳剤等の液剤等の経口投与剤が挙げられる。この経口投与剤は、形態に応じて当分野において通常用いられる賦形剤、崩壊剤、結合剤、滑沢剤、界面活性剤、アルコール類、水、水溶性高分子、甘味料、矯味剤、酸味料、薬剤用担体等を添加して通常使用されている方法によって製造することができる。
【0031】
また、香粧品にリンゴ由来ポリフェノールを配合しても良い。本発明における香粧品とは、化粧品、身体洗浄剤、口腔剤、入浴剤等の人体に適用する一連の製品を意味する。化粧品としては、例えば化粧水、化粧クリーム、乳液、ファンデーション、おしろい、口紅、整髪料、ヘトニック、育毛料、ヘアリンス等を挙げることができる。身体洗浄剤としては、例えば洗顔料、シャンプー、ボディーソープ等を挙げることができる。口腔剤としては、例えば練り歯磨き、先口液等を挙げることができる。香粧品を調整する場合には、通常の香粧品原料として使用されているものを適宜配合して製造することができる。
【0032】
実施例
【0033】
以下に実施例および試験例をあげ、本発明を具体的に説明する。
【0034】
(製造例1)
青森県産リンゴ幼果300kgを破砕、圧搾し果汁210kgを得た。得られた果汁にペクチナーゼ30ppmで清澄化を行い、遠心分離後、珪藻土(シリカ300S、中央シリカ社製)濾過により清澄化を行い清澄果汁を得た。清澄果汁を吸着カラム(ダイヤイオンHP−20、三菱化学社製)に通液し、ポリフェノール類を吸着させた。続いて純水を通液し、カラム中の非吸着物室(糖類、有機酸類など)を除去したのち、80%アルコールで溶出した。得られた画分からアルコールを減圧濃縮し、抽出粉末品約2kgを調製した。抽出粉末品を逆相計高速液体クロマトグラフィーを用いて検定したところ、クロロゲン酸類(約20%)、フロレチレン配糖体類(約5%)、フラボノール類(約15%)、プロアントシアニジン(約50%)及びその他褐変物質(約10%)からなることが確認できた。更に、このプロトシアジニン類は、マトリックス支援レーザーイオン化―飛行時間型質量分析計(MALDI−TOF/MS、アプライドバイオシステム社製)による解析の結果、フラボノール類であるカテキンやエビカテキンから構成される2量体から15量体までのオリゴマーやポリマーであることが確認された(M.Ohnishi−kameyama et al.Mass Spectrometry,11,31,−36,1997)。
【0035】
(プロシアニジン類の測定)
フィルター(0.8μm)でろ過した液体のリンゴ抽出物を、高速液体クロマトグラフ(日立社製、型式L7000)を用い、逆相液体クロマトグラフ用パックドカラムODS C18(4.6mmφ×250mm、GLサイエンス社製)に装着し、カラム温度35℃でグラジエント法により行った。移動相A液はリン酸カリウム10nmol/L含有の20%メタノール水溶液、B液はリン酸カリウム10nmol/Lの50%メタノール水溶液とし、試料注入量は20μL、UV検出器波長は280nmの条件で行った。
【0036】
プロシアニジン類 63.8%
成分 2量体 11.1%
3量体 12.3%
4量体 8.7%
5量体 5.9%
6量体 4.9%
7量体以上 20.9%
総ポリフェノール類 93.5%
【0037】
(実施例1) 錠剤
製造例1で得られたリンゴ由来ポリフェノール150gとラクトース90gとコーンス
ターチ17gを混合し、この混合物をあらかじめコーンスターチ70gから調整したペー
ストとともに顆粒化した。得られた顆粒にステアリン酸マグネシウム1gを加えてよく混
合し、この混合物を打錠機にて打錠して錠剤1000個を製造した。
【0038】
使用したリンゴ由来ポリフェノール:
プロシアニジン類 63.8%
成分 2量体 11.1%
3量体 12.3%
4量体 8.7%
5量体 5.9%
6量体 4.9%
7量体以上 20.9%
総ポリフェノール類 93.5%
【0039】
(比較例1) 錠剤
ラクトース140gとコーンスターチ17gとを混合し、この混合物をあらかじめコーンスターチ70gから調整したペーストとともに顆粒化した。得られた顆粒にステアリン酸マグネシウム1gを加えてよく混合し、この混合物を打錠機にて打錠して錠剤1000個を製造した。
【0040】
(試験例1) リンゴ由来ポリフェノールの一酸化窒素調節作用(ヒト)
次に、臨床試験により、リンゴ由来ポリフェノールの一酸化窒素調節作用を検討した。
【0041】
(方法)
1) 対象 有償ボランティアで、本試験への参加を自発的に志願した40歳以上、BMI24以上の日本人男性の中から、試験開始4週間前以内に実施した予備検査において血糖高値(空腹時血糖が110〜140mg/dlのもの)かつ血圧高値(収縮期血圧130〜159mmHgまたは拡張期血圧85〜99mmHg)のものとした。ただし、血管内皮機能に影響のある可能性をもつ高脂血症用薬もしくは血糖改善薬による治療を受けている者や食品アレルギーの既往のあるもの、そのほか、試験開始前の健康診断や薬剤の使用状況調査などにおいて試験責任医師が参加に不適当と判断された者は除外した。これらの条件を満たした7名を被験者とし、ヘルシンキ宣言(1964年採択、'75,'83,'89,'96, 2000年修正、2002年注釈追加)の主旨に従い、被験者に対して研究内容、方法などについて十分な説明を行い、文書による同意を得て実施した。
【0042】
2) 試験食 本試験食は、実施例1で製造されたリンゴ由来ポリフェノールを含有した錠剤(150mg/1錠)および比較例1で製造されたポリフェノールが配合されていない対照食(プラセボ錠剤)とした。また、試験実施前に、試験責任医師が、風味、香りなどの官能面やパッケージなどにより、被験飲料とプラセボ錠剤間で区別がつかないことを確認した。
【0043】
3) 摂取方法とスケジュール 試験はクロスオーバーによる2重盲検法を採用した。摂取期間を9日間、休止期間を2週間、さらに摂取期間を9日間、後観察期間を1週間と設定した。被験者には、次の方法で試験錠剤を摂取させた。
・リンゴ由来ポリフェノール含有被験錠剤(150 mg/1錠)を朝夕食時に各4錠摂取(計8錠/日)、以下 リンゴ由来ポリフェノール摂取
・プラセボ錠剤(150 mg/1錠)を朝夕食時に各4錠摂取 (計8錠/日)、以下 プラセボ摂取
なお、試験期間中は、被験者に毎日の食事内容、飲酒量、運動量について普段と変わらない生活をとるよう指示し、暴飲暴食、過度の運動は禁じた。さらに、被験食の効果をより明確とするべく、試験期間中はりんごおよびりんご製品の摂取を禁じた。
【0044】
4) 血液検査 全ての被験者に、摂取開始日、摂取9日間後(摂取終了)、後観察後において、NOx(血管内皮機能を直接反映する有効な血液学的マーカーとして一酸化窒素の代謝産物濃度(NOx)が挙げられ、分泌直後より急速に酸化を受ける非常に不安定な物質であるためその血中濃度の測定は困難であり、また検体の採取や保管の条件によって大きく変動する値であると考えられるが、一方でNOxは血中に存在するNOおよびNO2-、NO3-などの一酸化窒素代謝産物を総括した指標であるため、血管内皮細胞による一酸化窒素の分泌能をより正確に反映するものであると考えられている。)、Na、Ca、Cl、K、GPT(ALT)、LDH、γ-GTP、GOT、総蛋白質、尿素窒素、Cre、TC、TG、ALB、血糖、IRI、血球成分(白血球、赤血球、ヘモグロビン量、ヘマトクリット値、MCV、MCH、MCHC、血小板数)の測定項目を実施した。すべての検査に際しては、食事や運動などの外因的影響を避けるため、12時間以上の絶食を行い、来院後10分以上の安静状態を維持した後、座位にて採血を実施した。
【0045】
(結果) 結果を表1に示した。NOxについて、強い血管内皮機能障害を有していると考えられる本試験被験者において、リンゴ由来ポリフェノール摂取9日間後に摂取前と比較し有意に上昇した(p<0.05)。また、各種血液検査から異常は認められなかった。摂取期間中、問題となるような訴えは全く見られなかった。
【0046】
【表1】

【0047】
摂取開始日との比較:#p<0.05 (対応のあるt検定)
【0048】
(実施例2) 外用剤
ワセリン30g、流動パラフィン20g、パラフィン7g、ラノリン4gの油相成分を
混合し、75℃にて加熱溶解する。一方、セスキオレイン酸ソルビタン4g、プロピレン
グリコール2.5g、硫酸マグネシウム0.2g、パラオキシ安息香酸メチル0.2g、
精製水31.7gの水相成分を混合し、75℃にて加熱溶解し、これに香料0.2gを加
え、ホモミキサーにて均一に分散させた。この水相成分に前記油相成分を加え、ホモミキ
サーにて乳化した。乳化終了後に冷却を開始し、40℃にて実施例1で得られたリンゴ由
来のポリフェノール0.2gの成分を加え、均一に混合した。
【0049】
使用したリンゴ由来ポリフェノール:
プロシアニジン類 52.0%
成分 2量体 13.5%
3量体 15.1%
4量体 5.0%
5量体 3.4%
6量体 2.8%
7量体以上 12.1%
総ポリフェノール類 91.2%
【0050】
(実施例3) 飴
リンゴ由来ポリフェノール 5.0g
ショ糖 15.0g
水飴(75%固形分) 70.0g
水 9.5g
着色料(ダイワ化成株式会社 ハイオレンジ ) 0.05g
香料(長谷川香料株式会社 オレンジフレーバー) 0.45g
合計 100.0g
上記の各重量部の各成分を用い、常法に従って飴とした。
【0051】
(実施例4) ジュース
リンゴ由来ポリフェノール 2.5g
濃縮ミカン果汁 15.0g
果糖 2.5g
クエン酸 0.2g
香料(高砂香料株式会社 オレンジフレーバー) 0.1g
色素(三栄源 オレンジカラーベース) 0.15g
アスコルビン酸ナトリウム 0.05g
水 79.5g
合計 100.0g
上記の各重量部の各成分を用い、常法に従ってジュースとした。
【0052】
(実施例5) クッキー
リンゴ由来ポリフェノール 5.0g
薄力粉 32.0g
全卵 16.0g
バター 16.0g
砂糖 20.0g
水 10.8g
ベーキングパウダー 0.2g
合計 100.0g
上記の各重量部の各成分を用い、常法に従ってクッキーとした。
【産業上の利用可能性】
【0053】
本発明により、一酸化窒素産生量を調節できる一酸化窒素調節剤組成物が得られたので、血管内皮機能を改善できる安全性の高い飲食品、食品添加物、医薬及び香料類に利用可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
リンゴ抽出物を有効成分として含有してなることを特徴とする一酸化窒素調節剤。
【請求項2】
前記リンゴ抽出物がリンゴ由来ポリフェノールであることを特徴とする請求項1に記載の一酸化窒素調節剤。
【請求項3】
前記リンゴ由来ポリフェノールは、総ポリフェノール中のプロシアニジン類の含有率が、20〜100重量%であることを特徴とする請求項2に記載の一酸化窒素調節剤。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1項に記載の一酸化窒素調節剤を含有する飲食品。
【請求項5】
請求項1から3のいずれか1項に記載の一酸化窒素調節剤を含有する食品添加物。
【請求項6】
請求項1から3のいずれか1項に記載の一酸化窒素調節剤を含有する医薬。
【請求項7】
請求項1から3のいずれか1項に記載の一酸化窒素調節剤を含有する香粧品。

【公開番号】特開2006−328025(P2006−328025A)
【公開日】平成18年12月7日(2006.12.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−157210(P2005−157210)
【出願日】平成17年5月30日(2005.5.30)
【出願人】(000000055)アサヒビール株式会社 (535)
【Fターム(参考)】