説明

三環式トロンビンレセプターアンタゴニスト

【課題】トロンビンレセプターアンタゴニスト化合物を提供すること。
【解決手段】本発明は、置換された三環式トロンビンレセプターアンタゴニスト、それらを含む薬学的組成物、および血栓症、アステロ−ム性動脈硬化症、再狭窄、高血圧、狭心症、不整脈、心不全、大脳虚血、脳卒中、炎症障害、神経変性疾患および癌に関連する疾患の処置におけるそれらの使用に関する。本発明はまた、本発明の新規化合物と他の心臓血管薬の組合せに関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、米国特許法(35USC)の119(e)章下で、2002年4月16日に出願された米国特許仮出願シリアルNo.60/373,072の優先権を主張する。米国仮出願の明細書全体、特許請求の範囲及び図面はここに充分に記載しているかのように参考として本明細書中で参考として援用される。
【背景技術】
【0002】
本発明は、置換された三環式トロンビンレセプターアンタゴニスト、それらを含む薬学的組成物、および血栓症、アステロ−ム性動脈硬化症、再狭窄、高血圧、狭心症、不整脈、心不全、大脳虚血、脳卒中、炎症障害、神経変性疾患および癌に関連する疾患の処置におけるそれらの使用に関する。本発明はまた、本発明の新規化合物と他の心臓血管薬の組合せに関する。
【0003】
トロンビンは種久の細胞種で多くの活性を有することが公知であり、トロンビンレセプターはヒトの血小板、血管平滑筋細胞、内皮細胞、および繊維芽細胞というような細胞種に存在することが公知である。それゆえ、プロテアーゼ活性型レセプター(PAR)アンタゴニストとしても知られるトロンビンレセプターアンタゴニストは血栓、炎症、アテローム性動脈硬化症、および繊維芽増殖障害ならびにトロンビンおよびそのレセプターが病理学的役割を果たす他の障害の処置に有効となりえる。
【0004】
トロンビンレセプターアンタゴニストペプチドは、トロンビンレセプターにおけるアミノ酸の置換に関する構造活性研究に基づいて同定されてきている。Bernatowiczらによる、J.Med.Chem.,vol.39,pp.4879−4887(1996)でテトラペプチドおよびペンタペプチドが有力なトロンビンレセプターアンタゴニストとして開示されている。その実施例として、N−trans−シンナモイル−p−フルオロ−Phe−p−グアジニノ−Phe−Leu−Arg−NHおよびN−trans−シンナモイル−p−フルオロ−Phe−p−グアジニノ−Phe−Leu−Arg−Arg−NHペプチドがある。ペプチドトロンビンレセプターアンタゴニストはまた1994年2月17日に公開されたWO94/03479に開示されている。
【0005】
置換された三環式トロンビンレセプターアンタゴニストは、米国特許第6,063,847号、米国特許第6,326,380号およびU.S.シリアルNos.09/880222(WO01/96330)および10/271715で開示されている。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、例えば、以下を提供する:
(項目1)
以下の構造式:
【化1】


によって表される化合物であり、またはその薬学的に受容可能な塩または溶媒和物であり、ここで:単一の点線は任意の単結合を表し;
【化2】


は、任意の二重結合を示し;
nは、0〜2であり;
Qは、
【化3】


であり;
は、H,(C−C)アルキル,フルオロ−(C−C)アルキル−,ジフルオロ−(C−C)アルキル−,トリフルオロ−(C−C)アルキル−,(C−C)シクロアルキル,(C−C)アルケニル,ヒドロキシ−(C−C)アルキル−,およびアミノ−(C−C)アルキル−から成る群から独立して選択され;
は、H,(C−C)アルキル,フルオロ−(C−C)アルキル−,ジフルオロ−(C−C)アルキル−,トリフルオロ−(C−C)アルキル−,(C−C)シクロアルキル,(C−C)アルケニル,ヒドロキシ−(C−C)アルキル−,およびアミノ−(C−C)アルキル−から成る基から独立して選択され;
は、H,ヒドロキシ,(C−C)アルコキシ,−SOR16,−SO17,−C(O)OR17,−C(O)NR1819,−(C−C)アルキル−C(O)NR1819,(C−C)アルキル,ハロゲン,フルオロ−(C−C)アルキル−,ジフルオロ−(C−C)アルキル−,トリフルオロ−(C−C)アルキル−,(C−C)シクロアルキル,(C−C)−シクロアルキル−(C−C)アルキル−,(C−C)アルケニル,アリール−(C−C)アルキル−,アリール−(C−C)アルケニル−,ヘテロアリール−(C−C)アルキル−,ヘテロアリール−(C−C)アルケニル−,ヒドロキシ−(C−C)アルキル−,−NR2223,NR2223−(C−C)アルキル−,アリール,チオ−(C−C)アルキル−,(C−C)アルキル−チオ−(C−C)アルキル−,(C−C)アルコキシ−(C−C)アルキル−,NR1819−C(O)−(C−C)アルキル−または(C−C)シクロアルキル−(C−C)アルキル−であり;
Hetは、1〜9個の炭素原子およびN,OおよびSから成る群から独立して選択された1〜4個のヘテロ原子を含有する5〜10原子の一環または二環のヘテロアリール基であり、ここで環窒素はN−オキシドまたは(C−C)アルキル基を有する四級基を形成し得、ここでHetは炭素原子環メンバーによりBに結合され、Het基はWで置換され;
Wは、H,(C−C)アルキル,フルオロ−(C−C)アルキル−,ジフルオロ−(C−C)アルキル−,トリフルオロ−(C−C)アルキル−,(C−C)シクロアルキル,ヒドロキシ(C−C)アルキル−,ジヒドロキシ−(C−C)アルキル−,NR2526−(C−C)アルキル−,チオ(C−C)アルキル−,−OH,(C−C)アルコキシ,ハロゲン,−NR,−C(O)OR17,−C(O)OR16,(C−C)アルキルチオ−,R21−アリール,R21−アリール(C−C)アルキル−,アリール(ここで隣接する炭素はメチレンジオキシ基を含む環を形成する)およびR21−ヘテロアリールから成る群から独立して選択される1個〜4個の置換基であり;
およびRは、H,(C−C)アルキル,フェニル,ベンジルおよび(C−C)シクロアルキルから成る群から独立して選択されるか、またはRおよびRは、一緒になって−(CH−,−(CH−または−(CHNR−(CH−であり、RおよびRが結合する窒素と環を形成し;
は、H,(C−C)アルキルまたはフェニルであり;
は、H,(C−C)アルキル,−C(O)−R16,−C(O)OR17または−SO17
,R10およびR11は、Rおよび−ORからなる群から独立して選択され、但し、任意の二重結合が存在するとき、R10は存在しない;
は、H,OHまたは(C−C)アルコキシである;
Bは、−(CHn3−,cisもしくはtrans−(CHn4CR12=CR12a(CHn5または(CHn4C≡C(CHn5−であり、ここで、nは0−5であり、nおよびnは独立して0〜2であり、R12およびR12aはH,(C−C)アルキルおよびハロゲンから成る群から独立して選択され;
Xは、点線が単結合を表すとき、−O−または−NR−であり、または結合が存在しないとき、Xは−OHまたは−NHR20であり;
Yは、点線が単結合のとき、=O,=S,(H,H),(H,OH)または(H,(C−C)アルコキシ)であり、または結合が存在しないとき、Yは、=O,(H,H),(H,OH),(H,SH)または(H,(C−C)アルコキシ)であり;
各R13は、H,(C−C)アルキル−,(C−C)シクロアルキル,−(CHn6NHC(O)OR16b,−(CHn6NHC(O)R16b,−(CHn6NHC(O)NR,−(CHn6NHSO16,−(CHn6NHSONRおよび−(CHn6C(O)NR2829,ハロアルキル,およびハロゲンから独立して選択され、ここでnは0〜4であり;
各R14は、H,(C−C)アルキル,OH,(C−C)アルコキシ,R27−アリール−(C−C)アルキル,ヘテロアリール,ヘテロアリールアルキル,ヘテロシクリル,ヘテロシクリルアルキル,−(CHn6NHC(O)OR16b,−(CHn6NHC(O)R16b,−(CHn6NHC(O)NR,−(CHn6NHSO16,−(CHn6NHSONR,および−(CHn6C(O)NR2829,ハロゲン,およびハロアルキルから独立して選択され、ここでnは0〜4であり;
あるいは、R13およびR14は一緒になって、3〜6原子のスピロサイクル環またはヘテロスピロサイクル環を形成し、;
ここで、R13またはR14の少なくとも1つは、−(CHn6NHC(O)OR16b,−(CHn6NHC(O)R16b,−(CHn6NHC(O)NR,−(CHn6NHSO16,−(CHn6NHSONRおよび−(CHn6C(O)NR2829から成る群から選択され、ここでnは0〜4であり;
点線が単結合を表すとき、R15は存在せず、点線に結合が存在しないとき、R15はH,(C−C)アルキル,−NR1819または−OR17であり;
16は、(C−C)アルキル,フェニルおよびベンジルから成る群から独立して選択される;
16bは、H,アルコキシ,(C−C)アルキル,(C−C)アルコキシ(C−C)アルキル−,R22−O−C(O)−(C−C)アルキル,(C−C)シクロアルキル,R21−アリール,R21−アリール(C−C)アルキル,ハロアルキル,アルケニル,ハロゲン置換されたアルケニル,アルキニル,ハロゲン置換されたアルキニル,R21−ヘテロアリ−ル,R21−(C−C)アルキルヘテロアリール,R21−(C−C)アルキルヘテロシクロアルキル,R2829N−(C−C)アルキル,R2829N−(CO)−(C−C)アルキル,R2829N−(CO)O−(C−C)アルキル,R28O(CO)N(R29)−(C−C)アルキル,R28S(O)N(R29)−(C−C)アルキル,R2829N−(CO)−N(R29)−(C−C)アルキル,R2829N−S(O)N(R29)−(C−C)アルキル,R28−(CO)N(R29)−(C−C)アルキル,R2829N−S(O)−(C−C)アルキル,HOS(O)−(C−C)アルキル,(OH)P(O)−(C−C)アルキル,R28−S−(C−C)アルキル,R28−S(O)−(C−C)アルキルまたはヒドロキシ(C−C)アルキルであり;
17,R18およびR19は、H,(C−C)アルキル,フェニルおよびベンジルから成る群から独立して選択され;
20は、H,(C−C)アルキル,フェニル,ベンジル,−(CO)Rまたは−SOであり;
21は、H,−CN,−CF,−OCF,ハロゲン,−NO,(C−C)アルキル,−OH,(C−C)アルコキシ,(C−C)アルキルアミノ−,ジ−((C−C)アルキル)アミノ−,NR2526(C−C)アルキル−,ヒドロキシ−(C−C)アルキル−,−(CO)OR17,−COR17,−NHCOR16,−NHSO16,−NHSOCHCF,−(CO)NR2526,−NR25−(CO)NR2526,−S(O)R13、−S(O)13および−SR13から成る群から独立して選択される1〜3個の置換基であり;
22は、Hまたは(C−C)アルキルであり;
23は、H,(C−C)アルキル,−C(O)R24,−SO24,−CONHR24または−SONHR24であり;
24は、(C−C)アルキル,ヒドロキシ−(C−C)アルキル−またはNR2526−((C−C)アルキル)−であり;
25およびR26は、Hおよび(C−C)アルキルから成る群から独立して選択され;
27は、H,(C−C)アルキル,(C−C)シクロアルキル,(C−C)アルコキシ,ハロゲンおよび−OHから成る群から選択される1つ、2つまたは3つの置換基であり;および
28およびR29は、H,(C−C)アルキル,(C−C)アルコキシ,R27−アリール(C−C)アルキル,ヘテロアリール,ヘテロアリールアルキル,ヒドロキシ−(C−C)アルキル,(C−C)アルコキシ(C−C)アルキル,ヘテロシクリル,ヘテロシクリルアルキルおよびハロアルキルから成る群から独立して選択され;あるいは
28およびR29は、一緒になって、3〜6原子のスピロサイクル環またはヘテロスピロサイクル環を形成する、化合物。
(項目2)
nが0である、項目1に記載の化合物。
(項目3)
上記必要に応じて二重結合が存在しない、項目1に記載の化合物。
(項目4)
およびRが、Hおよび(C−C)アルキルから成る群から独立して選択される、項目1に記載の化合物。
(項目5)
が(C−C)アルキルであり、RがHである、項目4に記載の化合物。
(項目6)
がH、−OH、(C−C)アルキル、(C−C)アルコキシ、ハロゲン、(C−C)シクロアルキル、−C(O)OR17または−NR2223である、項目1に記載の化合物。
(項目7)
がHまたは(C−C)アルキルである、項目6に記載の化合物。
(項目8)
Hetは、炭素環メンバーによってBに結合したピリジルで、Wから選択される1個または2個の置換基により置換される、項目1に記載の化合物。
(項目9)
WがR21−フェニルまたはR21−ピリジルである、項目8に記載の化合物。
(項目10)
,R10およびR11は、Hおよび(C−C)アルキルから成る群から各々独立して選択され、RがHである、項目1に記載の化合物。
(項目11)
Bが−CH=CH−である、項目1に記載の化合物。
(項目12)
任意の単結合が存在し、Xが−O−であり、Yが=OでありおよびR15が存在しない、項目1に記載の化合物。
(項目13)
Qが
【化4】


であり、R13およびR14の少なくとも1つがRである、項目1に記載の化合物。
(項目14)
Qが
【化5】


である、項目13に記載の化合物。
(項目15)
Rが−(CHn6NHC(O)OR16b、−(CHn6NHCOR16b、−(CHn6NHC(O)NR、−(CHn6NHSO16または−(CHn6NHSONRであり;R16b、R16およびRが(C−C)アルキルであり;RがHであり、nが0〜4である、項目1に記載の化合物。
(項目16)
Rが−NHC(O)OR16b、−NHC(O)R16bまたは−NHC(O)NRであり、R16bおよびRが(C−C)アルキルであり、RがHである、項目15に記載の化合物。
(項目17)
Rが−NHC(O)OR16bであり、R16bが(C−C)アルキルである、項目16に記載の化合物。
(項目18)
nが0であり、任意の単結合が存在し、Xが−O−、Yが=Oであり、およびR15が存在しない、項目1に記載の化合物。
(項目19)
、R、R、R、R10およびR11が各水素であり、Rが−CHであり、Bが−CH=CH−であり、HetがW−ピリジルであり、WがR21−フェニルまたはR21−ピリジルであり、R21が−CFまたはFである、項目18に記載の化合物。
(項目20)
Rが−NHC(O)OR16bであり、R16bが−CHまたは−CHCHである、項目19に記載の化合物。
(項目21)
以下:
【化6】


【化7】


から成る群から選択される、項目1に記載の化合物。
(項目22)
上記塩が硫酸水素塩である、項目1に記載の化合物。
(項目23)
有効量の項目1に記載の化合物および薬学的に受容可能な担体を含む薬学的組成物。
(項目24)
処置を必要とする哺乳類に、有効量の項目1に記載の化合物を投与する工程を含む、トロンビンレセプターを阻害する方法。
(項目25)
血栓症、アテローム性動脈硬化症、再狭窄、高血圧、狭心症、不整脈、心不全、心筋梗塞、糸球体腎炎、血栓性脳卒中、血栓塞栓性脳卒中、末梢性血管性疾患、炎症障害、大脳虚血または癌を処置する方法であり、該処置を必要とする哺乳動物に、有効量の項目1に記載の化合物をさらなる心臓血管薬と組み合わせて投与する工程を含む、方法。
(項目26)
血栓症、アテローム性動脈硬化症、再狭窄、高血圧、狭心症、不整脈、心不全、心筋梗塞、糸球体腎炎、血栓性脳卒中、血栓塞栓性脳卒中、末梢性血管性疾患、炎症障害、大脳虚血または癌の処置であり、上記の処置を必要として、有効量の項目1に記載の化合物をさらなる心臓血管薬と組み合わせて哺乳類に投与することを含む方法。
(項目27)
さらなる心臓血管薬がトロンボキサンA2生合成インヒビター、GPIIb/IIIaアンタゴニスト、トロンボキサンアンタゴニスト、アデノシン二リン酸インヒビター、シクロオキシゲナーゼインヒビター、アンジオテンシンアンタゴニスト、エンドセリン(endothelin)アンタゴニスト、アンジオテンシン変換酵素インヒビター、中性エンドペプチダーゼインヒビター、抗血液凝固剤、利尿薬および血小板凝集インヒビターから成る群から選択される、項目26に記載の方法。
(項目28)
さらなる心臓血管薬がアスピリンまたはクロピドグレル(clopidogrel)硫酸水素塩である、項目27に記載の方法。
(発明の要旨)
本発明は、式1:
【0007】
【化8−1】

【0008】
に表されるトロンビンレセプターアンタゴニストまたはその薬学的に受容可能な塩または溶媒和物に関する。ここで、単一の点線は任意の単結合を表す;
【0009】
【化8−2】

【0010】
は、任意の二重結合をしめす;
nは、0〜2である;
Qは、
【0011】
【化9】

【0012】
である;
は、H,(C−C)アルキル,フルオロ−(C−C)アルキル−,ジフルオロ−(C−C)アルキル−,トリフルオロ−(C−C)アルキル−,(C−C)シクロアルキル,(C−C)アルケニル,ヒドロキシ−(C−C)アルキル−,およびアミノ−(C−C)アルキル−から成る群から独立して選択される;
は、H,(C−C)アルキル,フルオロ−(C−C)アルキル−,ジフルオロ−(C−C)アルキル−,トリフルオロ−(C−C)アルキル−,(C−C)シクロアルキル,(C−C)アルケニル,ヒドロキシ−(C−C)アルキル−,およびアミノ−(C−C)アルキル−から成る基から独立して選択される;
は、H,ヒドロキシ,(C−C)アルコキシ,−SOR16,−SO17,−C(O)OR17,−C(O)NR1819,−(C−C)アルキル−C(O)NR1819,(C−C)アルキル,ハロゲン,フルオロ−(C−C)アルキル−,ジフルオロ−(C−C)アルキル−,トリフルオロ−(C−C)アルキル−,(C−C)シクロアルキル,(C−C)−シクロアルキル−(C−C)アルキル−,(C−C)アルケニル,アリール−(C−C)アルキル−,アリール−(C−C)アルケニル−,ヘテロアリール−(C−C)アルキル−,ヘテロアリール−(C−C)アルケニル−,ヒドロキシ−(C−C)アルキル−,−NR2223,NR2223−(C−C)アルキル−,アリール,チオ−(C−C)アルキル−,(C−C)アルキル−チオ−(C−C)アルキル−,(C−C)アルコキシ−(C−C)アルキル−,NR1819−C(O)−(C−C)アルキル−または(C−C)シクロアルキル−(C−C)アルキル−である;
Hetは、1〜9個の炭素原子およびN,OおよびSから成る群から独立して選択された1〜4個のヘテロ原子を含有する5〜10原子の一環または二環のヘテロアリール基であり、ここで環窒素はN−オキシドまたはC−Cアルキル基を有する四級基を形成し得る。ここでHetは炭素原子環メンバーによりBに結合され、Het基はWで置換される;
Wは、H,(C−C)アルキル,フルオロ−(C−C)アルキル−,ジフルオロ−(C−C)アルキル−,トリフルオロ−(C−C)アルキル−,(C−C)シクロアルキル,ヒドロキシ(C−C)アルキル−,ジヒドロキシ−(C−C)アルキル−,NR2526−(C−C)アルキル−,チオ(C−C)アルキル−,−OH,(C−C)アルコキシ,ハロゲン,−NR,−C(O)OR17,−C(O)R16,(C−C)アルキルチオ−,R21−アリール,R21−アリール(C−C)アルキル,アリールおよびR21−ヘテロアリールから成る群から独立して選択される1個〜4個の置換基であり、ここで隣接する炭素はメチレンジオキシ基を含む環を形成する;
およびRは、H,(C−C)アルキル,フェニル,ベンジルおよび(C−C)シクロアルキルから成る群から独立して選択されるか、またはRおよびRは、一緒になって−(CH−,−(CH−または−(CHNR−(CH−であり、RおよびRが結合する窒素と環を形成する;
は、H,(C−C)アルキルまたはフェニルである;
は、H,(C−C)アルキル−,−C(O)−R16,−C(O)OR17または−SO17
,R10およびR11は、Rおよび−ORからなる群から独立して選択され、但し、任意の二重結合が存在するとき、R10は存在しない;
は、H,OHまたは(C−C)アルコキシである;
Bは、−(CHn3−,cisもしくはtrans−(CHn4CR12=CR12a(CHn5または(CHn4C=C(CHn5−である。ここで、nは0−5であり、nおよびnは独立して0〜2であり、R12およびR12aはH,(C−C)アルキル−およびハロゲンから成る群から独立して選択される;
Xは、点線が単結合を表すとき、−O−または−NR−であり、または結合が存在しないとき、Xは−OHまたは−NHR20である;
Yは、点線が単結合のとき、=O,=S,(H,H),(H,OH)または(H,(C−C)アルコキシ)であり、または結合が存在しないとき、Yは、=O,(H,H),(H,OH),(H,SH)または(H,(C−C)アルコキシ)である;
各R13は、(C−C)アルキル−,(C−C)シクロアルキル,−(CHn6NHC(O)OR16b,−(CHn6NHC(O)R16b,−(CHn6NHC(O)NR,−(CHn6NHSO16,−(CHn6NHSONRおよび−(CHn6C(O)NR2829,ハロアルキル,およびハロゲンから独立して選択され、ここでnは0〜4である;
各R14は、H,(C−C)アルキル,OH,(C−C)アルコキシ,R27−アリール−(C−C)アルキル,ヘテロアリール,ヘテロアリールアルキル,ヘテロシクリル,ヘテロシクリルアルキル,−(CHn6NHC(O)OR16b,−(CHn6NHC(O)R16b,−(CHn6NHC(O)NR,−(CHn6NHSO16,−(CHn6NHSONR,−(CHn6C(O)NR2829,ハロゲン,およびハロアルキルから独立して選択され、ここでnは0〜4である;
または、R13およびR14は一緒になって、3〜6原子のスピロサイクル環またはヘテロスピロサイクル環を形成する;
ここで、R13またはR14の少なくとも1つは、−(CHn6NHC(O)OR16b,−(CHn6NHC(O)R16b,−(CHn6NHC(O)NR,−(CHn6NHSO16,−(CHn6NHSONRおよび−(CHn6C(O)NR2829から成る群から選択され、ここでnは0〜4である;
点線が単結合を表すとき、R15は存在せず、点線に結合が存在しないとき、R15はH,(C−C)アルキル,−NR1819または−OR17である;
16は、(C−C)アルキル,フェニルおよびベンジルから成る群から独立して選択される;
16bは、H,アルコキシ,(C−C)アルキル,(C−C)アルコキシ(C−C)アルキル−,R22−O−C(O)−(C−C)アルキル,(C−C)シクロアルキル,R21−アリール,R21−アリール(C−C)アルキル,ハロアルキル,アルケニル,ハロゲン置換されたアルケニル,アルキニル,ハロゲン置換されたアルキニル,R21−ヘテロアリ−ル,R21−(C−C)アルキルヘテロアリール,R21−(C−C)アルキルヘテロシクロアルキル,R2829N−(C−C)アルキル,R2829N−(CO)−(C−C)アルキル,R2829N−(CO)O−(C−C)アルキル,R28O(CO)N(R29)−(C−C)アルキル,R28S(O)N(R29)−(C−C)アルキル,R2829N−(CO)−N(R29)−(C−C)アルキル,R2829N−S(O)N(R29)−(C−C)アルキル,R28−(CO)N(R29)−(C−C)アルキル,R2829N−S(O)−(C−C)アルキル,HOS(O)−(C−C)アルキル,(OH)P(O)−(C−C)アルキル,R28−S−(C−C)アルキル,R28−S(O)−(C−C)アルキルまたはヒドロキシ(C−C)アルキルである;
17,R18およびR19は、H,(C−C)アルキル,フェニルおよびベンジルから成る群から独立して選択される;
20は、H,(C−C)アルキル,フェニル,ベンジル,−(CO)Rまたは−SOである;
21は、H,−CN,−CF,−OCF,ハロゲン,−NO,(C−C)アルキル,−OH,(C−C)アルコキシ,(C−C)アルキルアミノ−,di−((C−C)アルキル)アミノ−,NR2526(C−C)アルキル−,ヒドロキシ−(C−C)アルキル−,−(CO)OR17,−COR17,−NHCOR16,−NHSO16,−NHSOCHCF,−(CO)NR2526,−NR25−(CO)NR2526,−S(O)R13、−S(O)13および−SR13から成る群から独立して選択される1〜3個の置換基である;
22は、Hまたは(C−C)アルキルである;
23は、H,(C−C)アルキル,−C(O)R24,−SO24,−CONHR24または−SONHR24である;
24は、(C−C)アルキル,ヒドロキシ−(C−C)アルキル−またはNR2526−((C−C)アルキル)−である;
25およびR26は、Hおよび(C−C)アルキルから成る群から独立して選択される;
27は、H,(C−C)アルキル,(C−C)シクロアルキル,(C−C)アルコキシ,ハロゲンおよび−OHから成る群から選択される1つ、2つまたは3つの置換基である;
28およびR29は、H,(C−C)アルキル,(C−C)アルコキシ,R27−アリール(C−C)アルキル,ヘテロアリール,ヘテロアリールアルキル,ヒドロキシ−(C−C)アルキル,(C−C)アルコキシ(C−C)アルキル,ヘテロシクリル,ヘテロシクリルアルキルおよびハロアルキルから成る群から独立して選択される;または
28およびR29は、一緒になって、3〜6原子のスピロサイクル環またはヘテロスピロサイクル環を形成する。
【0013】
本発明のトロンビンレセプターアンタゴニスト化合物は、抗血栓活性、抗血小板凝固活性、抗アテローム性動脈硬化性、抗再狭窄活性、および/もしくは抗血液凝固活性を有し得る。本発明の化合物により処置された、血栓症に関する疾患は、血栓症、アテローム性動脈硬化症、再狭窄、高血圧、狭心症、不整脈、心不全、心筋梗塞、糸球体腎炎、血栓性および血栓塞栓性脳卒中、末梢性血液疾患、他の心臓血管疾患、大脳虚血、炎症障害および癌、ならびにトロンビンおよびそのレセプターが病理学的な役割をする他の障害を含む。
【0014】
本発明の正確な実施形態は血栓症、血小板凝固、血液凝固、癌、炎症疾患または呼吸性疾患の処置のための、1つ以上のさらなる心臓血管薬と組み合わせた式1の少なくとも1つの化合物の使用方法にも関しており、上記の処置を必要とする哺乳類に、式1の少なくとも1つの化合物と、少なくとも1つのさらなる心臓血管薬の組み合わせを投与することを含む。特に、本発明は、血栓症、アテローム性動脈硬化症、再狭窄、高血圧、狭心症、不整脈、心不全、心筋梗塞、糸球体腎炎、血栓性脳卒中、血栓塞栓性脳卒中、末梢性血管性疾患、大脳虚血、癌、慢性関節リウマチ、全身性エリテマトーデス、多発性硬化症、糖尿病、骨粗しょう症、腎性虚血、大脳性脳卒中、大脳虚血、腎炎、肺および胃腸管の炎症障害、可逆性気道閉塞症、慢性喘息または気管支炎の処置において上記の組み合わせを用いる方法に関している。本発明の組み合わせは、上記の1つ以上の疾患の処置において、有用であり得ることが企図されている。
【0015】
本発明の幾つかの実施形態は、薬学的に受容可能な担体において、式1の少なくとも1つの化合物と少なくとも1つのさらなる心臓血管薬の組み合わせの治療的に有効な量を含有する薬学的組成物に関する。
【0016】
本発明の幾つかの実施形態は、血栓症、血小板凝固、血液凝固、癌、炎症疾患または呼吸性疾患の処置のための、すべて本明細書中で参考として援用されている、米国特許第6,063,847号、米国特許第6,326,380号およびU.S.シリアルNos.09/880222および10/271715のいずれかで開示されたトロンビンレセプターアンタゴニストと、1つ以上のさらなる心臓血管薬との組み合わせの使用に関する。特に、本発明は、血栓症、アテローム性動脈硬化症、再狭窄、高血圧、狭心症、不整脈、心不全、心筋梗塞、糸球体腎炎、血栓性脳卒中、血栓塞栓性脳卒中、末梢性血管性疾患、大脳虚血、癌、慢性関節リウマチ、全身性エリテマトーデス、多発性硬化症、糖尿病、骨粗しょう症、腎性虚血、大脳性脳卒中、大脳虚血、腎炎、肺および胃腸管の炎症障害、可逆性気道閉塞症、慢性喘息または気管支炎の処置において上記の組み合わせを用いる方法に関する。
【0017】
本発明の組み合わせは、薬学組成物中の式1の少なくとも1つの化合物、および心臓血管薬を単一のパッケージに含むキットとして提供され得る。
【発明を実施するための形態】
【0018】
(詳細な説明)
式1の化合物において、変数の好ましい定義は以下の通りである:
変数nは、好ましくは0〜2であり、さらに好ましくは0である。任意の二重結合は、好ましくは存在しない、つまり、その結合は単結合である。
【0019】
Qは好ましくは:
【0020】
【化10】

【0021】
であり、六員環のQが、さらに好ましい。R13は、好ましくはHまたは−CHである。R14は、好ましくはHまたは−CHである。五員環のQの場合、好ましくは二つ以下のR13およびR14の置換基は、水素以外である。六員環Qの場合、好ましくは四つ以下のR13およびR14の置換基は、水素以外であり、より好ましくは、2つ以下のR13およびR14の置換基は、水素以外である。
【0022】
特に、好ましいQ環は:
【0023】
【化11】

【0024】
で示される。
【0025】
上記の好適なQ環において、Rは、好ましくは−(CHn6NHC(O)OR16b,−(CHn6NHC(O)R16b,−(CHn6NHC(O)NR,−(CHn6NHSO16または−(CHn6NHSONRであり、ここで、nは0〜2であり、ならびにR16b、R16およびRは、(C−C)アルキルであり、ならびにRは、Hである。さらに好ましいのは、式1の化合物において、Rは、−NHC(O)OR16b,−NHC(O)R16b,−NHC(O)NR,−NHSO16または−NHSONRであり、ここで、R16b,R16およびRが、(C−C)アルキルであり、Rが、Hである、式1の化合物である。なおさらに好ましくは、Rが、−NHC(O)OR16b,−NHC(O)R16bまたは−NHC(O)NRであり、ここで、R16bおよびRが、(C−C)アルキルであり、Rが、Hである式1の化合物である。
【0026】
およびRは、好ましくは、Hおよび(C−C)アルキルから成る群から独立して選択される;さらに好ましくは、Rは、(C−C)アルキルであり、Rは、Hである;Rが−CHであり、RがHである化合物が、特に好ましい。
【0027】
は、好ましくはH,OH,(C−C)アルキル,(C−C)アルコキシ,ハロゲン,(C−C)シクロアルキル,−C(O)OR17または−NR2223である;さらに好ましくは、Rは、Hまたは(C−C)アルキルである。
【0028】
Hetは、好ましくは炭素環メンバーによってBに結合したピリジルであり、好ましくは、Hetは、Wから選択される1個または2個の置換基、さらに好ましくは、1個の置換基より置換される。Wは、好ましくは、R21−アリールまたはR21−ヘテロアリールである。アリールは、好ましくはフェニルである。ヘテロアリールは、好ましくはピリジルである。R21は、好ましくは,H,ハロゲンもしくは−CN,または−CFであり,特に好ましくは、F,−CNまたは−CFである。
【0029】
,R10およびR11は、それぞれ独立して、好ましくはHまたは(C−C)アルキルであり、さらに好ましくは、Hまたは−CHである;R、R10およびR11が、それぞれHである式1の化合物が特に好ましい。
【0030】
は、好ましくは、H,OHまたは,(C−C)アルコキシであり;さらに好ましくは、Rは、Hである。
【0031】
Bは、好ましくはcisまたはtrans−(CHn4CR12=CR12a(CHn5−であり、ここで、n,n,R12およびR12aは、上で定義される通りである;さらに好ましくは、R12およびR12aは、それぞれHであり、nおよびnは、それぞれ0である。Bがtrans−アルケニル、特に、−CH=CH−である化合物が特に好ましい。
【0032】
1つの群の好ましい化合物は、任意の単結合は存在し、Xが−O−であり、Yが=Oであり、R15が存在しない化合物である。別の好ましい群の化合物は、任意の単結合が存在せず、Xが−OHであり、Yが(H,OH)であり、R15がHである化合物である。任意の単結合が存在し、Xが−O−であり、Yが=Oであり、およびR15が存在しない化合物が、さらに好ましい。
【0033】
特に好ましくは、Rが−HC(O)OR16bであり、R16bが(C−C)アルキルである式1の化合物である。R16bは、好ましくはメチルまたはエチルである。以下の式IAに表すように、R基が、Q環のC−7位に結合している化合物もまた、好ましい。
【0034】
本発明の好ましい実施形態は、以下の式1Aの化合物;
【0035】
【化12】

【0036】
であり、ここで、R,R,R,R,R10,R11,B,およびHetは、上で好ましいとして定義される。5個〜8個の炭素環原子の少なくとも1つは、好ましくは、−(CHn6NHC(O)OR16b,−(CHn6NHCOR16b,−(CHn6NHCONR,−(CHn6NHSO16または−(CHn6NHSONRで置換され、ここで、nは0〜2であり、R16b,R16およびRは、(C−C)アルキルであり、Rは、Hである。
【0037】
本発明のさらに好ましい実施形態は、以下の式IBの化合物;
【0038】
【化13−1】

【0039】
であり、ここで、Hetは、R21−アリール基、好ましくはR21−フェニル基により置換されたピリジルであり、ここで、R21は、好ましくは、Fまたは−CFである。
【0040】
特に好ましくは、5個〜8個の環炭素原子の少なくとも1つは、−NHC(O)OR16bであり、ここで、R16bは、(C−C)アルキルである、式1Aまたは式1Bの化合物である。R16bは、好ましくは、メチルまたはエチルである。
【0041】
上記で用いたように、本明細書全体を通して、以下の用語は、他に示されない限り、以下の意味を有するものと理解する。
【0042】
「被験動物」には、哺乳動物および非哺乳動物の両方が挙げられる。
【0043】
「哺乳動物」には、ヒトおよび他の哺乳類動物が挙げられる。
【0044】
用語「必要に応じて置換される」とは、特定の基、ラジカルまたは部分による任意の置換を意味する。本明細書中において、明細書、スキーム、実施例および表において、不飽和原子価をもつすべての原子は、原子価を飽和にするために水素原子をもつとみなす。
【0045】
用語が、単独で、または他の用語と組み合わせて使用されるに関係なく、他に示されない限り、以下の定義を適用する。それゆえ、「アルキル」の定義は、「アルキル」、ならびに「ヒドロキシアルキル」、「ハロアルキル」、「アルコキシ」、などの「アルキル」部分を適用する。
【0046】
明細書中で使用する場合、用語「アルキル」は、1個〜約20個の原子を含み、直鎖または分岐した鎖になり得る脂肪族炭化水素基を意味する。好ましいアルキル基は、鎖に1個〜約12個の炭素原子を含む。さらに好ましいアルキル基は、鎖に1個〜約6個の炭素原子を含む。「分岐した」は、メチル、エチルまたはプロピルのような1個以上の低級アルキル基が、アルキル直鎖に結合していることを意味する。アルキルは、ハロ、アリール、シクロアルキル、シアノ、ヒドロキシ、アルコキシ、アルキルチオ、アミノ、−NH(アルキル)、−NH(シクロアルキル)、−N(アルキル)(これらのアルキルは、同一または相違し得る)、カルボキシおよび−C(O)O−アルキルからなる群から、独立して選択される、1つ以上の置換基によって置換されうる。適したアルキル基の非制限な例には、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、t−ブチル、n−ペンチル、ヘプチル、ノニル、デシル、フルオロメチル、トリフルオロメチルおよびシクロプロピルメチルが挙げられる。
「アルケニル」は、鎖に1つ以上の二重結合を含み、そして、共役または非共役し得る脂肪族炭化水素基(直鎖または分岐した炭素鎖)を意味する。有用なアルケニル基は、鎖に2個〜約15個の炭素原子を含み得、好ましくは鎖に2個〜約12個の炭素原子を含み得、さらに好ましくは、鎖に2個〜約6個の炭素原子を含み得る。アルケニル基は、ハロ、アルキル、アリール、シクロアルキル、シアノおよびアルコキシからなる群から、独立して選択される、1つ以上の置換基によって置換しうる。適したアルケニル基の非制限な例には、エテニル、プロペニル、n−ブテニル、3−メチルブテニルおよびn−ペンテニルが挙げられる。
【0047】
アルキル鎖またはアルケニル鎖が、2つの別の変数を結合し、それゆえ鎖が2価である場合には、それぞれ用語アルキレンおよびアルケニレンが使用される。
【0048】
「アルコキシ」は、アルキル−O−基を意味し、ここでこのアルキル基は、上記で記載した通りである。有用なアルコキシ基は、1個〜約12個の炭素原子を含み得、好ましくは鎖に1個〜約6個の炭素原子を含み得る。適したアルコキシ基の非制限な例には、メトキシ、エトキシおよびイソプロポキシが挙げられる。アルコキシのアルキル基は、エーテル酸素を介して隣接した部位に結合される。
【0049】
「アルキニル」は、少なくとも1つの炭素−炭素三重結合を含む脂肪族炭化水素基であり、その脂肪族炭化水素基は、直鎖または分岐した鎖であり得、鎖に約2個〜約15個の炭素原子を含むことを意味する。好ましいアルキル基は、鎖に約2個〜約12個の炭化水素基を有する;さらに好ましくは、鎖に約2個〜約4個の炭素原子を有する。分岐したとは、メチル、エチルまたはプロピルのような1つ以上の低級アルキル基、直鎖アルキル基に結合することを意味する。適したアルキル基の非制限な例には、エチニル、プロピニル、2−ブチニル、3−メチルブチニル、n−ペンチニルおよびデシニルが挙げられる。アルキニル基は、同一または相違し得る、1つ以上の置換基によって置換され得、各置換基は、アルキル、アリールおよびシクロアルキルからなる群から独立して選択され得る。
【0050】
「アリール」は、約5個〜約14個の炭素原子を含む単環式環系または多環式環系を意味し、好ましくは、約6個〜約10個の炭素原子を含む。アリールは、上記に定義されるように、同一または相違し得る、1つ以上の置換基によって置換され得る。適したアリール基の非制限な例には、フェニル、ナフチル、インデニル、テトラヒドロナフチルおよびインダニルが挙げられる。「アリーレン」は、オルト、メタ、およびパラ位に挙げられる2価のフェニル基を意味する。
【0051】
用語「Boc」は、N−tert−ブトキシカルボニルを意味する。
【0052】
「シクロアルキル」は、約3個〜約10個の炭素原子を含む芳香性のない単環式系または多環式系を意味しており、好ましくは、約5個〜約10個の炭素原子を含む。好ましいシクロアルキル環は、約5個〜約7個の環原子を含む。シクロアルキルは、上記に定義されるように、同一または相違する、1つ以上の置換基によって置換しうる。適した単環式シクロアルキルの非制限な例には、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシルなどが挙げられる。適した複数環式シクロアルキルの非制限な実施例には、1−デカリニル、ノルボルニル(norbornyl)、アダマンチル(adamantyl)などが挙げられる。「シクロアルキレン」は、対応する2価の環を意味しており、ここで、他の基と結合する部位には、すべての位置異性体が挙げられる。
【0053】
「ジヒドロキシ(C−C)アルキル」は、2つの異なる炭素原子上において、2つのヒドロキシ基によって置換されアルキル基を意味する。
【0054】
「フルオロアルキル」、「ジフルオロアルキル」および「トリフルオロアルキル」は、末端炭素が、それぞれ1個、2個または3個のフッ素原子により置換されたアルキル鎖、例えば、−CF,−CHCF,−CHCHFまたは−CHCHFを意味する。
【0055】
「ハロゲン」または「ハロ」は、フッ素、塩素、臭素およびヨウ素のラジカルを意味する。好ましくは、フロロ、クロロまたはブロモであり、さらに好ましくは、フロロおよびクロロである。
【0056】
「ヘテロアリール」は、5個〜14個の環原子の、好ましくは約5個〜10個の環原子の単環式、二環式またはベンゾ縮合したヘテロアリール基であり、をもち、1個〜13個の炭素原子ならびに、N,OおよびSからなる基から独立して選択される、1個〜4個のヘテロ原子を含むヘテロアリール性を意味する。ここで、この環は、隣接した酸素原子および/または硫黄原子を含まない。また、環窒素のN−酸化物および環窒素が4級アミンを形成するために(C−C)アルキル基で置換される化合物もまた、含まれる。単環式ヘテロアリール基の実施例としては、ピリジル、オキサゾリル、イソキサゾリル(isoxazolyl)、オキサジアゾリル、フラニル、ピローリル(pyrrolyl),チエニル、イミダゾリル、ピラゾリル、テトラゾリル、チアゾリル、イソチアゾリル、チアジアゾリル、ピラジニル、ピリミジル、ピリダジニルおよびトリアゾリルがある。二環式ヘテロアリール基の実施例としては、ナフチリジル(例えば、1,5または1,7)、イミダゾピリジル、ピリド[2,3]イミダゾリル、ピリドピリミジニルおよび7−アザインドリルがある。ベンゾ縮合したヘテロアリール基の例としては、インドリル、キノリル、イソキノリル、フタラジニル、ベンゾチエニル(すなわち、チオナフテニル)、ベンズイミダゾリル、ベンゾフラニル、ベンゾキサゾリルおよびベンゾフラザニルがある。全位置異性体は、企図されており、例えば、2−ピリジル、3−ピリジルおよび4−ピリジルが挙げられる。
【0057】
用語「Het」は、上記に定義したように、単環式、二環式およびベンゾ縮合したヘテロアリール基が例示される。Het基は、炭素環メンバーによりB基に結合され、例えば、Hetは、2−ピリジル、3−ピリジルまたは2−キノリルである。Het環は、W基により、あらゆる利用可能な環炭素上に置換し得る;1個〜4個のW置換基が、Het環上に存在し得る。
【0058】
「ヘテロシクロアルキル」は、4〜6員の飽和環を意味し、3個〜5個の炭素原子ならびに、N、SおよびOからなる群から選択される1個または2個のヘテロ原子を含む。ここで、ヘテロ原子同士は隣接しない。ヘテロシクロアルキル環の例としては、ピローリジニル、ピペリジニル、ピペラジニル、モルホリニル、チオモルホリニル、チアゾリジニル、1,3−ジオキソラニル、1,4−ジオキサニル、テトラヒドロフラニル、テトラヒドロチオフェニルおよびテトラヒドロチオピラニルがある。
【0059】
用語「ヘテロスピロ環」は、3個〜5個の炭素原子および、N、SおよびOからなる群から選択される1個または2個のヘテロ原子を含むスピロ環構造を意味しており、ここで、ヘテロ原子同士は、隣接しない。
【0060】
用語「任意の単結合」は、式1の構造において、XとYおよびR15が結合している炭素との間で、点線で表される結合を意味する。
【0061】
【化13−2】

【0062】
により表される任意の二重結合は、少なくとも1つの単結合が存在しなければならないが、二重結合は存在し得;二重結合が存在するとき、R10は存在しないことを意味する。
【0063】
およびRが結合して、それらが結合する窒素原子と環を形成するとき、形成される環は、1−ピロリジニル、1−ピペリジニルおよび1−ピペラジニルであり、ここで、ピペラジニル環はまた、R基により4位の窒素に置換され得る。
【0064】
ここで例えば、上記の陳述である「RおよびRが、置換基の群から独立して選択される」、は、RおよびRが、同一の窒素に結合するとき、該RおよびRは、独立して選択されるが、また、1分子上に該RまたはRの変数が分子内に1回以上現われる場合には、該RおよびRが、独立して選択されることを意味する。同様に、R13またはR14の各存在は、同一Q環において他のどのR13またはR14からも独立している。当業者は、置換基の大きさおよび性質が、置換基の存在する数に影響することを意味する。
【0065】
本発明の化合物は、少なくとも1つの不斉炭素原子を有し、それゆえ、式(1)(異性体が存在するとき)の化合物の鏡像異性体、立体異性体、回転異性体、互変異性体およびラセミ体を含むすべての異性体は、本発明の部分をなすものとして企図される。本発明は、純粋な形態およびラセミ混合物を含む混合形態の両方において、dおよびl異性体を含む。異性体は、慣例的な技術を用いて、必要に応じて純粋な出発物質または必要に応じて濃縮された出発物質を反応させることにより、あるいは、式1の化合物の異性体を分離することにより、調製され得る。異性体はまた、幾何学異性体を含み得る。たとえば、二重結合が存在するときである。式(1)の化合物の多形体は、化合物が結晶性であろうと非晶質であろうと、本発明の一部として企図される。
【0066】
当業者は、式1の化合物のいくつかに対して、ある異性体が、他の異性体よりも薬学的活性が大きいと認める。
【0067】
本発明の典型的な好適化合物は以下の立体化学を有する;
【0068】
【化14】

【0069】
ここで、絶対立体化学がより好ましい化合物を有する。
【0070】
当業者は、式1の化合物のいくつかに対して、ある異性体が、別の異性体よりも大きい薬学的活性を示すことを意味する。
【0071】
塩基性の基を有する本発明の化合物は、有機酸および無機酸と、薬学的に受容可能な塩を形成し得る。塩の形成に適した酸の例としては、塩酸、硫酸、リン酸、酢酸、クエン酸、シュウ酸マロン酸、サリチル酸、フマル酸、リンゴ酸、コハク酸、アスコルビン酸、マレイン酸、メタンスルホン酸ならびに、当業者に周知の他の鉱物およびカルボン酸が挙げられる。好ましい実施形態には、硫酸水素塩が挙げられる。化合物の塩は、遊離塩基と塩形成に望ましい酸の充分量と接触させて、調製される。遊離塩基は、希釈した炭酸水素ナトリウム水のような、適した塩基の希釈水溶液と塩を処理することにより再形成され得る。遊離塩基形態は、極性溶媒中の溶解度のように、特定の物理的性質で多少、各塩形と異なるが、他の点では、本発明の目的に対して、この塩は、各塩基形と同等である。本発明の化合物はまた、水和物を含む、薬学的に受容可能な溶媒和を形成し得る。
【0072】
本発明の特定の化合物は、酸性である(例えば、カルボキシ基を有する化合物)。これらの化合物は、無機塩基および有機塩基と薬学的に受容可能な塩を形成する。そのような塩の例としては、ナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩、アルミニウム塩、リチウム塩、金塩および銀塩がある。また、アンモニア、アルキルアミン、ヒドロキシアルキルアミン、N−メチルグルカミンなどのような薬学的に受容可能なアミンと形成された塩も含まれる。
【0073】
「溶媒和物」は、1つ以上の溶媒分子と本発明の化合物の物理的な会合を意味している。この物理的な会合は、種々の程度のイオン結合および共有結合(水素結合を含む)を含む。特定の例では、化合物の溶媒和物は、例えば、結晶性固体の結晶格子に、1つ以上の溶媒分子が取り込まれるとき、単離され得る。「溶媒和物」は、溶液相の溶媒和物および単離可能な溶媒和物両方を包含する。適した溶媒和物の無制限な例として、エタノール和物、メタノール和物などが挙げられる。ここで、「水和物」は、溶媒分子がHOである溶媒和物である。
【0074】
が0である本発明の化合物は、当該分野で公知の工程により調製され得る。例えば、本明細書中で参考として援用されている米国特許第6,063,847号で記載される工程および以下に例示される工程により、調製され得る。
【0075】
が1または2である本発明の化合物は、一般的に、以下の一般的なスキームに従う工程により調製され:
【0076】
【化15】

【0077】
ケトン4は、Wittig反応に供され、ビニルエーテル5を生成し、これは酸性条件下で加水分解され、アルデヒド6を生成する。アルデヒド6は、還元されてアルコール7になり、メシレートを経て、アジド8に変換される。MePを用いたアジド基の還元により、アミン9を生成し、種々の求電子試薬で処理をして種々の類似物を得た。
【0078】
以下に、式1の化合物を調製する実施例を示す。実施例において、以下の略語が使用される:Et(エチル);Me(メチル);Pr(プロピル);Ac(アセチル);rt(室温);PTLC(分取薄層クロマトグラフィー);THF(テトラヒドロフラン);TBAF(テトラ−n−ブチルアンモニウムフロリド);Tips(トリイソプロピルシリル);および Tf(トリフルオロメタンスルホニル).
【0079】
【化16】

【0080】
米国特許第6,063,847号で記載されている、化合物1(1.95g,4.2mmol)をEtOH(40ml)およびCHCl(10ml)に溶かした。その後、この溶液にNH(気体)を5分間泡入した。反応混合物は、0℃に冷却し、Ti(OiPr)(1.89ml,6.3mmol)を加えた。0℃で1時間攪拌した後、1M TiCl(6.3ml,6.3mmol)を加えた。反応混合物を室温で、さらに45分間攪拌し、減圧下で濃縮し、乾燥させた。この残渣をCHOH(10ml)に溶かし、NaBHCN(510mg,8mmol)を加えた。この生じた懸濁液を室温で一晩攪拌した。反応混合物を、1N NaOH(100ml)に注ぎ入れ、EtOAc(3×100ml)で抽出した。抽出した有機層を合わせ、NaSOで乾燥した。溶媒を除去して、生成物2(1.2g,62%)を得た。さらに、PTLC(5% 2M NH in CHOH/CHCl)で分離して、β−2(スポット1)およびα−2(スポット2)を1:2の比で得た。
【0081】
【化17−1】

【0082】
【化17−2】

【0083】
(工程2)
化合物α−2(110mg)、クロロホルム酸エチル(0.4ml)およびEtN(0.5ml)をCHCl(6ml)に溶かし、2時間攪拌した。反応混合物を、PTLC(EtOAc/ヘキサン,1:1)により直接分離し、表題の化合物(100mg,79%)を得た。MS m/z 543(M+1).C3034(M+1)についてのHRMS測定値:543.2471、実測値543.2467。
【0084】
【化18】

【0085】
化合物1(646mg,1.38mmol)をCHOH(15ml,30mmol)中、2.0M CHNHに溶かし、室温で5分間攪拌し、続いてNaCNBH(173mg,2.75mmol)を加えた。反応混合物を室温で一晩攪拌し、減圧下で濃縮し、乾燥した。溶媒を除去した後、PTLC(CHOH/CHCl中7% 1M NH)で分離し、β−4(スポット1,76mg,11%)およびα−4(スポット2,100mg,15%)を得た。β−4:
【0086】
【化19】

【0087】
(工程2)
化合物α−4(50mg)、クロロホルム酸エチル(0.15ml)およびEtN(0.3ml)をCHCl(5ml)に溶かし、2時間攪拌した。反応混合物を、PTLC(EtOAc/ヘキサン,1:1)により直接分離し、表題の化合物(48mg,84%)を得た。MS m/z 557(M+1)。C3136(M+1)についてのHRMS測定値:557.2627、実測値 557.2620。
【0088】
【化20】

【0089】
米国特許第6,063,847号で記載されている、ホスホン酸エステル7(3.27g,8.1mmol)をTHF(12ml)に溶かし、0℃に冷却し、続いて2.5M n−BuLi(3.2ml,8.1mmol)を加えた。反応混合物は、0℃で10分間攪拌し、その後室温になるまで温めた。この反応混合物に、米国特許第6,063,847号で記載されている、アルデヒド6をTHF(12ml)に溶かした溶液を加えた。反応混合物は、30分間攪拌した。標準的な水の後処理に続くカラムクロマトグラフィー(ヘキサン中30−50%EtOAc)により、生成物8を得た。
【0090】
【化21】

【0091】
【化22】

【0092】
化合物8(2.64g,4.8mmol)をTHF(48ml)に溶かした。反応混合物は、0℃に冷却し、続いて1M TBAF(4.8ml)を加えた。反応混合物を5分間攪拌した後、標準的な水の後処理をした。カラムクロマトグラフィー(50%EtOAc/ヘキサン)により、生成物9(1.9g,100%)を得た。
【0093】
【化23】

【0094】
【化24】

【0095】
化合物9(250mg,0.65mmol)をピリジン(5ml)に溶かした溶液を、0℃に冷却し、TfO(295μL,2.1mmol)を加えた。この反応混合物を、室温で一晩攪拌した。標準的な水の後処理に続くカラムクロマトグラフィーにより、生成物10を得た(270mg,80%)。
【0096】
【化25】

【0097】
【化26】

【0098】
化合物10(560mg,1.1mmol)、3−フルオロフェニルボロン酸(180mg,1.3mmol)およびKCO(500mg,3.6mmol)を密封管内で、トルエン(4.4ml)、HO(1.5ml)およびEtOH(0.7ml)と混合した。この反応溶液に、N気流下、Pd(PhP)(110mg,0.13mmol)を加えた。反応混合物を、N気流下、2時間100℃に加熱した。反応混合物は、室温まで冷却し、EtOAc(30ml)に注ぎ入れ、水(2×20ml)で洗浄した。EtOAc溶液は、NaHCOで乾燥し、減圧濃縮をして、残渣を得た。この残渣をPTLC(ヘキサン中50% EtOAc)により分離し、生成物11(445mg,89%)を得た。
【0099】
【化27】

【0100】
化合物11(445mg,0.96mmol)を、アセトン(10ml)および1N HCl(10ml)の混合溶液に溶かした。反応混合物を、1時間50℃に加熱した。標準的な水の後処理に続くPTLC(ヘキサン中50% EtOAc)による分離で、生成物12(356mg,89%)を得た。
【0101】
【化28】

【0102】
化合物12(500mg,4.2mmol)を、EtOH(40ml)およびCHCl(15ml)の混合溶液に溶かし、この溶液に、NH(気体)を5分間泡入した。反応混合物は、0℃に冷却し、続いてTi(OiPr)(1.89ml,6.3mmol)を加えた。0℃で1時間攪拌した後、1M TiCl(6.3ml,6.3mmol)を加えた。反応混合物を室温で、45分間攪拌し、減圧下で濃縮し、乾燥させた。この残渣をCHOH(10ml)に溶かし、NaBHCN(510mg,8mmol)を加えた。この反応混合物を室温で一晩攪拌した。反応混合物は、1N NaOH(100ml)に注ぎ入れ、EtOAc(3×100ml)で抽出した。抽出した有機層を合わせ、NaHCOで乾燥した。溶媒を除去して、PTLC(CHOH/CHCl中5% 2M NH)で分離して、β−13(スポット1、30mg,6%)およびα−13(スポット2、98mg,20%)を得た。
【0103】
【化29】

【0104】
(工程7)
化合物α−13(300mg、0.71mmol)をCHCl(10ml)に溶かし、続いてEtN(0.9ml)を加えた。反応混合物は、0℃に冷却し、クロロホルム酸エチル(0.5ml)を加えた。反応混合物を、室温で1時間攪拌した。反応混合物を、PTLC(EtOAc/ヘキサン,1:1)により直接分離し、表題の化合物(14)(300mg,86%)を得た。MS m/z 493(M+1)。C2934F(M+1)についてのHRMS計算値:493.2503、実測値493.2509。
【0105】
【化30】

【0106】
【化31】

【0107】
化合物12(130mg,0.31mmol)をCHOH(5ml,10mmol)中、2.0M CHNHに溶けた。反応混合物を室温で5分間攪拌した後、NaCNBH(40mg,0.62mmol)を加えた。室温で一晩攪拌し、溶媒を除去した後、PTLC(CHOH/CHCl中7% 1M NH)で分離し、β−15(スポット1、20mg,15%)およびα−15(スポット2,25mg,19%)を得た。
【0108】
【化32】

【0109】
(工程2)
化合物α−15(25mg,0.06mmol)をCHCl(5ml)に溶かし、続いてEtN(0.2ml)を加えた。反応混合物は、0℃に冷却し、クロロホルム酸エチル(0.1ml)を加えた。反応混合物を、室温で1時間攪拌した。反応混合物を、PTLC(EtOAc/ヘキサン,1:1)により直接分離し、表題の化合物(25mg,85%)を得た。MS m/z 507(M+1)。C3036F(M+1)についてのHRMS計算値:507.2659、実測値507.2652。
【0110】
【化33】

【0111】
化合物α−13(10mg,0.02mmol)をCHCl(3ml)に溶かし、続いてEtN(0.5ml)を加えた。反応混合物は、0℃に冷却し、CHSOCl(0.2ml)を加えた。反応混合物を、室温で1時間攪拌した。反応混合物は、TLC(EtOAc/ヘキサン,1:1)により直接分離され、表題の化合物(10mg,84%)を得た。MS m/z 499(M+1)。C2732F(M+1)についてのHRMS計算値:499.2067、実測値499.2071。
【0112】
【化34】

【0113】
化合物α−13(50mg,0.1mmol)をCHCl(5ml)に溶かし、続いてCHNCO(250mg)を加えた。反応混合物を、室温で1時間攪拌した。反応混合物を、TLC(CHOH/CHCl,7%)により直接分離し、表題の化合物(塩酸塩として60mg,98%)を得た。MS m/z 478(M+1)。C2833F(M+1)についてのHRMS計算値:478.2506、実測値478.2516。
【0114】
【化35】

【0115】
化合物α−13(50mg,0.1mmol)をCHCl(3ml)に溶かし、続いてEtN(0.5ml)を加えた。反応混合物は、0℃に冷却し、無水酢酸(0.2ml)を加えた。反応混合物を、室温で一晩攪拌した。反応混合物を、TLC(CHOH/CHCl,8%)により直接分離し、表題の化合物(52mg,94%)を得た。MS m/z 463(M+1)。C2832F(M+1)についてのHRMS計算値:463.2397実測値463.2399。
【0116】
上記に記載した方法を用いて、以下の構造の化合物を調製した。
【0117】
【化36】

【0118】
ここで、R21およびRは表1で定義した通りである。
【0119】
【化37−1】

【0120】
【化37−2】

【0121】
*比較例
化合物1のピリジン基を、キノリン基と置き換え、以下の構造の化合物を調製した。
【0122】
【化38】

【0123】
ここで、RおよびArは表2で定義した通りである。
【0124】
【化39】

【0125】
以下の類似化合物を、置換基されたフェニル基およびヘテロアリール基から選択されるWをさらなるバリエーションを用いて調製した。
【0126】
【化40】

【0127】
ここで、RおよびArは表3で定義した通りである。
【0128】
【化41−1】

【0129】
【化41−2】

【0130】
【化42】

【0131】
米国特許第6,063,847号で記載されているものとして調製された、化合物17(100mg,0.239mmol)を、酢酸アンモニウム(1.84g,23.9mmol)およびNaCNBH(24mg,0.38mmol)と、CHOH(7ml)中、N気流下、室温で16時間攪拌した。その混合物を、NHOH(10ml,29%水溶液)で処理し、CHCl(75ml)で希釈し、NaHCO(飽和)で洗浄した。有機層を乾燥(MgSO)し、減圧濃縮した。溶離液として2.0M NH/CHOH−CHCl(5−95)を用いて、残渣のPTLC分離をして、18A(43mg,43%,低い方のR)、MS(ESI)m/z 421(MH)、および18B(17mg,17%,高い方の R)、MS(ESI)m/z 421(MH)。
【0132】
(工程2)
化合物18A(0.100g,0.238mmol)を、クロロホルム酸エチル(0.195ml,2.38mmol)およびEtN(0.5ml,3.6mol)とCHCl(10ml)中、0℃で10分間および室温で1時間攪拌した。この混合物を、EtOAc(50ml)で希釈し、NaHCO(飽和)で洗浄した。有機層を乾燥(MgSO)し、減圧濃縮した。溶離液としてEtOAc−ヘキサン(50−50)を用いるシリカゲルカラム上の、残渣のフラッシュクロマトグラフィーにより、実施例69A(100mg,85%)を得た。MS(ESI)m/z 493(MH)。および化合物32Bは、18Bから簡単に調製された。MS(ESI)m/z 493(MH)。
【0133】
【化43】

【0134】
化合物19(米国特許第6,063,847号参照)を出発物質とする、実施例32の工程1の方法を用いて、調製した:20A(低い方のR)、MS(FAB)m/z421(MH)、および20B(高い方のR)、MS(FAB)m/z421(MH)。
【0135】
(工程2)
実施例69の工程2の方法を用いて、実施例70Aを、化合物20Aから調製した:MS(ESI)m/z493(MH)。実施例69の工程2の方法を用いて、実施例70Bを、化合物20Bから調製した:MS(ESI)m/z493(MH)。
【0136】
【化44】

【0137】
【化45】

【0138】
米国特許第6,063,847号で記載されているラクトン21(10g,0.0251mol)を、アセトンに溶かし、1N HClを加え、この混合物を4時間55℃に加熱した。この混合物は、室温まで冷却し、NaHCOで中和し、EtOAcで抽出した。抽出液を乾燥し、減圧濃縮して、オイル状の化合物22(7.35g)を得た。MS m/z 355(M+1)。
【0139】
【化46】

【0140】
ケトン22(7.35g,0.0207mol)を、THFに溶かし、0℃まで冷却した。tert−ブトキシカリウム(2.55g,1.1当量)を加えた。10分間攪拌した後、CHI(2.58ml,2当量)を加えた。反応混合物を2.5時間攪拌した。NHCl(飽和)を用いた水の後処理に続く、カラムクロマトグラフィー(ヘキサン中30〜50%EtOAc)により、化合物23(1.63g)を得た。MS m/z 383(M+1)。
【0141】
【化47】

【0142】
ケトン23(1.634g,0.00426mol)を、CHOHに溶かし、NHOAcおよびNaCNBHを加えた。反応混合物を2時間攪拌した。NHOHを用いてこの反応を止め、反応混合物をCHClで抽出した。有機抽出溶液を乾燥および濃縮し、オイル状の化合物を得た。MS m/z 383(M+1)。
【0143】
このオイルを、CHClに溶かし、EtNを加えて、反応混合物を0℃まで冷却した。クロロホルム酸エチルを加え、反応混合物を一晩攪拌した。NHCl(飽和)を用いた水の後処理に続く、カラムクロマトグラフィー(ヘキサン中30%EtOAc)により、α−24およびβ−24の分離不可能な3:1の混合物を0.797g得た。MS m/z 456(M+1)。
【0144】
【化48】

【0145】
工程3から得た混合生成物(330mg,0.724mmol)をEtOAc(14ml)に溶かし、Pd(C)(10重量%)を加えた。この混合物を、H気流(1atm)下、2時間攪拌した。この混合物をろ過し、濃縮し、およびCHOH(15ml)で溶かした。この混合物に、PtO(10重量%)を加え、H気流(50psi)下に置き、パーシェイカー(parr shaker)の上で3日間攪拌した。反応混合物をろ過し、濃縮して、280mgの酸25を得た。MS m/z 368(M+1)
【0146】
【化49】

【0147】
未精製の酸25(0.724mmol)を、CHClに溶かした。(COCl)(0.1ml,1.5当量)およびDMFを1滴加えた。この混合物を30分間攪拌した。このとき、H NMRは完全に変換したことを示した。CHClをトルエンと置き換え、得られた溶液を0℃まで冷却した。Pd(PhP)を加え、続いてBuSnHを滴下した。0℃で30分間攪拌した後、TLCにより、反応の完結を示した。カラムクロマトグラフィー(ヘキサン中20%〜50%EtOAc)により、248mgのアルデヒド26を得た。MS m/z 352(M+1)。
【0148】
【化50】

【0149】
リン酸エステル27(248mg,0.768mmol,3当量)(米国特許第6,063,847号参照)をTHF(4ml)に溶かし、この混合物を0℃まで冷却した。LHMDS(0.768ml,1M トルエン溶液の3当量)を加え、この反応混合物を30分間攪拌した。反応混合物に、Ti(i−OPr)(0.227ml,3当量)を加え、5分後、THF(4ml)に溶かしたアルデヒド26(90mg,0.256mol)の溶液を加えた。反応混合物を1.5時間攪拌した。このときTLCは完全な変換を示した。飽和ナトリウム カリウム酒石酸塩を加え、減圧下でTHFを除去した。残渣をEtOAcで抽出し、乾燥し、濃縮し、およびPTLC(1:1 EtOAc/ヘキサン)により精製して、表題の化合物(80mg)を得た。MS m/z 521(M+1)。
【0150】
【化51】

【0151】
20mlのCHCNに溶かした、1.35g(2.75mmol)の出発物質、0.57mlのEtN(4.13mmol,1.5当量)および70mgのDMAP(0.57mmol,0.2当量)の溶液に、60℃下、2当量の(Boc)Oを加えた。その後、5時間以上の間に、5当量の(Boc)Oを加えた。この溶液を冷却し、濃縮し、およびクロマトグラフィーを行い、0.86gの生成物を得た。
MS:593.1(MH)。
【0152】
【化52】

【0153】
5mlのTHFに溶かした、280mg(0.47mmol)の出発物質の溶液に、0℃下、THFに溶かした、0.95ml(0.95mmol,2当量)の1M LHMDSを加えた。反応混合物を30分間攪拌した。そして、風船を通して、Oを加えた。1時間攪拌後、50mlのNaSO水溶液を加えて反応を止め、1時間攪拌した。3×25mlの酢酸エチルを用いて、水層を抽出し、合わせた有機層を飽和食塩水で洗浄し、MgSOで乾燥し、30%EtOAc−ヘキサンを用いてクロマトグラフィーを行い、125mgの加水分解した生成物を得た。
MS:609.1(MH)。
【0154】
【化53】

【0155】
1mlのCHClに溶かした、125mgの出発物質の溶液に、室温で、1mlのトリフルオロ酢酸を加え、1時間攪拌し、濃縮した。この反応溶液に、50mlのNaCO水溶液を加え、3×10mlのCHClを用いて抽出した。合わせた有機層を10mlの飽和食塩水で洗浄し、MgSOで乾燥し、ろ過し、濃縮して、50%EtOAc−ヘキサンを用いてクロマトグラフィーを行い、90mgの生成物を得た。
HRMS:509.2459(MH)。
【0156】
【化54】

【0157】
8mlのTHFに溶かした、500mg(0.84mmol)の出発物質の溶液に、THFに溶かした、1.7ml(1.7mmol,2当量)の1M LHMDSを加えた。反応溶液を30分間攪拌した。そして、−78℃に冷却し、2mlのTHF中の390mg(1.7mmol,2当量)のジ−tert−ブチルアゾジカルボキシレート(DBAD)の溶液を加えた。3時間以上かけて、反応を室温に戻し、100mlのNHCl水溶液に注ぎ入れ、3×30mlのEtOAcを用いて抽出した。合わせた有機層を30mlの飽和食塩水で洗浄し、MgSOで乾燥し、ろ過し、濃縮して、未精製の生成物を得た。
【0158】
前記生成物を、15mlの1:1 TFA−DCMを用いて、室温で1時間攪拌し、濃縮し、100mlのNaCO水溶液を用いて塩基性にした。3×25mlのDCMを用いて、水層を抽出し、合わせた有機層を25mlの飽和食塩水で洗浄し、MgSOで乾燥し、ろ過し、濃縮して、未精製のヒドラジドを得た。
【0159】
前記未精製のヒドラジドを、10mlの氷酢酸に溶かし、2gのZn粉末を少量ずつ加え、約1.5時間攪拌した。セライトに通してろ過し、100mlのDCMで洗浄した。このDCM溶液を2×50mlのHO、2×50のNaHCO水溶液、50mlの飽和食塩水で洗浄し、MgSOで乾燥し、ろ過し、濃縮して、87:10:3 DCM−アセトン−MeOHを用いてクロマトグラフィーを行い、105mgの生成物を得た。
HRMS:508.2607(MH)。
【0160】
【化55】

【0161】
30mlのTHFに加えた、塩化(メトキシメチル)トリフェニルホスホニウム(3.20g,9.34mmol)の懸濁液に、0℃下、1M BuOKのTHF溶液(10.3ml,10.3mmol)を加え、30分間攪拌した。この溶液に、25mlのTHFおよび10mlのDMFに溶かしたケトン(1.95g,4.65mmol)の溶液を加えた。この混合物を室温で1時間攪拌し、300mlのNHCl水溶液を注ぎ入れ、3×75mlのEtOAcを用いて抽出した。合わせた有機層を75mlの飽和食塩水で洗浄し、MgSOで乾燥し、ろ過し、濃縮して、40%EtOAc−ヘキサンを用いてクロマトグラフィーを行い、1.67gの生成物を得た。
MS:448.1(MH
【0162】
【化56】

【0163】
15mlの4N HClのジオキサンおよび1.5mlのHOに溶かした、1.67gのビニルエーテルの溶液を、室温で、1.5時間攪拌し、250mlのNaCO水溶液を注ぎ入れ、3×50mlのDCMで抽出した。合わせた有機層を50mlの飽和食塩水で洗浄し、MgSOで乾燥し、ろ過し、濃縮して、40%EtOAc−ヘキサンを用いてクロマトグラフィーを行い、1.36gのアルデヒドを得た。
【0164】
20mlのMeOHおよび10mlのTHFに溶かした、このアルデヒドの溶液に、0℃下で、120mgのNaBHを加え、10分間攪拌した。この反応溶液に、150mlのNHCl水溶液を注ぎ入れ、3×50mlのEtOAcを用いて抽出した。合わせた有機層を50mlの飽和食塩水で洗浄し、MgSOで乾燥し、ろ過し、濃縮して、白色固体として、1.27gのアルコールを得た。
HRMS:436.2275(MH)。
【0165】
【化57】

【0166】
20mlのDCMに溶かしたアルコール(1.27g,2.92mmol)の溶液を、約−40℃下で、0.63mlのEtNおよび0.27mlのMeSOClを加え、この反応溶液を、1時間以上かけて0℃まで温めた。さらに0.16mlのEtNおよび0.07mlのMeSOClを加え、0℃でさらに1時間攪拌した。100mlのEtOAcで希釈し、2×30mlのNaHCO水溶液、30mlの飽和食塩水で洗浄し、MgSOで乾燥し、ろ過し、および濃縮して、1.6gのメシレートを得た。
【0167】
10mlのDMSO中、950mgのNaN(14.6ミリモル、5当量)と供に、上記のメシレートの水溶液を1.5時間、65℃で攪拌した。150mlのEtOAcで希釈し、3×50mlの水、50mlの飽和食塩水で洗浄し、MgSOで乾燥し、ろ過し、および濃縮して、1.3gのアジドを得た。
【0168】
15mlのEtOAcおよび0.2mlのHOに溶かした、このアジドの溶液に、1M MePのTHFを加え、室温で4時間攪拌した。この溶液を濃縮し、4%MeOH−DCMを用いてクロマトグラフィーを行い、1.06gのアミンを得た。
HRMS:435.2445(MH)。
【0169】
【化58】

【0170】
上記に記載した方法を用いて、上記のアミンを、種々の求電子試薬で処理して、以下の構造の化合物を調製した:
【0171】
【化59】

【0172】
ここで、Rは表4で定義されるものと一致する。
【0173】
【化60】

【0174】
【化61】

【0175】
40mlのCHCNおよび5mlのDCMに溶かした、アルデヒド(2.19g,4.53mmol)の溶液に、8mlのHOに溶かした、NaHPO(135mg,1.13mmol,0.25当量)および30%H水溶液(0.51ml,4.99mmol,1.1当量)の溶液を加えた。この溶液に、5mlのHOに溶かした、80%NaClO(0.72g,6.37mmol,1.4当量)の溶液を加え、この反応混合物を室温で2時間攪拌した。150mlのHOで希釈し、1N HClで約pH3まで酸性にして、3×50mlのDCMで抽出した。合わせた有機層を50mlの飽和食塩水で洗浄し、MgSOで乾燥し、ろ過し、濃縮して、固体として2.2gのカルボン酸を得た。
HRMS:450.2077(MH)。
【0176】
【化62】

【0177】
一般的な手順:
DMF−DCM混合液に溶かした酸およびアミン(3当量)の溶液に、HATU(2当量)を加え、室温で一晩攪拌した。EtOAcで希釈し、NaHCO水溶液および飽和食塩水で洗浄し、MgSOで乾燥し、ろ過し、濃縮して、クロマトグラフィーを行い、アミドを得た。
【0178】
上記に記載した方法を用いて、以下の構造の化合物を調製した:
【0179】
【化63】

【0180】
ここで、NRRは表5で定義された通りである。
表5
【0181】
【化64】

【0182】
本発明により記載された化合物からの薬学的組成物を調製する場合、不活性な、薬学的に受容可能な担体は、固体または液体のいずれかであり得る。固体形製剤には、散剤、錠剤、分散顆粒剤、カプセル、カシェ剤および坐剤が挙げられる。散剤および錠剤は、約5〜約95%の活性成分を含有し得る。適した固体の担体は、当該分野において公知であり、例えば、炭酸マグネシウム、ステアリン酸マグネシウム、タルク、糖または乳糖がある。錠剤、散剤、カシェ剤およびカプセルは、経口投与に対して、適した固体の投薬形として使用され得る。薬学的に受容可能な担体の施例および種々の組成物の製造方法は、A.Gennaro(ed.),The Science and Practice of Pharmacy,20th Edition,Lippincott Williams & Wilkins,Baltimore,MD,(2000)に示され得る。
【0183】
液体形製剤には、液剤、懸濁剤および乳剤が挙げられる。例としては、非経口注射用の水または水−プロピレングリコール溶液、または、経口用の液剤、懸濁剤および乳剤のための甘味剤および乳白剤の添加がある。液体形製剤には、鼻腔内投与のための溶剤も挙げられ得る。
【0184】
吸入に適したエアロゾル剤には、液剤および固形散剤が挙げられ、不活性な圧縮ガス、例えば窒素のような薬学的に受容可能な担体との組み合わせの場合もあり得る。
【0185】
また、経口または非経口投与のために、使用前すぐに液体製剤に変換することが意図される。固形製剤も挙げられる。このような液体製剤には、液剤、懸濁剤および乳剤が挙げられる。
【0186】
本発明の化合物はまた、経皮的に送達され得る。経皮用組成物は、クリーム、ローション、エアロゾルおよび/または乳濁液の形状を取り得、この目的のために当該分野で慣例であるように母体または貯蔵型の経皮内用パッチとして挙げられ得る。
【0187】
好ましくは、本発明の化合物は、経口投与される。
【0188】
好ましくは、本発明の薬学的製剤は、単位投薬形態である。このような形態において、本発明の製剤は、活性成分の適切な量、例えば所望の目的に達する有効量を含む、適切な大きさの単位用量に細分される。
【0189】
上記に引用した疾患または状態の処置に対して、式1の1日あたりの用量は、1日あたり、体重1kgあたり、約0.001〜約100mgであり、好ましくは、体重1kgあたり、約0.001〜約10mgである。それゆえ、70kgの平均体重の場合、投薬レベルは1日あたり約0.1〜約700mgの薬量であり、1回または2〜4回に分けて投薬される。
【0190】
本発明の化合物および/またはその薬学的に受容可能な塩の量および頻度は、患者の年齢、状態および体型ならびに処置する病状の重篤度のような要因を企図した、診療する臨床医の判断に従って規制される。
【0191】
本発明のさらなる実施形態には、式1の化合物と少なくとも1つの追加の心臓血管薬を一緒に投与することを含む。企図された追加の心臓血管薬は、式1の化合物の原子構成または配列のいずれかで異なる化合物である。本発明の新規化合物と組み合わせて使用され得る追加の心臓血管薬には、抗血栓、抗血小板凝集、抗アテローム性動脈硬化、抗再狭窄および/または抗血液凝固の活性を有する薬物が挙げられる。このような薬物は、トロンビン関連疾患を処置するのに有用である。上記の疾患には、血栓症、アテローム性動脈硬化症、再狭窄、高血圧、狭心症、不整脈、心不全、心筋梗塞、糸球体腎炎、血栓症関連疾患、血栓性脳卒中、血栓塞栓性脳卒中、末梢性血管性疾患、他の心臓血管疾患、大脳虚血、炎症障害および癌、ならびにトロンビンおよびそのレセプターが病理学的な役割をする他の障害が挙げられる。適した心臓血管薬は、アスピリンのような、トロンボキサンA2生合成インヒビター;セラトロダスト、ピコタミドおよびラマトロバンのようなトロンボキサンアンタゴニスト;クロピドグレル(clopidogrel)のようなアデノシン二リン酸(ADP)インヒビター;アスピリン、メロキシカム、ロフェコキシブ(rofecoxib)およびセレコキシブ(celecoxib)のようなシクロオキシゲナーゼインヒビター;バルサルタン、テルミサルタン、カンデサルタン(candesartran)、イルベサルタン(irbesartran)、イソサルタンおよびエプロサルタンのようなアンジオテンシンアンタゴニスト;テゾセンタンのようなエンドセリンアンタゴニスト;ミルリノン(milrinoone)およびエノキシモン(enoximone)のようなホスホジエステラーゼインヒビター;カプトプリル、エナラプリル、エナリプリラット(enaliprilat)、スピラプリル、キナプリル、ペリンドプリル,ラミプリル、ホシノプリル(fosinopril)、トランドラプリル、リシノプリル、モエキシプリルおよびベナザプリルのようなアンジオテンシン変換酵素(ACE)インヒビター;カンドキサトリルおよびエカドトリルのような(candoxatril,ecadotril)中性のエンドペプチダーゼインヒビター;キシムラガトラン、ホンダパリン、およびエノキサパリン(ximelagatran,fondaparin,enoxaparin)のような抗血液凝固薬;クロロチアジド、ヒドロクロロチアジド、エタクリン酸(ethacrynic acid)、フロセミドおよびアミロライドのような利尿薬;アブシキシマブおよびエプチフィバチド(abciximab,eptifibatide)のような血小板凝集インヒビター;ならびにGPIIb/IIIaアンタゴニストから成る群から選択される。
【0192】
本発明の新規化合物と組み合わせて使用する薬物の好ましいタイプは、トロンボキサンA2生合成インヒビター、シクロオキシゲナーゼインヒビターおよびADPアンタゴニストである。組み合わせで使用するのに特に好ましいのは、アスピリンおよびクロピドグレル硫酸水素塩(clopidogrel bisulfate)である。
【0193】
本発明が、式1の化合物および他の心臓血管薬の組み合わせを含むとき、上記の2つの活性成分が、同時にまたは連続的に投与され得るか、もしくは、式1の化合物および薬学的に受容可能な担体中の他の心臓血管薬を含む単一の薬学的組成物が、投与され得る。この組み合わせの成分は、単独にまたは一緒に、カプセル、錠剤、散剤、カシェ剤、懸濁剤、液剤、坐剤、鼻腔内スプレーなどのような従来のあらゆる投薬形で投与され得る。心臓血管薬の投薬は、公開された物質から決定され得、1用量あたり1〜1000mgの範囲であり得る。
【0194】
本明細書において、用語「式1の少なくとも1つの化合物」とは、式1の1〜3種の異なる化合物が、薬学的な組成物または処置の方法において使用され得ることを意味する。好ましくは、式1の1つの化合物が使用される。同様に、用語「1つ以上の追加の心臓血管薬」とは、1〜3種の追加の薬物が、式1の化合物と組み合わせて投与され得ることを意味している;好ましくは、1つの追加の化合物が、式1の化合物と組み合わせて投与される。追加の心臓血管薬は、式1の化合物と連続的にまたは同時に、投与され得る。
【0195】
式1の別個の化合物および他の心臓血管薬が別個の組成物として投与される場合、薬学的に受容可能な担体中の式1の化合物を含む1つの容器、および薬学的に受容可能な担体として別の心臓血管薬を含む別の容器を、単一のパッケージに含むキットとして、提供され得る。ここで、上記の式1の化合物および、他の心臓血管薬は、その組み合わせが治療的に有効量である量で存在する。キットは、例えば、上記の成分を異なる時間間隔に投与しなければならないとき、または上記の2つの成分が、異なる投薬形であるとき、組み合わせ投与する場合に有用である。
【0196】
式1の化合物の活性は、以下の手順により決定され得る。
【0197】
(トロンビンレセプターアンタゴニストに対するインビトロ試験の手順:)
([H]haTRAPの調製)
A(pF−F)R(ChA)(hR)(I−Y)−NH(1.03mg)および10% Pd/C(5.07mg)をDMF(250μl)およびジイソプロピルエチルアミン(10μl)に懸濁した。この反応容器を、トリチウムラインに取り付け、液体窒素で凍結し排気した。その後、このフラスコにトリチウムガス(342mCi)を加え、室温で2時間攪拌した。反応の終結時に、過剰のトリチウムを除去し、反応したペプチド溶液をDMF(0.5ml)で希釈し、濾過して触媒を除去した。粗ペプチドの集めたDMF溶液を、水で希釈し、凍結乾燥して、活性トリチウムを除去した。固体ペプチドを水で再び溶かし、凍結乾燥の工程を繰り返した。トリチウム化したペプチド([H]haTRAP)を0.1%のTFA水溶液0.5mlに溶かし、以下の条件を使用して、HPLCにより精製した:colum,Vydac C18,25cm × 9.4mm I.D.;移動相,(A)水中0.1%TFA,(B)CHCN中0.1%TFA;勾配,30分にわたり、(A/B)100/0〜40/60;流速,5ml/min;検出,215nmにおけるUV。[H]haTRAPの放射化学的純度は、HPLCによる分析では99%であった。
18.4Ci/mmolの活性化において、14.9mCiのバッチを得た。
【0198】
(血小板膜の調製)
血小板膜を、ノース ジャーシー血液センター(The North Jersey Blood Center)(East Orange,N.J.)から得た、採取されて48時間以内の20ユニットの血小板濃縮物から、Natarajanらの方法(Natarajanら、Int.J.Peptide Protein Res.,45巻,pp.145−151(1995))に改変を加えて、調製した。全工程を、4℃で、認可されたバイオハザード安全条件(biohazard safety conditions)下で、実施した。血小板を、4℃下で20分間、100×gで遠心分離にかけて赤血球を除去した。上清をデカントして、15分間3000×gで遠心分離にかけて顆粒の血小板にした。血小板を、pH7.5の10mM Tris−HCl、150mM NaCl、5mM EDTA中で懸濁して、全体量を200mlにして、10分間4400×gで遠心分離にかけた。この工程をさらに2回繰り返した。血小板を、pH7.5の5mM Tris−HCl、5mM EDTA中に再び懸濁して、最終量を約30mlにして、Dounce ホモジナイザーを使用して、20ストロークで、ホモジナイズした。膜を41,000×gでペレットにし、40〜50mlのpH7.5の20mM Tris−HCl、1mM EDTA、0.1mM ジチオトレイトール中に再び懸濁し、その内10mlのアリコートを液体窒素で凍結し、−80℃で保存した。膜調製を完結するために、上記のアリコートを解凍し、プールし、Dounce ホモジナイザーを使用して、5ストロークで、ホモジナイズした。膜をペレットにし、pH7.4の10mM トリエタノールアミンーHCl、5mM EDTAで3回洗浄し、pH7.5の50mM Tris−HCl、10mM MgCl、1mM EGTAおよび1%DMSO(20〜25ml)で、再び懸濁した。上記の膜のアリコートを液体窒素で凍結し、−80℃で保存した。膜は少なくとも3ヶ月間安定であった。20ユニット血小板濃縮物は典型的に250mgの膜タンパク収量を得た。タンパク濃度を、Lowry assayにより決定した。(Lowryら、J.Biol.Chem.,193巻,pp.265−275(1951)。
【0199】
(ハイスループット トロンビンレセプター放射リガンド結合アッセイ)
トロンビンレセプターアンタゴニストは、Ahnらのトロンビンレセプター放射リガンド結合アッセイ法(Ahnら、Mol.Pharmacol.,51巻,p.350−356(1997))の改変を使用してスクリーニングした。アッセイは、96ウェル Nunc プレート(カタログ番号269620)を使って、最終アッセイ量200μlで行った。結合緩衝液(pH7.5の50mM Tris−HCl、10mM MgCl、1mM EGTA、0.1%BSA)中、血小板膜および[H]haTRAPを、それぞれ0.4mg/mlおよび22.2nMに希釈した。試験化合物の保存溶液(100%DMSO中10mM)を100%DMSOでさらに希釈した。他に示されない限り、10μlの希釈した化合物溶液および90μlの放射リガンド(最終濃度が5%DMSO中10nM)を各ウェルに加え、そして100μlの膜(40μg タンパク質/ウェル)を加えて、反応を開始した。結合は、5%DMSOにより有意には阻害されなかった。
【0200】
化合物を、3つの濃度(0.1,1および10μM)で試験した。上記プレートを覆い、室温で1時間、Lab−Line Titer Plate Shaker上で穏やかにボルテックス混合した。Packard UniFilter GF/C フィルター プレートを少なくとも1時間0.1%ポリエチレンイミンに浸けた。Packard FilterMate Universal Harvesterを使用して、インキュベートした膜を取り出し、300μlの氷冷したpH7.5の50mM Tris−HCl、10mM MgCl、1mM EGTAで4回、素早く洗浄した。マイクロシンチ20シンチレ−ション カクテル(MicroScint20scintillation cocktail)(25μl)を各ウェルに充分に加えて、Packard TopCount Microplate Scintillation Counterで、プレートを数計した。特異的結合は、過剰量(50μM)の非標識のhaTRAPの存在下で観察される非特異的結合を全結合から引いたものとして定義した。トロンビンレセプターに結合する[H]haTRAPの化合物による%阻害を、以下の関係式から計算した:
%阻害=(全結合−試験化合物に存在する結合)/(全結合−非特異的結合)
次いで、親和値(Ki)を、以下の式を使用して決定した。
【0201】
【化65】

【0202】
従って、Kiの値が小さいほど、より大きい結合親和性を示す。
【0203】
(物質)
A(pF−F)R(ChA)(hR)Y−NHおよびA(pF−F)R(ChA)(hR)(I−Y)−NHを、AnaSpec Inc.(San Jose,CA)により特別に合成した。これらのペプチドの純度は、95%より高かった。トリチウムガス(97%)を、EG&G Mound,Miamisburg Ohioから購入した。ガスは、IN/US Systems Inc.に連続して充填し、保存した。Trisorber.マイクロシンチ20シンチレ−ションカクテルをPackard Instrument Coから得た。
【0204】
(カニクイザル全血における、エキソビボでの血小板凝集についてのプロトコル)
(薬物投与および血液採取)
意識のあるイスにつかせたcynomolgusサルを、30分間平衡にした。試験薬物の注入のために、針カーテルを上腕静脈に挿入する。他方の上腕静脈または伏在静脈に、別の針カーテルを挿入し、血液サンプルに使用する。化合物が経口投与される、これらの実験において、カーテルを1つのみ使用する。抗凝固剤として、トロンビン インヒビターCVS2139(生理食塩水0.1mlあたり100μg)を含む、バチュテーナーチュ−ブ中に、ベースライン血液サンプル(1〜2ml)を採取する。次いで、30分間にわたって、薬物を静脈内に注入した。血液サンプル(1ml)を、薬物注入の間に5、10、20、30分間で、そして薬物注入の終了の30分後、60分後、90分後で採取する。経口の実験では、動物に、栄養カニューレを使用して薬物を投薬する。投薬後0、30、60、90、120、180、240、300、360分後に、血液サンプルを採取する。0.5mlの血液が、全血凝集のために使用され、残りの0.5mlは、薬物またはその代謝物の血漿濃度を決定するために使用される。以下に記載するように、血液サンプルの採取後、凝集がすぐにおこる。
【0205】
(全血凝集)
0.5mlの血液サンプルを0.5mlの生理食塩水に加え、Chronolog全血血小板凝集計で、37℃まで温める。同時に、インビーダンス電極を生理食塩水中で37℃まで温めた。血液サンプルを、スターラーバー(stir bar)と共に加熱ブロックウェル中に置き、インビーダンス電極を血液サンプル中に置き、採取ソフトウェアを開始する。ソフトウェアは、ベースラインが安定するまで作動し、その後20Ωのキャリブレーションチェックを行う。20Ωは、コンピューターソフトウェアにより作られたグラフ上の4ブロックに等しい。調整可能な容量 ピペット(5〜25μl)でアゴニスト(haTRAP)を加え、10分間凝集カーブを記録する。アゴニストの添加後に6分間の最大凝集が、記録された値である。
【0206】
(インビトロ血小板凝集の手順)
血小板凝集の研究を、Bednarらの方法(Bednar,B.,Condra,C.,Gould,R.J.,およびConnolly,T.M.,Throm.Res.,77巻,pp.453−463(1995))に従って行った。少なくとも7日間アスピリンを使用していない健常なヒト被験体から、靜脈穿刺で、抗血液凝固剤としてACDを使用し、血液を得た。血小板が豊富な血漿を、15℃で15分間100×gの遠心機にかけることにより調製した。血小板を、3000×gでペレットにし、凝集を阻害するために1mMのEGTAおよび20μlのアピラーゼを含む、緩衝化された生理食塩水で2回洗浄した。凝集を、室温で、0.2mg/mlのヒト フィブリノーゲンを補充した緩衝化された生理食塩水中で行われた。試験化合物および血小板を、96ウェルの平底プレートで60分間プレインキュベートした。0.3μMのhaTRAPまたは0.1U/mlのトロンビンを加え、Lab Line Titer Plate Shaker(速度7)を使用して混合物を素早くボルテックスすることにより、凝集を開始した。パーセント凝集は、Spectromax Plate Readerにおける405nmでの光透過率の増加としてモニターされる。
【0207】
(インビボ抗腫瘍の手順)
ヌードマウスでのヒト胸部の癌腫モデルの試験を、S.Even−Ramら、Nature Medicine、4、8、pp.909−914(1998)に報告された手順に従って行った。
【0208】
本発明の化合物は、エキソビボでの血小板の凝集試験モデルで、驚くほど活性である。これらの研究で、本発明の実施例2の化合物は、0.1mg/kgの投薬量で経口投与後、24時間の存続期間にペプチドを活性化させるトロンビンレセプターを外因的に加えることにより誘発した、血小板の凝集を完全に阻害した。48時間後でさえ、約65%の血小板凝集の阻害が維持された。対照的に、N−アルキルカルバメートアナログである、米国特許第6,063,847号の実施例1A、2Aおよび13を、同様の条件下で、0.5mg/kgの投薬量(実施例2の化合物の投与量に比べて5倍の増加量)を使用して研究した。これらの条件下、N−アルキル化合物は、種々の時点で、血小板凝集の有意な阻害を示さなかった。
【0209】
本発明は、上記に記載された特異的な実施形態と関連して記載されている一方、それらの多くの代わりの化合物、修飾化合物および変化させた化合物は、当業者に明白である。すべての、そのような代わりの化合物、修飾化合物および変化させた化合物は、本発明の趣旨および審査請求の範囲内にあると企図される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
本明細書中に記載される発明。

【公開番号】特開2010−132710(P2010−132710A)
【公開日】平成22年6月17日(2010.6.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−49903(P2010−49903)
【出願日】平成22年3月5日(2010.3.5)
【分割の表示】特願2003−586149(P2003−586149)の分割
【原出願日】平成15年4月14日(2003.4.14)
【出願人】(596129215)シェーリング コーポレイション (785)
【氏名又は名称原語表記】Schering Corporation
【Fターム(参考)】