説明

上部ユニットケースの開閉装置

【課題】上部ユニットケース3を押下するときのみそのケース3が閉止する方向に移動し、開き回動するとき軽快に移動できるコンパクトな開閉装置を提供する。
【解決手段】下部ユニットケース2と上部ユニットケース3とを一側のヒンジ部4にて回動可能に連結し、下部ユニットケース2には直線且つ水平状の下部案内部材6をヒンジ部4から開放端部方向に延びるように備え、上部ユニットケース3には下向き凸湾曲状の上部案内部材7をヒンジ部4側から開放端部側に延びるように備える。下部案内部材6に外れ不能且つ転動可能に嵌めた第2回転体13と、上部案内部材7に外れ不能且つ転動可能に嵌めた第1回転体12とを同軸上に備えた開閉連結体10は、下部案内部材6と上部案内部材7とに移動可能に連結されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、下部ユニットケースに対して、開閉回動可能に装着される上部ユニットケースの開閉装置に係り、より詳しくはその上部ユニットケースの閉止方向への動作を緩慢にできるようにした上部ユニットケースの開閉装置の構成に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、プリンタ、ファクシミリ、複写機等の画像記録装置において、給紙部、記録部等を搭載した下部ユニットケースに対して、原稿読取部を搭載した上部ユニットケースの一側をヒンジを介して開閉回動可能に装着し、メンテナンス時や紙詰まり処理などに際して上部ユニットケースを一旦大きく開いた状態から閉じるとき、閉じ終わり区間で、上部ユニットケースの回動に制動を掛ける構成が種々提案されている。
【0003】
例えば、特許文献1に記載の技術では、上部ユニットケースと下部ユニットケースとをガススプリングにて連結すると共に、上部ユニットケースの下面自由端側に下向きにコイルスプリングを配置し、上部ユニットケースの閉じ終わり区間でコイルスプリングの一端が下部ユニットケースにおける受け部で支持されて、上部ユニットケースが急激に閉じるのを防止する構成が開示されている。
【0004】
他方、特許文献2では、上部ユニットケース(カバー)の側面に下向きに突設させた円弧状のガイド部材(案内部材)には、円弧状のガイド溝が形成され、下部ユニットケース(筐体)の一側に設けたボルト軸をガイド溝に挿通すると共に、このボルトの頭とバネ材にて案内部材を挟み付けすることにより、上部ユニットケースの任意の回動角度で位置保持できるように構成し、さらに、上部ユニットケースが下部ユニットケースに対して閉止位置では、下部ユニットケースに設けたトーションスプリングにて上部ユニットケースを上向き付勢する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平11-38714号公報(図1及び図2参照)
【特許文献2】実公平1−29815号公報(第3図及び第6図参照)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献 1及び2の開閉装置では、部品点数が多く、且つガススプリングなどの寸法の大きい部品を必要となる。上部ユニットケースを下部ユニットケースに対して閉じるときの速度を緩慢にするために、ガススプリングに代えて直線状のオイルダンパーを設けたり、ヒンジ部にロータリオイルダンパーを付加することも考えられるが、このようにすると、開閉装置の構成がますます複雑になったり、下部ユニットケース等の製品全体に占める開閉装置の割合が大きくなり、製品が大型化するという問題があった。
【0007】
本発明は、開閉装置の構成部品の簡素化及び小型化を目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記目的を達成するため、請求項1に記載の発明の上部ユニットケースの開閉装置は、下部ユニットケースと上部ユニットケースとを一側に設けたヒンジ部を介して上下開閉回動可能に装着し、前記下部ユニットケースには下部案内部材を前記ヒンジ部側から開放端部側に延びるように備え、前記上部ユニットケースには上部案内部材を、前記ヒンジ部側から開放端部側に延びるように備え、前記下部案内部材と前記上部案内部材とは、その一方が凸湾曲状に形成され、他方が直線状且つ水平状に形成され、前記下部案内部材と上部案内部材とに移動可能に連結される開閉連結体を有し、前記開閉連結体には、第1回転体が前記上部案内部材に沿って移動可能に設けられ、第2回転体が前記下部案内部材に沿って移動可能に設けられ、前記第1回転体と前記第2回転体とは水平な同軸にそれぞれ回転可能に設けられ、前記上部ユニットケースを前記下部ユニットケースに対して開放する動作につれて、前記開閉連結体が前記上下両部材に沿って前記開放端部側から前記ヒンジ部側に順次移動し、前記上部ユニットケースを前記下部ユニットケースに対して閉止する動作につれて、前記開閉連結体が前記上下両部材に沿って前記ヒンジ部側から前記開放端部側に順次移動するように構成されているものである。
【0009】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の上部ユニットケースの開閉装置において、前記開閉連結体が前記上下部案内部材のいずれの位置にあるときでも、前記上部ユニットケースの自重及びこの上部ユニットケースに付加される押圧力の合力の前記第1回転体位置での水平方向成分の大きさは、前記押圧力の鉛直成分と前記開閉連結体の自重による水平方向の摩擦力の大きさと、前記開閉連結体に作用する抵抗力の水平成分の大きさとの和より大きいかまたは等しくなるように設定され、且つ前記押圧力を解除すると、前記上部ユニットケースの開閉姿勢が保持されるように構成したものである。
【0010】
請求項3に記載の発明は、請求項1または2に記載の上部ユニットケースの開閉装置において、前記開閉連結体には、前記第1回転体と前記第2回転体との間に摩擦部材が配置され、前記上部ユニットケースを前記下部ユニットケースに対して閉止する動作につれて、前記第1回転体が前記上部案内部材における上側案内面に当接して転がり、且つ前記第2回転体が前記下部案内部材における下側案内面に当接して転がることにより、前記第1回転体と前記第2回転体とは互いに反対方向に回転し、且つ前記第1回転体と前記第2回転体とは前記摩擦部材にそれぞれ当接して抵抗力を受けるように構成されているものである。
【0011】
請求項4に記載の発明は、請求項3に記載の上部ユニットケースの開閉装置において、前記第1及び第2回転体はそれぞれ同軸上の2つの大径コロ部が小径コロ部を挟んで隔てられて配置され、前記上部案内部材における下側案内面に有する突条部と前記下部案内部材における上側案内面に有する突条部とが前記各小径コロ部と対向するように形成され、前記上部ユニットケースを前記下部ユニットケースに対して閉止する動作時には、前記第1回転体における前記2つの大径コロ部が前記上部案内部材における上側案内面に押圧されながら転がり、且つ前記第2回転体における前記2つの大径コロ部が前記下部案内部材における下側案内面に押圧されながら転がるように構成されているものである。
【0012】
請求項5に記載の発明は、請求項4に記載の上部ユニットケースの開閉装置において、前記各小径コロ部と前記上部案内部材における下側案内面に有する突条部と前記下部案内部材における上側案内面に有する突条部とは摩擦係数の小さい部材であり、前記上部ユニットケースを前記下部ユニットケースに対して開放する動作時には、前記第1回転体における前記小径コロ部に前記上部案内部材における下側案内面に有する突条部に摺接されながら転がり、且つ前記第2回転体における前記小径コロ部が前記下部案内部材における上側案内面に有する突条部に摺接されながら転がるように構成されているものである。
【発明の効果】
【0013】
請求項1に記載の発明によれば、下部ユニットケースにおける下部案内部材と上部ユニットケースにおける上部案内部材とに移動可能に連結される開閉連結体を有し、この開閉連結体には、第1回転体が前記上部案内部材に沿って移動可能に設けられ、第2回転体が前記下部案内部材に沿って移動可能に設けられ、前記第1回転体と前記第2回転体とは水平な同軸にそれぞれ回転可能に設けられているので、構成が至極コンパクトに形成できるという効果を奏する。
【0014】
また、下部案内部材または上部案内部材のいずれか一方が凸湾曲状に形成され、他方が直線状に形成され、この両案内部材に沿って移動可能に連結される開閉連結体だけであるので、構造がシンプル且つ小型化することができるという効果を奏する。
【0015】
請求項2に記載の発明によれば、開閉連結体が前記上下部案内部材のいずれの位置にあるときでも、ユーザーが下向き押圧力を作用させない限り、上部ユニットケースが閉止方向に移動せず、ユーザーが上部ユニットケースから手を離した時不用意に閉止しないから安全であるという効果を奏する。
【0016】
また、請求項2乃至4に記載の発明によれば、上部ユニットケースを閉じ動作する方向に負荷(荷重)を掛けるときのみ、開閉連結体がヒンジ部から離間する方向に移動し、且つその移動速度は増大しないので、ゆっくり閉めることができるという効果を奏する。
【0017】
請求項5に記載の発明によれば、上部ユニットケースを開くときには、軽快に開くことができるという効果を奏する。
【0018】
さらに、請求項4及び5に記載の発明によれば、前記第1及び第2回転体はそれぞれ同軸上の2つの大径コロ部が小径コロ部を挟んで隔てられて配置され、前記上部案内部材における上下側案内面に有する突条部と前記下部案内部材における上下側案内面に有する突条部とが前記各小径コロ部と対向するように突出形成されているので、上部ユニットケースの開閉動作時に、大径コロ部が軸線方向に移動しようとするとき、各突条部がその動きを阻止するので、上下両案内部材に対して、それぞれ前記各回転体はその中心軸方向に脱落不能となり、開閉連結体が不用意に外れることがなく安全であるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】(A)は第1実施例の下部ユニットケースに対して上部ユニットケースが開いた途中の状態を示す概略側面図、(B)は上部ユニットケースを閉じた状態の概略側面図である。
【図2】図1(A)のII−II線矢視拡大断面図である。
【図3】開閉連結体の一部切欠き及び付勢手段の側面図である。
【図4】第1実施例の作用説明図である。
【図5】作用説明のためのグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明の第1実施例を図1〜図4を参照して説明する。
【0021】
本実施例の画像記録装置1は、プリンタ機能、コピー機能、スキャナ機能、ファクシミリ機能を備えた多機能装置(MFD:Multi Function Device )に本発明を適用したものであり、図1(A)及び図1(B)に示すように、画像記録装置1における合成樹脂製の下部ユニットケース2の一側部に、上部ユニットケース3はヒンジ部4を介して上下回動可能に連結されている。
【0022】
なお、図示しないが、下部ユニットケース2内にはインクジェット式等の記録部が給紙カセットより上側に配置されており、給紙カセットから給送された用紙(被記録媒体)が、後側に着脱可能に配置されたUターン状の搬送経路体を介して記録部に搬送され、記録後の用紙は給紙カセットの上方であって下部ユニットケース2の側面に開口した開口部から排紙されるように構成されている。給紙カセットも開口部から差込み可能に配置されている。
【0023】
上部ユニットケース3には、コピー機能やファクシミリ機能における原稿読取などのための原稿自動送り装置及び画像読取装置と、原稿載置用ガラス板及びその上面を覆う原稿カバー体と、各種操作ボタンや液晶表示部等を備えた操作パネル部とが設けられている(共に図示せず)。
【0024】
次に、本発明の下部ユニットケース2と上部ユニットケース3とを開閉可能とする開閉装置について説明する。両ユニットケース2及び3には、前記ヒンジ部4側から開放端部側に延びる下部案内部材6と上部案内部材7とがそれぞれ備えられている。下部案内部材6と上部案内部材7とにわたって配置され開閉連結体10は、上部案内部材7に沿って移動可能な第1回転体12と、下部案内部材6に沿って移動可能な第2回転体13とが任意形状のフレーム11に固定された1つの支軸14にそれぞれ回転可能に装着されたものである。図4では第1回転体12を図示省略している。
【0025】
第1実施例では、下部案内部材6はヒンジ部4側から開放端部側に向かって実質的に水平状且つ直線状に延びるように形成されている。他方、上部案内部材7は、ヒンジ部4から開放端部方向に下向き凸湾曲線状に延びるように形成されている(図1(A)、図1(B)参照)。
【0026】
上部案内部材7は上部ユニットケース3の側面板の内面にて案内溝23が内向きに開口するように配置されている(図2(A)及び図2(B)参照)。上部ユニットケース3が下部ユニットケース2に対して閉止された状態で、下向き凸湾曲状の上部案内部材7の中途部が下部ユニットケース2と干渉しないように、上部案内部材7は下部ユニットケース2の下部案内部材6よりも外側に位置している。
【0027】
図2(A)及び図2(B)に示すように、支軸14の軸線方向の中央部に被嵌されるゴム製等の摩擦係数の大きい摩擦部材としての円盤状のブレーキ部材15がフレーム11または支軸14に対して非回転となるように接着剤などで固定されている。第1回転体12と第2回転体13とは、フレーム11及びブレーキ部材15を挟んで両側に配置されている。
【0028】
第1回転体12は、2つの大径コロ部12a、12bが小径コロ部12cを挟むようにして配置され、一体的に回転するように接着剤などで固定されている。同様に、第2回転体13も2つの大径コロ部13a、13bが小径コロ部13cを挟むようにして配置され、一体的に回転するように接着剤などで固定されている。なお、大径コロ部12a、12b、13a、13bよりも小径コロ部12c、13cのほうが摩擦係数が小さい材料にて構成されている。
【0029】
図2(A)及び図2(B)に示すように、下部案内部材6は、下部ユニットケース2の側面上側に形成されたもので、第2回転体13における2つの大径コロ部13a、13bの直径より若干大きい上下寸法の案内溝20と、この案内溝20の間にて上下から相対向するように突出する突条部21、22とからなる。案内溝20の上下案内面20a、20bは2つの大径コロ部13a、13bの外周面と対面し、上下の突条部21、22は小径コロ部13cの外周面と対面している。
【0030】
同様に、上部案内部材7は、上部ユニットケース3の側板内面に形成されたもので、第1回転体12における2つの大径コロ部12a、12bの直径より若干大きい上下寸法の案内溝23と、この案内溝23の間にて上下から相対向するように突出する突条部24、25とからなる。案内溝23の上下案内面23a、23bは2つの大径コロ部12a、12bの外周面と対面し、上下の突条部24、25は小径コロ部12cの外周面と対面している。
【0031】
第1回転体12及び第2回転体13は、それぞれ同軸(支軸14)上の2つの大径コロ部12a、12b(13a、13b)が小径コロ部12c(13c)を挟んで隔てられて配置され、上部案内部材7における上下側案内面23a、23bに有する突条部24、25が小径コロ部13cと対向するように突出形成され、且つ下部案内部材6における上下側案内面20a、20bに有する突条部21、22が小径コロ部12cと対向するように突出形成されているので、上部ユニットケースの開閉動作時に、大径コロ部12a、12b(13a、13b)が軸線方向に移動するのを阻止し、上下両案内部材7、6に対して、それぞれ各回転体12、13はその中心軸方向に脱落不能となり、開閉連結体10が不用意に外れることがなく安全である。
【0032】
そして、ユーザーが上部ユニットケース3を下部ユニットケース2に対して開放する動作につれて、開閉連結体10が上下両部材6、7に沿って開放端部側からヒンジ部4側に近づく方向に順次移動するように構成されている。また、上部ユニットケース3を下部ユニットケース2に対して閉止する動作につれて、開閉連結体10が上下両部材6、7に沿ってヒンジ部4側から開放端部側に近づく方向に順次移動するように構成されている。
【0033】
次に、開閉装置における開閉連結体10の動作について説明する。図4(A)のように上部ユニットケース3の自重mg(垂直方向)が重心G(ヒンジ部4の位置(原点O)から距離aだけ離間した位置)に作用し、上部ユニットケース3の任意の個所、例えば自由端側で原点Oから距離bだけ離間した位置にて(荷重W)の力で上部ユニットケース3をユーザーが手で押下しているとする。また、原点Oから重心G及び荷重Wを通る直線がX軸となす角度(2π−θ)とする。
【0034】
そして、閉止動作時には、開閉連結体10の第1回転体12にて上部ユニットケース3を支える一方、開閉連結体10の第2回転体13はX軸と平行な下部案内部材6の案内溝20の下案内面に沿って移動可能であるとする。上部案内部材7のレール溝16の上案内面に第1回転体12が接触している位置(接点P)が原点OからX軸方向に距離dだけ離間しているものとする。その場合、接点PはX軸線上に位置するものとする。接点Pにおける上部案内部材7の案内溝23の上案内面との接線TとX軸とのなす角度kとすると、k=α−θとなる。なお、接点PがX軸上にない場合には、角度k,α,θの関係は、k=2π−θ=α−θとなる。
【0035】
また、上部案内部材7が下向き凸湾曲状であるときは、接点Pは第1回転体12の中心軸よりもヒンジ部4に近い側に位置することはあきらかである。
【0036】
接点Pにおける支持反力Fとするとき、ヒンジ部4(原点O)まわりのモーメントの釣り合い式は、a*mg* cos(2π−θ)+W*b=d*F* coskとなる。(*は乗算の記号です。) cos(2π−θ)= cosθとなるから、
F=[a*mg* cosθ+W*b]/[d* cosk] ‥‥式(1)
接点Pにおけるx軸の正方向の力Sとすると、S=(上部ユニットケース3の自重と荷重WとによるX軸方向成分)−(上部ユニットケース3の自重と荷重Wとによる上部案内部材7の個所での摩擦力のX軸方向成分)−(開閉連結体10に作用する負荷のX軸方向成分)となる。ここで、(開閉連結体10に作用する負荷のX軸方向成分)=Nとし、上部案内部材7と第1回転体12との静止摩擦係数をμとする。
【0037】
従って、S=(F*sin k)−(μ*F* cosk)−N ‥‥式(2)
となる。
【0038】
なお、開閉連結体10に作用する負荷Nは、例えば、開閉連結体10が下部ユニットケース2の下部案内部材6に沿って移動するときの摩擦力やブレーキ力、もしくは、回転体12(13、14)と両案内部材6、7の側面との接触摩擦力や回転体12(13、14)の回転を停止させるブレーキ機構などによるものである。
【0039】
本実施例では、閉止動作時には、ユーザーが上部ユニットケース3を荷重Wにて押下するので、図2(B)に示すように、第1回転体12における大径コロ部12a、12bの周面上側が上部案内部材7における上側案内面23aに押圧される。他方、第2回転体13における大径コロ部13a、13bの周面下側が下部案内部材6における下側案内面20bに押圧される。そのため、第1回転体12と第2回転体13とは互いに逆方向に回転する。例えば、図1(A)の側面視で、閉止動作により開閉連結体10がヒンジ部4から離れる右方向に移動すると、第1回転体12は反時計回りに回転し、第2回転体13は時計回りに回転することになる。
【0040】
そして、第1回転体12と第2回転体13との間に、ブレーキ部材15が配置され、且つ、このブレーキ部材15両側面に第1回転体12における大径コロ部12bの側面及び第2回転体13における大径コロ部13bの側面がそれぞれ摺接しているので、その摩擦の抵抗力により、開閉連結体10はその移動方向と反対向き(左向き)の負荷Nを受けることになる。
【0041】
式(2)に式(1)を代入してSの値を求めると、
S=[b*( sink−μ*cos k)/d*cos k]W+
[a*mg* cosθ*( sink−μ*cos k)]/(d* cosk)−N‥‥式(3)となる。
【0042】
ここで、U=[b*( sink−μ* cosk)/(d* cosk)]とし、
V=a*mg*cosθ*U/bと示せる。U及びVは、上部ユニットケース3の自重や第1回転体12の位置が決まると定まる定数であるから、関数SはWの一次関数となる。
【0043】
即ち、式(3)の関数は、S(W)=U*W+(V−N) ‥‥式(4)となる。
【0044】
図5のグラフに示すように、横軸にWを採り、縦軸にSを採る。そして、Wを作用させること(W≧0)で、任意の位置の開閉連結体10が閉止方向に動き始める条件(S≧0)を検討してみると、Uは正値であることが必要であり、w1=(V−N)≧0の条件を満足すべきである。Uが負であるとVも負となり上部ユニットケース3は食いついて動かない。またUが正で、w1が負であると、開閉連結体10(移動体)に常に正方向の力が掛かるため、上部ユニットケース3は手を放しても保持することができない。
【0045】
以上のように、第1実施例では、上部案内部材7を下向き凸湾曲状に形成する一方、下部案内部材を水平且つ直線状に形成し、その間を開閉連結体10が移動可能するように構成すれば、ユーザーが上部ユニットケース3の任意の個所に下向きのWという押圧力を作用させるとき、開閉連結体10が閉止方向(ヒンジ部4から離間する方向)に移動し、上記押圧力を作用させない(つまり押圧しない)時には、開閉連結体10が任意の位置で停止することができる。従って、従来のように、下部ユニットケース2に対して上部ユニットケース3を閉止する終端区間で、上部ユニットケース3の閉止方向への回動速度が急激に増大し、下部ユニットケース2に対して上部ユニットケース3が衝突して大きな異音を発生させたり、ユーザーの指が挟まるなどの不都合を防止することができる。
【0046】
また、押圧力Wの大きさをユーザーが加減することにより、上部ユニットケース3が閉止位置方向に閉まり回動する動きを緩めることができるという効果を奏する。
【0047】
なお、第1実施例において、上部ユニットケース3を開くときには、ユーザーが上部ユニットケース3の自由端側などに上向き力を付与する。そうすると、図2(A)に示すように、上部案内部材7における下側の突条部25が小径コロ部12cの外周面を上向きに押し上げる。その反力で、下部ユニットケース2における下部案内部材6の上側の突条部21が小径コロ部13cの外周面に当たる。このとき、両小径コロ部12c(13c)と突条部25(21)との摩擦力が小さいので、第1回転体12は回転することなく、上部案内部材7に沿って滑り(摺動し)、第2回転体13も回転することなく、下部案内部材6に沿って滑る(摺動する)。そして、開閉連結体10はヒンジ部4に近づくように移動できる。このようにして、そのときのユーザーが開放方向に加える力を少なくし、軽快に上部ユニットケース3を開くことができるという効果を奏する。
【0048】
なお、上部案内部材7の下向き凸湾曲線を所定の形状に設定することにより、上部ユニットケース3の開き角度の大小に拘らず、ユーザーによる下向き押圧力Wを一定にできるようにすることもできる。
【0049】
本発明では、下部ユニットケース2に対して上部ユニットケース3を開放させるには、ユーザーが上部ユニットケース3の自由端等に上向き力を作用させることで、開閉連結体10が下部案内部材6と上部案内部材7に沿ってヒンジ部4に近づくように移動し、上記上向き力の作用を中止させると、その位置で開閉連結体10が停止し、上部ユニットケース3の開き角度を保持することができる。
【0050】
開閉連結体10に負荷Nを付与する別の手段として、図3に示すように、円筒状のケース30内にぜんまいばね(渦巻きバネ)の基端を固定し、このぜんまいばねの自由端にワイヤなどの可撓性を有する紐体31の基端を連結し、このぜんまいばねに予め巻き締め方向の力を与えて、紐体31の大部分がケース23内に巻き込まれるように付勢した付勢手段を利用し、ケース30をヒンジ部4に近い側の下部ユニットケース2内に固定し、紐体31の自由端を開閉連結体10のフレーム11に連結して、開閉連結体10にヒンジ部4に向かうような負荷を与える構成とする(図1(A)及び図1(B)参照)。その他、テレスコピック型の油圧またはガスシリンダを下部ユニットケース2内に固定し、そのピストンロッドの先端をフレーム11に連結して、開閉連結体10にヒンジ部4に向かうような付勢力(負荷)を与える構成としても良い。
【0051】
第2実施例として、図示しないが、下部ユニットケース2に、上向き凸湾曲状の下部案内部材6を、ヒンジ部4側から開放端部側に延びるように配置し、上部ユニットケース3には、閉止終了時において、水平状で且つ直線状の上部案内部材7を、ヒンジ部4側から開放端部側に延びるように配置する。この実施例でも、第1実施例と同様の作用効果を奏することができる。直線状の上部案内部材7を開放端部側に向かって上向きまたは下向きに傾斜状に配置しても良い。
【0052】
第1実施例及び第2実施例のいずれにおいても、下部案内部材6における下案内面のうちヒンジ部4から離間した位置に凹み部(不図示)を設けることにより、下部ユニットケース2に対する上部ユニットケース3の閉止位置において、第2回転体13を凹み部に嵌まるようにする。この嵌め込みにより、上部ユニットケース3の閉止完了位置のクリック感を与えるとともに完全に閉止することができる。
【0053】
本発明は上記の実施形態の他、発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の実施形態を採用することができる。即ち、上下ユニットケースは、画像記録装置の他、電気製品や家具などの什器類の本体とその蓋体に対して適用することができる。
【符号の説明】
【0054】
1画像記録装置
2下部ユニットケース
3上部ユニットケース
4ヒンジ部
6下部案内部材
7上部案内部材
10開閉連結体
11フレーム
12第1回転体
13第2回転体
12a,12b,13a,13b,大径コロ部
12c,13c小径コロ部
14支軸
15ブレーキ部材
20、23案内溝
21、24上突条部
22、25下突条部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下部ユニットケースと上部ユニットケースとを一側に設けたヒンジ部を介して上下開閉回動可能に装着し、
前記下部ユニットケースには下部案内部材を前記ヒンジ部側から開放端部側に延びるように備え、
前記上部ユニットケースには上部案内部材を、前記ヒンジ部側から開放端部側に延びるように備え、
前記下部案内部材と前記上部案内部材とは、その一方が凸湾曲状に形成され、他方が直線状且つ水平状に形成され、
前記下部案内部材と上部案内部材とに移動可能に連結される開閉連結体を有し、
前記開閉連結体には、第1回転体が前記上部案内部材に沿って移動可能に設けられ、第2回転体が前記下部案内部材に沿って移動可能に設けられ、
前記第1回転体と前記第2回転体とは水平な同軸にそれぞれ回転可能に設けられ、
前記上部ユニットケースを前記下部ユニットケースに対して開放する動作につれて、前記開閉連結体が前記上下両部材に沿って前記開放端部側から前記ヒンジ部側に順次移動し、
前記上部ユニットケースを前記下部ユニットケースに対して閉止する動作につれて、前記開閉連結体が前記上下両部材に沿って前記ヒンジ部側から前記開放端部側に順次移動するように構成されていることを特徴とする上部ユニットケースの開閉装置。
【請求項2】
前記開閉連結体が前記上下部案内部材のいずれの位置にあるときでも、前記上部ユニットケースの自重及びこの上部ユニットケースに付加される押圧力の合力の前記第1回転体位置での水平方向成分の大きさは、前記押圧力の鉛直成分と前記開閉連結体の自重による水平方向の摩擦力の大きさと、前記開閉連結体に作用する抵抗力の水平成分の大きさとの和より大きいかまたは等しくなるように設定され、且つ前記押圧力を解除すると、前記上部ユニットケースの開閉姿勢が保持されるように構成したことを特徴とする請求項1に記載の上部ユニットケースの開閉装置。
【請求項3】
前記開閉連結体には、前記第1回転体と前記第2回転体との間に摩擦部材が配置され、
前記上部ユニットケースを前記下部ユニットケースに対して閉止する動作につれて、前記第1回転体が前記上部案内部材における上側案内面に当接して転がり、且つ前記第2回転体が前記下部案内部材における下側案内面に当接して転がることにより、前記第1回転体と前記第2回転体とは互いに反対方向に回転し、
且つ前記第1回転体と前記第2回転体とは前記摩擦部材にそれぞれ当接して抵抗力を受けるように構成されていることを特徴とする請求項1または2に記載の上部ユニットケースの開閉装置。
【請求項4】
前記第1及び第2回転体はそれぞれ同軸上の2つの大径コロ部が小径コロ部を挟んで隔てられて配置され、
前記上部案内部材における下側案内面に有する突条部と前記下部案内部材における上側案内面に有する突条部とが前記各小径コロ部と対向するように形成され、
前記上部ユニットケースを前記下部ユニットケースに対して閉止する動作時には、前記第1回転体における前記2つの大径コロ部が前記上部案内部材における上側案内面に押圧されながら転がり、且つ前記第2回転体における前記2つの大径コロ部が前記下部案内部材における下側案内面に押圧されながら転がるように構成されていることを特徴とする請求項3に記載の上部ユニットケースの開閉装置。
【請求項5】
前記各小径コロ部と前記上部案内部材における下側案内面に有する突条部と前記下部案内部材における上側案内面に有する突条部とは摩擦係数の小さい部材であり、
前記上部ユニットケースを前記下部ユニットケースに対して開放する動作時には、前記第1回転体における前記小径コロ部に前記上部案内部材における下側案内面に有する突条部に摺接されながら転がり、且つ前記第2回転体における前記小径コロ部が前記下部案内部材における上側案内面に有する突条部に摺接されながら転がるように構成されていることを特徴とする請求項4に記載の上部ユニットケースの開閉装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−215204(P2011−215204A)
【公開日】平成23年10月27日(2011.10.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−80663(P2010−80663)
【出願日】平成22年3月31日(2010.3.31)
【出願人】(000005267)ブラザー工業株式会社 (13,856)
【Fターム(参考)】