説明

三相可変速モータ駆動用モータ駆動装置

【課題】広いトルク範囲及び広い速度範囲をもつ三相可変速モータ駆動用モーター駆動装置の昇圧比を低減する。
【解決手段】DCDCコンバータ8は三相全波整流波形の最大相間電圧(Vx)をインバータ4に供給する。三相インバータ4は可変速モータ6を駆動する。インバータ4の一つのレグの上アームスイッチがターンオンされ、インバータ4のもう一つのレグの下アームスイッチがターンオンされ、インバータ4の残る一つのレグがPWMスイッチングされる。PWMスイッチングされるレグは順番に変更される。好ましくはトルクが小さく、低速の場合に、一相のPWMスイッチングに換えて複数相をスイッチングする既存のPWM法が採用される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は三相可変速モータ駆動、好適には、車両駆動用の永久磁石モータ駆動用のモータ駆動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両駆動モータはたとえば0から10000rpmといった広い回転速度範囲を必要とする。車両駆動モータの回転速度は車両速度に比例する。モータのステータ巻線は電磁誘導原理によりモータ回転速度に比例する発電電圧(EMF)を誘起する。特に、永久磁石型同期モータは高速回転時に大きなEMFを誘起する。モータトルクはモータ電流に比例する。したがって、インバータはモータ電流を維持するために高速回転時に車両駆動モータに高電圧を印加せねばならない。
【0003】
インバータに昇圧電圧を印加するチョッパ型昇圧DC/DCコンバータは高速回転時に永久磁石モータを駆動することができる。けれども、チョッパ型昇圧DC/DCコンバータはパルス形状の昇圧電圧を出力する。昇圧電圧のデユーティ比は昇圧電圧値が増大する時に減少する。それは、モータに供給される昇圧電力が高速回転時に減少することを意味する。モーター駆動装置の昇圧電圧を増加するために、昇圧電圧の昇圧比を低減することが望まれている。
【0004】
グリッド接続式電圧型三相インバータの単相PWMスイッチング法(SPSM) が下記の非特許文献に提案されている。
【0005】
このSPSM法はコンバータのDC入力電力を一定に制御する。図1に示されるSPSM法は公知の一定のDCリンク電圧の代わりに、グリッドに接続された三相インバータ40に周期変化電圧を印加する昇圧DC/DCコンバータ80をもつ。インバータ40は三相ローパルフィルタ100を通じてグリッドネットワーク200に三相電圧を出力する。昇圧コンバータ80の最大相間電圧はインバータ40に印加される。DCリンクバスラインに接続された平滑キャパシタ8Dは小さい容量をもつ。DC電源70はチョッパ型昇圧コンバータ80のリアクトル90にDC電圧を印加する。
【0006】
三相インバータの一相のレグだけが所定期間だけPWMスイッチングされる。もう一相のレグの上アームスイッチと残る一相のレグの下アームスイッチがこの期間にオン状態を維持する。昇圧型DC/DCコンバータからインバータに印加される周期変化電圧は三相全波整流波形をもつ。更に、PWM制御されるレグは順番に変更される。
【0007】
SPSM法に関する上記記載では、直流電源から昇圧型DC/DCコンバータ及びグリッド接続インバータを通じてグリッド網に供給される直流入力電力は一定に制御される。グリッド網の最大相間電圧の瞬時値は直流電源の電圧値よりも大きい。結局、可変速モータ駆動用モーター駆動装置にSPSM法を採用することは難しい。可変速モータとりわけ車両モータは広い回転速度範囲及び広いモータトルク範囲をもつ。その結果として、可変速モータに印加する三相電圧は広い振幅範囲を持たねばならない。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0008】
単相PWM制御法のスイッチング損失低減、電気学会、4-029, 2009.
【発明の概要】
【0009】
本発明の一つの目的は広いトルク範囲及び広い速度範囲をもつ三相可変速モータ駆動用モーター駆動装置の昇圧比を低減することにある。本発明のもう一つの目的は広いトルク範囲及び広い速度範囲をもち、効率が優れる三相可変速モータ駆動用モーター駆動装置を提供することにある。本発明のもう一つの目的は広いトルク範囲及び広い速度範囲をもち、効率が優れ、サージ電力が小さい三相可変速モータ駆動用モーター駆動装置を提供することにある。
本発明において、三相可変速モータは上記のSPSM法で駆動される昇圧式の電圧形インバータにより運転される。高速回転域において、誘起モータ電圧の増大によりモータ電流は減る。したがって、昇圧比は高速回転時に増大されねばならない。けれども、昇圧コンバータの出力期間が減少するために昇圧型DC/DCコンバータインバータにより供給されるモータ電流は減ってしまう。その結果、モータ電流に比例するモータトルクは高速回転時に減少する。
【0010】
公知のモーター駆動装置と比べて、本発明のモーター駆動装置の昇圧比が減少できることがわかった。その結果、高速回転時に可変速モータにより多くの電力を供給することができる。すなわち、本発明のモーター駆動装置は既知のモーター駆動装置に比べて低い昇圧比をもつことが可能である。
【0011】
本発明の昇圧コンバータは三相インバータに最大相間電圧(Vx)を印加する。相間電圧とは、三相電圧のうちの2つの相電圧間の電圧を意味する。最大相間電圧(Vx)は一つの相電圧の2倍よりも小さい。その結果、コンバータの昇圧比を約15ー20%だけ小さくすることができる。
【0012】
昇圧比が減少するので、昇圧コンバータの電圧出力期間が増加する。可変速モータのモータトルクはモータに供給される電流に比例する。結局、本発明の可変速モータは SPSM法を採用することにより、高速回転時に強いトルクを発生することができる。
【0013】
SPSM法の追加説明が以下に説明される。最大相間電圧(Vx)は60度ごとに変更される。一つのレグである三相インバータの一相のハーフブリッジだけがPWMスイッチングされる。PWMスイッチングされるレグは電気角60度毎に順番に変更される。それぞれハーフブリッジである他の2つの固定レグは、 PWMスイッチングされない。
【0014】
本発明の三相インバータは一つの相のハーフブリッジのPWMスイッチングにより対称三相電圧、好ましくは正弦波三相電圧を出力する。その結果、三相インバータのスイッチング損が低減される。一つのPWMキャリヤ周期において、伝統的なインバータの12回のスイッチング動作の代わりに4回のスイッチング動作が実行される。昇圧コンバータは三相全波整流波形の昇圧電圧を出力する。
【0015】
PWMレグの制御のために電気角60度ごとにデユーティ比増加モードとデユーティ比減少モードとが交互に実行される。デユーティ比増加モードにおいて、PWMデユーティ比は0%から100%に連続的に増加する。デユーティ比減少モードにおいて、PWMデユーティ比は100%から0%に連続的に減少する。最大相間電圧(Vx)を出力するための一対のレグは、電気角60度毎に順番に変更される。
【0016】
好適態様によれば、三相可変速モータはロータに固定された永久磁石をもつ。コンバータは単レグスイッチングモードにおいて、モータ誘起電圧よりも大きな最大相間電圧(Vx)をインバータに印加する。その結果、 モーター駆動装置はたとえモータが高速回転していても単レグスイッチングモードすなわちSPSM法を実行することができる。
【0017】
好適態様によれば、 SPSM法で駆動される本発明のモーター駆動装置は受け取ったモータのトルク指令値(Tr)及検出したモータの回転速度 (ω)に応じて昇圧コンバータのデユーティ比を変更する。その結果、 SPSM法で駆動されるモーター駆動装置はたとえ回転速度及びトルク指令値が広範囲に変化しても円滑に要求トルクを発生することができる。
【0018】
好適態様によれば、コントローラは最大相間電圧(Vx)、ロータ回転角(θ)、トルク指令値(Tr)及び回転速度(ω)の間の関係を保持する表を有する。コントローラはロータ回転角(θ), トルク指令値(Tr)及び回転速度(ω)の検出値に基づいて最大相間電圧(Vx)を決定する。その結果、SPSM法を用いる可変速モータは要求回転速度で要求トルクを円滑に発生する。
【0019】
好適態様によれば、コンバータはリアクトルとハーフブリッジとをもつ。ハーフブリッジは直列接続された上アームスイッチング素子及び下アームスイッチング素子を有する。上アームスイッチング素子及び下アームスイッチング素子の各一端はリアクトルを通じて電力供給装置に接続される。上アームスイッチング素子の他端は高電位バスラインを通じてインバータに接続される。下アームスイッチング素子の他端は低電位バスラインを通じて電力供給装置及びインバータに接続される。上記したチョッパタイプの昇圧コンバータは簡単な構成をもち、双方向コンバータとして運転されることができる。その結果、モータは減速時に電源を充電することができる。
【0020】
好適態様によれば、コントローラはコンバータ及びインバータの制御のために単レグスイッチングモード及び複数相レグスイッチングモードをもつ。複数相レグスイッチングモードは本質的に三相モータの伝統的なPWMスイッチング動作と同じである。たとえば、複数相レグスイッチングモードの一つは伝統的な三相PWMスイッチング動作である。三相インバータの3つのレグが伝統的な三相スイッチング動作によりPWMスイッチングされる。複数相レグスイッチングモードの他の一つは公知の2相変調法又は公知の瞬時ベクトル法である。三相インバータの二つのレグは2相変調法又は瞬時ベクトル法によりPWMスイッチングされる。
【0021】
単レグスイッチングモードは最大相間電圧(Vx)の指令値が電力供給装置の電圧よりも大きい時に採用される。複数相レグスイッチングモードは最大相間電圧(Vx)の指令値が電力供給装置の電圧よりも小さい時に採用される。したがって、SPSM法により運転されるモーター駆動装置はたとえモータ電圧が電源電圧より小さくても、公知の複数相レグスイッチングモードにより駆動されることができる。その結果として、SPSM法を用いるモーター駆動装置はたとえ三相電圧が小さくても可変速モータに三相電圧を印加することができる。
【0022】
好適態様によれば、単レグスイッチングモードでは、一つのスイッチングされるレグの上アームスイッチング素子はコンバータが昇圧電圧を出力しない期間内にてターンオフされる。好適態様によれば、単レグスイッチングモードでは、一つのスイッチングされるレグの上アームスイッチング素子はコンバータが昇圧電圧を出力する期間内にてターンオンされる。その結果、PWMスイッチングされるレグは優れた効率で運転される。
【0023】
更なる詳細説明が以下に記載される。SPSM法の一つの欠点はコンバータとインバータとの間の高電位バスラインの大きな電位変動である。コンバータとインバータとの間の伝統的な高電位バスラインは大容量の平滑キャパシタに接続される。本発明では、最大相間電圧(Vx)を急速に変化させるために、大容量の平滑キャパシタは高電位バスラインに接続されることができない。その結果、高電位バスラインの電圧リップルは三相インバータのPWMスイッチングされるレグから印加される小振幅相間電圧(Vy)に悪影響を与える。
【0024】
一例において、PWMスイッチングされるレグは昇圧コンバータが最大相間電圧(Vx)を出力する間だけ小振幅相間電圧(Vy)を出力するためのPWMスイッチングを行う。PWMスイッチングされるレグの上アームスイッチング素子のターンオン期間は最大相間電圧(Vx)を出力する昇圧コンバータの出力期間よりも短い。したがって、PWMスイッチングされるレグは高電位バスラインの低下時に出力しない。その結果として、小振幅相間電圧(Vy)の電圧リップルは低減される。
【0025】
好適態様によれば、一つのPWMスイッチングされるレグの上アームスイッチング素子はコンバータの下アームスイッチのターンオンとオーバーラップする期間にターンオフされる。その結果、電圧ノイズを低減することができる。好適態様によれば、一つのPWMスイッチングされるレグの上アームスイッチング素子はコンバータの下アームスイッチのターンオフとオーバーラップする期間にターンオンされる。その結果、電圧ノイズを低減することができる。
【0026】
好適態様によれば、コンバータ及びインバータは導体板からなる高電位バスライン (100)を通じて接続される。インバータ及びコンバータの各上アームスイッチング素子及び各上アームフリーホィーリングダイオードはこの導体板に固定される。コンバータの上アームスイッチング素子及びフリーホィーリングダイオードはインバータの各上アームスイッチング素子及び各フリーホィーリングダイオードに囲まれている。その結果、インバータのスイッチングにより生じる高電位バスライン(100)のサージノイズは低減される。なぜなら、短い高電位バスラインのインダクタンスが低減されるからである。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】図1は、SPSM法で運転される公知のグリッド接続三相インバータのブロック回路図である。
【図2】図2は、三相可変速モータを駆動するモーター駆動装置を示すブロック回路図である。
【図3】図3は、三相インバータの6つのスイッチング状態を示す模式接続図である。
【図4】図4は、三相インバータの6つのゲート電圧パターンを示す図である。
【図5】図5は、三相インバータの一つのPWMキャリヤ期間を示すタイミングチャートである。
【図6】図6は、三相インバータによってモーターに印加される三相電圧を示すタイミングチャートである。
【図7】図7は、コンバータによりインバータに印加される最大相間電圧を示すタイミングチャートである。
【図8】図8は、三相インバーターコンバータを制御するコントローラのブロック図である。
【図9】図9は、最大相間電圧及び小振幅相間電圧のベクトル図である。
【図10】図10は、コンバータが最大相間電圧を出力し、かつ、三相インバータのスイッチングされる相レグがターンオフされる状態を示す回路図である。
【図11】図11は、コンバータが最大相間電圧を出力し、かつ、三相インバータのスイッチングされる相レグがターンオンされる状態を示す回路図である。
【図12】図12は、コンバータが最大相間電圧を出力せず、かつ、三相インバータのスイッチングされる相レグがターンオフされる状態を示す回路図である。
【図13】図13は、コンバータ及びスイッチングされるレグのタイミングチャートである。
【図14】図14は、コンバータ及びスイッチングされるレグのタイミングチャートである。
【図15】図15は、コンバータ及びスイッチングされるレグのもう一つのタイミングチャートである。
【図16】図16は、PWM法の一例としての誤差追従PWM法を示すタイミングチャートである。
【図17】図17は、誤差追従PWM法を実施する回路図である。
【図18】図18は、可変速モータの運転制御を示すフローチャートである。
【図19】図19は、コンバータからの各種波形パターンを示すタイミングチャートである。
【図20】図20は、モーター駆動装置の各スイッチと各フリーホィーリングダイオードング素子の配列を示す平面図である。
【図21】図21は、図20に示されるモーター駆動装置の模式断面図である。
【図22】図22は、図20に示されるモーター駆動装置の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
この実施例のSPSM駆動式モーター駆動装置が図面を参照して説明される。図1はSPSM駆動式モーター駆動装置の回路図である。このモーター駆動装置は三相インバータ4、平滑キャパシタ5、チョッパ型昇圧DC/DCコンバータ8、コントローラ9、三相平滑キャパシタ回路10を有している。バッテリ7の直流電圧はコンバータ8に印加される。インバータ4は車両駆動用の三相同期モータ6に三相電圧を出力する。モータ6は星形結線されたU相巻線6U、V相巻線6V、W相巻線6Wを有する。三相平滑キャパシタ回路10の各キャパシタはモータ6の三相巻線の各端子に個別に接続されている。
【0029】
三相インバータ4はU相レグ1、V相レグ2、W相レグ3をもつ。各レグはハーフブリッジにより構成されている。U相レグ1は直列接続された上アームスイッチ11と下アームスイッチ12とをもつ。V相レグ2は直列接続された上アームスイッチ21と下アームスイッチ22とをもつ。W相レグ3は直列接続された上アームスイッチ31と下アームスイッチ32とをもつ。各スイッチは互いに並列接続されたトランジスタとフリーホィーリングダイオードからなる。三相インバータ4は三相交流モータ6を駆動する。
【0030】
昇圧型DC/DCコンバータ8はバッテリ電圧Vbを、周期変動するDCリンク電圧Vxに変更する。コンバータ8は、高電位バスライン100及び低電位バスライン101を通じて三相インバータ4にDCリンク電圧Vxを出力する。コンバータ8はインバータ4に印加されるDCリンク電圧Vxの振幅を周期的に変更する。
【0031】
インバータ4のSPSM動作が図3を参照して説明される。図3はステージA-Fをもつ。電気角360度は、6つのステージA-Fに分割される。それぞれ電気角60度をもつステージA-Fは検出されたロータ角度に応じて順番に選択される。ステージA-Fのそれぞれにおいて、2つのハーフブリッジの4つのスイッチは一定の状態を保持する。ステージA-Fのそれぞれにおいて、一つのハーフブリッジの2つのスイッチだけが正弦波の小振幅相間電圧(Vy)を形成するためにPWMスイッチングされる。以下、PWMスイッチングされるハーフブリッジはPWMスイッチレグと呼ばれる。他の2つのハーフブリッジは固定レグと呼ばれる。
【0032】
V相レグ2はステージA及びDにおいてPWMスイッチレグである。W相レグ3はステージB及びEにおいてPWMスイッチレグである。U相レグ1はステージC及びFにおいてPWMスイッチレグである。PWMスイッチレグの上アームスイッチ及び下アームスイッチはPWMスイッチングされる。
【0033】
ステージAにおいて、U相レグ1の上アームスイッチ11及びW相レグ3の下アームスイッチ32がターンオンされる。その結果、最大相間電圧(Vx)がU相巻線6UとW相巻線6Wとに印加される。ステージAにおいて、U相レグ1とW相レグ3は固定レグである。
【0034】
ステージA-Fはロータ角センサにより検出されたロータ角に応じて決定される。ロータ角の検出に換えて、ステージA-Fは相巻線6U、6V及び6Wの誘起相電圧により決定されることができる。誘起されるU相電圧が最大なら、ステージはA又はDである。誘起されるV相電圧が最大なら、ステージはB又はEである。誘起されるW相電圧が最大なら、ステージはC又はFである。
【0035】
図3において、U相レグ1はU相電圧Vuを出力する。 V相レグ2はV相電圧Vvを出力する。W相レグ3はW相電圧Vwを出力する。3つの相電圧Vu、Vv及びVwの間から選択される2つの相電圧間の電圧は、相間電圧と呼ばれる。最大振幅をもつ相間電圧は、最大相間電圧(Vx)と呼ばれる。
【0036】
図4はステージAーFにおける三相インバータ4のスイッチ11ー12、21ー22及び31ー32の状態を示す。ゲート電圧UUはスイッチ11に印加される。ゲート電圧ULはスイッチ12に印加される。ゲート電圧VUはスイッチ21に印加される。ゲート電圧VLはスイッチ22に印加される。ゲート電圧WUはスイッチ31に印加される。ゲート電圧WLはスイッチ32に印加される。インバータ4の各スイッチは、60度期間だけPWMスイッチングされる。次の120度期間において、各スイッチは、ターンオフされて冷却される。したがって、各スイッチの温度上昇は抑制される。
【0037】
図5はステージAの一つのPWMキャリヤ期間TPにおけるインバータ4の6つのスイッチに印加されるゲート電圧の波形を示す。PWMキャリヤ期間TPにおいて、スイッチ11、32がターンオンされ、スイッチ12、31がターンオフされる。 V相レグのスイッチ21、22はPWMスイッチングされる。
【0038】
PWMスイッチレグの2つのスイッチの一つは60度期間において0%から100%まで連続的に変化するデユーティ比を有する。PWMスイッチレグの2つのスイッチの他の一つは60度期間において100%から0%まで連続的に変化するデユーティ比を有する。
【0039】
コンバータ8のSPSM動作が図2、図6を参照して説明される。図6はモータ6に印加される三相正弦波電圧を示す。コンバータ8は最大相間電圧(Vx)であるDCリンク電圧Vxをインバータ4に出力する。
【0040】
チョッパ型昇圧コンバータ8の昇圧動作自体は良く知られている。下アームスイッチ8Fのターンオンにより、リアクトル8Cは磁気エネルギーを蓄積する。下アームスイッチ8Fのターンオフにより、昇圧電圧がリアクトル8Cはスイッチ8Eを通じて高電位バスライン100に印加される。
【0041】
平滑キャパシタ5は高電位バスライン100とバッテリ7の正極端とを接続している。上アームスイッチ11、21及び31がターンオフする時に、平滑キャパシタ5はサージエネルギーを吸収する。更に、平滑キャパシタ5は高電位バスライン100の電圧リップルを吸収する。ただし、大容量の平滑キャパシタ5は最大相間電圧(Vx)の変化を規制する。
【0042】
コントローラ9はモータトルク指令値とロータ角検出値に基づいて正弦波の最大相間電圧(Vx)を出力するために、コンバータ8のデユーティ比Dxを算出する。コントローラ9はPWMフイードバック制御法でコンバータ8を制御することができる。更に、コントローラ9はモータトルク指令値とロータ角検出値に基づいて正弦波の小振幅相間電圧(Vy)を出力するために、インバータ4のデユーティ比Dyを算出する。最大相間電圧(Vx)及び小振幅相間電圧(Vy)が図6に示される。
【0043】
図6に示されるように、最大相間電圧(Vx)は電気角60度毎に順番に変更される。30度から90度までのステージAでは最大相間電圧(Vx)は相間電圧Vu-Vwである。90度から150度までのステージBでは最大相間電圧(Vx)は相間電圧Vu-Vvである。150度から210度までのステージCでは最大相間電圧(Vx)は相間電圧Vw-Vvである。
【0044】
210度から270度までのステージDでは最大相間電圧(Vx)は相間電圧Vw-Vuである。270度から330度までのステージEでは最大相間電圧(Vx)は相間電圧Vv-Vuである。330度から30度までのステージFでは最大相間電圧(Vx)は相間電圧Vv-Vwである。
【0045】
最大相間電圧(Vx)は図7に示される波形をもつ。最大相間電圧(Vx)の波形は三相電圧の全波整流波形に等しい。一相電圧の最大値を1とすれば、最大相間電圧(Vx)の値は、1.5-1.73になる。
【0046】
従って、コンバータ8の昇圧比はコンバータ及びインバータをもつ既存のモーター駆動装置の昇圧比の75-86.5%となる。その結果、コンバータ8の上アームスイッチ8Eは既存のモーター駆動装置よりも高いデユーティ比をもつことができる。たとえば、バッテリ電圧Vbが250Vである時、既存のモーター駆動装置のコンバータは700Vを出力するとする。昇圧比は2.8である。一方、この実施例のモーター駆動装置のコンバータは525-605Vを出力すればよい。両方のモーター駆動装置の最大相間電圧(Vx)は等しい。したがって、両方のモーター駆動装置は最大相間電圧(Vx)は等しい。したがって、両モーター駆動装置のコンバータは等しい出力電流値をもつ。
【0047】
各ステージA-Fにおいて、最大相間電圧(Vx)は部分正弦波波形をもつ。その結果、図6に示されるように、一相だけが正弦波波形を出力するためにPWMスイッチングされる。小振幅相間電圧(Vy)の値は、最大相間電圧(Vx)の値の0%から100%へ、そして100%から0%へ交互に変更される。
【0048】
コントローラ9のメモリは、小振幅相間電圧(Vy)を決定するために、相対デユーティ比Dzとロータ回転角との間の関係を保持するマップを有している。相対デユーティ比DzはDy/Dxに等しい。相対デユーティ比Dzは小振幅相間電圧(Vy)と最大相間電圧(Vx)との間の相対的な振幅比率を示す。PWMレグを構成するハーフブリッジはこのPWMデユーティ比DzでPWMスイッチングされる。
【0049】
コントローラ9は検出したロータ角度θに基づいてマップから相対デユーティ比Dzを読みとる。マップは各ロータ角度毎に相対デユーティ比Dzを記憶している。PWMレグの上アームスイッチ11、21及び31は相対デユーティ比DzでPWMスイッチングされる。PWMレグの下アームスイッチ12、22及び32は相対デユーティ比1-DzでPWMスイッチングされる。これにより、三相インバータ4の一相レグのPWMスイッチングのみにより、三相電圧Vu、 Vv、Vwが決定されることになる。
【0050】
図8はコントローラ9のブロック図の一部を示す。コントローラ9はステージ決定回路10A、 波形発生回路10B、10D及びPWM信号発生回路10C及び10Eを有する。ステージ決定回路10Aはロータ角θに基づいて現在のステージを決定する。メモリの中の図4に示されるマップはこの決定に用いられる。波形発生回路10Bはロータ角θに基づいてPWM相レグのための相対デユーティ比DzをもつPWM信号を発生する。PWM信号発生回路10Cは決定されたステージ、決定されたPWM信号に基づいて各60度期間毎にPWMゲート電圧UU, UL, VU, VL, WU 及びWLを発生する。
【0051】
波形発生回路10DはDCDCコンバータ8Bのデユーティ比Dxを発生する。最大相間電圧(Vx)の波形は図4に示されるように変化する。最大相間電圧(Vx)は検出されたロータ角θ及びトルク指令値Tiに基づいて決定される。PWM信号発生回路10EはDCDCコンバータ8BのためにPWMゲート電圧を発生する。
【0052】
電圧Vx、Vyが図9にベクトル表示されている。
Vu = Vm sin ωt
Vv = Vm (sin ωt-2π/3)
Vw = Vm (sin ωt+2π/3)
Vx = Vu - Vw = 1.73 * Vm * sin(ωt-2π/3) = 1.73 * Vm * Dx
Vy = Vv - Vw = 1.73 * Vm * sin(ωt-π/2) = 1.73 * Vm * Dy
最大相間電圧(Vx)のPWMデユーティ比Dxは正弦波関数sin(ωt-2π/3)で示される。小振幅相間電圧(Vy)のPWMデユーティ比Dyは正弦波関数sin(ωt-π/2)で示される。したがって、相対デユーティ比Dz= Dy/Dxは、次の式を算出することにより得られる。
Dz = sin(ωt-π/2) / sin(ωt-2π/3)
【0053】
予め算出されたデユーティ比Dx及びDzはメモリのマップに記載されている。従って、デユーティ比Dx、Dyはロータ角θ=ωtを用いることによりマップから取り出される。最大相間電圧(Vx)の指令値は1.73 * Vmである。この指令値はモータトルク指令値に基づいて算出される。算出された最大相間電圧(Vx)の指令値は検出されたDCリンク電圧Vxと比較される。
【0054】
コンバータ8のデユーティ比は比較結果によりフィードバック制御されることができる。更に、PWMレグの上アームスイッチ11、21、31は相対デユーティ比DzでPWMスイッチングされる。PWMレグの下アームスイッチ12、22、32は相対デユーティ比 1-DzでPWMスイッチングされる。
【0055】
このSPSMモーター駆動装置の一例が図10-図13を参照して説明される。図10-図12はそれぞれ三相モータを駆動するモーター駆動装置の回路図を示す。装置は三相インバータ4及びコンバータ8を有する。三相インバータ4及び昇圧コンバータ8は図2に示されるインバータ4及びコンバータ8と同じである。
【0056】
コンバータ8は直列接続された上アームスイッチ8E及び下アームスイッチ8Fをもつ。スイッチ8E及び8Fの接続点はバッテリ8Aの正極端にリアクトル8Cを通じて接続されている。平滑キャパシタ8Dは2つのDCリンクライン100、101の間を接続する。良く知られたチョッパ型コンバータ8は双方向昇圧/降圧コンバータであり、昇圧電圧Vxを三相インバータ4に出力し、降圧電圧Vbをバッテリ8Aに出力する。
【0057】
上記モーター駆動装置の動作が以下に説明される。図10ー図12はステージAにおける動作を示す。U相レグ1及びW相レグ3は固定レグである。V相レグ2はPWMレグである。図10において、スイッチ8E、11、 22及び32はターンオンされる。昇圧電圧Vxはスイッチ11に電流 Iを供給する。電流IはU相電流Iuに相当する。スイッチ22はフリーホィーリング電流であるV相電流を流す。図11において、スイッチ8E、11、 21及び32はターンオンされる。昇圧電圧Vxはスイッチ11及び21に電流 Iを供給する。従って、電流IはU相電流IuとV相電流Ivとの和に相当する。
【0058】
図12において、スイッチ8F、11、 22及び32はターンオンされる。リアクトル8Cは磁気エネルギーを蓄積する。平滑キャパシタ8DはU相電流Iuを流す。けれども、V相上アームスイッチ21はスイッチ8Fがターンオンされる時、ターンオフされる。平滑キャパシタ8DはV相電流Ivを流す必要がない。したがって、平滑キャパシタ8Dの電圧降下は、低減される。
【0059】
図13はインバータ4のPWMスイッチレグ及びコンバータ8の動作を示すタイミングチャートを示す。時点t3-t2間のコンバータ8の出力期間における時点t1-t2の期間に、PWMスイッチレグの上アームスイッチ21はターンオンされる。したがって、平滑キャパシタ8Dは小さくなる。更に、PWMスイッチレグの上アームスイッチ21はコンバータ8の上アームスイッチ8Eがターンオフされると同時にターンオフされる。これにより、電圧リップルを低減することができる。
【0060】
SPSMモーター駆動装置の変形態様が、図14を参照して説明される。この態様では、PWMスイッチレグの上アームスイッチ21は上アームスイッチ8Eがターンオンされる時にターンオンされる。したがって、PWMスイッチレグの上アームスイッチ21のターンオン期間は上アームスイッチ8Eのターンオン期間と部分的にオーバーラップする。図14において、PWMスイッチレグの上アームスイッチ21のターンオン期間は上アームスイッチ8Eの奇数番目のターンオン期間にオーバーラップしている。もしも、PWMスイッチレグの上アームスイッチ21のデユーティ比が小さければ、ゲートパルスP3’は更にキャンセルされる。 PWMスイッチレグの上アームスイッチ21がより大きいデユーティ比をもつならば、偶数番目のゲートパルス電圧CUとオーバーラップするゲートパルス電圧VUが更に追加される。
【0061】
SPSMモーター駆動装置の変形態様が、図15を参照して説明される。図15は、インバータ及びコンバータのゲート電圧の間の相対的な時間関係を示すタイミングチャートである。ゲート電圧CUは上アームスイッチ8Eに印加される。ゲート電圧CLは下アームスイッチ8Fに印加される。最大相間電圧(Vx)はゲート電圧CLにより変更される。上アームスイッチ21は2つのゲート電圧VU1、VU2の一つを選択する。
【0062】
ゲート電圧VU1はゲート電圧CLの降下タイミングと本質的に同じタイミングで上昇する。その結果、ライン100の電圧リップルが低減される。なぜなら、下アームスイッチ8Fのターンオフによるライン100の増加電圧Vxは上アームスイッチ21のターンオンにより低減されるからである。ゲート電圧VU2はゲート電圧CLの上昇タイミングと本質的に同じタイミングで降下する。その結果、ライン100の電圧リップルが低減される。なぜなら、下アームスイッチ8Fのターンオンによるライン100の減少電圧Vxは、上アームスイッチ21のターンオフにより低減されるからである。
【0063】
結局、この変形態様では、インバータ4の上アームスイッチ11、21、31は下アームスイッチ8Fのターンオフタイミングと同時的にターンオンされる。他の変形態様では、インバータ4の上アームスイッチ11、21、31は下アームスイッチ8Fのターンオンタイミングと同時的にターンオフされる。その結果として、ライン100のノイズ及びインバータ4の上アームスイッチのスイッチング損失は低減される。
【0064】
SPSMモーター駆動装置の他の変形態様が図16-図17を参照して説明される。図16は、誤差追従式PWM法の原理を示す。それはヒステリシスバンド型PWM法とも呼ばれる。誤差追従式PWM法は最大相間電圧(Vx)及び小振幅相間電圧(Vy)を形成するために、定周波PWMキャリヤ信号の伝統的PWM法の代わりに採用されることができる。
【0065】
図16において、破線は、最大相間電圧(Vx)の指令値を示す。2本の実線Vx+ΔV及びVx-ΔVは、破線Vxの両側に形成される。DCDCコンバータ8は2つの電圧Vx+ΔVとVx-ΔVとの範囲内に最大相間電圧(Vx)を出力する。
【0066】
図17は誤差追従式PWM法のコンパレータ回路を示す。最大相間電圧(Vx)の検出値はコンパレータ91、92によりVx+ΔV及びVx-ΔVと比較される。ANDゲート93は図10に示される上アームスイッチ8Eを制御する。同様に、小振幅相間電圧(Vy)の検出値Vydはコンパレータ94、95によりVy+ΔV及びVy-ΔVと比較される。ANDゲート96は図10に示されるPWM相レグ2の上アームスイッチ21を制御する。
【0067】
SPSMモーター駆動装置の他の変形態様が図18-図19を参照して説明される。昇圧コンバータ8はバッテリ電圧Vbより大きい最大相間電圧(Vx)を出力する。しかしながら、昇圧コンバータ8はバッテリ電圧Vbより小さい最大相間電圧(Vx)を出力できない。これは、モータトルクもしくは回転速度が所定値より低い場合にSPSM法がモーター駆動装置に適用できないことを意味する。
【0068】
言い換えれば、最大相間電圧(Vx)はモータトルク指令値Trと回転速度ωとの関数値である。最大相間電圧(Vx)はモータトルク指令値Tr及び回転速度ωに比例する。結局、SPSM法は、算出された最大相間電圧(Vx)が所定値より小さい時、運転できない。このため、しばしば低速にて小トルクを出力するたとえばEVモータのごときモーター駆動装置はSPSM法で運転されることができない。この解決策が以下に説明される。
【0069】
図18はSPSMモーター駆動装置の制御動作を示すフローチャートを示す。図18において、トルク指令値Tr、ロータ角θ及び回転速度ωがステップS100にて検出される。次に、最大相間電圧(Vx)がトルク指令値Tr、ロータ角θ及び回転速度ωに基づいてステップS102に基づいて算出される。
【0070】
コントローラ9は最大相間電圧(Vx)、トルク指令値Tr、ロータ角θ及び回転速度ωの間の関係を示す表を有する。更に、ステップS102にて、最大相間電圧(Vx)がバッテリ電圧Vbより大きいかどうかが判定される。最大相間電圧(Vx)がバッテリ電圧Vbよりも大きくない時、複数相レグスイッチングモードが選択される。複数相レグスイッチングモードにおいて、2レグ又は3レグがPWMスイッチングされる伝統的なPWMスイッチング法がS104にて実行される。
【0071】
ステップS102にて、最大相間電圧(Vx)がバッテリ電圧Vbよりも大きい時、単レグスイッチングモードが選択される。単レグスイッチングモードの制御がステップS106、S108にて実行される。ステップS106にて、図6に示されるステージA-Fの一つが検出されたロータ角θに基づいて選択される。コントローラ9はステージA-Fとロータ角θとの間の関係を表す表を有する。
【0072】
次に、ステップS108にて、ゲート信号S1及びS2がトルク指令値Tr、ロータ角θ及び回転速度ωに基づいて算出される。ゲート信号S1はインバータ4のPWMレグのデユーティ比を示す。ゲート信号S2はコンバータ8のデユーティ比を示す。コントローラは、信号S1及びS2とトルク指令値Tr、ロータ角θ及び回転速度ωとの関係を示す表を有する。
【0073】
インバータ4のPWMレグのデユーティ比が更に説明される。PWMレグは小振幅相間電圧(Vy)を出力する。小振幅相間電圧(Vy)を出力するために、PWMレグの相対デユーティ比Dzが、検出されたロータ角θとロータ角θ及び相対デユーティ比Dzの関係とに基づいて算出される。相対デユーティ比Dzは値Vy と値Vxとの比率に比例する。PWM相の決定された相対デユーティ比DzはPWM相の上アームスイッチに与えられる。決定されたPWM相の相対デユーティ比1-DzはPWM相の下アームスイッチに与えられる。PWM相の下アームスイッチはPWM相の上アームスイッチと反対の動作を行う。
【0074】
図19は最大相間電圧(Vx)のいくつかの波形を示す。図19において、最大相間電圧Vx1, Vx2, Vx3, Vx4, Vx5 及びVx6は互いに異なる振幅をもつ。最大相間電圧のこれらの波形は、本質的に図7に示される最大相間電圧の波形に本質的に等しい。しかしながら、最大相間電圧Vx1, Vx2, Vx3, Vx4, Vx5及びVx6はモータトルク指令値が互いに異なるため、互いに異なる。期間Tyは電圧Vx1がバッテリ電圧V1より高い期間を示す。期間Txは電圧Vx1がバッテリ電圧V1より低い期間を示す。SPSM法は期間Tyにて実行される。伝統的なPWM法は、期間Txにて実行される。
【0075】
たとえば、最大相間電圧(Vx)がバッテリ電圧(230V)より高い値(231V-700V)である時にSPSM法が実施される。その結果、この態様のモーター駆動装置はたとえトルク及び回転速度が小さくてもモータを駆動することができる。
【0076】
SPSM法の問題の一つはコンバータ8とインバータ4とを接続する高電位バスライン100の電圧リップルである。SPSM法は平滑キャパシタ5が伝統的な平滑キャパシタよりも小さいので、高電位バスライン100の大きな電圧リップルをもつ。図20ー22は小さい電磁波放射をもつモーター駆動装置の構造を示す。図20はモーター駆動装置の平面図である。図21は図20に示される装置の模式断面図である。図22は図20に示される装置の垂直断面図である。
【0077】
図21ではインバータ4及びコンバータ8の8つのスイッチ11、21、31、12、22、32、8E及び8Fと、8つのフリーホィーリングダイオードFWDが銅板100、101、100U、100V、100W及び100Iに接続されている。交流ラインである銅板100U、100V、100Wはインバータ4とモータ6とを接続する。高電位バスラインである銅板100はインバータ4とコンバータ8とを接続する。低電位バスラインである銅板101はインバータ4及びコンバータ8をバッテリ7に接続する。
【0078】
上アームスイッチ11、21、31及び8Eと4つのフリーホィーリングダイオードFWDは銅板100上に配列されている。インバータ4の3組の上アームスイッチ及びフリーホィーリングダイオードがコンバータ8の上アームスイッチ8E及びフリーホィーリングダイオードFWDの周りに固定されていることが重要である。その結果、コンバータ8とインバータ4との間のライン100のインダクタンスは低減される。
【0079】
図20及び図22は水冷装置を示す。交流ラインである銅板100Uはバス板100UA及び100UBにより構成されている。交流ラインである銅板100Vはバス板100VA及び100VBにより構成されている。交流ラインである銅板100Wはバス板100WA及び100WBにより構成されている。
【0080】
図22において、上アームスイッチアセンブリ600及び下アームスイッチアセンブリ700は冷却管300、400及び500でサンドイッチされている。冷却液C.L.は冷却管300、400及び500内を流れる。絶縁シート200は冷却管300、400及び500とシリコンチップとの間に配置されている。シリコンチップはスイッチチップとフリーホィーリングダイオードチップとからなる。その結果、銅板100が他の銅板と冷却管とによりサンドイッチされるので、銅板100の放射ノイズが減少される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
三相電圧を三相モータに印加する電圧形の三相インバータと、
電力供給装置から直流電圧を受け取って昇圧電圧を三相インバータに印加する昇圧型DC/DCコンバータと、
前記コンバータ及び前記インバーターを制御するコントローラとを備える三相可変速モーター駆動用モータ駆動装置において、
モータは、星形結線の3相巻線を有し、
コントローラは、コンバータとインバーターを制御するための単レグスイッチングモードを有し、
インバータは、単レグスイッチングモードにおいて、回転角に応じて切り替えられる1個のスイッチレグと、2個の固定レグとを有し、
コンバータは、単レグスイッチングモードにおいて、スイッチレグに最大相間電圧(Vx)に等しい大きさの昇圧電圧を出力し、
モータに印加される最大相間電圧(Vx)は、単レグスイッチングモードにおいて、他の二相の相間電圧と比較して最大の電圧値を有し、
2個の固定レグの1つの上アームスイッチング素子及び1つの下アームスイッチング素子は、単レグスイッチングモードにおいて、最大相間電圧(Vx)を出力し、
1個のスイッチレグは、単レグスイッチングモードにおいて、PWM制御されて最大相間電圧(Vx)よりも小さい小振幅相間電圧(Vy)を出力することを特徴とする三相可変速モータ駆動用モーター駆動装置。
【請求項2】
三相可変速モーターは、ロータに固定された永久磁石を有し、
コンバータは、 単レグスイッチングモードにおいて、モータの誘起電圧よりも大きい値の最大相間電圧(Vx)を印加する請求項1記載の三相可変速モーター駆動用モータ駆動装置。
【請求項3】
コントローラは、単レグスイッチングモードにおいて、受け取ったトルク指令値 (Tr) と検出したモータ回転角(ω) とに基づいて、コンバータのPWM デユーティ比を変更する請求項1記載の三相可変速モーター駆動用モータ駆動装置。
【請求項4】
コントローラは、最大相間電圧(Vx)と回転角 (θ)とトルク指令値(Tr)と回転速度(ω)との間の関係表を有し、
単レグスイッチングモードにおいて、回転角 (θ)とトルク指令値 (Tr) とモータ回転角(ω) とに基づいて最大相間電圧(Vx)を決定する請求項3記載の三相可変速モーター駆動用モータ駆動装置。
【請求項5】
コンバータは、互いに直列接続された上アームスイッチング素子及び下アームスイッチング素子をもつハーフブリッジとリアクトルとを有し、
コンバータの上アームスイッチング素子及び下アームスイッチング素子の各一端は、 リアクトルを通じて電力供給装置に接続され、
コンバータの上アームスイッチング素子の他端は、高電位バスラインを通じてインバータ に接続され、
コンバータの下アームスイッチング素子の他端は、低電位バスラインを通じてインバータ及び電力供給装置に接続される請求項1記載の三相可変速モーター駆動用モータ駆動装置。
【請求項6】
更に、コントローラは、コンバータ及びインバータを制御するための複数相レグスイッチングモードを有し、
インバータの複数レグは、複数相レグスイッチングモードにおいてPWMスイッチングされ、
コントローラは、最大相間電圧(Vx)が電力供給装置の電圧よりも大きい時に単レグスイッチングモードを選択し、最大相間電圧(Vx)が電力供給装置の電圧よりも小さいときに複数相レグスイッチングモードを選択する請求項5記載の三相可変速モータ駆動用モーター駆動装置。
【請求項7】
1個のスイッチレグの上アームスイッチング素子は、単レグスイッチングモードにおいて、コンバータが昇圧電圧を出力しない期間内にターンオフされ、かつ、コンバータが昇圧電圧を出力する期間内にターンオンされる請求項5記載の三相可変速モーター駆動用モータ駆動装置。
【請求項8】
単レグスイッチングモードにおいて、1個のスイッチレグの上アームスイッチング素子のターンオフ動作は、コンバータの下アームスイッチング素子のターンオン動作とオーバーラップする請求項5記載の三相可変速モータ駆動用モータ駆動装置。
【請求項9】
単レグスイッチングモードにおいて、1個のスイッチレグの上アームスイッチング素子のターンオン動作は、コンバータの下アームスイッチング素子のターンオフ動作とオーバーラップする請求項5記載の三相可変速モータ駆動用モータ駆動装置。
【請求項10】
コンバータ及びインバータは、導体板からなる高電位バスライン100を通じて接続され、
インバータ及びコンバータの上アームスイッチング素子及び上アーム環流ダイオードは、前記導体板に固定され、
コンバータの上アームスイッチング素子及び上アーム環流ダイオードは、インバータの上アームスイッチング素子及び上アーム環流ダイオードに囲まれている請求項1記載の三相可変速モータ駆動用モーター駆動装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【公開番号】特開2011−166924(P2011−166924A)
【公開日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2010−26214(P2010−26214)
【出願日】平成22年2月9日(2010.2.9)
【出願人】(507348676)有限会社 スリ−アイ (35)
【Fターム(参考)】