説明

下層膜形成組成物

【課題】埋め込み性に優れ、昇華物量が少ないことに加え、エッチング耐性に優れ、屈折係数及び衰退係数の値が良好である下層膜を形成可能な下層膜形成組成物を提供する。
【解決手段】(A)所定の構造単位を有する重合体と、(B)ブチルエーテル基を有する架橋剤と、(C)溶剤と、を含有する下層膜形成組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、下層膜形成組成物に関する。更に詳しくは、埋め込み性に優れ、昇華物量が少ないことに加え、エッチング耐性に優れ、屈折係数及び衰退係数の値が良好である下層膜を形成可能な下層膜形成組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体装置の製造プロセスは、シリコンウエハ上に被加工膜として複数の物質を堆積させ、この被加工膜にそれぞれ所望のパターンを形成する(パターニングする)工程を多く含んでいる。このパターニングは、具体的には、まず、レジスト(感光性物質)を被加工膜上に堆積してレジスト膜を形成し、このレジスト膜の所定の領域に露光を行う。次に、レジスト膜の露光部または未露光部を現像処理によって除去してレジストパターンを形成する。その後、このレジストパターンをエッチングマスクとして被加工膜をドライエッチングする。
【0003】
このようなプロセスにおいては、レジスト膜に露光を施すための露光光源としてArFエキシマレーザ等の紫外光が用いられている。現在、大規模集積回路(LSI)の微細化に対する要求が益々高まっており、必要とする解像度が露光光の波長以下になることがある。このように解像度が露光光の波長以下になると、露光量裕度、フォーカス裕度等の露光プロセス裕度が不足することとなる。このような露光プロセス裕度の不足を補うためには、レジスト膜の膜厚を薄くして解像性を向上させることが有効であるが、一方で被加工膜のエッチングに必要なレジスト膜厚を確保することが困難になってしまう。
【0004】
このようなことから、被加工膜上にレジスト下層膜(以下、単に「下層膜」と記す)を形成し、レジストパターンを一旦、下層膜に転写して下層膜パターンを形成した後、この下層膜パターンをエッチングマスクとして用いて被加工膜に転写するプロセス(多層プロセスとも言う)の検討が行われている。このようなプロセスにおいて、下層膜としてはエッチング耐性を有する材料からなるものが好ましい。例えば、このような下層膜を形成する材料としては、エッチング中のエネルギーを吸収し、エッチング耐性があることで知られるアセナフチレン骨格を有する重合体を含有する組成物等が提案されている(例えば、特許文献1〜5参照)。
【0005】
ところで、0.13μm以下の微細度のLSIパターンルールになると、配線遅延がLSIの高速化に与える影響が多くなり、現状のLSIのプロセス技術により、LSIの高性能化を進展させることが難しくなってきている。そこで、配線遅延を小さくするために用いられる材料(配線材)の一つとしては、Cuが知られている。そして、配線材をAlからCuへ変えるために導入された技術がデュアルダマシンプロセスである(例えば、特許文献6参照)。このデュアルダマシンプロセスにおいては、従来の配線材Alの基板に比べて、微細かつアスペクト比(凹凸)の大きい基板上に下層膜を形成することになる。
【0006】
ここで、特許文献1〜4に記載された下層膜形成組成物は、アセナフチレン骨格特有の良好なエッチング耐性や反射防止機能を有しているが、微細かつアスペクト比の大きい基板を十分に埋め込むことができない。
【0007】
そのため、アスペクト比の大きい基板上に埋め込む方法、即ち、埋め込み性を向上させる方法として、下層膜形成組成物中の重合体(アセナフチレン骨格を有する重合体)の分子量を2000以下にすることが報告されている(特許文献5参照)。また、特許文献7においては、下層膜形成組成物中の重合体の分子量を3000以下にすることが報告されている。
【0008】
【特許文献1】特開2000−143937号公報
【特許文献2】特開2001−40293号公報
【特許文献3】特開2004−168748号公報
【特許文献4】特開2005−250434号公報
【特許文献5】特開2005−15532号公報
【特許文献6】米国特許第6057239号明細書
【特許文献7】特開2000−294504号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、下層膜形成組成物中の重合体、特にアセナフチレン骨格を有する重合体の分子量を小さくすると、この下層膜形成組成物によって下層膜を形成する際に、重合体中の低分子成分やその分解物が昇華することがあった。このように低分子成分やその分解物が昇華する(即ち、昇華物が生じる)と、下層膜を形成するための装置が汚染されるという問題があった。
【0010】
このように、下層膜形成組成物の埋め込み性を向上させることを目的として、重合体の分子量を下げると、昇華物量が増加してしまうという問題があった。そこで、アスペクト比の大きい基板に対する埋め込み性に優れることに加え、下層膜を形成する際に生じる昇華物の量が低減された下層膜形成組成物の開発が切望されていた。
【0011】
本発明は、上述のような従来技術の課題を解決するためになされたものであり、埋め込み性に優れ、昇華物量が少ないことに加え、エッチング耐性に優れ、屈折係数及び衰退係数の値が良好である下層膜を形成可能な下層膜形成組成物を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明により、以下の下層膜形成組成物が提供される。
【0013】
[1] (A)下記一般式(1)で表される構造単位、下記一般式(2)で表される構造単位、下記一般式(3)で表される構造単位、及び、下記一般式(4)で表される構造単位を有する重合体と、(B)ブチルエーテル基を有する架橋剤と、(C)溶剤と、を含有する下層膜形成組成物。
【0014】
【化1】

(但し、前記一般式(1)中、Rは水素原子、炭素数1〜6の置換されていてもよいアルキル基、ヒドロキシル基、炭素数1〜6のアルコキシル基、カルボキシル基、炭素数1〜6のアルコキシカルボニル基、炭素数1〜6のアルコキシカルボニルオキシ基、メチロール基、または炭素数1〜6のアルコキシメチロール基を示し、R及びRは、それぞれ、水素原子、または炭素数1〜6の置換されていてもよいアルキル基を示す。)
【0015】
【化2】

(但し、前記一般式(2)中、Rは水素原子またはメチル基を示す。Rは炭素数1〜4のアルキレン基を示す。)
【0016】
【化3】

(但し、前記一般式(3)中、Rは水素原子、炭素数1〜6の置換されていてもよいアルキル基、ヒドロキシル基、炭素数1〜6のアルコキシル基、カルボキシル基、炭素数1〜6のアルコキシカルボニル基、炭素数1〜6のアルコキシカルボニルオキシ基、メチロール基、または炭素数1〜6のアルコキシメチロール基を示し、Rは水素原子または炭素数1〜6の置換されていてもよいアルキル基を示す。nは1〜3の整数を示す。)
【0017】
【化4】

(但し、前記一般式(4)中、R、RおよびR10は、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜6の置換されていてもよいアルキル基を示す。)
【0018】
[2] 前記(A)重合体のポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)が、500〜10000である前記[1]に記載の下層膜形成組成物。
【0019】
[3] 前記(B)架橋剤は、下記一般式(5)または(6)で表される化合物である前記[1]または[2]に記載の下層膜形成組成物。
【0020】
【化5】

(但し、前記一般式(5)中、R11は、それぞれ独立に、水素原子、メチル基、n−ブチル基、またはiso−ブチル基を示す。但し、4つあるR11のうち2つ以上が、n−ブチル基またはiso−ブチル基である。)
【0021】
【化6】

(但し、前記一般式(6)中、R12は、それぞれ独立に、水素原子、メチル基、n−ブチル基、またはiso−ブチル基を示す。但し、6つあるR12のうち2つ以上が、n−ブチル基またはiso−ブチル基である。)
【0022】
[4] 前記(A)重合体に含まれる、前記一般式(1)で表される構造単位の割合が、前記(A)重合体の全構造単位100モル%に対して5〜80モル%であり、前記(A)重合体に含まれる、前記一般式(2)で表される構造単位の割合が、前記(A)重合体の全構造単位100モル%に対して5〜80モル%であり、前記(A)重合体に含まれる、前記一般式(3)で表される構造単位の割合が、前記(A)重合体の全構造単位100モル%に対して0.1〜50モル%である前記[1]〜[3]のいずれかに記載の下層膜形成組成物。
【0023】
[5] (D)酸発生剤を更に含有する前記[1]〜[4]のいずれかに記載の下層膜形成組成物。
【発明の効果】
【0024】
本発明の下層膜形成組成物は、埋め込み性に優れ、昇華物量が少ないことに加え、エッチング耐性に優れ、屈折係数及び衰退係数の値が良好である下層膜を形成することができるという効果を奏するものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下、本発明を実施するための最良の形態について説明するが、本発明は以下の実施の形態に限定されるものではない。即ち、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、当業者の通常の知識に基づいて、以下の実施の形態に対し適宜変更、改良等が加えられたものも本発明の範囲に属することが理解されるべきである。
【0026】
[1]下層膜形成組成物:
本発明の下層膜形成組成物の一実施形態は、(A)下記一般式(1)で表される構造単位、下記一般式(2)で表される構造単位、下記一般式(3)で表される構造単位、及び、下記一般式(4)で表される構造単位を有する重合体と、(B)ブチルエーテル基を有する架橋剤と、(C)溶剤と、を含有するものである。このような下層膜形成組成物は、埋め込み性に優れ、昇華物量が少ないことに加え、エッチング耐性に優れ、屈折係数及び衰退係数の値が良好である下層膜を形成することができる。
【0027】
【化7】

(但し、前記一般式(1)中、Rは水素原子、炭素数1〜6の置換されていてもよいアルキル基、ヒドロキシル基、炭素数1〜6のアルコキシル基、カルボキシル基、炭素数1〜6のアルコキシカルボニル基、炭素数1〜6のアルコキシカルボニルオキシ基、メチロール基、または炭素数1〜6のアルコキシメチロール基を示し、R及びRは、それぞれ、水素原子、または炭素数1〜6の置換されていてもよいアルキル基を示す。)
【0028】
【化8】

(但し、前記一般式(2)中、Rは水素原子またはメチル基を示す。Rは炭素数1〜4のアルキレン基を示す。)
【0029】
【化9】

(但し、前記一般式(3)中、Rは水素原子、炭素数1〜6の置換されていてもよいアルキル基、ヒドロキシル基、炭素数1〜6のアルコキシル基、カルボキシル基、炭素数1〜6のアルコキシカルボニル基、炭素数1〜6のアルコキシカルボニルオキシ基、メチロール基、または炭素数1〜6のアルコキシメチロール基を示し、Rは水素原子または炭素数1〜6の置換されていてもよいアルキル基を示す。nは1〜3の整数を示す。)
【0030】
【化10】

(但し、前記一般式(4)中、R、RおよびR10は、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜6の置換されていてもよいアルキル基を示す。)
【0031】
[1−1](A)重合体:
本実施形態の下層膜形成組成物の含有する(A)重合体は、一般式(1)で表される構造単位(以下、「構造単位(1)」と記す場合がある。)、一般式(2)で表される構造単位(以下、「構造単位(2)」と記す場合がある。)、一般式(3)で表される構造単位(以下、「構造単位(3)」と記す場合がある。)、及び、一般式(4)で表される構造単位(以下、「構造単位(4)」と記す場合がある。)を有するものである。このような重合体を含有することによって、脂肪族が多く含まれる主鎖、構造単位中の脂肪族、末端のエステル基が樹脂全体の柔軟性を向上させるため、特に径の小さいビアやトレンチに対する埋め込みが良くなるという利点がある。
【0032】
[1−1−1]一般式(1)で表される構造単位:
(A)重合体が一般式(1)で表される構造単位を含有するため、本実施形態の下層膜形成組成物は、エッチング耐性に優れる下層膜を形成することができる。
【0033】
一般式(1)中、Rの炭素数1〜6のアルコキシル基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、i−プロポキシ基、n−ブトキシ基、1−メチルプロポキシ基、2−メチルプロポキシ基、tert−ブトキシ基、n−ペンチルオキシ基、n−ヘキシルオキシ基等が挙げられる。
【0034】
炭素数1〜6のアルコキシカルボニル基としては、例えば、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、n−プロポキシカルボニル基、i−プロポキシカルボニル基、n−ブトキシカルボニル基、1−メチルプロポキシカルボニル基、2−メチルプロポキシカルボニル基、tert−ブトキシカルボニル基、n−ペンチルオキシカルボニル基、n−ヘキシルオキシカルボニル基等が挙げられる。
【0035】
炭素数1〜6のアルコキシカルボニルオキシ基としては、例えば、メトキシカルボニルオキシ基、エトキシカルボニルオキシ基、n−プロポキシカルボニルオキシ基、i−プロポキシカルボニルオキシ基、n−ブトキシカルボニルオキシ基、1−メチルプロポキシカルボニルオキシ基、2−メチルプロポキシカルボニルオキシ基、tert−ブトキシカルボニルオキシ基、n−ペンチルオキシカルボニルオキシ基、n−ヘキシルオキシカルボニルオキシ基等が挙げられる。
【0036】
炭素数1〜6のアルコキシメチロール基としては、例えば、メトキシメチロール基、エトキシメチロール基、n−プロポキシメチロール基、i−プロポキシメチロール基、n−ブトキシメチロール基、1−メチルプロポキシメチロール基、2−メチルプロポキシメチロール基、tert−ブトキシメチロール基、n−ペンチルオキシメチロール基、n−ヘキシルオキシメチロール基等が挙げられる。
【0037】
一般式(1)中、R及びRの炭素数1〜6の置換されていてもよいアルキル基としては、例えば、メチル基、ブチル基、ヘキシル基などを挙げることができる。これらの中でも、メチル基が好ましい。
【0038】
このような一般式(1)で表される構造単位を与える単量体としては、例えば、アセナフチレン、3−ヒドロキシメチルアセナフチレン、4−ヒドロキシメチルアセナフチレン、5−ヒドロキシメチルアセナフチレン、1−メチル−3−ヒドロキシメチルアセナフチレン、1−メチル−4−ヒドロキシメチルアセナフチレン、1−メチル−5−ヒドロキシメチルアセナフチレン、1−メチル−6−ヒドロキシメチルアセナフチレン、1−メチル−7−ヒドロキシメチルアセナフチレン、1−メチル−8−ヒドロキシメチルアセナフチレン、1,2−ジメチル−3−ヒドロキシメチルアセナフチレン、1、2−ジメチル−4−ヒドロキシメチルアセナフチレン、1、2−ジメチル−5−ヒドロキシメチルアセナフチレン、1−フェニル−3−ヒドロキシメチルアセナフチレンアセナフチレン、1−フェニル−4−ヒドロキシメチルアセナフチレンアセナフチレン、
【0039】
1−フェニル−5−ヒドロキシメチルアセナフチレンアセナフチレン、1−フェニル−6−ヒドロキシメチルアセナフチレンアセナフチレン、1−フェニル−7−ヒドロキシメチルアセナフチレン、1−フェニル−8−ヒドロキシメチルアセナフチレンアセナフチレン、1、2−ジフェニル−3−ヒドロキシメチルアセナフチレン、1、2−ジフェニル−4−ヒドロキシメチルアセナフチレン、1、2−ジフェニル−5−ヒドロキシメチルアセナフチレン等のヒドロキシメチルアセナフチレン類;
【0040】
3−メトキシメチルアセナフチレン、4−メトキシメチルアセナフチレン、5−メトシメチルアセナフチレン、1−メチル−3−メトキシメチルアセナフチレン、1−メチル−4−メトキシメチルアセナフチレン、1−メチル−5−メトキシメチルアセナフチレン、1−メチル−6−メトキシメチルアセナフチレン、1−メチル−7−メトキシメチルアセナフチレン、1−メチル−8−メトキシメチルアセナフチレン、1、2−ジメチル−3−メトキシメチルアセナフチレン、1、2−ジメチル−4−メトキシメチルアセナフチレン、1、2−ジメチル−5−メトキシメチルアセナフチレン、1−フェニル−3−メトキシメチルアセナフチレン、
【0041】
1−フェニル−4−メトキシメチルアセナフチレン、1−フェニル−5−メトキシメチルアセナフチレン、1−フェニル−6−メトキシメチルアセナフチレン、1−フェニル−7−メトキシメチルアセナフチレン、1−フェニル−8−メトキシメチルアセナフチレン、1、2−ジフェニル−3−メトキシメチルアセナフチレン、1、2−ジフェニル−4−メトキシメチルアセナフチレン、1、2−ジフェニル−5−メトキシメチルアセナフチレン等のメトキシメチルアセナフチレン類;
【0042】
3−フェノキシメチルアセナフチレン、4−フェノキシメチルアセナフチレン、5−フェノキシメチルアセナフチレン、3−ビニルオキシメチルアセナフチレン、4−ビニルオキシメチルアセナフチレン、5−ビニルオキシメチルアセナフチレン、3−アセトキシメチルアセナフチレン、4−アセトキシメチルアセナフチレン、5−アセトキシメチルアセナフチレン等が挙げられる。なお、これらの単量体は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0043】
これらの中でも、アセナフチレン、3−ヒドロキシメチルアセナフチレン、4−ヒドロキシメチルアセナフチレン、5−ヒドロキシメチルアセナフチレン、3−メトキシメチルアセナフチレン、4−メトキシメチルアセナフチレン、5−メトキシメチルアセナフチレンが好ましい。
【0044】
(A)重合体に含まれる、一般式(1)で表される構造単位の割合は、(A)重合体の全構造単位100モル%に対して5〜80モル%であることが好ましく、30〜80モル%であることが更に好ましく、50〜70モル%であることが特に好ましい。上記割合が5モル%未満であると、エッチング耐性が低下するため、エッチング時のパターン転写ができなくなるおそれがある。一方、80モル%超であると、反射防止機能が低下するため、リソグラフィー技術におけるパターン形成能が十分に得られなくなるおそれがある。
【0045】
[1−1−2]一般式(2)で表される構造単位:
(A)重合体が一般式(2)で表される構造単位を含有するため、重合体(A)のガラス転移温度が低下し、柔軟性が付与され、アスペクト比の大きい基板への埋め込み性が良好な組成物となる。更には、加熱又は露光により分子鎖間で架橋反応を生起する特性が得られ、重合体(A)の架橋度(硬化度)を制御することが可能となり、インターミキシングを防止することができる。
【0046】
一般式(2)中、Rの炭素数2〜4のアルキレン基としては、例えば、エチレン基、プロピレン基、i−プロピレン基、ブチレン基、i−ブチレン基等が挙げられる。
【0047】
このような一般式(2)で表される構造単位を与える単量体としては、例えば、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、2−ヒドロキシブチルアクリレートが挙げられる。なお、これらの単量体は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0048】
(A)重合体に含まれる、一般式(2)で表される構造単位の割合は、(A)重合体の全構造単位100モル%に対して5〜80モル%であることが好ましく、5〜60モル%であることが更に好ましく、5〜50モル%であることが特に好ましい。上記割合が5モル%未満であると、架橋構造が十分に形成されにくくなるため、中間層製膜時に中間層とインターミキシングを起こし、エッチング選択性が低下するおそれがある。一方、80モル%超であると、エッチング耐性が低下するため、エッチングによるパターン転写ができなくなるおそれがある。
【0049】
[1−1−3]一般式(3)で表される構造単位:
(A)重合体が一般式(3)で表される構造単位を含有することによって、形成される下層膜の反射率をコントロールすることができる。具体的には、構造単位(3)の含有割合を大きくすると、ArF波長における消衰係数(k値)を大きくすることができる。
【0050】
一般式(3)中、Rは一般式(1)中のRと同様のものを例示することができる。一般式(3)中、Rの炭素数1〜6の置換されていてもよいアルキル基は、一般式(1)中のRまたはRの炭素数1〜6の置換されていてもよいアルキル基と同様のものを例示することができる。
【0051】
このような一般式(3)で表される構造単位を与える単量体としては、例えば、スチレン、ヒドロキシスチレン、tert−ブトキシスチレン、tert−ブトキシカルボニルオキシスチレン、α−メチルスチレン、4−メチルスチレン、2−メチルスチレン、3−メチルスチレン、4−メトキシスチレン、4−ヒドロキシメチルスチレン、3−ヒドロキシメチルスチレン、4−エチルスチレン、4−エトキシスチレン、3,4−ジメチルスチレン、3,4−ジエチルスチレン、2−クロロスチレン、3−クロロスチレン、4−クロロ−3−メチルスチレン、4−t−ブチルスチレン、2,4−ジクロロスチレン、2,6−ジクロロスチレン等が挙げられる。なお、これらの単量体は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0052】
これらの中でも、スチレン、4−ヒドロキシメチルスチレン、3−ヒドロキシメチルスチレン、tert−ブトキシスチレン、tert−ブトキシカルボニルオキシスチレンが好ましい。
【0053】
(A)重合体に含まれる、一般式(3)で表される構造単位の割合は、(A)重合体の全構造単位100モル%に対して0.1〜50モル%であることが好ましく、1〜30モル%であることが更に好ましく、3〜20モル%であることが特に好ましい。上記割合が0.1モル%未満であると、反射防止機能が低下するため、リソグラフィー技術におけるパターン形成能が十分に得られなくなるおそれがある。また、50モル%超の場合にも、反射防止機能が低下するため、リソグラフィー技術におけるパターン形成能が十分に得られなくなるおそれがある。
【0054】
[1−1−4]一般式(4)で表される構造単位:
(A)重合体が一般式(4)で表される構造単位を含有することによって、即ち、構造単位(4)が(A)重合体の末端に位置することによって、樹脂((A)重合体)に柔軟性を与えることに加え、(A)重合体は分解しにくいため、埋め込み性が良好となるとともに低昇華性の下層膜形成組成物を得ることができる。
【0055】
一般式(4)中、R、R及び10の炭素数1〜6の置換されていてもよいアルキル基は、一般式(1)中のRまたはRの炭素数1〜6の置換されていてもよいアルキル基と同様のものを例示することができる。
【0056】
この一般式(4)で表される構造単位は、重合体(A)を製造するときに用いられるラジカル重合開始剤に由来する構造単位である。このラジカル重合開始剤の市販品としては、全て商品名で、例えば、「V−601」、「VE−057」、「V−501」、「VA−057」(以上、和光純薬社製)等が挙げられる。これらの中でも、エステル基で保護されるため、樹脂((A)重合体)の末端が柔軟な骨格であるという観点から、「V−601」が好ましい。
【0057】
(A)重合体に含まれる、一般式(4)で表される構造単位の割合は、(A)重合体の全構造単位100モル%に対して0.01〜50モル%であることが好ましく、0.1〜30モル%であることが更に好ましく、1〜20モル%であることが特に好ましい。上記割合が0.01モル%未満であると、樹脂の柔軟性が低下するため、埋め込み性が低下するおそれがある。一方、50モル%超であると、エッチング耐性が低下するため、パターン転写能力が低下するおそれがある。
【0058】
[1−1−5]その他の構造単位:
(A)重合体は、上述した構造単位(1)、構造単位(2)、構造単位(3)、及び構造単位(4)以外に、その他の構造単位を含有していてもよい。その他の構造単位を与える単量体としては、例えば、グリシジルメタクリレート、ビニルアントラセン、ビニルカルバゾール、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、カプロン酸ビニル、(メタ)アクリロニトリル、α−クロロアクリロニトリル、シアン化ビニリデン、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、i−プロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、n−ヘキシル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸ビニル、ジメチル・ビニル・(メタ)アクリロイルオキシメチルシラン、クロロエチルビニルエーテル、クロロ酢酸ビニル、クロロ酢酸アリル、(メタ)アクリルアミド、クロトン酸アミドなどを挙げることができる。これらの中でも、グリシジルメタクリレートが好ましい。
【0059】
(A)重合体に含まれる、その他の構造単位の割合は、(A)重合体の全構造単位100モル%に対して1〜50モル%であることが好ましい。
【0060】
(A)重合体は、そのポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)が、500〜10000であることが好ましく、1500〜5000であることが更に好ましい。上記重量平均分子量(Mw)が500未満であると、下層膜を形成する際に下層膜由来の昇華物量が増大し、成膜装置を汚染してしまうおそれがある。一方、10000超であると、アスペクト比の大きい基板への埋め込み性が悪化するおそれがある。ここで、本明細書において「ポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)」は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィにより測定したポリスチレン換算の重量平均分子量の値である。
【0061】
また、重量平均分子量(Mw)が1500〜5000である場合には、下層膜形成時における下層膜由来の昇華物量を十分に抑制することができるとともに、アスペクト比の大きな基板へも良好に埋め込むことができる下層膜形成組成物を得ることができる。
【0062】
(A)重合体を製造するためには、例えば、まず、構造単位(1)を与える単量体、構造単位(2)を与える単量体、構造単位(3)を与える単量体、及び、その他の構造単位を与える単量体からなる単量体成分を、この単量体成分を溶解可能な溶媒(例えば、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等)に溶解させて溶解液を得る。次に、この溶解液に、構造単位(4)を与える単量体(即ち、ラジカル重合開始剤)を加える。次に、所定の温度(例えば、50〜90℃)まで昇温させて4〜8時間重合を行い、重合反応液を得る。その後、重合反応液をn−へプタンやメタノール等の有機溶媒によって再沈させて(A)重合体を得ることができる。
【0063】
なお、ラジカル重合開始剤の使用量は、所望の重量平均分子量を有する(A)重合体によって適宜選択することができるが、重量平均分子量が500〜10000の(A)重合体を得る場合には、重合に用いられる全単量体の量(構造単位(1)を与える単量体、構造単位(2)を与える単量体、構造単位(3)を与える単量体、構造単位(4)を与える単量体、及び、その他の構造単位を与える単量体の総量)100質量部に対して、0.5〜30質量部であることが好ましく、1〜20質量部であることが更に好ましく、3〜15質量部であることが特に好ましい。
【0064】
本実施形態の下層膜形成組成物に含有される(A)重合体の含有割合は、形成される下層膜の膜厚により適宜選択することができるが、下層膜形成組成物の固形分含量に対して、5〜30質量%であることが好ましく、8〜15質量%であることが更に好ましい。この(A)重合体の含有割合が5質量%未満であると、十分な膜厚を有する下層膜を得られないおそれがある。一方、30質量%超であると、下層膜形成組成物の粘度が高くなりすぎ、基板への埋め込み性が悪化するおそれがある。
【0065】
なお、本実施形態の下層膜形成組成物に含有される(A)重合体は、1種のみ含有されていてもよいし、2種以上含有されていてもよい。
【0066】
[1−2](B)架橋剤:
本実施形態の下層膜形成組成物に含有される(B)架橋剤は、ブチルエーテル基を有するものである。この(B)架橋剤は、一般的にハレーションを防止する作用を有する成分である。(B)架橋剤を含有することによって、下層膜の膜密度が向上するため、中間層とインターミキシングを起こしにくく、エッチング耐性が向上するという利点がある。
【0067】
(B)架橋剤としては、特に制限はないが、下記一般式(5)または(6)で表される化合物であることが好ましい。このような一般式(5)または(6)で表される化合物であると、揮発性が低下するため、昇華しにくくなるという利点がある。
【0068】
【化11】

(但し、前記一般式(5)中、R11は、それぞれ独立に、水素原子、メチル基、n−ブチル基、またはiso−ブチル基を示す。但し、4つあるR11のうち2つ以上が、n−ブチル基またはiso−ブチル基である。)
【0069】
【化12】

(但し、前記一般式(6)中、R12は、それぞれ独立に、水素原子、メチル基、n−ブチル基、またはiso−ブチル基を示す。但し、6つあるR12のうち2つ以上が、n−ブチル基またはiso−ブチル基である。)
【0070】
一般式(5)で表される化合物は、4つあるR11のうち2つ以上が、n−ブチル基またはiso−ブチル基であることによって、(B)架橋剤の昇華性が更に抑制されるため、下層膜形成組成物に由来する昇華物によって塗布装置が汚染されることを防止することができる。なお、n−ブチル基の数が多いほど、(B)架橋剤の昇華を抑制することができるため、4つあるR11の全てがn−ブチル基であることが好ましい。
【0071】
一般式(6)で表される化合物は、6つあるR12のうち2つ以上が、n−ブチル基またはiso−ブチル基であることによって、(B)架橋剤の昇華性が更に抑制されるため、下層膜形成組成物に由来する昇華物によって塗布装置が汚染されることを防止することができる。なお、n−ブチル基の数が多いほど、(B)架橋剤の昇華を抑制することができるため、6つあるR12の全てがn−ブチル基であることが好ましい。
【0072】
(B)架橋剤の配合量は、(A)重合体100質量部に対して、1〜50質量部であることが好ましく、5〜30質量部であることが更に好ましい。上記配合量が1質量部未満であると、架橋性能が劣化し、下層膜にハレーションが生じるおそれがある。一方、50質量部超であると、未反応の(B)架橋剤(即ち、(A)重合体と反応していないもの)が下層膜中に多く残ることになるため、下層膜のエッチング耐性が劣化するおそれがある。
【0073】
本実施形態の下層膜形成組成物には、(B)架橋剤以外に、その他の架橋剤成分を含有させることができる。その他の架橋剤成分としては、例えば、多核フェノール類や硬化剤などを挙げることができる。
【0074】
多核フェノール類としては、例えば、4,4’−ビフェニルジオール、4,4’−メチレンビスフェノール、4,4’−エチリデンビスフェノール、ビスフェノールA等の2核フェノール類;4,4’,4”−メチリデントリスフェノール、4,4’−〔1−{4−(1−[4−ヒドロキシフェニル]−1−メチルエチル)フェニル}エチリデン〕ビスフェノール等の3核フェノール類;ノボラック等のポリフェノール類等が挙げられる。
【0075】
硬化剤としては、例えば、2,3−トリレンジイソシアナート、2,4−トリレンジイソシアナート、3,4−トリレンジイソシアナート、3,5−トリレンジイソシアナート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアナート、ヘキサメチレンジイソシアナート、1,4−シクロヘキサンジイソシアナート等のジイソシアナート類等を挙げることができる。
【0076】
硬化剤の市販品としては、例えば、以下全て商品名で、エピコート812、同815、同826、同828、同834、同836、同871、同1001、同1004、同1007、同1009、同1031(以上、油化シェルエポキシ社製)、アラルダイト6600、同6700、同6800、同502、同6071、同6084、同6097、同6099(以上、チバガイギー社製)、DER331、同332、同333、同661、同644、同667(以上、ダウケミカル社製)等のエポキシ化合物;サイメル300、同301、同303、同350、同370、同771、同325、同327、同703、同712、同701、同272、同202、マイコート506、同508(以上、三井サイアナミッド社製)等のメラミン系硬化剤;サイメル1123、同1123−10、同1128、マイコート102、同105、同106、同130(以上、三井サイアナミッド(株)製)等のベンゾグアナミン系硬化剤;サイメル1170、同1172(以上、三井サイアナミッド社製)、ニカラックN−2702(三和ケミカル社製)等のグリコールウリル系硬化剤等が挙げられる。
【0077】
[1−3](C)溶剤:
本実施形態の下層膜形成組成物に含有される(C)溶剤は、(A)重合体、(B)架橋剤、及び(D)酸発生剤等を溶解することができるものである限り特に制限はなく、従来公知のものを好適に使用することができる。
【0078】
(C)溶剤としては、例えば、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノ−n−プロピルエーテル、エチレングリコールモノ−n−ブチルエーテル等のエチレングリコールモノアルキルエーテル類;エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノ−n−プロピルエーテルアセテート、エチレングリコールモノ−n−ブチルエーテルアセテート等のエチレングリコールモノアルキルエーテルアセテート類;ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジ−n−プロピルエーテル、ジエチレングリコールジ−n−ブチルエーテル等のジエチレングリコールジアルキルエーテル類;トリエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジエチルエーテル等のトリエチレングリコールジアルキルエーテル類;
【0079】
プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノ−n−プロピルエーテル、プロピレングリコールモノ−n−ブチルエーテル等のプロピレングリコールモノアルキルエーテル類;プロピレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールジエチルエーテル、プロピレングリコールジ−n−プロピルエーテル、プロピレングリコールジ−n−ブチルエーテル等のプロピレングリコールジアルキルエーテル類;プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエテルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノ−n−プロピルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノ−n−ブチルエーテルアセテート等のプロピレングリコールモノアルキルエーテルアセテート類;
【0080】
乳酸メチル、乳酸エチル、乳酸n−プロピル、乳酸i−プロピル、乳酸n−ブチル、乳酸i−ブチル等の乳酸エステル類;ギ酸メチル、ギ酸エチル、ギ酸n−プロピル、ギ酸i−プロピル、ギ酸n−ブチル、ギ酸i−ブチル、ギ酸n−アミル、ギ酸i−アミル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸n−プロピル、酢酸i−プロピル、酢酸n−ブチル、酢酸i−ブチル、酢酸n−アミル、酢酸i−アミル、酢酸n−ヘキシル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、プロピオン酸n−プロピル、プロピオン酸i−プロピル、プロピオン酸n−ブチル、プロピオン酸i−ブチル、酪酸メチル、酪酸エチル、酪酸n−プロピル、酪酸i−プロピル、酪酸n−ブチル、酪酸i−ブチル等の脂肪族カルボン酸エステル類;
【0081】
ヒドロキシ酢酸エチル、2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオン酸エチル、3−メトキシ−2−メチルプロピオン酸メチル、2−ヒドロキシ−3−メチル酪酸メチル、メトキシ酢酸エチル、エトキシ酢酸エチル、3−メトキシプロピオン酸メチル、3−エトキシプロピオン酸エチル、3−メトキシプロピオン酸エチル、3−メトキシプロピルアセテート、3−メトキシブチルアセテート、3−メチル−3−メトキシブチルアセテート、3−メチル−3−メトキシブチルプロピオネート、3−メチル−3−メトキシブチルブチレート、アセト酢酸メチル、ピルビン酸メチル、ピルビン酸エチル等の他のエステル類;トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類;メチルエチルケトン、メチル−n−プロピルケトン、メチル−n−ブチルケトン、2−ヘプタノン、3−ヘプタノン、4−ヘプタノン、シクロヘキサノン等のケトン類;N−メチルホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N−メチルアセトアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン等のアミド類;γ−ブチロラクトン等のラクトン類等を挙げることができる。なお、これらの(C)溶剤は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0082】
これらの中でも、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、乳酸エチル、酢酸n−ブチル、3−エトキシプロピオン酸エチル、3−メトキシプロピオン酸メチル、2−ヘプタノン、シクロヘキサノンが好ましい。
【0083】
(C)溶剤の配合量は、形成される下層膜の膜厚等により適宜選択することができるが、得られる下層膜形成組成物の固形分濃度が、0.01〜70質量%となる範囲であることが好ましく、0.05〜60質量%となる範囲であることが更に好ましく、0.1〜50質量%となる範囲であることが特に好ましい。上記固形分濃度が0.01質量%未満であると、十分な膜厚を有する下層膜を形成することが困難になるおそれがある。一方、70質量%超であると、粘度が高すぎるため、膜の形成が困難になるおそれがある。
【0084】
[1−4](D)酸発生剤:
本実施形態の下層膜形成組成物は、(A)重合体、(B)架橋剤、及び(C)溶剤以外に、(D)酸発生剤を更に含有することができる。この(D)酸発生剤は、露光または加熱により酸を発生する成分である。この(D)酸発生剤を更に含有すると、下層膜の硬化性が向上するため、効率よく製膜し易くなるという利点がある。また、下層膜中の酸濃度が向上することによって、アンモニアなどのアミン成分を遮断するという利点がある。
【0085】
露光により酸を発生する(D)酸発生剤(以下、「光酸発生剤」という。)としては、例えば、ジフェニルヨードニウムトリフルオロメタンスルホネート、ジフェニルヨードニウムノナフルオロ−n−ブタンスルホネート、ジフェニルヨードニウムピレンスルホネート、ジフェニルヨードニウムn−ドデシルベンゼンスルホネート、ジフェニルヨードニウム10−カンファースルホネート、ジフェニルヨードニウムナフタレンスルホネート、ジフェニルヨードニウムヘキサフルオロアンチモネート、ビス(4−t−ブチルフェニル)ヨードニウムトリフルオロメタンスルホネート、ビス(4−t−ブチルフェニル)ヨードニウムノナフルオロ−n−ブタンスルホネート、ビス(4−t−ブチルフェニル)ヨードニウムn−ドデシルベンゼンスルホネート、ビス(4−t−ブチルフェニル)ヨードニウム10−カンファースルホネート、
【0086】
ビス(4−t−ブチルフェニル)ヨードニウムナフタレンスルホネート、ビス(4−t−ブチルフェニル)ヨードニウムヘキサフルオロアンチモネート、トリフェニルスルホニウムトリフルオロメタンスルホネート、トリフェニルスルホニウムノナフルオロ−n−ブタンスルホネート、トリフェニルスルホニウムn−ドデシルベンゼンスルホネート、トリフェニルスルホニウムナフタレンスルホネート、トリフェニルスルホニウム10−カンファースルホネート、トリフェニルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、4−ヒドロキシフェニル・フェニル・メチルスルホニウムp−トルエンスルホネート、4−ヒドロキシフェニル・ベンジル・メチルスルホニウムp−トルエンスルホネート、
【0087】
シクロヘキシル・メチル・2−オキソシクロヘキシルスルホニウムトリフルオロメタンスルホネート、2−オキソシクロヘキシルジシクロヘキシルスルホニウムトリフルオロメタンスルホネート、2−オキソシクロヘキシルジメチルスルホニウムトリフルオロメタンスルホネート、1−ナフチルジメチルスルホニウムトリフルオロメタンスルホネート、1−ナフチルジエチルスルホニウムトリフルオロメタンスルホネート、4−シアノ−1−ナフチルジメチルスルホニウムトリフルオロメタンスルホネート、4−シアノ−1−ナフチルジエチルスルホニウムトリフルオロメタンスルホネート、4−ニトロ−1−ナフチルジメチルスルホニウムトリフルオロメタンスルホネート、4−ニトロ−1−ナフチルジエチルスルホニウムトリフルオロメタンスルホネート、4−メチル−1−ナフチルジメチルスルホニウムトリフルオロメタンスルホネート、4−メチル−1−ナフチルジエチルスルホニウムトリフルオロメタンスルホネート、4−ヒドロキシ−1−ナフチルジメチルスルホニウムトリフルオロメタンスルホネート、4−ヒドロキシ−1−ナフチルジエチルスルホニウムトリフルオロメタンスルホネート、
【0088】
1−(4−ヒドロキシナフタレン−1−イル)テトラヒドロチオフェニウムトリフルオロメタンスルホネート、1−(4−メトキシナフタレン−1−イル)テトラヒドロチオフェニウムトリフルオロメタンスルホネート、1−(4−エトキシナフタレン−1−イル)テトラヒドロチオフェニウムトリフルオロメタンスルホネート、1−(4−メトキシメトキシナフタレン−1−イル)テトラヒドロチオフェニウムトリフルオロメタンスルホネート、1−(4−エトキシメトキシナフタレン−1−イル)テトラヒドロチオフェニウムトリフルオロメタンスルホネート、1−〔4−(1−メトキシエトキシ)ナフタレン−1−イル〕テトラヒドロチオフェニウムトリフルオロメタンスルホネート、1−〔4−(2−メトキシエトキシ)ナフタレン−1−イル〕テトラヒドロチオフェニウムトリフルオロメタンスルホネート、1−(4−メトキシカルボニルオキシナフタレン−1−イル)テトラヒドロチオフェニウムトリフルオロメタンスルホネート、1−(4−エトキシカルボニルオキシナフタレン−1−イル)テトラヒドロチオフェニウムトリフルオロメタンスルホネート、1−(4−n−プロポキシカルボニルオキシナフタレン−1−イル)テトラヒドロチオフェニウムトリフルオロメタンスルホネート、
【0089】
1−(4−i−プロポキシカルボニルオキシナフタレン−1−イル)テトラヒドロチオフェニウムトリフルオロメタンスルホネート、1−(4−n−ブトキカルボニルオキシナフタレン−1−イル)テトラヒドロチオフェニウムトリフルオロメタンスルホネート、1−(4−t−ブトキシカルボニルオキシナフタレン−1−イル)テトラヒドロチオフェニウムトリフルオロメタンスルホネート、1−〔4−(2−テトラヒドロフラニルオキシ)ナフタレン−1−イル〕テトラヒドロチオフェニウムトリフルオロメタンスルホネート、1−〔4−(2−テトラヒドロピラニルオキシ)ナフタレン−1−イル〕テトラヒドロチオフェニウムトリフルオロメタンスルホネート、1−(4−ベンジルオキシ)テトラヒドロチオフェニウムトリフルオロメタンスルホネート、1−(ナフチルアセトメチル)テトラヒドロチオフェニウムトリフルオロメタンスルホネート等のオニウム塩系光酸発生剤類;
【0090】
フェニルビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、4−メトキシフェニルビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、1−ナフチルビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン等のハロゲン含有化合物系光酸発生剤類;1,2−ナフトキノンジアジド−4−スルホニルクロリド、1,2−ナフトキノンジアジド−5−スルホニルクロリド、2,3,4,4’−テトラヒドロキシベンゾフェノンの1,2−ナフトキノンジアジド−4−スルホン酸エステル又は1,2−ナフトキノンジアジド−5−スルホン酸エステル等のジアゾケトン化合物系光酸発生剤類;4−トリスフェナシルスルホン、メシチルフェナシルスルホン、ビス(フェニルスルホニル)メタン等のスルホン化合物系光酸発生剤類;ベンゾイントシレート、ピロガロールのトリス(トリフルオロメタンスルホネート)、ニトロベンジル−9,10−ジエトキシアントラセン−2−スルホネート、トリフルオロメタンスルホニルビシクロ[2,2,1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボジイミド、N−ヒドロキシスクシンイミドトリフルオロメタンスルホネート、1,8−ナフタレンジカルボン酸イミドトリフルオロメタンスルホネート等のスルホン酸化合物系光酸発生剤類等を挙げることができる。
【0091】
これらの光酸発生剤の中でも、ジフェニルヨードニウムトリフルオロメタンスルホネート、ジフェニルヨードニウムノナフルオロ−n−ブタンスルホネート、ジフェニルヨードニウムピレンスルホネート、ジフェニルヨードニウムn−ドデシルベンゼンスルホネート、ジフェニルヨードニウム10−カンファースルホネート、ジフェニルヨードニウムナフタレンスルホネート、ビス(4−t−ブチルフェニル)ヨードニウムトリフルオロメタンスルホネート、ビス(4−t−ブチルフェニル)ヨードニウムノナフルオロ−n−ブタンスルホネート、ビス(4−t−ブチルフェニル)ヨードニウムn−ドデシルベンゼンスルホネート、ビス(4−t−ブチルフェニル)ヨードニウム10−カンファースルホネート、ビス(4−t−ブチルフェニル)ヨードニウムナフタレンスルホネートが好ましい。なお、これらの光酸発生剤は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0092】
加熱により酸を発生する(D)酸発生剤(以下、「熱酸発生剤」という。)としては、例えば、2,4,4,6−テトラブロモシクロヘキサジエノン、ベンゾイントシレート、2−ニトロベンジルトシレート、アルキルスルホネート類等が挙げられる。なお、これらの熱酸発生剤は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。また、光酸発生剤と熱酸発生剤とを併用することもできる。
【0093】
(D)酸発生剤の配合量は、(A)重合体100質量部に対して、100質量部以下であることが好ましく、0.1〜30質量部であることが更に好ましく、0.1〜10質量部であることが特に好ましく、0.5〜10質量部であることが最も好ましい。上記配合量が0.1質量部未満であると、下層膜中に酸が十分に発生せず、膜の硬化性が損なわれるおそれがある。また、レジスト形成用組成物の化学反応を阻害するアンモニアなどのアミン成分をトラップして、アミン成分がレジスト膜中に拡散してしまうことを十分に防止することができなくなるおそれがある。一方、30質量部超であると、下層膜中に発生した過剰の酸がレジスト膜中に拡散し、レジスト膜の形状を悪化させるおそれがある。更に、下層膜を形成する際に、(D)酸発生剤の分解物が昇華物となり、塗布成膜装置を汚染してしまうおそれがある。
【0094】
[1−5]その他の添加剤:
本実施形態の下層膜形成組成物は、(A)重合体、(B)架橋剤、(C)溶剤、及び(D)酸発生剤以外に、その他の添加剤を含有することができる。その他の添加剤としては、例えば、熱硬化性樹脂、放射線吸収剤、界面活性剤、保存安定剤、消泡剤、接着助剤等を挙げることができる。
【0095】
熱硬化性樹脂は、加熱により硬化して溶剤に不溶となり、得られる下層膜と、その上に形成されるレジスト膜との間のインターミキシングを防止する作用を有する成分である。このような熱硬化性樹脂としては、種々の熱硬化性樹脂を使用することができるが、例えば、アクリル系樹脂類(熱硬化アクリル系樹脂類)、フェノール樹脂類、尿素樹脂類、メラミン樹脂類、アミノ系樹脂類、芳香族炭化水素樹脂類、エポキシ樹脂類、アルキド樹脂類等が挙げられる。これらの中でも、尿素樹脂類、メラミン樹脂類、芳香族炭化水素樹脂類が好ましい。
【0096】
熱硬化性樹脂の配合量は、(A)重合体100質量部に対して、20質量部以下であることが好ましく、1〜10質量部であることが更に好ましい。上記配合量が20質量部超であると、得られる下層膜と、その上に形成されるレジスト膜との間のインターミキシングを良好に防止することができる。
【0097】
放射線吸収剤としては、例えば、油溶性染料、分散染料、塩基性染料、メチン系染料、ピラゾール系染料、イミダゾール系染料、ヒドロキシアゾ系染料等の染料類;ビクシン誘導体、ノルビクシン、スチルベン、4,4’−ジアミノスチルベン誘導体、クマリン誘導体、ピラゾリン誘導体等の蛍光増白剤類;ヒドロキシアゾ系染料、商品名「チヌビン234」、「チヌビン1130」(以上、チバガイギー社製)等の紫外線吸収剤類;アントラセン誘導体、アントラキノン誘導体等の芳香族化合物等が挙げられる。なお、これらの放射線吸収剤は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0098】
放射線吸収剤の配合量は、(A)重合体100質量部に対して、100質量部以下であることが好ましく、1〜50質量部であることが更に好ましい。
【0099】
界面活性剤は、塗布性、ストリエーション、ぬれ性、現像性等を改良する作用を有する成分である。界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレン−n−オクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレン−n−ノニルフェニルエーテル、ポリエチレングリコールジラウレート、ポリエチレングリコールジステアレート等のノニオン系界面活性剤や、以下全て商品名で、「ダイナフロー」(JSR社製)、「サーフィノール」(エアープロダクツ社製)、「サーフィノール誘導体」(エアープロダクツ社製)、「ダイノール」(エアープロダクツ社製)、「ダイノール誘導体」(エアープロダクツ社製)、「オルフィン」(エアープロダクツ社製)、「オルフィン誘導体」(エアープロダクツ社製)、「KP341」(信越化学工業社製)、「ポリフローNo.75」、「同No.95」(以上、共栄社油脂化学工業社製)、「エフトップEF101」、「同EF204」、「同EF303」、「同EF352」(以上、トーケムプロダクツ社製)、「メガファックF171」、「同F172」、「同F173」(以上、大日本インキ化学工業社製)、「フロラードFC430」、「同FC431」、「同FC135」、「同FC93」(以上、住友スリーエム社製)、「アサヒガードAG710」、「サーフロンS382」、「同SC101」、「同SC102」、「同SC103」、「同SC104」、「同SC105」、「同SC106」(以上、旭硝子社製)等が挙げられる。なお、これらの界面活性剤は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0100】
界面活性剤の配合量は、(A)重合体100質量部に対して、15質量部以下であることが好ましく、0.001〜10質量部であることが更に好ましい。
【0101】
[2]下層膜形成組成物の調製方法:
本実施形態の下層膜形成組成物の調製方法は、特に限定されないが、例えば、まず、(A)重合体、(B)架橋剤及び(D)酸発生剤を混合し、この混合物に、(C)溶剤を添加して、所定の固形分濃度となるように調整する。その後、孔径0.1μm程度のフィルターでろ過する。このようにして下層膜形成組成物を得ることができる。
【0102】
[3]下層膜形成組成物を用いたデュアルダマシン構造の形成方法:
本実施形態の下層膜形成組成物は、多層レジストプロセスに好適に用いることができるものである。即ち、下層膜形成組成物を用いると、良好なレジストパターンを得ることができることに加え、下層膜形成組成物は、埋め込み性に優れるため、無機被膜(低誘電絶縁膜)の損傷が少ないデュアルダマシン構造を良好に形成することができる。
【0103】
デュアルダマシン構造の形成方法としては、例えば、所定のパターン形状に形成された第一の凹部を有する第一の低誘電絶縁膜の、上記第一の凹部に導電材料を埋め込むことによって所定の第一配線が形成された第一配線層を形成する工程(第一配線形成工程)と、所定のパターン形状に形成された第二の凹部を有する第二の低誘電絶縁膜の、上記第二の凹部に導電材料を埋め込むことによって所定の第二配線が形成された第二配線層を形成する工程(第二配線形成工程)と、所定のパターン形状に形成された第三の凹部を有する第三の低誘電絶縁膜の、上記第三の凹部に導電材料を埋め込むことによって、上記第一配線及び上記第二配線を接続する第三配線が形成された第三配線層を形成する工程(第三配線形成工程)と、を有する方法を挙げることができる。
【0104】
図5は、第二の低誘電絶縁膜7と第三の低誘電絶縁膜9の間にエッチングストッパ層8を形成し、第三の低誘電絶縁膜9と下層膜11の間にエッチングストッパ層10を形成した状態を示す例である。
【0105】
[3−1]第一配線形成工程:
本実施形態の下層膜形成組成物は、上記凹部を形成するために用いられるものであり、第一配線形成工程において、上記凹部を形成する方法としては、具体的には、第一の低誘電絶縁膜が形成されたウエハの第一の低誘電絶縁膜上に、本実施形態の下層膜形成組成物によって下層膜を形成する工程(下層膜形成工程)と、形成した下層膜上にレジスト膜を形成する工程(レジスト膜形成工程)と、このレジスト膜にレジストパターンを形成する工程(レジストパターン形成工程)と、レジストパターンが形成されたレジスト膜をマスクとして用い、レジスト膜のレジストパターンをエッチングによって下層膜に転写する工程(第一転写工程)と、レジストパターンが転写された下層膜をマスクとして用い、下層膜の下に配置された第一の低誘電絶縁膜に下層膜のレジストパターンを転写する工程(第二転写工程)と、第一の低誘電絶縁膜にレジストパターンを転写した後、レジスト膜及び下層膜をプラズマアッシングによって除去する工程(膜除去工程)と、を有する方法を挙げることができる。
【0106】
[3−1−1]下層膜形成工程:
まず、第一の低誘電絶縁膜が形成されたウエハの第一の低誘電絶縁膜上に、本実施形態の下層膜形成組成物によって下層膜を形成する工程(下層膜形成工程)を行う。このように本実施形態の下層膜形成組成物を用いると、この下層膜形成組成物は埋め込み性が良好であるため、エッチング時に低誘電絶縁膜がプラズマに曝されることを防ぐことができる。そのため、低誘電絶縁膜にダメージを与えることなくデュアルダマシン構造を良好に形成することできる。
【0107】
第一の低誘電絶縁膜(Low−k膜)は、下層膜の下に配置されるものである限りその種類等は特に限定されないが、例えば、無機被膜を用いることができる。この無機被膜は、例えば、酸化シリコン、窒化シリコン、酸窒化シリコン、ポリシロキサン等により形成することができる。特に、「ブラックダイヤモンド」(AMAT社製)、「シルク」(ダウケミカル社製)、「LKD5109」(JSR社製)等の市販品により形成することができる。
【0108】
第一の低誘電絶縁膜は、例えば、ウエハ等の基板を被覆するように形成された膜である。第一の低誘電絶縁膜の形成方法は、特に限定されず、公知の方法を用いることができる。例えば、塗布法(SOD:Spin On Dielectric)や化学気相蒸着法(CVD:Chemical Vapor Deposition)等を用いることができる。
【0109】
本実施形態の下層膜形成組成物によって下層膜を形成する方法は、特に限定されないが、例えば、スピンコート法、スプレー法、ディップコート法などを挙げることができる。
【0110】
下層膜の膜厚は、特に限定されないが、100〜2000nmであることが好ましく、200〜1000nmであることが更に好ましく、200〜500nmであることが特に好ましい。下層膜の膜厚が、100nm未満であると、基板を加工するのに十分なマスク量とならず、基板を加工できないおそれがある。一方、2000nm超であると、例えば、ラインアンドスペースのレジストパターンを形成した際に、ライン部分の縦/横比(アスペクト比)が大きくなりすぎ、ライン部分が倒れてしまうおそれがある。
【0111】
[3−1−2]レジスト膜形成工程:
次に、形成した下層膜上にレジスト膜を形成する工程を行う。レジスト膜は、レジスト組成物によって形成することができる。このレジスト組成物としては、従来公知の組成物を用いることができるが、例えば、光酸発生剤を含有するポジ型又はネガ型の化学増幅型レジスト組成物、アルカリ可溶性樹脂とキノンジアジド系感光剤とからなるポジ型レジスト組成物、アルカリ可溶性樹脂と架橋剤とからなるネガ型レジスト組成物等を挙げることができる。
【0112】
レジスト膜を下層膜上に形成する方法は、特に限定されないが、例えば、スピンコート法などを挙げることができる。具体的には、レジスト組成物をスピンコート法によって下層膜上に塗工し、その後、プレベークして、塗膜中の溶剤を揮発させることによってレジスト膜を形成することができる。なお、プレベークの温度は、使用されるレジスト組成物の種類等に応じて適宜調整することができるが、30〜200℃であることが好ましく、50〜150℃であることが更に好ましい。
【0113】
レジスト膜の膜厚は、特に限定されないが、100〜20000nmであることが好ましく、100〜200nmであることが更に好ましい。
【0114】
[3−1−3]レジストパターン形成工程:
次に、レジスト膜にレジストパターンを形成する工程を行う。レジストパターンの形成は、所望のデバイス設計が描写されたマスク(レチクル)を介して放射線などの光をレジスト膜に照射(露光)した後、現像することによって行うことができる。
【0115】
レジスト膜に照射する放射線は、レジスト膜に含有される(D)酸発生剤の種類に応じて適宜選択することができるが、例えば、可視光線、紫外線、遠紫外線、X線、電子線、γ線、分子線、イオンビーム等を挙げることができる。これらの中でも、遠紫外線が好ましく、特に、KrFエキシマレーザー(248nm)、ArFエキシマレーザー(193nm)、Fエキシマレーザー(波長157nm)、Krエキシマレーザー(波長147nm)、ArKrエキシマレーザー(波長134nm)、極紫外線(波長13nm等)が好ましい。
【0116】
現像に使用される現像液は、レジスト組成物の種類に応じて適宜選択することができる。ポジ型化学増幅型レジスト組成物やアルカリ可溶性樹脂を含有するポジ型レジスト組成物に用いる現像液としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、珪酸ナトリウム、メタ珪酸ナトリウム、アンモニア、エチルアミン、n−プロピルアミン、ジエチルアミン、ジ−n−プロピルアミン、トリエチルアミン、メチルジエチルアミン、ジメチル・エタノールアミン、トリエタノールアミン、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド、ピロール、ピペリジン、コリン、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]−7−ウンデセン、1,5−ジアザビシクロ[4.3.0]−5−ノネン等のアルカリ性水溶液が挙げられる。また、これらのアルカリ性水溶液には、水溶性有機溶剤、例えば、メタノール、エタノール等のアルコール類や、界面活性剤を適量添加することもできる。
【0117】
なお、レジスト膜を現像した後、このフォトレジスト膜は、洗浄し、乾燥することが好ましい。また、解像度、パターンプロファイル、現像性等を向上させるため、露光後、現像前に、ポストベークを行うこともできる。
【0118】
[3−1−4]第一転写工程:
次に、レジストパターンが形成されたレジスト膜をマスクとして用い、レジスト膜のレジストパターンをエッチングによって下層膜に転写する工程を行う。例えば、図1に示すように、基板1上に、この基板1側から順に、第一の低誘電絶縁膜2、下層膜3、レジスト膜20が配置されており、本工程では、レジストパターン14が形成されたレジスト膜20をマスクとして用い、レジスト膜20のレジストパターン14がエッチングによって下層膜3に転写される。なお、図1〜図10は、デュアルダマシン構造の形成方法の一工程を説明する模式図である。
【0119】
エッチングの方法は、特に限定されず公知の方法で行うことができる。即ち、ドライエッチングであっても、ウェットエッチングであってもよい。ドライエッチングを用いる場合、ソースガスとしては、例えば、O、CO、CO等の酸素原子を含むガス、He、N、Ar等の不活性ガス、Cl、BCl等の塩素系ガス、その他H、NH等を使用することができる。なお、これらのソースガスは、1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0120】
[3−1−5]第二転写工程:
次に、レジストパターンが転写された下層膜をマスクとして用い、下層膜の下に配置された第一の低誘電絶縁膜に下層膜のレジストパターンを転写する工程を行う。第一の低誘電絶縁膜に下層膜のレジストパターンを転写する方法は、特に制限はないが、上述したエッチング等の方法を挙げることができる。なお、本工程は、上述した第一転写工程によって下層膜にレジストパターンを転写した(即ち、形成した)後、エッチングを続けることによって行うことができる。
【0121】
例えば、図2に示すように、本工程では、レジストパターンが転写された下層膜3をマスクとして用い、下層膜3の下に配置された第一の低誘電絶縁膜2に下層膜3のレジストパターンが転写され、第一の低誘電絶縁膜2に第一の凹部4が形成される。
【0122】
[3−1−6]膜除去工程:
次に、第一の低誘電絶縁膜にレジストパターンを転写した後、レジスト膜及び下層膜をプラズマアッシングによって除去する工程を行う。ここで、「プラズマアッシング」とは、気相中で、酸素等の反応ガスのプラズマを発生させ、このプラズマによって、レジスト膜及び下層膜などの有機物をCOやHO等に分解し、除去することを意味する。
【0123】
プラズマアッシングの条件は、レジスト膜及び下層膜を除去することが可能である限り特に限定されないが、例えば、サセプタに印加する高周波電力が100〜1000Wであることが好ましく、100〜500Wであることが更に好ましい。また、サセプタ温度は20〜100℃であることが好ましく、20〜60℃であることが更に好ましい。また、処理容器内の圧力は、1〜300mtorrであることが好ましく、30〜100mtorrであることが更に好ましい。
【0124】
プラズマアッシングに用いるガスは、レジスト膜及び下層膜を除去することが可能である限り特に限定されないが、プラズマアッシングによる第一の低誘電絶縁膜の比誘電率の上昇を抑えることができるという観点から、窒素、水素、アンモニア及びアルゴンからなる群より選択される少なくとも1種を含むものであることが好ましい。特に、窒素と水素の混合ガス、アンモニアとアルゴンの混合ガス、アンモニア、窒素及び水素の混合ガスであることが好ましい。
【0125】
また、窒素と水素の混合ガスを用いる場合には、容量比で、窒素100に対して、水素が20以下であることが好ましく、水素が1〜10であることが更に好ましい。また、アンモニアとアルゴンの混合ガスを用いる場合には、容量比で、アンモニア100に対して、アルゴンが10以下であることが好ましい。
【0126】
図3は、図2に示すレジスト膜20及び下層膜3をプラズマアッシングによって除去し、基板1と、この基板1上に配置された、レジストパターンが転写された(第一の凹部4が形成された)第一の低誘電絶縁膜2とが残っている状態を示している。
【0127】
次に、第一の低誘電絶縁膜の凹部に埋め込む導電材料としては、例えば、銅、アルミニウムなどを挙げることができる。導電材料を埋め込む方法としては、例えば、銅電解メッキ等を挙げることができる。このようにして導電材料をレジストパターンに埋め込むことによって所望の配線構造を形成することができる。図5は、第一の低誘電絶縁膜2に形成したレジストパターン(第一の凹部4)に銅を埋め込み、第一配線6を形成した状態を示す例である。
【0128】
[3−1−7]その他の工程:
上述したデュアルダマシン構造の形成方法は、上記各工程以外に、フォトレジスト膜と下層膜との間に中間層を形成する工程(中間層形成工程)、膜除去工程後に第一の低誘電絶縁膜の表面、及び、基板の一部にバリアメタル層を形成する工程(バリアメタル層形成工程)を行ってもよい。
【0129】
[3−1−7a]中間層形成工程:
中間層形成工程において、中間層は、レジストパターン形成において、下層膜、レジスト膜、及びこれらの両方に足りない機能を補うための層である。中間層を形成してもよい。即ち、例えば、下層膜に反射防止機能が足りない場合、この中間層に反射防止機能を有する膜を適用することができる。
【0130】
中間層の材質は、必要な機能によって有機化合物や無機酸化物を適宜選択することができる。なお、レジスト膜が有機化合物である場合、中間層に無機酸化物を適用することも可能である。
【0131】
中間層を形成するための有機化合物の市販品としては、全て商品名で、例えば、「DUV−42」、「DUV−44」、「ARC−28」、「ARC−29」(以上、Brewer Science社製)、「AR−3」、「AR−19」(以上、ローム アンド ハース社製)等を挙げることができる。また、中間層を形成するための無機酸化物としては、例えば、ポリシロキサン、酸化チタン、酸化アルミナ、酸化タングステン等を挙げることができる。これらの市販品としては、全て商品名で、例えば、「NFC SOG01」、「NFC SOG04」(以上、JSR社製)等を挙げることができる。
【0132】
中間層の形成方法としては、例えば、塗布法やCVD法等を用いることができる。これらの中でも、下層膜を形成した後、連続して中間層を形成することができるため、塗布法を用いることが好ましい。
【0133】
中間層の膜厚は、中間層に求められる機能により適宜膜厚を選択することが可能であるが、10〜3000nmであることが好ましく、20〜300nmであることが更に好ましい。この中間層の膜厚が10nm未満であると、下層膜のエッチングを行う途中で中間層が削れてしまうおそれがある。一方、3000nm超であると、レジスト膜のレジストパターンを中間層に転写する際に、加工変換差が顕著に発生してしまうおそれがある。
【0134】
[3−1−7b]バリアメタル層形成工程:
バリアメタル層形成工程において、バリアメタル層は、レジストパターン内(即ち、第一の低誘電絶縁膜に形成された凹部)に埋め込まれる導電材料と低誘電絶縁膜との接着性を向上させるものである。更に、導電材料の低誘電絶縁膜中に拡散すること(マイグレーション)を防止するものである。
【0135】
バリアメタル層の材料としては、例えば、タンタル、窒化タンタル、チタン、窒化チタン、ルテニウムなどを挙げることができる。
【0136】
バリアメタル層の形成方法は、例えば、CVD法などによって行うことができる。
【0137】
図4は、第一の低誘電絶縁膜2の表面、及び、第一の低誘電絶縁膜2の第一の凹部4の表面にバリアメタル層5を形成した状態を示している。
【0138】
なお、積層工程後、低誘電絶縁膜の表面に付着している導電材料とバリアメタル層とを、化学的研磨(CMP)により除去するとともに、低誘電絶縁膜の表面を平坦化することが好ましい。
【0139】
[3−2]第二配線形成工程及び第三配線形成工程:
第二配線形成工程及び第三配線形成工程において、上記凹部を形成する方法は、上述した第一配線形成工程において凹部を形成する方法と同様の方法を採用することができるが、以下に示す方法で凹部を形成することが好ましい。即ち、第二配線層と第三配線層を同時に形成することが好ましい。
【0140】
まず、第一配線形成工程によって形成した第一配線層上に、第三の低誘電絶縁膜を形成する。その後、第三の低誘電絶縁膜上に第二の低誘電絶縁膜を形成する。なお、第二の低誘電絶縁膜及び第三の低誘電絶縁膜は、上述した第一の低誘電絶縁膜と同様のものを用いることができ、第二の低誘電絶縁膜及び第三の低誘電絶縁膜の形成方法は、上述した第一の低誘電絶縁膜と同様の方法を採用することができる。
【0141】
次に、第二の低誘電絶縁膜及び第三の低誘電絶縁膜に、第三の凹部を形成する。第三の凹部を形成する方法は、上述した第一の凹部を形成する方法と同様の方法を採用することができる。図6は、第二の低誘電絶縁膜9及び第三の低誘電絶縁膜7に、第三の凹部12を形成した状態を示す例である。
【0142】
次に、第二の低誘電絶縁膜に第二の凹部を形成する。第二の凹部を形成する方法は、上述した第一の凹部を形成する方法と同様の方法を採用することができる。具体的には、以下のように行うことができる。
【0143】
まず、第二の低誘電絶縁膜上に、本実施形態の下層膜形成組成物を塗布し、第二の低誘電絶縁膜及び第三の低誘電絶縁膜に形成した第三の凹部を埋めることに加えて、第二の低誘電絶縁膜の表面に膜(下層膜)を形成する。なお、下層膜形成組成物を塗布する方法は、特に限定されないが、例えば、スピンコート法、スプレー法、ディップコート法などを挙げることができる。
【0144】
次に、形成した下層膜上にレジスト膜を形成した後、このレジスト膜にレジストパターンを形成する。次に、レジストパターンが形成されたレジスト膜をマスクとして用い、レジスト膜のレジストパターンをエッチングによって下層膜に転写する。図7は、レジストパターンが形成されたレジスト膜22をマスクとして用い、レジスト膜22のレジストパターンをエッチングによって下層膜13に転写した状態を示している。
【0145】
次に、レジストパターンが転写された下層膜をマスクとして用い、下層膜の下に配置された第二の低誘電絶縁膜に下層膜のレジストパターンを転写する。図8は、レジストパターンが転写された下層膜13をマスクとして用い、下層膜13の下に配置された第二の低誘電絶縁膜9に下層膜13のレジストパターンを転写した(第二の凹部14を形成した)状態を示している。
【0146】
次に、レジスト膜及び下層膜をプラズマアッシングによって除去する。このとき、プラズマアッシングによって、第三の低誘電絶縁膜に形成した第三の凹部を埋めている下層膜形成組成物が硬化したものも除去する。図9は、プラズマアッシングによって、図8に示すレジスト膜22及び下層膜13を除去し、第二の低誘電絶縁膜9及び第三の低誘電絶縁膜7にそれぞれ第二の凹部14と第三の凹部12が形成された状態を示している。
【0147】
次に、第二の凹部と第三の凹部に導電材料を埋め込むことによって、第二配線と、第一配線及び第二配線を接続する第三配線と、を同時に形成することができる。なお、第二の凹部と第三の凹部に導電材料を埋め込む前に、上述したバリアメタル層を形成してもよい。図10は、図9に示す第二の凹部14と第三の凹部12に導電材料を埋め込む前にバリアメタル層15を形成し、その後、第二の凹部14と第三の凹部12に導電材料を埋め込むことによって、第二配線31と、第一配線6及び第二配線31を接続する第三配線16と、を同時に形成した状態を示している。このようにして、第一配線6が形成された第一配線層25と、第二配線31が形成された第二配線層29と、上記第一配線6及び上記第二配線31を接続する第三配線16が形成された第三配線層27と、を有するデュアルダマシン構造体100を製造することができる。
【0148】
なお、第二の凹部と第三の凹部に導電材料を埋め込んだ後に、化学的研磨(CMP)を行うことができる。
【実施例】
【0149】
以下、本発明を実施例及び比較例に基づいて具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例及び比較例に限定されるものではない。なお、実施例の記載における「部」及び「%」は、特記しない限り質量基準である。
【0150】
(合成例1)
温度計を備えたセパラブルフラスコに、窒素雰囲気下で、一般式(1)で表される構造単位を与える単量体(表1、2中、「単量体(1)」と示す)としてアセナフチレン(表1、2中、「M−1−1」と示す)70部、一般式(2)で表される構造単位を与える単量体(表1、2中、「単量体(2)」と示す)としてヒドロキシエチルメタクリレート(表1中、「M−2−1」と示す)20部、一般式(3)で表される構造単位を与える単量体(表1、2中、「単量体(3)」と示す)としてスチレン(表1、2中、「M−3−1」と示す)10部、ラジカル重合開始剤(一般式(4)で表される構造単位を与える単量体)として2,2’−アゾビス(2−メチル酪酸ジメチル)(和光純薬社製、商品名「V−601」、表1中、「重合開始剤[V−601]」と示す)10部、及び、メチルイソブチルケトン400部とを仕込み、攪拌しつつ90℃で4時間重合させた。重合終了後、重合溶液を水冷して30℃以下に冷却した。冷却後、この重合溶液を多量のメタノールに投入し、白色固体を析出させた。その後、析出した白色固体をデカンテーション法により分離し、分離した白色固体を多量のメタノールにて洗浄した。洗浄後、50℃にて17時間乾燥させて重合体(A−1)を得た。
【0151】
得られた重合体(A−1)について、以下に示す条件で、重量平均分子量(Mw)を測定した。
【0152】
[重量平均分子量(Mw)の測定]:
東ソー社製のGPCカラム(G2000HXL:2本、G3000HXL:1本)を用い、流量:1.0mL/分、溶出溶剤:テトラヒドロフラン、カラム温度:40℃の分析条件で、単分散ポリスチレンを標準とするゲルパーミエーションクロマトグラフ(検出器:示差屈折計)により測定した。なお、表1及び表2中、「分子量」と示す。
【0153】
本合成例で得られた重合体(A−1)の重量平均分子量(Mw)は、2800であった。
【0154】
(合成例2〜26)
表1に示す単量体及びラジカル重合開始剤を、表1に示す配合量で用いたこと以外は、合成例1と同様にして重合体(A−2)〜重合体(A−26)を合成し、各重合体について重量平均分子量(Mw)を測定した。その結果を表1に示す。なお、表1〜表4中、「部」は、質量部を示す。
【0155】
【表1】

【0156】
(合成例27)
温度計を備えたセパラブルフラスコに、窒素雰囲気下で、アセナフチレン50部、ヒドロキシメチルアセナフチレン(表1及び2中、「M−1−2」と示す)50部、ラジカル重合開始剤としてアゾイソブチロニトリル(表2中、「重合開始剤[AIBN]」と示す)25部、及び、メチルイソブチルケトン400部を仕込み、攪拌しつつ60℃で15時間重合した。重合終了後、重合溶液は水冷して30℃以下に冷却した。冷却後、この重合溶液を多量のn−ヘプタンに投入し、白色固体を析出させた。その後、析出した白色固体をデカンテーション法により分離し、多量のn−ヘプタンにて洗浄した。洗浄後、50℃にて17時間乾燥させて重合体(CA−1)を得た。
【0157】
本合成例で得られた重合体(CA−1)の重量平均分子量(Mw)は、1300であった。
【0158】
(合成例28〜31)
表2に示す単量体及びラジカル重合開始剤を、表2に示す配合量で用いたこと以外は、合成例30と同様にして重合体(CA−2)〜重合体(CA−5)を合成し、各重合体について重量平均分子量(Mw)を測定した。その結果を表2に示す。
【0159】
【表2】

【0160】
なお、表1及び2中、「M−2−2」はヒドロキシエチルアクリレートを示し、「M−3−2」はヒドロキシメチルスチレンを示し、「M−3−3」はtert−ブトキシスチレンを示す。
【0161】
(実施例1)
合成例1で得られた重合体(A−1)10.0部、(B)架橋剤として下記式(7)で表される化合物(テトラブトキシメチルグリコールウリル(日本カーバイド社製)、表3、4中、「B−1」と示す)3.0部、(C)溶剤としてプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(表3、4中、「C−1」と示す)86.5部、及び、(D)酸発生剤としてビス(4−t−ブチルフェニル)ヨードニウムノナフルオロ−n−ブタンスルホネート(ミドリ化学社製、商品名「BBI−109」、表3、4中、「D−1」と示す。)0.5部を混合し、溶解させて混合溶液を得た。得られた混合溶液を孔径0.1μmのメンブランフィルターでろ過して、下層膜形成組成物を調製した。
【0162】
【化13】

【0163】
調製した下層膜形成組成物について、以下に示す各性能評価を行った。
【0164】
(1)エッチング耐性:
スピンコート法によりシリコン基板上に下層膜形成組成物を塗布し、220℃で60秒間焼成後、膜厚300nmの下層膜を形成した。その後、下層膜をエッチング処理(圧力:0.03Torr、高周波電力:300W、Ar/CF=40/100sccm、基板温度:20℃)し、エッチング処理後の下層膜の膜厚を測定した。そして、膜厚の減少量と処理時間との関係からエッチングレート(nm/分)を算出し、エッチング耐性(表5及び6中、「エッチングレート(nm/分)」と示す)の評価基準とした。なお、このエッチングレートの値が小さい程、エッチング耐性に優れている。
【0165】
(2)埋め込み性:
下層膜形成組成物が、ビアホール内へ良好に浸入して、良好に埋め込まれるか否かについて下記のように評価した。
【0166】
まず、ビアサイズ:70nm、ビアピッチ:1H/1.2S、深さ:400nmのビアホールが形成されたテトラエチルオルソシリケート(TEOS)の基板上に、下層膜形成組成物をスピンコートした後、200℃で60秒間ホットプレート上で加熱した。このようにしてビアホール内とTEOS表面上に下層膜を作製した。なお、下層膜の膜厚は300nmとした。次に、ビアホール内に埋め込んだ下層膜の状態を走査型電子顕微鏡によって観察して、埋め込み性を評価した。評価基準は、下層膜がビアホール内に形成されている場合、即ち、ビアホール内に埋め込まれている場合を「○」とし、下層膜がビアホール内に埋め込まれていない場合を「×」とした。
【0167】
(3)硬化温度:
スピンコート法によりシリコン基板上に下層膜形成組成物を塗布し、140〜400℃で60秒間焼成して下層膜を得た。得られた下層膜をプロピルグリコールモノメチルエーテルアセテートに室温で1分間浸漬した。そして、浸漬前後の下層膜の膜厚変化を、分光エリプソメーター「UV1280E」(KLA−TENCOR社製)を用いて測定し、評価を行った。評価基準は、上記所定の温度のうち、膜厚変化が認められない最低の温度を「硬化温度」とした(表5及び6中、「硬化温度(℃)」と示す)。なお、250℃の温度で焼成した場合であっても膜厚の変化が観察された場合には「×」とした。
【0168】
(4)昇華物量:
直径8インチのシリコン基板上に下層膜形成組成物をスピンコートした。その後、140〜400℃で60秒間ホットプレート上にて加熱し、膜厚300nmの下層膜を得た。このとき下層膜から生じた昇華物の量を測定した(表5及び6中、「昇華物量(mg)」と示す)。なお、昇華物の捕集は、以下のように行った。まず、ホットプレートを用意した。次に、このホットプレートの天板に、予め重さを測定しておいた8インチシリコンウエハを付着させた。次に、ホットプレートを加熱した後、シリコン基板上に下層膜形成組成物をスピンコートし、ホットプレートで加熱した。次に、この下層膜形成組成物をスピンコートしたシリコン基板の下層膜上に、下層膜形成組成物をスピンコートし、ホットプレートで加熱した。そして、これらの工程を100回行った。その後、天板に付着させた8インチシリコンウエハの重さを測定した。次に、8インチシリコンウエハの重さの差を算出し、昇華物量とし、昇華物量の大小を確認した。
【0169】
(5)屈折係数:
スピンコート法によりシリコン基板上に下層膜形成組成物を塗布し、200℃で60秒間焼成後、膜厚300nmの下層膜を得た。その後、分光エリプソメーター「VUV−VASE」(J.A.Woollam社製)を用いて、波長193nmにおける光学定数(屈折係数)を算出した(表5及び6中、「屈折係数(n値)」と示す)。なお、屈折係数(n値)が1.40〜1.60の範囲内であると、ArF露光レジスト工程において、反射防止膜として十分な機能を有するものと判断することができる。
【0170】
(6)消衰係数:
スピンコート法によりシリコン基板上に下層膜形成組成物を塗布し、200℃で60秒間焼成後、膜厚300nmの下層膜を得た。その後、分光エリプソメーター「VUV−VASE」(J.A.Woollam社製)を用いて、波長193nmにおける光学定数(消衰係数)を算出した(表5及び6中、「消衰係数(k値)」と示す)。なお、消衰係数(k値)が0.25〜0.40の範囲内であると、ArF露光レジスト工程において、反射防止膜として十分な機能を有するものと判断することができる。
【0171】
本実施例において、上述した各性能評価の結果は、エッチング耐性が67であり、埋め込み性が「○」であり、硬化温度が180℃であり、昇華物量が1.8mgであり、屈折係数が1.55であり、消衰係数が0.28であった。
【0172】
(実施例2〜36、比較例1〜10)
表3及び4に示す各種成分及び配合量としたこと以外は、実施例1と同様にして下層膜形成組成物を調製し、この下層膜形成組成物について上述した各性能評価を行った。評価結果を表5及び6に示す。
【0173】
【表3】

【0174】
【表4】

【0175】
なお、表3及び4中、「B−2」は下記式(8)で表される化合物(n−ブチルエーテル化ヘキサメチロールメラミン)を示し、「B−3」は下記式(9)で表される化合物(テトラメトキシメチルグリコールウリル)を示す。
【0176】
【化14】

【0177】
【化15】

【0178】
【表5】

【0179】
【表6】

【0180】
表5、6から明らかなように、実施例1〜36の下層膜形成組成物により形成された下層膜は、比較例1〜10の下層膜形成組成物により形成された下層膜に比べて、エッチング耐性及び埋め込み性に優れており、かつ、昇華物量が少ないことが確認された。また、実施例1〜36の下層膜形成組成物により形成された下層膜は、n値及びk値が、ArF露光レジスト工程において反射防止膜として十分な機能を有するとされる最適な範囲内にあるため、反射防止膜としての機能を十分満たしていることが確認された。
【0181】
一方、比較例1〜10の下層膜形成組成物により形成された下層膜は、エッチング耐性、埋め込み性、昇華物量、及び反射防止膜としての機能の全てが良好な下層膜ではなかった。
【0182】
具体的には、比較例1〜3の下層膜形成組成物は、重量平均分子量の小さい(A)重合体を含有するため、埋め込み性は優れているが、昇華物量が多かった。一方、比較例4の下層膜形成組成物は、重量平均分子量の大きい(A)重合体を含有するため、昇華物量が少なかったが、良好な埋め込み性は得られなかった。更に、比較例7、8の下層膜形成組成物は、含有されている(A)重合体の構造中に適切な架橋基を有していないため、250℃以下の低温で膜硬化しなかった。また、比較例5〜10の下層膜形成組成物は、k値が最適の範囲内ではなかった。更に、比較例7〜10の下層膜形成組成物は、含有する(A)重合体が、構造単位(2)を有していないため、埋め込み性が不良であることが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0183】
本発明の下層膜形成組成物は、半導体装置の製造プロセス、具体的には、シリコンウエハ上に被加工膜として複数の物質を堆積させ、この被加工膜にそれぞれ所望のパターンを形成する工程に用いる下層膜を形成するための組成物として好適である。
【図面の簡単な説明】
【0184】
【図1】本発明の下層膜形成組成物を用いたデュアルダマシン構造の形成方法の一工程を示す模式図である。
【図2】本発明の下層膜形成組成物を用いたデュアルダマシン構造の形成方法の一工程を示す模式図である。
【図3】本発明の下層膜形成組成物を用いたデュアルダマシン構造の形成方法の一工程を示す模式図である。
【図4】本発明の下層膜形成組成物を用いたデュアルダマシン構造の形成方法の一工程を示す模式図である。
【図5】本発明の下層膜形成組成物を用いたデュアルダマシン構造の形成方法の一工程を示す模式図である。
【図6】本発明の下層膜形成組成物を用いたデュアルダマシン構造の形成方法の一工程を示す模式図である。
【図7】本発明の下層膜形成組成物を用いたデュアルダマシン構造の形成方法の一工程を示す模式図である。
【図8】本発明の下層膜形成組成物を用いたデュアルダマシン構造の形成方法の一工程を示す模式図である。
【図9】本発明の下層膜形成組成物を用いたデュアルダマシン構造の形成方法の一工程を示す模式図である。
【図10】本発明の下層膜形成組成物を用いて得られたデュアルダマシン構造を示す模式図である。
【符号の説明】
【0185】
1:基板、2:第一の低誘電絶縁膜、3,11,13:下層膜、4:第一の凹部、5,15:バリアメタル層、6:第一配線、7:第三の低誘電絶縁膜、8,10:エッチングストッパ層、9:第二の低誘電絶縁膜、12:第三の凹部、14:第二の凹部、16:第三配線、20,21,22:レジスト膜、25:第一配線層、27:第三配線層、29:第二配線層、31:第二配線、100:バリアメタル層。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)下記一般式(1)で表される構造単位、下記一般式(2)で表される構造単位、下記一般式(3)で表される構造単位、及び、下記一般式(4)で表される構造単位を有する重合体と、
(B)ブチルエーテル基を有する架橋剤と、
(C)溶剤と、を含有する下層膜形成組成物。
【化1】

(但し、前記一般式(1)中、Rは水素原子、炭素数1〜6の置換されていてもよいアルキル基、ヒドロキシル基、炭素数1〜6のアルコキシル基、カルボキシル基、炭素数1〜6のアルコキシカルボニル基、炭素数1〜6のアルコキシカルボニルオキシ基、メチロール基、または炭素数1〜6のアルコキシメチロール基を示し、R及びRは、それぞれ、水素原子、または炭素数1〜6の置換されていてもよいアルキル基を示す。)
【化2】

(但し、前記一般式(2)中、Rは水素原子またはメチル基を示す。Rは炭素数1〜4のアルキレン基を示す。)
【化3】

(但し、前記一般式(3)中、Rは水素原子、炭素数1〜6の置換されていてもよいアルキル基、ヒドロキシル基、炭素数1〜6のアルコキシル基、カルボキシル基、炭素数1〜6のアルコキシカルボニル基、炭素数1〜6のアルコキシカルボニルオキシ基、メチロール基、または炭素数1〜6のアルコキシメチロール基を示し、Rは水素原子または炭素数1〜6の置換されていてもよいアルキル基を示す。nは1〜3の整数を示す。)
【化4】

(但し、前記一般式(4)中、R、RおよびR10は、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜6の置換されていてもよいアルキル基を示す。)
【請求項2】
前記(A)重合体のポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)が、500〜10000である請求項1に記載の下層膜形成組成物。
【請求項3】
前記(B)架橋剤は、下記一般式(5)または(6)で表される化合物である請求項1または2に記載の下層膜形成組成物。
【化5】

(但し、前記一般式(5)中、R11は、それぞれ独立に、水素原子、メチル基、n−ブチル基、またはiso−ブチル基を示す。但し、4つあるR11のうち2つ以上が、n−ブチル基またはiso−ブチル基である。)
【化6】

(但し、前記一般式(6)中、R12は、それぞれ独立に、水素原子、メチル基、n−ブチル基、またはiso−ブチル基を示す。但し、6つあるR12のうち2つ以上が、n−ブチル基またはiso−ブチル基である。)
【請求項4】
前記(A)重合体に含まれる、前記一般式(1)で表される構造単位の割合が、前記(A)重合体の全構造単位100モル%に対して5〜80モル%であり、
前記(A)重合体に含まれる、前記一般式(2)で表される構造単位の割合が、前記(A)重合体の全構造単位100モル%に対して5〜80モル%であり、
前記(A)重合体に含まれる、前記一般式(3)で表される構造単位の割合が、前記(A)重合体の全構造単位100モル%に対して0.1〜50モル%である請求項1〜3のいずれか一項に記載の下層膜形成組成物。
【請求項5】
(D)酸発生剤を更に含有する請求項1〜4のいずれか一項に記載の下層膜形成組成物。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate


【公開番号】特開2010−26221(P2010−26221A)
【公開日】平成22年2月4日(2010.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−187029(P2008−187029)
【出願日】平成20年7月18日(2008.7.18)
【出願人】(000004178)JSR株式会社 (3,320)
【Fターム(参考)】