説明

下地部材兼用型枠パネル及びコンクリート構造物の型枠工法

【課題】内外装下地部材を一体に形成した型枠パネルからなる内外装下地型枠パネルにおいて、角部又はコーナー部においても不都合なく使用できるようにすることを課題とする。
【解決手段】角度をもって隣り合う壁面間の角部をコンクリートで打設形成するために用いる、型枠パネルに内外装下地部材を分離可能に一体に形成した内外装下地兼用型枠パネルにおいて、内外装下地部材は、長尺部材であって、前記角部に固定した状態において、前記角度をもって隣接する前記壁面に平行な2面からなる前面を有し、前記前面に連接する両側面は型枠パネルの所定の移動方向に沿った直線を前面との接合縁と合わせると、当該直線に対し平行もしくは外側に傾くものとし、また、型枠パネルは、前記角度をもって隣接するせき板を有し、打設面側の角部分に前記内外装下地部材の前記前面及び側面が嵌合する縦溝が形成されるものとする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は建築工事におけるコンクリート型枠工事に用いられる内外装下地部材と型枠パネル及び内外装下地部材の設置を含むコンクリートの型枠工法に関し、特に、コーナーに用いられるものに関する。
【背景技術】
【0002】
従来のコンクリート型枠を用いた工法においては、コンクリート躯体を打設し型枠が撤去された後に、コンクリート打設面に木枠で下地材を組んで、これに内外装材類を釘打ちで止めたり、また、軽量鉄骨を組んで、これに内外装材類をタッピングビス類で止めたり、接着剤を団子状に塗って直接内外装材類を圧着したりして固定している。
また、断熱施工を施す場合には、型枠のせき板の内面に合成樹脂発泡体などからなる断熱ボードを予め釘止めした状態でコンクリートを打設し、コンクリート硬化後に合板のみを取り外して、断熱コンクリート壁を形成し、その後、やはり内外装材用の下地材を組んで内外装材類を取り付ける。
このように、コンクリート型枠工事においては、コンクリートの打設後に内外装部材類の固定作業を必要とするが、近年最も合理的な方式として、型枠を構成するせき板を内外装の下地とする工法が行われている。この工法では、発泡プラスチック断熱材と木毛板・新建材板とを貼り合わせた発泡プラスチック断熱板を、内外装材の下地材と兼用できるコンクリート型枠のせき板として使用し、コンクリート打設後に、せき板を除去せずに、その表面に内外装材仕上げが行われる。この工法ではせき板に断熱材を用いるので、断熱施工も同時に施すことができる。
【0003】
しかしながら、この工法では型枠工事でのせき板に、変形・破壊等に十分な剛性と強度が求められるが、せき板を構成する発泡プラスチック断熱材はパネル自体の強度が弱いので厚さを大きくするか、他の複合板と貼り合わせて一体化しなければならず経済的な負担が大きくなる。また、施工に際して、型枠工事における部材搬入・労務費・運搬費・材料等の保管に関する問題も多い。これらの問題は、強度を要するせき板を内外装の下地として使用することが原因であるが、作業工程の合理下の観点からコンクリートの打設時に内外装の下地がコンクリート躯体に形成されるようにするという利点は維持することが望まれる。
このような問題に鑑みて、本願の発明者は、下記特許文献1、2に型枠パネルのせき板に断面長方形状の溝を設けるとともに、この溝に嵌る内外装下地部材を嵌合したものを内外装下地兼用型枠として提案している。この内外装下地兼用型枠は、コンクリート躯体打設後、内外装下地部材のみを残して型枠パネルを取り去るものであり、せき板の強度は縦溝と内外装下地部材により維持できるとともに、コンクリートの打設時に内外装の下地がコンクリート躯体に形成できる。
【特許文献1】特開2006−9570公報
【特許文献2】特開2006−104935公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記内外装下地兼用型枠パネルは、内外装下地部材が断面長方形状であるので、角度をもって隣接する壁面間の入隅部に固定すると、一方の前面に内装又は外装を固定すると、他方側の前面はこの内装又は外装に塞がれることとなるので、隣接する両壁面の内装又は外装を固定ことができない。さらに、角度をもって隣接する壁面同士がラウンド面を持つコーナーで形成される場合は、ラウンド面に長方形状の内外装下地部材を固定することはできるが、この場合内外装下地部材同士が互いに異なる角度をもって固定されるので、内外装下地部材の側面が型枠パネルの縦溝に支え、内外装下地部材をコンクリート打設面に固定したまま型枠パネルを取り外すことができない。
本発明は、このような問題に鑑みて、内外装下地部材を一体に形成した型枠パネルからなる内外装下地型枠パネルにおいて、角部又はコーナー部においても不都合なく使用できるようにすることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために、本発明は次のような構成を有する。
請求項1に記載の発明は、角度をもって隣り合う壁面間の角部をコンクリートで打設形成するために用いる、型枠パネルに内外装下地部材を分離可能に一体に形成した内外装下地兼用型枠パネルであり、内外装下地部材は、長尺部材であって、前記角部に固定した状態において、前記角度をもって隣接する前記壁面に平行な2面からなる前面を有し、前記前面に連接する両側面は型枠パネルの所定の移動方向に沿った直線を前面との接合縁と合わせると、当該直線に対し平行もしくは外側に傾いている。また、型枠パネルは、前記角度をもって隣接するせき板を有し、打設面側の角部分に前記内外装下地部材の前記前面及び側面が嵌合する縦溝が形成される。なお、本願において「所定の移動方向」とはコンクリート躯体を内外装下地兼用型枠パネルで打設した後に、想定される型枠パネルを取り外す方向を意味し、「当該直線に対し外側に傾く」とは、側面が、当該直線よりも内外装下地部材の中心から離れる方向に沿うように形成されることを意味する。
請求項2に記載の発明は、角度をもって隣り合う壁面間の角部をコンクリートで打設形成するために用いる、型枠パネルに内外装下地部材を分離可能に一体に形成した内外装下地兼用型枠パネルであり、内外装下地部材は、長尺部材であって、前記角部に固定した状態において、前記角度をもって隣接する前記壁面に平行な2面からなる前面を有する。また、型枠パネルは、前記角度をもって隣接するせき板を有し、打設面側の角部分に、前記内外装下地部材の前記前面及び当該前面に連接する側面が嵌合する縦溝が形成されるとともに、当該縦溝の底面に当該縦溝の長手方向に沿った分割面により分割可能に形成される。
請求項3に記載の発明は、前記内外装下地兼用型枠パネルにおいて、前記内外装下地部材は、長手方向に沿った分割面により分割可能に形成されるものである。
【0006】
請求項4に記載の発明は、角度をもって隣り合う壁面間のラウンド面で形成されるコーナー部をコンクリートで打設形成するために用いる、型枠パネルに内外装下地部材を分離可能に一体に形成した内外装下地兼用型枠パネルであり、内外装下地部材は断面四角形状の長尺部材であって1以上設けられ、前記ラウンド面の所定位置に固定した状態において、前面の両縁と連接する側面は型枠パネルの所定の移動方向に沿った直線を前面との接合縁と合わせると、当該直線に対し平行もしくは外側に傾いている。また、型枠パネルは、前記ラウンド面に沿ったせき板を有し、打設面側の前記所定位置に対応する位置に、前記内外装下地部材の前記前面及び側面が嵌合する縦溝が形成される。
請求項5に記載の発明は、角度をもって隣り合う壁面間のラウンド面で形成されるコーナー部をコンクリートで打設形成するために用いる、型枠パネルに内外装下地部材を分離可能に一体に形成した内外装下地兼用型枠パネルであって、内外装下地部材は断面台形状の長尺部材からなり、一以上設けられ、型枠パネルは、前記ラウンド面に沿ったせき板を有し、前記内外装下地部材の前面及び側面が嵌合する縦溝が形成されるとともに、当該縦溝の底面の少なくとも1つにおいて長手方向に沿った分割面に沿って分割可能に形成されるものである。
【0007】
請求項6に記載の発明は、請求項1から5のいずれか1項に記載される内外装下地部材である。
請求項7に記載の発明は、請求項1、2、4、5のいずれか1項に記載される型枠パネルである。
請求項8に記載の発明は、前記内外装下地兼用型枠パネルをコンクリート打設面に固定し、コンクリートを打設してコンクリート躯体を形成するコンクリート打設工程と、形成されたコンクリート躯体から前記内外装下地部材を残して前記型枠パネルを解体撤去する型枠パネル除去工程とを有するコンクリート構造物の型枠工法である。
【発明の効果】
【0008】
請求項1に記載の発明は、内外装下地部材の前面が角度を持って隣接する壁面のそれぞれに平行に2面形成されるので、内外装材を干渉することなくそれぞれの面に固定することができ、また、内外装下地部材の側面が、型枠パネルの所定の移動方向に移動した際に、移動方向に邪魔にならないように移動方向に対して平行か、移動方向に対して前面から外側に傾くように形成されているので、型枠パネルから内外装下地部材をコンクリート躯体に固定したままスムーズに取り去ることができる。
請求項2に記載の発明は、やはり、内外装下地部材の前面が角度を持って隣接する壁面のそれぞれに平行に2面形成されるので、内外装材を干渉することなくそれぞれの面に固定することができ、また、型枠パネルが分離できるので、内外装下地部材の側面が邪魔にならないように分割することでスムーズに型枠パネルを取り去ることができるとともに、型枠パネルの収納運搬に際してコンパクトにたたむことができる。
請求項3に記載の発明は、内外装下地部材を長手方向に沿った分割面により分割可能に形成することで、収納運搬に資するとともに、断面長方形状の汎用の部材を加工することによって上記内外装下地部材を形成することができる。
【0009】
請求項4に記載の発明は、ラウンド面で形成されるコーナー部において、内外装下地部材の側面が、型枠パネルの所定の移動方向に移動した際に、移動方向に邪魔にならないように移動方向に対して平行か、移動方向に対して前面から外側に傾くように形成されているので、型枠パネルから内外装下地部材をコンクリート躯体に固定したままスムーズに取り去ることができる。
請求項5に記載の発明は、ラウンド面で形成されるコーナー部において、内外装下地部材の側面が邪魔にならないように分割することでスムーズに型枠パネルを取り去ることができるとともに、型枠パネルの収納運搬に際してコンパクトにたたむことができる。
【0010】
請求項6に記載に係る内外装下地部材を用いることで、請求項1から5に記載された内外装下地兼用型枠パネルを実現することができる。
請求項7に記載に係る型枠パネルを用いることで、請求項1、2、4、5に記載された内外層下地兼用型枠パネルを実現することができる。
請求項8に記載の発明は、請求項1から5に記載の内外装下地兼用型枠パネルを用いることで、コンクリート躯体の角部もしくはラウンド面の型枠工法において、コンクリート躯体の形成と内外装下地部材の固定が同時に行えるので、作業効率がよく、また、内外装下地兼用型枠パネルは縦溝及びこれに嵌合する内外装下地部材により縦方向の剛性は十分に強いので縦端太材を設ける必要が無く、これの設置、組み立て、解体、撤去等の作業を行う必要がなくなるので、これによっても作業効率を高めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
(実施形態1)
図1(a)(b)に実施形態1に係る内外装下地兼型枠パネルXを構成する内外装下地部材20のそれそれ異なる方向から見た一部拡大斜視図を示す。内外装下地部材20は、合成樹脂により形成される長尺部材であって、断面形状が中空のL字状に形成される。言い換えると、この断面形状は一つの角が270度で残りの角が90度の6角形状に形成される。そして、この270度の角を挟む2面が内外装を取り付ける前面21を形成し、この前面に平行な2面が背面22を形成し、前面21及び背面22の両縁に連接する面が側面23を形成する。この内外装下地部材20は、90度に形成される入隅部に用いられるものであり、背面22を入隅部にあわせると前面は入隅部に隣接する2面のコンクリート壁面に平行となる。なお、入隅部の角度が変われば、内外装下地部材20の断面形状は適宜変更すればよく、この際、原則として前面はコンクリート壁面と平行になるように形成される。内外装下地部材20の前面21、21には、ネジ穴21aが長手方向に等間隔で設けられている。また、前面21、21の一方の面には、フォームタイの基端が通ることができる孔であるフォームタイ用貫通孔21bが、やはり長手方向に等間隔に設けられている。そして、背面22、22のフォームタイ用貫通孔21bに相対する位置には、セパレーターを通すことができる孔であるセパレーター用貫通孔22aが設けられている。また、側面23のこのセパレーター用貫通孔22aと同じ高さの位置には、セパレーター用貫通孔22a部分に工具を入れて作業をするために側面貫通孔23aが設けられている。さらに、背面22側には、背面22に直交するように背面方向に突出する短冊板状のアンカー部22bが長手方向に等間隔に設けられている。
【0012】
図2に内外装下地兼型枠パネルXを構成する型枠パネル10の一部拡大斜視図を示す。型枠パネル10は、合成樹脂性の直角に屈曲したせき板11により構成される。せき板11の両端面には直角に立ち上がった、外枠13が一体に形成される。この型枠パネル10は入隅部用なので、外角に隣接する面が打設面となる。また、せき板11の屈曲している角部分の打設面側には、内外装下地部材20の前面21及び側面23が嵌合できる縦溝12が形成されている。縦溝の底面の、内外装下地部材20を嵌合させた際に前記ねじ穴21aと相対する面にはネジが貫通するネジ止め用貫通孔12aが形成され、また、フォームタイ用貫通孔21bと相対する面にはフォームタイの基端部が通る孔である第2フォームタイ用貫通孔12bが形成されている。
【0013】
次に、以上のような構成を有する型枠パネル10及び内外装下地部材20とからなる内外装下地兼用型枠パネルXを用いたコンクリート構造物の型枠工法について説明する。まず、内外装下地部材20を型枠パネル10の縦溝に嵌合させ、型枠パネル10のネジ止め用貫通孔12aからボルトなどを通して内外装下地部材20のネジ穴21aに係合させ、型枠パネル10と内外装下地部材20とを一体に固定し、内外装下地兼型枠パネルXを形成する。この作業は、通常は現場ではなく、工場等で行っておき現場に搬入する。次に、この内外装下地兼型枠パネルXを建て込み支保工で固定して、コンクリートを打設する。図3に内外装下地兼型枠パネルXを建て込んでコンクリートを打設した状態を示す一部拡大斜視図を示し、図4にこの状態の平面図を示す。なお、内外装下地兼型枠パネルXの以外の型枠パネルは、ここでは、説明の便宜上一般的な型枠パネルを使用しているが、平らな面には特開2006−9570公報に示す内外装下地兼型枠パネルを用い、出隅部には後述する内外装下地兼型枠パネルYを用いるのが好適である。図4に示すように、コンクリートを打設する前に建て込んだ内外装下地兼型枠パネルXはセパレーター用貫通孔11a及びセパレーター用貫通孔12bを介してセパレーターSを取り付け、セパレーターSに適宜フォームタイFを取り付けるとととに、横端太材Hを所定の間隔設けた支保工で固定する。
コンクリート打設後、コンクリートを養生、硬化させたのち支保工を取り外す。この状態で、内外装下地部材20はセパレーターS及びアンカー部22bによりコンクリート躯体に固定される。次に、型枠パネル10と内外装下地部材20とを固定しているボルト等を取り外し、内外装下地部材20をコンクリート躯体に残したまま型枠パネル10を取り外す。その後、内外装下地部材20に内外装をネジ穴21a等を利用して固定し仕上げ工事を行う。
【0014】
ところで、図5の平面図に示すように型枠パネル10を内外装下地部材20から取り外す際には、型枠パネル10を取り外す方向(移動方向A)に型枠パネル10を移動させた際に内外装下地部材20の側面23が支えないことが必要である。本実施形態に係る内外装下地部材20の側面23は、図5に示すように移動方向Aを両壁面の2等分線方向とし、この移動方向に沿った直線に対して前面との境を基準に外側に角度αだけ傾いているので、型枠パネル10を容易に抜くことができる。側面23はこの角度αが0度以上あれば型枠パネル10を取り外すことができる。また、移動方向Aは適宜変更することができ、側面23の角度の範囲もこれに応じて変わることとなる。
【0015】
次に、内外装下地兼用型枠パネルXを用いた他のコンクリート構造物の型枠工法について説明する。なお、ここで用いる内外装下地部材20にはアンカー部22bは形成されていないものとする。まず、内外装下地部材20と型枠パネル10とを結合して内外装下地兼用型枠パネルXを形成する。次に、この内外装下地兼用型枠パネルを躯体の形状に建て込むのであるが、この際、図6に示すように断熱板Dを型枠パネル10の打設面側に挟みこむ。その後、セパレーターS、フォームタイF、横端太材Hなどを設置し支保工により固定してコンクリートを打設し、養生硬化させる。その後、断熱板Dと内外装下地部材20とをコンクリート躯体に残して、やはり内外装下地部材20に内外装材を固定して仕上げ工事を行う。なお、内外装下地部材20と断熱板DとはセパレーターSにより固定されているので、セパレーターSと内外装下地部材20とを固定しているナットを緩めて、内外装下地部材20と断熱板Dとの間パッキン類等の介在物を挿入することで不陸を調整することができる。この際内外装下地部材20の側面に側面貫通孔23aが設けられているので、この穴からスパナなどの工具を用いて容易に調整作業を行うことができる。
【0016】
なお、本実施形態における型枠パネル10は、図7(a)の状態から、施工現場において図7(b)に示すように切断して別途外枠を構成する板体13aを切断縁に固定して間隔の調整を行った後に使用することができる。これは以下に示す他の実施形態における型枠パネルにおいても同様である。
さらに、内外装下地部材20は、図8(a)の分解一部斜視図に示すように、2つの断面長方形状の部材20A、20Bにより構成するようにしてもよい。20A及び20Bを合わせることで、図8(b)に示すように、上述した内外装下地部材10と同じ形状を実現できる。この際、接合面10dは分割面を形成する。20A、20Bは型枠パネル10に固定され、また、コンクリート躯体に固定されるので、両者を互いに固定する必要はない。
また、上記実施形態においては、工場等で予め内外装下地部材20と型枠パネル10とを一体にしたが、現場において、セパレーターSを用いて内外装下地部材20を予め設置しておき、この内外装下地部材20に型枠パネル10を取り付けるようにしてもよい。この際、内外装下地部材20の側面に設けられる側面貫通孔23によりセパレーターSと内外装下地部材20との取り付け効率を上げることができる。
【0017】
(実施形態2)
図9(a)(b)に実施形態2に係る内外装下地兼型枠パネルYを構成する内外装下地部材40のそれぞれ異なる方向から見た一部拡大斜視図を示す。内外装下地部材40は、合成樹脂により形成される長尺部材であって、断面形状がL字状に形成される。言い換えると、この断面形状は一つの角が270度で残りの角が90度の6角形状に形成される。そして、この270度の角に対向する角を挟む2面が内外装を取り付ける前面41、41を形成し、この前面41に平行な2面が背面42、42を形成し、前面41及び背面42の両縁に連接する面が側面43、43を形成する。この内外装下地部材40は、90度に形成される出隅部に用いられるものであり、背面42を出隅部にあわせると前面41は出隅部に隣接する2面のコンクリート壁面に平行となる。なお、出隅部の角度が変われば、やはり内外装下地部材40の断面形状は適宜変更すればよく、この際、原則として前面41はコンクリート壁面と平行になるように形成される。内外装下地部材40の前面41、41には、ネジ穴41aが長手方向に等間隔で設けられている。また、背面42側には、背面42に直交するように背面方向に突出する短冊板状のアンカー部42bが長手方向に等間隔に設けられている。
【0018】
図10に実施形態2に係る内外装下地兼型枠パネルYを構成する型枠パネル30の分解一部拡大斜視図を示す。型枠パネル30は、合成樹脂性の直角に屈曲したせき板31を、屈曲部を分割面32Xとして分割したものである。この型枠パネル30は出隅部用なので、内角に隣接する面が打設面となる。また、せき板31、31の屈曲している分割面を構成する角部分の打設面側には、結合状態において内外装下地部材40の前面41及び側面43が嵌合できる縦溝32が形成される。縦溝32の底面の、内外装下地部材40を嵌合させた際に前記ねじ穴41aと相対する面にはネジが貫通するネジ止め用貫通孔32aが形成される。また、せき板31の縦溝32以外の面には、長手方向に、セパレーターを通すことができる孔であるセパレーター用貫通孔31aが形成されている。また、分割されたせき板31の両端面には直角に立ち上がった外枠33が一体に形成されている。
【0019】
次に、以上のような構成を有する型枠パネル30及び内外装下地部材40とからなる内外装下地兼用型枠パネルYを用いたコンクリート構造物の型枠工法について説明する。まず、内外装下地部材40を型枠パネル30の縦溝に嵌合させ、型枠パネル30のネジ止め用貫通孔32aからボルトなどを通して内外装下地部材40のネジ穴41aに係合させ、型枠パネル30と内外装下地部材40とを一体に固定し、内外装下地兼型枠パネルYを形成する。この作業は、やはり通常は現場ではなく、工場等で行っておき現場に搬入する。次に、この内外装下地兼型枠パネルYを建て込み支保工で固定し、コンクリートを打設する。図11に内外装下地兼型枠パネルYを建て込んでコンクリートを打設した状態を示す一部拡大斜視図を示し、図12にこの状態の平面図を示す。なお、やはり内外装下地兼型枠パネルYの以外の型枠パネルは、ここでは、説明の便宜上一般的な型枠パネルを使用しているが、平らな面には特開2006−9570公報に示す内外装下地兼型枠パネルを用い、入隅部には前述した内外装下地兼型枠パネルXを用いるのが好適である。図12に示すように、コンクリートを打設するまえに建て込んだ内外装下地兼型枠パネルYはセパレーター用貫通孔31aを介してセパレーターSを取り付け、セパレーターSに適宜フォームタイFを取り付けるとととに、横端太材Hを所定の間隔設けた支保工で固定しておく。
【0020】
コンクリート打設後、コンクリートを養生、硬化させたのち支保工を取り外す。この状態で、内外装下地部材40はアンカー部42bによりコンクリート躯体に固定される。次に、型枠パネル30と内外装下地部材40とを固定しているボルト等を取り外し、内外装下地部材40をコンクリート躯体に残したまま型枠パネル30を取り外す。その後、内外装下地部材40に内外装をネジ穴41a等を利用して固定し仕上げ工事を行う。
型枠パネル30を内外装下地部材30から取り外す際には、型枠パネル30が分割できるので、内外装下地部材30の側面33に引っ掛かることなく型枠パネル30を取り外すことができる。なお、ここでは、型枠パネル30を分割するようにしているが、内外装下地部材30の側面33を図13に示すように、型枠パネル30の移動方向に一致させるか、移動方向に対して内側に傾けることで分割することなく型枠パネル30を取り外すようにすることもできる。
また、本実施形態に係る内外装下地兼用型枠パネルYも実施形態1に係る内外装下地兼用型枠パネルXと同様に、コンクリート構造物の型枠工法として断熱板Dを挟むようにしてもよい。
また、内外装下地部材40に関して、実施形態1に係る内外装下地部材20のように、長手方向に形成される分断面により分割可能に形成してもよい。
【0021】
(実施形態3)
図14に実施形態3に係る内外装下地兼用型枠パネルZの平面図を示す。内外装下地兼用型枠パネルZは内側のラウンド面に用いられるものであり、ラウンド面に沿ったせき板51からなる型枠パネル50と、型枠パネル50に形成される縦溝52に嵌合する複数の内外装下地部材60とから構成される。
型枠パネル50は合成樹脂により形成され、両端面には直角に立ち上がった、外枠53が一体に形成される。また、縦溝52の底面には、ネジが貫通する図示しないネジ止め用貫通孔52aが長手方向に等間隔に設けられている。
図15(a)(b)に内外装下地部材Zを構成する一つの内外装下地部材60のそれぞれ異なる方向から見た一部拡大斜視図を示す。内外装下地部材60は、断面台形状であって、平行な2面のうち面積の小さい方が前面61を構成し、面積の大きいほうが背面62を構成する。前面61及び背面62の両縁を連結する側面63、63はコーナー面のどの位置に設置されるかにより前面61に対する角度が異なるが、上述した実施形態1及び2と同様に型枠パネル50を取り外す方向(移動方向A)に対して内側になるように形成される。また、内外装下地部材60の背面中央には、背面方向に突出する短冊板状のアンカー部62bが長手方向に等間隔に設けられている。また、前面には、型枠パネル50の縦溝52の底面に設けられたネジ止め用貫通孔52aに相対する位置にネジ穴61aが設けられている。
【0022】
以上のような構成を有する内外装下地兼用型枠パネルZを用いたコンクリート構造物の型枠工法は、実施形態1、2に係る型枠工法とほぼ同様であり、内外装下地部材60を型枠パネル50の縦溝52に係合させた後に、ボルト等で固定して内外装下地兼用型枠パネルを形成し、その後、内外装下地兼用型枠パネルZを建て込み、支保工で固定して、コンクリートを打設する。そして、コンクリートの養生・硬化の後、内外装下地部材60と型枠パネル60とを固定しているボルト等を取り外し、内外装下地部材60をコンクリート躯体に固定したまま、型枠パネル50のみを取り外す。その後、内外装下地部材60にネジ穴61a等を利用して内外装を固定していく。この方法においても、断熱パネルDをせき板とコンクリート躯体の間に挟むようにしてもよい。
【0023】
(実施形態4)
図13に実施形態4に係る内外装下地兼用型枠パネルVの平面図を示す。内外装下地兼用型枠パネルVは外側のラウンド面に用いられるものであり、ラウンド面に沿ったせき板71からなる型枠パネル70と、型枠パネル70に形成される縦溝72に嵌合する複数の内外装下地部材80とから構成される。
型枠パネル70は合成樹脂により形成され、両端面には直角に立ち上がった、外枠73が一体に形成される。また、縦溝72の底面には、ネジが貫通する図示しないネジ止め用貫通孔72aが長手方向に等間隔に設けられている。そして、型枠パネル70を構成するせき板71は、中央の縦溝72の底面に長手方向に形成される分割面72dにより分割可能に形成されている。
内外装下地部材80は実施形態3に係る内外装下地部材60とほぼ同じ構成であり、断面台形状であって、平行な2面のうち面積の小さい方が前面81を構成し、面積の大きいほうが背面82を構成する。また、内外装下地部材80の背面中央には、背面方向に突出する短冊板状の図示しないアンカー部82bが長手方向に等間隔に設けられている。また、前面には、型枠パネル70の縦溝72の底面に設けられたネジ止め用貫通孔72aに相対する位置に図示しないネジ穴81aが設けられている。
【0024】
以上のような構成を有する内外装下地兼用型枠パネルVを用いたコンクリート構造物の型枠工法は、実施形態1、2、3に係る型枠工法とほぼ同様であり、内外装下地部材80を型枠パネル70の縦溝72に係合させた後に、ボルト等で固定して内外装下地兼用型枠パネルVを形成し、その後、内外装下地兼用型枠パネルVを建て込み、支保工で固定して、コンクリートを打設する。そして、コンクリートの養生・硬化の後、内外装下地部材70と型枠パネル80とを固定しているボルト等を取り外し、内外装下地部材80をコンクリート躯体に固定したまま、型枠パネル70のみを取り外す。その後、内外装下地部材80にネジ穴81a等を利用して内外装を固定していく。なお、ここでも断熱材をせき板とコンクリート躯体に挟むようにしてもよい。
【0025】
なお上記各実施形態における内外装下地部材や型枠パネルの材質は、強度、剛性が目的に合うものであれば、木製、金属製等種々の材質を採用することができる。さらに、内外装下地部材は、中空である必要はなく、ネジ穴を設けずに釘打ちあるいはビス止めで型枠パネルと固定するようにしてもよい。
また、実施形態2、3、4の内外装下地部材40、60、80の内部には、セパレーターを設けるようにしていないが、これは、セパレーターを固定できるようにしてもよく、この際実施形態にに係る内外装下地部材40は前面41及び背面42の長さをコンクリート躯体の内壁面に相対する程度まで延長する必要がある。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】(a)は実施形態1に係る内外装下地部材を正面側から見た部分斜視図であり、(b)は実施形態1に係る内外装下地部材を背面側から見た部分斜視図である。
【図2】実施形態1に係る型枠パネルを背面側から見た部分斜視図である。
【図3】実施形態1に係る内外装下地兼用型枠パネルの使用状態を示す部分斜視図である。
【図4】実施形態1に係る内外装下地兼用型枠パネルの使用状態を示す部分平面図である。
【図5】実施形態1に係る内外装下地部材の側面の角度を示す内外装下地兼用型枠パネルの部分平面図である。
【0027】
【図6】実施形態1に係る内外装下地兼用型枠パネルの他の使用状態を示す部分平面図である。
【図7】(a)は実施形態1に係る型枠パネルの平面図であり、(b)は(a)の状態からせき板部分を縮めた状態を示す平面図である。
【図8】(a)は長手方向に分断可能に形成した実施形態1に係る内外装下地部材の分解部分斜視図であり、(b)は長手方向に分断可能に形成した実施形態1に係る内外装下地部材の部分斜視図である。
【図9】(a)は実施形態2に係る内外装下地部材を正面側から見た部分斜視図であり、(b)は実施形態2に係る内外装下地部材を背面側から見た部分斜視図である。
【図10】実施形態2に係る型枠パネルを正面側から見た分解部分斜視図である。
【0028】
【図11】実施形態2に係る内外装下地兼用型枠パネルの使用状態を示す部分斜視図である。
【図12】実施形態2に係る内外装下地兼用型枠パネルの使用状態を示す部分平面図である。
【図13】実施形態2に係る内外装下地兼用型枠パネルの内外装下地部材の側面の傾きを変形した例を示す平面図である。
【図14】実施形態3に係る内外装下地兼用型枠パネルを示す平面図である。
【図15】(a)は実施形態3に係る内外装下地部材を正面側から見た部分斜視図であり、(b)は実施形態3に係る内外装下地部材を背面側から見た部分斜視図である。
【図16】実施形態4に係る内外装下地兼用型枠パネルを示す平面図である。
【符号の説明】
【0029】
X、Y、Z、V 内外装下地兼用型枠パネル
10、30、50、70 型枠パネル
20、40、60、80 内外装下地部材
21、41、61、81 前面
23、43、63、83 側面
11、31、51、71 縦溝

【特許請求の範囲】
【請求項1】
角度をもって隣り合う壁面間の角部をコンクリートで打設形成するために用いる、型枠パネルに内外装下地部材を分離可能に一体に形成した内外装下地兼用型枠パネルであって、
前記内外装下地部材は、長尺部材であって、前記角部に固定した状態において、前記角度をもって隣接する前記壁面に平行な2面からなる前面を有し、前記前面に連接する両側面は型枠パネルの所定の移動方向に沿った直線を前面との接合縁と合わせると、当該直線に対し平行もしくは外側に傾いており、
前記型枠パネルは、前記角度をもって隣接するせき板を有し、打設面側の角部分に前記内外装下地部材の前記前面及び側面が嵌合する縦溝が形成される
内外装下地兼用型枠パネル。
【請求項2】
角度をもって隣り合う壁面間の角部をコンクリートで打設形成するために用いる、型枠パネルに内外装下地部材を分離可能に一体に形成した内外装下地兼用型枠パネルであって、
前記内外装下地部材は、長尺部材であって、前記角部に固定した状態において、前記角度をもって隣接する前記壁面に平行な2面からなる前面を有し、
前記型枠パネルは、前記角度をもって隣接するせき板を有し、打設面側の角部分に前記内外装下地部材の前記前面及び当該前面に連接する側面が嵌合する縦溝が形成されるとともに、当該縦溝の底面に当該縦溝の長手方向に沿った分割面により分割可能に形成される
内外装下地兼用型枠パネル。
【請求項3】
前記内外装下地部材は、長手方向に沿った分割面により分割可能に形成される請求項1又は2に記載の内外装下地兼用型枠パネル。
【請求項4】
角度をもって隣り合う壁面間のラウンド面で形成されるコーナー部をコンクリートで打設形成するために用いる、型枠パネルに内外装下地部材を分離可能に一体に形成した内外装下地兼用型枠パネルであって、
前記内外装下地部材は、断面四角形状の長尺部材であって1以上設けられ、前記ラウンド面の所定位置に固定した状態において、前面と連接する両側面は型枠パネルの所定の移動方向に沿った直線を前面との接合縁と合わせると、当該直線に対し平行もしくは外側に傾いており、
前記型枠パネルは、前記ラウンド面に沿ったせき板を有し、打設面側の前記所定位置に対応する位置に、前記内外装下地部材の前記前面及び側面が嵌合する縦溝が形成されると
を有する内外装下地兼用型枠パネル。
【請求項5】
角度をもって隣り合う壁面間のラウンド面で形成されるコーナー部をコンクリートで打設形成するために用いる、内外装下地部材を分離可能に一体に形成した型枠パネルである内外装下地兼用型枠パネルであって、
前記内外装下地部材は、断面四角状の長尺部材からなり一以上設けられ、
前記型枠パネルは、前記ラウンド面に沿ったせき板を有し、前記内外装下地部材の前面及び側面が嵌合する縦溝が形成されるとともに、当該縦溝のうちの少なくとも一つの底面において長手方向に沿った分割面に沿って分割可能に形成される
内外装下地兼用型枠パネル。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか1項に記載される内外装下地部材。
【請求項7】
請求項1、2、4、5のいずれか1項に記載される型枠パネル。
【請求項8】
請求項1から5のいずれか1項に記載の内外装下地兼用型枠パネルをコンクリート打設面に固定し、コンクリートを打設してコンクリート躯体を形成するコンクリート打設工程と、
形成されたコンクリート躯体から前記内外装下地部材を残して前記型枠パネルを解体撤去する型枠パネル除去工程と
を有するコンクリート構造物の型枠工法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2008−208630(P2008−208630A)
【公開日】平成20年9月11日(2008.9.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−46761(P2007−46761)
【出願日】平成19年2月27日(2007.2.27)
【出願人】(501077527)
【Fターム(参考)】