説明

三次元表示装置

【課題】 これまでは観察することが困難であった物体の内部を、容易且つ正確に観察できる三次元表示装置を提供する。
【解決手段】 三次元表示装置1は、スクリーン物体3が、分割と再組み立て可能な2つの部品3a,3bによって構成されている。画像データ生成手段は、スクリーン物体3が分解されて、それまで内包されていた部品の表面が画像投影手段の投影空間6に新たに露出された場合には、この表面に投影するために、スクリーン物体が分解される前に投影していた仮想物体の内部を表示する画像を新たに生成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プロジェクタ等の投影手段によって、三次元形状を有する移動可能なスクリーン物体に画像を投影して表示する三次元表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
実物体を模したスクリーン物体に、実物体と関連する画像を投影表示する三次元表示装置が、非特許文献1に開示されている。非特許文献1の三次元表示装置が表示する画像の代表的な例は、スクリーン物体が模している実物体の内部を表す画像である。このような画像を投影した場合には、実物体の中に仮想物体が埋め込まれており、実物体が透明化してその内部を観察しているかのような視覚効果を生じさせることができる。例えば、マネキンの表面に内臓の画像を投影し、マネキンの移動や回転に追従するように投影する内臓の画像を変化させることにより、あたかもマネキンが透明化して内臓をいろいろな方向から観察しているかのような表示を行うことが可能となる。
【非特許文献1】Daisuke Kondo, Toshiyuki Goto, Makoto Kouno, Ryugo Kijima and Yuzo Takahashi, "A Virtual Anatomical Torso for Medical Education using Free From Image Projection", Procs of the Tenth International Conference on VSMM 2004, pp678-685.
【0003】
非特許文献1に記載される三次元表示装置は、スクリーン物体の精密な形状データを記憶している。そして、画像の観察者の視点位置と、投影手段の位置姿勢と、スクリーン物体の位置姿勢とを随時計測し、この計測結果を用いた数値演算を行って運動視差と両眼視差を考慮した画像を生成している。具体的には、特殊な仮想空間を定義して、その仮想空間の中で、実空間における視点位置とプロジェクタ位置とを入れ替えて、各透視投影変換の逆変換を逐次行うことにより、スクリーン物体と一体化した仮想物体の画像を生成し、この画像を投影する。画像の観察者は、スクリーン物体と仮想物体とを同時に観察することができ、その位置関係、表面からの深さ、内部物体の大きさ等を直感的に知ることができる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
非特許文献1の三次元表示装置は、スクリーン物体が模している実物体の全体像を容易に把握することのできる優れた装置である。しかしながら、非特許文献1の三次元表示装置においては、実物体の特定の断面の詳細な観察を行う場合や、複数の部品によって組み立てられている構造物の最奥部の観察を行う場合に、スクリーン物体と仮想物体の画像との関連性が低くなり、視覚効果が不十分となる恐れがあった。即ち、従来の予め形状が規定されているスクリーン物体に、実物体の断面の画像や最奥部の画像を切り替えて表示した場合には、観察者がスクリーン物体と仮想物体の画像との位置関係の関連性を理解し難くなる可能性があった。
【0005】
従来、特定の部分の画像をより詳細に観察するためには、マウスやキーボードといった入力手段で画像上の観察位置を指定して、別のディスプレイに表示する方法が知られている。しかしながら、このような方法を非特許文献1の三次元表示装置に適用しても、先に述べたようにスクリーン物体と仮想物体の画像との1対1の対応が失われてしまい、充分な視覚効果を得ることは困難であった。
【0006】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであって、特定の物体の断面の詳細な観察や、複数の部品によって組み立てられている構造物の最奥部の観察のために特に適しており、これまでは観察することが困難であった物体の内部を、容易且つ正確に観察できる三次元表示装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、三次元形状を有するスクリーン物体に画像を投影して表示する三次元表示装置に関する。本発明の三次元表示装置は、スクリーン物体に投影する画像データを生成する画像データ生成手段と、画像データ生成手段により生成された画像データを投影する画像投影手段と、画像データ生成手段に入力するためのスクリーン物体の位置及び姿勢を測定する位置姿勢センサとを備えている。三次元表示装置のスクリーン物体は、複数の部品で構成されており、分解と再組み立てが可能である。又、画像データ生成手段は、位置姿勢センサからの入力データに基づいてスクリーン物体の部品の位置と姿勢とを計算しており、スクリーン物体の分解によってそれまで内包されていた部品の表面が画像投影手段の投影空間に新たに露出されたことが認識されると、分解前のスクリーン物体に投影されていた画像が表示する物体の内部画像を、新たに露出された部品の表面の位置に生成する。生成された画像は、画像投影手段によって、スクリーン物体に投影される。
【0008】
本発明の三次元表示装置は、スクリーン物体が、分割と再組み立て可能に構成されている。画像データ生成手段は、スクリーン物体が分解されて、それまで内包されていた部品の表面が画像投影手段の投影空間に新たに露出された場合には、この表面に投影するために、スクリーン画像が分解される前に投影されていた画像が表わしている物体の内部を表示する画像を新たに生成する。画像投影手段が、この新たに生成された画像をスクリーン物体の新たな表面に投影すると、あたかも、物体が分解されて、スクリーン物体の中に画像による仮想物体が埋め込まれているような視覚効果を得ることができる。
【0009】
本発明は、スクリーン物体を構成する複数の部品が、ヒンジによって接続されていることを特徴とする。部品同士が接続されてその移動が規制されることにより、操作性が向上し、個々の部品の紛失の恐れがなく、再組み立ても容易である。
【0010】
本発明は、スクリーン物体の部品がヒンジで接続されているヒンジ配設部に、角度センサが取り付けられていることを特徴とする。画像データ生成手段は、角度センサからの入力を受けて、各部品の相対的な位置関係を把握することが可能となる。この結果、スクリーン物体の全ての部品の位置と姿勢とを検出するためにスクリーン物体に固定する位置姿勢センサの数をより減ずることが可能となる。
【0011】
本発明の三次元表示装置は、複数の部品によって一のスクリーン物体が構成されており、位置姿勢センサが、これら部品毎に取り付けられている。画像データ生成手段は、前記部品の取り外しに応じた画像を生成する。即ち、本発明の画像データ生成手段は、分解前には、一のスクリーン物体が模している実物体全体の表示を行い、部品が取り外された場合には、実物体から対応する部品が外された状態の画像を生成することを特徴とする。
【0012】
本発明の三次元表示装置は、画像データ生成手段が、実空間の所定の位置に固定される固定画像を生成しており、スクリーン物体の分解位置に応じて画像を生成することを特徴とする。
【0013】
本発明の画像データ生成手段は、通常、実空間の所定の位置に固定されている画像を生成している。そして、固定されている画像の投影空間の中に、分解前のスクリーン物体を配置して画像を投影することにより、スクリーン物体に埋め込まれた仮想物体全体を観察することができる。画像が投影されているスクリーン物体を分解した場合には、位置姿勢センサからの入力によって画像データ生成手段はスクリーン物体の分解を認識し、スクリーン物体の分解位置に応じて仮想物体が分解された画像を生成する。観察者は、自らの操作によってスクリーン物体を画像の投影空間の中で移動させ、仮想物体の内部を表示させたい位置でスクリーン物体を分解することにより、詳細な内部の画像をスクリーン物体に投影して観察することができる。
【0014】
本発明の画像データ生成手段は、スクリーン物体の位置に追従して移動する移動画像を生成しており、スクリーン物体の分解位置に応じて画像を生成することを特徴とする。
【0015】
本発明の三次元表示装置は、画像データ生成手段により生成される画像を、実空間の所定の位置に固定するか、スクリーン物体の位置に追従して移動するかを切り替えるスイッチ手段を備えていることを特徴とする。
【0016】
本発明のスイッチ手段を用いることによって、画像を実空間に固定するか、スクリーン物体の移動に追従するかを選択することが可能となり、より観察が容易な位置姿勢にスクリーン物体と画像の位置関係を調整した状態で、スクリーン物体を分解してその内部を観察することが可能となる。
【発明の効果】
【0017】
本発明の三次元表示装置は、スクリーン物体が分解された場合には、分解によって露出した表面に、分解前に投影されていた画像の内部構造を表示する画像を新たに生成して投影することができる。新たな画像が投影されることで、あたかも分解されたスクリーン物体の中に画像による仮想物体が埋め込まれてその断面を表示しているかのような視覚効果を得ることができる。観察者は、実物体の分解前の形状と、新たな画像が模している仮想物体との関連性を直感的に認識することができるため、実物体及び仮想物体の内部構造に対する理解を容易に深めることが可能となる。
【0018】
本発明の三次元表示装置によって、観察者は、実空間に固定された状態で投影されている画像の投影空間の中でスクリーン物体を移動させ、自らが選択した位置でスクリーン物体を分解することにより、実物体の任意の位置の断面に対応する内部の画像を、スクリーン物体に投影させて三次元で観察することができる。
【0019】
本発明の三次元表示装置は、複数の部品で構成される一の構造物を模したスクリーン物体に、部品の取り外しに応じた画像を生成することができる。観察者は、構造物の形状を模したスクリーン物体と、構造物の部品の詳細な構成を表示する画像との関連性が充分に維持された状態で、構造物の組み立てと解体の詳細な過程を視覚的に確認し、構造物の最奥部の詳細な構成を容易に観察することが可能となる。
【実施例】
【0020】
(第1実施例)以下に、本発明の三次元表示装置1の実施例を、図面を参照しつつ詳細に説明する。本実施例においては、分解と再組み立てが可能な、同一形状の2つの半球形の部品3a,3bからなる組み合わせ型スクリーン3を使用し、そこに仮想物体である実物大の内臓を表現する画像データを投影表示する三次元表示装置1について、詳細に説明する。
【0021】
図1に、本実施例に係る三次元表示装置1の構成を模式的に示す。本実施例における三次元表示装置1は、プロジェクタ2と、組み合わせ型スクリーン3を備えている。プロジェクタ2が投影する内臓の画像のデータは、接続されているコンピュータ9の記憶装置に実行可能なプログラムの形で記憶されている画像データ生成手段から供給される。
【0022】
コンピュータ9の中の画像データ生成手段は、組み合わせ型スクリーン3を構成する部品3a,3bの精密な表面形状のデータと、投影する内臓のボリュームデータとをあらかじめ記憶している。内臓のボリュームデータは、三次元の座標とその座標毎の色情報で構成されている。ボリュームデータは、視野中心部の解像度が1mmで投影された場合に、実物大の内臓の大きさを表示することが可能な精度で作成されている。
【0023】
コンピュータ9には、部品3a,3bにそれぞれ接続されているスクリーン位置姿勢センサ10と、観察者の視点位置を計測するための視点位置センサ12とが接続されている。視点位置センサ12と、スクリーン位置姿勢センサ10とは、同一の仕様を有する磁気を利用したセンサであって、磁界発生源14が発生する磁力を計測して6自由度の位置を計測して出力する。視点位置センサ12と、スクリーン位置姿勢センサ10が出力した位置の計測データは、それぞれコンピュータ9に入力されて、画像データ生成手段の計算に利用される。視点位置センサ12は、画像投影時には、観察者の頭部に固定されている。
【0024】
スクリーン位置姿勢センサ10は、部品3a,3bの予め指定された位置に正確に固定される。スクリーン位置姿勢センサ10の出力する位置姿勢の情報に基づいて、画像データ生成手段は、空間内の部品3a,3bの正確な位置姿勢を算出する。算出された部品3aの平面部分4a(図3に記載)と、部品3bの平面部分4b(図3に記載)の位置が空間的に一致している場合、画像データ生成手段は、組み合わせ型スクリーン3は、平面部分4aと平面部分4bが接合面となっている1つの球状に組み合わされており、平面部分が露出していないと認識する。一方、部品3a,3bのそれぞれの平面部分4a,4bの位置が離れている場合、組み合わせ型スクリーン3は分解されていると認識する。
【0025】
図2に示すように、画像データ生成手段は、組み合わせ型スクリーン3が投影手段2の投影空間6に存在しており、且つ組み合わせ型スクリーン3が組み合わされていると認識している場合、部品3a,3bのそれぞれの半球形部分5a,5bに投影するために、あらかじめ記憶している内蔵のボリュームデータのうち外表面に相当する部分のデータを元に、内臓の外形画像データ7を生成する。外形画像データ7は、視点位置センサ12と位置姿勢センサ10のデータを用いて透視投影変換の逆変換を行うことで歪みが補正されており、視点センサ12を装着した観察者は、外形画像データ7を観察することで、歪みがなく立体的に見える内臓の画像を認識することができる。組み合わせ型スクリーン3の移動が位置姿勢センサ10で認識された場合には、その動作に追従できるように位置を変更した外形画像データ7を生成し、投影手段2が新たな外形画像データ7を投影空間に投影し続ける。
【0026】
画像データ生成手段は、部品3aと部品3bの接合位置に投影される外形画像データ7の座標値を予め認識している。そして更に、外形画像データ7に対応している内臓のボリュームデータの断面作成位置を予め認識している。画像データ生成手段は、分割されて新たに露出した部品3a,3bの平面部分の4a,4bに投影するための画像として、内蔵のボリュームデータを断面作成位置で抽出したデータを用いる。
【0027】
図3に示すように組み合わせ型スクリーン3が分解されると、部品3a,3bの平面部分の4a,4bの位置が、離れた状態となる。画像データ生成手段は、位置姿勢センサ10が出力する位置の計測データから組み合わせ形スクリーン3が分解されたことを認識すると、新たに投影空間に露出した平面部分4aに投影する断面画像データ8aと、平面部分4bに投影する断面画像データ8bを生成する。
【0028】
同時に、画像データ生成手段は、画像の投影可能な範囲に部品の半球形部分5a,5bが位置している場合には、これらに投影する外形画像データ7a,7bを同時に生成する。外形画像データ7a,7bは、外形画像データ7を、部品3aと部品3bの接合部分で切断して分割することで生成される。投影手段2は、画像データ生成手段が生成する断面画像データ8a,8bと、外形画像データ7a,7bを投影空間に投影し続ける。
【0029】
分解された部品3a,3bを再度組み立てると、部品3aの平面部分4aと部品3bの平面部分4bの位置が空間的に一致することになり、画像データ生成手段は、組み合わせ型スクリーン3が1つの球状に組み合わされたことを認識する。画像データ生成手段は、再び外形画像データ7を生成し、投影手段2がこれを投影空間に投影する。
【0030】
本実施例の三次元表示装置1は、組み合わせ型スクリーン3を構成する部品3a,3bが分解された場合には、内臓の外形画像7a,7bと断面画像8a,8bとを投影することができる。これにより、それぞれの部品3a,3bの中に、あたかも実物大の内臓が切断されて埋め込まれているかのような視覚効果をもたらすことが可能である。部品3a,3bの平面部分4a,4bに内臓の断面画像8a,8bを投影することで、従来の三次元表示装置では観察が困難であった内部の画像を、詳細に観察することが可能となる。
【0031】
(第2実施例) 本実施例の三次元表示装置に用いられる組み合わせ型スクリーン15を図4に示す。組み合わせ型スクリーン15は、部品3a,3bを備えている。部品3a,3bの間には、ヒンジ16が設けられており、このヒンジ16の配設部には、図示されない回転センサが接続されている。回転センサは、部品3aに対する部品3bの角度を出力することができる。位置姿勢センサ10は部品3aのみに固定されており、部品3aの正確な位置姿勢を出力する。第1実施例と同一の構成を有するものについては、同一符号を付して重複説明を割愛する。
【0032】
本実施例の画像データ生成手段は、部品3aに取り付けられた位置姿勢センサ10からの入力と、回転センサの入力に基づいて、部品3aと部品3bの正確な位置姿勢を算出する。位置姿勢センサ10は、6自由度の正確な位置姿勢を出力することができる一方で非常に高価であるが、本実施例における画像データ生成手段は、一方の位置姿勢センサ10の代わりに、角度センサからの角度の入力を受けて、部品3aと部品3bの相対的な位置関係を正確に把握することが可能となる。即ち、三次元表示装置全体で使用する位置姿勢センサ10の数をより減ずることが可能となる。
【0033】
本実施例の組み合わせ型スクリーン15は、部品3a,3bがヒンジ16で接続されていることで、操作がしやすくなり、一方の紛失の恐れがなく、再組み立てが容易である。
【0034】
(第3実施例) 本実施例の三次元表示装置における画像データ生成手段は、組み合わせ型スクリーンに投影する仮想物体を生成する。仮想物体は、実空間の所定の位置に固定するか、或いは組み合わせ型スクリーンに追従するように移動するかを、外部から入力によって切り替えることができる。そして、本実施例の三次元表示装置は、仮想物体の固定と追従を切り替えるための入力手段としての図示されないフットスイッチを備えている。又、組み合わせ型スクリーンの分解と再組み立てを認識する手段として、接触センサを平面部分4a,4bに備えている。その他の構成については、第1実施例と同一であり、同一符号を付して重複説明を割愛する。
【0035】
本実施例の画像データ生成手段は、起動直後には、組み合わせ型スクリーン3の移動に応じて移動する仮想物体を生成する。画像を固定する指令をフットスイッチから入力された場合には、指令を受けた時点での投影位置に、仮想物体を固定する。再びフットスイッチからの指令を受けた場合には、画像データ生成手段は、画像を組み合わせ型スクリーン3の移動に追従させて仮想物体を移動させる。
【0036】
画像データ生成手段は、仮想物体が実空間に固定されている場合と、組み合わせ型スクリーン3に追従して移動している場合のいずれの状況であっても、仮想物体の中のどの部分が、部品3aと部品3bの接合箇所に対応しているかを常に算出している。そして、組み合わせ型スクリーン3が分解されたことが接触センサの出力によって認識されると、分解の直前に算出されていた仮想物体の接合対応部分の位置データを用い、この面による内臓のボリュームデータの断面を、新たに投影空間に露出した平面部分4aと平面部分4bに投影する。
【0037】
本実施例の三次元表示装置は、フットスイッチという入力手段によって、仮想物体を、実空間に固定するか、スクリーン3の移動に追従して移動するかを随時選択することができる。そして、仮想物体が投影されている状態で組み合わせ型スクリーン3を分解することで、新たに投影空間に露出された平面部分4a,4bに、任意の位置における内臓の断面を表示することが可能である。仮想物体の移動と固定が可能であることから、組み合わせ型スクリーン3を分解したときに投影される仮想物体の観察が最も容易となるように、仮想物体の位置姿勢を組み合わせ型スクリーン3に対して細かく調整することが可能となる。
【0038】
(第4実施例) 本実施例の三次元表示装置に用いられる組み合わせ型スクリーンを図5に示す。本実施例のスクリーン物体20は、27個の合同な立方体の部品21が分解と再組み立て可能に組み合わされて構成されている。それぞれの部品21には、位置姿勢センサが内蔵されており、画像データ生成手段は、位置姿勢センサによって、27個の部品のそれぞれの正確な位置を算出している。
【0039】
本実施例における画像データ生成手段は、スクリーン物体20に投影するために、細胞のボリュームデータを予め記憶している。図5に示すようにスクリーン物体20が組み合わされている場合には、画像データ生成手段は、拡大された細胞の外形画像22データを作成し、投影手段2がこれを投影する。部品21の一部が分解された場合には、画像データ生成手段は、図6に示すように、新たに露出した部品21の表面の位置に対応する、細胞の内部を示す断面画像データ23を作成し、投影手段がこれを投影する。
【0040】
(第5実施例) 本実施例の三次元表示装置に用いられる組み合わせ型スクリーンを図7に示す。本実施例のスクリーン物体30は、ほぼ実物大の成人の頭部を模しており、頭部の上下方向を中心軸とする輪切り状に形成された複数の部品31〜36から構成されている。部品31〜36は、投影空間6に固定されている軸部材37に回転可能に連結されている。軸部材37と、部品31〜36の連結部には、回転センサ38が配設されており、部品31〜36のうちいずれの部品が、どのような角度で回転移動したかを検出している。
【0041】
本実施例における画像データ生成手段は、スクリーン物体30の部品31〜36の正確な形状のデータと、脳の外形及び内部についての詳細なボリュームデータを予め記憶している。そして、複数の部品31〜36が全て組み合わされて成人の頭部を形成しているとき、画像データ生成手段は、スクリーン物体30に重畳表示するための仮想物体として脳の外形39を生成して投影手段2がこれを投影する。投影された仮想物体は、視点センサ12を装着した観察者からは、スクリーン物体30の内部に埋め込まれているように認識される。
【0042】
画像データ生成手段は、仮想物体の中の、部品31〜36の接合位置に対応する断面を予め算出している。図8に示すように、画像データ生成手段は、回転センサ38の出力によって、部品31〜36のいずれかが回転移動されて新たに平面部分が投影空間に露出したことが認識された場合、脳のボリュームデータから断面作成位置でデータを抽出して、露出された平面部分に投影するための脳の断面40を生成する。
【0043】
本実施例におけるスクリーン物体30は、部品31〜36が投影空間6に固定されている軸部材37に回転可能な状態で接続されており、その変位が規制されている。スクリーン物体30がばらばらにならないために、操作性がよく、紛失の恐れがなく、部品31〜36を軸部材37の周りに360度回転させるだけで容易に元の位置に組み合わせることが可能である。
【0044】
(第6実施例) 本実施例の三次元表示装置に用いられる組み合わせ型スクリーンを図9に示す。本実施例のスクリーン物体41は、車両のエンジンの形状を模している。部品42は、エンジンの外カバーを模した形状を備えており、他の部品であるクランク43,シリンダヘッド44と共に、分解と再組み立てが可能となっている。部品42,43,44を含む全ての部品には、位置姿勢センサが固定されており、個々の正確な部品の位置と姿勢を表すデータが出力される。
【0045】
本実施例における画像データ生成手段は、スクリーン物体41の多数の部品の正確な形状のデータと、個々の部品の正確な外表面の画像データを予め記憶している。本実施例における画像データ生成手段は、個々の部品の取り外しに応じた画像を生成することができる。即ち、分解前には、一のスクリーン物体が模している実物体全体の表示を行い、部品が取り外された場合には、実物体から対応する部品が外された状態の画像を生成することを特徴とする。図10に、部品42が取り外された場合に、スクリーン物体41を構成している残りの部品に対して、画像データ生成手段が生成して投影手段2が投影する画像を模式的に示す。このように、1つずつ部品を分解していくことにより、観察者はスクリーン物体40が模しているエンジンの部品を一つずつ外していった場合の形状と、それに対応する部品を模した詳細な画像を確認することができる。最終的には、エンジンの最奥部を視覚的に確認することができる。
【0046】
(第7実施例) 本実施例に使用されるスクリーン物体50を図11、図12,図13に示す。本実施例のスクリーン物体50は、64個の四角錐の特定の辺が連結されて構成されている。図11に示されるスクリーン物体の表面52は、図12では全て内包されており、図12の新たに露出した表面53には、表面52と全く異なる画像が投影される。更に、図12に示されるスクリーン物体52を上下に取り外すことで、部品50a、50bに分解することが可能であり、分割後にそれぞれを組み立てることで、図13に示す多角形が形成される。図13の多角形には、更に異なる画像を投影してその視覚効果を楽しむことができる。
【0047】
以上、実施例において本発明の具体例を詳細に説明したが、これらは例示にすぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。例えば、画像データ生成手段が生成する仮想物体を、実空間の所定の位置に固定するか、或いはスクリーン物体の移動に追従させるかを切り替える為の入力手段は、フットスイッチだけではなく、スクリーン物体の表面に配置する圧力スイッチを用いることができる。観察者は、移動や回転を行った後にスクリーンを加圧することで、仮想物体の固定と追従とを切り替えることが可能となる。その他、スクリーン全体の形状や、組み合わせる部品の形状、投影する画像が模している仮想物体の種類についても、任意に選定が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0048】
本発明は、人体をはじめとするその他生物の内部の構成を検討することが可能であり、教育訓練や手術の手法の検討といった分野に活用することができる。又、前記の用途以外にも、全体の形状と任意の断面形状や内部形状とを関連づけて観察したい物品に対して適用が可能である。更に、例えば手でスクリーン物体の分解と再組み立てを行った場合に、再組み立て後に新たな仮想物体が投影されることを楽しむ体験型ゲーム機器等に適用することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】第1本実施例に係る三次元表示装置1の構成を模式的に示す図である。
【図2】第1実施例の組み合わせ型スクリーン3が組み合わされている場合に投影される外形画像データ7を示す図である。
【図3】第1実施例の組み合わせ型スクリーン3が分解されている場合に投影される外形画像データ7a,7bと断面画像データ8a,8bとを示す図である。
【図4】第2本実施例の三次元表示装置に用いられる組み合わせ型スクリーン15の構成を模式的に示す図である。
【図5】第4本実施例の三次元表示装置に用いられる組み合わせ型スクリーン20の構成と、スクリーン20が組み合わされている場合に投影される外形画像22を示す図である。
【図6】第4本実施例の三次元表示装置の組み合わせ型スクリーン20が分解されている場合に投影される断面画像データ23を示す図である。
【図7】第5本実施例の三次元表示装置に用いられる組み合わせ型スクリーン30の構成と、スクリーン30が組み合わされている場合に投影される脳の外形画像データ39を示す図である。
【図8】第5本実施例の三次元表示装置に用いられる組み合わせ型スクリーン30の構成と、スクリーン30が分解されている場合に投影される脳の外形画像データ39と脳の断面データ40を示す図である。
【図9】第6実施例の三次元表示装置に用いられるエンジンを模した組み合わせ型スクリーン41の構成とそこに投影される画像を模式的に示す図である。
【図10】第6実施例の組み合わせ型スクリーン41から部品42を取り除いたときに投影される画像を模式的に示す図である。
【図11】第7実施例の組み合わせ型スクリーン50において、表面52が露出している状態を示す図である。
【図12】第7実施例の組み合わせ型スクリーン50において、表面53が露出している状態を示す図である。
【図13】第7実施例の組み合わせ型スクリーン50において、スクリーンが分割されて部品50a,50bがそれぞれ別個に組み立てられている状態を示す図である。
【符号の説明】
【0050】
1 三次元表示装置
2 投影手段
3,15,20,30,41,50 組み合わせ型スクリーン
3a,3b,21,31,32,33,34,35,36,42,43,44,50a,50b 部品
4a,4b 平面部分
5a,5b 球面部分
6 投影空間
7,22 外形画像データ
8,23 断面画像データ
9 コンピュータ
10 スクリーン位置姿勢センサ
12 視点位置センサ
14 磁界発生源
16 ヒンジ
37 軸部材
38 回転センサ
39 脳の外形
40 脳の断面



【特許請求の範囲】
【請求項1】
三次元形状を有するスクリーン物体に画像を投影して表示する三次元表示装置であって、
前記スクリーン物体に投影する画像データを生成する画像データ生成手段と、
前記画像データ生成手段により生成された画像データを投影する画像投影手段と、
画像データ生成手段に入力するための前記スクリーン物体の位置及び姿勢を測定する位置姿勢センサとを備えており、
前記スクリーン物体は、複数の部品で構成されており、分解と再組み立てが可能であって、
前記画像データ生成手段は、前記位置姿勢センサからの入力データに基づいてスクリーン物体の部品の位置と姿勢とを計算しており、スクリーン物体の分解によってそれまで内包されていた部品の表面が前記画像投影手段の投影空間に新たに露出されたことが認識されると、分解前に投影されていた画像が表示する物体の内部画像を新たに露出された部品の表面の位置に生成し、
前記画像投影手段は、前記スクリーン物体の分解に応じた画像を投影することを特徴とする三次元表示装置。
【請求項2】
スクリーン物体を構成する複数の部品が、ヒンジによって接続されていることを特徴とする請求項1に記載の三次元表示装置。
【請求項3】
ヒンジ配設部に角度センサが取り付けられていることを特徴とする請求項2に記載の三次元表示装置。
【請求項4】
複数の部品によって一のスクリーン物体が構成されており、
位置姿勢センサは、前記部品毎に取り付けられており、
画像データ生成手段は、前記部品の取り外しに応じた画像を生成することを特徴とする請求項1記載の三次元表示装置。
【請求項5】
画像データ生成手段は、実空間の所定の位置に固定される固定画像を生成しており、
スクリーン物体の分解位置に応じて画像を生成することを特徴とする請求項1乃至4の何れかに記載の三次元表示装置。
【請求項6】
画像データ生成手段は、スクリーン物体の位置に追従して移動する移動画像を生成しており、
スクリーン物体の分解位置に応じて画像を生成することを特徴とする請求項1乃至4の何れかに記載の三次元表示装置。
【請求項7】
画像データ生成手段により生成される画像を、実空間の所定の位置に固定するか、スクリーン物体の位置に追従して移動するかを切り替えるスイッチ手段を更に備えていることを特徴とする請求項5又は6に記載の三次元表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2009−216958(P2009−216958A)
【公開日】平成21年9月24日(2009.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−60446(P2008−60446)
【出願日】平成20年3月11日(2008.3.11)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成16〜20年度、文部科学省、地域科学技術振興施策、委託研究(知的クラスター創成事業、岐阜・大垣地域ロボティック先端医療クラスター)、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【出願人】(304019399)国立大学法人岐阜大学 (289)
【Fターム(参考)】