説明

三次元バッテリー

【課題】三次元バッテリーデバイスを提供する。
【解決手段】バッテリーデバイスの第1表面2を規定するカソード集電体;複数の孔7を規定する構造体を形成する繊維6状カソードであって、該繊維状カソードの第1部分は、該カソード集電体と接触している、繊維状カソード;該繊維状カソードを形成する線維の実質的に均一なカバーを提供するために該繊維状カソード上に電着された電解質ポリマー;該複数の孔内に蒸着されかつ該電解質ポリマーによって該繊維状カソードから分離された複数のアノード粒子8;ならびに、該バッテリーデバイスの第2表面3を規定するアノード集電体を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(政府の権利)
本発明は、契約書番号N66001−04−C−8025および契約書番号N00164−03−C−6030に基づいて政府の支援によってなされた。これら支援は、米国海軍によって授与された。政府は、本発明において一定の権利を有し得る。
【0002】
(発明の分野)
一般に、本発明は、三次元バッテリーに関する。特に、本発明は、繊維および/または電気活性物質(electroactive material)として機能する複数の粒子を含む相互浸透連続電極(interpenetrating,co−continuous electrode)を含むバッテリーデバイスに関する。
【背景技術】
【0003】
(発明の背景)
過去10年間、携帯型電子デバイスの全世界的な需要が、携帯型エネルギー貯蔵デバイスの開発に非常に大きな影響を及ぼしてきた。カソードおよびアノードとの間でリチウムイオンが往復するバッテリーは、高性能再充電可能バッテリー市場の選択した電源として出現している。従来のバッテリーの厚みのある金属プレートは、より軽くかつより小型のリチウムイオン電池に取って代わられている。今日のバッテリーにおける材料は、とって代わられる技術のものとは異なるが、その電池の基本的な二次元特徴および層毎の構築様式(layer−by−layer construction)は、残っている。
【0004】
平面の二次元構築様式は、例えば、サイズに対するエネルギー貯蔵容量の点で、いくつかの欠点をもたらした。欠点としては、遅いイオン輸送、電池内での粒子凝集、粒子間接触抵抗(particle to particle contact resistance)、および結合剤(これは、粒子が電子貯蔵容量に効率的に寄与するのを妨げる)中の粒子の閉じこめ(containment)が挙げられる。これらの問題に対処するために、電極の厚みが、従来の二次元デバイスにおいて最小にされ得る。しかし、電極の厚みを減少させると、固定容量中の電気活性物質の分別の低下が生じ、結果として、電池容量の低下を生じる。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0005】
(発明の要旨)
本発明は、一実施形態において、三次元バッテリーデバイスを特徴とする。繊維および/または複数の粒子は、上記バッテリーデバイスの電極材料として機能し得る。バッテリーデバイスを作製するための技術がまた、提供される。バッテリーデバイスは、そのサイズに対して高エネルギー貯蔵容量を備え得、安定な単一の電池の電位を用いて比較的高い電流を発生させ得る。バッテリーデバイスは、小規模分離デバイス(small scale distributed device)(例えば、電力のバースト(a burst of power)を要するセンサおよびロボット)において使用され得る。バッテリーデバイスは、効率的にマイクロスケールにされ得、従って、種々のサイズの拘束された適用に適用可能である。バッテリーデバイスは、期待実行時間が数年間ある自律デバイスにおいて使用され得る。
【0006】
一局面において、本発明は、カソード集電体と、繊維状カソードと、電解質ポリマーと、複数のアノード粒子と、アノード集電体とを含むバッテリーデバイスを特徴とする。上記カソードおよびアノード集電体は、それぞれ、上記バッテリーの第1表面および第2表面を規定する。上記繊維状カソードの第1部分は、上記カソード集電体と接触している。上記繊維状カソードは、複数の孔を規定する構造体を形成する。電解質ポリマーは、上記繊維状カソードを形成する繊維の実質的に均一なカバーを提供するために、上記繊維状カソード上に電着される。複数のアノード粒子は、上記複数の孔内に蒸着されかつ上記電解質ポリマーによって上記繊維状カソードから分離される。
【0007】
別の局面において、本発明は、アノード集電体と、繊維状アノードと、電解質ポリマーと、複数のカソード粒子と、カソード集電体とを含むバッテリーデバイスを特徴とする。上記アノードおよびカソード集電体は、それぞれ、上記バッテリーの第1表面および第2表面を規定する。上記繊維状アノードの第1部分は、上記アノード集電体と接触している。上記繊維状アノードは、複数の孔を規定する構造体を形成する。電解質ポリマーは、上記繊維状アノードを形成する繊維の実質的に均一なカバーを提供するために、上記繊維状アノード上に電着される。複数のカソード粒子が、上記複数の孔内に蒸着されかつ上記電解質ポリマーによって上記繊維状アノードから分離される。
【0008】
なお別の局面において、本発明は、バッテリー構造体を形成する方法を特徴とする。接着剤が、第1集電体に付与される。繊維が、溶融繊維および複数の孔を有するメッシュを形成するために、上記接着剤上に電気紡糸される。ポリマーが、上記溶融繊維の外側表面上に被覆を提供するために、上記メッシュ上に電着される。電極粒状物は、上記複数の孔の中に浸潤される。上記溶融繊維の外側表面上の被覆は、上記電極粒状物と上記溶融繊維との間の直接接触を妨げる。
【0009】
別の例において、上記局面のいずれかは、以下の特徴のうちの1つ以上を含み得る。いくつかの実施形態において、上記繊維状カソードおよび/またはアノードは、繊維の電気紡糸メッシュであり得る。上記繊維は、セラミック繊維、カーボン繊維、および/またはLiNi0.7Co0.3繊維であり得る。特定の実施形態において、上記電極のうちの1つ以上は、電気的に一様にしたメッシュを提供するために実質的な繊維間接触を示し得る。上記繊維は、約50nmと約1,000nmとの間の厚みを有し得る。上記バッテリーは、リチウムベースのバッテリーであり得る。
【0010】
アノード粒子は、カーボンナノ粒子を含み得る。カソード粒子は、セラミックナノ粒子を含み得る。ゾル−ゲル技術が、上記電極粒子を形成しかつこれら粒子を上記複数の孔内に分散させるために使用され得る。上記電解質ポリマーは、ポリ(フェニレンジアミン)を含み得る。一実施形態において、ポリ(フェニレンジアミン)は、電着後に液体電解質溶液に曝される。上記電解質ポリマーは、約5nm〜約100nmの厚みになるように、上記繊維の上に被覆され得る。
【0011】
特定の実施形態において、第2集電体は、上記バッテリー構造体の上記第1集電体とは反対側に取り付けられ得る。カーボン繊維が電気紡糸され得る。そして上記カーボン繊維は熱分解されて、溶融繊維および複数の孔を有する上記メッシュを形成し得る。剛性支持体が、熱分解の間に上記カーボン繊維の上および/または下に配置され得る。
【0012】
いくつかの実施形態において、ポリマーが、溶液から電着され得る。上記溶液のモノマー濃度は、約0.1mMと約1.0Mとの間であり得る。パルス状電圧が、上記メッシュを横切って印加され得る。セラミック繊維が電気紡糸され得る。上記セラミック繊維は熱分解されて、溶融繊維および複数の孔を有する上記メッシュを形成し得る。熱分解が、約500℃と約2,500℃との温度で行われ得る。
【0013】
種々の実施形態において、電極粒状物が、上記電極粒状物を含む溶液を上記メッシュに適用することによって上記複数の孔に浸潤され得る。上記電極粒状物は、ナノサイズにされた電極材料の粒子を含み得る。上記浸潤は、上記電極粒状物を形成するための要素を含む溶液を上記メッシュに適用する工程を包含し得る。上記溶液は、上記複数の孔内に上記電極粒状物を形成するために反応させられ得る。いくつかの実施形態において、上記バッテリー構造体は、液体電解質溶液に浸漬され得る。
【0014】
1つ以上の例の詳細が、添付の図面および詳細な説明において記載される。本発明のさらなる特徴、局面、および利点は、詳細な説明、図面および特許請求の範囲から明らかになる。
【0015】
したがって、本発明は以下の項目を提供する:
(項目1)
バッテリーデバイスであって:
このバッテリーデバイスの第1表面を規定するカソード集電体;
複数の孔を規定する構造体を形成する繊維状カソードであって、この繊維状カソードの第1部分は、このカソード集電体と接触している、繊維状カソード;
この繊維状カソードを形成する線維の実質的に均一なカバー(coverage)を提供するためにこの繊維状カソード上に電着された電解質ポリマー;
この複数の孔内に蒸着されかつこの電解質ポリマーによってこの繊維状カソードから分離された複数のアノード粒子;ならびに
このバッテリーデバイスの第2表面を規定するアノード集電体
を含む、バッテリーデバイス。
(項目2)
上記繊維状カソードは、セラミック繊維の電気紡糸メッシュ(electrospun mesh)である、項目1に記載のバッテリーデバイス。
(項目3)
上記セラミック繊維は、約50nmと1,000nmとの間の厚みを有する、項目2に記載のバッテリーデバイス。
(項目4)
上記繊維状カソードは、電気的に一様にしたメッシュ(electrically unified mesh)を提供するために、実質的な繊維間接触(fiber to fiber contact)を示す、項目1に記載のバッテリーデバイス。
(項目5)
上記バッテリーは、リチウムベースのバッテリーデバイスである、項目1に記載のバッテリーデバイス。
(項目6)
上記繊維状カソードは、LiNi0.7Co0.3繊維から形成される、項目1に記載のバッテリーデバイス。
(項目7)
上記複数のアノード粒子は、カーボンナノ粒子を含む、項目1に記載のバッテリーデバイス。
(項目8)
上記電解質ポリマーは、ポリ(フェニレンジアミン)を含む、項目1に記載のバッテリーデバイス。
(項目9)
上記ポリ(フェニレンジアミン)は、電着後に液体電解質溶液に曝される、項目8に記載のバッテリーデバイス。
(項目10)
上記繊維状カソードを形成する上記繊維は、約5nm〜約100nmの電解質ポリマーで覆われている、項目1に記載のバッテリーデバイス。
(項目11)
バッテリーデバイスであって:
このバッテリーデバイスの第1表面を規定するアノード集電体:
複数の孔を規定する構造体を形成する繊維状アノードであって、この繊維状アノードの第1部分は、このアノード集電体と接触している、繊維状アノード;
この繊維状アノードを形成する繊維の実質的に均一なカバーを提供するためにこの繊維状アノード上に電着された電解質ポリマー;
この複数の孔内に蒸着されかつこの電解質ポリマーによってこの繊維状アノードから分離された、カソード粒状物(particulate);および
このバッテリーデバイスの第2表面を規定するカソード集電体、
を含む、バッテリーデバイス。
(項目12)
上記繊維状アノードは、繊維の電気紡糸メッシュである、項目11に記載のバッテリーデバイス。
(項目13)
上記繊維は、約50nmと1,000nmとの間の厚みを有する、項目12に記載のバッテリーデバイス。
(項目14)
上記繊維状アノードは、電気的に一様にしたメッシュを提供するために実質的な繊維間接触を示す、項目11に記載のバッテリーデバイス。
(項目15)
上記バッテリーは、リチウムベースのバッテリーデバイスである、項目11に記載のバッテリーデバイス。
(項目16)
上記繊維状アノードは、熱分解された電気紡糸カーボン繊維から形成される、項目11に記載のバッテリーデバイス。
(項目17)
上記カソード粒状物は、セラミックナノ粒子を含む、項目11に記載のバッテリーデバイス。
(項目18)
上記カソード粒状物は、ゾル−ゲル技術によって上記複数の孔内に形成されたセラミック粒状物を含む、項目11に記載のバッテリーデバイス。
(項目19)
上記電解質ポリマーは、ポリ(フェニレンジアミン)を含む、項目11に記載のバッテリーデバイス。
(項目20)
上記ポリ(フェニレンジアミン)は、電着後に液体電解質溶液に曝される、項目19に記載のバッテリーデバイス。
(項目21)
上記繊維状アノードを形成する上記繊維は、約5nm〜約100nmの電解質ポリマーで覆われている、項目11に記載のバッテリーデバイス。
(項目22)
バッテリー構造体を形成するための方法であって、この方法は:
接着剤を第1集電体に付与する工程;
この接着剤上に繊維を電気紡糸して、溶融繊維(fused fiber)および複数の孔を有するメッシュを形成する工程;
このメッシュの上にポリマーを電着させて、この溶融繊維の外側表面に被覆を提供する工程;および
電極粒状物をこの複数の孔に浸潤させる工程であって、この溶融繊維の外側表面上の被覆は、この電極粒状物とこの溶融繊維との間の直接接触を妨げる、工程、
を包含する、方法。
(項目23)
第2集電体が、上記バッテリー構造体の上記第1集電体とは反対側に取り付けられている、項目22に記載の方法。
(項目24)
繊維を電気紡糸する工程は、カーボン繊維を電気紡糸し、その後、このカーボン繊維を熱分解して、溶融繊維および複数の孔を有する上記メッシュを形成する工程を包含する、項目22に記載の方法。
(項目25)
剛性支持体が、熱分解の間に上記カーボン繊維の上下に配置される、項目24に記載の方法。
(項目26)
熱分解が、約500℃と2500℃との間の温度で生じる、項目24に記載の方法。
(項目27)
上記ポリマーを、約0.1mM と約1.0Mとの間の範囲の濃度のモノマーを含む溶液から電着する工程をさらに包含する、項目22に記載の方法。
(項目28)
上記メッシュを横切ってパルス状電圧を印加して、上記ポリマーを電着する工程をさらに包含する、項目27に記載の方法。
(項目29)
上記繊維を電気紡糸する工程は、セラミック繊維の前駆物質を電気紡糸し、その後、この前駆物質繊維を熱分解して、上記メッシュを形成しているセラミック繊維を得る工程を包含する、項目22に記載の方法。
(項目30)
約500℃と2500℃との間の温度で上記セラミック繊維を熱分解する工程をさらに包含する、項目29に記載の方法。
(項目31)
上記電極粒状物を上記複数の孔に浸潤する工程は、この電極粒状物を含む溶液を上記メッシュに適用する工程を包含する、項目22に記載の方法。
(項目32)
上記電極粒状物は、ナノサイズにした電極物質の粒子を含む、項目31に記載の方法。
(項目33)
上記電極粒状物を上記複数の孔に浸潤する工程は、上記電極粒状物を形成するための要素を含む溶液を、上記メッシュに適用する工程およびこの溶液を反応させて、この複数の孔内にこの電極粒状物を形成する工程を包含する、項目22に記載の方法。
(項目34)
上記バッテリー構造体を液体電解質溶液に浸漬する工程をさらに包含する、項目23に記載の方法。
【0016】
(概要)
バッテリーデバイスは、カソード集電体およびアノード集電体を含む。繊維状電極は、繊維状電極は、複数の孔を規定する構造体を形成する。上記繊維状電極の第1部分は、集電体と接触している。電解質ポリマーは、上記繊維状電極に電着されて、上記繊維状電極を形成する繊維の実質的に均一なカバーを提供する。複数の電極粒子は、上記複数の孔内に蒸着され、上記電解質ポリマーによって上記繊維状電極から分離されている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
上述の本発明の利点は、さらなる利点とともに、添付の図面に関連して記述される以下の記述を参照することによって、より良く理解され得る。図面は、必ずしも縮尺に基づいておらず、本発明の原理を例証する際に、代わりに強調が、概してなされる。
【0018】
図1は、第1表面2および第2表面3を有するバッテリーデバイス1を示す。繊維層5は、バッテリーデバイス1の2つの表面2および3の間に形成される。繊維層5は、複数の別個の繊維6を含む。繊維層5は、複数の孔7を規定する。複数の粒子8は、繊維層5の孔7内に配置され得る。
【0019】
2つの表面2および3は、バッテリーデバイス1の集電体であり得る。繊維6および粒子8は、バッテリーデバイス1の電極であり得る。繊維は、実質的な繊維間接触を提示し得る、メッシュを形成するために電気紡糸され得る。特定の実施形態において、第1表面2は、カソード集電体であり得、第2表面3は、アノード集電体であり得る。一部の実施形態において、第1表面2は、アノード集電体であり得、第2表面3は、カソード集電体であり得る。特定の実施形態において、繊維層5はカソードとして機能し得、複数の粒子8は、対応するアノードとして機能し得る。特定の実施形態において、繊維層5は、アノードとして機能し得、複数の粒子8は、対応するカソードとして機能し得る。
【0020】
図2は、別個の繊維6の断面図を示す。繊維6は、電解質ポリマー13で実質的に均一に被覆された、コア11を含む。コア11に適切な材料は、任意の一次バッテリーまたは二次バッテリーのアノードまたはカソード材料を含む。特定の実施形態において、コア材料は、カーボンのナノ粒子を含む。電解質ポリマー13に適切な材料は、リチウムベースの材料および有機ポリマーを含む。層15は、ポリマー13の上で、十分に均一に被覆され得る。層15は、複数の粒子8を含み得る。複数の粒子8に適切な材料は、任意の一次バッテリーまたは二次バッテリーのアノードまたはカソード材料を含む。特定の実施形態において、粒子材料は、カーボンを含む。一部の実施形態において、層15は、液体の電解質および/または溶媒を含有する溶液を含み得る。
【0021】
(繊維状カソードの調製)
(電気紡糸)
ゾルゲル化学は、繊維層を形成するために、電気紡糸と組み合され得る。カソードとして機能する繊維層を調製するために、1つ以上の金属の酢酸塩または硝酸塩が、溶媒と混合されることによって、モル濃度の点において、所望の濃度に到達し得る。適切な金属は、例えば、リチウム、ニッケル、およびコバルトを含む。適切な溶媒は、限定的にではなく、水を含む。この溶媒に対して、ポリマー結合剤(例えば、ポリ(ビニルアセテート))が添加され得、ゲルを生じる所望の粘性に到達し得る。ゲルの粘性は、濃度およびポリマー鎖の長さを制御することによって制御され得る。代表的に、溶媒/ゲルの粘性は、約500〜約1200cPの範囲内である。表1は、この目的のために使用され得る例示的なポリマーを列挙する。
【0022】
【表1】

図3は、繊維層5を形成するために使用され得る、電気紡糸装置20を示す。電気紡糸装置20は、シリンジポンプ24、溶液導入システム28、ターゲット32および高電圧供給器36を含む。導入システム28は、不反応材料、例えばテフロン(登録商標)またはステンレス鋼から作られ得、ノズルまたは針であり得る。ポリマー溶液/ゲル40は、シリンジポンプ24に加えられ、溶液導入システム28を介して注入され得る。導入システム28の先端に液滴が形成され得、電流が印加されるときには、繊維のマットがターゲット32の上に蒸着し得る。ターゲット32は、導入システム28から距離44に配置され得る。
【0023】
特定の実施形態において、約1.25mmの液滴が、先端に形成される。距離44は、約5cm〜約20cmの間であり得る。電流は、約5kV〜約30kVの間の電圧を有し得る。表2は、ゾルゲル40の前駆体処方物の例を示す。
【0024】
【表2】

特定の実施形態において、ターゲット32は、集電体である。例えば、形成された繊維層がカソードであるときには、ターゲット32は、カソード集電体であり得る。特定の実施形態において、集電体は、適切な金属(例えば、ニッケル)のストリップであり得る。一実施形態において、集電体は、1cm×3cmの金属のストリップである。約10nm〜5μmの繊維が、形成され得るが、用途に応じて、より薄いまたはより厚い繊維が形成され得る。蒸着した繊維の厚さは、約 50nm〜約nm−1000nmの間であり得るが、用途に応じて、より薄いまたはより厚い繊維のメッシュが、形成され得る。繊維は、十分な量の繊維間接触を示し、一様にしたメッシュをもたらす。複数の孔が、一様にしたメッシュの結果として生成され得る。図4A〜図4Dは、加熱処理される前の、繊維状カソードの走査電子顕微鏡写真(SEM)イメージを示す(図4A−100倍率、4B−500倍率、図4C−5,000倍率、および図4D−15,000倍率)。
【0025】
(加熱処理)
電気紡糸によって蒸着した繊維は、約400℃〜約800℃の温度において、加熱処理(例えば、熱分解)を受け得る。加熱処理は、結晶材料をもたらし、より良好なバッテリー性能を提供し得る。図5A〜図5Bは、600℃にまで加熱処理されたカソード 繊維のSEMイメージを示す(図5A−1,000倍率、および図5B−2,000倍率)。図6は、600℃で加熱処理されたカソード繊維のX線回折(XRD)分析を示す。矢印によって示された比較的広く、弱いピークは、材料の結晶構造を表す。
【0026】
(電解質の蒸着)
適切な電解質ポリマーは、カソード繊維上に蒸着され得る。上記バッテリーデバイスが、リチウムイオンバッテリーである場合、電解質ポリマーは、その電子伝導性および/またはリチウム伝導性に基づいて選択され得る。通常は、対応するモノマー(例えば、フェニレンジアミン)が、適切な溶媒(例えば、過塩素酸リチウム)と混合され得る。溶液は、3電極バッテリーに加えられ得、該バッテリーにおいて、カソード繊維が作用電極として機能し得る。プラチナ電極が、対向電極として用いられ得、銀/銀クロリドが、参照電極として用いられ得る。モノマーは、酸化的に電気重合化されることによって、カソード繊維の上に、実質的に均一なフィルムを形成し得る。図7は、フェニレンジアミンモノマーが存在する中で荷電した表面において発生し得る、重合化学を示す。図7において、ポリ(フェニレンジアミン)(PPD)ポリマー48の層が、アノード面52に存在する。約5nm〜約100nmの間の蒸着の厚さが、電極を横切って印加される電圧を制御することによって達成され得るが、より薄いまたはより厚い層も、用途に応じて適用され得る。
【0027】
図8A〜図8Bは、PPDの電着の前および後のカソード繊維のSEMイメージを示す。蒸着サイクルは、静止サイクルと交互にされることによって、実質的に均一および完全なカソード繊維の被覆を取得し得る。静止サイクルは、通常は適切な静止電位(例えば、0.0ボルト)における数秒の滞留時間を含む。電解質蒸着は、400サイクルまでを含み得、結果的に生じる電解質層の厚さは、約5nm〜約1000nmの間であり得るが、より薄いまたはより厚い層も、用途に応じて適用され得る。図8において、繊維の第1部分56aおよび56bは、約49nmのPPD被覆を受け、繊維の第2部分60aおよび60bは、約198nmのPPD被覆を受け、繊維の第3部分64aおよび64bは、約85nmのPPD被覆を受けた。
【0028】
(繊維状カソードを含むバッテリーデバイスの調製)
(アノード蒸着)
アノード材料は、通常はカーボン(例えば、グラファイトのナノ粒子)を含む。市販されているプレート様グラファイト/カーボン粒子、例えばStructure Probe Inc.(West Chester、PA)から入手可能なグラファイト粒子が、用いられ得る。粒子は、溶媒(例えば、イソプロパノール)の中で混合される。ポリマー結合剤の溶液(例えば、ジメチルホルムアミドにおけるポリビニルフルオライド)が、アノード材料の溶液に加えられ得る。結果的に生じる溶液/懸濁液は、電解質で被覆された繊維に液滴の様式で加えられ得る。毛管作用が、繊維メッシュ内の孔に流体を浸潤させ、アノード材料を均一に分散し得る。溶媒は、上昇させた温度および/または減圧下で乾燥することによって除去され得る。図9A〜図9Bは、蒸着したアノード材料に部分的にカプセル化された、電解質で被覆されたカソード繊維を示す。領域68aおよび68bは、被覆されていない繊維の領域であり、領域72aおよび72bは、被覆された繊維の領域である。
【0029】
(アノード集電体)
アノード集電体は、金属(例えば、銅)から形成され得る。特定の実施形態において、アノード集電体は、厚さが約5nm〜約20nmの付着層によって被覆される。アノード集電体は、蒸着したアノード材料の上にスタックされ得る。カソードおよびアノード集電体は、バッテリーデバイスの端末として機能し得る。
【0030】
(繊維状アノードを含むバッテリーデバイスの調製)
同様の技術が、繊維状層がアノードとして機能するバッテリーデバイスを調製するために用いられ得る。例えば、繊維状アノードは、アノード集電体として機能し得る適切なストリップの上に調製され得る。繊維状アノードは、カーボン繊維の電気紡糸メッシュであり得る。カーボン繊維は、例えば、熱分解などの加熱処理に供され得る。繊維状アノードは、適切な電解質層によって実質的に均一に被覆され得る。カソード材料を含む複数の粒子が、電解質層によって被覆されたカーボン繊維のメッシュ上に分散され得る。別のストリップは、対応するカソード集電体として用いられ得る。
【実施例】
【0031】
以下の実施例は、本発明をさらに例証するが、いかなる場合においても、その範囲を限定するように考慮されるべきではない。
【0032】
図10は、アノード集電体80、カソード集電体84および繊維のネットワーク88を含む、3次元バッテリーデバイス76の実施形態を示す。アノード集電体80は、銅を含む。カソード集電体84は、ニッケルを含む。繊維のネットワーク88は、LiNi0.7Co0.3繊維から形成され得る。繊維は、カソード集電体84上で繊維を電気紡糸させることによって蒸着され得る。ゾルゲル前駆体溶液は、金属酢酸塩、ポリ(ビニルアセテート)結合剤、および水を含み得る。繊維のネットワーク88は、600℃において加熱処理されることによって、カソード集電体84と直接接触する連続的な繊維ネットワークを生み得る。PPDが、電気化学的な重合によって繊維に被覆されて加えられることによって、セパレータ/電解質を形成し得る。グラファイトアノードのナノ粒子(図示していない)が、繊維のネットワーク88において規定された孔に浸潤し得る。繊維のネットワーク88とアノード集電体80との間で、接触がなされ得る。
【0033】
図11は、図10において示された繊維のネットワーク88の繊維92の断面図を示す。繊維92は、アノード集電体80およびカソード集電体84と接触している。繊維92は、コア96およびカソード集電体84上に蒸着した電解質層100を含む。繊維92は、LiNi0.7Co0.3ナノ繊維であり得る。コアは、約100nm〜約500nmの間であり得る。電解質層100は、固体であり得、リチウムイオンを含み得る。電解質層100は、約10nm〜約50nmの厚さを有し得る。グラファイトアノード材料104が、繊維92に適用され得、該繊維において規定された孔に浸潤し得る。
【0034】
(カソード製造)
LiNi0.7Co0.3ナノ繊維は、ゾルゲル化学および電気紡糸として公知の技術の組み合わせを介して調製され得る。例えば、リチウム、ニッケルおよびコバルトの酢酸塩または硝酸塩の水溶液を、最終な繊維の化学量論(1M Li、0.7M Ni、0.3M Co)を反映させた比率において混合した。これらの溶液に、最終的に所望の電気紡糸特性を達成するまで、候補のポリマーキャリアは、増分させて添加した。
【0035】
候補のポリマーを、水溶性であり、ある範囲の分子量であったものから選択した(例えば、表1を参照)。溶液のゲルの粘度および全体的なポリマー含有量は、独立して調整され得る。ポリマー溶液の粘度は、濃度およびポリマー鎖の長さによって決定される。例えば、600,000分子量PEOの0.1M溶液は、800,000分子量PEOの0.05M溶液と同一の粘度を有し得る。これは、溶液の金属含量を最大限にすることにおいて柔軟性を与え、一方で、溶液の電気紡糸特性を保存した。
【0036】
溶液中の塩の割合は、一定に保たれ、一方で、ポリマー含量は、約2〜40重量%の間で塩含量に対して変化した。2つの分子量における3つのポリマー全てが、溶液中に含まれ、電気紡糸が試みられた。ポリ(ビニルピロリドン(vinylpyrolidnone))が、幅広い範囲の濃度にわたって、好都合な電気紡糸特性を有した。他の許容可能な選択は、ポリ(ビニルアセテート)であった。高分子量および低分子量の両方が、強固で永続的な繊維を与えた。より容易に溶解するために、124kD材料が好まれた。最終的な電気紡糸溶液の処方物が、表2に含まれる。
【0037】
繊維は、図3に示される装置20を用いて、上の溶液処方物から電気紡糸された。電気紡糸チップと集電体ターゲットとの間の距離は、10cmに維持された。チップとターゲットとの間の印加電圧は、15kVであった。電器スピニングのジェット品質は、実時間ビデオによって監視された。
【0038】
カソード集電体は、25ミルのニッケルシートから1×3cmのストリップに切断された。ゾルゲル前駆体溶液の15nm厚の付着層は、スピン被覆(spin coating)によって、集電体の表面に適用された。2cmの集電体の表面が、覆われ、電気紡糸された繊維が、露出した部分に、約200μmの厚さまで蒸着された。
【0039】
600℃への加熱処理が、構造的に堅固で所望の結晶構造を有した繊維をもたらした。600℃で加熱処理されたカソード繊維のX線回折分析が、材料の結晶構造を確認した。比較的幅広く、弱いピークが、LiNi0.7Co0.3についての参照XRDスペクトルに対応し、これはサンプルのナノスケールの形態の特性であり、また、比較的低い加熱処理温度に起因する、ある程度の非晶質の性質の特性である。
【0040】
PPDを、ホウ酸塩の緩衝水溶液(pH=9)において、0.1M過塩素酸リチウムおよび0.01Mフェニレンジアミンを含む、成長溶液(growing solution)において電気重合させた。PPDフィルムは、段階的な電位(potential step)の方法を用いることによって、カソード繊維面上に成長した。一般的な3極セルが、作用電極としての3Dバッテリーカソード、対向電極としてのメッシュ、および参照電極としての銀/銀クロリドを用いて、組み立てられた。PPDは、1.2Vの電位を5秒間、および0.0Vを15秒間印加することによって成長した。繊維表面におけるモノマーの濃度を保証した静止電位(例えば、0.0V)におけるより長い滞留時間は、その後の滞留電圧の印加に先立って、拡散によって補充された。蒸着/静止サイクルが、PPDによる繊維面の完全なカバーを促進するために、200回適用された。
【0041】
アノード材料は、Structure Probe Inc(West Chester、NY)によって製造されたイソプロパノールにおける、プレート様グラファイト/カーボン粒子の5重量パーセントの均質の懸濁液である。この懸濁液に、ポリマー結合剤、すなわちポリ(ビニリジエンフッ化物)(PVDF)が、ジメチルホルムアミド(DMF)における溶剤として加えられることによって、アノード材料における結合剤の5重量パーセントの溶液を与える。この懸濁液は、電解質で被覆された繊維に、液滴の様式で加えられる。毛管作用が、流体を繊維のマットに均一に浸潤させ、アノード材料を分散させた。
【0042】
アノード材料の適用の後に、バッテリーは、100℃において乾燥されることによって、アノードからの最初の溶媒の除去を容易にした。この後に、減圧下、120℃でのさらなる乾燥が続き、残存するDMFを除去した。質量の差異は、アノード材料がカノード繊維の質量の約2.5倍であったことを示した。バッテリーは、アノード材料によって実質的に完全に被覆された。
【0043】
(カノードの性能)
フルセル(full cell)へのアセンブリの前に、加熱処理された繊維は、従来の3電極電気化学的電池において電気化学的に試験された。単一の区画のセルに、リチウム金属の参照電極および対向電極を合わせた。作用電極は、PPD電解質もアノード材料も含まないニッケルフォイル支持部(フルセルサンプルと正確に同様に)上の1cmのカソード繊維の蒸着物であった。電解質は、エチレンカーボネートおよびジメチルカーボネートの1:1の混合において、1.0M LiPFであった。一定の電流の充電および放電のサイクルを、非常に低い速度(1μA/cm)において実行することによって、カソード材料の固有の能力を決定した。
【0044】
図12は、特大のグラファイト対向電極に対する通常のカソードの放電応答を示す。プロットの試験は、平均2.8Vで、カソード材料に対する理論的に近い容量(260mAh/g)の、比較的にフラットな放電を示す。データはまた、高い内部抵抗を有する材料の特徴である、放電の開始における電圧の損失を示す。LiNi0.7Co0.3に対する予測される放電電圧は、グラファイトに対して約3.5ボルトである。小型直径の導線(繊維自体)の低減した結晶性および抵抗性の性質は、このシステムにおける電圧損失をもたらし得る。
【0045】
(アノードの性能)
アノード材料は、カソードと同一の方法で試験された。セルは、作用電極(アノード材料)およびリチウム対向電極および参照電極を含んだ。作用電極は、ニッケルフォイル基板上の薄いフィルムとして蒸着されたナノ粒子のアノード材料、および結合剤を含んだ。電解質は、エチレンカーボネートおよびジメチルカーボネートの1:1の混合物における1.0MのLiPFであった。一定の電流の充電および放電のサイクルを、非常に低い速度(1μA/cm)において実行することによって、アノード材料の固有の能力を決定した。
【0046】
図13は、リチウムカウンター電極に対する通常のアノード材料のサンプルの放電応答を示す。最も顕著な特徴は、例外的な容量である。600mAh/gにおいて、該サンプルは、通常のインターカレーションアノードの容量のほぼ2倍の容量を有する。所望のアノード挙動は、材料の容量にわたる低放電電圧である。このアノード材料の挙動を記述する、傾斜する放電曲線は、アノードとカノードとの間のΔVを減少させることによって、測定されたセル電圧を低減する役割を果たし得る。
【0047】
(フルセルの性能)
不完全なPPDカバーのバッテリー
図14は、セルの第1の反復の性能を記述するRagoneのプロットを示す。電解質層が非常に薄いために、これらのセルは、非常に高い放電速度を可能にした。図14はまた、これらの3次元バッテリーアプローチに対する比出力(specific power)が、従来のリチウムバッテリーよりも2桁高い強度に迫ることを示す。
【0048】
出力性能は高いが、これは、恐らく電解質層が、非常に薄い(例えば、約50nmまたはそれを下回る)からである。質量による差異は、電解質の蒸着の後に、重量の増加を示す。PPD電解質(例えば、図15を参照)を介するリチウムイオンの拡散速度に基づいた計算は、100Cよりも高い放電速度を持続させるために、電解質が50nmの厚さを下回り得ることを示唆する。
【0049】
完全なPPDカバーのバッテリー
3次元バッテリーの第2の反復は、電解質の蒸着プロトコルによって第1の反復とは区別された。これらのバッテリーは、200サイクルの間に1.2ボルトにおいて蒸着されたPPDを有し、完全な電解質カバーをもたらした。平均的な電解質の厚さは60nmであったが、一部の区域は、120nmを上回る厚さを測定した。この余分の厚さは、電気化学的な試験に先立って、液体電解質においてバッテリーを浸すことによって達成され、電解質におけるリチウムイオンの移送を増加させた。浸すことは、PPDマトリックスにおいて液体の吸収を促進し、より良好なイオンの移動性を促進した。図16は、3次元バッテリーのRagoneプロットであり、表3は、3次元バッテリーの性能を示す。
【0050】
【表3】

図16におけるそれぞれのデータポイントは、1つの3次元バッテリーについての、C/3と50Cとの間の増加速度における2つのサイクルの平均を表す。サイクル寿命は特に焦点を当てられていなかったが、これらのデータは、この3次元システムが、反復された充電および放電サイクルに対する一部の許容力を有することを示唆する。プロットにおける一部の著しい特徴は、速度に左右されない容量の保持および高出力能力である。データの低速の末端および高速の末端の両方の尾部は、それぞれが電圧損失および拡散限界に一致する。
【0051】
データのほとんどが、100〜1000mW/gの間にあり、1C〜35Cの間の放電速度の範囲を表している。5Cより上の速度でエネルギーを絶えず失う従来のリチウムイオンバッテリー(図17を参照)とは対照的に、3次元バッテリーは、拡散を制限した移送が、システムを優位に占めるまで、エネルギーを保持する。この地点(Ragoneプロット上で高速でエネルギーを低下させる、曲線における転換点)で、3次元システムは、全ての拡散ベースの電気化学的なパワーストレージデバイスと同様に動く。これらのデータは、再充電可能なリチウムイオンバッテリーの性能において、革新的な向上を表す。
【0052】
代替的な電気化学的パワーストレージデバイスは、Ragoneプロット上の垂直な傾きから水平な傾きへの遷移によって特徴付けられる出力能力に対する限界を示す。Ragoneプロットにおける屈曲は、システムにおける荷電キャリア(例えば、バッテリーについてのLi、燃料電池についてのH)の拡散を制限した移送を記述する。3次元バッテリーシステムにおいて、拡散の制限は、最も低い速度のLi移送、すなわち電解質を表示するバッテリー部分によって規定される。高出力領域におけるRagoneプロットの屈曲は、電解質およびその厚さの直接的な結果である。
【0053】
3次元バッテリーのPPD電解質を記述する図15のデータを参照すると、50nmの電解質の厚さが、(例えば、比出力の目標に到達するために用いられ得る)50Cの放電速度を達成するために用いられ得る。60nm(電流電解質の平均的な厚さ)において、速度の能力は、30Cに限定される。この限界は、図16のデータに反映される。
【0054】
(カソードの伝導性)
図17は、3次元カソード材料の、放電範囲にわたる電圧特性を示し、該電圧特性を、通常のLiカソード材料に対する応答と比較する。3次元カソードに対して測定された容量が、理論上のものに近いのに対して、1つの特徴は、電流の最初の印加に関連付けられた大きな電圧の損失である。対照的に、通常のカソードに対するトレースは、より小さな最初の電圧の損失を示す。これは、カソード混合における15%(理論上のパーコレーションの閾値)までの伝導カーボンを処方することに起因し得る。カソード繊維の伝導性は、繊維自体の中の伝導カーボンの含有をもたらすことによって増加され得る。
【0055】
スケーリングは、3次元バッテリーの重要な特徴として認められる。1立方センチメートル未満の体積を有する、2ボルトより上の安定した単一のセル電位における比較的大きな電流を生成する能力は、バースト出力を必要とする小規模の分散デバイス、例えば自律性センサおよびロボティクスに特に適用可能である。例えば、DARPA/MTO概念化された自律的なロボットのモス(moth)は、飛行のためのアクチュエータを起動するために40mWを必要とする。
【0056】
3次元バッテリーは、2.5Vの平均放電電位を有し得、40mWの要件を満たすために、16mAの電流を必要とする。3次元バッテリーシステムによって可能な最大の重量測定の電流に基づいて、16mAの電流を生成し得るバッテリーの質量、および結果として生じる体積は、40mgおよび0.027cmであり得る。従来のリチウムイオンバッテリーは、エンジニアリングの抑制が効果的なマイクロスケーリングを妨げるために、適切ではなかった。この大きさが抑制された適用(および潜在的にその他多くの適用)に対して、3次元バッテリーは、利点を有する。
【0057】
高い容量と協調して、例えば自律的なデバイスなどの、オフピークおよび再充電出力を生成する低出力供給のような放射性同位元素マイクロパワーソース(RIMS)またはマイクロ燃料セルは、何年にもわたって測定される無人ランタイムを有し得る。これは、自律的なデバイスを使えるようにすることが人員を高い危険性にさらす、敵対的な戦闘空間の内密の監視に特に魅力的である。高い出力および小さなスケーリングの特徴的な属性は、自律的なロボティクスおよびセンサデバイスに特にふさわしい。
【0058】
本明細書において記述されたものの変形、修正および他の実装が、本発明の精神および範囲から逸脱することなく、当業者に想像される。従って、本発明は、上述の例証の記述だけに限定されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】図1は、バッテリーデバイスの斜視図を示す。
【図2】図2は、繊維の断面図を示す。
【図3】図3は、繊維を電気スピニングする装置を図示する。
【図4】図4Aは、加熱処理に先立った、カソード繊維の走査電子顕微鏡写真(SEM)イメージを示す。図4Bは、加熱処理に先立った、カソード繊維の走査電子顕微鏡写真(SEM)イメージを示す。図4Cは、加熱処理に先立った、カソード繊維の走査電子顕微鏡写真(SEM)イメージを示す。図4Dは、加熱処理に先立った、カソード繊維の走査電子顕微鏡写真(SEM)イメージを示す。
【図5】図5Aは、加熱処理の後のカソード繊維のSEMイメージを示す。図5Bは、加熱処理の後のカソード繊維のSEMイメージを示す。
【図6】図6は、加熱処理の後の繊維のx線回折(XRD)を示す。
【図7】図7は、ポリ(フェニレンジアミン)(PPD)の酸化重合化を示す模式図である。
【図8】図8Aは、PPD電解質の電着の前および後の、カソード繊維のSEMイメージを示す。図8Bは、PPD電解質の電着の前および後の、カソード繊維のSEMイメージを示す。
【図9】図9Aは、電解質被覆されたカソード繊維に堆積したアノード材料のSEMイメージを示す。図9Bは、電解質被覆されたカソード繊維に堆積したアノード材料のSEMイメージを示す。
【図10】図10は、バッテリーデバイスの斜視図を示す。
【図11】図11は、繊維の断面図を示す。
【図12】図12は、3次元カソードの放電性能を示す。
【図13】図13は、ナノ粒子のグラファイトアノードの放電性能を示す。
【図14】図14は、3次元バッテリーの性能を示すRagoneプロットである。
【図15】図15は、いくつかの電解質システムに対する放電速度と電解質の厚さとの間の関係を示す。
【図16】図16は、3次元バッテリーの性能を示す、Ragoneプロットである。
【図17】図17は、3次元バッテリーカソードの放電性能を示す。
【符号の説明】
【0060】
1 バッテリーデバイス
2 第1表面
3 第2表面
5 繊維層
6 繊維
7 孔
8 複数の粒子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
バッテリーデバイスであって:
該バッテリーデバイスの第1表面を規定するカソード集電体;
複数の孔を規定する構造体を形成する繊維状カソードであって、該繊維状カソードの第1部分は、該カソード集電体と接触している、繊維状カソード;
該繊維状カソードを形成する線維の実質的に均一なカバーを提供するために該繊維状カソード上に電着された電解質ポリマー;
該複数の孔内に蒸着されかつ該電解質ポリマーによって該繊維状カソードから分離された複数のアノード粒子;ならびに
該バッテリーデバイスの第2表面を規定するアノード集電体
を含む、バッテリーデバイス。
【請求項2】
前記繊維状カソードは、セラミック繊維の電気紡糸メッシュである、請求項1に記載のバッテリーデバイス。
【請求項3】
前記セラミック繊維は、約50nmと1,000nmとの間の厚みを有する、請求項2に記載のバッテリーデバイス。
【請求項4】
前記繊維状カソードは、電気的に一様にしたメッシュを提供するために、実質的な繊維間接触を示す、請求項1に記載のバッテリーデバイス。
【請求項5】
前記バッテリーは、リチウムベースのバッテリーデバイスである、請求項1に記載のバッテリーデバイス。
【請求項6】
前記繊維状カソードは、LiNi0.7Co0.3繊維から形成される、請求項1に記載のバッテリーデバイス。
【請求項7】
前記複数のアノード粒子は、カーボンナノ粒子を含む、請求項1に記載のバッテリーデバイス。
【請求項8】
前記電解質ポリマーは、ポリ(フェニレンジアミン)を含む、請求項1に記載のバッテリーデバイス。
【請求項9】
前記ポリ(フェニレンジアミン)は、電着後に液体電解質溶液に曝される、請求項8に記載のバッテリーデバイス。
【請求項10】
前記繊維状カソードを形成する前記繊維は、約5nm〜約100nmの電解質ポリマーで覆われている、請求項1に記載のバッテリーデバイス。
【請求項11】
バッテリーデバイスであって:
該バッテリーデバイスの第1表面を規定するアノード集電体:
複数の孔を規定する構造体を形成する繊維状アノードであって、該繊維状アノードの第1部分は、該アノード集電体と接触している、繊維状アノード;
該繊維状アノードを形成する繊維の実質的に均一なカバーを提供するために該繊維状アノード上に電着された電解質ポリマー;
該複数の孔内に蒸着されかつ該電解質ポリマーによって該繊維状アノードから分離された、カソード粒状物;および
該バッテリーデバイスの第2表面を規定するカソード集電体、
を含む、バッテリーデバイス。
【請求項12】
前記繊維状アノードは、繊維の電気紡糸メッシュである、請求項11に記載のバッテリーデバイス。
【請求項13】
前記繊維は、約50nmと1,000nmとの間の厚みを有する、請求項12に記載のバッテリーデバイス。
【請求項14】
前記繊維状アノードは、電気的に一様にしたメッシュを提供するために実質的な繊維間接触を示す、請求項11に記載のバッテリーデバイス。
【請求項15】
前記バッテリーは、リチウムベースのバッテリーデバイスである、請求項11に記載のバッテリーデバイス。
【請求項16】
前記繊維状アノードは、熱分解された電気紡糸カーボン繊維から形成される、請求項11に記載のバッテリーデバイス。
【請求項17】
前記カソード粒状物は、セラミックナノ粒子を含む、請求項11に記載のバッテリーデバイス。
【請求項18】
前記カソード粒状物は、ゾル−ゲル技術によって前記複数の孔内に形成されたセラミック粒状物を含む、請求項11に記載のバッテリーデバイス。
【請求項19】
前記電解質ポリマーは、ポリ(フェニレンジアミン)を含む、請求項11に記載のバッテリーデバイス。
【請求項20】
前記ポリ(フェニレンジアミン)は、電着後に液体電解質溶液に曝される、請求項19に記載のバッテリーデバイス。
【請求項21】
前記繊維状アノードを形成する前記繊維は、約5nm〜約100nmの電解質ポリマーで覆われている、請求項11に記載のバッテリーデバイス。
【請求項22】
バッテリー構造体を形成するための方法であって、該方法は:
接着剤を第1集電体に付与する工程;
該接着剤上に繊維を電気紡糸して、溶融繊維および複数の孔を有するメッシュを形成する工程;
該メッシュの上にポリマーを電着させて、該溶融繊維の外側表面に被覆を提供する工程;および
電極粒状物を該複数の孔に浸潤させる工程であって、該溶融繊維の外側表面上の被覆は、該電極粒状物と該溶融繊維との間の直接接触を妨げる、工程、
を包含する、方法。
【請求項23】
第2集電体が、前記バッテリー構造体の前記第1集電体とは反対側に取り付けられている、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
繊維を電気紡糸する工程は、カーボン繊維を電気紡糸し、その後、該カーボン繊維を熱分解して、溶融繊維および複数の孔を有する前記メッシュを形成する工程を包含する、請求項22に記載の方法。
【請求項25】
剛性支持体が、熱分解の間に前記カーボン繊維の上下に配置される、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
熱分解が、約500℃と2500℃との間の温度で生じる、請求項24に記載の方法。
【請求項27】
前記ポリマーを、約0.1mM と約1.0Mとの間の範囲の濃度のモノマーを含む溶液から電着する工程をさらに包含する、請求項22に記載の方法。
【請求項28】
前記メッシュを横切ってパルス状電圧を印加して、前記ポリマーを電着する工程をさらに包含する、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記繊維を電気紡糸する工程は、セラミック繊維の前駆物質を電気紡糸し、その後、該前駆物質繊維を熱分解して、前記メッシュを形成しているセラミック繊維を得る工程を包含する、請求項22に記載の方法。
【請求項30】
約500℃と2500℃との間の温度で前記セラミック繊維を熱分解する工程をさらに包含する、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
前記電極粒状物を前記複数の孔に浸潤する工程は、該電極粒状物を含む溶液を前記メッシュに適用する工程を包含する、請求項22に記載の方法。
【請求項32】
前記電極粒状物は、ナノサイズにした電極物質の粒子を含む、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
前記電極粒状物を前記複数の孔に浸潤する工程は、前記電極粒状物を形成するための要素を含む溶液を、前記メッシュに適用する工程および該溶液を反応させて、該複数の孔内に該電極粒状物を形成する工程を包含する、請求項22に記載の方法。
【請求項34】
前記バッテリー構造体を液体電解質溶液に浸漬する工程をさらに包含する、請求項23に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2008−181879(P2008−181879A)
【公開日】平成20年8月7日(2008.8.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−12047(P2008−12047)
【出願日】平成20年1月22日(2008.1.22)
【出願人】(504458091)フィジカル サイエンシーズ, インコーポレイテッド (4)
【Fターム(参考)】