説明

三次元形状造形物の製造方法、得られる三次元形状造形物および成形品の製造方法

【課題】金型として用いることができ、ヒケ発生を防止するのに好適な三次元形状造形物を提供すること。
【解決手段】(i)粉末層の所定箇所に光ビームを照射して前記所定箇所の粉末を焼結又は溶融固化させて固化層を形成する工程、および、(ii)得られた固化層の上に新たな粉末層を形成し、前記新たな粉末層の所定箇所に光ビームを照射して更なる固化層を形成する工程を繰り返して行う三次元形状造形物100の製造方法であって、三次元形状造形物100の表面領域の一部を低密度固化領域として形成し、低密度固化領域を通過するガスによって加圧が行えるように低密度固化領域の固化密度を50%〜90%にすることを特徴とする製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、三次元形状造形物の製造方法、三次元形状造形物および成形品の製造方法に関する。より詳細には、本発明は、粉末層の所定箇所に光ビームを照射することによる固化層形成を繰り返し実施することによって複数の固化層が積層一体化した三次元形状造形物を製造する方法に関すると共に、それによって得られる三次元形状造形物にも関し、更には、三次元形状造形物を金型として用いた成形品の製造方法にも関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、材料粉末に光ビームを照射して三次元形状造形物を製造する方法(一般的には「粉末焼結積層法」と称される)が知られている。かかる方法では、「(i)粉末層の所定箇所に光ビームを照射することよって、かかる所定箇所の粉末を焼結又は溶融固化させて固化層を形成し、(ii)得られた固化層の上に新たな粉末層を敷いて同様に光ビームを照射して更に固化層を形成する」といったことを繰り返して三次元形状造形物を製造している(特許文献1または特許文献2参照)。材料粉末として金属粉末やセラミック粉末などの無機質の材料粉末を用いた場合では、得られた三次元形状造形物を金型として用いることができ、樹脂粉末やプラスチック粉末などの有機質の材料粉末を用いた場合では、得られた三次元形状造形物をモデルとして用いることができる。このような製造技術によれば、複雑な三次元形状造形物を短時間で製造することが可能である。
【0003】
支持部材上で三次元形状造形物を製造する場合を例にとると、図1に示すように、まず、所定の厚みt1の粉末層22を造形プレート21上に形成する(図1(a)参照)。次いで、光ビームを粉末層22の所定箇所に照射して、その照射された粉末層の部分から固化層24を形成する。そして、形成された固化層24の上に新たな粉末層22を敷いて再度光ビームを照射して新たな固化層を形成する。このような固化層の形成を繰り返し実施すると、複数の固化層24が積層一体化した三次元形状造形物を得ることができる(図1(b)参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特表平1−502890号公報
【特許文献2】特開2000−73108号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
三次元形状造形物は金型として用いることができるものであるが、金型を用いた樹脂成形においては、「ヒケ」と呼ばれる現象が発生し得る。つまり、樹脂成形品の肉厚部またはリブなどに相当する部分が図14に示すように凹んでしまうことがあり、成形不良を引き起こす。このような“ヒケ”については、特定の理論に拘束されるわけではないが、樹脂成形時の応力に起因しているものと考えられる。具体的には、溶融状態で射出された樹脂は金型内で冷却されることになるが、その冷却の際に樹脂が表面領域から固化していくことになり、時間の経過と共に徐々に樹脂内部も固化していく。樹脂固化では体積収縮を伴うことになるが、樹脂表面は既に固化しているので、樹脂内部に引張り応力が発生し、その引張り応力に表面部の強度が屈すると凹むことになる。
【0006】
本発明は、このような事情に鑑みて為されたものである。即ち、本発明の課題は、金型として用いることができる三次元形状造形物であって、ヒケ発生を好適に防止できる三次元形状造形物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、本発明では、
(i)粉末層の所定箇所に光ビームを照射して前記所定箇所の粉末を焼結又は溶融固化させて固化層を形成する工程、および
(ii)得られた固化層の上に新たな粉末層を形成し、前記新たな粉末層の所定箇所に光ビームを照射して更なる固化層を形成する工程
を繰り返して行う三次元形状造形物の製造方法であって、
三次元形状造形物の表面領域の一部を低密度固化領域として形成し、
低密度固化領域を通過するガスによって加圧が行えるように低密度固化領域の固化密度を50%〜90%にすることを特徴とする、三次元形状造形物の製造方法が提供される。
【0008】
本発明の製造方法の特徴の1つは、三次元形状造形物の用途を特に考慮した低密度固化領域を三次元形状造形物に形成することである。より具体的には、低密度固化領域を通過するガスにより加圧が行えるように三次元形状造形物の表面領域の一部に固化密度50%〜90%の低密度固化領域を形成する。
【0009】
本明細書にいう「低密度固化領域」とは、固化密度が比較的低いポーラス状の造形物領域(例えばポーラス状の焼結領域)を実質的に意味している。より具体的に「低密度」とは、造形物ボディの固化密度(95〜100%程度の固化密度)よりも低い固化密度のことを指している。特に本発明における“低密度固化領域”は、その密度の点でガスを通過させることができるだけでなく、そのようなガス通過ないしはガス加圧にとって好適な形態をも備えている。
【0010】
また、本明細書にいう「通過するガスによって加圧を行う」とは、低密度固化領域を通過したガスの圧力でもって加圧操作を行う態様を実質的に意味している。つまり、本発明では、低密度固化領域の一方の面に供給されたガスが低密度固化領域を通過して他方の面から出ていくことになるが、その出ていくガスの圧力によって加圧を行うことを意図している。
【0011】
尚、確認までに述べておくと、本明細書において「粉末層」とは、例えば「金属粉末から成る金属粉末層」を実質的に指している。また「粉末層の所定箇所」とは、製造される三次元形状造形物の領域を実質的に意味している。従って、かかる所定箇所に存在する粉末に対して光ビームを照射することによって、その粉末が焼結又は溶融固化して三次元形状造形物の形状を構成することになる。尚、粉末層が金属粉末層となる場合、「固化層」は「焼結層」に相当し、「固化密度」は「焼結密度」に相当し得る。
【0012】
本発明の製造方法では、得られた造形物においてガスがより効果的に通過して加圧を行うことができるように、表面領域に設ける低密度固化領域の厚さを薄くすることが好ましい。例えば低密度固化領域の厚さを0.5mm〜10mm程度にすることが好ましい。これにより、ガス通過時の流体抵抗を低くすることができる。つまり、通過時の圧力損失を低減させることができ、ガス供給圧が必要以上に低下することを防止できる。必要に応じて、低密度固化領域の厚さを局所的に変えてもよい。つまり、厚さがより薄い部分とそうでない部分とに分けて低密度固化領域を形成してもよい。
【0013】
ある好適な態様では、低密度固化領域と連通する中空領域を三次元形状造形物に形成する。この中空領域は造形物の外部とつながる形態を有している。例えば、低密度固化領域の背面側に「造形物の外部とつながった空洞部」を形成する。これにより、得られた造形物において、その空洞部をガス供給路として利用することができ、より好適に低密度固化領域に対してガス供給を行うことができる。中空領域を設ける場合、薄く形成される低密度固化領域を支持する部材を付加的に形成してよい。例えば、中空領域の一部に低密度固化領域と連結して成る固化部を形成してよい。
【0014】
造形物の表面領域に形成する低密度固化領域は1つに限らず、2つ以上の低密度固化領域を形成してもよい。かかる場合、それぞれの低密度固化領域ごとに、固化密度および/または厚さを変えてもよい。このようにすると、得られた造形物において、ガス通過時の流体抵抗が各低密度固化領域で変わることになり、それぞれの低密度固化領域から異なるガス圧力を供すことができる。
【0015】
本発明では、上述した製造方法で得られる三次元形状造形物も提供される。かかる本発明の三次元形状造形物は、金型として好適に用いることができる形態を有している。つまり、本発明では、金型キャビティ面の少なくとも一部に固化密度50%〜90%の低密度固化領域が設けられている。このような三次元形状造形物を金型として用いると、低密度固化領域を通過するガスによって金型キャビティ内の樹脂原料ないしは成形品を外側から加圧することができる。
【0016】
本発明の三次元形状造形物では、低密度固化領域が造形物の表面領域と面一に設けられているが、かかる低密度固化領域の厚さは例えば0.5mm〜10mm程度となっている。ある好適な態様では、低密度固化領域の厚さは局所的に異なっている(例えば略一定の間隔にある局所的ポイントのみが“肉薄”となっている)。また、ある好適な態様では、低密度固化領域の背面側にその低密度固化領域と連通する中空領域(即ち、空洞部)が設けられている。かかる中空領域は造形物外部に繋がっており、それゆえ、ガスを外部から低密度固化領域へと供給するための流路として好適に機能し得る。中空領域では、低密度固化領域を支持するための部材が設けられていてよい。別の好適な態様では、低密度固化領域が複数設けられている。好ましくは、複数のそれぞれの低密度固化領域ごとに、固化密度および/または厚さが異なっている。
【0017】
本発明では、三次元形状造形物を金型として用いた場合の成形品の製造方法も提供される。かかる成形品の製造方法は、
(i)金型キャビティ部を樹脂原料で満たす工程、および
(ii)金型キャビティ部にて樹脂原料を成形に付す工程
を含んで成り、
前記成形に付すに際しては、低密度固化領域を介してガスを供することによって、金型キャビティ部の外側から樹脂原料又は成形品に対して圧力を加えることを特徴としている。
【0018】
本発明の成形品の製造方法では、金型の低密度固化領域を介して外部から加圧を行うことができるので、金型キャビティ部の樹脂原料ないしは成形品の“ヒケ”を効果的に防止することができる。ある好適な態様では、射出・保圧工程と離型工程とのそれぞれの工程においてガス供給による加圧を行う。この場合、「射出・保圧工程」と「離型工程」とのそれぞれで異なるガス圧で加圧を行ってよい。また、別のある好適な態様では、低密度固化領域を通過するガスの温度を調整することによって、金型キャビティ部の樹脂原料ないしは成形品の温度調整を行う。尚、「2つ以上の低密度固化領域が設けられている金型」を用いる場合では、それぞれの低密度固化領域ごとに加圧を行うことができるので、所望の成形品をより好適に得ることができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明の製造方法では、造形物表面にガス通過を可能とするポーラス状の低密度固化領域を形成するので、ガス通過を介した加圧操作を行うことができ、得られる三次元形状造形物を金型として好適に用いることができる。特に、粉末焼結積層法の実施に際して低密度固化領域を形成するので、最終的な用途を考慮して造形物の任意の領域に低密度固化領域を形成できる。
【0020】
具体的には、三次元形状造形物を金型として用いることを想定した場合、“ヒケ”が発生し得る部分に隣接するように低密度固化領域を形成できるので、樹脂成形時のヒケ発生を効果的に防止することができる(つまり、低密度固化領域を介して外部からガスをキャビティ内へと供給することができるので、“ヒケ部分”ないしは“ヒケが発生し得る部分”がガスによって外側から押圧される)。この点、従前の金型においては、図15に示すように金型に接続された連結管300から供給するガスによって加圧を行うことになるところ、あくまでも“管”を用いているために、局所的な加圧しか行うことができず、また、製造する成形品の形状などによっては連結管が設置できない箇所などがあり、制約が比較的大きかった。従前の金型において“管(管径)”を大きくすると、成形時に樹脂原料が管に流れ込む虞があり、所望の成形が行えない可能性がある。このような従前の態様に対して本発明では、造形物表面の任意の箇所に低密度固化領域を形成でき、かつ、その低密度固化領域のサイズを任意の大きさにすることができる(つまり、比較的大きな加圧面を形成することができる)。特に“ヒケ部分”ないしは“ヒケが発生し得る部分”が比較的大きい場合であっても、大きなガス供給圧面によってそれらの発生を防止することができる金型を実現できる。換言すれば、従前の態様が “点加圧”であるのに対して本発明では“面加圧”となっている。
【0021】
このように、本発明における低密度固化領域は比較的に大きいサイズで実現できるので、「低密度固化領域を通過するガス」と「キャビティ内の樹脂原料ないしは成形品」との接触面積も比較的大きくすることができる。従って、低密度固化領域に供給するガスの温度を調整することによって、キャビティ内の樹脂原料・成形品の温度調整を効果的に行うことができる。つまり、本発明では“加圧”によって樹脂成形時のヒケ発生を防止できるだけでなく、“加温”によってウェルド発生も防止することができる。
【0022】
更にいえば、本発明では低密度固化領域の固化密度や厚さなどを調整することによって、ガス通過時の流体抵抗を変えることができるので、それによって、加圧時の圧力を調整することができる。つまり、大きく加圧したい成形品部分(例えば厚肉部)に対して固化密度を小さくする一方、あまり加圧したくない成形品部分(例えば強度が弱い薄肉部)に対しては固化密度を大きくすればよく、樹脂成形の設計自由度が大きくなる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】光造形複合加工機の動作を模式的に示した断面図
【図2】光造形装置の態様を模式的に表した斜視図(図2(a):切削機構を備えた複合装置、図2(b):切削機構を備えていない装置)
【図3】粉末焼結積層法が行われる態様を模式的に示した斜視図
【図4】粉末焼結積層法が実施される光造形複合加工機の構成を模式的に示した斜視図
【図5】光造形複合加工機の動作のフローチャート
【図6】光造形複合加工プロセスを経時的に表した模式図
【図7】本発明の概念を模式的に表した図(図7(a):造形物100の表面領域の一部にポーラス状の低密度固化領域24bが形成された態様、図7(b):低密度固化領域24bの背面側に中空領域60が形成された態様)
【図8】本発明の実施態様を模式的に表した図(図8(a)“成形品の厚肉部”と接することになる造形物表面に低密度固化領域24bが設けられた態様:、図8(b):“成形品のリブ”と接することになる造形物表面に低密度固化領域24bが設けられた態様)
【図9】低密度固化領域の厚さが局所的に変化した態様を模式的に表した図(図9(a):全体図、図9(b):低密度固化領域の拡大図)
【図10】支持用固化部24cが設けられた態様を模式的に表した図
【図11】金型として用いられる本発明の三次元形状造形物の態様を模式的に表した斜視図(図11(a)成形品リブが形成される部分120を含む一定の領域に低密度焼結領域24bが形成されている態様:、図11(b):成形品リブが形成される部分120を取り囲むような領域に複数の低密度焼結領域24b〜24bが形成されている態様)
【図12】図11に示した金型100から得られる成形品200の態様を模式的に表した斜視図
【図13】本発明の金型を用いた樹脂成形の操作態様を模式的に表した図
【図14】「ヒケ」が発生した態様を模式的に表した斜視図
【図15】従来技術の態様を模式的に表した図
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下では、図面を参照して本発明をより詳細に説明する。
【0025】
[粉末焼結積層法]
まず、本発明の製造方法の前提となる粉末焼結積層法について説明する。説明の便宜上、材料粉末タンクから材料粉末を供給し、均し板を用いて材料粉末を均して粉末層を形成する態様を前提として粉末焼結積層法を説明する。また、粉末焼結積層法に際しては造形物の切削加工をも併せて行う複合加工の態様を例に挙げて説明する(つまり、図2(b)ではなく図2(a)に表す態様を前提として説明する。しかしながら、本発明は、切削機構を具備しない図2(b)に示す態様であっても実現可能であることを付言しておく。)図1,3および4には、粉末焼結積層法と切削加工とを実施できる光造形複合加工機の機能および構成が示されている。光造形複合加工機1は、「金属粉末を所定の厚みで敷くことによって粉末層を形成する粉末層形成手段2」と「外周が壁27で囲まれた造形タンク29内において上下に昇降する造形テーブル20」と「造形テーブル20上に配され造形物の土台となる造形プレート21」と「光ビームLを任意の位置に照射する光ビーム照射手段3」と「造形物の周囲を削る切削手段4」とを主として備えている。粉末層形成手段2は、図1に示すように、「外周が壁26で囲まれた材料粉末タンク28内において上下に昇降する粉末テーブル25」と「造形プレート上に粉末層22を形成するための均し板23」とを主として有して成る。光ビーム照射手段3は、図3および図4に示すように、「光ビームLを発する光ビーム発振器30」と「光ビームLを粉末層22の上にスキャニング(走査)するガルバノミラー31(スキャン光学系)」とを主として有して成る。必要に応じて、光ビーム照射手段3には、光ビームスポットの形状を補正するビーム形状補正手段(例えば一対のシリンドリカルレンズと、かかるレンズを光ビームの軸線回りに回転させる回転駆動機構とを有して成る手段)やfθレンズなどが具備されている。切削手段4は、「造形物の周囲を削るミーリングヘッド40」と「ミーリングヘッド40を切削箇所へと移動させるXY駆動機構41(41a,41b)」とを主として有して成る(図3および図4参照)。
【0026】
光造形複合加工機1の動作を図1、図5および図6を参照して詳述する。図5は、光造形複合加工機の一般的な動作フローを示しており、図6は、光造形複合加工プロセスを模式的に簡易に示している。
【0027】
光造形複合加工機の動作は、粉末層22を形成する粉末層形成ステップ(S1)と、粉末層22に光ビームLを照射して固化層24を形成する固化層形成ステップ(S2)と、造形物の表面を切削する切削ステップ(S3)とから主に構成されている。粉末層形成ステップ(S1)では、最初に造形テーブル20をΔt1下げる(S11)。次いで、粉末テーブル25をΔt1上げた後、図1(a)に示すように、均し板23を、矢印A方向に移動させ、粉末テーブル25に配されていた粉末(例えば「平均粒径5μm〜100μm程度の鉄粉」)を造形プレート21上へと移送させつつ(S12)、所定厚みΔt1に均して粉末層22を形成する(S13)。次に、固化層形成ステップ(S2)に移行し、光ビーム発振器30から光ビームL(例えば炭酸ガスレーザ(500W程度)、Nd:YAGレーザ(500W程度)、ファイバレーザ(500W程度)または紫外線など)を発し(S21)、光ビームLをガルバノミラー31によって粉末層22上の任意の位置にスキャニングし(S22)、粉末を溶融させ、固化させて造形プレート21と一体化した固化層24を形成する(S23)。光ビームは、空気中を伝達させることに限定されず、光ファイバーなどで伝送させてもよい。
【0028】
固化層24の厚みがミーリングヘッド40の工具長さ等から求めた所定厚みになるまで粉末層形成ステップ(S1)と固化層形成ステップ(S2)とを繰り返し、固化層24を積層する(図1(b)参照)。尚、新たに積層される固化層は、焼結又は溶融固化に際して、既に形成された下層を成す固化層と一体化することになる。
【0029】
積層した固化層24の厚みが所定の厚みになると、切削ステップ(S3)へと移行する。図1および図6に示すような態様ではミーリングヘッド40を駆動させることによって切削ステップの実施を開始している(S31)。例えば、ミーリングヘッド40の工具(ボールエンドミル)が直径1mm、有効刃長さ3mmである場合、深さ3mmの切削加工ができるので、Δt1が0.05mmであれば、60層の固化層を形成した時点でミーリングヘッド40を駆動させる。XY駆動機構41(41a,41b)によってミーリングヘッド40を矢印X及び矢印Y方向に移動させ、積層した固化層24から成る造形物の表面を切削加工する(S32)。そして、三次元形状造形物の製造が依然終了していない場合では、粉末層形成ステップ(S1)へ戻ることになる。以後、S1乃至S3を繰り返して更なる固化層24を積層することによって、三次元形状造形物の製造を行う(図6参照)。
【0030】
固化層形成ステップ(S2)における光ビームLの照射経路と、切削ステップ(S3)における切削加工経路とは、予め三次元CADデータから作成しておく。この時、等高線加工を適用して加工経路を決定する。例えば、固化層形成ステップ(S2)では、三次元CADモデルから生成したSTLデータを等ピッチ(例えばΔt1を0.05mmとした場合では0.05mmピッチ)でスライスした各断面の輪郭形状データを用いる。
【0031】
[本発明の製造方法]
本発明は、上述した粉末焼結積層法のなかでも、特に固化層の形成態様に特徴を有している。具体的には、図7(a)に示すように、造形物100の表面領域の一部にポーラス状の低密度固化領域24bを形成する。特に本発明では低密度固化領域24bを通過するガスによって加圧が行えるように、低密度固化領域の固化密度が50%〜90%となっており、好ましくは60%〜85%となっている。より効率的なガス供給のために「ガスを低密度固化領域へと導くための流路」を設けておいてもよい。特に、低密度固化領域と連通するような中空領域(空洞部)を形成してよい。例えば図7(b)に示すように、低密度固化領域24bの背面側に中空領域60を形成し、かかる中空領域60を造形物外部と連通するように形成する。これにより、中空領域60をガス供給路として用いることができ、外部から中空領域60に対してガス供給を行うことによって、低密度固化領域24bへとガスを送ることができ、低密度固化領域24bを介したガス加圧を容易に行うことができる。
【0032】
図面を参照して本発明の製造方法を更に説明していく。ちなみに、本発明で用いる金属粉末は、鉄系粉末を主成分とした粉末であって、場合によってはニッケル粉末、ニッケル系合金粉末、銅粉末、銅系合金粉末および黒鉛粉末などから成る群から選択される少なくとも1種類を更に含んで成る粉末であってよい(一例として、平均粒径20μm程度の鉄系粉末の配合量が60〜90重量%、ニッケル粉末及びニッケル系合金粉末の両方又はいずれか一方の配合量が5〜35重量%、銅粉末および/または銅系合金粉末の両方又はいずれか一方の配合量が5〜15重量%、ならびに、黒鉛粉末の配合量が0.2〜0.8重量%となった金属粉末を挙げることができる)。尚、金属粉末としては、このような鉄系粉末に限定されるものでなく、銅系粉末やアルミニウム粉末も可能であり、更にいえば、金型以外の用途で加圧部品として適用する用途であれば、プラスチック粉末やセラミック粉末も可能であることを付言しておく。
【0033】
本発明の製造方法では、所定の厚みの金属粉末層22を造形プレート21上に形成した後、光ビームを金属粉末層22の所定箇所に照射して、その照射された金属粉末層の部分から焼結層を形成する(図1(a)および(b)参照)、といった操作を繰り返して行うが、その反復実施に際して、照射する光ビームのエネルギーなどを調整することによってポーラス状の低密度焼結領域24bを形成する。具体的には、金属粉末層22において低密度焼結領域(即ち“低密度固化領域”)に相当する粉末領域に照射する光ビームの出力エネルギーを低くする。これにより焼結を不十分なものとして、焼結密度(即ち“固化密度”)が50%〜90%程度の低密度な固化領域を形成することができる。ちなみに、低密度領域以外の焼結層24の焼結密度は90〜100%程度である。このように焼結密度が低いポーラス状の焼結領域を形成すると、上述したように、ガスを通過させることができるので、得られる造形物においてガス通過を介した加圧操作を行うことができる。(a)光ビームの出力エネルギーを低くすることの他に、(b)光ビームの走査速度を上げる、(c)光ビームの走査ピッチを拡げる、(d)光ビームの集光径を大きくすることよっても、焼結層形成時よりも低いエネルギーの光ビームでもって低密度焼結領域24bを形成できる。上記(a)〜(d)は、単独で行ってもよいものの、それを種々に組み合わせて行ってもよい。尚、上記(a)についていえば、例えば照射エネルギー密度Eが4〜15J/mm程度の光ビームでもって焼結層24(焼結密度90〜100%)を形成するのに対して、焼結密度が50%〜90%の低密度焼結領域24bについては照射エネルギー密度Eが約1〜4J/mmの光ビームによって形成する。尚、エネルギー密度E=レーザ出力(W)/(走査速度(mm/s)×走査ピッチ(mm)である(製造条件は例えば、粉末の積層厚さ:0.05mm、レーザの種類:CO(炭酸ガス)レーザ、スポット径:0.5mmである)。
【0034】
ここで、本明細書にいう「焼結密度(%)」とは、造形物の断面写真を画像処理することによって求めた焼結断面密度(金属材料の占有率)を実質的に意味している。使用する画像処理ソフトはScion Image ver. 4.0.2(フリーウェア)であって、断面画像を焼結部(白)と空孔部(黒)とに二値化した後、画像の全画素数Pxallおよび焼結部(白)の画素数Pxwhiteをカウントすることで、以下の式1により焼結断面密度ρを求めることができる。
[式1]


【0035】
低密度焼結領域は造形物の表面領域に形成されるが、本発明では“ヒケ”が発生しやすいキャビティ形成面に設けることが特に好ましい。つまり、三次元形状造形物を樹脂成形用の金型として用いた場合に“成形品の厚肉部”と接することになるキャビティ形成面(図8(a)参照)や、“成形品のリブ”と接することになるキャビティ形成面(図8(b)参照)などに低密度焼結領域24bを形成することが好ましい。これにより、射出成形後にて低密度焼結領域24bから樹脂原料/成形品に向かってガス圧をかけることができ、その結果、“ヒケ”を効果的に防止することができる。図示する態様から分かるように、本発明では必要な部分に対して比較的広い面で加圧することができるので、より高精度な成形が可能となる。つまり、本発明では、“点加圧”でなく“面加圧”を実現できる。あくまでも一例であるが、三次元形状造形物を金型として用いる場合、キャビティ形成面の10%〜100%を低密度焼結領域とすることができ、好ましくはキャビティ形成面の20%〜70%を低密度焼結領域とすることができる。
【0036】
「低密度固化領域と連通する中空領域(空洞部)」の形成について説明する。「低密度固化領域と連通する中空領域」も、低密度固化領域と同様、上記光ビーム照射に際して形成することができる。具体的には、焼結層24の形成に際して光ビームを照射する箇所とそうでない箇所とに分けることによって形成することができる。つまり、金属粉末層22において中空領域60に相当する粉末領域には光ビームを照射せずに粉末状態のままにしておき、最後にその領域部分の粉末を除去すると中空領域60が得られることになる。尚、未焼結の粉末が中空領域60を成す壁面などに付着している場合には、切削加工を施して未焼結の粉末を除去してもよい。用いる切削加工手段は、表面切削を施せるものであればいずれのものであってもよい。例えば、上述した光造形複合加工機の切削加工手段を用いることができる(図2(a)参照)。あくまでも一例であるが、かかる切削加工手段は、汎用の数値制御(NC:Numerical Control)工作機械またはそれに準ずるものであり得る。エンドミルなどの切削工具を自動交換可能なマシニングセンタ(MC)であることが好ましい。エンドミルは、例えば超硬素材の二枚刃ボールエンドミルが主に用いられる。必要に応じて、スクエアエンドミル、ラジアスエンドミル、ドリルなどを用いてもよい。
【0037】
“ガス通過による加圧”が好適なものとなるように、低密度焼結領域は比較的薄い方が好ましい。つまり、必要な強度を保ちつつもガスが低密度焼結領域を通過する際の圧力損失ができるだけ小さくなるように、低密度焼結領域の厚さを小さくすることが好ましい。例えば、図7(b)に示すような低密度焼結領域24bの厚さtは、好ましくは0.5mm〜10mm、より好ましくは1mm〜5mm程度にすることが好ましい。尚、低密度焼結領域の厚さについていえば、低密度固化領域の厚さを局所的・部分的に変えてもよい。例えば図9(a)および(b)に示すように、低密度固化領域24bの厚さが一定の間隔ごとに減じられた形態であってもよい。図9(b)に示す態様で説明すれば、“A点”における厚さが小さくなっているので、ガス通過時の流体抵抗が低下して樹脂原料・成形品へのガス圧供給を容易にしつつ、厚みが比較的大きい“B点”で低密度焼結領域の必要な強度を維持することができる。尚、図9(b)に示す態様では、厚さが一定の間隔ごとに減じられているので、低密度固化領域を介したガス供給の“ムラ”を抑制することができ、均一な加圧を実現できる。尚、あくまでも一例であるが、図9(b)に示す厚さt1は1〜10mm程度であり、t2が0.5〜5mm程度、そして、ピッチPが1〜10mm程度であってよい。
【0038】
低密度焼結領域が薄いと低密度焼結領域の強度が低下し得るので、それを補うべく低密度焼結領域を支持する部材(即ち“補強用の梁”)を設けてよい。具体的には、図10に示すように、中空領域60の一部に低密度焼結領域24bと連結してそれを支える焼結部24c(即ち“固化部”)を形成することが好ましい。かかる場合、図示するように、一定の間隔ごとに複数の焼結部24c(即ち“局所的な固化部”)を設けることが好ましく、それによって、低密度焼結領域24bを均一に支持しつつ、ガス供給路を確実に確保することができる。かかる焼結部24cの形成も、上記光ビーム照射に際して形成することができる。具体的には、焼結層24の形成に際して光ビームを照射する箇所とそうでない箇所とに分けることによって形成することができる。つまり、金属粉末層22において中空領域60に相当する粉末領域には光ビームを照射せずに粉末状態のままにしておく一方、焼結部24cに相当する領域には光ビームを照射する(焼結層24の形成と同様に光ビームを照射する)。最後に非照射部分の粉末を除去すると中空領域60の一部に配された焼結部24cを得ることができる。尚、未焼結の粉末が焼結部24cに付着している場合、必要に応じて切削加工を施して未焼結の粉末を除去してもよい。用いる切削加工手段は、表面切削を施せるものであればいずれのものであってもよい。例えば、上述した光造形複合加工機の切削加工手段を用いることができる。
【0039】
造形物の表面領域に形成する低密度焼結領域は1つに限らず、2つ以上の低密度焼結領域を形成してよい。かかる場合、それぞれの低密度焼結領域ごとに、焼結密度および/または厚さを変えてもよい。このようにすると、各低密度焼結領域ごとにガス通過時の流体抵抗を変えることができ、各低密度焼結領域ごとに異なる圧力の加圧を行うことができる。例えば、大きく加圧したい成形品部分(例えば厚肉部)に対しては焼結密度を小さくする一方、あまり加圧したくない成形品部分(例えば強度が弱い薄肉部)に対しては焼結密度を大きくすればよく、これによって、所望の樹脂成品を精度良く得ることができる。
【0040】
[本発明の三次元形状造形物]
次に、上述の製造方法で得られる本発明の三次元形状造形物について説明する。本発明の三次元形状造形物は、コア側またはキャビ側の金型として用いることができるものであって、金型のキャビティを形成する面の少なくとも一部に焼結密度50%〜90%(好ましくは焼結密度50%〜90%)の低密度焼結領域が設けられている。従って、本発明の三次元形状造形物を金型として用いた樹脂成形に際しては、低密度焼結領域を通過するガスによって成形原料又は成形品を外側から加圧することができる。上記の[本発明の製造方法]で説明したことではあるが、本願発明の三次元形状造形物の好適な形態としては、例えば以下のものを挙げることができる:

・低密度焼結領域の背面側にその低密度焼結領域と連通する中空領域が設けられている形態。特にかかる中空領域は造形物外部に連通している(図8参照)

・中空領域に低密度焼結領域24bを支持するための支持焼結部24cが設けられている形態(図10参照)

・低密度焼結領域の厚さが局所的に異なっている形態(図9参照)。

・2つ以上の低密度焼結領域が設けられている形態(例えば、それぞれの低密度焼結領域ごとに焼結密度および/または厚さが異なっている形態)
【0041】
本発明の三次元形状造形物のより具体的な形態については、最終的な用途に依存し得る。つまり、三次元形状造形物を金型として用いる場合、得られる成形品の形状に依存する。ある一例を挙げると、図11(a)および図11(b)に示すような三次元形状造形物100が考えられる。かかる場合、図12に示すような成形品200を得ることができる。図11(a)に示す三次元形状造形物100の場合では、キャビティ形成面のうち、“成形品リブが形成される部分120”を含む一定の領域に低密度焼結領域24bが形成されている。図示する態様から分かるように、低密度焼結領域24bが広く“面状”に形成されている。一方、図11(b)に示す三次元形状造形物100は、“成形品リブが形成される部分120”を取り囲むような領域に複数の低密度焼結領域24b〜24bが形成されている。かかる形態であっても、低密度焼結領域24b〜24bの各々は“面状”に形成されていることが理解できるであろう。
【0042】
[本発明の成形品の製造方法]
本発明の成形品の製造方法を説明する。本発明の成形品の製造方法は、上記三次元形状造形物を金型として用いた場合の成形品の製造方法に相当する。かかる成形品の製造方法は、(i)金型キャビティを樹脂原料で満たす工程、および(ii)金型キャビティ内で樹脂原料を成形に付して成形品を得る工程を含んで成る。特に本発明の成形品の製造方法では、金型の低密度焼結領域を介してガスをキャビティ内へと供給することによって、外側から樹脂原料又は成形品に圧力を加え、それによって“ヒケ発生”を防止ないしは低減させる。
【0043】
低密度固化領域に供給するガスとしては、特に制限はない。例えば、空気、窒素およびアルゴンなどから成る群から選択される少なくとも1種類のガスを用いてよい。低密度焼結領域に供給するガス圧力は、低密度焼結領域の厚さやその焼結密度等によって最適値は変わってくるものの、概ね1MPa〜30MPaの範囲である。ガス圧力が低すぎると供されたガスが低密度焼結領域を通過できないか、あるいは、通過したとしても所望の圧力を樹脂原料又は成形品に加えることができなくなる。一方、ガス圧力が高すぎると、樹脂原料又は成形品に加えられる圧力が必要以上に大きくなってしまい、得られる成形品の外観形状に影響を与えてしまう虞がある。尚、「樹脂原料又は成形品に加えられる圧力」は、ガス供給圧力および低密度焼結領域における圧損(通気抵抗)などに依存し得る。つまり、低密度焼結領域で生じる圧損を予め調べておいて、それをガス流れの圧力から差し引くことによって「樹脂原料又は成形品に加えられる圧力」を概ね把握することができる。換言すれば、ガス流れの圧力を調整することによって、又は、低密度焼結領域の厚さやその焼結密度等を変えることによって、ヒケ防止に最適な圧力を制御することができる。
【0044】
本発明の成形品の製造方法の態様については、その他にも種々の態様が考えられる。以下それについて説明する。
【0045】
(成形品温調の態様)
かかる態様では、低密度焼結領域へと供するガスの温度を調整することによって、金型キャビティ内の樹脂原料ないしは成形品の温度調整を行う。つまり、低密度固化領域を通過することになるガスの温度を調整することによって、金型キャビティ内の温度を制御する。
【0046】
このような成形品の温調では、“ウェルド”の発生を効果的に防止することができる。つまり、“ウェルド”が発生し得る領域の近傍に低密度焼結領域を形成すれば、樹脂成形時のウェルド発生を「低密度焼結領域からのガスの温度」によって効果的に抑制することができる。つまり、“ウェルド”は冷却過程にある2つの樹脂流れの合流ポイントで発生し得るものであるところ、そのようなポイントに対して局所的に加温処理が行えるように、低密度焼結領域を介して高温ガスを供する。
【0047】
特に、ヒケが生じすく、かつ、ウェルドが生じやすいポイントに低密度焼結領域を設けた金型の場合では、高温ガスにより“加温”と“加圧”の2つの処理を同時に実施することができ、“ヒケ”と“ウェルド”の双方が同時に防止される。
【0048】
(加圧・吸引の態様)
かかる態様では、低密度焼結領域を介した“ガス供給”によって「加圧処理」を行うと共に、別の低密度焼結領域を介した“ガス吸引”によって「吸引処理」を行う。好ましくは、低密度焼結領域Pと低密度焼結領域Qとが相互に対向した金型を用いる。この場合、樹脂原料又は成形品の一方の面には加圧操作を施すことができる一方、その他方の面には吸引操作を施すことができるので、より効果的に“ヒケ”を防止することができる。
【0049】
(射出・保圧工程および離型工程における加圧)
かかる態様では、射出成形工程のみならず、それ以外の工程でも低密度焼結領域を介したガス加圧を行う。例えば、射出・保圧工程時に加圧操作を行うと共に、離型工程においても加圧操作を行う。例えば、図13に示すような加圧操作を行ってよい。このような態様では、離型工程時にて、低密度焼結領域を介して成形品に向かってガス圧を加えることができるので、金型からの成形品の取外し(離型)が効果的に助力される。換言すれば、KOピンなどの突き出しピンなどを用いることなく、離型を容易に行うことができる。また、そのような離型工程時などでガス供給を行うと、低密度焼結領域における樹脂やヤニ等による目詰まりを回避できる点でも利点がある。
【0050】
「射出・保圧工程時の加圧操作」と「離型工程時の加圧操作」とでは、加える圧力がそれぞれ異なることが好ましい。例えば、「射出・保圧工程時の加圧操作」においては、1〜30MPa程度の圧力を樹脂原料・成形品に加えるのに対して、「離型工程時の加圧操作」では1〜20MPa程度の圧力を成形品に加える。これによって、樹脂成形時にてヒケ発生を防止できるだけでなく、離型時にて成形品の突き出しを容易に実施でき、また、低密度焼結領域における目詰まりなども効果的に回避できる。
【産業上の利用可能性】
【0051】
本発明の製造方法で得られる三次元形状造形物は工業上の種々の物品として用いることができる。例えば、得られる三次元形状造形物をプラスチック射出成形用金型、プレス金型、ダイカスト金型、鋳造金型、鍛造金型などの金型として用いることができる。
【符号の説明】
【0052】
1 光造形複合加工機
2 粉末層形成手段
3 光ビーム照射手段
4 切削手段
8 ヒューム
19 粉末/粉末層(例えば金属粉末/金属粉末層)
20 造形物支持部材
21 造形プレート
22 粉末層(例えば金属粉末層または樹脂粉末層)
23 スキージング用ブレード
24 固化層(例えば焼結層)
24a 高密度固化領域(例えば高密度焼結部)
24b 低密度固化領域(例えば低密度焼結領域)
24b〜24b 複数の低密度固化領域(例えば複数の低密度焼結領域)
24c 支持用固化部(例えば支持用焼結部)
25 粉末テーブル
26 粉末材料タンクの壁部分
27 造形タンクの壁部分
28 粉末材料タンク
29 造形タンク
30 光ビーム発振器
31 ガルバノミラー
40 ミーリングヘッド
41 XY駆動機構
50 チャンバー
52 光透過窓またはレンズ
60 中空領域
L 光ビーム
100 三次元形状造形物
120 成形品リブを形成する部分
200 成形品又は樹脂原料
202 リブ
204 ヒケ
300 連結管(従来技術)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(i)粉末層の所定箇所に光ビームを照射して前記所定箇所の粉末を焼結又は溶融固化させて固化層を形成する工程、および
(ii)得られた固化層の上に新たな粉末層を形成し、前記新たな粉末層の所定箇所に光ビームを照射して更なる固化層を形成する工程
を繰り返して行う三次元形状造形物の製造方法であって、
三次元形状造形物の表面領域の一部を低密度固化領域として形成し、
前記低密度固化領域を通過するガスによって加圧が行えるように前記低密度固化領域の固化密度を50%〜90%にすることを特徴とする、三次元形状造形物の製造方法。
【請求項2】
前記低密度固化領域と連通する中空領域を前記三次元形状造形物に形成することを特徴とする、請求項1に記載の三次元形状造形物の製造方法。
【請求項3】
前記低密度固化領域の厚さが0.5〜10mmになるように該低密度固化領域を形成することを特徴とする、請求項1または2に記載の三次元形状造形物の製造方法。
【請求項4】
前記中空領域の一部に前記低密度固化領域と連結して成る固化部を形成することを特徴とする、請求項2に記載の三次元形状造形物の製造方法。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載の製造方法で得られ、コア側またはキャビティ側の金型として用いられる三次元形状造形物であって、
金型のキャビティを形成する面の少なくとも一部に固化密度50%〜90%の低密度固化領域が設けられており、該低密度固化領域を通過するガスによって成形原料又は成形品を加圧できることを特徴とする、三次元形状造形物。
【請求項6】
前記低密度固化領域と連通する中空領域を有して成り、該中空領域が外部と連通していることを特徴とする、請求項5に記載の三次元形状造形物。
【請求項7】
前記低密度固化領域の厚さが局所的に異なっていることを特徴とする、請求項5または6に記載の三次元形状造形物。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれかに記載の三次元形状造形物を金型として用いた成形品の製造方法であって、
(i)前記金型のキャビティ部を樹脂原料で満たす工程、および
(ii)前記キャビティ部にて前記樹脂原料を成形に付す工程
を含んで成り、
前記低密度固化領域を介してガスを供給することによって、前記キャビティ部の外側から前記樹脂原料又は得られる成形品に圧力を加えることを特徴とする、成形品の製造方法。
【請求項9】
前記ガスの温度によって、前記キャビティ部の前記樹脂原料又は前記成形品の温度調整を行うことを特徴とする、請求項8に記載の成形品の製造方法。
【請求項10】
射出・保圧工程と離型工程とのそれぞれの工程において前記ガス供給による加圧を行い、該射出・保圧工程と該離型工程とでそれぞれ異なる圧力の加圧を行うことを特徴とする、請求項8または9に記載の成形品の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2011−256435(P2011−256435A)
【公開日】平成23年12月22日(2011.12.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−132213(P2010−132213)
【出願日】平成22年6月9日(2010.6.9)
【出願人】(000005832)パナソニック電工株式会社 (17,916)
【出願人】(506326176)株式会社OPMラボラトリー (5)
【Fターム(参考)】